説明

検査具支持構造

【課題】検査具の支持構造において、簡易な構成により検査具を回転自在に支持可能とすることにより、装置コストの低減および検査作業の効率化を実現する。
【解決手段】円筒状または円柱状を呈するねじゲージ2を検査具支持装置によって支持する検査具支持構造において、検査具支持装置が、ねじゲージをその軸心X周りに回転自在に支持する円環状の支持体3と、この支持体の吊り下げに供されるアイボルトとを備えた構成とし、ねじゲージ2を回転可能な状態でクレーン等により吊り下げ可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査具を検査具支持装置によって回転自在に支持する検査具支持構造に関し、特に、大径管の検査に用いられる大型のねじゲージに好適な検査具支持構造に関する。
【0002】
石油の採掘に供される大径の油井管等に形成されたねじの検査には、大型のねじゲージを使用する必要がある。このような大型のねじゲージを用いて人手により検査作業を行う場合には、ねじゲージの重量が大きいために作業者に大きな負荷がかかる。
【0003】
そこで、そのような検査作業を機械化するための技術が開発されており、例えば、ねじゲージを昇降可能に支持する昇降装置と、この昇降装置を水平方向に移動可能に支持する台車と、この台車上においてねじゲージを回転駆動するモータとを備えた検査具支持装置が知られている(特許文献1,2参照)。また、例えば、鉛直方向に延在し、下端にねじゲージが取り付けられたスピンドルと、このスピンドルを回転駆動するモータと、これらスピンドルおよびモータを支持するハウジングと、一端側がハウジングに接続される一方、他端側が錘に接続されたワイヤロープと、このワイヤロープが掛着されるとともに、ハウジングを昇降させる駆動源に接続された滑車とを備えた検査具支持装置が知られている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭58−154405号公報
【特許文献2】特開昭60−258397号公報
【特許文献3】特公平3−26340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1〜3に記載された従来の検査具支持装置は、装置構成が複雑であるため装置コストが嵩むとともに、装置が大型化するため設置スペースや検査場所に制約が生じるという課題があった。さらに、上記従来の検査具支持装置では、検査対象物と検査具との位置合わせ等の作業が複雑化するため、作業者が人手により検査作業を行うよりも却って作業効率や検査精度が低下してしまう場合があるというという課題もあった。
【0006】
本発明は、このような従来技術の課題を鑑みて案出されたものであり、簡易な構成により検査具を回転自在に支持可能とすることにより、装置コストの低減および検査作業の効率化を実現した検査具支持構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた第1の発明は、円筒状または円柱状を呈する検査具を検査具支持装置によって支持する検査具支持構造であって、前記検査具支持装置が、前記検査具をその軸心周りに回転自在に支持する円環状の支持体と、前記支持体に設けられ、当該支持体の吊り下げに供される吊り下げ部とを備えた構成とする。
【0008】
また、第2の発明として、前記検査具は、その外周面に環状の支持部を有し、前記検査具支持装置は、前記支持体の内周面から内側に突出した状態で保持され、かつ前記支持部に係合するローラを有する構成とすることができる。
【0009】
また、第3の発明として、前記支持体は、その内周面に環状の支持部を有し、前記検査具は、その外周面から外側に突出した状態で保持され、かつ前記支持部に係合するローラを有する構成とすることができる。
【0010】
また、第4の発明として、前記支持部は、環状の溝または環状のフランジである構成とすることができる。
【0011】
また、第5の発明として、前記支持体は、前記検査具を支持する位置が当該検査具の軸方向における釣り合い位置と重なる構成とすることができる。
【発明の効果】
【0012】
上記第1の発明によれば、簡易な構成により検査具を回転自在に支持可能とすることにより、装置コストの低減および検査作業の効率化を実現することができるという優れた効果を奏する。また、上記第2から第4の発明によれば、検査具をより良好に回転させることが可能となり、検査作業の効率が一層向上する。また、上記第5の発明によれば、検査を実施する際に検査具の軸方向を水平に保持することが可能となり、検査作業の効率が一層向上する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1実施形態に係る検査具支持装置の正面図
【図2】第1実施形態に係る検査具支持装置の側面図
【図3】第1実施形態に係る検査具支持装置の組立分解斜視図
【図4】図1中のIV−IV断面図
【図5】第1実施形態に係る検査具支持装置の変形例を示す側面図
【図6】第2実施形態に係る検査具支持装置による検査具支持構造の要部断面図
【図7】第3実施形態に係る検査具支持装置による検査具支持構造の要部断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
まず、図1〜図5を参照して、本発明の第1実施形態に係る検査具支持装置1による検査具支持構造について説明する。検査具支持装置1は、検査具としての大型のねじゲージ2を支持するものであり、ねじゲージ2をその軸心X(図2参照)周りに回転自在に支持する円環状の支持体3と、この支持体3を吊り下げるためにその外周面に取り付けられたアイボルト4とから主として構成される。
【0015】
ねじゲージ2は、図示しない検査対象(例えば、大径の油井管)の検査に好適な大型(例えば、呼び径500mm、重量が40kg)のものであり、検査対象に形成された雄ねじが必要な精度を有しているか否かを判定するのに用いられる。図2,図3に示すように、ねじゲージ2の外周面には、検査具支持装置1の支持部位となる環状の支持溝5が周方向に沿って形成されている。また、ねじゲージ2の内周面6には、検査対象に関する所定の規格に準じたねじ山が形成されている。
【0016】
支持体3は、ねじゲージ2の外径よりも僅かに大きい径を有する支持孔41を有しており、この支持孔41にねじゲージ2を挿入した状態で支持する。また、支持体3の正面側および背面側には、図3に示すように、対をなす凹部11,11が周方向に所定間隔をおいて複数設けられており、これにより、各凹部11,11の間に薄肉のローラ取付部12a〜12dが形成されている。また、各ローラ取付部12a〜12dの両側には、ラジアル荷重用の玉軸受から構成される一対のローラ13,13がそれぞれ取り付けられている。
【0017】
上記検査具支持装置1によってねじゲージ2を支持する際には、作業者は、まず、ねじゲージ2を支持体3の支持孔41に挿入し、支持溝5の位置を支持体3の位置と一致させるようにする。続いて、作業者は、平座金14,14およびばね座金15を介在させた状態で、ローラ13,13の中心孔42およびローラ取付部12a〜12dの取付孔43にボルト16を挿通し、これをナット17と締結することによりローラ13,13を固定する。
【0018】
これにより、ローラ13,13は、図4に示すように、外輪13a,13aが支持孔41の内周面よりも内側に突出して支持溝5に挿入され、外輪13a,13aの外周面が支持溝5の底面と対向した状態となる。一方、ローラ13,13の内輪13b,13bはローラ取付部12aを挟持した状態となる。このとき、内輪13b,13bとローラ取付部12aとの間に平座金14,14が介装されることにより、外輪13a,13aはローラ取付部12aと当接することなく内輪13b,13bに対して相対回転可能である。
【0019】
このように検査具支持装置1に支持されたねじゲージ2によって検査を実施する際には、まず、作業者は、クレーンやホイスト(ともに図示せず)により、アイボルト4を利用して検査具支持装置1を吊り上げる。このとき、図2に示すように、検査具支持装置1がねじゲージ2を支持する位置(すなわち、支持溝5が形成される位置)は、ねじゲージ2の重心Gと重なるように設定されている。これにより、ねじゲージ2は、その軸心Xが略水平となるように保持される。続いて、作業者は、検査対象(図示せず)に形成された雄ねじの先端部を、一方側(図2の右側)からねじゲージ2に挿入した後、ねじゲージ2を手動で回転させて、内周面6に形成されたねじ山と雄ねじとの螺合状態を確認する。
【0020】
上記ねじゲージ2の支持構造においては、ねじゲージ2の軸心Xが略水平となるように保持されているため、作業者によるねじゲージ2と検査対象との位置合わせの精度が向上し、その結果、位置合わせの失敗による検査対象(ここでは、雄ねじ)の破損等のトラブルを回避することができる。加えて、作業者によるねじゲージ2の回転等の作業性が向上するという利点もある。また、図1に示すように、吊り下げ時(検査実施時)に支持体3の下側に位置するローラ取付部12a,12bの間隔は、支持体3の上側に位置するローラ取付部12c,12dの間隔に比べて狭く設定されており、これにより、ローラ13,13に対するねじゲージ2の荷重の分配が適正化されて、ねじゲージ2の回転動作の安定化が図れる。
【0021】
また、図5に示すように、上記ねじゲージ2には、作業者の作業を容易とするための操作ハンドル21を設けることが可能である。操作ハンドル21は、連結部22,22を介してねじゲージ2の端面に連結された支持板23に一対の把持部24が取り付けられた構成を有している。この場合、ねじゲージ2の支持溝5は、操作ハンドル21を含めたねじゲージ2の重心Gと重なるように形成されており、これにより、上述の場合と同様にねじゲージ2を略水平に保持することが可能となる。
【0022】
次に、本発明の第2実施形態に係る検査具支持装置1による検査具支持構造について、図4と同様の断面を示す図6を参照して説明する。図6では、第1実施形態と同様の構成要素については同一の符号が付されている。また、第2実施形態について以下で特に言及しない事項については、第1実施形態の場合と同様であり、詳細な説明を省略する。
【0023】
第2実施形態に係る検査具支持装置1は、ローラ13,13がねじゲージ2側に取り付けられる点において第1実施形態の場合と異なる。ねじゲージ2の外周面には環状のローラ取付部31が突設されおり、このローラ取付部31にはローラ13,13の取付孔43が周方向に所定の間隔をおいて複数設けられている。また、支持体3の内周面には、環状の支持溝5が周方向に沿って形成されている。
【0024】
検査具支持装置1によるねじゲージ2の支持は、第1実施形態の場合と概ね同様に行うことができる。作業者は、まず、ねじゲージ2を支持体3の支持孔41に挿入し、ローラ取付部31の位置を支持体3の支持溝5の位置と一致させるようにする。続いて、作業者は、平座金14,14およびばね座金15を介在させた状態で、ローラ13,13の中心孔42およびローラ取付部12a〜12dの取付孔43にボルト16を挿通し、これをナット17と締結することによりローラ13,13を固定する。
【0025】
次に、本発明の第3実施形態に係る検査具支持装置1による検査具支持構造について、図4と同様の断面を示す図7を参照して説明する。図7では、第1実施形態と同様の構成要素については同一の符号が付されている。また、第3実施形態について以下で特に言及しない事項については、第1実施形態の場合と同様であり、詳細な説明を省略する。
【0026】
第3実施形態では、検査具支持装置1は第1実施形態の場合と同様であるが、ねじゲージ2の構成が第1実施形態の場合と異なる。図7に示すように、ねじゲージ2には、第1実施形態における支持溝5(図4参照)の代わりに、検査具支持装置1の支持部位となる環状の支持フランジ51が周方向に沿って突設されている。ローラ13,13は、その外輪13a,13aによって支持フランジ51を挟み込むように配置され、これにより、外輪13a,13aの外周面は、支持フランジ51の両側のねじゲージ2の外周面と対向した状態となる。
【0027】
検査具支持装置1によるねじゲージ2の支持は、第1実施形態の場合と概ね同様に行うことができる。作業者は、まず、ねじゲージ2を支持体3の支持孔41に挿入し、支持フランジ51の位置を支持体3の位置と一致させるようにする。続いて、作業者は、平座金14,14およびばね座金15を介在させた状態で、ローラ13,13の中心孔42およびローラ取付部12a〜12dの取付孔43にボルト16を挿通し、これをナット17と締結することによりローラ13,13を固定する。
【0028】
なお、上記検査具支持装置1による検査具支持構造の更なる変形例として、図6に示した第2実施形態の場合と同様に、ローラ13,13をねじゲージ2側に取り付けた構成とするとともに、第3実施形態の場合と同様の支持フランジを支持体3の内周面に周方向に沿って形成することも可能である。この場合、ローラ13,13は、その外輪13a,13aによって支持体3側の支持フランジを挟み込むように配置され、これにより、外輪13a,13aの外周面は、支持フランジ51の両側の支持体3の内周面と対向した状態となる。
【0029】
本発明を特定の実施形態に基づいて詳細に説明したが、上記実施形態はあくまでも例示であって、本発明はこれらの実施形態によって限定されるものではない。例えば、ローラ13,13には、玉軸受に限らず、これと同様の機能を果たすことが可能な他の転動体を用いてもよい。検査具、支持装置1の支持位置は、必ずしもねじゲージ2の重心に限らず、少なくともねじゲージ2の軸心X方向における釣り合い位置と重なればよい。また、検査具支持装置1は、雌ねじの検査に用いられるねじゲージを支持することも可能である。その場合、ねじゲージの外周面において検査用のねじ山が形成されていない部位を設け、当該部位に上述と同様の支持溝が形成されることになる。また、場合によっては、検査具支持装置1は、ねじゲージの支持に限らず、例えば、大型の配管へ継手を組み込む際の継手の支持や、或いは、大型のねじ軸へナットをねじ込む場合のナットの支持に用いることもできる。
【符号の説明】
【0030】
1 検査具支持装置
2 ねじゲージ(検査具)
3 支持体
4 アイボルト(吊り下げ部)
5 支持溝
6 内周面
11 凹部
12a〜12d ローラ取付部
13 ローラ
13a 外輪
13b 内輪
21操作ハンドル
31 ローラ取付部
41 支持孔
42 中心孔
43 取付孔
51 支持フランジ
G 重心
X 軸心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状または円柱状を呈する検査具を検査具支持装置によって支持する検査具支持構造であって、
前記検査具支持装置が、
前記検査具をその軸心周りに回転自在に支持する円環状の支持体と、
前記支持体に設けられ、当該支持体の吊り下げに供される吊り下げ部と
を備えたことを特徴とする検査具支持構造。
【請求項2】
前記検査具は、その外周面に環状の支持部を有し、
前記検査具支持装置は、前記支持体の内周面から内側に突出した状態で保持され、かつ前記支持部に係合するローラを有することを特徴とする、請求項1に記載の検査具支持構造。
【請求項3】
前記支持体は、その内周面に環状の支持部を有し、
前記検査具は、その外周面から外側に突出した状態で保持され、かつ前記支持部に係合するローラを有することを特徴とする、請求項1に記載の検査具支持構造。
【請求項4】
前記支持部は、環状の溝または環状のフランジであることを特徴とする、請求項2または請求項3に記載の検査具支持構造。
【請求項5】
前記支持体は、前記検査具を支持する位置が当該検査具の軸方向における釣り合い位置と重なることを特徴とする、請求項1から請求項4のいずれかに記載の検査具支持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−2323(P2011−2323A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−145181(P2009−145181)
【出願日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(000170853)黒田精工株式会社 (81)
【Fターム(参考)】