説明

架線レス交通システム及びその充電方法

【課題】軌道系の架線レス式交通システムにおいて、車両の重量を軽減するとともに、車両の構造を簡素化するとともに、駅などでの短時間の停止時間中に急速充電を可能とする。
【解決手段】車両に蓄電装置を搭載し電力を用いて定められた経路を走行させ、該経路に設けられた充電器から車両の蓄電装置に充電する架線レス交通システムの充電方法において、車両1の停止時に地上に設けられた充電器21に接続された給電部24と車両1に設けられた受電部6とを互いに接触させる接触式充電を行い、該充電器及び該充電器の充電制御装置22により商用電力を蓄電装置1にそのまま充電可能な電圧を有する直流電力に変換するとともに、該直流電力を前記電圧を保持したまま電流値を制御しながら該給電部及び受電部を介して該蓄電装置に急速充電するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に蓄電装置を搭載し、地上に設置された充電設備から電力の供給を受けながら軌道上等設定された経路を走行する架線レス交通システム及びその充電方法に関し、充電制御装置を地上に設けたことにより、車両の重量を軽減し、車両の構造を簡素化できるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
近年車両が設定された軌道上を走行する交通システムにおいて、架線から電力の供給を受けずに走行する電気車両を用いた架線レス交通システムが提案されている。架線レス交通システムの電気車両は、蓄電装置を搭載している。
かかる架線レス交通システムは、例えば特許文献1(特開2000−83302号公報)に開示されている。
【0003】
特許文献1に開示された交通システムは、車両に可動の受電部をもち、車両が充電のため駅の給電施設に停止した時に、該可動の受電部が該給電施設に設けられた給電部に接触する。そして車両に設置された制御装置の指令により、蓄電装置への充電が開始される。
蓄電装置の電力蓄積量が所定値になった場合には、該車載制御装置から該受電部に受電停止指令信号が出され、該受電部を該給電部から離すとともに、該受電部と該蓄電装置との間を遮断する。このように該車載制御装置により、受電電力量、充電電圧及び充電時間等が制御される。
【0004】
また特許文献2(特開2006−54958号公報)には、架線レス交通システムにおいて、地上に充電装置が設置された構成が開示されている。該充電装置は、1次コアとこの1次コアに巻装された1次コイルとを備えた充電部と、該1次コイルに高周波電力を供給する充電電源と、車載の通信部から受信した充電情報(蓄電装置の充電状態等)を出力する通信部と、受信した充電情報に基づいて充電電力、充電電圧及び充電時間等を制御する制御部とからなる。
【0005】
充電時、該充電電源から1次コイルに高周波電力が供給され、これにより、1次コアに発生する高周波磁束により車両側に設けられた2次コイルに交流電力(誘導起電力)が発生する。2次コイルに発生した交流電力は車両側に設けられた整流装置によって直流電力に変換され、車載の蓄電装置に充電される。
【0006】
【特許文献1】特開2000−83302号公報
【特許文献2】特開2006−54958号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示された架線レス交通システムは、蓄電装置の電力蓄積量や充電時間等を制御する充電制御装置が車両に設けられている。そのため、車両重量が増加するとともに、充電制御装置を車両の床下に配備した場合に、車両の構造が複雑になる。また車両ごとに充電制御装置が必要になるために、交通システム全体としてみると、設備コストが増大する。また充電器を車載とすると、サイズに制約が有り、そのため充電時間が比較的長くなる。さらに充電制御を車上で行なう必要があり、運転士の負担が増えるという問題がある。
【0008】
また特許文献2に開示された架線レス交通システムは、充電制御装置が地上側に設けられているため、車両重量を軽減できるとともに、充電制御装置の個数を減らすことができ、設備コストを節減できるという利点がある。しかし、この充電システムは、地上側に設けられた1次コイルに高周波電力を供給して2次コイルに交流電力を発生させるものであり、非接触式の充電システムを採用している。従って、地上側に設けられた充電制御装置からは車載の蓄電装置の充電情報を得るために、前述のように車両側および地上側に通信部を設けて、情報交換を行なう必要がある。従って、車両側及び地上側ともに装置構成が複雑かつ高コストになる問題がある。
【0009】
本発明は、かかる従来技術の課題に鑑み、車両に蓄電装置を搭載し電力を用いて予め設定された経路を走行させる架線レス式の交通システムにおいて、車両の重量を軽減するとともに、車両の構造を簡素化し、引いては交通システム全体の設備コストを削減することを目的とする。また該架線レス交通システムにおいて、駅などで短い停止時間中に急速充電が可能な充電方法を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するため、本発明の架線レス交通システムの充電方法は、
車両に蓄電装置を搭載し電力を用いて定められた経路を走行させ、該経路に設けられた充電器から車両の蓄電装置に充電する架線レス交通システムの充電方法において、
車両の停止時に地上に設けられた充電器に接続された給電部と車両に設けられた受電部とを互いに接触させる接触式充電を行い、
該充電器及び該充電器の充電制御装置により商用電力を前記蓄電装置にそのまま充電可能な直流電力に変換するとともに、該直流電力を電流値を制御しながら該給電部及び受電部を介して該蓄電装置に急速充電するようにしたものである。
【0011】
本発明方法においては、車両を停止させた状態で地上に設けられた充電器に接続された給電部と車両に設けられた受電部とを互いに接触させる接触式充電を行う。接触式充電であるため、地上に設けられた充電制御装置から車両に設けられた蓄電装置の充電状態を検知することができる。従って、車両に設けられた蓄電装置の充電状態等の情報を検知するための通信設備を不要とし、設備費を削減することができる。
【0012】
また地上に設けた充電器及び該充電器の充電制御装置により、車両に設けた蓄電装置の充電を制御するため、充電器及び充電制御装置を車両に搭載する必要がない。従って、車両重量を軽減できるとともに、車両の構造を簡素化できる。車両の消費電力を節減でき経済的である。また充電制御装置を車両ごとに設ける必要がないため、その必要数が削減でき、交通システム全体の設備コストを低減できる。
【0013】
また充電制御を地上側で行なうので、運転士の負担が軽減される。即ち、車両は充電位置に停止すると自動的に充電が開始し、充電が完了したらそれを認識し出発するだけである。従って、停車時間を短くできるので、駅などで充電する場合は、従来どおりのダイヤを組むことができるとともに、電車線とパンタグラフ方式との組み合わせからなる従来の充電方式と比較すれば、機械摩耗のみに対処すれば良いので、給電部の摩耗を少なくできる。
また、摺動部の摩耗を少しでも減らしメンテナンスフリー化したい場合には、完全に車両を停止させてから受電部と給電部を接触させれば機械的摩耗も無くすことができる。
【0014】
また本発明方法においては、該充電器及び該充電器の充電制御装置により商用電力を蓄電装置にそのまま充電可能な直流電力に変換するため、車両には充電電力の変換装置を必要としない。従って、車両側の装置構成を簡素化できる。さらに充電可能な電圧を保持したまま電流値を制御しながら蓄電装置に充電するので、該電流値を増大して充電することにより、急速充電が可能となる。
【0015】
また充電器は地上設置のため、サイズに制約はなく、充電器を大きく構成できるので、急速充電が可能になり、そのため充電時間を短くできる。
【0016】
なお本発明方法において、蓄電装置の電圧と充電終了設定充電状態とを比較し、該蓄電装置の充電状態が該充電終了設定充電状態に達したときに充電を終了するようにするとよい。これによって蓄電装置を所望の充電状態に充電することができる。
【0017】
また本発明方法において、連接された複数の車両の蓄電装置を同時に1つの充電装置で充電でき、定電流充電とすることで自動的に残留電力が少ない車両に充電できるので、車両の運行に支障をきたすことなく、かつ複数の車両に対して効率よく充電することができる。また、充電状態を検知し、残留電力が少ない車両を選択して充電するようにしてもよいし、ダイヤ上の出発の早いものから優先して充電していくこともできる。
【0018】
また本発明の架線レス交通システムは、車両に蓄電装置を搭載し電力を用いて定められた経路を走行させ、該経路に設けられた充電器から車両の蓄電装置に充電する架線レス交通システムにおいて、
車両の停止時に前記充電器に接続された給電部と車両に設けられた受電部とが互いに接触又は離隔可能に構成され、
商用電力を前記蓄電装置に充電可能な直流電力に変換するとともに、かつ該蓄電装置が予め設定された充電状態まで充電されると充電を停止させる充電器及び該充電器の充電制御装置を地上に設けたものである。
【0019】
本発明装置の充電器は、車両が地上に設けられた充電設備の近傍に停車した時、該充電器に接続された給電部と車両に設けられた受電部とが接触することにより充電が可能になる接触式の充電器である。接触式充電であるため、地上に設けられた充電制御装置から車両に設けられた蓄電装置の充電状態を検知することができる。従って、蓄電装置の充電状態を検知するための通信設備を不要とし、設備費を削減することができる。また充電制御装置が地上に設けられるため、充電制御装置を車両に搭載する必要がなくなる。これによって車両の重量を軽減し、車両の構成を簡素化できる。
【0020】
また本発明装置を用いて前記本発明方法の実施が可能になるので、本発明方法による前述の作用効果を得ることができる。
【0021】
なお本発明装置において、受電部が車両の屋根に固設された接触子であり、給電部が、該接触子の上方で地上構造物にリンク機構を介して昇降可能に設けられた給電シューと、該給電シューを弾性力を付勢し該接触子に接触する位置まで下降させる手段と、を備えた構成とすることができる。
【0022】
前記構成では、該下降手段によって給電シューを接触子に接触する位置まで下降させておき、充電のため車両が充電位置に進入してくると、自動的に給電シューと接触子が接触し、給電シューを接触子に接触させた状態で充電を行なう。かかる構成によれば、接触子を車両に固設し、地上側に給電シューの可動機構及び押し付け機構を設置するので、車両側に搭載される受電部の構成を簡素化できる。また、受電部・給電部の摩耗を極力無くし、メンテナンスフリー化を図るために、弾性力をもって接触子に接触する位置に移動した給電シューを該接触子から離隔する方向に移動させる手段を備えるようにし、車両が停車してから該移動手段によって給電シューを下降させ、接触子に接触させるようにしてもよい。
【0023】
また本発明装置において、受電部が車両の屋根に固設され、車両進行方向に向けて配置された所定の厚肉を有する板状の接触子であり、給電部が、該接触子の両側に配置され地上構造物にリンク機構を介して該接触子に対して接近又は離隔可能に設けられた一対の給電シューと、該一対の給電シューを互いに接近する方向に弾性力をもって付勢し該一対の給電シュー間に進入した該接触子に該給電シューを押し付ける手段と、を備えたものとすることができる。
【0024】
前記構成では、給電シューと接触子をほぼ同一水準に配置し、車両の走行により一対の給電シュー間に接触子を進入させるようにする。かかる構成とすれば、接触子を車両に固定し、地上側に押し付け機構を設置しているので、車両側に搭載される受電部の構成を簡素化できる。また該接触子の位置が車両進行方向と直角方向にずれても、該接触子を両側の給電シューから押し付ける押し付け圧の合計が常に等しいため、該接触子と該給電シューとの接触状態を常に良好に保持することができる。
【0025】
この場合でも、受電部・給電部の摩耗を極力無くし、メンテナンスフリー化を図るために、弾性力をもって接触子に接触する位置に移動した給電シューを該接触子から離隔する方向に移動させる手段を備えるようにし、車両が停車してから該移動手段によって給電シューを接触子側に接近させ、接触子に接触させるようにしてもよい。
【0026】
また本発明装置において、給電部を複数設けて複数の車両の蓄電装置に同時に充電可能に構成し、蓄電装置が充電終了設定充電状態に達した車両の該受電部を個別に該給電部から離隔させるように構成してもよい。かかる構成では、蓄電装置の充電状態が異なる複数の車両に対しても同時に充電しながら、個々の蓄電装置を設定電圧まで充電できる。
【0027】
前記構成において、複数の給電部を複数の経路に跨って配設すれば、別な経路を走行する複数の車両に同時に充電可能となる。また複数の給電部を単一の経路に沿って配設すれば、同一の経路を走行する連接車両、あるいは連接されていない複数の車両に同時に充電可能となる。あるいは給電部を複数の車両に設けられた複数の受電部に沿って延設し、この延設した給電部で該複数の受電部に同時に接触可能に構成してもよい。かかる構成とすれば、車両の停止位置が多少ずれても、車両の受電部を給電部に確実に接触させることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明の充電方法によれば、車両の停止時に地上に設けられた充電器に接続された給電部と車両に設けられた受電部とを互いに接触させる接触式充電を行い、該充電器及び該充電器の充電制御装置により商用電力を蓄電装置にそのまま充電可能な直流電力に変換するとともに、該直流電力を電流値を制御しながら該給電部及び受電部を介して該蓄電装置に急速充電するようにしたため、車両に搭載する充電制御装置や電力変換装置、あるいは蓄電装置の充電状態を地上から検知する装置等が不要になり、車両重量を軽減できるとともに、車両の構成を簡素化できる。
また車両への急速充電が可能になるため、駅等における短時間の停車時間で十分な充電を行なうことができる。
【0029】
また本発明装置によれば、車両の停止時に充電器に接続された給電部と車両に設けられた受電部とが互いに接触又は離隔可能に構成され、充電用電力を蓄電装置に充電可能な電力に変換するとともに、該蓄電装置が予め設定された充電状態まで充電されると充電を停止させる充電器及び該充電器の充電制御装置を地上に設けたため、車両に搭載する充電制御装置や電力変換装置、あるいは蓄電装置の充電状態を地上の充電設備から検知できる装置等が不要になり、車両重量を軽減できるとともに、車両の構成を簡素化できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明を図に示した実施例を用いて詳細に説明する。但し、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明をそれのみに限定する趣旨ではない。
(実施形態1)
【0031】
本発明の第1実施形態を図1〜図4に基づいて説明する。図1は架線レス交通システムに係る本実施形態の全体概要図であり、図2は、本実施形態の制御系を示すブロック線図、図3は、本実施形態の給電部及び受電部を示す一部拡大立面図、図4は、本実施形態の操作手順を示すフローチャートである。
【0032】
図1において、車両1は下部に車輪3を有する台車2を備えている。また車両1は蓄電池5を搭載し、駅などで停止したとき地上に設置された充電設備20から電力の供給を受け、レール4上を走行する。駅などに設けられる地上充電設備20は、変電所25から供給される商用電力を直流でかつ蓄電池5に供給可能な電圧、例えば400Vの電圧に変換して、電力線26を介して給電部24に供給する充電器21と、充電時間や充電量等を制御する充電制御装置22と、停車した車両1の屋根11の上方に位置する地上構造物23に取り付けられた給電部24とからなる。
【0033】
図2において、車両1には四隅に車輪3が設けられ、また車輪3を駆動する駆動モータ7及び駆動モータ7を制御するコントローラ8が設けられている。また車輪31の屋根には受電部6が設けられ、受電部6は充電時に給電部24と接触して給電部24から直流電力を受電する。受電部6で受電した直流電力は蓄電池5に供給されて蓄積され、一部はインバータ9に送られる。蓄電池5からインバータ9に供給された直流電力は、インバータ9で3相交流電力に変換され、該3相交流電力で駆動モータ7を駆動する。
【0034】
次に図3により給電部24及び受電部6の構成を説明する。図3において、まず給電部24の構成を説明する。車両1の屋根11に固設された接触子43の上方で、地上構造物23に対して絶縁用碍子31を介して支持フレーム32が水平方向に取り付けられている。支持フレーム32の下部には支持板33が取り付けられ、支持板33には押付けバネ34と戻し電動シリンダ35とが取り付けられている。押付けバネ34の一端は支持板33に接続され、押付けバネ34の他端はアーム39の一端に接続されている。アーム39のもう一方の端部は支軸36aに接続されている。
【0035】
戻し電動シリンダ35の一端は支持板33に接続され、他端はアーム39の中間部に接続されている。また支持板33の下部両端には、支軸36aを介して2本のリンクバー36が回動可能に取り付けられている。2本のリンクバー36の先端には良電導性の給電シュー37が水平方向に取り付けられている。
【0036】
一方受電部6は、車両1の屋根11に絶縁用碍子41を介して支持フレーム42が水平方向に取り付けられ、支持フレーム42の上部に良電導性の接触子43が固設されている。かかる構成において、押付けバネ34の縮み方向の弾性力がリンクバー36を介して給電シュー37に働く。これによって給電シュー37に下向きの押付け力aが働き、給電シュー37が接触子43の上面に押し付けられる。
【0037】
なお給電シュー37の両端部は、上方に湾曲されており、接触子43が接近してきたときに、接触子43が給電シュー37の端部に衝突しないようにしている。また支持板33の下端部にストッパ38が取り付けられ、給電シュー37の下降限界を画定している。
【0038】
次に本実施形態の作動手順を図4により説明する。まず運転手の操作により車両1が駅等のように地上充電設備20が設けられた充電場所に停車する(ステップ1)。このとき給電シュー37は押付けバネ34の弾性力により接触子43の高さまで下降しているので、車両1が充電定位置に停車したことにより、給電シュー37と接触子43とが接触し、(1)これを充電制御装置22が負荷インピーダンスの変化を検知することで給電シュー37と接触子43との接触を検知でき、この検知により充電を開始できる。
【0039】
しかし、安全性を高めるために充電の開始条件に、車両1の停車検知を具備することもできる。例えば、(2)地上側に位置センサを配置し車両1の停車を検知したり、もしくは(3)給電シュー37と接触子43の接触状態が例えば5秒程度の一定時間が続くことで停車を検知するようにしてもよい(ステップ2)。このように充電時間を長く取りたいときは(1)を選択し、安全性を高めたいときは(1)及び(2)又は(1)及び(3)を選択する。
【0040】
充電制御装置22では、給電シュー37と接触子43の接触を検知すると電力供給を開始する(ステップ3)。充電に際しては、電流値を制御しながら蓄電池5に充電する。即ち、大電流で充電するようにするので、急速充電が可能になる。
従って、駅等での短時間の停車時間でも十分な充電が可能になる。
【0041】
充電が進み、蓄電池5の電力残量が上昇すると、充電制御装置22では、蓄電池5の充電状態を検知して、充電終了設定充電状態と比較し(ステップ4)、蓄電池5の充電状態が該充電終了設定充電状態に到達すると、そこで電力供給を停止する(ステップ5)。この場合、車両で充電状態をモニタし、充電完了を認識できる(ステップ6)。その後発進準備が完了したら、運転手が車両1を発進させる(ステップ7)。
【0042】
このように本実施形態は、充電器21及び充電制御装置22を地上に設け、地上に設けた充電器21から車載蓄電池5にそのまま充電可能な直流電力を供給するようにしたものである。これにより、従来のように充電制御装置22を車両1に搭載する必要がないため、その分車両1の重量を軽減できる。また受電部6から蓄電池5に電力を供給する経路に変換装置を必要としない。このように本実施形態によれば、車両1の重量を軽減できるとともに、車両に搭載する機器類を減らすことができるので、車両構造を簡素化できる。
【0043】
さらに本実施形態では、給電部24と受電部6とを接触させて充電させる方式であるので、充電制御装置22で蓄電池5の充電状態を検知できる。従って、地上から蓄電池5の充電状態を検知するための通信設備を特に必要しないので、この点でも設備コストを削減できる。
【0044】
また充電器21及び充電制御装置22を地上に設けるようにしたため、従来車両の数だけ必要であった充電器及び充電制御装置の数を大幅に減らすことができ、交通システム全体として設備コストを低減できる。また充電器21は地上設置のため、サイズに制約がなく、そのため充電器を大型にできるので、急速充電が可能になり、充電時間を短縮できる。
【0045】
また充電制御を地上側で行なうので、運転士の負担が軽減される。即ち、車両は停止し、充電が完了したら、出発するだけである。従って、停車時間を短くできるので、駅などで充電する場合は、従来どおりのダイヤを組むことができる。また、メンテナンスを省略したい場合には、完全に車両を停止させてから通電するので、受電部と給電部を接触させれば、電気摩耗のおそれはなく、機械摩耗のみに対処すればよいので、給電部の摩耗を少なくできる。
【0046】
また本実施形態では、予め給電シュー37を接触子43に接触する位置まで降下させた状態にしておくので、給電シュー37を上下させる時間を省略できる。これによって、その分充電時間を多く取ることができる。一方、給電シュー37や接触子43の機械的摩耗を少なくし、メンテナンスを省くことを主眼とする場合は、戻し電動シリンダ35を作動させて給電シュー37を上下させ、車両1の進入又は発進時に給電シュー37を上方に退避させておくようにしてもよい。
(実施形態2)
【0047】
次に本発明の第2実施形態を図5及び図6に基づいて説明する。図5は本実施形態の給電部及び受電部を示す平面図、図6は図5中のA−A線に沿う立面視説明図である。図5及び図6において、車両1の屋根11に固設された受電部60は、車両1の屋根11に絶縁用碍子61を介して支持フレーム62が水平方向に設けられ、該支持フレーム62に板状の接触子63が車両進行方向bに向けて立設されている。
【0048】
一方給電部50は、接触子63の両側に位置した地上構造物51に絶縁用碍子52を介して支持フレーム53が車両進行方向bに配設されている。支持フレーム53の外面には支軸54を介して2本のリンクバー55が回動可能に取り付けられている。そしてリンクバー55の他端には支軸56を介して長尺板状の給電シュー57がリンクバー36に対して回動可能に取り付けられている。また一端がリンクバー55に他端が支持フレーム53に接続された押付けバネ58が設けられている。給電シュー57には、給電シュー57が互いに接近する方向(矢印c矢印)に働く押付けバネ58の弾性力が付与されている。また給電シュー57の両端は互いに離れる方向に湾曲されて接触子63が給電シュー57の間に進入しやすくなっている。
【0049】
かかる構成の第2実施形態において、車両1が走行方向(矢印b方向)に進み、接触子63が一対の給電シュー57間に進入する。接触子63が給電シュー57間に進入したところで、充電のため車両1が停止する。なお通状給電シュー57間の間隔は、接触子63の板厚以下になるように設定されている。従って、給電シュー57と接触子63とは、押付けバネ58の弾性力で互いに押圧されている。この状態で車両1への充電が開始される。
【0050】
本実施形態によれば、実施形態1の場合と同様に、接触子63で構成される受電部60は車両制御装置10に固定されており、給電部50が可動機構及び接触子63に対する押付け機構を具備しているため、車両1に搭載される受電部60の構成を簡素化できる。さらに、接触子63の位置が車両進行方向bと直角方向に多少ずれたとしても、接触子63に対する左右の給電シュー57による押付け圧の合計は常に等しい。従って、接触子63が車両進行方向bと直角方向にずれたとしても、給電シュー57と接触子63との接触状態を常に良好に保持できるので、充電操作に支障をきたさず、かつ充電効率を劣化させることなく、充電操作を容易に行なうことができる。
【0051】
なお、充電しないときは、図5に示すように、給電シュー57を地上構造物51側に戻す戻し電動シリンダ59を設けて、これにより給電シュー57を接触子63から離しておくようにすることができる。あるいは、車両1の進入時に戻し電動シリンダ59を操作して給電シュー57を接触子63から離した位置におき、接触子63が給電シュー57の間に進入したら、給電シュー57を接触子63に接触させ、受電後再び戻し電動シリンダ59を操作して給電シュー57を接触子63から離した後、車両1を発進させるようにしてもよい。この場合、第2実施形態と比べて、給電シュー57を操作する分だけ余分な時間を要するが、給電シュー57や接触子63の機械的摩耗を低減し、メンテナンスを軽減できる。
(実施形態3)
【0052】
次に本発明の第3実施形態を図7に基づいて説明する。図7は架線レス交通システムに係る本実施形態の全体概要図である。図7において、地上構造物23にはレール4に沿って3個の給電部24a〜cが設けられている。本実施形態によれば、地上に設けられた1組の充電設備20で、複数の車両1a〜cに同時に充電することができる。
【0053】
なお本実施形態において、連接された複数の車両の蓄電装置に1つの電源で同時に充電可能に構成し、定電流の充電で残留電力が少ない車両を自動的に優先して充電することができる。また、充電状態を検知し、残留電力が少ない車両を選択して充電するようにしてもよい。
【0054】
また蓄電装置が充電終了設定電圧に達した車両の該受電部を個別に該給電部から離隔させるように構成してもよい。かかる構成では、蓄電装置の充電状態が異なる複数の車両に対しても同時に充電しながら、個々の蓄電装置を設定充電状態まで充電できる。
【0055】
また、複数の給電部を複数の経路に跨って配設すれば、別な経路を走行する複数の車両に同時に充電可能となる。あるいは給電部を複数の車両に設けられた複数の受電部に沿って延設し、1個の給電部で該複数の受電部に同時に接触可能に構成してもよい。かかる構成とすれば、車両の停止位置が多少ずれても、車両の受電部を該給電部に確実に接触させることができる。
(実施形態4)
【0056】
次に本発明の第4実施形態を図8に基づいて説明する。本実施形態は、車両がゴムタイヤを備え、比較的短距離の軌道上をゴムタイヤで走行する新交通システムに本発明を適用した例である。図8は、本実施形態を車両走行方向から視た側面図である。図8において、車両1は走行車輪としてゴムタイヤ79を具備し、定められた軌道72上を走行する。台車2に蓄電池5等の電力による走行を可能にする設備を備えている。また台車2の側面に受電部を構成するパンタグラフ71が設けられている。
【0057】
一方、地上に設けられた地上充電設備80には、制御機能付き充電器81が設けられている。制御機能付き充電器81は、図1の充電器21と充電制御装置22とを併せ持つ機能を有する。軌道72に隣接して給電部82が設けられ、給電部82は、軌道72に隣接して立設された支持フレーム83と、支持フレーム83に固設され充電のため車両1が停止したときパンタグラフ71に対向する位置に取り付けられた給電シュー84とからなる。充電器81と給電シュー84とは地中に埋設された電力線85で接続されている。
【0058】
軌道72には軌道72に沿って信号線73が敷設され、信号線73によって車両1と地上の指令所とで情報交換を行なう。また軌道72の中央には軌道72に沿って凹溝75が設けられ、台車2から下方に突設されたガイド輪74が凹溝75内に挿入された状態で車両1が走行する。車両1は自動操舵機構で走行するが、該自動操舵機構に異常が発生したとき、ガイド輪74が凹溝75内を移動することによって車両1の走行を制御するフェイルセイフ機能を有する。
【0059】
あるいは該フェイルセイフ機構の代わりに、軌道側に設けられたガイドレールと車両側に設けられ該ガイドレールに挿入されるガイド輪とからなる機械式のガイド機構を設けてもよい。該機械式ガイド機構は、ガイドレールを軌道中央に設けた場合でもよく、あるいはガイドレールを軌道72に隣接した位置に軌道72に沿って配置してもよい。
【0060】
かかる構成において、車両1が充電のため停止し、パンタグラフ71が給電シュー84に対向して位置したとき、パンタグラフ71は伸縮可能であるため、給電シュー84に向かって突出し、給電シュー84に押し付けられる。この状態で充電器81から電力線85を介して電力が給電シュー84に供給されることにより、車両1に搭載された蓄電池5に充電が開始される。
【0061】
このように本実施形態では、車両1の台車2の側面に設けられたパンタグラフ71から充電することができる。そのためパンタグラフ71の構造を簡素化できる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明によれば、車両が定められた経路を走行する架線レス交通システムにおいて、車両重量を軽減し、車両構造を簡素化できる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の第1実施形態の全体概要図である。
【図2】前記第1実施形態の制御系を示すブロック線図である。
【図3】前記第1実施形態の給電部及び受電部を示す一部拡大立面図である。
【図4】前記第1実施形態の操作手順を示すフローチャートである。
【図5】本発明の第2実施形態の給電部及び受電部を示す平面図である。
【図6】図5中のA−A線に沿う立面視説明図である。
【図7】本発明の第3実施形態の全体概要図である。
【図8】本発明の第4実施形態を車両走行方向から視た側面図である。
【符号の説明】
【0064】
1 車両
4 レール(経路)
5 蓄電池
6、60 受電部
9 インバータ
11 屋根
20、80 地上充電設備
21、81 充電器
22 充電制御装置
23、51 地上構造物
24、50、82 給電部
34、58 押付けバネ(押付け手段)
35、59 戻し電動シリンダ
36、57 リンクバー(リンク機構)
37、57、84 給電シュー
43、63 接触子
71 パンタグラフ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に蓄電装置を搭載し電力を用いて定められた経路を走行させ、該経路に設けられた充電器から車両の蓄電装置に充電する架線レス交通システムの充電方法において、
車両の停止時に地上に設けられた充電器に接続された給電部と車両に設けられた受電部とを互いに接触させる接触式充電を行い、
該充電器及び該充電器の充電制御装置により商用電力を前記蓄電装置にそのまま充電可能な直流電力に変換するとともに、該直流電力を電流値を制御しながら該給電部及び受電部を介して該蓄電装置に急速充電するようにしたことを特徴とする架線レス交通システムの充電方法。
【請求項2】
前記蓄電装置の充電状態と充電終了設定充電状態とを比較し、該蓄電装置の充電状態が該充電終了設定充電状態に達したときに充電を終了することを特徴とする請求項1に記載の架線レス交通システムの充電方法。
【請求項3】
複数の車両の蓄電装置に1つの電源で同時に充電可能に構成し、定電流の充電で残留電力が少ない車両に優先して充電するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の架線レス交通システムの充電方法。
【請求項4】
複数の車両の蓄電装置の充電状態を充電制御装置で検知し、残留電力が少ない車両を選択して充電するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の架線レス交通システムの充電方法。
【請求項5】
車両に蓄電装置を搭載し電力を用いて定められた経路を走行させ、該経路に設けられた充電器から車両の蓄電装置に充電する架線レス交通システムにおいて、
車両の停止時に前記充電器に接続された給電部と車両に設けられた受電部とが互いに接触又は離隔可能に構成され、
商用電力を前記蓄電装置に充電可能な直流電力に変換するとともに、該蓄電装置が予め設定された充電状態まで充電されると充電を停止させる充電器及び該充電器の充電制御装置を地上に設けたことを特徴とする架線レス交通システム。
【請求項6】
前記受電部が車両の屋根に固設された接触子であり、前記給電部が、該接触子の上方で地上構造物にリンク機構を介して昇降可能に設けられた給電シューと、該給電シューを弾性力を付勢し該接触子に接触する位置まで下降させる手段と、該接触子に接触する位置まで下降した該給電シューを上昇させる手段と、を備えたことを特徴とする請求項5に記載の架線レス交通システム。
【請求項7】
前記受電部が車両の屋根に固設され、車両進行方向に向けて配置された所定の厚肉を有する板状の接触子であり、
前記給電部が、該接触子の両側に配置され地上構造物にリンク機構を介して該接触子に対して接近又は離隔可能に設けられた一対の給電シューと、該一対の給電シューを互いに接近する方向に弾性力をもって付勢し該一対の給電シュー間に進入した該接触子に該給電シューを押し付ける手段と、を備えたことを特徴とする請求項5に記載の架線レス交通システム。
【請求項8】
前記弾性力をもって前記接触子に接触する位置に移動した前記給電シューを該接触子から離隔する方向に移動させる手段を備えたことを特徴とする請求項6又は7に記載の架線レス交通システム。
【請求項9】
前記給電部を複数設けて複数の車両の蓄電装置に同時に充電可能に構成し、蓄電装置が充電終了設定充電状態に達した車両の該受電部を個別に該給電部から離隔させるように構成したことを特徴とする請求項5に記載の架線レス交通システム。
【請求項10】
複数の前記給電部が複数の経路に跨って配設され、別な経路を走行する複数の車両に同時に充電可能にしたことを特徴とする請求項9に記載の架線レス交通システム。
【請求項11】
複数の前記給電部が単一の経路に沿って配設され、連接車両の各車両に同時に充電可能に構成したことを特徴とする請求項9に記載の架線レス交通システム。
【請求項12】
前記給電部を複数の車両に設けられた複数の受電部に沿って延設し、該延設した給電部で該複数の受電部を同時に接触可能に構成したことを特徴とする請求項5に記載の架線レス交通システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−211939(P2008−211939A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−48148(P2007−48148)
【出願日】平成19年2月27日(2007.2.27)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】