説明

植物タビビトノキ(Ravenalamadagascariensis)の抽出物及び化粧用保湿剤(hydratingagent)としての使用

【課題】皮膚の保湿状態を回復、維持又は強化するための、保湿活性剤、化粧用組成物及び美容ケア方法の提供。
【解決手段】タビビトノキ(Ravenala madagascariensis)の樹液又は若葉から得られる抽出物。該抽出物の、皮膚の保湿状態を回復、維持又は強化するための化粧用組成物における、保湿活性剤としての使用。皮膚の保湿状態を回復、維持若しくは強化する、及び/又は皮膚の乾燥の徴候が現れるのを防ぐ若しくは遅らせる効果を得るために、有効量の該抽出物、又は該化粧用組成物を、それを必要とする顔又は身体の皮膚の少なくとも1つの領域に適用するステップを含む、美容ケア方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の主題は、植物タビビトノキの新規な抽出物及び皮膚の保湿状態を回復、維持又は強化するための化粧用活性剤としてのその使用、該抽出物を含む化粧用組成物、並びに前記組成物を使用する美容ケア方法である。
【0002】
植物タビビトノキは、ゴクラクチョウカ(Strelitziaceae)科に属するマダガスカル固有の樹木である。この植物は、現在、一属一種(monospecific genus)の、唯一の種Ravenala madagascariensis Sonn.とみなされている。この樹木は、扇状の葉の配置で目立つ。この樹木は「旅人の木」という名称で広く知られている。英語話者はこの樹木を「旅人の木」又は「旅人のヤシ」と呼ぶが、この樹木はヤシの木ではない。この樹木は、他の国々、特にスリナムにも存在し、特に観賞樹として、熱帯の国々で容易に栽培されている。
【0003】
[先行技術]
皮膚の保湿状態の維持は、化粧品産業の主要な問題であり、化粧品産業は、任意の種類の化粧用組成物に使用可能な保湿化粧剤、及び特に水の蒸発を制限する、又は表皮中への水の輸送を改善するようにこれらの活性剤が作用することができる新しい標的を探している。
【0004】
アクアポリン(AQP)は、水並びにグリセロール及び尿素などの小分子の溶液中での拡散を促進するチャネルを形成する膜貫通タンパク質のファミリーである。
【0005】
これらのアクアポリンの大きさは、6つのアルファへリックス膜貫通交差を有し約30kDaである(Jung他、J.Biol.Chem.1994、269(20)、14648〜54)。
【0006】
アクアポリンは、身体中、特に、腎臓(水の再吸収)又は皮膚(経皮の水分損失)などの異なるコンパートメント間の水の実質的な移動の部位である器官の中に広く分布している。
【0007】
ヒト表皮のケラチノサイトの形質膜中で示されたAQP−3は、生きた表皮の至る所に分布している(R Sougrat他、JID2003、118:678〜685及びMolec.Biol.Cell.;1998;第9巻、499a)。
【0008】
FR2801504には、AQP3の発現を刺激する薬剤としてのアイユガトゥルケスタニカ(Ajuga turkestanica)の抽出物及び化粧品における保湿剤としてのその使用が開示されている。
【0009】
国際公開第2007/007255号パンフレットには、皮膚においてアクアポリンAQP3及びAQP9の発現を刺激する種々の薬剤、並びに化粧品におけるその使用が開示されている。
【0010】
それらの薬剤の中でも特定の物質、デキサメサゾンが、アクアポリンの発現、特にAQP−3の発現を刺激することはさらに周知である。
【0011】
しかしながら、表皮の細胞中でAQP3の発現を刺激することによる、本発明による抽出物の保湿特性を開示している文献はない。
【0012】
この特性は、皮膚の保湿を維持する又は助けることを目的とするケアを提供するための化粧用組成物におけるこのような抽出物の使用を特に興味深くする。
【0013】
[発明の目的]
本発明の主要な目的は、特に、皮膚の保湿状態を回復、維持又は強化するための、新規な皮膚の保湿剤を提供することである。
【0014】
本発明のさらなる主な目的は、このような保湿剤を含む化粧用組成物を提供することである。
【0015】
さらに、本発明の主な目的は、特に、皮膚の保湿状態を回復、維持又は強化するための、前記化粧用組成物を使用する美容ケア方法を提供することである。
【0016】
最後に、本発明の主な目的は、工業的規模及び化粧品規模で使用可能な単純な溶液を提供することである。
【0017】
[発明の説明]
第1の態様によれば、本発明は、植物タビビトノキの樹液、又は若葉などの前記植物の樹液が豊富な植物組織を含む若しくは植物組織によって形成される植物材料から得られる植物抽出物に関する。
【0018】
樹液の採取は、細菌汚染を最小化することができる条件下で行う。
【0019】
樹液は、いったん採取したら、例えばロータベーパー(Rotavapor)(登録商標)型のロータリーエバポレーターを用いて加熱するなど、任意の当業者に既知の方法によって乾燥するのが好都合である。
【0020】
樹液が豊富な植物組織は、本発明による植物抽出物を調製するための抽出過程と、場合により、続いてこれらの化合物を精製及び単離するための段階を実施するために好ましい植物材料を構成する。
【0021】
樹液が豊富なこれらの組織は、特にタビビトノキの若葉である。
【0022】
発育の初期段階において、葉は、まずその中心の中央葉脈の周囲に巻いて成長する。次いで、葉は、横の葉脈で裂けることなく、開く。これらの段階では、葉は薄緑色である。これらの発育の初期段階において、葉にはまだ樹液が強くしみ込んでいる。
【0023】
したがって、本発明の意味において、「若葉」又は「未成熟葉」という表現は、上記の葉の発育の初期段階に相当する。好ましくは、本発明による抽出物を調製するために植物材料として使用される若葉は、約45日未満、好ましくは30日未満の葉齢である。
【0024】
若葉とは異なり、成熟段階のタビビトノキの葉は、葉の横の乾燥した葉脈に沿った多くの裂け目によって容易に認識できる。
【0025】
本発明による抽出物は、より詳細には、極性溶媒又は極性溶媒の混合物を用いて、樹液、又は、樹液が豊富な植物材料を構成する若葉、を処理することによって得られる。
【0026】
本発明によると、「極性溶媒」という表現は、その溶媒が、値4以上である極性指数値P’を有することを意味する。極性指数は、多かれ少なかれ分子の極性性質を示す熱力学量(溶解度及び状態変化)に基づいて計算される量である。溶媒の極性指数に関しては、参照により本出願に含まれる、L.R.SNYDERによる論文(J.chromatogr.、92(1974)、223〜230)を参照されたい。
【0027】
極性溶媒又は混合物を形成する極性溶媒は、水、C〜Cアルコール、特にエタノール若しくはブタノール、又はグリコール、特にグリセロール、ブチレングリコール若しくはプロピレングリコールから好都合に選択される。
【0028】
好ましい抽出物は、より詳細には、水、又は水及びエタノールの混合物などの水性アルコール混合物による処理によって得られる。
【0029】
好ましい抽出物は、より詳細には、70/30の比(v/v)のエタノール及び水の混合物による処理によって得られる。
【0030】
したがって、本発明の第2の主題は、皮膚の保湿状態を回復、維持又は強化するための保湿剤としての、植物タビビトノキの樹液又は先に定義した抽出物の化粧用組成物における使用に関する。
【0031】
本発明によると、樹液又は先に定義した抽出物は、局所的適用に対する所望の効果を得るための有効量で、化粧用組成物中に活性剤として存在する。
【0032】
「有効量」という表現は、所望の効果、この場合には皮膚の保湿に対する作用を得ることを可能にする樹液又は抽出物の量を意味すると理解される。
【0033】
第3の態様によると、本発明は、活性剤として、植物タビビトノキの樹液又は先に定義した抽出物を含むことを特徴とする化粧用組成物に関する。
【0034】
好ましい実施によると、化粧用組成物は、活性剤として、先に記載した、より詳細には極性溶媒又は極性溶媒の混合物を用いて得られる植物タビビトノキの若葉の抽出物を含む。
【0035】
本発明の特定の実施形態によると、化粧用組成物は、乾燥重量で0.001%〜2%、好ましくは0.01%〜0.2%の植物タビビトノキの樹液又は先に定義した抽出物を含む。
【0036】
本発明による化粧用組成物は、グリセロール又は天然ポリオール、天然若しくは合成セラミド、尿素、ヒアルロン酸、或いはアイユガトゥルケスタニカの抽出物、ワンダコエルレア(Vanda coerulea)の抽出物、レチノイン酸、D−キシロース、ウスベニアオイ(Malva sylvestris)の抽出物又はツボクサ(Centella asiatica)の抽出物などの保湿特性を示す1つ又は複数の他の分子又は植物抽出物も含むことができる。
【0037】
したがって、皮膚の保湿効果も示すこれらの分子又は抽出物は、本発明の活性剤の役割を補足する役割を果たし得る。
【0038】
さらに、化粧用組成物は、抗老化活性を有する物質、脱色素活性若しくは皮膚美白活性を有する物質、痩身活性を有する物質、保湿活性を有する物質、鎮静、緩和、若しくはリラックス活性を有する物質、特に顔のつやの輝きを改善するための皮膚の微小循環を刺激する活性を有する物質、脂ぎった皮膚のケアのための皮脂調節活性を有する物質、皮膚のよごれを取る若しくは皮膚を清潔にすることを目的とする物質、及び抗フリーラジカル活性を有する物質からなる群から選択される1つ又は複数の他の化粧用活性剤も含むことができる。
【0039】
特に、化粧用組成物は、
皮膚の表面での落屑を調節する表皮カリクレインを刺激する作用剤、特にノパルサボテンの抽出物、
表皮の脂質の合成を刺激し、角質層の水分損失防止効果(water barrier effect)及び皮膚の柔軟性において必須の役割を果たす作用剤、特にヒマワリ(Helianthus annus L.)の種子又はヘチマ(Luffa cylindrica)の抽出物、
ケラチノサイトの最終分化又はトランスグルタミナーゼを刺激し、角質細胞及び皮膚バリアの形成を強化する作用剤、特にベータ−エクジソン又はグルコン酸カルシウム若しくはピロリドンカルボン酸カルシウムなどのカルシウム誘導体、或いは表皮の再生を刺激する活性剤、特にコムギ油、
密着結合の形成を促進し、したがって細胞間の水分損失を制限する作用剤、特にスウィートチェストナット(Castanea sativa)又は三七人参(Sanchi)のサポニンの抽出物、
D−キシロース又はキシロースの誘導体などの表皮レベルでグリコサミノグリカン(GAG)の合成を刺激する作用剤、特にC−グリコシド及びその誘導体、
ビタミンA(レチノール)及び/又はそのエステルなどの細胞再生を促進する作用剤、特にビタミンAのプロピオン酸塩、フルーツ酸、リンゴ酸、グリコール酸若しくはクエン酸などのアルファ−又はベータ−ヒドロキシ酸、サリチル酸又はそのエステル、ゲンチジン酸又はそのエステル、特にゲンチジン酸トコフェロール、
コラーゲン、特にI型、II型、IV型又はVII型コラーゲンの合成を刺激するペプチドなどの皮膚の張りを刺激する作用剤、ツボクサの抽出物、マデカス酸(madecassic acid)、アシアチン酸(asiatic acid)、マデカッソシド(madecassoside)、オーツの抽出物、ブラジルナットノキ(Bertholletia exscelsa)の抽出物、タンパク質の加水分解産物、ダイズペプチド、タチキジムシロ(Potentilla erecta)の抽出物、ツクシメナモミ(Siegesbeckia orientalis)の抽出物、ジンセノサイド又はノトジンセノサイド、特にRb1又はR0、
表皮の分化を調節する作用剤、それらの中でもエクジステロイド型、エクジステロン、ツルケステロン又はビタミンDのカルシウム誘導体若しくは前駆体のもの、
アデノシン、カルニチン又はそれらの誘導体、
メタロプロテイナーゼの阻害剤、特に、ナギイカダ(Rucus asculeatus)若しくはアノゲイサス・レイカルパス(Annogeisus leicarpus)の抽出物、又はケルセチン、ケンフェロール、アピゲニン、オウゴニンなどのフラボノイド、又はこれらを含む植物抽出物などの、MMP1、MMP2又はMMP9の阻害剤、
アスペルギルス・フミガータス(Aspergillus fumigatus)、ツルレイシ(Momordica charantia)又はセイヨウカボチャ(Cucurbita maxima)の抽出物などのエラスターゼ阻害剤、
琥珀の抽出物などのダーマトポンチンの合成を刺激する作用剤、
収斂性植物の抽出物、例えばアメリカマンサクの抽出物などの、毛穴を引き締める作用剤、
単独又はチタンの酸化物と組み合わせた、ベンゾフェノン、4−ブチルメトキシジベンゾイルメタン、オクトクリレン、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、サリチル酸エチルヘキシル、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸又はホモサレートなどのUVA及びUVB放射から保護するフィルター、
コウジ酸、甘草若しくはクワの根の抽出物、アルブチン、パントテノスルホン酸カルシウム(calcium pantothenosulphonate)、ボルジン、ジアセチルボルジン、ビタミンC及びその誘導体、特にグリコシド、ユリ、特に球茎の抽出物などの、色素沈着障害、特に皮膚の老化と関係する色素沈着障害に対抗することを目的とした薬剤、
カワラヨモギ(Artemisia capillaris)の抽出物、ワレモコウ(Sanguisorba officinalis)の抽出物、レスベラトロール及びその誘導体、クルクマ若しくはクルクミン若しくはテトラヒドロクルクミン、ブドウの種から抽出されるポリフェノール、ビタミンE及びその誘導体、特にそのリン酸塩誘導体、エルゴチオネイン若しくはその誘導体又はイデベノンなどの抗フリーラジカル又は抗炎症剤、
表皮及び真皮レベルでのヒアルロン酸の合成又はグリコサミノグリカンの合成を促進して保湿されたふっくらした皮膚をもたらす薬剤、特にビワ(Eriobotrya japonica)の抽出物若しくは低分子量のヒアルロン酸のフラグメント又はアデニウムオベスム(Adenum obsesum)の抽出物、
抗しわ作用を改善するアスパラギン酸マグネシウム及びこれらの混合物のいずれか1つ、
から選択される1つ又は複数の他の化粧用活性剤を含むことができる。
【0040】
化粧用組成物は、少なくとも1つの活性剤とは別に、前記組成物を調製するのに有用な少なくとも1つの化粧品として許容される(cosmetically acceptable)賦形剤も含む。
【0041】
好都合には、組成物は、顔料、染料、ポリマー、界面活性剤、レオロジー剤、香料、電解質、pH調整剤、酸化防止剤、保存料及びこれらの混合物から選択され得る少なくとも1つの化粧品として許容される賦形剤をさらに含む。
【0042】
化粧用組成物は、美容液、ローション、クリーム若しくはヒドロゲル、及び好ましくはマスク、又はスティック若しくはパッチの形態であり得る。
【0043】
最後に、第4の態様によると、本発明の主題は、皮膚の保湿状態を回復、維持若しくは強化する、及び/又は皮膚の乾燥の徴候が現れるのを防ぐ若しくは遅らせる効果を得るために、植物タビビトノキの樹液若しくは若葉の抽出物、又は活性剤として植物タビビトノキの樹液若しくは先に定義した植物抽出物を含む化粧用組成物を、顔又は身体の皮膚の少なくとも1つの関連領域に適用するステップを含むことを特徴とする、美容ケア方法である。
【0044】
実施例においては、特に指示がない限り、全てのパーセンテージは重量で与えられ、温度は摂氏度であり、圧力は大気圧である。
【0045】
本発明の他の目的、特徴及び利点は、本発明のいくつかの実施例に関してなされる以下の説明的記載から明確に明らかになるが、それらは単なる例示のために与えられるものであり、何ら本発明の範囲を限定することを意図していない。実施例においては、特に指示がない限り、温度は摂氏度であり、圧力は大気圧であり、量又はパーセンテージは重量で与えられる。
【0046】
[発明の実施例]
<実施例1:本発明による抽出物の調製>
当業者に容易に理解可能なように、サンプルの細菌汚染をできる限り避けながら、樹液を、タビビトノキから抽出する。樹液をロータリーエバポレーターで乾燥させ、次いで70/30の体積/体積比のエタノール及び水の混合物中に溶解する。次いで溶媒を蒸発させて乾燥させる。
【0047】
実施例4の実験のために、5重量%の乾燥抽出物を含む樹液抽出物の水溶液を調製する。
【0048】
<本発明による実施例2:タビビトノキの若葉の抽出物の調製>
最大で3週の葉齢のタビビトノキの若葉を採取し、乾燥し、粉砕する。70/30の体積/体積比のエタノール及び水の混合物で植物材料を抽出する。溶媒を蒸発させて乾燥させる。
【0049】
実施例4の実験のために、DMSO中4重量%の乾燥抽出物を含む若葉の水性アルコール抽出物の溶液を調製する。
【0050】
<実施例3:タビビトノキの成熟葉の抽出物の調製>
タビビトノキの成熟葉を採取し、乾燥し、粉砕する。70/30の体積/体積比のエタノール及び水の混合物で植物材料を抽出する。最後に、溶媒を蒸発させて乾燥させる。
【0051】
実施例4の実験のために、このようにして調製した、DMSO中4重量%の乾燥抽出物を含む成熟葉の水性アルコール抽出物の溶液を調製する。
【0052】
<実施例4:試験する活性剤の保湿活性を測定するためのヒトの皮膚の組織学的分析>
<材料及び方法>
<生検の準備>
直径約10mmの33の皮膚外植片を27歳の女性の腹壁形成から調製する。これらの外植片は適当な培地中で生かしておく。
【0053】
30の外植片を6つの外植片の5つのロットに分け、残りの3つの外植片は未処理のコントロールとして使用する(ロット:T0)。
【0054】
<ロットの処理>:
第1ロット:試験する活性剤を含まない水中油型エマルジョンである賦形剤が適用される6つの外植片。
【0055】
第2ロット:4重量%の実施例1の溶液をさらに含み、エマルジョン中0.2重量%のタビビトノキの樹液の乾燥抽出物最終濃度である前と同一のエマルジョンが適用される6つの外植片。
【0056】
第3ロット:5重量%の実施例2の溶液をさらに含み、エマルジョン中0.2重量%のタビビトノキの若葉の乾燥抽出物最終濃度であるエマルジョンが適用される6つの外植片。
【0057】
第4ロット:5重量%の実施例3の溶液をさらに含み、エマルジョン中0.2重量%のタビビトノキの成熟葉の乾燥抽出物最終濃度であるエマルジョンが適用される6つの外植片。
【0058】
第5ロット:ポジティブコントロール用の6つの外植片:デキサメサゾン
【0059】
産物を1外植片当たり2mgの投与量で局所的に適用し、小さなスパーテルで広げる。
【0060】
処理を続けて4日間繰り返す。
【0061】
<サンプル及び組織学的検査>
<サンプル>
外植片を、D0、D1及びD4日で、4日間にわたって組織学的検査のためにサンプリングする。
【0062】
T0ロットの3つのコントロール外植片をD0日にサンプリングする。他の5つのロットに関しては、各々のロットの3つの外植片をD1日にサンプリングし、他方の3つの外植片をD4日にサンプリングする。
【0063】
各々の外植片は、直ちに2つに切り分ける。2分の1は緩衝ホルマリンに固定し、他方の2分の1は−80℃で凍結させる。
【0064】
<組織学的検査>
緩衝ホルマリン中で24時間固定後、Leica1020自動脱水機を使用して、サンプルを脱水し、パラフィン含浸させる。LeicaEG1160包埋ステーションを使用して、これらをブロックの中に組み入れる。
【0065】
LeicaRM2125Minot型ミクロトームを使用して、5ナノメートルの切片を作り、スーパーフロストシラン処理ガラス組織学的検査スライド上に固定する。
【0066】
凍結したサンプルは、LeicaCM3050クライオスタット中で7mmに切断する。切片は、免疫学的標識化のためにスーパーフロストシラン処理ガラス組織学的検査スライド上に固定する。
【0067】
顕微鏡観察は、×40対物レンズを備えたLeicaDMLB型顕微鏡を使用して、光学顕微鏡により行う。顕微鏡写真は、triCCDソニーDXC390Pカメラで撮影し、LeicaIM1000データアーカイビングソフトウェアを使用して記憶する。
【0068】
<一般形態>
マッソントリクロームで染色したパラフィン切片に対して一般形態の観察を行う。これらの切片は、光学顕微鏡で観察する。
【0069】
<アクアポリン3(AQP3)の標識化>
パラフィン中に包埋された外植片切片をブアン液(ホルマリン+ピクリン酸)で固定する。次いで、AQP3を、Chemiconから入手可能なウサギポリクローナル抗AQP3抗体(ref AB 3276)で標識化し、次いでDAB(ジアミノベンジジン)で免疫組織化学的に展開させ、栗色を生じさせる。
【0070】
<結果>
D1、次いでD4時点における、ロット番号1〜番号5の外植片の種々の切片に対する観察の結果を以下に論じ、以下の表1中に共に示す。
【0071】
<1 −D1におけるアクアポリン−3の標識化>
<未処理の外植片(ロット番号1)>:
標識化は、確実に膜において、かなり明確である。それはまた、角質層の下の最後の細胞層を除いては、表皮の上部層により明確に示される。それは、基底層ではごく控えめに示され、基底ケラチノサイトの基底極ではほとんど示されない。
【0072】
<デキサメサゾンで処理した外植片(ポジティブコントロール)(ロット番号5)>:
標識化は、確実に膜において、かなり明確である。それはまた、表皮の上部層により明確に示される。それは、角質層の下の最後の細胞層で控えめに存在する。それは、基底層、中でも側底空間に控えめに示される。それは、基底ケラチノサイトの基底極ではほとんど示されない。
【0073】
<タビビトノキの樹液を含む製剤で処理した外植片(ロット番号2)>:
標識化は、確実に膜において、かなり明確である。それはまた、表皮の上部層により明確に示される。それは、角質層の下の最後の細胞層にわずかに存在する。それは、基底層で控えめに、側底空間でより明確に示される。それは、基底ケラチノサイトの基底極ではほとんど示されない。
【0074】
<タビビトノキの若葉の抽出物を含む製剤で処理した外植片(ロット番号3)>:
標識化は、確実に膜において、かなり明確である。それはまた、表皮の上部層に明確に示される。それは、角質層の下の最後の細胞層に控えめに存在する。それは、基底層、中でも側底空間にかなり明確に示される。それは、基底ケラチノサイトの基底極で控えめに示される。
【0075】
<タビビトノキの成熟葉の抽出物を含む製剤で処理した外植片(ロット番号4)>:
標識化はあまり明確ではなく、上部表皮層でほとんど示されない。それは、角質層の下の最後の細胞層に控えめに存在する。それは、基底層でほとんど示されず、側底空間でより明確に示される。それは、基底ケラチノサイトの基底極ではほとんど示されない。
【0076】
<2 −D4におけるAQP−3の標識化>
<未処理の外植片(ロット番号1)>:
標識化は、確実に膜において、かなり明確であり、上部表皮層にわずかに多く示される。標識化は、角質層の下の最後の細胞層には存在しない。それは、基底層、中でも側底空間にごく控えめに示される。それは、基底ケラチノサイトの基底極ではほとんど示されない。
【0077】
<デキサメサゾンで処理した外植片(ポジティブコントロール)(ロット番号5)>:
標識化は、確実に膜において、非常に明確であり、上部表皮層に明確に示される。それは、角質層の下の最後の細胞層にわずかに存在する。それは、基底層、中でも側底空間に非常に明確に示される。それは、基底ケラチノサイトの基底極ではほとんど示されない。
【0078】
<タビビトノキの樹液を含む製剤で処理した外植片(ロット番号2)>:
標識化は、確実に膜において、明確であり、上部表皮層に非常に明確に多く示される。それは、角質層の下の最後の細胞層にかなり明確に存在する。それは、基底層、中でも側底空間で明確に示される。それは、基底ケラチノサイトの基底極で控えめに示される。
【0079】
<タビビトノキの若葉の抽出物を含む製剤で処理した外植片(ロット番号3)>:
標識化は、確実に膜において、非常に明確であり、上部表皮層に明確に示される。それは、角質層の下の最後の細胞層に控えめに存在する。それは、基底層、中でも側底空間にかなり明確に示される。それは、基底ケラチノサイトの基底極で控えめに示される。
【0080】
<タビビトノキの成熟葉の抽出物を含む製剤で処理した外植片(ロット番号4)>:
標識化はあまり明確ではなく、上部表皮層でほとんど示されない。それは、角質層の下の最後の細胞層に控えめに存在する。それは、基底層でほとんど示されず、側底空間でより明確に示される。それは、基底ケラチノサイトの基底極ではほとんど示されない。
【0081】
【表1】

【0082】
結論
タビビトノキの樹液の抽出物及び若葉の水性アルコール抽出物は共に特に興味深い化粧品特性を示す。これらの抽出物は、表皮中の水の流れを調節する特別な効果を有する。AQP−3の標識化により、AQP3アクアポリンの調節及び/又は機能性に対する、試験する活性剤の注目すべき活性を示すことが可能になる。この活性は、表皮の基底層のより優れた保湿をもたらす。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物タビビトノキ(Ravenala madagascariensis)の樹液から得られる植物抽出物。
【請求項2】
植物タビビトノキ(Ravenala madagascariensis)の若葉から得られる水アルコール抽出物。
【請求項3】
約45日未満の葉齢の若葉から得られる、請求項1又は2に記載の抽出物。
【請求項4】
70/30の比(V/V)のエタノール及び水の混合物による処理によって得られる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の抽出物。
【請求項5】
植物タビビトノキの樹液、又は植物タビビトノキの樹液若しくは植物タビビトノキの若葉から得られる抽出物、又は請求項1〜4のいずれか一項により定義される抽出物の、皮膚の保湿状態を回復、維持又は強化するための保湿活性剤としての、化粧用組成物における使用。
【請求項6】
前記抽出物が、前記樹液又は前記若葉を極性溶媒又は極性溶媒の混合物で処理することによって得られる、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
前記極性溶媒又は混合物を形成する前記極性溶媒が、水、C〜Cアルコール、特にエタノール若しくはブタノール、又はグリコール、特にグリセロール、ブチレングリコール若しくはプロピレングリコールから選択される、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
活性剤として、植物タビビトノキの樹液、又は植物タビビトノキの樹液から得られる抽出物、又は植物タビビトノキの若葉から得られる抽出物、又は請求項1〜7のいずれか一項により定義される抽出物を含む、化粧用組成物。
【請求項9】
前記抽出物が、極性溶媒又は極性溶媒の混合物を使用することによって得られる、請求項8に記載の化粧用組成物。
【請求項10】
乾燥重量で、0.001%〜2%の植物タビビトノキの樹液又は請求項1〜7のいずれか一項に定義される抽出物を含む、請求項8又は9に記載の化粧用組成物。
【請求項11】
保湿特性を示す分子又は植物抽出物、グリセロール、天然ポリオール、天然若しくは合成セラミド、尿素、ヒアルロン酸、アイユガトゥルケスタニカ(Ajuga turkestanica)の抽出物、ワンダコエルレア(Vanda coerulea)の抽出物、レチノイン酸、D−キシロース、ウスベニアオイ(Malva sylvestris)の抽出物及びツボクサ(Centella asiatica)の抽出物からなる群から選択される1つ又は複数の活性成分をさらに含む、請求項8〜10のいずれか一項に記載の化粧用組成物。
【請求項12】
顔料、染料、ポリマー、界面活性剤、レオロジー剤、香料、電解質、pH調整剤、酸化防止剤、保存料及びこれらの混合物から選択され得る化粧品として許容される少なくとも1つの賦形剤をさらに含む、請求項8〜11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
美容液、ローション、クリーム、ヒドロゲル、マスク、スティック又はパッチの形態である、請求項8〜12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
皮膚の保湿状態を回復、維持若しくは強化する、及び/又は皮膚の乾燥の徴候が現れるのを防ぐ若しくは遅らせる効果を得るために、有効量の植物タビビトノキの樹液、又は植物タビビトノキの樹液から得られる抽出物、又は植物タビビトノキの若葉の抽出物、又は請求項1〜7のいずれか一項により定義される抽出物、又は請求項8〜13のいずれか一項に記載の化粧用組成物を、それを必要とする顔又は身体の皮膚の少なくとも1つの領域に適用するステップを含む、美容ケア方法。

【公開番号】特開2011−136994(P2011−136994A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−290067(P2010−290067)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(502189579)エルブイエムエイチ レシェルシェ (68)
【Fターム(参考)】