説明

棒状油性固形化粧料

【課題】経時での形状保持等の保存安定性に優れ、使用感、化粧仕上がり感、塗布時の化粧料の付着性がよい棒状油性固形化粧料を提供すること。
【解決手段】棒状油性固形化粧料全量中8.0〜20.0質量%の固形油を含む油分65.0〜99.9質量%及び表面が凹凸状の球状ポリメチルシルセスキオキサン粒子を含有する棒状油性固形化粧料。表面が凹凸状の球状ポリメチルシルセスキオキサン粒子を棒状油性固形化粧料全量中0.1〜4.0質量%の範囲で配合すると、表面が凹凸状の球状ポリメチルシルセスキオキサン粒子を配合する効果が充分に得られるとともに、併用する他の粉体類の機能を顕著に発現させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は棒状油性固形化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、口紅やスティック状ファンデーション等の棒状油性固形化粧料には、ワックス類等の固形油、液状油、半固形油、粉体が配合されている。これらのうち、固形油は棒状を保持するために配合され、さらに、他の油分と相まって、塗布感の心地よさ(肌なじみ)等の使用感の向上等のために好まれて配合されている(例えば、特許文献1、2参照。)。
【0003】
しかしながら、上記油分配合による使用感を有した棒状油性固形化粧料の保形安定性向上のために、適度な固形油を含む油分を65質量%以上のように多量に配合して調製した棒状油性固形化粧料は、保形性がよく、経時での安定性もよいものであるが、使用感の悪化を来たし、さらに、化粧仕上がり感、塗布時の化粧料の付着性等充分満足されるものでなくなってしまう。
【0004】
固形油の配合量を減らしても、使用感、化粧仕上がり感、塗布時の化粧料の付着性は向上することがないばかりか、安定性が悪くなってしまう。
【0005】
これらの欠点は、配合中の油分等の成分による調整を行っても充分な結果は得られなかった。
【0006】
なお、本発明に配合される表面が凹凸状の球状ポリメチルシルセスキオキサン粒子に関して、肌への伸展性、使用感が良好で、毛穴やしわなどの肌上の凹凸を見えにくくする効果に優れ、しかも経時で仕上がりが変化しにくい化粧料を提供することを目的として、球状粒子表面に化学的に結合してなる突起物を有するポリオルガノシルセスキオキサン粒子を配合する化粧料を開発することの技術開示があり、この中で、38質量%の固形油を含む油分及び表面が凹凸状の球状ポリメチルシルセスキオキサン粒子を含有する口紅(棒状油性固形化粧料)の技術が開示されている(特許文献3参照。)が、本発明とは目的(課題)を異にするものであり、また本発明においては固形油を38質量%と高配合したものにおいては効果が得られない。
【0007】
【特許文献1】特開平10−182500号公報
【特許文献2】特開2002−179524号公報
【特許文献3】特開2004−359592号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、経時での形状保持等の保存安定性に優れ、使用感、化粧仕上がり感、塗布時の化粧料の付着性がよい棒状油性固形化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、特定量の固形油を含む特定量の油分とともに表面が凹凸状の球状ポリメチルシルセスキオキサン粒子を配合することにより上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、第一発明は、棒状油性固形化粧料全量中8.0〜20.0質量%の固形油を含む油分65.0〜99.9質量%及び表面が凹凸状の球状ポリメチルシルセスキオキサン粒子を含有する棒状油性固形化粧料である。
【0011】
また、第二発明は、表面が凹凸状の球状ポリメチルシルセスキオキサン粒子の含有量が棒状油性固形化粧料全量中0.1〜20.0質量%である前記第一発明に記載の棒状油性固形化粧料である。
【0012】
また、第三発明は、表面が凹凸状の球状ポリメチルシルセスキオキサン粒子の含有量が棒状油性固形化粧料全量中0.1〜4.0質量%である前記第一発明に記載の棒状油性固形化粧料である。
【0013】
本発明において、液状、半固形、固形等の用語は常温での状態を示す。なお、液状油、半固形油、固形油等はいずれも当業者の間で認識されているものであり、例えば固形油としては、融点45℃以上のものが一般的であり、好ましくは55℃以上のものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、棒状油性固形化粧料全量中8.0〜20.0質量%の固形油及び前記固形油を含む全油分を65.0〜99.9質量%含有する棒状油性固形化粧料に表面が凹凸状の球状ポリメチルシルセスキオキサン粒子を配合したので、棒状油性固形化粧料の経時での形状保持等の保存安定性に優れ、使用感、化粧仕上がり感、塗布時の化粧料の付着性がよい棒状油性固形化粧料が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳述する。
【0016】
本発明に用いられる表面が凹凸状の球状ポリメチルシルセスキオキサン粒子は、球状ポリメチルシルセスキオキサン粒子の表面が凹凸状になっているもので、公知の粉末粒子である。一般的には、メチルトリメトキシシロキサンを重合することによって得られる。表面が凹凸状の球状ポリメチルシルセスキオキサン粒子の凹凸表面としては、球状粒子表面に突起物を有するものが好ましい。球状粒子表面に突起物を有するポリメチルシルセスキオキサン粒子は、例えば、特開2003−342370号公報、特開2004−359592号公報に記載されているので、それらの方法によって製造することができる。
【0017】
(製造法1)500mlの反応容器に撹拌機、温度計を取り付け、反応容器に酢酸アンモニウム濃度0.125質量%、酢酸0.05質量%の水溶液320mlを入れ、これに高分子分散剤としてポリビニルアルコール(完全けん化型、重合度1000)を0.025質量%となるように混合溶解した反応初液を調整した。該反応初液を200rpmで撹拌しつつ、反応容器を20℃に恒温した後、定量ポンプにてメチルトリメトキシシラン64gを10g/minの供給速度で添加し、該メチルトリメトキシシランの加水分解部分縮合溶液を得た。次に、これを10分間撹拌した後、2質量%のアンモニア水を速やかに滴下し、pHが8.5となったところで滴下を停止した。1分間混合撹拌した後、撹拌数を50rpmとして1時間熟成し、その後濾過・水洗・乾燥を実施し、白色粒子を得た。この粒子は、ポリメチルシルセスキオキサン粒子であった。得られた粒子を電子顕微鏡で観察した結果、平均粒子径5.6μmの単分散球状微粒子で、粒子表面に0.5〜1μm程度の突起物を持つコンペイ糖状粒子であった(特開2003−342370号公報参照)。
【0018】
(製造法2)500mlの反応容器に撹拌機、温度計を取り付け、反応容器にアンモニア濃度0.025質量%の水溶液320mlを入れ、さらにポリビニルアルコール(完全けん化型、重合度500)を0.025質量%となるように混合溶解した反応初液を調整した。該反応初液を200rpmで撹拌しつつ、反応容器を20℃に恒温した後、定量ポンプにてメチルトリメトキシシラン8.0gを10g/minの供給速度で添加した。添加終了後10分頃から白濁し始め、粒子が析出した。その後10分間混合撹拌した後、5質量%塩酸溶液を8g添加し、反応液性を酸性とした後さらにメチルトリメトキシシラン88gを10g/minの供給速度で添加し、該メチルトリメトキシシランの加水分解部分縮合溶液を得た。次に、これを10分間撹拌した後、2質量%のアンモニア水を速やかに滴下し、pHが8.5となったところで滴下を停止した。1分間混合撹拌した後、撹拌を停止し、室温・静置下で1時間熟成し、濾過・水洗・乾燥を実施し、白色粒子を得た。この粒子は、ポリメチルシルセスキオキサン粒子であった。得られた粒子を電子顕微鏡で観察した結果、平均粒子径10μmの単分散球状微粒子であった。また、得られた粒子の表面は0.5μm程度の突起物を持つコンペイ糖状の粒子であった(特開2003−342370号公報参照)。
【0019】
(製造法3)500mlの反応容器に撹拌機、温度計を取り付け、反応容器に塩酸0.1質量%、酢酸アンモニウム0.125質量%の水溶液320mlを入れ、これに高分子分散剤としてポリビニルアルコール(完全けん化型、重合度500)を0.025質量%となるように混合溶解した反応初液を調製した。該反応初液を200rpmで撹拌しつつ、反応容器を20℃に恒温した後、定量ポンプにてメチルトリメトキシシラン64gを10g/minの供給速度で添加し、該メチルトリメトキシシランの加水分解部分縮合溶液を得た。次に、これを10分間撹拌した後、2質量%のアンモニア水を速やかに滴下し、pHが7.9となったところで滴下を停止した。1分間混合撹拌した後、撹拌を停止して1時間熟成し、その後濾過・水洗・乾燥を実施し、白色粒子を得た。この粒子は、ポリメチルシルセスキオキサン粒子であった。得られた粒子を電子顕微鏡で観察した結果、粒子表面に突起物を有する平均粒径6.2μmの単分散粒子であった(特開2004−359592号公報参照)。
【0020】
(製造法4)製造法3と同様の方法で加水分解部分縮合溶液を調製した後、2質量%のアンモニア水を速やかに滴下し、pHが8.1となったところで滴下を停止した。1分間混合撹拌した後、撹拌を停止して1時間熟成し、その後濾過・水洗・乾燥を実施し、白色粒子を得た。この粒子はポリメチルシルセスキオキサン粒子であった。得られた粒子を電子顕微鏡で観察した結果、粒子表面に突起物を有する平均粒子径5.2μmの単分散粒子であった(特開2004−359592号公報参照)。
【0021】
(製造法5)製造法3と同様の方法で加水分解部分縮合溶液を調製した後、2質量%のアンモニア水を速やかに滴下し、pHが8.4となったところで滴下を停止した。1分間混合撹拌した後、撹拌を停止して1時間熟成し、その後濾過・水洗・乾燥を実施し、白色粒子を得た。この粒子はポリメチルシルセスキオキサン粒子であった。得られた粒子を電子顕微鏡で観察した結果、粒子表面に突起物を有する平均粒子径5.3μmの単分散粒子であった(特開2004−359592号公報参照)。
等の方法が挙げられる。
【0022】
本発明において好ましく用いられる前記方法によって得られる前記「球状粒子表面に突起物を有するポリメチルシルセスキオキサン粒子」は、球状粒子表面全体に小さな突起物が化学的に結合してなるポリメチルシルセスキオキサン粒子であり、コンペイ糖状をしている。
【0023】
前記「球状粒子表面に突起物を有するポリメチルシルセスキオキサン粒子」の平均粒径は、0.5〜30μmが好ましく、さらに好ましくは1〜15μmである。平均粒径が前記範囲を外れても本発明の効果が発揮されるが、粒径が0.5μm未満であると効果が低減する傾向が生じる場合があり、好ましくない。
【0024】
なお、突起物の大きさは、特に限定されないが、あまり大きいものは望ましくない。このものは、したがって、突起物の直径及び高さにおいて、「突起物直径の平均値/母体粒子直径」の値(割合)が0.01〜0.3「突起物高さの平均値/母体粒子直径」の値(割合)が0.01〜0.3であるものが好ましい。
【0025】
本発明において好ましく用いられる「球状粒子表面に突起物を有するポリメチルシルセスキオキサン粒子」は、市販されており、市販品を用いることが可能である。市販品の例としては、例えば、日興リカ株式会社製のMSP−K050等が挙げられる。前記MSP−K050は、球状粒子表面全体に小さな突起物が化学的に結合してなるポリメチルシルセスキオキサン粒子であり、コンペイ糖状をしている。
【0026】
本発明においては、特定組成の棒状油性固形化粧料中に、表面が凹凸状の球状ポリメチルシルセスキオキサン粒子を配合することで、特に、化粧料の塗布された重量が向上し、これによって、大きな力を加えることなく化粧料を多く塗布できるため、軽い力でフィットさせることができる。また、塗布時に粉体によるざらつきがなく、滑らかになる。また、粉を添加したときに一般に見られる硬度が高くなってしまったり、棒状化粧料が折れやすくなったり(折損値の低下)するような物性の変化も無く、成型した化粧料の形状変化も起きることがない。
【0027】
表面が凹凸状の球状ポリメチルシルセスキオキサン粒子の含有量は、特に限定されないが、棒状油性固形化粧料全量中0.1〜20.0質量%が好ましい。さらに好ましい含有量は棒状油性固形化粧料全量中0.1〜10.0質量%である。前記含有量が0.1質量%未満では表面が凹凸状の球状ポリメチルシルセスキオキサン粒子配合の効果が充分に得られない。また、20.0質量%を超えて配合しても表面が凹凸状の球状ポリメチルシルセスキオキサン粒子配合の効果が増強されることがないとともに、20.0質量%以下に抑えた方が他の粉体の機能を生かせることも可能となるので好ましい。特に、棒状油性固形化粧料全量中0.1〜4.0質量%が好ましい。前記含有量が、特に4.0質量%以下であると、表面が凹凸状の球状ポリメチルシルセスキオキサン粒子を配合する効果が充分に得られるとともに、後記の併用する他の粉体類の機能を顕著に発現させることができるので好ましい。
【0028】
本発明においては、粉体として表面が凹凸状の球状ポリメチルシルセスキオキサン粒子以外に、無機粉体、有機粉体、顔料、染料等の他の粉体を配合することができる(以下、表面が凹凸状の球状ポリメチルシルセスキオキサン粒子以外の他の粉体を「他の粉体類」という。)。
【0029】
他の粉体類としては、特に限定されないが、例えば、マイカ、タルク、カオリン、セリサイト(絹雲母)、白雲母、金雲母、合成雲母、紅雲母、黒雲母、リチア雲母、合成雲母、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無水ケイ酸(シリカ)、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、硫酸バリウム、窒化ホウ素、酸化チタン、酸化亜鉛、雲母チタン(酸化チタンコーテッドマイカ)、魚燐箔、オキシ塩化ビスマス、アルミニウムパウダー、カッパーパウダー、ポリエチレン粉末、ポリメタクリル酸メチル粉末、ポリアミド樹脂粉末(ナイロン粉末)、セルロース粉末、オルガノポリシロキサンエラストマー、赤色226号、赤色228号、青色404号、赤色202号、赤色204号、赤色206号、赤色207号、赤色208号、赤色220号、赤色505号、赤色223号、橙色201号、黄色204号、緑色202号、紫色201号、黄色4号、黄色5号、赤色230号、赤色104号、赤色213号、黄色203号、青色1号、緑色201号等が挙げられる。これらの他の粉体類はシリコーン等で処理された粉体類処理物でも構わない。これらの他の粉体類は1種または2種以上が任意に選択されて配合される。
【0030】
本発明においては、表面が凹凸状の球状ポリメチルシルセスキオキサン粒子と他の粉体類とを併せた全粉体量として、棒状油性固形化粧料全量中0.1〜35.0質量%が配合される。
【0031】
本発明においては、固形油が配合される。固形油としては、特に限定されないが、例えば、硬化油、モクロウ、カカオ脂、硬化ヒマシ油、ヤシ油、硬化ヤシ油、パーム油、パーム核油、モクロウ核油、固形パラフィン、セレシンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、ミツロウ、ラノリン、キャンデリラワックス、カルナウバワックス、イボタロウ、ホホバロウ、ベイベリーロウ、綿ロウ、ライスワックス(コメヌカロウ)、合成炭化水素ワックス、アルキルアクリル変成シリコーン、変成ポリエチレン、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ベへン酸、セチルアルコール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、パルミチン酸セチル、トリミリスチン酸グリセリル等が挙げられる。固形油は1種又は2種以上が任意に選択されて配合される。
【0032】
固形油の含有量は、棒状油性固形化粧料全量中8.0〜20.0質量%である。好ましくは、10.0〜16.0質量%である。含有量が8.0質量%未満であると、棒状油性固形化粧料の形状保持等の保存安定性が悪く、肌なじみ等使用感も悪く、さらに、化粧仕上がり感、塗布時の化粧料の付着性も悪い。これらは表面が凹凸状の球状ポリメチルシルセスキオキサン粒子を配合しても改良されることはない。また、20.0質量%を超えると、使用感、化粧仕上がり感、塗布時の化粧料の付着性が悪く、表面が凹凸状の球状ポリメチルシルセスキオキサン粒子を配合しても改良されることはない。
【0033】
本発明においては、固形油以外の液状油、半固形油等の他の油分が配合される。前記他の油分としては、特に限定されないが、例えば、オリーブ油、ヒマシ油、マカデミアナッツ油、月見草油、アボガド油、ナタネ油、ゴマ油、アマニ油、ヒマワリ油、綿実油、大豆油、コメヌカ油等、ホホバ油、液状ラノリン、流動パラフィン、スクワラン、ポリブテン、揮発性炭化水素、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、2−エチルヘキサン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ステアリン酸オクチル、パルミチン酸オクチル、アジピン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジ2−エチルヘキシル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、ジイソステアリン酸ジグリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリトリット、ジオクタン酸ペンタエリトリット、トリ2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、リンゴ酸ジイソステアリル、イソステアリン酸、オレイン酸、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、オクチルドデカノール、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、アミノ変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン、パーフロロポリエーテル、ステアリン酸硬化ヒマシ油、イソステアリン酸硬化ヒマシ油、トリ(カプリル・カプリン・ミリスチン・ステアリン酸)グリセリル、シア脂、ヒドロキシステアリン酸コレステリル、イソステアリン酸コレステリル、マカデミアナッツ油脂肪酸ジヒドロコレステリル、リシノレイン酸フィトステリル、イソステアリン酸フィトステリル、マカデミアナッツ油脂肪酸フィトステリル、ダイマージリノール酸ジ(フィトステリル・イソステアリル・セチル・ステアリル・ベヘニル)エステル、水添野菜油等が挙げられる。他の油分は1種または2種以上が任意に選択されて配合される。
【0034】
本発明においては、前記棒状油性固形化粧料全量中8.0〜20.0質量%の固形油を含めた全油分量として、棒状油性固形化粧料全量中65.0〜99.9質量%が配合される。全油分量が65.0質量%未満であると、棒状油性固形化粧料の形状保持等の保存安定性が悪く、肌なじみ等使用感も悪く、さらに、化粧仕上がり感、塗布時の化粧料の付着性も悪い。これらは表面が凹凸状の球状ポリメチルシルセスキオキサン粒子を配合してもよくすることはできない。また、全油分量が99.9質量%を超えると、表面が凹凸状の球状ポリメチルシルセスキオキサン粒子の配合効果が発揮されない。
【0035】
本発明における棒状油性固形化粧料には、前記必須成分の他に、化粧料、医薬部外品等に通常用いられる他の成分を本発明の効果を損なわない範囲で適宜配合することができる。前記他の成分としては、例えば、界面活性剤(アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤)、保湿剤、多価アルコール、増粘剤、皮膜形成剤、油ゲル化剤、高分子(合成樹脂)、低級アルコール、糖類、紫外線吸収剤、アミノ酸類、ビタミン類、美白剤,皮膚賦活剤,血行促進剤,抗脂漏剤,抗炎症剤(消炎剤)等の薬剤、植物抽出物、有機酸、酸化防止剤、抗菌剤、防腐剤、収斂剤、清涼剤、香料、水等を挙げることができる。
【0036】
本発明の棒状油性固形化粧料は前記成分を配合して常法にしたがって調製することができる。
【0037】
本発明における化粧料は医薬部外品を含む概念である。化粧料としては、例えば、口紅、リップクリーム、リップグロス、フェースカラー、ファンデーション、頬紅、アイカラー、アイシャドウ、眉墨等のメーキャップ化粧料、整髪剤、染毛剤等の毛髪化粧料、芳香化粧品、防臭化粧品等が挙げられる。
【実施例】
【0038】
以下実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。配合量は質量%である。実施例の説明に先立ち本発明で用いた効果試験方法について説明する。
【0039】
[使用テスト]
20名の専門パネルによる使用テストを行い、使用感(肌当たり、ざらつきの有無(滑らかさ)、肌になじむかどうか、軽い力でフィットさせることができるか等)、化粧仕上がり感(きれいに仕上がるかどうか、ムラができないか等)、塗布時の化粧料の付着性(よく付くかどうか、化粧料の塗布量が多いか等)の評価項目それぞれについて、下記の評価点基準に基づいて評価した。次いで、各人がつけた評価点を合計し、下記評価基準に基づいて評価した。
【0040】
(評価点基準)
5点:非常に優れている。
4点:優れている。
3点:普通。
2点:劣る。
1点:非常に劣る。
【0041】
(評価基準)
◎:合計点が80点以上である。
○:合計点が60点以上80点未満である。
△:合計点が40点以上60点未満である。
×:合計点が40点未満である。
【0042】
[経時保存安定性(形状保持性等)]
各温度条件下で棒状形態に変化(汗をかいたような「発汗」や、粉をふいたように表面に結晶が分離する「発粉」、高温での「溶け・歪み」、粉体同士の凝集(ざらつく要因)等)が見られるかどうかをチェックする。試験試料を、40℃(湿度85%)に保持された恒温槽、50℃に保持された恒温槽、−5℃で8時間保持した後に、20℃(湿度85%)で4時間保持し、次いで40℃(湿度85%)で8時間保持し、さらに20℃(湿度85%)で4時間保持するというサイクルで内部の雰囲気が変化する恒温槽(サイクルの恒温槽)の3つの恒温槽それぞれに1ヶ月保存された試験試料につき、状態の変化の有無を下記の基準に従って評価した。
【0043】
(評価基準)
◎:いずれの恒温槽に保存された試験試料も変化がみられなかった。
○:40℃、50℃、サイクルの恒温槽のいずれか1つで変化が見られた。
△:40℃、50℃、サイクルの恒温槽のいずれか2つ以上で変化が見られた。
×:40℃、50℃、サイクルの恒温槽のいずれにおいても変化が見られた。
【0044】
[実施例1〜11、比較例1〜6]
表1及び2に示した成分、配合量の処方(配合量合計100質量%)のリップスティックを以下の方法で調製した。
【0045】
全成分を加熱溶解した後、混合分散し、リップスティックバルクを得た。次いで、該リップスティックバルクを85℃で溶解し、金型に流し込み、冷却し、金型からリップスティックを取り出し、容器に装着してリップスティックを得た。
【0046】
【表1】

【0047】
【表2】

【0048】
表1、2中、
(注1)MSP−K050(日興リカ株式会社製)
(注2)トスパール145(GE東芝シリコーン株式会社製)
(注3)ナイロン粉末SP−500(東レ・ダウコーニング株式会社製)
【0049】
上記実施例1〜11、比較例1〜6のリップスティックにつき効果試験を行い、その評価結果を表3に示した。
【0050】
【表3】

【0051】
表3から分かるように、棒状油性固形化粧料全量中8.0〜20.0質量%の固形油を含む油分65.0〜99.9質量%及び表面が凹凸状の球状ポリメチルシルセスキオキサン粒子を配合した実施例1〜11のリップスティックは、いずれも本発明の効果を充分に発揮できるものであった。
【0052】
これらに対して、従来からの粉体のみを配合した比較例1、固形油の配合量が少な過ぎる(8質量%未満)比較例2、固形油の配合量が多過ぎる(20質量%超)比較例3、全油分の配合量が65質量%未満である比較例4並びに表面が凹凸状の球状ポリメチルシルセスキオキサン粒子ではない高分子粉体を配合した比較例5及び6のリップスティックは、いずれも本発明の効果を発揮し得ないものであった。
【0053】
以下、さらに本発明棒状油性固形化粧料の実施例を示す。なお、製造は実施例1〜11の方法に準じて行った。また、前記効果試験をこれらにおいて行ったところ、いずれも本発明に係る優れた結果が得られた。
【0054】
〔実施例12〕リップスティック
成分 配合量(質量%)
セレシンワックス 8.0
キャンデリラワックス 1.0
マイクロクリスタリンワックス 1.0
カルナウバワックス 2.0
表面が凹凸状の球状ポリメチルシルセスキオキサン粒子(注1) 2.0
植物性スクワラン 14.4
ミネラルオイル 15.0
ヒマワリ油 6.0
トリイソステアリン酸グリセリル 16.0
ダイマージリノール酸ジ(フィトステリル・イソステアリル・セチル・ステアリル・ベヘニル)エステル 16.0
マカデミアナッツ油脂肪酸ジヒドロコレステリル 14.0
黄色4号 1.8
赤色202号 2.0
赤色202号 0.5
酸化防止剤 0.1
防腐剤 0.1
香料 0.1
【0055】
(注1)MSP−K050(日興リカ株式会社製)
【0056】
〔実施例13〕リップスティック
成分 配合量(質量%)
キャンデリラワックス 5.0
水素添加ホホバエステル 1.0
セレシン 7.0
表面が凹凸状の球状ポリメチルシルセスキオキサン粒子(注1) 1.0
トリイソステアリン酸ポリグリセリル 18.7
トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル 35.0
ミネラルオイル 8.0
イソステアリン酸硬化ひまし油 20.0
黄色4号 1.0
赤色202号 3.0
酸化防止剤 0.1
防腐剤 0.1
香料 0.1
【0057】
(注1)MSP−K050(日興リカ株式会社製)
【0058】
〔実施例14〕スティックファンデーション
成分 配合量(質量%)
合成炭化水素ワックス 9.0
オゾケライト 5.0
表面が凹凸状の球状ポリメチルシルセスキオキサン粒子(注1) 4.0
ステアリン酸硬化ひまし油 5.0
トリオクタノイン 8.0
スクワラン 19.7
ホホバ油 19.0
シリコーン処理酸化鉄 1.7
シリコーン処理酸化チタン 8.0
シリコーン処理タルク 5.3
シリコーン処理マイカ 12.0
赤色202号 1.0
紫外線吸収剤 2.0
酸化防止剤 0.1
防腐剤 0.1
香料 0.1
【0059】
(注1)MSP−K050(日興リカ株式会社製)
【0060】
〔実施例15〕フェースカラー
成分 配合量(質量%)
セレシン 4.5
ポリエチレンワックス 4.0
表面が凹凸状の球状ポリメチルシルセスキオキサン粒子(注1) 10.5
ホホバ油 28.2
オリーブ油 10.5
ミネラルオイル 7.7
トリオクタノイン 10.3
シリコーン処理酸化チタン 11.5
シリコーン処理タルク 3.5
シリコーン処理マイカ 2.0
シリコーン処理酸化鉄 2.0
黄色5号 0.7
赤色202号 1.3
紫外線吸収剤 3.0
酸化防止剤 0.1
防腐剤 0.1
香料 0.1
【0061】
(注1)MSP−K050(日興リカ株式会社製)
【0062】
〔実施例16〕リップスティック
成分 配合量(質量%)
エチレン・プロピレンコポリマー 1.0
ポリエチレンワックス 8.0
マイクロクリスタリンワックス 1.0
オゾケライト 2.0
ミツロウ 2.0
表面が凹凸状の球状ポリメチルシルセスキオキサン粒子(注1) 0.5
スクワラン 13.4
ミネラルオイル 15.5
水添ポリイソブテン 6.0
フェニルトリメチコン 16.0
イソノナン酸イソトリデシル 16.0
マカデミアナッツ油脂肪酸ジヒドロコレステリル 14.0
黄色4号 1.8
赤色202号 2.0
赤色201号 0.5
酸化防止剤 0.1
防腐剤 0.1
香料 0.1
【0063】
(注1)MSP−K050(日興リカ株式会社製)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状油性固形化粧料全量中8.0〜20.0質量%の固形油を含む油分65.0〜99.9質量%及び表面が凹凸状の球状ポリメチルシルセスキオキサン粒子を含有する棒状油性固形化粧料。
【請求項2】
表面が凹凸状の球状ポリメチルシルセスキオキサン粒子の含有量が棒状油性固形化粧料全量中0.1〜20.0質量%である請求項1記載の棒状油性固形化粧料。
【請求項3】
表面が凹凸状の球状ポリメチルシルセスキオキサン粒子の含有量が棒状油性固形化粧料全量中0.1〜4.0質量%である請求項1記載の棒状油性固形化粧料。

【公開番号】特開2008−94790(P2008−94790A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−280550(P2006−280550)
【出願日】平成18年10月13日(2006.10.13)
【出願人】(390041036)株式会社日本色材工業研究所 (37)
【Fターム(参考)】