説明

検体前処理装置

【課題】検体の飛散をより確実に防止できるとともに、受け皿の駆動機構が大掛かりなものとなるのを避ける。
【解決手段】ノズル搬送装置100は、ディスポーザブルチップ103を上下方向に移動可能に支持するZ軸アーム101と、Z軸アーム101水平方向に移動させるX、Y軸アーム105、106と、Z軸アーム101の下部に配設され、ディスポーザブルチップ103の下方に位置するとともに、Z軸アーム101から更に引き出し可能とされた受け皿107とを備え、受け皿107の底面にはディスポーザブルチップ103が挿通可能なノズル穴107aが穿設されており、受け皿107がZ軸アーム101から引き出された状態で、ノズル穴107aがディスポーザブルチップ103の真下に位置する構成にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に検体の分注時にノズルからの検体の飛散を防止する検体前処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば人体から採取した血液を検査する分野では、その前処理として、血液を遠心分離し、それにより得られた血清を分注することが行われる。このような処理を行う装置として、血清(親検体)を分注によって小分けし、複数の子検体を作成する検体前処理装置が利用される。ここで、親検体は、血清の他、人体から採取した尿や全血等も対象となる。
【0003】
検体前処理装置は、分注を行うにあたり、ノズルを用いて親検体を吸引した後、当該ノズルを搬送し、子検体容器(空の試験管等)に吐出する。親検体の吸引位置から吐出位置である子検体容器までノズルを搬送する際に、移動に伴う振動等により吸引された親検体がノズルから垂れ落ちて周囲に飛散する場合があるが、これはコンタミネーションの原因となり、検体の正確な検査結果が得られなくなるおそれがある。このため、ノズルからの検体の飛散を防止するための機構が従来より提案されている。
【0004】
例えば特許文献1には、飛散する検体に作用する力は水平方向が支配的であることに鑑み、吸引吐出ノズルの下側に受け皿を固定するとともに、その受け皿のうち吸引吐出ノズルの真下位置に吸引吐出ノズルが挿通しうる穴を穿設したものが開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開平5−312815号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、飛散する検体に作用する力は水平方向が支配的であるとはいえ、検体が吸引吐出ノズルから真下に垂れ落ちることがないとはいえず、吸引吐出ノズルの真下位置に穴を穿設する構成では、検体の飛散を完全に防止できるとはいえない。
【0007】
また、吸引吐出ノズルの直径より大きな穴を形成する必要があるため、ノズルの種類によっては大きな穴を形成せざるを得ず、受け皿としての機能を果たさなくなるおそれがある。
【0008】
さらに、単に受け皿に穴を穿設するだけでは、受け皿に溜まった検体が穴から流出してしまうおそれがある。
【0009】
また、特許文献1の従来の技術の欄にあるように、受け皿をアームを介して旋回させることにより、受け皿をノズルの下方に位置させたり、ノズルの下方から退避させたりする構成では、旋回時に、受け皿に溜まった検体に遠心力が作用して、受け皿からこぼれ落ちてしまうおそれもある。
【0010】
本発明は上記のような点に鑑みてなされたものであり、検体の飛散をより確実に防止できる検体前処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による検体前処理装置は、検体の分注を行うノズル手段と、前記ノズル手段を保持しつつ垂直方向に移動可能な垂直移動手段と、前記垂直移動手段を水平方向に移動可能な水平移動手段と、前記ノズル手段の下方に位置しつつ前記水平移動手段と独立して水平方向へ移動するように前記水平移動手段に配設された受け皿とを備えたノズル搬送機構を有し、前記受け皿は、底面に前記ノズル手段が挿通可能な開口部を有しており、検体の吸引及び吐出時に、前記開口部が前記ノズル手段の直下に位置するまで水平移動する点に特徴を有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ノズル手段の直下に受け皿が位置する状態でノズル手段を移動し、検体の吸引及び吐出時には、開口部がノズル手段の直下に位置するように受け皿が移動する構成となっているので、ノズル手段からの検体の飛散を確実に防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。図1は、本発明が適用可能な検体前処理装置200を示す外観図である。検体前処理装置200は、例えば採血管1内で分離した状態にある血清2、分離剤3、血餅4(図2を参照)のうち、血清2を親検体として分注するのに用いられるものであり、吸引位置でノズル手段により採血管1から血清2を吸引し、吐出位置まで搬送して、吐出位置で血清2を検査容器に吐出するようにしたノズル搬送装置100が含まれる。検体前処理装置200において、採血管及び検査容器はノズル搬送装置100の下方に位置するワークエリアに配置されている。ワークエリアの配置構成については後述する。
【0014】
まず、本発明の特徴部分であるノズル搬送装置100について説明する。図3はノズル搬送装置101の概略構成図である。ノズル搬送装置100において、Z軸アーム101にはノズル保持アーム101aがZ軸方向(垂直方向)へ移動可能に係合しており、更にノズル保持アーム101aはフィッティングノズル102を保持している。フィッティングノズル102の先端には、先端がテーパ状に形成されたディスポーザブルチップ103が着脱自在に装着される。なお、本実施形態においては、Z軸アーム101が本発明でいう垂直移動手段に相当し、フィッティングノズル102及びディスポーザブルチップ103が本発明でいうノズル手段に相当するものである。
【0015】
また、フィッティングノズル102にはエアホース104を介してここでは不図示のポンプが接続し、ポンプを駆動することにより、ディスポーザブルチップ103内に血清を吸引したり、ディスポーザブルチップ103内の血清を吐出したりすることができる。
【0016】
Z軸アーム101は、Y軸アーム105によりY軸方向に移動可能に係合している。また、Y軸アーム105は、X軸アーム106によりX軸方向に移動可能となっている。なお、本実施形態においては、これらZ軸アーム101、Y軸アーム105、及びX軸アーム106が本発明でいう水平移動手段に相当するものである。
【0017】
これら各アーム101、105、106により、吸引位置でディスポーザブルチップ103を下降させて採血管1から血清を吸引し、血清が含まれたディスポーザブルチップ103を上昇させた後に水平方向に搬送して、吸引位置とは別の吐出位置でディスポーザブルチップ103を下降させて血清を検査容器に吐出することができる。図3において、各アーム101、105、106の移動のための動力機構及びこれらの動力制御部については図示を省略する。
【0018】
ここで、図5にも示すように、Z軸アーム101の下部には、矩形状の受け皿107が配設される。受け皿107は、フィッティングノズル102及びディスポーザブルチップ103の下方に位置するとともに、Z軸アーム101から更に引き出し可能となるように配設される。
【0019】
受け皿107の底面には本発明でいう開口部としてノズル穴107aが穿設されており、受け皿107がZ軸アーム101へ収容された状態(図3(a)、図5(a):入状態)ではノズル穴107aがZ軸アーム101内に位置するが、受け皿107がZ軸アーム101から引き出された状態(図3(b)、図5(b):出状態)ではノズル穴107aがディスポーザブルチップ103の真下に位置する。ノズル穴107aは、ディスポーザブルチップ103、更に必要であればフィッティングノズル102が挿通可能な大きさを有するものである。なお、図3においては、受け皿107の駆動機構は図示を省略している。駆動機構の詳細については後述する。
【0020】
本実施形態では、受け皿107の底面において、ノズル穴107a近傍が他の部分よりも高い位置にある、すなわち、ノズル穴107aが穿設される部分が他の部分に比べて一段高く形成されている。したがって、受け皿107の底面には一段深くなった液溜め部107bが形成されることになり、これにより、液溜め部107bに溜まった検体がノズル穴107aから流出するのを防ぐことができる。また、図示例のように段差をつけて液溜め部107bを形成するのではなく、受け皿107の底面を傾斜させておき、その傾斜のうちの高い位置にノズル穴107aを穿設するようにしてもよい。
【0021】
次に、受け皿107の駆動機構及びその動作について説明する。本実施形態では、図4に示すように、カム108、カム108を回転させるモータ109、スプリング110がZ軸アーム101に内蔵されており、これらの機構によって、受け皿107をZ軸アーム101に収容したり、Z軸アーム101から引き出したりする構成となっている。図4において、スプリング110は一端が受け皿107に接続され、他端がZ軸アーム101内に固定されている。検体の移送時には図4(a)に示すように、スプリング110の付勢力により受け皿107のうちノズル穴107aを含む部分がZ軸アーム101に収容された状態となるが、検体の吸引及び吐出の際には図4(b)に示すように、モータ109によりカム108が回転すると、カム108に押されるようにして受け皿107がスプリング110の付勢力に抗してZ軸アーム101から引き出され、ノズル穴107aがノズル手段の真下に位置するように移動する。
【0022】
また、カム108(もしくはモータ109のモータ軸)には側方に突出する遮光板111が設けられる。そして、ノズル穴107aを含む部分を収容するカム位置における遮光板111の位置、及び、当該部分を引き出すカム位置における遮光板111の位置のそれぞれにセンサ112が配置される。センサ112としては、例えば空隙を挟んで発光素子及び受光素子が対向配置されたコの字形のものが用いられ、空隙での遮光板111の有無によりオン・オフ信号が得られるようになっており、これにより受け皿107の入出状態(受け皿107の移動状況)を知ることができる。
【0023】
ノズル搬送装置100では、吸引位置や吐出位置で受け皿107を引き出すことにより、図5(b)に示すように、フィッティングノズル102及びディスポーザブルチップ103を下降させてノズル穴107aに挿通させ、ディスポーザブルチップ103の先端部分を検体前処理装置200のワークエリア上にある採血管1や検査容器に挿入して、血清の吸引や吐出を行うことができる。
【0024】
それに対して、ディスポーザブルチップ103内に血清を含んだ状態で搬送する際には、図5(a)に示すように、受け皿107を収容する。この状態では、ノズル穴107aがZ軸アーム101内に位置するとともに、ディスポーザブルチップ103の下方に受け皿107の液溜め部107bが位置するので、ディスポーザブルチップ103から垂れ落ちる血清を受けて、血清がワークエリア上に飛散するのを防ぐことができる。なお、液溜め部107bには濾紙を敷く等しておいてもよい。検体の移送動作と受け皿107の引き出し動作とをリンクさせるため、検体前処理装置200は、各アーム101、105、106の動作状況及び位置に基づいてモータ109の動作を制御し、センサ112から得られる受け皿の入出状態に基づいて、各アーム101、105、106の動作を制御する。
【0025】
この場合に、図5(a)に示すように、ディスポーザブルチップ103の先端を受け皿107の開口縁部107cより低く位置させるのが望ましい。ディスポーザブルチップ103から垂れ落ちる血清は、移送時や停止時の振動により側方に飛散するおそれもあるが、このようにディスポーザブルチップ103の先端を受け皿107の開口縁部107cより低く位置させることにより、受け皿107の側壁部で側方に飛散する血清を捕捉することができる。
【0026】
また、吸引時にはディスポーザブルチップ103の先端部分が血清に浸かるため、ディスポーザブルチップ103の先端部分の外周にも血清が付着し、それが飛散するおそれもある。そこで、より好適には、ディスポーザブルチップ103の先端部分のうち血清に浸かる長さ部分Lのすべてを受け皿107の開口縁部107cより低く位置させるのが望ましい。
【0027】
以上述べたように、本実施形態によれば、血清の移送時にはディスポーザブルチップ103の真下にノズル穴107aが位置しないようにすることができるので、血清の飛散をより確実に防止でき、コンタミネーションの発生を防止できる。しかも、受け皿107をディスポーザブルチップ103の下方から完全に退避させる構成ではなく、受け皿107をZ軸アーム101に収容したり、Z軸アーム101から引き出したりする簡易な構成としたので、その駆動機構が大掛かりなものとなるのを避けることができる。
【0028】
また、受け皿107は直線運動で収容及び引き出されるので、旋回運動によって受け皿107に溜まった血清に遠心力が作用することもなく、受け皿107からこぼれ落ちてしまうおそれもない。
【0029】
次に、検体前処理装置200の構成及び動作について説明する。図6は、検体前処理装置200のワークエリアの配置構成例であり、ワークエリアの上面を表す概略図である。同図に示すように、ワークエリアには、図2に示されるような血清(親検体)を含む採血管1を搬送する親検体搬送手段202、血清を小分けして吐出するための検査容器5を吐出位置203に搬送する子検体搬送手段204を備える。
【0030】
親検体搬送手段202は、複数本の採血管1を一列に並べて保持するラック6をY方向に順次投入する投入部202aと、投入部202aのエンド位置にきたラック6をX方向に搬送して、一列に並ぶ採血管1を順次吸引位置201にピッチ送りする横送り部202bと、血清を吸引し終えた採血管1´を保持するラック6´をY方向に順次排出する排出部202cを有する。
【0031】
また、親検体搬送手段202には、採血管1のシール栓或いはゴム栓を自動的に外す開栓機構や、採血管1に貼付されたバーコードラベルのバーコードを読み取るバーコードリーダが配設される。
【0032】
子検体搬送手段204は、1本の検査容器5を保持可能なホルダ205が複数環状に連結されており、コンベア等を用いて各ホルダ205に保持された検査容器5が吐出位置203を順次通過するように搬送する。子検体搬送手段204の他の構成例としては、外周に沿って検査容器5を保持する保持穴が配列されたターンテーブルを用い、保持された検査容器5が吐出位置203を順次通過するように回転しながら搬送する構成としてもよい。
【0033】
また、検体前処理装置200は更に、空の検査容器5を収容する空容器ラック206aと、子検体として血清が吐出された検査容器5´を収容する子検体容器ラック206bと、XYX3軸方向に移動可能なマニピュレータ(図示せず)とを備える。マニピュレータは、空容器ラック206aから空の検査容器5を逐次取り出して、子検体搬送手段204上の特定の位置(投入位置)にあるホルダ205に投入する一方で、子検体搬送手段204上の特定の位置(回収位置)にあるホルダ205に保持された血清吐出済みの検査容器5´を逐次回収して子検体容器ラック206bに収容する。マニピュレータは、空の検査容器5の投入用と、血清吐出済みの検査容器5´の回収用との用途別に設けてもよい。
【0034】
また、ワークエリアには、未使用のディスポーザブルチップをストックするチップラック207や使用後のディスポーザブルチップをフィッティングノズルから取り外すチップリムーバ208等が配設される。
【0035】
ここで、ノズル搬送装置100のY軸アーム105及びX軸アーム106による水平方向のノズル搬送高さ位置より下方では、ワークエリアの吸引位置201及び吐出位置203を含む適宜な領域を覆うカバー209が設けられる。カバー209には、図7に示すように、吸引位置201に対応する吸引口209aと、吐出位置203に対応する吐出口209bとが形成される。ここで、カバー209は、ノズル搬送装置100が移動し得る領域を覆うことが望ましい。
【0036】
更に、カバー209の吸引口209a及び吐出口209bにはそれぞれ開閉可能なシャッタ210a、210bが設けられる。本実施形態では、薄板状のシャッタ210a、210bの端部に回転軸211a、211bを設け、ここでは不図示のモータによりシャッタ210a、210bを回転させることで吸引口209a及び吐出口209bを開閉する構成となっている。シャッタ210a、210bの開閉は、ノズル搬送装置100の移動に伴って制御される。制御動作の詳細については後述する。
【0037】
このようにワークエリアの吸引位置201及び吐出位置203を含む適宜な領域をカバー209で覆うことにより、ある検体に他の検体が混入するコンタミネーションをより確実に防ぐことができる。
【0038】
図8は、検体前処理装置200の構成例を示すブロック図である。なお、既に説明した構成要素には同一の符号を付して説明する。第1の制御部212は、ノズル搬送装置100の各アーム101、105、106を駆動するためのモータ113X、113Y、113Zをドライバ114X、114Y、114Zを介して制御するとともに、血清を吸引したり、吐出したりするためのポンプ115を制御する。
【0039】
また、第1の制御部212は、検査容器をつかむマニピュレータ213を駆動するためのモータ214、及び、マニピュレータ213をXYZ3軸方向に移動させる各アームを駆動するためのモータ215X、215Y、215Zを、それぞれドライバ216、217X、217Y、217Zを介して制御する。
【0040】
さらに、第1の制御部212は、受け皿107を駆動するためのモータ109、カバー209の吸引口209aを開閉するシャッタ210aを駆動するためのモータ218a、カバー209の吐出口209bを開閉するシャッタ210bを駆動するためのモータ218bを、それぞれドライバ116、219a、219bを介して制御する。また、図8には図示されていないが、図4におけるセンサ112は第1の制御部212と接続されており、受け皿107の入出状態の情報を出力することができる。
【0041】
一方、第2の制御部220は、採血管1を図6の吸引位置201に搬送し、血清を吸引し終えた採血管1を吸引位置から搬送する親検体搬送手段202を制御する。また、血清を収容するための検査容器を吐出位置203に搬送する子検体搬送手段204を制御する。
【0042】
また、第2の制御部220は、採血管1に貼付されたバーコードラベルから読み取られたバーコード情報をバーコードリーダ221から収集する。
【0043】
これら第1の制御部212及び第2の制御部220は、ユーザインタフェース制御部222に接続する。ユーザインタフェース制御部222は、キーボードやマウス等の入力装置(図示せず)を介して入力された分注処理に関する制御命令又はパラメータ等を認識し、第1の制御部212又は第2の制御部220に出力する。また、図8の構成例において、入力装置の代わりにホストコンピュータを用い、分注処理の動作状況等を管理しつつ制御命令等を制御部212、220に出力できるようにしてもよい。
【0044】
以下、図9のフローチャートを参照して、検体前処理装置200における分注処理について説明する。ここでは、第1の制御部212による制御処理を中心に説明し、第2の制御部220による親検体搬送手段202や子検体搬送手段204の制御処理についての詳細な説明は省略する。
【0045】
未使用のディスポーザブルチップ103をフィッティングノズル102に装着した状態で(ステップS101)、第1の制御部212は、ノズル搬送装置100によりディスポーザブルチップ103を吸引位置201に移動させる(ステップS102)。このとき、受け皿107は、図5(a)に示すように、Z軸アーム101に収容された状態にある。
【0046】
また、第1の制御部212は、ディスポーザブルチップ103の移動中にモータ218aに指令を出して、カバー209の吸引口209aのシャッタ210aを開く(ステップS103)。このようにディスポーザブルチップ103の移動中に吸引口209aのシャッタ210aを開くことにより、ディスポーザブルチップ103が吸引位置201に位置した時点でシャッタ210aが既に開いていることになり、全体の処理の高速化を図ることができる。
【0047】
ディスポーザブルチップ103を吸引位置201に移動させたならば、第1の制御部212は、モータ109に指令を出して受け皿107をZ軸アーム101から引き出す(ステップS104)。そして、センサ112からの情報により受け皿107が完全に引き出されたことを検知した後、ディスポーザブルチップ103を下降させて、図5(b)に示すように、ディスポーザブルチップ103を受け皿107のノズル穴107a、更にはカバー209の吸引口209aに挿通させて、吸引位置201にある採血管1から所定量の血清を吸引する(ステップS105)。
【0048】
所定量の血清の吸引が終わると、第1の制御部212は、ディスポーザブルチップ103を上昇させた後(ステップS106)、モータ109に指令を出して受け皿107をZ軸アーム101に収容する(ステップS107)。このときも、センサ112からの情報により受け皿107が完全に収容されたことを検知する。また、第1の制御部212は、モータ218aに指令を出して、カバー209の吸引口209aのシャッタ210aを閉じる(ステップS108)。
【0049】
続いて、第1の制御部212は、ノズル搬送装置100により血清を含んだディスポーザブルチップ103を吐出位置203に移動させる(ステップS109)。このとき、受け皿107は、図5(a)に示すように、Z軸アーム101に収容された状態にある。この状態では、ノズル穴107aがZ軸アーム101内に位置するとともに、ディスポーザブルチップ103の下方に受け皿107の液溜め部107bが位置するので、ディスポーザブルチップ103から垂れ落ちる血清を受けて、血清がワークエリア上に飛散するのを防ぐことができる。
【0050】
また、第1の制御部212は、ディスポーザブルチップ103の移動中にモータ218bに指令を出して、カバー209の吐出口209bのシャッタ210bを開く(ステップS110)。このようにディスポーザブルチップ103の移動中に吐出口209aのシャッタ210bを開くことにより、ディスポーザブルチップ103が吐出位置203に位置した時点でシャッタ210bが既に開いていることになり、全体の処理の高速化を図ることができる。
【0051】
ディスポーザブルチップ103を吐出位置203に移動させたならば、第1の制御部212は、モータ109に指令を出して受け皿107をZ軸アーム101から引き出す(ステップS111)。そして、センサ112からの情報により受け皿107が完全に引き出されたことを検知した後、ディスポーザブルチップ103を下降させて、図5(b)に示すように、ディスポーザブルチップ103を受け皿107のノズル穴107a、更にはカバー209の吐出口209bに挿通させて、吐出位置203にある検査容器5に血清を吐出する(ステップS112)。
【0052】
各検査容器5への血清の吐出が終わると、第1の制御部212は、ディスポーザブルチップ103を上昇させた後(ステップS113)、モータ109に指令を出して受け皿107をZ軸アーム101に収容する(ステップS114)。このときも、センサ112からの情報により受け皿107が完全に収容されたことを検知する。また、第1の制御部212は、モータ218bに指令を出して、カバー209の吐出口209bのシャッタ210bを閉じる(ステップS115)。
【0053】
その後、第1の制御部212は、ノズル搬送装置100によりディスポーザブルチップ103をチップリムーバ208まで移動させる(ステップS116)。そして、第1の制御部212は、モータ109に指令を出して受け皿107をZ軸アーム101から引き出す(ステップS117)。センサ112からの情報により受け皿107が完全に引き出されたことを検知したならば、ディスポーザブルチップ103を下降させて、ディスポーザブルチップ103をフィッティングノズル102から取り外す(ステップS118)。このように、チップリムーバ動作の際には、受け皿107が引き出されてディスポーザブルチップ103が開口部107aを通過して下降した状態で、ディスポーザブルチップ103をフィッティングノズル102から引き抜く。以上で分注処理が完了する。
【0054】
以上、本発明を実施形態と共に説明したが、本発明は実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲内で変更等が可能である。例えば上記実施形態では、血清を検体として説明したが、血漿、尿、全血の他、検査に必要な試薬類を検体として移送する場合にも適用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明が適用可能な検体前処理装置を示す外観図である。
【図2】採血管内にて血液を血清、分離剤、血餅に分離した状態を示す図である。
【図3】ノズル搬送装置の概略構成を示す斜視図である。
【図4】受け皿の駆動機構を説明するための図である。
【図5】受け皿とディスポーザブルチップとの関係を示す図である。
【図6】検体前処理装置のワークエリアの配置構成例を示す平面図である。
【図7】カバーを示す平面図である。
【図8】検体前処理装置の構成例を示すブロック図である。
【図9】検体前処理装置における分注処理について説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0056】
1 採血管
2 血清
3 分離剤
4 血餅
5 検査容器
6 ラック
100 ノズル搬送装置
101 Z軸アーム
102 フィッティングノズル
103 ディスポーザブルチップ
104 エアホース
105 Y軸アーム
106 X軸アーム
107 受け皿
107a ノズル穴
107b 液溜め部
107c 開口縁部
108 カム
109 モータ
110 スプリング
111 遮光板
112 センサ
200 検体前処理装置
201 吸引位置
202 親検体搬送手段
203 吸引位置
204 子検体搬送手段
205 ホルダ
209 カバー
209a 吸引口
209b 吐出口
210a シャッタ
210b シャッタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体の分注を行うノズル手段と、前記ノズル手段を保持しつつ垂直方向に移動可能な垂直移動手段と、前記垂直移動手段を水平方向に移動可能な水平移動手段と、前記ノズル手段の下方に位置しつつ前記水平移動手段と独立して水平方向へ移動するように前記水平移動手段に配設された受け皿とを備えたノズル搬送機構を有し、
前記受け皿は、底面に前記ノズル手段が挿通可能な開口部を有しており、検体の吸引及び吐出時に、前記開口部が前記ノズル手段の直下に位置するまで水平移動することを特徴とする検体前処理装置。
【請求項2】
前記受け皿の底面は、前記開口部近傍が他の部分よりも高い位置にあることを特徴とする請求項1に記載の検体前処理装置。
【請求項3】
前記受け皿の底面は、前記開口部が高所となるよう傾斜していることを特徴とする請求項1に記載の検体前処理装置。
【請求項4】
前記ノズル搬送機構は、前記受け皿の移動状況を検知する検知手段を備え、前記移動状況に基づいて前記垂直移動手段の動作を制御することを特徴とする請求項1〜3いずれか1項に記載の検体前処理装置。
【請求項5】
前記ノズル搬送機構の下方に汚染防止カバーが備えられ、前記汚染防止カバーは、検体の吸引位置及び吐出位置に対応して吸引口及び吐出口が設けられ、更に前記ノズル搬送機構の移動状況に応じて前記吸引口及び前記吐出口を露出又は遮蔽するシャッタ機構が設けられたことを特徴とする請求項1〜4いずれか1項に記載の検体前処理装置。
【請求項6】
検体の吸引又は吐出の際に、前記シャッタ機構が前記吸引口又は前記吐出口を露出させた状態である場合に、前記ノズル搬送機構において前記受け皿の開口部が前記ノズル手段の直下に位置するまで前記受け皿を移動することを特徴とする請求項5に記載の検体前処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−147516(P2007−147516A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−344447(P2005−344447)
【出願日】平成17年11月29日(2005.11.29)
【出願人】(390029791)アロカ株式会社 (899)
【Fターム(参考)】