説明

核酸を分析するためのラボ・オン・チップシステム

本発明は、一般に核酸検出分野に関する。特に、本発明は核酸を分析するためのラボ・オン・チップシステムを提供し、本システムには、制御可能閉鎖空間、調製し、および/または増幅できる、さらに核酸プローブとハイブリッド形成できる標的核酸、および必要に応じて制御可能閉鎖空間と外部環境との間の物質交換を一切せずに制御可能閉鎖空間内で取得できるハイブリッド形成信号が特に含まれる。このラボ・オン・チップシステムを使用して、核酸を分析する方法も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(技術分野)
本発明は、一般に核酸検出分野に関する。特に、本発明は核酸を分析するためのラボ・オン・チップシステムを提供し、本システムは、制御可能閉鎖空間を特に含み、制御可能閉鎖空間と外部環境との間の物質交換を一切せずに制御可能閉鎖空間内で、標的核酸を調製するか、および/または増幅でき、さらに核酸プローブとハイブリッド形成でき、必要に応じてハイブリッド形成信号が取得できる。このラボ・オン・チップシステムを使用して、核酸を分析する方法も提供される。
【背景技術】
【0002】
(背景技術)
感染因子を検出するための現行手法では、感染性細菌の検出のために主として細胞培養が使用され、血清学は感染症ウイルスの検出のために主として使用されている。核酸をベースとした検出方法は迅速かつ高感度であり、従来の検出方法、例えば、細胞培養または血清学に基づいた方法と比較すると待ち時間を短縮、あるいはむしろほとんど不要とする。したがって、核酸をベースとした検出方法は、臨床検出において当然のトレンドである。
【0003】
従来の核酸に基づいた検出方法、特に感染因子のための臨床検出法には、3つの別個のステップが含まれる。第1ステップは、核酸、例えばDNA、RNAを得るための試料調製、例えば、血清、全血、唾液、尿、および糞便などの試料処理である。しばしば、不十分な量の核酸が、試料から単離されるかまたは調製され、この調製された核酸がポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)、鎖置換増幅(SDA)、およびローリンサイクル増幅(RCA)などの多くの方法を使用して増幅される(Andrasら、Mol.Biotechnol、19:29−44(2001))。従来の電気泳動法は十分に特異的ではなく、ハイブリッド形成が臨床検出法のために通常必要とされるため、第2のステップはハイブリッド形成法である。代表的なハイブリダイゼーション法は、ノーザンブロット、ドットブロット(あるいはドットハイブリッド形成法)、およびスロットブロット(あるいはスロットハイブリッド形成法)などがある。第3のステップは、ハイブリッド形成信号を検出することであり、標識の検出に基づくことが多い。標識は、増幅またはハイブリッド形成ステップ中に導入することができる。信号検出方法は使用される標識によって異なり、例えば、蛍光検出器は蛍光性標識を検出するために使用され、オートラジオグラフィは放射性標識を検出するために使用され、またバイオ標識、例えばビオチン標識、ジゴキシゲニン標識などの検出ではさらに酵素の増幅をさらに必要とする場合がある。必要とされる検出感度に依存して、様々な信号増幅方法を使用することができる。例えば、チラミド信号増幅(TSA)(Karstenら、Nucleic Acids Res.,E4(2002)およびデンドリマー(Kricka、Clin.Chem、45:453−8(1999))がある。
【0004】
核酸検出における3つの独立したキーステップにより、これらのステップ間でのマニュアル操作が必要である。これらのマニュアル操作により検出手順が複雑化し、時間を消費し、高価となり、さらに実験誤差を生じ、検出の繰り返し精度および一貫性を低下させる可能性がある。マニュアル操作は、交差汚染をさらに増加させるが、これが主な理由となって、臨床使用では、核酸に基づいた検出、特に、増幅ステップを有するこのよう各格検出の適用が広まらない。
【0005】
核酸チップまたはアレイを使用し、多数の核酸を同時に分析することができる(DebouckおよびGoodfellow、Nature Genetics、21(Suppl.):48−50(1999);Dugganら、Nature Genetics、21(Suppl.):10−14(1999);Gerholdら、Trends Biochem.Sci.,24:168−173(1999);およびAlizadehら、Nature、403:503−5110(年?))。核酸チップまたはアレイを使用して、与えられた条件下での遺伝子発現パターンを迅速に分析することができる。核酸チップまたはアレイを使用して1回の測定で、1kbまでの特定の領域におけるSNPを分析することができる(Guoら、Genome Res、12:447−57(2002))。
【0006】
生化学反応および分析も試料調製、生化学反応、および信号検出とデータ分析の3つステップを含むことが多い。チップ上で1つ以上のステップを縮小化することにより、例えば、試料調製のための細胞濾過チップおよび誘電泳動チップ、遺伝的変異および遺伝子発現を検出するためのDNAマイクロアレイ、および薬物スクリーニングのための高スループットミクロ反応チップなどの、専用のバイオチップが得られる。チップ上で生化学分析の全てのステップを行ない、ミクロ分析システムまたはラボ・オン・チップシステムを生産する努力がなされている。このようなミクロ分析システムあるいはラボ・オン・チップシステムを使用すると、閉鎖系において迅速に、試料調製から分析結果を得るまでの全ての分析的ステップを完了することが可能性と予想される。
【0007】
現行のラボ・オン・チップシステムの1つの弱点は、技術的に要求される複雑なミクロスケール工学を要することである。ほとんどの報告されたラボ・オン・チップシステムは、特定のステップ、例えば試料調製チップ(Wildingら、Anal.Biochem.,257:95−100(1998)、細胞単離チップ(Wangら,J.Phys.D:Appl.Phys.,26:1278−1285(1993)、およびのPCRチップ(Chengら、Nucleic Acids Res.,24:380−385(1996)の小型化に基づいている。市販されていないが、Chengらは試料調製、生化学反応、および結果の検出を一緒に統合した最初のラボ・オン・チップシステムを報告した(Chengら、Nat.Biotechnol、16:541−546(1998))。現在市販されているシステム、例えば、ナノゲンNanogen社のマイクロエレクトリックアレイMicroelectronic Arrayは、ハイブリッド形成および信号検出ステップのみを統合し、自動化したものである。ナノゲンNanogen社のマイクロエレクトリックアレイMicroelectronic Arrayでは、複雑な装置および分析ソフトウェアのセットを使用する必要がある。さらに、Nanogen社の電気泳動チップを作製するコストは高い。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本出願は、既存のラボ・オン・チップシステムの弱点、および新規なラボ・オン・チップシステムを提供することによって当技術分野における他の関連する問題点に対処する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(本発明の開示)
一態様において、本発明は、核酸を分析するためのラボ・オン・チップシステムに向けたものであり、このシステムは、基材上に適切な材料で囲まれた制御可能な閉鎖空間を備え、この適切な材料は熱伝導性、生体適合性であり、核酸増幅またはハイブリッド形成を阻害せず、この制御可能な閉鎖空間は、その基材表面上に標的核酸に相補的な核酸プローブ、この基材の表面上または離れた位置に試料からこの標的核酸の調製、この標的核酸の増幅、この核酸プローブとこの標的核酸との間のハイブリッド形成に適した他の試薬、および/またはこの核酸プローブとこの標的核酸との間のハイブリッド形成を検出する手段を備え、試料の添加は、適切な条件下で、この制御可能閉鎖空間へ標的核酸を加えることを含み、その結果、この試料から連続的に試料調製され、および/またはこの調製された標的核酸が増幅され、この核酸プローブおよび標的核酸の間でハイブリッド形成され、好ましくは、この制御可能閉鎖空間および外部環境の間での任意の物質交換なしに、この制御可能閉鎖空間内でハイブリッド形成信号が検出される。
【0010】
別の態様では、本発明は核酸を分析する方法を指向しており、この方法は、a)上記ラボ・オン・チップシステムを提供するステップと、b)a)で提供されるシステムのこの制御可能閉鎖空間内に、標的核酸が含まれるかまたは疑われる試料を添加するステップと、c)この試料よりこの標的核酸の連続的試料調製、および/またはこの調製された標的核酸の増幅、およびこの核酸プローブおよびこの調製された標的核酸の間のハイブリッド形成、および好ましくはこの制御可能閉鎖空間内でハイブリッド形成信号の検出を可能とするステップとを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(本発明の実施形態)
開示を明確にするため、本発明の詳細な説明を、以下の複数のサブセクションに分割するが、これは本発明を限定するものではない。
【0012】
(A.定義)
別に規定のないかぎり、本明細書に使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明に属する当業者によって一般に理解される用語と同じ意味を有する。本明細書に引用した全ての特許、出願、出版された出願、および他の出版物は、その内容全体を参照によって引用される。本節で述べる定義が、参照によって本明細書に引用される特許、出願、公開された出願、および他の出版で述べられた定義に反する、あるいはさもなくば矛盾する場合は、参照によって本明細書に引用される定義よりも、本節で述べる定義を優先する。
【0013】
本明細書で使用される「1つの」あるいは「1つの」は「少なくとも1つ」あるいは「1以上」を意味する。
【0014】
本明細書で使用される「制御可能閉鎖空間」は、例えば、外部へ開放し試料あるいは他の試薬の添加を可能とし、閉鎖し、制御可能閉鎖空間と外部環境との間の物質交換なしに、制御可能閉鎖空間内で標的核酸調製、必要に応じて増幅、および核酸プローブへのハイブリッド形成を可能とするなど、空間の開放および閉鎖を自在に制御できることを意味する。
【0015】
本明細書で使用される「生体適合性」は、生物系および生物学的あるいは生化学反応において毒性または有害な効果を示さない物質の性質および能力を指す。
【0016】
本明細書で使用される「熱伝導度」は、その熱伝導度の項で表現できる断熱材としての物質の有効性を指し、これはその熱伝導度として表すことができる物体を介したエネルギー移動度は、物体およびその断面積全体にわたって温度勾配に比例する。インフィンテシマルな厚さおよび温度差の限界では、熱伝導の基本則は次のとおりである:
Q=λdT/dx
ここで、Qは熱流量、Aは断面積、dT/dxは温度/厚み勾配、およびλは熱伝導度として定義される。大きな熱伝導度を有する物質は熱の良導体であり、小さな熱伝導度を有するものは、不良熱導体、すなわち優れた熱絶縁体である。したがって、熱伝導度値(単位W/m・K)に関する知見から、異なる材料の断熱効率の間でなされる比較、定量的比較が可能になる。
【0017】
本明細書で使用される「核酸(類)」は、特に単鎖、二重鎖、三重鎖、直鎖、環状形態を含む任意の形態のデオキシリボ核酸(DNA)および/またはリボ核酸(RNA)を指す。さらにポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、核酸のキメラ、およびこれらの類似体が含まれる。本明細書に記載された核酸は、塩基アデノシン、シトシン、グアニン、チミジン、およびウリジンからなる公知のデオキシリボヌクレオチドおよびリボヌクレオチドより構成され、あるいはこれらの塩基類の類似体または誘導体より構成される場合もある。さらに、ホスホトリエステル、ポリヌクレオペプチド(PNA)、メチルホスホネート、ホスホロチオネート、ポリヌクレオチドプライマー、ロックされた核酸(LNA)、およびその類似物などの従来にはないリン酸ジエステル骨格を備えた多様な他のオリゴヌクレオチド誘導体も本明細書に含まれる。
【0018】
本明細書で使用される「プローブ」は、一般にその検出を促進するため、標的配列にハイブリッド形成されるオリゴヌクレオチドあるいは核酸を指す。用語「標的配列」は、プローブが特異的に結合する核酸配列を指す。増幅プロセスにおいて、標的核酸を初回の抗原刺激するために使用されるプライマーと異なり、重合酵素を使用して、標的配列を増幅するためにプローブを拡張する必要はない。
【0019】
本明細書で使用される「相補的、あるいは合致した」は、2つの核酸配列が少なくとも50%の配列同一性を有することを意味する。2つの核酸配列は、少なくとも60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、あるいは100%の配列同一性を有することが好ましい。「相補的、あるいは合致した」は、低い、中程度、およびまたは高いストリンジェンシー条件の下で、2つの核酸配列がハイブリッド形成することができることをさらに意味する。
【0020】
本明細書で使用される「本質的に相補的、あるいは本質的に合致した」は、2つの核酸配列が少なくとも90%の配列同一性を有することを意味する。2つの核酸配列が少なくとも95%、96%、97%、98%、99%あるいは100%の配列同一性を有することが好ましい。あるいは、「本質的に相補的に、あるいは本質的に合致した」は、2つの核酸配列が高いストリンジェンシー条件の下でハイブリッド形成することができることを意味する。
【0021】
本明細書で使用される「2つの完全に合致したヌクレオチド配列」は、すなわち、DNA:DNA二重鎖中のA−TおよびC−G対、DNA:RNAあるいはRNA:RNA二重鎖におけるA−UおよびC−G対など、ワトソンクリック塩基対原理に従って2つのヌクレオチド鎖が合致する核酸二重鎖を指す。
【0022】
本明細書で使用されるミスマッチ割合を測定する場合の「ハイブリッド形成のストリンジェンシー」は以下の通りである:
1)高ストリンジェンシー:0.1×SSPE(あるいは0.1×SSC)、0.1%SDS、65℃、
2)中程度ストリンジェンシー:0.2×SSPE(あるいは1.0×SSC)、0.1%SDS、50℃(中等度ストリンジェンシーとも呼ばれる)、および
3)低ストリンジェンシー:1.0×SSPE(あるいは5.0×SSC)、0.1%SDS、50℃。
【0023】
別の緩衝液、塩、および温度を使用しても当然のことながら達成することができる。
【0024】
本明細書で使用される「遺伝子」は、染色体上の特定座位を占有する遺伝的形質の単位を指し、その存在は、異なる対立形質の出現によって確認することができる。分断遺伝子が出現していれば、遺伝子はさらに単鎖のポリペプチドを産生するために必要とされるDNA塩基配列のセット(エキソン)を含む。
【0025】
本明細書で使用される「遺伝子チップ」は、例えば、任意の適切な目的に使用することができる表面に固体化された長鎖PCR生成物などの、オリゴヌクレオチドあるいは核酸のアレイを指す。遺伝子チップの代表的な使用法は、(逆転写の後に)RNA試料のスクリーニングを含み、したがってそのRNAのある細胞内または組織内でどの遺伝子が発現しているかを迅速に判定する方法、一塩基多型(SNP)検出、変異分析、疾患あるいは感染予後または診断、ゲノム比較などが含まれる。
【0026】
本明細書で使用される「融解温度」(「Tm」)は、核酸二重鎖すなわちDNA:DNA、DNA:RNA、RNA:RNA、PNA:DNA、LNA:RNAおよびLNA:DNAが変性する温度範囲の中間点を指す。
【0027】
本明細書で使用される「標識」は、検出可能な物性を有する任意の化学基または成分、あるいは基材の検出可能な生成物への転換を触媒する酵素など、化学其または成分によって検出可能な物性を呈することができる任意の化合物を指す。用語「標識」はさらに特定の物性の発現を抑制する化合物を含む。「標識」は結合対を作る化合物とすることもでき、結合対のもう一方が検出可能な物性をもっている。代表的な標識は、巨大な基、金属、蛍光性基、発光基、化学発光基、光学基、電荷基、極性基、色、ハプテン、タンパク結合配位子、ヌクレオチド配列、放射性基、酵素、微粒子、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)標識、分子標識、およびこれらの組み合わせなどがある。
【0028】
本明細書で使用される「マイクロアレーチップ」は、複数の1次元、2次元、または3次元ミクロ構造を有し、その構造上で物理的、化学的、生物学的、生物物理学的、または生化学的プロセスなどの任意のプロセスを行なうことができる固体基材を指す。チップ上での物理的、生物物理学的、生物学的、生化学的、化学的反応またはプロセスを促進のために、チャネルおよびウェルなどのミクロ構造またはミクロスケール構造をその基材内に取り込むか、その上に作製するか、あるいは付着させることができる。チップは1つの次元において薄く、別の次元では例えば、長方形、環状、楕円、あるいは他の不規則な形状の多様な形状を有してもよい。プロセスを行なうことができるチップの主要な表面サイズは、例えば約1mmから約0.25mまでかなり異なる。チップのサイズは、約1mmから約5cmまでの特有の寸法を有し約4mmから約25cmまでが好ましい。チップ表面は平坦、または平坦でなくともよい。非平坦面を有するチップはその表面に作製されたチャネルあるいはウェルを含んでもよい。
【0029】
本明細書で使用される「ミクロ部位」は、表面内、表面上の場所、あるいはマイクロアレーチップおよび/または他の構造またはデバイスが設けられて基材に付着した場所を指す。
【0030】
本明細書で使用される「別個のミクロ部位」は、必要に応じて試薬を添加および/または取り出すことができ、あるミクロ部位とは独立に別のミクロ部位で反応を実施できるようにミクロ部位が十分に分離していることを意味する。ある実施形態ではそれぞれのミクロ部位は他のすべてのミクロ部位と「別個」であるが、必ずしも各々のミクロ部位が他のすべてのミクロ部位と「別個」である必要はない。
【0031】
本明細書で使用される「ミクロ部位はウェル形状である」は、マイクロアレーチップおよび/または温度調節器などの他の構造または装置を構築または配置することができるようにミクロ部位に適切な3次元形状を有する凹みがあることを意味する。
【0032】
本明細書で使用される「ミクロ部位は熱的に絶縁されている」は、ミクロ部位は、他のミクロ部位またはミクロ部位の外側の任意の場所とは独立して、ミクロ部位の温度を所望のレベルで調整し維持するために使用できる所定の構造あるいは物質を有することを意味する。
【0033】
本明細書で使用される「試料」は、本ラボ・オン・チップシステムおよび/または方法を使用して分析される標的核酸およびタンパク質、または抽出された核酸およびタンパク質を含む任意のものを指す。試料は体液あるいは生体組織などの生体試料でもよい。体液の実例としては、尿、血液、血漿、血清、唾液、精液、便、痰、脳脊髄液、涙液、粘液、羊水あるいはその他同種のものなどがある。生体組織は細胞の集まりであり、通常それらの細胞間物質を伴って、ヒト、動物、植物、細菌、真菌、ウイルス構造の結合、上皮、筋肉、および神経組織を含む構造材料のうちの1つを形成する特定の種類の集団である。生体組織の実例は、器官、腫瘍、リンパ節、動脈、および個別の細胞などをさらに含む。生体組織を処理し細胞懸濁液試料を得てもよい。試料は、インビトロで調製された細胞の混合物でもよい。試料は培養細胞懸濁液でもよい。生体試料の場合、試料は、未精製の試料または元の試料から多様なプロセシングあるいは調製をした後に得られる処理済みの試料でもよい。例えば、様々な細胞分離法(例えば、磁気的に活性化されたセルソーティング)を適用し、血液などの体液サンプルから標的細胞を分離または濃縮することができる。本発明に使用された試料は、このような標的細胞が濃縮されている細胞製剤が含まれる。
【0034】
本明細書で使用される「液体(流体)試料」は、例えば体液などの液体または流体として天然に存在する試料を指す。「液体試料」は、例えば固体または気体などの天然に非液体状態で存在するが、固体または気体試料材料を含む液体、流体、溶液または懸濁液として調製される試料をさらに表す。例えば、液体試料は、生体組織を含む液体、流体、溶液、あるいは懸濁液を含むことができる。
【0035】
本明細書で使用される「評価」は、例えば、ハイブリッドの量または濃度の絶対値を得ること、およびハイブリッドのレベルを示す指標、比率、割合、視覚的なもの、あるいは他の値をさらに得ることなど、プローブと標的ヌクレオチド配列との間で形成されたハイブリッドの定量的および/または定性的測定を指す。評価は直接的、または間接的なものでもよく、また実際に検出された化学種はもちろんハイブリッド自体である必要はなく、例えば、それらの誘導体、プローブおよび/または標的ヌクレオチド配列の減少または消失、あるいはいくつかのさらなる物質でもよい。
【0036】
(B.核酸を分析するためのラボ・オン・チップシステムおよび方法)
一態様において、本発明は、核酸を分析するためのラボ・オン・チップシステムを目的とし、このシステムは、基材上に適切な材料で囲まれた制御可能閉鎖空間を備え、この適切な材料は熱伝導性、生体適合性の材料であり、核酸増幅またはハイブリッド形成を阻害せず、この制御可能な閉鎖空間は、その基材表面上に標的核酸に相補的な核酸プローブを備え、この基材の表面上または離れた位置に、試料からのこの標的核酸の調製と、この標的核酸の増幅と、この核酸プローブとこの標的核酸との間のハイブリッド形成とに適した他の試薬、および/またはこの核酸プローブとこの標的核酸との間のハイブリッド形成を検出する手段を備え、試料の添加は、適切な条件下で、この制御可能閉鎖空間へ標的核酸を加えることを含み、その結果、この試料からの試料調製、および/またはこの調製された標的核酸の増幅、およびこの核酸プローブと標的核酸との間でハイブリッド形成が連続的に実施され、好ましくは、この制御可能閉鎖空間と外部環境との間で任意の物質交換をすることなく、この制御可能閉鎖空間内でハイブリッド形成信号が検出される。
【0037】
本ラボ・オン・チップシステム中で、任意の適切な材料を使用することができる。適切な材料は、例えば、MJリサーチセルフシールチャンバ、セルフシールゲル、密閉プラスチック管腔、およびその類似物などの気密材料が好ましい。本ラボ・オン・チップシステムで防水材料を使用するのも好ましい。
【0038】
適切な材料を基材に接続し、任意の適切な方法によって制御可能閉鎖空間を形成することができる。例えば、適切な材料を基材上に接着し、制御可能閉鎖空間を形成することができる。別の例では、適切な材料を基材上にミクロ加工し、制御可能閉鎖空間を形成することができる。
【0039】
本ラボ・オン・チップシステム内で任意の適切な基材を使用することができる。例えば、基材はシリコン、プラスチック、ガラス、石英ガラス、セラミック、ゴム、金属、ポリマー、およびこれらの組み合わせから成る群より選択される材料を含むことができる。
【0040】
本ラボ・オン・チップシステムは、基材上に1つの核酸プローブを備えることができる。あるいは、本ラボ・オン・チップシステムは、基材上に複数の核酸プローブを備え、複数の標的核酸を好ましくは同時に分析することができる。
【0041】
本ラボ・オン・チップシステム内で単鎖または二重鎖構造のプローブの両方を使用することができる。このプローブは、例えば、長鎖のPCR生成物などのオリゴヌクレオチドあるいは他のタイプの核酸でもよい。本ラボ・オン・チップのシステム中で使用される核酸プローブは、任意の適切な長さを有する。単鎖プローブを使用する場合は、約5ntから約100ntまでの範囲の長さを有することが好ましい。二重鎖構造のプローブを使用する場合は、約50塩基対から約3,000塩基対までの範囲の長さを有することが好ましい。本ラボ・オン・チップシステムに使用される核酸プローブには標識をすることができる。任意の適切な標識を使用することができる。代表的な標識は、放射性標識、蛍光性標識、化学的標識、酵素標識、発光標識、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)標識、および分子ビーコンなどがある。
【0042】
任意の適切な手段によって核酸プローブを基材に付着させることができる。例えば、核酸プローブを改質し、基材へのその付着を促進することができる。別の例では、例えば、−CHO、−NH、−SH、あるいは−S−S−基などの基材上の官能基を介して、核酸プローブを基材に付着させることができる。さらに別の例では、例えば、ビオチン/アビジン対、ビオチン/ストレプトアビジン対などの結合対を介して核酸プローブを基材に付着させることができる。さらに別の例においては、紫外線活性化架橋、熱活性化架橋、NHと−CHOとの間の相互作用、−SHと−SHとの間の相互作用、ビオチンおよびアビジン間の相互作用、ビオチンおよびストレプトアビジン間の相互作用を介して核酸プローブを基材に付着させることができる。
【0043】
核酸プローブは、特異的または変性したプローブでもよい。核酸プローブは、DNA、RNAあるいはこれらの組み合わせでもよい。核酸プローブは、標的核酸と本質的に相補的、または完全に一致したものである。
【0044】
特定の実施形態では、本ラボ・オン・チップシステムは、検出位置において、2つの核酸プローブを有し、第1のプローブは、第1のFRET標識を有し、基材に付着しており、第2のプローブは液体中にあって第2のFRET標識をする。第1および第2のプローブ両方の標的核酸に対するハイブリッド形成により、2つのプローブを隣接させ、検出可能な信号を生成する2つのプローブ間の蛍光共鳴エネルギー転移が可能となる。任意の適切なFRET標識を使用することができる。フルロセインおよびTAMRA、TAMRAおよびCy5、ROXおよびCy5、IAEDNSおよびフルロセイン、あるいはフルロセインおよびQSY−7の組み合わせを使用することが好ましい。
【0045】
別の特定の実施形態では、本ラボ・オン・チップシステムは、検出位置において、2つの核酸プローブを有し、第1のプローブは基材に付着しており、第2のプローブが液体中にあり、2つのプローブは互いに相補的であり、かつ第1のプローブは標的核酸に対して相補的であり、2つのプローブのハイブリッドのTmが、標的核酸と第1のプローブとのハイブリッドより約5℃から約30℃低く、第1のプローブは蛍光性標識を有し、第2のプローブは蛍光性標識の消光剤を有し、標的核酸の非存在下では、2つのプローブはハイブリッド形成され、蛍光性標識は消光剤により消光しており、標的核酸の存在下では、第1のプローブと標的核酸とのハイブリッド形成によって2つのプローブは分離され、蛍光性標識はもはや消光剤により消光されず、検出可能な信号を生成する。任意の適切な蛍光性標識としては、例えば、6−FAM、TET、HEX、Cy3、Cy5、テキサスレッド、ROX、フルロセイン、あるいはTAMRAなどが使用できる。蛍光性標識のための任意の適切な消光剤としては、例えば、ダシル、ブラックホール−1、ブラックホール−2、または直径約0.1nmから約10nmまでの金粒子を使用することができる。
【0046】
好ましい場合は、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、核酸配列ベースの増幅(NASBA)、鎖置換増幅(SDA)、転写媒介増幅(TMA)、およびローリングサイクル増幅(RCA)などの任意の適切な方法により標的核酸を増幅することができる。増幅を達成するために、本ラボ・オン・チップシステムは、他の任意の試薬と同じく、標的核酸増幅方法の少なくとも1つに適した緩衝液を含むこともできる。
【0047】
特定の実施形態では、本ラボ・オン・チップシステムは、標的核酸の増幅および核酸プローブと標的核酸との間のハイブリッド形成に適した試薬を有することができる。別の特定の実施形態では、本ラボ・オン・チップシステムは、試料からの標的核酸の調製、標的核酸の増幅、および前記核酸プローブおよび標的核酸間のハイブリッド形成に適した試薬を有することができる。
【0048】
本ラボ・オン・チップシステムは、例えば、市販のPCR装置または水浴の温度制御ユニットを含む温度制御装置などの温度制御装置をさらに備えることができる。本ラボ・オン・チップシステムは、信号検出装置、例えば蛍光イメージング装置をさらに有する。
【0049】
本ラボ・オン・チップシステムは、任意の適切な目的に使用することができる。例えば、本ラボ・オン・チップシステムは、試料から標的核酸の連続的な試料調製、制御可能閉鎖空間中での核酸プローブおよび調製された標的核酸の間のハイブリッド形成に使用することができる。別の例では、本ラボ・オン・チップシステムを、核酸プローブおよび調製された標的核酸の間の連続的ハイブリッド形成、および制御可能閉鎖空間中のハイブリッド形成信号解析に使用することができる。
【0050】
本ラボ・オン・チップシステムは、システムを使用して試料中の標的核酸を調製し、増幅し、および/またはハイブリッド形成するための指示書をさらに備えることができる。
【0051】
別の態様では、本発明は核酸を分析する方法目的とし、この方法は、a)上記ラボ・オン・チップシステムを提供するステップと、b)a)で提供されるシステムのこの制御可能閉鎖空間内に、標的核酸が含まれるかまたは疑われる試料を添加するステップと、c)この試料よりこの標的核酸の連続的試料調製、および/または上記の調製された標的核酸の増幅、およびこの核酸プローブおよびこの調製された標的核酸の間のハイブリッド形成、および好ましくはこの制御可能閉鎖空間内でハイブリッド形成信号の検出を可能とするステップとを含む。
【0052】
本方法は、制御可能閉鎖空間中の標的核酸を増幅するステップをさらに含むことが好ましい。本方法は、制御可能閉鎖空間中の核酸プローブおよび調製された標的核酸の間のハイブリッド形成を分析するステップをさらに含むことが好ましい。
【0053】
本ラボ・オン・チップシステムおよび方法を使用して分析および/または定量することのできる標的ヌクレオチド配列は、DNA、RNA、あるいは他の天然または合成の核酸サンプルである。試験試料には、尿、血液、精液、脊髄液、膿、羊水、涙液、あるいは例えば痰、唾液、肺吸引、膣または尿道の分泌物、便などの半固形または流動性分泌物、または生検または絨毛膜絨毛検体などの固形組織試料などがある。試験試料は、皮膚、生殖器、あるいは咽頭から綿球で採取された試料をさらに含む。当業者において公知の種々の手段により試験試料を処理し、核酸を単離することができる。
【0054】
同様に、本ラボ・オン・チップシステムおよび方法を使用して、1つのプローブにより一度に1つの試料を分析することができるが、本方法は高処理フォーマットで行われることが好ましい。例えば、複数の試料を1つのプローブで同時に分析することができるか、あるいは1つの試料を同時に複数のプローブを使用して分析することができる。複数の試料を同時に複数のプローブを使用して分析することがより好ましい。
【0055】
任意の適切な標的核酸を本ラボ・オン・チップシステムおよび方法を使用して分析することができる。代表的な標的核酸は、A−、B−、またはZ−型DNAなどのDNA、およびmRNA、tRNAおよびrRNAなどのRNAが含まれる。核酸は単鎖、二重鎖、および三重鎖核酸でもよい。さらにタンパク質および/またはペプチドをコード化する標的核酸も分析することができる。代表的なタンパク質あるいはペプチドとしては、酵素、イオンチャネルおよびポンプなどの輸送蛋白質、栄養分あるいは貯蔵蛋白質、アクチンおよびミオシンなどの収縮性または運動性タンパク質、構造蛋白質、防御タンパク質、あるいは抗体、ホルモン、および成長因子などの調節タンパク質などがある。
【0056】
任意の適切な試料を本ラボ・オン・チップシステムおよび方法を使用して分析することができる。バイオ試料は本ラボ・オン・チップシステムおよび方法を使用して分析することが好ましい。例えば、植物、動物、ヒト、真菌、細菌、およびウイルス起源のバイオ試料を分析できる。哺乳類またはヒト起源の試料を分析する場合、試料は特定の組織または器官に由来することもある。代表的な組織は結合、上皮、筋肉、あるいは神経組織を含む。代表的な器官は、眼、環らせん形器官、聴覚器官、チーヴィッツ器官、脳室周囲器官、コルティ器官、危険臓器、エナメル器官、末端器官、外部女性生殖器、外部男性生殖器、浮動器官、ルフィーニ散形器官、生殖器、ゴルジ腱紡錘、味覚器、聴器、内部雌性生殖器、内部男性性器、挿入器官、ヤコブソン器官、神経血液器官、神経腱器官、嗅覚器、耳石器、下垂体器官、ローゼンミュラー器官、感覚器、嗅覚器、らせん器、交連下器官、脳弓下器官、過剰器官、触覚器、標的器官、味覚器、触覚器、泌尿器、終板の血管器官、前庭器官、平衡聴覚器、痕跡器官、視覚器(Organ of vision)、視覚器(Visual organ)、鋤鼻器官、遊走器官、ウェーバー器官、およびツッカーカンドル器官などがある。脳、肺、肝臓、脾臓、骨髄、胸腺、心臓、リンパ、血液、骨、軟骨、膵臓、腎臓、胆嚢、胃、腸、精巣、子房、子宮、直腸、神経系、腺、内部血管などの内部哺乳類器官に由来した試料が分析されることが好ましい。
【0057】
あるいは、多様な疾患または障害または感染に関連する病理学的試料を分析することができる。代表的な疾患あるいは障害は、腫瘍(異常増殖)、癌、免疫系疾患または障害、代謝疾患または障害、筋肉および骨疾患または障害、神経系疾患または障害、信号疾患または障害、および輸送体疾患または障害などがある。分析できる感染は、真菌性、細菌性、およびウイルス感染などがある。
【実施例】
【0058】
(C.実施例)
現存するラボ・オン・チップシステムの弱点に対処するために、制御可能閉鎖空間と外部環境との間で物質交換が全くない1つの制御可能閉鎖空間中に従来の3ステップ核酸分析(試料調製、核酸ハイブリッド形成、およびハイブリッド形成信号検出)を組み込んだ代表的なラボ・オン・チップシステムを開発した。このシステムは実験誤差および汚染の発生を減少させるかまたは回避する。分析後、システムのチップは廃棄することができる。システムが閉鎖されているので、従来の核酸分析でしばしば見られる残留汚染は認められない。全工程は3時間以内に完了することができる。
【0059】
(実施例1:B型肝炎ウイルスの検出に使用するための蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)に基づいたラボ・オン・チップシステム)
(1.アルデヒド基を有する基材の調製)
ガラス基材は酸性洗浄溶液に室温で一晩浸漬した。続いて、ガラス基材を水ですすぎ、蒸留水で3回洗浄し、脱イオン水で2回洗浄した。その後、遠心分離し、さらに110℃で15分間加熱することにより乾燥させた。このガラス基材を95%エタノールの1%APTES中に浸漬し、室温にて1時間振盪機で穏やかに振盪させた。95%エタノール中で浸漬した後、このガラス基材をすすぎ、つづいて減圧乾燥器中で−0.08Mpaから−0.1Mpa、110℃で20分間乾燥させた。一旦、ガラス基材を室温まで冷却し、12.5%グルタルアルデヒド溶液(12.5%グルタルアルデヒド溶液400mlの場合は、50%グルタルアルデヒド100mlをリン酸ナトリウム緩衝液300mlと混合する(NaHPO30mlおよびNaCl2.628g、pH7.0に調整する))に浸漬した。室温で4時間浸漬した後、溶液を穏やかに振盪し、さらにガラス基材をグルタルアルデヒド溶液から取り出し、3×SSCで1回洗浄し、続いて脱イオン水で2回洗浄する。過剰の水を遠心分離によって除去し、ガラス板を室温で乾燥させた。
【0060】
(2.プライマーおよびプローブの合成)
プライマーおよびプローブは上海バイオアジアバイオテクノロジーShanghai BioAsia Biotechnology社により合成された。プローブ1は、アミノ−5’−polyT(15nt)GCATGGACATCGACCCTTATAAAG−3’−TAMRA(配列番号:1)である。プローブ2は、Cy5−5’−GGAGCTACTGTGGAGTTACTC CTGG−3’(配列番号:2)である。上流プライマーは、gTTCAAgCCTCCAAgCTgTg(配列番号:3)である。下流のプライマーは、TCAgAAggCAAAAAAgAgAgTAACT(配列番号:4)である。
【0061】
(3.表面に固定化されたプローブを有するガラス基材の調製)
プローブ1を終濃度10μMで50%DMSO中に溶解させる。プローブは、あらかじめ設計されたパターンに従ってマイクロアレイ印刷装置(Cartesian Technologies、カリフォルニア州、米国)を使用して基材上に印刷された。つづいて印刷された基材を室温で一晩乾燥させた。その後、室温で2分間振盪させながら印刷された基材を0.2%SDS中に2回浸漬した。基材を2回すすいだ後、脱イオン水で1回洗浄し、続いて遠心分離により乾燥させた。さらにこの基材をNaBH溶液(1×PBS300mlおよびエタノール100mlにNaBH0.1gを溶解させた)に移し、室温で5分間穏やかに振盪させた。基材をさらに2回すすいだ後、脱イオン水で1分間ずつ2回洗浄し、遠心分離により乾燥させた。
【0062】
(4.反応チャンバの調製)
オペレーションマニュアルに従って、自己シールチャンバ(MJリサーチ社、MA、米国)を使用し反応チャンバを調製した。固相化プローブを有する基材をチャンバ内側に面するように作製した。
【0063】
(5.核酸増幅およびハイブリッド形成)
PCR反応系は、トリス−HCl(24℃、pH8.3)10mmol/L、KCl 50mmol/L、MgCl 1.5mmol/L、上流プライマーおよび下流プライマー 0.5μmmol/L、TaqDNAポリメラーゼ 1ユニット、dNTP(dATP、dTTP、dCTP、およびdGTP)200μmmol/L、BSA 0.1%、Tween20 0.1%、プローブ2 2μmmol/Lを含む。反応ボリュームの合計は25μlである。続いて、PCR反応系を反応チャンバに導入し、封止した。PCRは、94℃で1分間の前変性、94℃で30秒、55℃で30秒、および72℃で1分のメインサイクルを30サイクル、および72℃で10分の設定プログラムで、PTC−200(MJリサーチ社)を使用して行った。9PCR反応の後、同じPCR装置を使用して52℃、4時間ハイブリッド形成を行った。
【0064】
(5.ハイブリッド形成信号の検出)
ハイブリッド形成法信号は、ScanArray4000蛍光スキャナ(GSI Lumonics、MA、アメリカ)を使用して検出した。レーザ素子3は543nmの励起波長を選択した。光学フィルター7は信号検出に使用した。レーザ素子および光電子倍増管は80%で選択した。焦点の設定はガラス基材によって調整した。検出プロセスはオペレーションマニュアルに従って行なった。反応系に加えられた試料を有する反応チャンバからのチップは、この基材上のプローブ位置で相対的に強い蛍光信号を、また陰性対照プローブ位置では相対的に弱い蛍光信号示すが、一方、試料のない反応チャンバからのチップは相対的に弱い蛍光信号を示し、試料はB型肝炎ウイルスの核酸を含んでいることを示す。
【0065】
(実施例2:B型肝炎ウイルスの検出に使用するための分子ビーコンに基づいたラボ・オン・チップシステム)
(1.アルデヒド基を有する基材の調製)
ガラス基材は酸性洗浄溶液に室温で一晩浸漬した。続いて、ガラス基材を水ですすぎ、蒸留水で3回洗浄し、脱イオン水で2回洗浄した。その後、遠心分離し、さらに110℃で15分間加熱することにより乾燥させた。このガラス基材を95%エタノールの1%APTES中に浸漬し、室温にて1時間振盪機で穏やかに振盪させた。95%エタノール中で浸漬した後、このガラス基材をすすぎ、つづいて減圧乾燥器中で−0.08Mpaから−0.1Mpa、110℃で20分間乾燥させた。一旦、ガラス基材を室温まで冷却し、12.5%グルタルアルデヒド溶液(12.5%グルタルアルデヒド溶液400mlの場合は、50%グルタルアルデヒド100mlをリン酸ナトリウム緩衝液300mlと混合する(NaHPO30mlおよびNaCl2.628g、pH7.0に調整する))に浸漬した。室温で4時間浸漬した後、溶液を穏やかに振盪し、さらにガラス基材をグルタルアルデヒド溶液から取り出し、3×SSC中で1回洗浄し、続いて脱イオン水で2回洗浄する。過剰の水を遠心分離によって除去し、ガラス板を室温で乾燥させた。
【0066】
(2.プライマーおよびプローブの合成)
プライマーおよびプローブは上海バイオアジアバイオテクノロジーShanghai BioAsia Biotechnology社により合成された。分子ビーコンは、5’−アミノ−TTTTT TTTTT TTTT CGTGC−GTTCAAgCCTCCAAgCTgTg−GCACG A−3’−TAMRA(配列番号:5)である。ヌクレオチドは蛍光消光剤Dabcylで標識する。上流プライマーは、gTTCAAgCCTCCAAgCTgTg(配列番号:6)である。下流のプライマーは、TCAgAAggCAAAAAAgAgAgTAACT(配列番号:7)である。
【0067】
(3.表面に固定化されたプローブを有するガラス基材の調製)
分子ビーコンプローブを終濃度10μMで50%DMSO中に溶解させる。プローブは、あらかじめ設計されたパターンに従ってマイクロアレイ印画装置(Cartesian Technologies、カリフォルニア州、米国)を使用して基材上に印刷された。つづいて印刷された基材を室温で一晩乾燥させた。その後、室温で2分間振盪させながら印刷された基材を0.2%SDS中に2回浸漬した。基材を2回すすいだ後、脱イオン水で1回洗浄し、続いて遠心分離により乾燥させた。さらにこの基材をNaBH溶液(1×PBS300mlおよびエタノール100mlにNaBH0.1gを溶解させた)に移し、室温で5分間穏やかに振盪させた。基材をさらに2回すすいだ後、脱イオン水で1分間ずつ2回洗浄し、遠心分離により乾燥させた。
【0068】
(4.反応チャンバの調製)
オペレーションマニュアルに従って、自己シールチャンバ(MJリサーチ社、MA、米国)を使用し反応チャンバを調製した。チャンバ内側に面するように固相化プローブを有する基材を作製した。
【0069】
(5.核酸増幅およびハイブリッド形成)
PCR反応系は、トリス−HCl(24℃、pH8.3)10mmol/L、KCl 50mmol/L、MgCl 1.5mmol/L、上流プライマーおよび下流プライマー 0.5μmmol/L、TaqDNAポリメラーゼ 1ユニット、dNTP(dATP、dTTP、dCTP、およびdGTP)200μmmol/L、BSA 0.1%、Tween20 0.1%、プローブ2 2μmmol/Lを含む。反応ボリュームの合計は25μlである。続いて、PCR反応系を反応チャンバに導入し、封止した。PCRは、94℃、1分間の前変性、94℃、30秒のメインサイクル、30サイクルで55℃、30秒、および72℃、1分、および72℃、10分の設定プログラムで、PTC−200(MJリサーチ社)を使用して行った。PCR反応の後、同じPCR装置を使用して52℃、4時間ハイブリッド形成を行った。
【0070】
(6.ハイブリッド形成信号の検出)
ハイブリッド形成法信号は、ScanArray4000蛍光スキャナ(GSI Lumonics、MA、アメリカ)を使用して検出した。レーザ素子3は543nmの励起波長を選択した。光学フィルター7は信号検出に使用した。レーザ素子および光電子倍増管は80%で選択した。焦点の設定はガラス基材によって調整した。検出プロセスはオペレーションマニュアルに従って行なった。反応系に加えられた試料を有する反応チャンバ由来のチップは、この基材上のプローブ位置で相対的に強い蛍光信号を、また陰性対照プローブ位置では相対的に弱い蛍光信号示すが、一方、試料のない反応チャンバ由来のチップは相対的に弱い蛍光信号を示し、試料はB型肝炎ウイルスの核酸を含んでいることを示す。
【0071】
(実施例3:B型肝炎ウイルスの検出に使用するための蛍光消光に基づくラボ・オン・チップシステム)
(1.アルデヒド基を有する基材の調製)
ガラス基材は酸性洗浄溶液に室温で一晩浸漬した。続いて、ガラス基材を水ですすぎ、蒸留水で3回洗浄し、脱イオン水で2回洗浄した。その後、遠心分離し、さらに110℃で15分間加熱することにより乾燥させた。このガラス基材を95%エタノールの1%APTES中に浸漬し、室温にて1時間振盪機で穏やかに振盪させた。95%エタノール中で浸漬した後、このガラス基材をすすぎ、つづいて減圧乾燥器中で−0.08Mpaから−0.1Mpa、110℃で20分間乾燥させた。一旦、ガラス基材を室温まで冷却し、12.5%グルタルアルデヒド溶液(12.5%グルタルアルデヒド溶液400mlの場合は、50%グルタルアルデヒド100mlをリン酸ナトリウム緩衝液300mlと混合する(NaHPO30mlおよびNaCl2.628g、pH7.0に調整する))に浸漬した。室温で4時間浸漬した後、溶液を穏やかに振盪し、さらにガラス基材をグルタルアルデヒド溶液から取り出し、3×SSCで1回洗浄し、続いて脱イオン水で2回洗浄する。過剰の水を遠心分離によって除去し、ガラス板を室温で乾燥させた。
【0072】
(2.プライマーおよびプローブの合成)
プライマーおよびプローブは上海バイオアジアバイオテクノロジーShanghai BioAsia Biotechnology社により合成された。プローブ1は、アミノ−5’−polyT(15nt)GCATGGACATCGACCC1TATAAAG−3’−TAMRA(配列番号:8)である。プローブ3は、5’−CTTTATAAGGGTCG cct−3’(配列番号:9)である。ヌクレオチドは蛍光消光剤Dabcylで標識する。上流プライマーは、gTTCAAgCCTCCAAgCTgTg(配列番号:10)である。下流のプライマーは、TCAgAAggCAAAAAAgAgAgTAACT(配列番号:11)である。
【0073】
(3.表面に固定化されたプローブを有するガラス基材の調製)
プローブ1を終濃度10μMで50%DMSO中に溶解させる。プローブは、あらかじめ設計されたパターンに従ってマイクロアレイ印画装置(Cartesian Technologies、カリフォルニア州、米国)を使用して基材上に印刷された。つづいて印刷された基材を室温で一晩乾燥させた。その後、室温で2分間振盪させながら印刷された基材を0.2%SDS中に2回浸漬した。基材を2回すすいだ後、脱イオン水で1回洗浄し、続いて遠心分離により乾燥させた。さらにこの基材をNaBH溶液(1×PBS300mlおよびエタノール100mlにNaBH 0.1gを溶解させた)に移し、室温で5分間穏やかに振盪させた。基材をさらに2回すすいだ後、脱イオン水で1分間ずつ2回洗浄し、遠心分離により乾燥させた。
【0074】
(4.反応チャンバの調製)
オペレーションマニュアルに従って、自己シールチャンバ(MJリサーチ社、MA、米国)を使用し反応チャンバを調製した。チャンバ内側に面するように固相化プローブを有する基材を作製した。
【0075】
(5.核酸増幅およびハイブリッド形成)
PCR反応系は、トリス−HCl(24℃、pH8.3)10mmol/L、KCl 50mmol/L、MgCl 1.5mmol/L、上流プライマーおよび下流プライマー 0.5μmmol/L、TaqDNAポリメラーゼ 1ユニット、dNTP(dATP、dTTP、dCTP、およびdGTP)200μmmol/L、BSA 0.1%、Tween20 0.1%、プローブ3 2μmmol/Lを含む。反応ボリュームの合計は25μlである。続いて、PCR反応系を反応チャンバに導入し、封止した。PCRは、4℃、1分間の前変性、94℃、30秒のメインサイクル、30サイクルで55℃、30秒、および72℃、1分、および72℃、10分の設定プログラムで、PTC−200(MJリサーチ社)を使用して行った。9PCR反応の後、同じPCR装置を使用して52℃、4時間ハイブリッド形成を行った。続いて、ハイブリッド形成されたプローブ1にプローブ3が結合できるようにその反応を30℃で5分間インキュベートした。
【0076】
(6.ハイブリッド形成信号の検出)
ハイブリッド形成法信号は、ScanArray4000蛍光スキャナ(GSI Lumonics、MA、アメリカ)を使用して検出した。レーザ素子3は543nmの励起波長を選択した。光学フィルター7は信号検出に使用した。レーザ素子および光電子倍増管は80%で選択した。焦点の設定はガラス基材によって調整した。検出プロセスはオペレーションマニュアルに従って行なった。反応系に加えられた試料を有する反応チャンバ由来のチップは、この基材上のプローブ位置で相対的に強い蛍光信号を、また陰性対照プローブ位置では相対的に弱い蛍光信号示すが、一方、試料のない反応チャンバ由来のチップは相対的に弱い蛍光信号を示し、試料はB型肝炎ウイルスの核酸を含んでいることを示す。
【0077】
上記の実施例は、説明のための例にすぎず、本発明の範囲を限定するためのものではない。上述のように多くの変形が可能である。上述の実施例に対する変形および修正は当業者において公知であると予想され、本発明は添付されている特許請求の範囲によってのみ限定されるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】図1は代表的なラボ・オン・チップシステムの模式図である。このシステムは、核酸増幅およびハイブリッド形成チャンバ1、核酸増幅およびハイブリッド形成システム2、基材上に固定化されたプローブ3、固形基材4、PCR反応およびハイブリッド形成の温度を制御するための温度制御装置5、およびハイブリッド形成信号を検出するための蛍光スキャナ6が含まれる。増幅およびハイブリッド形成チャンバ1は、95℃以上の温度に長時間耐えることのできる気密材料で作られている。この材料はさらに熱伝導性で、かつ生体適合性でであり、核酸増幅あるいはハイブリッド形成を阻害しない。一例は、MJリサーチセルフシールチャンバ、セルフシールゲル、および密閉プラスチック管腔である。適切な核酸増幅およびハイブリッド形成を可能とする核酸増幅およびハイブリッド形成システム2は、プライマー、試験される試料、および最適化された緩衝システムを含む。核酸プローブ3は、標的配列との相補的な相互作用を特異的に検出するために、共有結合を介してチップの化学的に改質された表面上に固定化することができる。基材4は、良好な強度を有し熱伝導性であり、化学修飾の後も生体適合性である。この基材は核酸増幅あるいはハイブリッド形成を阻害しない。この基材の材料は容易に入手可能で安価であることが好ましい。適切な固形材料は、ガラス、石英ガラス、シリコン、セラミック、プラスチックなどである。温度制御装置5は、温度上昇および減少の速度、および温度調節の精度をコントロールすることができる。この装置は、市販のPCR装置、インサイチュPCR装置、あるいは全システムの小型化のためのマイクロ温度制御装置でもよい。蛍光性スキャナ6は、市販の蛍光スキャナあるいは蛍光性マイクロスキャナでもよい。
【図2A】図2aは、一体型のハイブリッド形成および検出システムに使用するためのプローブが標的分子にハイブリッド形成される前の状態を示す。プローブはステムループ構造を有する。このステムの一方の末端の蛍光体が近接しており、ステムのもう一方の末端に蛍光消光剤があるために、光源により励起された蛍光体からの蛍光発光がこの消光剤により消光させられ、信号は検出することができない。統合されたハイブリッド形成および検出システムに使用されたプローブは、チップの基材上に固定化される。このシステムは、基材1、ステムループ構造を有するプローブ2、および標的分子3を含む。分子G1および分子G2は1対の蛍光体および消光剤であり、これらの相対的位置は可換である。化学基G4は、特別な化学処理の後にこの基材上に露出した基である。化学基G3は、化学修飾によってプローブの末端の1つに付けられた化学基である。化学基G3およびG4は、基材上にプローブを固定化することができるように、特定の条件下で強い共有結合あるいは非共有結合を形成することができる。
【図2B】図2bは、統合されたハイブリッド形成および検出システムに使用するためのプローブが標的分子にハイブリッド形成された後の状態を示す。プローブと標的分子との間のハイブリッド形成のために、図2aに示されるステムループ構造が破壊される。それに応じて、プローブの2つの末端における蛍光体と消光剤との間の距離は長くなり、光源により励起された蛍光体由来の蛍光発光は、もはや消光剤によって失活されない。このため、蛍光発光を検出することができる。このシステムは、基材1、ステムループ構造を有するプローブ2、および標的分子3を含む。分子G1および分子G2は1対の蛍光体および蛍光消光剤であり、それらの相対的位置は可換である。化学基G4は、特別な化学処理の後にこの基材上に露出した基である。化学基G3は、化学修飾によってプローブの末端の1つに付けられた化学基である。化学基G3およびG4は、基材上にプローブを固定化することができるように、特定の条件下で強い共有結合あるいは非共有結合を形成することができる。
【図3A】図3aは、統合されたハイブリッド形成および検出システムに使用することのできるプローブ対が標的分子にハイブリッド形成される前の状態を示す。1対のプローブは、特定の化学修飾によって改質された基材の表面に共有結合できる1つの末端、および第2の蛍光体で標識されたもう1つの末端を有する第1のプローブと、このシステムの液体中におって、第2の蛍光体で標識された1つの末端を有する第2のプローブとを含む。標的分子への第1のプローブおよび第2のプローブの両方のハイブリッド形成により、この2つのプローブが近接し、2つの蛍光体間の蛍光共鳴エネルギー転移が可能となり、検出可能な信号を生成する。このシステムは基材1、基材に固定化されたプローブ2、液体中のプローブ3、および標的分子4が含まれる。分子G1およびG2は蛍光共鳴エネルギー転移を可能とする1対の蛍光体である。化学基G4は、特別な化学処理の後にこの基材上に露出した基である。化学基G3は、化学修飾によってプローブの末端の1つに付けられた化学基である。化学基G3およびG4は、基材上にプローブを固定化することができるように、特定の条件下で強い共有結合あるいは非共有結合を形成することができる。
【図3B】図3bは、統合されたハイブリッド形成および検出システムに使用することのできるプローブ対が標的分子にハイブリッド形成される後の状態を示す。このプローブ対は標的分子にハイブリッド形成された後、互いに近接する。第1および第2の蛍光体間の距離は、蛍光共鳴エネルギー転移を可能とする必要な距離以内、すなわち、フォスター半径以内にある。第1の蛍光体を励起させる波長を使用した光源を利用することにより、さらに第2の蛍光体の発光波長を使用して信号を受けることにより蛍光シグナルを検出することができる。このシステムは基材1、基材に固定化されたプローブ2、液体中のプローブ3、および標的分子4を含む。分子G1およびG2は、蛍光共鳴エネルギー転移を可能とする1対の蛍光体である。化学基G4は、特別な化学処理の後にこの基材上に露出した基である。化学基G3は、化学修飾によってプローブの末端の1つに付けられた化学基である。化学基G3およびG4は、基材上にプローブを固定化することができるように、特定の条件下で強い共有結合あるいは非共有結合を形成することができる。
【図4A】図4aは、統合されたハイブリッド形成および検出システムに使用することのできる1対のプローブが標的分子にハイブリッド形成される前の状態を示す。1対のプローブは、特定の化学修飾によって改質された基材の表面に共有結合することのできる1つの末端、および第1の蛍光体で標識されたもう1つの末端を有する第1のプローブと、このシステムの液相中に蛍光消光剤または第2の蛍光体で標識された1つの末端を有する第2のプローブとを含む。標的分子がシステムに存在しない場合、第1のプローブは第2のプローブとハイブリッド形成し、第1の蛍光体からの蛍光発光は消光剤により消光されるか、あるいは、蛍光共鳴エネルギー転移によって、第1の蛍光体の励起されたエネルギーが第2の蛍光体に移動し、このため第1の蛍光体からの蛍光信号はまったく検出されない。このシステムは、基材1、基材上に固定化されたプローブ2、プローブ2にハイブリッド形成することができるプローブ3、および標的分子4が含まれる。分子G1およびG2は、1対の蛍光体および消光剤、または蛍光共鳴エネルギー転移を可能とする1対の蛍光体である。化学基G4は、特別な化学処理の後にこの基材上に露出した基である。化学基G3は、化学修飾によってプローブの末端の1つに付けられた化学基である。化学基G3およびG4は、基材上にプローブを固定化することができるように、特定の条件下で強い共有結合あるいは非共有結合を形成することができる。
【図4B】図4bは、統合されたハイブリッド形成および検出システムに使用することのできるプローブ対が標的分子にハイブリッド形成される後の状態を示す。1対のプローブは、特定の化学修飾によって改質された基材の表面に共有結合することのできる1つの末端、および第1の蛍光体で標識されたもう1つの末端を有する第1のプローブと、このシステムの液相中に蛍光消光剤または第2の蛍光体で標識された1つの末端を有する第2のプローブとを含む。標的分子がシステムに存在する場合、第1のプローブと第2のプローブとの間のハイブリッド形成は、第1のプローブと標的分子との間のハイブリッド形成と入れ換わる。第1の蛍光体からの蛍光発光は消光剤によりもはや消光されず、あるいは第1の蛍光体の励起エネルギーは、もはや蛍光共鳴エネルギー転移によって第2の蛍光体に移動せず、その結果、第1の蛍光体から発光信号が検出される。このシステムは、基材1、基材上に固定化されたプローブ2、プローブ2にハイブリッド形成することができるプローブ3、および標的分子4が含まれる。分子G1およびG2は、1対の蛍光体および消光剤、または蛍光共鳴エネルギー転移を可能とする1対の蛍光体である。化学基G4は、特別な化学処理の後にこの基材上に露出した基である。化学基G3は、化学修飾によってプローブの末端の1つに付けられた化学基である。化学基G3およびG4は、基材上にプローブを固定化することができるように、特定の条件下で強い共有結合あるいは非共有結合を形成することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸を分析するためのラボ・オン・チップシステムであって、前記システムは基材上に適切な材料で囲まれた制御可能閉鎖空間を備え、前記適切な材料は熱伝導性、生体適合性の材料であり、核酸増幅またはハイブリッド形成を阻害せず、前記制御可能閉鎖空間は、前記基材の表面上に標的核酸に相補的な核酸プローブを備え、前記基材の表面上または離れた位置に、試料からの前記標的核酸の調製と、前記標的核酸の増幅と、前記核酸プローブと前記標的核酸との間のハイブリッド形成とに適した他の試薬、および/または前記核酸プローブと前記標的核酸との間のハイブリッド形成を検出する手段を備え、試料の添加は、適切な条件下で、前記制御可能閉鎖空間へ前記標的核酸を加えることを含み、その結果、前記試料から試料調製、および/または前記調製された標的核酸の増幅、および前記核酸プローブと前記標的核酸との間でハイブリッド形成が連続的に実施され、好ましくは、前記制御可能閉鎖空間と外部環境との間で任意の物質交換をすることなく、前記制御可能閉鎖空間内でハイブリッド形成信号が検出される、システム。
【請求項2】
前記適切な材料が気密材料である、請求項1に記載のラボ・オン・チップシステム。
【請求項3】
前記適切な材料が前記基材上に接着され、制御可能閉鎖空間を形成する、請求項1に記載のラボ・オン・チップシステム。
【請求項4】
前記適切な材料が前記基材上でミクロ加工され制御可能閉鎖空間を形成する、請求項1に記載のラボ・オン・チップシステム。
【請求項5】
前記基材が、シリコン、プラスチック、ガラス、石英ガラス、セラミック、ゴム、金属、ポリマー、およびこれらの組み合わせから成る群から選択される材料を含む、請求項1に記載のラボ・オン・チップシステム。
【請求項6】
前記基材上に1つの核酸プローブを備える、請求項1に記載のラボ・オン・チップシステム。
【請求項7】
前記基材上に複数の核酸プローブを備える、請求項1に記載のラボ・オン・チップシステム。
【請求項8】
前記核酸プローブが約5塩基対から約100塩基対までの範囲、あるいは約5ヌクレオチド(nt)から約100ntまでの範囲の長さを有する、請求項1に記載のラボ・オン・チップシステム。
【請求項9】
前記核酸プローブが標識されている、請求項1に記載のラボ・オン・チップシステム。
【請求項10】
前記標識が、放射性標識、蛍光性標識、化学標識、酵素標識、発光標識、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)標識、および分子ビーコンから成る群から選択される、請求項9に記載のラボ・オン・チップシステム。
【請求項11】
前記核酸プローブが前記基材へのその付着を促進するように改質されている、請求項1に記載のラボ・オン・チップシステム。
【請求項12】
前記基材上の官能基を介して、前記核酸プローブが前記基材に付着している、請求項1に記載のラボ・オン・チップシステム。
【請求項13】
前記官能基は、−CHO、−NH、−SH、および−S−S−から成る群から選択される、請求項12に記載のラボ・オン・チップシステム。
【請求項14】
前記核酸プローブが結合対によって前記基材に付着している、請求項1に記載のラボ・オン・チップシステム。
【請求項15】
前記結合対がビオチン/アビジン対、あるいはビオチン/ストレプトアビジン対である、請求項14に記載のラボ・オン・チップシステム。
【請求項16】
前記核酸プローブは、紫外線活性化架橋、熱活性化架橋、NHと−CHOとの間の相互作用、−SHと−SHとの間の相互作用、ビオチンとアビジンのとの間の相互作用、およびビオチンとストレプトアビジンとの間の相互作用を介して前記基材に付着している、請求項1に記載のラボ・オン・チップシステム。
【請求項17】
前記核酸プローブが特異的または変性したプローブである、請求項1に記載のラボ・オン・チップシステム。
【請求項18】
前記核酸プローブがDNA、RNA、PNA、LNA、あるいはこれらの組み合わせである、請求項1に記載のラボ・オン・チップシステム。
【請求項19】
検出位置において、前記システムは2つの核酸プローブを有し、第1のプローブは、第1のFRET標識を有し、前記基材に付着しており、第2のプローブは液体中にあって第2のFRET標識を有し、前記第1および第2の両プローブの標的核酸に対するハイブリッド形成により、前記2つのプローブを隣接させ、前記2つのプローブ間の蛍光共鳴エネルギー転移を可能とし、検出可能な信号を生成する、請求項1に記載のラボ・オン・チップシステム。
【請求項20】
前記2つのFRET標識は、フルロセインおよびTAMRA、TAMRAおよびCy5、ROXおよびCy5、IAEDNSおよびフルロセイン、あるいはフルロセインおよびQSY−7の組み合わせである、請求項19に記載のラボ・オン・チップシステム。
【請求項21】
検出位置において、前記システムは、2つの核酸プローブを有し、前記第1のプローブは前記基材に付着しており、前記第2のプローブが液体中にあり、前記2つのプローブは互いに相補的であり、前記第1のプローブは標的核酸に対して相補的であり、前記2つのプローブのハイブリッドのTmが、前記標的核酸および前記第1のプローブのハイブリッドのTmよりも約5℃から約30℃低く、前記第1のプローブは蛍光性標識を有し、前記第2のプローブは蛍光性標識の消光剤を有し、前記標的核酸の非存在下では、前記2つのプローブはハイブリッド形成され、前記蛍光性標識は前記消光剤により消光されており、標的核酸の存在下では、前記プローブは前記第1のプローブの前記標的核酸へのハイブリッド形成によって分離され、前記蛍光性標識はもはや消光剤により消光されず、検出可能な信号を生成する、請求項1に記載のラボ・オン・チップシステム。
【請求項22】
前記蛍光性の標識は、6−FAM、TET、HEX、Cy3、Cy5、テキサスレッド、ROX、フルロセイン、およびTAMRAから成る群から選択され、前記蛍光性標識のための前記消光剤は、ダシル、ブラックホール−1、ブラックホール−2、および直径約0.1nmから約10nmまでの金粒子から成る群から選択される、請求項21に記載のラボ・オン・チップシステム。
【請求項23】
前記核酸プローブは、本質的に前記標的核酸と相補的である、請求項1に記載のラボ・オン・チップシステム。
【請求項24】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、核酸配列ベースの増幅(NASBA)、鎖置換増幅(SDA)、転写媒介増幅(TMA)、およびローリングサイクル増幅(RCA)を介して前記標的核酸増幅が達成される、請求項1に記載のラボ・オン・チップシステム。
【請求項25】
前記標的核酸増幅方法の少なくとも1つに適する緩衝液を含む、請求項24に記載のラボ・オン・チップシステム。
【請求項26】
前記標的核酸の増幅、および核酸プローブと前記標的核酸との間のハイブリッド形成に適した試薬類を含む、請求項1に記載のラボ・オン・チップシステム。
【請求項27】
試料からの前記標的核酸の調製、前記標的核酸の増幅、および前記核酸プローブと前記標的核酸との間のハイブリッド形成に適した試薬類を有する、請求項1に記載のラボ・オン・チップシステム。
【請求項28】
温度制御装置さらに備える、請求項1に記載のラボ・オン・チップシステム。
【請求項29】
前記温度制御装置は市販のPCR装置あるいは水浴の温度制御ユニットを含む、請求項28に記載のラボ・オン・チップシステム。
【請求項30】
信号検出装置をさらに備える、請求項1に記載のラボ・オン・チップシステム。
【請求項31】
前記信号検出装置は蛍光イメージング装置を含む、請求項30に記載のラボ・オン・チップシステム。
【請求項32】
前記制御可能閉鎖空間内での試料からの前記標的核酸の試料調製、および前記核酸プローブと前記調製された標的核酸との間のハイブリッド形成の連続実施に使用される、請求項1に記載のラボ・オン・チップシステム。
【請求項33】
制御可能閉鎖空間内での前記核酸プローブと前記調製された標的核酸との間のハイブリッド形成、およびハイブリッド形成信号解析の連続実施に使用される、請求項1に記載のラボ・オン・チップシステム。
【請求項34】
前記システムを使用し、試料中の標的核酸を調製し、増幅し、および/またはハイブリッド形成するための指示書をさらに備える、請求項1に記載のラボ・オン・チップのシステム。
【請求項35】
前記制御可能閉鎖空間内における、前記試料からの前記標的核酸の増幅、前記核酸プローブと増幅標的核酸との間のハイブリッド形成、およびハイブリッド形成信号解析の連続実施に使用される請求項1に記載のラボ・オン・チップのシステム。
【請求項36】
前記制御可能閉鎖空間における、前記試料からの標的核酸の試料調製、前記調製された標的核酸からの前記標的核酸の増幅、前記核酸プローブと前記増幅された標的核酸との間のハイブリッド形成、およびハイブリッド形成信号解析の連続実施に使用される、請求項1に記載のラボ・オン・チップシステム。
【請求項37】
核酸を分析する方法であって、
a)上記ラボ・オン・チップシステムを提供するステップと、
b)a)で提供される前記システムの前記制御可能閉鎖空間内に、標的核酸を含むかまたは含むことが疑われる試料を添加するステップと、
c)前記試料から前記標的核酸の試料調製、および/または前記調製された標的核酸の増幅、および前記核酸プローブと前記調製された標的核酸との間のハイブリッド形成、および好ましくは、前記ハイブリッド形成信号の検出を前記制御可能閉鎖空間において、連続的に可能とするステップ、とを含む、方法。
【請求項38】
前記制御可能閉鎖空間において、前記標的核酸を増幅するステップをさらに含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記制御可能閉鎖空間中の前記核酸プローブと前記調製された標的核酸との間のハイブリッド形成を分析するステップをさらに含む、請求項37に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2006−514826(P2006−514826A)
【公表日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−568986(P2004−568986)
【出願日】平成15年5月6日(2003.5.6)
【国際出願番号】PCT/CN2003/000328
【国際公開番号】WO2004/079002
【国際公開日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【出願人】(598098331)ツィンファ ユニバーシティ (534)
【出願人】(504234923)キャピタル バイオチップ カンパニー リミテッド (6)
【Fターム(参考)】