説明

植物由来成分を含むポリウレタン組成物

【課題】ひまし油に由来するポリオール成分の使用量が、全ポリオール成分中の30重量%以上と言う高い植物由来成分利用率を維持しながら、生産性の高い高密度ポリウレタンRIM成形品の製造方法とその原料組成物の提供。
【解決手段】ポリイソシアネート(A)と、ポリオール、架橋剤及び触媒を含んでなるポリオール混合物(B)とから、反応射出成形法によって、密度が1.0g/cm以上のポリウレタンエラストマーを製造する方法であって、(1)ポリオールは、ポリオール100重量部中、ひまし油に由来するポリオール成分を30重量部以上含み、ひまし油に由来するポリオール成分は平均官能基数が2.0〜2.7で、かつ水酸基価が70〜170mgKOH/gであり、(2)架橋剤がメチルジエチルジアミノベンゼン(DETDA)であり、(3)触媒が第3級アミンと金属触媒を共に含むことを特徴とする製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密度が1.0g/cm以上で耐熱性に優れた意匠表面を持つポリウレタン成形品を、反応射出成形法(いわゆるウレタンRIM成形)によって、短時間で効率よく製造する組成物および方法に関するものである。
本発明で得られたポリウレタン成形品は、ポリオール成分の一部に植物由来成分を含み環境に優しく、かつ優れた触感、弾性感と120℃以上の耐熱性を併せ持ち、自動車のアームレスト、ハンドル、コンソール蓋、チェンジノブなどの内装品、サイドストリップ、バンパー、バンパーカバー等の外装部品、家具としてのカバー材あるいは椅子の肘掛け等、あるいは小児用安全具、たとえば、椅子、歩行器、あるいは遊具用保護具、保持具、安全バーの表面材等に用いられる。
また、ポリウレタン原料を用いたRIM成形品は表面の凹凸を忠実に再現可能なため、意匠性の高い外観が得られ、加えて優れた触感、弾性感を持つことから、他の構造部品の表面を直接覆うカバー材としての使用のみならず、構造部品を覆うパッド部品のさらに表面を覆う意匠面表皮としての用途も期待されている。
【背景技術】
【0002】
近年の環境負荷低減の観点から、石油資源を原料とする石油由来樹脂に替えて、植物資源から得られる植物由来樹脂が求められている。すなわち、植物由来樹脂は、空気中のCO2を取込みながら光合成により生長する植物から得られた原料からなり、使用後の燃焼処理によりCO2が大気中に排出されても結果的に大気中のCO2量は増加しない。
バイオプラスチック製品はいずれは燃やされたり微生物によって分解されることで大気中にCO2が放出されるが、そのCO2を吸収した植物から作られるので大気中のCO2は増加しない。
このようにカーボン・ニュートラルの見地からは非常に有益なバイオプラスチックであるが、トウモロコシやサトウキビなど食料としても重要な原材料が使われている場合もあり、食料が工業材料に使われる場合の需給バランスの変化も最近問題になっている。
【0003】
特表2002−524627号公報(特許文献1)には大豆油、菜種油、綿実油、椰子油を使ったウレタンフォームの製造技術が開示されている。また、特表2007−507594号公報(特許文献2)には、大豆油、ベニバナ油、アマニ油、コーン油、ヒマワリ油、オリーブ油、カノーラ油、ゴマ油、綿実油、パーム油、菜種油、きり油、魚油、ピーナッツ油、高オレイン酸ベニバナ油、高オレイン酸大豆油、高オレイン酸ピーナッツ油、高オレイン酸ヒマワリ油、及び高エルカ酸、菜種油(ハマナ油)いった種々の植物油を活性水素含有変性して、軟質ポリウレタンを製造する技術が示されている。近年、植物由来原料をウレタン樹脂に応用する発明はかなり多い。
【0004】
この点、食料と競合しない作物で、なおかつ、ポリウレタン成形において非常に都合よく水酸基を分子中にもつヒマシ油をポリウレタン樹脂用のポリオール成分として使った発明はかなり長い歴史を持つ。
たとえば、特開昭58−93717号公報(特許文献3)には電気絶縁用ポッティング剤のポリオールとして、特開昭62−1335512号公報(特許文献4)にはポリウレタンエラストマーのポリオールとして、特開平07−165866号公報(特許文献5)には無溶剤の2液型樹脂塗料のポリオールとして、他のポリオールと併用してではあるが、ひまし油を使う方法が開示されている。これらはひまし油を油脂としての性質を持った親油性のポリオールと考え、他の石油由来ポリオールとの組み合わせによって、耐水性に優れたウレタン樹脂を開発し、それを上記用途に利用するという点が開発の中心になっている。
【0005】
このひまし油は約90%リシノール酸と約10%の水酸基を持たない長鎖脂肪酸のトリグリセライドとしての化学構造を持ち、平均分子量約950、平均官能度約2.7、水酸基価155〜165mgKOH/gのポリエステル系ポリオールとしての性質を持っている。
現実にこのひまし油をイソシアネートと反応して固めると、ポッティング材や塗料への応用でも判るようにひまし油の性質である疎水性を持った比較的硬い成形品が出来る。仮に、このひまし油を軟質ウレタンフォームに応用しようとすると、一般的に軟質ウレタンフォームのベースポリオールに使用されるポリオール成分、つまり平均分子量約2000〜8000、平均官能度約2〜3.0、水酸基価20〜60mgKOH/g といった性状のポリオールに較べ、分子量が小さく架橋度が高過ぎるために、その結果成形品は硬すぎて且つ伸びが不足し、全体的にはごわごわした傾向になる。
【0006】
この為、軟質ポリウレタンフォーム分野にひまし油を応用する場合には、たとえば、特開平7−206962号公報(特許文献6)では、ひまし油の使用量を限定し、特開平5−163342号公報(特許文献7)、WO2007−020904号公報(特許文献8)WO2007−020905号公報(特許文献9)では、ひまし油の水酸基にアルキレンオキサイドを付加したり、ヒドロキシ脂肪酸の重合物を応用して分子量を大きくしたり、さらにひまし油の水酸基が2級水酸基で反応性が低すぎると考えられる為、付加するアルキレンオキサイドの末端をエチレンオキサイドにすることで水酸基を一級化して活性を上げるなどの対応を取っている。
【0007】
仮に石油由来のアルキレンオキサイドやラクトンを付加して、ひまし油の分子量を増やし、水酸基価が約80mgKOH/g以下のひまし油変性ポリオールを合成したとすれば、その時点で合成されたポリオール中の天然由来成分の含有量は、50重量%以下に低下してしまう。また、その種の変性に要求なコストも無視出来ない。
【0008】
特開平10−87777号公報(特許文献10)は、天然由来成分であるひまし油をそのまま、比較的高い含有量でウレタン樹脂に応用している。ポリオール成分A)100重量%につき50〜99重量%のひまし油と、2)成分A)100重量%につき0.9〜49.9重量%のヒドロキシル基を含むイソシアネート反応性成分と、3)成分A)100重量%につき0.1〜5重量%の水と、場合により4)添加剤を含むポリオール成分100重量%と、B)イソシアネート成分とから、10g/l〜1100g/lの密度をもつ発泡ポリウレタン成形品を成形するという発明であり、実施例をみると、密度0.055g/cm3から密度0.15g/cm3の成形品が22秒から15分の時間で粘度上昇を示す反応性を示しながら、均等に発泡されて成形されている。
【0009】
この際、ひまし油と併用するポリオールとしては、段落0011に「例えば1800〜12,000、好ましくは3000〜7000の範囲の分子量をもつ化合物が挙げられる。これらの化合物は更にイソシアネート基と反応することが可能な基を含んでいなければならず、又は約>2.5、好ましくは2.6〜3.0、最も好ましくは2.8〜3.0の(平均)官能価をもつもの」とあり、架橋剤には、ジエチレングリコールなどのグリコールが使われている。
【0010】
特許文献10の発明は、かなり高い含有量でひまし油を含むポリオール成分が水を使った発泡成形で成形された場合に、一定以下の密度で発泡することが可能であり、比較的低温(25℃)で固化しうることを示しているが、密度が0.2〜0.8g/cmの緻密な表皮を持つ成形品であるインテグラルスキンフォームを反応射出成形法によって、短時間で効率よく製造するための原料組成あるいは成形条件については何ら説明をしていない。
特にひまし油が持っている水酸基は2級の水酸基であり、反応性が比較的遅い2級の水酸基を持つポリオールから成形されるポリウレタン成形品の成形時間は、通常比較的長くなると考えられ、生産性改良に関する議論は全くなされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特表2002−524627号公報
【特許文献2】特表2007−507594号公報
【特許文献3】特開昭58−93717号公報
【特許文献4】特開昭62−1335512号公報
【特許文献5】特開平07−165866号公報
【特許文献6】特開平7−206962号公報
【特許文献7】特開平5−163342号公報
【特許文献8】WO2007−020904号公報
【特許文献9】WO2007−020905号公報
【特許文献10】特開平10−87777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明者らは、資源、環境及び経済性の観点、並びに、成形品の耐熱性向上の観点から、天然由来成分として、ひまし油あるいはひまし油由来成分を使い、このひまし油あるいはひまし油由来成分を出来るだけ多く含む処方によって、密度が1.0g/cm3以上の高密度ポリウレタン成形品を、反応射出成形法によって短時間で効率よく、しかも耐熱性に優れた成形品を得るべく鋭意検討を進めた。
反応射出成形法によって、短時間で効率よく製造するということは、原料注入から、成形品取り出しのために型を開け始めるまでの時間(脱型時間という。)が2分以内、より望ましくは90秒以内であることを意味する。
本発明が対象とする主要な製品は、変形回復性と形状保持性を持つ、ゴム状ポリウレタン成形品であり、かつポリウレタン分類から言えば、発泡剤を含まず、非発泡のウレタンエラストマーが対象である。
【0013】
通常は、この種のウレタンエラストマーを製造する為のポリオール混合物の処方は、高分子量の常温硬化型(コールドキュアーとも呼ばれる)の軟質ウレタンフォーム用ポリエーテルポリオールと架橋剤との組み合わせから設計される。即ち、ポリエーテルポリオールとイソシアネートとから成立する部分がソフトセグメントと呼ばれて変形回復を中心とした軟質性質をエラストマーに与え、一方、架橋剤は形状保持を中心とした硬さ部分を担っている。このポリエーテル部分には通常、官能基数が2から3官能で水酸基価が56mgKOH/g以下の、末端水酸基をEOでキャップして水酸基の一級化率を70%以上としたものが使われている。しかしながら、これらの組成から得られた成形品の耐熱性は必ずしも充分とは云えず、更なる改良が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、従来のポリエーテルポリオールを、部分的に、安価で自然環境に優しいひまし油に由来するポリオール成分に置き換えて反応射出成形するに当たって、ひまし油に由来するポリオール成分をより高い含有量で使いこなしたいものと考えて鋭意検討した結果、驚くべき事に、架橋剤及び触媒の種類と使用量を特定の範囲に限定することによって、本発明の課題が解決されることを発見し、本発明に到達した。即ち、ベースのポリオールの一部を、更には、全てを、ひまし油に由来するポリオール成分に置き換えても、注入から90秒で成形品は型から取り出すこと(脱型)が可能であり、短時間脱型と云う要請に何等問題の無いこと、及び充分な柔軟性を持ち100%近い破断伸びを示すことを見出し、更に、この成形品を127℃という高温で保持した場合、一般的なポリエーテルに較べて、熱劣化による物性低下が極めて少ないという顕著な耐熱性を有することを見出し、本発明に到達した。
【0015】
即ち、本発明は、
ポリイソシアネート(A)と、ポリオール、架橋剤および触媒を含んでなるポリオール混合物(B)とから、密度が1.0g/cm以上の高密度ポリウレタン成形品を反応射出成形法で製造する方法であって、
ポリオール混合物(B)が
1)ポリオール100重量部中に、ひまし油に由来するポリオール成分を30重量部以上含み、
2)ひまし油に由来するポリオール成分は平均官能基数が2.0〜2.7で、かつ平均水酸基価が70〜170mgKOH/gであり、
3)発泡剤は含まず、並びに、
4)触媒が、第3級アミンと金属触媒とを共に含み、ポリオール100重量部に対して第3級アミンを0.4〜3.0重量部、および金属触媒を0.02〜1.5重量部含むことを特徴とする成形品の製造方法を提供する。
【0016】
本発明は、イソシアネートとの反応性がより速いと言われている一級水酸基が大半の高活性な従来のコールドキュアー用ポリエーテルポリオールを用いる従来の反応射出成形技術を勘案するとき、実質的には二級水酸基しか分子中に持たず、より低分子量であり、高めの架橋度を持ち得るひまし油に由来するポリオール成分を用いて、短時間脱型性を維持し、かつ充分な柔軟性を持ち、100%近い破断伸びを示すと同時に、127℃という高温で保持した場合、熱劣化による物性低下が極めて少ないという顕著な耐熱性を有する高密度ポリウレタン成形品を反応射出成形法で製造する方法であり、従来技術からは全く予想されない驚くべき発見である。
【0017】
本発明はまた、上記製造方法で得られた高密度ポリウレタン成形品を提供する。
【0018】
本発明はまた、 ポリイソシアネート(A)と、ポリオール、架橋剤および触媒を含んでなるポリオール混合物(B)とから、密度が1.0g/cm以上の高密度ポリウレタン成形品を反応射出成形法で製造するためのポリオール混合物(B)であって、
1)ポリオール100重量部中に、ひまし油に由来するポリオール成分を30重量部以上含み、
2)ひまし油に由来するポリオール成分は平均官能基数が2.0〜2.7で、かつ平均水酸基価が70〜170mgKOH/gであり、
3)発泡剤は含まず、並びに、
4)触媒が、第3級アミンと金属触媒とを共に含み、ポリオール100重量部に対して第3級アミンを0.4〜3.0重量部、および金属触媒を0.02〜1.5重量部含むことを特徴とするポリオール混合物を提供する。
【0019】
本発明のポリオール混合物は、ポリオール中のひまし油あるいはひまし油誘導体の使用量が、架橋剤成分等を除いたポリオール100重量部中に30重量%以上という高い使用比率を維持しながら、反応射出成形によって、生産性の高いポリウレタン成形品および構造体用の表面を覆い触感を改良する意匠面表皮、あるいは構造材とパッド材をウレタンエラストマーで覆う積層体用の表皮を製造可能なウレタン樹脂用原料組成物となるものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ポリイソシアネート(A)と、ポリオール、架橋剤および触媒を含んでなるポリオール混合物(B)とから、密度が1.0g/cm以上の高密度ポリウレタン成形品を反応射出成形法で製造する方法において、ポリオール混合物(B)がポリオールの少なくとも30%を、更には、100%をひまし油に由来するポリオール成分に置き換えても、注入から2分以内、例えば、90秒で成形品は型から取り出すこと(脱型)が可能であり、短時間脱型と云う要請が達成され、かつ得られる成形品は充分な柔軟性を持ち、100%近い破断伸びを示すと同時に、この成形品を127℃という高温で保持した場合でも、一般的なポリエーテルに較べて、熱劣化による物性低下が極めて少ないという顕著な耐熱性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係るポリイソシアネート(A)と、ポリオール、架橋剤及び触媒を含んでなるポリオール混合物(B)とから、反応射出成形法によって高密度ポリウレタンエラストマーを製造する本発明の成形品の製造方法において、架橋剤は、例えば、1−メチル−3,5−ジエチル−2,4−ジアミノベンゼンおよび/または1−メチル−3,5−ジエチル−2,6−ジアミノベンゼンであることが好ましい。
【0022】
本発明で用いるひまし油に由来するポリオール成分は、平均官能基数が2.0〜2.7、好ましくは、2.2〜2.7、で、かつ平均水酸基価が70〜170mgKOH/g、好ましくは、100〜170mgKOH/g、より好ましくは、140〜160mgKOH/gである。ひまし油に由来するポリオール成分の使用量は、ポリオール100重量部中、30重量部以上、より望ましくは50%以上、さらに望ましくは65%以上含んでよい。
【0023】
本発明の製造方法に係るポリイソシアネート(A)とポリオール混合物(B)との反応性は、タックフリータイムが60秒以下、好ましくは40秒以下であり、且つ、成形品が成形される際の脱型時間が2分以内、好ましくは90秒以内、より好ましくは60秒以内である。
【0024】
本発明の成形品は、意匠面表皮と芯材とからなる表皮付き積層体、または高密度ポリウレタン樹脂の意匠面表皮と軟質のパッドと芯材とからなる積層体であってもよい。
【0025】
本発明はまた、本発明の製造方法で得られた高密度ポリウレタン成形品を提供する。この成形品には意匠面表皮と芯材とからなる表皮付き積層体、または高密度ポリウレタン樹脂の意匠面表皮と軟質のパッドと芯材とからなる積層体も含まれる。
【0026】
本発明が提供するポリオール混合物(B)は、ポリオール100重量部に対して、架橋剤が0〜30重量部、好ましくは0〜15重量部、より好ましくは0.1〜6重量部含有してよく、架橋剤としては、より好ましくは、1−メチル−3,5−ジエチル−2,4−ジアミノベンゼンおよび/または1−メチル−3,5−ジエチル−2,6−ジアミノベンゼン(以下、「DETDA」と略すことあり。)が0.1〜10重量部含まれることを特徴とするポリオール混合物であり、また、ひまし油に由来するポリオール成分は、前述の通り、平均官能基数が2.0〜2.7で、且つ平均水酸基価が70〜170mgKOH/gであり、より望ましくは、平均官能基数が2.2〜2.7で、且つ水酸基価が100〜170mgKOH/gであり、さらに望ましくは、平均官能基数が2.2〜2.7で、且つ平均水酸基価が140〜160mgKOH/gであることを特徴とするポリオール混合物である。
【0027】
以下、本発明で用いる各成分について説明する。
<ポリイソシアネート(A)について>
本発明で用いるポリイソシアネート(A)としては、ポリウレタンフォームの製造に通常使用されているものが用いられる。このようなイソシアネートとしては、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、これらの変性物(例えば、ウレタン基、カルボジイミド基、アロファネート基、ウレア基、ビューレット基、イソシヌアレート基、またはオキサゾリドン基含有変性物など)およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0028】
芳香族ポリイソシアネートとしては、1,3−および/または1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−および/または2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、ポリメリックTDI(粗製TDIあるいはクルードTDIともいう。)、2,4’−および/または4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート(粗製MDIあるいはクルードMDIともいう。)、ポリアリールポリイソシアネート(PAPI)などが挙げられる。
脂肪族ポリイソシアネートとしては、炭素数2〜18の脂肪族ジイソシアネートなどが挙げられる。具体例としては、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0029】
脂環式ポリイソシアネートとしては、炭素数4〜16の脂環式ジイソシアネートなどが挙げられる。具体例としては、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0030】
上記イソシアネートの内、短時間脱型が要求される本発明においては、ジフェニルメタンジイソシアネート(以下「モノメリックMDI」ともいう。)及び/又はポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(「ポリメリックMDI」ともいう。)をイソシアネートの30重量%以上で、例えば50重量%以上で含むことが好ましく、イソシアネートはモノメリックMDI及び/又はポリメリックMDIであることが特に好ましい。ここで、本明細書において、「ポリメリックMDI」とは、上記のポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネートのことであって、ジフェニルメタンジイソシアネートである2核体成分とそれ以上の多核体成分とからなる混合物をいう。
【0031】
更に、ポリイソシアネート化合物としてのモノメリックMDI及びポリメリックMDIは、各々その変性体を含んでよい。そのようなモノメリックMDIの変性体として、モノメリックMDIの部分的反応生成物、例えば、尿素化、ビューレット化、アロファネート化、カルボジイミド化、イソシアヌレート化、及び/又はウレタン化等でモノマーの一部分を変性して得ることができる液状変性体を例示することができる。
【0032】
<ポリオール混合物(B)について>
ポリオール混合物(B)は、ポリオール(B1)、架橋剤(B2)、触媒(B3)及び他の成分(B4)によって構成される。
【0033】
<ポリオール(B1)について>
ポリオールは、ポリオール成分100重量部中に、ひまし油に由来するポリオール成分を30重量部以上、より望ましくは50重量部以上、さらに望ましくは65重量部以上含んでいる。ひまし油に由来するポリオール成分の上限は100重量部、好ましくは90重量部、より好ましくは80重量部である。
ひまし油に由来するポリオール成分とは、(i)ひまし油そのまま(すなわち、精製以外の工程を受けていない天然のひまし油(12-ヒドロキシオクタデカ-9-エノン酸(リシノール酸)を主な脂肪酸成分とするトリグリセリド)であってもよいし、(ii)変性ひまし油であってもよいし、これらの混合物であってもよい。変性ひまし油は、酸化ひまし油、水添ひまし油、ひまし油の部分脱水品および、ひまし油変性ポリオールを含み、ひまし油変性ポリオールは、(iii)低官能ひまし油変性ポリオールであることが好ましい。低官能ひまし油変性ポリオールの例は、ひまし油の部分アシル化物、ひまし油にひまし油脂肪酸又は12−ヒドロキシステアリン酸を縮合した物、及びひまし油と他の天然油脂のエステル交換品、あるいは多官能アルコールにひまし油脂肪酸又は12−ヒドロキシステアリン酸あるいはそれらの縮合物を縮合させて得られるポリエステル系ポリオール及び/又は水添ひまし油の部分脱水品、その部分アシル化物、水添ひまし油と他の天然油脂のエステル交換品、あるいは多官能アルコールに12−ヒドロキシステアリン酸あるいはそれらの縮合物を縮合させて得られるポリエステル系ポリオールなどである。
【0034】
以上に挙げたひまし油に由来するポリオール成分は、天然のひまし油に由来した成分を主たる成分として全体の80重量%以上含有する。つまり、ひまし油に由来するポリオール成分中の石油由来の成分の含有率は20%未満である。ポリオールがひまし油に由来する成分を含んでいたとしても、そのポリオール中に含まれるひまし油に由来する成分が80重量%未満であれば、そのポリオールはひまし油に由来するポリオール成分に含まれない。
【0035】
ポリオール中で、ラジカル重合開始剤の存在下、エチレン性不飽和モノマーが重合され、得られた重合体がポリオール中で安定分散されたいわゆるポリマーポリオールを併用する事も可能である。
【0036】
実施例にも示す通り、代表的なRIMポリウレタンエラストマー処方を使って、ポリオール100重量部中、33〜100重量部を精製ひまし油に置き換えて成形実験を行った結果、ひまし油中のリシノール酸部分が持つ水酸基は、常温でのイソシアネートとの反応性が低い2級の水酸基であるにもかかわらず、架橋剤及び触媒量等の成形条件を鋭意検討した結果、驚くべき事に、特定の架橋剤及び特定の添加量、並びに、特定のアミン系触媒と金属触媒を特定量併用する事で、反応射出成形に一般的に使われる反応性ゲルタイム20秒以下、タックフリータイム40秒以下の反応性となる様にポリオール混合物原料を調整することができ、且つ、通常の50℃から70℃の温度設定の成形型で成形することによって、約90秒で型を開けても、破損することなく、成形品が取り出せる(脱型できる)事を見出した。精製ひまし油を変性ひまし油に置き換えても同等の結果を得た。
【0037】
<架橋剤(鎖延長剤と呼ばれる事もある)(B2)について>
架橋剤としては、分子量が62〜300の多価アルコール、あるいは低分子ポリオールを含有してもよい。例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコールや、アルカノールアミンたとえばトリエタノールアミン、ジエタノールアミン等、およびこれらのEOあるいはPO付加物などが挙げられる。2価アミン、例えば2,4−及び2,6−ジアミノトルエン(80/20重量部の混合物を含む)、2,4'−および4,4'−ジアミノジフェニルメタン、アニリンホルムアルデヒド縮合によって得られるポリフェニルポリメチレンポリアミン、ジエチルトルエンジアミン、t−ブチルトルエンジアミン、ジエチルジアミノベンゼン、トリエチルジアミノベンゼン、テトラエチルジアミノジフェニルメタンなどが必要に応じて用いられ、これらにアルキレンオキシドを付加したポリエーテルポリオールなども用いられる。これらの低分子ポリオール及びポリアミンは、単独または併用して使用することができる。本発明で望ましいのは、2官能の架橋剤であり、好ましい芳香族ポリアミンはアミノ基のオルトの位置にアルキル基が置換したものであり、1−メチル−3,5−ジエチル−2,4−ジアミノベンゼン及び/又は1−メチル−3,5−ジエチル−2,6−ジアミノベンゼンである(「DETDA」と略す)。
【0038】
架橋剤の量は、ポリオール(B1)100重量部に対して、0〜30重量部、より望ましく0〜20重量部、例えば、0.1〜6重量部であってよい。従来、反応性が高いアミン系架橋剤を多量に使用すると架橋剤反応による反応混合液の粘度上昇が速くなりすぎるため、混合液の流動性が悪くなり実用的ではないことがあったが、ひまし油をベースポリオールに使えば、架橋剤の反応の進展に較べ、ひまし油の反応性が遅い事が反応混合液の粘度上昇を押さえ、かつ脱型時の成形品の脆さに悪影響を及ぼさないという利点も観察された。
【0039】
<触媒(B3)について>
触媒は第3級アミンと金属触媒を共に含むことが必須である。
本発明で用いるアミン触媒としては、脂肪族アミン、環状アミン、エーテルジアミン、水酸基含有アミン等が挙げられる。
例えば1価脂肪族アミン[N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N−ジシクロヘキシルメチルアミン、N,N−ジメチルセチルアミン、トリエチルアミン、N,N−ジメチルドデシルアミン等];2価脂肪族アミン[N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサンジアミン、メチレンビス(ジメチルシクロヘキシルアミン)、3−ジメチルアミノ−N,N−ジメチルプロピオンアミド、N,N,N’,N’− テトラエチルメチレンジアミン等]、並びに3〜8価またはそれ以上の脂肪族アミン[N,N,N’,N’,N’’−ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N,N‘,N’,N’’−ペンタメチルジプロピレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラ(3−ジメチルアミノプロピル)メタンジアミン等]が挙げられる。
【0040】
環状アミンとしては例えば1価環状アミン[N− メチルモルホリン、N−エチルモルホリン等]、並びに2価以上の環状アミン[トリエチレンジアミン、N,N’−ジメチルピペラジン、N,N’−ジエチルピペラジン、N−メチル−N’−ジメチルアミノエトキシピペラジン、N−(2−ジメチルアミノエトキシ)モルホリン、1,2−ジメチルイミダゾール、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7]等が挙げられる。
【0041】
エーテルジアミンとしては例えば[ビス−2−ジメチルアミノエチルエーテル、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル−3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルエーテル、4,4’−オキシジエチレンジモルホリン、エチレングリコールビス(3−ジメチルアミノプロピル)エーテル]等が挙げられる。
水酸基含有アミンとしては例えば[N,N−ジメチルアミノエタノール、N,N−ジメチルアミノエタノールのEO付加物、N,N−テトラメチル−1,3−ジアミノ−2−プロパノール、N,N,N’−トリメチルアミノエチルエタノールアミン、N,N,N’−トリメチルアミノプロピルエタノールアミン、N−メチル−N’−(2− ヒドロキシエチル)ピペラジン、N−(2−ヒドロキシエチル)モルホリン、1−(2−ヒドロキシプロピル)イミダゾール、2,4,6−トリス(ジメチルアミノエチル)−フェノール、1,4−ビス(2−ヒドロキシプロピル)−2−エチルピペラジン]等が挙げられる。
【0042】
アミン触媒の使用量は、ポリオール(B1)100重量部に対して、0.4〜3.0重量部、より望ましくは0.5〜1.5重量部であってよい。
アミン触媒の使用量が0.4重量部未満では表面硬化が十分でないために成形品の取り出し時に型表面に未硬化のウレタンが残る場合がある。また、3.0重量部より多くなると反応が速過ぎてモールド内の液流れ性が悪化し、成形品密度差が大きくなってしまうことがある。使用量が0.4〜3.0重量部であれば、金属触媒との適切な組み合わせによって、短時間で脱型出来得る良好なウレタンエラストマー成形物あるいは表皮を得ることが出来る。
【0043】
また、多量のひまし油由来ポリオール成分を含み、その水酸基が2級水酸基である本発明においては、金属触媒は必須成分である。本発明で使用される金属触媒としては、有機金属触媒が好ましく、例えば、ウレタン化およびウレア化反応を促進する公知の錫、アンチモン、鉛等の金属を含有する有機金属触媒を用いることができる。
例えば、オクチル酸錫、ジブチル錫ジラウレート、ジメチル錫ジラウレート、オクチル酸鉛、ナフテン酸鉛、オクチル酸ビスマス、ネオデカン酸ビスマス、ナフテン酸コバルト、オクチル酸コバルト、アセチルアセトン鉄などがあげられる。
これらの金属触媒は、単独又は混合しても使用される。金属触媒の使用量は、ポリオール(B1)100重量部に対して、0.02〜1.5重量部、望ましくは0.02〜1.0重量部、より望ましくは0.07〜1.0重量部であってよい。
この触媒量および触媒の種類を変更する事で、ポリイソシアネートとポリオール混合物の反応性が、反応液の表面に触っても、指に反応液がくっつかないタックフリータイムで40秒以下、例えば10〜40秒になるように調整されていることが必要である。
【0044】
<他の成分(B4)について>
他の成分として、所望の添加剤、補強材なども使用できる。
添加剤として、気泡安定剤、例えばシリコーン系整泡剤、界面活性剤、耐候剤、例えば酸化防止剤、紫外線吸収剤、安定剤、例えば2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、着色剤、老化防止剤、難燃剤、可塑剤、抗カビ剤、分散剤、変色防止剤等などが必要に応じて用いられる。
【0045】
補強材は、ガラス質、無機質、鉱物質などのファイバー、例えばミルドグラスファイバー、ワラストナイトファイバー、プロセストミネラルファイバーあるいはフレーク、例えばマイカ、ガラスフレークなどがあり、必要に応じて用いられる。またガラスマット、ガラスクロスなどを、あらかじめ型内にセットしておき、そのうえでポリウレタン原料を注入して発泡体を得ることも可能である。
他の成分の量は、ポリオール(B1)100重量部に対して、200重量部以下、例えば0.1〜50重量部であってよい。
【0046】
本発明の製造方法において、発泡剤は原則として使用しない。ただし、反応射出成形で高密度成形品を得る際の一般技術として、原料に窒素、空気あるいは炭酸ガスを溶解あるいは分散させ、注入した反応混合液が速やかに発泡して、原料注入後に残った空間を充填させ注入原料の機械的なバラつきを吸収し、あるいは成形品が硬化中に収縮して成形不良の発生を防ぐ機能を持たせる目的で、一定のガス成分を原料に混ぜる事は否定しない。この際、反応混合液を型の外で自由に反応あるいは発泡させた場合の成形品密度は1.0g/cm以上であることが望ましい。
【0047】
本発明において、イソシアネートインデックス[(ポリイソシアネートのイソシアネート基の当量とポリオール混合物中の活性水素の当量との比)×100]は、70〜130であることが好ましく、90〜110であることが特に好ましい。
【0048】
本発明で提示されているポリウレタン成形品は、成形品単独でも使用できるし、高剛性のプラスチックあるいは金属製インサートの芯材をカバーする形の積層体にも使用できる。
また、芯材とそれをカバーするパッド材(ウレタンフォームが使われることも多い。)を更にその上からカバーする表皮材の成形にも応用できる。
反応射出成形で通常のRIM成形を行う為には、たとえば離型材を塗布した型、あるいは表面をカバーする目的で使用されるインモールドコートやフィルムを応用した型を閉じておき、その型に対して、必要量の反応混合液を注入し、一定の時間後に型を開けて成形品を取り出す。
【0049】
対象成形品が、非発泡ポリウレタン樹脂表皮と芯材とからなる積層体であれば、RIM成形は、
(1)成形型のコア型に芯材を装着する工程
(2)成形型のキャビティ型表面に離型剤を塗布する工程
(3)必要に応じて成形型のキャビティ型表面に塗装による塗膜を作成する工程
(4)成形型のコア型とキャビティ型を閉じる工程
(5)ポリイソシアネート化合物(A)とポリオール混合物(B)との混合液を反応射出成形する工程、及び、
(6)一体化された成形品を取り出す工程
を有する。
【0050】
また、対象成形品が、非発泡ポリウレタン樹脂表皮と、半硬質ポリウレタンフォーム製のパッドと芯材とからなる積層体であれば、RIM成形は、
(1)意匠面に使用する表皮用成形型のコア型、キャビティ型に離型剤を塗布する工程
(2)必要に応じてキャビティ型表面に塗装による塗膜を作成する工程
(3)成形型のコア型とキャビティ型を閉じる工程
(4)ポリオール混合物(B)とポリイソシアネート化合物(A)との混合液を反応射出成形する工程
(5)意匠面表皮に使用する非発泡ポリウレタン樹脂成形品を取り出す工程
(6)工程(5)の非発泡ポリウレタン樹脂成形品を発泡成形型のキャビティ型にセットする工程
(7)発泡成形型のコア型に芯材を装着する工程
(8)工程(6)の発泡成形型のキャビティ型にセットした非発泡ポリウレタン樹脂成形品上に半硬質ポリウレタンフォームをオープン又はクローズ注入する工程、及び
(9)表皮一体化された成形品を取り出す工程
を有する。
【0051】
本発明の非発泡ポリウレタン樹脂の密度は1.00g/cm〜1.15g/cmが良く、1.05g/cm〜1.15g/cmが好ましい。密度が1.00g/cm〜1.10g/cmである場合に、気泡が目視で確認できるようになることがなく、内装部品の意匠面表皮としてより良好に使用できる。
【0052】
RIM成形には、通常のRIM成形機、例えば、キャノン社Aシステム高圧反応射出成形機が使用される。
【0053】
RIM成形時のポリオール混合物(B)とポリイソシアネート化合物(A)の液温は、30〜40℃が好ましい。液温が30℃〜40℃である場合に、(B)と(A)との混合液の反応性と粘度が適切であり、流動性が良好である。
【0054】
成形型の温度に関しては50〜80℃が好ましく、特に50〜60℃が好ましい。成形型の温度が50〜80℃である場合には、(B)と(A)との混合液の円滑なポリウレタン化反応が行われ、硬化時間30秒〜100秒が可能となる。
【0055】
以下、実施例を示し、本発明をより具体的に説明する。なおこの実施例は本発明の内容を何等制限するものではない。実施例において、「部」および「%」は、特記しないかぎり、「重量部」および「重量%」である。
【0056】
比較例1
ポリオールとして、表2に示す性状を有する一般的なポリエーテルポリオール(ポリオールA)を使用し、以下の配合を成形組成物とした。
配合処方は次の通りである:
ポリオール混合物(B):ポリオールAを100部、架橋剤のDETDA*1)を5.6部、ポリアミン触媒としてのDabco 33LV*2)を0.7部、錫触媒としてのDBTDL*3)を0.1部、光安定剤としてのチヌビンB75*4)を0.4部及び顔料ペースト*5)を0.6部から成る混合物。
ポリイソシアネート(A):カルボジイミド変性液状MDI(NCO%=29%)。
上記(B)と(A)との混合物を成形原料に用い、CANNON社高圧発泡機により成形を行った。表4に成形条件を示す。
表1に示した所定の架橋剤及び触媒の使用により、型に注入後90秒で、何等問題なく成形品を型から取り出すことが出来た。常温で初期物性を測定した結果を表1に示した。伸びは300%を示し、硬度、引っ張り強度及び引き裂き強度とも充分な初期物性値を示した。
次に、耐熱安定性を調べる為に、この成形品を127℃の恒温オーブンで333時間保持した後、常温に冷却後に物性を測定した。結果を表1に示す。劣化が激しく、硬度、伸び、引っ張り強度、及び引き裂き強度とも測定不可能であった。
【0057】
実施例及び比較例中の原料の説明は以下の通りである。
*1 DETDA:1−メチル−3,5−ジエチル−2,4−ジアミノベンゼン及び/又は1−メチル−3,5−ジエチル−2,6−ジアミノベンゼンの混合物
*2 Dabco 33LV:トリエチレンジアミンの TPG 33%溶液
*3 DBTDL:ジブチルチンジラウレート
*4 チヌビンB75:チバジャパン社 :高分子用 光安定剤
*5 イソシアネートF:カルボジイミド変性液状MDI : NCO%=29%
【0058】
比較例2
ポリオールの2/3を軟質ポリウレタン向けに市販されている高分子量の低官能変性ひまし油(ポリオールE)に置き換えたところ、表面の硬化反応の進みが遅く、触媒を増加しても粘着性が残り、3分たっても成形品が型からスムースに取り出せなかった。従って、成形品の物性値は測定できなかった(表1参照)。
【0059】
実施例1
比較例1の処方のポリオールの1/3を精製ひまし油(ポリオールC)(表2参照)に置き換えて、比較例1に準じて成形を行った。得られた結果を表1に示す。
架橋度増加の影響もあってか、初期物性の伸びはやや低下したが、充分に満足し得る初期物性値を示した。
この成形品を比較例1と同様の耐熱試験に供したところ、比較例1と大きく異なり169%の伸びを確保できたことから、顕著に耐熱性が向上していた。なお、強度と硬さは低下傾向であった。
【0060】
実施例2〜5、及び6、7
実施例1に於ける精製ひまし油(ポリオールC)の含量を50重量部〜100重量部までの間で変化させ、併せて、架橋剤のDETDA及び触媒の含量を変化させて表1に示す配合とする以外は、実施例1に準じて成形及び物性評価を行った(実施例2〜5)。得られた結果を表1に示した。
また、実施例1に於ける精製ひまし油(ポリオールC)を、変性ひまし油(ポリオールD)(官能度を落とし水酸基価は比較的に高くした変性ひまし油:表2参照)に替えて、その含量を変化させ、併せて、架橋剤のDETDA及び触媒の含量を変化させて表1に示す配合とする以外は、実施例1に準じて成形及び物性評価を行った(実施例6及び7)。得られた結果を表1に示した。
表1の結果より、精製ひまし油の比率を増やすと成形品は硬くなる傾向が現れ、その傾向は架橋剤のDETDAの量並びに触媒の量及びアミン触媒と錫触媒の比率を調整する事で調整することが可能であって、かつ、短時間で脱型できる生産性を維持することができた。
これらの、成形品を比較例1と同様の耐熱試験に供したところ、耐熱試験前に比べ大きく物性が低下する事はなかった。この結果は、比較例の結果との対比により、及び、100℃を(特に120℃を)超える温度耐熱試験により物性が大きく低下するのはポリウレタン樹脂の一般的な傾向である事を勘案すれば、ひまし油及び変性ひまし油が成形品の耐熱挙動を顕著に向上させた事を示している。
【0061】
表1に実施例1〜7および比較例1〜2の処方および評価結果示す。
なお、成形品の密度はすべて 1.05〜1.06 g/cm3 であった。
表2および表3に比較例および実施例で使用した原料の内容を示す。
表4に比較例および実施例の成形の条件を示す。
【0062】
【表1】

【0063】
表中の反応混合液の反応性指標は以下の通りである。
ゲルタイム:イソシアネートとポリオール混合物の混合後から、混合液を棒状の固体で触った際に、液が糸を引き始めるまでの時間(秒)。
タックフリータイム :イソシアネートとポリオール混合物の混合後からフォームの表面に触っても液が指に付着しないようになるまでの時間(秒)。
【0064】
【表2】

【0065】
【表3】

【0066】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、高い植物由来成分利用率を維持しながら、生産性の高い高密度ポリウレタンRIM成形品の製造方法とその原料組成物を提供する。本発明によって得られる密度が1.0g/cm以上で耐熱性に優れた意匠表面を持つポリウレタン成形品は、ポリオール成分の一部に植物由来成分を含み環境に優しく、かつ優れた触感、弾性感と120℃以上の耐熱性を併せ持ち、自動車のアームレスト、ハンドル、コンソール蓋、チェンジノブなどの内装品、サイドストリップ、バンパー、バンパーカバー等の外装部品、あるいは家具等に用いられる。また、意匠性の高い外観に加えて優れた触感、弾性感を持つことから、他の構造部品の表面を直接覆うカバー材としての使用のみならず、構造部品を覆うパッド部品のさらに表面を覆う意匠面表皮としての用途も期待される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイソシアネート(A)と、ポリオール、架橋剤および触媒を含んでなるポリオール混合物(B)とから、密度が1.0g/cm以上の高密度ポリウレタン成形品を反応射出成形法で製造する方法であって、
ポリオール混合物(B)が
1)ポリオール100重量部中に、ひまし油に由来するポリオール成分を30重量部以上含み、
2)ひまし油に由来するポリオール成分は平均官能基数が2.0〜2.7で、かつ平均水酸基価が70〜170mgKOH/gであり、
3)発泡剤は含まず、ならびに、
4)触媒が、第3級アミンと金属触媒とを共に含み、ポリオール100重量部に対して第3級アミンを0.4〜3.0重量部、および金属触媒を0.02〜1.5重量部含むことを特徴とする成形品の製造方法。
【請求項2】
架橋剤が、1−メチル−3,5−ジエチル−2,4−ジアミノベンゼンおよび/または1−メチル−3,5−ジエチル−2,6−ジアミノベンゼンであることを特徴とする、請求項1に記載の成形品の製造方法。
【請求項3】
ひまし油に由来するポリオール成分が、平均官能基数が2.0〜2.7、かつ平均水酸基価が100〜160mgKOH/gであることを特徴とする、請求項1または2記載の成形品の製造方法。
【請求項4】
成形品が意匠面表皮と芯材とからなる表皮付き積層体、または高密度ポリウレタン樹脂の意匠面表皮と軟質のパッドと芯材とからなる積層体であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1つに記載の成形品の製造方法。
【請求項5】
ポリイソシアネート(A)と、ポリオール、架橋剤および触媒を含んでなるポリオール混合物(B)とから、密度が1.0g/cm以上の高密度ポリウレタン成形品を反応射出成形法で製造するためのポリオール混合物(B)であって、
1)ポリオール100重量部中に、ひまし油に由来するポリオール成分を30重量部以上含み、
2)ひまし油に由来するポリオール成分は平均官能基数が2.0〜2.7で、かつ平均水酸基価が70〜170mgKOH/gであり、
3)発泡剤は含まず、ならびに、
4)触媒が、第3級アミンと金属触媒とを共に含み、ポリオール100重量部に対して第3級アミンを0.4〜3.0重量部、および金属触媒を0.02〜1.5重量部含むことを特徴とするポリオール混合物。
【請求項6】
架橋剤が少なくとも1.0重量部の1−メチル−3,5−ジエチル−2,4−ジアミノベンゼンおよび/または1−メチル−3,5−ジエチル−2,6−ジアミノベンゼンであることを特徴とする、請求項5に記載のポリオール混合物。
【請求項7】
ひまし油に由来するポリオール成分が、平均官能基数が2.0〜2.7で、且つ平均水酸基価が100〜160mgKOH/gであることを特徴とする請求項5または6に記載のポリオール混合物。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の成形品の製造方法で得られた高密度ポリウレタン成形品。

【公開番号】特開2012−111073(P2012−111073A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−260207(P2010−260207)
【出願日】平成22年11月22日(2010.11.22)
【出願人】(000183299)住化バイエルウレタン株式会社 (33)
【Fターム(参考)】