説明

植物鑑賞装置

【課題】 植物の栽培に有利な培地の水分管理を行うことのできる植物栽培装置を提供する。
【解決手段】 培地2又は培地2に植えられる植物3に水分を供給する水分供給器7と、培地2の含水率を測定して含水率測定値を送信する含水率計4と、培地2に植えられる植物3の周囲の光量を測定して光量測定値を送信する光量計5と、含水率測定値を受信して、水分供給器7が培地2又は植物3に供給する水分量を制御するとともに、光量測定値を受信して植物3の周囲が暗期から明期に切り替わったことを判断した場合に、水分供給器6が培地2又は植物3に供給する水分量を、含水率測定値に基づいて供給する水分量以上に制御する制御部6と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉢物の花卉類や観葉植物などの観賞用の植物に対する植物鑑賞装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、鉢物の花卉類や観葉植物などの観賞用の植物に対する植物鑑賞装置として、テラリウムと呼ばれる、略密閉型のガラス容器または透明な樹脂の容器であって内部空間を植物の生育しやすい環境に制御する製品がある。ここで、植物が植えられる培地の含水率は植物の栽培に影響を与えることから、これを管理する技術として、特開2002−365255号公報(特許文献1)に記載されているもの、すなわち、土中に埋め込んだ土壌湿度感知器により、土壌の含水率を測定し、水分の管理時期が報知されるものが例示されている。
【特許文献1】特開2002−365255号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記構成では、培地の含水率に基づく水分の供給時期が報知されるのみで、植物の生理反応をふまえた水分の供給については考慮されていない。
【0004】
植物の生理反応には、周囲環境の明暗に応じるものが知られており、明期の開始時には光を感じた植物が根からの水分吸い上げ及び葉裏の気孔からの水分蒸散を開始し、逆に暗期の開始時にはこれらの吸い上げ及び蒸散を終了するものが知られている。すなわち、植物の周囲が暗期から明期に切り替わった場合には、植物の生理活動が活発となり、培地の含水率に従って水分を供給しても、植物の乾燥が進む場合がある。また植物の周囲が明期から暗期に切り替わった場合には、植物の生理活動が停滞となり、培地の含水率に従って水分を供給すると、水分が過剰となって根腐れが生じる場合がある。
【0005】
本願発明は、上記背景技術に鑑みてなされたものであり、その課題は、植物の栽培に有利な培地の水分管理を行うことのできる植物栽培装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本願発明は、培地又は培地に植えられる植物に水分を供給する水分供給器と、培地の含水率を測定して含水率測定値を送信する含水率計と、培地に植えられる植物の周囲の光量を測定して光量測定値を送信する光量計と、含水率測定値を受信して、水分供給器が培地又は植物に供給する水分量を制御するとともに、光量測定値を受信して植物の周囲が暗期から明期に切り替わったことを判断した場合に、水分供給器が培地又は植物に供給する水分量を、含水率測定値に基づいて供給する水分量以上に制御する制御部と、を備えたことを特徴とする植物鑑賞装置である。
【0007】
また本願発明は、培地又は培地に植えられる植物に水分を供給する水分供給器と、培地の含水率を測定して含水率測定値を送信する含水率計と、培地に植えられる植物の周囲の光量を測定して光量測定値を送信する光量計と、含水率測定値を受信して、水分供給器が培地又は植物に供給する水分量を制御するとともに、光量測定値を受信して植物の周囲が明期から暗期に切り替わったことを判断した場合に、水分供給器が培地又は植物に供給する水分量を、含水率測定値に基づいて供給する水分量以下に制御する制御部と、を備えたことを特徴とする植物鑑賞装置である。
【発明の効果】
【0008】
本願発明によれば、植物の周囲が暗期から明期に切り替わった場合に、含水率測定値に基づいて供給する水分量以上の水分が培地又は植物に供給されるので、植物の乾燥が進むことを防止することができる。
【0009】
また本願発明によれば、植物の周囲が明期から暗期に切り替わった場合に、含水率測定値に基づいて供給する水分量以下の水分が培地又は植物に供給されるので、水分が過剰となって根腐れが生じることを防止することができる。
【0010】
さらに植物の周囲の温度測定値が所定の値より低くなった場合に、水分供給を停止ができるので、培地の過渡な湿りを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本願の請求項1〜3に対応した植物鑑賞装置1の一実施形態を図1及び図2により説明する。
【0012】
本実施形態の植物鑑賞装置1は、図1及び図2に示す如く、培地2又は培地2に植えられる植物3に水分を供給する水分供給器7と、培地2の含水率を測定して含水率測定値を送信する含水率計4と、培地2に植えられる植物3の周囲の光量を測定して光量測定値を送信する光量計5と、含水率測定値を受信して、水分供給器7が培地2又は植物3に供給する水分量を制御するとともに、光量測定値を受信して植物3の周囲が暗期から明期に切り替わったことを判断した場合に、水分供給器7が培地2又は植物3に供給する水分量を、含水率測定値に基づいて供給する水分量以上に制御する制御部6と、を備えている。また本願発明は、含水率測定値を受信して、水分供給器7が培地2又は植物3に供給する水分量を制御するとともに、光量測定値を受信して植物3の周囲が明期から暗期に切り替わったことを判断した場合に、水分供給器7が培地2又は植物3に供給する水分量を、含水率測定値に基づいて供給する水分量以下に制御する制御部6を備えている。さらに培地2に植えられる植物3の周囲の温度を測定する温度計10と、温度測定値に基づいて水分供給器6が培地2又は植物3に水分の供給を停止する制御部6と、を備えている。
【0013】
以下、本実施形態による植物鑑賞装置1の構成を、より具体的詳細に説明する。
【0014】
最初に、水分供給器7について説明する。これは図示しない貯水槽からの水を汲み上げて、培地2及び植物3に霧状又は露上の水分を供給するものであり、内部に電源とコンプレッサーを有している。供給される水分量は制御部6によって制御される(詳細は後述する)。この水分供給器7は、角柱状の支持柱8により植物の上方であって制御部6の下方に位置するように支持されている。
【0015】
次に、含水率計4について説明する。これは図1に示すごとく、TDR方式に従ったプローブ部を備え、培地2にプローブ部が挿入されて含水率を測定するものである(例えば、Campbell Scientific社製「HydroSense」)。含水率計4は図示しない接続線を経由して制御部6に接続されており、プローブ部によって測定された含水率測定値は後述する制御部に送信される。
【0016】
次に、光量計5について説明する。これは図1に示すごとく、培地2に植えられる植物3の周囲の光量を測定するものであり(例えば、浜松ホトニクス株式会社製「C8026」)、角柱状の支持柱8により植物3の上方に位置するように支持されている。光量計5は図示しない接続線を経由して制御部6に接続されており、測定された光量測定値は後述する制御部に送信される。
【0017】
次に、温度計10について説明する。これは図1に示すごとく、培地2に植えられる植物3の周囲の温度を測定するものであり、架台9の上面に植物3に近接して載置されている。温度計10は図示しない接続線を経由して制御部6に接続されており、測定された温度測定値は後述する制御部に送信される。
【0018】
次に、制御部6について説明する。これは図1に示すごとく、平板状の外観であり、水分供給器7と光量計5の間に挟まれた状態で載置される。制御部6には、水分供給器7に対する制御条件を記憶する第一の記憶手段と、受信される含水率測定値、光量測定値及び温度測定値を記憶する第二の記憶手段と、第一の記憶手段に記憶された制御条件と第二の記憶手段に記憶された含水率測定値、光量測定値及び温度測定値と、に基づいて、水分供給器7に供給する水分量を指示伝達する出力手段と、を備える。
【0019】
次に、架台9について説明する。これは図1に示すごとく、板状の部材であり、上面には、植物3が植えられる培地2を入れる容器が載置され、容器の内部の培地2に植物3が植えられる。また水分供給器7、制御部6、光量計5を指示する支持柱8が架台9の側面に設けられている。
【0020】
次に、本実施形態による植物鑑賞装置1の動作を、より具体的詳細に説明する。
【0021】
まず、植物3が植えられた培地2を入れた容器は、架台9の上面であって水分供給器7の下方に載置され、含水率計4が培地3に挿入される。光量計5は上述のように植物3の上方に支持されている。温度計10は上述のように植物3に近接して載置されている。この状態で含水率計4によって測定される含水率測定値と、光量計5によって測定される光量測定値と、温度計10によって測定される温度測定値が、制御部6に送信され、第二の記憶手段に記憶される。
【0022】
制御部6は、第一の記憶手段に記憶された制御条件と、第二の記憶手段に記憶された含水率測定値を比較し、制御条件に規定された水分量を培地2又は植物3に供給するように水分供給器7に指示を出す。
【0023】
ここで、制御条件は植物の種類、植物の周囲の平均温度、等の種々の条件によって任意のものが設定される。植物の周囲の平均温度が低めに設定される冬季等の条件下ではそうでない条件に比べて供給される水分量が抑制される方が、いわゆる根腐れを防止する上で好ましい。
【0024】
上述のように、制御部6は、第二の記憶手段に記憶された含水率測定値に応じて規定された水分量を供給するが、第二の記憶手段に記憶された光量測定値が培地2に植えられる植物3の周囲が暗期から明期に切り替わったことを判断した場合には、含水率測定値に基づいて規定された水分量以上の水分量を培地2又は植物3に供給するように水分供給器7に指示を出す。また第二の記憶手段に記憶された光量測定値が培地2に植えられる植物3の周囲が明期から暗期に切り替わったことを判断した場合には、含水率測定値に基づいて規定された水分量以下の水分量を培地2又は植物3に供給するように水分供給器7に指示を出す。
【0025】
ここで、暗期から明期への切り替わり又は明期から暗期への切り替わりは光量計5の光量積算値や時間当たりの光量の変化で判断される。例えば、光源が自然光の場合には時間当たりの光量の変化で判断することが気象状況や季節変動の影響を受けにくく好ましく、光源が人工光であって一定の照射時間が決まっているものは、光量積算値で判断することが暗明の切り替わりを正確に判断できるので好ましい。
【0026】
さらに、第二の記憶手段に記憶された温度測定値が第一の記憶手段に記憶された所定の値を下回った場合には、制御部6は培地2又は植物3に水分の供給を停止するように水分供給器7に指示を出す。
【0027】
ここで、温度についての第一の記憶手段に記憶された所定の値は植物の種類、植物の周囲の平均温度、等の種々の条件によって任意のものが設定される。
【0028】
従って、本実施形態によれば、植物の周囲が暗期から明期に切り替わった場合に、含水率によって調節される水分量以上の水分が供給されるので、植物の乾燥が進むことを防止することができる。
【0029】
また本実施形態によれば、植物の周囲が明期から暗期に切り替わった場合に、含水率によって調節される水分量以下の水分が供給されるので、水分が過剰となって根腐れが生じることを防止することができる。
【0030】
さらに本実施形態によれば、植物の周囲の温度が所定の値より低くなった場合に、水分供給を停止ができるので、培地の過渡な湿りを防止することができる。
【0031】
なお本実施形態では、植物の周囲をガラスケースなどの被覆部材で覆っていないが、図3に示すごとく、植物の周囲を中空角柱状のガラスケース13で覆ってもよい。この場合、ガラスケースの蓋部12の内部に蛍光灯や発光ダイオードのような光源11を設けても構わない。この場合、植物の周囲の温湿度及び日照のの制御が容易となる。
【0032】
また本実施形態では、植物鑑賞装置1の動作状況を確認するために、表示用インジケータを点灯したり、警報を鳴らしたり、電子メールで管理者に通報することとしてもよい。この場合、管理者が植物の状況を確実に把握することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本願発明の一実施形態の縦断面図
【図2】本願発明の一実施形態の斜視図
【図3】本願発明の他の実施形態の縦断面図
【符号の説明】
【0034】
1 植物鑑賞装置
2 培地
3 植物
4 含水率計
5 光量計
6 制御部
7 水分供給器
10 温度計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
培地又は培地に植えられる植物に水分を供給する水分供給器と、培地の含水率を測定して含水率測定値を送信する含水率計と、培地に植えられる植物の周囲の光量を測定して光量測定値を送信する光量計と、含水率測定値を受信して、水分供給器が培地又は植物に供給する水分量を制御するとともに、光量測定値を受信して植物の周囲が暗期から明期に切り替わったことを判断した場合に、水分供給器が培地又は植物に供給する水分量を、含水率測定値に基づいて供給する水分量以上に制御する制御部と、を備えたことを特徴とする植物鑑賞装置。
【請求項2】
培地又は培地に植えられる植物に水分を供給する水分供給器と、培地の含水率を測定して含水率測定値を送信する含水率計と、培地に植えられる植物の周囲の光量を測定して光量測定値を送信する光量計と、含水率測定値を受信して、水分供給器が培地又は植物に供給する水分量を制御するとともに、光量測定値を受信して植物の周囲が明期から暗期に切り替わったことを判断した場合に、水分供給器が培地又は植物に供給する水分量を、含水率測定値に基づいて供給する水分量以下に制御する制御部と、を備えたことを特徴とする植物鑑賞装置。
【請求項3】
培地に植えられる植物の周囲の温度を測定する温度計と、温度測定値に基づいて水分供給器が培地又は植物に水分の供給を停止する制御部と、を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の植物鑑賞装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−230233(P2006−230233A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−46797(P2005−46797)
【出願日】平成17年2月23日(2005.2.23)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】