説明

柱の固定構造

【課題】 固定金物による柱の固定構造において、断熱材の施工作業を簡単に行え、また断熱材の余分な張り出し等がなく、体裁のよい柱固定部を得ることが可能で、熱橋対策を容易に行えるようにする。
【解決手段】 壁厚と等しい太さを有する角材からなる柱30を基礎11に固定する構造であって、柱の下端部に壁厚よりも薄い小形部31を形成し、この小形部を、該小形部と等しい厚さの固定金物20で基礎に固定するとともに、壁と小形部とで形成される凹部32,33に断熱材50,51を装填する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば木質プレファブ建築における柱の固定構造に関し、特に3階建て住宅の場合の1階部分におけるコーナー柱や中間柱等といった柱の下端部を基礎に固定する際の柱の固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば3階建て住宅の場合の1階部分におけるコーナー柱や中間柱の固定部には、布基礎上に敷設される床パネル上に立設させて結合固定するために、箱金物等の固定金物が一般に用いられている(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−136827号公報
【特許文献2】特開平7−197522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような箱金物等の固定金物を用いた柱の固定構造において、当該部分での熱橋対策を講じることが必要とされている。このため、該箱金物等による結合部分を断熱材等で取り囲むような施工を行うことが従来から行われている。
【0005】
しかし、上述したような柱の固定構造において従来例では、断熱材の施工が面倒かつ煩雑である等の問題があった。特に、上述した従来構造によれば、柱や床パネルの周囲において、断熱材を外側に張り出して設けているが、その取付面が平らな面であるから断熱材が取付けにくく、作業性の面で問題であった。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、柱の下端部の固定構造において、断熱材の施工作業を簡単に行え、固定金具を用いた部分での熱橋対策を簡単かつ確実に図ることができる柱の固定構造を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的に応えるために本発明(請求項1記載の発明)に係る柱の固定構造は、壁厚と等しい太さを有する角材からなる柱を基礎に固定する構造であって、柱の下端部に壁厚よりも薄い小形部を形成し、この小形部を小形部と等しい厚さの固定金物で基礎に固定するとともに、壁と小形部とで形成される凹部に断熱材を装填したことを特徴とする。
【0008】
本発明(請求項2記載の発明)に係る柱の固定構造は、請求項1記載の柱の固定構造において、柱の下端部は、柱の周囲2面を軸線方向に切り欠くことにより壁厚より薄い小形部として形成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明(請求項3記載の発明)に係る柱の固定構造は、請求項1または請求項2記載の柱の固定構造において、固定金物は、基礎上に載せられた床上に基部を固定するとともに、該基部から前記小形部の厚さ分の間隔をおいて延設された一対の支持片を備えていることを特徴とする。
【0010】
本発明(請求項4記載の発明)に係る柱の固定構造は、請求項1、請求項2または請求項3記載の柱の固定構造において、固定金物の基部には、側面視四角形状を呈する箱状部が形成され、この箱状部が基礎から突出されたアンカーボルトを固定するためのナット固定空間を構成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように本発明に係る柱の固定構造によれば、柱の下端部に壁厚よりも薄い小形部を形成し、この小形部を小形部と等しい厚さの固定金物で基礎に固定するとともに、壁と小形部とで形成される凹部に断熱材を装填するように構成しているから、簡単な構成であるにもかかわらず、以下に述べる種々優れた効果を奏する。
【0012】
(1)柱の基礎側への結合用として固定金物を用いた場合の熱橋対策、特に断熱材の施工を容易に行えるようにする。
(2)特に、柱の下端部に小形部により形成される凹部を利用して断熱材を装填して配設するように構成しているから、従来のように柱や床パネルの周囲の平らな面に、断熱材を外側に張り出させて取り付ける場合に比べて、作業がきわめて簡単に行えるものであり、作業性の面で優れている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る柱の固定構造の一実施形態を示す要部の概略分解斜視図である。
【図2】図1において、本発明を特徴づける柱の下端部の小形部と固定金具との関係を示す概略図である。
【図3】本発明に係る柱の固定構造の一実施形態を示す要部の縦断面図である。
【図4】本発明に係る柱の固定構造の一実施形態を示す要部の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1ないし図4は本発明に係る柱の固定構造の一実施形態を示す。
なお、この実施形態では、たとえば3階建て住宅の1階部分においてコーナー柱を基礎上に固定する場合を例示している。
【0015】
これらの図において、符号10は布基礎、11は台輪、12は床パネル、13は半土台、14は壁パネル固定用アンカーボルト、15は柱固定用アンカーボルト、20はコーナー柱の固定金物、30はコーナー柱であり、さらに40は壁パネルである。
【0016】
布基礎10の直角をなすコーナー部において、その両側に壁パネル固定用アンカーボルト14,14がそれぞれ埋設されるとともに、コーナー頂点部に柱固定用アンカーボルト15が埋設されている。
【0017】
以上の布基礎10コーナー部上面に台輪11,11をそれぞれ介して、床パネル12が敷き込まれるとともに、その床パネル12の端部に沿わせて、たとえば、60mm幅の半土台13,13が夫々取り付けられている。
そして、床パネル12およびその端部に沿わせた別部材の半土台13,13によるコーナー部上には、例えば、120mm角のコーナー柱30が立てられる。このコーナー柱30は、壁パネル40の壁厚と等しい太さをもつ角材によって構成されている。
【0018】
ここで、床パネル12の外側面および半土台13,13の内側面には、各アンカーボルト14,14,15を通すための欠込み加工を予め施しておく。これにより、例えば、直径12mmの各アンカーボルト14,14,15が、床パネル12および半土台13,13間であって、その上方に突出している。
なお、床パネル12は、図3のように、合板121の下面に芯材122,123…を接合一体化してなる。
【0019】
さて、本発明によれば、上述したコーナー柱30を布基礎10側に固定するにあたって、柱30の下端部に壁厚よりも薄い角柱形状をもつ小形部31を形成し、この小形部31を小形部と等しい厚さの固定金物20で布基礎10上の半土台13,13および床パネル12上に固定するとともに、壁パネル40と小形部31とで形成される凹部32、33に断熱材50,51を装填するように構成している。
【0020】
ここで、上述した小形部31は、柱30の下端部において該柱30の周囲2面を軸線方向に沿って所定深さだけ切り欠くことにより壁厚より薄い細角柱形状の小形部31として形成されている。
【0021】
また、固定金物20は、布基礎10上に載せられた床(床パネル12や半土台13,13による)上に、基部に設けた側面視四角形状を呈する箱状部21を固定するとともに、該箱状部21から前記小形部31の厚さ分の間隔をおいて延設された一対の支持片22,23を備えて構成されている。
【0022】
固定金物20の基部の箱状部21の内部には、布基礎11側から突設されたアンカーボルト15を固定するためのナット固定空間が形成されている。
なお、図中26はアンカーボルト15を締結するナットである。また、27は支持片22,23を柱30の小形部31に固定するための釘である。
【0023】
これを詳述すると、前記コーナー柱30用の固定金物20は、図1ないし図4に示すように、壁厚と等しい太さを有する角材からなるコーナー柱30よりも細く形成されている小形部31に対応して、たとえば90mm角の大きさをもつ箱状部21と、この箱状部21上から上方に延設された隣接する2辺から垂直に各々起設されて一体化した、例えば、幅50mm程度で高さ200mm程度の平板による2片の支持片22,23とを備えている。
【0024】
ここで、上述した箱状部21は、水平方向の対向する面がねじ締め用の開口面とされている箱体形状で形成され、その上面部であって、前記開口面とは対応しない閉塞面の上部に前記支持片22,23が対向するようにして垂直方向に延設されている。
【0025】
また、上述した箱状部21および支持片22,23は、たとえば厚さ9mm程度の鉄板により折り曲げ形成されるもので、箱状部21の底板の中央には、例えば、直径30mm程度の円形の取付孔(図2参照)が形成される一方、支持片22,23には、例えば、横2列で上下方向に6個ずつによる計12個の孔部が形成されている。
【0026】
他方、コーナー柱30の下端部は、図1、図2に示すように、その2面が所定長さにわたって切り落とされており、これにより小形部31が形成されている。そして、この小形部31の2面に前記支持片22,23が釘27で固定され、この固定金物20がアンカーボルト15、ナット26で布基礎11側に固定されることにより、該柱30を布基礎11上の床パネル12上に立設させた状態で支持固定するようになっている。
【0027】
以上の構成によれば、壁厚と等しい柱30の下端部に該壁厚よりも薄い小形部31を形成し、この小形部31を、該小形部31と等しい厚さの固定金物20で布基礎11側に固定するとともに、壁40と小形部31とで形成される凹部32,33内に、前記小形部31の外側と下端部に組み付けられている固定金物20を覆うような大きさと形状で形成されている断熱材50,51を装填するように構成しているから、簡単な構成であるにもかかわらず、以下に述べる種々優れた効果を奏する。
【0028】
すなわち、柱30の布基礎11側への結合用として固定金物20を用いた場合の熱橋対策、特に断熱材50,51の施工をきわめて容易に行える。
【0029】
特に、柱30の下端部に小形部31により形成される凹部32,33を利用して断熱材50,51を装填して配設するようにしているから、従来のように柱や床パネルの周囲の平らな面に、断熱材を取り付ける場合等のように断熱材を手で押さえるといった面倒な作業は不要であり、断熱材50,51等の組み付け作業がきわめて簡単に行えるものであり、作業性の面で優れている。
【0030】
これを詳述すると、本発明のように、柱30の下端部に設けた小形部31に対して固定金物20を固定し、これにより柱30の下端部において小形部31の周囲で隣接して配置される壁パネル40との間に形成される凹部32,33内に断熱材50,51を装填して組み込むようにしているから、断熱材50,51を所定位置に位置決めして装填することが可能となる。
【0031】
また、この断熱材50,51の装填作業中にこれらの断熱材50,51を手で押さえて落下を防止するといった面倒な作業は不要となる。
特に、断熱材50,51等の形状を、凹部32,33の形状よりも大きくし、装填時において、圧縮した状態でそれぞれの凹部32,33内に装填すれば、より一層落下しにくくなるもので、その実用上での利点は大きい。
【0032】
なお、本発明は上述した実施の形態で説明した構造には限定されず、柱30の固定構造を構成する各部の形状、構造等を適宜変形、変更し得ることは言うまでもない。
たとえば布基礎11上への床パネル12等の配設構造、壁パネル40等の配設構造としては種々の変形例が考えられる。
【0033】
また、柱30として、コーナー柱を例示したが、これに限定されない。さらに、固定金具20としても、箱状部31と支持片32,33からなるほぼコ字状を呈する金具に限らず、適宜の変形例が考えられる。
【符号の説明】
【0034】
10 布基礎
11 台輪
12 床パネル
13 半土台
14 壁パネル固定用アンカーボルト
15 柱固定用アンカーボルト
20 柱固定金物
21 箱状部
22,23 支持片
26 ナット
27 釘(スクリュー釘)
30 柱(コーナー柱)
31 小形部
32,33 凹部
40 壁パネル
50、51 断熱材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁厚と等しい太さを有する角材からなる柱を基礎に固定する構造であって、
柱の下端部に壁厚よりも薄い小形部を形成し、
この小形部を小形部と等しい厚さの固定金物で基礎に固定するとともに、
壁と小形部とで形成される凹部に断熱材を装填したことを特徴とする柱の固定構造。
【請求項2】
請求項1記載の柱の固定構造において、
柱の下端部は、柱の周囲2面を軸線方向に切り欠くことにより壁厚より薄い小形部として形成されていることを特徴とする柱の固定構造。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の柱の固定構造において、
固定金物は、基礎上に載せられた床上に基部を固定するとともに、該基部から前記小形部の厚さ分の間隔をおいて延設された一対の支持片を備えていることを特徴とする柱の固定構造。
【請求項4】
請求項1、請求項2または請求項3記載の柱の固定構造において、
固定金物の基部には、側面視四角形状を呈する箱状部が形成され、この箱状部が基礎から突出されたアンカーボルトを固定するためのナット固定空間を構成することを特徴とする柱の固定構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−248844(P2010−248844A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−101555(P2009−101555)
【出願日】平成21年4月20日(2009.4.20)
【出願人】(307042385)ミサワホーム株式会社 (569)
【Fターム(参考)】