説明

柱脚部の接合構造およびその施工方法

【課題】柱脚接合部が柱部材の終局耐力を保証することができ、施工性を向上させることができ、掘削量やコンクリート量を低減させることでコストダウンを図るとともに工期の短縮を図ることができる柱脚部の接合構造及びその施工方法を提供することを目的とする。
【解決手段】コンクリート体3上に建てられる柱部材2の柱脚部2aをコンクリート体3に接合させる柱脚部2aの接合構造において、柱脚部2aに隙間をあけて外装される外鋼管4と、外鋼管4の上端に固着されて柱脚部2aが挿通される孔5aを有するダイアフラム5と、外鋼管4又はダイアフラム5に固着されてコンクリート体3内に定着されるアンカー材6…とを有する柱脚接合部材1が備えられ、外鋼管4と柱脚部2aとの間に、柱脚部2aを固定するための固定部9が介在されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柱部材の柱脚部をコンクリート体に接合させるための柱脚部の接合構造およびその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄骨柱やコンクリート充填鋼管柱(以下、CFT柱と記す。)等の柱部材を基礎梁等の鉄筋コンクリート造の基礎コンクリート体上に建てる場合、その柱部材の柱脚部を基礎コンクリート体に接合させる必要がある。この柱脚部の接合構造の1つとして、従来、柱脚部を基礎コンクリート体の中に埋め込ませる構造(埋め込み柱脚)がある。この接合構造は、柱部材の柱脚部を基礎コンクリート体内に所定深さまで埋め込んで定着させるものであり、通常、その定着長さ(埋め込み深さ)を1.5D(Dは柱部材の柱成。以下において同様。)以上確保する必要がある。また、この接合構造では、埋め込まれた柱脚部と基礎コンクリート体の主筋とが干渉しないように、基礎コンクリート体の位置を下げるとともに、基礎コンクリート体の上部に柱脚部の定着長さ分のフカシコンクリート部を形成する場合が多い。
【0003】
また、従来の接合構造としては、柱脚部を所定高さまで鉄筋コンクリートで被覆する構造(根巻き柱脚)がある。この接合構造は、基礎コンクリート体の上面に柱部材を載せ、その柱部材の柱脚部を基礎コンクリート体と一体化された鉄筋コンクリートで固定するものである。この接合構造では、通常、鉄筋コンクリート(根巻き部)の高さは2.0D程度と設定される。
【0004】
また、従来の接合構造としては、既製品のベース部材とアンカーボルトとを用いる構造(露出型柱脚)がある。この従来の接合構造の概略構成は、柱部材の下端に設けられたベース部材が、基礎コンクリート体内に定着された太径のアンカーボルトで固定された構成からなる。具体的には、基礎コンクリート体の柱脚部接合箇所に、アンボンドスリーブに挿通された複数のアンカーボルトが、その上端を基礎コンクリート体上面から突出させた状態で埋設される。一方、柱部材の下端にベース部材が溶接等によって一体化される。このベースには、複数のアンカーボルトの上端をそれぞれ挿通させるための複数の孔が形成されている。そして、柱部材を所定の建柱位置に配置してベースの複数の孔にアンカーボルトの上端をそれぞれ挿通させ、その後、各アンカーボルトの上端にナットをそれぞれ締め付けて緊張力を加えることで、柱脚部が基礎コンクリートに接合される。
【0005】
さらに、近年、柱部材の柱脚部を基礎コンクリート体に接合させる接合構造として、柱部材の柱脚部に外鋼管を外装させ、その外鋼管と柱脚部との間にコンクリートを充填することで、柱脚部を基礎コンクリート体に接合させる接合構造が提案されている。この接合構造では、外鋼管の高さを1.0D以上確保する必要がある(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2000−297472号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した従来の埋め込み柱脚の接合構造では、柱脚部の定着長さを1.5D以上確保する必要があるため、柱脚部と基礎コンクリート体の主筋とを干渉させないようにする場合、基礎コンクリート体の位置を1.5D以上下げることになる。このように、基礎コンクリート体の位置を大幅に下げることによって掘削量が増大し、掘削工事のコストが高くなるとともに掘削工事の工期が長くなる。また、上記した従来の埋め込み柱脚の接合構造では、柱脚部と基礎コンクリート体の主筋とを干渉させないようにする場合、1.5D以上のフカシコンクリート部を形成することになるため、コンクリート量が増大してコストが増大する。
【0007】
また、上記した従来の根巻き柱脚の接合構造では、根巻き部の高さが2.0D程度であり、根巻き部が平面的にも高さ的にも相当に大きくなるため、建築計画上、コンパクト化が望まれている。
また、上記した従来の露出型柱脚の接合構造では、太径のアンカーボルトが使用され、アンボンド処理や緊張作業が行われるため、施工性が悪いという問題がある。
【0008】
また、上記した従来の根巻き柱脚及び露出型柱脚の接合構造では、柱脚接合部の耐力が柱部材の終局耐力よりも低く、柱部材と接触する基礎コンクリート上端で接合部破壊が生じ易いという問題がある。したがって、例えば、大規模な地震が発生した場合、耐力・靭性に優れた柱部材により柱自体が破壊されなくても、柱脚接合部が先行破壊されることで、建物が大きく損傷してしまうおそれがある。
【0009】
さらに、上記した従来の外鋼管を用いる接合構造では、外鋼管の高さを1.0D以上確保する必要があり、上記した根巻き柱脚の接合構造と比べてコンパクトになっているが、建築計画上、一層のコンパクト化が望まれている。
【0010】
本発明は、上記した従来の問題が考慮されたものであり、柱脚接合部が柱部材の終局耐力を保証することができ、且つ、施工性を向上させることができる柱脚部の接合構造を提供することを目的としている。さらに、掘削量やコンクリート量を低減させることで、コストダウンを図ることができるとともに工期の短縮を図ることができ、さらに、建築計画上からも優れた柱脚部の接合構造及びその施工方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1記載の発明は、コンクリート体上に建てられる柱部材の柱脚部を前記コンクリート体に接合させる柱脚部の接合構造において、前記柱脚部に隙間をあけて外装される外鋼管と、該外鋼管の上端に固着されて前記柱脚部が挿通される孔を有するダイアフラムと、前記外鋼管又は前記ダイアフラムに固着されて前記コンクリート体内に定着されるアンカー材とを有する柱脚接合部材が備えられ、前記外鋼管と前記柱脚部との間に、前記柱脚部を固定するための固定部が介在されていることを特徴としている。
【0012】
このような特徴により、外鋼管がダイアフラムで補強され、効果的な応力伝達が行われるため、高耐力・高靭性の柱脚接合構造が実現されるとともに、外鋼管の高さを低減させることが可能になる。また、現場溶接作業やナット締め等の緊張作業が不要であり、また、アンボンド処理などの作業も不要である。
【0013】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の柱脚部の接合構造において、前記固定部は、前記柱脚部が挿通される孔を有する筒状のプレキャスト部材と、該プレキャスト部材と前記柱脚部との間に充填される充填材とからなり、前記プレキャスト部材は、前記外鋼管の内側に形成され、前記柱脚接合部材と一体化されていることを特徴としている。
【0014】
このような特徴により、固定部を形成するための作業が簡略化されて現場作業が省力化される。また、現場で固定部を形成する場合に比べて容易に品質を確保することが可能となるため、固定部に空隙が形成される等の施工不良が起こり難い。
【0015】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の柱脚部の接合構造において、前記柱部材の下端には、該柱脚部の外周面からその外縁部が張り出されたベースプレートが固着されていることを特徴としている。
【0016】
このような特徴により、ダイアフラムの外周部との間で圧縮コンクリートのアーチが構成され、柱脚接合構造の曲げ抵抗力および引張り抵抗力が大きくなる。
【0017】
請求項4記載の発明は、請求項1から3のいずれか記載の柱脚部の接合構造において、前記ダイアフラムの孔は、前記柱脚部の外形よりも大きく形成されていることを特徴としている。
【0018】
このような特徴により、ダイアフラムの孔の中に柱部材の柱脚部を挿入させたときに、ダイアフラムの内周端と柱脚部の外周面との間に形成される隙間の分だけ、柱部材の位置を調整することができる。
【0019】
請求項5記載の発明は、コンクリート体上に建てられる柱部材の柱脚部を前記コンクリート体に接合させる柱脚部の接合構造の施工方法において、予め、前記柱脚部に隙間をあけて外装される外鋼管と、該外鋼管の上端に固着されて前記柱脚部が挿通される孔を有するダイアフラムと、前記外鋼管又は前記ダイアフラムに固着されて前記コンクリート体内に定着されるアンカー材とを有する柱脚接合部材を製作するとともに、前記柱脚部が挿通される孔を有する筒状のプレキャスト部材を前記外鋼管の内側に形成して、前記柱脚接合部材に前記プレキャスト部材を一体化させておき、該柱脚接合部材を前記柱脚部の接合箇所に配置する工程を行った後、前記コンクリート体のコンクリートを打設する工程を行って、前記アンカー材を前記コンクリート体内に埋設させ、その後、前記ダイアフラムの孔から前記プレキャスト部材の孔の中に、前記プレキャスト部材と前記柱脚部との間に充填させる充填材を入れる工程を行い、次いで、前記充填材が硬化する前に、前記ダイアフラムの孔から前記柱部材の前記柱脚部を挿入して前記柱部材を配置する工程を行うことを特徴としている。
【0020】
このような特徴により、柱部材を外鋼管の中に挿入したとき、予め投入された充填材がプレキャスト部材と柱脚部との隙間に充填され、充填材が硬化することで柱脚接合部材と柱部材が一体化される。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る柱脚部の接合構造によれば、高耐力・高靭性の柱脚接合構造が実現され、柱部材の終局耐力を保証する柱脚接合構造を形成することができる。例えば、大規模な地震が発生した場合でも、柱脚接合箇所が先行破壊されることを防止できる。
また、外鋼管の高さを低減させることが可能であるため、掘削量やコンクリート量の増大を抑えることができ、ローコスト化及び工期短縮を図ることができ、また、外鋼管のコンクリート内埋め込みを実現することで建築計画上優れた柱脚部を実現することができる。
さらに、現場溶接作業や緊張作業、アンボンド処理等が不要であるため、施工手間がかからず、施工性を向上させることができ、接合作業を大幅に省力化することができる。
【0022】
また、本発明に係る柱脚部の接合構造の施工方法によれば、上記した柱脚部の接合構造を形成することができ、本願に係る柱脚部の接合構造と同様の作用、効果を発揮することができる。また、柱部材を外鋼管の中に挿入したとき、予め投入された充填材がプレキャスト部材と柱脚部との隙間に充填されるため、柱部材を配置する工程の後に、プレキャスト部材と柱脚部との隙間に充填材を注入する作業が不要となる。ダイアフラムの孔から外鋼管の中に充填材を入れる作業は、ダイアフラムと柱脚部との隙間から充填材を注入する作業、或いは、ダイアフラムに形成した注入口から充填材を注入する作業に比べて、明らかに施工性が良好である。したがって、本発明に係る柱脚部の接合構造の施工方法によれば、柱脚部の接合構造を簡単に施工することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明に係る柱脚部の接合構造およびその施工方法の実施の形態について、図面に基いて説明する。
【0024】
図1は本実施の形態における柱脚部接合構造の立断面図であり、図2は本実施の形態における柱脚部接合構造の平断面図である。
図1,図2に示すように、柱脚部接合構造は、柱脚接合部材1を介して柱部材2の柱脚部2aと基礎コンクリート3(コンクリート体)とを剛接合させる構造であって、基礎コンクリート3の上部に中空の柱脚接合部材1が埋設され、この柱脚接合部材1の中に柱部材2の柱脚部2aが挿設された構成からなる。
【0025】
基礎コンクリート3は、柱部材2によって形成される柱を支持するためのフーチングや基礎梁等の公知の基礎構造体であって、鉄筋コンクリート造の構造体またはフカシコンクリートである。
【0026】
柱脚接合部材1は、縦方向(上下方向)に延在させて配置されて基礎コンクリート3内に埋設された外鋼管4と、外鋼管4の上端に固着されたダイアフラム5と、外鋼管4の外周面に固着された複数のアンカー材6…とから構成されている。
【0027】
外鋼管4は、柱脚部2aに隙間をあけて外装される鋼管、つまり、柱部材2の断面よりも外形が一回り大きい鋼管であり、公知の角形鋼管からなる。外鋼管4の断面外形寸法(外鋼管成)は1.5D程度(Dは柱部材2の柱成寸法。以下、同様。)であり、外鋼管4内に挿設された柱部材2の柱脚部2aの各外周面と外鋼管4の各外周面との間にはD/4程度の間隔がそれぞれけられている。また、外鋼管4の高さ寸法は、ダイアフラム5の厚さ寸法を含めてD/2以上になるように設定されている。
【0028】
ダイアフラム5は、柱脚部2aを囲うように延在する帯状の部材であり、矩形鋼板の中央部に柱部材2の柱脚部2aを挿通させるための矩形の孔5aが形成された構成になっている。ダイアフラム5は、外鋼管4の軸線に対して垂直に配置されて外鋼管4の上端に溶接接合されており、ダイアフラム5の上面は、基礎コンクリート3の上面と面一になっている。また、ダイアフラム5は、その外形が外鋼管4の外周面に沿った形状(外鋼管4の断面形状)になっており、外鋼管4の上端を閉塞するように外鋼管4の上端から内側に張り出された状態で設けられている。ダイアフラム5の孔5aは、柱部材2の柱脚部2aの外周面に沿った形状に形成されており、さらに、柱部材2の柱脚部2aの外形よりも若干(30mm程度)大きく形成されている。
【0029】
複数のアンカー材6…は、それぞれ上下方向に延在する棒鋼からなり、外鋼管4を囲うように所定の間隔をあけて配設されている。各アンカー材6…は、その上端が外鋼管4の外周面にそれぞれフレア溶接により接合されて外鋼管4と一体化されており、外鋼管4の下端から下方に向けて張り出されて基礎コンクリート3内にそれぞれ定着されている。
【0030】
柱部材2は、柱を構成する部材であり、公知の角形鋼管からなる。柱部材2の柱脚部2aは、上記したダイアフラム5の孔5aから外鋼管4の中に挿設されている。柱部材2の下端には、柱部材2の下端を閉塞するベースプレート7が溶接接合によって固着されている。このベースプレート7は、柱脚部2aの断面形状(矩形)よりも大きい形状(矩形)の鋼板からなり、ベースプレート7の外縁部は、柱脚部2aの外周面から張り出されている。なお、このベースプレート7は、上記したダイアフラム5の孔5aや後述するプレキャスト部材10の孔10aよりも小さく、当該孔5a,10aの中に挿入可能な大きさになっている。また、柱部材2の柱脚部2aの内部には、コンクリートが充填されて内部充填コンクリート8が形成されている。この内部充填コンクリート8は、柱部材2の下端(ベースプレート7上面)から所定高さまでの範囲に形成されており、内部充填コンクリート8の上端高さ位置は、基礎コンクリート3の上面からD/2以上(Dは柱部材2の柱成)に設定されている。
【0031】
また、上記した外鋼管4と柱部材2の柱脚部2aとの間には、柱脚部2aを固定するための固定部9が介在されている。この固定部9は、柱脚部2aが挿通される孔10aを有する筒状のプレキャスト部材10と、プレキャスト部材10と柱脚部2aとの間に充填される充填材11とから構成されている。
【0032】
プレキャスト部材10は、工場等で予め形成されたプレキャストコンクリート体であって、外鋼管4の内側に形成されて柱脚接合部材1と一体化されている。したがって、プレキャスト部材10の外形は、外鋼管4の内周面と同様の形状(断面矩形)になっており、また、プレキャスト部材10の上端面はダイアフラム5で被覆され、プレキャスト部材10の外周面は外鋼管4で被覆されている。また、プレキャスト部材10の孔10aは、柱脚部2aの外周面に沿って形成された断面矩形の貫通孔である。この孔10aは、柱部材2の柱脚部2aよりも若干(30mm程度)大きく形成されており、プレキャスト部材10の内周面と柱脚部2aの外周面との間には隙間があけられている。なお、プレキャスト部材10の内周面は、充填材11との付着力を高めるために凸凹に形成されていることが好ましい。
【0033】
充填材11は、プレキャスト部材10の内周面と柱脚部2aの外周面との間に形成された隙間に充填されるものであって、充填性に優れたグラウト材が用いられる。この充填材11としては、セメントペーストや無収縮モルタル等のセメントを主剤とするグラウト材等を用いることができる。また、充填材11として、前記したセメント主剤のグラウト材の他、プラスター等からなるグラウト材や、樹脂等からなる接着材等を用いることもでき、充填材11の種類は適宜変更可能である。
【0034】
次に、上記した構成からなる柱脚部接合構造の施工方法について説明する。
【0035】
まず予め、工場等で、上記した外鋼管4とダイアフラム5と複数のアンカー材6…とからなる柱脚接合部材1を製作しておく。このとき、上記したプレキャスト部材10を外鋼管4の内側に形成して、柱脚接合部材1にプレキャスト部材10を一体化させておく。また、柱部材2の下端にベースプレート7を固着させておく。さらに、柱部材2の外周面には、柱部材2の荷重を受けて柱部材2を仮支持する図5に示す仮設ブラケットBを取り付けておく。この仮設ブラケットBは、柱部材2の建方精度を確保するための部材であって、柱部材2の高さ位置を決めるとともに柱部材2を鉛直に建てるための部材である。つまり、仮設ブラケットBは、柱部材2が正規の高さ位置に鉛直に配置されたときにダイアフラム5上に預けられるように設けられている。
【0036】
図3に示すように、上記したプレキャスト部材10付きの柱脚接合部材1を現場に搬入して、当該柱脚接合部材1を柱部材2の柱脚部2aの接合箇所に配置する工程を行う。具体的には、基礎コンクリート3の図示せぬ鉄筋を配筋した後、所定位置にプレキャスト部材10付きの柱脚接合部材1を配置して動かないように仮固定する。このとき、柱脚接合部材1のダイアフラム5の孔5aが柱部材2の建柱位置にくるように柱脚接合部材1の位置合わせを行うとともに、柱脚接合部材1のダイアフラム5の上面が基礎コンクリート3の上面と面一になるように、柱脚接合部材1の高さ合わせを行う。
【0037】
次に、図4に示すように、基礎コンクリート3のコンクリートを打設する工程を行う。具体的には、基礎コンクリート3の図示せぬ型枠内にコンクリートを流し込んで基礎コンクリート3を形成する。このとき、柱脚接合部材1の中(プレキャスト部材10の孔10a内)のコンクリート天端は、プレキャスト部材10の下端位置に合わせて、柱脚接合部材1の中に掘り込み穴H(中空部)を形成する。また、柱脚接合部材1の周りのコンクリート天端は、ダイアフラム5の上面位置に合わせられている。このように基礎コンクリート3のコンクリート打設を行うことで、柱脚接合部材1のアンカー材6…を基礎コンクリート3の中に定着させる。
【0038】
次に、図5に示すように、基礎コンクリート3が硬化した後、プレキャスト部材10と柱脚部2aとの隙間を埋めるための充填材11をダイアフラム5の孔5aから外鋼管4(筒状のプレキャスト部材10)の中に入れる工程を行う。具体的には、柱脚接合部材1の掘り込み穴Hの中に充填材11を投入する。このとき、掘り込み穴H内に投入する充填材11の量は、正規の必要量、つまり、柱脚部2aの外周面とプレキャスト部材10の内周面との隙間空間の容積量よりも若干多くしておくことが好ましい。これによって、充填材11の量が不足する事態を避けることができる。
【0039】
次に、図5,図6に示すように、投入した充填材11が硬化する前に、柱脚接合部材1のダイアフラム5の孔5aから柱部材2の柱脚部2aを挿入して柱部材2を配置する工程を行う。具体的には、ベースプレート7や仮設ブラケットBが取り付けられた柱部材2を吊り上げ、柱部材2の柱脚部2aを柱脚接合部材1の掘り込み穴Hの中に差し込む。そして、柱部材2の外周面に取り付けられた仮設ブラケットBをダイアフラム5の上面に載せて柱部材2の荷重を仮設ブラケットBで受ける。これによって、柱部材2が支持されるとともに柱部材2の高さ位置が決まり、さらに柱部材2が鉛直に建てられる。このとき、柱部材2が所定位置に配置されるように位置合わせを行う。なお、掘り込み穴Hの中に柱部材2の柱脚部2aを挿入したとき、掘り込み穴Hの中にあった充填材11のうち余分な充填材11がダイアフラム5の孔5aから溢れ出る。
【0040】
次に、充填材11が硬化して柱部材2が立設された後、柱部材2の中にコンクリートを打設して内部充填コンクリート8を形成する工程を行う。なお、予め工場等で、柱部材2の中に内部充填コンクリート8を形成しておいてもよく、この場合、現場での内部充填コンクリート8のコンクリート打設は不要となる。
【0041】
上記した本実施の形態における柱脚部の接合構造によれば、充填材11が硬化することで、柱部材2と柱脚接合部材1とが一体化され、柱部材2と基礎コンクリート3とを一体化させて剛接合させることができる。
【0042】
また、上記した本実施の形態における柱脚部の接合構造は、柱部材2の柱脚部2aに隙間をあけて外装された外鋼管4と、外鋼管4の上端に固着されて柱脚部2aが挿通される孔5aを有するダイアフラム5と、外鋼管4に固着されて基礎コンクリート3内に定着されるアンカー材6…とを有する柱脚接合部材1が備えられ、外鋼管4と柱部材2の柱脚部2aとの間に、柱脚部2aを固定するための固定部9が介在された構成からなることにより、外鋼管4がダイアフラム5で縁補強され、面外方向への変形が拘束されるため、効果的な応力伝達が行われる。このため、高耐力・高靭性の柱脚接合構造が実現され、柱部材2の終局耐力を保証する柱脚接合構造を形成することができる。これによって、柱脚接合箇所が先行破壊することを防止できる。
【0043】
また、上記した構成からなる本実施の形態における柱脚部の接合構造によれば、基礎コンクリート3の中に埋設させる柱脚接合部の高さをD/2まで低減させることが可能である。このため、基礎コンクリート3のレベル下げ量を低減させることができ、この基礎コンクリート3の構築に伴う掘削量の増大を抑えることができ、施工性を向上させることができる。また、基礎コンクリート3上部のフカシ部の高さも低減させることができ、フカシ分のコンクリート量を抑えることができる。これによって、ローコスト化及び工期短縮を図ることができる。さらに、掘削量やコンクリート量の増加を抑えることができるため、基礎コンクリート3の中に外鋼管4を埋め込む構成にすることができ、建築計画上からも優れた柱脚部を実現することができる。
【0044】
また、上記した構成からなる本実施の形態における柱脚部の接合構造によれば、現場溶接作業やナット締め等の緊張作業が不要であり、また、アンボンド処理などの作業も不要である。これによって、特殊な材料を用いた作業(アンボンド処理)や、特殊な工具を用いる特殊作業(現場溶接、ボルト緊張)及びその管理等の複雑な作業工程が無いため、施工手間がかからず、施工性を向上させることができ、接合作業を大幅に省力化することができる。
【0045】
また、本実施の形態における柱脚部の接合構造は、固定部9が、柱脚部2aが挿通される孔10aを有する筒状のプレキャスト部材10と、プレキャスト部材10と柱脚部2aとの間に充填される充填材11とからなり、プレキャスト部材10は、外鋼管4の内側に形成されて柱脚接合部材1と一体化された構成となっているため、固定部9を形成するための作業が簡略化されて現場作業が省力化される。これによって、工期の短縮を図ることができる。また、現場で固定部9を形成する場合に比べて容易に品質を確保することが可能であるため、固定部9に空隙が形成される等の施工不良が起こり難い。これによって、柱脚接合構造の信頼性を向上させることができ、高品質の柱脚部接合構造を提供することができる。
【0046】
また、本実施の形態における柱脚部の接合構造は、柱部材2の下端に、柱脚部2aの外周面からその外縁部が張り出されたベースプレート7が固着されているため、ダイアフラム5の外周部との間で圧縮コンクリート(固定部9)のアーチが構成され、柱脚接合構造の曲げ抵抗力および引張り抵抗力が大きくなる。これによって、柱脚接合構造の耐力を一層増大させることができる。
【0047】
また、本実施の形態における柱脚部の接合構造は、ダイアフラム5の孔5aが、柱脚部2aの外形よりも大きく形成されているため、ダイアフラム5の孔5aの中に柱部材2の柱脚部2aを挿入させたときに、ダイアフラム5の内周端と柱脚部2aの外周面との間に形成される隙間の分だけ、柱部材2の位置を調整することができる。これによって、柱脚接合部材1の設置に多少の誤差が生じても、柱部材2を正規の位置に配置させることができる。したがって、柱脚接合部材1を厳密な精度で設置する必要がなく、柱脚接合部材1の設置作業が容易となり、施工性を向上させることができる。
【0048】
また、本実施の形態における柱脚部の接合構造によれば、鋳鋼や太径ボルト等の特殊な材料や部材を使用しておらず、また、柱脚接合部材1も汎用部材で簡単且つ安価に製作できるため、コストアップを抑えることができる。また、柱脚接合部材1が簡単且つ安価に製作可能であるため、既製品を用いる必要がなく、柱の形状寸法に応じた柱脚接合部材1をその都度製作することができる。これによって、柱の形状寸法(円形、角形、H形等)や材種(軟鋼、高張力鋼、コンクリート等)を問わす種々の柱部材2に適用できる。
【0049】
また、既製品のベース部材を用いる場合は、アンカーボルトが太くて長いため、基礎コンクリート3の高さ寸法を増大させなければならない場合があるが、本実施の形態における柱脚部の接合構造によれば、既製品のベース部材を用いる場合に比べて径が小さいアンカー材6…を用いることができるため、アンカー長さが短く、基礎コンクリート3の高さ寸法を増大させる必要がない。これによって、掘削量やコンクリート量を低減させることができ、ローコスト化を図ることができる。
【0050】
また、本実施の形態における柱脚部の接合構造によれば、柱部材2の断面よりも外形が一回り大きい外鋼管4を使用しているため、柱脚部接合構造の耐力が大幅に増大されている。また、アンカー材6…は任意に設定できるため、必要な曲げ耐力に応じて最適な設計ができ、引張りが作用する場合でも耐力を確保することができる。
【0051】
また、本実施の形態における柱脚部の接合構造によれば、プレキャスト部材10の上端面はダイアフラム5で被覆され、プレキャスト部材10の外周面は外鋼管4で被覆されており、固定部9は外鋼管4とダイアフラム5とで拘束された構成になっているため、固定部9に圧壊等の損傷が生じ難い。これによって、高耐力の柱脚部接合構造を実現することができる。
【0052】
また、本実施の形態における柱脚部の接合構造によれば、柱脚接合部材1や固定部9を撤去すれば、柱部材2をリユースすることが可能であり、地球環境に貢献することができる。
【0053】
また、上記した構成からなる柱脚部の接合構造の施工方法によれば、予め、柱脚接合部材1を製作するとともに、柱脚部2aが挿通される孔10aを有する筒状のプレキャスト部材10を外鋼管4の内側に形成して、柱脚接合部材1にプレキャスト部材10を一体化させておき、柱脚接合部材1を柱脚部2aの接合箇所に配置する工程を行った後、基礎コンクリート3のコンクリートを打設する工程を行って、その後、ダイアフラム5の孔5aから外鋼管4の中に充填材11を入れる工程を行い、次いで、充填材11が硬化する前に、ダイアフラム5の孔5aから柱部材2の柱脚部2aを挿入して柱部材2を配置する工程を行うため、柱部材2を外鋼管4の中に挿入したとき、予め投入された充填材11がプレキャスト部材10と柱脚部2aとの隙間に充填される。これによって、柱部材2を配置する工程の後に、プレキャスト部材10と柱脚部2aとの隙間に充填材11を注入する必要がなく、施工工程を簡略化することができる。
【0054】
以上、本発明に係る柱脚部の接合構造およびその施工方法の実施の形態について説明したが、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、上記した実施の形態では、断面矩形の角形鋼管からなる柱部材2を用いているが、本発明は、断面円形の円形鋼管からなる柱部材でもよく、H形鋼やその他の鋼材からなる柱部材でもよい。さらに、本発明は、鋼管の中にコンクリートを充填したコンクリート充填鋼管(CFT)造の柱部材であってもよく、さらに、鉄骨系以外の柱部材、例えばプレキャストコンクリートからなる柱部材であってもよい。
【0055】
また、上記した実施の形態では、柱部材2と同様の断面矩形の角形鋼管からなる外鋼管4を用いているが、本発明は、断面円形の円形鋼管からなる外鋼管であってもよく、或いは、断面形状が他の多角形(三角形、五角形等)の外鋼管であってもよい。なお、本発明に係る外鋼管は、柱部材の断面形状と同じでも異なってもよい。
【0056】
また、上記した実施の形態では、外鋼管4の外側面にアンカー材6…が固着されているが、本発明は、外鋼管の内側にアンカー材が固着されていてもよい。さらに、本発明は、アンカー材をダイアフラムに溶接してもよく、或いは、ダイアフラムにあけられた孔にアンカー材を挿通させて、このアンカー材をナット等の締結具によりダイアフラムに固定してもよい。
【0057】
また、上記した実施の形態では、アンカー材6…は鉛直方向に真直ぐ延在する棒鋼からなるが、本発明は、アンカー材は斜め方向に延在されていてもよく、或いは屈曲されていてもよい。さらに、本発明は、棒鋼以外のアンカー材を使用してもよく、例えば、定着長さを短くすることができるTヘッドバーやマイティヘッドスタッド鉄筋、プレートナット工法のアンカー材を使用することも可能である。
【0058】
また、上記した実施の形態では、柱脚接合部材1の外鋼管4を基礎コンクリート3内に埋設させる構成となっているが、本発明は、建築計画上でコンクリート体上に外鋼管を露出させても構わない場合には、柱脚接合部材の外鋼管をコンクリート体の上に配置した露出柱脚にすることも可能である。例えば、外鋼管の下端をコンクリート体上面と面一にした構成でもよく、これによって、コンクリート体への外鋼管の埋め込みが無くなり、掘削量やコンクリート量の増大をなくすことができる。
【0059】
また、上記した実施の形態では、フーチングや基礎梁等の基礎コンクリート3の上に柱部材2を接合させる場合を例にして説明しているが、本発明は、柱部材を接合させる対象がコンクリート体であればよく、例えば、中間階の梁構造体上に柱部材を接合させてもよく、或いは、アンカー材の定着長さを確保できる場合には、土間コンクリートやスラブコンクリートの上に柱部材を接合させてもよい。
【0060】
また、上記した実施の形態では、柱部材2の外周面に仮設ブラケットBを付設させて、この仮設ブラケットBによって柱部材2の荷重を受けているが、本発明は、柱部材の下端に設けられたベースプレートで柱部材の荷重を受けてもよい。この場合、柱部材の傾斜や高さ等の建方精度を確保するための調整機構を別途設ける。
【0061】
また、上記した実施の形態では、柱脚接合部材1の掘り込み穴H(プレキャスト部材10の孔10a)の中に柱部材2の柱脚部2aを挿入する前に、掘り込み穴Hの中に充填材11を入れ、充填材11を入れた後に柱部材2の柱脚部2aを挿入しているが、本発明に係る柱脚部の接合構造は、柱脚接合部材の掘り込み穴の中に柱部材の柱脚部を挿入した後にダイアフラムと柱脚部との隙間から充填材を注入することで、接合構造を形成してもよい。
【0062】
また、上記した実施の形態では、固定部9は、プレキャスト部材10と充填材11とからなっているが、本発明は、プレキャスト部材を用いずに、外鋼管と柱脚部との間にコンクリートやモルタルを充填して固定部を形成してもよい。この場合、上記した実施の形態のように、外鋼管の中に柱部材の柱脚部を挿入する前に、流動性を有する固定部の材料(グラウト材等)を外鋼管の中に入れ、この硬化性材料を入れた後に柱部材の柱脚部を外鋼管の中に挿入してもよく、或いは、外鋼管の中に柱部材の柱脚部を挿入した後に、ダイアフラムと柱部材との隙間又はダイアフラムに形成された注入口からコンクリート等の固定部の材料を打設してもよい。
【0063】
その他、本発明の主旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施の形態を説明するための柱脚部の接合構造の立断面図である。
【図2】本発明の実施の形態を説明するための柱脚部の接合構造の平断面図である。
【図3】本発明の実施の形態を説明するための柱脚部の接合構造の施工状況を表す斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態を説明するための柱脚部の接合構造の施工状況を表す斜視図である。
【図5】本発明の実施の形態を説明するための柱脚部の接合構造の施工状況を表す斜視図である。
【図6】本発明の実施の形態を説明するための柱脚部の接合構造の施工状況を表す斜視図である。
【符号の説明】
【0065】
1 柱脚接合部材
2 柱部材
2a 柱脚部
3 基礎コンクリート(コンクリート体)
4 外鋼管
5 ダイアフラム
5a 孔
6 アンカー材
7 ベースプレート
9 固定部
10 プレキャスト部材
10a 孔
11 充填材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート体上に建てられる柱部材の柱脚部を前記コンクリート体に接合させる柱脚部の接合構造において、
前記柱脚部に隙間をあけて外装される外鋼管と、該外鋼管の上端に固着されて前記柱脚部が挿通される孔を有するダイアフラムと、前記外鋼管又は前記ダイアフラムに固着されて前記コンクリート体内に定着されるアンカー材とを有する柱脚接合部材が備えられ、
前記外鋼管と前記柱脚部との間に、前記柱脚部を固定するための固定部が介在されていることを特徴とする柱脚部の接合構造。
【請求項2】
請求項1記載の柱脚部の接合構造において、
前記固定部は、前記柱脚部が挿通される孔を有する筒状のプレキャスト部材と、該プレキャスト部材と前記柱脚部との間に充填される充填材とからなり、
前記プレキャスト部材は、前記外鋼管の内側に形成され、前記柱脚接合部材と一体化されていることを特徴とする柱脚部の接合構造。
【請求項3】
請求項1又は2記載の柱脚部の接合構造において、
前記柱部材の下端には、該柱脚部の外周面からその外縁部が張り出されたベースプレートが固着されていることを特徴とする柱脚部の接合構造。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか記載の柱脚部の接合構造において、
前記ダイアフラムの孔は、前記柱脚部の外形よりも大きく形成されていることを特徴とする柱脚部の接合構造。
【請求項5】
コンクリート体上に建てられる柱部材の柱脚部を前記コンクリート体に接合させる柱脚部の接合構造の施工方法において、
予め、前記柱脚部に隙間をあけて外装される外鋼管と、該外鋼管の上端に固着されて前記柱脚部が挿通される孔を有するダイアフラムと、前記外鋼管又は前記ダイアフラムに固着されて前記コンクリート体内に定着されるアンカー材とを有する柱脚接合部材を製作するとともに、前記柱脚部が挿通される孔を有する筒状のプレキャスト部材を前記外鋼管の内側に形成して、前記柱脚接合部材に前記プレキャスト部材を一体化させておき、
該柱脚接合部材を前記柱脚部の接合箇所に配置する工程を行った後、前記コンクリート体のコンクリートを打設する工程を行って、前記アンカー材を前記コンクリート体内に埋設させ、
その後、前記ダイアフラムの孔から前記プレキャスト部材の孔の中に、前記プレキャスト部材と前記柱脚部との間に充填させる充填材を入れる工程を行い、
次いで、前記充填材が硬化する前に、前記ダイアフラムの孔から前記柱部材の前記柱脚部を挿入して前記柱部材を配置する工程を行うことを特徴とする柱脚部の接合構造の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−277913(P2007−277913A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−105217(P2006−105217)
【出願日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】