説明

椅子におけるガススプリング操作装置

【課題】 座に影響を与えることなく、操作レバーおよびその連係手段等を、簡単かつ迅速に組み付けることができるとともに、そのメンテナンス等を行うことができるようにした椅子におけるガススプリング操作装置を提供する。
【解決手段】 脚(2、3、5)によって支持された支基6により座14を支持するとともに、支基6の両側部に、背凭れ9を支持する左右1対の背凭れ支持杆10、10における前方を向く下部の前端部を取り付けた椅子において、いずれかの背凭れ支持杆10の側面に、椅子に設けた可動部の動きを規制するガススプリング12の操作部と連係された操作レバー56を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、椅子に設けられた座の高さ調節用、または背凭れの傾動角度調節用等のガススプリングを操作する操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の装置として、座および背凭れの傾動角度調節用のガススプリングを操作する操作レバーを、座(座席)の一側下部に設けたものがある(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】実公平7−21140号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上述のような従来の装置では、操作レバーおよびそれを枢支する支持体が、座の内部に組み込まれているため、座の厚さを大としなければならないだけでなく、組み立てが面倒であり、ワイヤ等の連結作業や操作レバーのメンテナンス等を行う場合に、座のクッション体をその都度外さなければならない等の問題がある。
【0004】
本発明は、従来の技術が有する上記のような問題点に鑑み、座に影響を与えることなく、操作レバーおよびその連係手段等を、簡単かつ迅速に組み付けることができるとともに、そのメンテナンス等を行うことができるようにした椅子におけるガススプリング操作装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によると、上記課題は次のようにして解決される。
(1) 脚によって支持された支基により座を支持するとともに、前記支基の両側部に、背凭れを支持する左右1対の背凭れ支持杆の下部の前端部を取り付けた椅子において、前記背凭れ支持杆のいずれかの下部側面に、椅子に設けた可動部の動きを規制するガススプリングの操作部と連係された操作レバーを設ける。
【0006】
(2) 上記(1)項において、背凭れ支持杆の一部に、長手方向と直交する方向を向く突部を設け、この突部に左右方向に貫通する窓孔を設け、この窓孔内に、操作レバーを前後方向を向く軸をもって枢着する。
【0007】
(3) 上記(2)項において、窓孔内に箱体を嵌合し、この箱体に操作レバーを枢着する。
【0008】
(4) 上記(1)〜(3)項のいずれかにおいて、ガススプリングの操作部と操作レバーとを連係する連係手段を、ガススプリングの操作部におけるプッシュバルブを押動しうる作動レバーに一端が連結され、かつ他端が、背凭れ支持杆の内側から背凭れ支持杆を横切って操作レバーと連結されたワイヤと、このワイヤが軸線方向に摺動可能として挿通され、かつ一端がガススプリングの操作部の外面に、また他端が背凭れ支持杆またはそれと一体の部材にそれぞれ止着された可撓性のチューブとからなるワイヤユニットとする。
【0009】
(5) 上記(1)〜(4)項のいずれかにおいて、ガススプリングを、伸縮式の脚内に設けられ、プッシュバルブが不作動位置に位置しているときは、脚の伸縮を不能とし、プッシュバルブが作動位置に押動されることにより、脚の伸縮を可能とするようにした座の高さ調節用のものとする。
【0010】
(6) 上記(1)〜(5)項のいずれかにおいて、ガススプリングを、一端が支基に連結され、かつ他端が、背凭れ支持杆と一体となって回動する腕部の先端部に連結され、一端に設けたプッシュバルブを作動位置に移動させることにより伸縮可能となり、かつ前記プッシュバルブを不作動位置に復帰させることにより、伸縮不能となるようにした背凭れの傾動角度調節用のものとする。
【0011】
(7) 上記(1)〜(6)項のいずれかにおいて、左右1対の背凭れ支持杆のいずれか一方に、座の高さ調節用のガススプリングを操作する操作レバーを設け、かつ他方の背凭れ支持杆に、背凭れの傾動角度調節用のガススプリングを操作する操作レバーを設ける。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、次のような効果を奏することができる。
(1) 請求項1記載の発明によると、背凭れ支持杆の側面に、ガススプリングの操作部と連係された操作レバーを設けたので、座に影響を与えることなく、操作レバーおよびその連係手段等を、簡単かつ迅速に組み付けることができるとともに、座のクッション体等を外すことなく、メンテナンス等を行うことができる。
【0013】
(2) 請求項2記載の発明によると、背凭れ支持杆の一部に突部を設け、この突部に窓孔を設け、この窓孔内に操作レバーを枢着したので、背凭れ支持杆の強度を低下させることなく、背凭れ支持杆に操作レバー装着用の窓孔を設けることができる。
【0014】
(3) 請求項3記載の発明によると、箱体に操作レバーを装着した状態で、箱体を背凭れ支持杆の窓孔に嵌合するだけで、操作レバーを背凭れ支持杆に簡単かつ迅速に組み付けることができる。
【0015】
(4) 請求項4記載の発明によると、ガススプリングの操作部と操作レバーとを、ワイヤユニットにより簡単かつ迅速に連結することができる。特に、操作レバーには、背凭れ支持杆の内側の空間を利用して、ワイヤを連結することができ、その連結作業が座によって妨げられることがなく、まして従来のように、座のクッション体を外す必要も全くない。
【0016】
(5) 請求項5記載の発明のように、ガススプリングを座の高さ調節用のものとしたときは、ガススプリングの操作部と操作レバーとが互いに近接するので、ワイヤユニット等の連係手段を短くすることができる。
【0017】
(6) 請求項6記載の発明のように、ガススプリングを背凭れの傾動角度調節用のものとすると、背凭れを任意の傾斜角度で無段階的に停止させることができる。
【0018】
(7) 請求項7記載の発明によると、左右の背凭れ支持杆を有効に利用して、それぞれに操作レバーを設け、各操作レバーにより、互いに異なる機能のガススプリングを操作することができる。また、2個の操作レバーをバランスよく配設することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態を備えるリクライニング椅子を、添付図面を参照して説明する。
図1〜図3に示すように、このリクライニング椅子は、先端部にキャスタ(1)が設けられた放射状をなす5本の脚杆(2)を有する脚体(3)を備えている。脚体(3)の中央には、ガススプリング(4)を備える伸縮式の脚柱(5)が立設されており、脚柱(5)の上端には、脚体(3)に対する可動部となる支基(6)の後部が固着されている。
【0020】
支基(6)は、前上方に向かって延出する前半部の上面が開口する平面視菱形のほぼ中空箱状の支基本体(6a)を有し、その前半部の上面の開口部は、着脱可能な上部カバー(7)により覆われている。支基本体(6a)の前部両側面には、左右両側方に向かって斜め上方に延出するとともに、先端部上面が支基本体(6a)より上方に位置するようにした左右1対の腕部(6b)(6b)が一体的に形成されている。
【0021】
支基本体(6a)の前後方向のほぼ中央には、両端部に角軸部(8a)(8a)を有する左右方向を向く枢軸(8)が貫通しており、支基本体(6a)より両側方に突出する枢軸(8)の両端部の角軸部(8a)(8a)には、背凭れ(9)を支持する左右1対の背凭れ支持杆(10)(10)における前方を向く下部の前端部に形成された左右方向を向く筒部(10a)(10a)が固嵌され、枢軸(8)と背凭れ支持杆(10)(10)と背凭れ(9)とは、枢軸(8)の軸線を中心として、互いに一体となって支基(6)に対して回動しうるようになっている。
【0022】
支基(6)には、枢軸(8)および背凭れ支持杆(10)(10)を介して、背凭れ(9)を起立する方向に付勢する付勢手段(A)が設けられている。
図3に示すように、付勢手段(A)は、枢軸(8)を、図2における反時計回り方向に付勢する2個のゴムトーションスプリング(11)(11)からなる回動付勢手段(B)、およびその付勢力調節手段(C)(図7および図11参照)、並びにガススプリング(12)を含むガススプリングユニット(D)を備えている。
この付勢手段(A)については後に詳細に説明することとし、先に、リクライニング椅子全体の概略構成について簡単に説明する。
【0023】
左右のゴムトーションスプリング(11)(11)の下面は、支基本体(6a)の下面に着脱可能に設けられた左右1対の下部カバー(13)(13)により覆われている。
【0024】
図3〜図6に示すように、左右の背凭れ支持杆(10)(10)における枢軸(8)より若干後方の部分には、各背凭れ支持杆(10)の長手方向と直交する上方を向く短寸の突部(10b)(10b)が設けられており、各突部(10b)の上端部には、座(14)の両側部を支持する前後方向を向く左右1対の座受けフレーム(15)(15)の後端部が、左右方向を向く軸(16)をもって、それぞれ連結されている。
【0025】
各座受けフレーム(15)の前部は、上面が開口する箱状をなして下方に延出し、その下端面が後下方に向かって傾斜する傾斜面(17)をなし、かつその傾斜面(17)の後端に連続して、後上方を向く起立壁(18)が形成されている。
各傾斜面(17)は、支基(6)における腕部(6b)の先端部上面に形成された後下方に向かって傾斜する傾斜受け面(19)に前後方向に摺動自在に載置されている。
【0026】
支基(6)における腕部(6b)の先端部と、座受けフレーム(15)の前部との間には、傾斜面(17)が傾斜受け面(19)から上方に離脱するのを阻止する外れ止め手段(20)が設けられている。
この例では、外れ止め手段(20)は、傾斜面(17)に設けた前後方向を向く長孔(21)と、傾斜受け面(19)に突設され、かつ長孔(21)に摺動自在に嵌合されるとともに、長孔(21)の幅より大きい拡大頭部(22a)を有する有頭軸(22)とを備えるものとしてあるが、長孔(21)を傾斜受け面(19)に設け、かつ有頭軸(22)を傾斜面(17)に設けて実施してもよい。また、図示の例では、有頭軸(22)の軸部に相当する部分を、前後方向を向く垂直板状としてあるが、これを円形軸としてもよい。
【0027】
長孔(21)は、傾斜面(17)の前端近傍から後方に延び、後端が起立壁(18)より後方に開口している。起立壁(18)には、長孔(21)と連通し、かつ傾斜受け面に(19)突設した有頭軸(22)の拡大頭部(22a)が通過可能の開口(23)が設けられている。
【0028】
したがって、開口(23)より有頭軸(22)を導入させつつ、傾斜面(17)を傾斜受け面(19)に沿って後方に摺動させ、かつ各座受けフレーム(15)の後端部を、軸(16)をもって各背凭れ支持杆(10)に連結することにより、各座受けフレーム(15)を簡単かつ迅速に、支基(6)および背凭れ支持杆(10)に組み付けることができる。
【0029】
組み付け後には、背凭れ(9)が起立状態から後傾させられるのに連動して、各座受けフレーム(15)およびそれによって支持された座(14)は、図4に示す状態から、図5に示すように、傾斜面(17)が傾斜受け面(19)に沿って摺動しつつ、後下方に向かって移動させられる。
【0030】
このときの背凭れ(9)と座(14)の動きにより、着座者の背と大腿部との間、および大腿部と下腿部との間の角度が自然に広がり、かつ下腿部が、接床した足の踝を中心として、緩やかに後傾し、着座者に無理のない快適な移動感をもたらすことができる。
また、背凭れ(9)を後傾状態から起立状態に移動させた際には、座(14)は上記と逆に移動し、このときにも、着座者に無理のない快適な移動感を与えることができる。
【0031】
なお、傾斜面(17)と傾斜受け面(19)とを、側方から見て完全な直線とすると、背凭れ(9)の後傾に連動して、座(14)が後下方に移動する際に、面接触から線接触に変わることがあるが、それらが常に広い範囲で面接触するように、傾斜面(17)と傾斜受け面(19)とを、緩やかな曲面とすることが望ましい。
【0032】
座(14)は、平面視ほぼ方形枠状の座フレーム(14a)に、例えば伸縮性繊維を用いたメッシュ地、平織り地等の布地、または合成樹脂製フィルム等からなる伸縮性を有する張り材(14b)を張設して形成したものよりなり、着座者が着座したとき、張り材(14b)が伸長して、座面中央部が着座者の臀部に沿って下方に凹入し、張り材(14b)の中央部が沈み込むことにより、着座者に快適な着座感を付与することができるようになっている。
【0033】
着座時に、このような座(14)の中央部が沈み込むことができるようにするため、左右1対の腕部(6b)(6b)の先端部上面と両背凭れ支持杆(10)(10)における突部(10b)(10b)とにより座フレーム(14a)のほぼ四隅を、支基(6)より高く持ち上げて支持し、もって、座(14)の中央部下面と支基本体(6a)の上面との間に、座(14)の下面中央部が下方に撓むことができる空所(24)を形成してある。
【0034】
背凭れ(9)も、座(14)に合わせて、正面視ほぼ方形枠状の背凭れフレーム(9a)に、上記張り材(14b)と同様の材質の伸縮性を有する張り材(9b)を張設して形成されている。
【0035】
座(14)は、左右1対の座受けフレーム(15)(15)に、前後位置調節可能として装着されているが、そのための具体的な構成は、本発明に直接関係しないので、その詳細な図示および説明は省略する。
なお、座(14)の前後位置調節を行わないものにおいては、座(14)の後部を、軸(16)をもって直接左右の背凭れ支持杆(10)(10)における突部(10b)(10b)の上部に連結し、かつ座(14)の前部下面を、直接左右の腕部(6b)(6b)の先端部上面に前後方向に摺動可能として装着してもよい。
【0036】
各背凭れ支持杆(10)には、肘掛け(25)が設けられているが、これも本発明に直接関係しないので、その詳細な図示および説明は省略する。
【0037】
次に、図3および図7〜図11を参照して、付勢手段(A)の詳細について説明する。
図7に示すように、付勢手段(A)は、支基(6)の下部に設けられた2個のゴムトーションスプリング(11)(11)からなる回動付勢手段(B)、および支基(6)の上部に設けられた付勢力調節手段(C)、並びにガススプリング(12)を含むガススプリングユニット(D)を備えている。
【0038】
図8および図9に示すように、枢軸(8)の中央部には、それと直交するようにほぼ下方を向く腕部(26)が設けられており、その両側方には、ゴムトーションスプリング(11)(11)が配設されている。
各ゴムトーションスプリング(11)は、枢軸(8)を芯材とし、かつ枢軸(8)と同心をなすようにして支基(6)に回り止めされた外筒(27)と、この外筒(27)と枢軸(8)との間に充填され、かつ枢軸(8)が外筒(27)に対して中心軸線回りに回動することにより、弾性変形して、枢軸(8)に復帰回動力を付与するようにしたゴム等の弾性体(28)とを備えている。
【0039】
各ゴムトーションスプリング(11)より外側方に突出する枢軸(8)の両側部には、上面中央に位置決め用の突起(29a)が設けられた軸受(29)(29)が外嵌されている。
【0040】
支基本体(6a)の下部中央には、左右方向を向きかつ下面が開口する半円筒部(6c)が形成されており、その下面両側部には、左右方向を向きかつ上面が開口する半円筒状をなす左右1対の下部カバー(13)(13)が、止めねじ(30)(30)をもって取り付けられている(図10参照)。
【0041】
枢軸(8)とそれに外嵌された左右1対ずつのゴムトーションスプリング(11)(11)およびその外側の軸受(29)(29)は、左右のゴムトーションスプリング(11)(11)が、半円筒部(6b)と下部カバー(13)(13)との対向部に形成された凹部(31)(32)内に遊嵌され、その外側の軸受(29)(29)が半円筒部(6b)と下部カバー(13)(13)とにより挾持され(図10参照)、軸受(29)(29)よりさらに外側方に突出する枢軸(8)の両側部が、半円筒部(6b)と下部カバー(13)(13)との両側面の対向縁に設けた半円状の切欠き(33)(34)を挿通するようにして(図9参照)、支基(6)の半円筒部(6b)と下部カバー(13)(13)との間に収容されている。
【0042】
左右の下部カバー(13)(13)の間を通って垂下する腕部(26)の下端部には、前上方を向くガススプリング(12)の後下端部が、左右方向を向く軸(35)をもって連結されている。腕部(26)は、背凭れ支持杆(10)および背凭れ(9)とともに、支基(6)に対する可動部となっている。
ガススプリング(12)の前上端部は、ヘッドカバー(36)および左右方向を向く軸(37)をもって、支基本体(6a)の前端中央部に連結されている。
ガススプリング(12)は、その前端部に設けたプッシュバルブ(12a)を作動位置に押動すると、内部のガス圧および内蔵した補助ばねの付勢力により、伸長するように付勢されつつ、伸縮が可能となり、またプッシュバルブ(12a)を不作動位置に復帰させると、伸縮が不能となるようにした公知のものである。
【0043】
図8に示すように、ガススプリング(12)の操作部を形成するヘッドカバー(36)内には、プッシュバルブ(12a)を押動するほぼ上下方向を向く作動レバー(38)の上端部が、左右方向を向く軸(38a)をもって枢着されており、ヘッドカバー(36)から前下方に突出した作動レバー(38)の下端部には、連係手段であるワイヤユニット(39)における可撓性のチューブ(40)内に軸線方向に摺動可能として挿通されたワイヤ(41)の一端が止着されている。
【0044】
図12に示すように、チューブ(40)の一端は、ヘッドカバー(36)の下面に固着したブラケット(42)の右側面に止着され、その端末から左方に延出するワイヤ(41)は、ブラケット(42)の下面に設けた4分の1円弧状のガイド部(42a)に沿って前上向に方向転換させられ、その前上端において上記作動レバー(38)に止着されている。
【0045】
ワイヤユニット(39)におけるワイヤ(41)の他端は、右方の背凭れ支持杆(10)の突部(10b)の中間部に枢着した外側方を向く操作レバー(56)に、突部(10b)の中間部に設けた窓孔(57)を通って、背凭れ支持杆(10)の内側方から連結されている。
図13に示すように、操作レバー(56)は、具体的には、窓孔(57)に外側から嵌合した箱体(58)の上部に、ほぼ前後方向を向く軸(59)をもって枢着されている。
【0046】
箱体(58)の外周部と上下面とには、支持杆(10)の突部(10b)の外側面に当接するようにした鍔部(60)と、突部(10b)の内側面に係合するようにした弾性係合爪(61)(62)とがそれぞれ設けられ、箱体(58)を窓孔(57)に外側方から嵌合したとき、支持杆(10)の突部(10b)の外側面に鍔部が当接するのと同時に、弾性係合爪(61)(62)が突部(10b)の内側面に係合し、箱体(58)が窓孔(57)から外れ止めされるようになっている。
【0047】
箱体(58)の内方の端部には、チューブ取付片(63)が設けられ、ここに、椅子の内側から延出してきたワイヤユニット(39)におけるチューブ(40)の他端が止着されている。
【0048】
このワイヤユニット(39)により、作動レバー(38)は操作レバー(56)に連係され、操作レバー(56)を外上方に引き上げることにより、作動レバー(38)はプッシュバルブ(12a)を作動位置に押動し、操作レバー(56)から手を離すと、プッシュバルブ(12a)の不作動位置への復帰力により、作動レバー(38)および操作レバー(56)は、元の不作動位置へ復帰させられるようになっている。
なお、操作レバー(56)に、不作動位置への復帰回動用のばね(図示略)を設けてもよい。
【0049】
ガススプリング(12)と、腕部(26)、軸(35)(37)、ヘッドカバー(36)等とにより、ガススプリングユニット(D)が形成されている。このガススプリングユニット(D)は、プッシュバルブ(12a)が作動位置に位置しているときは、回動付勢手段(B)の付勢力を助勢する作用をし、またプッシュバルブ(12a)を不作動位置とすることにより、背凭れ(9)を任意の傾斜角度で無段階的に停止させることができる。
【0050】
図11に示すように、回動付勢手段(B)の初期付勢力を調節する付勢力調節手段(C)は、支基本体(6a)の上部ほぼ中央に回転自在に枢支され、中央に近い左右両側部に順ねじ部(43)と逆ねじ部(44)とを有し、かつ支基本体(6a)から外側方に突出した、この例では左方の端部に操作ハンドル(45)が設けられた左右方向を向く操作軸(46)と、順ねじ部(43)と逆ねじ部(44)とに螺合する雌ねじ孔(47)(48)を有する左右1対の移動駒(49)(50)と、後端部(基端部)が、左右のゴムトーションスプリング(11)(11)の外筒(27)(27)の外周部同士を連結する左右方向を向く軸(51)に連結された前方を向く連結杆(52)と、後端部が各移動駒(49)(50)に上下方向を向く軸(53)をもって連結され、かつ前端部が連結杆(52)の前端部(先端部)に連結され、操作軸(46)の回転に連動して、互いに平面視ハ字状をなして、開閉することにより、連結杆(52)を前後方向に移動させて、左右の外筒(27)(27)をその中心軸線回りに回動させるようにした1対のリンク(54)(55)とを備えている。
【0051】
この例では、連結杆(52)の前端部を、支基本体(6a)に前後方向に摺動可能として支持させ、かつ連結杆(52)における前方を向く基片(52a)の前端部に、側面視後向コ字状をなす側方突出部(52b)を設け、この側方突出部(52b)と基片(52a)との内隅部に、各リンク(54)(55)の前端を、垂直軸線まわりに回動可能として単に当接させるだけとしてある。
このような構成としても、ゴムトーションスプリング(11)(11)の付勢力が、連結杆(52)を常時後方に引くように作用しており、しかも平面視ハ字状をなす左右1対のリンク(54)(55)の前端同士は、それらの後端同士より常に内方に位置するようにしてあるので、左右のリンク(54)(55)の前端が側方突出部(52b)と基片(52a)との内隅部から外側方に外れることはない。
【0052】
しかし、各リンク(54)(55)の前端部を、各リンク(54)(55)の後端部を各移動駒(49)(50)に連結する上下方向を向く軸(53)と平行の軸(図示略)をもって、連結杆(52)の先端部に枢着してもよい。
【0053】
かくして、操作ハンドル(45)により操作軸(46)を回転させると、1対の移動駒(49)(50)が互いに遠近移動し、それに伴ってハ字状をなす1対のリンク(54)(55)が互いに開閉して、連結杆(52)が後方および前方に移動させられ、それによって外筒(27)(27)が枢軸まわりに回動させられ、回動付勢手段(B)の所期付勢力、それに伴って背凭れ(9)の付勢力全体の強さが弱められたり、強められたりする。
【0054】
このときの操作ハンドル(45)の操作は、着座者が、着座姿勢のまま、座(14)の右側部下方に手を伸ばすことによって簡単に行うことができる。
また、この例では、1対の移動駒(49)(50)が互いに近づき、かつハ字状をなす1対のリンク(54)(55)が互いに閉じる方向に移動することにより、回動付勢手段(B)の付勢力が強まるように設定してあるので、操作軸(46)の1回転当たりの連結杆(52)の前方への移動量が漸次減少し、背凭れの所期付勢力が大となっても、操作軸の回転抵抗は増大することがなく、操作ハンドルを常時軽力で操作することができる。
【0055】
左方の背凭れ支持杆(10)の突部(10b)の中間部には、上述の右方の背凭れ支持杆(10)の突部(10b)の中間部に設けたのと同一の窓孔(57)、箱体(58)、操作レバー(56)等が、右方のものと左右対称として設けられている。
この左方の操作レバー(56)には、図7に示すように、上述のワイヤユニット(39)より短寸のワイヤユニット(64)におけるワイヤ(65)の一端が止着されている。
【0056】
ワイヤ(65)は、左方の箱体(58)におけるチューブ取付片(63)(図13参照)に一端が止着された可撓性のチューブ(66)内に、軸線方向に摺動自在に挿通させられている。
【0057】
図14に示すように、チューブ(66)の他端は、支基本体(6a)の後部中央に設けられた上下方向を向く円形孔(67)に嵌合された筒状の操作部ケース(68)の上端縁より起立するチューブ取付片(69)に止着されている。
チューブ(66)の他端より延出するワイヤ(65)の他端は、操作部ケース(68)内の下部に前後方向を向く軸(70)をもって枢着された正面形がL字状の作動レバー(71)における上向の腕部(71a)の上端部に止着されている。
【0058】
作動レバー(71)における上向の腕部(71a)の下端よりほぼ直角をなして側方に延出する横向き腕部(71b)の先端部は、脚柱(5)伸縮用のガススプリング(4)の上端に設けられたプッシュバルブ(4a)の直上に位置し、操作レバー(56)の操作によって、ワイヤ(65)が引かれることにより、作動レバー(71)は、図14に実線で示す不作動位置から、同じく想像線で示すように、プッシュバルブ(4a)を下方に押し込む作動位置へ回動させられるようになっている。
【0059】
ガススプリング(4)は、上述のガススプリング(12)と同様の公知のものであり、プッシュバルブ(4a)が図14に実線で示す不作動位置に位置しているときは、伸縮不能となり、プッシュバルブ(4a)が同じく想像線で示す不作動位置まで押し下げられることにより、伸縮可能となるとともに、内部のばね作用により、伸長する方向に付勢され、可動部である支基(6)を上昇させるように作用する。
【0060】
以上から明らかなように、本発明の椅子におけるガススプリング操作装置によると、背凭れ支持杆(10)の側面に、ガススプリング(4)(12)の操作部と連係された操作レバー(56)を設けたので、座(14)に影響を与えることなく、操作レバー(56)およびその連係手段(ワイヤユニット(39)(64))等を、簡単かつ迅速に組み付けることができるとともに、座(14)のクッション体を外すことなく、メンテナンス等を行うことができる。
【0061】
また、上記実施形態のように、左右1対の背凭れ支持杆のいずれか一方に、座の高さ調節用のガススプリングを操作する操作レバーを設け、かつ他方の背凭れ支持杆に、背凭れの傾動角度調節用のガススプリングを操作する操作レバーを設けると、左右の背凭れ支持杆を有効に利用して、それぞれに操作レバーを設け、各操作レバーにより、互いに異なる機能のガススプリングを操作することができる。また、2個の操作レバーをバランスよく配設することができる。
【0062】
なお、本発明においては、本発明の範囲を逸脱しない範囲で、幾多の異なる形態での実施が可能である。
例えば、操作レバー(56)を、背凭れ支持杆(10)の外側面に、前後方向または上下方向を向く軸をもって直接枢着してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の一実施形態を備える椅子の正面図である。
【図2】同じく、側面図である。
【図3】同じく、主要部材の分解斜視図である。
【図4】同じく、背凭れを起立位置としたときの要部の拡大側面図である。
【図5】同じく、背凭れを後傾させたときの要部の拡大側面図である。
【図6】同じく、図4のVI−VI線に沿う部分平面図である。
【図7】同じく、背凭れの傾動装置の分解斜視図である。
【図8】同じく、支基の中央縦断側面図である。
【図9】同じく、図8のIX−IX線に沿う縦断正面図である。
【図10】同じく、図9のX−X線に沿う縦断側面図である。
【図11】同じく、図8のXI−XI線に沿う横断平面図である。
【図12】同じく、図4のXII−XII線矢視図である。
【図13】同じく、図4のXIII−XIII線に沿う拡大断面図である。
【図14】同じく、図4のXIV−XIV線に沿う拡大縦断正面図である。
【符号の説明】
【0064】
(A)付勢手段
(B)回動付勢手段
(C)付勢力調節手段
(D)ガススプリングユニット
(1)キャスタ
(2)脚杆
(3)脚体
(4)ガススプリング
(5)脚柱
(6)支基(可動部)
(6a)支基本体
(6b)腕部
(6c)半円筒部
(7)上部カバー
(8)枢軸(芯材)
(8a)角軸部
(9)背凭れ
(9a)背凭れフレーム
(9b)張り材
(10)背凭れ支持杆
(10a)筒部
(10b)突部
(11)ゴムトーションスプリング
(12)ガススプリング
(12a)プッシュバルブ
(13)下部カバー
(14)座
(14a)座フレーム
(14b)張り材
(15)座受けフレーム
(16)軸
(17)傾斜面
(18)起立壁
(19)傾斜受け面
(20)外れ止め手段
(21)長孔
(22)有頭軸
(22a)拡大頭部
(23)開口
(24)空所
(25)肘掛け
(26)腕部(可動部)
(27)外筒
(28)弾性体
(29)軸受
(29a)突起
(30)止めねじ
(31)(32)凹部
(33)(34)切欠き
(35)軸
(36)ヘッドカバー(操作部)
(37)軸
(38)作動レバー
(38a)軸
(39)ワイヤユニット(連係手段)
(40)チューブ
(41)ワイヤ
(42)ブラケット
(42a)ガイド部
(43)順ねじ部
(44)逆ねじ部
(45)操作ハンドル
(46)操作軸
(47)(48)雌ねじ孔
(49)(50)移動駒
(51)軸
(52)連結杆
(52a)基片
(52b)側方突出部
(53)軸
(54)(55)リンク
(56)操作レバー
(57)窓孔
(58)箱体
(59)軸
(60)鍔部
(61)(62)弾性係合爪
(63)チューブ取付片
(64)ワイヤユニット(連係手段)
(65)ワイヤ
(66)チューブ
(67)円形孔
(68)操作部ケース
(69)チューブ取付片
(70)軸
(71)作動レバー
(71a)上向き腕部
(71b)横向き腕部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脚によって支持された支基により座を支持するとともに、前記支基の両側部に、背凭れを支持する左右1対の背凭れ支持杆の下部の前端部を取り付けた椅子において、前記背凭れ支持杆のいずれかの下部側面に、椅子に設けた可動部の動きを規制するガススプリングの操作部と連係された操作レバーを設けたことを特徴とする椅子におけるガススプリング操作装置。
【請求項2】
背凭れ支持杆の一部に、長手方向と直交する方向を向く突部を設け、この突部に左右方向に貫通する窓孔を設け、この窓孔内に、操作レバーを前後方向を向く軸をもって枢着した請求項1記載の椅子におけるガススプリング操作装置。
【請求項3】
窓孔内に箱体を嵌合し、この箱体に操作レバーを枢着した請求項2記載の椅子におけるガススプリング操作装置。
【請求項4】
ガススプリングの操作部と操作レバーとを連係する連係手段を、ガススプリングの操作部におけるプッシュバルブを押動しうる作動レバーに一端が連結され、かつ他端が、背凭れ支持杆の内側から背凭れ支持杆を横切って操作レバーと連結されたワイヤと、このワイヤが軸線方向に摺動可能として挿通され、かつ一端がガススプリングの操作部の外面に、また他端が背凭れ支持杆またはそれと一体の部材にそれぞれ止着された可撓性のチューブとからなるワイヤユニットとした請求項1〜3のいずれかに記載の椅子におけるガススプリング操作装置。
【請求項5】
ガススプリングを、伸縮式の脚内に設けられ、プッシュバルブが不作動位置に位置しているときは、脚の伸縮を不能とし、プッシュバルブが作動位置に押動されることにより、脚の伸縮を可能とするようにした座の高さ調節用のものとした請求項1〜4のいずれかに記載の椅子におけるガススプリング操作装置。
【請求項6】
ガススプリングを、一端が支基に連結され、かつ他端が、背凭れ支持杆と一体となって回動する腕部の先端部に連結され、一端に設けたプッシュバルブを作動位置に移動させることにより伸縮可能となり、かつ前記プッシュバルブを不作動位置に復帰させることにより、伸縮不能となるようにした背凭れの傾動角度調節用のものとした請求項1〜5のいずれかに記載の椅子におけるガススプリング操作装置。
【請求項7】
左右1対の背凭れ支持杆のいずれか一方に、座の高さ調節用のガススプリングを操作する操作レバーを設け、かつ他方の背凭れ支持杆に、背凭れの傾動角度調節用のガススプリングを操作する操作レバーを設けた請求項1〜6のいずれかに記載の椅子におけるガススプリング操作装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−109999(P2006−109999A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−299232(P2004−299232)
【出願日】平成16年10月13日(2004.10.13)
【出願人】(000000561)株式会社岡村製作所 (1,415)
【Fターム(参考)】