説明

植物栽培用移動ラック装置

【課題】栽培用コンテナを多数使用して室内などで植物栽培を行なう場合に好適な移動ラック装置を提案する。
【解決手段】隣り合う任意の2台のラック間に作業通路Aを形成する作業通路形成状態と、全てのラックが互いに隣接する作業通路無し状態とに切換え自在に構成された移動ラック装置において、両端のラック1A,1Bには、その片側の作業通路Aとの間で出し入れ自在に栽培用コンテナ4が間口方向に沿って並列載置される棚5が設けられ、中間のラック2A,2Bには、その両側何れかの作業通路Aとの間で出し入れ自在に栽培用コンテナ4が間口方向に沿って並列載置される棚5が設けられ、全てのラックの棚5の上方には、その天井部をカバーする天井側光反射板が配設されると共に、両端のラック1A,1Bには、背面側をカバーする背面側垂直光反射板10が配設され、各棚5の上方の天井側光反射板の下側には、照明器具の光源11が配設された構成。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、栽培用コンテナを使用して植物栽培が効率的に且つ容易に行える植物栽培用移動ラック装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
各段の棚上で植物栽培を行なう植物栽培用ラックは、例えば特許文献1に記載のように従来周知である。この特許文献1に記載の植物栽培用ラックでは、ラックの棚そのものが植物栽培用ベッドを構成しているが、この植物栽培用ベッドに代えて、従来知られている小型の栽培用コンテナを棚上に並列載置することは、一般的に考えられるところである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−245554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように植物を栽培するための栽培用コンテナを棚上に並列載置するラックを複数台利用して、比較的規模の大きな栽培システムを構築する場合、各ラックの横に栽培用コンテナを棚上に対して出し入れする作業通路を確保しなければならないので、大きな床面積を確保しなければならず、設備コストが高くつく。又、各ラックの棚上の植物栽培用空間を照明する照明器具も併用しなければならないが、各ラックの作業通路側を含めて、各棚上の植物栽培用空間の周囲が開放されているので、照明器具からの光線がラックの周囲外側に漏洩し、肝心の植物栽培用空間上での照度を高めるために照明器具として能力の大きなものが必要になり、この結果、照明による熱的な悪影響が栽培植物に及ぶ恐れが大きくなると共に、設備コストやランニングコストも高くつく。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記のような従来の問題点を解消することのできる植物栽培用移動ラック装置を提案するものであって、請求項1に記載の本発明に係る植物栽培用移動ラック装置は、後述する実施例の説明において使用した参照符号を付して示すと、複数のラック1A〜2Bが、各ラックの間口方向に対する直角奥行き方向に互いに並列配置され、これら複数のラック1A〜2Bは、その全てのラック又は1台の固定ラック1Aを残して、ラック並列方向に横動自在な移動ラック1B,2A,2Bに構成され、これら移動ラック1B,2A,2Bの横動により、隣り合う任意の2台のラック間に作業通路Aを形成する作業通路形成状態と、全てのラック1A〜2Bが互いに隣接する作業通路無し状態とに切換え自在に構成された移動ラック装置において、両端のラック1A,1Bには、その片側に形成される作業通路Aとの間で出し入れ自在に栽培用コンテナ4が間口方向に沿って並列載置される棚5が設けられ、中間のラック2A,2Bには、その両側の何れかに形成される作業通路Aとの間で出し入れ自在に栽培用コンテナ4が間口方向に沿って並列載置される棚5が設けられ、全てのラック1A〜2Bの棚5上の植物栽培用空間には、その天井部をカバーする天井側光反射板8が配設されると共に、両端のラック1A,1Bの棚上の植物栽培用空間には、その奥行き方向前後両側の内、形成された作業通路Aに隣接しない背面側をカバーする背面側垂直光反射板10が配設され、各天井側光反射板8の下側には、照明器具37の光源(蛍光管11)が配設された構成となっている。
【0006】
上記本発明の植物栽培用移動ラック装置を実施する場合、具体的には、請求項2に記載のように、各ラックの棚5上の植物栽培用空間の間口方向の一端には、他端に向かって送風する送風用ファン12を設けることができるし、請求項3に記載のように、各ラックの棚5上の植物栽培用空間には、その間口方向の両端をカバーする横側垂直光反射板9a,9bを配設することができる。
【0007】
又、請求項4に記載のように、各ラックの棚5上の植物栽培用空間には、その間口方向の両端をカバーする横側垂直光反射板9a,9bを配設すると共に、一端の横側垂直光反射板9aの内側には、他端の横側垂直光反射板9bに向かって送風する送風用ファン12を設け、当該他端の横側垂直光反射板9bには、空気流通口40を設けることができる。この場合、請求項5に記載のように、前記空気流通口40は横長スリット状として、その上側辺から植物栽培用空間のある内側へ斜め下向きに延出するフラップ39を突設することができる。
【0008】
又、中間のラック2A,2Bに、その両側に形成される作業通路Aとの間で出し入れ自在に栽培用コンテナ4が間口方向に沿って二列に並列載置される棚5が設けられる場合、請求項6に記載のように、その棚5上に二列に並列載置される栽培用コンテナ4の列の中間に位置する中間垂直光反射板14を配設することができる。又、請求項7に記載のように、全てのラックの棚5上の植物栽培用空間には、栽培用コンテナ4が出し入れされる作業通路Aに隣接する側をカバーする垂直光反射板13を開閉自在(着脱自在も含まれる)に配設することができる。
【0009】
更に、請求項8に記載のように、各垂直光反射板9a〜10,13,14は、各ラックの棚5上の植物栽培用空間の高さ全域をカバーする高さを有するものであっても良いし、請求項9に記載のように、各垂直光反射板9a〜10,13,14は、各ラックの棚5上の植物栽培用空間の上部領域のみをカバーする高さを有するものであっても良い。
【0010】
又、請求項10に記載のように、少なくとも移動ラック1B,2A,2Bには、この移動ラック1B,2A,2Bの棚5上に載置される栽培用コンテナ4より高い位置の給水タンク47と、このタンク47から棚5上に載置された栽培用コンテナ4に重力により給水する給水用配管(23,42〜46)を設けることができる。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の本発明の構成によれば、移動ラックの横動により、隣り合う任意の2台のラック間に作業通路を形成する作業通路形成状態と、全てのラックが互いに隣接する作業通路無し状態とに切換え自在に構成された移動ラック装置を利用するものであるから、各ラックの棚上に対する栽培用コンテナを出し入れするときや栽培植物の手入れ時など、ラックに隣接して作業通路が必要なときのみ、その作業通路が必要なラック間にのみ作業通路を形成することができるので、全てのラックの横に固定的に作業通路を確保させておく場合よりも、ラック装置全体の設置に必要な床面積を大幅に少なくできる。しかも、作業通路が不要な状況、即ち、人手を要しない通常の栽培継続状況では、全てのラックが互いに隣接する作業通路無し状態に切り換えておくことにより、ラック内の照明器具からの光線がラック並列方向の両端にあるラックから外側へ漏洩することを当該ラックに配設された背面側垂直光反射板によって防止すると同時にラック内側へ反射させ、勿論ラック内の照明器具からの光線が作業通路内へ漏洩することも無くなるので、各ラックの天井側光反射板の存在と相俟って、各ラック内の照明器具からの光線を真下の各植物栽培用空間やラック並列方向に隣接する植物栽培用空間に対する照明に効率よく作用させ、以て、照明による植物栽培効果を効率よく高めることができる。更に、作業通路無し状態において並列する全てのラック内の植物栽培用空間に対して温度や湿度を最適に維持するための空調を行なう場合でも、その空調エリアに作業通路が含まれないので、使用する空調装置の能力を下げてランニングコストを低減できる。
【0012】
尚、各ラック内の照明器具からの光線が各ラック(各植物栽培用空間)の間口方向の両端からラック外に漏洩する光線量は、その開口部のサイズが間口方向に沿った開口部のサイズより十分に小さいので、比較的少ない。従って本発明においては、基本的には各ラック(各植物栽培用空間)の間口方向の両端は開放されていても良い。このように各ラックの間口方向の両端が開放された構成であれば、外気が各ラックの棚上の植物栽培用空間内を間口方向に流通することになるが、特に請求項2に記載の構成によれば、送風用ファンにより植物栽培用空間内で間口方向に積極的に空気流を生じさせることができ、植物栽培用空間の間口方向長さが長くとも、当該植物栽培用空間内の雰囲気温度が照明によって高くなることによる熱的悪影響や栽培植物周囲の雰囲気が静止することによる悪影響が栽培植物に及ぶことを防止できる。
【0013】
又、各ラック(各植物栽培用空間)の間口方向の両端が開放された構成であるよりも、請求項3に記載の構成によれば、この各ラック内の照明器具からの光線が間口方向の両端から漏洩するのを防止すると同時に内側の植物栽培用空間に反射させることができるので、一層照明効率を高めることができる。この場合、上記請求項2に記載の送風用ファンを組み合わせて実施するのが望ましいが、特に請求項4に記載の構成によれば、植物栽培用空間内の送風用ファンのある側とは反対側の端部で雰囲気を澱ませることがなくなり、植物栽培用空間内で間口方向の空気流を確実に生じさせることができる。更に、請求項5に記載の構成によれば、空気流通口を備えた横側垂直光反射板の光線反射面積が空気流通口の存在で小さくなるのをフラップによって防止し、より一層、照明器具からの光線を有効活用することができる。
【0014】
尚、中間のラックに、その両側に択一的に形成される作業通路との間で出し入れ自在に栽培用コンテナが間口方向に沿って二列に並列載置される棚が設けられる場合、請求項6に記載の構成によれば、全てのラックが互いに隣接する作業通路無し状態に切り換えられているとき、ラックの並列台数に関係なく、中間垂直光反射板により、最大二列の栽培用コンテナ(植物栽培用空間)ごとに仕切ることができ、中間垂直光反射板による仕切りが無い場合と比較して、各植物栽培用空間に対する照明効果を高めることができる。
【0015】
又、請求項7に記載の構成によれば、全てのラックが互いに隣接する作業通路無し状態に切り換えられているとき、開閉自在な正面側垂直光反射板が前記請求項6に記載の構成における中間垂直光反射板と同様に作用して、各植物栽培用空間に対する照明効果を高めることができるのであるが、人手による作業を行なうために移動ラックを横動させて作業通路形成状態に切り換えたとき、作業通路に隣接する両側のラックの内、実際に作業を行なう片側のラックに対しては、その作業通路に隣接する側の開閉自在な正面側垂直光反射板を開いて(若しくは取り外して)作業通路に隣接する側を開放するが、反対側のラックの作業通路に隣接する側の開閉自在な正面側垂直光反射板は閉じたままにすることにより、作業対象でないラック内の照明器具の光線が作業通路内に漏洩することを防止でき、当該ラック内の植物栽培用空間に対する照明効果を維持できる。
【0016】
又、請求項8に記載の構成によれば、照明器具からの光線を垂直光反射板(背面側垂直光反射板、横側垂直光反射板、開閉自在な正面側垂直光反射板など)によって植物栽培用空間側へ反射させる光線量を増大させることができるが、請求項9に記載の構成によれば、垂直光反射板による植物栽培用空間側への反射光線量は減るが、植物栽培用空間とラック装置外との間の空気の流通が良好になり、空調された室内に本発明によるラック装置を設置して植物栽培を行うような場合、ラック装置外の空調された室内雰囲気を植物栽培空間内に流入させることができ、当該植物栽培空間を完全に密閉された空間とする場合よりも、栽培植物の生育を良好にすることができる。又、ラック装置の全周囲からいつでも栽培植物の様子をある程度観察できるので、管理にも好都合である。
【0017】
更に、請求項10に記載の構成によれば、移動するラックに設けられた給水タンクに対して当該ラックが移動していないときに適当な手段で水を補給する必要はあるが、当該移動ラックに対する給水用配管系が不要になり、給水系を含む装置全体の構成を簡単にして安価に実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】移動ラック装置の全体を示す概略横断平面図である。
【図2】A図及びB図は、作業通路形成状態にある移動ラック装置の全体を示す概略平面図、C図は作業通路無し状態にある移動ラック装置の全体を示す概略平面図である。
【図3】図2に示す固定ラックと移動ラックに対する光反射板の配設位置を説明する概略縦断側面図である。
【図4】本発明の一実施例における固定ラックと移動ラックに対する光反射板の配設位置を説明する概略縦断側面図である。
【図5】A図は本発明に係る移動ラック装置に使用される栽培用コンテナの平面図、B図は同縦断正面図である。
【図6】同上の栽培用コンテナの縦断側面図である。
【図7】同上の栽培用コンテナを用土充填前の状態で示す平面図である。
【図8】本発明の一実施例におけるラック並列方向両端のラックの要部を示す一部縦断正面図である。
【図9】同上のラックを示す横断平面図である。
【図10】同上のラックに組み込まれた給水手段を示す縦断正面図である。
【図11】同上のラックの要部を示す一部縦断側面図である。
【図12】図8のA部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1及び図2に示す移動ラック装置は、間口方向(長さ方向)が互いに平行になるように並列配置された4台のラック1A,1B,2A,2Bの内、並列方向の一端に位置するラック1Aは床面上定位置に固定設置され、並列方向の他端に位置するラック1Bと中間の2台のラック2A,2Bは、床面と面一にラック並列方向と平行に埋設された複数本のガイドレール3上に、ラック並列方向に横動自在に支持された移動ラックとなっている。而して、図1及び図2Bに示すように、他端移動ラック1Bが一端固定ラック1Aから最も離れた横動限位置にあるとき、この両端ラック1A,1B間には、中間移動ラック2A,2Bの奥行き方向(ラック並列方向)の幅の合計値よりラック間に形成する作業通路Aの幅分だけ広い距離が確保されており、各移動ラック1B,2A,2Bの横動により、作業通路形成状態と作業通路無し状態とに切り換えることができる。
【0020】
即ち、作業通路形成状態は、他端移動ラック1Bが一端固定ラック1Aから最も離れた横動限位置にある状態で2台の中間移動ラック2A,2Bを横動させることにより、図1に示す一端固定ラック1Aと中間移動ラック2Aとの間、図2Aに示す両中間移動ラック2A,2B間、図2Bに示す他端移動ラック1Bと中間移動ラック2Bとの間、の任意の何れかに所要幅の作業通路Aを形成した状態である。又、作業通路無し状態は、図2Cに示すように、全ての移動ラック1B,2A,2Bを一端固定ラック1A側へ横動させて、全てのラック1A〜2Bをラック並列方向に隣接させ、以て、作業通路Aを無くした状態である。尚、移動ラック1B,2A,2Bを横動させるための駆動手段は、従来周知であるから図示及び説明は省略する。
【0021】
一端固定ラック1Aと他端移動ラック1Bとは、間口方向に沿って一列に栽培用コンテナ4を並列載置できる棚5を上下複数段に備えたものであって、内側の中間移動ラック2A又は2Bとの間に形成される作業通路Aから各段の棚5上に対し栽培用コンテナ4を出し入れできるものである。又、中間の移動ラック2A,2Bは、間口方向に沿って二列に栽培用コンテナ4を並列載置できる奥行き方向前後二列の棚5を上下複数段に備えたものであって、奥行き方向前後何れ側に形成される作業通路Aからも各段の棚5上に対し栽培用コンテナ4を出し入れできるものである。即ち、この中間の移動ラック2A,2Bは、両端のラック1A,1Bと実質的に同一構造の2台のラック単体を、その栽培用コンテナ4の出し入れ側を外向きにした背中合わせの状態で台車6上に載置固定した構造に相当するものである。勿論、奥行き方向前後二列の棚5は、1枚の幅広の棚に置き換えることもできる。
【0022】
本発明の基本構成によれば、図1乃至図3に示すように、全てのラック1A〜2Bには、その各段の棚5の上側の植物栽培用空間の天井位置(直上の棚5又はラック上端の天井フレーム7の下側位置)に、当該植物栽培用空間の全体をカバーする天井側光反射板8が、その光反射面が下側の棚5側に向くように水平に張設されると共に、間口方向の両端に、その全体をカバーする横側垂直光反射板9a,9bが、その光反射面が棚5のある内側に向くように張設されている。更に、両端のラック1A,1Bには、中間移動ラック2A,2Bに隣り合う栽培用コンテナの出し入れ側(正面側)ではなく、外側の背面側全体をカバーする背面側垂直光反射板10が、その光反射面が棚5のある内側に向くように張設されている。尚、横側垂直光反射板9a,9bや背面側垂直光反射板10は、各段の棚5の上側の植物栽培用空間ごとに分割されたものであっても良い。又、各段の棚5の上側の天井側光反射板8の下側には、照明器具、例えば植物育成用蛍光灯の光源である棒状の蛍光管11が、下側の植物栽培用空間全体を略均等に照明できるように、適当な間隔で配設され、更に、各段の棚5の上側の植物栽培用空間の間口方向の一端には、横側垂直光反射板9aの内側において、他端の横側垂直光反射板9bのある側へ送風する送風用ファン12が設けられる。
【0023】
上記の構成が本発明の基本構成となるが、図4に示すように、全ての垂直光反射板9a〜10は、各段の棚5の上側の植物栽培用空間ごとに分割すると共に、各段の垂直光反射板9a〜10の上下寸法を略半減させて、各段の棚5の上側の植物栽培用空間の上部領域のみをカバーするように構成しても良い。更に、両端のラック1A,1Bの内側と中間移動ラック2A,2Bの両側、即ち、隣り合うラック1A〜2Bとの間に形成される作業通路Aに隣接する栽培用コンテナの出し入れ側に、各段の棚5の上側の植物栽培用空間を個別にカバーする開閉自在な垂直光反射板13を、その光反射面が棚5のある内側に向くように設けることも可能である。この開閉自在な垂直光反射板13は、その天井側光反射板8に隣接する上側辺を支点にして前後揺動自在に構成することができるが、例えばその天井側光反射板8に隣接する上側辺を、ラック側に突設されたフックに掛け外し自在に引っ掛けて吊り下げるなど、ラックに対して着脱自在に構成することも可能である。又、中間移動ラック2A,2Bには、同一レベルで奥行き方向前後二列の各棚5の上側の植物栽培用空間の間を仕切るように、間口方向に沿って中間垂直光反射板14を配設することができる。この中間垂直光反射板14は、両側面が光反射面である必要があるが、片面が光反射面である2枚の光反射板を重ねるように配設しても良い。尚、開閉自在な垂直光反射板13や中間垂直光反射板14も、他の垂直光反射板9a〜10と同様に図示の如く、各段の棚5の上側の植物栽培用空間の上部領域のみをカバーするように構成することができる。
【0024】
次に、本発明の移動ラック装置に使用される栽培用コンテナ4の具体構造を図5〜図7に基づいて説明すると、当該栽培用コンテナ4は、平面形状が長方形のコンテナ本体22、このコンテナ本体22の内側底面22a上に載置した灌水用パイプ23、この灌水用パイプ23の上からコンテナ本体22内に所要量充填した用土から成る植物栽培用土層24、及びこの植物栽培用土層24に植え付けられた栽培植物苗26の周囲で植物栽培用土層24の表面を覆う複数枚の光反射シート25から構成されている。
【0025】
前記コンテナ本体22としては、物品収納用或いは輸送用などの合成樹脂製コンテナをそのまま活用することができ、特にサイズが限定されるわけではないが、後述するようにラックを利用して植物栽培環境を室内に構成する場合に鑑み、長辺方向長さ:700mm程度、短辺方向長さ:460mm程度、高さ:120mm程度(内側底面2aからの高さ:112mm程度)のものを採用した。灌水用パイプ23としては、例えば多孔質ゴム製で表面全体から水が滲み出るタイプの透水性可撓パイプを使用することができ、このような灌水用パイプ23をコンテナ本体22の内側底面22a上に、コンテナ本体22の周壁から略一定距離だけ離れるように一巻き環状に曲げて載置し、当該灌水用パイプ23の一端部を、コンテナ本体22の1つのコーナー部に導くと共に上方に曲げて、コンテナ本体22より上方に垂直に突出する受水端23aを形成し、コンテナ本体22の内側底面22a上に位置する他端開口は、キャップ23bを外嵌固定して閉じている。植物栽培用土層24を構成する用土としては、例えば土壌改良材として一般的な「ピートモス」に「ベントナイト」をコーティングしたような、ノンケミカルの土壌用環境資材として知られる用土を使用することができ、このような用土を、コンテナ本体22の内側底面22aから植物栽培用土層24の表面(図示のように畝を形成する前の平坦な表面)までのセットアップ高:80mm程度となるように充填した。光反射シート25には、例えば超微細発泡ポリエチレンテレフタレートから成る光反射シートが利用できる。
【0026】
図示例では、植物栽培用土層24の表面に、コンテナ本体短辺方向と平行な畝24aをコンテナ本体長辺方向に適当間隔おきに複数列形成し、この各畝24aに畝長さ方向に適当間隔おきに栽培植物(小型の葉物野菜)の苗26を植え付け、各畝24a間と両端の畝24aの外側に、コンテナ本体短辺方向に長い帯状で最小畝間の間隔より適当に狭い幅の規定サイズの帯状に裁断した複数枚の光反射シート25を、植物栽培用土層24の表面を覆うように光反射面を上にして敷いている。
【0027】
上記の栽培用コンテナ4を支持する本発明の移動ラック装置の基本構成は、先に説明した通りであるが、その具体構造を、図8〜図12に基づいて説明する。この図8〜図12は、図4に示した基本構造の移動ラック装置における一端固定ラック1Aの中間2段の棚5のみを示しているが、他端移動ラック1Bは、一端固定ラック1Aと対称構造のものが台車上に立設されるだけであり、中間移動ラック2A,2Bも、一端固定ラック1Aと同一構造のラックが背中合わせに台車6上に立設されたものに相当するから、これら他端移動ラック1Bや中間移動ラック2A,2Bの具体構造の図示及び説明は省略し、以下の説明では、一端固定ラック1Aと特定せずに、単にラック31と呼称する。そして、実際の各ラック1A〜2Bは、その間口方向に多数(図示例は6台)の栽培用コンテナ4を並列載置できるものであるが、図8〜図12では、3台の栽培用コンテナ4を並列載置できるものとして示している。
【0028】
ラック31は、その四隅に、下端部及び上端部が連結フレームにより互いに連結された支柱部材32を備えており、各段の棚5は、ラック奥行き方向前後一対の支柱部材32間に架設された左右一対の棚受け33により支持されたもので、図示の棚5は、ラック間口方向と平行なビーム材34を、ラック奥行き方向適当間隔おきに複数本(図示例では4本)並列させたもので、各ビーム材34は、その両端が前記棚受け33に形成されたビーム材嵌合支持部に各別に支持されている。勿論、棚5は上記構成のものに限定されるものではなく、全面が1枚の板材で構成されるものや、ラック奥行き方向前後複数枚の帯状板から構成されるもの、ラック間口方向と平行な前後一対のビーム材間にラック奥行き方向と平行なサブビーム材をラック間口方向適当間隔おきに架設して成るもの、などの従来周知の各種の棚が利用できる。
【0029】
各段の棚5には、上記構成の栽培用コンテナ4が、そのコンテナ本体長辺方向がラック奥行き方向と平行になる向きで、ラック間口方向に複数台並列支持される。このとき、各コンテナ本体22の長辺方向前後両端が、ラック31を横から見たときにラック奥行き方向前後一対の支柱部材32間に納まるサイズにラック31が構成されると共に、当該棚5を構成する複数本の前記ビーム材34の内、奥行き方向前後両端のビーム材34は、支持する前記コンテナ4の長辺方向前後両端より少し内側に入るように構成されている。而して各段の棚5には、その正面側(コンテナ4を出し入れする側)にガイドローラー35が設けられると共に、背面側にはコンテナ落下防止用ストッパー36が設けられている。ガイドローラー35は、ラック31の前側左右一対の支柱部材32間に配置された、ラック間口方向と平行な向きのローラーであって、その両端の軸受け部材が左右一対の棚受け33に取り付けられている。而してこのガイドローラー35は、棚5に支持される前記コンテナ4の前端より少し前方に突出すると共に、棚5のコンテナ支持高さ(ビーム材34の上面高さ)よりも若干上方にも突出して、コンテナ本体22の正面側への滑り出しを阻止できるように構成している。コンテナ落下防止用ストッパー36は、ラック31の後ろ側左右一対の支柱部材32間に配置された、ラック間口方向と平行な向きの棒状部材から成り、棚5のコンテナ支持高さよりも高い位置でその両端が左右一対の棚受け33に取り付けられている。
【0030】
各段の棚5に支持される栽培用コンテナ4の上方には、当該栽培用コンテナ4の真上に位置する棚5又はラック31の天井フレーム7を利用して照明器具37が取り付けられている。この照明器具37は、棒状や環状の蛍光灯、電球形蛍光灯、その他如何なるものでも良いが、特に植物育成に特化された蛍光照明器具が望ましい。この図示例では、照明器具37として植物育成用の棒状蛍光灯が使用されており、ラック奥行き方向に並列する複数の照明器具37が、その光源である蛍光管11がラック間口方向と平行向きで且つ下側の栽培用コンテナ4に植え付けられている栽培植物を照明するように、棚5(又は天井フレーム7)の下側に取り付けられている。具体的には、上記構成の棚5の下側に取り付けられる照明器具37は、棚5を構成するビーム材34の下側に当該照明器具37の本体37aを取り付けている。
【0031】
上記のように取り付けられた各照明器具37の本体37aと蛍光管11との間を通るように天井側光反射板8が水平に張設されている。この天井側光反射板8は、そのラック奥行き方向の幅がラック31の奥行き方向の幅(前後一対の支柱部材32の外側面間の間隔)と略同一で、そのラック間口方向の幅は、ラック31の間口方向左右一対の支柱部材32の内側面間の間隔と略同一であって、光反射面を下にして各照明器具37の本体37aに取り付けられている。更にこの天井側光反射板8の前後両側辺と左右両側辺とには、それぞれ垂直に垂れ下がる開閉自在な垂直光反射板13、背面側垂直光反射板10(中間移動ラック2A,2Bでは、中間垂直光反射板14)、及び横側光反射板9a,9bが、光反射面が互いに対面する向きで連設され、各棚5の上側の植物栽培空間、即ち、収穫時の栽培植物の高さより高い植物栽培空間の上部領域(略上半部)を、前記光反射板8〜10,13(又は光反射板8〜9b,13,14)により形成された、内側全面が光反射面である囲い手段38で覆った構造となっている。従って、全ての照明器具37の蛍光管11は、前記囲い手段38の内側で天井側光反射板8の直下に配置されている。
【0032】
囲い手段38を構成する光反射板の内、栽培用コンテナ4を出し入れする側の開閉自在な垂直光反射板13は、天井側光反射板8の前側辺、又はラック31のフレームに対して、ヒンジ又はこれに代わる布状連結材(ガムテープなど)を介して上下揺動開閉自在に取り付けられている。又、囲い手段38で囲まれる空間のラック間口方向両端の一方、例えば横側光反射板9aの内側には、前記のように送風用ファン12が配設され、反対側の横側光反射板9bには、図8A部及び図12に示すように、内側へ斜め下向きに延出するフラップ39を上側辺から連設された横長スリット状の空気流通口40が所要数設けられている。尚、フラップ39は、図示とは逆に、外側へ斜め下向きに延出するものであっても良いし、フラップ39を省いても良い。又、フラップ39を図示のように内側へ斜め下向きに延出させる場合は、外側へ斜め下向きに延出させる場合よりも、空気流通口40の存在で光反射板9bの内側への反射光量が減少するのを抑制することができる。
【0033】
更にラック31には、図10及び図11に示すように、各段の棚5ごとに独立した給水手段41が併設されている。各給水手段41は、各段の棚5の上方に設けられた囲い手段38の天井側光反射板8の下側で且つ前側辺近傍位置に水平に架設された給水管42、この給水管42の各栽培用コンテナ4に対応する位置からそれぞれ直角下向きに分岐する分岐管43、この分岐管43に接続された止水栓44、一端が各止水栓44に着脱自在に接続され且つ他端が当該止水栓44の下方に位置する各栽培用コンテナ4における灌水用パイプ23の受水端23aに着脱自在に接続される可撓パイプ45、及び給水管42の一端に流量調整弁46を介して接続された給水タンク47から構成されている。尚、給水管42の他端はキャップ48により閉じられている。
【0034】
給水タンク47は、給水管42より高い位置でラック31の間口方向一端外側に取り付けられたものであって、水補給時に給水管42との連結を解いてラック31から取り外しできるように構成しても良いが、上側を給水用に開放しておき(必要に応じて蓋を設けても良い)、給水タンク47内の水位が一定レベル以下に下がったとき、水道に接続されたホースなどにより手作業で水補給できるように構成することができる。勿論、各給水タンク47に水位検出用センサーを取り付けると共に、各給水タンク47に対して水道に接続された水補給管を、自動開閉弁を介して接続し、水位検出用センサーが給水タンク47内の水位が下限レベル以下に下がったことを検出したとき、その給水タンク47に接続されている水補給管の自動開閉弁を開動させ、給水の結果、水位検出用センサーが給水タンク47内の水位が上限レベルに達したことを検出したとき、前記自動開閉弁を閉動させるように構成して、全ての給水タンク47に対する水補給を全自動で行なうように構成することも可能である。
【0035】
次に上記のように構成された装置の使用方法について説明すると、先に説明した要領で栽培植物の苗26を植え付けて完成させた栽培用コンテナ4を、ラック31の各段の棚5上に、コンテナ本体長辺方向がラック奥行き方向と平行になるように、所定数を並列載置する。具体的には、図1〜図3に示したラック1A〜2Bの内の1つのラックに対して栽培用コンテナ4の積み込み作業を行なうのであるから、この作業対象のラックのコンテナ出し入れ側には、中間移動ラック2A,2Bや他端移動ラック1Bを横動させて、作業通路Aが形成され、この作業通路A側に位置する囲い手段38の開閉自在な垂直光反射板13が手前上方に開かれる。尚、この開閉自在な垂直光反射板13を開いた状態で保持する手段、例えばチエンや紐などの吊り具の先端フック部を開閉自在な垂直光反射板13の下側辺近傍に設けた被係止孔に係合させるような簡単な保持手段を併用するのが望ましい。
【0036】
一方、ラック31の各棚5に装備されている給水手段41の各止水栓44は閉じられ、給水タンク47には水が所要量補給されている。この状態で、各栽培用コンテナ4における灌水用パイプ23の受水端23aに、当該栽培用コンテナ4を載置した棚5が備える給水手段41の給水管42から垂れ下がる可撓パイプ45の先端を接続し、止水栓44を開く。この結果、給水タンク47内から栽培用コンテナ4内の灌水用パイプ23に自動的に給水され、給水タンク47から灌水用パイプ23に至る給水路中の水量の位置水頭エネルギーにより灌水用パイプ23の表面全体から水が連続的に滲み出して、先に説明したように水分が灌水用パイプ23の周囲から植物栽培用土層24の全体に毛細管現象などにより広がり、当該植物栽培用土層24の全体を所要湿度の湿潤状態に維持させることができる。
【0037】
このとき、植物栽培用土層24の表面は、苗26の根元周囲を除いて光反射シート25により覆われているので、植物栽培用土層24の表面からの水分の蒸散は極少ない。従って、経時的に植物栽培用土層24の湿度が漸増し、植物栽培用土層24の底部に水分が滞留し、そしてその水分の滞留量が漸増するようなことが無いように、灌水用パイプ23からの単位時間あたりの水分滲出量を、給水タンク47側の流量調整弁46により設定することができるが、基本的には、前記給水路中の水量の位置水頭エネルギーによって灌水用パイプ23からの単位時間あたりの水分滲出量が決まるので、給水タンク47の容量や給水管42に対する高さなどにより前記位置水頭エネルギーを予め設定することにより、前記のように植物栽培用土層24が湿度過多になるのを防止できる。
【0038】
上記のように給水手段41を作動させると共に、各棚5に装備されている照明器具37に通電し、蛍光管11を点灯させる。この結果、囲い手段38の下側の栽培植物空間は、蛍光管17aからの直接光線の他に、囲い手段38の内側全面の光反射面(光反射板8〜10,13、又は光反射板8〜9b,13,14の光反射面)からの反射光線、及び植物栽培用土層24上を覆う光反射シート25からの反射光線によって照明される。即ち、栽培植物の苗26の葉裏側を含めて栽培植物の苗26の周囲全体を必要な照度で照明することができる。
【0039】
尚、囲い手段38の内側空間内では、当該内側空間が下側のみ開放していることと、当該内側空間の天井付近の多数の蛍光管11が点灯することのより、滞留している空気の温度上昇が考えられる。しかしながら、送風用ファン12に通電し、囲い手段38の内側でそのラック間口方向(長手方向)の一端部から若干斜め上向きに極弱い風力で送風することにより、送風用ファン12とは反対側の空気流通口40の存在も関係して、囲い手段38の内側空間内にその長手方向の極弱い気流を生じさせることができ、この気流により、囲い手段38の内側空間と外側との間に空気の流通を発生させることができる。この結果、囲い手段38の内側空間に高温の空気が滞留して下側の栽培植物の苗26に熱的悪影響が及ぶのを防止することができると共に、栽培植物の苗26の周囲の雰囲気が静止するのを防止することができる。勿論、囲い手段38と栽培用コンテナ4との間の栽培植物の苗26の周囲は開放されているので、このラック31が設置された植物栽培室内のエアコンにより温度調整された雰囲気も、前記囲い手段38の内側空間に発生する気流に伴って、栽培用コンテナ4の上側の植物栽培空間内に流入するので、この点でも栽培植物の苗26の周囲の空気が静止滞留することはない。
【0040】
以上のように、植物栽培用土層24を構成させる用土の性状及び栽培植物の種類や成長度合いなどに応じて、植物栽培用土層24内を常時適当湿度の湿潤状態に維持すると共に、照明器具37の1日あたりの点灯時間や照度を設定し、更には送風用ファン12の1日あたりの通電時間や風力を設定して、各栽培用コンテナ4の植物栽培用土層24に植え付けた栽培植物の苗26を生育させることにより、当該栽培植物の苗26を所要期間の間に良好に生育させて収穫期を迎えることができる。この収穫期までの栽培育成期間においては、栽培植物の手入れや状況の観察などの特別な事情の無い限り、作業通路Aは不要であるから、図2Cに示すように、全ての移動ラック1B,2A,2Bを一端固定ラック1A側に横動させて全てのラック1A〜2Bを互いに隣接させ、作業通路無し状態に切り換えておくものである。この状態では、全てのラック1A〜2Bの各段の棚5が備える照明器具37の蛍光管11からの光線が真下の棚5の上の植物栽培用空間内に効率よく照射され、照明の効果を高めることができる。
【0041】
栽培植物を収穫するときは、栽培用コンテナ4をラックに積み込む作業を行なったときと同様に、ラック1A〜2Bの内、その収穫作業対象となるラックの栽培用コンテナ出し入れ側に作業通路Aを形成するように、移動ラック1B,2A,2Bを横動させる。そして形成された作業通路Aから収穫作業対象のラックに対して以下の作業を行なうことになる。
【0042】
即ち、収穫作業対象となる栽培用コンテナ4の灌水用パイプ23に接続されている給水手段41の止水栓44を閉じて可撓パイプ45を灌水用パイプ23の受水端23aから外し、囲い手段38の開閉自在な垂直光反射板13を上に上げて開放した状態で、収穫対象の栽培用コンテナ4を棚5の上から引き出すのであるが、このとき、手前にあるガイドローラー35が少し高いので、引き出す栽培用コンテナ4の手前を持ち上げるようにして当該ガイドローラー35上に移載する。この状態で栽培用コンテナ4を手前に引き出すことにより、ガイドローラー35の転動を利用して軽く円滑に収穫対象の栽培用コンテナ4を棚5から取り出すことができる。又、棚5を構成するビーム材34の内、正面側のビーム材34は、その直下の棚5が備える囲い手段38の天井側光反射板8の前側辺より後退しているが、この囲い手段38の天井側光反射板8の前側辺の真上に前記ガイドローラー35が配置されていて、棚5に対して出し入れされる栽培用コンテナ4が、直下の棚5が備える囲い手段38の天井側光反射板8の前側辺とぶつかるのを前記ガイドローラー35で防止できる。
【0043】
尚、上記実施例では、給水管42から分岐させた分岐管43に止水栓44が設けられているので、この止水栓44を止水状態に切り換えても、可撓パイプ45を灌水用パイプ23の受水端23aから外したときに当該可撓パイプ45内の水が流出することになる。又、当該可撓パイプ45を止水栓44側から外しても同じことである。従って、可撓パイプ45を灌水用パイプ23の受水端23aから外すことを前提にして、灌水用パイプ23の受水端23aに接続される可撓パイプ45の先端部に止水栓44を設けておくのが望ましい。止水栓44としては、手作業で止水操作する形式のものでも良いが、分岐管43の先端に止水栓44を設ける場合と可撓パイプ45の先端に止水栓44を設ける場合の何れにおいても、止水栓44と可撓パイプ45、又は可撓パイプ45と灌水用パイプ23の受水端23aとを着脱自在に接続する手段として、散水ホース接続用のワンタッチカップラーの一方(プラグ又はソケット)に、当該ワンタッチカップラーを離脱操作したときに自動的に止水動作する止水弁が内蔵された、止水弁内蔵のワンタッチカップラーを利用し、内蔵止水弁を分岐管43側にして分岐管43と可撓パイプ45とを接続するか又は、内蔵止水弁を可撓パイプ45側にして可撓パイプ45と灌水用パイプ23の受水端23aとを接続するのが最も望ましい実施形態である。
【0044】
上記実施例では、棚5の上側に配設される囲い手段38は、照明器具37の光源(蛍光管11)より上側の天井側光反射板8の全周側辺から下向きに連設した垂直光反射板9a,9b,10(又は14),13によって構成したが、作業通路Aが不要な植物育成状態では、作業通路無し状態に切り換えておくものであるから、図1〜図3に示すように、作業通路無し状態にある移動ラック装置の周囲全面をカバーする垂直光反射板9a,9b,10と、各段の棚5の上側の植物栽培用空間の天井部をカバーする天井側光反射板8があれば良く、開閉自在な垂直光反射板13や中間垂直光反射板14は無くとも良い。勿論、各ラック1A〜2Bの間口方向の長さが非常に長い場合は、各段の棚5の上側の植物栽培用空間の間口方向両端の横側垂直光反射板9a,9bも省くことができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の植物栽培用移動ラック装置は、植物栽培用土を充填した土耕栽培用コンテナなどの栽培用コンテナを使用して、露地ではなく室内で比較的大規模な植物工場的に植物、特に比較的小型の葉物野菜を短期間のサイクルで栽培するときの手段として有効活用できる。
【符号の説明】
【0046】
1A 一端固定ラック
1B 他端移動ラック
2A,2B 中間移動ラック
3 ガイドレール
4 栽培用コンテナ
5 棚
6 台車
8 天井側光反射板
9a,9b 横側垂直光反射板
10 背面側垂直光反射板
11 照明器具37の蛍光管
12 送風用ファン
13 開閉自在な垂直光反射板
14 中間垂直光反射板
22 コンテナ本体
23 灌水用パイプ
23a 受水端
24 植物栽培用土層
25 光反射シート
26 苗(栽培植物)
31 ラック
32 支柱部材
33 棚受け
34 ビーム材
35 ガイドローラー
36 コンテナ落下防止用ストッパー
37 照明器具
38 囲い手段
39 フラップ
40 空気流通口
41 給水手段
42 給水管
43 分岐管
44 止水栓
45 可撓パイプ
46 流量調整弁
47 給水タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のラックが、各ラックの間口方向に対する直角奥行き方向に互いに並列配置され、これら複数のラックは、その全てのラック又は1台の固定ラックを残して、ラック並列方向に横動自在な移動ラックに構成され、これら移動ラックの横動により、隣り合う任意の2台のラック間に作業通路を形成する作業通路形成状態と、全てのラックが互いに隣接する作業通路無し状態とに切換え自在に構成された移動ラック装置において、両端のラックには、その片側に形成される作業通路との間で出し入れ自在に栽培用コンテナが間口方向に沿って並列載置される棚が設けられ、中間のラックには、その両側の何れかに形成される作業通路との間で出し入れ自在に栽培用コンテナが間口方向に沿って並列載置される棚が設けられ、全てのラックの棚上の植物栽培用空間には、その天井部をカバーする天井側光反射板が配設されると共に、両端のラックの棚上の植物栽培用空間には、その奥行き方向前後両側の内、形成された作業通路に隣接しない背面側をカバーする背面側垂直光反射板が配設され、各天井側光反射板の下側には、照明器具の光源が配設されている、植物栽培用移動ラック装置。
【請求項2】
各ラックの棚上の植物栽培用空間の間口方向の一端には、他端に向かって送風する送風用ファンが設けられている、請求項1に記載の植物栽培用移動ラック装置。
【請求項3】
各ラックの棚上の植物栽培用空間には、その間口方向の両端をカバーする横側垂直光反射板が配設されている、請求項1又は2に記載の植物栽培用移動ラック装置。
【請求項4】
各ラックの棚上の植物栽培用空間には、その間口方向の両端をカバーする横側垂直光反射板が配設され、一端の横側垂直光反射板の内側には、他端の横側垂直光反射板に向かって送風する送風用ファンが設けられ、当該他端の横側垂直光反射板には、空気流通口が設けられている、請求項1に記載の植物栽培用ラック。
【請求項5】
前記空気流通口は横長スリット状であって、その上側辺から植物栽培用空間のある内側へ斜め下向きに延出するフラップが突設されている、請求項4に記載の植物栽培用ラック。
【請求項6】
中間のラックには、その両側に形成される作業通路との間で出し入れ自在に栽培用コンテナが間口方向に沿って二列に並列載置される棚が設けられ、その棚上に二列に並列載置される栽培用コンテナの列の中間に位置する中間垂直光反射板が配設されている、請求項1〜5の何れか1項に記載の植物栽培用移動ラック装置。
【請求項7】
全てのラックの棚上の植物栽培用空間には、栽培用コンテナが出し入れされる作業通路に隣接する側をカバーする正面側垂直光反射板が開閉自在に配設されている、請求項1〜6の何れか1項に記載の植物栽培用移動ラック装置。
【請求項8】
各垂直光反射板は、各ラックの棚上の植物栽培用空間の高さ全域をカバーする高さを有する、請求項1〜7の何れか1項に記載の植物栽培用移動ラック装置。
【請求項9】
各垂直光反射板は、各ラックの棚上の植物栽培用空間の上部領域のみをカバーする高さを有する、請求項1〜7の何れか1項に記載の植物栽培用移動ラック装置。
【請求項10】
少なくとも移動ラックには、この移動ラックの棚上に載置される栽培用コンテナより高い位置の給水タンクと、このタンクから棚上に載置された栽培用コンテナに重力により給水する給水用配管が設けられている、請求項1〜9の何れか1項に記載の植物栽培用移動ラック装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2011−78350(P2011−78350A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−232990(P2009−232990)
【出願日】平成21年10月7日(2009.10.7)
【出願人】(000003643)株式会社ダイフク (1,209)
【Fターム(参考)】