説明

柔軟性スパンレース不織布

【課題】地合いが良好であり柔軟性を有し、衛生材料や家庭用品などに適応することができる柔軟性不織布を提供すること。
【解決手段】繊度が0.05〜6dtex、繊維長が2〜20mmであるポリトリメチレンテレフタレート短繊維を50重量%以上含み、湿式抄造法で得られた湿式不織布に高圧水流処理が施されてなるスパンレース不織布であって、目付が30〜300g/m、かつ剛軟度が2〜6cmである柔軟性スパンレース不織布。
ド不織布。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柔軟性スパンレース不織布に関し、さらに詳しくは、衛生材料・医療材料や家庭用品などに適応することができる、地合いが良好な柔軟性スパンレース不織布に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、衛生材料や医療材料、家庭用品などに適応できる柔軟な不織布としては、乾式スパンレース法がある。これは、コットンやレーヨンといった天然系素材やポリエステル、ナイロンといった汎用合成繊維をカード法によりウェブを形成した後に高圧水流で繊維どうしを絡合させたものである。しかしながら、カード法によるウェブ形成の問題点である地合い不良が高圧水流後も残り、均一性に欠けたり、繊維長が長いことによる剛性が高いといった問題を抱えている。
一方、特許文献1(特許第2871864号公報)には、繊維径が1〜5μmであり、特定のアスペクト比(繊径と繊維長の比)を有する繊維を湿式抄紙法によりシート化した後、水流で絡合した不織布が提案されており、このものは、は地合いは良好であるものの、柔軟性に欠けたり、不織布の強度が弱いといった問題を有していた。
【特許文献1】特許第2871864号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、従来技術が有していた問題点を解消し、地合いが良好であり柔軟性を有し、衛生材料や家庭用品などに適応することができる柔軟性不織布を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、繊度が0.05〜6dtex、繊維長が2〜20mmであるポリトリメチレンテレフタレート短繊維を50重量%以上含み、湿式抄造法で得られた湿式不織布に高圧水流処理が施されてなるスパンレース不織布であって、目付が30〜300g/m、かつ剛軟度が2〜6cmであることを特徴とする柔軟性スパンレース不織布(以下、単に「不織布」ともいう)に関する。
本発明の不織布は、他繊維としてバインダー繊維を3〜15重量%含み、バインダー繊維どうしおよび/またはバインダー繊維と上記ポリトリメチレンテレフタレート短繊維とが接着された後に高圧水流処理が施されてものであってもよい。
上記バインダー繊維としては、ポリビニルアルコール系繊維が挙げられる。
本発明の不織布は、上記の湿式不織布を2層以上積層して高圧水流処理が施されたものであってもよい。
この場合、各層の原綿組成は互いに異なってもよい。
【発明の効果】
【0005】
本発明の不織布は、地合いが良好であり、柔軟性を有し、衛生材料や家庭用品などに適応することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明について詳しく説明する。
本発明で使用するポリトリメチレンテレフタレート短繊維とは、トリメチレンテレフタレート単位を主たる繰り返し単位とするポリエステル繊維からなる短繊維をいい、トリメチレンテレフタレート単位が約50%以上、好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上、特に好ましくは90モル%以上のものをいう。従って、第3成分としての他の酸成分および/またはグリコール成分の合計量が約50モル%以下、好ましくは30モル%以下、さらに好ましくは20モル%以下、特に好ましくは10モル%以下の範囲で含有されたポリトリメチレンテレフタレートを含有する。
【0007】
ポリトリメチレンテレフタレートは、テレフタール酸またはその機能的誘導体とトリメチレングリコールまたはその機能的誘導体とを、触媒の存在下で適当な反応条件下に縮合させることにより製造される。この製造過程において、適当な一種または二種以上の第3成分を添加して共重合ポリエステルとしても良いし、またポリエチレンテレフタレートなどのポリトリメチレンテレフタレート以外のポリエステル、ナイロンなどとポリトリメチレンテレフタレートを別個に製造した後、ブレンドしたり、複合紡糸(鞘芯、サイドバイサイドなど)しても良い。
【0008】
添加する第3成分としては、脂肪族ジカルボン酸(シュウ酸、アジピン酸)、脂環族ジカルボン酸(シクロヘキサンジカルボン酸など)、芳香族ジカルボン酸(イソフタル酸、ソジウムスルホイソフタル酸)、脂肪族グリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、テトラメチレングリコールなど)、脂環族グリコール(シクロヘキサングリコールなど)、芳香族ジオキシ化合物(ハイドロキノンビスフェノールAなど)、芳香族を含む脂肪族グリコ−ル(1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンなど)、脂肪族オキシカルボン酸(p−オキシ安息香酸など)などが挙げられる。また、1個または3個以上のエステル形成性官能基を有する化合物(安息香酸などまたはグリセリンなど)も重合体が実質的に線状である範囲で使用できる。
【0009】
さらに、ポリトリメチレンテレフタレートには、二酸化チタンなどの艶消し剤、リン酸などの安定剤、ヒドロキシベンゾフェノン誘導体などの紫外線吸収剤、タルクなどの結晶化核剤、アエロジルなどの易滑剤、ヒンダードフェノール誘導体の抗酸化剤、難燃剤、制電剤、顔料、蛍光増白剤、赤外線吸収剤、消泡剤などを含有させても良い。
【0010】
本発明に用いられるポリトリメチレンテレフタレート短繊維の繊度は、0.05〜6dtexである。0.05dtex未満では、風合いは柔らかくなるものの、抄紙工程における水流の影響を受けやすく、地合い悪化の原因となるため好ましくない。一方、6dtexを超えると、風合いが硬くなったり、不織布に占める繊維の構成本数が少なくなり、好ましくない。好ましくは、0.6〜3.3dtexである。
【0011】
また、上記ポリトリメチレンテレフタレート短繊維の繊維長は、2〜20mmであり、好ましくは3〜10mmである。2mm未満では、不織布としての強度が得られにくいため好ましくない。一方、20mmを超えると、抄紙法による繊維分散が極めて悪くなり、地合い悪化の原因となるため好ましくない。
【0012】
本発明に用いられるポリトリメチレンテレフタレート短繊維の捲縮については、ストレート繊維、捲縮を付与した繊維のどちらでも良い。通常、ストレート繊維は抄紙法の工程安定性、捲縮繊維は嵩性向上のために各々用いられている。
【0013】
本発明の不織布において、上記ポリトリメチレンテレフタレート短繊維の比率は重量比率で50%以上である。50重量%未満では、ポリトリメチレンテレフタレート短繊維の有する特徴を発揮することが不十分となり、本発明である柔軟性に優れた不織布を得ることができないため好ましくない。
【0014】
本発明の不織布を構成する他の繊維としては、特に限定される事はなく、天然パルプ、合成パルプ、レーヨン、ナイロン、ポリエステル、ビニロンなどの湿式不織布に使用されている素材を適応することができる。
【0015】
本発明の不織布は、上記のポリトリメチレンテレフタレート短繊維を湿式不織布(抄紙)となした後、これに高圧水流処理を施したものであることが大切である。乾式不織布製造法による場合では、地合の均一な不織布、特に目付の小さい不織布は得られないので好ましくない。また、高圧水流が施されていない場合には、得られる不織布の破断強伸度が低下し、一方高圧水流処理でなく、例えばニードルパンチのような交絡処理では、繊維の交絡性が低下して本発明の目的とする柔軟性不織布は得られない。
【0016】
湿式抄紙する方法としては、従来公知の方法をそのまま採用すればよく、例えば短繊維を離解機を用いて水中に均一に分散させ、得られたスラリーを常法に従って抄紙となせばよい。
また、高圧水流処理を施す方法としては、例えば、前述で得られた湿式不織布(抄紙)を、未乾燥の水分を含んだ状態で100メッシュ以下のネットに移送し、ノズル径0.2mmのノズルから10〜40kg/cm2 、好ましくは15〜25kg/cm2 の高圧水流を一方の面から噴射処理し、同時に他方の面から吸引(真空吸引)することにより水を脱水し、次いで、ノズル径0.1mmのノズルから30〜100kg/cm2 、好ましくは40〜60kg/cm2 の高圧水流を前記の面と同一の面から噴射処理、好ましくは複数回噴射処理し、同時に他方の面から吸引(真空吸引)することにより水を脱水し、引き続いて、この一連の操作を他方の面からも行う方法を採用すればよい。
【0017】
高圧水流処理した不織布は、さらに吸引脱水後絞りローラーを通過させ、引き続いてドラム型乾燥機や熱風式乾燥機にて乾燥すればよい。
【0018】
なお、上記抄紙工程と高圧水流工程とは、連続で行っても非連続で行ってもよいが、不織布の生産性を考慮した場合、非連続で行うことが望ましい。この場合には、抄紙工程で得られる不織布を一旦乾燥させて巻き取る必要がある。
この場合には、不織布の取扱い性を向上させるため、芯鞘型複合繊維や熱水可溶性のバインダー繊維、特にポリビニルアルコール系バインダー繊維を少量、例えば3〜15重量%、好ましくは3〜5重量%(不織布を基準とする)の範囲で併用しておくことが好ましい。このようなバインダー繊維は、不織布の製造が完了した時点で、80〜90度の熱水で処理して溶解除去することにより、柔軟性の良好な不織布となすことができる。なお、かかるバインダー繊維の繊度および繊維長は、前記オリゴマーとトリメチレンテレフタレート短繊維と同程度であることが、地合の均一な湿式不織布を得るうえで好ましい。
【0019】
本発明においては、上述の様にして得た柔軟性不織布は、さらに目付が30〜300g/m2 、好ましくは50〜200g/m2 、かつ剛軟度が2〜6cm、好ましくは2.5〜4cmの性能を有していることが必要である。目付が30g/m未満では、高圧水流を施すときに、繊維脱落があるため好ましく、一方、300g/mを超えると、得られた不織布の剛性が高くなる傾向にあるため好ましくない。また、剛軟度が2cm未満では、シートとして腰がなさ過ぎるため好ましくなく、一方、6cmを超えると、剛性が高くなる傾向にあるため好ましくない。
なお、本発明の不織布において、剛軟度を本発明の範囲内にするには、繊維構成や高圧水流処理の条件によって調整が可能である。
【0020】
なお、上記熱処理の方法は、抄紙工程で通常使用されるような、ヤンキードライヤー、多段ドライヤー、ハイカレンダー(ローラー素材:メタル/メタル)、セミカレンダー(ローラー素材:金属/ペーパー、金属/弾性ゴム)を使用することができる。
また、本発明の不織布は、単層でも多層でも特に限定されないが、加工の安定性を考慮し、2〜5層構造であることが好ましい。
【実施例】
【0021】
以下、本発明をさらに下記実施例により具体的に説明するが、本発明の範囲はこれら実施例により何等限定を受けるものではない。なお、実施例中に記載した物性は以下の方法により測定した。
引張り強度(裂断長):
JIS P8113(紙および板紙の引張強さ試験方法)に基づいて実施した。
伸度:
JIS P8113(紙および板紙の引張強さ試験方法)における破断点までの伸びを伸度とした。
剛軟度:
JIS L1096(一般織物試験方法)に基づき実施した。
【0022】
実施例1
ポリトリメチレンテレフタレート短繊維(繊度1.1dtex、繊維長5mm、捲縮ナシ)を水中にて攪拌し、TAPPI(熊谷理機工業製角型シートマシン、以下同じ)により50g/mを抄紙しウェブを得た。
この不織布を150メッシュのネットに載せ、ノズル径0.1mmのノズルより水圧20kg/cmにて処理し、続いて40kg/cmで処理を行った。得られた処理シートを反転させ、他方から40kg/cmで処理し繊維を絡合させ、エアースルードライヤーを用いて120℃で乾燥し柔軟性不織布を得た。得られた物性を表1に示す。
【0023】
実施例2
ポリトリメチレンテレフタレート短繊維(繊度1.1dtex、繊維長5mm、捲縮ナシ)、ポリビニルアルコール系バインダー繊維(繊度1.1dtex、繊維長3mm、捲縮ナシ、クラレ社製VPB103)を95/5の重量比率で計り取り水中にて攪拌し、TAPPIにより50g/mを抄紙しウェブを得た。この不織布をロータリードライヤー100℃で処理し不織布を得た。
この不織布を150メッシュのネットに載せ、ノズル径0.1mmのノズルより水圧20kg/cmにて処理し、続いて40kg/cmで処理を行った。得られた処理シートを反転させ、他方から40kg/cmで処理し繊維を絡合させるとともにポリビニルアルコールバインダーを溶解させた。その後、エアースルードライヤーを用いて120℃で乾燥し柔軟性不織布を得た。得られた物性を表1に示す。
【0024】
実施例3
ポリトリメチレンテレフタレート短繊維(繊度1.1dtex、繊維長5mm、捲縮ナシ)とポリエチレンテレフタレート短繊維(1.1dtex、繊維長5mm、捲縮ナシ)を60/40の重量比率で計り取り水中にて攪拌し、TAPPIにより50g/mを抄紙しウェブを得た。
この不織布を150メッシュのネットに載せ、ノズル径0.1mmのノズルより水圧20kg/cmにて処理し、続いて40kg/cmで処理を行った。得られた処理シートを反転させ、他方から40kg/cmで処理し繊維を絡合させ、エアースルードライヤーを用いて120℃で乾燥し柔軟性不織布を得た。得られた物性を表1に示す。
【0025】
実施例4
ポリトリメチレンテレフタレート短繊維(繊度1.1dtex、繊維長5mm、捲縮ナシ)、ポリビニルアルコール系バインダー繊維(繊度1.1dtex、繊維長3mm、捲縮ナシ、クラレ社製VPB103)を95/5の重量比率で計り取り水中にて攪拌し、TAPPIにより50g/mを抄紙しウェブを得た。この不織布をロータリードライヤー100℃で処理し不織布を得た。同様の方法において、繊維構成のみポリトリメチレンテレフタレート短繊維(繊度0.6dtex、繊維長5mm、捲縮ナシ)、ポリビニルアルコール系バインダー繊維(繊度1.1dtex、繊維長3mm、捲縮ナシ、クラレ社製VPB103)に変更し50g/mの不織布を得た。
両者を積層した不織布を150メッシュのネットに載せ、ノズル径0.1mmのノズルより水圧20kg/cmにて処理し、続いて40kg/cmで処理を行った。得られた処理シートを反転させ、他方から40kg/cmで処理し繊維を絡合させるとともにポリビニルアルコールバインダーを溶解させた。その後、エアースルードライヤーを用いて120℃で乾燥し柔軟性不織布を得た。得られた物性を表1に示す。
【0026】
比較例1
ポリエチレンテレフタレート短繊維(繊度1.1dtex、繊維長5mm、捲縮ナシ)を水中にて攪拌し、TAPPIにより50g/mを抄紙しウェブを得た。この不織布を150メッシュのネットに載せ、ノズル径0.1mmのノズルより水圧20kg/cmにて処理し、続いて40kg/cmで処理を行った。得られた処理シートを反転させ、他方から40kg/cmで処理し繊維を絡合させ、エアースルードライヤーを用いて120℃で乾燥し不織布を得た。得られた物性を表1に示す。
【0027】
比較例2
ポリトリメチレンテレフタレート短繊維(繊度1.1dtex、繊維長5mm、捲縮ナシ)とポリエチレンテレフタレート短繊維(1.1dtex、繊維長5mm、捲縮ナシ)を40/60の重量比率で計り取り水中にて攪拌し、TAPPIにより50g/mを抄紙しウェブを得た。
この不織布を150メッシュのネットに載せ、ノズル径0.1mmのノズルより水圧20kg/cmにて処理し、続いて40kg/cmで処理を行った。得られた処理シートを反転させ、他方から40kg/cmで処理し繊維を絡合させ、エアースルードライヤーを用いて120℃で乾燥し不織布を得た。得られた物性を表1に示す。
【0028】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の不織布は、地合いが良好であり、柔軟性を有するので、おむつや生理用品などの衛生材料やワイピングなどの家庭用品のほか、合成皮革用基布や液体・気体フィルターなどに有用である。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊度が0.05〜6dtex、繊維長が2〜20mmであるポリトリメチレンテレフタレート短繊維を50重量%以上含み、湿式抄造法で得られた湿式不織布に高圧水流処理が施されてなるスパンレース不織布であって、目付が30〜300g/m、かつ剛軟度が2〜6cmであることを特徴とする柔軟性スパンレース不織布。
【請求項2】
他繊維としてバインダー繊維を3〜15重量%含み、バインダー繊維どうしおよび/またはバインダー繊維と上記ポリトリメチレンテレフタレート短繊維とが接着された後に高圧水流処理が施されてなる、請求項1に記載の柔軟性スパンレース不織布。
【請求項3】
バインダー繊維がポリビニルアルコール系繊維である、請求項1または請求項2に記載の柔軟性スパンレース不織布。
【請求項4】
湿式不織布を2層以上積層して高圧水流処理が施されてなる、請求項1〜3のいずれかに記載の柔軟性スパンレース不織布。
【請求項5】
各層の原綿組成が互いに異なる、請求項4に記載の柔軟性スパンレース不織布。

【公開番号】特開2006−241644(P2006−241644A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−61074(P2005−61074)
【出願日】平成17年3月4日(2005.3.4)
【出願人】(302071162)ソロテックス株式会社 (45)
【Fターム(参考)】