説明

検査成績表の確認方法

【課題】 実車に対する検査成績表にチェック乃至確認漏れがないかを簡単確実に判断できる方法を提供する。
【解決手段】 複数のエリアのうち、車台番号を記入するエリア1、当該車台番号が正しいか否かを確認するエリア2、検査項目に記載された検査作業を行った検査員が確認チェックするエリア4、検査項目を記載したエリア5は、単独チェックエリアであり、スキャナー(画像処理装置)によって検査成績表の表面を走査し、単独チェックエリアについては記入の有無によって再検査すべきか否かを判断する。また複数のエリアのうち、各検査項目に対応して調整する項目や内容を記入するエリア6、調整した項目や内容をチェックするエリア7、修正者が押印するエリア8、再検者が押印するエリア9、判定エリア10は、組み合わせチェックエリアであり、組み合わせチェックエリアについては当該組み合わせチェックエリアに記入があるか否かと他の組み合わせチェックエリアに記入があるか否かとの関連性を考慮して再検査すべきか否かを判断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の製造ラインで使用する検査成績表の確認方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から自動車の組み立てラインでは、各工程ごとに検査項目が定められており、検査項目に沿って行った検査の結果、修理の内容を移動する車両に取り付けた検査成績カードに記入し、更に修理結果の判定や必要に応じて検査印を押印するようにしている。
【0003】
例えば特許文献1には、車両認識記号と検査データが記載された車両ごとに発行される検査成績カードをカードリーダで読取り、完成車の仕様基準と上記検査成績カードに記載されたデータとを比較し、判定基準を満たさない場合には警報を発することが提案されている。また特許文献2には手書き書類を読み取って、データ解析して処理する内容が記載されているので、これを検査成績表に利用することも可能である。
【0004】
【特許文献1】特開平1−306379号公報
【特許文献2】WO97/05561
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車体組立ラインでは、検査員や作業者が検査を行って検査成績表にチェックマークや修理内容を記入し、更に修理内容が適切であったことのサインや確認印を押印するようにしている。しかしながら、検査成績表には多数のチェック項目があり、検査或いは修理をしたにも拘らず、チェックマークを記入するのを忘れたり、最終の検査員が確認印を押印するのを忘れて製造ラインから払い出してしまうことがある。
【0006】
上記のチェックマークの記入漏れ、押印のし忘れなどが車体を払い出した後に判明した場合、再度検査乃至修理を行う必要があり、当該箇所がボディの内側などであると、多数の部品を外すなど手間のかかる作業を行わなければならない。このような不利は特許文献1または特許文献2に開示される内容では解消できない。
【0007】
上記の不利を解消するため、チェックマークや押印の有無のみを画像処理装置で判断することも考えられるが、個々のチェックマークや押印の間には関連性がある場合があり、単純なマークの有無の判断だけでは、有効に対処できない。
【0008】
具体的には、修理する必要がないと修理項目の欄には何も記載されない。したがって、修理内容の確認した押印もないが、これを必要なチェックマークの欠落と判断してしまうのはチェック自体が誤っていることになる。換言すれば、払い出される車体には問題はないが検査成績表に問題があるため、再検査が必要になることがあり、これは無駄な作業である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明に係る検査成績表の確認方法は、検査成績表の表面に複数のチェックエリアを設定し、この複数のチェックエリアを単独チェックエリアと組み合わせチェックエリアに分け、スキャナー(画像処理装置)によって検査成績表の表面を走査し、単独チェックエリアについては記入の有無によって再検査すべきか否かを判断し、組み合わせチェックエリアについては当該組み合わせチェックエリアに記入があるか否かと他の組み合わせチェックエリアに記入があるか否かとの関連性を考慮して再検査すべきか否かを判断する。
【0010】
前記検査成績表は例えば自動車の組み立てラインで用いられる。この場合、検査成績表の確認は組み立てラインの最終工程よりも前の工程で行うようにすれば、払い出し前であるので、確実な出荷を行うことができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、単純な記入の有無のみで検査成績表の内容を確認するのでなく、複数の記入の関連性を考慮して検査成績表の内容を確認するようにしたので、正確な判断を行うことができる。
【0012】
しかも、スキャナーによって検査成績表の表面を走査するのであるが、検査成績表の表面に記入された文字などを正確に読み取るのではなく、何らかのマークや押印の有無を判断すれば足りるため、迅速に且つ用意する装置も簡単な構造になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に本発明の好適な実施例を添付図面に基づいて説明する。図1は本発明に係る検査成績表の確認方法を組み込んだ自動車の組み立てラインを示す図、図2は検査成績表の一例を示す図である。
【0014】
自動車の組み立てラインは車体の搬送ラインに沿って1〜10工程を配置している。このうち、1〜5工程はボディの組み立てを行い、6工程ではOA機器の組み込みを行い、10工程では検査成績表への最終的な捺印を行い、その前の9工程において検査成績表の確認作業を行う。
【0015】
検査成績表には、車台番号を記入するエリア1、当該車台番号が正しいか否かを確認するエリア2、検査項目に記載された検査作業を行った検査員が押印するエリア3、検査項目に記載された検査作業を行った検査員が確認チェックするエリア4、検査項目を記載したエリア5、各検査項目に対応して調整する項目や内容を記入するエリア6、調整した項目や内容をチェックするエリア7、修正者が押印するエリア8、再検者が押印するエリア9、判定エリア10が設けられている。
【0016】
上記複数のエリアのうち、車台番号を記入するエリア1、当該車台番号が正しいか否かを確認するエリア2、検査項目に記載された検査作業を行った検査員が確認チェックするエリア4、検査項目を記載したエリア5は、単独チェックエリアであり、スキャナー(画像処理装置)によって検査成績表の表面を走査し、単独チェックエリアについては記入の有無によって再検査すべきか否かを判断する。
【0017】
また上記複数のエリアのうち、各検査項目に対応して調整する項目や内容を記入するエリア6、調整した項目や内容をチェックするエリア7、修正者が押印するエリア8、再検者が押印するエリア9、判定エリア10は、組み合わせチェックエリアであり、組み合わせチェックエリアについては当該組み合わせチェックエリアに記入があるか否かと他の組み合わせチェックエリアに記入があるか否かとの関連性を考慮して再検査すべきか否かを判断する。
【0018】
尚、エリア6〜10は各チェック項目ごとに4段設けられ、各段ごとに判断を行う。具体的には、1段目のエリア6には調整した内容が記載され、1段目のエリア7には修正者のチェックが記載され、1段目のエリア8には修正者の印が押印され、1段目のエリア9には再検者の押印があり、1段目のエリア10には判定のチェックがある。
【0019】
2段目のエリア6には調整した内容が記載され、2段目のエリア7には修正者のチェックが記載され、2段目のエリア8には修正者の印が押印され、2段目のエリア9には再検者の押印がなく、2段目のエリア10には判定のチェックがない。
【0020】
3段目のエリア6には何も記載されておらず、3段目のエリア7には何も記載されておらず、3段目のエリア8には修正者の印が押印されておらず、3段目のエリア9には再検者の押印があり、3段目のエリア10には判定のチェックがある。更に、4段目のエリア6〜エリア10には何も記載されていない。
【0021】
以上において、1段目については正しい検査がなされていると判断する。2段目については再検査の押印と判定チェックがなされていないので、再検査を行い、問題がなければ判定のエリア10にチェックを入れる。3段目については調整を行う必要がないので、再検者の押印とチェックは単純なミスと判断し、再検査は行わない。また、4段目については、何もチェックされている箇所がないので、正しい検査がなされていると判断する。
【0022】
車台番号を記入するエリア1などを含め、全設定エリアの条件が全て良である場合のみ、当該検査成績表は良と判断し、対応する車両は出荷が可能であると判断する。1つでも条件がクリアできない場合は、NG箇所を画面に表示するかアラームを発生させて作業者に伝え修正を行う。
【0023】
図示例で示した検査成績表は一例であり、本発明はこの検査成績表以外の検査成績表の確認にも対応できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る検査成績表の確認方法を組み込んだ自動車の組み立てラインを示す図
【図2】検査成績表の一例を示す図
【符号の説明】
【0025】
1…車台番号を記入するエリア、2…当該車台番号が正しいか否かを確認するエリア、3…検査項目に記載された検査作業を行った検査員が押印するエリア、4…検査項目に記載された検査作業を行った検査員が確認チェックするエリア、5…検査項目を記載したエリア、6…各検査項目に対応して調整する項目や内容を記入するエリア、7…調整した項目や内容をチェックするエリア、8…修正者が押印するエリア、9…再検者が押印するエリア、10…判定エリア。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査成績表の表面に複数のチェックエリアを設定し、この複数のチェックエリアを単独チェックエリアと組み合わせチェックエリアに分け、スキャナーによって検査成績表の表面を走査し、前記単独チェックエリアについては記入の有無によって再検査すべきか否かを判断し、前記組み合わせチェックエリアについては特定の組み合わせチェックエリアに記入があるか否かと他の組み合わせチェックエリアに記入があるか否かとの関連性を考慮して再検査すべきか否かを判断することを特徴とする検査成績表の確認方法。
【請求項2】
請求項1に記載の検査成績表の確認方法において、この検査成績表は自動車の組み立てラインで用いられ、検査成績表の確認は組み立てラインの最終工程よりも前の工程で行うことを特徴とする検査成績表の確認方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−204408(P2008−204408A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−43045(P2007−43045)
【出願日】平成19年2月23日(2007.2.23)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】