枝管ライニング工法及びこの工法に用いられる枝管ライニング材の鍔押圧具
【課題】枝管ライニング材の鍔を本管の枝管開口部周縁に良好に密着させて枝管をライニングすることが可能な枝管ライニング工法、及び該工法に使用される鍔押圧具を提供する。
【解決手段】硬化性樹脂を含浸した管状樹脂吸収材2の一端に鍔3が形成される枝管ライニング材を用いて本管30と交差する枝管31がライニングされる。枝管ライニング材の鍔を膨張可能な鍔押圧具70上に配置する。鍔押圧具に温水を供給することにより鍔押圧具は膨張して枝管ライニング材の鍔が本管の枝管開口部周縁に押圧される。この状態で、鍔3上の接着剤82が温水により加熱硬化することにより、鍔3は本管の枝管開口部周縁30aに固着される。枝管ライニング材の鍔と本管の枝管開口部周縁間には隙間が発生することがなく、地下水や土砂が本管内に流れ込むことがないので、本管の排水性能を向上させることができる。
【解決手段】硬化性樹脂を含浸した管状樹脂吸収材2の一端に鍔3が形成される枝管ライニング材を用いて本管30と交差する枝管31がライニングされる。枝管ライニング材の鍔を膨張可能な鍔押圧具70上に配置する。鍔押圧具に温水を供給することにより鍔押圧具は膨張して枝管ライニング材の鍔が本管の枝管開口部周縁に押圧される。この状態で、鍔3上の接着剤82が温水により加熱硬化することにより、鍔3は本管の枝管開口部周縁30aに固着される。枝管ライニング材の鍔と本管の枝管開口部周縁間には隙間が発生することがなく、地下水や土砂が本管内に流れ込むことがないので、本管の排水性能を向上させることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性樹脂を含浸して成る管状樹脂吸収材の一端に鍔が形成されている枝管ライニング材を用いて枝管(取付管)をライニングする枝管ライニング工法、及びこの工法に用いられる枝管ライニング材の鍔押圧具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地中に埋設された下水管等の管路が老朽化した場合、管路を地中から掘出することなく、その内周面にライニングを施して管路を補修する管ライニング工法が知られている。
【0003】
上記管ライニング工法では、外周面が気密性の高いフィルムで被覆された可撓性の管状樹脂吸収材に硬化性樹脂を含浸せしめて成る管ライニング材が流体圧によって管路内に反転させながら挿入される。管ライニング材は、流体圧により管路内周面に押圧された状態で加温され、これに含浸された硬化性樹脂が硬化されて管路の内周面がライニングされる。
【0004】
このような工法は、本管から分岐する枝管に対しても適用することができ、たとえば、特許文献1、2に記載されている。枝管をライニングする場合は、圧力バッグに内装された枝管ライニング材の一端に形成された鍔が本管内に導入された作業用ロボットのヘッドカラー上にセットされ、作業用ロボットの駆動により本管の枝管開口部周縁に密着される。圧縮エアーを圧力バッグ内に供給すれば、枝管ライニング材は圧縮エアーの圧力を受けて反転しながら枝管内に挿入される。反転挿入が枝管の全長に亘って終了すると、枝管ライニング材を枝管の内周面に押圧したまま、加温してこれに含浸された熱硬化性樹脂が硬化され、枝管は、硬化した枝管ライニング材によってその内周面がライニングされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−355115号公報
【特許文献2】特開2008−168468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、枝管ライニング材の鍔は、熱硬化性樹脂で形成される場合は硬化されており、また熱可塑性樹脂で形成される場合は常温では硬いので、いずれにしても柔軟性は失われている。
【0007】
したがって、枝管ライニング材の鍔を作業用ロボットを用いて本管の枝管開口部周縁に密着させようとしても、鍔に柔軟性がないことから、鍔に製造誤差があったり、本管の枝管開口部周縁に凹凸があると、良好な密着状態が得られなくなる。
【0008】
密着状態がよくないままライニングを終了させると、枝管ライニング材の鍔と本管の枝管開口部周縁間には隙間が発生し、その隙間から地下水や地中の土砂が本管内に流れ込み、本管の排水性能を劣化させてしまう、という問題がある。
【0009】
本発明の課題は、枝管ライニング材の鍔を本管の枝管開口部周縁に良好に密着させて枝管をライニングすることが可能な枝管ライニング工法、及び該工法に使用される枝管ライニング材の鍔押圧具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、
硬化性樹脂を含浸した管状樹脂吸収材の一端に鍔が形成される枝管ライニング材を用いて本管と交差する枝管をライニングする枝管ライニング工法であって、
枝管ライニング材の鍔を膨張可能な鍔押圧具上に配置し、
枝管ライニング材の鍔を前記鍔押圧具を介して本管の枝管開口部周縁に押圧させ、
枝管ライニング材を枝管内に挿入して管状樹脂吸収材に含浸されている硬化性樹脂を加熱硬化させ、枝管をライニングすることを特徴とする。
【0011】
また、本発明は
上記枝管ライニング工法に用いられる鍔押圧具であって、
ホースを取り付けてなる内蔵袋と、
前記内蔵袋を被覆する袋状のカバーと、を有し、
ホースを介して流体を内蔵袋内に供給すると、内蔵袋が扁平な袋状に膨張し、その押圧力により枝管ライニング材の鍔が本管の枝管開口部周縁に押し当てられることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の鍔押圧具は、螺旋形に巻き付けられたチューブから構成され、
ホースを介して流体をチューブ内に供給すると、チューブが円形ないし楕円形に膨張し、その押圧力により枝管ライニング材の鍔が本管の枝管開口部周縁に押し当てられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、枝管ライニング材の鍔は、本管の枝管開口部周縁に良好に密着するので、その間に隙間が発生することがない。したがって、枝管ライニング材の鍔と本管の枝管開口部周縁間の隙間から地下水や地中の土砂が本管内に流れ込むことがないので、本管の排水性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の工法に用いられる枝管ライニング材の断面図である。
【図2】鍔押圧具の内蔵袋を作製する過程を説明する説明図である。
【図3】(a)は内蔵袋を被覆する補強カバーの平面図、(b)は鍔押圧具の平面図、(c)は(b)のA−A線に沿う断面図である。
【図4】作業用ロボットに取り付けられるヘッドカラーの斜視図である。
【図5】(a)はヘッドカラー上に鍔押圧具を載置したときのヘッドカラー斜視図、(b)は鍔押圧具に保護カバーを取り付けたときのヘッドカラーの斜視図である。
【図6】(a)はヘッドカラー上に枝管ライニング材をセットしたときのヘッドカラーの斜視図、(b)は枝管ライニング材の鍔に接着剤を塗布したときの斜視図である。
【図7】(a)は鍔押圧具を膨張させる前のヘッドカラーの縦断面図、(b)は鍔押圧具を膨張させたときのヘッドカラーの縦断面図である。
【図8】枝管ライニング材で枝管をライニングする方法を示した説明図である。
【図9】枝管ライニング材で枝管をライニングする方法を示した説明図である。
【図10】鍔押圧具上に配置されるヒーターを示した説明図である。
【図11】チューブを巻き付けて構成される鍔押圧具の構成を説明する説明図である。
【図12】(a)は被覆シートを取り付けたヘッドカラー上に鍔押圧具を載置したときのヘッドカラーの斜視図、(b)は鍔押圧具に保護カバーを取り付けたときのヘッドカラーの斜視図である。
【図13】(a)は被覆シートを取り付けたヘッドカラー上に枝管ライニング材をセットしたときのヘッドカラーの斜視図、(b)は枝管ライニング材の鍔に接着剤を塗布したときの斜視図である。
【図14】被覆シートを取り付けたヘッドカラーを用いて枝管をライニングする方法を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に示す実施例に基づいて本発明を詳細に説明する。
【実施例】
【0016】
図1には、枝管(取付管)をライニングするための枝管ライニング材1が図示されている。枝管ライニング材1は、不織布から成る管状樹脂吸収材2を有し、その一端は外方へ折り返されてフランジ状の鍔3を構成している。管状樹脂吸収材2の鍔3を除く部分には未硬化の液状熱硬化性樹脂が含浸されており、該部分の外周面(反転されると内周面となる)には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、又は塩化ビニール等の気密性の高いプラスチックフィルム4がコーティングされている。
【0017】
管状樹脂吸収材2は、ポリアミド、ポリエステル、ポリプロピレンなどのプラスチック繊維を用いた不織布、織布、あるいはマット;あるいはガラス繊維を用いた織布、あるいはマット;あるいは上記プラスチック繊維とガラス繊維を組み合わせた不織布、織布、あるいはマットからなる。管状樹脂吸収材2に含浸される熱硬化性樹脂は、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、又はエポキシ樹脂などである。
【0018】
管状樹脂吸収材2の一端に形成された鍔3は後述の本管30(図8参照)に等しい曲率で円弧状に湾曲する曲面を構成しており、その外径は後述の枝管31(図8参照)の内径よりも大きく設定されており、これに含浸された硬化性樹脂が硬化することによって鍔3はその形状を保持している。
【0019】
なお、鍔3は熱硬化性樹脂ではなく、塩化ビニールなどの熱可塑性樹脂から構成することもできる。この場合には、鍔3と管状樹脂吸収材2は接着剤などで結合される。
【0020】
又、管状樹脂吸収材2の外側には所定長さの引き剥しチューブ5が通され、引き剥しチューブ5の一端は管状樹脂吸収材2の鍔3の近傍外周に引き剥し可能に接着され、他端は開放していて後述する圧力バッグに気密に取り付けられる。尚、引き剥しチューブ5の材質には前記プラスチックフィルム4と同様のものが選定される。
【0021】
管状樹脂吸収材2の他端には、管状の引き剥しエンド6が引き剥し可能に取り付けられる。この引き剥しエンド6はプラスチックフィルム4と同様な材質で構成され、一端は連結具7によって閉止されている。
【0022】
本実施例では、枝管ライニング材1の鍔3を本管の枝管開口部周縁に密着させるために、内蔵袋73を補強カバー74で被覆した鍔押圧具70が使用される。
【0023】
内蔵袋73は、図2に示したように、中央に円形の開口部71a、側部に突出部71b、71cを有するシート71と、同様に中央に円形の開口部72a、側部に突出部72b、72cを有するシート72を、袋状になるように重ね合わせ、図2の下段に示したように、点線で示した周囲部73dと開口部71a、72aの外周部73eを気密に接着することにより作製される。各シート71、72は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、又は塩化ビニール等の気密性の高いプラスチックでできている。
【0024】
このように構成された内蔵袋73は、シート71、72の開口部71a、72aに対応する開口部73aを有し、この開口部73aは、後述するヘッドカラーの円筒部が挿入できる大きさとなっている。また、シート71、72の突出部71b、72bの先端は接着されていないので、後述する熱媒を取り入れる取入口73bとして用いられ、突出部71c、72cもその先端部が接着されていないので、内蔵袋73内の熱媒を排出する排出口73cとして用いられる。内蔵袋73の熱媒取入口73bと排出口73cには、それぞれ熱媒供給ホース75と熱媒排水ホース76が気密に取り付けられる。
【0025】
内蔵袋73は、図3(a)に示したように、カシミア、シルク、ナイロン、レーヨンなどの繊維あるいはシリコン、ポリエチレン、ポリウレタンなどの延びにくい素材でできた補強カバー74でカバーされる。補強カバー74は、シート71、72の開口部71a、72aに対応する開口部74a、突出部71b、71c、72b、72cに対応する突出部74b、74cを有し、シート71、72と相似の形状ではあるが、全体で少し大きさが小さくなっている。補強カバー74と同様な補強カバー74’(図3(c))が設けられ、内蔵袋73は、両補強カバー74、74’によって挟まれるようにしてその全体が被覆される。被覆後、補強カバー74の周囲74dと開口部74aの外周部74e、並びに補強カバー74’のそれに対応する部分が縫製あるいは接着され、袋状の鍔押圧部70が作製される。
【0026】
補強カバー74、74’は、内蔵袋73のシート71、72より形状が一回り小さくなっているので、内蔵袋73を被覆したとき、図3(c)に示すように、内蔵袋73のシート71、72はしわがよった状態で内蔵される。図3(c)は、図3(b)のA−A線に沿う断面図であるが、正確な断面図ではなく、内蔵袋73がしわがよった状態で内蔵されることを模式的に示したものである。
【0027】
このように構成された鍔押圧具70は、図3(b)に示すように、中央部にヘッドカラーの円筒部が挿入可能な開口部70aと、熱媒供給ホース75と熱媒排水ホース76が取り付けられる突出部70b、70cを有し、熱媒供給ホース75から流体(液体、気体)を供給すると、内蔵袋73が全体として扁平な袋状に膨張し、押圧力を発生する。このとき、内蔵袋73は、補強カバーに押さえつけられて完全に膨張することはないので、破裂したりあるいは過剰な負荷がかかることが防止される。
【0028】
なお、鍔押圧具70の外形は、図示したように、矩形でなくても、円形あるいは三角形であってもよい。
【0029】
図4は、後述する作業用ロボットと圧力バッグに取り付けられて、枝管ライニング材を枝管にセットするための金属性のヘッドカラー(押圧治具)80を示す。ヘッドカラー80は、本管の内周面の曲率に応じた曲率の湾曲部80aを有し、中空の円筒部(カラー)80bが湾曲部80aを通過して下方まで延びている。ヘッドカラー80の円筒部80bの外径は、ヘッドカラー80の円筒部80bを鍔押圧具70の開口部70aに通すことができるように、開口部70aの径より若干小さくなっている。
【0030】
ヘッドカラー80の円筒部80bを鍔押圧具70の開口部70aに通し、図5(a)に示したように、鍔押圧部70をヘッドカラー80上に載置する。鍔押圧具70は特に固定する必要はないが、鍔押圧具70が移動する恐れがある場合は、接着テープを用いて取り外し可能にヘッドカラー80上に取り付ける。
【0031】
後述するように、枝管ライニング材の鍔上には、接着剤が塗布されるので、この接着剤が鍔押圧具70やヘッドカラー80上に流れ落ちるのを防止するために、図5(b)に示したように、ヘッドカラー80よりも大きな保護フィルム81で鍔押圧具80とヘッドカラー80を覆う。保護フィルム81には、中央部に鍔押圧具70の開口部70aとほぼ同径の開口部が設けられているので、その開口部にヘッドカラー80の円筒部80bを通して、保護フィルム81を鍔押圧具70並びにヘッドカラー80上に載置する。そして、保護フィルム81をヘッドカラー80の湾曲部に接着剤などで固定し、保護フィルム81が移動しないようにする。
【0032】
続いて、図1に示した枝管ライニング材1を、鍔3と反対側の管状樹脂吸収材2の部分(連結具7が取り付けられている方)からヘッドカラー80の円筒部80bに挿入し、図6(a)に示したように、鍔3を円筒部80bにかぶせるようにして、鍔3を保護フィルム81上に載せる。枝管ライニング材1の鍔3をヘッドカラー80の円筒部80bにかぶせることができるようにするために、円筒部80bの外径は、鍔3の内径よりも若干小さくしておく。
【0033】
このように、枝管ライニング材1を保護フィルム81並びに鍔押圧具70を介してヘッドカラー80上に載せたら、鍔3の表面に、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、又はエポキシ樹脂などからなる接着剤82を全面に塗布する(図6(b))。
【0034】
ヘッドカラー80に取り付けられた枝管ライニング材1は、図8に示したように、圧力バッグ43内に収納され、ヘッドカラー80は圧力バッグ43の一端に気密に取り付けられる。
【0035】
作業用ロボット42は、そのヘッド44が図8で上下方向a、bに進退し、且つ、矢印cで示すように管軸を中心に回転(ローリング)するように構成されており、ヘッド44には、ヘッドカラー80が取り付けられる。また、この作業用ロボット42の上部にはモニター用のTVカメラ46が設置されている。作業用ロボット42の前後には牽引ロープ47,48が取り付けられており、一方の牽引ロープ47は圧力バッグ43に接続され、他方の牽引ロープ48は地上まで延設されている。牽引ロープ48を引っ張ることにより、圧力バッグ43は、作業ロボット42、牽引ロープ47を介して本管30と交差する枝管31のところに搬送される。
【0036】
圧力バッグ43の開口端はキャップ52によって閉塞されており、枝管ライニング材1の管状樹脂吸収材2に取り付けられた引き剥しチューブ5の他端は圧力バッグ43の内部に気密に取り付けられる。
【0037】
枝管ライニング材1の引き剥しエンド6に取り付けられた連結具7には、キャップ52に取り付けられた牽引ロープ40と温水ホース41が連結される。温水ホース41はキャップ52を貫通して圧力バッグ43外へでて、バルブ53に導かれている。温水ホース41には、不図示の熱源により加熱される温水タンク55から温水ポンプ54により温水(熱媒)が供給される。また、圧力バッグ43内の温水は排水ホース56、バルブ57を介して温水タンク55に戻される。
【0038】
鍔押圧具70に取り付けられた熱媒供給ホース75には、温水タンク55から温水ポンプ54とバルブ66を介して温水が供給される。また、鍔押圧具70内の温水は熱媒排水ホース76とバルブ65を介して温水タンク55に戻される。
【0039】
圧力バッグ43内には、枝管ライニング材1と引き剥しチューブ5で閉塞される密閉空間が形成され、該密閉空間はキャップ52に取り付けられたエアーホース59、バルブ60を介して地上に設置されたコンプレッサー61に接続されるとともに、排気ホース62、バルブ63を介して外気に通じている。
【0040】
以上説明したような構成において、枝管31を枝管ライニング材1を用いてライニングする方法を説明する。
【0041】
牽引ロープ48を引っ張ることにより、ヘッドカラー80の円筒部80bの中心が枝管31の軸心とほぼ一致するところまで(図8)、圧力バッグ43を移動させる。
【0042】
作業用ロボット42のヘッド44を矢印a方向に上動させて鍔押圧具70を介して枝管ライニング材1の鍔3を本管30の枝管開口部周縁に押圧し密着させる。鍔3の製造誤差あるいは枝管開口部周縁に凹凸があると、密着が悪くなる。そこで、本発明では、鍔押圧具70を膨張させて鍔3を枝管開口部周縁に押圧するようにしている。
【0043】
温水タンク55からの温水を鍔押圧具70の熱媒供給ホース75に供給すると、温水は鍔押圧具70の内蔵袋73に供給され、内蔵袋73、したがって鍔押圧具80は、図7(a)に示された状態から図7(b)に示されたように、扁平な袋状に膨張する。収容しきれない温水は、熱媒排水ホース76を介して温水タンク55に戻される。このように温水を循環させることによって、鍔押圧具70には弾力のある押圧力が生じ、鍔3は本管30の枝管開口部周縁30aに確実に密着させることができる。図7(a)、(b)では、鍔押圧具70は、正確な断面図ではなく、膨張する状態を説明するために、様式的に図示されている。
【0044】
なお、鍔押圧具70による押圧力は、鍔押圧具70に供給される温水の供給量をバルブ66を介して調節することにより調節することができる。同様にして、鍔押圧具70から温水タンク55に戻される温水の排出量をバルブ65を介して調節することによっても鍔押圧具70の押圧力を調節することができる。また、温水の供給量と排出量の両方を調節することによっても、鍔押圧具70の押圧力を調節することができる。
【0045】
鍔押圧具70には約60°から90°Cの温水が供給されるので、鍔3が次第に加熱され、鍔3上に塗布されていた接着剤82が硬化し、鍔3は本管30の枝管開口部周縁30aに固着される。鍔3が熱硬化性樹脂からなり、既に硬化している状態でも、熱伝導により鍔3上の接着剤82は良好に加熱される。また、鍔3が熱可塑性樹脂でできている場合には、鍔3が加温により柔軟になり、枝管開口部周縁への密着がより向上するので、鍔3を本管30に確実に密着させた状態で固着させることができる。
【0046】
このように鍔押圧具へ温水を供給することにより鍔が枝管開口部周縁に密着した状態で、コンプレッサー61を駆動してエアーホース59を経て圧縮エアーを圧力バッグ43内の密閉空間に供給すると、枝管ライニング材1は圧縮エアーの圧力を受けて反転しながら枝管31内を上方に向かって順次挿入されていく。
【0047】
図9に示したように、枝管ライニング材1の枝管31内への反転挿入が終了すると、枝管ライニング材1を枝管31の内周面に押し付けた状態にし、温水を温水ホース41の先端から供給して密閉空間内に充満させる。密閉空間内の圧縮エアーは排気ホース62を経て大気中に放出され、一方、枝管ライニング材1の管状樹脂吸収材2に含浸された熱硬化性樹脂が温水で加温され硬化する。
【0048】
上述した例は、鍔押圧具に温水を供給することにより鍔押圧具を膨張させて枝管ライニング材の鍔を本管の枝管開口部周縁に密着させ、その密着した状態で枝管ライニング材を枝管内に挿入し、管状樹脂吸収材に含浸されている硬化性樹脂を加熱硬化させている。しかし、枝管ライニング材を枝管に挿入する前に鍔押圧具を膨張させるのではなく、枝管ライニング材を枝管内に挿入するとき、あるいは挿入中、あるいは挿入が完了して管状樹脂吸収材に含浸されている硬化性樹脂を硬化させるとき、あるいは硬化開始後に、鍔押圧具に温水を供給することにより鍔押圧具を膨張させ、枝管ライニング材の鍔を本管の枝管開口部周縁に固着するようにしてもよい。
【0049】
管状樹脂吸収材2に含浸されている樹脂が硬化すると、排水ホース56を介して密閉空間から温水を抜き、温水タンク55に戻す。鍔押圧具70内の温水も、熱媒排水ホース76を介して温水タンクに戻すようにする。
【0050】
枝管ライニング材1が硬化すると、作業用ロボット42のヘッド44を図示矢印b方向に下動させて鍔押圧具70を枝管ライニング材1の鍔3から引き離した後、牽引ロープ40を図9で左方向に引く。すると、引き剥しチューブ5、引き剥しエンド6、温水ホース41などが同方向に引かれ、枝管ライニング材1から取り除かれる。
【0051】
作業用ロボット42、圧力バッグ43などが本管30内から取り除かれ、枝管31は、その内周面が管状樹脂吸収材2によりライニングされる。
【0052】
なお、鍔押圧具70を膨張させ、鍔3上の接着剤82を加熱するために使用される熱媒は、上記の温水に代え、熱風あるいは加熱された液体とすることができる。このように熱媒として熱風あるいは加熱された液体を使用する場合には、熱風にするための熱源あるいは液体を加熱するための熱源と、熱風、加熱された液体を循環させる循環系を用意する。
【0053】
上述した実施例では、接着剤82を加熱する媒体が、鍔押圧具70を膨張させる流体と同じであったが、これに代え、接着剤82を加熱するのに、図10に示したようなヒーター90を用いることができる。ヒーター90は、ニクロム線など電圧を印加すると発熱する蛇行した発熱線90aから構成され、全体が防水性、絶縁性を有するカバー91で被覆される。カバー91は、鍔押圧具70とほぼ同じ大きさであり、その中央部には、鍔押圧具70の開口部70aと同じ大きさの開口部91aが形成される。ヒーターへの通電は、地上から行うことができる。
【0054】
ヒーター90は、開口部91aにヘッドカラー80の円筒部80bを通すことにより保護フィルム81で保護された鍔押圧具70上に配置され、その上に枝管ライニング材1の鍔3が配置される。この場合、鍔押圧具70には、流体の循環系は不要となるので、一本のホースだけ接続するようにし、コンプレッサー61から圧縮空気を供給するようにする。
【0055】
ヒーター90を用いる場合には、図7においてヒーター90は、保護フィルム81と枝管ライニング材1の鍔3との間に配置されるので、鍔押圧具70を圧縮空気で膨張させ、ヒーター90に通電を行うと、温水を用いた場合と同様に、鍔3は本管30の枝管開口部周縁30aに押圧される。そして、ヒーター90により、鍔3上の接着剤82が加熱され硬化されるので、温水を用いた場合と同様に、鍔3を本管30に確実に密着させた状態で固定することができる。
【0056】
図11は、上述したような袋状の鍔押圧具に代わり、膨張可能なチューブ100をヘッドカラー80の円筒部80bに複数回巻きつけて、鍔押圧具を構成した実施例を示す。円筒部80bに巻き付けられたチューブ100が解けないように、弾力性のあるテープ101で束ねておく。チューブ100の円筒部80bへの取り付け端100aと、他端100bには、それぞれホース(不図示)が気密に取り付けられる。
【0057】
一方のホースを介して温水タンク55から温水を供給すると、チューブ100は円形ないし楕円形に膨張する。チューブ100内の余った温水は、他方のホースを介して温水タンク55に戻される。このように温水を循環させることによって、チューブ100には、弾力のある押圧力が発生する。チューブ100上に枝管ライニング材1の鍔3をセットすれば、鍔押圧具70と同様に、鍔3は本管の枝管開口部周縁に良好に押圧され、鍔3上の接着剤が温水により加熱されることから、鍔3を確実に本管に固着させることができる。
【0058】
また、チューブ100による押圧力は、鍔押圧具70と同様に、チューブ100に供給される温水の供給量をバルブ66を介して調節することにより、あるいはチューブ100から温水タンク55に戻される温水の排出量をバルブ65を介して調節することにより、あるいは温水の供給量と排出量の両方を調節することにより、調節することができる。
【0059】
温水に代え、加熱された液体、あるいは熱風を熱媒として用いることができることは、鍔押圧具70と同様である。
【0060】
なお、先にヘッドカラー80を作業用ロボット上にセットしてから、鍔押圧具70、保護フィルム81、枝管ライニング材1をヘッドカラー80上に載置させるようにしてもよい。また、最初、鍔押圧具70、保護フィルム81をヘッドカラー80上に載置してヘッドカラー80を作業用ロボット上にセットした後、枝管ライニング材1をヘッドカラー80にセットするようにしてもよい。
【0061】
また、上述した実施例では、作業用ロボット42のヘッド44がヘッドカラー80を片側(図8では右側)から上方に持ち上げ、鍔3を本管30に押し当てるので、作業用ロボット42は反作用によりその姿勢が不安定になるという問題がある。
【0062】
そこで、図12(a)に示したように、ヘッドカラー80の下方部を被覆シート120で被覆するようにし、圧縮エアーで膨張する圧力バッグ43がこの被覆シート120に当たりヘッドカラー80の反対側(図8で左側)が圧力バッグ43で支持されるようにする。
【0063】
被覆シート120は布あるいはプラスチックからなる柔軟な被覆材で、ヘッドカラー80の湾曲部80aの下方部でたるみなく張り渡され、その一端120a並びに他端120b(図13(a))が折り返されて接着あるいは縫製により鍔押圧具70に固定される。被覆シート120の中央部で、ヘッドカラー80の円筒部80bに対応する位置には、管ライニング材1が通過できる開口部120cが形成される。また、被覆シート120には、作業用ロボット42のヘッド44の先端が通過できる穴(不図示)も形成される。
【0064】
ヘッドカラー80を被覆シート120で被覆した後、図12(b)で示したように、保護フィルム81でヘッドカラー80を覆う。その後、図6(a)、(b)で示したのと同様に、管ライニング材1をヘッドカラー80にセットし、鍔3の上に接着剤82を塗布する。
【0065】
このように被覆シート120で被覆されたヘッドカラー80を用いて枝管をライニングする場合も、図8、図9で説明したのと、同様な工程で行われる。ヘッドカラー80を被覆シート120で覆う場合には、図14に示したように、枝管ライニング材の反転用の圧縮エアーで膨張する圧力バッグ43の一部がこの被覆シート120に当たり、ヘッドカラー80のヘッド44と反対側(図14で左側)が圧力バッグ43で支持されるようになる。この状態が、図13(b)にも、仮想線で示した圧力バッグ43により示されている。
【0066】
このように、ヘッドカラー80は、圧力バッグ43と作業用ロボット42のヘッド44により両側で支持されるようになり、ヘッドカラー80を介して鍔3を本管30に押圧しても、作業用ロボット42の姿勢を不安定にさせるような力が作業用ロボット42に作用することが少なくなり、枝管のライニング工事を円滑に進めることができる。
【0067】
なお、被覆シート120はヘッドカラー80の円筒部80bを挟んで作業用ロボット42のヘッド44側とその反対側に渡って設けられているが、ヘッド44側に特に設ける必要はないので、その部分は省略することができる。
【符号の説明】
【0068】
1 枝管ライニング材
2 管状樹脂吸収材
3 鍔
5 引き剥しチューブ
6 引き剥しエンド
30 本管
31 枝管
42 作業ロボット
43 圧力バッグ
70 鍔押圧具
73 内蔵袋
74、74’ 補強カバー
80 ヘッドカラー
81 保護フィルム
82 接着剤
90 ヒーター
100 チューブ
120 被覆シート
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性樹脂を含浸して成る管状樹脂吸収材の一端に鍔が形成されている枝管ライニング材を用いて枝管(取付管)をライニングする枝管ライニング工法、及びこの工法に用いられる枝管ライニング材の鍔押圧具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地中に埋設された下水管等の管路が老朽化した場合、管路を地中から掘出することなく、その内周面にライニングを施して管路を補修する管ライニング工法が知られている。
【0003】
上記管ライニング工法では、外周面が気密性の高いフィルムで被覆された可撓性の管状樹脂吸収材に硬化性樹脂を含浸せしめて成る管ライニング材が流体圧によって管路内に反転させながら挿入される。管ライニング材は、流体圧により管路内周面に押圧された状態で加温され、これに含浸された硬化性樹脂が硬化されて管路の内周面がライニングされる。
【0004】
このような工法は、本管から分岐する枝管に対しても適用することができ、たとえば、特許文献1、2に記載されている。枝管をライニングする場合は、圧力バッグに内装された枝管ライニング材の一端に形成された鍔が本管内に導入された作業用ロボットのヘッドカラー上にセットされ、作業用ロボットの駆動により本管の枝管開口部周縁に密着される。圧縮エアーを圧力バッグ内に供給すれば、枝管ライニング材は圧縮エアーの圧力を受けて反転しながら枝管内に挿入される。反転挿入が枝管の全長に亘って終了すると、枝管ライニング材を枝管の内周面に押圧したまま、加温してこれに含浸された熱硬化性樹脂が硬化され、枝管は、硬化した枝管ライニング材によってその内周面がライニングされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−355115号公報
【特許文献2】特開2008−168468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、枝管ライニング材の鍔は、熱硬化性樹脂で形成される場合は硬化されており、また熱可塑性樹脂で形成される場合は常温では硬いので、いずれにしても柔軟性は失われている。
【0007】
したがって、枝管ライニング材の鍔を作業用ロボットを用いて本管の枝管開口部周縁に密着させようとしても、鍔に柔軟性がないことから、鍔に製造誤差があったり、本管の枝管開口部周縁に凹凸があると、良好な密着状態が得られなくなる。
【0008】
密着状態がよくないままライニングを終了させると、枝管ライニング材の鍔と本管の枝管開口部周縁間には隙間が発生し、その隙間から地下水や地中の土砂が本管内に流れ込み、本管の排水性能を劣化させてしまう、という問題がある。
【0009】
本発明の課題は、枝管ライニング材の鍔を本管の枝管開口部周縁に良好に密着させて枝管をライニングすることが可能な枝管ライニング工法、及び該工法に使用される枝管ライニング材の鍔押圧具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、
硬化性樹脂を含浸した管状樹脂吸収材の一端に鍔が形成される枝管ライニング材を用いて本管と交差する枝管をライニングする枝管ライニング工法であって、
枝管ライニング材の鍔を膨張可能な鍔押圧具上に配置し、
枝管ライニング材の鍔を前記鍔押圧具を介して本管の枝管開口部周縁に押圧させ、
枝管ライニング材を枝管内に挿入して管状樹脂吸収材に含浸されている硬化性樹脂を加熱硬化させ、枝管をライニングすることを特徴とする。
【0011】
また、本発明は
上記枝管ライニング工法に用いられる鍔押圧具であって、
ホースを取り付けてなる内蔵袋と、
前記内蔵袋を被覆する袋状のカバーと、を有し、
ホースを介して流体を内蔵袋内に供給すると、内蔵袋が扁平な袋状に膨張し、その押圧力により枝管ライニング材の鍔が本管の枝管開口部周縁に押し当てられることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の鍔押圧具は、螺旋形に巻き付けられたチューブから構成され、
ホースを介して流体をチューブ内に供給すると、チューブが円形ないし楕円形に膨張し、その押圧力により枝管ライニング材の鍔が本管の枝管開口部周縁に押し当てられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、枝管ライニング材の鍔は、本管の枝管開口部周縁に良好に密着するので、その間に隙間が発生することがない。したがって、枝管ライニング材の鍔と本管の枝管開口部周縁間の隙間から地下水や地中の土砂が本管内に流れ込むことがないので、本管の排水性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の工法に用いられる枝管ライニング材の断面図である。
【図2】鍔押圧具の内蔵袋を作製する過程を説明する説明図である。
【図3】(a)は内蔵袋を被覆する補強カバーの平面図、(b)は鍔押圧具の平面図、(c)は(b)のA−A線に沿う断面図である。
【図4】作業用ロボットに取り付けられるヘッドカラーの斜視図である。
【図5】(a)はヘッドカラー上に鍔押圧具を載置したときのヘッドカラー斜視図、(b)は鍔押圧具に保護カバーを取り付けたときのヘッドカラーの斜視図である。
【図6】(a)はヘッドカラー上に枝管ライニング材をセットしたときのヘッドカラーの斜視図、(b)は枝管ライニング材の鍔に接着剤を塗布したときの斜視図である。
【図7】(a)は鍔押圧具を膨張させる前のヘッドカラーの縦断面図、(b)は鍔押圧具を膨張させたときのヘッドカラーの縦断面図である。
【図8】枝管ライニング材で枝管をライニングする方法を示した説明図である。
【図9】枝管ライニング材で枝管をライニングする方法を示した説明図である。
【図10】鍔押圧具上に配置されるヒーターを示した説明図である。
【図11】チューブを巻き付けて構成される鍔押圧具の構成を説明する説明図である。
【図12】(a)は被覆シートを取り付けたヘッドカラー上に鍔押圧具を載置したときのヘッドカラーの斜視図、(b)は鍔押圧具に保護カバーを取り付けたときのヘッドカラーの斜視図である。
【図13】(a)は被覆シートを取り付けたヘッドカラー上に枝管ライニング材をセットしたときのヘッドカラーの斜視図、(b)は枝管ライニング材の鍔に接着剤を塗布したときの斜視図である。
【図14】被覆シートを取り付けたヘッドカラーを用いて枝管をライニングする方法を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に示す実施例に基づいて本発明を詳細に説明する。
【実施例】
【0016】
図1には、枝管(取付管)をライニングするための枝管ライニング材1が図示されている。枝管ライニング材1は、不織布から成る管状樹脂吸収材2を有し、その一端は外方へ折り返されてフランジ状の鍔3を構成している。管状樹脂吸収材2の鍔3を除く部分には未硬化の液状熱硬化性樹脂が含浸されており、該部分の外周面(反転されると内周面となる)には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、又は塩化ビニール等の気密性の高いプラスチックフィルム4がコーティングされている。
【0017】
管状樹脂吸収材2は、ポリアミド、ポリエステル、ポリプロピレンなどのプラスチック繊維を用いた不織布、織布、あるいはマット;あるいはガラス繊維を用いた織布、あるいはマット;あるいは上記プラスチック繊維とガラス繊維を組み合わせた不織布、織布、あるいはマットからなる。管状樹脂吸収材2に含浸される熱硬化性樹脂は、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、又はエポキシ樹脂などである。
【0018】
管状樹脂吸収材2の一端に形成された鍔3は後述の本管30(図8参照)に等しい曲率で円弧状に湾曲する曲面を構成しており、その外径は後述の枝管31(図8参照)の内径よりも大きく設定されており、これに含浸された硬化性樹脂が硬化することによって鍔3はその形状を保持している。
【0019】
なお、鍔3は熱硬化性樹脂ではなく、塩化ビニールなどの熱可塑性樹脂から構成することもできる。この場合には、鍔3と管状樹脂吸収材2は接着剤などで結合される。
【0020】
又、管状樹脂吸収材2の外側には所定長さの引き剥しチューブ5が通され、引き剥しチューブ5の一端は管状樹脂吸収材2の鍔3の近傍外周に引き剥し可能に接着され、他端は開放していて後述する圧力バッグに気密に取り付けられる。尚、引き剥しチューブ5の材質には前記プラスチックフィルム4と同様のものが選定される。
【0021】
管状樹脂吸収材2の他端には、管状の引き剥しエンド6が引き剥し可能に取り付けられる。この引き剥しエンド6はプラスチックフィルム4と同様な材質で構成され、一端は連結具7によって閉止されている。
【0022】
本実施例では、枝管ライニング材1の鍔3を本管の枝管開口部周縁に密着させるために、内蔵袋73を補強カバー74で被覆した鍔押圧具70が使用される。
【0023】
内蔵袋73は、図2に示したように、中央に円形の開口部71a、側部に突出部71b、71cを有するシート71と、同様に中央に円形の開口部72a、側部に突出部72b、72cを有するシート72を、袋状になるように重ね合わせ、図2の下段に示したように、点線で示した周囲部73dと開口部71a、72aの外周部73eを気密に接着することにより作製される。各シート71、72は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、又は塩化ビニール等の気密性の高いプラスチックでできている。
【0024】
このように構成された内蔵袋73は、シート71、72の開口部71a、72aに対応する開口部73aを有し、この開口部73aは、後述するヘッドカラーの円筒部が挿入できる大きさとなっている。また、シート71、72の突出部71b、72bの先端は接着されていないので、後述する熱媒を取り入れる取入口73bとして用いられ、突出部71c、72cもその先端部が接着されていないので、内蔵袋73内の熱媒を排出する排出口73cとして用いられる。内蔵袋73の熱媒取入口73bと排出口73cには、それぞれ熱媒供給ホース75と熱媒排水ホース76が気密に取り付けられる。
【0025】
内蔵袋73は、図3(a)に示したように、カシミア、シルク、ナイロン、レーヨンなどの繊維あるいはシリコン、ポリエチレン、ポリウレタンなどの延びにくい素材でできた補強カバー74でカバーされる。補強カバー74は、シート71、72の開口部71a、72aに対応する開口部74a、突出部71b、71c、72b、72cに対応する突出部74b、74cを有し、シート71、72と相似の形状ではあるが、全体で少し大きさが小さくなっている。補強カバー74と同様な補強カバー74’(図3(c))が設けられ、内蔵袋73は、両補強カバー74、74’によって挟まれるようにしてその全体が被覆される。被覆後、補強カバー74の周囲74dと開口部74aの外周部74e、並びに補強カバー74’のそれに対応する部分が縫製あるいは接着され、袋状の鍔押圧部70が作製される。
【0026】
補強カバー74、74’は、内蔵袋73のシート71、72より形状が一回り小さくなっているので、内蔵袋73を被覆したとき、図3(c)に示すように、内蔵袋73のシート71、72はしわがよった状態で内蔵される。図3(c)は、図3(b)のA−A線に沿う断面図であるが、正確な断面図ではなく、内蔵袋73がしわがよった状態で内蔵されることを模式的に示したものである。
【0027】
このように構成された鍔押圧具70は、図3(b)に示すように、中央部にヘッドカラーの円筒部が挿入可能な開口部70aと、熱媒供給ホース75と熱媒排水ホース76が取り付けられる突出部70b、70cを有し、熱媒供給ホース75から流体(液体、気体)を供給すると、内蔵袋73が全体として扁平な袋状に膨張し、押圧力を発生する。このとき、内蔵袋73は、補強カバーに押さえつけられて完全に膨張することはないので、破裂したりあるいは過剰な負荷がかかることが防止される。
【0028】
なお、鍔押圧具70の外形は、図示したように、矩形でなくても、円形あるいは三角形であってもよい。
【0029】
図4は、後述する作業用ロボットと圧力バッグに取り付けられて、枝管ライニング材を枝管にセットするための金属性のヘッドカラー(押圧治具)80を示す。ヘッドカラー80は、本管の内周面の曲率に応じた曲率の湾曲部80aを有し、中空の円筒部(カラー)80bが湾曲部80aを通過して下方まで延びている。ヘッドカラー80の円筒部80bの外径は、ヘッドカラー80の円筒部80bを鍔押圧具70の開口部70aに通すことができるように、開口部70aの径より若干小さくなっている。
【0030】
ヘッドカラー80の円筒部80bを鍔押圧具70の開口部70aに通し、図5(a)に示したように、鍔押圧部70をヘッドカラー80上に載置する。鍔押圧具70は特に固定する必要はないが、鍔押圧具70が移動する恐れがある場合は、接着テープを用いて取り外し可能にヘッドカラー80上に取り付ける。
【0031】
後述するように、枝管ライニング材の鍔上には、接着剤が塗布されるので、この接着剤が鍔押圧具70やヘッドカラー80上に流れ落ちるのを防止するために、図5(b)に示したように、ヘッドカラー80よりも大きな保護フィルム81で鍔押圧具80とヘッドカラー80を覆う。保護フィルム81には、中央部に鍔押圧具70の開口部70aとほぼ同径の開口部が設けられているので、その開口部にヘッドカラー80の円筒部80bを通して、保護フィルム81を鍔押圧具70並びにヘッドカラー80上に載置する。そして、保護フィルム81をヘッドカラー80の湾曲部に接着剤などで固定し、保護フィルム81が移動しないようにする。
【0032】
続いて、図1に示した枝管ライニング材1を、鍔3と反対側の管状樹脂吸収材2の部分(連結具7が取り付けられている方)からヘッドカラー80の円筒部80bに挿入し、図6(a)に示したように、鍔3を円筒部80bにかぶせるようにして、鍔3を保護フィルム81上に載せる。枝管ライニング材1の鍔3をヘッドカラー80の円筒部80bにかぶせることができるようにするために、円筒部80bの外径は、鍔3の内径よりも若干小さくしておく。
【0033】
このように、枝管ライニング材1を保護フィルム81並びに鍔押圧具70を介してヘッドカラー80上に載せたら、鍔3の表面に、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、又はエポキシ樹脂などからなる接着剤82を全面に塗布する(図6(b))。
【0034】
ヘッドカラー80に取り付けられた枝管ライニング材1は、図8に示したように、圧力バッグ43内に収納され、ヘッドカラー80は圧力バッグ43の一端に気密に取り付けられる。
【0035】
作業用ロボット42は、そのヘッド44が図8で上下方向a、bに進退し、且つ、矢印cで示すように管軸を中心に回転(ローリング)するように構成されており、ヘッド44には、ヘッドカラー80が取り付けられる。また、この作業用ロボット42の上部にはモニター用のTVカメラ46が設置されている。作業用ロボット42の前後には牽引ロープ47,48が取り付けられており、一方の牽引ロープ47は圧力バッグ43に接続され、他方の牽引ロープ48は地上まで延設されている。牽引ロープ48を引っ張ることにより、圧力バッグ43は、作業ロボット42、牽引ロープ47を介して本管30と交差する枝管31のところに搬送される。
【0036】
圧力バッグ43の開口端はキャップ52によって閉塞されており、枝管ライニング材1の管状樹脂吸収材2に取り付けられた引き剥しチューブ5の他端は圧力バッグ43の内部に気密に取り付けられる。
【0037】
枝管ライニング材1の引き剥しエンド6に取り付けられた連結具7には、キャップ52に取り付けられた牽引ロープ40と温水ホース41が連結される。温水ホース41はキャップ52を貫通して圧力バッグ43外へでて、バルブ53に導かれている。温水ホース41には、不図示の熱源により加熱される温水タンク55から温水ポンプ54により温水(熱媒)が供給される。また、圧力バッグ43内の温水は排水ホース56、バルブ57を介して温水タンク55に戻される。
【0038】
鍔押圧具70に取り付けられた熱媒供給ホース75には、温水タンク55から温水ポンプ54とバルブ66を介して温水が供給される。また、鍔押圧具70内の温水は熱媒排水ホース76とバルブ65を介して温水タンク55に戻される。
【0039】
圧力バッグ43内には、枝管ライニング材1と引き剥しチューブ5で閉塞される密閉空間が形成され、該密閉空間はキャップ52に取り付けられたエアーホース59、バルブ60を介して地上に設置されたコンプレッサー61に接続されるとともに、排気ホース62、バルブ63を介して外気に通じている。
【0040】
以上説明したような構成において、枝管31を枝管ライニング材1を用いてライニングする方法を説明する。
【0041】
牽引ロープ48を引っ張ることにより、ヘッドカラー80の円筒部80bの中心が枝管31の軸心とほぼ一致するところまで(図8)、圧力バッグ43を移動させる。
【0042】
作業用ロボット42のヘッド44を矢印a方向に上動させて鍔押圧具70を介して枝管ライニング材1の鍔3を本管30の枝管開口部周縁に押圧し密着させる。鍔3の製造誤差あるいは枝管開口部周縁に凹凸があると、密着が悪くなる。そこで、本発明では、鍔押圧具70を膨張させて鍔3を枝管開口部周縁に押圧するようにしている。
【0043】
温水タンク55からの温水を鍔押圧具70の熱媒供給ホース75に供給すると、温水は鍔押圧具70の内蔵袋73に供給され、内蔵袋73、したがって鍔押圧具80は、図7(a)に示された状態から図7(b)に示されたように、扁平な袋状に膨張する。収容しきれない温水は、熱媒排水ホース76を介して温水タンク55に戻される。このように温水を循環させることによって、鍔押圧具70には弾力のある押圧力が生じ、鍔3は本管30の枝管開口部周縁30aに確実に密着させることができる。図7(a)、(b)では、鍔押圧具70は、正確な断面図ではなく、膨張する状態を説明するために、様式的に図示されている。
【0044】
なお、鍔押圧具70による押圧力は、鍔押圧具70に供給される温水の供給量をバルブ66を介して調節することにより調節することができる。同様にして、鍔押圧具70から温水タンク55に戻される温水の排出量をバルブ65を介して調節することによっても鍔押圧具70の押圧力を調節することができる。また、温水の供給量と排出量の両方を調節することによっても、鍔押圧具70の押圧力を調節することができる。
【0045】
鍔押圧具70には約60°から90°Cの温水が供給されるので、鍔3が次第に加熱され、鍔3上に塗布されていた接着剤82が硬化し、鍔3は本管30の枝管開口部周縁30aに固着される。鍔3が熱硬化性樹脂からなり、既に硬化している状態でも、熱伝導により鍔3上の接着剤82は良好に加熱される。また、鍔3が熱可塑性樹脂でできている場合には、鍔3が加温により柔軟になり、枝管開口部周縁への密着がより向上するので、鍔3を本管30に確実に密着させた状態で固着させることができる。
【0046】
このように鍔押圧具へ温水を供給することにより鍔が枝管開口部周縁に密着した状態で、コンプレッサー61を駆動してエアーホース59を経て圧縮エアーを圧力バッグ43内の密閉空間に供給すると、枝管ライニング材1は圧縮エアーの圧力を受けて反転しながら枝管31内を上方に向かって順次挿入されていく。
【0047】
図9に示したように、枝管ライニング材1の枝管31内への反転挿入が終了すると、枝管ライニング材1を枝管31の内周面に押し付けた状態にし、温水を温水ホース41の先端から供給して密閉空間内に充満させる。密閉空間内の圧縮エアーは排気ホース62を経て大気中に放出され、一方、枝管ライニング材1の管状樹脂吸収材2に含浸された熱硬化性樹脂が温水で加温され硬化する。
【0048】
上述した例は、鍔押圧具に温水を供給することにより鍔押圧具を膨張させて枝管ライニング材の鍔を本管の枝管開口部周縁に密着させ、その密着した状態で枝管ライニング材を枝管内に挿入し、管状樹脂吸収材に含浸されている硬化性樹脂を加熱硬化させている。しかし、枝管ライニング材を枝管に挿入する前に鍔押圧具を膨張させるのではなく、枝管ライニング材を枝管内に挿入するとき、あるいは挿入中、あるいは挿入が完了して管状樹脂吸収材に含浸されている硬化性樹脂を硬化させるとき、あるいは硬化開始後に、鍔押圧具に温水を供給することにより鍔押圧具を膨張させ、枝管ライニング材の鍔を本管の枝管開口部周縁に固着するようにしてもよい。
【0049】
管状樹脂吸収材2に含浸されている樹脂が硬化すると、排水ホース56を介して密閉空間から温水を抜き、温水タンク55に戻す。鍔押圧具70内の温水も、熱媒排水ホース76を介して温水タンクに戻すようにする。
【0050】
枝管ライニング材1が硬化すると、作業用ロボット42のヘッド44を図示矢印b方向に下動させて鍔押圧具70を枝管ライニング材1の鍔3から引き離した後、牽引ロープ40を図9で左方向に引く。すると、引き剥しチューブ5、引き剥しエンド6、温水ホース41などが同方向に引かれ、枝管ライニング材1から取り除かれる。
【0051】
作業用ロボット42、圧力バッグ43などが本管30内から取り除かれ、枝管31は、その内周面が管状樹脂吸収材2によりライニングされる。
【0052】
なお、鍔押圧具70を膨張させ、鍔3上の接着剤82を加熱するために使用される熱媒は、上記の温水に代え、熱風あるいは加熱された液体とすることができる。このように熱媒として熱風あるいは加熱された液体を使用する場合には、熱風にするための熱源あるいは液体を加熱するための熱源と、熱風、加熱された液体を循環させる循環系を用意する。
【0053】
上述した実施例では、接着剤82を加熱する媒体が、鍔押圧具70を膨張させる流体と同じであったが、これに代え、接着剤82を加熱するのに、図10に示したようなヒーター90を用いることができる。ヒーター90は、ニクロム線など電圧を印加すると発熱する蛇行した発熱線90aから構成され、全体が防水性、絶縁性を有するカバー91で被覆される。カバー91は、鍔押圧具70とほぼ同じ大きさであり、その中央部には、鍔押圧具70の開口部70aと同じ大きさの開口部91aが形成される。ヒーターへの通電は、地上から行うことができる。
【0054】
ヒーター90は、開口部91aにヘッドカラー80の円筒部80bを通すことにより保護フィルム81で保護された鍔押圧具70上に配置され、その上に枝管ライニング材1の鍔3が配置される。この場合、鍔押圧具70には、流体の循環系は不要となるので、一本のホースだけ接続するようにし、コンプレッサー61から圧縮空気を供給するようにする。
【0055】
ヒーター90を用いる場合には、図7においてヒーター90は、保護フィルム81と枝管ライニング材1の鍔3との間に配置されるので、鍔押圧具70を圧縮空気で膨張させ、ヒーター90に通電を行うと、温水を用いた場合と同様に、鍔3は本管30の枝管開口部周縁30aに押圧される。そして、ヒーター90により、鍔3上の接着剤82が加熱され硬化されるので、温水を用いた場合と同様に、鍔3を本管30に確実に密着させた状態で固定することができる。
【0056】
図11は、上述したような袋状の鍔押圧具に代わり、膨張可能なチューブ100をヘッドカラー80の円筒部80bに複数回巻きつけて、鍔押圧具を構成した実施例を示す。円筒部80bに巻き付けられたチューブ100が解けないように、弾力性のあるテープ101で束ねておく。チューブ100の円筒部80bへの取り付け端100aと、他端100bには、それぞれホース(不図示)が気密に取り付けられる。
【0057】
一方のホースを介して温水タンク55から温水を供給すると、チューブ100は円形ないし楕円形に膨張する。チューブ100内の余った温水は、他方のホースを介して温水タンク55に戻される。このように温水を循環させることによって、チューブ100には、弾力のある押圧力が発生する。チューブ100上に枝管ライニング材1の鍔3をセットすれば、鍔押圧具70と同様に、鍔3は本管の枝管開口部周縁に良好に押圧され、鍔3上の接着剤が温水により加熱されることから、鍔3を確実に本管に固着させることができる。
【0058】
また、チューブ100による押圧力は、鍔押圧具70と同様に、チューブ100に供給される温水の供給量をバルブ66を介して調節することにより、あるいはチューブ100から温水タンク55に戻される温水の排出量をバルブ65を介して調節することにより、あるいは温水の供給量と排出量の両方を調節することにより、調節することができる。
【0059】
温水に代え、加熱された液体、あるいは熱風を熱媒として用いることができることは、鍔押圧具70と同様である。
【0060】
なお、先にヘッドカラー80を作業用ロボット上にセットしてから、鍔押圧具70、保護フィルム81、枝管ライニング材1をヘッドカラー80上に載置させるようにしてもよい。また、最初、鍔押圧具70、保護フィルム81をヘッドカラー80上に載置してヘッドカラー80を作業用ロボット上にセットした後、枝管ライニング材1をヘッドカラー80にセットするようにしてもよい。
【0061】
また、上述した実施例では、作業用ロボット42のヘッド44がヘッドカラー80を片側(図8では右側)から上方に持ち上げ、鍔3を本管30に押し当てるので、作業用ロボット42は反作用によりその姿勢が不安定になるという問題がある。
【0062】
そこで、図12(a)に示したように、ヘッドカラー80の下方部を被覆シート120で被覆するようにし、圧縮エアーで膨張する圧力バッグ43がこの被覆シート120に当たりヘッドカラー80の反対側(図8で左側)が圧力バッグ43で支持されるようにする。
【0063】
被覆シート120は布あるいはプラスチックからなる柔軟な被覆材で、ヘッドカラー80の湾曲部80aの下方部でたるみなく張り渡され、その一端120a並びに他端120b(図13(a))が折り返されて接着あるいは縫製により鍔押圧具70に固定される。被覆シート120の中央部で、ヘッドカラー80の円筒部80bに対応する位置には、管ライニング材1が通過できる開口部120cが形成される。また、被覆シート120には、作業用ロボット42のヘッド44の先端が通過できる穴(不図示)も形成される。
【0064】
ヘッドカラー80を被覆シート120で被覆した後、図12(b)で示したように、保護フィルム81でヘッドカラー80を覆う。その後、図6(a)、(b)で示したのと同様に、管ライニング材1をヘッドカラー80にセットし、鍔3の上に接着剤82を塗布する。
【0065】
このように被覆シート120で被覆されたヘッドカラー80を用いて枝管をライニングする場合も、図8、図9で説明したのと、同様な工程で行われる。ヘッドカラー80を被覆シート120で覆う場合には、図14に示したように、枝管ライニング材の反転用の圧縮エアーで膨張する圧力バッグ43の一部がこの被覆シート120に当たり、ヘッドカラー80のヘッド44と反対側(図14で左側)が圧力バッグ43で支持されるようになる。この状態が、図13(b)にも、仮想線で示した圧力バッグ43により示されている。
【0066】
このように、ヘッドカラー80は、圧力バッグ43と作業用ロボット42のヘッド44により両側で支持されるようになり、ヘッドカラー80を介して鍔3を本管30に押圧しても、作業用ロボット42の姿勢を不安定にさせるような力が作業用ロボット42に作用することが少なくなり、枝管のライニング工事を円滑に進めることができる。
【0067】
なお、被覆シート120はヘッドカラー80の円筒部80bを挟んで作業用ロボット42のヘッド44側とその反対側に渡って設けられているが、ヘッド44側に特に設ける必要はないので、その部分は省略することができる。
【符号の説明】
【0068】
1 枝管ライニング材
2 管状樹脂吸収材
3 鍔
5 引き剥しチューブ
6 引き剥しエンド
30 本管
31 枝管
42 作業ロボット
43 圧力バッグ
70 鍔押圧具
73 内蔵袋
74、74’ 補強カバー
80 ヘッドカラー
81 保護フィルム
82 接着剤
90 ヒーター
100 チューブ
120 被覆シート
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性樹脂を含浸した管状樹脂吸収材の一端に鍔が形成される枝管ライニング材を用いて本管と交差する枝管をライニングする枝管ライニング工法であって、
枝管ライニング材の鍔を膨張可能な鍔押圧具上に配置し、
枝管ライニング材の鍔を前記鍔押圧具を介して本管の枝管開口部周縁に押圧させ、
枝管ライニング材を枝管内に挿入して管状樹脂吸収材に含浸されている硬化性樹脂を加熱硬化させ、枝管をライニングすることを特徴とする枝管ライニング工法。
【請求項2】
前記鍔押圧具に流体を供給することにより鍔押圧具を膨張させて枝管ライニング材の鍔を本管の枝管開口部周縁に密着させ、該密着した状態で枝管ライニング材を枝管内に挿入し、管状樹脂吸収材に含浸されている硬化性樹脂を加熱硬化させることを特徴とする請求項1に記載の枝管ライニング工法。
【請求項3】
枝管ライニング材を枝管内に挿入するとき、あるいは挿入後硬化性樹脂を硬化させるとき、あるいは硬化開始後に、前記鍔押圧具に流体を供給することにより鍔押圧具を膨張させ、枝管ライニング材の鍔を本管の枝管開口部周縁に密着させることを特徴とする請求項1に記載の枝管ライニング工法。
【請求項4】
前記鍔押圧具への流体供給量、あるいは鍔押圧具に供給された流体の排出量を調節することにより鍔押圧具の押圧力を調節可能にすることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の枝管ライニング工法。
【請求項5】
前記枝管ライニング材の鍔上には接着剤が塗布されており、該接着剤を介して枝管ライニング材の鍔が本管の枝管開口部周縁に固着されることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の枝管ライニング工法。
【請求項6】
前記接着剤が熱硬化性樹脂から構成され、鍔押圧具に加熱流体を供給することにより接着剤が加熱されて硬化することを特徴とする請求項5に記載の枝管ライニング工法。
【請求項7】
前記流体が、管状樹脂吸収材に含浸されている硬化性樹脂を硬化させるための熱媒であることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の枝管ライニング工法。
【請求項8】
前記熱媒により接着剤が硬化することを特徴とする請求項7に記載の枝管ライニング工法。
【請求項9】
前記流体が鍔押圧具内を循環することを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の枝管ライニング工法。
【請求項10】
前記鍔押圧具が膨張して扁平な袋状になることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の枝管ライニング工法。
【請求項11】
前記鍔押圧具がらせん状に巻かれたチューブからなることを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の枝管ライニング工法。
【請求項12】
前記鍔押圧具上にヒーターが配置され、該ヒーターにより接着剤が加熱されることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の枝管ライニング工法。
【請求項13】
前記枝管ライニング材の鍔が熱硬化性樹脂で形成されることを特徴とする請求項1から12のいずれか1項に記載の枝管ライニング工法。
【請求項14】
前記枝管ライニング材の鍔が熱可塑性樹脂で形成されることを特徴とする請求項1から12のいずれか1項に記載の枝管ライニング工法。
【請求項15】
鍔押圧具がヘッドカラー上に載置され、ヘッドカラーの下方部が被覆シートで覆われることを特徴とする請求項1から14のいずれか1項に記載の枝管ライニング工法。
【請求項16】
硬化性樹脂を含浸した管状樹脂吸収材の一端に鍔が形成される枝管ライニング材により本管と交差する枝管をライニングする枝管ライニング工法に用いられる鍔押圧具であって、
ホースを取り付けてなる内蔵袋と、
前記内蔵袋を被覆する袋状のカバーと、を有し、
ホースを介して流体を内蔵袋内に供給すると、内蔵袋が扁平な袋状に膨張し、その押圧力により枝管ライニング材の鍔が本管の枝管開口部周縁に押し当てられることを特徴とする鍔押圧具。
【請求項17】
前記内蔵袋が、それを被覆するカバーよりも大きいことを特徴とする請求項16に記載の鍔押圧具。
【請求項18】
前記内蔵袋に、内蔵袋に供給された流体を排出するためのホースが取り付けられることを特徴とする請求項16又は17に記載の鍔押圧具。
【請求項19】
前記流体が循環することを特徴とする請求項16から18のいずれか1項に記載の鍔押圧具。
【請求項20】
前記流体が、温水、加熱された液体、あるいは熱風であることを特徴とする請求項16から19のいずれか1項に記載の鍔押圧具。
【請求項21】
前記鍔押圧具上にヒーターが配置されることを特徴とする請求項16から20のいずれか1項に記載の鍔押圧具。
【請求項22】
硬化性樹脂を含浸した管状樹脂吸収材の一端に鍔が形成される枝管ライニング材により本管と交差する枝管をライニングする枝管ライニング工法に用いられる鍔押圧具であって、
前記押圧具は、螺旋形に巻き付けられたチューブから構成され、
ホースを介して流体をチューブ内に供給すると、チューブが円形ないし楕円形に膨張し、その押圧力により枝管ライニング材の鍔が本管の枝管開口部周縁に押し当てられることを特徴とする鍔押圧具。
【請求項23】
前記チューブに、チューブに供給された流体を排出するためのホースが取り付けられることを特徴とする請求項22に記載の鍔押圧具。
【請求項24】
前記流体が循環することを特徴とする請求項22又は23に記載の鍔押圧具。
【請求項25】
前記流体が、温水、加熱された液体、あるいは熱風であることを特徴とする請求項22から24のいずれか1項に記載の鍔押圧具。
【請求項1】
硬化性樹脂を含浸した管状樹脂吸収材の一端に鍔が形成される枝管ライニング材を用いて本管と交差する枝管をライニングする枝管ライニング工法であって、
枝管ライニング材の鍔を膨張可能な鍔押圧具上に配置し、
枝管ライニング材の鍔を前記鍔押圧具を介して本管の枝管開口部周縁に押圧させ、
枝管ライニング材を枝管内に挿入して管状樹脂吸収材に含浸されている硬化性樹脂を加熱硬化させ、枝管をライニングすることを特徴とする枝管ライニング工法。
【請求項2】
前記鍔押圧具に流体を供給することにより鍔押圧具を膨張させて枝管ライニング材の鍔を本管の枝管開口部周縁に密着させ、該密着した状態で枝管ライニング材を枝管内に挿入し、管状樹脂吸収材に含浸されている硬化性樹脂を加熱硬化させることを特徴とする請求項1に記載の枝管ライニング工法。
【請求項3】
枝管ライニング材を枝管内に挿入するとき、あるいは挿入後硬化性樹脂を硬化させるとき、あるいは硬化開始後に、前記鍔押圧具に流体を供給することにより鍔押圧具を膨張させ、枝管ライニング材の鍔を本管の枝管開口部周縁に密着させることを特徴とする請求項1に記載の枝管ライニング工法。
【請求項4】
前記鍔押圧具への流体供給量、あるいは鍔押圧具に供給された流体の排出量を調節することにより鍔押圧具の押圧力を調節可能にすることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の枝管ライニング工法。
【請求項5】
前記枝管ライニング材の鍔上には接着剤が塗布されており、該接着剤を介して枝管ライニング材の鍔が本管の枝管開口部周縁に固着されることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の枝管ライニング工法。
【請求項6】
前記接着剤が熱硬化性樹脂から構成され、鍔押圧具に加熱流体を供給することにより接着剤が加熱されて硬化することを特徴とする請求項5に記載の枝管ライニング工法。
【請求項7】
前記流体が、管状樹脂吸収材に含浸されている硬化性樹脂を硬化させるための熱媒であることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の枝管ライニング工法。
【請求項8】
前記熱媒により接着剤が硬化することを特徴とする請求項7に記載の枝管ライニング工法。
【請求項9】
前記流体が鍔押圧具内を循環することを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の枝管ライニング工法。
【請求項10】
前記鍔押圧具が膨張して扁平な袋状になることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の枝管ライニング工法。
【請求項11】
前記鍔押圧具がらせん状に巻かれたチューブからなることを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の枝管ライニング工法。
【請求項12】
前記鍔押圧具上にヒーターが配置され、該ヒーターにより接着剤が加熱されることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の枝管ライニング工法。
【請求項13】
前記枝管ライニング材の鍔が熱硬化性樹脂で形成されることを特徴とする請求項1から12のいずれか1項に記載の枝管ライニング工法。
【請求項14】
前記枝管ライニング材の鍔が熱可塑性樹脂で形成されることを特徴とする請求項1から12のいずれか1項に記載の枝管ライニング工法。
【請求項15】
鍔押圧具がヘッドカラー上に載置され、ヘッドカラーの下方部が被覆シートで覆われることを特徴とする請求項1から14のいずれか1項に記載の枝管ライニング工法。
【請求項16】
硬化性樹脂を含浸した管状樹脂吸収材の一端に鍔が形成される枝管ライニング材により本管と交差する枝管をライニングする枝管ライニング工法に用いられる鍔押圧具であって、
ホースを取り付けてなる内蔵袋と、
前記内蔵袋を被覆する袋状のカバーと、を有し、
ホースを介して流体を内蔵袋内に供給すると、内蔵袋が扁平な袋状に膨張し、その押圧力により枝管ライニング材の鍔が本管の枝管開口部周縁に押し当てられることを特徴とする鍔押圧具。
【請求項17】
前記内蔵袋が、それを被覆するカバーよりも大きいことを特徴とする請求項16に記載の鍔押圧具。
【請求項18】
前記内蔵袋に、内蔵袋に供給された流体を排出するためのホースが取り付けられることを特徴とする請求項16又は17に記載の鍔押圧具。
【請求項19】
前記流体が循環することを特徴とする請求項16から18のいずれか1項に記載の鍔押圧具。
【請求項20】
前記流体が、温水、加熱された液体、あるいは熱風であることを特徴とする請求項16から19のいずれか1項に記載の鍔押圧具。
【請求項21】
前記鍔押圧具上にヒーターが配置されることを特徴とする請求項16から20のいずれか1項に記載の鍔押圧具。
【請求項22】
硬化性樹脂を含浸した管状樹脂吸収材の一端に鍔が形成される枝管ライニング材により本管と交差する枝管をライニングする枝管ライニング工法に用いられる鍔押圧具であって、
前記押圧具は、螺旋形に巻き付けられたチューブから構成され、
ホースを介して流体をチューブ内に供給すると、チューブが円形ないし楕円形に膨張し、その押圧力により枝管ライニング材の鍔が本管の枝管開口部周縁に押し当てられることを特徴とする鍔押圧具。
【請求項23】
前記チューブに、チューブに供給された流体を排出するためのホースが取り付けられることを特徴とする請求項22に記載の鍔押圧具。
【請求項24】
前記流体が循環することを特徴とする請求項22又は23に記載の鍔押圧具。
【請求項25】
前記流体が、温水、加熱された液体、あるいは熱風であることを特徴とする請求項22から24のいずれか1項に記載の鍔押圧具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−264736(P2010−264736A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−134580(P2009−134580)
【出願日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(592057385)株式会社湘南合成樹脂製作所 (61)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(592057385)株式会社湘南合成樹脂製作所 (61)
【Fターム(参考)】
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