説明

植物用ボックス

本発明は植物用の密封ボックス1であって、少なくとも1つの植物10または類似物と、少なくとも1つの照明装置20と、水を少なくとも部分的に充てんされた下部貯水槽6とを収容するのに適した閉空間を画成する複数側壁5および2つの壁部、すなわち1つの頂壁4および1つの底壁3を含む形式のものにおいて、前記ボックスは、給水ポンプ7を介して前記下部貯水槽6に接続された給水目的の噴霧装置9を含み、これによりボックス1の水回路が閉回路として作業することを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は植物用ボックスに関するものである。より具体的に言えば、本発明は、独立式の室内用温室、それも、温室のあらゆる環境パラメータの制御に適し、したがって環境パラメータの調節に適したすべての設備を備えた室内用温室に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在知られている温室は、一般に、様々な寸法の単数のプラスチック・シートまたは相互に結合された複数シートから成り、閉空間を形成して、特に、温室の温度を調整し、かつ任意に周囲湿度を調整する意図のものである。これらのシステムは、比較的立派なシェルターに適しており、実質的に手動操作が考えられる。つまり、これらの温室は、庭を対象とし、開放的な地面に設ける意図のものである。地面レベルに設けられた散水機(水を噴霧する形式のもの)を含むこの種の従来式温室は、従来式の水栓に接続されており、この水栓は、植物、樹木、果樹等に水を供給するために操作員が開閉するのに適している。
【0003】
特許文献1には、1組のモジュール式パネルから成るテラリウムが開示され、これには、テラリウム内の植物用の貯水槽として機能する部分が、照明設備と共に含まれている。
このシステムは、実際に利点を有してはいるが、テラリウム内の水の循環に欠点がある。貯水槽は、常にテラリウムの一部に設けられ、チャネルを介して貯水槽から水が分配されるだけである。その場合、水は、多少の差はあれゆっくりと、かつまた多少の差はあれ均一に、植物または類似のものが植えられたトレー全体に、トレー底部から分配される。更に、植物または類似物に必要な水の量は、調節不可能なので、前記植物は、より詳しく言えば植物の根は、過剰な水量に浸されたり、逆に水不足に陥ったりする。この種のシステムの場合、水分配システムは植物の根に給水するだけである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】フランス特許第2576747号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、先行技術によるシステムの欠点を改善し、植物または類似物用の密封ボックス、それも、水が最適分配され、言い換えると植物の根に、常に、植物にとって過剰でも有害でもない十分な水量が供給されるボックスを提案することである。別の目的は、ボックス内で、植物の下に配置された貯水槽からボックスまたは植物の頂部へ閉回路内で定常的に水の循環が行われるようにすることである。更に、別の目的は、本発明による植物用ボックスを、特に比較的狭い場所、例えばアパートメントの中程度の広さの部屋に適するようにし、かつ必要な場合には移動できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
これらの目的のために、本発明による植物用の密封ボックスは、少なくとも1つの植物または類似物を収容するのに適した閉空間を画成する側壁および2つの壁部、すなわち頂壁および底壁と、少なくとも1つの照明装置と、少なくとも部分的に水が充てんされた下部貯水槽とを含んでおり、その特徴は、ボックスが、給水目的のために、給水ポンプを介して前記した下部貯水槽へ接続された噴霧装置を含み、これによってボックスの水回路が閉回路として働く点にある。
【0007】
限られた空間の場合に、ボックスの下部から上部へ連続的に水を循環させて噴霧することにより、すべての植物が均等に給水され、ボックス内の種々のパラメータ(湿度、照明)は、特に、噴霧量を増減し、任意にボックス内の空気をファンを用いて換気することにより最適制御される。
「噴霧装置」の用語は、微細滴状の液体を噴霧する機械的装置を言う。
理想的には、噴霧装置は超音波噴霧装置である。
好ましくは、植物用密封ボックスは、前記複数壁部の1つに取付けられた少なくとも1つのファンを含み、これによりボックス内への空気の補給が行われる。
【0008】
本発明の実施例の説明により、別の特徴を以下で明らかにする:
‐本発明の一実施例によれば、下部の貯水槽は、強化壁、例えばプラスチックで被覆された金属材料壁から成っている。
‐本発明の別の実施例によれば、下部貯水槽は側壁の下端部から成っている。
‐ボックスの底部は加熱装置を含んでいる。
‐貯水槽の上端には支持体が取付けられ、該支持体は前記植物の支持に適している。
‐支持体は複数の孔を有している。
‐噴霧装置と照明装置は、予め定めた規則的な時間間隔で噴霧および/または照明を起動するタイマーに接続されている。
【0009】
‐好ましくは、本発明によるボックスは温度センサを含み、該温度センサは、ファンに接続されており、検出温度が基準閾値を超えると、ファンを起動する。
‐好ましくは、本発明によるボックスは、ボックスの移動を可能にする転動部材上に取付けられている。
‐前記タイマーは制御装置に接続され、該制御装置は、任意に操作者により自動式に操作され、噴霧装置および/または照明装置の動作時間間隔を設定するのに適している。
‐側壁は、少なくとも部分的に透明である。
以下で、本発明を図示の一好適実施例につき詳述するが、本発明は該実施例に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明による設備のセットを取付けるのに使用する空のボックスの略示斜視図。(実施例1)
【図2】本発明によるボックスの断面図。本発明による設備の種々の物品が設置されている。
【実施例1】
【0011】
本発明によるボックス1は、平行6面体、方形空間、好ましくは長方形空間の形状を有している。ボックス1は、4個の剛性垂直支柱2を含んでいる。支柱2は、例えば密封性プラスチックで被覆された金属製であり、基部3または台座を頂壁と結合し、頂壁は、最上部のところでボックスを覆い、カバー4として構成されている。ボックス1は、高さH、厚さe、幅lを有している。ボックス1の寸法は、例えば高さ約1.6m、厚さ約0.4m、幅約0.6mである。
【0012】
ボックス1は、床置き用の平らな基部を有している。基部または台座はその底面に添付図面には示されていない転動部材、例えばすべての方向への転動に適した複数ホイール等を備えることができる。好ましくは取外し可能に基部3に取付けられた密封側壁5は、ボックス1の前記基部3から延びている。側壁5はカバー4により頂部が覆われており、カバー4は、前記側壁5の上端に取付けられるか、または任意に操作者が簡単に取外せるように、前記側壁の前記上端に載置されている。
【0013】
ボックス1の下部6は水を充てんされ、下部6の水中には給水ポンプ7が配置されている。給水ポンプ7はチューブ8を介して、或る高さに、好ましくはボックス1内に収容された植物10の上方に配置された噴霧装置9に接続されている。給水ポンプ7が噴霧装置9に給水することで、噴霧装置9は、常に十分な水量を単数または複数の植物に供給できる。好ましくは、ボックス1の下部6には、噴霧装置9を用いて噴霧される貯水を加熱する加熱器60が配置され、水が目標温度に加熱される。この加熱装置60は、従来式に単数または複数の電気抵抗から成っている。
【0014】
本発明の一実施例によれば、ボックス1の、貯水槽11を含む下部6は、例えばプラスチック被覆の金属材料を用いた強化壁を有し、これにより前記下部の剛度が補強され、しかも水が金属部分と接触することがなくなる。
本発明により提供される別の可能性は、ボックス1の下部6が側壁5から成り、特に水量の保持に適した強化壁12を有する貯水槽を設けなくともよいことである。その場合、側壁5の役割は、強化壁12の場合のように、噴霧装置9の作業に要する一定量の水を密封式に保持することになる。
好ましくは、ボックス1の下部6は、下部6に水を充てんするさい、取外し可能な部分または傾倒可能な部分を有している。該部分は添付図面には示されていない。
【0015】
照明装置20はカバー4に取付けて、光線が下方へ、つまりボックス1内の単数または複数の植物10の方向へ向くようにするが好ましい。もとより、照明装置20は、別の個所に、特に側壁5に配置することも考えられる。
ボックス1の下部6には、頂部に少なくとも1つの植物10の支持体として役立つスクリーン21または格子または類似物が配置されている。この支持体21は複数のオリフィスまたは孔を有しており、これにより噴霧装置9により水が撒布された後で、凝縮水が流れ、ボックス1の下部6内に溜まることができる。もとより、この支持体21は、その上に置かれる複数植物の重みに耐える十分に頑丈なものである。
【0016】
最後に、ボックス1は、外部に接続された少なくとも1つのファン30を有しており、該ファンの機能により、ボックス1内を換気し、任意にボックス1内の湿度および温度を低減することができる。ボックス1は、図示されていない少なくとも1つの比重計を備え、該比重計はボックス1内の湿度測定に適している。過剰な湿度が比重計によって検出されると、視聴覚信号(例えば発光ダイオード形式の)により、任意に警告が発せられ、操作者は噴霧装置を止め、外部空気に接続されているファン30に任意にスイッチを入れ、これら2つの処置の結果、事実上、ボックス内の湿度が低減される。
【0017】
噴霧装置9は、理想的には超音波噴霧装置である。この種の噴霧装置の場合、霧は、少なくとも部分的に水を充てんされた容器内で超音波周波数で振動する発振器によって発生させられる。この型の噴霧装置によって得られる霧滴の寸法は0.5μm(マイクロメートル)程度なので、急速蒸発が保証される。この噴霧装置9により得られる湿度は、概して極めて高く、約90%であり、この種の環境が必要な植物用に、あるいはまた時折、単に、一時的に周囲湿度を高めるために、この噴霧装置を利用することができる。
この種の噴霧器に脱イオン水を使用するのが好ましい場合には、ボックス1の下部6に配置する水抽出システムに、不純物を除去するフィルタ・システムを備えるのが好ましい。
【0018】
本発明の別の態様によれば、側壁5の少なくとも1つをスライド式パネル32として構成し、特に、新たな植物10を配置したり、植物を除去または植物の特定部分をカットするさいに、ボックス1を開けられるようにすることができる。
使用時、ボックス1には、少なくとも1つの鉢植植物10が支持体上に、任意に支持棒を添えて配置され、既述の設備のすべてまたは一部が備えられるようにする。ボックスの外部には、添付図面には示されていない制御装置が配置され、ボックスに接続されており、該制御装置がボックス内部のすべてのパラメータを自動式に制御し、使用者は、前記制御装置をプログラミングして、噴霧装置および/または照明装置および/またはファンの種々の操作範囲を決定できる。このようにボックスを自動式に構成することにより、使用者は、通常の水の補給作業とボックスの任意のクリーニング以外、あらゆる作業を軽減される。
【0019】
更に、制御装置は、植物、野菜、果実等々の環境条件を、湿度、露光、温度の観点から記憶させた記憶ユニットと接続できる。このようにして、使用者は、ボックス1内に特定種類の植物を配置し、その種類の植物に対する最適条件を記憶ユニットを利用して決定し、それらの条件をプログラミングすることで、噴霧装置9、照明装置20、ファン30を比重、温度、照明の各センサから受け取るデータの関数として制御装置により自動式に操作することができる。
【0020】
これらの装置、すなわち噴霧装置9、照明装置20、ファン30の各々は、また制御装置に接続せずに独立的に制御することもできる。その場合には、例えば、使用者は、ファン30、噴霧装置9、照明装置20を独立的にプログラムすることで、予め定めた時間の間、予め定めた時点から、任意に強度または濃度を決めて操作できる。噴霧装置9、照明装置20、ファン30は、各個にまたは一緒にタイマーに接続でき、タイマーは、ボックス1内に置かれた植物の必要に応じて、これらの装置の始動と停止を起動する。
【0021】
比重センサのほかに、ボックス1は、比重センサ同様、警告システムを有する温度センサを備えることができる。こうすることで、温度が一定の閾値を超えた場合、照明装置は、自動式に例えば起動されるか、または逆に停止される。また、ボックス1の内部の加熱および冷却両方用の空気調節システムをボックス1に備えることもできる。
ボックス1の装置7,9,20,30の給電は、独立式のユニット、例えば電池または蓄電池で実施でき、電池または蓄電池は噴霧装置9、ファン30、照明装置20に接続されるが、これらの装置9,20,30すべてを1つのソケットまたは類似物に接続することも考えられる。
【0022】
ボックス1のカバー4は、図1に示した取外し可能な部分40を有し、この部分には照明装置20や、任意にファン30が取付けられる。この取外し可能な部分40は、例えば照明装置の単数または複数の電球を取換える時、および/またはファンの掃除のさいボックス内のファンに接近困難な場合に、カバー4から取外すことができる。
加えて、この実施例のカバー4は、ボックス1の側壁5の少なくとも1つのパネル32をスライドさせるための少なくとも1つのスロットまたは溝50を有している。この側壁5のパネル32は、したがって、カバー4のスロットまたは溝50を介して取外すことができる。ボックス1の側壁5の少なくともかなりの部分は、透明であり、例えばプラスチック製であるが、ボックス1の基部/台座3およびカバー4は、任意だが、不透明に、例えば金属製にすることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物用の密封ボックス(1)であって、該密封ボックスが、
複数側壁(5)と、2つの壁部、すなわち1つの頂壁(4)および1つの底壁(3)とを含み、
少なくとも1つの植物(10)または類似物を収容するのに適した閉空間と、少なくとも1つの照明装置(20)と、少なくとも部分的に水が充てんされた下部貯水槽(6)とを画成している形式のものにおいて、
前記密封ボックスが、給水ポンプ(7)を介して前記下部貯水槽(6)に接続された給水目的の噴霧装置(9)を含み、これによりボックス(1)の水回路が閉回路として作業し、また、
前記密封ボックスが、例えば、警告システムに接続された温度調節用温度センサを含むことを特徴とする、植物用の密封ボックス。
【請求項2】
前記ボックス(1)が、前記壁部の1つに取付けられた少なくとも1つのファンを含み、該ファンによりボックス内部に空気が補給されることを特徴とする、請求項1記載のボックス。
【請求項3】
前記貯水槽が強化壁、例えば、プラスチックで被覆された金属材料壁から成ることを特徴とする、請求項1または請求項2記載のボックス。
【請求項4】
前記下部貯水槽が側壁の下端部から成ることを特徴とする、請求項1記載のボックス。
【請求項5】
ボックス(1)の前記下部貯水槽(6)が加熱装置(60)を含むことを特徴とする、請求項1から請求項4までのいずれか1項記載のボックス。
【請求項6】
前記貯水槽の上端に支持体が取付けられ、該支持体が前記植物を支持するのに適していることを特徴とする、請求項1から請求項5までのいずれか1項記載のボックス。
【請求項7】
前記支持体(2)が複数孔を有していることを特徴とする、請求項6記載のボックス。
【請求項8】
前記噴霧装置(9)と照明装置(20)とが、予め定めた規則的な時間間隔で噴霧および/または照明を起動するタイマーに接続されていることを特徴とする、請求項1から請求項7までのいずれか1項記載のボックス。
【請求項9】
前記温度センサがファン(30)に接続されており、温度が基準閾値を超えたことが検出されると、ファンが起動されることを特徴とする、請求項1から請求項8までのいずれか1項記載のボックス。
【請求項10】
前記ボックスが、移動を可能にする転動部材上に取付けられていることを特徴とする、請求項1から請求項9までのいずれか1項記載のボックス。
【請求項11】
前記タイマーが制御装置に接続されており、該制御装置は、操作者によって任意に自動制御され、噴霧装置(9)および/または照明装置(20)の作動時間間隔を設定するのに適していることを特徴とする、請求項8記載のボックス。
【請求項12】
前記側壁(5)が少なくとも部分的に透明であることを特徴とする、請求項1から請求項11までのいずれか1項記載のボックス。
【請求項13】
前記噴霧装置(9)が超音波噴霧装置であることを特徴とする請求項1から請求項12までのいずれか1項記載のボックス。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−528580(P2012−528580A)
【公表日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−513618(P2012−513618)
【出願日】平成22年6月2日(2010.6.2)
【国際出願番号】PCT/EP2010/057740
【国際公開番号】WO2010/139744
【国際公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(511293504)
【Fターム(参考)】