説明

椅子における座体の前後位置調節装置

【課題】被係合部に対し、係合部を接近する方向に移動させて、それらの係合状態が解除されるようにし、装置全体の小型化と操作レバーの操作性を向上させる。
【解決手段】被係合部35bを、座支持フレーム14bの前後方向を向く長孔の対向面に設け、回動操作しうる操作レバー37に、作動軸38を連係し、この作動軸38の先端に、係合部48を、被係合部35bと常時係合するように設け、かつ係合部35bよりも基端寄りの作動軸38に、被係合部35bを前後方向に通過可能な小径部49を設け、操作レバー37の回動操作時に小径部49が被係合部35bと対向する位置に移動することにより、係合部48と被係合部35bとの係合が解除されるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、椅子における座体の前後位置を、レバー操作により段階的に調節しうるようにした座体の前後位置調節装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の椅子における座体の前後位置調節装置としては、例えば特許文献1及び2に記載されているものがある。
【特許文献1】実開平4−43140号公報
【特許文献2】特開2004−49655号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1に記載されている座体の前後位置調節装置においては、脚体の上部に設けた座支持部材(スライド枠)の左右方向の中央部に、前後複数のロック孔を設け、座体下部のスライド案内枠の側面に枢着した操作レバーに、上記ロック孔に先端部が選択的に係合する左右方向に長い係止杆を取付けているため、位置調節装置全体の左右寸法が大となるとともに、ロック孔に係止杆が係合した状態で、座体に前後方向の強い力が加わった際に、係止杆やその支持部が変形する恐れがある。
【0004】
また、座体の前後位置を調節する際には、係止杆の先端部をロック孔より完全に離脱させて、他のロック孔に係合する必要があるため、操作レバーの回動操作量が大きくなり、操作性が悪くなる。
【0005】
特許文献2に記載のものにおいては、脚体上部の座支持部材(ガイドレール)の外側面に、前後複数の被係合部(係合溝)を設け、座支持部材上を前後に摺動する座体下部の可動レールの外側面に、上記被係合部に選択的に係合する係合部(係合突起)を備える操作レバーを、上下に回動可能に枢着しているため、被係合部に対し、係合部と操作レバーとが近接し、上記特許文献1のような問題の生じる恐れはない。
【0006】
しかし、被係合部が座支持部材の外側面に設けられ、それが外部に露呈しているため、椅子の体裁が悪く、かつ座支持部材に手を触れたときの手触り感も悪い。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされもので、被係合部に対し、係合部を接近する方向に移動させて、それらの係合状態が解除されるようにし、装置全体を小型化するとともに、操作レバーの操作性を向上させ、かつ被係合部や係合部が外部に露呈するのを防止することにより、体裁を向上させうるようにした椅子における座体の前後位置調節装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によると、上記課題は、次のようにして解決される。
(1)脚体に設けた座支持フレームにより、座体を、ガイド手段をもって前後に移動可能に支持し、前記座支持フレームに設けた前後複数の被係合部に、前記座体に設けた操作レバーに連係された係合部を選択的に係合させることにより、座体の前後位置を段階的に調節しうるようにした椅子における座体の前後位置調節装置において、前記被係合部を、前記座支持フレームに形成した左右両方向に開口する前後方向を向く長孔の対向面に設け、前後方向を向く軸回りに回動しうるようにした前記操作レバーに、左右方向を向く作動軸を、操作レバーの回動操作により前記長孔と直交する方向に移動しうるように連係し、この作動軸の先端に、前記係合部を、前記被係合部と常時係合するように設け、かつ係合部よりも基端寄りの作動軸に、前記被係合部を前後方向に通過可能な、前記係合部よりも小径をなす小径部を設け、前記操作レバーの回動操作時に前記小径部が被係合部と対向する位置に移動することにより、係合部と被係合部との係合が解除されるようにする。
【0009】
(2)上記(1)項において、長孔の対向面に、小径軸が前後方向に通過可能な狭窄部を、所定間隔おきに複数形成し、互いに隣接する狭窄部間を、係合部が係脱する被係合部とする。
【0010】
(3)上記(1)または(2)項において、座支持フレームが、左右1対の側部フレームを備える一方、座体の下面に、前記両側部フレーム上を前後に摺動する左右1対のスライド板を備えるスライドフレームを設け、前記一方の側部フレームの内側面に、被係合部を有する長孔を設けるとともに、前記側部フレームと対向する前記一方のスライド板に、操作レバーと、作動軸とを、操作レバーの上向き回動操作時に、係合部が座体の内方より外側方に移動して、長孔の被係合部より離脱するように設ける。
【0011】
(4)上記(3)項において、操作レバーの把手部と反対側の端部に、作動軸に上方より跨嵌する二股状の作動片を連設し、この作動片と作動軸とを前後方向を向くピンにより連動可能に連結する。
【0012】
(5)上記(1)〜(4)項のいずれかにおいて、作動軸を、座体に設けたガイド筒により摺動可能に保持する。
【0013】
(6)上記(1)〜(5)項のいずれかにおいて、作動軸を、その係合部が被係合部と係合する方向に常時付勢する付勢手段を設ける。
【0014】
(7)上記(1)〜(6)項のいずれかにおいて、ガイド手段が、座体と座支持フレームとの対向面のいずれか一方に設けられた左右1対の前後方向を向くガイド長孔と、このガイド長孔を挿通して前記座体と座支持フレームとの他方の対向面に固定され、かつ上下いずれか一方の端部に、前記ガイド長孔の左右幅よりも大きい拡径頭部を有する取付具とを備えるものとする。
【0015】
(8)上記(7)項において、ガイド長孔の前後いずれか一方の端部に、取付具の拡径頭部が挿通可能な大径の挿通孔を、ガイド長孔と連続させて設けるととともに、座体に、操作レバーが非操作位置で当接する当接部材を、前後方向に移動可能に設け、この当接部材を、操作レバーの回動領域から外れる位置まで移動させて、該操作レバーを通常の操作と反対方向に回動操作することにより、被係合部が設けられている長孔に突入している係合部を該長孔より離脱させ、座体を、前記取付具の拡径頭部が挿通孔に位置するまで前後方向に移動しうるようにする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1記載の発明によれば、操作レバーを回動操作すると、作動軸が長孔と接近する方向に移動して、作動軸に設けた小径部が被係合部と対向するとともに、係合部と被係合部との係合が解除されるようになっているため、係合部と被係合部を有する長孔とを近づけることが可能なる。
その結果、作動軸を短寸としたり、操作レバーと作動軸とを近い位置で連係することができ、装置全体を小型化することができる。
【0017】
また、長孔から係合部が完全に離脱することなく、係合状態を解除して座体の前後位置を調節しうるので、操作レバーの回動操作量を小さくすることができ、その操作性が向上する。
さらに、ロック解除時には、小径部が長孔内の被係合部と対向しているので、ロック解除時に座体が浮き上がるなどする恐れはない。
係合部と被係合部とは、長孔内において係脱するので、それらが外部に露呈せず、体裁が向上する。
【0018】
請求項2記載の発明によれば、被係合部が長孔の前後方向に沿って連続して形成されるので、係合部との係脱が容易となり、座体の前後位置の調節を速やかに行うことができる。
【0019】
請求項3記載の発明によれば、被係合部を有する長孔は、座支持フレームにおける側部フレームの内側面に設けられ、作動軸の係合部が、内方より外側方に移動して、長孔の被係合部より離脱するようにしているため、係合部や被係合部、及び長孔はより目立ちにくくなり、体裁がさらに向上する。
また、前後位置調節装置全体を、座体の一側部にコンパクトに設けることができる。
【0020】
請求項4記載の発明によれば、操作レバーと作動軸とを、近接した状態で直接連結しうるとともに、作動軸は前後より作動片により挟持されているので、作動軸及びそれと一体をなす係合部を、左右方向に確実に移動させることができる。
【0021】
請求項5記載の発明によれば、作動軸を、左右方向に安定して移動させるうるとともに、係合部が被係合部と係合した状態で、座体に前後方向の強い力が加わっても、作動軸や係合部が変形したりする恐れは小さい。
【0022】
請求項6記載の発明によれば、作動軸に連係された操作レバーが妄りに非操作位置から座体のロック解除方向に回動するのを防止しうるとともに、作動軸は、常時被係合部と係合する方向に付勢されているので、係合部と被係合部との係合が解除された状態で、操作レバーから手を離すと、係合部は再度被係合部に自動的に係合するようになる。
【0023】
請求項7記載の発明によれば、簡単な構成のガイド手段により、座体を、座支持フレームに沿って前後に安定して移動させることができる。
【0024】
請求項8記載の発明によれば、操作レバーを通常操作と反対方向に回動させて、座体を、取付具の拡径頭部が長孔の挿通孔に位置するまで移動させることにより、座体を座支持フレームから取外すことができるので、脚体の上部にリクライニング機構等が設けられている椅子において、そのメンテナンス等を容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の座体の前後位置調節装置を備える椅子の正面図、図2は、同じく側面図で、椅子の脚体(1)は、先端にキャスタ(2)が取付けられた放射方向を向く複数(5本)のベース脚杆(3)と、それらの中心より起立する回転自在な脚柱(4)と、この脚柱(4)の上端に後端部が固着された支基(5)とを備えている。
【0026】
(6)は、背凭れ支持フレームで、下端に斜め後ろ上方に傾斜する前向腕部(7a)を有する左右1対の側部フレーム(7)と、その上端同士を結合している後向凸円弧状の上部フレーム(8)とからなり、全体形は、前後面視ほぼ縦長下向コ字状をなしている。
【0027】
背凭れ支持フレーム(6)の下端、すなわち左右の前向腕部(7a)の前下端に連設された内向折曲部(7b)(7b)の内端部は、支基(5)内に設けられた、例えば公知のゴムトーションユニット等のリクライニング機構における左右方向を向くトーション軸(いずれも図示略)に、常時側面視反時計回りに付勢された状態で連結されている。これにより、背凭れ支持フレーム(6)とその前面に取付けられた背凭れ(9)は、支基(5)を中心として後傾しうるようになっている。
【0028】
支基(5)の前端の両側部に連設された、外側方に突出する軸状支持部(10)(10)の外側端には、斜め外上方を向く左右1対の座支持リンク(11)(11)の下端が、左右方向を向く枢軸(12)により、前後に回動可能に枢着されている。
【0029】
背凭れ支持フレーム(6)における左右の前向腕部(7b)の前端部上面には、左右1対(一方のみ図示する)の座支持片(13)が上向きに突設されている。
【0030】
左右の座支持リンク(11)と座支持片(13)の上端には、図3に示すような、平面視後向コ字形をなす、アルミニウム合金又は硬質合成樹脂製の座支持フレーム(14)が、枢着されている。すなわち、左右の座支持リンク(11)には、座支持フレーム(14)の前端の左右方向を向く前部フレーム(14a)の左右両側部に形成された枢着部(15)(15)が、また後部側の座支持片(13)には、座支持フレーム(14)における左右1対の前後方向を向く側部フレーム(14b)(14b)の後端部の内側部に形成された枢着部(16)(16)が、それぞれ左右方向を向く枢軸(17)(17)により枢着されている(図2参照)。
【0031】
これにより、背凭れ支持フレーム(6)を背凭れ(9)と共に後傾させると、それと連動して、座支持フレーム(14)とそれにより支持された座体(18)が、後方に傾動させられるようになる。
座体(18)は、クッション体(19)と、スライドフレーム(20)とを備えている。
【0032】
スライドフレーム(20)は、図3に示すように、アルミニウム合金又は硬質合成樹脂等により平面視H字状に形成され、その前後方向を向く左右1対のスライド板(20a)(20a)の前後両端部が、下方より挿入したボルト(21)により、クッション体(19)の下面に取付けた座シェル(図示略)の両側部下面に固着されている。
【0033】
座支持フレーム(14)の上面には、スライドフレーム(20)が、次のようにして前後に摺動可能に取付けられている。
【0034】
図3に示すように、スライドフレーム(20)の左右のスライド板(20a)は、左右寸法が、座支持フレーム(14)の左右の側部フレーム(14b)の上面の左右寸法とほぼ等しく、かつ前後寸法が、側部フレーム(14b)よりも所要寸法長寸とされ、それらの前後部には、図6及び図7にも示すように、上半部の左右幅を下半部よりも大とすることにより、上下方向の中間部に段差面(22)を有するガイド長孔(23)(23)が、前後方向に向かって貫設されている。
【0035】
各ガイド長孔(23)の後端部には、その上半部の左右幅よりも大きな挿通孔(24)が、ガイド長孔(23)と連続するようにして上下に貫設されている。
【0036】
各ガイド長孔(23)には、摩擦抵抗の小さな硬質合成樹脂、例えばポリアセタールよりなる円形の取付具(25)が、その上半部の拡径鍔部(25a)の下面が段差面(22)と当接するようにして遊嵌されている。
【0037】
座支持フレーム(14)にスライドフレーム(20)を取付けるには、それらの側部フレーム(14b)とスライド板(20a)との対向面間に、摩擦抵抗の小さなポリアセタール等よりなる薄肉のスライドシート(26)を挟入したのち、各取付具(25)に形成された段付孔(25b)の下半部に、円筒形のスペーサ(27)を嵌合し、かつこのスペーサ(27)に挿通したボルト(28)を、スライドシート(26)の通孔(26a)を挿通して、側部フレーム(14b)の上面のめねじ孔(29)に螺合する。
【0038】
これにより、スライドフレーム(20)及びそれに取付けられた座体(18)は、座支持フレーム(14)に、スライドシート(26)の上面上を前後に摺動するように取付けられ、この際、取付具(25)も、ガイド長孔(23)内を前後方向に相対移動する。なお、取付具(25)は、ガイド長孔(23)に沿って後限まで相対移動すると、挿通孔(24)を通して抜き外せるようになっている。
【0039】
座支持フレーム(14)における正面視右方の側部フレーム(14b)の中間部の内側部には、図3、図8及び図10に示すように、上方と内方に開放された正面視逆L字状の凹部(30)が形成され、この凹部(30)には、座体(18)の前後位置調節手段である硬質合成樹脂よりなる位置調節部材(31)が、その上面と側部フレーム(14b)との上面が同一面をなすようにして、前後2本のボルト(32)により固着されている。
【0040】
位置調節部材(31)の上下方向の中央部には、左右両方向に開口する長孔(33)が、前後方向に所要の長さに亘って形成され、その内側部側は、図10に示すような位置調節用長孔(34)となっている。この位置調節用長孔(34)には、その上下の対向面を波形状の凹凸面とすることにより、対向面間の寸法の小さな狭窄部(35a)(35a)間に、それよりも対向面間の寸法の大きな被係合部(35b)が、前後方向に複数形成されている。なお、長孔(33)及び位置調節用長孔(34)の前後寸法は、上記スライド板(20a)のガイド長孔(23)より所要寸法小としてある。
【0041】
図3において、(36)は操作レバー装置で、合成樹脂製の操作レバー(37)と、金属製の作動軸(38)と、それらを取付ける合成樹脂製の取付部材(39)とを備えている。
【0042】
操作レバー(37)は、図4及び図8にも示すように、左右方向の中間部がなだらかな山形をなし、かつ外側端に、やや下向き傾斜の前方を向く把手部(37a)を備える平板状に形成され、その内側端には、若干内側方に傾斜する下向き二股フォーク状の作動片(37b)(37b)が、一体的に連設されている。
【0043】
操作レバー(37)は、その山形をなす頂部に挿通した前後方向を向く枢支軸(40)を、取付部材(39)の取付部である水平片(41)に連設された前後1対の起立片(42)(42)に嵌合することにより、起立片(42)間において上下に回動しうるように枢着されている。また、操作レバー(37)は、その枢着部よりも外方の上面に形成した係止溝(43)に、ねじりばね(44)の一方の足片を係止するとともに、他方の足片を水平片(41)の上面に圧接させることにより、把手部(37a)を含む枢着部の外側方が常時下向きに付勢されている。
【0044】
取付部材(39)における水平片(41)の内側端の中央部には、水平片(41)よりも下方において左右方向内向きのガイド筒(45)が、一体的に連設されている。ガイド筒(45)の左右方向の中間部には、上方及び前後両方向に開口する切欠き(46)が形成されている。
【0045】
上述した作動軸(38)は、図3及び図8に示すように、内側端部に拡径頭部(47)を有するとともに、外側端部には、上記位置調節用長孔(34)の被係合部(35b)に挿脱可能で、狭窄部(35a)は挿通不能な直径の短寸の係合軸(48)と、それよりも小径で、かつ狭窄部(35a)を前後方向に通過可能な直径の小径軸(49)とが連設され、全体の長さは、ガイド筒(45)の左右寸法とほぼ等長とされている。
【0046】
作動軸(38)の外側端部は、ガイド筒(45)における切欠き(46)よりも外方の外側ガイド筒(45a)内に、左右方向に摺動可能に嵌合され、また、同じく拡径頭部(47)は、切欠き(46)よりも内方の、内径が外側ガイド筒(45a)より大径とされた内側ガイド筒(45b)内に、圧縮コイルばね(50)を介在させて摺動可能に嵌合されている。圧縮コイルばね(50)は、内側ガイド筒(45b)内において、その側端に形成された内向係止部(51)と、拡径頭部(47)の外側端(右側端)との間に縮設され、これにより、作動軸(38)全体は、常時左右方向内向きに付勢されている。
【0047】
なお、圧縮コイルばね(50)は、作動軸(38)に連係されている操作レバー(37)の把持部(37a)も下向きに常時付勢することができるため、操作レバー(37)を下向きに付勢するねじりばね(44)は省略することもある。
【0048】
操作レバー(37)は、その二股フォーク状の作動片(37b)(37b)が、ガイド筒(45)の切欠き(46)部を上方より跨ぐようにして枢着され、両作動片(37b)と作動軸(38)とは、図8に示すように、作動軸(38)の左右方向中間部の中央部に圧入した前後方向を向く連係ピン(52)の前後の突出端部に、両作動片(37b)の対向面に形成された、下方と対向面側に開口する上下方向を向く長溝(53)を上方より嵌合することにより、互いに連係されている。
【0049】
図4は、上記のように各部材を組付けてユニット化された操作レバー装置(36)を示すもので、この操作レバー装置(36)は、スライドフレーム(20)の右側端部に、次のようにして取付けられている。
【0050】
図3に示すように、スライドフレーム(20)における両スライド板(20a)の対向面の中央部に連設された横フレーム(20b)の右端部には、上方及び中間部が下方に開口するとともに、操作レバー(37)の両作動片(37b)が左右方向に移動しうる大きさの凹部(54)が、横フレーム(20b)の上面よりも下方に位置するように形成され、この凹部(54)に、まず操作レバー装置(36)のガイド筒(45)を、それに作動軸(38)全体を嵌合した状態で、斜め外上方より挿入して保持する。
【0051】
ついで、取付部材(39)の水平片(41)を、右方のスライド板(20a)の上面中央に、前後1対の起立片(55)(55)により位置決めした状態で、上方より2本のボルト(56)をもって固定する。
【0052】
ついで、作動軸(38)の係合軸(48)と小径軸(49)を、外側ガイド筒(45a)の外側方に突出させ、位置調節部材(31)の長孔(33)に内方より嵌合させる。
【0053】
最後に、図3及び図8に示すように、右方のスライド板(20a)における外側端部中央の上下両面に設けた前後方向を向く凹溝(57)(57)に、正面視コ字状をなす当接部材(58)における内側端の対向面に突設された突条(58a)(58a)を、前後方向にスライド可能に嵌合し、当接部材(58)の上面に、操作レバー(37)の枢着部よりも外側の下面を当接させる。
【0054】
なお、当接部材(58)を例えば後限までスライドさせたとき、操作レバー(37)の回動領域から外れ、当接部材(58)の上面に操作レバー(37)の下面が当接しないようにしてある。
【0055】
図8及び図10は、操作レバー装置(36)の取付終了時を示すもので、この状態では、作動軸(38)の係合軸(48)が、位置調節用長孔(34)の前後いずれかの被係合部(35b)に嵌合されて、その前後の狭窄部(35a)により、前後方向に移動するのが阻止されるようになっている。従って、座支持フレーム(14)に前後に摺動可能に取付けられているスライドフレーム(20)及びこれに取付けられている座体(18)の前後方向への移動もロックされる。
【0056】
座体(18)の前後位置を調節するには、図9に示すように、操作レバー(37)の把手部(37a)を手で持って引き上げる。すると、作動片(37b)に連係されている作動軸(38)が、圧縮コイルばね(50)に抗して外側方に移動させられ、係合軸(48)が、位置調節用長孔(34)の被係合部(35b)より離脱して、外方の長孔(33)に位置するとともに、小径軸(49)が位置調節用長孔(34)内に突入して、被係合部(35b)と対向することにより、図11に示すように、小径軸(49)は、狭窄部(35a)に拘束されることなく、前後方向に自由に移動可能となる。
【0057】
これにより、座体(18)のロックが解除され、これを前後方向に任意の位置まで移動させて、把手部(37a)から手を離すと、作動軸(38)は、圧縮コイルばね(50)の付勢力により内側方に移動しようとするため、係合軸(48)が最寄りの被係合部(35b)に自動的に嵌合して係合し、かつ狭窄部(35a)により前後方向への移動が阻止されることにより、座体(18)は所望の前後位置に段階的に調節されてロックされる。
【0058】
図12及び図13に示すように、当接部材(58)を、操作レバー(37)と干渉しない後限までスライドさせて、操作レバー(37)を、スライド板(20a)の上面と当接するまで下向きに回動すると、作動軸(38)が内側方(左方)に移動させられることにより、その外側端部の係合軸(48)が、位置調節用長孔(34)から離脱し、座体(18)は、スライド板(20a)に形成したガイド長孔(23)の範囲内で前後方向に自在に移動可能となる。
【0059】
従って、図14に示すように、座体(18)を前限まで移動すると、図7の2点鎖線で示すように、取付具(25)がガイド長孔(23)の後部の挿通孔(24)まで相対的に移動することにより、取付具(25)を挿通孔(24)より抜き外すことが可能となる。これにより、スライドフレーム(20)を含む座体(18)を座支持フレーム(14)から取外すことができ、支基(5)に組込まれたリクライニング機構のメンテナンス等を容易に行うことができる。
【0060】
以上説明したように、上記実施形態、すなわち位置調節部材(31)と、ユニット化された操作レバー装置(36)等とよりなる座体の前後位置調節装置においては、座支持フレーム(14)における側部フレーム(14b)の内側部に、前後複数の被係合部(35b)を有する位置調節部材(31)を設けるとともに、この位置調節部材(31)と対向する内方に、操作レバー(37)の上向き操作と連動して外側方に移動する作動軸(38)を、その外側部に設けた係合部としての係合軸(48)が常時被係合部(35b)のいずれかと係合して座体(18)の前後移動がロックされるように設け、かつ操作レバー(37)を操作したとき、係合軸(48)が外側方、すなわち位置調節部材(31)と接近する方向に移動して、その内方の小径軸(49)が被係合部(35b)内に突入することにより、座体(18)のロックが解除されるようになっているため、位置調節部材(31)と作動軸(38)とを近接させて設けることができる。
【0061】
従って、前後位置調節装置全体の左右寸法も小さくなり、全体を小型化することができる。しかも、操作レバー(37)、作動軸(38)、圧縮コイルばね(50)等の各部材は、全て取付部材(39)に組付けられ、操作レバー装置(36)がユニット化されているので、それ自体の小型化も図れ、前後位置調節装置を、座体(18)の一側部にコンパクトに収めることができる。
【0062】
また、作動軸(38)は、ガイド筒(45)により左右方向に摺動可能に保持され、かつガイド筒(45)も、スライドフレーム(20)に設けた凹部(54)に収容されて保持されているので、係合軸(48)が被係合部(35b)に係合した状態で、座体(18)に前後方向の強い力が加わっても、作動軸(38)が変形したりする恐れは小さい。
【0063】
さらに、位置調節部材(31)や、それに係合する作動軸(38)は、座支持フレーム(14)の内方に位置し、外部に露呈していないので、体裁が向上する。
【0064】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。
上記実施形態では、操作レバー(37)の把手部(37a)を上向きに回動操作したとき、係合軸(48)が外側方に移動して被係合部(35b)より離脱して、座体(18)のロックが解除されるようにしているが、把手部(37a)を下向きに回動操作したとき、座体(18)のロックが解除されるようにすることもできる。
【0065】
この際には、座支持フレーム(14)の内方に、位置調節部材(31)を取付可能な取付部を別途設けるとともに、作動軸(38)を左右反対向きとして、係合軸(48)や小径軸(49)を内端側に設け、操作レバー(37)をスライドフレーム(20)と当接しない上方の非操作位置から下向きに回動したとき、係合軸(48)が内側方に移動するようにすればよい。
【0066】
また、上記実施形態では、位置調節部材(31)に、被係合部(35b)を有する長孔(34)を設けているが、このような位置調節部材(31)を省略して、側部フレーム(14b)に、被係合部(35b)を有する長孔(34)を直接設けることもできる。
【0067】
さらに、上記実施形態では、スライドフレーム(20)のスライド板(20a)側にガイド長孔(23)を設けているが、座支持フレーム(14)の側部フレーム(14b)にガイド長孔(23)を設け、その下方より、上記と同様の取付具(25)を挿入し、ボルト(28)によりスライド板(20a)の下面に固定するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明を適用した椅子の正面図である。
【図2】同じく側面図である。
【図3】本発明の前後位置調節装置と、それが取付けられる座体との分解斜視図である。
【図4】ユニット化した操作レバー装置の斜視図である。
【図5】座体における前後位置調節装置取付部の拡大側面図である。
【図6】図5のVI−VI線拡大縦断正面図である。
【図7】図6のVII−VII線縦断側面図である。
【図8】図5のVIII−VIII線拡大縦断正面図である。
【図9】同じく、操作レバーを上向きに回動操作したときの縦断正面図である。
【図10】図8のX−X線縦断側面図である。
【図11】図9のXI−XI線縦断側面図である。
【図12】当接部材を後方にスライドさせて、操作レバーを下向きに操作したときの座体の要部の側面図である。
【図13】図12のXIII−XIII線拡大縦断正面図である。
【図14】座体を前方の取外し位置まで移動したときの側面図である。
【符号の説明】
【0069】
(1)脚体
(2)キャスタ
(3)ベース脚杆
(4)脚柱
(5)支基
(6)背凭れ支持フレーム
(7)側部フレーム
(7a)前向腕部
(7b)内向折曲部
(8)上部フレーム
(9)背凭れ
(10)軸状支持部
(11)座支持リンク
(12)枢軸
(13)座支持片
(14)座支持フレーム
(14a)前部フレーム
(14b)側部フレーム
(15)(16)枢着部
(17)枢軸
(18)座体
(19)クッション体
(20)スライドフレーム
(20a)スライド板
(20b)横フレーム
(21)ボルト
(22)段差面
(23)ガイド長孔
(24)挿通孔
(25)取付具
(25a)拡径鍔部
(25b)段付孔
(26)スライドシート
(26a)通孔
(27)スペーサ
(28)ボルト
(29)めねじ孔
(30)凹部
(31)位置調節部材
(32)ボルト
(33)長孔
(34)位置調節用長孔
(35a)狭窄部
(35b)被係合部
(36)操作レバー装置
(37)操作レバー
(37a)把手部
(37b)作動片
(38)作動軸
(39)取付部材
(40)枢支軸
(41)水平片
(42)起立片
(43)係止溝
(44)ねじりばね
(45)ガイド筒
(45a)外側ガイド筒
(45b)内側ガイド筒
(46)切欠き
(47)拡径頭部
(48)係合軸(係合部)
(49)小径軸(小径部)
(50)圧縮コイルばね(付勢手段)
(51)内向係止部
(52)連係ピン
(53)長溝
(54)凹部
(55)起立片
(56)ボルト
(57)凹溝
(58)当接部材
(58a)突条

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脚体に設けた座支持フレームにより、座体を、ガイド手段をもって前後に移動可能に支持し、前記座支持フレームに設けた前後複数の被係合部に、前記座体に設けた操作レバーに連係された係合部を選択的に係合させることにより、座体の前後位置を段階的に調節しうるようにした椅子における座体の前後位置調節装置において、
前記被係合部を、前記座支持フレームに形成した左右両方向に開口する前後方向を向く長孔の対向面に設け、前後方向を向く軸回りに回動しうるようにした前記操作レバーに、左右方向を向く作動軸を、操作レバーの回動操作により前記長孔と直交する方向に移動しうるように連係し、この作動軸の先端に、前記係合部を、前記被係合部と常時係合するように設け、かつ係合部よりも基端寄りの作動軸に、前記被係合部を前後方向に通過可能な、前記係合部よりも小径をなす小径部を設け、前記操作レバーの回動操作時に前記小径部が被係合部と対向する位置に移動することにより、係合部と被係合部との係合が解除されるようにしたことを特徴とする椅子における座体の前後位置調節装置。
【請求項2】
長孔の対向面に、小径軸が前後方向に通過可能な狭窄部を、所定間隔おきに複数形成し、互いに隣接する狭窄部間を、係合部が係脱する被係合部としてなる請求項1記載の椅子における座体の前後位置調節装置。
【請求項3】
座支持フレームが、左右1対の側部フレームを備える一方、座体の下面に、前記両側部フレーム上を前後に摺動する左右1対のスライド板を備えるスライドフレームを設け、前記一方の側部フレームの内側面に、被係合部を有する長孔を設けるとともに、前記側部フレームと対向する前記一方のスライド板に、操作レバーと、作動軸とを、操作レバーの上向き回動操作時に、係合部が座体の内方より外側方に移動して、長孔の被係合部より離脱するように設けてなる請求項1または2記載の椅子における座体の前後位置調節装置。
【請求項4】
操作レバーの把手部と反対側の端部に、作動軸に上方より跨嵌する二股状の作動片を連設し、この作動片と作動軸とを前後方向を向くピンにより連動可能に連結してなる請求項1〜3のいずれかに記載の椅子における座体の前後位置調節装置。
【請求項5】
作動軸を、座体に設けたガイド筒により摺動可能に保持してなる請求項1〜4のいずれかに記載の椅子における座体の前後位置調節装置。
【請求項6】
作動軸を、その係合部が被係合部と係合する方向に常時付勢する付勢手段を設けてなる請求項1〜5のいずれかに記載の椅子における座体の前後位置調節装置。
【請求項7】
ガイド手段が、座体と座支持フレームとの対向面のいずれか一方に設けられた左右1対の前後方向を向くガイド長孔と、このガイド長孔を挿通して前記座体と座支持フレームとの他方の対向面に固定され、かつ上下いずれか一方の端部に、前記ガイド長孔の左右幅よりも大きい拡径頭部を有する取付具とを備えるものとした請求項1〜6のいずれかに記載の椅子における座体の前後位置調節装置。
【請求項8】
ガイド長孔の前後いずれか一方の端部に、取付具の拡径頭部が挿通可能な大径の挿通孔を、ガイド長孔と連続させて設けるととともに、座体に、操作レバーが非操作位置で当接する当接部材を、前後方向に移動可能に設け、この当接部材を、操作レバーの回動領域から外れる位置まで移動させて、該操作レバーを通常の操作と反対方向に回動操作することにより、被係合部が設けられている長孔に突入している係合部を該長孔より離脱させ、座体を、前記取付具の拡径頭部が挿通孔に位置するまで前後方向に移動しうるようにした請求項7記載の椅子における座体の前後位置調節装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−18192(P2008−18192A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−194855(P2006−194855)
【出願日】平成18年7月14日(2006.7.14)
【出願人】(000000561)株式会社岡村製作所 (1,415)
【Fターム(参考)】