説明

棒状物の保持装置

【課題】車両用内装部材に棒状物を保持させるための保持装置の部品点数を削減して簡潔な構造とすると共に、設置スペースの縮小化を可能にする。
【解決手段】車両用内装部材に収容された状態における第1角度と該車両用内装部材から突出した状態における第2角度との間で揺動自在に軸支され、且つ爪部11bを有する揺動体11と、前記揺動体11を前記第1角度側へ付勢する付勢手段12と、前記揺動体11を前記車両用内装部材に収容された状態で解除可能に係止する係止手段20とを備え、前記揺動体11が、前記棒状物を前記爪部11bで掛止しながら前記車両用内装部材との間に挟持するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は棒状物の保持装置に関し、より詳細には、車両室内のグローブボックスまたはインストルメントパネル等に取り付けられて傘等の棒状物を保持する棒状物の保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の室内に傘を保持するための傘ホルダとして、助手席シートの背面の角部に形成された凹部に出没可能に設けられた把持本体を備え、把持本体が固定爪と弾発付勢された可動爪とを備えることにより、両爪の間に傘を把持できるようにしたものが提案されている(特許文献1参照)。この傘ホルダによれば、使用しないときには把持本体を凹部内に収容できるため、車室空間を広く利用することが可能である。
【0003】
この傘ホルダでは、付勢手段が把持本体を収容時には没入方向へ付勢するとともに、使用時には突出方向へ付勢しており、把持本体が1つの付勢手段によって収容時の角度および使用時の角度へ配置される。また、同文献においては、設置スペースの縮小化を図るために、固定爪を折り畳み可能とし、把持本体を収容するケースを小さくした構成も開示されている。
【特許文献1】特開2004−203284号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に係る傘ホルダでは、把持本体に可動爪を設ける必要があるため、部品点数が多く構造が複雑であった。また、例えば固定爪を折り畳み可能としても、把持本体が可動爪を備えているため、設置スペースの縮小化には限度があった。
【0005】
本発明は、以上の問題を鑑みてなされたものであって、部品点数を削減して簡潔な構造とすると共に、設置スペースの縮小化を可能にした保持装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、車両用内装部材に棒状物を保持させるための保持装置において、前記車両用内装部材に収容された状態における第1角度と該車両用内装部材から突出した状態における第2角度との間で揺動自在に軸支され、且つ爪部を有する揺動体と、前記揺動体を前記第1角度側へ付勢する付勢手段と、前記揺動体を前記車両用内装部材に収容された状態で解除可能に係止する係止手段とを備え、前記揺動体が、前記棒状物を前記爪部で掛止しながら前記車両用内装部材との間に挟持するように構成する。
【0007】
上記保持装置においては、前記付勢手段が前記第1角度と第2角度との間の第3角度へ前記揺動体を付勢し、前記揺動体が前記第2角度と前記第3角度との間にあるときに、前記棒状物を前記車両用内装部材との間に挟持するように構成するとよい。また、前記係止手段が前記揺動体を前記車両用内装部材と略面一となる角度で係止するように構成し、或いは、前記係止手段を、前記揺動体が前記第1の角度側へ押圧されることによって該揺動体の係止および当該揺動体の係止解除を交互に繰り返すプッシュロック装置とするとよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、車両用内装部材と揺動体とに棒状物を挟持させる構成を採るため、揺動体に可動爪等の別部材を設ける必要がなく、部品点数が少なくて済む。また、揺動体のみが車両用内装部材に収容されるスペースを確保すれば揺動体の収容が可能となるため、揺動体の形状を薄型にすることによって保持装置の設置スペースを縮小化することができ、更に、揺動体が車両用内装部材に収容された状態で係止手段によって係止されるため、収容時に保持装置が車室空間を逼迫することもない。
【0009】
また、付勢手段が第1角度と第2角度との間の第3角度へ揺動体を付勢することにより、係止手段の係止を解除したときに揺動体が車両用内装部材から突出した状態となるため、揺動体の把持が容易になるとともに、従来例のように揺動体を把持するために揺動体と車両用内装部材との間に指をかけるための凹凸を設ける必要がないため、保持装置が設けられる部分の美感低下を回避できるだけでなく、使用時に使用者自らが手動で揺動体を車両用内装部材から引き出す必要がないため、特に寒冷地での使用や寒冷期における使用の際に、使用者がグローブを着けていたとしても、把持本体を引き出すためにグローブを外す等の煩わしさを排除することもできる。
【0010】
また、係止手段を、揺動体が車両用内装部材と略面一となる角度で係止するように構成することにより、収容時の車両用内装部材の美感を更に向上させることができる。一方、係止手段をプッシュロック装置とすることにより、ワンプッシュで使用状態および収容状態の切替ができるようになり、操作が容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明を自動車に適用した一実施形態を詳細に説明する。
【0012】
図1は本発明に係る保持装置を自動車のグローブボックス4に配置した状態を示している。同図に示すように、自動車1の車室2の前方に配置されたダッシュボード3には、助手席側の下部にグローブボックス4(車両用内装部品)が配置されている。そして、グローブボックス4の上側中央部には開閉用のノブ5か配置され、その運転席側に棒状物の保持装置としての傘ホルダ10(棒状物の保持装置)が配置されている。傘ホルダ10はグローブボックス4の構成部材であるホルダケース6に対して出没可能に設けられている。なお、図1では、後述する使用時且つ傘7を挟持していない状態の傘ホルダ10が示されており、揺動体としての挟持部11がグローブボックス4の表面4aから突出している。
【0013】
次に、図2〜図4を参照して傘ホルダ10について説明する。図2は傘ホルダ10の斜視図を示し、図3は挟持部11が係止された収容時における傘ホルダ10の断面図を示し、図4は挟持部11が使用時且つ傘7を挟持していない状態における傘ホルダ10の断面図を示している。
【0014】
図2に示すように、傘ホルダ10は、基端側にピン11aを備え、ホルダケース6に揺動自在に軸支された樹脂製の挟持部11と、ホルダケース6と挟持部11との間に介装され、挟持部11をホルダケース6に対して所定の第3角度d3(図4参照)に付勢する付勢手段としてのねじりコイルばね12と、挟持部11とホルダケース6とを係止させるプッシュロック装置20とを構成要素として備えている。
【0015】
挟持部11は、概ね半楕円形断面を有する棒状を呈するとともに、ホルダケース6側へ略直角に曲折してなる爪部11bを先端に備えている。半楕円形断面の弧側の筒状表面はホルダケース6側(爪部11bの曲折する側)に配置され、弦側に形成された平面状の表面11cが挟持部11の全長に亘って延びている。挟持部11は、ホルダケース6に対して図3中に2点鎖線で示す第1角度d1から、図4中に2点鎖線で示す第2角度d2に至る角度範囲で揺動可能に軸支されている。
【0016】
ホルダケース6は凹部6aを画成しており、この凹部6aは、挟持部11が収容時の角度d0(図3参照)から第1角度d1に至る角度範囲にあるときに、挟持部11を内部に収容するのに必要な空間を形成する他、第2角度d2(図4参照)へ挟持部11の揺動を許容するのに必要な空間を挟持部11の基端側に形成している。
【0017】
ねじりコイルばね12は、一端がホルダケース6に固定され、他端が挟持部11に固定されており、挟持部11を第3角度d3(図4参照)へと付勢している。すなわちねじりコイルばね12は、挟持部11が第3角度d3よりも第1角度d1側にあるときに、その先端がホルダケース6から離れる方向へ挟持部11を付勢する一方、挟持部11が第3角度d3よりも第2角度d2側にあるときには、その先端がホルダケース6へ近づく方向へ挟持部11を付勢する。
【0018】
プッシュロック装置20は、ホルダケース6に取り付けられており、挟持部11を収容時の角度d0(図3参照)に揺動させた状態でホルダケース6に係止する。具体的には、挟持部11のホルダケース6側の円弧断面部分に凹部11dが形成されるとともに、この凹部11d内にストライカ11eが突設され、挟持部11の表面11cとグローブボックス4の表面4aとが同一平面をなす状態、すなわち挟持部11とグローブボックス4とが面一となる状態でストライカ11eが把持されることにより、挟持部11の揺動が規制される。
【0019】
次に図5および図6を参照してプッシュロック装置20について説明する。図5は係止状態におけるプッシュロック装置20の断面図を示し、図6は係止解除状態におけるプッシュロック装置20の平面図を示している。図示するように、プッシュロック装置20は、矩形箱状を呈するラッチ本体21と、ラッチ本体21を摺動自在に受容するとともに、ラッチ本体21の摺動方向に沿って延びるガイド孔22aが形成されたラッチケース22と、ラッチ本体21の矩形箱内に受容される状態でラッチケース22とラッチ本体21との間に介装され、ラッチ本体21をラッチケース22から突出する方向へ付勢するコイルばね23と、ラッチ本体21の先端側に傾動自在に設けられたフック25とを備えている。
【0020】
ラッチ本体21には、摺動方向に沿って延びる板状部21aが一体形成されている。この板状部21aの端面には、ガイド孔22aに摺合するストッパ21bが形成され、ラッチ本体21の突出方向への摺動を規制している。一方、ラッチ本体21の挿入方向の規制は、ラッチ本体21の基端がラッチケース22の奥壁に当接することによって行われる。ラッチ本体21の基端がラッチケース22の奥壁に当接すると、挟持部11が第1角度d1(図3参照)へ揺動した状態となる。
【0021】
また、板状部21aの側面にはカム21cが形成されている。このカム21cによって形成されるカム溝に対し、その中間部がラッチケース22に回動自在に支持されたU字型のレバー22bの先端が係合しながら移動することにより、ラッチ本体21がラッチケース22に押し込まれる毎に挿入側の第1位置と突出側の第2位置とをとり得るようになっている。なお、この第2位置は、ストッパ21bがガイド孔22aの端面に当接し、ラッチ本体21の摺動が規制された位置である。
【0022】
ラッチ本体21の先端には、フレキシブル片24を介してフック25が傾動自在に設けられている。フック25は、ラッチ本体21が第1位置にあるときと第2位置にあるときとで傾動角度が異なるようにされている。これにより、フック25がラッチ本体21と伴にホルダケース6方向へ押し込まれ、ラッチ本体21が第1位置に保持されたときに、フック25がストライカ11eと係合し、再度フック25がラッチ本体21と伴に押し込まれ、ラッチ本体21が第2位置に保持されると、プッシュロック装置20はストライカ11eとの係合を解除する。なお、ラッチ本体21が第1位置にあり、プッシュロック装置20が挟持部11を係止しているとき、挟持部11は収容時の角度d0(図3参照)に保持される。なお、プッシュロック装置20についての詳細は、本出願人による特許第3338578号公報を参照されたい。
【0023】
このように構成された傘ホルダ10では、収容時には、挟持部11がグローブボックス4に対する収容時の角度d0でプッシュロック装置20によって係止され、使用時には、乗員が挟持部11の表面11cを押圧することにより、プッシュロック装置20の係止が解除され、ねじりコイルばね12の付勢力によって挟持部11は第3角度d3へ揺動する。この状態では、特に挟持部11が半楕円形状の断面を呈していることにより、挟持部11を把持することが容易になるため、乗員が挟持部11を把持してねじりコイルばね12の付勢力に抗して挟持部11を揺動すれば、挟持部11を第2角度d2まで揺動させることができる。
【0024】
そして、挟持部11を第3角度d3と第2角度d2との間の角度に揺動させた状態で、グローブボックス4(ホルダケース6)と挟持部11との間に傘7(棒状物)を挿入して挟持部11を放すと、挟持部11がねじりコイルばね12の付勢力によって第3角度d3へ向けて付勢される。すると、図7に示すように、傘7は爪部11bで掛止されながら挟持部11とホルダケース6との間に挟持され、グローブボックス4に保持される。
【0025】
なお、第3角度d3は、乗員が挟持部11を把持することが容易であり、且つ揺動軸方向視においてグローブボックス4との間に空隙を生じない角度、或いはグローブボックス4との間に生じる空隙が傘7の直径よりも小さくなる角度であればよい。
【0026】
この傘ホルダ10では、爪部11bを供えた挟持部11とグローブボックス4とで傘7を挟持するため、挟持部11に別部材からなる可動爪等を設ける必要がなく、部品点数の削減が可能となっている。また、グローブボックス4に断面半楕円形状の挟持部11が収容されるスペースを確保すれば、傘ホルダ10をグローブボックス4に収容可能となっており、傘ホルダ10の設置スペースが縮小化されている。更に、挟持部11がグローブボックス4に収容された状態でプッシュロック装置20によって係止されるため、収容時に傘ホルダ10が車室2を逼迫することもない。
【0027】
また、プッシュロック装置20が挟持部11を収容時の角度d0で係止し、挟持部11がグローブボックス4と略面一となるため、収容時のグローブボックス4の優れた美感が実現されるとともに、使用状態および収容状態の切替をワンプッシュで行うことができ、操作が容易になっている。また、係止手段としてプッシュロック装置20を採用し、係止が解除された状態で挟持体11が角度d3へ付勢されることにより、挟持部11を引き出すための凹凸等を設ける必要がないため、傘ホルダ10を設置してもグローブボックス4がすっきりとした形状を呈し、車室2空間の美感の向上に寄与している。
【0028】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。例えば、上記実施形態では、保持装置として傘ホルダ10を例に挙げているが、保持対象物は傘7に限定されるものではなく、棒状を呈するものであれば如何なる物を保持してもよく、保持対象物に応じて揺動体の形状や揺動角度、付勢手段の付勢力等を適宜変更すればよい。また、上記実施形態では、傘ホルダ10がグローブボックス4に対して取り付けられているが、ダッシュボード3やインストルメントパネル、屋根等の内装部材、ドアの内装部材、座席シートの構成部材等、他の車両用内装部材に対して取り付けられてもよい。更に、上記実施形態では挟持部11がホルダケース6を介してグローブボックス4に設置されているが、グローブボックス4が開口または凹部を有し、挟持部11がこの開口等に収容されるように直接グローブボックス4に設置されてもよい。その他、発明の趣旨を逸脱しない範囲であれば適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】自動車のグローブボックスに配置された保持装置の斜視図
【図2】保持装置の斜視図
【図3】揺動体が係止された収容時における保持装置の断面図
【図4】揺動体の係止が解除された使用時における保持装置の断面図
【図5】係止状態におけるプッシュロック装置の断面図
【図6】係止解除状態におけるプッシュロック装置の平面図
【図7】傘を保持した状態における保持装置の斜視図
【符号の説明】
【0030】
4 グローブボックス(車両用内装部品)
4a 表面
6 ホルダケース
7 傘
10 傘ホルダ(棒状物の保持装置)
11 挟持部(揺動体)
11a ピン
11b 爪部
11c 表面
12 ねじりコイルばね(付勢手段)
20 プッシュロック装置
d0 収容時の角度
d1 第1角度
d2 第2角度
d3 第3角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用内装部材に棒状物を保持させるための保持装置であって、
前記車両用内装部材に収容された状態における第1角度と該車両用内装部材から突出した状態における第2角度との間で揺動自在に軸支され、且つ爪部を有する揺動体と、
前記揺動体を前記第1角度側へ付勢する付勢手段と、
前記揺動体を前記車両用内装部材に収容された状態で解除可能に係止する係止手段と
を備え、
前記揺動体が、前記棒状物を前記爪部で掛止しながら前記車両用内装部材との間に挟持することを特徴とする棒状物の保持装置。
【請求項2】
前記付勢手段は、前記第1角度と第2角度との間の第3角度へ前記揺動体を付勢し、
前記揺動体は、前記第2角度と前記第3角度との間にあるときに、前記棒状物を前記車両用内装部材との間に挟持することを特徴とする、請求項1に記載の棒状物の保持装置。
【請求項3】
前記係止手段は、前記車両用内装部材と略面一となる角度で当該揺動体を係止することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の棒状物の保持装置。
【請求項4】
前記係止手段は、前記揺動体が前記第1の角度側へ押圧されることによって当該揺動体の係止および当該揺動体の係止解除を交互に繰り返すプッシュロック装置であることを特徴とする、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の棒状物の保持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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