説明

核酸サイズ検出法

DNAの断片化,サイズ分画,必要に応じた第2の断片化,およびマーカー配列を用いる同定による,核酸サンプル中の目的とする特定の核酸セグメントのサイズを測定する方法を提供する。具体的な観点では,タンデムリピート配列の増大または減少を検出することができる。更なる観点では,脆弱性X症候群または他のタンデムリピートに関連する疾病のキャリアまたは罹患個体を正常個体と識別できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の属する分野
本発明は一般的には医療診断の分野に関する。特に本発明は,タンデムリピートの増大を特徴とする遺伝子変異の検出法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
DNA中のタンデムリピートとは,あるパターンのヌクレオチドが2個またはそれ以上連続的に隣接したコピーを示す。タンデムリピートは種々のヒト疾患の原因に関係することが明らかになっている。トリヌクレオチド・リピートの劇的な増大は以下のような疾患と関係することが明らかになっている:脆弱性X精神遅滞(Verkerkら,(1991)Cell,65,905-914参照),ハンチントン病(Huntington's Disease Collaborative Research Group.(1993) Cell,72,971-983参照),筋硬直性ジストロフィー(Fuら,(1992)Science,255,1256-1258参照),脊髄性および延髄性筋萎縮症(La Spadaら,(1991)Nature,352,77-79参照),およびフリードライヒ失調症(Campuzanoら,(1996)Science,271,1423-1427参照)。
【0003】
脆弱性X症候群は遺伝性精神遅滞の最も一般的な原因の一つであり,男性では約1,250人に1人,女性では約2,500人に1人の割合で発症する。脆弱性X症候群に罹患した男性は一般に,学習障害から精神遅滞,自閉症にわたる何らかの精神的機能障害を示す。特徴的な身体的特徴(例えば大きな耳,顎が突出した長い顔),結合組織の問題(例えば僧帽弁逸脱および合指(double-jointed finger)),および特徴的行動(例えば注意欠陥障害,言語障害,および種々の接触,聴覚,または視覚刺激に対する異常な応答)も示しうる。女性患者も同様であるが,男性患者に比較して軽度の精神的機能障害,身体的特徴,および行動特性を示す。
【0004】
脆弱性X症候群に関与する変異はX染色体上のFMR1遺伝子の5’非翻訳領域に位置するトリヌクレオチド(CGG)タンデムリピート配列の増大を伴う。FMR1遺伝子中のCGGリピートの数により,個体が正常か否か,または2種類の変異:前変異および完全変異の1つを有するか否かが決定される。リピート数は正常な非保有個体では55リピート未満であるが,前変異では55から200リピート,完全変異では200リピート以上から成る(Chenら,Hum.Mol.Genetics 12(23):3067-74,2003)。
【0005】
前変異を有する男性および一つのFMR1遺伝子に前変異を有する女性はいずれもキャリアであるが罹患はしない。男性のキャリアは“正常保因(transmitting)”男性と称され,各々の女性子孫に変異を伝達するが,サイズは比較的変化しない。それらの女性子孫は罹患しないが,前変異が女性の減数分裂によって継代後に増大する可能性があるため,子孫は罹患するリスクを有する。さらに,前変異が大きいほど,いずれかの子孫で完全変異に増大するリスクが高い。
【0006】
完全変異を有する男性のほとんどは精神遅滞と常同性の身体および挙動特性を示す。FMR1遺伝子に完全変異を有する女性では,その約3分の1が正常な知能を示し,約3分の1が境界域の知能を示し,約3分の1が精神遅滞を示す。
【0007】
現在,脆弱性Xのようなタンデムリピート領域の増大を有するキャリアまたは罹患個体のスクリーニングに関する業界基準は,タンデムリピート領域のPCR増幅とサザンブロッティングとの併用である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の概要
本発明のある観点では,核酸サンプル中の目的とする特定の核酸セグメントのサイズを測定する方法を提供する。この方法は核酸のフラグメントを分離することによって行い,核酸を含有するサンプルからフラグメントを調製し,フラグメントはセグメントを含む部分およびマーカー配列を含有し,セグメントを含有するフラグメントがセグメントのサイズに従って分画されるような条件下でサイズに従って画分に分離し,マーカー配列の検出によってセグメントを含有する画分(単数または複数)を同定し,同定された画分からセグメントのサイズを測定する。
【0009】
この方法は本質的に目的とする任意の核酸セグメントに適用できるが,特に,例えば核酸セグメント全体にわたる増幅(例えばPCR)を利用する方法ではサイズの測定が困難であるような核酸セグメントのサイズ測定を可能とする。核酸セグメント全体の増幅を利用する方法ではサイズ測定が困難である核酸セグメントの例として,グアニンおよびシトシン塩基含量の高い核酸セグメント,大型の核酸セグメント,および/または多数のタンデムリピートを含有するセグメントがある。好ましい態様では,目的の特定の核酸セグメントはタンデムリピート核酸配列である。PCRによる増幅が困難な核酸の長さは一般に50,000塩基以上,より一般的には100,000塩基以上,さらに一般的には150,000塩基以上もしくは200,000塩基以上,または250,000塩基以上である。
【0010】
別の態様では,本発明の方法を使用して個体由来サンプル中の特定の核酸セグメントのサイズを測定し,それによってその特定の核酸セグメントのサイズに異常があるか否かを確認し,ここで異常は特定の核酸セグメントにおける重複,付加,または欠失によるものである。
【0011】
さらに別の観点では,本発明は核酸サンプル中の遺伝子のタンデムリピート・セグメントにおける変異を検出する方法を提供し,ここで,変異は野生型対立遺伝子中のリピート数に比較してリピート数が増加していることを特徴とする。この方法は核酸のフラグメントを分離することによって行い,核酸を含有するサンプルからフラグメントを調製し,フラグメントはセグメントを含む部分およびマーカー配列を含有し,タンデムリピート・セグメントを含有するフラグメントがタンデムリピート・セグメントの数に従って分画されるような条件下でサイズに従って画分に分離し;そして,マーカー配列の検出によってセグメントを含有する画分(単数または複数)を同定する。タンデムリピート・セグメント中のリピート数は,同定された画分から判定する。リピート数を対応する野生型対立遺伝子における数と比較し,リピート数が野生型対立遺伝子における数より大きければ,これは変異を示している。
【0012】
ある態様では,上記の本発明の観点は,変異が前変異または完全変異であるか否かを確認することをさらに含む。この確認は核酸サンプル由来のタンデムリピート・セグメントにおけるリピート数を対応する完全変異型対立遺伝子中の数と比較することによって行い,リピート数が野生型対立遺伝子よりは多いが完全変異型対立遺伝子よりは少なければ,これは前変異型対立遺伝子であることを示しており,リピート数が完全変異より大きいか等しければ,完全変異型対立遺伝子であることを示している。他の態様では,核酸サンプルのタンデムリピート領域におけるリピート数を野生型対立遺伝子,前変異型対立遺伝子,および完全変異型対立遺伝子のそれぞれで観察されるリピート数と比較してもよい。
【0013】
上記の本発明の観点の特定の態様では,個体の核酸中の正常なタンデムリピート数,前変異,または完全変異を有するFMR1対立遺伝子の同定法を提供し,この方法は,
個体由来サンプル中の核酸を断片化してフラグメントにし,フラグメント中ではFMR1遺伝子のタンデムリピート・セグメントにはマーカー配列が付随しており,
核酸のフラグメントを分離し,ここで,フラグメントは個体の核酸含有サンプルから調製されたものであり,フラグメントはFMR1遺伝子のタンデムリピート・セグメントを含有する部分およびマーカー配列を含み,分離は,正常なリピート数を有するタンデムリピート・セグメントを含有するフラグメントが第1の画分に存在し;前変異を有するタンデムリピート・セグメントを含有するフラグメントが第2の画分に存在し;完全変異を有するタンデムリピート領域を有するフラグメントが第3の画分に存在するような条件下でサイズに従って行い,そして,
マーカー配列を検出することによってセグメントを含有する画分(単数または複数)を同定し,その同定された画分からタンデムリピート・セグメントにおけるリピート数を判定する,
の各工程を含み,
ここで,第1の画分が陽性であれば個体が正常なタンデムリピート数のFMR1対立遺伝子を有することを示し;第2の画分が陽性であれば個体が前変異型対立遺伝子を有することを示し;そして,第3の画分が陽性であれば個体が完全変異型対立遺伝子を有することを示す。
【0014】
他の観点では,遺伝子のタンデムリピート・セグメントの増大または減少を特徴とする遺伝子変異のキャリアを検出し,それらの増大に起因する疾病に罹患した個体を診断する方法を提供する。この方法は,上記のような特定の遺伝子の野生型対立遺伝子,前変異型対立遺伝子,および/または完全変異型対立遺伝子の検出を含む。その後,個体に存在する対立遺伝子(単数または複数)に基づいて遺伝子型を判定し,正常,キャリア,または罹患状態の診断を行ってもよい。
【0015】
本明細書で使用する“キャリア”とは,遺伝子の変異型または改変型対立遺伝子を保有するが,その変異に関係する障害または疾病に罹患していない個体である。キャリアは将来において子供または子孫に変異を伝達する可能性があり,その子供または子孫は障害また疾病に罹患しうる。脆弱性X症候群に関しては,男性および女性のいずれもキャリアとなりうる。本明細書で男性に関して使用する“キャリア”という用語は“前変異キャリア”という用語と同義であり,前変異型対立遺伝子を保有する男性を示す。本明細書で女性に関して使用するキャリアという用語は,前変異型対立遺伝子または完全変異型対立遺伝子を保有する女性を含む。それらの女性・キャリアを“前変異キャリア”(すなわち前変異型FMR1対立遺伝子を保有する)または“完全変異キャリア”(すなわち完全変異型FMR1対立遺伝子を保有する)とも称する。
【0016】
本明細書で使用する“罹患した”という用語は,特定の遺伝子の1つまたはそれ以上の変異型対立遺伝子を保有し,その変異に関係する疾病または障害(すなわち表現型)を示す個体を指す。脆弱性X症候群に関しては,完全変異型FMR1対立遺伝子を有する男性は罹患するが,1つの完全変異型対立遺伝子を有する女性は罹患するか,または完全変異キャリアとなりうる。
【0017】
上記の本発明の観点のある態様では,脆弱性X症候群に罹患した男性個体(完全変異)をキャリア個体(前変異)または正常個体と識別する。個体由来の核酸サンプルを断片化して核酸フラグメントを取得し,ここで,そのフラグメント中ではFMR1遺伝子のタンデムリピート・セグメントにはマーカー配列が付随している。タンデムリピート・セグメントを含有するフラグメント(単数または複数)がタンデムリピート・セグメントのリピート数に従って画分に存在するような条件下で,フラグメントをサイズに従って分離し,マーカー配列の検出によってセグメントを含有する画分(単数または複数)を同定する。ある態様では,第1の画分が正常型対立遺伝子のリピート範囲内のリピート数を有するフラグメントを捕捉し;第2画分が前変異型対立遺伝子のリピート範囲内のリピート数を有するフラグメントを捕捉し;そして第3の画分が完全変異型対立遺伝子のリピート範囲内のリピート数を有するフラグメントを捕捉するように画分を選択する。脆弱性Xの分野で現在行われている研究によれば,FMR1遺伝子の正常型対立遺伝子のリピート範囲は55リピート未満;前変異型対立遺伝子のリピート範囲は55-200;そして完全変異型対立遺伝子のリピート範囲は200リピート以上である。これらの範囲は+/-10%であってもよい。新たな研究が行われ,リピート数と疾病状態の相関関係に関する知見がさらに得られてくるため,これらの範囲は時間の経過と共に変化しうる。男性は一般に1つのX染色体(FMR1遺伝子はこれに存在する)を有するため,1つの画分だけがマーカー配列に関して陽性となる。従って男性は,以下に従う表現型に基づいて表現型を特定することができる:第1画分がマーカー配列に関して陽性であれば,個体は正常である;第2の画分がマーカー配列に関して陽性であれば,個体はキャリアである;第3の画分のみがマーカー配列に関して陽性であれば,個体は脆弱性Xに罹患している。
【0018】
別の観点では,FMR1遺伝子のタンデムリピート領域における変異のキャリア状態に関するスクリーニング法を提供し,この方法は,
個体由来の核酸をアッセイして性別を判定し;そして
核酸をアッセイしてFMR1遺伝子のタンデムリピート領域の長さを測定することを含み,
ここで測定は,タンデムリピート領域の増幅,増幅産物の検出,および増幅産物におけるタンデムリピート数の測定を含み,
男性個体の場合:
55未満のタンデムリピートを有する増幅産物が存在すれば個体がキャリアではないことを示しており,
55以上のタンデムリピートを有する増幅産物が存在すれば個体がキャリアであることを示しており,または,
増幅産物が存在しなければキャリア状態が不確定であり;そして
女性個体の場合:
55以上のタンデムリピートを有する増幅産物が存在すれば個体がキャリアであることを示しており;または,
55未満のタンデムリピートを有する1つの増幅産物が存在すればキャリア状態が不確定である。
【0019】
ある態様では,上記の方法は不確定の個体を分析してキャリア状態を判定することをさらに含み,分析は,
核酸のフラグメントを分離し,ここでフラグメントは個体の核酸含有サンプルから調製されたものであり,フラグメントはFMR1遺伝子のタンデムリピート・セグメントを含有する部分およびマーカー配列を含み,分離は,正常なリピート数を有するタンデムリピート・セグメントを含有するフラグメントが第1の画分に存在し;前変異を有するタンデムリピート・セグメントを含有するフラグメントが第2の画分に存在し;完全変異を有するタンデムリピート領域を有するフラグメントが第3の画分に存在するような条件下でサイズに従って画分に分離することであり,そして
マーカー配列を検出することによってセグメントを含有する画分(単数または複数)を同定し,タンデムリピート・セグメントにおけるリピート数をその同定された画分から判定する,
の各工程を含み,
男性個体の場合:
第1の画分が陽性であれば個体がキャリアでないことを示しており,
第2の画分が陽性であれば個体が前変異キャリアであることを示しており,
第3の画分が陽性であれば個体が罹患していることを示しており;そして
女性個体の場合:
第1の画分が陽性であれば個体が正常型対立遺伝子のホモ接合体であることを示しており;
第2の画分が陽性であれば個体が前変異キャリアであることを示しており;そして
第3の画分が陽性であれば個体が完全変異キャリアであることを示している。
【0020】
上記方法の好ましい態様では,性別を判定するための核酸のアッセイは,核酸のある領域を(好ましくはPCRによって)増幅することを含む。例えばY染色体に特異的な配列(例えばSRY遺伝子座)を増幅の標的としてもよい。この場合,増幅はY染色体の存在下でしか起こらない(Sinclair A.H.ら,Nature 346:240 244(1990)参照)。他の例では,X染色体およびY染色体上のいずれにも存在する遺伝子で,各染色体上で長さが異なる場合,その対応する遺伝子を検出して性別の判定を行ってもよい。従って,増幅によってXまたはY染色体のいずれかに特異的な長さを有する,異なるサイズのアンプリコンが得られる。この場合,男性由来の核酸の増幅では両方のアンプリコンが得られ,女性由来の場合は一方のアンプリコンだけが得られる。それらの遺伝子の例にはDXZ1,DYZ1,およびアメロゲニン遺伝子がある。さらに好ましい態様では,性別判定のためのアッセイは,
X染色体上のアメロゲニン遺伝子およびY染色体上のアメロゲニン遺伝子から異なるサイズの増幅産物を生ずるアメロゲニン遺伝子領域を増幅し,
増幅産物(単数または複数)のサイズを測定する,
ことを含み,この場合,1つのサイズの生成物が存在すれば性別は女性であり,異なるサイズの2つの生成物が存在すれば性別は男性であることを示している。
【0021】
さらに別の態様では,性別判定アッセイは,タンデムリピート領域の増幅により多重に行い,好ましくは多重PCRで実施し;好ましくは1つまたはそれ以上の内部標準を多重反応に含める。好ましい態様では,アンドロゲン不応症遺伝子のある領域を内部標準として増幅する。
【0022】
本発明の上記観点の好ましい態様では,ゲノムDNAを含有するサンプルについて,FMR1遺伝子のタンデムリピート領域の増大に関するアッセイを行う。従って,ゲノムサンプルの核酸断片化を行い,得られる核酸フラグメントをサイズに基づいて分画する。FMR1遺伝子のタンデムリピート領域の上流または下流のマーカー配列(断片化した核酸中でタンデムリピート領域に付随している)をポリメラーゼ連鎖反応によって増幅する。ある態様では,マーカー配列の増幅およびアンプリコンの検出はTaqManシステムによって行う。他の態様では,標識したプライマーを用いてマーカー配列を増幅し,得られる標識されたアンプリコンをキャピラリー電気泳動を用いて検出する。
【0023】
当業者に容易に認識されるように,サイズによるフラグメントの分画を改変し,画分が正常数のタンデムリピートまたは異常数のタンデムリピートのいずれかに対応するようにしてもよい。ある態様では,フラグメント核酸をサイズによって2つの画分(サイズがより大きいフラグメントを含む上側画分およびサイズがより小さいフラグメントを含む下側画分)に分離してもよい。この方法では,正常数のタンデムリピートを含有する核酸由来のフラグメントが下側画分に含まれ,タンデムリピート数が異常に増加した核酸由来のフラグメントが上側画分に含まれるように画分を設計してもよい。他の態様では,断片化したDNAを任意数の画分に分離してもよい。ある態様では,断片化したDNAを2-16から選択される数の画分,好ましくは3つの画分,4つの画分,5つの画分,6つの画分,8つの画分,または16の画分に分離してもよい。
【0024】
上記方法の好ましい態様では,断片化したDNAを下側画分および上側画分に分離し,ここで下側画分は55リピート未満(正常なリピート数)を含有するタンデムリピート領域に対応し,上側画分は55以上のタンデムリピート(前変異および完全変異)を含有する。これによって,正常型対立遺伝子を前変異または完全変異と識別することができる。
【0025】
上記方法の別の好ましい態様では,断片化したDNAを3つの画分に分離し,ここで第1の画分は正常型対立遺伝子(すなわち55リピート未満)のタンデムリピート領域に対応し,第2の画分は前変異型対立遺伝子(すなわち55-200リピート)のタンデムリピート領域に対応し,第3の画分は完全変異型対立遺伝子(すなわち200リピート以上)のタンデムリピート領域に対応する。
【0026】
上記方法のさらに別の好ましい態様では,断片化したDNAを4つの画分に分離し,ここで第1の画分は正常型対立遺伝子のタンデムリピート領域に対応し,第2の画分は小型の前変異型対立遺伝子のタンデムリピート領域に対応し,第3の画分は大型の前変異型対立遺伝子のタンデムリピート領域に対応し,そして第4の画分は完全変異型対立遺伝子のタンデムリピート領域に対応する。特定の態様では,第1の画分は0-60リピートに対応し;好ましくは第2の画分は60-200リピートに対応し;好ましくは第3の画分は200-2000リピートに対応し;そして好ましくは第4の画分は2000以上のリピートに対応する。別の態様では,DNAをBlpIおよびMlyIで断片化し,第1の画分が6-62リピートに対応し;好ましくは第2の画分が63-140リピートに対応し;好ましくは第3の画分が141-220リピートに対応し;好ましくは第4の画分が221-2000リピートに対応するように分画する。別の態様では,DNAをAluIで断片化し,第1の画分が6-68リピートに対応し;好ましくは第2の画分が69-102リピートに対応し;好ましくは第3の画分が102-202リピートに対応し;好ましくは第4の画分が203リピート以上に対応するように分画する。さらに別の態様では,DNAをSphIおよびBmtIで断片化し,第1の画分が6-62リピートに対応し;好ましくは第2の画分が63-163リピートに対応し;好ましくは第3の画分が164-196リピートに対応し;好ましくは第4の画分が197リピート以上に対応するように分画する。
【0027】
また,ゲノムDNAサンプル中のタンデムリピート数を推定する方法も提供する。この方法では,ゲノムDNAを含有する試験サンプルの核酸断片化を行う。得られた核酸フラグメントをサイズによって3つまたはそれ以上のサイズ範囲画分に分離し,種々の画分中のタンデムリピート・セグメント含有フラグメントの同定を,タンデムリピート・セグメントに隣接するマーカー配列(断片化された核酸中でタンデムリピート領域に付随している)の検出によって行う。その後,リピートを含有する画分サイズをそれら核酸フラグメント中に存在するタンデムリピート・セグメントのサイズと関連付け,検出されたタンデムリピート領域のサイズを判定する。画分を3つまたはそれ以上のサイズ範囲に分離することよってタンデムリピート数をより詳細に推定することが可能となる。脆弱性Xの場合,前変異または完全変異の増大の程度を算定することができる。
【0028】
本発明の上記観点の好ましい態様では,この方法は第2の核酸断片化を含む。好ましくは,第1の核酸断片化に次ぐサイズ分離後に第2の断片化を行う;好ましくは第2の断片化は制限酵素消化によって行う。さらに好ましい態様では,第2の断片化によって,目的とする特定の核酸セグメント(例えばタンデムリピート・セグメント)を特定の核酸セグメントに隣接するマーカー配列から切断する。好ましくは,第2の核酸断片化によってマーカー配列内は切断されない。
【0029】
本発明の上記観点のある態様では,マーカー配列の全部または一部の増幅およびアンプリコンの検出によってマーカー配列を検出する。好ましい態様では,PCRによってマーカー配列を増幅し,電気泳動によってアンプリコンを検出する。より好ましい態様では,PCR増幅反応に使用するプライマーは標識を含み,PCRによって得られるアンプリコンを標識する。その後,そのようにして標識したアンプリコンを,キャピラリー電気泳動等の方法で検出することができる。
【0030】
本発明の上記観点の他の態様では,TaqMan系などのリアルタイムPCR法を用いてマーカー配列を検出する。この方法では,プローブを使用して,増幅されたマーカー配列の領域を検出する。
【0031】
本発明の上記観点のさらに別の好ましい態様では,マーカー配列を増幅する必要はなく,2つの異なる標識を施与されたプローブにハイブリダイズさせることによって直接検出できる。2つのプローブ(これらは,両プローブが同時に結合できるよう,マーカー配列の異なるセグメントにハイブリダイズする)をハイブリダイゼーション条件下で断片化した核酸と接触させる。画分中の1つの核酸フラグメントにハイブリダイズした識別可能に標識されたプローブが同時に検出されれば,これはその画分に含有されるフラグメントにタンデムリピート領域が存在することを示している。この態様の2つのオリゴヌクレオチド・プローブを,タンデムリピートの上流または下流にあるマーカー配列のセグメントにハイブリダイズするように設計してもよい。マーカー配列のこれらのセグメントはタンデムリピート領域に隣接するか,または上流もしくは下流に離れて位置してもよい。好ましい態様では,マーカー配列のセグメントはタンデムリピート領域の上流または下流500塩基以内である;より好ましい態様では,マーカー配列のセグメントはタンデムリピート領域の上流または下流250塩基以内である;最も好ましい態様では,マーカー配列のセグメントはタンデムリピート領域の上流または下流100塩基以内である。2本鎖マーカー配列の同じ,または逆の鎖にハイブリダイズするようにプローブを設計してもよい。プローブは,両者がタンデムリピートの上流にハイブリダイズするか,または両者が下流にハイブリダイズしてもよい。あるいはまた,一方のプローブがタンデムリピートの上流にハイブリダイズし,他方のプローブが下流にハイブリダイズしてもよい。プローブは,両者が断片化工程(単数または複数)後に同じ隣接する核酸分子上に位置すれば,マーカー配列の0塩基から数十万塩基離れたセグメントにハイブリダイズしてもよい。好ましくはプローブは1kb未満,好ましくは500塩基未満,300塩基未満,200塩基未満,100塩基未満,50塩基未満,20塩基未満,10塩基未満,5塩基未満,1塩基未満,または0塩基,離れている。
【0032】
本発明の別の態様では,核酸サンプル中の特定の核酸セグメントのサイズを測定する方法を提供し,ここで,サイズは第1の方法および第2の方法を用いて得られる情報によって測定する。従って,この方法は第1の方法によるタンデムリピート・セグメントのサイズ測定,第2の方法によるタンデムリピート・セグメントのサイズ測定,および第1の方法および第2の方法によって得られた情報を用いたタンデムリピート領域のサイズ測定を含む。ある態様では,第1の方法はタンデムリピートの増幅を含み,好ましくは増幅はPCRによって行う。好ましい態様では,PCR増幅は標識されたプライマーを含む。他の好ましい態様では,アンプリコンの電気泳動(好ましくはキャピラリー電気泳動)を行い,同時に泳動させた標準物質との比較によってアンプリコンのサイズを測定する。他の態様では,第1の方法はサザンブロッティングを含む。
【0033】
好ましい態様では,第2の方法はサンプルの核酸の断片化,断片化した核酸のサイズに基づく分画,および目的とする特定の核酸セグメントの上流または下流にあるマーカー配列の検出を含み,ここでマーカー配列は断片化された核酸中の目的とする特定の核酸セグメントに付随している。
【0034】
その後,特定の核酸セグメントを含有する画分のサイズを核酸サンプル中の特定の核酸セグメントのサイズに対応させることによって,目的とする特定の核酸セグメントのサイズの測定を行う。ある態様では,第1の方法を1次スクリーニングとして使用し,この方法で特定の核酸セグメントのサイズを測定することができないサンプルを,第2の方法によってさらに分析する。他の態様では,上記の2つの方法のうちの一方によるサイズ測定を用いて,上記の2つの方法のうちの他方によるサイズ測定結果を確認する。さらに別の態様では,第1の方法によるサイズ測定を用いて,特定の核酸フラグメントのサイズを精密に測定する。
【0035】
本発明の別の観点では,FMR1遺伝子のタンデムリピート領域に隣接するマーカー配列の増幅のためのプライマーを提供する。特定の態様では,プライマーはSEQ ID NO:4-9から成る群から選択される。
【0036】
本発明のさらに別の観点では,サンプル中の特定の核酸セグメントのサイズを検出するキットを提供し,キットは特定の核酸セグメントの上流または下流にあるマーカーヌクレオチド配列を増幅するためのプライマー対,および,核酸サンプルを切断して特定の核酸セグメントおよびその上流または下流のマーカー配列を含有する核酸サンプルのフラグメントを生成するための1つまたはそれ以上の制限エンドヌクレアーゼを含む。ある態様では,キットは特定の核酸セグメントをマーカーヌクレオチド配列から切断するための1つまたはそれ以上の制限エンドヌクレアーゼをさらに含む。さらに別の態様では,キットは適切なフラグメントのサイズ分離が行われたことを確認するための1つまたはそれ以上のコントロールをさらに含んでもよく;好ましくはコントロールはサイズ分離した核酸サンプルから1つまたはそれ以上のコントロールフラグメントを増幅させるのに使用する1つまたはそれ以上のプライマー対から成る。更なる態様では,キットは1つまたはそれ以上の酵素消化の完了を確認するためのコントロールをさらに含んでもよく;好ましくはコントロールは使用する酵素の認識部位を含有するコントロールフラグメントを増幅するように設計された1つまたはそれ以上のプライマー対から成る。キットは任意の必要に応じたバッファーまたは他の試薬をさらに含んでもよい。
【0037】
本発明の上記観点の好ましい態様では,特定の核酸セグメントはタンデムリピート・セグメントを含む。さらに好ましい態様では,キットはFMR1遺伝子のタンデムリピート・セグメントを検出するためのものであり;好ましくは核酸サンプルのフラグメントを生成するための酵素はAluIであり;好ましくはマーカー配列をタンデムリピートから切断するための酵素はBstNIであり;好ましくはキットは酵素消化が完了したか否かを確認するための1つまたはそれ以上のコントロール・プライマー対を含み;好ましくはキットはサイズ分離した核酸サンプル中の1つまたはそれ以上のコントロールフラグメントの存在を検出するための1つまたはそれ以上のプライマー対を含む。他の好ましい態様では,キットはFMR1遺伝子のタンデムリピート・セグメントを検出するためのものであり;好ましくは核酸サンプルのフラグメントを生成するための酵素はBlpIおよびMlyIであり;好ましくはマーカー配列をタンデムリピートから切断するための酵素はBmtIであり;好ましくはキットは酵素消化が完了したか否かを確認するための1つまたはそれ以上のコントロール・プライマー対を含み;好ましくはキットはサイズ分離した核酸サンプル中の1つまたはそれ以上のコントロールフラグメントの存在を検出するための1つまたはそれ以上のプライマー対を含む。さらに別の好ましい態様では,キットはFMR1遺伝子のタンデムリピート・セグメントを検出するためのものであり;好ましくは核酸サンプルのフラグメントを生成するための酵素はSphIおよびBmtIであり;好ましくはマーカー配列をタンデムリピートから切断するための酵素はBstNIであり;好ましくはキットは酵素消化が完了したか否かを確認するための1つまたはそれ以上のコントロール・プライマー対を含み;好ましくはキットはサイズ分離した核酸サンプル中の1つまたはそれ以上のコントロールフラグメントの存在を検出するための1つまたはそれ以上のプライマー対を含む。
【0038】
本明細書において核酸に関連して使用する“セグメント”という用語は,連続する核酸の断片を指す。
【0039】
本明細書で使用する“目的とする特定の核酸セグメント”とは,既知の配列を有する核酸の特定の“セグメント”または断片を指し,好ましいセグメントはPCRによる増幅が困難なセグメントである。例として,グアニン塩基およびシトシン塩基の含有量が高い核酸セグメント,大型の核酸セグメントまたは多数のタンデムリピート(一般的には100以上のトリヌクレオチド・リピート)を有するセグメントがある。ある態様では,セグメントは欠失,重複,または挿入を含む。好ましい態様では,目的とする特定の核酸セグメントはタンデムリピート領域を含む。
【0040】
“グアニン塩基およびシトシン塩基含有量が高い核酸セグメント”または“GCリッチ”とは,ゲノムのある核酸セグメントがそのゲノムの平均より高いことを指す。一般に,GCリッチとはグアニンおよびシトシン塩基が40%以上,50%以上,60%以上,または75%以上である。
【0041】
本明細書において目的とする特定の核酸セグメントに関連して使用する“サイズ“とは,そのセグメントの大きさを記述する数量または量を指し,例えば分子量,塩基対数,またはタンデムリピートのコピー数で表すことができる。
【0042】
本明細書で使用する“フラグメント”とは,より長い核酸をより短い核酸に切断する過程によって得られる核酸の一部分を指す。核酸は化学的または生物化学的手法によって切断または断片化してもよく,好ましくは核酸を再生可能な方法で断片化し,好ましくは核酸を1つまたはそれ以上の制限エンドヌクレアーゼで断片化する。好ましくは,目的とする特定の核酸セグメントおよびそれに伴うマーカー配列が同じフラグメント上に存在するように核酸を断片化する。目的とする核酸セグメントを含むフラグメントの長さは,目的とする核酸セグメントの長さ並びにDNAを断片化するために選択した制限酵素に依存する。従って,フラグメントの長さは,目的とする核酸セグメントおよびそのセグメントの上流の5’制限酵素認識部位までの領域(すなわちフラグメントの5’末端),並びにセグメントの下流の3’制限酵素認識部位までの領域(すなわちフラグメントの3’末端)を含む。
【0043】
本明細書で使用する“フラグメントの分離”とは,異なるフラグメントの混合物中に含まれるフラグメントを相互に物理的に分離する過程を指す。
【0044】
本明細書で使用する“分画”とは,個別成分を含む1つの混合物を処理して,混合物中の個別成分の少なくとも一部を相互に分離させることを指す。例えばクロマトグラフィーは物理的/化学的原理に基づいて成分の混合物を分離する分画法である。成分をゲルまたは膜上で分離し,個別成分を分離同定してもよい。混合物を異なる成分に分離し,これを別々の液体アリコート(すなわち画分)として捕捉することにより,混合物中の個別成分を分画することができる。本明細書で使用する“画分”とは,当初の分画されていないフラグメント混合物のサイズまたはサイズ範囲とは異なる特定のサイズまたはサイズ範囲を有する一群のフラグメントを指す。
【0045】
本明細書で使用する“セグメントを含有する画分の同定”とは,目的のセグメントを含有するサイズ分離済みの画分を,核酸のフラグメント上にある同セグメントに伴うマーカー配列の検出によって判定することを意味する。
【0046】
本明細書で使用する“タンデムリピート領域”または“タンデムリピート・セグメント”という用語は,複数コピーのDNA短鎖配列を含むDNAの領域を指す。“タンデムリピート配列”,“タンデムリピート”,または単に“リピート”という用語は本明細書において同義で使用され,タンデムリピート領域中で反復されているDNA短鎖配列を指す。それらのタンデムリピートは互いに同じ向きで隣接するか(すなわちダイレクト・タンデムリピート),または互いに逆の向きで隣接する(すなわち逆位タンデムリピート)。リピート配列はジ,トリ,テトラ,またはそれ以上のヌクレオチド長であってもよい。ヒト遺伝子のコード領域または非コード領域内のタンデムリピート配列のコピー数の増大はリピート増大疾患に関連する。
【0047】
本明細書で使用する“サンプル”または“試験サンプル”という用語は,ゲノムDNAを含有する任意の液体または固体物質を指す。好ましい態様では,試験サンプルは生物学的供与源(すなわち“生体サンプル”),例えば培養液中の細胞または動物(最も好ましくはヒト)由来の組織サンプルから得る。好ましいサンプル組織には,それに限定される訳ではないが,血液,骨髄,体液,脳脊髄液,血漿,血清,または組織(例えばバイオプシー物質)がある。
【0048】
本明細書で使用する“核酸”とは,広義に染色体のセグメント,DNA,cDNA,および/またはRNAのセグメントまたは部分を指す。核酸は,最初に任意の供与源から単離された核酸サンプルから,誘導または入手してもよい(例えばサンプルDNAまたはRNAから単離,精製,増幅,クローニング,逆転写)。
【0049】
本明細書で使用する“標的核酸”とは,遺伝子間配列を有する,もしくは有さない完全長遺伝子,遺伝子間配列を有する,もしくは有さない遺伝子セグメントもしくは部分,またはプローブもしくはプライマーを設計する元となる核酸配列を指す。標的核酸には野生型配列,変異,欠失,または重複を含有する核酸配列,タンデムリピート領域,目的の遺伝子,目的の遺伝子の領域,またはその上流もしくは下流領域がある。標的核酸は特定の遺伝子の他に取り得る(alternative)配列または対立遺伝子であってもよい。標的核酸はゲノムDNA,cDNA,またはRNAから誘導してもよい。本明細書で起床する標的核酸は天然型DNAまたはPCR増幅産物であってもよい。
【0050】
本明細書で使用する“マーカー配列”という用語は,目的の核酸セグメントに付随する核酸セグメントを指し,そのためサンプル中のマーカー配列の検出は目的の核酸セグメントの存在を示す。目的とする特定の核酸セグメントを検出するためのマーカー配列は,マーカーが特定のサイズの画分中に存在するフラグメントにおいて,目的とする核酸セグメントに,ユニークにまたは実質的に付随していることに基づいて選択すべきである。マーカー配列はハイブリダイゼーション法に基づくプライマーを用いる核酸増幅によって検出できる。また,マーカー配列は1つまたはそれ以上の核酸プローブへのハイブリダイゼーションによって検出することもできる。本明細書に開示する方法によれば,タンデムリピートの上流または下流のいずれかに存在するマーカー配列の検出によって,サイズ分画した核酸フラグメントからタンデムリピート・セグメントを含有する画分を同定する。
【0051】
マーカー配列は目的の核酸セグメント内に存在してもよいし,あるいは目的の核酸に隣接してもよい。本明細書で使用する“隣接する”という用語は,目的の領域に接して存在する,またはある距離を置いて存在するDNAの領域を指す。隣接領域は目的の領域の“上流”(すなわち5’)または“下流”(すなわち3’)に存在してもよい。マーカー配列はタンデムリピート領域に接して存在するか,または上流もしくは下流のある距離を隔てた位置に存在してもよい。好ましい態様では,マーカー配列はタンデムリピート領域の上流または下流500塩基以内に存在する;より好ましい態様では,マーカー配列はタンデムリピート領域の上流または下流250塩基以内に存在する;最も好ましい態様では,マーカー配列はタンデムリピート領域の上流または下流100塩基以内に存在する。隣接領域はコート配列または非コード配列であってもよく,目的の領域を含む遺伝子と同じ遺伝子であるか,または異なる遺伝子であってもよい。好ましい態様では,マーカー配列は目的の核酸セグメントに隣接する。
【0052】
ある態様では,特定の核酸セグメントを含有する画分のサイズを核酸サンプル中の特定の核酸セグメントのサイズと関連づけることによって,目的とする特定の核酸セグメントのサイズを測定する。この特定の核酸セグメントを含有する画分のサイズを核酸サンプル中の特定の核酸セグメントのサイズと関連づける工程は,本明細書に開示する参照テーブルを用いて行うことができる。他の態様では,コンピュータープログラムによってこの工程を行う。
【0053】
本明細書で使用する“目的とする特定の核酸セグメントを含有する画分サイズを,フラグメントを回収した条件下でその画分に存在しうる目的とする特定の核酸セグメントのサイズと関連づける”というフレーズは,目的をする特定の核酸セグメントのサイズを特定の画分サイズにおけるその位置から測定するための手段を表す。ある方法では,目的とする特定の核酸セグメントと分画法(例えば使用する特定の制限エンドヌクレアーゼ(単数または複数))とのそれぞれの組み合わせに関して,参照テーブルを確立する。参照テーブルにより,各画分(一定範囲のフラグメントサイズを含有する)が,それらのフラグメント中に存在する目的のセグメントの長さと関連づけられる。いずれの特定の画分中にも,目的とするセグメントおよび他の配列を含むフラグメントが存在する。従って,任意の画分で,目的のセグメントに対応するフラグメント中の塩基数を配列データから算出できる。この相関関係は,回収したフラグメントについて,実験的に,または既知のDNA配列を用いて確立してもよい。任意の特定の未知サンプルに関して,目的のセグメントを含有するフラグメントサイズを,同一のフラグメント回収条件を反映する好適な参照テーブルと関連させることによって,目的セグメントのサイズを測定することができる。この手法を用いることによって,目的とする特定の核酸セグメントを含有する画分サイズが,フラグメントの生成条件下でその画分中に存在しうる特定の目的核酸セグメントのサイズに関連付けられる。この方法を実施するために参照テーブルを作成することは必須ではない。例えばこの関連付け工程と行うためのコンピュータープログラムを作成してもよい。
【0054】
“ゲノム核酸”または“ゲノムDNA”とは,細胞の核由来のDNAの一部または全部を指す。ゲノムDNAは無傷のものであるか,または断片化してもよい(例えば当該分野で既知の方法による制限エンドヌクレアーゼでの消化)。ある態様では,ゲノムDNAは単数遺伝子の全部もしくは一部か複数遺伝子由来の配列,1つもしくはそれ以上の染色体由来の配列,あるいは細胞の全染色体由来の配列を含んでもよい。公知のように,ゲノム核酸には遺伝子コード領域,イントロン,5’および3’非翻訳領域,5’および3’隣接DNA,および構造セグメント,例えばテロメアおよびセントロメアDNA,複製起点,および遺伝子間DNAがある。ゲノム核酸は細胞の核から得るか,または遺伝子組み換えによって生成してもよい。細胞核から直接単離したDNAまたはRNAからゲノムDNAを転写してもよい。PCR増幅を用いることもできる。種々のサンプルからDNAおよび/またはRNAを精製する方法は当該分野で公知である。
【0055】
本明細書では“対立遺伝子”および“対立遺伝子多型”という用語は同義に使用する。対立遺伝子は,染色体上の所定の遺伝子座または位置を占める同一遺伝子の多数の取り得る他の形態または配列である。各遺伝子座について1つの対立遺伝子が独立して各親から受け継がれ,結果として各遺伝子は2つの対立遺伝子を持つことになる。特定の遺伝子について同一の対立遺伝子を2コピー保有する個体はその遺伝子座に関してホモ接合性であり,特定の遺伝子について異なる2つの対立遺伝子を保有する個体はヘテロ接合性である。
【0056】
“リピート増大疾患”とは,メンデル遺伝様式を示し,本質的多型タンデムリピートの増大(主として異なる3ヌクレオチド・モチーフを伴うが,12量体までのより長いリピート配列もある)が原因であることが明らかになっている約二十数種類のヒト疾患を指す(表1)。増大したタンデムリピートを含む対立遺伝子の特徴は,次の世代における過度の不安定性である(動的突然変異)。さらに,これらの対立遺伝子は同じ生物の細胞集団中で長さが異なり得る(モザイク現象)。ある型のリピート増大疾患はトリヌクレオチド・リピート障害(例えば脆弱性X症候群,筋硬直性ジストロフィー1型など)で,これは最も頻度の高いリピート増大疾患である。これらの疾患は,タンデムリピートの更なる増大傾向を有する,世代間に渡るリピート不安定性を示す。次世代におけるリピート長の増加により,罹患個体のより低年齢での発症および/または臨床症状の顕著化が起こりうる。本明細書に記載するタンデムリピート測定法は,表3に示す任意の疾病/遺伝子のタンデムリピート長の測定に適用できる。
【0057】
【表1】

【0058】
【表2】

【0059】
本明細書で使用する“オリゴヌクレオチド”という用語は,デオキシリボヌクレオチド,リボヌクレオチド,またはそれらの任意の組み合わせから成る短鎖ポリマーを指す。本発明のオリゴヌクレオチドは一般に約10から約100ヌクレオチド長である。オリゴヌクレオチドは好ましくは15から70ヌクレオチド長であり,20から26ヌクレオチドが最も一般的である。ヌクレオチドの1文字コードはU.S. Patent Office Manual of Patent Examining Procedure, section 2422, table 1に記載されている。これについて,ヌクレオチド表記“R”はグアニンまたはアデニンを意味し,“Y”はチミン(RNAの場合はウラシル)または使徒心を意味し,“M”はアデニンまたはシトシンを意味する。オリゴヌクレオチドをプライマーまたはプローブとして使用してもよい。
【0060】
本明細書においてオリゴヌクレオチドに関して使用する“実質的に精製された”という用語は,完全に純粋である必要はなく,配列が天然環境中より相対的に高い純度であることを示す。それらのオリゴヌクレオチドは多くの方法(例えば研究室での合成,制限酵素消化,またはPCR)によって得てもよい。“実質的に精製された”オリゴヌクレオチドは,好ましくは50%以上の純度,より好ましくは少なくとも75%の純度,そして最も好ましくは少なくとも95%の純度である。
【0061】
本明細書において,オリゴヌクレオチドおよび核酸をアラインさせた場合にオリゴヌクレオチドが核酸の一部と少なくとも50%の配列同一性を有すれば,そのオリゴヌクレオチドは核酸に“特異的”である。核酸に特異的なオリゴヌクレオチドは,好適なハイブリダイゼーションまたは洗浄条件下で目的の標的にハイブリダイズすることができ,目的としない核酸には実質的にハイブリダイズしないものである。より高いレベルで配列が同一であることが好ましく,例えば少なくとも75%,少なくとも80%,少なくとも85%,少なくとも90%,少なくとも95%,そしてより好ましくは少なくとも98%の同一性である。
【0062】
本明細書で使用する“ハイブリダイズする”または“特異的にハイブリダイズする”という用語は,好適なストリンジェントの条件下で2つの相補的な核酸鎖が互いにアニールする過程を指す。ハイブリダイゼーションは一般に,そして好ましくは,プローブ長の核酸分子を用いて行い,好ましくは20-100ヌクレオチド長である。核酸ハイブリダイズ法は当該分野で公知である。例えばSambrookら, 1989, Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第2版, Cold Spring Harbor Press, Plainview, N.Y.参照。少なくとも所望のレベルの相補性を有する配列が安定にハイブリダイズし,より相補性の低いものはハイブリダイズしないようなハイブリダイゼーション条件のストリンジェンシーの推定および調整の方法は,当業者に理解されるところである。ハイブリダイゼーションの条件およびパラメータの例として,例えば以下を参照されたい:Sambrookら, 1989, Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第2版, Cold Spring Harbor Press, Plainview, N.Y.;Ausubel, F. M.ら,1994, Current Protocols in Molecular Biology. John Wiley & Sons, Secaucus, N.J.。
【0063】
本明細書で使用する“実質的に相補的な”という用語は,2つの配列がストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることを意味する。当業者に理解されるように,実質的に相補的な配列はその全長に渡ってハイブリダイズする必要はない。特に,実質的に相補的な配列は,ストリンジェントな条件下で標的またはマーカー配列にハイブリダイズする連続した塩基配列の3’または5’側に位置する,標的またはマーカー配列にハイブリダイズしない連続的塩基配列を含む。
【0064】
本明細書で使用する“相補鎖”という用語は,標準的なワトソン/クリック対合則に従う,核酸に対する相補的配列を意味する。相補配列はDNA配列またはその相補配列に相補的であるRNAの配列であってもよいし,cDNAであってもよい。
【0065】
本明細書で使用する“コード配列”という用語は,核酸もしくはその相補鎖の配列またはその一部で,転写および/または翻訳されてmRNAおよび/またはポリペプチドもしくはそのフラグメントを生成できるものを意味する。コード配列には,ゲノムDNAまたは未成熟一次転写物RNAのエクソンがあり,これが細胞の生化学的機構によって結合され,成熟mRNAを生成する。アンチセンス鎖はそれらの核酸の相補鎖であり,そのコードする配列はそこから推測できる。
【0066】
本明細書で使用する“非コード配列”とは,核酸もしくはその相補鎖の配列,またはその一部で,in vivoにおいてアミノ酸に転写されないか,またはtRNAがアミノ酸を配置するように反応しない,またはアミノ酸を配置しようと作用しないものを意味する。非コード領域には,ゲノムDNAまたは未成熟一次転写産物RNA中のイントロン配列,および遺伝子付随配列,例えばプロモーター,エンハンサー,サイレンサーなどがある。
【0067】
本明細書で使用する“増幅”または“増幅する”という用語は,標的核酸をコピーし,それによって選択した核酸配列のコピー数を増加させるための,当該分野で公知の1つまたはそれ以上の方法を意味する。増幅は指数関数的であっても直線的であってもよい。標的核酸はDNAまたはRNAのいずれでもよい。この方法で増幅した配列を“アンプリコン”という。以下に記載する代表的な方法はポリメラーゼ連鎖反応(“PCR”)を用いた増幅に関するが,核酸増幅のための多くの他の方法は当該分野で公知である(例えば等温法,ローリングサイクル法など)。当業者に理解されるように,これらの別法をPCR法の代わりに,またはそれと併わせて用いてもよい。例えば以下参照:Saiki,“Amplification of Genomic DNA” in PCR Protocols, Innisら編, Academic Press, San Diego, CA 1990, pp 13-20;Wharamら, Nucleic Acids Res. 2001 Jun 1;29(11):E54-E54;Hafnerら, Biotechniques 2001 Apr;30(4):852-6, 858, 860 passim;Zhongら, Biotechniques 2001 Apr;30(4):852-6, 858, 860 passim。
【0068】
本明細書において増幅に関して使用する“プライマー”とは,標的またはマーカー・ヌクレオチド配列に特異的にアニールするオリゴヌクレオチドである。最適な増幅のためには,プライマーの3’ヌクレオチドは対応するヌクレオチド位置で標的またはマーカー配列と同一であるべきである。
【0069】
“センス鎖”とは,機能性タンパク質のコード配列の少なくとも一部を含む2本鎖DNA(dsDNA)鎖を意味する。“アンチセンス鎖”はセンス鎖の逆相補鎖であるdsDNA鎖を意味する。
【0070】
本明細書で使用する“フォーワード・プライマー”はdsDNAのアンチセンス鎖にアニールするプライマーである。“リバース・プライマー”はdsDNAのセンス鎖にアニールする。
【0071】
本明細書で使用する“高度の配列同一性”を有する配列は,アラインしたヌクレオチド位置の少なくとも約50%,好ましくはアラインしたヌクレオチド位置の少なくとも約75%,より好ましくはアラインしたヌクレオチド位置の少なくとも約90%,そして最も好ましくはアラインしたヌクレオチド位置の少なくとも約95%が同一であるヌクレオチドを有する。
【0072】
本明細書で使用する“TaqMan PCR検出システム”とは,リアルタイムPCRの方法を指す。この方法では,増幅された核酸セグメントにハイブリダイズするTaqManプローブがPCR反応混液に含まれる。TaqManプローブはドナーおよびクエンチャー蛍光団をプローブのいずれかの末端に有し,それらは互いに十分近接しており,ドナーの蛍光はクエンチャーに吸収されている。しかしながら,プローブが増幅されたセグメントにハイブリダイズすると,Taqポリメラーゼの5’-エキソヌクレアーゼ活性によってプローブが切断され,それによってドナーの蛍光団が蛍光を発し,それを検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】タンデムリピートを検出する方法のある態様を示す図式である。特定の長さのタンデムリピートを有するFMR1フラグメントの存在を,各サイズの画分(すなわち小,中,および大)について下段に図式で示す。PCRの下部に示す+または-の記号は,特定のフラグメントが画分中に存在する場合に隣接するマーカー配列のPCR増幅が起こるか否かを示している。
【図2】FMR1遺伝子領域の代表的配列(SEQ ID NO:1)であり,CGGタンデムリピート領域(一重下線),PCRプライマーの好ましいハイブリダイズ位置(陰付き部分),およびプローブの好ましいハイブリダイズ位置(2重下線)を示す。
【図3】DM-1遺伝子の下流3’非翻訳領域の代表的な配列(SEQ ID NO:2)であり,CTGタンデムリピート領域(一重下線),PCRプライマーの好ましいハイブリダイズ位置(陰付き部分),およびプローブの好ましいハイブリダイズ位置(2重下線)を示す。
【図4】FRDA遺伝子の第1のイントロン領域の代表的配列(SEQ ID NO:3)であり,CAAタンデムリピート領域(一重下線),ハイブリダイズするPCRプライマーの好ましい位置(陰付き部分),およびプローブの好ましいハイブリダイズ位置(2重下線)を示す。
【図5】FMR1遺伝子領域の制限酵素マップである。FXCEF3,FXCER3,FMR1F4,FMR1R4,FXCEF2,およびFXCER2は好ましいオリゴヌクレオチド・プライマーのハイブリダイゼーション位置を示す。FXCEF3/FXCER3,FMR1F4/FMR1R4,およびFXCEF2/FXCER2はそれぞれ,核酸をSphI/BmtI,AluI,およびBlpI/MlyIで断片化する時の,マーカー配列増幅のための好ましいプライマー対である。
【発明を実施するための形態】
【0074】
発明の詳細な説明
本発明にしたがえば,核酸のサンプル中で目的とする特定の核酸セグメントを検出する方法が提供される。特定の態様においては,目的とする特定の核酸セグメントはタンデムリピートであり,この方法を用いてそのようなタンデムリピートのサイズに関する情報を得る。この情報は,個体が特定の遺伝子に付随するタンデムリピートの数の増加(すなわち,増大)または減少(すなわち,低下)により特徴づけられる遺伝的変異をもつか否かを判定するために用いることができる。すなわち,核酸のサンプルにおけるタンデムリピート・セグメントのサイズを測定する方法が開示され,この方法は,タンデムリピート・セグメントに隣接するマーカー配列を検出することにより,サイズ分離した核酸フラグメントの画分中のタンデムリピートを同定し,次に,リピートを含む画分のサイズとそのような核酸フラグメント中に存在するタンデムリピート・セグメントのサイズを関連づけることを含む。図1は,この方法の1つの態様を図解して示す。下記に説明するように,この方法の1つの変形は,サイズ分離の後,“分析”工程の前に第2の断片化を実施することである。
【0075】
サンプルの調製
本発明の方法は,試験サンプルのゲノムDNA中の遺伝子のタンデムリピート領域の増大または減少により特徴づけられる変異を検出するために用いることができる。したがって,この方法は,ゲノムDNAを含む任意の生物学的サンプルを用いて行うことができる。例としては,組織サンプルまたはすべての細胞含有体液が挙げられる。血液は好ましい生物学的サンプルである。生物学的サンプルは,標準的な方法により取得することができ,ただちに使用してもよく,後に使用するために生物学的サンプルの種類に応じた適当な条件下で保存してもよい。
【0076】
試験サンプルの入手方法は当業者にはよく知られており,例えば,限定されないが,吸引,組織切片,血液または他の体液の採取,外科手術または針による生検等が挙げられる。試験サンプルは,個体から得ても患者から得てもよい。試験サンプルは,タンデムリピート配列の増大により引き起こされる疾患に罹患しているかそのキャリアであると疑われる患者から得た細胞,組織または液体を含んでいてもよい。試験サンプルは,細胞を含有する液体または組織であってもよい。サンプルとしては,限定されないが,羊水,生検,血液,血液細胞,骨髄,細針生検サンプル,腹水,血漿,胸膜液,唾液,精液,血清,組織または組織ホモジネート,組織の凍結またはパラフィン切片が挙げられる。サンプルは,組織切片の調製,分画,精製,または細胞オルガネラ分離等により処理してもよい。
【0077】
本発明の方法は,任意のタイプの胚細胞または胎児細胞または核酸含有体液を用いて出生前診断を行うために用いることができる。胎児細胞は,妊婦から,または胚のサンプルから採取することができる。すなわち,胎児細胞は,羊水穿刺により得られる羊水,シリンジで吸引した絨毛膜絨毛,経皮臍帯血,胎児皮膚生検,4細胞から8細胞期の胚(着床前)からの割球,または胚盤胞(着床前または子宮内洗浄)からの栄養外胚葉サンプルに存在する。
【0078】
特定の態様においては,ゲノムDNAを用いることができる。ゲノムDNAは,標準的な方法を用いて細胞または組織から単離することができる。例えば,Sambrook,et al.,1989,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Second Edition,Cold Spring Harbor Press,Plainview,NYを参照。
【0079】
ゲノムDNAの断片化
ゲノムDNAは,当該技術分野においてよく知られる種々の方法により断片化することができる。好ましくは,制限エンドヌクレアーゼ消化を用いてDNAを断片化する。
【0080】
本明細書において用いる場合,“制限エンドヌクレアーゼ”または“制限酵素”とは,二本鎖DNAを特定の配列(すなわち,認識配列ないし部位)で切断する酵素を表す。所定の制限エンドヌクレアーゼがDNAを切断する頻度は,酵素の認識部位の長さによって異なる。例えば,ある種の酵素は,4ヌクレオチドの長さの部位を認識する(“4カッター”と称される)。一般に,認識部位の長さおよび所定の位置で任意の1つのヌクレオチドが生ずる確率が1/4であるとの仮定に基づいて,酵素があるDNAをどのような頻度で切断するはずであるかを見積もることができる。“4カッター”の場合,4ヌクレオチドの特定の配列が存在しなければならない。各ヌクレオチドが等しい確率(すなわち,1/4)で4ヌクレオチド配列中の任意の特定の部位で生ずると仮定すると,4カッターは平均して256塩基対ごとに1か所を切断するはずである(すなわち,1/4x1/4x1/4x1/4=1/256)。その認識部位の長さが既知であるかぎり,任意の制限酵素について同様の計算を適用することができ,したがって,既知のサイズのDNA分子を切断することにより得られるであろうDNAフラグメントのサイズおよび数を推定することが可能である。このことにより,当業者は,既知のサイズのDNAフラグメントを生成することができる。制限エンドヌクレアーゼは,細菌から,または組換え技術により取得することができ,多数の商業的供給源から容易に入手可能である。
【0081】
制限エンドヌクレアーゼ断片化法においては,制限エンドヌクレアーゼをゲノムDNAのサンプルおよびエンドヌクレアーゼの最適な活性に適したバッファーと組み合わせて用いる。一般に,1ユニットのエンドヌクレアーゼは37℃で1時間に1μgのDNAを消化する。
【0082】
当業者は,特定の頻度でまたは特定の部位で切断する制限酵素を用いることにより,または,複数の制限酵素を用いることにより,この断片化法を改変しうることを理解するであろう。酵素または酵素の組み合わせは,アッセイにおいて目的とする遺伝子に適合するように選択する。一般に,タンデムリピート領域の全体および上流または下流のマーカー配列を含むフラグメントを生成する酵素または酵素の組み合わせを選択するであろう。断片化用の酵素は,タンデムリピートの周囲の領域の制限酵素マップを用いることにより選択することができる。そのようなマップは,当業者によく知られるソフトウエアプログラムにより容易に生成することができる。
【0083】
特に,酵素または酵素の組み合わせを選択して,正常な長さのタンデムリピート領域を異常な長さタンデムリピート領域から区別するための,適当にサイズ分画されたフラグメントを得ることができる。フラグメントの適当なサイズの決定においては,異常なタンデムリピート領域と比較した正常なタンデムリピート領域の長さの範囲の相違が考慮される。例えば,正常なタンデムリピート領域と異常なタンデムリピート領域との間の相違が小さい場合には,より短い長さのフラグメントを選択し,相違が大きい場合にはより長いフラグメントを選択する。
【0084】
好ましい態様においては,AluIを用いて核酸を断片化する。AluIは二本鎖DNAの4ヌクレオチド配列(すなわち,−AGCT−)を認識する制限酵素である。当業者は,AluIのイソチゾマー(すなわち,同じ認識配列および切断部位を有する制限酵素)をAluIの代わりに容易に用いることができることを理解するであろう。AluIイソチゾマーの例としては,限定されないが,BsaLI,MarI,MltI,およびOxaIが挙げられる。当業者はさらに,AluIのネオチゾマー(すなわち,別の酵素と同じ認識配列を有するが異なる切断部位を有する制限酵素)もまたAluIの代わりに用いることができることを理解するであろう。
【0085】
当業者は,この方法において,AluIと同じ切断頻度を有する他の制限酵素をAluIの代わりに用いることができることを理解するであろう。例えば,,4−ヌクレオチド配列を認識するAluIは,DNAをおよそ256塩基ごとに切断する。異なる4ヌクレオチド認識配列をもつ他の酵素(例えば,DpnI,RsaI,MboI,およびNlaI)は,AluIと同様の頻度で切断し,したがって,AluIの場合と同様のサイズのフラグメントを生成すると予測される。
【0086】
別の好ましい態様においては,BlpIおよびMlyIを組み合わせて用いて,核酸を断片化する。さらに別の好ましい態様においては,SphIおよびBmtIを組み合わせて用いて,核酸を断片化する。
【0087】
DNAフラグメントのサイズ分離
DNAフラグメントをサイズにしたがって分離することは,当業者に知られる種々の方法により行うことができる。例えば,ゲル電気泳動またはカラムクロマトグラフィー(例えば,サイズ排除高速液体クロマトグラフィー(SEC−HPLC)および変性HPLC(DHPLC))の種々の方法を用いることができる。
【0088】
ゲル電気泳動においては,ゲルマトリクスを用いて,これに電場を印加して核酸分子またはそのフラグメントをサイズにしたがって分離する。一般に,核酸フラグメントが小さければ小さいほど,より大きいフラグメントより早くゲルマトリクス中を移動する。好ましいゲルマトリクスとしては,アガロースおよびポリアクリルアミドが挙げられる。
【0089】
好ましい態様においては,キャピラリー電気泳動を用いて,断片化した核酸を分離する。キャピラリー電気泳動は,電圧を負荷したときの,サンプル成分のキャピラリー中の電気泳動移動度の相違に基づく分離法である。分離したフラグメントまたは分子は,一般に,キャピラリー中のウインドウを通して,UV分光分析または蛍光分析を用いて“オンカラム”で検出する。一般に,まず1またはそれ以上の標準品(すなわち,既知の長さを有する核酸のセグメント)をキャピラリーに注入して,オンカラム検出を用いて各標準品の溶出時間を決定する。次に,その画分についての所望のサイズ範囲を達成するために,標準品の溶出時間を用いて,画分を回収する時間の長さを決定する。
【0090】
ある態様においては,アッセイにおいて用いる画分のサイズの範囲は,市販の標準品の塩基対の長さに基づいて選択することができる。核酸の長さの混合物を含む多数の標準品が入手可能である。1つの例においては,下記の長さを有する核酸フラグメントを含む標準品を用いる:200bp,300bp,400bp,500bp,600bp,700bp,800bp,900bp,および1000bp。すなわち,次に,標準品中に存在するサイズの1またはそれ以上に基づいて画分を選択する。例えば,以下の3つの画分を選択することができる:1)300bp以下,2)301−500bp,および3)501以上。次に,300bpおよび500bpの標準物質の溶出時間に基づいて,断片化した核酸サンプルの画分を回収する。各画分中に存在するタンデムリピートの数の範囲を計算することができる。
【0091】
あるいは,各画分について所望の数のタンデムリピートに基づいて画分を選択することができる。この場合,各画分のサイズの上限および下限を表す標準品が市販されていない場合には,これを合成することができる。
【0092】
ある態様においては,正常な長さのタンデムリピート領域を異常な長さのものから区別するために,フラグメントを多数の画分に分離する。特定の態様においては,フラグメントを,一方は正常なタンデムリピート領域に対応し,他方は異常なタンデムリピート領域に対応する2つの画分に分離する。別の態様においては,タンデムリピート領域のサイズを判定するために,フラグメントをより多い数の画分に分離する。一般に,画分の数が多ければ多いほど,タンデムリピート領域の長さのより正確な判定が可能となる。タンデムリピート領域の長さの判定における所望のレベルの正確性を達成するために,画分の数を選択することができる。
【0093】
FMR1遺伝子のタンデムリピートの数を決定するためのアッセイの好ましい態様においては,AluI断片化したDNAを約211−358bp(下側画分)および359bp−9kb(上側画分)のサイズに対応する2つの画分に分離する。正常なFMR1遺伝子(すなわち,55未満のタンデムリピート)を含むサンプルからのフラグメントは下側画分に分離され,一方,前変異(すなわち,55−200のタンデムリピート)または完全変異(すなわち,200より多いタンデムリピート)を含むFMR1遺伝子からのフラグメントは上側画分に分離される。
【0094】
FMR1遺伝子のタンデムリピートの数を決定するためのアッセイの別の好ましい態様においては,AluIで断片化したDNAを,約211−400bp(下側画分)および401bp−9kb(上側画分)のサイズに対応する2つの画分に分離する。正常なFMR1遺伝子(すなわち,55未満のタンデムリピート)および56−69のタンデムリピートを有する前変異を含むサンプルからのフラグメントは,下側画分に分離され,一方,70−200のタンデムリピートを有する前変異または完全変異(すなわち,200より多いタンデムリピート)を含むFMR1遺伝子からのフラグメントは上側画分に分離される。
【0095】
FMR1遺伝子のタンデムリピートの数を決定するためのアッセイの別の好ましい態様においては,AluIで断片化したDNAを,約400bp以下(第1/最下側画分),401−500bp(第2画分),501−800bp(第3画分)および800bp−9kb(第4/最上側画分)のサイズに対応する4つの画分に分離する。正常なFMR1遺伝子(すなわち,55未満のタンデムリピート)を含むサンプルおよび56−68のタンデムリピートを有する前変異を含むサンプルからのフラグメントは第1/最下側画分に分離され,小さい前変異(すなわち,69−102のタンデムリピート)を含むFMR1遺伝子からのフラグメントは第2画分に分離され,大きい前変異(すなわち,103−200のタンデムリピート)および201−202のタンデムリピートを有する完全変異を含むFMR1遺伝子からのフラグメントは第3画分に分離され,202より多いタンデムリピートを有する完全変異は第4/最上側画分に分離される。
【0096】
FMR1遺伝子のタンデムリピートの数を決定するためのアッセイのさらに別の好ましい態様においては,SphIとBmtIとの組み合わせで断片化したDNAを,約500bp以下(第1/最下側画分),501−800bp(第2画分),801−900bp(第3画分)および901bp−9kb(第4/最上側画分)のサイズに対応する4つの画分に分離する。正常なFMR1遺伝子(すなわち,55より少ないタンデムリピート)を含むサンプルおよび56−62のタンデムリピートを有する前変異を含むサンプルからのフラグメントは第1/最下側画分に分離され,小さい前変異(すなわち,63−163のタンデムリピート)を含むFMR1遺伝子からのフラグメントは第2画分に分離され,大きい前変異(すなわち,164−196のタンデムリピート)を含むFMR1遺伝子からのフラグメントは第3画分に分離され,197−200のタンデムリピートを有する大きい前変異および完全変異(すなわち,200より多いタンデムリピート)は第4/最上側画分に分離される。
【0097】
FMR1遺伝子のタンデムリピートの数を決定するアッセイのさらに別の好ましい態様においては,BlpIとMlyIとの組み合わせにより断片化したDNAを,約603bp以下(第1/最下側画分),604−840bp(第2画分),841−1078bp(第3画分)および1079bp−9kb(第4/最上側画分)のサイズに対応した4つの画分に分離する。正常なFMR1遺伝子(すなわち,55未満のタンデムリピート)を含むサンプルおよび56−62のタンデムリピートを有する前変異を含むサンプルからのフラグメントは第1/最下側画分に分離され,小さい前変異(すなわち,63−140のタンデムリピート)を含むFMR1遺伝子からのフラグメントは第2画分の画分に分離され,大きい前変異(すなわち,141−200のタンデムリピート)および201−220のタンデムリピートを有する完全変異を含むFMR1遺伝子からのフラグメントは第3画分に分離され,220より多いタンデムリピートを有する大きい前変異は第4/最上側画分に分離される。
【0098】
別の好ましい態様においては,断片化したDNAをサイズにしたがって複数の画分に分離する。自動化画分回収は,例えば,約200bpから始まり9kbまでの予め設定した分画時間ウインドウを用いて行うことができる。この方法により,フラグメントサイズを,したがって,リピートの数をより細かく測定することができる。
【0099】
DNAの第2の断片化
さらに別の好ましい態様においては,本発明の方法は,最初の核酸断片化のサイズ分離後に第2の核酸断片化を行うことを含む。好ましくは,制限エンドヌクレアーゼ消化を用いて,DNAをさらに断片化する。好ましくは,第2の断片化により,タンデムリピート・セグメントを付随するマーカー配列から分離する。
【0100】
好ましい態様においては,マーカー配列がタンデムリピート・セグメントの上流に存在する場合には,制限酵素BsaWI,Hpy188I,HphIまたはBstNIを第2の核酸断片化に用いる。別の好ましい態様においては,マーカー配列がタンデムリピート・セグメントの下流にある場合には,制限酵素SmlI,BbvI,またはBmtIを第2の核酸の断片化に用いる。当業者は,挙げられる制限酵素のイソチゾマーおよびネオチゾマーを用いてもよいことを理解するであろう。当業者は,例えば,限定されないが,マーカーの位置,マーカーの配列およびマーカー配列とタンデムリピート・セグメントとの間の配列等の因子を分析することにより,第2の核酸断片化用の適当な制限酵素を同定することができる。
【0101】
サイズ分離したDNAフラグメントまたは第2の断片化後のDNAフラグメントの増幅
サイズ分離したDNAは,当業者に知られる種々の方法により増幅することができる。本発明の方法とともに用いるのに適した増幅法としては,例えば,ポリメラーゼ連鎖反応(PCR),リガーゼ連鎖反応(LCR),転写に基づく増幅系(TAS),核酸配列に基づく増幅(NASBA)反応,自己持続配列複製(3SR),鎖置換増幅(SDA)反応,ブーメランDNA増幅(BDA),Q−ベータ複製,または等温核酸配列系増幅が挙げられる。これらの増幅法は当該技術分野においてよく知られており,それぞれ下記に簡単に説明する。PCR特定のテンプレートDNA配列の多数のコピーを作製する手法である。反応は,複数の増幅サイクルからなり,コピーされるべき配列の5’末端および3’末端にハイブリダイズする1対のプライマー配列により開始される。増幅サイクルは,最初の変性,および50サイクルまでのアニーリング,鎖伸張および鎖分離(変性)を含む。反応の各サイクルにおいて,プライマーの間のDNA配列がコピーされる。プライマーはコピーされたDNAならびに元のテンプレート配列に結合することができ,したがってコピーの総数は時間とともに指数関数的に増加する。PCRは,Whelanら(Journal of Clinical Microbiology,33(3):556−561(1995))にしたがって行うことができる。簡単には,PCR反応混合物は2つの特異的プライマー,dNTPs,約0.25UのTaqポリメラーゼ,および1xPCRバッファーを含む。25μlのPCR反応液につき,2μlのサンプル(例えば,標的生物から単離されたDNA)を加え,熱サイクラーを用いて増幅させる。
【0102】
LCRは,PCRと類似したDNA増幅の方法であるが,ただし,2つではなく4つのプライマーを用い,酵素リガーゼを用いて2つのDNAセグメントをライゲーションないし結合させる。LCRは,Mooreら(Journal of Clinical Microbiology 36(4):1028−1031(1998))にしたがって行うことができる。簡単には,LCR反応混合物は,2対のプライマー,dNTP,DNAリガーゼおよびDNAポリメラーゼを含む約90μlであり,これに標的生物から単離された100μlの核酸を加える。増幅は熱サイクラーで行う(例えば,LCx,Abbott Labs,North Chicago,IL)。
【0103】
TASは,各サイクルがcDNA合成工程およびRNA転写工程から構成される核酸増幅のシステムである。cDNA合成工程においては,2ドメインのオリゴヌクレオチドプライマーを用いて,DNA依存性RNAポリメラーゼにより認識される配列(すなわち,ポリメラーゼ結合配列ないしPBS)を,増幅すべきcDNAコピーの標的またはマーカー配列の下流に挿入する。第2工程においては,RNAポリメラーゼを用いて,cDNAテンプレートから多数のコピーのRNAを合成する。DNA依存性RNA転写はcDNAテンプレートの各コピーについて10−1000コピーを生成しうるため,TASを用いる増幅は数サイクルしか必要としない。TASは,Kwohら(PNAS86:1173−7(1989))にしたがって行うことができる。簡単には,抽出したRNAを,TAS増幅バッファーおよびウシ血清アルブミン,dNTPs,NTPs,および2つのオリゴヌクレオチドプライマー(一方はPBSを含む)と混合する。サンプルを加熱してRNAテンプレートを変性させ,プライマーのアニーリング温度まで冷却する。リバーストランスクリプターゼ(RT)を加え,サンプルを適当な温度でインキュベーションしてcDNAを伸張させる。次に,T7RNAポリメラーゼを加え,サンプルを37℃で約25分間インキュベーションしてRNAを合成させる。次に上述の工程を繰り返す。あるいは,最初のcDNA合成の後,100℃,1分間の変性後に,RTおよびRNAポリメラーゼの両方を加え,37℃で約30分間のRNA伸張を行う。TASは,Wylieら(Journal of Clinical Microbiology,36(12):3488−3491(1998))にしたがって固相で実施してもよい。この方法においては,特定の捕捉プライマーを含む磁気ビーズを用いて核酸標的を捕捉する。捕捉された標的を有するビーズを洗浄し,ペレット化した後に,増幅プライマー,dNTP,NTP,2500Uのリバーストランスクリプターゼおよび2500UのT7RNAポリメラーゼを含む増幅試薬を加える。100μlのTMA反応混合物をチューブに入れ,200μlのオイル試薬を加え,水浴中で42℃で1時間インキュベーションすることにより増幅を行う。
【0104】
NASBAは,RNAまたはDNA標的のいずれかからRNAを増幅させる,転写に基づく増幅方法である。NASBAは,単一の混合物中の核酸を一定温度で連続増幅させるために用いられる方法である。例えば,RNA増幅については,トリ骨髄芽球症ウイルス(AMV)リバーストランスクリプターゼ,RNaseHおよびT7RNAポリメラーゼを用いる。この方法は,Heimら(Nucleic Acids Res.,26(9):2250−2251(1998))にしたがって行うことができる。簡単には,NASBA反応混合物は,2つの特異的プライマー,dNTP,NTP,6.4UのAMVリバーストランスクリプターゼ,0.08UのEscherichia coli RnaseH,および32UのT7RNAポリメラーゼを含む。増幅は,総容量20μl中で,41℃で120分間行う。
【0105】
関連する方法として,3つの酵素活性,すなわちリバーストランスクリプターゼ,DNA依存性RNAポリメラーゼおよびEscherichia coliリボヌクレアーゼHを用いて,標的DNAまたはRNA配列をインビトロで等温増幅する自己持続配列複製(3SR)反応がある。この方法を改変して,トリ骨髄芽球症ウイルス(AMV)リバーストランスクリプターゼの代わりにヒト免疫不全ウイルス(HIV)−1リバーストランスクリプターゼを用いて,E.coliリボヌクレアーゼHなしでT7RNAポリメラーゼによる増幅を可能とすることにより,3酵素系から2酵素系にしてもよい。2酵素3SRにおいては,増幅されたRNAを3酵素3SRより高い純度で得ることができる(Gebinoga&Oehlenschlager European Journal of Biochemistry,235:256−261,1996)。
【0106】
SDAは等温核酸増幅法である。制限部位を含むプライマーをテンプレートにアニーリングさせる。次に増幅プライマーを5’隣接配列にアニーリングさせ(ニックを形成),一定温度で増幅を開始する。新たに合成されたDNA鎖には,制限酵素によりニックが形成され,再びポリメラーゼ増幅が開始し,新たに合成された鎖を置き換えていく。SDAは,Walkerら(PNAS,89:392−6(1992))にしたがって実施することができる。簡単には,SDA反応混合物は,4つのSDAプライマー,dGTP,dCTP,TTP,dATP,150UのHincII,および5UのE.coli DNAポリメラーゼI(エキソ−クレノーポリメラーゼ)のエキソヌクレアーゼ欠損ラージフラグメントを含む。酵素を加える前に,サンプル混合物を95℃で4分間加熱して,標的DNAを変性させる。2つの酵素を加えた後,総容量50μl中で37℃で120分間増幅を行う。次に,95℃で2分間加熱することにより反応を終了させる。
【0107】
ブーメランDNA増幅(BDA)は,ポリメラーゼが単一のプライマー結合部位から伸張を開始し,次に他方の鎖までループを形成し,最終的にDNAの元のプライミング部位に戻る方法である。BDAは単一のプライマーを用いる点においてPCRとは異なる。この方法は,サンプルDNAがエンドヌクレアーゼで消化され,粘着末端を有する別々のDNAフラグメントを生成し,フラグメントを“アダプター”ポリヌクレオチド(ライゲーション可能な末端,およびスペーサー配列により分離された第1および第2の自己相補性配列から構成される)にライゲーションさせ,このことによりライゲーションされたデュープレックスを形成することを含む。ライゲーションしたデュープレックスを変性して,テンプレートを形成し,オリゴヌクレオチドプライマーは目的とする標的またはマーカー配列中の特定の配列でこれにアニーリングする。プライマーをDNAポリメラーゼにより伸張して,デュープレックス産物を形成し,次にデュープレックス産物を変性する。続いて,複数のサイクルのアニーリング,伸張および変性を実施して所望の程度の増幅を達成する(米国特許5,470,724)。
【0108】
Q−ベータ複製システムは,RNAをテンプレートとして使用する。Q−ベータレプリカーゼは,大腸菌ファージQβの一本鎖RNAゲノムを合成する。RNAを切断し,目的とする核酸中にライゲーションすることによりRNAがQ−ベータレプリカーゼにより複製されるときにその配列を複製させることができる(Kramer&Lizardi Trends Biotechnol.1991,9(2):53−8,1991)。
【0109】
種々の増幅酵素が当該技術分野においてよく知られており,例えば,DNAポリメラーゼ,RNAポリメラーゼ,リバーストランスクリプターゼ,Q−ベータレプリカーゼ,熱安定性DNAおよびRNAポリメラーゼが挙げられる。これらのおよび他の増幅反応は酵素により触媒されるため,最終的な検出が増幅に基づくものである場合には,1工程アッセイにおいて,核酸放出試薬および検出試薬は増幅酵素の阻害剤となることはない。本発明の方法において用いるのに適した増幅法としては,例えば,鎖置換増幅,ローリングサークル増幅,プライマー伸張前増幅,または縮重オリゴヌクレオチドPCR(DOP)が挙げられる。これらの増幅方法は当該技術分野においてよく知られており,それぞれ下記に簡単に説明する。
【0110】
好ましくは,PCRを用いて目的とするタンデムリピート・セグメントに隣接する標的またはマーカー配列を増幅する。この方法においては,標的またはマーカー配列の反対側の鎖にアニーリングする2またはそれ以上のオリゴヌクレオチドプライマーをその相補配列に繰り返しアニールさせ,DNAポリメラーゼ(例えば,AmpliTaq Goldポリメラーゼ)により伸張し,熱変性させると,標的核酸配列が指数的に増幅される。サイクルのパラメータは,伸張されるべき核酸の長さにより様々でありうる。当業者は,標的またはマーカー配列を増幅するのに適したプライマーを設計し製造することができる。本発明において用いられる増幅プライマーの長さは,いくつかの因子,例えば,ヌクレオチド配列の種類,およびこれらの核酸がハイブリダイズする温度またはインビトロ核酸増幅の間に用いられる温度により異なる。特定の配列の種類の増幅プライマーについて,好ましい長さを決定するのに必要な考慮点は,当業者にはよく知られており,例えば本明細書に記載される考慮点が含まれる。例えば,短い核酸またはオリゴヌクレオチドの長さは,そのハイブリダイゼーション特異性および選択性に関連しうる。
【0111】
ある態様においては,増幅は標識したプライマーを含んでいてもよく,このことにより,そのプライマーの増幅産物を検出することができる。特定の態様においては,増幅は複数の標識したプライマーを含んでいてもよく,好ましくは,そのようなプライマーは区別できるように標識され,このことにより,多数の増幅産物を同時に検出することができる。
【0112】
オリゴヌクレオチドプライマーは,約10から約100ヌクレオチドの長さであり,マーカー配列にハイブリダイズするよう設計することができる。オリゴヌクレオチドプライマーは,好ましくは12から70ヌクレオチド;より好ましくは15−60ヌクレオチドの長さ;最も好ましくは15−25ヌクレオチドの長さである。
【0113】
1つの態様においては,プライマー対は,AluIにより断片化した核酸のサイズ分離後に,FMR1遺伝子のタンデムリピート領域の上流のマーカー配列を増幅するよう設計する。ハイブリダイゼーションプライマーを設計するためのFMR1タンデムリピート領域の上流の例示的マーカー配列は図2に示される(SEQ ID NO:1)。フォワードプライマーは,SEQ ID NO:1のヌクレオチド1と45との間,より好ましくは22位と39位との間にハイブリダイズすることができ,一方,リバースプライマーは,SEQ ID NO:1の70位と115位との間,より好ましくは97と113との間にハイブリダイズすることができる。1つの例においては,タンデムリピート領域の約95bp上流に対応するフランキング配列の領域を増幅するプライマー対を用い;より詳細には,フォワードプライマー,SEQ ID NO:4およびリバースプライマー,SEQ ID NO:5を用いて,マーカー配列の93bpの領域を増幅する。すなわち,増幅プライマーとして用いるのに好ましいオリゴヌクレオチドとしては,SEQ ID NO:4(5’−GGTGGAGGGCCGCCTCTG−3’)およびSEQ ID NO:5(5’−AGCGGCGCCTCCGTCACC−3’)が挙げられる。別の好ましいオリゴヌクレオチドプライマーは,約15−100ヌクレオチドの長さであり,SEQ ID NO:4またはSEQ ID NO:5を含む。さらに別の好ましいオリゴヌクレオチドプライマーとしては,SEQ ID NO:4またはSEQ ID NO:5を含む15−100ヌクレオチド配列の相補体にハイブリダイズするオリゴヌクレオチド配列が挙げられる。そのようなオリゴヌクレオチドは,実質的に精製することができる。
【0114】
【表3】

【0115】
別の態様においては,プライマー対は,BlpIおよびMlyIにより断片化した核酸をサイズ分離した後に,FMR1遺伝子のタンデムリピート領域に隣接するマーカー配列を増幅するよう設計される。1つの例においては,プライマー対を用いて,タンデムリピート領域の下流のフランキング配列の領域を増幅する。より詳細には,フォワードプライマー,FXCEF2(SEQ ID NO:6),およびリバースプライマー,FXCER2(SEQ ID NO:7)を用いて,マーカー配列の86bpの領域を増幅する。すなわち,増幅プライマーとして用いることができる好ましいオリゴヌクレオチドとしては,SEQ ID NO:6(5’−GATGGAGGAGCTGGTGGTGG−3’)およびSEQ ID NO:7(5’−GGAAGGGCGAAGATGGGG−3’)が挙げられる。別の好ましいオリゴヌクレオチドプライマーは,約15−100ヌクレオチドの長さであり,SEQ ID NO:6またはSEQ ID NO:7を含むものである。さらに別の好ましいオリゴヌクレオチドプライマーとしては,SEQ ID NO:6またはSEQ ID NO:7を含む15−100ヌクレオチド配列の相補体にハイブリダイズするオリゴヌクレオチド配列が挙げられる。そのようなオリゴヌクレオチドは実質的に精製することができる。
【0116】
別の態様においては,プライマー対は,SphIおよびBmtIにより断片化した核酸のサイズ分離後に,FMR1遺伝子のタンデムリピート領域に隣接するマーカー配列を増幅するよう設計する。1つの例においては,プライマー対を用いてタンデムリピート領域の下流のフランキング配列の領域を増幅し;より詳細には,フォワードプライマー,FXCEF3(SEQ ID NO:8),およびリバースプライマー,FXCER3(SEQ ID NO:9)を用いて,マーカー配列の86bpの領域を増幅する。すなわち,増幅プライマーとして用いるのに好ましいオリゴヌクレオチドとしては,SEQ ID NO:8(5’−CGTGACGTGGTTTCAGTGTTTACA−3’)およびSEQ ID NO:9(5’−GGAAGTGAAACCGAAACGGAG−3’)が挙げられる。別の好ましいオリゴヌクレオチドプライマーは,約15−100ヌクレオチドの長さでありSEQ ID NO:8またはSEQ ID NO:9を含むものである。さらに別の好ましいオリゴヌクレオチドプライマーとしては,SEQ ID NO:8またはSEQ ID NO:9を含む15−100ヌクレオチド配列の相補体にハイブリダイズするオリゴヌクレオチド配列が挙げられる。そのようなオリゴヌクレオチドは,実質的に精製することができる。
【0117】
キャリアおよび脆弱性X症候群に罹患した個体を検出するアッセイにおいては,アッセイコントロールを用いることができる。正常なまたは野生型のFMR1遺伝子(すなわち,55より少ないタンデムリピート),前変異(55−200のタンデムリピート),および完全変異(200より多いタンデムリピート)についての陽性コントロールを用いることができる。
【0118】
アッセイには,ゲノムDNAの制限酵素消化が完全であるか否かを判定するための追加のコントロールを含めてもよい。特定の制限酵素による消化の完全性を評価する1つの方法は,消化されたDNAが消化に用いた制限酵素部位にまたがる試験プライマー対を用いるPCR増幅を支持しうるか否かを判定することである。すなわち,ifthe核酸が制限酵素により完全に消化されていれば,試験プライマー対からの増幅はないはずであるが,消化が不完全であり,無傷の核酸がある程度残っていれば,試験プライマー対は標的を増幅するはずである。この試験消化PCR増幅は,消化後の任意の時に,例えばマーカー配列の増幅の間に実施することができる。
【0119】
【表4】

【0120】
正常な個体をキャリアおよび脆弱性X症候群に罹患した個体から区別するアッセイの特定の態様においては,ゲノムDNAをAluIで消化する。すなわち,AluIによるゲノムDNAの消化の完全性は,AluI認識部位を含む領域を増幅することにより判定することができる。そのようなコントロールの1つの例においては,1対のプライマー,AluIFおよびAluIR(それぞれSEQ ID NO:10およびSEQ ID NO:11)を用いて,AluI認識部位を含む核酸フラグメントの103bpの標的セグメントを増幅する。このセグメントの増幅は,AluI消化が不完全である場合にのみ生ずる。このアッセイの別の態様においては,ゲノムDNAをBlpIおよびMlyIで消化する。すなわち,BlpIおよびMlyIによるゲノムDNAの消化の完全性は,BlpIまたはMlyI認識部位を含む領域を増幅させることにより判定することができる。そのようなコントロールの1つの例においては,1対のプライマー,BlpIFおよびBlpIR(それぞれSEQ ID NO:12およびSEQ ID NO:13)を用いて,BlpI認識部位を含む核酸の標的セグメントの138bpのセグメントを増幅する。このセグメントの増幅は,BlpI消化が不完全である場合にのみ生ずる。
【0121】
断片化したDNAの正しいサイズ分離を確認するために,アッセイにさらに別のコントロールを含めてもよい。当業者に知られる配列分析ツールを用いて,特定の制限酵素を用いて得られるフラグメントのサイズ分布を判定することができる。次に,特定の画分のサイズ範囲に対応するサイズを有する特定のコントロールフラグメントを同定することができる。したがって,そのサイズについて適切な画分においてコントロールフラグメントを検出することにより,断片化したDNAのサイズ分離が正しいことを確認することができる。1つの画分において単一のコントロールフラグメントを用いてもよく,正常なタンデムリピートと異常なタンデムリピートとの判定に関連する各画分においてコントロールを用いてもよく,またはすべての画分においてコントロールを用いてもよい。
【0122】
正常なFMR1対立遺伝子を有する個体を,前変異FMR1対立遺伝子を有する個体および完全変異FMR1対立遺伝子を有する個体から区別するためのアッセイの特定の態様においては,最大のタンデムリピートを含有するフラグメント(AluIを用いる消化により得られる)が適切なサイズの画分に回収されるか否かを判定するために,増幅コントロールを含めてもよい。そのようなコントロールの一例においては,LargeFおよびLargeR(それぞれSEQ ID NO:14およびSEQ ID NO:15)のプライマー対は,画分中に存在する場合には,USP41遺伝子の8,479bpのAluIフラグメントの121bpセグメントを増幅する。ゲノムDNAをBlpIおよびMlyIで切断するアッセイの別の態様においては,675bp,905bp,および7,031bpのフラグメントのサイズ分離が正しいことを検出するためにコントロールを含める。1つの例においては,FIIctrl1FおよびFIIctrl1R(それぞれSEQ ID NO:16およびSEQ ID NO:17)のプライマー対は,画分中に存在する場合にはCFTR遺伝子の675bpのBlpI/MlyIフラグメントの102bpセグメントを増幅する。別の例においては,1対のプライマーFIIIctrl3FおよびFIIIctrl3R(それぞれSEQ ID NO:18およびSEQ ID NO:19)は,画分中に存在する場合には,CFTR遺伝子の905bpのBlpI/MlyIフラグメントの113bpのセグメントを増幅するであろう。別の例においては,1対のプライマー,LgctrlFおよびLgctrlR(それぞれSEQ ID NO:20およびSEQ ID NO:21)は,画分中に存在する場合には,染色体21(21:20912766−20919795)から7,031bpのBlpI/MlyIフラグメントの156bpのセグメントを増幅するであろう。
【0123】
マーカー配列の検出
マーカー配列は,検出の前に増幅してもよく,または増幅工程なしでサイズ分離の後に直接検出してもよい。ある態様においては,マーカー配列を増幅し,得られるアンプリコンを電気泳動,好ましくはキャピラリー電気泳動により検出する。好ましい態様においては,得られるアンプリコンが検出可能なように標識されるように,標識したプライマーを用いてマーカー配列を増幅する。好ましい態様においてはプライマーは蛍光標識するが,プライマーは,オリゴヌクレオチドプローブについて下記に記載する方法にしたがって標識してもよい。
【0124】
好ましい態様においては,断片化したDNAは,区別しうるように標識した,タンデムリピートの上流または下流のマーカー配列の2つの別々のセグメントにハイブリダイズする2つの核酸プローブを用いて,増幅工程なしで検出する。1つのハイブリダイゼーション複合体中で両方の標識が同時に検出されることは,マーカー配列(したがって付随するタンデムリピート)の存在を示す。1つの態様においては,検出はTrilogy 2020 Analyzer(US Genomes Woburn,MA)を用いて行う。この態様においては,区別しうる蛍光標識を有する2つのプローブをサイズ分離したDNAフラグメントと接触させる。得られるハイブリダイゼーション複合体の混合物をキャピラリーチューブに入れ,ここで異なる波長の複数のレーザーに暴露する。プローブの蛍光標識は,光子が放出されて検出されるように励起される。異なる色の蛍光標識が同時に検出されると,標的領域の存在が示される。
【0125】
プローブオリゴヌクレオチドは,当該技術分野において知られる方法により直接標識することができる。有用な標識としては,例えば,蛍光染料(例えば,Cy5(登録商標),Cy3(登録商標),FITC,ローダミン,ランタニド蛍光体,テキサスレッド),32P,35S,H,14C,125I,131I,高電子密度試薬(例えば金),酵素,例えば,ELISAにおいて一般に用いられるもの(例えば,ホースラディッシュペルオキシダーゼ,ベータガラクトシダーゼ,ルシフェラーゼ,アルカリホスファターゼ),着色標識(例えば金コロイド),磁気標識(例えば,Dynabeads(商標)),ビオチン,ジゴキシゲニン,またはそれについての抗血清またはモノクローナル抗体が入手可能なハプテンおよび蛋白質が挙げられる。別の標識としては,それぞれ対応するレセプターまたはオリゴヌクレオチド相補体と複合体を形成しうるリガンドまたはオリゴヌクレオチドが挙げられる。標識は,検出すべき核酸中に直接取り込ませてもよく,または検出すべき核酸にハイブリダイズまたは結合するプローブ(例えばオリゴヌクレオチド)または抗体に結合させてもよい。
【0126】
好ましい態様においては,検出可能な標識は蛍光団である。本明細書において用いる場合,“蛍光団”との用語は,特定の波長(励起波長)の光を吸収し,次にこれに応答して異なる,典型的にはより長い波長(放出波長)の光を放出する分子を表す。適当な蛍光成分としては,当該技術分野において知られる下記の蛍光団が挙げられる:
4−アセトアミド−4’−イソチオシアナトスチルベン−2,2’ジスルホン酸
アクリジンおよび誘導体:
アクリジン
アクリジンイソチオシアネート
AlexaFluor(登録商標)350,AlexaFluor(登録商標)488,AlexaFluor(登録商標)546,AlexaFluor(登録商標)555,AlexaFluor(登録商標)568,AlexaFluor(登録商標)594,AlexaFluor(登録商標)647(分子プローブ)
5−(2’−アミノエチル)アミノナフタレン−1−スルホン酸(EDANS)
4−アミノ−N−[3−ビニルスルホニル)フェニル]ナフタルイミド−3,5ジスルホネート(Lucifer YellowVS)
N−(4−アニリノ−1−ナフチル)マレイミド
アントラニルアミド
Black Hole Quencher(商標)(BHQ(商標))染料(Biosearch Technologies)
BODIPY(登録商標)R−6G,BOPIPY(登録商標)530/550,BODIPY(登録商標)FL
ブリリアントイエロー
クマリンおよび誘導体:
クマリン
7−アミノ−4−メチルクマリン(AMC,クマリン120)
7−アミノ−4−トリフルオロメチルクマリン(クマリン151)
Cy2(登録商標),Cy3(登録商標),Cy3.5(登録商標),Cy5(登録商標),Cy5.5(登録商標)
シアノシン
4’,6−ジアミニジノ−2−フェニルインドール(DAPI)
5’,5”−ジブロモピロガロール−スルホナフタレイン(Bromopyrogallol Red)
7−ジエチルアミノ−3−(4’−イソチオシアナトフェニル)−4−メチルクマリン
ジエチレントリアミンペンタアセテート
4,4’−ジイソチオシアナトジヒドロ−スチルベン−2,2’−ジスルホン酸
4,4’−ジイソチオシアナトスチルベン−2,2’−ジスルホン酸
塩化5−[ジメチルアミノ]ナフタレン−1−スルホニル(DNS,ダンシルクロリド)
4−(4’−ジメチルアミノフェニルアゾ)安息香酸(DABCYL)
4−ジメチルアミノフェニルアゾフェニル−4’−イソチオシアネート(DABITC)
Eclipse(商標)(Epoch Biosciences Inc.)
エオシンおよび誘導体:
エオシン
エオシンイソチオシアネート
エリスロシンおよび誘導体:
エリスロシンB
エリスロシンイソチオシアネート
エチジウム
フルオレセインおよび誘導体:
5−アミノフルオレセイン(FAM)
5−(4,6−ジクロロトリアジン−2−イル)アミノフルオレセイン(DTAF)
2’,7’−ジメトキシ−4’5’−ジクロロ−6−アミノフルオレセイン(JOE)
フルオレセイン
フルオレセインイソチオシアネート(FITC)
ヘキサクロロ−6−アミノフルオレセイン(HEX)
QFITC(XRITC)
テトラクロロフルオレセイン(TET)
フルオレスカミン
IR144
IR1446
マラカイトグリーンイソチオシアネート
4−メチルウンベリフェロン
オルトクレゾールフタレイン
ニトロチロシン
パラローザニリン
フェノールレッド
B−フィコエリスリン,R−フィコエリスリン
o−フタルジアルデヒド
Oregon Green(登録商標)
ヨウ化プロピジウム
ピレンおよび誘導体:
ピレン
ピレンブチラート
スクシンイミジル1−ピレンブチラート
QSY(登録商標)7,QSY(登録商標)9,QSY(登録商標)21,QSY(登録商標)35(分子プローブ)
リアクティブレッド4(Cibacron(登録商標)ブリリアントレッド3B−A)
ローダミンおよび誘導体:
6−アミノ−X−ローダミン(ROX)
6−アミノローダミン(R6G)
リサミンローダミンBスルホニルクロリド
ローダミン(Rhod)
ローダミンB
ローダミン123
ローダミングリーン
ローダミンXイソチオシアネート
スルホローダミンB
スルホローダミン101
スルホローダミン101(テキサスレッド)のスルホニルクロリド誘導体
N,N,N’,N’−テトラメチル−6−アミノローダミン(TAMRA)
テトラメチルローダミン
テトラメチルローダミンイソチオシアネート(TRITC)
リボフラビン
ロゾール酸
テルビウムキレート誘導体
【0127】
他の蛍光ヌクレオチド類似体を用いてもよい。例えば,Jameson,Meth.Enzymol.278:363−390,1997;Zhu,Nucl.Acids Res.22:3418−3422,1994を参照。また,米国特許5,652,099および6,268,132は,酵素的にまたは化学合成により核酸,例えば,DNAおよび/またはRNA,またはオリゴヌクレオチドに取り込ませて蛍光オリゴヌクレオチドを生成するためのヌクレオシド類似体を記載する。米国特許5,135,717は,蛍光標識として用いるための,フタロシアニンおよびテトラベンズトリアザポルフィリン試薬を記載する。
【0128】
検出可能な標識は,核酸中に取り込ませてもよく,核酸と会合させてもよく,または核酸とコンジュゲートさせてもよい。種々の長さのスペーサーアームにより標識を結合させて,立体障害または他の有用なまたは所望の特性への影響の可能性を低下させることができる。例えば,Mansfield,Mol.Cell.Probes 9:145−156,1995を参照。
【0129】
検出可能な標識は,例えば,クレノーポリメラーゼを用いるランダムプライマー標識等の転写により,またはニックトランスレーションにより,または増幅により,または当該技術分野において知られる同等の方法により,共有結合または非共有結合手段により核酸中に取り込ませることができる。例えば,ヌクレオチド塩基を検出可能な成分,例えばCy3(登録商標)またはCy5(登録商標)等の蛍光染料とコンジュゲートさせ,次に,核酸合成または増幅の間にゲノム核酸中に取り込ませる。このようにして,未標識dCTPと混合したCy3(登録商標)−またはCy5(登録商標)−dCTPコンジュゲートを用いて核酸を合成すると,核酸が標識される。
【0130】
核酸プローブは,標識した前駆体ヌクレオチドの存在下でPCRまたはニックトランスレーションを用いることにより標識することができ,例えば,アリルアミン−dUTPを蛍光染料またはハプテン(例えばビオチンまたはジゴキシゲニン)のスクシンイミジルエステル誘導体にカップリングさせることにより合成した修飾ヌクレオチドを用いることができる。この方法により,最も一般的な蛍光ヌクレオチドのカスタム製造が可能である。例えば,Henegariu,Nat.Biotechnol.18:345−348,2000を参照。
【0131】
核酸プローブは,当該技術分野において知られる非共有結合的手段により標識することができる。例えば,Kreatech Biotechnologyの"Universal Linkage System(登録商標)"(ULS(登録商標))は,非酵素的標識技術を提供し,ここでは,白金基がグアノシンのN7位に結合することにより,DNA,RNAまたはヌクレオチドと配位結合を形成する。この技術は,アミノ酸の窒素およびイオウ含有側鎖に結合させることにより蛋白質を標識するためにも用いることができる。例えば,米国特許5,580,990;5,714,327;および5,985,566;および欧州特許0539466を参照。
【0132】
タンデムリピート領域に隣接するマーカー配列へのプローブの結合は,当該技術分野においてよく知られるように,ハイブリダイゼーションにより判定することができる。ハイブリダイゼーションは,リアルタイムで検出しても非リアルタイムで検出してもよい。
【0133】
リアルタイムPCRの1つの一般的な方法では,TaqMan(登録商標)プローブ等の蛍光プローブ,分子ビーコンおよびスコーピオンを用いる。TaqMan(登録商標)および分子ビーコン技術において用いられるプローブは,蛍光消光の原理に基づくものであり,ドナー蛍光団および消光成分を含む。
【0134】
本明細書において用いる場合,“ドナー蛍光団”との用語は,クエンチャー成分と非常に近接したときに,放出エネルギーをクエンチャーに供与ないし移動する蛍光団を意味する。エネルギーをクエンチャー成分に供与した結果,ドナー蛍光団はそれ自体,近接して位置するクエンチャー成分が存在しない場合に有したであろう特定の放出波長で,より少ない光を放出する。
【0135】
本明細書において用いる場合,“クエンチャー成分”との用語は,ドナー蛍光団と非常に近接している場合に,ドナーから発生した放出エネルギーを受け取り,エネルギーを熱として消散させるか,またはドナーの放出波長より長い波長の光を放出する分子を意味する。後者の場合,クエンチャーはアクセプター蛍光団であると考えることができる。消光成分は,近接(すなわち衝突)消光により,またはフォルスターないし蛍光共鳴エネルギー移動(“FRET”)により作用する。FRETによる消光は一般にTaqMan(登録商標)プローブにおいて用いられ,一方近接消光は分子ビーコンおよびスコーピオンタイプのプローブにおいて用いられる。
【0136】
近接消光(別名“接触”または“衝突”消光)においては,ドナーは,クエンチャー成分に非常に近接しており,ドナーのエネルギーがクエンチャーに移動して,エネルギーを蛍光放出ではなく熱として消散させる。FRET消光においては,ドナー蛍光団はそのエネルギーをクエンチャーに移動させ,これはエネルギーをより長い波長の蛍光として放出する。近接消光はドナーとクエンチャー成分とが非常に近接して位置することを必要とする。一方,FRET消光も距離に関係するが,より長い距離で生ずる(一般に1−10nm,エネルギー移動はR−6(Rはドナーとアクセプターとの間の距離である)に依存する)。すなわち,FRET消光が関与する場合,消光成分はドナー放出波長スペクトルと重複する励起波長スペクトルを有するアクセプター蛍光団である。FRETによる消光を利用する場合,アッセイでは,ドナーとクエンチャー(アクセプター蛍光団)との間の距離の増加によるドナー蛍光団の蛍光の増加,またはまたはドナーとクエンチャー(アクセプター蛍光団)との間の距離の増加によるアクセプター蛍光団放出の減少を検出することができる。
【0137】
TaqMan(登録商標)プローブ(Heid et al.,1996)は,蛍光を発生するTaqポリメラーゼの5’エキソヌクレアーゼ活性を用いて,DNAサンプル中の標的またはマーカー配列の量を測定する。TaqMan(登録商標)プローブは,通常は5’塩基の近くにドナー蛍光団を含み,典型的には3’塩基の近くに消光成分を含むオリゴヌクレオチドである。クエンチャー成分は,TAMRA等の染料であってもよく,4−(4−ジメチルアミノフェニルアゾ)安息香酸(DABCYL)等の非蛍光分子であってもよい。Tyagiら(Nature Biotechnology 16:49−53(1998))を参照。照射されると,励起した蛍光ドナーは,蛍光ではなくFRETによりエネルギーを近くの消光成分に移動させる。したがって,プローブが無傷であるあいだ,ドナーとクエンチャーとは非常に近接しており,ドナー蛍光の放出が妨害される。
【0138】
TaqMan(登録商標)プローブは,PCR産物の内部の領域にアニーリングするよう設計する。ポリメラーゼがTaqMan(登録商標)プローブが結合しているテンプレートを複製するとき,その5’エキソヌクレアーゼ活性によりプローブが切断される。このことによりクエンチャーの活性は終了し(FRETなし),ドナー蛍光団は蛍光を放出し始め,これは各サイクルでプローブ切断の速度に比例して増加する。PCR産物の蓄積はレポーター染料の蛍光の増加をモニターすることにより検出される(プライマーは標識されていないことに注意)。クエンチャーがアクセプター蛍光団である場合には,PCR産物の蓄積は,アクセプター蛍光団の蛍光の減少をモニターすることにより検出することができる。
【0139】
TaqMan(登録商標)アッセイは,一般的な熱サイクリングパラメータおよびPCR反応条件を用いる。プローブが標的にハイブリダイズしたときにのみ切断が生ずるため,検出される蛍光は特異的増幅に起因するものである。ハイブリダイゼーションおよび切断のプロセスは,生成物の指数関数的蓄積を妨害しない。蛍光発生プローブについての1つの特別の要件は,5’末端にGがないことである。’G’がレポーター染料に隣接して存在すると,切断後でもレポーター蛍光が消光される。
【0140】
リアルタイムで検出するプローブハイブリダイゼーションの別の方法を用いて,タンデムリピート領域に隣接する標的またはマーカー配列の増幅を検出することができる。例えば,プローブ分解に依存しない市販のMGB Eclipse(商標)プローブ(Epoch Biosciences)を用いることができる。MGB Eclipse(商標)プローブは,ハイブリダイゼーションにより誘発される蛍光メカニズムにより作用する。MGB Eclipse(商標)プローブは,プローブの5’末端に位置するEclipse(商標)DarkクエンチャーおよびMGBを有する。蛍光団はプローブの3’末端に位置する。プローブが溶液中に存在し,ハイブリダイズしていないとき,3次元コンフォメーションのためクエンチャーは蛍光団の近傍に位置し,蛍光は消光されている。しかし,プローブが標的またはマーカー配列にアニーリングすると,プローブのフォールディングが開き,クエンチャーが蛍光団から移動して,その結果生ずる蛍光を検出することができる。
【0141】
適当なドナー蛍光団としては,6−アミノフルオレセイン(FAM),テトラクロロ−6−アミノフルオレセイン(TET),2’−クロロ−7’−フェニル−1,4−ジクロロ−6−アミノフルオレセイン(VIC)等が挙げられる。適当なクエンチャーとしては,テトラメチルアミノローダミン(TAMRA)4−(4−ジメチルアミノフェニルアゾ)安息香酸(“DABCYL”またはDABCYL類似体)等が挙げられる。テトラメチルローダミン(TMR)または5−アミノローダミン6G(RHD)は,ドナー蛍光団として,クエンチャーとしてのDABCYLと組み合わせることができる。マルチプレックスTaqManアッセイは,それぞれが異なるドナーとクエンチャーの組み合わせを有する複数の検出可能な標識を用いて行うことができる。増幅した配列をリアルタイムで検出するためのプローブは,100μM保存溶液として凍結保存(−10℃から−30℃)することができる。TaqManプローブは,Applied BioSystems(4316032)から入手可能である。
【0142】
好ましい態様においては,リアルタイムPCRは,TaqMan(登録商標)プローブを,適当な増幅機/分析機,例えばABI Prism7900 HT配列検出システムと組み合わせて用いて実施する。ABI PRISM(登録商標)7900HT配列検出システムは,核酸配列を検出し定量する高スループットリアルタイムPCRシステムである。簡単には,増幅した標的またはマーカー配列に特異的なTaqMan(商標)プローブをPCR増幅反応に含める。これらのプローブは,5’末端にレポーター染料を,3’末端にクエンチャー染料を含む。異なる標的またはマーカー配列にハイブリダイズしたプローブは,異なる蛍光レポーター染料とコンジュゲートされる。PCRの間に,蛍光標識したプローブはそれぞれの標的またはマーカー配列に特異的に結合し;Taqポリメラーゼの5’ヌクレアーゼ活性によりレポーター染料がプローブから切断され,蛍光シグナルが生ずる。蛍光シグナルの増加は,標的またはマーカー配列がプローブに相補的であり,かつPCRの間に増幅された場合にのみ検出される。プローブと標的との間のミスマッチは,プローブのハイブリダイゼーションおよび切断の効率を大きく低下させる。ABI Prism7700HTまたは7900HT配列検出システムにより,PCR熱サイクルの間の蛍光の増加を測定し,PCR産物の蓄積が“リアルタイム”で検出される。
【0143】
ABI Prism7900HTまたは7900 HT Sequence Detectorによるリアルタイム検出は,各PCRサイクルの間に蛍光をモニターしてRnを計算する。閾値サイクル,すなわちCt値は,蛍光が閾値を横切るサイクルである。閾値は配列検出システムソフトウエアにより,または手動で決定する。
【0144】
オリゴヌクレオチドプローブは,約10から約100ヌクレオチドの長さで,増幅された領域にハイブリダイズするよう設計することができる。オリゴヌクレオチドプローブは,好ましくは12から70ヌクレオチド;より好ましくは15−60ヌクレオチドの長さ;最も好ましくは15−25ヌクレオチドの長さである。プローブは標識してもよい。1つの例においては,それぞれSEQ ID NO:4およびSEQ ID NO:5に記載されるフォワードおよびリバースプライマーでマーカー配列を増幅する場合,SEQ ID NO:26をオリゴヌクレオチドプローブとして用いて,FMR1遺伝子のタンデムリピート領域と関連づけられているマーカー配列を検出する(AluIによるゲノムの断片化の後)。SEQ ID NO:27を用いて,AluIFtaqおよびAluIRtaq(それぞれSEQ ID NO:22および23)で増幅したAluIコントロールフラグメントアンプリコンを検出することができ,SEQ ID NO:28を用いて,LargeFtaqおよびLargeRtaq(それぞれSEQ ID NO:24および25)で増幅した8,479bpのAluIコントロールフラグメントアンプリコンを検出することができる。
【0145】
【表5】

【0146】
増幅したフラグメントは,標準的なゲル電気泳動法により検出することができる。例えば,好ましい態様においては,当該技術分野において知られる方法により,増幅した画分をアガロースゲルで分離し,臭化エチジウムで染色して,増幅したフラグメントを検出する。
【0147】
PCR増幅および電気泳動によるサイズ分画
ある態様においては,タンデムリピート領域の増幅を含む方法を用いて,その領域のサイズを測定する。ある態様においては,タンデムリピート領域をサイズ分画する第2の方法を用いる前に,そのような方法をスクリーニングとして用いる。好ましい態様においては,増幅は好ましくはPCRにより行う。この方法においては,タンデムリピート領域全体が増幅される。得られるアンプリコンは,電気泳動,好ましくはキャピラリー電気泳動を用いてサイズ分画する。
【0148】
1つの例においては,フォワードプライマーFX−5F(SEQ ID NO:29;5’GCTCAGCTCCGTTTCGGTTTCACTTCCGGT3’)をリバースプライマーFX−3F(SEQ ID NO:30;5’−AGCCCCGCACTTCCACCACCAGCTCCTCCA−3’)とともに増幅反応において用いて,FMR1遺伝子のタンデムリピート領域を増幅する。好ましくは,このプライマー対の一方のプライマーを標識し,好ましくは標識は蛍光標識である。増幅産物は,電気泳動,好ましくはキャピラリー電気泳動により検出し,サイズ分画することができる。あるいは,増幅産物は,サザンブロットを用いて検出し,サイズ分画してもよい。
【0149】
フラグメントサイズと,正常なまたはキャリア/罹患状態との関連づけ
タンデムリピート領域の上流または下流のマーカー配列が検出される画分は,タンデムリピートを含むフラグメントのサイズに対応する。この相関により,タンデムリピートの数の見積もりが可能となり,したがって,個体が正常であるか,またはタンデムリピート領域中に増大を有する対立遺伝子をもつかを見積もることができる。
【0150】
ある態様においては,タンデムリピート領域における遺伝子の変異に関連づけられる疾病に罹患している個体を,正常な個体から区別することができる。個体からの核酸サンプルを断片化して,遺伝子のタンデムリピート・セグメントがフラグメント中のマーカー配列と関連づけられている核酸フラグメントを生成する。フラグメントを,タンデムリピート・セグメントを含むフラグメントがタンデムリピート・セグメント中のリピートの数にしたがって画分中に位置する条件下で,サイズにしたがって画分に分画し,マーカー配列を検出することにより,セグメントを含む画分を識別する。画分は,一つの画分が正常な数のリピートを有するタンデムリピート領域(すなわち,正常な対立遺伝子)と対応し,別の画分が異常な数のリピート(すなわち,変異した対立遺伝子)と対応するよう選択する。前者の画分のみが陽性であれば,個体は正常であり;後者の画分のみが陽性であれば,個体はキャリアであるかもしれず,または疾病に罹患しているかもしれない。両方の画分で陽性であるという結果は,ヘテロ接合体を示しており,個体は,疾病が優性であるか劣性であるかにより,罹患しているかもしれず罹患していないかもしれない。疾病が優性であれば,ヘテロ接合体は罹患しているであろうし;疾病が劣性であれば,ヘテロ接合体は罹患していないであろうが,その疾病のキャリアであろう。
【0151】
別の態様においては,正常な対立遺伝子を有する個体を,遺伝子のタンデムリピート領域において前変異または完全変異を有する個体から区別することができる。個体からの核酸サンプルを断片化して,遺伝子のタンデムリピート・セグメントがフラグメント中のマーカー配列と関連付けられている核酸フラグメントを生成する。フラグメントを,タンデムリピート・セグメントを含むフラグメントがタンデムリピート・セグメント中のリピートの数にしたがって画分中に存在する条件下で,サイズにしたがって画分に分画し,マーカー配列を検出することにより,セグメントを含む画分を識別する。画分は,第1画分が正常な数のリピートを有するタンデムリピート領域(すなわち,正常な対立遺伝子)に対応し,第2画分が前変異中のリピートの数を有するタンデムリピート領域(すなわち,前変異対立遺伝子)に対応し,第3画分が完全変異中のリピートの数を有するタンデムリピート領域(すなわち,完全変異対立遺伝子)に対応するよう選択する。一般に,第1画分のみが陽性であれば,その個体は正常であり;第2画分のみが陽性であれば,その個体は前変異を有し,第3画分のみが陽性であれば,その個体は疾病に罹患している。2以上の画分における陽性の結果は,ヘテロ接合体を示す。ヘテロ接合体は,関与する遺伝子および疾病の優性により,キャリアまたは罹患した個体でありうる。
【0152】
ある態様においては,脆弱性X症候群にともなう変異(すなわち,FMR1遺伝子の完全変異)を有する個体を,前変異または正常な対立遺伝子を有する個体と区別することができる。個体からの核酸サンプルを断片化して,FMR1遺伝子のタンデムリピート・セグメントがフラグメント中のマーカー配列と結合している核酸フラグメントを生成する。タンデムリピート・セグメントを含むフラグメントがタンデムリピート・セグメント中のリピートの数にしたがって画分中に位置づけられる条件下で,フラグメントをサイズにしたがって画分に分離し,マーカー配列を検出することにより,セグメントを含む画分を識別する。画分は,第1画分が正常な数のリピート(すなわち,正常な対立遺伝子)を有するタンデムリピート領域に対応し,第2画分が前変異(すなわち,前変異対立遺伝子)におけるリピートの数を有するタンデムリピート領域に対応し,第3画分が完全変異におけるリピートの数(すなわち,完全変異対立遺伝子)を有するタンデムリピート領域に対応するよう選択する。好ましい態様においては,画分は,第1画分が55未満のリピートを有するタンデムリピート領域に対応し,第2画分が55−200のリピートを有するタンデムリピート領域に対応し,第3画分が200より多いリピートを有するタンデムリピート領域に対応するよう選択する。したがって,第1画分が陽性である(すなわち,マーカー配列がこの画分で検出される)場合,これはタンデムリピート領域が55未満のリピートを含む(すなわち,正常な対立遺伝子)ことを示し,第2画分が陽性であれば,これはタンデムリピート領域が55−200のリピートを含む(すなわち,前変異対立遺伝子)ことを示し,第3画分が陽性であれば,タンデムリピートが200より多いリピートを含む(すなわち,完全変異対立遺伝子)ことを示す。男性の個体においては,これらの結果に基づいて表現型ないし疾病状態を決定することができる。男性は一般に1つのX染色体(FMR1遺伝子を含む染色体)しか有さず,したがって,第1画分が陽性であれば,個体は正常であり;第2画分が陽性であれば,個体は前変異のキャリアであり;第3画分が陽性であれば,個体は脆弱Xを有する。女性の個体は2つのX染色体を有しており,したがって,2つの正常な対立遺伝子を有する女性は正常であり,前変異対立遺伝子または完全変異対立遺伝子を有する女性はキャリアである。正常な対立遺伝子と完全変異対立遺伝子とのヘテロ接合体である女性は,他の因子,例えば,遺伝子のメチル化状態によって,罹患しているかもしれないし罹患していないかもしれない。
【0153】
FMR1遺伝子の正常なタンデムリピート領域を有する個体を前変異または完全変異を有する個体と区別するアッセイのある態様においては,AluIで断片化したゲノムDNAの2つの画分をキャピラリー電気泳動により分離し,自動化フラクションコレクターにより,211−400bpのフラグメントと401bp−9kbのフラグメントを回収する。6−68のリピートを有するAluIフラグメントは下側画分に存在し,したがって正常な対立遺伝子および小さい前変異(すなわち,55−68リピート)を有する対立遺伝子はこの画分に分離される。正常な対立遺伝子および小さい前変異は,タンデムリピート領域を増幅し電気泳動によりサイズ分画することによりさらに区別することができる。69−200の範囲のリピートを包含する前変異,および201−2000またはそれ以上のリピートを包含する完全変異は上側画分に存在する。したがって,下側画分が陽性であれば(すなわち,マーカー配列がこの画分で検出されれば),これは6−68のリピートを含むCGGタンデムリピート領域が存在することを示し;上側画分が陽性であれば,これは68−2000またはそれ以上のリピートを含むCGGタンデムリピート領域が存在することを示す。両方の画分で陽性の結果であることは,一方の対立遺伝子が正常であり,他方の対立遺伝子が前変異または完全変異を含むヘテロ接合体を示す。
【0154】
FMR1遺伝子のタンデムリピート領域のサイズを判定するアッセイの別の態様においては,BlpIとMlyIの組み合わせにより断片化したDNAを,約603bp以下(第1/最下側画分),604−840bp(第2画分),841−1078bp(第3画分)および1079bp−9kb(第4/最上側画分)のサイズに対応する4つの画分に分離する。正常なFMR1遺伝子(すなわち,55未満のタンデムリピート)を含むサンプルおよび56−62のタンデムリピートを有する前変異を含むサンプルからのフラグメントは第1/最下側画分に分離される。正常な対立遺伝子および小さい前変異は,タンデムリピート領域を増幅し,電気泳動によりサイズ分画することによりさらに区別することができる。小さい前変異(すなわち,63−140のタンデムリピート)を含むFMR1遺伝子からのフラグメントは第2画分に分離され,大きい前変異(すなわち,141−200のタンデムリピート)および201−220のタンデムリピートを有する完全変異を含むFMR1遺伝子からのフラグメントは第3画分に分離され,220より多いタンデムリピートを有する大きい前変異は第4/最上側画分に分離される。大きい前変異である141−200リピートは,201−220の完全変異から,例えば,標準的なサザンブロット法を用いることにより区別することができる。
【0155】
別の態様においては,AluIで消化したゲノムDNAを,キャピラリー電気泳動を用いて複数の画分にサイズ分画する。自動化された画分の回収は,予め設定された約30秒間/画分の分画時間ウインドウを用いて,200bpから始めて9Kbまで実施した。約16の画分を回収した。タンデムリピート領域の上流または下流のマーカー配列の検出が陽性である画分(1つまたは複数)は,サイズ範囲に対応しており,したがって,タンデムリピートの数を見積もることができる。
【0156】
性別の判定
ある態様においては,性別を判定する核酸アッセイを,FMR1遺伝子のタンデムリピート領域の長さを決定するアッセイと組み合わせる。好ましい態様においては,核酸アッセイはDNA増幅を含む。そのようなDNA増幅アッセイは,Y染色体(例えばSRY座(Sinclair,et al.,Nature 346:240−244,1990))に特異的な配列の増幅を標的とすることができる。この場合,増幅はY染色体の存在下でのみ生じ,このことは核酸が男性からのものであることを示す。増幅がないことは,核酸が女性からのものであることを示唆する。しかし,これらのアッセイにおいては,偽陰性を検出するために陽性コントロールを含めることが好ましい。
【0157】
別の例においては,X染色体とY染色体の両方に生ずるが,遺伝子がX染色体またはY染色体のいずれで生ずるかによって異なる長さを有するある種の遺伝子を増幅の標的とすることができる。この例においては,X染色体とY染色体との間で異なる遺伝子のセグメントを包含する領域を増幅する。その結果,テンプレート核酸(すなわち,X染色体またはY染色体)に対応して,異なるサイズを有する増幅産物が得られる。すなわち,男性からの核酸の増幅により両方のサイズのアンプリコンが生じ,一方,女性からのサンプルでは1つのサイズのみを有するアンプリコンが生ずる。
【0158】
好ましい態様においては,性別の判定用にアメロゲニン遺伝子を標的とする。アメロゲニン遺伝子のXホモログとYホモログとの間の配列の相違は,男性と女性を区別するために用いられている。例えば,X染色体上のアメロゲニン遺伝子の6塩基対(bp)欠失にまたがる2つのプライマーセットを用いて,X/Y産物についてそれぞれ106/112bpまたは212/218bpのフラグメントが生成された(Sullivan et al.,Bio Techniques 15:636−9,1993)。好ましい態様においては,下記のプライマーを用いてアメロゲニン遺伝子の領域を増幅する:
AMLF2プライマー,5’−AGTACTTGACCACCTCCTGATCTACAAGG3’(SEQ ID NO:40)および
AMLR2プライマー,5’−TTTTTAACAGTTTACTTGCTGATAAAACTCAYCCC3’(SEQ ID NO:41)
【0159】
このプライマー対により,X染色体ホモログに対応する134bpのアンプリコン,およびY染色体に対応する140bpのアンプリコンが得られる。すなわち,男性からの核酸の増幅により両方のアンプリコンが生成するが,女性からの核酸の増幅により一方のアンプリコンのみが生成する。
【0160】
以下の実施例により本発明を説明する。これらの実施例は本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【実施例】
【0161】
実施例1 制限酵素消化
本実施例は,FMR1遺伝子のタンデムリピート領域の増大を検出する方法について記載する。ゲノムDNA試験サンプルおよびコントロールDNAサンプルをAluIで制限エンドヌクレアーゼ消化した。1.0μgの試験またはコントロールDNAを各消化に用いた。ゲノムDNA試験サンプルおよびコントロールサンプルDNA中を精製し,希釈して濃度50ng/μLとした。消化のための反応混液は以下の表に従って調製した。
【0162】
【表6】

【0163】
10μLのAluI反応混液を各DNAサンプルに添加した。サンプルをボルテックスで混合し,微量遠心管で遠心分離した後,37℃で一晩インキュベートした。
【0164】
実施例2 消化したDNAのサイズ分離
A.2画分法
実施例1に記載したように制限酵素消化したDNAをサイズに従って分画した。1kb DNAラダーおよび消化した試験ゲノムDNAサンプルを96-ウェルプレートに加えた。Beckman Coulter P/ACE MDQ Series Capillary Electrophoresis Systemを用い,逆極性分離モード(reversed polarity separation mode)でプレートの自動サンプリングおよび自動分画を行った。まずラダーを6kv/60秒でキャピラリーに注入し,次いで200v/cmで泳動し,正確なサイジング・カットオフ時間を測定した。211-400bp(下側画分)および401bp-9kb(上側画分)に対応する既定の分画時間ウィンドウを用いて自動画分回収を行った。UV検出によってオンカラムで分離をモニタリングした。データを得,P/ACE MDQ 32 Karatソフトウェア・パッケージで評価した。
【0165】
消化したサンプルを1kb DNAラダーと同じ条件で分画した。各サイズ範囲について1kbラダーを用いて測定したサイジング・カットオフ時間に基づいて,下側画分(221-396 bp)および上側画分(369 bp -9 kb)を回収した。P/ACE MDQ自動コレクターを用いて画分を回収し,ウェル毎に30μLの0.1X TBEバッファーを注入した96ウェルプレート中で保存した。
【0166】
A.16画分法
既定の分画時間ウィンドウ(30秒)を用いて,約200bpから9Kbまで,自動画分回収を行った。UV検出によってオンカラムで分離をモニタリングした。データを得,P/ACE MDQ 32 Karatソフトウェア・パッケージで評価した。
【0167】
1kb DNAラダーおよび消化したゲノムDNAサンプルを96ウェルプレートに注入した。Beckman Coulter P/ACE MDQ Series Capillary Electrophoresis Systemを用い,冷却制御を行いながら自動サンプリングおよび自動分画を行った。まずラダーを6kv/60秒で動電学的にキャピラリーに注入し,その後200V/cmで泳動して正確なサイズ・ウィンドウを測定する(好ましくは200bp-9Kbp)。
【0168】
消化したサンプルを1kb DNAラダーで実施したのと同じ条件で分画した。P/ACE MDQ自動コレクターを用いて合計16画分を回収し,ウェル毎に5μLのdH2Oを注入した96ウェルプレート中で保存した。
【0169】
実施例3 PCR増幅およびタンデムリピートを有するフラグメントの検出
FMR1遺伝子のタンデムリピート領域の増大を特徴とする変異を検出するアッセイでは,記載するようにworking PCRマスター・ミックスを調製した。
【0170】
A.PCR増幅(非TaqMan)
フラグメントの増幅およびPCR産物サイズ分離分析のためのPCRマスター・ミックスを表6のように調製した。
【0171】
【表7】

【0172】
PCRプライマー・マスター・ミックスは1.5mLアリコートとし,使用まで-20℃で保存した。使用の際に,PCR反応混液を表7に示すように調製した。
【0173】
【表8】

【0174】
最終増幅混合液をプレートに入れ,Microseal Aフィルムで密封した。プレートを軽くボルテックスし(約5秒),プレート遠心分離機を用いて2,000-6,000gで約30秒間遠沈する(Soevall T6000D遠心機で1,600rpm)。プレートをABI 9700サーマルサイクラーに移す。
【0175】
増幅のためのサーマルサイクラー条件は以下の通りである:
工程1 95℃,15分間
工程2 95℃,60秒間
工程3 64℃,60秒間
工程4 72℃,30秒間
工程5 工程2-4の反復,34回
工程6 72℃,5分間
工程7 4℃,無制限
次いで,PCR産物をABI 3100遺伝子分析装置に負荷して検出した。
【0176】
B.TaqMan PCR増幅
CCG5’隣接配列を検出するためのTaqMan PCRマスター・ミックスを,表8に示すように調製した。
【0177】
【表9】

【0178】
TaqMan PCRマスター・ミックスは1.5mLアリコートとし,使用まで-20℃で保存した。使用の際は,TaqMan PCR反応混液を表9に示すように調製した。
【0179】
【表10】

【0180】
サイズ分離したDNA画分を含有する96ウェルプレートの各ウェルに,TaqMan PCRマスター・ミックス45μLを添加した。ウェルをMicroseal Aフィルムで密封した。プレートを軽くボルテックスし(約5秒),プレート遠心分離機を用いて2,000-6,000gで約30秒間遠沈した(Soevall T6000D遠心機で1,600rpm)。プレートをABI 7700(または7900HT)配列検出器に移す。
【0181】
TaqManのサーマルサイクラー条件は以下の通りである:
工程1 95℃,15分間
工程2 95℃,60秒間
工程3 64℃,60秒間
工程4 72℃,30秒間
工程5 工程2-4の反復,40回
工程6 72℃,5分間
工程7 4℃,無制限
【0182】
実施例4 増幅画分のゲル電気泳動による検出
ゲル電気泳動を用いて実施例3Aに記載したように調製したPCR増幅フラグメントのサイズを同定した。6μLの6X FEB(フィコール,EDTAブロムフェノールブルー・ローディングバッファー)を6μLのPCR産物に添加し,得られた混合液をゲルに負荷した。50bp DNAラダーをゲルの最初と最後のウェルに負荷した。サンプルを0.8%アガロースで200V,1.5時間電気泳動した。完了したゲルをUVフォトドキュメンテーション装置(Alpha Innotech Image Analysis System)で撮影した。
【0183】
実施例5 DM-1遺伝子のタンデムリピート領域増大変異の検出
DM1-遺伝子のタンデムリピート領域増大を特徴とする変異を検出するアッセイでは,ゲノムDNA試験サンプルをAluIで制限エンドヌクレアーゼ消化する。約1.0μgの試験ゲノムDNAを各消化に用いる。消化のための反応混液を酵素販売者のプロトコルに従って調製する。サンプルを混合し,消化が完了するまで37℃でインキュベートする。
【0184】
キャピラリー電気泳動を用いて,制限酵素消化したDNAをサイズに従って分離し,第1の画分(250-360bp)は正常リピート範囲(例えば5-37リピート)に対応し,第2の画分(400bp-9kb)はリピート増大変異(例えば50リピート以上)に対応するように2つの画分を回収する。まず1kb DNAラダーをキャピラリーに注入し,正確なサイジング・カットオフ時間を測定する。既定の下側画分および上側画分に対応する分画時間幅を用いて,自動画分回収を行う。UV検出によってオンカラムで分離をモニタリングする。次いで,消化したサンプルを1kb DNAラダーと同じ条件を用いて分画する。下側画分および上側画分を,各サイズ範囲について1kbラダーを用いて測定したサイジング・カットオフ時間に基づいて回収する。
【0185】
TaqManリアルタイムPCR法を用い,各画分についてDM-1タンデムリピート領域を含有するフラグメントの存在を分析する。この方法では,フォワード・プライマー(例えば5’-ccatttctttctttcggcca-3’;seq id no:31)およびリバーズ・プライマー(例えば5’-AGGCCTGCAGTTTGCCC-3’;seq id no:32)を用いてDM-1遺伝子の3’-非翻訳領域のセグメントを増幅する。増幅したフラグメントをTaqMan標識プローブ(5’-tgaggccctgacgtgg-3’(SEQ ID NO:33))で検出する。
【0186】
増幅されたセグメントが下側画分にだけ存在すれば,個体が正常DM-1対立遺伝子に関してホモ接合性であることを示す。増幅されたセグメントが上側画分にだけ存在すれば,個体が変異対立遺伝子(単数または複数)に関してホモ接合性であることを示す。増幅されたセグメントがいずれの画分にも存在すれば,ヘテロ接合性であることを示している。
【0187】
実施例6 FRDA遺伝子のタンデムリピート領域増大変異の検出
FRDA遺伝子のタンデムリピート領域増大を特徴とする変異を検出するアッセイでは,ゲノムDNA試験サンプルをAluIおよびRsaIで制限エンドヌクレアーゼ消化する。約1.0μgの試験ゲノムDNAを各消化に用いる。消化のための反応混液を酵素販売者のプロトコルに従って調製する。サンプルを混合し,消化が完了するまで37℃でインキュベートする。
【0188】
キャピラリー電気泳動を用いて,制限酵素消化したDNAをサイズに従って分離し,第1の画分(300-405bp)は正常リピート範囲(例えば7-34リピート)に対応し,第2の画分(600bp-9kb)はリピート増大変異(例えば100リピート以上)に対応するように2つの画分を回収する。まず1kb DNAラダーをキャピラリーに注入し,正確なサイジング・カットオフ時間を測定する。既定の下側画分および上側画分に対応する分画時間幅を用いて,自動画分回収を行う。UV検出によってオンカラムで分離をモニタリングする。次いで,消化したサンプルを1kb DNAラダーと同じ条件を用いて分画する。下側画分および上側画分を,各サイズ範囲について1kbラダーを用いて測定したサイジング・カットオフ時間に基づいて回収する。
【0189】
TaqManリアルタイムPCR法を用い,各画分についてFRDAタンデムリピート領域を含有するフラグメントの存在を分析する。この方法では,フォワード・プライマー( 5’-aggcctaggaaggtggatcac-3’;seq id no:34)およびリバーズ・プライマー(例えば5’-ACCATGTTGGCCAGGTTAGTCT-3’; seq id no:35)を用いてFRDA遺伝子の第1のイントロン領域のセグメントを増幅する。増幅したフラグメントをTaqMan標識プローブ(5’-tgaggtccggagttc-3’(SEQ ID NO:36))で検出する。
【0190】
増幅されたセグメントが下側画分にだけ存在すれば,個体が正常FRDA対立遺伝子に関してホモ接合性であることを示す。増幅されたセグメントが上側画分にだけ存在すれば,個体が変異対立遺伝子(単数または複数)に関してホモ接合性であることを示す。増幅されたセグメントがいずれの画分にも存在すれば,ヘテロ接合性であることを示している。
【0191】
実施例7 FMR1遺伝子のタンデムリピート領域増大変異の検出
この実施例では,FMR1遺伝子のタンデムリピート領域の増大変異の検出を,AluIでの断片化,サイズ分画,それに続くBstNIによる第2の制限酵素消化によって行う。従って,上記実施例1に記載するように,ゲノムDNA試験サンプルをAluIで制限酵素消化した。
【0192】
次いで,消化したDNAをキャピラリー電気泳動で4つの画分に分画した。画分1は0-60のCCGタンデムリピートを有する核酸を含有し,画分2は60-200のCCGタンデムリピートを含有し,画分3は200-2000のCCGタンデムリピートを含有し,画分4は2000+のCCGタンデムリピートを含有する。分画後,4つの画分それぞれのアリコートを第2の制限エンドヌクレアーゼ,BstIで消化し,CCGタンデムリピート領域からマーカーを切断する。第2の核酸分画後,4つの画分のそれぞれに関して,実施例3Bに記載するようにPCR(すなわちTaqMan PCR増幅)を行った。
【0193】
A.罹患個体由来サンプルの第2の制限酵素消化
マーカー配列をタンデムリピート領域から切断するための第2の制限酵素消化を実施した場合としない場合について,罹患サンプルを試験した。第2の消化を行ったサンプルは,第2の酵素消化を行わなかったサンプルに比較してはるかに強いシグナル(すなわちより高い相対蛍光ユニット(RFU)シグナル)を示した。各サンプルについて重複で実施した;データを以下の表10に示す。これらのデータは,マーカー配列をタンデムリピート領域から切断すると,マーカー配列の増幅が増加することを示している。
【0194】
【表11】

【0195】
B.正常個体由来サンプルの第2の制限酵素消化
マーカー配列をタンデムリピート領域から切断するための第2の制限酵素消化を実施した場合としない場合について,正常サンプルを試験した。第2の消化を行ったサンプルは出発物質がより少なかったが,出発物質がより多いが第2の酵素消化を行わなかったサンプルに比較して同等またはより高いシグナル(すなわちより高い相対蛍光ユニット(RFU)シグナル)を示した。データは,マーカー配列をタンデムリピート領域から切断すると,マーカー配列の増幅が増加することを示している。
【0196】
【表12】

【0197】
実施例8 FMR1遺伝子のタンデムリピート領域増大変異の検出
この実施例では,FMR1遺伝子のタンデムリピート領域の増大変異の検出を,BlpIおよびMlyIでの断片化,サイズ分画,それに続くBmtIによる第2の制限酵素消化によって行う。
【0198】
ゲノムDNA試験サンプルのBlpIおよびMlyIでの制限エンドヌクレアーゼ消化を行うが,各消化には約1.5μgの試験またはコントロールDNA(50ng/μLの濃度に精製または希釈)を用いる。消化のための反応混液は以下の表に従って調製する。
【0199】
【表13】

【0200】
サンプルをボルテックスで混合,遠心分離した後,37℃で16時間インキュベートして4℃で保存する。次いで,P/ACE MDQ Capillary Electrophoresis Systemを用いるキャピラリー電気泳動で,消化したDNAを4つの画分に分画する。画分1(603bp未満)は6-62のCCGタンデムリピートを有する核酸を含有し,画分2(603-840bp)は63-140のCCGタンデムリピートを含有し,画分3(841-1078bp)は141-220のCCGタンデムリピートを含有し,画分4(1079bp-9kb)は221-2000のCCGタンデムリピートを含有する。分画後,4つの画分それぞれのアリコートを制限エンドヌクレアーゼ,BmtIで消化し,CCGタンデムリピート領域からマーカーを切断する。BmtI反応混液は以下の表に従って調製する。
【0201】
【表14】

【0202】
消化反応混液を37℃で16時間インキュベートし,4℃で保存する。
【0203】
第2の核酸消化後,4つの画分のそれぞれについて以下のプライマーを使用してPCRを行う:
【0204】
【表15】

【0205】
サイズ分析のフラグメントを増幅させるためのPCRマスター・ミックスは表15に従って調製する。
【0206】
【表16】

【0207】
0.5μLのHotAtarTaq(Qiagen)を添加して調製した最終PCR増幅混合液,次いで5μLの消化した分画DNAを,各個別PCR反応に添加する。最終増幅混合液はMicroseal Aフィルムでプレート中に密封する。プレートを軽くボルテックスし(約5秒間),プレート遠心分離機を用いて2,000-6,000gで約30秒間遠沈した(Soevall T6000D遠心機で1,600rpm)。プレートをABI 7700サーマルサイクラーに移す。
【0208】
増幅のためのサーマルサイクラー条件は以下の通りである:
工程1 95℃,15分間
工程2 95℃,30秒間
工程3 55℃,30秒間
工程4 72℃,60秒間
工程5 工程2-4の反復,33回
工程6 72℃,10分間
工程7 4℃,無制限
【0209】
2μLのPCR産物をROX 350サイズ・スタンダード(Applied Biosystems)と共に10.5μL Hi-Diホルムアミド(Applied Biosystems)と合一し,95℃で5分間加熱した後,氷上に5分間放置する。次いでサンプルをABI 3100遺伝子分析装置に負荷する。
【0210】
実施例9 FMR1遺伝子のタンデムリピート領域増大変異の検出
この実施例では,SphIおよびBmtIでの断片化,サイズ分画,それに次ぐBstNIでの第2の制限酵素消化によって,FMR1遺伝子のタンデムリピート領域増大変異を検出する。従って,ゲノムDNA試験サンプルをSphIおよびBmtIで制限エンドヌクレアーゼ消化するが,各消化には約1.5μgの試験またはコントロールDNA(精製し,50ng/μLの濃度に希釈したもの)を使用する。消化のための反応混液は以下の表に従って調製する。
【0211】
【表17】

【0212】
サンプルをボルテックスで混合し,微小遠心管で遠心分離した後,37℃で一晩インキュベートする。次いで,キャピラリー電気泳動を用いて,消化したDNAを4つの画分に分画する。画分1は6-62タンデムリピートを有する核酸を含み,画分2は63-163タンデムリピートを含み,画分3は146-196リピートを含み画分4はそれ以上のタンデムリピートを含む。分画後,4つの各画分のアリコートを第2の制限エンドヌクレアーゼ,BmtIで消化し,CCGタンデムリピート領域からマーカーを切断する。第2の核酸分画後,4つの画分のそれぞれについて,以下のプライマーを使用してPCRを行う:
【0213】
【表18】

【0214】
以下の条件を用いてPCRを行う:
工程1 95℃,15分間
工程2 95℃,30秒間
工程3 55℃,30秒間
工程4 72℃,60秒間
工程5 工程2-4の反復,33回
工程6 72℃,10分間
工程7 4℃,無制限
次いでPCR産物をABI 3100遺伝子分析装置に負荷して検出する。
【0215】
実施例10 FMR1アッセイに使用するためのコントロールフラグメントの同定
FMR1とは異なるゲノム領域由来のAluIフラグメントは6,000塩基長以上で,トリヌクレオチド・リピートを含み,そして高GC含量および/またはCpGアイランドを有するが,これはFMR1アッセイのコントロールフラグメントとして使用するために同定された。このフラグメントは以下のように同定された。ヒトゲノム中の全てのAluI部位をEMBOSS Restrictプログラム(Riceら,“EMBOSS:The European Molecular Biology Open Software Suite.”Trends in Genetics 16(6):276-7 (2000))を用いて同定したところ,AluIでの消化によって11,500,000のフラグメントが生成されることが予測された。これらのフラグメントのうち,6,000塩基長以上の20のフラグメントをTACGプログラム(Mangalam, HJ.“tacg - a grep for DNA.”BMC Bioinformatics 3:8 (2002))を用いて同定した。EMBOSS ExtractSeqを用いてこれら20のフラグメントの配列を得た。これら20のフラグメントのうち,22番染色体上のUSP41遺伝子領域(すなわち22番染色体:19033185-19041663)に対応するあるフラグメントがトリヌクレオチド・リピートの長い領域を有することが発見された。EMBOSS geeceeでGC含量を分析し,EMBOSS cpgseekおよびnewcpgreportを用いてCpGアイランド分析を行った。
【0216】
実施例11 PCRを用いたFMR1のタンデムリピート領域のサイズ測定
FMR1領域のタンデムリピート領域のサイズを測定するために,蛍光標識したプライマー(例えば6-FAM)存在下でのポリメラーゼ連鎖反応で領域を増幅し,得られる標識されたアンプリコンのサイズを電気泳動で測定する。第2のトリヌクレオチド・リピート(X連鎖性アンドロゲン受容体遺伝子中のCAG)を,プライマー対(一方のプライマーが蛍光標識されている)を用いて共増幅し,共分析して内部増幅コントロールとした。
【0217】
従って以下の表に記載するように,FMR1遺伝子のタンデムリピート領域ではフォワード・プライマーとしてFX-5F(SEQ ID NO:29),リバース・プライマーとしてFX-3F(SEQ ID NO:30)を,X連鎖性アンドロゲン受容体遺伝子のトリヌクレオチド・リピートではフォワード・プライマーとしてAR-5F(SEQ ID NO:37),リバース・プライマーとしてAR-R2(SEQ ID NO:37)を使用して増幅を行う。
【0218】
【表19】

【0219】
【表20】

【0220】
PCRマスター・ミックスを1,100μLのアリコートとし,これに5.5μLのTaqポリメラーゼ(5U/μL)(Qiagen)および22μLのPfu DNAポリメラーゼ(2.5U/μL)(Stratagene)を添加してポリメラーゼ/マスター・ミックス溶液を調製する。
【0221】
ゲノムDNAをTEバッファーで20ng/μLに希釈する。サンプルを93-97℃で4-6分間加熱し,氷上で冷却する。10μL のポリメラーゼ/マスター・ミックス溶液を2μL (40ng)の希釈したゲノムDNAに添加する。
【0222】
サーマルサイクラーが85℃+/-2℃に到達したら,サンプルをABI 9700サーマルサイクラーに移す。増幅のためのPCR条件は以下の通りである:
工程1 95℃,6分間
工程2 95℃,1分間
工程3 60℃,2分間
工程4 75℃,5分間
工程5 工程2-4の反復,31回
工程6 75℃,13分間
工程7 4℃,無制限
次いで,PCR産物をABI 3100遺伝子分析装置に負荷して検出した。
【0223】
実施例12 脆弱性X症候群キャリアのスクリーニング
この実施例では,2工程法によって男性および女性個体由来のサンプルについて脆弱性X症候群のキャリア状態のスクリーニングを行ったが,この方法では,まずサンプルをマルチプレックスPCRでスクリーニングして性別とFMR1領域のサイズを確認し,マルチプレックスPCRの結果に基づいて更なるサイズ分析を行った。女性であり,2つの正常対立遺伝子に関してヘテロ接合性であることが確認されたサンプルは全て,更なる分析を行わなかった。女性であり,FMR1遺伝子座が明らかにホモ接合性であることが確認されたサンプル(全分析中の24%)は全て,更なる分析を行って,FMR1タンデムリピート領域のサイズを測定した。男性であり,正常FMR1対立遺伝子に関してヘミ接合性であると同定されたサンプルは更なる分析を行わず,男性であり,FMR1増幅を示さないことが同定されたサンプルは更なる分析を行ってFMR1タンデムリピート領域のサイズを測定した。
【0224】
Xtractor GeneTM(Corbett Life Science, Mortlake, NSW,オーストラリア)を用い,製造者のWhole Blood DNA Extraction Protocolに従って,EDTA抗凝集採血管に回収した全血150μLからゲノムDNAを抽出した。最終溶出を100μLのバッファー中で実施し,50-100ng/μLの濃度が一定して生成された。
【0225】
次いで,ゲノムDNAサンプルを,以下から成るマルチプルPCRで分析した:FX-5Fプライマー(FAM標識されたもの;SEQ ID NO:29)およびFX-3Fプライマー(SEQ ID NO:30)を用いるFMR1タンデムリピート領域の増幅;AMLF2プライマー5’-AGTACTTGACCACCTCCTGATCTACAAGG 3’(FAM標識されたもの;SEQ ID NO:40)およびAMLR2プライマー5’-TTTTTAACAGTTTACTTGCTGATAAAACTCAYCCC 3’(SEQ ID NO:41)を用いる性別確認のためのアメロゲニン遺伝子領域の増幅,および,ポジティブ内部コントロールとしてAR-5F(HEX標識されたもの;SEQ ID NO:37)およびAR-R2プライマー(SEQ ID NO:38)を用いるX連鎖性アンドロゲン受容体のトリヌクレオチド・リピートの増幅。
【0226】
以下から成るマルチプレックスPCRのためのPCRマスター・ミックスを調製した:3.3 μMの各上記プライマー,1X Qiagen スタンダードPCRバッファー,0.4mM MgCl2,2% DMSO,1X Qiagen Q Solution,0.2mM dNTP,および0.25ユニットの Qiagen Taq DNAポリメラーゼ(Qiagen, Valencia, CA),0.5ユニットのPfu DNA ポリメラーゼ(Strategene, La Jolla, CA)。単離したDNA溶液1μLを10μLのマルチプレックス・プライマーミックスに添加して,最終容量11μLとした。PCR条件配下の通りである:95℃-6分間,次いで,95℃-1分間,60℃-2分間,75℃-5分間を32サイクル,そして最後に増幅産物を75℃で15分間伸長させた。ABI 3100 自動DNAシークエンサー(Applied Biosystems, Foster City, CA,米国)でPCRフラグメントを分析し,ABI GeneScanTM V3.7およびGenotyperTM V3.7ソフトウェア(Applied Biosystems)を用いてフラグメント分析を行った。アメロゲニン・プライマー対からはX染色体ホモログに対応する134bpのアンプリコンおよびY染色体に対応する140bpのアンプリコンが生じる。
【0227】
FMR1遺伝子のタンデムリピート領域のサイズを測定するための更なる分析で,ゲノムDNAを制限酵素BlpIおよびmlyI(New England BioLabs, Ipswich, MA,米国)を用いて37℃で16時間消化した。インキュベーション後,制限フラグメントを加圧インジェクションまたは減圧インジェクションのいずれかによって,UV/Vis検出器を搭載したP/ACETM MDQキャピラリー電気泳動システム(Beckman Coulter, Fullerton, CA,米国)に注入した。未変性2重鎖DNAを1X TBEバッファー(90mM Tris-Borate,2mM EDTA,pH 8.3)中,100 V/cmの電場強度で分離した。キャピラリー温度は25℃に保った。4つの画分を0.1X TBEバッファー(9mM Tris-borate,0.2mM EDTA,pH 10)に回収した。第1画分は分子量400bp-600bpから成る;第2画分は分子量600bp-800bpから成る;第3画分は分子量800bp-1,000bpから成る;そして第4画分は分子量1,000bp-8,000bpから成る。不完全な制限酵素消化のための内部標準は使用しなかったが,これは,いずれかの酵素がFMR1中で上手く切断を起こさなければ,フラグメントは長すぎていずれの画分にも回収されないからである。
【0228】
次いで,全ての回収した画分を,製造者の手順に従ってBmtI(New England BioLabs)で制限酵素消化し,タンデムリピート領域からマーカー配列を切断した。消化した各画分5μLを,各ウェルに20μLのPCR混合液を含有する96ウェルプレートに移した。このPCR混合液は以下から成る:1X QiagenスタンダードPCRバッファー,1.5mM MgCl2,5% DMSO,100mM KCl,0.2mM dNTP,2.5ユニットHotStart Taq DNAポリメラーゼ(Qiagen社),および1μMの以下の各プライマー: FXCEF2プライマー(FAM標識;SEQ ID NO:6),FXCER2プライマー(SEQ ID NO:7),および0.01μMの以下の各プライマー:BlpIFプライマー(HEX標識,SEQ ID NO:12),BlpIRプライマー(SEQ ID NO:13),lgctrlFプライマー(FAM標識,SEQ ID NO:20),lgctrlRプライマー(SEQ ID NO:21),F2ctrl1Fプライマー(HEX標識,SEQ ID NO:16),F2ctrl1Rプライマー(SEQ ID NO:17),F3ctrl3Fプライマー(FAM標識,SEQ ID NO:18),F3ctrl3Rプライマー(SEQ ID NO:19)。PCR条件は以下の通りである:95℃-15分間,次いで95℃-30秒間,55℃-30秒間,72℃-1分間を33サイクル,最後に増幅産物を72℃で10分間伸長させた。その後,最終PCR産物を3100 Prism Genetics Analyzer(Applied Biosystems)で,GenescanTM-350 ROXサイズ・スタンダード(Applied Biosystems)を用いて分析した。
【0229】
個人識別データを除いた1,662検体の血液サンプルを上記の方法で分析した。このサンプル集団には,995検体の女性および557検体の男性が含まれた。女性個体のうち,6検体は前変異キャリア(0.6%)であり,7検体が完全変異キャリア(0.7%)であることが確認された。13検体のキャリア全てを標準的なPCR/サザンブロット分析による確認で正確に同定し,感度100%とした。1患者は標準的なPCR/サザンブロット分析でノンキャリアと解釈され,上記方法により,前変異キャリアであると考えられた。この患者は前変異対立遺伝子に関してモザイクでありうるか,またはこれは偽陽性結果を示している。サンプルは無記名であったため,サザンブロットのデータの再検討やサンプルの再検査はできなかった。この結果が偽陽性であると仮定すると,上記方法の特異度は99.5%である。557の男性検体のうち,前変異キャリアは1検体,罹患個体は5検体であった。これらの測定はサザンブロット分析で確認した。従って,上記の方法は全ての男性前変異キャリアおよび罹患男性を検出し,551検体の非罹患男性が偽陽性結果となることはなかった。
【0230】
特に明記しないかぎり,本明細書で使用するすべての技術および科学用語は,本発明が属する分野の当業者が一般に理解するものと同じ意味をもつ。本明細書に記載するヌクレオチド配列は全て,5’から3’方向で記載する。
【0231】
本発明について本明細書に例証的に記載するが,これは本明細書には特に開示していない任意の要素(単数または複数),制限(単数または複数)を適宜除いて実施してもよい。従って,例えば“含む”,“含有する”等の用語は広範に,制限無しに理解してよい。さらに,本明細書で使用する用語および表現は制限を与えるものではなく記述のための用語として使用するものであり,それらの用語および表現の使用に際しては,表示および記述する特徴の同等物またはその一部のいずれをも除外する意図はなく,認識されるように,種々の改変が請求する本発明の範囲内で可能である。
【0232】
従って,当業者に理解されるように,好ましい態様および選択可能な特徴によって本発明を具体的に開示したが,本明細書に開示する本発明の改変,改善,および変更を用いてもよく,それらの改変,改善,および変更は本発明の範囲内に含まれるとみなされる。本明細書に記載する物質,方法,および実施例は好ましい態様の代表的なものであり,例証であって,本発明の範囲に制限を加えることを意図するものではない。
【0233】
本発明について広範かつ一般的に記載した。包括的な開示に含まれる,より狭義の種および亜群もそれぞれ本発明の一部を為す。属(genus)から任意の対象を除去する条件付きまたは消極的制限を有する本発明の一般的な記述は,その除外された要素が具体的に本明細書に記載されているか否かに拘わらず,これに含まれる。
【0234】
さらに,本発明の特徴または観点がマーカッシュ群で記載されている場合,当業者に認識されるように,本発明はマーカッシュ群の任意の個々のメンバーまたはメンバーの亜群に関しても記載されている。
【0235】
本明細書に記載する全ての文献,特許出願,特許,および参照は,そのそれぞれが個々に参照により組み込まれたのと同程度まで,その全体が参照により明確に本明細書に組み込まれる。不一致が生じる場合,定義を含む本明細書が優先する。
【0236】
他の態様は別添の特許請求の範囲に記載される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸サンプル中の核酸セグメントのサイズを測定する方法であって,
核酸のフラグメントを分離し,該フラグメントは核酸含有サンプルから調製されたものであり,該フラグメントは該セグメントおよびマーカー配列を含有するものを含み,該分離は該セグメントを含むフラグメントがセグメントのサイズに従って画分中に存在するような条件下でサイズに従って画分に分離することであり,そして
マーカー配列を検出することによりセグメントを含有する画分を同定し,ここで,セグメントのサイズはそれが同定される画分により判定される,
の各工程を含む上記方法。
【請求項2】
核酸セグメントは,ポリメラーゼ連鎖反応による増幅が困難なものである,請求項1記載の方法。
【請求項3】
該核酸セグメントは,グアニンおよびシトシン塩基を高濃度で含有する,請求項2記載の方法。
【請求項4】
該フラグメントは,1つまたはそれ以上の制限エンドヌクレアーゼを使用して調製される,請求項1記載の方法。
【請求項5】
該画分は,正常サイズのセグメントを含有するフラグメントと異常サイズのセグメントを含有するフラグメントが分離されるように選択される,請求項1記載の方法。
【請求項6】
該分離は,2-16から成る群から選択される数の画分への分離である,請求項1記載の方法。
【請求項7】
該分離は電気泳動による,請求項1記載の方法。
【請求項8】
該電気泳動はキャピラリー電気泳動である,請求項7記載の方法。
【請求項9】
該分離はクロマトグラフィーによる,請求項1記載の方法。
【請求項10】
該分離工程の後に,該セグメントと該マーカー配列とを含有するフラグメント中のセグメントの全部または一部を該マーカー配列から切断することをさらに含む,請求項1記載の方法。
【請求項11】
該切断は制限エンドヌクレアーゼを用いて行う,請求項10記載の方法。
【請求項12】
該検出は該マーカー配列を増幅することをさらに含む,請求項1記載の方法。
【請求項13】
該増幅はポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により行う,請求項12記載の方法。
【請求項14】
該PCRは標識されたプライマーを含む,請求項13記載の方法。
【請求項15】
該検出はTaqman PCR検出システムを用いて行う,請求項1記載の方法。
【請求項16】
該マーカー配列は,マーカー配列に同時にハイブリダイズする2つのプローブへのハイブリダイゼーションによって検出する,請求項1記載の方法。
【請求項17】
該セグメントはタンデムリピート領域を含有する,請求項1記載の方法。
【請求項18】
測定されるサイズは,該タンデムリピート領域中のリピート数である,請求項17記載の方法。
【請求項19】
該画分は,正常数のタンデムリピートを有するフラグメントを異常数のタンデムリピートを有するフラグメントと分離するように選択される,請求項18記載の方法。
【請求項20】
該タンデムリピートはトリヌクレオチド・タンデムリピートである,請求項17記載の方法。
【請求項21】
該タンデムリピートは,DRPLA,EPM1,FRAXA,FMR1,FRDA,ハンチントン,JPH-3,AR,DM1,DM2,SCA1,SCA2,SCA3,SCA6,SCA7,SCA8,SCA10,SCA12,SCA17,PABPN1,およびHOXD13から成る群から選択される遺伝子と関連づけられる,請求項17記載の方法。
【請求項22】
該タンデムリピートは,FMR1,FRDA,およびDM1から成る群から選択される遺伝子と関連付けられる,請求項21記載の方法。
【請求項23】
該遺伝子はFMR1である,請求項22記載の方法。
【請求項24】
核酸サンプル中の遺伝子のタンデムリピート・セグメントにおける変異を検出する方法であって,該変異は野生型対立遺伝子のリピート数に比較してリピート数が変化していることを特徴とし,該方法は,
核酸のフラグメントを分離し,該フラグメントは核酸含有サンプルから調製されたものであり,該フラグメントは該タンデムリピート・セグメントおよびマーカー配列を含有するものを含み,該分離は該タンデムリピート・セグメントを含むフラグメントがタンデムリピート・セグメントにおけるリピート数に従って画分中に存在するような条件下でサイズに従って画分に分離することであり;
マーカー配列を検出することによりセグメントを含有する画分を同定し,ここで,タンデムリピート・セグメントのリピート数はそれが同定される画分により判定され;そして
核酸サンプル由来のタンデムリピート・セグメントにおけるリピート数と,対応する野生型対立遺伝子におけるリピート数とを比較し,ここで,リピート数が野生型対立遺伝子におけるリピート数と異なれば,これは変異を示す,
の各工程を含む上記方法。
【請求項25】
さらに,
核酸サンプル由来のタンデムリピート・セグメントにおけるリピート数と,対応する完全変異対立遺伝子におけるリピート数とを比較することにより,変異が前変異または完全変異であるかを判定し,ここで,リピート数が野生型対立遺伝子より多く完全変異より少なければこれは前変異対立遺伝子であることを示し,リピート数が完全変異より多いか同等であればこれは完全変異対立遺伝子であることを示す,
の工程を含む,請求項24記載の方法。
【請求項26】
該フラグメントは1つまたはそれ以上の制限エンドヌクレアーゼを使用して得られる,請求項24記載の方法。
【請求項27】
該1つまたはそれ以上の制限エンドヌクレアーゼは,AluI,SphI,BmtI,BlpI,MlyI,およびBstNIから成る群から選択される,請求項26記載の方法。
【請求項28】
該1つまたはそれ以上の制限エンドヌクレアーゼはAluIである,請求項27記載の方法。
【請求項29】
該1つまたはそれ以上の制限エンドヌクレアーゼはSphIおよびBmtIである,請求項27記載の方法。
【請求項30】
該1つまたはそれ以上の制限エンドヌクレアーゼはBlpIおよびMlyIである,請求項27記載の方法。
【請求項31】
該分離は電気泳動による,請求項24記載の方法。
【請求項32】
該電気泳動はキャピラリー電気泳動である,請求項31記載の方法。
【請求項33】
該分離はクロマトグラフィーによる,請求項24記載の方法。
【請求項34】
該画分は,正常数のタンデムリピートを有するタンデムリピート・セグメントを含有するフラグメントと異常数のタンデムリピートを有するタンデムリピート・セグメントを含有するフラグメントとを分離するように選択される,請求項24記載の方法。
【請求項35】
該分離は,2-16から成る群から選択される数の画分への分離である,請求項24記載の方法。
【請求項36】
該分離工程の後に,該タンデムリピート・セグメントおよび該マーカー配列を含有するフラグメント中のタンデムリピート・セグメントの全部または一部を該マーカー配列から切断することをさらに含む,請求項24記載の方法。
【請求項37】
該切断は制限エンドヌクレアーゼを使用して行う,請求項36記載の方法。
【請求項38】
該制限エンドヌクレアーゼをBsaWI,HphI,BbvI,BstNI,Hpy1881,SmlI,およびBmtIから成る群から選択する,請求項37記載の方法。
【請求項39】
該検出は該マーカーを増幅することをさらに含む,請求項24記載の方法。
【請求項40】
該増幅はポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって行う,請求項39記載の方法。
【請求項41】
該増幅は検出可能なように標識されたプライマーを使用する,請求項40記載の方法。
【請求項42】
該検出は電気泳動で行う,請求項41記載の方法。
【請求項43】
該検出はTaqman PCR検出システムを使用して行う,請求項24記載の方法。
【請求項44】
該マーカー配列は,マーカー配列に同時にハイブリダイズする2つのプローブへのハイブリダイゼーションによって検出される,請求項24記載の方法。
【請求項45】
該タンデムリピートはトリヌクレオチド・タンデムリピートである,請求項24記載の方法。
【請求項46】
個体の核酸において,正常数のタンデムリピート,前変異,または完全変異を有するFMR1対立遺伝子を同定する方法であって,
核酸のフラグメントを分離し,該フラグメントは個体の核酸含有サンプルから調製されたものであり,該フラグメントはFMR1遺伝子のタンデムリピート・セグメントおよびマーカー配列を含有するものを含み,該分離は,正常数のリピートを有するタンデムリピート・セグメントを含有するフラグメントが第1の画分中に存在し;前変異を有するタンデムリピート・セグメントを含有するフラグメントが第2の画分中に存在し;完全変異を有するタンデムリピート・セグメントを含有するフラグメントが第3の画分中に存在するような条件下でサイズに従って画分に分離することであり,
マーカー配列を検出することによりタンデムリピート・セグメントを含有する画分を同定し,ここでタンデムリピート・セグメントのリピート数はそれが同定される画分により判定され,
第1の画分で陽性結果が得られれば個体が正常数のタンデムリピートを有するFMR1対立遺伝子を保有することを示し;第2の画分で陽性結果が得られれば個体が前変異FMR1対立遺伝子を保有することを示し;そして第3の画分で陽性結果が得られれば個体が完全変異FMR1対立遺伝子を保有することを示す,
の各工程を含む上記方法。
【請求項47】
該フラグメントは。1つまたはそれ以上の制限エンドヌクレアーゼを使用して得られる,請求項46記載の方法。
【請求項48】
該1つまたはそれ以上の制限エンドヌクレアーゼは,AluI,SphI,BmtI,BlpI,MlyI,およびBstNIから成る群から選択される,請求項47記載の方法。
【請求項49】
該1つまたはそれ以上の制限エンドヌクレアーゼはAluIである,請求項48記載の方法。
【請求項50】
該1つまたはそれ以上の制限エンドヌクレアーゼはSphIおよびBmtIである,請求項48記載の方法。
【請求項51】
該1つまたはそれ以上の制限エンドヌクレアーゼはBlpIおよびMlyIである,請求項48記載の方法。
【請求項52】
該分離は電気泳動による,請求項46記載の方法。
【請求項53】
該分離はクロマトグラフィーによる,請求項46記載の方法。
【請求項54】
該分離工程の後に,該タンデムリピート・セグメントおよび該マーカー配列を含有するフラグメント中のタンデムリピート・セグメントの全部または一部を該マーカー配列から切断することをさらに含む,請求項46記載の方法。
【請求項55】
該切断は制限エンドヌクレアーゼを使用して行う,請求項54記載の方法。
【請求項56】
該制限エンドヌクレアーゼは,BsaWI,HphI,BbvI,BstNI,Hpy1881,SmlI,およびBmtIから成る群から選択される,請求項55記載の方法。
【請求項57】
該検出は該マーカーを増幅することをさらに含む,請求項46記載の方法。
【請求項58】
該増幅はポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により行う,請求項57記載の方法。
【請求項59】
該増幅は検出可能なように標識されたプライマーを使用する,請求項57記載の方法。
【請求項60】
該検出は電気泳動で行う,請求項59記載の方法。
【請求項61】
該検出はTaqman PCR検出システムで行う,請求項46記載の方法。
【請求項62】
核酸サンプル中のタンデムリピート・セグメントのサイズを測定する方法であって,
a)タンデムリピート・セグメントの増幅を含む第1の方法によって該タンデムリピート・セグメントのサイズを測定し,
b)請求項17記載の第2の方法によって該タンデムリピート・セグメントのサイズを測定し,
c)工程a)およびb)で得られる情報を用いてタンデムリピート・セグメントのサイズを測定する,
の各工程を含む上記方法。
【請求項63】
工程a)の増幅はポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により行う,請求項62記載の方法。
【請求項64】
増幅されたタンデムリピート領域のサイズを電気泳動によって測定することをさらに含む,請求項63記載の方法。
【請求項65】
FMR1遺伝子のタンデムリピート領域における変異のキャリア状態について男性および女性個体をスクリーニングする方法であって,
個体由来の核酸をアッセイして性別を判定し;そして
該核酸をアッセイしてFMR1遺伝子のタンデムリピート領域の長さを測定すること
を含み,該測定は,
タンデムリピート領域を増幅し,
増幅産物中のタンデムリピート数を測定する
ことを含み,
ここで,男性個体では:
55未満のタンデムリピートを有する増幅産物が存在すれば個体がキャリアではないことを示しており,
55またはそれ以上のタンデムリピートを有する増幅産物が存在すれば個体がキャリアであることを示すか,または
増幅産物が存在しない場合は,キャリア状態が未確認であり;そして,
女性個体では:
55より多いタンデムリピートを有する増幅産物が存在すれば個体がキャリアであることを示し,または
55未満のタンデムリピートを有する増幅産物だけが存在する場合はキャリア状態が未確認であることを示す,
上記方法。
【請求項66】
さらに,未確認個体を分析してキャリア状態を確認することを含み,該分析は,
核酸のフラグメントを分離し,該フラグメントは個体の核酸含有サンプルから調製されたものであり,該フラグメントはFMR1遺伝子のタンデムリピート・セグメントおよびマーカー配列を含有するものを含み,該分離は,正常数のリピートを有するタンデムリピート・セグメントを含有するフラグメントが第1の画分中に存在し;前変異を有するタンデムリピート・セグメントを含有するフラグメントが第2の画分中に存在し;完全変異を有するタンデムリピート領域を含有するフラグメントが第3の画分中に存在するような条件下でサイズに従って分画することであり,
マーカー配列を検出することによりセグメントを含有する画分を同定し,ここで,タンデムリピート・セグメントのリピート数はそれが同定される画分によって判定される,
の各工程を含み,ここで
男性個体では:
第1の画分で陽性結果が得られれば個体がキャリアでないことを示し,
第2の画分で陽性結果が得られれば個体が前変異キャリアであることを示し,
第3の画分で陽性結果が得られれば個体が罹患していることを示し;そして
女性個体では:
第1の画分でのみ陽性結果が得られれば個体が正常対立遺伝子に関してホモ接合性であることを示し,
第2の画分で陽性結果が得られれば個体が前変異キャリアであることを示し;そして
第3の画分で陽性結果が得られれば個体が完全変異キャリアであることを示す,
ことを特徴とする,請求項65記載の方法。
【請求項67】
該性別を確認するためのアッセイは核酸の増幅を含む,請求項65記載の方法。
【請求項68】
該核酸増幅は,
アメロゲニン遺伝子の領域を増幅させて,X染色体上のアメロゲニン遺伝子およびY染色体上のアメロゲニン遺伝子から異なるサイズの増幅産物を生成させ,
増幅産物のサイズを測定し,ここで1つのサイズの産物が存在すれば性別が女性であることを示し,2つの異なるサイズの産物が存在すれば性別が男性であることを示す,
ことを特徴とする,請求項67記載の方法。
【請求項69】
該アメロゲニン遺伝子領域の増幅はFMR1遺伝子のタンデムリピート領域の多重増幅によって行う,請求項67記載の方法。
【請求項70】
該多重増幅は1つまたはそれ以上のコントロール配列を増幅することをさらに含む,請求項69記載の方法。
【請求項71】
該分離工程の後に,該タンデムリピート・セグメントおよび該マーカー配列を含有するフラグメント中のタンデムリピート・セグメントの全部または一部を該マーカー配列から切断することをさらに含む,請求項66記載の方法。
【請求項72】
サンプル中の特定の核酸セグメントのサイズを検出するためのキットであって,特定の核酸セグメントの上流または下流にあるマーカーヌクレオチド配列を増幅するためのプライマー対,および核酸サンプルを切断して,特定の核酸セグメントおよびその上流または下流にあるマーカー配列を含有する核酸サンプルのフラグメントを生成させるための1つまたはそれ以上の制限エンドヌクレアーゼを含み,ここで,該特定の核酸セグメントはタンデムリピート配列であることを特徴とする上記キット。
【請求項73】
特定の核酸セグメントをマーカー配列から分離させるための1つまたはそれ以上の制限酵素をさらに含む,請求項72記載のキット。
【請求項74】
制限エンドヌクレアーゼで消化した核酸の適切なサイズ分離が行われていることを確認するための1つまたはそれ以上のコントロールをさらに含む,請求項72記載のキット。
【請求項75】
タンデムリピート・セグメントはFMR1遺伝子由来である,請求項72記載のキット。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−505413(P2010−505413A)
【公表日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−531370(P2009−531370)
【出願日】平成19年4月11日(2007.4.11)
【国際出願番号】PCT/US2007/008985
【国際公開番号】WO2008/045136
【国際公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【出願人】(505063050)クエスト ダイアグノスティックス インヴェストメンツ インコーポレイテッド (20)
【出願人】(509095710)
【Fターム(参考)】