説明

核酸分子を検出するための迅速な方法

本発明は、マイクロアレイを使用する核酸分子の検出の分野に関する。本発明は、マイクロアレイ上に固定されたプローブに細胞溶解物を直接ハイブリダイズさせることによって、核酸精製を全く伴わずに、生物学的サンプル中の標的核酸分子を検出するための方法を提供する。本発明の目的は、さらなる精製を何ら伴わずにマイクロアレイと細胞溶解物を直接ハイブリダイゼーションすることによって、核酸を検出するための迅速な方法を提供することである。この方法は、簡単、低コストで、操作に都合がよく、汚染されず、そして一体化が容易である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
(1.発明の分野)
本発明は、マイクロアレイ上で核酸分子を検出するための迅速な方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(2.関連技術の説明)
核酸分子の間のハイブリダイゼーションは、生物学的研究および臨床医学において、標的核酸配列を検出するための有用な道具である。ハイブリダイゼーションを調製するために、通常、核酸を他の細胞成分から単離または精製することが必要である。単離プロセスまたは精製プロセスは、種々の機器(例えば、遠心分離機、冷蔵庫、および電気泳動機器)を必要とし、時間がかかる。多くの場合、このプロセスは数時間または数日間さえもかかり、迅速な核酸検出のためには有用でない。細胞溶解物から核酸を抽出および精製するためのいくつかの自動ワークステーション(例えば、Biorobot9600およびBiorobot9604(Qiagen))が開発されているが、これらの機械は高価であり、1つのサンプルの精製のために依然として比較的長い時間を必要とする。
【0003】
1991年に学術誌のScienceで、Fodor博士が初めてDNAチップを報告してから、DNAチップ技術またはバイオチップ技術が、急速に開発されている(非特許文献1;非特許文献2)。種々のバイオチップが開発されており(非特許文献)、それらは生命科学研究において重要な役割を果たしている。
【0004】
多くの場合、生化学的反応および生化学的分析は、3つの工程(サンプル調製、生化学的反応、ならびにシグナル検出およびデータ分析)を包含する。生化学的分析の全ての工程をチップ上で行って微量分析系またはラボオンチップ(lab−on−chip)系を作製する努力がなされてきた。このような微量分析系またはラボオンチップ系を使用して、閉鎖系においてサンプルの調製からのすべての分析工程を迅速に完了して分析結果を獲得することが、可能である。
【0005】
「ラボオンチップ」系を達成する際の困難のうちの1つは、核酸の抽出および精製であり、核酸の抽出および精製は、長時間かかるだけでなく、微小デバイス中で処理されることが困難である。従って、この制限を克服する必要性が存在する。
【0006】
1998年にChengらは、E.Coli由来の核酸を調製するための方法を開発し、DNAチップ上でハイブリダイゼーション分析を行った(非特許文献4)。上記方法は、細菌を電子パルスで溶解し、次いで細菌溶解物を希釈してプロテイナーゼKによって消化することによって、DNAチップを使用した細菌溶解物のハイブリダイゼーションを可能にする。サンプル調製、生物学的反応、および検出の一体化が達成されたのは、これが最初である。しかし、この方法は、プロテイナーゼを使用して細胞溶解物からタンパク質を除去する工程を依然として必要とする。
【非特許文献1】Fodorら、Science 251:767−773(1991)
【非特許文献2】Marshallら、Nat.Biotechnol.16:27−31(1998)
【非特許文献3】Chengら、Mol.Diagn.1:183−200(1996)
【非特許文献4】Chengら、Nature Biotechnology 16:541−546(1998)
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
核酸分子の迅速な検出は、生命科学および臨床診断(特に、感染症の臨床診断)における研究のために重要である。例えば、病院での感染性細菌の検出は、培養、純粋培養、およびいくつかの生化学的検出を必要とする。この検出には数日間かかり、患者にとって不利である。本発明は、90分間以下しかかからずに明白かつ正確な結果を得るための迅速な方法を提供する。本発明は、2つの工程(生物学的サンプルの溶解、およびマイクロアレイとのハイブリダイゼーション)のみしか用いずに明白な結果を得、小型化系、および自動化系において容易に適用され得る。
【0008】
(発明の要旨)
本発明の目的は、さらなる精製を何ら伴わずにマイクロアレイと細胞溶解物を直接ハイブリダイゼーションすることによって、核酸を検出するための迅速な方法を提供することである。この方法は、簡単、低コストで、操作に都合がよく、汚染されず、そして一体化が容易である。
【0009】
例示的な実施形態において、上記細胞溶解物は、さらなる精製を全く伴わずにマイクロアレイ上でプローブと直接ハイブリダイゼーションされ得る;従って、本方法の全体の手順は、簡単で時間がかからない。この方法において、上記細胞サンプルは、標的核酸を標識するための物質を含有する溶解緩衝液中で、物理的方法、化学的方法、または生物学的方法によってまず溶解される;次いで、上記細胞溶解物は、さらなる精製を全く伴わずにマイクロアレイとハイブリダイズされて、標的核酸配列を検出する。
【0010】
1つの局面において、本発明は、標的核酸分子を検出するための方法に関し、上記方法は、以下の工程を包含する:a)溶解緩衝液において生物学的サンプル中の細胞を溶解して、上記細胞から上記標的核酸分子を放出する工程を包含する、細胞溶解物を調製する工程;b)工程a)からの細胞溶解物を、核酸の精製を伴わずに、固体基材上に固定された核酸プローブとともに、上記標的核酸分子と上記プローブとの間のハイブリダイゼーションを可能にする条件下でインキュベートする工程であって、上記核酸プローブは上記標的核酸分子に対して相補的な配列を含む、工程;c)上記標的核酸分子と上記プローブとの間のハイブリダイゼーションを評価して、上記標的核酸分子の存在、非存在および/または量を決定する工程。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(発明の詳細な説明)
限定するためではなく、開示を明瞭にするために、本発明の詳細な説明を以下の小節中に分ける。
【0012】
(A.定義)
他に定義されない限り、本明細書中にて使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野において当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書中で参照される全ての特許、出願、公開された出願および他の刊行物は、参考として全体が援用される。この節に記載される定義が、本明細書中に参考として援用される特許、出願、公開された出願および他の刊行物に記載される定義に反するかあるいは他のように矛盾する場合、この節に記載される定義が、本明細書中に参考として援用される定義より優先する。
【0013】
本明細書中に使用される場合、「a」または「an」とは、「少なくとも1つ」または「1つ以上」を意味する。
【0014】
本明細書中で使用される場合、「核酸」とは、任意の形態のデオキシリボ核酸(DNA)および/またはリボ核酸(RNA)をいい、特に一本鎖、二重鎖、三重鎖、直鎖、および環状の形態を含む。「核酸」はまた、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、核酸のキメラ、およびそのアナログも含む。本明細書中に記載の核酸は、塩基であるアデノシン、シトシン、グアニン、チミジンおよびウリジンからなる、周知のデオキシリボヌクレオチドおよびリボヌクレオチドから構成され得るか、またはこれらの塩基のアナログもしくは誘導体から構成され得る。さらに、非従来的なホスホジエステル骨格を有する種々の他のオリゴヌクレオチド誘導体もまた、本明細書中に含まれ、これらとしては、例えば、ホスホトリエステル、ポリヌクレオペプチド(PNA)、メチルホスホネート、ホスホロチオネート、ポリヌクレオチドプライマー、ロックされた核酸(LNA)などが挙げられる。
【0015】
本明細書中で使用される場合、「プライマー」とは、標的配列にハイブリダイズし、代表的には増幅プロセスにおいて核酸をプライムするオリゴヌクレオチドをいう。
【0016】
本明細書中で使用される場合、「プローブ」とは、標的配列にハイブリダイズし、代表的にはその検出を容易にするオリゴヌクレオチドをいう。用語「標的配列」または「標的核酸分子」とは、プローブが特異的に結合する核酸配列をいう。増幅プロセスにおいて標的核酸にプライムするために使用されるプライマーとは異なり、プローブは、ポリメラーゼ酵素を使用して標的配列を増幅するために伸長される必要はない。しかし、当業者には、多くの場合においてプローブとプライマーとが構造的に同様であるかまたは同一であることから明らかである。
【0017】
本明細書中で使用される場合、「サンプル」とは、本発明のデバイスおよび/または方法を用いて分析される分析物を含み得る、任意のものをいう。このサンプルは、生物学的サンプル(例えば、生物学的流体および生物学的組織)であり得る。生物学的流体の例としては、尿、血液、血漿、血清、唾液、精液、便、痰、脳脊髄液、涙液、粘液、羊水などが挙げられる。生物学的組織は、通常、細胞内物質を一緒に備える特定の種類の細胞の凝集体であり、ヒト、動物、植物、細菌、真菌またはウイルス構造の構造材料の1つ(結合組織、上皮組織、筋組織および神経組織が挙げられる)を形成する。生物学的組織の例はまた、器官、腫瘍、リンパ節、動脈および個々の細胞を含む。生物学的組織は、細胞懸濁サンプルを得るために処理されてもよい。このサンプルは、インビトロで調製された細胞の混合物であってもよい。このサンプルはまた、培養細胞懸濁液であってもよい。生物学的サンプルの場合、このサンプルは粗製のサンプルであってもよいし、元のサンプルに対する種々の処理または調製後に得られる処理されたサンプルであってもよい。例えば、種々の細胞分離法(例えば、磁気的に活性化された細胞のソーティング)が、体液サンプル(例えば、血液)から標的細胞を分離または濃縮するために適用され得る。本発明のために使用されるサンプルは、このような標的細胞を濃縮した細胞調製物を含む。
【0018】
本明細書中で使用される場合、「核酸精製を伴わずに」とは、生物学的サンプル中の細胞が溶解緩衝液中に溶解された後に、上記細胞から放出された核酸分子が、それらが固体支持体上に固定されたプローブにハイブリダイズされる前に、溶解物から精製、単離、または抽出されていないことを意味する。
【0019】
本明細書中で使用される場合、「相補的またはマッチした(matched)」とは、2つの核酸配列が少なくとも50%の配列同一性を有することを意味する。好ましくは、上記2つの核酸配列は、少なくとも60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する。「相補的またはマッチした」とはまた、2つの核酸配列が低いストリンジェンシー、中程度のストリンジェンシーおよび/または高いストリンジェンシーの条件下でハイブリダイズし得ることを意味する。
【0020】
本明細書中で使用される場合、「実質的に相補的または実質的にマッチした」とは、2つの核酸配列が少なくとも90%の配列同一性を有することを意味する。好ましくは、上記2つの核酸配列は、少なくとも95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する。あるいは、「実質的に相補的または実質的にマッチした」とは、2つの核酸配列が高いストリジェンシー条件下でハイブリダイズし得ることを意味する。
【0021】
本明細書中で使用される場合、「2つの完全にマッチしたヌクレオチド配列」とは、2つのヌクレオチド鎖がWatson−Crick塩基対の原理(すなわち、DNA:DNA二重鎖においてA−T対およびC−G対、ならびにDNA:RNA二重鎖またはRNA:RNA二重鎖においてA−U対およびC−G対)に従ってマッチし、その2つの鎖の各々で欠失も付加もない核酸二重鎖をいう。
【0022】
本明細書中で使用される場合、ミスマッチの百分率を決定することにおける「ハイブリダイゼーションのストリンジェンシー」とは、以下の通りである:
1)高いストリンジェンシー:0.1×SSPE(または0.1×SSC)、0.1%SDS、65℃;
2)中程度のストリンジェンシー:0.2×SSPE(または1.0×SSC)、0.1%SDS、50℃(穏やかなストリンジェンシーともいう);および
3)低いストリンジェンシー:1.0×SSPE(または5.0×SSC)、0.1%SDS、50℃。
【0023】
等価なストリンジェンシーが、代替的な緩衝液、塩および温度を用いて達成され得ることが、理解される。
【0024】
本明細書中で使用される場合、「遺伝子」とは、染色体上の特定の座を占める遺伝形質の単位をいい、その存在は、異なる対立遺伝子形態の出現によって確認され得る。分断された遺伝子の出現を考慮すると、遺伝子はまた、単一のポリペプチドを生成するために必要とされるDNA配列(エキソン)のセットを包含する。
【0025】
本明細書中で使用される場合、「融解温度」(「Tm」)とは、核酸二重鎖(すなわち、DNA:DNA、DNA:RNA、RNA:RNA、PNA:DNA、LNA:RNAおよびLNA:DNAなど)が変性される温度範囲の中間点をいう。
【0026】
本明細書中で使用される場合、用語「評価する」とは、サンプル中に存在する分析物の定量的測定および/または定性的測定を包含することが意図され、サンプル中の分析物のレベルを示す指数、比率、パーセンテージ、視覚的値または他の値を得ることでもある。評価は、直接であっても間接であってもよく、実際に検出される化学種は、もちろん分析物それ自体である必要はないが、例えば、その誘導体または何らかのさらなる物質であり得る。
【0027】
(B.標的核酸分子を検出するための方法)
1つの局面において、本発明は、標的核酸分子を検出するための方法を提供し、上記方法は、以下の工程を包含する:a)溶解緩衝液において生物学的サンプル中の細胞を溶解して、上記細胞から上記標的核酸分子を放出する工程を包含する、細胞溶解物を調製する工程;b)工程a)からの細胞溶解物を、核酸の精製を伴わずに、固体基材上に固定された核酸プローブとともに、上記標的核酸分子と上記プローブとの間のハイブリダイゼーションを可能にする条件下でインキュベートする工程であって、上記核酸プローブは上記標的核酸分子に対して相補的な配列を含む、工程;c)上記標的核酸分子と上記プローブとの間のハイブリダイゼーションを評価して、上記標的核酸分子の存在、非存在および/または量を決定する工程。
【0028】
本発明の方法は、概して核酸検出(例えば、臨床細菌の検出および同定、薬物耐性細菌の検出、環境検出、法医学的検出、および遺伝子発現の分析など)において使用され得る。
【0029】
(細胞溶解物の調製)
任意の生物学的サンプル中の標的核酸分子が、本明細書中に記載の方法を使用して検出され得る。任意の適切な生物学的サンプル(ヒト起源のサンプル、動物起源のサンプル、または環境(例えば、土または水)起源のサンプルを含む)が、本方法を使用して分析され得る。生物学的サンプルとしては、体液(例えば、尿、血液、精液、脳脊髄液、膿、羊水、涙)、または半固体もしくは流体の放出物(例えば、痰、唾液、肺吸引物、膣または尿道の放出物、便)、または固体組織サンプル(例えば、生検または絨毛膜絨毛標本)が挙げられる。生物学的サンプルとしてはまた、皮膚、生殖器、または咽喉からスワブを使用して回収されたサンプルが挙げられる。いくつかの実施形態において、上記生物学的サンプルは、非ウイルス性生物、生物学的組織、真核生物細胞、または原核生物細胞である。
【0030】
標的核酸分子を含む生物学的サンプル中の細胞は、任意の公知の方法(例えば、物理的方法、化学的方法、生物学的方法、またはその任意の組み合わせ)を使用して、溶解緩衝液中で溶解され得る。例示的な物理的方法としては、粉砕、超音波溶解、高温による溶解、および凍結が挙げられる。例示的な化学的方法としては、タンパク質変性剤または界面活性剤による溶解が挙げられる。例示的な生物学的方法としては、プロテイナーゼまたはリゾチームによる溶解が挙げられる。
【0031】
いくつかの実施形態において、調製された細胞溶解物は、界面活性剤、タンパク質変性剤、緩衝液、ヌクレアーゼインヒビター、塩、およびその組み合わせからなる群より選択される薬剤を含む。
【0032】
本発明の標的核酸分子は、ゲノムDNA、プラスミド、ミトコンドリアDNA、葉緑体DNA、メッセンジャーRNA、リボソームRNA、および核内低分子RNAであり得る。
【0033】
(ハイブリダイゼーション条件)
上記のように調製された細胞溶解物は、核酸の精製も抽出も伴わずに、固体基材上に固定された核酸プローブとともに、上記標的核酸分子と上記プローブとの間のハイブリダイゼーションを可能にする条件下でインキュベートされ得る。
【0034】
いくつかの実施形態において、上記細胞溶解物は、上記基材上に固定されたプローブとともに、ハイブリダイゼーションのために、上記溶解緩衝液中でインキュベートされる。
【0035】
他の実施形態において、上記細胞溶解物が上記プローブとともにインキュベートされる前に、ハイブリダイゼーションを助けるための薬剤が、上記細胞溶解物に添加される。このような薬剤は、NaCl、クエン酸ナトリウム、およびSDSであり得る。
【0036】
ハイブリダイゼーションは、当該分野で公知の任意の適切な技術に基づいて実施され得る。ハイブリダイゼーション条件が、(すなわち、ハイブリダイゼーション、または洗浄の塩濃度もしくは温度を変更することによって)ハイブリダイゼーションの程度、ハイブリダイゼーションの特異性のレベル、および非特異的結合のバックグラウンドレベルを増加または減少させるために変更され得ることは、当業者には明らかである。上記プローブと上記標的ヌクレオチド配列との間のハイブリダイゼーションは、任意の適切なストリンジェンシー(高いストリンジェンシー、中程度のストリンジェンシー、または低いストリンジェンシーを含む)下で実施され得る。代表的には、ハイブリダイゼーションは、高いストリンジェンシーの条件下で行われる。
【0037】
上記プローブと上記標的核酸との間のハイブリダイゼーションは、均質(例えば、分子ビーコンにおいて使用される代表的条件(Tyagi S.ら,Nature Biotechnology,14:303−308(1996);および米国特許第6,150,097号)、およびハイブリダイゼーション保護アッセイ(Gen−Probe,Inc)(米国特許第6,004,745号)において使用される代表的条件)でも不均質(異なる型のニトロセルロースベースのハイブリダイゼーションにおいて使用される代表的条件および磁性ビーズベースのハイブリダイゼーションにおいて使用される代表的条件)でもあり得る。
【0038】
上記標的ポリヌクレオチド配列は、高〜低ストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件および洗浄条件下で標的配列のオリゴヌクレオチドと安定なハイブリッドを形成するオリゴヌクレオチドプローブとのハイブリダイゼーションによって、検出され得る。ハイブリダイゼーションによる検出の利点は、使用されるプローブに依存して、さらなる特異性が可能であることである。上記プローブが上記標的配列に対して完全に相補的である(すなわち、約99%以上)ことが予想される場合、高いストリンジェンシー条件が使用される。いくらかのミスマッチが予想される場合、例えば、上記プローブが完全には相補的でないという結果から改変体株が予想される場合、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーは、低くされ得る。しかし、非特異的ハイブリダイゼーションを最小化または排除するための条件が選択される。
【0039】
ハイブリダイゼーションに影響する条件および非特異的ハイブリダイゼーションに対して選択する条件は、当該分野で公知である(Molecular Cloning A Laboratory Manual,第2版,J.Sambrook,E.Fritsch,T.Maniatis,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989)。概して、より低い塩濃度およびより高い温度は、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーを高める。例えば、一般に、ストリジェントなハイブリダイゼーション条件としては、約0.1×SSC、0.1%SDSを含む溶液中での約65℃のインキュベーション温度/洗浄温度におけるインキュベーションが挙げられる。中程度のストリンジェンシー条件は、約1×SSC〜2×SSC、0.1%SDSを含む溶液中での約50℃〜65℃のインキュベーション温度/洗浄温度におけるインキュベーションである。低いストリジェンシー条件は、2×SSCかつ約30℃〜50℃である。
【0040】
ハイブリダイゼーションおよび洗浄の代替的方法は、まず低いストリンジェンシーハイブリダイゼーション(5×SSPE、0.5%SDS)を実施し、続いて3M塩化テトラメチルアンモニウム(TMAC)の存在下で高いストリンジェンシー洗浄を実施することである。TMACの効果は、A−T塩基対およびG−C塩基対の相対的結合を等しくして、所定の温度におけるハイブリダイゼーションの効率が、ポリヌクレオチドの長さとより厳密に対応するようにすることである。TMACを使用して、洗浄の温度を変動させて所望のストリンジェンシーのレベルを達成することが、可能である(Woodら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,82:1585−1588(1985))。
【0041】
ハイブリダイゼーション溶液は、25%ホルムアミド、5×SSC、5×デンハルト溶液、100μg/mlの一本鎖DNA、5%硫酸デキストラン、またはプローブハイブリダイゼーションに有用であることが公知の他の試薬を含有し得る。
【0042】
(プローブ)
本発明は、固体基材上に固定された、標的核酸分子に相補的な配列を含む核酸プローブを提供する。
【0043】
いくつかの実施形態において、固体基材に固定された上記核酸プローブは、一本鎖オリゴヌクレオチドまたは二本鎖RCR産物を含む。
【0044】
上記オリゴヌクレオチドプローブは、任意の適切な方法によって作製され得る。例えば、上記プローブは、化学的に合成され得る(一般的には、Ausubel(編)Current Protocols in Molecular Biology,2.11.Synthesis and purification of oligonucleotides,John Wiley & Sons,Inc.(2000)を参照のこと)か、天然の供給源から単離され得るか、組換え方法またはそれらの組み合わせによって作製され得る。合成オリゴヌクレオチドはまた、Matteucciら,J.Am.Chem.Soc.,3:3185−3191(1981)のトリエステル方法を使用することによって調製され得る。あるいは、例えば、シアノエチルホスホロアミダイトの化学作用を使用したApplied Biosynthesis DNA合成機上での自動合成も好ましくあり得る。好ましくは、プローブは化学的に合成される。
【0045】
本発明のオリゴヌクレオチドプローブを調製するために適切な塩基は、アデニン、シトシン、グアニン、ウラシル、およびチミンのような天然に存在するヌクレオチド塩基から選択され得る。そのような塩基は、非天然または「合成」のヌクレオチド塩基(例えば、8−オキソ−グアニン、6−メルカプトグアニン、4−アセチルシチジン、5−(カルボキシヒドロキシエチル)ウリジン、2’−O−メチルシチジン、5−カルボキシメチルアミノ−メチル−2−チオリジン、5−カルボキシメチルアミノメチルウリジン、ジヒドロウリジン、2’−O−メチルシュードウリジン、β−D−ガラクトシルキューオシン、2’−Oメチルグアノシン、イノシン、N6−イソペンテニルアデノシン、1−メチルアデノシン、1−メチルプソイドリジン、1−メチルグアノシン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアノシン、2−メチルアデノシン、2−メチルグアノシン、3−メチルシチジン、5−メチルシチジン、N6−メチルアデノシン、7−メチルグアノシン、5−メチルアミノメチルウリジン、5−メトキシアミノメチル−2−チオウリジン、β−D−マンノシルキューオシン、5−メトキシカルボニルメチルウリジン、5−メトキシウリジン、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデノシン、N−((9−β−D−リボフラノシル−2−メチルチオプリン−6−イル)カルバモイル)スレオニン、N−((9−β−D−リボフラノシルプリン−6−イル)N−メチルカルバモイル)スレオニン、ウリジン−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウリジン−5−オキシ酢酸、ワイブトキソシン、プソイドリジン、キューオシン、2−チオシチジン、5−メチル−2−チオウリジン、2−チオウリジン、2−チオウリジン、5−メチルウリジン、N−((9−β−D−リボフラノシルプリン−6−イル)カルバモイル)スレオニン、2’−O−メチル−5−メチルウリジン、2’−O−メチルウリジン、ワイブトシン、および3−(3−アミノ−3−カルボキシプロピル)ウリジン)からもまた、選択され得る。
【0046】
同様に、オリゴヌクレオチドの化学的アナログ(例えば、ホスホジエステル結合が、例えば、メチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、またはホスホロアミデートに改変されているオリゴヌクレオチド)もまた、使用され得る。分解からの保護は、ヌクレアーゼ耐性結合が、オリゴヌクレオチドの3’末端においてホスホジエステル結合の代わりになるように置換されている「3’末端キャップ」戦略の使用によって達成され得る(Shawら,Nucleic Acids Res.,19:747(1991))。ホスホロアミデート結合、ホスホロチオエート結合、およびメチルホスホネート結合は全て、適切にこの様式で機能する。ホスホジエステル骨格のより広範な改変は、安定性を与えることが示されており、親和性を上昇させ、オリゴヌクレオチドの細胞浸透を増加させることが可能であり得る(Milliganら,J.Med.Chem.,36:1923(1993))。多くの異なる化学的戦略が、ホスホジエステル骨格全体を新規の結合で置き換えるために適用されている。骨格アナログとしては、ホスホロチオエート結合、ホスホロジチオエート結合、メチルホスホネート結合、ホスホロアミデート結合、ボラノホスフェート結合、ホスホトリエステル結合、ホルムアセタール結合、3’−チオホルムアセタール結合、5’−チオホルムアセタール結合、5’−チオエーテル結合、カルボネート結合、5’−N−カルバメート結合、スルフェート結合、スルホネート結合、スルファメート結合、スルホンアミド結合、スルホン結合、スルファイド結合、スルホキシド結合、スルフィド結合、ヒドロキシルアミン結合、メチレン(メチルイミノ)(MMI)結合またはメチレンオキシ(メチルイミノ)(MOMI)結合が挙げられる。ホスホロチオエート改変オリゴヌクレオチドおよびメチルホスホネート改変オリゴヌクレオチドは、自動化オリゴヌクレオチド合成を通じて利用できることに起因して、特に好ましい。上記オリゴヌクレオチドは、(Milliganら,J.Med.Chem.,36:1923(1993))によって記載されるような「ペプチド核酸」であり得る。唯一必要なことは、上記オリゴヌクレオチドプローブは、少なくとも一部が標的DNA分子の配列の一部分に結合し得る配列を有するべきであることである。
【0047】
ハイブリダイゼーションプローブは、任意の適切な長さであり得る。プローブが標的核酸にハイブリダイズしてプローブとして効果的に機能(例えば、検出を促進する)する限り、プローブの長さには下限も上限もない。本発明のプローブは、50ヌクレオチドヌクレオチド、40ヌクレオチド、30ヌクレオチド、20ヌクレオチド、15ヌクレオチド、または10ヌクレオチド、またはそれ以下の長さであり得る。同様に、上記プローブは、20ヌクレオチド、40ヌクレオチド、50ヌクレオチド、60ヌクレオチド、75ヌクレオチド、100ヌクレオチドまたは200ヌクレオチド以上の長さ(例えば、標的配列の全長まで)であり得る。一般に、上記プローブは、相補的な標的核酸鎖のどちらか一方の少なくとも14ヌクレオチド、好ましくは少なくとも18ヌクレオチド、およびより好ましくは少なくとも20〜30ヌクレオチドを有し、ヘアピン二次構造を全く含まない。特定の実施形態において、上記プローブは、少なくとも30ヌクレオチドまたは少なくとも50ヌクレオチドの長さを有し得る。完全に相補的である場合、すなわち、その鎖がプローブの配列と同一の配列を含む場合、その二重鎖は、ストリンジェントな条件下でさえ比較的安定であり、プローブは短いもの(すなわち、約10塩基対〜30塩基対の範囲)であり得る。プローブ中でいくらかのミスマッチの程度が予想される場合、すなわち、上記プローブが改変体領域または配列の群(例えば、特定の属の中の全ての種)にハイブリダイズすることが疑われる場合、プローブは、ミスマッチの効果を平均させるためにより長いもの(すなわち、15〜40塩基)であり得る。
【0048】
(プローブの固定)
上記プローブは、固体基材または固体支持体(例えば、ナイロンフィルム、ピロキシリンフィルム、シリコーン、ガラス、セラミック、金属、プラスチック、およびその組み合わせ)上に固定され得る。他の適切な固体基材または固体支持体としては、ゴム表面またはポリマー表面が挙げられる。上記プローブはまた、3次元多孔性ゲル基材(例えば、Packard HydroGelチップ(Broudeら,Nucleic Acids Res.,29(19):E92(2001))において固定され得る。
【0049】
いくつかの実施形態において、上記固体基材は、複数の核酸プローブを含み、この複数の核酸プローブは、この固体基材上に固定されてアレイを形成する。
【0050】
いくつかの実施形態において、上記複数の核酸プローブは、異なるヌクレオチド配列を有する。いくつかの実施形態において、異なるプローブの数は、約2個〜約100,000個である。
【0051】
いくつかの実施形態において、上記アレイの面積は、約0.01mm〜約100cmである。
【0052】
いくつかの実施形態において、上記アレイは、二次元アレイ、三次元アレイ、または四次元アレイである。
【0053】
アレイベースのアッセイのために、上記プローブは、固体支持体(例えば、「バイオチップ」)上に好ましくは固定される。この固体支持体は、粒子、鎖、沈殿、ゲル、シート、チュービング、球、容器、キャピラリー、パッド、切片、フィルム、プレート、スライドなどとして存在する、生物学的支持体、非生物学的支持体、有機的支持体、無機的支持体または任意のこれらの組み合わせ支持体であり得る。
【0054】
プローブのライブラリーを含むマイクロアレイバイオチップは、多くの周知のアプローチによって調製され得る。これらのアプローチとしては、例えば、光指向性(light−directed)方法(例えば、米国特許第5,143,854号、同第5,384,261号または同第5,561,071号に記載されるVLSIPSTM;ビーズベースの方法(例えば、米国特許第5,541,061号に記載される);およびピンベースの方法(例えば、米国特許第5,288,514号、同第5,556,752号に詳述され、これらの文献はVLSIPSTMを使用したマイクロアレイとしての異なる二本鎖プローブのライブラリーの調製を詳述する)が挙げられ、マイクロアレイにおいてヘアピンプローブのライブラリーを調製するためにも適切である。
【0055】
米国特許第5,677,195号および同第5,384,261号などに記載されるフローチャネル方法が、種々の異なるプローブを有するマイクロアレイバイオチップを調製するために使用され得る。この場合において、基材の特定の活性化領域は、プローブがフローチャネルを通じて支持体に送達される場合、機械的に他の領域から分離される。フローチャネル方法の詳細な説明は、米国特許第5,556,752号において見出され得、米国特許第5,556,752号は、指定された流れ経路を通じた液体の有向チャネリングを促進するための保護コーティング湿潤促進剤の使用を包含する。
【0056】
スポッティング方法もまた、種々のプローブが、固定されたマイクロアレイバイオチップを調製するために使用され得る。この場合において、反応物質は、支持体の選択された領域に比較的少量を直接配置することによって送達される。もちろん、いくつかの工程において、支持体表面の全体は、特定の溶液を噴霧され得るか、または別の方法で特定の溶液でコーティングされ得る。特定の形式において、ディスペンサーは、領域から領域に移動して、各スポットにおいて必要とされるのと等しい量のプローブまたは他の試薬のみを配置させる。代表的なディスペンサーは、プローブ含有溶液または他の流体を支持体に送達するためのマイクロピペット、ナノピペット、インクジェット型のカートリッジおよびピンと、必要に応じて、上記支持体に関してこれら送達デバイスの位置を制御するためのロボット系とを備える。他の形式において、上記ディスペンサーは、一連のチューブまたは複数のウェルトレイ、マニホールド、および一群の送達デバイスを備え、その結果、種々の試薬が同時に反応領域に送達され得る。スポッティング方法は、当該分野で周知であって、例えば、米国特許第5,288,514号、同第5,312,233号および同第6,024,138号に記載される方法が挙げられる。いくつかの場合において、フローチャネルと支持体のあらかじめ規定された領域上での「スポッティング」の組み合わせがまた使用され、固定されたプローブを備えたマイクロアレイバイオチップを調製し得る。
【0057】
プローブを固定するための固体支持体は、好ましくは平らであるが、代替的表面構造であり得る。例えば、上記固体支持体は、プローブ合成が起こるか、もしくはプローブが付着する、隆起した領域またはくぼんだ領域を含み得る。いくつかの実施形態において、上記固体支持体は、適切な光吸収特徴を提供するように選択され得る。例えば、上記支持体は、重合化Langmuir Blodgettフィルム、ガラス、または官能基化ガラス、Si、Ge、GaAs、GaP、SiO、SiN、改変シリコン、または種々のゲルもしくはポリマー(例えば、(ポリ)テトラフルオロエチレン、(ポリ)ビニリデンジフルオライド、ポリスチレン、ポリカーボネート)のうちの任意の1つ、またはそれらの組み合わせが挙げられる。他の適切な固体支持体材料は、当業者には容易に明らかである。
【0058】
上記固体支持体の表面は、オリゴヌクレオチドまたは核酸に結合された反応基に結合するために適切な反応基(カルボキシル基、アミノ基、ヒドロキシル基、チオール基などが挙げられる)を含み得る。好ましくは、表面は必要に応じて透明であり、表面Si−OH官能基(例えば、シリカ表面上で見出される)を有する。
【0059】
上記プローブは、化学的手段または物理的手段(例えば、イオン力、共有結合力または当該分野で周知の他の力)によって支持体上に付着され得る。核酸およびオリゴヌクレオチドの固定は、当該分野で周知の任意の手段によって達成され得る(例えば、Dattaguptaら,Analytical Biochemistry,177:85−89(1989);Saikiら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,86:6230−6234(1989);およびGravittら,J.Clin.Micro.,36:3020−3027(1998)を参照のこと)。
【0060】
上記プローブは、スペーサー分子(例えば、Lockhartらに対する米国特許第5,556,752号に記載される)によって支持体上に付着され、プローブの二本鎖部分の間に、ハイブリダイゼーションアッセイにおいて役立ち得るような空間を提供し得る。スペーサー分子は、代表的には、6原子長〜50原子長を含み、支持体に付着する表面付着部分を有する。支持体への付着は、例えば、(ポリ)トリフルオロクロロエチレン表面を有する支持体を使用した炭素−炭素結合によってか、または好ましくは、シロキサン結合(例えば、固体支持体としてガラスまたはシリコン酸化物を使用する)によって達成され得る。シロキサン結合は、支持体をスペーサーのトリクロロシリル基またはトリアルコキシシリル基と反応させることによって形成され得る。アミノアルキルシランおよびヒドロキシアルキルシラン、ビス(2−ヒドロキシエチル)−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−ヒドロキシエチルアミノプロピルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシランまたはヒドロキシプロピルトリエトキシシランが、表面付着基として有用である。
【0061】
上記スペーサーはまた、プローブの表面付着部分に付着した伸長部分またはより長い鎖部分を含み得る。例えば、アミン基、ヒドロキシル基、チオール基およびカルボキシル基が、スペーサーの伸長部分が表面付着部分に付着するために適切である。スペーサーの伸長部分は、ポリマー合成のためのその後のどの条件に対しても不活性な種々の分子のいずれかであり得る。これらのより長い鎖部分は、代表的には、アリールアセチレン、2個〜14個のモノマー単位を含むエチレングリコールオリゴマー、ジアミン、二酸、アミノ酸、ペプチド、またはその組み合わせである。
【0062】
いくつかの実施形態において、上記スペーサーの伸長部分は、ポリヌクレオチドであるか、またはスペーサー全体がポリヌクレオチドであり得る。スペーサーの伸長部分はまた、ポリエチレングリコール、ポリヌクレオチド、アルキレン、ポリアルコール、ポリエステル、ポリアミン、ポリホスホジエステルおよびその組み合わせから構築され得る。さらに、プローブを合成する際に使用するために、上記スペーサーは、スペーサーの(固体支持体と反対側の)遠位端または末端上の官能基(例えば、ヒドロキシル基、アミノ基またはカルボン酸)に付着された保護基を有し得る。脱保護およびカップリングの後、その遠位端は、オリゴマーまたはプローブに共有結合され得る。
【0063】
本方法は、単一のサンプルを、単一のプローブを使用して一度に分析するために使用され得る。好ましくは、上記方法は、高スループット形式において実行される。例えば、複数のサンプルが、単一のプローブを使用して同時に分析され得るか、または単一のサンプルが、複数のプローブを使用して同時に分析され得る。より好ましくは、複数のサンプルが、複数のプローブを使用して同時に分析され得る。
【0064】
(ハイブリッドの検出)
上記プローブと上記標的核酸との間のハイブリダイゼーションの検出は、当該分野で公知の任意の方法(例えば、プローブ、二次プローブ(またはレポーター)、標的核酸またはそのいくつかの組み合わせを標識すること)によって実施され得、本発明の目的のために適切である。あるいは、上記ハイブリッドは、検出可能な標識の非存在下において質量分析によって検出され得る(例えば、米国特許第6,300,076号)。
【0065】
上記検出可能な標識は、ハイブリダイゼーションの後に直接的または間接的に検出され得る部分である。つまり、検出可能な標識は、測定可能な物理的特性(例えば、蛍光または吸光度)を有するか、または酵素反応に関与する。直接標識を使用して、上記標的ヌクレオチド配列または上記プローブが標識され、そしてそのハイブリッドの形成が、ハイブリッド中の上記標識を検出することによって評価される。間接標識を使用して、二次プローブが標識され、そしてそのハイブリッドの形成が、上記二次プローブともとのハイブリッドとの間に形成された二次ハイブリッドを検出することによって評価される。
【0066】
プローブまたは核酸を標識する方法は、当該分野で周知である。適切な標識としては、発蛍光団、発色団、発光団、放射性同位元素、電子高密度試薬、FRET(蛍光共鳴エネルギー移動)、特異的結合パートナーを有する酵素およびリガンドが挙げられる。特に有用な標識は、以下のような酵素的に活性な基である。例えば、酵素(Wisdom,Clin.Chem.,22:1243(1976));酵素基質(英国特許第1,548,741号);補酵素(米国特許第4,230,797号および同第4,238,565号)および酵素インヒビター(米国特許第4,134,792号);蛍光剤(SoiniおよびHemmila,Clin.Chem.,25:353(1979));フィコビリタンパク質、発光剤(例えば、化学発光剤および生物発光剤)を含む発色団(GorusおよびSchram,Clin.Chem.,25:512(1979)ならびに同書,1531);特異的に結合可能なリガンド(すなわち、タンパク質結合リガンド);抗原;放射性同位元素(例えば、H、35S、32P、125I、および14C)を含む残基。このような標識は、それら自体の物理的特性に基づいて(例えば、蛍光剤、発色団および放射性同位元素)かまたはそれらの反応性特性もしくは結合特性に基づいて(例えば、抗体、酵素、基質、補酵素およびインヒビター)検出される。リガンド標識はまた、オリゴヌクレオチドプローブの固相捕捉のために有用である(すなわち、捕捉プローブ)。例示的な標識としては、ビオチン(標識されたアビジンまたは標識されたストレプトアビジンへの結合によって検出可能)、および西洋ワサビペルオキシダーゼまたはアルカリホスファターゼのような酵素(酵素基質を添加して有色の反応生成物を生成することによって検出可能)が挙げられる。
【0067】
例えば、放射同位体標識されたプローブまたは標的核酸は、オートラジオグラフィによって検出され得る。あるいは、蛍光部分で標識されたプローブまたは標的核酸は、当該分野で公知のように蛍光定量によって検出され得る。ハプテンまたはリガンド(例えば、ビオチン)で標識された核酸は、そのハプテンまたは標識されたリガンドに結合するタンパク質(例えば、アビジン)に、抗体または抗体色素を添加することによって検出され得る。
【0068】
さらなる代替法として、上記プローブまたは核酸は、上記ハイブリダイゼーションを検出するためにさらなる試薬を必要とする部分で標識され得る。上記標識が酵素である場合、上記標識された核酸(例えば、DNA)は、最終的に適切な培地中に配置されて触媒の程度を決定する。例えば、補酵素で標識された核酸は、その標識が補酵素である酵素とその酵素の基質とを添加することによって検出され得る。従って、上記酵素がホスファターゼである場合、上記培地はリン酸ニトロフェニルを含み得、その色を観察することによって、生成されたニトロフェノールの量をモニタリングし得る。上記酵素がβ−ガラクトシダーゼである場合、上記培地はo−ニトロ−フェニル−D−ガラクト−ピラノシドを含み得、このo−ニトロ−フェニル−D−ガラクト−ピラノシドはまたニトロフェノールを遊離し得る。後者の例示的な例としては、β−ガラクトシダーゼ、アルカリホスファターゼ、パパインおよびペルオキシダーゼが挙げられるが、これらに限定されない。インサイチュハイブリダイゼーション研究のために、上記基質の最終産物は、好ましくは水不溶性である。他の標識(例えば、色素)は、当業者にとって明白である。
【0069】
上記標識は、直接化学結合(例えば、共有結合を含む)によってDNA結合リガンド(例えば、アクリジン色素、フェナントリジン、フェナジン、フロクマリン、フェノチアジンおよびキノリン)に直接連結され得るか、または間接的結合(例えば、マイクロカプセルまたはリポソームにおいて標識を取り込み、次に上記結合リガンドに連結することによる)によって連結され得る。インターカレーター化合物のようなDNA結合リガンドに上記標識が連結される方法は、当該分野で周知であり、任意の簡便な方法が使用され得る。代表的なインターカレーター剤としては、モノ−アジドアミノアルキルメチジウム化合物またはモノ−アジドアミノアルキルエチジウム化合物またはビス−アジドアミノアルキルメチジウム化合物またはビス−アジドアミノアルキルエチジウム化合物、エチジウムモノアジドエチジウムジアジド、エチジウムダイマーアジド(Mitchellら,J.Am.Chem.Soc.,104:4265(1982)))、4−アジド−7−クロロキノリン、2−アジドフルオレン、4’−アミノメチル−4,5’−ジメチルアンゲリシン、4’−アミノメチル−トリオキサレン(trioxsalen)(4’アミノメチル−4,5’,8−トリメチル−ソラレン)、3−カルボキシ−5−アミノ−ソラレンまたは3−カルボキシ−8−アミノ−ソラレンまたは3−カルボキシ−5−ヒドロキシ−ソラレンまたは3−カルボキシ−8−ヒドロキシ−ソラレンが挙げられる。特定の核酸結合結合アジド化合物は、Forsterら、Nucleic Acid Res.,13:745(1985)によって記載されている。他の有用な光反応性インターカレーターは、ピリミジン残基と(2+2)環付加物を形成するフロクマリンである。アルキル化剤もまた、DNA結合リガンド(例えば、ビス−クロロエチルアミンおよびエポキシドまたはアジリジン(例えば、アフラトキシン、多環式炭化水素エポキシド、マイトマイシンおよびノルフィリンA))として使用され得る。インターカレート剤の特に有用な光反応性形態は、アジドインターカレーターである。これらの反応性ニトレンは、長い波長の紫外光または可視光において容易に生成され、アリールアジドのニトレンは、それらの再構成生成物よりも挿入反応を好む(Whiteら、Meth.Enzymol.,46:644(1997))。
【0070】
上記プローブはまた、特定の形式で使用するために改変され得る。これらの特定の形式は、例えば、逆ドットブロットのための10個〜100個のT残基の付加、またはウシ血清アルブミンへの結合、または磁性ビーズ上への固定である。
【0071】
ハイブリダイゼーションを間接的な検出方法によって検出する場合、検出可能に標識された二次プローブ(またはレポーター)が、上記プローブと上記標的との間の最初のハイブリダイゼーションの後か、または上記プローブと上記標的との間のハイブリダイゼーションの間に、添加され得る。必要に応じて、このハイブリダイゼーション条件は、二次プローブ(またはレポーター)を添加した後に改変され得る。ハイブリダイゼーション後、ハイブリダイズしていない二次プローブは、最初のプローブが固体支持体上に固定されている場合、例えば洗浄することによって、最初のプローブから分離され得る。固体支持体の場合において、上記支持体の位置に結合した標識の検出は、上記プローブに対する上記サンプル中の標的ヌクレオチド配列のハイブリダイゼーションを示す。
【0072】
検出可能に標識された二次プローブ(またはレポーター)は、特異的プローブであり得る。あるいは、上記検出可能に標識されたプローブは、配列の混合物(例えば、米国特許第5,348,855号に本質的に記載されるような全ゲノムDNA)などの、縮重プローブであり得る。後者の場合において、上記二次プローブが二本鎖DNAを含んでいる場合、標識はインターカレート色素を使用して達成され得る。好ましいDNA結合リガンドは、上に記載されるようなインターカレーター化合物である。
【0073】
二次プローブはまた、ランダムヌクレオチドプローブ配列のライブラリーであり得る。二次プローブの長さは、上記一次プローブの長さおよび組成または上記二次プローブによって検出される固体支持体上の標的ヌクレオチド配列の長さおよび組成物を考慮して、決定されるべきである。このようなプローブライブラリーは、好ましくは、光活性可能な試薬で標識された3’末端または5’末端と、検出試薬(例えば、発蛍光団、酵素、色素、発光団、または他の検出可能な公知の部分))を負荷されたもう一端とを備える。
【0074】
上記標識された核酸を作製する際に使用される特定の配列は、異なり得る。従って、例えば、アミノ置換ソラレンは、最初に光化学的に核酸とカップリングされ得、その生成物は、標識にカップリングされ得るペンダントアミノ基を有する。すなわち、標識は、DNA結合リガンドを試験サンプル中の核酸と光化学的に反応させることによって実施される。あるいは、上記ソラレンは、最初に酵素のような標識にカップリングされ得、次いで核酸にカップリングされ得る。
【0075】
有利なことに、上記DNA結合リガンドは、最初に標識と化学的に結合され、その後、上記核酸プローブと結合される。例えば、ビオチンはカルボキシル基を保有しているので、フロクマリンの光化学的反応性にもビオチンの生物学的活性にも干渉することなく、アミド形成またはエステル形成によってフロクマリンと結合され得る。アミノメチルアンゲリシン、ソラレン、およびフェナントリジウム誘導体は、同様に連結され得、ハロゲン化フェナントリジンおよびその誘導体(例えば、塩化アミノプロピルメチジウム(Hertzbergら,J.Amer.Chem.Soc.,104:313(1982)))も同様に標識に連結され得る。あるいは、二官能性試薬(例えば、ジチオビススクシニミジルプロピオネートまたは1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル)が、反応物質がアルキルアミノ残基を有する場合に、この場合も、溶媒、比率および反応条件に関して公知の様式で、上記DNA結合リガンドを標識にカップリングするために、直接使用され得る。特定の二官能性試薬(おそらく、グルタルアルデヒド)は、適切でないかもしれない。なぜなら、これらはカップリングするが、一方で核酸を改変し得、従ってアッセイに干渉し得るからである。このような困難を防ぐために、日常的な注意が払われ得る。
【0076】
また有利なことには、上記DNA結合リガンドは、約40原子(好ましくは、約2原子〜20原子)までの鎖を含むスペーサーによって標識に連結され得る。この原子としては、炭素、酸素、窒素および硫黄が挙げられるが、これらに限定されない。このようなスペーサーは、多官能性ラジカルのメンバーであり得、ペプチド、炭化水素、ポリアルコール、ポリエーテル、ポリアミン、ポリイミンおよび炭水化物(例えば、−グリシル−グリシル−グリシル−または他のオリゴペプチド、カルボニルジペプチド)、およびω−アミノ−アルカン−カルボニルラジカルなどが挙げられるが、これらに限定されない。砂糖、ポリエチレンオキシドラジカル、グリセリル、ペンタエリトリトール、および同様のラジカルもまた、スペーサーとして役立ち得る。スペーサーは、上記核酸結合リガンドおよび/または標識に直接連結され得るか、あるいはこの結合は、二価ラジカルのカップリング剤(例えば、ジチオビススクシニミジルプロピオネート、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、ジイソシアネート、カルボジイミド、グリオキサール、グルタルアルデヒドなど)を含み得る。
【0077】
ハイブリダイゼーションを間接的に検出するための二次プローブはまた、エネルギー移動によって(例えば、TyagiおよびKramer、Nature Biotech.、14:303−309(1996)またはLizardiら対する米国特許第5,119,801号および同第5,312,728号によって記載される「ビーコンプローブ」方法において)検出され得る。当該分野で公知の任意のFRET検出系が、本方法において使用され得る。例えば、AlphaScreenTM系が使用され得る。AlphaScreen技術は、「増幅発光近接均質アッセイ(Amplified Luminescent Proximity Homogeneous Assay)」方法である。680nmのレーザー光を使用した照明に際して、ドナービーズ中の光増感剤は、周囲の酸素を一重項状態酸素に変換する。この励起された一重項状態酸素分子は、急速に崩壊する前に約250nm(1個のビースの直径)を拡散する。上記アクセプタービーズが、生物学的相互作用によってドナービーズにしっかりと近接している場合、アクセプタービーズ中の化学発光基と反応し、これにより、上記一重項状態酸素分子は、同じビーズ中の蛍光アクセプターに即座にエネルギーを移動する。これらの蛍光アクセプターは、発光波長を520〜620nmに変える。この全体の反応は、0.3秒間の崩御半減期を有するので、測定は、時間分解様式で行われ得る。他の例示的なFRETドナー/アクセプター対としては、有効距離が55Åである、フルオレセイン(ドナー)とテトラメチルローダミン(アクセプター);有効距離が46Åである、IAEDANS(ドナー)とフルオレセイン(アクセプター);および有効距離が61Åである、フルオレセイン(ドナー)とQSY−7色素(アクセプター)(Molecular Probes)が挙げられる。
【0078】
核酸検出のための定量的アッセイもまた、本発明に従って実施され得る。マイクロアレイスポットに結合した二次プローブの量が測定され得、そしてその量は、サンプル中に存在する核酸標的の量に関連し得る。サンプルの希釈物が、既知の量の上記標的核酸を含有するコントロールとともに使用され得る。これらの工程を実施するための正確な条件は、当業者には明らかである。マイクロアレイ分析において、上記検出可能な標識は、プローブアレイをX線フィルムまたはホスホイメージャー(phosphoimager)の隣に配置してそのプローブが結合している部位を同定することによって、可視化または評価され得る。蛍光は、電荷結合デバイス(CCD)またはレーザースキャニングによって検出され得る。
【0079】
いくつかの実施形態において、上記標的核酸分子と上記核酸プローブとの間のハイブリダイゼーションは、上記標的核酸分子へのレポーターの結合を決定することによって評価される。上記レポーターとしては、フルオレセイン、同位体、ビオチン、ジゴキシン、金コロイド、磁性ビーズ、電気化学標識、および化学発光標識からなる群より選択される検出可能なマーカーが挙げられる。
【実施例】
【0080】
(C.実施例)
本実施例は、マイクロアレイ上の核酸分子を検出するための迅速な方法を説明する。本実施例において、まず、物理的方法、化学的方法、または生物学的方法を通じて溶解緩衝液により生物学的サンプルを溶解し、次いで、さらなる核酸精製を全く伴わずに、上記溶解物をマイクロアレイに直接ハイブリダイズした。核酸を検出するための従来の方法と比較して、この迅速な方法は、簡単で操作が容易であり、かつ時間を節約する処理を提供する。この例示的な方法は、多くの適用(例えば、細菌/細胞の検出)を有し得る。
【0081】
(マイクロアレイ上での迅速な細菌検出および同定)
(材料)
1)Staphylococcus aureusの一晩培養物(濃度1.6×10cfu/mL)
2)20×SSPE:3.6M NaCl、0.2Mリン酸緩衝液、pH7.4、20mM EDTA
3)溶解緩衝液:6%SDS、0.1 Tris、0.05M EDTA、および,4ng/μL Hex標識レポータープローブ
4)洗浄緩衝液:2×SSPE、0.1% SDS
5)4つの細菌種特異的プローブを、捕捉プローブとしてアルデヒド基を有するマイクロアレイの表面につないだ。プローブの各スポットの間の距離は300μmであり、各スポットの直径は150μmである。捕捉プローブおよびレポータープローブの配列を表1に列挙する。
【0082】
【表1】

(方法)
1)1.6×10cfu/mL、1.6×10cfu/mL、1.6×10cfu/mL、1.6×10cfu/mL、1.6×10cfu/mL、1.6×10cfu/mLの濃度の、1mLのS.aureusの一晩培養物を5分間10,000rpmで遠心分離し、上清を捨てた。
【0083】
2)20μLの溶解緩衝液中にその細胞を再懸濁した。
【0084】
3)再懸濁した細胞を、2分間、300mVかつ990KHzで超音波処理して細菌細胞を溶解した。細菌細胞から放出された16S rRNAを、上記溶解緩衝液中の蛍光レポーターとハイブリダイズさせ、その結果標的16S rRNAを標識した。
【0085】
4)次いで、2μLの20×SSPEをこの細胞溶解物に添加し、混合した。
【0086】
5)この細胞溶解物(10μL)をマイクロアレイに添加し、42℃で1時間インキュベートした。
【0087】
6)このマイクロアレイを15分間洗浄緩衝液で洗浄し、液体を除去するために遠心分離した。
【0088】
7)次いで、Genepix Scanner上でこのマイクロアレイをスキャンし、収集したデータを分析した。
【0089】
(結果および考察)
ハイブリダイゼーションの結果を図1に示した。
【0090】
Fは、各捕捉プローブの蛍光シグナルを表す。バックグラウンドと標準偏差の3倍との合計として閾値を定義した(すなわち、閾値=バックグラウンド+3×標準偏差)。閾値を超えるF値は、陽性シグナルを示す。
【0091】
1mLのS.aureusの一晩培養物の濃度が1.6×10、1.6×10、1.6×10、および1.6×10である場合、E.coli、P.aeruginosaおよびS.pyogenesについての種特異的捕捉プローブの蛍光シグナルは、全て閾値よりも小さかった;しかし、S.aureus種特異的プローブのF値は、閾値よりも大きく、F値と閾値との間の差は、それぞれ3114.0444、4323.384714、738.1839105および33.73486285であった。本方法を使用したマイクロアレイ上でのS.aureusの検出限界は、1.6×10であった。
【0092】
病院において従来の方法を使用する細菌検出は、5〜7日を超える日数を必要とする。しかし、本実施例においては、マイクロアレイ上のプローブと細胞溶解物を直接ハイブリダイズすることにより正確な結果を得るために、1.5時間しかかからない。さらに、本実施例の検出感度は、10cfu/mLと同程度に高く、この感度は、患者の迅速な診断をして患者を適切に処置するために有用である。
【0093】
上記実施例は、説明のためだけのものであり、本発明の範囲を限定することは意図されない。上記実施例に対する多くの変化が、可能である。上記の実施例に対する改変および変化は、当業者には明らかであるので、本発明は、添付された特許請求の範囲の範囲によってのみ限定されることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】図1は、実施例中のハイブリダイゼーションの結果を説明する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的核酸分子を検出するための方法であって、該方法は、
a)溶解緩衝液において生物学的サンプル中の細胞を溶解して、該細胞から該標的核酸分子を放出する工程を包含する、細胞溶解物を調製する工程;
b)工程a)からの細胞溶解物を、核酸の精製を伴わずに、固体基材上に固定された核酸プローブとともに、該標的核酸分子と該プローブとの間のハイブリダイゼーションを可能にする条件下でインキュベートする工程であって、該核酸プローブは該標的核酸分子に対して相補的な配列を含む、工程;
c)該標的核酸分子と該プローブとの間のハイブリダイゼーションを評価して、該標的核酸分子の存在、非存在および/または量を決定する工程、
を包含する方法。
【請求項2】
前記細胞が、物理的方法によって前記溶解緩衝液中で溶解される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記物理的方法が、粉砕、超音波溶解、高温による溶解、および凍結からなる群より選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記細胞が、化学的方法によって前記溶解緩衝液中で溶解される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記化学的方法が、タンパク質変性剤または洗浄剤による溶解である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記細胞が、生物学的方法によって前記溶解緩衝液中で溶解される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記生物学的方法が、プロテイナーゼまたはリゾチームによる溶解である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記細胞が、物理的方法、化学的方法、および生物学的方法の任意の組み合わせによって溶解される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記細胞溶解物が、前記基材上に固定されたプローブとともに、ハイブリダイゼーションのために、前記溶解緩衝液中でインキュベートされる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記細胞溶解物が前記プローブとともにインキュベートされる前に、ハイブリダイゼーションを助ける薬剤が、該細胞溶解物に添加される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記薬剤が、NaCl、クエン酸ナトリウム、およびSDSからなる群より選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記生物学的サンプルが、非ウイルス性生物、生物学的組織、真核生物細胞、および原核生物細胞からなる群より選択されるサンプルである、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記標的核酸分子が、ゲノムDNA、プラスミド、ミトコンドリアDNA、葉緑体DNA、メッセンジャーRNA、リボソームRNA、および核内低分子RNAからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記固体基材が、ナイロンフィルム、ピロキシリンフィルム、シリコーン、ガラス、セラミック、金属、プラスチック、およびその組み合わせからなる群より選択される材料を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記固体基材が、複数の核酸プローブを備え、該複数の核酸プローブは、該固体基材上に固定されてアレイを形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記複数の核酸プローブが、異なるヌクレオチド配列を有する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
異なるプローブの数が、約2個〜約100,000個である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記アレイの面積が、約0.01mm〜約100cmである、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記アレイが、二次元アレイ、三次元アレイ、および四次元アレイからなる群より選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記固体基材上に固定された核酸プローブが、一本鎖オリゴヌクレオチドまたは二本鎖PCR産物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記細胞溶解物が、界面活性剤、タンパク質変性剤、緩衝液、ヌクレアーゼインヒビター、塩、およびその組み合わせからなる群より選択される薬剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
請求項1に記載の方法であって、前記標的核酸分子と前記核酸プローブとの間のハイブリダイゼーションが、該標的核酸分子へのレポーターの結合を測定することによって評価され、該レポーターは、フルオレセイン、同位体、ビオチン、ジゴキシン、金コロイド、磁性ビーズ、電気化学的標識、および化学発光標識からなる群より選択される検出可能なマーカーを含む、方法。

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2007−506404(P2007−506404A)
【公表日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−507703(P2005−507703)
【出願日】平成15年8月27日(2003.8.27)
【国際出願番号】PCT/CN2003/000722
【国際公開番号】WO2005/017193
【国際公開日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(503012203)ツィンフア ユニバーシティ (10)
【出願人】(504278260)キャピタルバイオ コーポレーション (10)
【Fターム(参考)】