説明

検体分析装置、検体識別情報取得方法および検体識別情報取得装置

【課題】古いバーコードの一部が外部に露出する場合にも、最も上に貼り付けられたバーコードに基づく識別情報を適正に取得することができる検体分析装置、検体識別情報取得方法および検体識別情報取得装置を提供する。
【解決手段】検体容器に貼付されたバーコードラベルの検体IDは、検体容器が1回転される間に、バーコードリーダにより複数回読み取られる。読取結果が5以上であり(S203:NO)、且つ、大勢を占める検体IDの数が、読取結果の総数に対して所定比率R以上であるとき(S207:YES)、大勢を占める検体IDをこの検体容器の検体IDとする(S209)。これにより、検体容器にバーコードラベルが重ねて貼られている場合でも、得られた複数の検体IDから、真値として採用すべき検体IDが適正に判定されるため、最終的に得られる検体IDの精度が高められ得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体容器に収容された検体を分析する検体分析装置、並びに、検体容器に貼付されたバーコードを読み取って検体容器に収容された検体の識別情報を取得する検体識別情報取得方法および検体識別情報取得装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、血液や尿等の臨床検体を処理するための検体分析装置が、医療施設において用いられている。この種の検体分析装置には、検体容器に貼付されたバーコードを読み取って、検体容器に収容された検体の識別情報を取得するための構成が設けられている。
【0003】
特許文献1に記載の血液自動分析装置では、検体容器を回転させながら、検体に貼付されたバーコードが読み取られる。ここでは、読み取り開始の後、連続して3回一致するバーコード情報が得られると、このバーコード情報に基づいて、検体の識別情報が取得される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−89902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
検体容器は、ある医療施設から他の医療施設に移されることがある。この場合、検体の識別情報は、移送後の医療施設において新たに割り当てられる。新たに割り当てられた識別情報に基づいて新たなバーコードが発行され、検体容器に貼り付けられる。このとき、移送前の医療施設で貼り付けられたバーコードの上に、新たなバーコードが重ねて貼り付けられることとなる。新たなバーコードの貼り付け時に新たなバーコードと古いバーコードにずれが生じると、古いバーコードの一部が外部に露出してしまう。
【0006】
この場合、上記特許文献1の装置では、古いバーコードから読み取りが始まると、古いバーコードに基づくバーコード情報が連続して3回読み取られ、このバーコード情報に基づいて、誤った識別情報が取得されることが起こり得る。
【0007】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、古いバーコードの一部が外部に露出する場合にも、最も上に貼り付けられたバーコードに基づく識別情報を適正に取得することができる検体分析装置、検体識別情報取得方法および検体識別情報取得装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様は、検体分析装置に関する。本態様に係る検体分析装置は、検体容器に収容された検体を測定する測定ユニットと、前記検体容器の側面に光を照射して、前記検体容器に貼付されたバーコードを読み取る読取部と、前記読取部による読取位置が前記検体容器の周方向に変化するよう前記検体容器を前記読取部に対して相対的に回転させる回転部と、前記回転部を動作させつつ、予め決められた回転角度の全ての範囲に亘って、前記読取部に前記バーコードを繰り返し読み取らせ、前記回転角度の全範囲において前記読取部が前記バーコードを読み取ることにより得られたバーコード情報に基づいて、当該検体容器に収容された前記検体の識別情報を取得する制御部と、を備える。
【0009】
第1の態様に係る検体分析装置によれば、予め決められた回転角度の全ての範囲において読み取られたバーコード情報に基づいて、当該検体容器に収容された前記検体の識別情報が取得されるため、二重にバーコードが貼られた検体容器であっても、下側から露出した古いバーコードのみならず、上側に貼られた新しいバーコードをも読み取って、識別情報が取得される。よって、下側から露出した古いバーコードだけの読み取りから誤った識別情報が取得されるのを回避することができ、正確な識別情報の取得が可能となる。
【0010】
第1の態様に係る検体分析装置において、前記制御部は、前記検体容器が少なくとも一回転する間の全ての範囲に亘って、前記読取部に前記バーコードを繰り返し読み取らせるよう構成され得る。この構成によれば、どのようにバーコードが貼付されていても、必ず新しいバーコードが広い面積において読み取られるため、取得された識別情報の精度を高めることができる。
【0011】
なお、検体容器の全周の長さとバーコードの周方向の長さとの関係から、必ずしも全周に亘って読み取りが行われずとも、新しいバーコードが広い面積において読み取られ得る場合もある。このような場合、前記制御部は、前記検体容器が少なくとも半回転する間の全ての範囲に亘って、前記読取部に前記バーコードを繰り返し読み取らせる。あるいは、前記制御部は、前記検体容器が少なくとも3/4回転する間の全ての範囲に亘って、前記読取部に前記バーコードを繰り返し読み取らせる。このように構成すると、無駄な読み取り動作を抑えることができる。
【0012】
第1の態様に係る検体分析装置において、前記制御部は、前記予め決められた回転角度の全範囲における前記読取部による前記バーコードの読取に要する所定の時間が経過したとき、前記回転部の動作を停止させるとともに、前記読取部による前記バーコードの読取を停止させるよう制御する構成とされ得る。この構成によれば、予め決められた回転角度の全範囲におけるバーコードの読取が終了したことを検知するために検体容器の回転量を検出する機構を設けたりする必要がなく、構成が簡素化できる。
【0013】
第1の態様に係る検体分析装置において、前記制御部は、前記回転角度の全範囲において前記読取部が前記バーコードを読み取ることにより得られた複数のバーコード情報のうち、所定の比率を占めるバーコード情報に基づいて、当該検体容器に収容されている検体の前記識別情報を取得するよう構成され得る。このように、所定の比率を占めるバーコード情報に基づいて検体の識別情報を取得することにより、検体容器表面において占有面積の大きいバーコード、すなわち、新たなバーコードに基づいて識別情報を取得できる可能性が高まる。
【0014】
この場合、前記制御部は、前記回転角度の全範囲において前記読取部が前記バーコードを読み取ることにより得られたバーコード情報の数が第1の閾値に満たない場合、前記識別情報の取得を行わないよう構成され得る。こうすると、読取結果の数が少なく、バーコードの読取が適正に行われなかった可能性があるような場合に、誤った識別情報の取得が回避され得る。
【0015】
さらにこの場合、前記制御部は、前記回転角度の全範囲において前記読取部が前記バーコードを読み取ることにより得られたバーコード情報の数が前記第1の閾値以上で第2の閾値以下の場合、前記所定の比率を占めるバーコード情報に基づく前記識別情報の取得に替えて、前記複数のバーコード情報のうち連続して同じ値が続く前記バーコード情報に基づいて、前記識別情報を取得するよう構成され得る。こうすると、読取結果の数が少なく、どのバーコード情報が大勢を占めているかの信憑性が低いような場合にも、連続して同じ値が続く前記バーコード情報に基づいて前記識別情報を取得することにより、より真値である可能性が高い識別情報の取得が可能となる。
【0016】
第1の態様に係る検体分析装置おいて、前記制御部は、前記回転角度の全範囲において前記読取部が前記バーコードを読み取ることにより得られたバーコード情報に基づいて前記識別情報が取得できなかったとき、前記回転部による前記検体容器の回転と、前記読取部による前記バーコードの読取を、再度実行するよう構成され得る。この構成によれば、バーコードの読取を再度実行することにより、適正な識別情報の取得が期待できる。
【0017】
この場合、前記制御部は、前記バーコードの読取の再実行を、通常の読み取り時に対して前記検体容器の回転を逆にして行うよう構成され得る。こうすると、通常の読み取り時に、たとえば、バーコードの一部が剥がれて検体容器の回転に支障が生じたために読み取りが適正に行えなかったような場合でも、読み取りの再実行時に検体容器の回転を逆にすることで、検体容器が滑らかに回転されて、バーコードの読み取りが円滑に行われることがあり得る。よって、読み取りの再実行時に、適正にバーコードを読み取れる可能性を高めることができる。
【0018】
本発明の第2の態様は、検体分析装置に関する。本態様に係る検体分析装置は、検体容器に収容された検体を測定する測定ユニットと、前記検体容器の側面に光を照射して、前記検体容器に貼付されたバーコードを読み取る読取部と、前記読取部による読取位置が前記検体容器の周方向に変化するよう前記検体容器を前記読取部に対して相対的に回転させる回転部と、前記読取部に前記バーコードを読み取らせる読取処理を繰り返し実行するとともに、前記回転部を動作させる回転処理を、前記読取処理によって得られるバーコード情報にかかわらず前記検体容器が予め決められた角度回転するまで実行し、前記読取処理によって得られたバーコード情報に基づいて、当該検体容器に収容された前記検体の識別情報を取得する制御部と、を備える。
【0019】
第2の態様に係る検体分析装置によれば、上記第1の態様と同様、下側から露出した古いバーコードだけの読み取りから誤った識別情報が取得されるのを回避することができ、正確な識別情報を取得することができる。
【0020】
本発明の第3の態様は、検体識別情報取得方法に関する。本態様に係る検体識別情報取得方法は、検体容器を回転させつつ、予め決められた回転角度の全ての範囲に亘って、前記検体容器に貼付されたバーコードを繰り返し読み取り、前記回転角度の全範囲において前記バーコードを読み取ることにより得られたバーコード情報に基づいて、当該検体容器に収容された検体の識別情報を取得する。
【0021】
第3の態様に係る検体識別情報取得方法によれば、上記第1の態様と同様、下側から露出した古いバーコードだけの読み取りから誤った識別情報が取得されるのを回避することができ、正確な識別情報を取得することができる。
【0022】
本発明の第4の態様は、検体識別情報取得装置に関する。本態様に係る検体識別情報取得装置は、検体容器の側面に光を照射して前記検体容器に貼付されたバーコードを読み取る読取部と、前記読取部による読取位置が前記検体容器の周方向に変化するよう前記検体容器を前記読取部に対して相対的に回転させる回転部と、前記回転部を動作させつつ、予め決められた回転角度の全ての範囲に亘って、前記読取部に前記バーコードを繰り返し読み取らせ、前記回転角度の全範囲において前記読取部が前記バーコードを読み取ることにより得られたバーコード情報に基づいて、当該検体容器に収容された検体の識別情報を取得する。
【0023】
第4の態様に係る検体識別情報取得装置によれば、上記第1の態様と同様、下側から露出した古いバーコードだけの読み取りから誤った識別情報が取得されるのを回避すること
ができ、正確な識別情報を取得することができる。
【発明の効果】
【0024】
以上のとおり、本発明によれば、古いバーコードの一部が外部に露出する場合にも、最も上に貼り付けられたバーコードに基づく識別情報を適正に取得することができる検体分析装置、検体識別情報取得方法および検体識別情報取得装置を提供することができる。
【0025】
本発明の効果ないし意義は、以下に示す実施の形態の説明により更に明らかとなろう。ただし、以下に示す実施の形態は、あくまでも、本発明を実施化する際の一つの例示であって、本発明は、以下の実施の形態により何ら制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】実施の形態に係る検体分析システムの構成を模式的に示す平面図である。
【図2】実施の形態に係る検体容器と検体ラックの構成を示す図である。
【図3】実施の形態に係る測定ユニットの構成を模式的に示す平面図である。
【図4】実施の形態に係るバーコードユニットの構成を模式的に示す平面図である。
【図5】実施の形態に係るバーコードユニットの詳細な構成を示す図である。
【図6】実施の形態に係る検体送出ユニットおよび搬送コントローラの機能構成を示す図である。
【図7】実施の形態に係る検体搬送ユニット、測定ユニットおよび情報処理ユニットの機能構成を示す図である。
【図8】実施の形態に係る検体搬送ユニットおよび塗沫標本作製装置の機能構成を示す図である。
【図9】検体容器に貼付された古いバーコードラベルの上に別の新しいバーコードラベルが貼付されている状態および検体容器に貼付されたバーコードラベルが傾いている状態を示す図である。
【図10】実施の形態に係る検体容器の検体IDを決定する処理を示すフローチャートである。
【図11】実施の形態に係るバーコード読み取りの処理およびタイムアウトカウントの処理を示すフローチャートである。
【図12】実施の形態に係る読み取り結果の判定の処理を示すフローチャートである。
【図13】実施の形態に係る読取結果の例、最終データおよび最終判定を示す図である。
【図14】実施の形態に係る検体容器Tの外周に対するバーコード範囲が占める割合と、バーコードリーダの読み取り範囲が占める割合とを模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本実施の形態は、血液に関する検査および分析を行うための検体分析システムに本発明を適用したものである。本実施の形態に係る検体分析システムは、3つの測定ユニットと、1つの塗沫標本作製装置を備えている。3つの測定ユニットでは、血液分析が並行して行われ、その分析結果に基づき塗沫標本の作製が必要である場合に、塗沫標本作製装置により塗沫標本が作製される。
【0028】
以下、本実施の形態に係る検体分析システムについて、図面を参照して説明する。
【0029】
図1は、検体分析システム1を上側から見た場合の構成を模式的に示す平面図である。本実施の形態に係る検体分析システム1は、検体回収ユニット21と、検体投入ユニット22と、検体送出ユニット23と、3つの検体搬送ユニット3と、血球分析装置4と、検体搬送ユニット5と、塗沫標本作製装置6と、搬送コントローラ7から構成されている。
また、本実施の形態の検体分析システム1は、通信ネットワークを介してホストコンピュータ8と通信可能に接続されている。
【0030】
検体回収ユニット21と、検体投入ユニット22と、検体送出ユニット23は、それぞれ、複数の検体ラックが載置可能となるよう構成されている。
【0031】
図2は、検体容器Tと検体ラックLの構成を示す図である。同図(a)は、検体容器Tの外観を示す斜視図であり、同図(b)は、検体ラックLの正面図である。
【0032】
同図(a)を参照して、検体容器Tは、透光性を有するガラスまたは合成樹脂により構成された管状容器であり、上端が開口している。検体容器Tの側面には、バーコードラベルBL1が貼付されている。バーコードラベルBL1には、検体IDを示すバーコードが印刷されている。検体容器Tの内部には患者から採取された血液検体が収容され、上端の開口は蓋部CPにより密封されている。蓋部CPには、ピペットが貫通するように上下方向に孔が形成されている。
【0033】
同図(b)を参照して、検体ラックLには、10本の検体容器Tを垂直状態(立位状態)で並べて保持することが可能となるよう10個の保持部が形成されている。また、検体ラックLを検体投入ユニット22にセットするときの奥側の面(Y軸負方向側の面)には、図示の如く、バーコードラベルBL2が貼付されている。バーコードラベルBL2には、ラックIDを示すバーコードが印刷されている。
【0034】
図1に戻って、検体回収ユニット21は、分析が終了した検体ラックLを収容する。検体投入ユニット22は、ユーザが投入した検体ラックLを収容し、収容している検体ラックLを、最奥位置(Y軸負方向側の端)から検体送出ユニット23に向けて左方向(X軸正方向)に送出する。また、検体回収ユニット21と検体投入ユニット22は、搬送コントローラ7と通信可能に接続されている。
【0035】
検体送出ユニット23は、図示の如く、最奥位置の左側に設置されたセンサ23aと、最奥に設置されたバーコードユニットBと、を備えている。センサ23aは、検体投入ユニット22から送出され、検体送出ユニット23の最奥に位置付けられた検体ラックLを検出する。バーコードユニットBは、最奥に位置付けられた検体ラックLのラックIDと、この検体ラックLに保持されている検体容器Tの検体IDを読み取る。
【0036】
また、検体送出ユニット23は、バーコードの読み取りが完了した検体ラックLを検体搬送ユニット3に送出する。さらに、検体送出ユニット23は、搬送コントローラ7と通信可能に接続されており、検体送出ユニット23によって読み取られたラックIDと検体IDは、搬送コントローラ7に送信される。なお、バーコードユニットBの構成については、追って図4を参照して説明する。
【0037】
3つの検体搬送ユニット3は、図示の如く、それぞれ、3つの測定ユニット41の前方(Y軸正方向側)に配置されている。隣り合う2つの検体搬送ユニット3は、検体ラックLの受け渡しが可能となるよう互いに接続されている。右側(X軸負方向側)の検体搬送ユニット3の右端は、検体ラックLの受け渡しが可能となるよう検体送出ユニット23に接続されており、左側(X軸正方向側)の検体搬送ユニット3の左端は、検体ラックLの受け渡しが可能となるよう検体搬送ユニット5に接続されている。また、3つの検体搬送ユニット3は、それぞれ、情報処理ユニット42と搬送コントローラ7に通信可能に接続されている。
【0038】
これら3つの検体搬送ユニット3には、図示の如く、それぞれに対応する測定ユニット
41において検体の測定が行われる場合と行われない場合とに分けて、検体ラックLを搬送するための2通りの搬送ラインL1、L2が設定されている。すなわち、測定ユニット41で検体の測定が行われる場合は、後方のコの字型の矢印で示された搬送ラインL1に沿って検体ラックLが搬送される。測定ユニット41で検体の測定が行われない場合は、当該測定ユニット41をスキップするよう、中段の左向きの矢印で示された搬送ラインL2に沿って検体ラックLが搬送される。
【0039】
さらに、3つの検体搬送ユニット3には、図示の如く、検体ラックLを検体回収ユニット21に搬送するための搬送ラインL3が設定されている。すなわち、測定済み、あるいは、塗沫標本作製済みの検体ラックLは、前方(Y軸正方向側)の右向き(X軸負方向)の矢印で示された搬送ラインL3に沿って搬送され、検体回収ユニット21に回収される。
【0040】
血球分析装置4は、光学式フローサイトメトリー方式の多項目血球分析装置であり、3つの測定ユニット41と、情報処理ユニット42を備えている。3つの測定ユニット41は、それぞれバーコードユニットCを備えており、検体容器Tに収容されている血液検体を測定する。情報処理ユニット42は、3つの測定ユニット41と通信可能に接続されており、3つの測定ユニット41の動作を制御する。また、情報処理ユニット42は、3つの検体搬送ユニット3にも通信可能に接続されている。
【0041】
ここで、図3を参照して、測定ユニット41における測定動作について説明する。
【0042】
図3は、測定ユニット41を上側から見た場合の構成を模式的に示す平面図である。まず、検体容器搬送部411の前端に設置されたハンド部411aが、搬送ラインL1上の所定の位置において検体ラックLに保持された検体容器Tを把持し、上方向(Z軸正方向)に抜き出す。抜き出された検体容器Tは、ハンド部411aにより攪拌された後、検体容器セット部411bにセットされる。
【0043】
検体容器セット部411bは、搬送機構部411cによりY軸方向に移動可能となるよう構成されている。搬送機構部411cは、図示しないベルトと、2つのプーリと、ステッピングモータを含んでいる。
【0044】
検体容器セット部411bにセットされた検体容器Tは、検体容器セット部411bが後方(Y軸負方向)に移動されることにより、バーコードユニットCの正面(X軸負方向)に位置付けられる。この状態で、バーコードユニットCにより、検体容器Tの検体IDが読み取られる。かかる検体IDは情報処理ユニット42に送信される。なお、バーコードユニットCの構成については、追って図4を参照して説明する。
【0045】
なお、情報処理ユニット42では、受信した検体IDに基づいてホストコンピュータ8へ測定オーダの問い合わせが行われる。かかる問い合わせの結果に基づいて、情報処理ユニット42により、検体容器Tに収容されている検体の測定が指示される。
【0046】
次に、検体容器Tは、検体容器セット部411bが後方に移動されることにより、検体吸引部412の真下(Z軸負方向側)に位置付けられる。検体吸引部412は、検体吸引部412の真下に位置付けられている検体容器T内の検体を吸引する。その後、検体容器Tは元の経路に沿って戻されて、元の検体ラックLの保持位置に戻される。
【0047】
試料調製部413は、複数の反応チャンバ(図示せず)を備えている。試料調製部413は、反応チャンバ内で、検体吸引部412により吸引された検体と、試薬とを混合攪拌し、測定用の試料を調製する。検出部414は、試薬調製部413により調製された試料
を測定する。かかる測定により得られた測定データは、情報処理ユニット42により分析処理が行われる。
【0048】
図1に戻って、検体搬送ユニット5は、塗沫標本作製装置6の前方(Y軸正方向側)に配置されている。検体搬送ユニット5には、検体搬送ユニット3と同様、搬送ラインL1、L2、L3が設定されている。また、検体搬送ユニット5は、搬送コントローラ7と通信可能に接続されている。さらに、検体搬送ユニット5は、塗沫標本作製装置6と接続されており、検体搬送ユニット5からの指示に応じて、塗沫標本作製装置6が駆動される。
【0049】
また、検体搬送ユニット5は、搬送ラインL1の近傍にバーコードユニットDを備えている。バーコードユニットDは、バーコードユニットDの正面に位置付けられた検体ラックLのラックIDと、検体ラックLの保持部に対応付けられた検体容器Tの検体IDを読み取る。なお、バーコードユニットDの構成については、追って図4を参照して説明する。
【0050】
また、検体搬送ユニット5は、搬送ラインL1に沿って検体ラックLを搬送するための搬送機構を備えている。この搬送機構は、塗沫標本作製装置6の手前(Y軸正方向側)を左右(X軸方向)に検体ラックLを搬送するために、図示しないベルトと、2つのプーリと、ステッピングモータを含んでいる。
【0051】
塗沫標本作製装置6では、血液検体の塗沫標本が作製される。すなわち、まず、塗沫標本作製装置6は、検体搬送ユニット5の搬送ラインL1上の所定の位置において、検体容器Tに収容されている血液検体を吸引する。続いて、吸引された血液検体が、スライドガラス上に滴下され、スライドガラス上で薄く引き延ばされ、乾燥させられる。しかる後、かかるスライドガラスに染色液が供給されることにより、スライドガラス上の血液が染色され、塗沫標本が作製される。
【0052】
なお、塗沫標本の作製の要否は、3つの測定ユニット41での測定結果をもとに、情報処理ユニット42で行われる分析結果に基づいて、搬送コントローラ7によって判定される。情報処理ユニット42で行われる分析結果は、検体搬送ユニット3を介して搬送コントローラ7に送信される。搬送コントローラ7により塗沫標本の作製が必要と判定されると、対象となる検体を収容する検体ラックLは、検体搬送ユニット5の搬送ラインL1に沿って搬送され、塗沫標本作製装置6において塗沫標本の作製が行われる。
【0053】
搬送コントローラ7は、検体回収ユニット21と、検体投入ユニット22と、検体送出ユニット23と、3つの検体搬送ユニット3と、検体搬送ユニット5と通信可能に接続されており、各ユニットの駆動を制御する。搬送コントローラ7として、たとえば、別付のパーソナルコンピュータあるいはシステムに組み込まれたコンピュータが用いられる。
【0054】
搬送コントローラ7は、検体ラックLのラックIDと、検体容器Tの検体IDと、検体容器Tの保持位置とを検体送出ユニット23から受信すると、ホストコンピュータ8へ測定オーダの問い合わせを行う。搬送コントローラ7は、ホストコンピュータ8から測定オーダを受信すると、ラックIDと、検体IDと、保持位置とに対応付けて測定オーダを記憶する。
【0055】
また、搬送コントローラ7は、検体送出ユニット23から送出される検体ラックLを、3つの測定ユニット41の何れに搬送するかを決定する。搬送コントローラ7は、搬送先として決定された測定ユニット41の前方にある検体搬送ユニット3に対して、記憶した測定オーダを送信する。搬送コントローラ7は、この検体ラックLを、搬送先として決定された測定ユニット41まで搬送するよう各検体搬送ユニット3を制御する。
【0056】
ホストコンピュータ8は、通信ネットワークに接続されており、情報処理ユニット42と搬送コントローラ7との間で通信することが可能となっている。ホストコンピュータ8の記憶部には、測定オーダが格納されている。ホストコンピュータ8は、情報処理ユニット42または搬送コントローラ7から、検体IDを含む測定オーダを要求されたときには、この検体IDに対応する測定オーダを記憶部から読み出し、測定オーダを要求した情報処理ユニット42または搬送コントローラ7へ送信する。
【0057】
図4は、それぞれ、バーコードユニットA、B、Cを上側から見た場合の構成を模式的に示す平面図である。
【0058】
図4(a)は、バーコードユニットBを示す図である。バーコードユニットBは、図示の如く、左右(X軸方向)に併設された2つの読取部B1、B2を備えている。読取部B1、B2は、それぞれ、2つのローラB11と、ローラB21と、ベースB30と、バーコードリーダB31から構成されている。
【0059】
読取部B1、B2において、2つのローラB11は、Z軸を中心として回転するよう構成されており、ベースB30上をY軸方向に移動可能となるよう構成されている。ローラB21は、Z軸を中心として回転駆動するよう構成されており、ベースB30上に固定されている。バーコードリーダB31は、ベースB30に固定されており、手前(Y軸正方向)に位置付けられたバーコードを読み取る。ベースB30は、検体送出ユニット23の最奥において、左右方向に移動可能となるよう構成されている。なお、ローラB11、B21と、ベースB30を駆動させるための機構は、検体送出ユニット23の最奥(同図の検体ラックLの奥側)に配されている。
【0060】
バーコードリーダB31が、手前に位置付けられた検体容器Tの検体IDを読み取る場合、同図(b)に示す如く、2つのローラB11が、検体容器Tの側面に接するように手前(Y軸正方向)に移動される。このとき、検体容器Tの手前側の側面はローラB21に接している。この状態で、ローラB21が回転駆動されることにより、検体容器TがZ軸を中心として回転され、検体容器Tの回転中にバーコードリーダB31によりバーコードラベルBL1が複数回読み取られる。なお、バーコードリーダB31が、検体ラックLの保持部1と2の間に貼付されたバーコードラベルBL2(図2(b)参照)を読み取る場合には、ローラB11は手前に駆動されない。
【0061】
検体投入ユニット22から送出された検体ラックLが、同図(a)に示す如く、検体送出ユニット23の最奥に位置付けられると、読取部B1、B2のバーコードリーダB31により、同図(b)に示したように検体ラックLのラックIDと検体容器Tの検体IDが読み取られる。このとき、読取部B1、B2のバーコードリーダ31は、読取部B1、B2が右方向(X軸負方向)に移動されることにより、左から順にバーコードの読み取りを行う。読取部B1のバーコードリーダ31により、検体ラックLのラックIDと、検体ラックLの左半分(保持部1〜5)に保持されている検体容器Tの検体IDが読み取られ、読取部B2のバーコードリーダ31により、検体ラックLの右半分(保持部6〜10)に保持されている検体容器Tの検体IDが読み取られる。
【0062】
ここで、検体容器Tに貼付されたバーコードラベルBL1のバーコード部分は、図2(a)に示したように、Z軸を中心とした外周の一部に限られている。このため、検体容器Tが回転されたとしても、バーコードリーダB31の読み取り動作中に、検体容器Tのバーコード部分とバーコードリーダB31が対向する位置関係にならなければ、バーコードリーダB31によりバーコードが読み取られなくなる。
【0063】
そこで、本実施の形態では、1つの検体容器Tに対してバーコードの読み取りが実行される期間中に、検体容器Tが1回転される。これにより、検体容器Tのバーコード部分が必ずバーコードリーダB31と対面するようになり、バーコードが読み取られるようになる。
【0064】
図4(c)は、バーコードユニットCを示す図である。バーコードユニットCは、図示の如く、2つのローラC11と、ローラC21と、ベースC30と、バーコードリーダC31から構成されている。ベースC30とバーコードリーダC31は、測定ユニット41の内部に固定されている。この場合、バーコードリーダC31の正面(X軸負方向側)に位置付けられた検体容器Tの検体IDは、上記バーコードユニットBと同様に読み取られる。すなわち、2つのローラC11が右方向(X軸負方向)に移動され、さらに、ローラC21がZ軸を中心として回転されて、検体容器Tが回転される。この状態で、検体容器TのバーコードラベルBL1がバーコードリーダC31により複数回読み取られる。
【0065】
図4(d)は、バーコードユニットDを示す図である。バーコードユニットDは、図示の如く、2つのローラD11と、ローラD21と、ベースD30と、バーコードリーダD31から構成されている。ベースD30とバーコードリーダD31は、検体搬送ユニット5の搬送ラインL1の近傍に固定されている。なお、ローラD11、D21を駆動させるための機構は、同図(d)の検体ラックLの手前側に配されている。
【0066】
この場合も、バーコードリーダD31の正面(Y軸正方向側)に位置付けられた検体容器Tの検体IDは、上記バーコードユニットBと同様に読み取られる。すなわち、2つのローラD11が下方向(Y軸正方向)に移動され、さらに、ローラD21がZ軸を中心として回転されて、検体容器Tが回転される。この状態で、検体容器TのバーコードラベルBL1がバーコードリーダD31により複数回読み取られる。
【0067】
図5は、バーコードユニットBの詳細な構成を示す図である。なお、バーコードユニットC、Dも、バーコードユニットBと略同様に構成されるため、以下、バーコードユニットBについてのみ説明する。
【0068】
同図(a)は、ローラB11とローラB21の近傍を上側から見た場合の平面図であり、同図(b)は、バーコードユニットBを左側から(X軸負方向に)見た場合の側面図であり、同図(c)は、支持部B32、B33近傍を手前から(Y軸負方向に)見た場合の側面図である。
【0069】
同図(a)、(b)を参照して、支持体B10には、2つのローラB11と、遮光板B15が装着されている。ベースB30には、プーリB13a、B13bと、ステッピングモータB14と、センサB16が装着されている。また、支持体B10には、鍔部B10aが形成されている。さらに、支持体B10は、ベースB30に設置されY軸方向に伸びたガイド(図示せず)により、Z軸方向に移動可能となるよう支持されている。
【0070】
2つのローラB11は、支持体B10によってZ軸を中心として回転可能となるよう支持されている。ベルトB12は、プーリB13a、B13bに掛け渡されている。
プーリB13aは、ステッピングモータB14の軸にZ軸を中心として回転可能となるよう設置され、プーリB13bは、ベースB30にZ軸を中心として回転可能となるよう設置されている。鍔部B10aは、ベルトB12に固定されている。
【0071】
遮光板B15は、X軸に垂直な平面を有する平板であり、支持体B10の下面側に設置されている。センサB16は透過型のセンサであり、発光部B16aと受光部B16bから構成されている。発光部B16aと受光部B16bは、発光部B16aから出射された
光が受光部B16bで受光されるよう、X軸方向に対向するようにベースB30上に設置されている。遮光板B15は、バーコードリーダB31の前方に位置付けられた検体ラックLの保持部に検体容器Tが保持されていない場合に、支持体B10が前方へ移動されると、発光部B16aと受光部B16bの間に位置付けられる。
【0072】
このように支持体B10を駆動するための機構が構成されると、ステッピングモータB14が駆動されることにより、ベルトB12がプーリB13a、B13bの周りを移動する。これにより、支持体B10が、2つのローラB11とともに、ベースB30上をY軸方向に移動する。また、受光部B16bから出力される信号により、支持体B10が、検体容器Tがないと判断される位置まで前方に移動されているか否かが分かる。
【0073】
同図(b)を参照して、支持体B20には、ローラB21と、軸B22と、プーリB24bが装着されている。支持体B20は、ベースB30にネジ止めされている。
【0074】
ローラB21にはZ軸方向に貫通する孔が形成されている。軸B22は、この孔を貫通してローラB21を支持している。また、軸B22の両端は、支持体B20により、Z軸を中心として回転可能となるよう支持されている。ベルトB23は、プーリB24a、B24bに掛け渡されている。プーリB24aは、ステッピングモータB25の軸にZ軸を中心として回転可能となるよう設置され、プーリB24bは、支持体B20と支軸B22に、Z軸を中心として回転可能となるよう設置されている。ステッピングモータB25は、ベースB30に設置されている。
【0075】
このようにローラB21を駆動するための機構が構成されると、ステッピングモータB25が駆動されることにより、ベルトB23がプーリB24a、B24bの周りを移動する。これにより、軸B22とローラB21がZ軸を中心として回転される。
【0076】
同図(b)、(c)を参照して、ベースB30の下面(Z軸負方向側の面)には、バーコードリーダB31と、受け部B32と、2つのベルトB35と、2つのプーリB36aと、2つのプーリB36bと、2つのステッピングモータB37とが配されている。
【0077】
バーコードリーダB31と受け部B32は、ベースB30の下面に設置されている。支持部B33、B34は、それぞれ、読取部B1、B2のベースB30の下面に設置されている。検体送出ユニット23の最奥(Y軸負方向側の端)に設置された支持部23bの上面には、X軸方向に伸びたガイド23cが設置されている。ベースB30は、受け部B32を介して、ガイド23c上をX軸方向に移動可能となるよう支持されている。
【0078】
2つのプーリB36aと、2つのプーリB36bは、検体送出ユニット23の支持部23bのY軸負方向側の側面に、Y軸を中心として回転可能となるよう設置されている。2つのベルトB35は、図示の如く、プーリB36a、B36bに掛け渡されている。支持部B33、B34は、それぞれ、上側と下側のベルトB35に固定されている。2つのステッピングモータB37は、支持部23b内に設置されており、2つのプーリB36aに接続されている。
【0079】
このようにベースB30を駆動するための機構が構成されると、2つのステッピングモータB37が駆動されることにより、2つのベルトB35がプーリB36a、B36bの周りを移動する。これにより、支持部B33、B34がX軸方向に移動されて、読取部B1、B2のベースB30が、X軸方向に個別に移動される。
【0080】
図6は、検体送出ユニット23と搬送コントローラ7の機能構成を示す図である。
【0081】
検体送出ユニット23において、通信部231は、搬送コントローラ7との間でデータ通信を行う。制御部232は、CPU232aと、ROM、RAM、ハードディスク等からなる記憶部232bを備える。CPU232aは、記憶部232bに記憶されているコンピュータプログラムに従って各部を制御する。
【0082】
なお、CPU232aは、バーコードリーダ部233で読み取られた読取結果に基づいて、検体容器Tに収容された検体の検体IDを取得する。検体IDの取得処理の詳細は、追って、図10〜12を参照して詳述する。
【0083】
バーコードリーダ部233は、読取部B1、B2に含まれる2つのバーコードリーダB31を含んでいる。バーコードリーダ部233から出力される読取結果は、制御部232に出力される。
【0084】
駆動部234は、読取部B1、B2に含まれるステッピングモータB14、B25、B37や、他の駆動機構のステッピングモータを含んでいる。また、駆動部234は、各ステッピングモータに配されたロータリーエンコーダを含む。ロータリーエンコーダは、ステッピングモータの回転量に応じたパルス信号を出力する。
【0085】
センサ部235は、読取部B1、B2に含まれるセンサB16と、検体送出ユニット23に配されたセンサ23aを含んでいる。センサ部235の検出信号は、制御部232に出力される。
【0086】
搬送コントローラ7において、通信部701は、検体送出ユニット23の他、検体回収ユニット21と、検体投入ユニット22と、3つの検体搬送ユニット3と、検体搬送ユニット5との間で、データ通信を行う。制御部702は、CPU702aと、ROM、RAM、ハードディスク等からなる記憶部702bを備える。CPU702aは、記憶部702bに記憶されているコンピュータプログラムに従って各部を制御する。表示部703は、モニタ等の表示装置を有する。入力部704は、マウスやキーボード等を有する。
【0087】
図7は、検体搬送ユニット3と、測定ユニット41と、情報処理ユニット42の機能構成を示す図である。なお、同図には、便宜上、検体搬送ユニット3と測定ユニット41がそれぞれ1つのみ示されているが、他の検体搬送ユニット3と測定ユニット41も同様に構成される。
【0088】
検体搬送ユニット3において、通信部301は、搬送コントローラ7と情報処理ユニット42との間で、データ通信を行う。制御部302は、CPU302aと、ROM、RAM、ハードディスク等からなる記憶部302bを備える。CPU302aは、記憶部302bに記憶されているコンピュータプログラムに従って各部を制御する。センサ部303は、検体搬送ユニット3に配されたセンサを含み、駆動部304は、検体搬送ユニット3の駆動機構を含む。
【0089】
なお、測定ユニット41の各部は、情報処理ユニット42の制御部422により制御される。情報処理ユニット42の制御部422は、通信部421、410を介して測定ユニット41の各部とデータ通信を行い、測定ユニット41の各部を制御する。
【0090】
測定ユニット41は、図3に示す検体吸引部412、試料調製部413、検出部414の他、バーコードリーダ部415と、駆動部416と、センサ部417を備えている。バーコードリーダ部415は、バーコードリーダC31を含む。バーコードリーダ部415から出力される読取結果は、通信部410を介して情報処理ユニット42の制御部422に送信される。駆動部416は、バーコードユニットCに含まれるステッピングモータと
、ステッピングモータに配されたロータリーエンコーダを含む。センサ部417は、バーコードユニットCに含まれるセンサC16を含んでいる。センサC16は、バーコードユニットBのセンサB16と同様の機能を有し、センサ部417の検出信号は、通信部410を介して情報処理ユニット42の制御部422に送信される。
【0091】
情報処理ユニット42において、通信部421は、検体搬送ユニット3の通信部301と、測定ユニット41の通信部410との間でデータ通信を行う。制御部422は、CPU422aと、ROM、RAM、ハードディスク等からなる記憶部422bを備える。CPU422aは、記憶部422bに記憶されているコンピュータプログラムに従って、情報処理ユニット42内の各部と、測定ユニット41内の各部を制御する。また、CPU422aは、測定ユニット41から受信した測定結果(粒子データ)に基づいて血液分析を行い、分析結果を、表示部423に表示する。かかる分析結果は、検体搬送ユニット3を介して、搬送コントローラ7に送信される。さらに、CPU422aは、通信部421を介して、ホストコンピュータ8に測定オーダの問い合わせを行う。この他、CPU422aは、バーコードリーダ部415からの読取結果に基づいて、上記検体送出ユニット23のCPU232aと同様、検体容器Tに収容された検体の検体IDを取得する。
【0092】
表示部422と入力部424は、搬送コントローラ7の表示部703と入力部704と同様に構成されている。
【0093】
図8は、検体搬送ユニット5と塗沫標本作製装置6の機能構成を示す図である。
【0094】
検体搬送ユニット5において、通信部501は、塗沫標本作製装置6と搬送コントローラ7との間でデータ通信を行う。制御部502は、CPU502aと、ROM、RAM、ハードディスク等からなる記憶部502bを備える。CPU502aは、記憶部502bに記憶されているコンピュータプログラムに従って各部を制御する。また、CPU502aは、バーコードリーダ部503からの読取結果に基づいて、上記検体送出ユニット23のCPU232aと同様、検体容器Tに収容された検体の検体IDを取得する。駆動部504は、バーコードユニットDに含まれるステッピングモータや、他の駆動機構のステッピングモータを含む。また、駆動部504は、各ステッピングモータに配されたロータリーエンコーダを含む。センサ部505は、バーコードユニットDに含まれるセンサD16を含んでいる。センサD16は、バーコードユニットBのセンサB16と同様の機能を有している。
【0095】
塗沫標本作製装置6において、通信部301は、検体搬送ユニット5との間でデータ通信を行う。制御部602は、CPU602aと、ROM、RAM、ハードディスク等からなる記憶部602bを備える。CPU602aは、記憶部602bに記憶されているコンピュータプログラムに従って各部を制御する。センサ部603は、検体搬送ユニット5に配されたセンサを含む。
【0096】
以上の構成において、検体送出ユニット23、測定ユニット41および検体搬送ユニット5のバーコードユニットB、C、Dは、それぞれ、図4(a)〜(d)を参照して説明したように、回転する検体容器Tから、バーコードラベルBL1を複数回読み取る。
【0097】
ここで、検体容器Tに貼付されるバーコードラベルBL1は、図9(a)、(b)に示す状態となる場合がある。この場合、バーコードユニットB、C、Dによって正しい検体IDが読み取られなくなる惧れがある。
【0098】
同図(a)は、検体容器Tに貼付された古いバーコードラベルBL1の上に、別の新しいバーコードラベルBL1が貼付されている状態を示す図である。この検体容器Tに対し
て、上述したようにバーコードユニットB、C、Dによってバーコードの読み取りが実行されると、異なる検体IDが読み取られる場合がある。すなわち、位置R1に対して読み取りが実行されると、上側のバーコードラベルBL1から正しい検体IDが読み取られるが、位置R2に対して読み取りが実行されると、下側のバーコードラベルBL1から正しくない検体IDが読み取られる。
【0099】
同図(b)は、検体容器Tに貼付されたバーコードラベルBL1が傾いている状態を示す図である。この検体容器Tに対して、上述したようにバーコードユニットB、C、Dによってバーコードの読み取りが実行されると、正しくない検体IDが読み取られる場合や、読み取りが失敗することがある。すなわち、位置R3に対して読み取りが実行されると、バーコードラベルBL1から正しい検体IDが読み取られるが、位置R4に対して読み取りが実行されると、正しくない検体IDが読み取られてしまう場合や、読み取られた結果に桁落ちが生じ、読み取りが失敗となる場合がある。
【0100】
このため、上記のように、回転する検体容器Tからバーコードを複数回読み取る場合には、読み取られた複数の検体IDのうち、どれを真値として採用するべきかを適正に判定するための処理が必要となる。本実施の形態では、同図(a)、(b)に示すような状態で検体容器TにバーコードラベルBL1が貼付された場合でも、得られた複数の検体IDから、真値として採用すべき検体IDを適正に判定するための処理が行われる。
【0101】
図10は、検体容器Tの検体IDを決定する処理を示すフローチャートである。なお、バーコード用ニットB、C、Dにおける処理は略同じであるため、以下では、バーコードユニットBについての処理フローチャートのみを説明する。
【0102】
検体送出ユニット23のCPU232aは、読取部B1、B2のバーコードリーダB31を、読み込みを実行する検体ラックLの保持部の正面に位置付けると、ステッピングモータB14を駆動し、検体容器Tの挟み込み動作を行う(S11)。すなわち、検体容器Tが2つのローラB11により挟み込まれるよう、支持体B10が前方へ移動される。
【0103】
CPU232aは、受光部B16bの出力信号により、この保持部に検体容器Tがないと判定すると(S12:YES)、処理がS17に進められる。CPU232aは、この保持部に検体容器Tがあると判定すると(S12:NO)、通常読みとして“バーコード読み取り”の処理が行われ(S13)、S13で得られた読取結果に基づいて“読取結果の判定”の処理が行われる(S14)。なお、“バーコード読み取り”の処理と、“読取結果の判定”の処理については、それぞれ、追って、図11と図12を参照して説明する。
【0104】
次に、CPU232aは、S14の“読取結果の判定”の処理により、後述する最終判定が正常と判定すると(S15:YES)、S14の“読取結果の判定”の処理で得られた検体IDを、後段の回路に出力する(S16)。すなわち、この場合は、正常と判定された検体IDが、搬送コントローラ7に送信される。
【0105】
他方、CPU232aは、S14の“読取結果の判定”の処理により、最終判定が正常でない(失敗である)と判定すると(S15:NO)、再度検体容器Tの検体IDの読み取りを実行する。すなわち、この検体容器Tについて、リトライ読みとして“バーコード読み取り”の処理が行われ(S18)、S18で得られた読取結果に基づいて“読取結果の判定”の処理が行われる(S19)。
【0106】
次に、CPU232aは、S19の“読取結果の判定”の処理により、最終判定が正常と判定すると(S20:YES)、S19の“読取結果の判定”の処理で得られた検体I
Dを、後段の回路(搬送コントローラ7)に出力する(S16)。他方、CPU232aは、S19の“読取結果の判定”の処理により、最終判定が正常でない(失敗である)と判定すると(S20:NO)、読取が失敗したことを後段の回路(搬送コントローラ7)に出力する(S21)。
【0107】
しかる後に、CPU232aは、ステッピングモータB14を駆動し、この検体容器Tのリリース動作を行う(S17)。すなわち、ローラB11が検体容器Tを挟み込む位置から後方に移動されるように、支持体B10が後方に移動される。
【0108】
図11(a)は、“バーコード読み取り”の処理を示すフローチャートである。また、同図(b)は、同図(a)の“バーコード読み取り”処理と並行して行われる“タイムアウトカウント”の処理を示すフローチャートである。
【0109】
同図(a)を参照して、検体送出ユニット23のCPU232aは、図10のS11で挟み込みを行った検体容器Tを、ステッピングモータB25を駆動しローラB21を一定の回転速度で回転させることによって回転させる(S101)。このとき、通常読みの場合、検体容器Tは、反時計回りに所定の回転速度で回転させられる。また、リトライ読みの場合、検体容器Tは、時計回りに、且つ、通常読みの半分の回転速度で回転させられる。
【0110】
こうすると、通常読みにおいて、バーコードラベルBL1の一部が剥がれて検体ラックLの保持部内に引っ掛かり、検体容器Tが回転し難くなっている場合でも、リトライ読みにおいて、検体容器Tが滑らかに回転されることがある。すなわち、リトライ読みにおいて、検体容器Tが通常読みの逆方向に回転させられるため、バーコードラベルBL1の保持部に対する引っ掛かりが解消され、読み取りが適正に行われる可能性が高められる。
【0111】
ここで、CPU232aは、検体容器Tの回転が開始されると、図11(b)に示す“タイムアウトカウント”の処理を開始し、経過時間T1のカウントを開始する(S111)。
【0112】
図11(a)のS101において検体容器Tの回転が開始すると、CPU232aは、結果の取得回数を示す変数nに1をセットする(S102)。なお、変数nは、検体送出ユニット23の記憶部232bに記憶される。続いて、CPU232aは、バーコードリーダB31に対して読取指示を出し(S104)、この読取指示を出してからの経過時間T2のカウントを開始する(S104)。
【0113】
続いて、CPU232aは、経過時間T2が所定時間Twよりも小さいと判定すると(S105:YES)、バーコードリーダB31から読取結果を受信するまで、処理を待機させる。すなわち、CPU232aが読取結果を受信していないと(S106:NO)、処理がS105に戻される。CPU232aが読取結果を受信すると(S106)、この結果をn回目の結果として記憶部232bに記憶する(S107)。しかる後に、変数nの値に1を加算し(S108)、処理がS103に戻される。他方、CPU232aは、経過時間T2が所定時間Tw以上と判定すると(S105:NO)、処理がS103に戻される。こうして、読取結果の記憶が繰り返し行われる。
【0114】
これに並行して、同図(b)の処理により、経過時間T1が監視される。CPU232aは、経過時間T1がToutよりも小さいと判定すると(S112:YES)、処理を待
機させる。CPU232aは、経過時間T1が所定時間Tout以上と判定すると(S11
2:NO)、同図(a)のS107において、これまでに記憶した読取結果の末尾にタイムアウトした旨を追加して(S113)、同図(a)、(b)の処理を終了させる。この
ように処理が終了させられると、1つの検体容器Tに対する読取動作が延々と継続することがなく、処理効率の低下が抑制される。
【0115】
なお、所定時間Toutは、検体容器Tが1回転するために要する時間に設定されている
。すなわち、通常読みとリトライ読みの場合に、設定された検体容器Tの回転速度に基づいて、所定時間Toutの期間だけ検体容器Tが回転されると、検体容器Tが1回転するこ
とになる。検体容器Tを一定の回転速度で回転させるとともに、検体容器Tが所定角度(本実施形態では1回転)回転するのに必要な時間バーコードを繰り返し読み取ることで、予め決められた回転角度の全ての範囲においてバーコードを読み取ることができる。さらに、検体容器Tが所定角度回転するのに必要な所定時間が経過したときに処理を終了することで、検体容器が所定角度回転したことを検出するための機構(例えばエンコーダ)を設ける必要がない。
【0116】
図11(a)、(b)の処理によれば、検体容器Tが1回転する間に、長くとも所定時間Twの間隔で、バーコードの読み取りが試行され、可能な限り多くの読取結果が記憶部232bに記憶される。
【0117】
S107とS113において記憶される読取結果は、例えば、図13の読取結果の項目に示されるようにして記憶部232bに記憶される。
【0118】
図13の読取結果の項目には、サンプルナンバー1〜10までの10個の検体容器Tに対してバーコードの読み取りが実行されたときの読取結果の例がそれぞれ示されている。‘AAA'、‘BBB'、‘CCC'は、読み取られた検体容器Tの検体IDを示している
。“T/O”は、図11(b)のS113において、タイムアウトした旨を示す記号である。“NG”は、図11(a)のS106において、CPU232aがバーコードリーダB31からエラーを受信したことを示す記号である。かかるエラーは、バーコードリーダB31において、チェックディジットによりエラーが検出された場合などに発生する。
【0119】
こうして、記憶された読取結果が、図10のS14とS19において判定される。
【0120】
図12は、“読取結果の判定”の処理を示すフローチャートである。なお、以下の読取結果の数には、図13に示した“NG”と“T/O”は含まれない。
【0121】
CPU232aは、検体容器Tについての読取結果の数が1以下であると判定すると(S201:YES)、この検体容器Tの読取結果についての判定(以下、「最終判定」という)を失敗とし(S202)、処理が終了する。他方、CPU232aは、検体容器Tについての読取結果の数が2以上であると判定すると(S201:NO)、この読取結果の数が2以上4以下であるかを判定する(S203)。この読取結果の数が2以上4以下であると判定されると(S203:YES)、処理がS204に進められ、この読取結果の数が5以上であると判定されると(S203:NO)、処理がS207に進められる。
【0122】
S204において、CPU232aは、この読取結果の1回目と2回目の検体IDが一致しているかを判定する。1回目と2回目の検体IDが一致していると(S204:YES)、最終判定を正常として(S205)、一致した検体IDをこの検体容器Tの検体IDとし(S206)、処理が終了する。他方、1回目と2回目の検体IDが一致していないと(S204:NO)、最終判定を失敗とし(S202)、処理が終了する。
【0123】
S207において、CPU232aは、この読取結果のうち大勢を占める検体IDの数が、読取結果の総数に対して所定比率R以上であるかを判定し(S207)、所定比率R以上であれば(S207:YES)、最終判定を正常として(S208)、大勢を占める
検体IDをこの検体容器Tの検体IDとして(S209)、処理を終了する。他方、大勢を占める検体IDの比率が所定比率R未満であると(S207:NO)、CPU232aは、最終判定を失敗として(S202)、処理が終了する。なお、S207で用いられる所定比率Rは、50%より大きい値とされる。
【0124】
なお、図13に例示されているサンプルナンバー1〜10に対する最終判定は、同図の最終判定の項目に示されている。同図に示す例では、所定比率Rが60%に設定されている。
【0125】
図13を参照して、読取結果の数が1以下の場合、サンプルナンバー1〜2に示すように、最終判定は失敗とされる。読取結果の数が2〜4の場合、サンプルナンバー3〜5では、1回目と2回目の検体IDが一致しているため最終判定は正常とされ、サンプルナンバー6では、1回目と2回目の検体IDが一致していないため最終判定は失敗とされる。読取結果の数が5以上の場合、サンプルナンバー7、9では、大勢を占める検体IDが60%以上存在するため正常とされ、サンプルナンバー8、10では、大勢を占める検体IDが60%未満しか存在しないため失敗とされる。
【0126】
以上、本実施の形態によれば、図9(a)に示すようにバーコードラベルBL1が重ねて貼付されている場合や、図9(b)に示すようにバーコードラベルBL1が傾いて貼付されている場合であっても、精度の高い検体IDが取得され得る。
【0127】
すなわち、読取結果の数が1以下であるとき、読取結果が失敗とされる。これにより、1回しか読み取れず、読取結果が適正でない可能性がある検体IDを真値として使用することが回避され得る。
【0128】
また、読取結果の数が5以上であるとき、大勢を占める検体IDが所定比率R以上存在すると、この検体IDが真値として採用される。これにより、図9を参照して説明したように、正しくない検体IDが読み取られた場合でも、広い面積において読み取られた正しい検体IDが真値として採用されるため、最終的に得られる検体IDの精度が高められ得る。
【0129】
また、読取結果の数が2以上4以下であるとき、1回目と2回目の検体IDが一致している場合に、この検体IDが真値として採用される。これにより、大勢を占める検体IDが、読取結果の数が少ないために大勢を占めていると判断され難い状況にあっても、真値として採用される検体IDの精度が維持され得る。
【0130】
また、本実施の形態によれば、検体容器Tに対するバーコードの読み取りは、この検体容器Tが1回転する間の全ての範囲に亘って行われるため、どのようにバーコードラベルBL1が検体容器Tの側面に貼付されても、必ず新しいバーコードが広い面積において読み取られる。これにより、取得された検体IDの精度が高められ得る。
【0131】
また、本実施の形態によれば、通常読みで得られた読取結果に基づいて最終判定が正常でないと判定されると、リトライ読みが行われる。これにより、通常読みで適正な検体IDが得られない場合でも、リトライ読みで適正な検体IDの取得が期待できる。また、リトライ読みの際には、検体容器Tの回転方向が逆転されるため、上記のとおり、適正な検体IDが取得される可能性が高められ得る。
【0132】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の実施の形態はこれらに限定されるものではない。
【0133】
たとえば、上記実施の形態では、測定対象として血液を例示したが、尿についても測定対象とされ得る。すなわち、尿を検査する検体処理装置にも本発明を適用することができ、さらに、他の臨床検体を検査する臨床検体検査装置に本発明を適用することもできる。
【0134】
また、上記実施の形態では、図11(a)の“バーコード読み取り”の処理で用いられたTwと、図11(b)の“タイムアウトカウント”の処理で用いられたToutと、図1
2のS201とS203で判定に用いられた読取結果の数と、図12のS207で判定に用いられた所定比率Rは、それぞれ固定値として設定されたが、ユーザにより設定されるようにしても良い。この他、バーコードユニットBで読み取りが可能なバーコードの種類(たとえば、CODE128、NW-7、ITF、CODE39、JANなど)が、ユーザにより設定されるよう
にしても良い。
【0135】
この場合、たとえば、バーコードユニットB、Dについての設定は、搬送コントローラ7の入力部704を介して設定され、バーコードユニットCについての設定は、情報処理ユニット42の入力部424を介して設定される。これらの設定値は、バーコードユニットB、Dの場合、通信部を介して送信され、それぞれ、検体送出ユニット23の記憶部232bと検体搬送ユニット5の502bに記憶される。バーコードユニットCの場合、情報処理ユニット42の記憶部422bに記憶される。
【0136】
また、上記実施の形態では、検体容器Tに対するバーコードの読み取りは、この検体容器Tが1回転する間に亘って行われたが、これに限らず、検体容器Tに対するバーコードの読み取りは、この検体容器Tが3/4回転や半回転する間に行われるようにしても良い。これにより、無駄な読み取り動作が抑制され得る。
【0137】
図14は、検体容器Tを上側から見たときの、検体容器Tの外周に対するバーコードラベルBL1のバーコード部分(バーコード範囲)が占める割合と、バーコードリーダの読み取り範囲が占める割合とを模式的に示す図である。なお、標準的な外周長を有する検体容器Tに対してバーコードラベルBL1が付されると、バーコード範囲が占める割合は、外周長の50%程度となる。
【0138】
同図(a)は、バーコード範囲が外周の50%を占めるときに、バーコードリーダの読み取りが外周の75%の範囲に対して行われる場合を示す図である。この場合、バーコードリーダの読み取り範囲(75%)に、バーコード範囲を除いた残りの範囲(50%)が含まれるが、少なくともバーコード範囲の半分は、常に読み取られることになる。このため、この場合の読取結果に対して図12の判定処理が行われると、広い面積において適正に読み取られた読取結果に基づいて検体IDが取得されるため、最終的に取得される検体IDの精度は高いものとなり得る。
【0139】
同図(b)は、バーコード範囲が検体容器Tの外周の50%を占めるときに、バーコードリーダの読み取りが外周の50%の範囲に対して行われる場合を示す図である。この場合、バーコードリーダの読み取り範囲(50%)が、バーコード範囲を除いた残りの範囲(50%)になると、バーコードが全く読み取られなくなる。しかしながら、実際には、ランダムに設置された検体容器Tに対してバーコードの読み取りが行われるため、図示のようにバーコードの読み取り範囲が、バーコード範囲外に収まることは極めて稀である。このため、検体容器Tに対して、このようにバーコードの読み取りが行われても、ほとんどの場合、ある程度の範囲に亘ってバーコードの読み取りが行われることとなる。よって、この場合も、図12の判定処理を行うことで、適正な検体IDを高い確率で取得することが可能となる。
【0140】
なお、同図(c)のように細目の検体容器TにバーコードラベルBL1が貼付された場
合には、バーコードリーダの読取範囲が外周の50%程度であっても、バーコードを広い範囲で適正に読み取ることができる。
【0141】
同図(c)は、バーコード範囲が検体容器Tの外周の75%を占めるときに、バーコードリーダの読み取りが、外周の50%の範囲に対して行われる場合を示している。この場合、少なくともバーコードの1/3の範囲は、常に読み取られることになる。このため、この場合の読取結果に対して図12の判定処理を行えば、広い面積において適正に読み取られた読取結果に基づいて検体IDが取得されるため、最終的に取得される検体IDの精度は高く維持され得る。
【0142】
なお、検体容器が回転する回転角度とバーコードの読取範囲は、必ずしも一致していなくてもよい。
【0143】
なお、検体容器Tの外周に対する読取範囲を手動で設定できるようにしても良い。こうすると、検体容器Tの径が変わる場合など、検体容器Tの外周に対するバーコード範囲の比率が変わるような場合に、その比率に応じて、バーコード範囲が十分な面積で読み取られるよう、読取範囲を適宜調節することができる。これにより、無駄な回転動作を抑制しながら、バーコードを適正に読み取ることができる。
【0144】
また、上記実施の形態では、通常読みとリトライ読みとで、共に、検体容器Tを1回転させたが、これに限らず、通常読みとリトライ読みとで、検体容器Tの回転角度が異なるようにしても良い。例えば、通常読みでは回転角度を全周の50%とし、リトライ読みでは回転角度を全周の75%とするようにしても良い。こうすると、通常読みでの所要時間を短縮できると共に、通常読みでバーコードの読み取りが行われない場合でも、リトライ読みでバーコードの読み取りが確実に行われ得る。
【0145】
また、上記実施の形態の“読取結果の判定”の処理(図12)において、S201では読取結果が1以下か否かが判定され、S203ではS201でNOと判定された場合に読取結果が4以下か否かが判定されたが、これに限らず、それぞれ適宜設定されても良い。
【0146】
なお、図12の処理フローでは、S203でYESとされるときの読取結果の最大数が4であったが、このときの読取結果の数の最大数が5以上となるようにS203のステップが変更された場合には、S204のステップは、たとえば以下のように変更され得る。すなわち、読み取られた複数の検体IDに2回以上連続する検体IDの組がある場合、
(1)検体IDの連続数が最大の組の検体IDを最終的な検体IDとし、
(2)検体IDの連続数が最大となる組が複数ある場合は、読取順が早い方の組の検体IDを最終的な検体IDとする。
【0147】
なお、この場合、検体IDが2回以上連続する組がなければ、最終判定が失敗とされる(S202)。
【0148】
また、上記実施の形態では、バーコードユニットB、C、Dで得られた検体IDに基づいて、それぞれ、CPU232a、CPU422a、CPU502aが、真値となる検体IDを決定したが、これに限らず、バーコードユニットB、C、D内で決定されるようにしても良い。この場合、バーコードユニットB、C、D内に、CPUと記憶部が配され、このCPUにより真値となる検体IDが決定される。
【0149】
さらに、上記実施の形態では、バーコードラベルBL1の読み取りの際に、検体容器Tを回転させたが、検体容器Tを固定として、バーコードリーダB31、C31、D31の方を、検体容器Tの周方向に回転させるようにしても良い。
【0150】
さらに、上記実施の形態では、検体容器が所定角度回転するのに必要な時間が経過したときに読取部によるバーコードの読取を停止するように構成したが、このような構成に限られない。例えば、検体容器の回転量を検出するエンコーダを設け、エンコーダによって検体容器が所定角度回転したことを検知したときに、バーコードの読取を停止するように構成してもよい。
【0151】
この他、本発明の実施の形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0152】
1 … 検体分析システム(検体分析装置)
41 … 測定ユニット
232、422、502 … 制御部
B31、C31、D31 … バーコードリーダ(読取部)
B21、C21、D21 … ローラ(回転部)
BL1 … バーコードラベル(バーコード)
T … 検体容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体容器に収容された検体を測定する測定ユニットと、
前記検体容器の側面に光を照射して、前記検体容器に貼付されたバーコードを読み取る読取部と、
前記読取部による読取位置が前記検体容器の周方向に変化するよう前記検体容器を前記読取部に対して相対的に回転させる回転部と、
前記回転部を動作させつつ、予め決められた回転角度の全ての範囲に亘って、前記読取部に前記バーコードを繰り返し読み取らせ、前記回転角度の全範囲において前記読取部が前記バーコードを読み取ることにより得られたバーコード情報に基づいて、当該検体容器に収容された前記検体の識別情報を取得する制御部と、を備える、
ことを特徴とする検体分析装置。
【請求項2】
請求項1に記載の検体分析装置において、
前記制御部は、前記検体容器が少なくとも一回転する間の全ての範囲に亘って、前記読取部に前記バーコードを繰り返し読み取らせる、
ことを特徴とする検体分析装置。
【請求項3】
請求項1に記載の検体分析装置において、
前記制御部は、前記検体容器が少なくとも半回転する間の全ての範囲に亘って、前記読取部に前記バーコードを繰り返し読み取らせる、
ことを特徴とする検体分析装置。
【請求項4】
請求項1に記載の検体分析装置において、
前記制御部は、前記検体容器が少なくとも3/4回転する間の全ての範囲に亘って、前記読取部に前記バーコードを繰り返し読み取らせる、
ことを特徴とする検体分析装置。
【請求項5】
請求項1ないし4の何れか一項に記載の検体分析装置において、
前記制御部は、前記予め決められた回転角度の全範囲における前記読取部による前記バーコードの読取に要する所定の時間が経過したとき、前記回転部の動作を停止させるとともに、前記読取部による前記バーコードの読取を停止させるよう制御する、
ことを特徴とする検体分析装置。
【請求項6】
請求項1ないし5の何れか一項に記載の検体分析装置において、
前記制御部は、前記回転角度の全範囲において前記読取部が前記バーコードを読み取ることにより得られた複数のバーコード情報のうち、所定の比率を占めるバーコード情報に基づいて、当該検体容器に収容されている検体の前記識別情報を取得する、
ことを特徴とする検体分析装置。
【請求項7】
請求項6に記載の検体分析装置において、
前記制御部は、前記回転角度の全範囲において前記読取部が前記バーコードを読み取ることにより得られたバーコード情報の数が第1の閾値に満たない場合、前記識別情報の取得を行わない、
ことを特徴とする検体分析装置。
【請求項8】
請求項7に記載の検体分析装置において、
前記制御部は、前記回転角度の全範囲において前記読取部が前記バーコードを読み取ることにより得られたバーコード情報の数が前記第1の閾値以上で第2の閾値以下の場合、前記所定の比率を占めるバーコード情報に基づく前記識別情報の取得に替えて、前記複数
のバーコード情報のうち連続して同じ値が続く前記バーコード情報に基づいて、前記識別情報を取得する、
ことを特徴とする検体分析装置。
【請求項9】
請求項1ないし8の何れか一項に記載の検体分析装置おいて、
前記制御部は、前記回転角度の全範囲において前記読取部が前記バーコードを読み取ることにより得られたバーコード情報に基づいて前記識別情報が取得できなかったとき、前記回転部による前記検体容器の回転と、前記読取部による前記バーコードの読取を、再度実行する、
ことを特徴とする検体分析装置。
【請求項10】
請求項9に記載の検体分析装置おいて、
前記制御部は、前記バーコードの読取の再実行を、通常の読み取り時に対して前記検体容器の回転を逆にして行う、
ことを特徴とする検体分析装置。
【請求項11】
検体容器に収容された検体を測定する測定ユニットと、
前記検体容器の側面に光を照射して、前記検体容器に貼付されたバーコードを読み取る読取部と、
前記読取部による読取位置が前記検体容器の周方向に変化するよう前記検体容器を前記読取部に対して相対的に回転させる回転部と、
前記読取部に前記バーコードを読み取らせる読取処理を繰り返し実行するとともに、前記回転部を動作させる回転処理を、前記読取処理によって得られるバーコード情報にかかわらず前記検体容器が予め決められた角度回転するまで実行し、前記読取処理によって得られたバーコード情報に基づいて、当該検体容器に収容された前記検体の識別情報を取得する制御部と、を備える、
ことを特徴とする検体分析装置。
【請求項12】
検体容器を回転させつつ、予め決められた回転角度の全ての範囲に亘って、前記検体容器に貼付されたバーコードを繰り返し読み取り、
前記回転角度の全範囲において前記バーコードを読み取ることにより得られたバーコード情報に基づいて、当該検体容器に収容された検体の識別情報を取得する、
ことを特徴とする検体識別情報取得方法。
【請求項13】
検体容器の側面に光を照射して前記検体容器に貼付されたバーコードを読み取る読取部と、
前記読取部による読取位置が前記検体容器の周方向に変化するよう前記検体容器を前記読取部に対して相対的に回転させる回転部と、
前記回転部を動作させつつ、予め決められた回転角度の全ての範囲に亘って、前記読取部に前記バーコードを繰り返し読み取らせ、前記回転角度の全範囲において前記読取部が前記バーコードを読み取ることにより得られたバーコード情報に基づいて、当該検体容器に収容された検体の識別情報を取得する、
ことを特徴とする検体識別情報取得装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−185628(P2011−185628A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−48593(P2010−48593)
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【出願人】(390014960)シスメックス株式会社 (810)
【Fターム(参考)】