説明

柱脚構造

【課題】外灯や道路標識などに用いられる支柱の安定性および耐久性の向上を図る。
【解決手段】中空軸から成る支柱本体21の下端にフランジ状のベースプレート22が固着されて成る柱脚構造である。支柱本体21の下部は、下方に向かってテーパ状に広がるフレア部21aとされ、そのフレア部21a内にテーパ状の補強用コア部23が嵌め込まれる。ベースプレート22にはフレア部21aの下端部を差し込む連結孔22bが形成され、フレア部21aの下端縁が連結孔22bの内周に溶接接合されると共に、フレア部21aの下部外周が連結孔22bの上部開口縁に溶接接合される。又、補強用コア部23はその外周面がフレア部21aの内周面に対して密着され、その下端縁のみフレア部21aの内周に溶接接合される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外灯や道路標識などに用いられる支柱に係わり、特に支柱の安定性および耐久性を向上させることのできる柱脚構造に関する。
【背景技術】
【0002】
外灯や道路標識などの支柱には金属の中空軸が多用されるが、支柱本体の下端にはコンクリート基礎にアンカーボルトを用いて連結すべくフランジ状のベースプレートを固着することが通例である。特に、固定端となる支柱の下部(柱脚部)には大きな曲げモーメントが作用するので、図12のように支柱本体StとペースプレートBpとにリブRを溶接し、そのリブRにより支柱本体StとベースプレートBpを一体的に連結して柱脚部を補強することが一般に広く行われている。
【0003】
そして、係る支柱によれば、ベースプレートBpに穿設されるボルト孔にコンクリート基礎から突出するアンカーボルトAbを通し、これにナットnを締め付けることにより、ベースプレートBpをコンクリート基礎に対して強固に緊結することができる。
【0004】
しかし、リブRの溶接部分(図12の斜線部)には断面形状が急激に変化するために応力集中を生じやすい。しかも、道路脇に立てられる支柱では、リブRが歩行や車両通行の妨げになるという問題がある。例えば、歩行者がリブRに足を引っ掛けて転倒したり、自転車や自動車がリブRにタイヤをぶつけて当該タイヤを破損してしまったりすることがあった。
【0005】
そこで、ベースプレートに孔を貫通せしめ、その孔に支柱本体(管本体)の下端を差し込み、その部分に溶接を施して補強用リブを排除するとの提案がされている(例えば、特許文献1)。
【0006】
又、ベースプレートに中空テーパ状の立上り部を形成すると共に、立上り部の上端部に支柱本体の下端部に挿入可能な裏当て部を形成し、その裏当て部を支柱本体の下端部に挿入して当該部分を溶接するようにした支柱が知られている(例えば、特許文献2)。
【0007】
更に、ベースプレート(支持ベース)に中空テーパ状の斜面部を形成し、その斜面部の上端に開口する孔内に上方から支柱本体の下端部を挿入して当該部分を溶接した支柱が知られている(例えば、特許文献3)。
【0008】
【特許文献1】特開2003−343119号公報
【特許文献2】特開2003−321949号公報
【特許文献3】特開2005−320701号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に開示される支柱によれば、ベースプレートに貫通せしめた孔に支柱本体の下端を差し込み、その周囲を溶接しているだけなので、溶接接合部に応力集中による亀裂を生じやすいという欠点がある。
【0010】
一方、特許文献2では、ベースプレートに中空テーパ状の立上り部を形成してその上端に支柱本体を連結しているので、立上り部によって支柱本体を安定支持することが可能になるものの、口径が最小とされる立上り部の上端に支柱本体の下端を嵌めて溶接接合しているので高い接合力を得難く、支柱本体に曲げモーメントや軸方向力(引っ張り荷重および圧縮荷重)が作用したとき、立上り部と支柱本体との継目(溶接接合部)に亀裂を生じやすい。
【0011】
又、特許文献3も、斜面部の上端に開口する孔内に支柱本体の下端部を挿入してその周囲を溶接しているだけなので、高い接合力を得難く、支柱本体に曲げモーメントや軸方向力(引っ張り荷重および圧縮荷重)が作用したとき、溶接接合部に亀裂を生じやすい。
【0012】
本発明は以上のような事情に鑑みて成されたものであり、その目的は外灯や道路標識などに用いられる支柱の安定性および耐久性の向上を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は上記目的を達成するため、
中空軸から成る支柱本体の下端にフランジ状のベースプレートが固着されて成る柱脚構造において、前記支柱本体の下部は下方に向かってテーパ状に広がるフレア部とされ、そのフレア部内にテーパ状の補強用コア部が嵌め込まれ、その補強用コア部の外周面が前記フレア部の内周面に対して密着されていることを特徴とする。
【0014】
加えて、前記フレア部の下端縁が前記ベースプレートに溶接接合され、前記補強用コア部はその下端縁のみ前記フレア部の内周に溶接接合されていることを特徴とする。
【0015】
又、前記ベースプレートに前記フレア部の下端部を差し込む連結孔が形成され、前記フレア部の下端縁が前記連結孔の内周に溶接接合されると共に、前記フレア部の下部外周が前記連結孔の上部開口縁に溶接接合され、前記補強用コア部はその下端縁のみ前記フレア部の内周に溶接接合されていることを特徴とする。
【0016】
更に、前記ベースプレートに前記補強用コア部の下端部を差し込む連結孔が形成され、前記補強用コア部の下端縁が前記連結孔の内周に溶接接合されると共に、前記フレア部の下端縁が前記連結孔の周囲で前記ベースプレートの上面に溶接接合されていることを特徴とする。
【0017】
又、前記補強用コア部が前記ベースプレートと一体に形成されると共に、前記フレア部の下端縁が前記ベースプレートの上面に溶接接合されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、支柱本体の下部がテーパ状に広がるフレア部とされていることから、支柱本体を立てたときの安定性が高く、しかもフレア部内にテーパ状の補強用コア部が嵌め込まれ、その外周面がフレア部の内周面に対して密着されることから、フレア部の強度が増して大きな荷重を支えることができる。
【0019】
特に、フレア部は、口径が最大となる下端縁がベースプレートに溶接接合されることから、支柱本体とベースプレートを高い接合力をもって一体的に接合することができる。しかも、補強用コア部がその下端縁のみフレア部の内周に溶接されることにより、コア部の上端に応力集中が生じず、フレア部やコア部の溶接残留応力による変形、材質的劣化を防止できる上、支柱本体に風や地盤振動により繰返し荷重(曲げモーメント)が作用した場合、これによる振動エネルギーをフレア部とコア部との摩擦により熱エネルギーに変換して吸収することができる。
【0020】
加えて、ベースプレートにフレア部の下端部を差し込む連結孔が形成され、フレア部の下端縁が連結孔の内周に溶接接合されると共に、フレア部の下部外周が連結孔の上部開口縁に溶接接合される構成では、ベースプレートと支柱本体の接合強度を更に高めることができる。
【0021】
又、ベースプレートに補強用コア部の下端部を差し込む連結孔が形成され、補強用コア部の下端縁が連結孔の内周に溶接接合されると共に、フレア部の下端縁が連結孔の周囲でベースプレートの上面に溶接接合される構成でも、大きな荷重が作用する支柱本体の下部(フレア部)を補強し、コア部の上端に応力集中が生じることを防止しながら、支柱本体に風や地盤振動により繰返し荷重(曲げモーメント)が作用した場合、これによる振動エネルギーをフレア部とコア部との摩擦により熱エネルギーに変換して吸収することができる。
【0022】
更に、補強用コア部がベースプレートと一体に形成されると共に、フレア部の下端縁がベースプレートの上面に溶接接合される構成でも、上記と同じく大きな荷重が作用する支柱本体の下部(フレア部)を補強し、コア部の上端に応力集中が生じることを防止しながら、支柱本体に風や地盤振動により繰返し荷重(曲げモーメント)が作用した場合、これによる振動エネルギーをフレア部とコア部との摩擦により熱エネルギーに変換して吸収することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面に基づいて本発明を詳しく説明する。先ず、図1は本発明に係る柱脚構造を外灯の支柱に適用した例を示す。図1において、1は地中に構築されて上部からの荷重を地盤に伝えるコンクリート基礎、2はコンクリート基礎1の上に立てられる支柱であり、この支柱2は所定の長さ(高さ)を有する金属製の中空軸から成る支柱本体21の下端に、フランジ状の金属板(ベースプレート22)を固着して構成されている。特に、支柱本体21は、その下部が下方に向かってテーパ状に広がるフレア部21aとされ、これにより高い安定性が得られる構成となっている。
【0024】
そして、係る支柱本体21は、コンクリート基礎1に対してベースプレート22をアンカーボルト3で緊結することにより、コンクリート基礎1上に直立状に固定され、その上端に梁Hを介してランプユニット4が取り付けられる。
【0025】
尚、フレア部21aとベースプレート22は、支柱本体21の軸方向力、曲げモーメント、剪断力などをコンクリート基礎1に伝えるための柱脚部を構成する。又、図1において、5はアンカーボルト3に取り付けたアンカープレート、6はコンクリート基礎1上に突出されるアンカーボルト3の先端にベースプレート22を介して締め付けられるナットである。
【0026】
図2は柱脚部を示した側面図であり、図3および図4にはそれぞれ図2のX−X断面、Y−Y断面を示す。図3から明らかなように、本例において支柱本体21は軸直角断面が円形とされる円筒体であり、ベースプレート22は方形状にしてその四隅に図1に示したアンカーボルト3を通すためのボルト孔22aが穿設されている。
【0027】
又、図4から明らかなように、フレア部21aは内径および外径が下方に向かって漸次拡大するテーパ状(中空円錐台状)であり、その内部には支柱本体2と同じ材質から成る補強用コア部23が嵌め込まれている。
【0028】
補強用コア部23は、フレア部21aを補強するべく支柱本体1とは別に形成される部材であり、これは図4および図5から明らかなように上下両端が開口する中空体で、フレア部21aと同じテーパ状(中空円錐台状)の形態とされており、その外周面(外周テーパ面)がフレア部21aの内周面(内周テーパ面)に密着する構成となっている。又、ベースプレート22の中央にはその板厚方向に貫通する円形の連結孔22bが穿設され、その連結孔22bにフレア部21aの下端部が差し込まれるようになっている。
【0029】
そして、フレア部21aはその下端部を連結孔22bに差し込んだ状態でベースプレート22に溶接にて一体的に固着され、補強用コア部23はフレア部21a内に嵌めこまれた状態でその下端縁のみフレア部21aの内周に溶接接合されている。
【0030】
図6は、図4の円内領域(A部)を拡大して示した部分拡大図である。この図で明らかなように、フレア部21aはその下端が接合部W1として連結孔22bの内周に溶接接合されると共に、その接合部W1に近接する下部外周が接合部W2として連結孔22bの上部開口縁に溶接接合されている。尚、接合部W1,W2はそれぞれ連結孔22bの全周に渡って一連に施されるのであり、これによればベースプレート22に対してフレア部21aを強固に結合することができる。
【0031】
一方、補強用コア部23は、上述の如くその下端のみ接合部W3としてフレア部21aの内周に溶接接合されており、当該補強用コア部23の上端側はフレア部21aと溶接接合されない自由端となっている。これによれば、フレア部21aと補強用コア部23との間に応力集中が生ずることを防止しながら、支柱本体1に風や地盤振動により繰返し荷重(曲げモーメント)が作用した場合、これによる振動エネルギーをフレア部21aと補強用コア部23との摩擦により熱エネルギーに変換して吸収することができる。
【0032】
図7は、以上のように構成される支柱について行った疲労強度試験の結果を示す。尚、本試験では、支柱本体2を短く切断して全長450mmの試験体を5つ作成し、その各々について疲労強度を測定した。又、各試験体において、フレア部21aは長さ250mm、上端開口径216mm、下端開口径254mm、肉厚4.5mm、補強用コア部23は長さ200mm、肉厚4.5mm、ベースプレート22は一辺350mmの正方形で、その板厚を32mmとした。又、材質はいずれも一般構造用炭素鋼(STK400)を採用した。そして、その各試験体に軸方向(上下方向)から繰返し偏心荷重(応力振幅160MPa)を作用させ、試験体の部位に亀裂が生ずるまでの載荷回数を調べた。
【0033】
図7から明らかなように、いずれの試験体も応力振幅160MPaに対して載荷回数200万回程度(図7中に5つの黒丸として示される)であり、これは社団法人日本鋼構造協会で規定する疲労強度C等級に属するものと認められる。
【0034】
次に、本発明の変更例について説明する。図8はベースプレート22に対してフレア部21aの下端縁のみ溶接接合した例である。図8に示されるように、本例ではベースプレート22にフレア部21aの下端部を差し込む連結孔が形成されず、フレア部21aの下端縁が接合部W1としてベースプレート22の上面に溶接接合される構成となっている。尚、フレア部21a内には上記例と同じく補強用コア部23が嵌め込まれ、その下端縁のみ接合部W2としてフレア部21aの内周に溶接接合されている。そして、本例のような柱脚構造でも上記例と同様の作用効果が得られる。
【0035】
一方、図9は補強用コア部23をベースプレート22に溶接接合した例である。図9に示されるように、本例ではベースプレート22に形成される連結孔22bに対し、補強用コア部23の下端部が差し込まれ、その下端縁が接合部W1として連結孔22bの内周に溶接接合され、フレア部21aはその下端縁が接合部W2として連結孔22bの周囲でベースプレート22の上面に溶接接合される構造となっている。尚、補強用コア部23はフレア部21a内に嵌め込まれるが、その上端縁は上記例と同じくフレア部21aに対して溶接接合されない。そして、本例のような柱脚構造でも上記例と同様の作用効果が得られる。
【0036】
又、図10は補強用コア部23をベースプレート22と一体に形成した例である。図10に示されるように、本例によれば、フレア部21a内に嵌め込まれる補強用コア部23の下端周囲において、フレア部21aの下端縁が接合部W1としてベースプレート22の上面(平面部)に溶接接合される構造となっている。特に、本例において、補強用コア部23はフレア部21aに対していずれの箇所も溶接接合されない。尚、図10には補強用コア部23を中実構造として示してあるが、これを中空構造としてもよい。そして、本例のような柱脚構造でも上記例と同様の作用効果が得られる。
【0037】
以上、本発明の適用例を説明したが、フレア部21aおよび補強用コア部23は下方に向かってテーパ状に広がっていれば、円錐状に限らず角錐状でもよい。
【0038】
又、本発明に係る柱脚構造は、外灯用支柱に限らず、道路標識、旗、ガードレールその他の柵の支柱にも適用することができる。
【0039】
更に、本発明に係る柱脚構造を支柱本体21の上部に連結される梁Hに適用することもできる。例えば、図11のように梁Hを2つの部材H1,H2に分け、その各一端部に補強用コア部23,23が嵌め込まれるテーパ状のフレア部21a,21aを形成し、そのフレア部21a,21aの開口端部にそれぞれ接合用のフランジを成すベースプレート22,22を固着するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の柱脚構造を外灯の支柱に適用した例を示す説明図
【図2】本発明の要部(柱脚部)を示す側面図
【図3】図2のX−X断面図
【図4】図2のY−Y断面図
【図5】柱脚部の斜視分解図
【図6】図4の部分拡大図
【図7】本発明に係る柱脚構造をもつ支柱の疲労強度を示すグラフ
【図8】本発明の変更例を示す要部断面図
【図9】本発明の変更例を示す要部断面図
【図10】本発明の変更例を示す要部断面図
【図11】本発明に柱脚構造を梁に適用した例を示す説明図
【図12】従来例を示す説明図
【符号の説明】
【0041】
1 コンクリート基礎
2 支柱
21 支柱本体
21a フレア部
22 ベースプレート
23 補強用コア部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空軸から成る支柱本体の下端にフランジ状のベースプレートが固着されて成る柱脚構造において、前記支柱本体の下部は下方に向かってテーパ状に広がるフレア部とされ、そのフレア部内にテーパ状の補強用コア部が嵌め込まれ、その補強用コア部の外周面が前記フレア部の内周面に対して密着されていることを特徴とする柱脚構造。
【請求項2】
前記フレア部の下端縁が前記ベースプレートに溶接接合され、前記補強用コア部はその下端縁のみ前記フレア部の内周に溶接接合されていることを特徴とする請求項1記載の柱脚構造。
【請求項3】
前記ベースプレートに前記フレア部の下端部を差し込む連結孔が形成され、前記フレア部の下端縁が前記連結孔の内周に溶接接合されると共に、前記フレア部の下部外周が前記連結孔の上部開口縁に溶接接合され、前記補強用コア部はその下端縁のみ前記フレア部の内周に溶接接合されていることを特徴とする請求項1記載の柱脚構造。
【請求項4】
前記ベースプレートに前記補強用コア部の下端部を差し込む連結孔が形成され、前記補強用コア部の下端縁が前記連結孔の内周に溶接接合されると共に、前記フレア部の下端縁が前記連結孔の周囲で前記ベースプレートの上面に溶接接合されていることを特徴とする請求項1記載の柱脚構造。
【請求項5】
前記補強用コア部が前記ベースプレートと一体に形成されると共に、前記フレア部の下端縁が前記ベースプレートの上面に溶接接合されていることを特徴とする請求項1記載の柱脚構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−275396(P2009−275396A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−126946(P2008−126946)
【出願日】平成20年5月14日(2008.5.14)
【出願人】(000115360)ヨシモトポール株式会社 (27)
【Fターム(参考)】