説明

検出装置

【課題】引きずりの検出が可能な検出装置を提供すること。
【解決手段】車両の乗降口を開閉するドア2,3の先端に取着された戸先ゴム5,6には、車両外側に第1の圧力室11a,21aがそれぞれ形成されるとともに、車両内側に第2の圧力室11b,21bがそれぞれ形成されている。圧力検知部は、各圧力室11a,21aの内圧に応じた信号を出力する。コントローラは、各圧力検知部により検出した各圧力室11a,21aの圧力に基づいて、両圧力室11a,21aの圧力が上昇した後、両圧力室11a,21aのうちの何れか一方の圧力室の圧力が減少したときに引きずりと判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用の検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道等の車両には、車両用ドアが閉じた際に持ち物等が挟まったことを検出する検出装置が設けられているものがある。この検出装置は、例えば、車両用ドアの先端部に戸先ゴムが設けられ、車両用ドアが閉じた際の戸先ゴムの押圧状態を検出することにより、戸挟み状態であるか否かを検出する。すなわち、この検出装置は、車両用ドアが閉じた際に持ち物等が挟まると、戸先ゴムが通常とは異なった状態で押圧されることから、その戸先ゴムの押圧状態の変化を検出することによって、戸挟み状態を検出する。例えば、戸先ゴム内に空間を形成し、空間内の圧力変化を検出することにより、戸先ゴムの変形、即ち押圧状態を検出する検出装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−8121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えば車外の人の持ち物(例えば鞄)が挟まった場合、車両の発進に伴って持ち物と一緒に引きずられることになる。一方、車内の人の持ち物(例えば鞄)が挟まった場合、その挟まった物を車内側に引っ張る場合にも戸挟みが検出されるため、ドアを開閉するために車両が停止され、車両の定時運行の妨げとなるおそれがあった。
【0005】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、引きずりの検出が可能な検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は、車両の乗降口を開閉する一対のドアの互いに対向する先端にそれぞれ取着され、弾性変形可能な中空部が、それぞれの車外側に形成された第1の戸先ゴム及び第2の戸先ゴムと、前記中空部の内圧に応じた圧力信号を出力する圧力検知部と、前記圧力検知部の出力信号に基づいて、前記第1の戸先ゴム及び前記第2の戸先ゴムの前記中空部の圧力が上昇した後、前記第1の戸先ゴムと前記第2の戸先ゴムのうちの何れか一方の前記中空部の圧力が減少したときに引きずりと判定する判定部と、を備える。
【0007】
前記第1の戸先ゴム及び前記第2の戸先ゴムのうちの少なくとも一方には複数の前記中空部が形成され、前記圧力検知部は、前記第1の戸先ゴム及び前記第2の戸先ゴムに形成された複数の中空部の内圧に応じた圧力信号をそれぞれ出力し、前記判定部は、前記圧力検知部から出力される複数の出力信号に基づいて、引きずりを判定する。
【0008】
また、前記判定部は、前記ドアの閉時と開時における前記各中空部の内圧の差を基準圧力差としてそれぞれ記憶し、複数の前記圧力検知部の出力信号に基づいて前記ドアの開閉時に前記各中空部の内圧の変化を測定して検出圧力差を算出し、前記基準圧力差と前記検出圧力差とを比較した結果に基づいて前記引きずりを判定する。
【0009】
また、前記判定部は、前記第1の戸先ゴムの車外側に形成された中空部及び前記第2の戸先ゴムの車外側に形成された中空部のそれぞれに対する検出圧力差が前記基準圧力差よりもそれぞれ大きく、前記第1の戸先ゴムの車内側に形成された中空部と前記第2の戸先ゴムの車内側に形成された中空部のうちの少なくとも一方の検出圧力差が前記基準圧力差と等しいときに前記引きずりの判定をキャンセルする。
【0010】
また、前記判定部は、前記第1の戸先ゴムの車内側に形成された中空部及び前記第2の戸先ゴムの車内側に形成された中空部のそれぞれに対する検出圧力差のうちの少なくとも一方が前記基準圧力差よりも大きく、前記第1の戸先ゴムの車外側に形成された中空部及び前記第2の戸先ゴムの車外側に形成された中空部の検出圧力差が前記基準圧力差と等しいときに前記引きずりの判定をキャンセルする。
【発明の効果】
【0011】
以上記述したように、本発明によれば、引きずりの検出が可能な検出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】車両の一部側面図。
【図2】(a)は戸先ゴムの平断面図、(b)は戸先ゴムの縦断面図。
【図3】検出装置の概略構成図。
【図4】動作状態の説明図。
【図5】動作状態の説明図。
【図6】動作状態の説明図。
【図7】動作状態の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1〜図7に従って説明する。
図1に示すように、車両に相当する列車の車体1には2枚のドア2,3が車体1の前後方向(図1の左右方向)へスライド可能に取着されている。両ドア2,3はドアモータ等のアクチュエータ(図示略)に機械的に連結され、アクチュエータの駆動に基づいて前後方向へスライドし、車体1の乗降口4を開閉する。
【0014】
各ドア2,3の先端部には、ドア2,3の略全高に亘って戸先ゴム5,6が取着されている。戸先ゴム5,6は、弾性変形可能な部材にて構成される。各戸先ゴム5,6は、ドア2,3の閉止時において、互いに密着した状態、詳しくは、先端同士が互いに干渉して弾性変形した状態で密着し、両ドア2,3間の合わせ部分を隙間無く塞ぐ。
【0015】
図2(a)に示すように、戸先ゴム5には、2つの圧力室11a,11bが形成されている。両圧力室11a,11bは、戸先ゴム5をその長手方向に直交する平面で切ったときの断面形状が、例えば円形状に形成されている。第1の圧力室11a及び第2の圧力室11bは、戸先ゴム5の先端部5aに形成されている。また、第1の圧力室11aは、戸先ゴム5内にあって、車両外側([車外]と表記)に形成され、第2の圧力室11bは、戸先ゴム5内にあって、車両内側([車内]と表記)に形成されている。第1の圧力室11aと第2の圧力室11bは、例えば、ドア2と垂直な軸に沿って配列されている。
【0016】
図2(b)に示すように、第1の圧力室11aは、戸先ゴム5の長手方向に沿って、上下の端部が開口する縦長の空間状に形成されている。第1の圧力室11aの下端は栓12aによって気密状態に封止されている。同様に、第2の圧力室11bは、戸先ゴム5の長手方向に沿って、上下の端部が開口する縦長の空間状に形成されている。そして、第2の圧力室11bの下端は栓12bによって気密状態に封止されている。
【0017】
上記したように、戸先ゴム5は弾性変形可能な部材により形成されている。従って、戸先ゴム5は、外部から加わる力によって変形する。そして、戸先ゴム5の変形は、第1の圧力室11aの断面積と第2の圧力室11bの断面積をそれぞれ変更する。つまり、第1の圧力室11aと第2の圧力室11bは、戸先ゴム5に加わる力によってそれぞれの形状(断面積)が変化する。
【0018】
そして、第1の圧力室11aの変形量と第2の圧力室11bの変形量は、戸先ゴム5に加わる力の方向に対応する。図2(a)において、例えば[車外]から戸先ゴム5に力が加わるとき、第1の圧力室11aの変形量は、第2の圧力室11bの変形量より大きい。逆に、[車内]から戸先ゴム5に力が加わるとき、第1の圧力室11aの変形量は、第2の圧力室11bの変形量より小さい。
【0019】
同様に、戸先ゴム6には、2つの圧力室21a,21bが形成されている。即ち、両圧力室21a,21bは、戸先ゴム6をその長手方向に直交する平面で切ったときの断面形状が、例えば円形状に形成されている。第1の圧力室21a及び第2の圧力室21bは、戸先ゴム6の先端部6aに形成されている。また、第1の圧力室21aは、戸先ゴム6内にあって、車両外側([車外]と表記)に形成され、第2の圧力室21bは、戸先ゴム6内にあって、車両内側([車内]と表記)に形成されている。第1の圧力室21aと第2の圧力室21bは、例えば、ドア3と垂直な軸に沿って配列されている。
【0020】
図2(b)に示すように、第1の圧力室21aは、戸先ゴム6の長手方向に沿って、上下の端部が開口する縦長の空間状に形成されている。第1の圧力室21aの下端は栓22aによって気密状態に封止されている。同様に、第2の圧力室21bは、戸先ゴム6の長手方向に沿って、上下の端部が開口する縦長の空間状に形成されている。そして、第2の圧力室21bの下端は栓22bによって気密状態に封止されている。
【0021】
上記したように、戸先ゴム6は弾性変形可能な部材により形成されている。従って、戸先ゴム6は、外部から加わる力によって変形する。そして、戸先ゴム6の変形は、第1の圧力室21aの断面積と第2の圧力室21bの断面積をそれぞれ変更する。つまり、第1の圧力室21aと第2の圧力室21bは、戸先ゴム6に加わる力によってそれぞれの形状(断面積)が変化する。
【0022】
そして、第1の圧力室21aの変形量と第2の圧力室21bの変形量は、戸先ゴム6に加わる力の方向に対応する。図2(a)において、例えば[車外]から戸先ゴム6に力が加わるとき、第1の圧力室21aの変形量は、第2の圧力室21bの変形量より大きい。逆に、[車内]から戸先ゴム6に力が加わるとき、第1の圧力室21aの変形量は、第2の圧力室21bの変形量より小さい。
【0023】
戸先ゴム5の上端は圧力センサ13と接続されている。図2(a)に示すように、圧力センサ13は、2つの圧力検知部13a,13bを備えている。第1の圧力検知部13aは、第1の圧力室11aの内圧を検出する。そして、圧力検知部13aは、検出した圧力に応じたアナログ量の圧力信号を、図3に示す信号変換部(信号変換ユニット)14に出力する。同様に、第2の圧力検知部13bは、第2の圧力室11bの内圧を検出する。そして、圧力検知部13bは、検知した圧力に応じたアナログ量の圧力信号を、図3に示す信号変換部14に出力する。
【0024】
図3に示すように、信号変換部14は、圧力検知部13aから出力される圧力信号をデジタル信号に変換し、変換後の信号をコントローラ31に出力する。信号変換部14は、圧力検知部13bから出力される圧力信号をデジタル信号に変換し、変換後の信号をコントローラ31に出力する。
【0025】
同様に、図2(b)に示すように、戸先ゴム6の上端は圧力センサ23と接続されている。図2(a)に示すように、圧力センサ23は、2つの圧力検知部23a,23bを備えている。第1の圧力検知部23aは、第1の圧力室21aの内圧を検出する。そして、圧力検知部23aは、検出した圧力に応じたアナログ量の圧力信号を、図3に示す信号変換部(信号変換ユニット)24に出力する。同様に、第2の圧力検知部23bは、第2の圧力室21bの内圧を検出する。そして、圧力検知部23bは、検知した圧力に応じたアナログ量の圧力信号を、図3に示す信号変換部24に出力する。
【0026】
信号変換部24は、圧力検知部23aから出力される圧力信号をデジタル信号に変換し、変換後の信号をコントローラ31に出力する。信号変換部24は、圧力検知部23bから出力される圧力信号をデジタル信号に変換し、変換後の信号をコントローラ31に出力する。
【0027】
コントローラ31は、信号変換部14,24から出力される信号に基づいて、各圧力室11a,11b,21a,21bの圧力を測定する。コントローラ31は、測定した各圧力に基づいて、引きずりの有無を判定する。そして、コントローラ31は、判定結果に応じた信号を、信号線32を介して上位の装置、例えば車体1の制御装置に出力する。その制御装置は、コントローラ31から出力される信号に応答して、例えば表示ランプの点灯等を制御する。
【0028】
次に、検出装置の作用を説明する。
コントローラ31は、初期設定処理において、ドア2,3の開閉に応じて測定した各圧力室11a,11b,21a,21bの圧力に基づいて、基準圧力差を設定する。詳しくは、コントローラ31は、挟み込みなくドア2,3を閉じたときの第1の圧力室11aの圧力(閉時圧力値)と、ドア2,3を開いたときの第1の圧力室11aの圧力(開時圧力値)とをそれぞれ測定する。そして、コントローラ31は、閉時圧力値から開時圧力値を減算し、その演算結果を第1の圧力室11aに対する基準圧力差として図示しない記憶装置に記憶する。同様に、コントローラ31は、ドア2,3の開閉に応じて各圧力室11b,21a,21bの閉時圧力値と開時圧力値とをそれぞれ測定し、各圧力室11b,21a,21bに対する基準圧力差を算出し、各基準圧力差を記憶装置に記憶する。
【0029】
コントローラ31は、通常処理において、各圧力室11a,11b,21a,21bの圧力変化に応じて圧力差を測定し、その測定結果と基準圧力差とを比較することにより、引きずり等の状態を判定する。
【0030】
詳述すると、コントローラ31は、圧力室11a内の圧力を所定のタイミングで測定する。所定のタイミングは、例えば、タイマ回路等による一定時間間隔に設定されている。コントローラ31は、圧力室11a内の圧力変化、つまり、ドア2,3の開時の圧力値と、ドア2,3の閉時の圧力値とを測定し、開時の圧力値と閉時の圧力値との差(検出圧力差)を算出する。同様に、コントローラ31は、各圧力室11b,21a,21bに対する検出圧力差を算出する。そして、コントローラ31は、各圧力室11a,11b,21a,21bについて、検出圧力差と基準圧力差とをそれぞれ比較し、比較結果に基づいて、引きずり等の状態を判定する。
【0031】
コントローラ31は、検出圧力差が基準圧力差と等しい、又は基準圧力差に対して設定された許容範囲内に検出圧力差が入っているときに、異常無しと判定する。一方、コントローラ31は、検出圧力差が基準圧力差と等しくない、又は検出圧力差が許容範囲内にないときに、異常ありと判定する。
【0032】
例えば、図4に示すように、ドア2,3の間に、被挟体41が挟まる。この被挟体41は例えば手提げ袋等のように、本体部をひも等の細い又は薄い部材にて吊り下げるものである。この場合、本体部をドア2,3間に挟んだ場合、全ての圧力室11a,11b,21a,21bの圧力が、通常時よりも高い。従って、コントローラ31は、各圧力室11a,11b,21a,21bの検出圧力差が基準圧力差よりも大きくなるため、挟み込みありと判定し、その判定に応じた信号を出力する。
【0033】
一方、ひも等の部材のみがドア2,3間に挟まった場合、全ての圧力室11a,11b,21a,21bの圧力変化、つまり検出圧力差は、通常時の圧力変化、つまり基準圧力差に近い値となる。このような場合、図4に実線で示すように、ドア2,3の間に挟まった被挟体41を、車内からドア2,3に対して垂直に引っ張った場合、車外側の圧力室11a,21aの圧力が通常時(挟み込みが無いとき)よりも高くなる。更に、図4に一点鎖線で示すように、被挟体41をドア2,3に対して左方向に引っ張った場合、その引張り方向に応じて、車内側の圧力室11bの圧力が通常時よりも高くなる。同様に、図4に二点鎖線で示すように、被挟体41をドア2,3に対して右方向に引っ張った場合、その引張り方向に応じて、車内側の圧力室21bの圧力が通常時よりも高くなる。
【0034】
従って、コントローラ31は、車外側の圧力室11a,21aに対する検出圧力差が基準圧力差よりもそれぞれ大きいとき、車内の人の持ち物がドア2,3間に挟まっていると判定し、その判定に応じた信号を出力する。また、車外側の圧力室11a,21aの検出圧力差がそれぞれ基準圧力差よりも大きく、かつ、車内側の圧力室11b,21bの何れか一方の検出圧力差が基準圧力差よりも大きいとき、車内の人の持ち物がドア2,3間に挟まっていると判定し、その判定に応じた信号を出力する。
【0035】
また、図5に示すように、ドア2,3の間に被挟体41が挟まった場合、各圧力室11a,11b,21a,21bの圧力が通常時(挟み込みが無いとき)よりも高くなる。その後、車両が発車した場合、車両の進行方向(図5の矢印で示す方向)に対して、乗降口にあって進行方向のドア3の戸先ゴム5に形成された圧力室21aの圧力が低下する。従って、コントローラ31は、各圧力室11a,11b,21a,21bの圧力が高くなった後、車外側の圧力室11a,21aのうちの何れか一方の圧力が低下したときに、引きずりと判定し、その判定結果に応じた信号を出力する。
【0036】
なお、車外の人の持ち物(降車した人の持ち物)、例えば巾着袋のように、被挟体41が細いひも状の部材によりぶら下げられる物であってひも状の部材がドア2,3間に挟まった場合、被挟体41は、車外に向って引っ張られる。従って、車外側の圧力室11a,21aの圧力に対して、車内側の圧力室11b,21bの圧力が高くなる。その後、車両が発車すると、車両の進行方向と逆側のドアの戸先ゴムに形成された圧力室の圧力が通常時よりも高くなる。なお、進行方向側のドアの戸先ゴムに形成された圧力室の圧力は、通常時よりも下がる場合がある。このような場合、コントローラ31は、車内側の圧力室11b,21bに対する検出圧力差が基準圧力差よりもそれぞれ大きく、かつ、車外側の圧力室11a,21aのうちの何れか一方の検出圧力差が基準圧力差よりも大きいとき、引きずりと判定し、その判定に応じた信号を出力する。
【0037】
また、図6に示すように、車内の人や物が戸先ゴム5,6に押し当てられた場合、車内側の圧力室11b,21bの圧力が通常時(挟み込みが無いとき)よりも高くなり、車外側の圧力室11a,21aの圧力はほぼ通常時と等しくなる。従って、コントローラ31は、各圧力室11a,11b,21a,21bの検出圧力差と基準圧力差ともに基づいて引きずりではないと判定し、引きずり判定をキャンセルする。
【0038】
また、図7に示すように、西日などの太陽光が戸先ゴム5,6に照射されると、車外側の圧力室11a,21aの圧力が緩やかに上昇する。しかし、ドア2,3の閉時における圧力室11a,21aの圧力(閉時圧力値)と、ドア2,3の開時における圧力室11a,21aの圧力(開時圧力値)は、それぞれ太陽光によって暖められた気体による圧力であるため、閉時圧力値と開時圧力値との差(検出圧力差)の変化は、両ドア2,3間に被挟体41を挟み込んだ場合と比べて少ない。この場合、車内側の圧力室11b,21bの圧力は上昇しない。従って、コントローラ31は、太陽光の照射による圧力変化を、引きずりではないと判定する。
【0039】
以上記述したように、本実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)車体1の乗降口4を開閉するドア2,3の先端に取着された戸先ゴム5,6には、車両外側に第1の圧力室11a,21aがそれぞれ形成されるとともに、車両内側に第2の圧力室11b,21bがそれぞれ形成されている。圧力検知部13a,13b,23a,23bは、各圧力室11a,11b,21a,21bの内圧に応じた信号を出力する。コントローラ31は、各圧力検知部13a,13b,23a,23bにより検出した各圧力室11a,11b,21a,21bの圧力に基づいて、引きずり等の状態を判定する。コントローラ31は、各圧力室11a,11b,21a,21bの圧力が上昇した後、ドア2の戸先ゴム5に形成された圧力室11aとドア3の戸先ゴム6に形成された圧力室21aのうちの何れか一方の圧力が低下したとき、引きずりと判定する。このように判定することで、引きずりを検出することができる。
【0040】
(2)各圧力室11a,11b,21a,21bの圧力は、例えば車体1の内部からドア2,3に挟まれた被挟体41を引っ張るときのように、被挟体41の引張り方向に応じて変化する。従って、各圧力室11a,11b,21a,21bについて、ドア2,3の開時における圧力と閉時における圧力との差(検出圧力差)を検出して判定をキャンセルするようにすることで、必要な状態を確実に判定する、つまり検出の精度を向上することが可能となる。
【0041】
(3)コントローラ31は、ドア2,3の閉時と開時における各圧力室11a,11b,21a,21bの内圧の差を基準圧力差としてそれぞれ記憶する。そして、コントローラ31は、各圧力検知部13a,13b,23a,23bの出力信号に基づいて、ドア2,3の開閉時に各圧力室11a,11b,21a,21bの内圧の変化を測定して検出圧力差を算出する。そして、コントローラ31は、基準圧力差と検出圧力差とを比較した結果に基づいて、引きずりの有無を検出する。従って、例えば、温度変化による圧力変化のような各圧力室11a,11b,21a,21bの内圧の変化をキャンセルして、ドア2,3に挟まれたものによる圧力変化を精度よく検出することが可能となる。また、内圧の変化をキャンセルすることで、誤検出を防止することが可能となる。
【0042】
(4)コントローラ31は、車外側の圧力室11a,21aのそれぞれに対する検出圧力差が基準圧力差よりもそれぞれ大きく、車内側の圧力室11b,21bのうちの少なくとも一方の検出圧力差が基準圧力差と等しいときに引きずりの判定をキャンセルする。従って、車体1の内側から被挟体41を引っ張っているとき、引きずりではないと判定することにより、車体1の外側から被挟体41を引っ張ることを検出する、つまり検出の精度を向上することができる。
【0043】
(5)コントローラ31は、車内側の圧力室11b,21bのそれぞれに対する検出圧力差のうちの少なくとも一方が基準圧力差よりも大きく、車外側の圧力室11a,21aの検出圧力差が基準圧力差と等しいときに引きずりの判定をキャンセルする。従って、例えば、車内から物などが戸先ゴムに当ったときのように、車内側から戸先ゴム5,6を押圧したときを引きずりではないと判定することで、車両の外側から被挟体を引っ張ることを検出する、つまり検出の精度を向上することができる。
【0044】
尚、上記実施形態は、以下の態様で実施してもよい。
・上記実施形態では、1つの戸先ゴム5内に2つの圧力室11a,11bを形成し、1つの戸先ゴム6内に2つの圧力室21a,21bを形成した。これに対し、各圧力室を互いに異なる戸先ゴム内に形成してもよい。つまり、各ドア2,3の先端に、1つの圧力室が形成された車外側の戸先ゴムと、1つの圧力室が形成された車内側の戸先ゴムとを取着する。このようにしても、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0045】
・上記実施形態では、圧力センサ13,23を各戸先ゴム5,6の上端に接続したが、各戸先ゴム5,6の下端に接続し、各圧力室11a,11b,21a,21bの上端を閉止するようにしてもよい。
【0046】
・上記実施形態に対し、各圧力室11a,11b,21a,21bの配列を適宜変更されてもよい。例えば、第1の圧力室11a,21aに対し、第2の圧力室11b,21bを、各戸先ゴム5,6の先端側に形成するようにしてもよい。また、第2の圧力室11b,21bを各戸先ゴム5,6の基端側、つまり各ドア2,3の先端に近づけて形成してもよい。
【0047】
・上記実施形態に対し、各戸先ゴム5,6に形成する圧力室の数を、適宜変更しても良い。また、戸先ゴム5に形成する圧力室の数と、戸先ゴム6に形成する圧力室の数を、互いに異なる数に設定してもよい。
【0048】
また、戸先ゴムに3つ以上の圧力室を形成した場合、複数の圧力室を、ドアと垂直な軸に沿って配置する、戸先ゴムの先端に沿って配置する、など、配置位置を適宜設定するようにしてもよい。
【0049】
・上記実施形態では、乗降口4を2枚のドア2,3にて開閉したが、これに限定されるものではなく、例えば1枚のドアにより乗降口を開閉するようにしてもよい。
・上記実施形態では、本発明をスライドするドアに適用したが、折りたたみ式のドアに適用しても良い。また、上記実施形態においては、本発明を列車のドアに適用したが、これに限定されるものではなく、例えばバスのドア,船舶のドア,飛行機のドア等の車両のドア全般に適用できる。
【符号の説明】
【0050】
2,3…ドア、5,6…戸先ゴム、11a…第1の圧力室(第1の中空部)、11b…第2の圧力室(第2の中空部)、21a…第1の圧力室(第3の中空部)、21b…第2の圧力室(第4の中空部)、13a,23b…第1の圧力検知部、13b,23b…第2の圧力検知部、31…コントローラ(判定部)、41…被挟体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の乗降口を開閉する一対のドアの互いに対向する先端にそれぞれ取着され、弾性変形可能な中空部が、それぞれの車外側に形成された第1の戸先ゴム及び第2の戸先ゴムと、
前記中空部の内圧に応じた圧力信号を出力する圧力検知部と、
前記圧力検知部の出力信号に基づいて、前記第1の戸先ゴム及び前記第2の戸先ゴムの前記中空部の圧力が上昇した後、前記第1の戸先ゴムと前記第2の戸先ゴムのうちの何れか一方の前記中空部の圧力が減少したときに引きずりと判定する判定部と、
を備えたことを特徴とする検出装置。
【請求項2】
前記第1の戸先ゴム及び前記第2の戸先ゴムのうちの少なくとも一方には複数の前記中空部が形成され、
前記圧力検知部は、前記第1の戸先ゴム及び前記第2の戸先ゴムに形成された複数の中空部の内圧に応じた圧力信号をそれぞれ出力し、
前記判定部は、前記圧力検知部から出力される複数の出力信号に基づいて、引きずりを判定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の検出装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記ドアの閉時と開時における前記各中空部の内圧の差を基準圧力差としてそれぞれ記憶し、複数の前記圧力検知部の出力信号に基づいて前記ドアの開閉時に前記各中空部の内圧の変化を測定して検出圧力差を算出し、前記基準圧力差と前記検出圧力差とを比較した結果に基づいて前記引きずりを判定する、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の検出装置。
【請求項4】
前記判定部は、前記第1の戸先ゴムの車外側に形成された中空部及び前記第2の戸先ゴムの車外側に形成された中空部のそれぞれに対する検出圧力差が前記基準圧力差よりもそれぞれ大きく、前記第1の戸先ゴムの車内側に形成された中空部と前記第2の戸先ゴムの車内側に形成された中空部のうちの少なくとも一方の検出圧力差が前記基準圧力差と等しいときに前記引きずりの判定をキャンセルする、ことを特徴とする請求項3に記載の検出装置。
【請求項5】
前記判定部は、前記第1の戸先ゴムの車内側に形成された中空部及び前記第2の戸先ゴムの車内側に形成された中空部のそれぞれに対する検出圧力差のうちの少なくとも一方が前記基準圧力差よりも大きく、前記第1の戸先ゴムの車外側に形成された中空部及び前記第2の戸先ゴムの車外側に形成された中空部の検出圧力差が前記基準圧力差と等しいときに前記引きずりの判定をキャンセルする、ことを特徴とする請求項3又は4に記載の検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−6469(P2013−6469A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−139456(P2011−139456)
【出願日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(000106221)パナソニック デバイスSUNX株式会社 (578)
【Fターム(参考)】