説明

格子状構造物用の取付治具

【課題】縦桟と横桟を縦横に組み合わせ、間仕切り壁として使用される格子状構造物に書や絵画、黒(白)板、或いはテレビその他の電気製品等を取付けるための取付治具を提供する。
【解決手段】格子状構造物9の縦桟と横桟とにより形成される開口9cに嵌挿される脚2を備えた駒3と、該駒3に取付けられるボルト6よりなり、駒3を格子状構造物9の所要の開口9cに強制嵌合して固定したのち、駒3に取付けられ、開口9cより突出するボルト6に書、絵画、黒(白)板、電気製品等が取付けられるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縦桟と横桟を縦横に組み合わせた格子状構造物、ハニカム構造物、多角形、円形、楕円形等の開口を縦横に形成した構造物、同心円状の環状枠を桟で放射状に連結した蜘蛛の巣状の構造物(本明細書では、これら構造物を代表して格子状構造物ということがあり、特許請求の範囲に記載される格子状構造物には、縦桟と横桟を縦横に組み合わせた格子状構造物のほか、ハニカム構造物や多角形、円形、楕円形等の開口を縦横に形成した構造物、蜘蛛の巣状構造物が含まれるものとする)への取付治具に関する。
【背景技術】
【0002】
縦桟と横桟を縦横に組み合わせた格子状構造物は、溝蓋、通路、間仕切その他壁材等に広く用いられているほか、近年ではサンゴ幼生を着床させる海洋構造物としても用いられている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−77649号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
格子状構造物は従来、他の部材を取付けることなく、そのままの形態で、各種用途に用いられている。
本発明は、格子状構造物を、例えば通路に使用する場合、矢印等を表示した表示板を取付け、或いは間仕切り用壁材として用いる場合、書や絵画、或いは黒(白)板を掛けたり、クーラーやテレビ、照明等の電気製品を掛けることができるようにするため、更にはまた海洋構造物として用いる場合には、海藻やサンゴ等の苗を取付けることができるようにするための取付治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係わる発明は、格子状構造物の開口に嵌合して固定される駒と、上記開口に嵌合して固定される駒に取着され、開口より突出して、被取付部材を止着する止具よりなることを特徴とし、
請求項2に係わる発明は、請求項1に係わる発明の駒が弾性変形可能であり、前記開口に強制嵌合可能な脚を有することを特徴とする。
【0006】
請求項3に係わる発明は、請求項1に係わる発明において、前記駒が断面截頭三角形の嵌合孔を形成した駒本体と、該駒本体の嵌合孔に嵌合し、嵌合孔への押し込みにより駒本体を側方に拡開させて前記開口に固定させる楔体よりなり、前記止具が楔体に通され、駒本体より突出するボルトよりなることを特徴とする。
【0007】
請求項4に係わる発明は、請求項1に係わる発明において、前記駒が弾性変形可能なゴム又は樹脂製で、圧縮することにより側方に膨出して前記開口に固定可能であり、前記止具が駒に通され、該駒より突出するボルトよりなることを特徴とする。
【0008】
請求項5に係わる発明は、請求項3又は4に係わる発明において、前記格子状構造物が成形品で、前記開口が型の抜き勾配を有して前記駒が開口の拡開側より挿入され、駒に通した前記ボルトが拡開側の開口に被せて取付けた押え部材に差し込まれ、該押え部材より突出する端部にナットが捩じ込まれることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係わる発明の取付治具によると、駒を格子状構造物の開口に嵌合して固定したのち、駒に取着されて開口より突出する止具、例えば該止具のネジ部やフックに被取付部材、例えば書、絵画、黒(白)板、クーラーやテレビ、照明等の電気製品、海藻やサンゴ等の苗を植え付ける取付板が取着される。
【0010】
請求項2に係わる発明の取付金具によると、脚を窄めるように押込みながら開口に強制嵌合すると、復元力により脚が拡開して開口に密着し固定される。
【0011】
請求項3に係わる発明の取付金具によると、楔体を駒本体の嵌合孔に嵌合させて開口に嵌合した状態で楔体を駒本体内に押し込むと、駒本体が側方に拡開して開口に圧着し固定される。
【0012】
請求項4に係わる発明の取付金具によると、駒を開口に嵌合した状態で駒を圧縮すると、該駒が側方に膨出して開口に圧着し、固定される。
【0013】
請求項5に係わる発明の取付金具によると、駒の固定がナットを押え部材上で捩じ込み操作をするだけで容易に行えること、成形品よりなる格子状構造物は一般に成形時に型を抜くことが容易にできるようにするため、開口が抜き勾配を有しており、使用に際しては、開口の拡開側が表向きないし上向きにされることが多々あるが、本発明の取付金具によると、取付金具を表向きないし上向きをなす格子状構造物の裏側や下側に回りこまなくても表側或いは上側から取付けることができ、取付金具の取付けが容易に行えること等の効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係わる取付治具の斜視図。
【図2】図1に示す取付治具を格子状構造物の開口に取付けた断面図。
【図3】同取付治具を取付けた格子状構造物の要部の斜視図。
【図4】取付治具を取付けた格子状構造物の一使用例を示す斜視図。
【図5】取付治具の別の例の分解斜視図。
【図6】図5に示す取付治具の取付態様を示す断面図。
【図7】図5に示す取付治具の別の取付態様を示す断面図。
【図8】別の取付治具の取付態様を示す断面図。
【図9】図5に示す取付治具の別の取付態様を示す断面図。
【図10】図5に示す取付治具の更に別の取付態様を示す断面図。
【図11】図8に示す取付治具の別の取付態様を示す断面図。
【図12】格子状構造物の別の例を示す斜視図。
【図13】格子状構造物の更に別の例を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態の取付治具について図面により説明する。
図1に示す取付治具1は、両側に脚2を備えた断面が略ホッチキスの針状或いは略倒コ字形をなす硬質樹脂又は鋼製の駒3を有し、該駒3には取付板4が駒3の両側にせり出して固着され、中央には駒3と取付板4を貫通するボルト通し孔5が形成されており、該ボルト通し孔5に前記駒3と共に取付治具1を構成する止具としてのボルト6が下側から挿入され(図2)、取付板4より突出するボルト6に図3に示すナット7が捩じ込まれてボルト6を固定できるようにしてある。
【0016】
図3に示す格子状構造物9は、縦桟9aと横桟9bを縦横に組合わせた構造をなす、例えばFRP製の成形品よりなるもので(FRP以外の成形品であってもよいし、鋼その他の金属製であってもよい)、取付治具1を組付けるときには、格子状構造物9の所要の開口9cに図2の上方より取付治具1を脚2から挿入する。
【0017】
脚2は図1及び図1及び図2に示すように、先細りのテーパに形成され、しかも開口9cは横断面が上端に向かって漸次拡大する抜き勾配(格子状構造物9を成形する際、型を抜き易くするために形成される)を有していることから、脚先は開口9c上端に挿入可能となっている。
【0018】
脚2を脚先から開口9cに挿入すると、やがて脚2が開口9cを形成する桟9a又は9bに支えるが、そのまま更に強く押込むと、両脚2が互いに内向きに変形しながら押込まれる。そしてその弾発力で桟9a又は9bに弾着し固定される。脚2の押込みは、取付板4が開口9cのエッジに当たるまで行われ、駒3よりせり出す取付板4が開口9cのエッジに当たると、取付板4がストッパーとなってそれ以上の押込みが阻止される。
【0019】
駒3が開口9cに固定されたのち、前述するようにボルト6がボルト通し孔5に通され、ナット7の捩じ込みにより固定される(図3)。
【0020】
図1に示す実施形態の取付治具1は、以下の実施形態に示す取付治具と同様、図2及び図3とは上下を逆にした格子状構造物9の開口9cに図の上方より押込んで取付けることも可能である。
【0021】
格子状構造物9が間仕切りなどの壁面に使用され、書、絵画、黒(白)板、電気製品などの被取付部材を取付けるときには、立て掛けた格子状構造物9の所要の開口9cに取付けた取付治具1の開口9cより突出するボルト6に図示しない取付金具を解して被取付部材を取付ける。
【0022】
格子状構造物9が通路に使用され、矢印などを表示した表示板よりなる被取付部材を取付けるときには、通路に配置した格子状構造物9の所要の開口9cに取付けた取付治具1のボルト6に前記被取付部材である表示板が取付けられる。この場合、ボルト6は表示板上から取付板4及び駒3に通され、駒内でナットを捩じ込み締着する。この場合、取付板4を取除き、前記表示板を取付板4に代えて取付けるのが望ましい。
【0023】
本実施形態によると、格子状構造物9に矢印などの表示を直接表示するよりも長期間消えることはなく、確実に表示することができる。
【0024】
格子状構造物9を海洋構造物として使用し、海藻やサンゴ等の苗を取り付けるときには、格子状構造物9を例えば図4に示すように前後左右に連結し、各構造物9に取付けた取付治具1の取付板4上に前記苗を取付けた被取付部材である取付板8を取付けるか、或いは前記取付板8を取付板4に代えて駒3上に取付ける(図3)。これら取付板4、8には1ないし複数の孔を形成し、サンゴ等の苗を差込んで取り付けるようにしてもよい。
【0025】
図5に示す取付治具11は、四隅を面取りし、中央に下面より略四角錐の形態をなす嵌合孔12を形成すると共に、四隅の面取り部分にそれぞれ嵌合孔12に通ずるスリット13を形成した、横断面が上端に向かって漸減する角ブロック状の駒本体14と、前記嵌合孔12の勾配とほぼ同じ勾配を有する截頭四角錐の形態をなし、前記嵌合孔12に嵌挿可能で、中央にボルト頭部が嵌着される凹所15と、該凹所15に通ずるボルト通し孔16を形成した楔体17よりなり、駒本体14及び楔体17は共に、前記駒3と同様、硬質樹脂又は鋼製となっている。
【0026】
取付治具11を格子状構造物9の開口9cに取付けるときには、駒本体14の嵌合孔12に楔体17を嵌挿すると共に、楔体17に下側からボルト19を通し、かつボルト19の突出端に押え部材としての押え板18を差込み、ついでナット20を捩じ込んで押え板18を抜け止めした状態で、全体を前記開口9cに上側から挿入する。
【0027】
格子状構造物9が成形品である場合、前記開口9cは成形時の型抜きを容易にするため、抜き勾配を有しており、開口9cの拡開側を図示するように上向きにした場合、前記開口9cは下端に向かって窄まった形態をなしているため、駒本体14を挿入すると、やがて開口下端部に接触し、更に押え板18を介して押込み、押え板18が開口端に達すると、ナット20をレンチ等の工具を用いて捩じ込み操作する。これによりボルト19が楔体17と共に持上げられ、楔体17の上昇に伴い、その楔作用により駒本体14が側方に押し拡げられ、格子状構造物9の開口9cを形成する桟9a及び9bに圧着し固定される(図6)。
【0028】
図7に示す実施形態においては、図6に示す押え板18に代えてナット20を回動操作する工具が入るほどの凹所21を有する押え部材としての押え板22が用いられ、ナット20が凹所21内に納まって突出しないようにされている。
【0029】
図8に示す取付治具31は、弾性変形可能なゴム又は樹脂で、中心にボルト通し孔を有し、格子状構造物9の開口9cに取付けるときには、前記ボルト通し孔にボルト33を通したのち、上方に突出するボルト端部に押え板32を差込み、ついでナット34を捩じ込んで仮止めした状態で、全体を前記開口9cに上側から押え板32が開口端に達するまで押込んで挿入する。ついでナット34を捩じ込み締着する。ナット34の捩じ込みに伴い、取付治具31が圧縮されて側方に膨らみ、桟9a、9bに圧着し固定される。
【0030】
図6〜図8に示す前記各実施形体において、取付金具11、31はボルト19、33及び押え板18、22、32を含む全体がナット20、34で仮止めされた状態で格子状構造物9の開口9cに上側から挿入されるようになっており、取付治具11、31を格子状構造物9の上側からの作業のみで取付けることができるようになっているが、取付金具の一部、例えば図6及び図7に示す駒本体14を先に開口9cに上側から挿入したのち、ボルト19を通した楔体17を開口9cの下方から駒本体14の嵌合孔12に嵌挿し、ついで上方に突出するボルト端部に押え板18、22を差込み、ナット20を捩じ込んで締着することもでる。また図8に示す取付治具31では、ボルト33を通した取付治具31を開口9cに上側から挿入したのち、取付治具31から突出するボルト端部に押え板32を差込み、ついでナット34を捩じ込んで締着することもできる。
【0031】
取付治具1、11、31はまた、図9〜図11に示すように、上下逆向きにした格子状構造物9の開口9cに下側から挿入して取付けることも可能である。すなわち図9においては、例えば駒本体14を嵌合孔12に楔体17を嵌挿した状態で開口9cに下側から挿入する。ついで開口9cの上面に押え部材としての押え板18を載置したのち、楔体17のボルト通し孔16及び前記押え板18にボルト19を通し、ボルト頭部19aを楔体17の凹所15に納める。そして押え板18から突出するボルト端部にナット20を捩じ込み締着する。ナット20の捩じ込みに伴い楔体17が押し上げられ、その楔作用により駒本体14が側方に押し拡がって開口9cを形成する桟9a及び9bに圧着し、固定される。
【0032】
図10に示す取付金具11も図9と同様の方法によって格子状構造物9の開口9cに取付けられる。
【0033】
図11においては、開口9cに下側から取付治具31を挿入し、ついでボルト33を取付治具31のボルト通し孔に通し、取付治具31より突出するボルト端部に押え板32を差込み、ついでナット34を捩じ込んで締着する。ナット34の捩じ込みにより前述するように取付金具31が圧縮されて側方に膨らみ、固定される。
【0034】
図6〜図11に示すように、取付治具11、31を取付けた格子状構造物9は前記と同様にして使用され、各取付治具11、31のボルト19、33に前述の被取付部材が同様にして取付けられる。
【0035】
前記各実施形態では止具としてボルト6、19、33を示したが、図2、図6〜図11に示すボルト6、19、33において、取付板4及び押え板18、32からの突出部分をフックとし、下端のボルト頭部に代えて形成されるボルト6、19、33のネジ部にナットを捩じ込んで固定するようにしてもよい。この場合、被取付け部材は、フックに直接或いは取付金具を介して取付けられる。
【0036】
前記実施形態では、格子状構造物9として、縦桟9aと横桟9bを縦横に組合わせたものを例示したが、ハニカム構造物、多角形、円、その他任意形状の開口を縦横に形成した構造物、図12及び図13に示すような蜘蛛の巣状構造物とすることもでき、取付治具は各構造物の各種開口に嵌挿して固定することができる形状に形成される。
【0037】
前記実施形態の格子状構造物9は成形品で、開口9は成形時の型を容易に抜くことができるようにするために抜き勾配を有しているが、開口が抜き勾配を有していない格子状構造物9、例えば鋼等の金属製で、桟9a、9bが溶接にて固着される格子状構造物にも前記各実施形態の取付治具1、11、31を前記と同様にして取り付けることができる。
【符号の説明】
【0038】
1、11、31・・取付治具
2・・脚
3・・駒
4、8・・取付板
5、16・・ボルト通し孔
6、19、33・・ボルト
7、20、34・・ナット
9・・格子状構造物
9a、9b・・桟
9c・・開口
12・・嵌合孔
13・・スリット
14・・駒本体
15、21・・凹所
17・・楔体
18、32・・押え板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
格子状構造物の開口に嵌合して固定される駒と、上記開口に嵌合して固定される駒に取着され、開口より突出して、被取付部材を止着する止具よりなることを特徴とする取付治具。
【請求項2】
前記駒が弾性変形可能であり、前記開口に強制嵌合可能な脚を有することを特徴とする請求項1記載の取付治具。
【請求項3】
前記駒が断面截頭三角形の嵌合孔を形成した駒本体と、該駒本体の嵌合孔に嵌合し、嵌合孔への押し込みにより駒本体を側方に拡開させて前記開口に固定させる楔体よりなり、前記止具が楔体に通され、駒本体より突出するボルトよりなることを特徴とする請求項1記載の取付治具。
【請求項4】
前記駒が弾性変形可能なゴム又は樹脂製で、圧縮することにより側方に膨出して前記開口に固定可能であり、前記止具が駒に通され、該駒より突出するボルトよりなることを特徴とする請求項1記載の取付治具。
【請求項5】
前記格子状構造物が成形品で、前記開口が型の抜き勾配を有して前記駒が開口の拡開側より挿入され、駒に通した前記ボルトが拡開側の開口に被せて取付けた押え部材に差し込まれ、該押え部材より突出する端部にナットが捩じ込まれることを特徴とする請求項3又は4記載の取付治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−220023(P2011−220023A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−91857(P2010−91857)
【出願日】平成22年4月13日(2010.4.13)
【出願人】(000133294)株式会社ダイクレ (65)
【Fターム(参考)】