説明

検体処理システム、細胞画像分類装置、及び検体処理方法

【課題】 塗抹標本の染色状態又は撮像部の状態を容易に確認することが可能な検体処理システム、細胞画像分類装置、及び検体処理方法を提供する。
【解決手段】
検体処理システム1は、塗抹標本作製装置2と、血液塗抹標本を撮像して得られる血球画像に基づいて血球の分類を行う標本撮像装置3とを備える。標本撮像装置3は、塗抹標本を撮像し、血球画像を取得する顕微鏡ユニット3aと、血球画像に基づいて、血球の分類を行い、また血球画像に基づいて、血球画像の所定の特徴を反映した第1特徴値及び第2特徴値を取得し、取得された第1及び第2特徴値の変動を示す画面を表示する画像処理ユニット3bとを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞を含む塗抹標本を撮像し、撮像することにより得られた細胞画像に基づいて、細胞の分類を行う検体処理システム、細胞画像分類装置、及び検体処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、染色された血液塗抹標本を顕微鏡で拡大して撮像し、得られた撮像画像を解析して血球の分類及び計数等を行う細胞画像分類装置が知られている。
【0003】
特許文献1には、同一検体について、普通染色(メイギムザ染色)を施した標本を撮像した画像から白血球、赤血球の分類を行い、超生体染色を施した標本を撮像した画像から網赤血球計数を行い、ペルオキシダーゼ染色を施した標本を撮像した画像から異常白血球検出を行う細胞分類装置が開示されている。かかる細胞分類装置は、全染色標本のデータが正常範囲に入っていれば、この検体を正常検体グループに分類し、同一検体の各種染色データが正常範囲に入らなければ、異常血球が検出されたか否か、又は不明球がある値以上存在するか否か等で精密分析を必要とするか否かを判定する。また、この細胞分類装置は、正常とも異常とも判断しかねる混在領域にあるような疑陽性検体については、さらに分析精度を上げるための精密な自動再検査を実施する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭62−135767号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような細胞画像分類装置にあっては、血液塗抹標本の染色が正常に行われていなかったり、光源及びカメラを含む撮像部に異常等が生じていたりすると、血球の分類及び計数等を精度良く行うことが困難又は不可能となる。このため、常に血球分類・計数を正常に行うために、血液塗抹標本の染色状態及び撮像部の状態を正常に保つ必要がある。しかしながら、特許文献1に開示されている細胞分類装置にあっては、ユーザが血液塗抹標本の染色状態又は撮像部の状態を確認するための機能が設けられておらず、ユーザは、例えば、同一の血液塗抹標本について、細胞分類装置による血球の分類・計数結果と、ユーザが顕微鏡で目視検査することによる血球の分類・計数結果とを得、両者を比較することにより血液塗抹標本の染色状態及び撮像部の状態を確認することが行われていた。このような確認作業は、ユーザにとって負担が大きく、また目視検査を行うユーザの技量及び経験によって結果にばらつきが生じるという問題がある。
【0006】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、塗抹標本の染色状態又は撮像部の状態を容易に確認すること可能な検体処理システム、細胞画像分類装置、及び検体処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明の一の態様の検体処理システムは、細胞を含む検体から、細胞を含む塗抹標本を作製する塗抹標本作製部と、前記塗抹標本作製部により作製された塗抹標本を撮像し、前記塗抹標本に含まれる細胞に関する細胞画像を取得する撮像部と、前記細胞画像に基づいて、前記細胞の分類を行う細胞分類手段と、前記細胞画像に基づいて、前記細胞画像の所定の特徴を反映した特徴値を取得する特徴値取得手段と、前記特徴値取得手段によって取得された前記特徴値の変動を示す画面を出力する出力手段と、を備える。
【0008】
この態様においては、前記出力手段が、前記特徴値と、前記特徴値の異常に関する指標とを比較可能に示す前記画面を出力するように構成されていることが好ましい。
【0009】
また、上記態様においては、前記出力手段が、前記特徴値の1日毎の変動を時系列に示す前記画面を出力するように構成されていることが好ましい。
【0010】
また、上記態様においては、前記撮像部が、所定の色成分の輝度を含む細胞画像を取得するように構成されており、前記特徴値取得手段が、前記特徴値として、前記細胞画像の前記所定の色成分の輝度に関する情報を取得するように構成されていることが好ましい。
【0011】
また、上記態様においては、前記塗抹標本作製部が、前記塗抹標本に含まれる細胞を染色する染色部を具備し、前記特徴値取得手段が、前記細胞画像における細胞部分の画像に基づいて、前記染色部の状態を反映した第1特徴値を取得し、前記細胞画像における細胞以外の部分の画像に基づいて、前記撮像部の状態を反映した第2特徴値を取得するように構成されており、前記出力手段が、前記第1特徴値及び前記第2特徴値の変動を示す前記画面を出力するように構成されていることが好ましい。
【0012】
また、上記態様においては、前記検体処理システムが、前記撮像部により取得された細胞画像の輝度を補正する補正手段をさらに備え、前記特徴値取得手段が、前記補正手段により補正された前記細胞画像における細胞部分の画像に基づいて、前記染色部の状態を反映した第1特徴値を取得するように構成されていることが好ましい。
【0013】
また、上記態様においては、前記撮像部が光源を有し、前記特徴値取得手段が、前記光源の光量を反映した前記第2特徴値を取得するように構成されていることが好ましい。
【0014】
また、上記態様においては、前記特徴値取得手段が、所定期間内に前記撮像部により取得された複数の細胞画像の各々に基づいて、各細胞画像の前記所定の特徴をそれぞれ反映した複数の数値を取得し、取得された前記複数の数値に基づいて、前記特徴値を取得するように構成されていることが好ましい。
【0015】
また、上記態様においては、前記特徴値取得手段が、前記複数の数値を平均することにより、前記特徴値を取得するように構成されていることが好ましい。
【0016】
また、上記態様においては、前記特徴値取得手段が、前記所定期間内に前記撮像部に撮像された複数の塗抹標本のうち所定の条件に合致する塗抹標本から取得された複数の細胞画像の各々に基づいて、前記複数の数値を取得するように構成されていることが好ましい。
【0017】
また、上記態様においては、前記検体処理システムが、シャットダウンの指示を受け付けるシャットダウン指示受付手段をさらに備え、前記出力手段が、前記シャットダウン指示受付手段がシャットダウンの指示を受け付けたときに、前記画面を出力するように構成されていることが好ましい。
【0018】
また、上記態様においては、前記特徴値取得手段が、所定の標準試料が塗抹された塗抹標本に含まれる細胞に関する標準細胞画像に基づいて、前記標準細胞画像の所定の特徴を反映した特徴値を取得するように構成されており、前記出力手段が、前記特徴値取得手段が前記標準細胞画像に基づいて取得した前記特徴値の変動を示す画面を出力するように構成されていることが好ましい。
【0019】
また、上記態様においては、前記検体処理システムが、塗抹標本毎に、前記特徴値と、所定の基準値とを比較することにより、前記特徴値の異常を検出する異常検出手段と、前記異常検出手段により前記特徴値の異常が検出されたときに、前記特徴値の異常に関する情報を出力する異常情報出力手段と、をさらに備えることが好ましい。
【0020】
また、上記態様においては、前記検体処理システムが、検体を分析する検体分析部と、前記検体分析部によって分析された検体を、前記塗抹標本作製部へと搬送する検体搬送部と、をさらに備え、前記塗抹標本作製部が、前記検体搬送部によって搬送された検体から、塗抹標本を作製するように構成されていることが好ましい。
【0021】
また、上記態様においては、前記塗抹標本作製部が、塗抹標本作製装置に設けられ、前記撮像部、前記細胞分類手段、前記特徴値取得手段及び前記出力手段が、細胞画像分類装置に設けられていることが好ましい。
【0022】
本発明の一の態様の細胞画像分類装置は、細胞を含む塗抹標本を撮像し、前記塗抹標本に含まれる細胞に関する細胞画像を取得する撮像部と、前記細胞画像に基づいて、前記細胞の分類を行う細胞分類手段と、前記細胞画像に基づいて、前記細胞画像の所定の特徴を反映した特徴値を取得する特徴値取得手段と、前記特徴値取得手段によって取得された前記特徴値の変動を示す画面を出力する出力手段と、を備える。
【0023】
本発明の一の態様の検体処理方法は、細胞を含む検体から、細胞を含む塗抹標本を作製するステップと、前記塗抹標本を撮像し、前記塗抹標本に含まれる細胞に関する細胞画像を取得するステップと、前記細胞画像に基づいて、前記細胞の分類を行うステップと、前記細胞画像に基づいて、前記細胞画像の所定の特徴を反映した特徴値を取得するステップと、取得された前記特徴値の変動を示す画面を出力するステップと、を有する。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る検体処理システム、細胞画像分類装置、及び検体処理方法によれば、塗抹標本の染色状態又は撮像部の状態を容易に確認すること可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1A】実施の形態に係る検体処理システムの全体構成を示す平面図。
【図1B】実施の形態に係る検体処理システムの構成の一部を示す斜視図。
【図2】スライドガラスの一部を示す図。
【図3】実施の形態に係る塗抹標本作製装置の構成を示すブロック図。
【図4】実施の形態に係る標本撮像装置の構成を示すブロック図。
【図5】実施の形態に係る顕微鏡ユニットの構成の一部を示す斜視図。
【図6】実施の形態に係る画像処理ユニットの構成を示すブロック図。
【図7A】実施の形態に係る検体データベースの構造を示す模式図。
【図7B】実施の形態に係る血球データベースの構造を示す模式図。
【図7C】実施の形態に係る特徴値履歴データベースの構造を示す模式図。
【図8】実施の形態に係る血球画像表示ユニットの構成を示すブロック図。
【図9】実施の形態に係る血球分析装置の測定ユニットの概略構成を示すブロック図。
【図10】実施の形態に係る血球分析装置の情報処理ユニットの構成を示すブロック図。
【図11】実施の形態に係る血球分析装置の情報処理ユニットの動作の流れを示すフローチャート。
【図12】血球画像の登録動作における顕微鏡ユニットの動作手順を示すフローチャート。
【図13A】血球画像の登録動作における画像処理ユニットの動作手順を示すフローチャート(前半)。
【図13B】血球画像の登録動作における画像処理ユニットの動作手順を示すフローチャート(後半)。
【図14】白血球検出におけるスライドガラス上の検体のスキャニングのパターンを説明する図。
【図15A】白血球検出用のラインセンサの視野を説明する図。
【図15B】白血球検出用のラインセンサの信号波形を示す図。
【図16A】正常な染色が行われた場合の補正後の血球画像の例を示す図。
【図16B】染色異常が発生している場合の補正後の血球画像の例を示す図。
【図17A】正常なランプ光量における撮像により得られた補正前の血球画像の例を示す図。
【図17B】ランプ光量の低下が生じているときの撮像により得られた補正前の血球画像の例を示す図。
【図18A】ランプ光量異常の発生を通知するためのエラー画面を示す図。
【図18B】染色異常の発生を通知するためのエラー画面を示す図。
【図19A】血球画像の表示動作における血球画像表示ユニットの初期動作の手順を示すフローチャート。
【図19B】血球画像の表示動作における画像処理ユニットの検体情報送信動作の手順を示すフローチャート。
【図20A】血球画像の表示動作における血球画像表示ユニットの画像表示動作の手順を示すフローチャート。
【図20B】血球画像の表示動作における画像処理ユニットの血球画像送信動作の手順を示すフローチャート。
【図21】血球画像レビュー画面の一例を示す図。
【図22】画像処理ユニットのシャットダウン動作の流れを示すフローチャート。
【図23】精度管理画面の一例を示す図
【図24A】第1グラフ、第2グラフ、及び第3グラフの一例を示す図。
【図24B】第1グラフ、第2グラフ、及び第3グラフの他の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0027】
本実施の形態は、血液検体から血液塗抹標本を作製し、染色された血液塗抹標本を顕微鏡により拡大して撮像し、得られた血球画像を処理することにより、血球画像の特徴を示す特徴値を算出し、この特徴値の変動を画面に表示する検体処理システムである。
【0028】
[検体処理システムの構成]
図1Aは、本実施の形態に係る検体処理システムの全体構成を示す平面図であり、図1Bは、その一部を示す斜視図である。図1Aに示すように、検体処理システム1は、塗抹標本作製装置2と、標本撮像装置3と、血球分析装置4とを備えている。塗抹標本作製装置2、標本撮像装置3、及び血球分析装置4は、測定オーダを登録し、また測定オーダを提供するためのホストコンピュータ7に通信ネットワークを介して通信可能に接続されている。また、血球分析装置4と塗抹標本作製装置2とは、試験管に収容された血液検体を搬送する検体搬送装置5によって接続されており、血球分析装置4で分析された検体が塗抹標本作製装置2まで搬送され、その検体を用いて塗抹標本作製装置3が塗抹標本を作製する。作製された塗抹標本は、標本撮像装置3によって撮像され、画像処理による血球の分類が行われる。
【0029】
<塗抹標本作製装置の構成>
塗抹標本作製装置2(例えば、シスメックス社製の塗抹標本作製装置SP−1000i)は、血液検体を吸引し、スライドガラス100上に滴下して、その血液検体をスライドガラス100上で薄く引き延ばし、乾燥させた上で、当該スライドガラス100に染色液を供給してスライドガラス100上の血液を染色することにより、塗抹標本を作製する。なお、塗抹標本作製装置2は、標本が作製されたスライドガラス100を1時間あたり120枚作製する処理能力を有している。図2は、スライドガラス100の一部を示す図である。図2に示すように、塗抹標本作製装置2において作成されたスライドガラス100のフロスト部(情報表示領域)100aには、塗抹標本作製装置2に内蔵される熱転写プリンタ(図示せず)によって、検体番号(ID)、日付、受付番号および氏名などの標本情報が含まれる2次元バーコード100bと、標本情報に含まれる属性情報としての日付100c(図2では、07/06/04)、患者氏名100d(図2では、○○××)および検体番号(ID)の一部100e(図2では、BA15617)が印字される。
【0030】
また、図1Bに示すように、塗抹標本作製装置2は、タッチパネルからなる表示操作部2aと、起動スイッチ2bと、電源スイッチ2cと、カバー2dとを含んでいる。また、塗抹標本作製装置2には、血液が収容された試験管151を検体搬送装置5側から塗抹標本作製装置2側に搬送するためのハンド部材2eが設けられている。血液が収容された試験管151には、ゴム栓151aが装着されている。また、検体搬送装置5は、図1Bに示すように、血液が収容された試験管151を収納する検体ラック150を塗抹標本作製装置2に自動的に搬送するために設けられている。
【0031】
図3は、塗抹標本作製装置2の構成を示すブロック図である。図3に示すように、塗抹標本作製装置2は、検体分注部21と、塗抹部22と、スライドガラス搬送部23と、染色部24と、制御部25とを備えている。
【0032】
検体分注部21は、吸引管(図示せず)を備えており、この吸引管を検体搬送装置5により搬送された検体ラック150の試験管151のゴム栓151aに突き刺して、この試験管151から血液検体を吸引する。また、検体分注部21は、吸引した血液検体をスライドガラス100上に滴下するように構成されている。塗抹部22は、スライドガラス100上に滴下された血液検体を塗抹して乾燥させ、さらに、スライドガラス100に印字するように構成されている。
【0033】
スライドガラス搬送部23は、塗抹部22によって血液検体が塗抹されたスライドガラス100を図示しないカセットに収容させ、さらにそのカセットを搬送するために設けられている。染色部24は、スライドガラス搬送部23によって染色位置まで搬送されたカセット内のスライドガラス100に対して、染色液を供給する。制御部25は、検体分注部21、塗抹部22、スライドガラス搬送部23、及び染色部24を制御し、上記の塗抹標本作製動作を実行させる。このようにして作製された塗抹標本は、標本搬送装置6へと送出される。
【0034】
<標本搬送装置の構成>
図1Bに示すように、塗抹標本作製装置2と標本撮像装置3との間には、標本搬送装置6が設けられている。標本搬送装置6は、塗抹標本作製装置2から受け取ったカセットに収容されているスライドガラス100を標本撮像装置3に搬送するために設けられている。また、標本搬送装置6は、図1Bに示すように、表示部6aと、電源スイッチ6bと、カバー6cとを含んでいる。図3に示すように、この標本搬送装置6は、受け渡し口6dを介して、標本撮像装置3に撮像対象のスライドガラス100を受け渡すように構成されている。
【0035】
<標本撮像装置の構成>
図4は、本実施の形態に係る標本撮像装置の構成を示すブロック図である。なお、図4は装置の構成を模式的に示すものであり、分かり易くするためにセンサ及びスライドカセット等の配置が実際とは若干異なっている。例えば、図4では、WBC検出用のセンサとオートフォーカス用のセンサとが上下に配置されているが、実際には後出する図5に示されるように、両センサは略同一平面内に配置されている。
【0036】
標本撮像装置3は、オートフォーカスにより焦点が合わされた血液塗抹標本の拡大画像を撮像する顕微鏡ユニット3aと、撮像された画像を処理して血液中の白血球の分類を行い、当該白血球の分類毎の計数を行う画像処理ユニット3bと、この画像処理ユニット3bに接続されており、撮像された画像及び分析結果等を表示する血球画像表示ユニット3cとを備えている。なお、前記画像処理ユニット3bと血球画像表示ユニット3cとは、別体とせずに、両者を一体化してもよい。また、標本撮像装置3の近傍には、上述した標本搬送装置6が配置されており、塗抹標本作製装置2によって作製された血液塗抹標本が標本搬送装置6によって顕微鏡ユニット3aに自動的に供給されるように構成されている。
【0037】
<顕微鏡ユニット3aの構成>
図5は、顕微鏡ユニット3aの構成の一部を示す斜視図である。顕微鏡ユニット3aは、XYステージ31上に載置されたスライドガラス100にうすく引き伸ばされて塗布された血液の像を拡大する顕微鏡のレンズ系の一部を構成する対物レンズ32を備えている。標本(上面に血液が塗抹されたスライドガラス100)を保持する前記XYステージ31は、XYステージ駆動回路33(図4参照)により駆動制御される駆動部(図示せず)により前後左右(X方向及びY方向)に移動自在とされる。また、前記対物レンズ32は、対物レンズ駆動回路34により駆動制御される駆動部(図示せず)により上下(Z方向)に移動自在とされている。
【0038】
スライドガラス100は、複数枚積み重ねられた状態でスライドカセット35内に収容されており、このスライドカセット35は、カセット搬送駆動回路36により駆動制御される搬送部(図示せず)によって搬送される。前記XYステージ31には、スライドガラス100の長手方向の両端付近2箇所を把持し得るチャック部37(図5参照)が、所定位置に停止している前記スライドカセット35内に収容されているスライドガラス100に対して進退自在に設けられている。そして、前記チャック部37をスライドカセット35に向けて進出させ、当該チャック部37先端部に形成されている開閉自在の爪部37aの開閉操作によりスライドガラス100を把持し、ついでチャック部37を後退させることにより、スライドカセット35からスライドガラス100を引き出して、XYステージ31の所定の位置に配置することができる。
【0039】
スライドガラス100の下方には光源であるランプ38が配設されており、このランプ38からの光は、スライドガラス100上の血液を通過し、さらに光路上に配置されたハーフミラー39及び干渉フィルタ310を経由して、複数の画素が一列に並んだオートフォーカス用のラインセンサ311、複数の画素が一列に並んだ白血球(WBC)検出用のセンサ312、及びCCDカメラ313に入射する。白血球検出用のセンサ312には、FPGA又はASIC等で構成された白血球検出部314が接続され、センサ312の出力信号が白血球検出部314に与えられるようになっている。また、オートフォーカス用のセンサ311には、FPGA又はASIC等で構成されたフォーカス算定部315が接続され、センサ311の出力信号がフォーカス算定部315に与えられるようになっている。センサ312の入射光に応じた出力信号に基づいて、白血球検出部314により白血球の検出が行われ、またセンサ311の入射光に応じた出力信号に基づいて、フォーカス算定部315でオートフォーカスの動作に用いられる情報が算定され、かかる情報に基づいてオートフォーカスの動作が行われる。
【0040】
また、顕微鏡ユニット3aは、制御部316及び通信インタフェース317,318を備えている。制御部316はCPU及びメモリを備え、XYステージ駆動回路33、対物レンズ駆動回路34、カセット搬送駆動回路36、白血球検出部314、フォーカス算定部315、通信インタフェース317及び318にそれぞれ通信可能に接続されており、かかる制御部316がメモリに記憶された制御プログラムを実行することにより、上述した各機構が制御されるようになっている。
【0041】
通信インタフェース317は、Ethernet(登録商標)インタフェースである。かかる通信インタフェース317は、通信ケーブルを介して画像処理ユニット3bにデータ通信可能に接続されている。また、通信インタフェース318は、A/D変換器313aを介してCCDカメラ313に接続されており、また通信ケーブルを介して画像処理ユニット3bに接続されている。CCDカメラ313から出力された画像信号(アナログ信号)は、A/D変換器313aによりA/D変換され、A/D変換器313aから出力された画像データ(デジタルデータ)が通信インタフェース318に与えられ、画像処理ユニット3bへ送信される。
【0042】
また、顕微鏡ユニット3aは、2次元バーコードリーダ319を備えている。上述したように、スライドガラス100のフロスト部100aには、検体IDを示す2次元バーコードが印字されており、顕微鏡ユニット3aに導入されたスライドガラス100の2次元バーコードが、2次元バーコードリーダ319により読み取られる。このようにして読み取られた検体IDは、制御部316に与えられる。
【0043】
<画像処理ユニット3bの構成>
次に、画像処理ユニット3bの構成について説明する。図6は、画像処理ユニット3bの構成を示すブロック図である。画像処理ユニット3bは、コンピュータ320によって実現される。図6に示すように、コンピュータ320は、本体321と、画像表示部322と、入力部323とを備えている。本体321は、CPU321a、ROM321b、RAM321c、ハードディスク321d、読出装置321e、入出力インタフェース321f、通信インタフェース321g、321h、321i、及び画像出力インタフェース321jを備えており、CPU321a、ROM321b、RAM321c、ハードディスク321d、読出装置321e、入出力インタフェース321f、通信インタフェース321g、通信インタフェース321h、通信インタフェース321i、及び画像出力インタフェース321jは、バス321kによって接続されている。
【0044】
CPU321aは、RAM321cにロードされたコンピュータプログラムを実行することが可能である。そして、後述するような画像処理プログラム324aを当該CPU321aが実行することにより、コンピュータ320が画像処理ユニット3bとして機能する。
【0045】
ROM321bは、マスクROM、PROM、EPROM、又はEEPROM等によって構成されており、CPU321aに実行されるコンピュータプログラム及びこれに用いるデータ等が記録されている。
【0046】
RAM321cは、SRAMまたはDRAM等によって構成されている。RAM321cは、ハードディスク321dに記録されている画像処理プログラム324aの読み出しに用いられる。また、CPU321aがコンピュータプログラムを実行するときに、CPU321aの作業領域として利用される。
【0047】
ハードディスク321dは、オペレーティングシステム及びアプリケーションプログラム等、CPU321aに実行させるための種々のコンピュータプログラム及び当該コンピュータプログラムの実行に用いられるデータがインストールされている。後述する画像処理プログラム324aも、このハードディスク321dにインストールされている。
【0048】
さらにハードディスク321dには、血球画像を保存するための血球画像フォルダ325が設けられている。かかる血球画像フォルダ325には、検体毎にフォルダが設けられており、さらにそのフォルダ内に後述するようにして得られた血球画像が格納される。検体毎に設けられた各フォルダには、検体IDを含むフォルダ名が付けられており、所望の検体IDに対応するフォルダを当該検体IDを用いて特定することが可能となっている。また、この血球画像フォルダ325は血球画像表示ユニット3cとの共有設定がなされており、血球画像表示ユニット3cから当該血球画像フォルダ325に格納されているファイルにアクセスすることが可能となっている。
【0049】
また、ハードディスク321dには、検体に関する情報を格納するための検体データベースDB1と、画像処理によって白血球を分類した結果を格納するための血球データベースDB2と、染色に関する特徴値である平均核G値及び顕微鏡ユニット3aに関する特徴値である平均背景G値を格納するための特徴値履歴データベースDB3とが設けられている。
【0050】
図7Aは、検体データベースDB1の構造を示す模式図である。検体データベースDB1には、検体IDを格納する検体フィールドF11と、血球分析装置4による分析の結果、白血球スキャッタグラム異常と判定されたか否かを示す情報(白血球スキャッタグラム異常フラグ)、NRBC(有核赤血球)スキャッタグラム異常と判定されたか否かを示す情報(NRBCスキャッタグラム異常フラグ)、好中球減少異常と判定されたか否かを示す情報(好中球減少異常フラグ)等、各種の異常と判定された情報を格納するためのフィールドF12、F13、F14、…と、標本撮像装置3による測定日を格納するためのフィールドF15と、染色異常か否かを示す情報(染色異常フラグ)を格納する染色異常フィールドF16と、ランプ光量異常か否かを示す情報(ランプ光量異常フラグ)を格納する光量異常フィールドF17と、後述する第1平均核G値を格納する第1平均核G値フィールドF18と、後述する第1平均背景G値を格納する第1平均背景G値フィールドF19とが含まれている。白血球スキャッタグラム異常フィールドF12、NRBCスキャッタグラム異常フィールドF13、好中球減少異常フィールドF14、染色異常フィールドF16、光量異常フィールドF17等の異常を示す情報を格納するフィールドには、異常が発生していない場合には「0」が、異常が発生している場合には「1」が格納される。なお、図を簡単にするため省略しているが、検体データベースDB1には、血球分析装置4による分析結果(白血球数、赤血球数等)の数値データを格納するためのフィールドも設けられている。また、検体データベースDB1には、患者氏名を格納するフィールド、病棟を特定する情報を格納するフィールド、年齢を格納するフィールド、白血球カウント数Nを格納するフィールド等も設けられている。
【0051】
図7Bは、血球データベースDB2の構造を示す模式図である。血球データベースDB2は、検体毎に設けられており、各血球データベースDB2には、検体IDを示すデータが含まれている。これにより、検体IDから対応する血球データベースDB2を特定することが可能である。かかる血球データベースDB2には、白血球を特定する白血球IDを格納する白血球IDフィールドF21と、白血球の分類結果を格納する種類フィールドF22と、分類不能であった白血球を特定するための情報を格納する再確認対象フィールドF23とが設けられている。再確認対象フィールドF23には、白血球分類が正常に行われている場合には「0」が、分類不能であり、再確認の対象とされる場合には「1」が格納される。
【0052】
図7Cは、特徴値履歴データベースDB3の構造を示す模式図である。特徴値履歴データベースDB3には、日付情報を格納する日付フィールドF31と、第2平均核G値を格納する第1特徴値フィールドF32と、第2平均背景G値を格納する第2特徴値フィールドF33と、分類失敗率を格納する分類失敗率フィールドF34とが設けられている。なお、第2平均核G値、第2平均背景G値、及び分類失敗率については後述する。
【0053】
読出装置321eは、フレキシブルディスクドライブ、CD−ROMドライブ、またはDVD−ROMドライブ等によって構成されており、可搬型記録媒体324に記録されたコンピュータプログラムまたはデータを読み出すことができる。また、可搬型記録媒体324には、コンピュータを画像処理ユニット3bとして機能させるための画像処理プログラム324aが格納されており、コンピュータ320が当該可搬型記録媒体324から画像処理プログラム324aを読み出し、当該画像処理プログラム324aをハードディスク321dにインストールすることが可能である。
【0054】
なお、前記画像処理プログラム324aは、可搬型記録媒体324によって提供されるのみならず、電気通信回線(有線、無線を問わない)によってコンピュータ320と通信可能に接続された外部の機器から前記電気通信回線を通じて提供することも可能である。例えば、前記画像処理プログラム324aがインターネット上のサーバコンピュータのハードディスク内に格納されており、このサーバコンピュータにコンピュータ320がアクセスして、当該コンピュータプログラムをダウンロードし、これをハードディスク321dにインストールすることも可能である。
【0055】
また、ハードディスク321dには、例えば米マイクロソフト社が製造販売するWindows(登録商標)等のマルチタスクオペレーティングシステムがインストールされている。以下の説明においては、本実施の形態に係る画像処理プログラム324aは当該オペレーティングシステム上で動作するものとしている。
【0056】
入出力インタフェース321fは、例えばUSB,IEEE1394,又はRS-232C等のシリアルインタフェース、SCSI,IDE,又はIEEE1284等のパラレルインタフェース、及びD/A変換器、A/D変換器等からなるアナログインタフェース等から構成されている。入出力インタフェース321fには、キーボード及びマウスからなる入力部323が接続されており、ユーザが当該入力部323を使用することにより、コンピュータ320にデータを入力することが可能である。また、入出力インタフェース321fには、顕微鏡ユニット320に設けられたCCDカメラ313が接続されており、CCDカメラ313の撮像により得られた画像を取り込むことが可能である。
【0057】
通信インタフェース321g,321hは、それぞれEthernet(登録商標)インタフェースである。通信インタフェース321gはLANを介して血球画像表示ユニット3cに接続されている。コンピュータ320は、通信インタフェース321gにより、所定の通信プロトコルを使用して当該LANに接続された血球画像表示ユニット3c及びホストコンピュータ7との間でデータの送受信が可能である。また、通信インタフェース321hは、通信ケーブルを介して顕微鏡ユニット3aの通信インタフェース317とデータ通信可能に接続されている。
【0058】
通信インタフェース321iは、通信ケーブルを介して顕微鏡ユニット3aの通信インタフェース318とデータ通信可能に接続されている。これにより、CCDカメラ313による撮像画像が通信インタフェース321iにより受信されるようになっている。
【0059】
画像出力インタフェース321jは、LCDまたはCRT等で構成された画像表示部322に接続されており、CPU321aから与えられた画像データに応じた映像信号を画像表示部322に出力するようになっている。画像表示部322は、入力された映像信号にしたがって、画像(画面)を表示する。
【0060】
<血球画像表示ユニット3cの構成>
血球画像表示ユニット3cは、コンピュータにより構成されている。また、かかる血球画像表示ユニット3cは、画像処理ユニット3bとLANを介して接続されており、画像処理ユニット3bのハードディスク321dに設けられた血球画像フォルダ325内の血球画像を読み出し、表示することが可能である。
【0061】
図8は、血球画像表示ユニット3cの構成を示すブロック図である。血球画像表示ユニット3cは、コンピュータ330によって実現される。図8に示すように、コンピュータ330は、本体331と、画像表示部332と、入力部333とを備えている。本体331は、CPU331a、ROM331b、RAM331c、ハードディスク331d、読出装置331e、入出力インタフェース331f、通信インタフェース331g、及び画像出力インタフェース331hを備えており、CPU331a、ROM331b、RAM331c、ハードディスク331d、読出装置331e、入出力インタフェース331f、通信インタフェース331g、及び画像出力インタフェース331hは、バス331iによって接続されている。
【0062】
ハードディスク331dは、オペレーティングシステム及びアプリケーションプログラム等、CPU331aに実行させるための種々のコンピュータプログラム及び当該コンピュータプログラムの実行に用いられるデータがインストールされている。後述する血球画像表示プログラム334aも、このハードディスク331dにインストールされている。
【0063】
読出装置331eは、フレキシブルディスクドライブ、CD−ROMドライブ、またはDVD−ROMドライブ等によって構成されており、可搬型記録媒体334に記録されたコンピュータプログラムまたはデータを読み出すことができる。また、可搬型記録媒体334には、コンピュータを血球画像表示ユニット3cとして機能させるための血球画像表示プログラム334aが格納されており、コンピュータ330が当該可搬型記録媒体334から血球画像表示プログラム334aを読み出し、当該血球画像表示プログラム334aをハードディスク331dにインストールすることが可能である。
【0064】
入出力インタフェース331fは、例えばUSB,IEEE1394,SAS,SATA,又はRS-232C等のシリアルインタフェース、SCSI,IDE,又はIEEE1284等のパラレルインタフェース、及びD/A変換器、A/D変換器等からなるアナログインタフェース等から構成されている。入出力インタフェース331fには、キーボード及びマウスからなる入力部333が接続されており、ユーザが当該入力部333を使用することにより、コンピュータ330にデータを入力することが可能である。
【0065】
通信インタフェース331gは、Ethernet(登録商標)インタフェースである。通信インタフェース331gはLANを介して画像処理ユニット3bに接続されている。コンピュータ330は、通信インタフェース331gにより、所定の通信プロトコルを使用して当該LANに接続された画像処理ユニット3bとの間でデータの送受信が可能である。
【0066】
なお、血球画像表示ユニット3cのその他の構成は、上述した画像処理ユニット3bの構成と同様であるので、その説明を省略する。
【0067】
<血球分析装置の構成>
血球分析装置4は、光学式フローサイトメトリー方式の多項目血球分析装置であり、血液検体に含まれる血球に関して側方散乱光強度、蛍光強度等を取得し、これらに基づいて検体中に含まれる血球を分類し、且つ、種類毎に血球数を計数し、このように分類された血球が種類毎に色分けされたスキャッタグラムを作成し、これを表示する。かかる血球分析装置4は、血液検体を測定する測定ユニット41と、測定ユニット41から出力された測定データを処理し、血液検体の分析結果を表示する情報処理ユニット42とを備えている。
【0068】
図9は、測定ユニット41の概略構成を示すブロック図である。測定ユニット41は、検体分注部411と、測定試料調製部412と、光学検出部413と、信号処理回路414と、制御部415とを備えている。
【0069】
検体分注部411は、吸引管(図示せず)を備えており、この吸引管を検体搬送装置5の測定ライン上を搬送された検体ラック150に収納された試験管151の蓋部151aに突き刺して、この試験管151から血液検体を吸引する。測定試料調製部412は、混合容器(図示せず)を備えており、検体分注部411により分注された血液検体、試薬及び希釈液を混合撹拌し、測定試料を調製する。
【0070】
光学検出部413は、フローセル(図示せず)を備え、このフローセルに測定試料を供給することにより測定試料の細い流れを形成し、その測定試料に対して光を照射して、光学センサにより側方散乱光信号、前方散乱光信号、及び蛍光信号を取得する。これらの信号は、信号処理回路414へ出力される。信号処理回路414は、光学検出部413から出力される電気信号を処理する回路である。かかる信号処理回路414は、側方散乱光信号、前方散乱光信号、蛍光信号のピーク及びパルス幅等のパラメータを取得する。
【0071】
制御部415は、CPU及びメモリを備えており、検体搬送装置5とデータ通信可能に接続されている。かかる制御部415は、検体搬送装置5から与えられた分析項目にしたがって、検体分注部411、測定試料調製部412、光学検出部413、及び信号処理回路414を制御し、上記分析項目に対応する測定動作を実行させる。また、信号処理回路414によって得られた上記パラメータを含む測定データを情報処理ユニット42へ送信するように構成されている。
【0072】
次に、情報処理ユニット42の構成について説明する。情報処理ユニット42は、コンピュータにより構成されている。図10は、情報処理ユニット42の構成を示すブロック図である。情報処理ユニット42は、コンピュータ42aによって実現される。図10に示すように、コンピュータ42aは、本体421と、画像表示部422と、入力部423とを備えている。本体421は、CPU421a、ROM421b、RAM421c、ハードディスク421d、読出装置421e、入出力インタフェース421f、通信インタフェース421g、及び画像出力インタフェース421hを備えており、CPU421a、ROM421b、RAM421c、ハードディスク421d、読出装置421e、入出力インタフェース421f、通信インタフェース421g、及び画像出力インタフェース421hは、バス421jによって接続されている。
【0073】
ハードディスク421dは、オペレーティングシステム及びアプリケーションプログラム等、CPU421aに実行させるための種々のコンピュータプログラム及び当該コンピュータプログラムの実行に用いられるデータがインストールされている。また、測定ユニット41から出力された測定データを分析し、検体の分析結果を得るための分析プログラム424aも、このハードディスク421dにインストールされている。
【0074】
通信インタフェース421gは、Ethernet(登録商標)インタフェースである。通信インタフェース421gはLANを介して測定ユニット41に接続されている。コンピュータ42aは、通信インタフェース421gにより、所定の通信プロトコルを使用して当該LANに接続された測定ユニット41との間でデータの送受信が可能である。また、かかる通信インタフェース421gは、上記のLANを介してホストコンピュータ7に通信可能に接続されている。
【0075】
なお、情報処理ユニット42のその他の構成は、上述した画像処理ユニット3bの構成と同様であるので、その説明を省略する。
【0076】
[検体処理システム1の動作]
次に、本実施の形態に係る検体処理システム1の動作について説明する。
【0077】
<血球分析装置4の動作>
まず、血球分析装置4の動作について説明する。図11は、血球分析装置4の情報処理ユニット42の動作の流れを示すフローチャートである。血球分析装置4による分析対象の検体を収納した検体ラック150は、検体搬送装置5によって血球分析装置4の前方まで搬送される。このとき、検体搬送装置5は、血球分析装置4へ、分析対象の検体の吸引指示を示す吸引指示データを送信する。検体搬送装置5から送信された吸引指示データは、測定ユニット41の制御部415を介して情報処理ユニット42の通信インタフェース421gにより受信される(ステップS101)。情報処理ユニット42のCPU421aにより実行される分析プログラム424aはイベントドリブン型のプログラムであり、CPU421aにおいては、吸引指示データを受信するイベントが発生すると、ステップS102の処理が呼び出される。
【0078】
ステップS102において、CPU421aは、吸引指示データに含まれる検体IDを含むオーダ要求データを通信インタフェース421gにホストコンピュータ7へ送信させ(ステップS102)、測定オーダをホストコンピュータ7へ問い合わせる。その後、CPU421aは、測定オーダの受信を待機し(ステップS103においてNO)、ホストコンピュータ7から送信された測定オーダが情報処理ユニット42の通信インタフェース421gにより受信されると(ステップS103においてYES)、受信した測定オーダをハードディスク421dに記憶する(ステップS104)。
【0079】
次に、CPU421aは、記憶した測定オーダに含まれる分析項目を含む測定開始要求データを測定ユニット41へ送信し(ステップS105)、この測定開始要求データを測定ユニット41の制御部415が受信することにより、当該測定開始要求データに含まれる分析項目について血液検体の測定が行われる。測定ユニット41の制御部415は、測定が完了した後に、測定によって得られた側方散乱光強度及び蛍光強度等を反映した測定データ(生データ)を情報処理ユニット42へと送信する。CPU421aは、測定データの受信を待機し(ステップS106においてNO)、測定データが通信インタフェース421gにより受信されると(ステップS106においてYES)、測定データの解析処理を実行し(ステップS107)、検体中に含まれる血球を分類し、且つ、種類毎に血球数を計数し、このように分類された血球が種類毎に色分けされたスキャッタグラムを作成する。かかる測定データの解析処理においては、白血球スキャッタグラム(白血球を種類毎に分類するためのスキャッタグラム)の異常、NRBCスキャッタグラム(有核赤血球を検出するためのスキャッタグラム)の異常、好中球が所定の正常範囲を下回る好中球減少異常、好中球が前記正常範囲を上回る好中球増加異常、単球が所定の正常範囲を上回る単球増加異常、好酸球が所定の正常範囲を上回る好酸球増加異常、好塩基球が所定の正常範囲を上回る好塩基球増加異常、白血球の総数が所定の正常範囲を下回る白血球減少異常、白血球の総数が所定の正常範囲を上回る白血球増加異常、赤芽球が所定の正常範囲を上回る赤芽球増加異常等の異常が検出され、解析処理により生成される分析結果データには、異常が検出されたことを示す異常フラグが付加される。測定データの解析処理により生成された分析結果データは、測定オーダに含まれる患者情報等と共にハードディスク421dに格納され(ステップS108)、また、ホストコンピュータ7へ送信される(ステップS109)。ホストコンピュータ7は、上述した測定オーダに分析結果データを統合してハードディスクに記憶する。ステップS109の処理を完了した後、CPU421aは、処理を終了する。
【0080】
<血球画像の登録動作>
次に、塗抹標本作製装置2が血液塗抹標本を作製し、標本撮像装置3が血液塗抹標本中の血球を撮像し、血球画像を記憶する血球画像の登録動作について説明する。上記のように血球分析装置4による分析に供された検体を収納する検体ラック150は、検体搬送装置5によって塗抹標本作製装置2まで搬送される。塗抹標本作製装置2は、このようにして搬送された試験管151に収容された検体を吸引し、この検体をスライドガラス100に滴下して引き延ばし、当該スライドガラス100を染色液に浸すことにより、血液塗抹標本を作製する。なお、塗抹標本作製装置2によって標本に対して施される染色は、メイグリュンワルドギムザ染色(メイギムザ染色)、ライトギムザ染色、又はライト単染色とされる。塗抹標本作製装置2によって検体が吸引された試験管151を収納する検体ラック150は、検体搬送装置5により下流側へ搬送され、かかる試験管151がユーザによって保冷庫等に保管される。
【0081】
上記のようにして作製された血液塗抹標本(スライドガラス100)は、標本搬送装置6によって塗抹標本作製装置2から顕微鏡ユニット3aへ自動供給される。
【0082】
図12は、血球画像の登録動作における顕微鏡ユニット3aの動作手順を示すフローチャートであり、図13A及び図13Bは、血球画像の登録動作における画像処理ユニット3bの動作手順を示すフローチャートである。顕微鏡ユニット3aは、標本搬送装置6からスライドガラス100を受け付けると、これを図示しないセンサによって検出する(ステップS201)。制御部316により実行される制御プログラムはイベントドリブン型のプログラムであり、顕微鏡ユニット3aの制御部316においては、標本搬送装置6からスライドガラス100を受け付けるイベントが発生すると、ステップS202の処理が呼び出される。
【0083】
ステップS202において、制御部316は、受け付けたスライドガラス100を収容するスライドカセット35を所定のバーコード読み取り位置まで搬送させ、2次元バーコードリーダ319に検体バーコードを読み取らせる(ステップS202)。次に、制御部316は、ステップS202において取得した検体IDを通信インタフェース317に画像処理ユニット3bへ送信させる(ステップS203)。
【0084】
顕微鏡ユニット3aから送信された検体IDは、画像処理ユニット3bの通信インタフェース321hにより受信される(図13AのステップS221)。画像処理ユニット3bのCPU321aにより実行される画像処理プログラム324aはイベントドリブン型のプログラムであり、CPU321aにおいては、検体IDを受信するイベントが発生すると、ステップS222の処理が呼び出される。
【0085】
ステップS222において、CPU321aは、通信インタフェース321gに、受信した検体IDを含むオーダ要求データをホストコンピュータへ送信させる(ステップS222)。ホストコンピュータから送信されるオーダには、検体ID、患者氏名、患者性別、病棟情報、コメント、血球分析装置4の分析結果(白血球数、赤血球数等の数値データ)、血球分析装置4により検出された各種の異常情報(白血球スキャッタグラム異常フラグ、NRBCスキャッタグラム異常フラグ、好中球減少異常フラグ、好中球増加異常フラグ、単球増加異常フラグ、好酸球増加異常フラグ、好塩基球増加異常フラグ、白血球減少異常フラグ、白血球増加異常フラグ、赤芽球増加異常フラグ等)、及び白血球のカウント数Nのデータが含まれている。CPU321aは、オーダ受信を待機し(ステップS223においてNO)、オーダを受信すると(ステップS223においてYES)、通信インタフェース321hにより、かかるオーダに含まれる白血球のカウント数Nを含む測定開始指示データを顕微鏡ユニット3aへ送信し(ステップS224)、解析した血球画像の数を示す変数iに1をセットする(ステップS225)。
【0086】
ここで、顕微鏡ユニット3aは、測定開始指示データを待機している(図12のステップS204においてNO)。画像処理ユニット3bから送信された測定開始指示データが、顕微鏡ユニット3aの通信インタフェース317により受信された場合には(ステップS204においてYES)、制御部316は、スライドカセット35を所定位置まで搬送させ、所定位置に停止しているスライドガラス100をチャック部37に把持させ、次いでチャック部37を後退させることによりスライドカセット35からスライドガラスを引き出させ、XYステージ31の所定の位置(撮像位置)にセットさせる(ステップS205)。また、制御部316は、撮像回数を示す変数jに1をセットする(ステップS206)。
【0087】
次いで、スライドガラス100に塗布された血液中の白血球の検出が行われる(ステップS207)。この検出は前述したセンサ312を用いて行われる。センサ312はラインセンサであり、その視野は400μm程度である。図14は、白血球検出におけるスライドガラス上の検体のスキャニングのパターンを説明する図である。制御部316は、センサ312がスライドガラス100上を略ジグザグ状に長手方向の一端から他端に向けてスキャンするように、前記XYステージ31がX方向及びY方向に移動させる(図14参照)。前記略ジグザグ状の走査の、スライドガラス100長手方向の間隔Dは、検出漏れを防ぎつつ走査効率を上げるという観点より、通常、300〜500μm程度であり、また、前記走査のスライドガラス100幅方向の寸法Hは、スライドガラス100の幅が一般に26mm程度であることから、通常、14〜18mm程度である。
【0088】
赤血球は光の赤色成分をあまり吸収しないが、白血球の核は光の赤色成分を多く吸収することから、この赤色成分を検出することにより白血球と赤血球とを容易に区別することができる。図15Aは、ラインセンサ312の視野を説明する図であり、図15Bは、ラインセンサ312の信号波形を示す図である。図15Aにおいては、ラインセンサ312の視野V内に白血球WBCが存在する場合を示しており、この場合、ラインセンサ312により検出された信号の赤色成分は、図15Bに示されるように、白血球WBCが存在する箇所において基準値S以下となる。この現象を利用して、血液中の白血球を検出することができる。なお、信号の赤色成分が基準値S以下となる幅Wを検出することで、この信号を発する部分が白血球の核であるか否かのチェックが行われる。
【0089】
次いで、制御部316は、オートフォーカス動作を実行する(ステップS208)。図5に示すように、スライドガラス100及び対物レンズ32を通過した光は、プリズムミラー39aにより方向変換され、さらにハーフミラー39によってCCDカメラ313に向かう光と、センサ311、312に向かう光とに分けられる。オートフォーカス用のラインセンサ311は、2つのラインセンサ311a及び311bから構成されている。
【0090】
2つのオートフォーカス用のラインセンサ311a、311bのうち一方のラインセンサ311aは、合焦位置(焦点が合っている位置)よりも前側(光路上対物レンズに近づく側)に配置されており、他方のラインセンサ311bは合焦位置よりも後側(光路上対物レンズから離れる側)に配置されている。そして、かかる2つのラインセンサの出力信号の差分積分値に基づいて、対物レンズの焦点がスライドガラス上の検体に合うように、対物レンズの位置が調節される。
【0091】
次に、制御部316は、通信インタフェース318にCCDカメラ313の画像の取り込み及び送信を指示し、これにより、ステップS207で検出された白血球の画像が取り込まれ(ステップS209)、かかる血球画像が画像処理ユニット3bへ送信される(ステップS210)。その後、制御部316は、要求された白血球のカウント数に到達したか否か、即ち、j≧Nであるか否かを判定し(ステップS211)、j<Nの場合には(ステップS211においてNO)、jを1インクリメントし(ステップS212)、処理をステップS207に戻し、再度白血球の検出を実行する。一方、ステップS211においてj≧Nの場合には(ステップS211においてYES)、制御部316は、処理を終了する。
【0092】
上記のステップS225の後、CPU321aは、血球画像の受信を待機している(図13AのステップS226においてNO)。顕微鏡ユニット3aから送信された血球画像が、画像処理ユニット3bの通信インタフェース321hにより受信された場合には(ステップS226においてYES)、CPU321aは、受信した血球画像をハードディスク321dに記憶する(ステップS227)。ステップS227の処理においては、受信した血球画像に対応する白血球IDが生成され、その白血球IDを含むファイル名の画像データとして、前記血球画像が記憶される。次に、CPU321aは、血球画像の補正処理を行う(ステップS228)。かかる補正処理においては、血球画像の背景部分(血球像以外の部分)の輝度の平均値が所定値(例えば、225)になるように、血球画像の全画素のRGB成分の輝度値が線形補正される。このような補正後の血球画像は、補正前の血球画像とは別にハードディスク321dに記憶される(ステップS229)。この補正後の血球画像も、白血球IDを含むファイル名(補正前の血球画像とは異なるファイル名)が付けられる。
【0093】
次に、CPU321aは、補正後の血球画像における細胞質及び核の領域を特定する(ステップS230)。図16Aは、補正後の血球画像の一例を示す図である。図16Aに示すように、補正後の血球画像160Aには、白血球像161が含まれている。染色された白血球においては、核及び細胞質が異なる色を呈する。また、白血球の核及び細胞質の色は、赤血球及び背景の色ともそれぞれ異なっている。したがって、ステップS230の処理では、白血球像161のRGB値を利用して、白血球像161に含まれる核の領域161a及び細胞質の領域161bが特定される。
【0094】
次に、CPU321aは、補正後の血球画像に基づき白血球の各種特徴パラメータを算出する(ステップS231)。この特徴パラメータとしては、画像の色信号(G、B、R)に基づいて求めることができる白血球の核の面積、核数、凹凸、色調、及び濃度(むら)、白血球の細胞質の面積、色調、及び濃度(むら)、並びに前記核と細胞質との面積比及び濃度比などをあげることができる。
【0095】
次に、CPU321aは、取得した特徴パラメータを用いて、白血球の種類を分類する(ステップS232)。具体的には、例えば白血球のいくつかの特徴パラメータについて、順次、各パラメータについて予め定めておいた判定基準値と比較することで、白血球の種類を除々に絞り込んでいくことができる。このようにして、撮像された白血球は、リンパ球、単球、好酸球、好塩基球、好中球(桿状、分葉状)といった成熟白血球の分類、芽球、幼若顆粒球、異型リンパ球といった未熟白血球の分類、赤芽球の分類がなされる。
【0096】
上記のように、本実施の形態に係る標本撮像装置3にあっては、血球画像の色情報を利用して白血球の分類が行われる。ここで、塗抹標本作製装置2の染色液が劣化するなど、血液塗抹標本の染色状態が変化すると、白血球像の色が変化することとなる。また、顕微鏡ユニット3aのランプの光量が低下するなど、撮像状態が変化すると、補正前の血球画像の色が全体的に変化することとなる。したがって、血液塗抹標本の染色状態及び顕微鏡ユニット3aの撮像部の状態が変化すると、精度良く血球の分類を行うことが困難となり、標本撮像装置3による分類結果の信頼性が低下する。
【0097】
このことを図を用いて説明する。図16Aは、正常な染色が行われた場合の補正後の血球画像の例を示す図であり、図16Bは、染色液が劣化した場合の補正後の血球画像の例を示す図である。メイギムザ染色、ライトギムザ染色、及びライト単染色を実施したときにおいて、正常な染色が行われた場合の血球画像160Aと、染色液の劣化が発生している場合の血球画像160Bとでは、特に核領域の色が異なっており、染色液劣化の場合の血球画像160Bの核領域162aは、正常な染色が行われた場合の血球画像160Aの核領域161aに比べて色が淡い。また、図16A及び図16Bには示していないが、過度に染色されることにより、核領域の色が正常染色の場合の核領域よりも濃くなり、これによって正常な分類が行われないことがある。このように、核領域161aの特定の色成分(本実施の形態においては緑成分)の輝度値は、血球画像の核領域161aの特徴を表しており、また血球の染色状態の特徴を表している。
【0098】
図17Aは、正常なランプ光量における撮像により得られた補正前の血球画像の例を示す図であり、図17Bは、ランプ光量の低下が生じているときの撮像により得られた補正前の血球画像の例を示す図である。正常なランプ光量における補正前の血球画像160Cと、ランプ光量低下が発生している場合の補正前の血球画像160Dとでは、特に背景領域の輝度が異なっている。この背景領域は、染色の影響を受けないが、ランプ光量の影響を受ける領域である。ランプ光量低下が発生している場合の血球画像160Dの背景領域163は、ランプ光量が正常な場合の血球画像160Cの背景領域164に比べて輝度が低い。このように、補正前血球画像の背景領域の特定の色成分(本実施の形態においては緑成分)の輝度値は、血球画像の背景領域の特徴を表しており、また顕微鏡ユニット3aのランプ38及びCCDカメラ313を含む撮像部の状態の特徴を表している。
【0099】
上記のような染色状態及び撮像部の状態の確認を支援するための情報をユーザに提供するために、本実施の形態においては画像処理ユニット3bが以下の処理を実行する。まず、CPU321aは、補正前の血球画像における背景領域、即ち、補正前の血球画像のうち血球領域以外の領域の各画素のG値(緑成分の輝度値)を取得し、取得したG値の平均値を算出し、得られた値(以下、「背景G値」という。)をRAM321cに記憶する(ステップS233)。
【0100】
次に、CPU321aは、ステップS232における分類の結果、この血球画像に係る白血球が好中球と分類されたか否かを判定する(ステップS234)。当該白血球が好中球と分類された場合には(ステップS234においてYES)、補正後の血球画像における白血球の核の領域の核画素のG値を取得し、取得したG値の平均値を算出し、得られた値(以下、「核G値」という。)をRAM321cに記憶する(ステップS235)。CPU321aは、この後、ステップS236へと処理を進める。
【0101】
一方、ステップS234において、この血球画像に係る白血球が好中球と分類されなかった場合には(ステップS234においてNO)、CPU321aは、ステップS236へと処理を移す。
【0102】
ステップS236において、CPU321aは、要求された白血球のカウント数に到達したか否か、即ち、i≧Nであるか否かを判定し(ステップS236)、i<Nの場合には(ステップS236においてNO)、iを1インクリメントし(ステップS237)、処理をステップS226に戻し、再度血球画像の受信を待機する。
【0103】
一方、ステップS236においてi≧Nの場合には(ステップS236においてYES)、CPU321aは、RAM321cに記憶された背景G値の平均値である第1平均背景G値BAを算出し(ステップS238)、また、RAM321cに記憶された核G値の平均値である第1平均核G値NAを算出する(ステップS239)。
【0104】
次に、CPU321aは、第1平均背景G値BAが所定の基準値TBより大きいか否かを判定し(ステップS240)、第1平均背景G値BAが基準値TB以下である場合には(ステップS240においてNO)、RAM321cに設けられたランプ光量異常のフラグに1をセットし(ステップS241)、画像表示部322にランプ光量異常の発生を通知するためのエラー画面を表示し(ステップS242)、ステップS244へと処理を移す。
【0105】
図18Aは、ランプ光量異常の発生を通知するためのエラー画面を示す図である。ランプ光量異常が発生した場合には、図18Aに示すようなエラー画面E1が表示される。エラー画面E1には、エラー情報を表示するエラーリスト表示領域81と、そのエラーに対処するための詳細情報を表示する詳細情報表示領域82と、画面を閉じるために使用されるOKボタン83とが含まれている。ランプ光量異常の場合のエラー画面E1には、エラーリスト表示領域81に「ランプ光量異常」と表示され、詳細情報表示領域82に「1)ランプの交換時期です。サービスマンに連絡してください。」というメッセージが表示される。
【0106】
一方、第1平均背景G値BAが基準値TBより大きい場合には(ステップS240においてYES)、CPU321aは、ランプ光量異常のフラグに0をセットし(ステップS243)、ステップS244へと処理を移す。
【0107】
ステップS244において、CPU321aは、第1平均核G値NAが所定の下限基準値TN1より大きく、且つ、所定の上限基準値TN2より小さいか否かを判定し(ステップS244)、第1平均核G値NAが下限基準値TN1以下であるか、又は、第1平均核G値NAが上限基準値TN2以上である場合には(ステップS244においてNO)、RAM321cに設けられた染色異常のフラグに1をセットし(ステップS245)、画像表示部322に染色異常の発生を通知するためのエラー画面を表示し(ステップS246)、ステップS248へと処理を移す。
【0108】
図18Bは、染色異常の発生を通知するためのエラー画面を示す図である。染色異常が発生した場合には、図18Bに示すようなエラー画面E2が表示される。エラー画面E1と同様に、エラー画面E2には、エラー情報を表示するエラーリスト表示領域81と、そのエラーに対処するための詳細情報を表示する詳細情報表示領域82と、画面を閉じるために使用されるOKボタン83とが含まれている。染色異常の場合には、エラーリスト表示領域81に「染色異常」と表示され、詳細情報表示領域82に「1)スライドの塗抹標本が正常であるか確認してください。」「2)再度測定する場合は、カセットにスライドを挿入し、連携ユニットに挿入してください。」というメッセージが表示される。
【0109】
上記のようなエラー画面E1,E2は、ユーザによる入力部333の操作によって、OKボタン83が選択された場合に、表示が終了される。
【0110】
一方、第1平均核G値NAが下限基準値TN1より大きく、且つ、上限基準値TN2より小さい場合には(ステップS244においてYES)、CPU321aは、染色異常のフラグに0をセットし(ステップS247)、ステップS248へと処理を移す。
【0111】
ステップS248において、CPU321aは、上述のようにして得られた検体に関する情報及び分類結果をハードディスク321dの検体データベースDB1及び血球データベースDB2に登録し(ステップS248)、処理を終了する。この処理では、ステップS239において算出された第1平均核G値が検体データベースDB1の第1平均核G値フィールドF18に格納され、ステップS238において算出された第1平均背景G値が検体データベースDB1の第1平均背景G値フィールドF19に格納される。
【0112】
<血球画像の表示動作>
図19Aは、血球画像の表示動作における血球画像表示ユニット3cの初期動作の手順を示すフローチャートであり、図19Bは、血球画像の表示動作における画像処理ユニット3bの検体情報送信動作の手順を示すフローチャートである。ユーザは、コンピュータ330の入力部333を操作することにより、血球画像表示プログラム334aの実行を指示する。コンピュータ330のCPU331aは、この指示を受け、血球画像表示プログラム334aを実行する。これにより、コンピュータ330が血球画像表示ユニット3cとして機能する。
【0113】
血球画像表示プログラム334aの起動直後は、ユーザ名及びパスワードの入力を促すログイン入力画面が表示される(図19AにおけるステップS301)。このログイン入力画面においてユーザがユーザ名及びパスワードを入力する(ステップS302)。血球画像表示ユニット3cのCPU331aにより実行される血球画像表示プログラム334aはイベントドリブン型のプログラムであり、CPU331aにおいては、ユーザ名及びパスワードの入力を受け付けるイベントが発生すると、ステップS303の処理が呼び出される。
【0114】
ステップS303において、CPU331aは、ユーザ認証処理を実行する。かかるユーザ認証が失敗した場合には(ステップS304においてNO)、CPU331aは、処理を終了する。上記のログイン処理によるユーザ認証が成功した場合には(ステップS304においてYES)、CPU331aは、通信インタフェース331gに、その日が測定日とされている検体情報の要求データを画像処理ユニット3bへ送信させる(ステップS305)。
【0115】
血球画像表示ユニット3cから送信された要求データは、画像処理ユニット3bの通信インタフェース321hにより受信される(図19BのステップS401)。CPU321aにおいては、前記要求データを受信するイベントが発生すると、ステップS402の処理が呼び出される。
【0116】
ステップS402において、CPU321aは、測定日がその日である検体情報を、検体データベースDB1から取得する(ステップS402)。次に、CPU321aは、通信インタフェース321gに、取得した検体情報を血球画像表示ユニット3cへ送信させ(ステップS403)、処理を終了する。
【0117】
血球画像表示ユニット3cのCPU331aは、検体情報の要求データを送信した後、検体情報の受信を待機する(図19AのステップS306においてNO)。画像処理ユニット3bから送信された検体情報が、血球画像表示ユニット3cの通信インタフェース331gにより受信された場合には(ステップS306においてYES)、測定進捗画面(図示せず)を表示し(ステップS307)、処理を終了する。かかる測定進捗画面では、複数の検体に関する検体情報がリスト表示される。かかる検体情報のリストには、「染色異常」及び「ランプ光量異常」の領域が設けられており、染色異常が検出された検体の染色異常の領域には、染色異常発生を示す印が表示され、ランプ光量異常が検出された検体のランプ光量異常の領域には、ランプ光量異常を示す印が表示される。また、この測定進捗画面においては、ユーザがリスト表示されている検体情報の1つを選択することが可能であり、1つの検体情報を選択した上で所定の操作(例えば、マウスの左ボタンのダブルクリック)を行うことにより、この検体に関する血球画像の表示指示を与えることが可能である。
【0118】
図20Aは、血球画像の表示動作における血球画像表示ユニット3cの画像表示動作の手順を示すフローチャートであり、図20Bは、血球画像の表示動作における画像処理ユニット3bの血球画像送信動作の手順を示すフローチャートである。血球画像表示ユニット3cでは、測定進捗画面が表示されている状態において、上記のように1つの検体に関する血球画像の表示指示を受け付けるイベントが発生すると(ステップS501)、ステップS502の処理が呼び出される。
【0119】
ステップS502において、CPU331aは、通信インタフェース331gに、指示を受けた検体の検体IDを含む血球画像送信要求データを画像処理ユニット3bへ送信させる(ステップS502)。
【0120】
血球画像表示ユニット3cから送信された要求データは、画像処理ユニット3bの通信インタフェース321hにより受信される(図20BのステップS601)。CPU321aにおいては、前記要求データを受信するイベントが発生すると、ステップS602の処理が呼び出される。
【0121】
ステップS602において、CPU321aは、前記検体IDに対応する血球データベースDB2から、分類結果情報を取得する(ステップS602)。この分類結果情報には、白血球を特定する白血球IDと、白血球の分類結果の種類(単球、好中球、好塩基球、好酸球、リンパ球等)と、分類不能か否かを示す情報とが含まれている。また、分類結果情報においては、白血球の種類情報又は分類不能情報に白血球IDが対応付けられている。即ち、分類結果情報は、白血球IDから、その白血球の種類が何であるか、又は、その白血球が分類不能であったかを特定可能な情報とされている。
【0122】
次に、CPU321aは、通信インタフェース321gに、取得した分類結果情報を血球画像表示ユニット3cへ送信させる(ステップS603)。
【0123】
血球画像表示ユニット3cのCPU331aは、分類結果情報の要求データを送信した後、分類結果情報の受信を待機する(図20AのステップS503においてNO)。画像処理ユニット3bから送信された分類結果情報が、血球画像表示ユニット3cの通信インタフェース331gにより受信された場合には(ステップS503においてYES)、例えば、特定の種類の白血球の画像のみを表示する等の表示条件にしたがって、その分類結果情報に含まれる白血球IDから表示すべき血球画像に対応する白血球IDを特定し(ステップS504)、通信インタフェース331gに、特定した白血球IDを含む画像送信要求データを画像処理ユニット3bへ送信させる(ステップS505)。なお、ステップS504においては、1又は複数の白血球IDが特定され、上記画像送信要求データには、特定された全ての白血球IDが含まれる。
【0124】
画像処理ユニット3bのCPU321aは、分類結果情報を送信した後、画像送信要求データの受信を待機する(図20BのステップS604においてNO)。血球画像表示ユニット3cから送信された要求データが、画像処理ユニット3bの通信インタフェース321hにより受信された場合には(ステップS604においてYES)、CPU321aは、ハードディスク321dの血球画像フォルダ325の中の前記検体IDに対応するフォルダから、画像送信要求データに含まれる白血球IDに対応する血球画像(補正後の血球画像)を読み出し(ステップS605)、通信インタフェース321gに、読み出した血球画像を血球画像表示ユニット3cへ送信させ(ステップS606)、処理を終了する。
【0125】
血球画像表示ユニット3cのCPU331aは、画像送信要求データを送信した後、血球画像の受信を待機する(図20AのステップS506においてNO)。画像処理ユニット3bから送信された血球画像が、血球画像表示ユニット3cの通信インタフェース331gにより受信された場合には(ステップS506においてYES)、血球画像レビュー画面を表示し(ステップS507)、処理を終了する。
【0126】
図21は、血球画像レビュー画面の一例を示す図である。血球画像レビュー画面170には、1又は複数の血球画像を表示する血球画像表示領域171と、患者情報を表示する患者情報表示領域172と、分類された血球の種類毎に、計数結果を表示するカウント値表示領域173と、多項目自動血球分析装置による分析結果を表示する分析結果表示領域174とが含まれている。血球画像表示領域には、受信された血球画像を縮小した画像が一覧表示される。各縮小画像には、血球種が文字列(単球は「MONO」、好中球は「SEG」又は「BAND」、好酸球は「EO」、好塩基球は「BASO」、リンパ球は「LYMP」等)で表示される。
【0127】
<画像処理ユニット3bのシャットダウン動作>
次に、標本撮像装置3の画像処理ユニット3bのシャットダウン動作について説明する。
【0128】
図22は、画像処理ユニット3bのシャットダウン動作の流れを示すフローチャートである。画像処理プログラム324aが実行されている間、画像処理ユニット3bの画像表示部322には画像処理プログラム324aの操作画面が表示される。かかる操作画面では、画像処理ユニット3bにシャットダウン指示を与えることができるメニューが設けられている。このメニューが選択される入力部323の操作がユーザにより行われると、シャットダウンの指示が画像処理ユニット3bに与えられる(ステップS701)。CPU321aにおいては、上記のシャットダウンの指示を受け付けるイベントが発生すると、ステップS702の処理が呼び出される。
【0129】
ステップS702において、CPU321aは、画像表示部322に集計ダイアログ(図示せず)を表示する(ステップS702)。この集計ダイアログには、その日の第1平均核G値及び第1平均背景G値をそれぞれ平均した第2平均核G値及び第2平均背景G値の算出を画像処理ユニット3bに指示するための集計ボタンと、第2平均核G値及び第2平均背景G値を算出せずにシャットダウン処理を実行させるキャンセルボタンとが設けられている。集計ボタン及びキャンセルボタンは、入力部323の操作によりそれぞれ選択可能である。CPU321aは、集計ダイアログにおいて、集計ボタンが選択された場合には(ステップS703においてYES)、処理をステップS704へ移し、キャンセルボタンが選択された場合には(ステップS703においてNO)、処理をステップS713へ移す。
【0130】
ステップS704において、CPU321aは、検体データベースDB1および血球データベースDB2を参照し、その日測定された検体のうち、血球種に好中球が含まれ、且つ、血球分析装置4による分析結果が正常であった検体を選択する(ステップS704)。ステップS704の処理では、具体的には、検体データベースDB1の測定日フィールドF15に格納されている日付が現在の日付であり、血球分析装置4により検出される各種の異常情報を格納するためのフィールドF12、F13、F14、…の値が「0(正常)」であり、且つ、血球データベースDB2のフィールドF22に好中球(「SEG」又は「BAND」)が含まれる検体が選択される。
【0131】
次に、CPU321aは、検体データベースDB1から、選択された全ての検体の第1平均核G値及び第1平均背景G値を読み出し(ステップS705)、読み出した全ての第1平均核G値を平均して第2平均核G値を算出し、また、読み出した全ての第1平均背景G値を平均して第2平均背景G値を算出する(ステップS706)。
【0132】
また、CPU321aは、検体データベースDB1及び血球データベースDB2を参照して、その日に測定された検体のうち分類不能であった検体数の、その日に測定された全検体数に対する割合である分類失敗率を求める(ステップS707)。つまり、この処理では、検体データベースDB1の測定日フィールドF15に格納されている日付が現在の日付である全検体数SNと、これらの検体の中で血球データベースDB2の再確認対象フィールドF23の値が「1」である検体数UNとが計数され、検体数UNの全検体数SNに対する百分率(分類失敗率)が算出される。
【0133】
CPU321aは、その日の日付、算出した第2平均核G値及び第2平均背景G値並びに分類失敗率を特徴値履歴データベースDB3に登録する(ステップS708)。
【0134】
また、CPU321aは、特徴値履歴データベースDB3から当月の過去の日付、第2平均核G値、第2平均背景G値、及び分類失敗率を読み出し(ステップS709)、精度管理画面を作成し(ステップS710)、精度管理画面を画像表示部322に表示させる(ステップS711)。図23は、精度管理画面の一例を示す図である。精度管理画面CWには、分類失敗率の経時的な変動を示す第1グラフGR1、第2平均核G値、即ち第1特徴値の経時的な変動を示す第2グラフGR2、及び第2平均背景G値、即ち第2特徴値の経時的な変動を示す第3グラフGR3が含まれている。また、精度管理画面CWには、後述するシャットダウン処理の実行を指示するためのシャットダウン継続ボタンBTが設けられている。
【0135】
図24Aは、第1グラフGR1、第2グラフGR2、及び第3グラフGR3の一例を示す図であり、図24Bは、第1グラフGR1、第2グラフGR2、及び第3グラフGR3の他の例を示す図である。図24Aには、顕微鏡ユニット3aのランプ38の光量が徐々に低下し、12月10日にランプの交換を実施した場合の例が示されており、図24Bには、季節的な外部環境(気温)の変化により塗抹標本作成装置2の染色性が定常的に低下し、12月10日に染色時間の設定を変更した場合の例が示されている。図24A及び図24Bに示すように、第1グラフGR1には当月の各日付に対応する分類失敗率がプロットされ、また分類失敗率の警告レベルを示す破線WL1と、分類失敗率の異常レベルを示す破線AL1とが表示される。また、第2グラフGR2には当月の各日付に対応する第1特徴値がプロットされ、また第1特徴値の警告レベルを示す破線WL2と、第1特徴値の異常レベルを示す破線AL2とが表示される。第3グラフGR3には当月の各日付に対応する第2特徴値がプロットされ、また第2特徴値の警告レベルを示す破線WL3と、第2特徴値の異常レベルを示す破線AL3とが表示される。
【0136】
図24Aの例では、第2特徴値である第2平均背景G値が12月1日〜12月5日の期間において概ね一定の正常レベルを維持しているが、12月6日以降漸減し、12月7日以降は警告レベルを下回っている。これにより、ランプ38の光量が低下しており、12月7日以降はランプ交換の必要があることがわかる。一方、第1特徴値である第2平均核G値は、全期間において概ね一定の正常レベルを維持している。この例の第1グラフGR1では、分類失敗率が12月1日から12月8日までの期間において概ね一定の正常レベルを維持しているが、12月9日には警告レベルである15%を上回っていることがわかる。この分類失敗率の上昇は、この時期に第2特徴値のみが低下し、第1特徴値は低下していないことから、ランプ光量の低下に起因していることが分かる。このように、第2特徴値の経時的な変動が表示されることにより、光量不足が原因となって分類失敗率が異常レベルに達する前に、ユーザはランプの交換を行う時期が到達したことを知ることができる。そこでユーザは12月10日にランプ交換を実施し、これによって同日の第2特徴値及び分類失敗率は回復している。このように、顕微鏡ユニット3aの撮像部の光量の特徴を示す第2特徴値の経時的な変動が表示されることにより、ユーザは容易に顕微鏡ユニット3aの撮像部の精度管理を行うことが可能となる。
【0137】
図24Bの例では、第1特徴値である第2平均核G値が12月1日〜12月7日の期間において概ね一定の正常レベルを維持している。この期間の第1特徴値は、塗抹標本作製装置2の染色性が季節的な環境の影響を受け、正常ではあるが警告レベルに近いレベルとなっていることが分かる。また、第1特徴値は12月8日以降さらに低下し、12月8日以降は警告レベルを下回っている。これにより、12月8日以降は塗抹標本作製装置2の染色状態がさらに悪化しており、塗抹標本作製装置2のメンテナンスの必要があることがわかる。一方、第2特徴値である第2平均背景G値は、全期間において概ね一定の正常レベルを維持している。この例の第1グラフGR1では、12月1日から12月9日までの期間において、分類失敗率が正常範囲内ではあるが警告レベルに近い概ね一定のレベルを維持していることが分かる。この時期に第1特徴値のレベルのみが低く、第2特徴値は高レベルを維持していることから、分類失敗率の警告レベル付近での推移は、染色状態の悪化に起因していることが分かる。このように、第1特徴値の経時的な変動が表示されることにより、染色状態悪化が原因となって分類失敗率が異常レベルに達する前に、ユーザは塗抹標本作製装置2の染色に関する設定を見直す時期が到達したことを知ることができる。そこでユーザは12月10日に染色時間の設定を変更し、これによって同日の第1特徴値が上昇し、分類失敗率が低下している。このように、血液塗抹標本の染色状態の特徴を示す第1特徴値の経時的な変動が表示されることにより、ユーザは容易に塗抹標本作製装置2の精度管理を行うことが可能となる。
【0138】
ユーザは、このような精度管理画面CWが表示されている状態において、シャットダウン継続ボタンBTを選択する操作を行うことにより、画像処理ユニット3bにシャットダウン処理の実行指示を与えることができる。CPU321aは、このようなシャットダウン処理の実行指示の受付を待機し(ステップS712においてNO)、シャットダウン処理の実行指示を受け付けた場合には(ステップS712においてYES)、シャットダウン処理を実行する(ステップS713)。このシャットダウン処理では、精度管理画面CWの表示の終了、画像処理プログラム324aの終了処理等が実行される。かかるシャットダウン処理が完了すると、CPU321aは、処理を終了する。
【0139】
以上のような構成とすることにより、1日の検体処理の作業の終了時など、画像処理ユニット3bがシャットダウンされる際に、確実に精度管理画面CWが表示されることとなる。これにより、ユーザが塗抹標本作製装置2の染色状態及び顕微鏡ユニット3aの撮像部の状態のチェックを忘れることが防止され、検体処理システム1のメンテナンス作業が容易になる。
【0140】
また、精度管理画面CWには、第1特徴値の経時的な変動を示す第2グラフGR2、及び第2特徴値の経時的な変動を示す第3グラフGR3が含まれているため、ユーザは精度管理画面CWを確認するだけで、顕微鏡ユニット3a及び塗抹標本作製装置2の精度管理を行うことができる。
【0141】
(その他の実施の形態)
なお、上述した実施の形態においては、血液塗抹標本を撮像して血球画像を取得する標本撮像装置を備える検体処理システムについて述べたが、これに限定されるものではない。人体から採取した組織を薄くスライスしてスライドガラスに貼り付け、染色液により染色することによって得られた標本を撮像し、細胞像を含む細胞画像を取得する標本撮像装置を備える検体処理システムであってもよい。
【0142】
また、上述した実施の形態においては、標本の染色状態に関する第1特徴値の経時的な変動を示す第2グラフGR2と、撮像に用いられるランプの状態に関する第2特徴値の経時的な変動を示す第3グラフGR3とを含む精度管理画面CWを表示する構成について述べたが、これに限定されるものではない。第2グラフGR2と、第3グラフGR3とを別々の画面で表示する構成としてもよい。また、第1特徴値を算出して第2グラフGR2は表示可能であるが、第2特徴値を算出せず、第3グラフGR3を表示しない構成としてもよいし、反対に第2特徴値を算出して第3グラフGR3は表示可能であるが、第1特徴値を算出せず、第2グラフGR2を表示しない構成としてもよい。
【0143】
また、上述した実施の形態においては、塗抹標本ごとに、標本の染色異常と、撮像に用いられるランプの光量異常とのそれぞれを検出可能な構成について述べたが、これに限定されるものではない。標本の染色異常及びランプの光量異常を検出しない構成としてもよい。また、標本の染色異常を検出可能であるが、ランプ光量異常を検出することができない構成としてもよいし、ランプ光量異常を検出可能であるが、標本の染色異常を検出することができない構成としてもよい。
【0144】
また、上述した実施の形態においては、血球画像の核の領域のG値に関する第2平均核G値を血球画像の核領域の特徴を表す第1特徴値として用いて、この第1特徴値の変動を示す第2グラフGR2を表示する構成について述べたが、これに限定されるものではない。第2平均核G値ではなく、血球画像の核の領域のB値又はR値を検体毎に平均した値(第1平均核B値又は第1平均核R値)を求め、1日の間に処理された複数の検体についての第1平均核B値又は第1平均核R値を平均した値(第2平均核B値又は第2平均核R値)を算出し、第2平均核B値又は第2平均核R値を第1特徴値として用いて、第1特徴値の変動を示すグラフを表示する構成としてもよい。
【0145】
また、上述した実施の形態においては、血球画像の背景の領域のG値に関する第2平均背景G値を血球画像の背景領域の特徴を表す第2特徴値として用いて、この第2特徴値の変動を示す第3グラフGR3を表示する構成について述べたが、これに限定されるものではない。第2平均背景G値ではなく、血球画像の背景の領域のB値又はR値を検体毎に平均した値(第1平均背景B値又は第1平均背景R値)を求め、1日の間に処理された複数の検体についての第1平均背景B値又は第1平均背景R値を平均した値(第2平均背景B値又は第2平均背景R値)を算出し、第2平均背景B値又は第2平均背景R値を第2特徴値として用いて、第2特徴値の変動を示すグラフを表示する構成としてもよい。
【0146】
また、上述した実施の形態においては、血球分析装置4の分析の結果、正常であった検体の血球画像を用いて、第1特徴値及び第2特徴値を求める構成について述べたが、これに限定されるものではない。異常検体と正常検体とでは、血球の核の状態が異なっている場合があるため、血球画像の核の領域を用いて求められる第1特徴値については、血球分析装置4の分析結果が正常であった検体の血球画像を用いて算出することとし、異常検体と正常検体とで差が生じないと考えられる血球画像の背景領域を用いて求められる第2特徴値については、血液塗抹標本が作製された全検体の血球画像を用いて算出することとしてもよい。また、血球分析装置4により検出される全ての異常の内、血球の核の色に影響が表れる異常が検出された検体以外の検体の血球画像を用いて、第1特徴値、又は第1特徴値及び第2特徴値の両方を算出する構成としてもよい。
【0147】
また、上述した実施の形態においては、好中球の血球画像を用いて、第1特徴値及び第2特徴値を求める構成について述べたが、これに限定されるものではない。好中球ではなく、単球、好酸球、好塩基球、リンパ球等の他の種類の白血球の血球画像を用いて、第1特徴値及び第2特徴値を求める構成としてもよい。ただし、健常者の血液中に含まれる白血球の中では好中球が最も数が多いため、好中球の血球画像を用いることで、正確に染色状態及び撮像部の状態をそれぞれ反映した第1特徴値及び第2特徴値を得ることが可能となる。また、赤血球全体が染色液により染色されることから、血球画像の赤血球領域を用いて、当該血球画像の赤血球領域の特徴を表し、また赤血球の染色状態の特徴を表す第1特徴値を算出する構成とすることもできる。また、特定の血球種に係る血球画像ではなく、全ての血球種の血球画像を用いて第1特徴値及び第2特徴値を算出する構成としてもよい。
【0148】
また、上述した実施の形態においては、通常検体(被験者から採取された検体)の塗抹標本を複数用いて、第1特徴値及び第2特徴値を算出する構成について述べたが、これに限定されるものではない。所定の染色が施されたときにおける核G値及び背景G値が既知の標準検体から塗抹標本を作製し、この塗抹標本を撮像して複数の血球画像を得、複数の血球画像の核G値及び背景G値をそれぞれ平均して第1核G値及び第1背景G値を求め、第1核G値を第1特徴値とし、第1背景G値を第2特徴値とする構成としてもよい。
【0149】
また、上述した実施の形態においては、コンピュータが画像処理プログラムを実行することにより、画像処理ユニット3bとして機能して、塗抹票本の染色状態に関する第1特徴値及びランプの状態に関する第2特徴値を算出し、第1特徴値の経時的変動及び第2特徴値の経時的変動を表示する構成について述べたが、これに限定されるものではない。画像処理プログラムと同様の処理を実行することが可能なFPGA又はASIC等の専用ハードウェアにより、第1特徴値及び第2特徴値を算出し、第1特徴値の経時的変動及び第2特徴値の経時的変動を表示する処理を実行する構成としてもよい。
【0150】
また、上述した実施の形態においては、画像処理ユニット3bによって、第1特徴値の変動及び第2特徴値の変動を表示する構成について述べたが、これに限定されるものではない。画像処理ユニット3bとは独立して設けられた血球画像表示ユニット3cによって、第1特徴値の変動及び第2特徴値の変動を表示する構成としてもよい。また、画像処理ユニット3bの機能と血球画像表示ユニット3cの機能とを併せて具備する1つの装置によって、第1特徴値の変動及び第2特徴値の変動を表示する構成としてもよい。
【0151】
また、上述した実施の形態においては、画像処理ユニット3bのシャットダウン時に、第1特徴値の変動及び第2特徴値の変動を表示する構成について述べたが、これに限定されるものではない。画像処理ユニット3bの起動時に第1特徴値の変動及び第2特徴値の変動を表示する構成としてもよい。これにより、ユーザは、毎日画像処理ユニット3bを起動する際に、精度管理画面を確認することができ、ユーザが塗抹標本作製装置2の染色状態及び顕微鏡ユニット3aの撮像部の状態のチェックを忘れることが防止され、検体処理システム1のメンテナンス作業が容易になる。また、画像処理ユニット3bを、ユーザからの精度管理画面の表示指示を受付可能な構成とし、ユーザから精度管理画面の表示指示が与えられたときに、第1特徴値及び第2特徴値を算出し、精度管理画面を表示する構成としてもよい。
【0152】
また、少なくとも画像処理ユニット3bのシャットダウンが実行される前に、第1特徴値の変動及び第2特徴値の変動が表示されればよい。つまり、画像処理ユニット3b単独のシャットダウンではなく、標本撮像装置3全体のシャットダウンの指示が与えられたときに第1特徴値の変動及び第2特徴値の変動を表示する構成としてもよいし、検体処理システム1全体のシャットダウンの指示が与えられたときに第1特徴値の変動及び第2特徴値の変動を表示する構成としてもよい。
【0153】
また、上述した実施の形態においては、画像処理ユニット3bにシャットダウン指示が与えられた後に、CPU321aが、当日の第1平均核G値および第1平均背景G値をそれぞれ平均して第2平均核G値および第2平均背景G値を算出し、精度管理画面CWを画像表示部322に表示する構成について述べたが、これに限定されるものではない。画像処理ユニット3bにシャットダウン指示が与えられる前に、CPU321aが、その時点において得られている当日の第1平均核G値および第1平均背景G値をそれぞれ平均して第2平均核G値および第2平均背景G値を逐次算出しておき、シャットダウン指示が与えられた場合には、最後に算出された第2平均核G値および第2平均背景G値を用いて作成された精度管理画面CWを画像表示部322に表示する構成としてもよい。
【0154】
また、上述した実施の形態においては、単一のコンピュータ320により画像処理プログラム324aの全ての処理を実行する構成について述べたが、これに限定されるものではなく、上述した画像処理プログラム324aと同様の処理を、複数の装置(コンピュータ)により分散して実行する分散システムとすることも可能である。
【0155】
また、上述した実施の形態においては、単一のコンピュータ330により血球画像表示プログラム334aの全ての処理を実行する構成について述べたが、これに限定されるものではなく、上述した血球画像表示プログラム334aと同様の処理を、複数の装置(コンピュータ)により分散して実行する分散システムとすることも可能である。
【0156】
また、上述した実施の形態においては、塗抹標本作製装置2と標本撮像装置3とが別体として構成されているが、これに限定されるものではなく、1つの装置が、塗抹標本作製装置2の機能と標本撮像装置3の機能とを併せて具備してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0157】
本発明の検体処理システム、細胞画像分類装置、及び検体処理方法は、標本を撮像し、撮像することにより得られた細胞画像に基づいて、細胞を分類する検体処理システム、細胞画像分類装置、及び検体処理方法として有用である。
【符号の説明】
【0158】
1 検体処理システム
2 塗抹標本作製装置
3 標本撮像装置
3a 顕微鏡ユニット
313 CCDカメラ
314 白血球検出部
316 制御部
317,318 通信インタフェース
3b 画像処理ユニット
320 コンピュータ
321a CPU
321b ROM
321c RAM
321d ハードディスク
321g,321h,321i 通信インタフェース
322 画像表示部
324a 画像処理プログラム
325 血球画像フォルダ
3c 血球画像表示ユニット
330 コンピュータ
331 本体
331a CPU
331b ROM
331c RAM
331d ハードディスク
331g 通信インタフェース
331h 画像出力インタフェース
332 画像表示部
334a 血球画像表示プログラム
4 血球分析装置
5 検体搬送装置
6 標本搬送装置
CW 精度管理画面
DB1 検体データベース
DB2 血球データベース
DB3 特徴値履歴データベース
GR1 第1グラフ
GR2 第2グラフ
GR3 第3グラフ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞を含む検体から、細胞を含む塗抹標本を作製する塗抹標本作製部と、
前記塗抹標本作製部により作製された塗抹標本を撮像し、前記塗抹標本に含まれる細胞に関する細胞画像を取得する撮像部と、
前記細胞画像に基づいて、前記細胞の分類を行う細胞分類手段と、
前記細胞画像に基づいて、前記細胞画像の所定の特徴を反映した特徴値を取得する特徴値取得手段と、
前記特徴値取得手段によって取得された前記特徴値の変動を示す画面を出力する出力手段と、
を備える、検体処理システム。
【請求項2】
前記出力手段は、前記特徴値と、前記特徴値の異常に関する指標とを比較可能に示す前記画面を出力するように構成されている、請求項1に記載の検体処理システム。
【請求項3】
前記出力手段は、前記特徴値の1日毎の変動を時系列に示す前記画面を出力するように構成されている、請求項1又は2に記載の検体処理システム。
【請求項4】
前記撮像部は、所定の色成分の輝度を含む細胞画像を取得するように構成されており、
前記特徴値取得手段は、前記特徴値として、前記細胞画像の前記所定の色成分の輝度に関する情報を取得するように構成されている、請求項1乃至3の何れかに記載の検体処理システム。
【請求項5】
前記塗抹標本作製部は、前記塗抹標本に含まれる細胞を染色する染色部を具備し、
前記特徴値取得手段は、前記細胞画像における細胞部分の画像に基づいて、前記染色部の状態を反映した第1特徴値を取得し、前記細胞画像における細胞以外の部分の画像に基づいて、前記撮像部の状態を反映した第2特徴値を取得するように構成されており、
前記出力手段は、前記第1特徴値及び前記第2特徴値の変動を示す前記画面を出力するように構成されている、請求項1乃至4の何れかに記載の検体処理システム。
【請求項6】
前記撮像部により取得された細胞画像の輝度を補正する補正手段をさらに備え、
前記特徴値取得手段は、前記補正手段により補正された前記細胞画像における細胞部分の画像に基づいて、前記染色部の状態を反映した第1特徴値を取得するように構成されている、請求項5に記載の検体処理システム。
【請求項7】
前記撮像部は光源を有し、
前記特徴値取得手段は、前記光源の光量を反映した前記第2特徴値を取得するように構成されている、請求項5又は6に記載の検体処理システム。
【請求項8】
前記特徴値取得手段は、所定期間内に前記撮像部により取得された複数の細胞画像の各々に基づいて、各細胞画像の前記所定の特徴をそれぞれ反映した複数の数値を取得し、取得された前記複数の数値に基づいて、前記特徴値を取得するように構成されている、請求項1乃至7の何れかに記載の検体処理システム。
【請求項9】
前記特徴値取得手段は、前記複数の数値を平均することにより、前記特徴値を取得するように構成されている、請求項8に記載の検体処理システム。
【請求項10】
前記特徴値取得手段は、前記所定期間内に前記撮像部に撮像された複数の塗抹標本のうち所定の条件に合致する塗抹標本から取得された複数の細胞画像の各々に基づいて、前記複数の数値を取得するように構成されている、請求項8又は9に記載の検体処理システム。
【請求項11】
シャットダウンの指示を受け付けるシャットダウン指示受付手段をさらに備え、
前記出力手段は、前記シャットダウン指示受付手段がシャットダウンの指示を受け付けたときに、前記画面を出力するように構成されている、請求項1乃至10の何れかに記載の検体処理システム。
【請求項12】
前記特徴値取得手段は、所定の標準試料が塗抹された塗抹標本に含まれる細胞に関する標準細胞画像に基づいて、前記標準細胞画像の所定の特徴を反映した特徴値を取得するように構成されており、
前記出力手段は、前記特徴値取得手段が前記標準細胞画像に基づいて取得した前記特徴値の変動を示す画面を出力するように構成されている、請求項1乃至11の何れかに記載の検体処理システム。
【請求項13】
塗抹標本毎に、前記特徴値と、所定の基準値とを比較することにより、前記特徴値の異常を検出する異常検出手段と、
前記異常検出手段により前記特徴値の異常が検出されたときに、前記特徴値の異常に関する情報を出力する異常情報出力手段と、
をさらに備える、請求項1乃至12の何れかに記載の検体処理システム。
【請求項14】
検体を分析する検体分析部と、
前記検体分析部によって分析された検体を、前記塗抹標本作製部へと搬送する検体搬送部と、
をさらに備え、
前記塗抹標本作製部は、前記検体搬送部によって搬送された検体から、塗抹標本を作製するように構成されている、請求項1乃至13の何れかに記載の検体処理システム。
【請求項15】
前記塗抹標本作製部は、塗抹標本作製装置に設けられ、
前記撮像部、前記細胞分類手段、前記特徴値取得手段及び前記出力手段は、細胞画像分類装置に設けられている、請求項1乃至14の何れかに記載の検体処理システム。
【請求項16】
細胞を含む塗抹標本を撮像し、前記塗抹標本に含まれる細胞に関する細胞画像を取得する撮像部と、
前記細胞画像に基づいて、前記細胞の分類を行う細胞分類手段と、
前記細胞画像に基づいて、前記細胞画像の所定の特徴を反映した特徴値を取得する特徴値取得手段と、
前記特徴値取得手段によって取得された前記特徴値の変動を示す画面を出力する出力手段と、
を備える、細胞画像分類装置。
【請求項17】
細胞を含む検体から、細胞を含む塗抹標本を作製するステップと、
前記塗抹標本を撮像し、前記塗抹標本に含まれる細胞に関する細胞画像を取得するステップと、
前記細胞画像に基づいて、前記細胞の分類を行うステップと、
前記細胞画像に基づいて、前記細胞画像の所定の特徴を反映した特徴値を取得するステップと、
取得された前記特徴値の変動を示す画面を出力するステップと、
を有する、検体処理方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13A】
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【図13B】
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【図14】
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【図15A】
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【図15B】
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【図19A】
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【図19B】
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【図20A】
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【図20B】
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【図22】
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【図23】
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【図24A】
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【図24B】
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【図16A】
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【図16B】
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【図17A】
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【図17B】
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【図18A】
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【図18B】
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【図21】
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【公開番号】特開2010−169484(P2010−169484A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−11303(P2009−11303)
【出願日】平成21年1月21日(2009.1.21)
【出願人】(390014960)シスメックス株式会社 (810)
【Fターム(参考)】