説明

検査方法、検査装置、プログラム、コンピュータ読み取り可能な記録媒体

【課題】作業上の手間を抑制し、作業衛生上好ましい半田材検査方法を提供する。
【解決手段】検査対象の半田材が配された照射領域へ光を照射したときに計測領域における特定波数の赤外線の第一強度を検出し、比較対象の半田材が配された照射領域へ光を照射したときに計測領域における上記特定波数の赤外線の第二強度を検出する。そして、当該第一および第二強度に基づき、比較対象に対する検査対象の半田材の劣化度を相対的に検査する。さらに、第一および第二強度を検出する際、強度の検出対象とする半田材が照射領域に配されていない状態で照射領域に光を照射したときに計測領域における上記特定波数の赤外線の基準強度を自動的に計測し、上記第一および第二強度を当該基準強度で補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、半田材などの測定対象物が配された上記照射領域へ光を照射したときに上記計測領域における特定波数の赤外線の強度を検出装置により検出し、当該検出結果に基づいて上記測定対象物の状態を検査する検査方法、検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プリント基板の生産ラインにおいては、基板上に半田材を印刷する印刷工程、この印刷された半田材上に電子部品を搭載するマウント工程、基板に電子部品を半田付けするリフロー工程を行うことによって、基板上に電子部品を実装している。
【0003】
また、上述した印刷工程において、上記半田材は、基板上に配置されたメタルマスク表面に載せられている。このメタルマスクは、配線パターンに対応した開口穴が形成されているものである。そして、上記半田材は、上記メタルマスク表面において、移動スキージによって押圧されることにより、回転移動する。さらに、この回転移動している半田材が、上記移動スキージの押圧力によって、上記開口穴から基板上に押し出される。これにより、半田材が基板に印刷される(以下に示す特許文献1の段落〔0011〕参照)。
【0004】
このメタルマスクは、同一の半田材を載せたまま、大量の基板に対して連続して使用される。したがって、上記半田材は、上記印刷を繰り返す度に、上記移動スキージによって繰り返し回転移動することとなる。ここで、この回転移動によって、上記半田材は、徐々に劣化していくことになるが、劣化した半田材は、プリント基板において不良をもたらす要因となる。
【0005】
よって、メタルマスク上の半田材の劣化度をインライン分析し、半田材の劣化度が高くなった場合、メタルマスク上の半田材を交換する作業が非常に重要となる。また、メタルマスク上に半田材を供給する前に、供給対象となる半田材の劣化度を分析し、供給前の半田材が劣化していないかをチェックする作業も重要である。
【0006】
ここで、半田材の劣化度を評価する指標として、半田材の粘度、半田材の酸化度、半田材の還元力がある。この粘度、酸化度、還元力が上記指標となる理由について、以下、説明する。
【0007】
半田材は、劣化するに伴い、その粘度が高くなり、かつ、酸化が進行し、還元力が低下することが知られている。ここで、粘度の高い半田材を基板上に印刷すると、印刷工程後の基板において「カケ」「カスレ」等の不良が生じやすくなることが知られている。また、酸化の進行した半田材を基板上に印刷すると、リフロー工程後の基板において「ゾルダーボール」「半田未溶」等の不良が生じやすくなることが知られている。さらに、還元力の低下した半田材を基板上に印刷すると、リフロー工程後の基板において「ぬれ性劣化」等の不良が生じやすくなることが知られている。
【0008】
つまり、半田材の粘度、半田材の酸化度、半田材の還元力は、プリント基板の不良発生度と相関することとなる。したがって、上記の半田材の粘度、半田材の酸化度、半田材の還元力は、半田材の劣化度を評価する重要指標になるのである。
【特許文献1】特開平5−99831号公報(公開日:1993年04月23日)
【特許文献2】特公平8−20434号公報(公告日:1996年03月04日)
【特許文献3】特開平10−82737号公報(公開日:1998年03月31日)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ここで、半田材の劣化度を分析できる方法としては、従来から様々なものがあり、特許文献1〜3において例示されている。
【0010】
特許文献1には、スキージ表面を流動する半田材の流動速度に基づいて、該半田材の粘度を測定する方法が開示されている。しかし、この方法では、スキージ駆動時のみしか半田材の粘度を計測することができず、検査対象が印刷工程で使用中の半田材のみに限られるという問題が生じる。
【0011】
そこで、特許文献2には、サンプリングした半田材を用いて滴定を行うことにより、半田材(フラックス)の酸度を計測する方法が開示されている。しかし、この方法では、試薬の調整等の作業に手間がかかるという問題が生じる。
【0012】
また、特許文献3によれば、紫外線光電子分光法によって、半田材の表面酸化率を計測する手法が開示されている。しかし、この方法は、人体に有害な紫外線を用いているため、作業衛生上好ましくない。
【0013】
本発明は、従来技術よりも、作業上の手間を抑制し、作業衛生上好ましい検査方法、検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
以上の目的を達成するために、本発明の検査方法は、予め定められた照射領域に測定対象物を配して光を照射したときに当該測定対象物から反射された光を計測可能なように予め定められた領域を計測領域とするとき、測定対象物が配された上記照射領域へ光を照射したときに上記計測領域における特定波数の赤外線の強度を検出装置により検出する検出工程を含み、当該検出結果に基づいて上記測定対象物の状態を検査する検査方法であって、上記検出工程は、上記検出装置によって、上記強度の検出対象とする測定対象物が上記照射領域に配されていない状態で上記照射領域に光を照射したときに上記計測領域における上記特定波数の赤外線の強度を基準強度として自動的に計測する基準計測工程と、上記検出装置によって、上記強度の検出対象とする測定対象物が上記照射領域に配された状態で上記照射領域に光を照射したときに上記計測領域における上記特定波数の赤外線の強度を対象強度として計測する計測工程と、上記基準強度で上記対象強度を補正した結果を上記強度の検出結果とする補正工程とを含むことを特徴とする。なお、検出対象とする測定対象物が上記照射領域に配されていない状態は、検出対象とする測定対象物が照射領域に配される前の状態であってもよいし、検出対象とする測定対象物が照射領域から取り除かれた後の状態であってもよい。
【0015】
上記構成では、上記基準強度で上記対象強度を補正した結果を上記強度の検出結果としているので、例えば、水蒸気の多寡など、周囲の環境が検出結果に影響を及ぼすことを抑制でき、安定した上記検出結果を得ることができ、当該検出結果に基づいて上記測定対象物の状態を安定して検査できる。
【0016】
上記構成では、例えば、対象強度検出の前または後に基準強度の検出を繰り返して、それらのうちのいずれかを対象強度の補正に使用したり、対象強度の計測時点よりも予め定められた時点だけ前または後の時点で基準強度を計測したりして、検出装置が基準強度を自動的に計測するので、オペレータの手間を軽減できる。また、オペレータが手動で基準強度を計測する場合とは異なって、基準強度計測のし忘れに起因する対象強度の再計測を防止できるので、再計測の手間も軽減できる。
【0017】
なお、本発明の検査方法において、測定対象物に照射される光は、上記特定波数の赤外線そのものであってもよいし、上記特定波数の赤外線を含む光であってもよい。
【0018】
また、測定対象物としては、赤外線の強度を用いて状態を検査可能な任意の物質を利用でき、例えば、半田材、樹脂、繊維、フィルム、紙などが挙げられる。また、検査可能な状態としては、測定対象物の成分、該成分の変化、これらによって判断できる状態などが挙げられる。例えば、測定対象物が熱硬化樹脂であってもよい。この場合、測定対象物を加熱してその成分の変化を調べることにより、硬化の度合を検査することができる。
【0019】
また、上記構成に加えて、測定対象物が半田材であってもよい。ここで、良質な半田材は、低粘度、低酸化度、高還元力であり、半田材が劣化すると、粘度/酸化度が高くなり、還元力が低くなることが知られている。したがって、半田材の劣化度は、該半田材の粘度、酸化度、還元力の少なくとも1項目から判断することができる。
【0020】
ここで、本願の発明者らは、従来技術とは異なる手法であって、半田材の粘度、酸化度、還元力の少なくとも1項目を分析できる手法を検討した。そして、本願の発明者らは、鋭意工夫の結果、赤外線分光法を用いると、半田材の粘度、酸化度、還元力の少なくとも1項目を分析することができる事を知見した。
【0021】
以下、赤外線分光法によって、半田材の粘度、酸化度、還元力を分析できる理由について詳細に説明する。
【0022】
半田材を使用し続け、また、半田材を外気にさらし続けると、半田材においては、含有金属が酸化し、含有する酸(例えば、カルボン酸)が塩に変化する。つまり、半田材を使用し、または、外気にさらし続けると、該半田材においては、含有金属酸化物が増加し、酸の含有量が減少し、塩の含有量が増加することとなる。
【0023】
そして、この金属酸化物の増加によって、半田材の酸化度が高くなり、塩の増加によって半田材の粘度が高くなり、酸の含有量の減少によって半田材の還元力が低下する。
【0024】
したがって、検査対象の半田材において、金属酸化物の含有度、酸および塩の含有度を分析できれば、該半田材の粘度、酸化度、還元力を検査することができ、ひいては半田材の劣化度を検査できる。つまり、半田材における金属酸化物の含有度、酸の含有度、塩の含有度は、半田材の劣化度(粘度、酸化度、還元力)を示すものである。
【0025】
ここで、本発明者らは、赤外線分光法によれば、金属酸化物、酸、塩の含有度の少なくとも1項目を分析することが可能であることに着目し、本発明を実現するに至った。
【0026】
具体的には、半田材における金属酸化物、酸、塩の含有度に応じて、該半田材における特定波数の赤外線の吸収量は変化し、該半田材を反射する赤外線の特定波数の強度は変化する。これは、半田材に含まれる金属酸化物、酸、塩は、各々において特定されている波数帯域の赤外線を吸収する性質を有しているからである。
【0027】
したがって、半田材が配された上記照射領域へ光を照射したときに上記計測領域における特定波数の赤外線の強度を検出装置により検出すれば、当該半田材に含有している金属酸化物、酸、塩の含有度を分析できる。これにより、半田材の粘度、酸化度、還元力を検査することができ、半田材の劣化度(粘度、酸化度、還元力)を検査できる。
【0028】
例えば、検査対象の半田材に光を照射することによって該検査対象の半田材から反射する特定波数の赤外線の第一強度を検出し、比較対象の半田材に上記光を照射することによって該比較対象の半田材を反射する上記特定波数の赤外線の第二強度を検出すれば、上記検査対象の半田材を反射する赤外線の特定波数の第一強度と、比較対象の半田材を反射する赤外線の該特定波数の第二強度とに基づいて、比較対象の半田材に対して、検査対象の半田材における金属酸化物、酸、塩の含有度を相対的に分析できる。また、検査対象の半田材に光を照射することによって該検査対象の半田材から反射する特定波数の赤外線の強度を検出し、当該強度に基づいて、検査対象の半田材における金属酸化物、酸、塩の含有度を分析すれば、当該半田材の劣化度(粘度、酸化度、還元力)を検査できる。
【0029】
なお、以上示した本発明の検査方法によれば、特許文献2に開示されているような滴定作業が不要であるため、特許文献2の方法よりも作業上の手間を抑制できる。また、以上示した本発明の検査方法は、紫外線を使わないため、特許文献3の方法よりも作業衛生上好ましい。
【0030】
また、上記測定対象物を半田材とする構成に加えて、上記検出工程には、検査対象となる測定対象物が配された上記照射領域へ光を照射したときに上記計測領域における特定波数の赤外線の第一強度を検出装置により検出する第一検出工程と、比較対象となる測定対象物が配された上記照射領域へ光を照射したときに上記計測領域における上記特定波数の赤外線の第二強度を上記検出装置により検出する第二検出工程とが含まれており、さらに、上記検出された第一および第二強度に基づき、上記比較対象に対する上記検査対象となる測定対象物の劣化度を相対的に検査する検査工程を含んでいてもよい。
【0031】
当該構成では、上記検査対象の半田材を反射する赤外線の特定波数の第一強度と、比較対象の半田材を反射する赤外線の該特定波数の第二強度とに基づいて、比較対象の半田材に対して、検査対象の半田材における金属酸化物、酸、塩の含有度を相対的に検査して、半田材の劣化度(粘度、酸化度、還元力)を検査できるので、より高精度に、検査対象の半田材の劣化度を検査できる。
【0032】
また、以上の目的を達成するために、本発明の検査装置は、予め定められた照射領域に測定対象物を配して光を照射したときに当該測定対象物から反射された光を計測可能なように予め定められた領域を計測領域とするとき、上記照射領域に光を照射する光源と、上記照射領域に光が照射されているときに上記計測領域における特定波数の赤外線の強度を検出する強度検出手段とを備え、当該検出結果に基づいて上記測定対象物の状態を検査する検査装置であって、上記強度検出手段は、上記強度の検出対象とする測定対象物が上記照射領域に配されていない状態で上記照射領域に光を照射したときに上記計測領域における上記特定波数の赤外線の強度を基準強度として自動的に計測する基準強度計測手段と、上記強度の検出対象とする測定対象物が上記照射領域に配された状態で上記照射領域に光を照射したときに上記計測領域における上記特定波数の赤外線の強度を対象強度として計測する対象強度計測手段と、上記基準強度で上記対象強度を補正した結果を上記強度の検出結果とする補正手段とを備えている。
【0033】
上記構成によれば、強度検出手段は、光源から光が照射されることによって測定対象物から反射する特定波数の赤外線の強度を検出し、当該検出結果に基づいて上記測定対象物の状態を検査する。
【0034】
さらに、上記構成では、上記強度を検出する際、上記基準強度で上記対象強度を補正した結果を上記強度の検出結果としているので、例えば、水蒸気の多寡など、周囲の環境が検出結果に影響を及ぼすことを抑制でき、安定した上記検出結果を得ることができる。
【0035】
また、上記構成では、例えば、対象強度検出の前に基準強度の検出を繰り返して、それらのうちのいずれかを対象強度の補正に使用したり、対象強度の計測時点よりも予め定められた時点だけ前の時点で基準強度を計測したりして、検出装置が基準強度を自動的に計測するので、オペレータの手間を軽減できる。また、オペレータが手動で基準強度を計測する場合とは異なって、基準強度計測のし忘れに起因する対象強度の再計測を防止できるので、再計測の手間も軽減できる。
【0036】
また、上記構成に加えて、測定対象物が半田材であってもよい。これにより、測定対象物を半田材とした上記検査方法と同様に、半田材の劣化度(粘度、酸化度、還元力)を検査できる。
【0037】
また、上記測定対象物を半田材とする構成に加えて、さらに、上記照射領域に検査対象となる測定対象物が配されたときに上記強度検出手段によって検出された、上記特定波数の赤外線の強度である第一強度、および、上記照射領域に比較対象となる測定対象物が配されたときに上記強度検出手段によって検出された、上記特定波数の赤外線の強度である第二強度に基づいて、上記比較対象となる測定対象物に対する上記検査対象となる測定対象物の相対的劣化度を示した劣化パラメータを出力する制御手段を備えていてもよい。
【0038】
ここで、上述したように、上記検査対象の半田材を反射する赤外線の特定波数の第一強度と、比較対象の半田材を反射する赤外線の該特定波数の第二強度とに基づけば、比較対象の半田材に対して、検査対象の半田材における金属酸化物、酸、塩の相対的含有度を求めることができる。ここで、この含有度は、半田材の劣化度(粘度、酸化度、還元力)を示すものである。
【0039】
そこで、上記構成においては、この相対的含有度を、上記比較対象の半田材に対する上記検査対象の半田材の相対的劣化度を示した劣化パラメータとして出力させる。これにより、この装置の利用者は、出力された劣化パラメータによって、比較対象の半田材に対する検査対象の半田材の上記相対的含有度を分析でき、比較対象の半田材に対する検査対象の半田材の相対的劣化度を検査できる。
【0040】
さらに、上記検査方法において、上記基準計測工程は、予め定められた条件が成立する度に、上記計測領域における特定波数の赤外線の強度の計測を繰り返し、上記補正工程は、繰り返し計測された上記基準強度のうちの少なくとも1つを選択し、選択された基準強度によって上記対象強度を補正してもよい。また、上記検査装置において、上記基準計測手段は、予め定められた条件が成立する度に、上記計測領域における特定波数の赤外線の強度の計測を繰り返し、上記補正手段は、繰り返し計測された上記基準強度のうちの少なくとも1つを選択し、選択された基準強度によって上記対象強度を補正してもよい。
【0041】
当該構成では、予め定められた条件が成立する度(例えば、予め定められた周期毎など)に、基準強度の計測が繰り返され、上記対象強度は、繰り返し計測された上記基準強度のうちの少なくとも1つによって補正される。
【0042】
したがって、例えば、オペレータの指示によって対象強度を測定する構成など、検出装置だけでは、対象強度測定のタイミングを特定できない場合でも、何ら支障なく、基準強度を計測でき、上記対象強度を適切に補正でき、安定した上記検出結果を得ることができる。
【0043】
さらに、上記検査方法において、上記補正工程は、繰り返し計測された上記基準強度のうち、予め定められた閾値を下回る基準強度を、選択から除外してもよい。また、上記検査装置において、上記補正手段は、繰り返し計測された上記基準強度のうち、予め定められた閾値を下回る基準強度を、選択から除外してもよい。
【0044】
当該構成では、予め定められた閾値を下回る基準強度を選択から除外することによって、例えば、未だ清掃されていない状態や、測定対象物を照射領域に配置しようとしている状態など、基準強度の測定には不適切な状態で測定された基準強度を選択から除外できる。この結果、上記対象強度を適切に補正でき、安定した上記検出結果を得ることができる。
【0045】
また、上記検査方法において、上記補正工程は、繰り返し計測された上記基準強度のうち、上記補正工程は、繰り返し計測された上記基準強度のうち、その計測時点が上記対象強度の計測時点に最も近い基準強度を選択してもよい。さらに、上記検査装置において、上記補正手段は、繰り返し計測された上記基準強度のうち、その計測時点が上記対象強度の計測時点に最も近い基準強度を選択してもよい。なお、予め定められた閾値を下回る基準強度を選択から除外する構成と組み合わせた場合は、予め定められた閾値以上の強度で、しかも、その計測時点が上記対象強度の計測時点に最も近い基準強度が選択される。
【0046】
当該構成では、繰り返し計測された上記基準強度のうち、その計測時点が上記対象強度の計測時点に最も近い基準強度が選択される。したがって、基準強度の計測時点における周囲環境と対象強度の計測時点における周囲環境との相違を抑えることができる。これらの結果、さらに安定した上記検出結果を得ることができる。
【0047】
さらに、上記検査方法において、上記補正工程は、繰り返し計測された上記基準強度のうち、その計測時点が上記対象強度の計測時点よりも前で最も近い基準強度を選択してもよい。また、上記検査装置において、上記補正手段は、繰り返し計測された上記基準強度のうち、その計測時点が上記対象強度の計測時点よりも前で最も近い基準強度を選択してもよい。なお、予め定められた閾値を下回る基準強度を選択から除外する構成と組み合わせた場合は、予め定められた閾値以上の強度で、しかも、その計測時点が上記対象強度の計測時点よりも前で最も近い基準強度が選択される。
【0048】
当該構成では、計測時点が、上記対象強度の計測時点よりも前で、しかも、最も近い基準強度が選択される。したがって、基準強度の計測時点における周囲環境と対象強度の計測時点における周囲環境との相違を抑えつつ、しかも、より早い時点で検出結果を得ることができる。
【0049】
また、上記検査方法において、繰り返し計測された上記基準強度のうち少なくとも1つが予め定められた閾値を下回っている場合に警告する警告工程を含んでいてもよい。さらに、上記検査装置において、繰り返し計測された上記基準強度のうち少なくとも1つが予め定められた閾値を下回っている場合に警告する警告手段を含んでいてもよい。
【0050】
当該構成では、繰り返し計測された上記基準強度のうち少なくとも1つが予め定められた閾値を下回っている場合に警告されるので、オペレータは、清掃タイミングを的確に把握でき、さらに、オペレータの負担を軽減できる。
【0051】
また、本発明の検査方法においては、金属酸化物、酸、塩の含有度の少なくとも1項目を分析できればよいため、上記特定波数は、半田材に含まれる金属酸化物が吸収する赤外線の波数帯域に含まれる波数であってもよい。そして、上記金属酸化物としては、酸化錫、酸化鉛が例として挙げられる。
【0052】
なお、上記の酸化錫、酸化鉛は、520cm−1〜700cm−1の赤外線を吸収する性質を有している。それゆえ、上記特定波数は、520cm−1〜700cm−1の範囲に含まれる波数帯域に含まれる波数であることが好ましい。
【0053】
また、本発明の検査方法においては、金属酸化物、酸、塩の含有度の少なくとも1項目を分析できればよいため、上記特定波数は、半田材に含まれる酸が吸収する赤外線の波数帯域に含まれる波数であってもよい。そして、上記酸としては、カルボン酸であることが好ましい。これは、半田材に含まれる酸のうち、含有量の多い酸としてカルボン酸が挙げられるからである。
【0054】
なお、カルボン酸は、1665cm−1〜1730cm−1の赤外線を吸収する性質を有している。それゆえ、上記特定波数は、1665cm−1〜1730cm−1の範囲に含まれる波数であることが好ましい。
【0055】
さらに、本発明の検査方法においては、金属酸化物、酸、塩の含有度の少なくとも1項目を分析できればよいため、上記特定波数は、半田材に含まれる塩が吸収する赤外線の波数帯域に含まれる波数であってもよい。そして、上記塩としては、カルボン酸塩であることが好ましい。これは、劣化した半田材に含まれる塩のうち、含有量の多い塩としてはカルボン酸塩が挙げられるからである。
【0056】
なお、カルボン酸塩は、1270cm−1〜1430cm−1の赤外線を吸収する性質を有している。それゆえ、上記特定波数は、1270cm−1〜1430cm−1の範囲に含まれる波数であることが好ましい。また、カルボン酸塩は、1500cm−1〜1650cm−1の赤外線を吸収する性質を有している。それゆえ、上記特定波数は、1500cm−1〜1650cm−1の範囲に含まれる波数であることが好ましい。
【0057】
また、上記検査工程は、上記第一強度と上記第二強度との差分を求める手順であってもよい。また、上記劣化パラメータは、上記第一強度と上記第二強度との差分であってもよい。この理由を以下説明する。
【0058】
上記差分は、検査対象となる測定対象物と比較対象となる測定対象物との間における上記特定波数の赤外線吸収度の相違度を示すパラメータである。つまり、この差分によれば、比較対象の測定対象物と検査対象の測定対象物との間における酸化金属、カルボン酸、カルボン酸塩の含有度の相違を分析でき、比較対象の測定対象物に対する検査対象の測定対象物の粘度、酸化度、還元力を相対的に検査することができ、検査対象の半田材の劣化度(粘度、酸化度、還元力)を相対的に検査できるからである。
【0059】
また、上記検査工程は、上記第一強度と、上記第二強度との比を求める手順であってもよい。さらに、上記劣化パラメータは、上記第一強度と上記第二強度との比であってもよい。この理由を以下説明する。
【0060】
上記比は、検査対象の半田材と比較対象の半田材との間における上記特定波数の赤外線吸収度の相違度を示すパラメータである。つまり、この比によれば、比較対象の半田材と検査対象の半田材との間における酸化金属、カルボン酸、カルボン酸塩の含有度の相違を分析でき、比較対象の半田材に対する検査対象の半田材の粘度、酸化度、還元力を相対的に検査することができ、検査対象の半田材の劣化度(粘度、酸化度、還元力)を相対的に検査できるからである。
【0061】
なお、比較対象に照射される光に含まれる赤外線の強度と検査対象に照射される光に含まれる赤外線の強度とで若干の相違が生じることがあるが、この場合、この相違分が、検出される第一強度と第二強度との相違に含まれることとなる。
【0062】
そこで、上記特定波数とは異なる波数である参照波数を設定し、検査対象の半田材を反射する上記参照波数の赤外線の第三強度を検出し、比較対象の半田材を反射する上記参照波数の赤外線の第四強度を検出し、上記第三強度と第四強度との相違度に応じて、上記第一強度または第二強度の少なくともいずれかを補正することが好ましい。
【0063】
また、上記検査工程は、上記第一強度に基づき、上記検査対象の半田材における上記特定波数の第一赤外線吸光度を求め、上記第二強度に基づき、上記比較対象の半田材における上記特定波数の第二赤外線吸光度とを求め、上記第一赤外線吸光度と上記第二赤外線吸光度との差分を求める手順であってもよい。さらに、上記制御手段は、上記第一強度に基づき、上記検査対象の半田材における上記特定波数の第一赤外線吸光度を求め、上記第二強度に基づき、上記比較対象の半田材における上記特定波数の第二赤外線吸光度を求め、上記第一赤外線吸光度と上記第二赤外線吸光度との差分を上記劣化パラメータとして出力する処理を行ってもよい。この理由を以下説明する。
【0064】
上記第一赤外線吸光度と上記第二赤外線吸光度との差分は、検査対象の半田材と比較対象の半田材との間における上記特定波数の赤外線吸収度の相違度を示すパラメータである。したがって、この差分によれば、比較対象の半田材と検査対象の半田材との間における酸化金属、カルボン酸、カルボン酸塩の含有度の相違を分析でき、比較対象の半田材に対する検査対象の半田材の粘度、酸化度、還元力を相対的に検査することができ、検査対象の半田材の劣化度(粘度、酸化度、還元力)を相対的に検査できるからである。
【0065】
また、上記検査工程は、上記第一強度に基づき、上記検査対象の半田材における上記特定波数の第一赤外線吸光度を求め、上記第二強度に基づき、上記比較対象の半田材における上記特定波数の第二赤外線吸光度を求め、上記第一赤外線吸光度と上記第二赤外線吸光度との比を求める手順であってもよい。さらに、上記制御手段は、上記第一強度に基づき、上記検査対象の半田材における上記特定波数の第一赤外線吸光度を求め、上記第二強度に基づき、上記比較対象の半田材における上記特定波数の第二赤外線吸光度を求め、上記第一赤外線吸光度と上記第二赤外線吸光度との比を上記劣化パラメータとして出力する処理を行ってもよい。この理由を以下説明する。
【0066】
上記第一赤外線吸光度と上記第二赤外線吸光度との比は、検査対象の半田材と比較対象の半田材との間における上記特定波数の赤外線吸収度の相違度を示すパラメータである。したがって、この比によれば、比較対象の半田材と検査対象の半田材との間における酸化金属、カルボン酸、カルボン酸塩の含有度の相違を分析でき、比較対象の半田材に対する検査対象の半田材の粘度、酸化度、還元力を相対的に検査することができ、検査対象の半田材の劣化度(粘度、酸化度、還元力)を相対的に検査できるからである。
【0067】
なお、比較対象に照射される光に含まれる赤外線の強度と検査対象に照射される光に含まれる赤外線の強度とで若干の相違が生じることがあるが、この場合、この相違分が、検出される第一強度と第二強度との相違に含まれ、第一赤外線吸光度および第二赤外線吸光度の相違に含まれることとなる。
【0068】
そこで、上記特定波数とは異なる波数である参照波数を設定し、検査対象の半田材を反射する上記参照波数の赤外線の第三強度を検出し、比較対象の半田材を反射する上記参照波数の赤外線の第四強度を検出すればよい。さらに、上記第三強度に基づいて、上記検査対象の半田材における上記参照波数の第三赤外線吸光度を求め、上記第四強度に基づいて、上記検査対象の半田材における上記参照波数の第四赤外線吸光度を求め、上記第三赤外線吸光度と第四赤外線吸光度との相違度に応じて、上記第一赤外線吸光度または第二赤外線吸光度の少なくともいずれかを補正することが好ましい。
【0069】
ところで、上記検査装置は、ハードウェアで実現してもよいし、プログラムをコンピュータに実行させることによって実現してもよい。具体的には、本発明に係るプログラムは、上記検査装置のいずれかの各手段として、コンピュータを動作させるプログラムであり、本発明に係る記録媒体には、当該プログラムが記録されている。
【0070】
例えば、上記記録媒体をコンピュータが読み取るなどして、これらのプログラムがコンピュータによって実行されると、当該コンピュータは、上記検査装置として動作する。したがって、上記検査装置と同様に、オペレータの手間を余りかけずに、測定対象物の状態を検査できる。
【発明の効果】
【0071】
以上のように、本発明の検査方法は、予め定められた照射領域に、例えば、半田材などの測定対象物を配して光を照射したときに当該測定対象物から反射された光を計測可能なように予め定められた領域を計測領域とするとき、測定対象物が配された上記照射領域へ光を照射したときに上記計測領域における特定波数の赤外線の強度を検出装置により検出する検出工程を含み、上記検出工程は、上記検出装置によって、上記強度の検出対象とする測定対象物が上記照射領域に配されていない状態で上記照射領域に光を照射したときに上記計測領域における上記特定波数の赤外線の強度を基準強度として自動的に計測する基準計測工程と、上記検出装置によって、上記強度の検出対象とする測定対象物が上記照射領域に配された状態で上記照射領域に光を照射したときに上記計測領域における上記特定波数の赤外線の強度を対象強度として計測する計測工程と、上記基準強度で上記対象強度を補正した結果を上記強度の検出結果とする補正工程とを含んでいる。
【0072】
上記構成では、上記検出工程において、上記基準強度で上記対象強度を補正した結果を上記強度の検出結果としているので、例えば、水蒸気の多寡など、周囲の環境が検出結果に影響を及ぼすことを抑制でき、安定して、測定対象物の状態を検査できる。
【0073】
また、上記構成では、例えば、対象強度検出の前または後に基準強度の検出を繰り返して、それらのうちのいずれかを対象強度の補正に使用したり、対象強度の計測時点よりも予め定められた時点だけ前の時点で基準強度を計測したりして、検出装置が基準強度を自動的に計測するので、オペレータの手間を軽減できる。また、オペレータが手動で基準強度を計測する場合とは異なって、基準強度計測のし忘れに起因する対象強度の再計測を防止できるので、再計測の手間も軽減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0074】
〔半田材検査方法〕
本実施形態における半田材検査方法は、赤外線を利用して、半田材の劣化度を検査する方法である。なお、本実施形態における「半田材」とは、プリント基板の生産ラインにおいて用いられるクリーム状の半田ペーストを意義するものとするが、本発明においては、この半田ペーストに限定されるものではなく、周知の半田材全般に対して適用可能である。
【0075】
ここで、詳細は後述するように、本実施形態に係る半田材検査方法では、検査対象の半田材に光を照射することによって該検査対象の半田材から反射する特定波数の赤外線の第一強度を検出する第一検出工程と、比較対象の半田材に上記光を照射することによって該比較対象の半田材を反射する上記特定波数の赤外線の第二強度を検出する第二検出工程と、上記検出された第一および第二強度に基づき、上記比較対象に対する上記検査対象の半田材の劣化度を相対的に検査する検査工程とを含んでいる。
【0076】
また、本実施形態に係る半田材検査方法では、上記第1および第2検出工程において特定波数の赤外線の第1または第2強度を検出する際に、検査対象または比較対象の半田材が無いときと有るときとの双方で特定波数の赤外線を測定し、無いときを基準とすることによって、第1強度または第2強度を検出しており、さらに、後述する構成によって、半田材が無いときの測定(基準計測)を自動化している。
【0077】
以下では、説明の便宜上、半田材が無いときの測定を自動化するための構成、すなわち、第1および第2検出工程における第1強度または第2強度の検出方法、および、そのための装置の詳細について説明する前に、第1および第2強度に基づく検査方法の実施形態および実施例と、第1および第2強度に基づく検査を行うための半田材検査装置の実施形態および実施例とを説明し、その後で、各検出工程の詳細について説明する。
【0078】
半田材を使用し続け、また、半田材を外気にさらし続けると、半田材においては、含有金属が酸化し、含有カルボン酸がカルボン酸塩に変化する。つまり、半田材を使用し、または、外気にさらし続けると、該半田材においては、含有金属酸化物が増加し、含有カルボン酸が減少し、含有カルボン酸塩が増加することとなる。
【0079】
この金属酸化物の増加によって、半田材の酸化度が高くなり、このカルボン酸塩の増加によって半田材の粘度が高くなり、カルボン酸の含有量の減少によって半田材の還元力が低下するという現象が生じる。このような現象を半田材の劣化という。
【0080】
したがって、検査対象の半田材において、金属酸化物の含有度、カルボン酸の含有度、カルボン酸塩の含有度の少なくとも一つを分析できれば、該半田材の粘度、酸化度、還元力の少なくとも一つを検査することができ、ひいては半田材の劣化度を検査できる。
【0081】
一方、酸化金属、カルボン酸、カルボン酸塩の各々は、各々において特定されている特定波数帯域の赤外線を吸収することが知られている。
【0082】
そこで、以下の工程の組み合わせを実施することにより、本実施形態の半田材検査方法を実現することとする。まず、検査対象の半田材に光を照射することによって該検査対象の半田材から反射する特定波数の赤外線の第一強度を検出する第一検出工程を実施する。つぎに、比較対象の半田材に上記光を照射することによって該比較対象の半田材を反射する上記特定波数の赤外線の第二強度を検出する第二検出工程を実施する。そして、上記検出された各強度に基づき、上記比較対象に対する上記検査対象の半田材の劣化度を相対的に検査する検査工程を実施する。なお、第一検出工程と第二検出工程とは、実施順序が逆になってもよいし、同時に行ってもよい。
【0083】
以上の本実施形態の半田材検査方法によれば、第一検出工程および第二検出工程によって、検査対象の半田材から反射する赤外線の特定波数の第一強度と、比較対象の半田材から反射する赤外線の特定波数の第二強度とを検出できる。
【0084】
ここで、上述したように、酸化金属、カルボン酸、カルボン酸塩の各々は、各々において特定されている特定波数帯域の赤外線を吸収する。したがって、半田材における酸化金属、カルボン酸、カルボン酸塩の含有度に応じて、半田材における特定波数の赤外線の吸収量は変化し、半田材を反射する特定波数の赤外線の強度は変化する。
【0085】
したがって、第一および第二検出工程で検出した各強度に基づけば、比較対象の半田材に対して、検査対象の半田材における酸化金属の含有度、カルボン酸の含有度、カルボン酸塩の含有度の少なくとも一つを相対的に分析できる。それゆえ、比較対象の半田材に対して、検査対象の半田材の劣化度を相対的に検査できる。
【0086】
なお、上記検査工程の態様として、(a)上記第一強度と上記第二強度との差分を求める手順、(b)上記第一強度と上記第二強度との比を求める手順、(c)上記第一強度から、検査対象の半田材における上記特定波数の第一赤外線吸光度を求め、上記第二強度から、比較対象の半田材における上記特定波数の第二赤外線吸光度とを求め、上記第一赤外線吸光度と上記第二赤外線吸光度との差分を求める手順、(d)上記第一赤外線吸光度と上記第二赤外線吸光度との比を求める手順、が挙げられる。
【0087】
上記差分または上記比は、比較対象の半田材と検査対象の半田材との間における上記特定波数の赤外線吸収度の相違度を示すパラメータである。それゆえ、これらパラメータを求めることにより、比較対象の半田材と検査対象の半田材との間における酸化金属、カルボン酸、カルボン酸塩の含有度の相違を分析でき、比較対象の半田材に対して、検査対象の半田材の粘度、酸化度、還元力を相対的に検査することができ、検査対象の半田材の劣化度(粘度、酸化度、還元力)を相対的に検査できるのである。
【0088】
なお、上記検査工程においては、このような差分や比を求めることなく、本実施形態の半田材検査方法の実施者が、上記検出された各強度を単に対比するだけでも、上記比較対象に対する上記検査対象の半田材の劣化度を相対的に判定することが可能である。
【0089】
また、上記検査対象および上記比較対象として、各々異なる半田材を使用してもよいし、各々同一の半田材を使用してもよい。
【0090】
なお、上記「各々同一の半田材を使用」とは、例えば、新品状態の半田材aを比較対象とし、使用後(プリント基板の印刷工程における使用後)の状態の当該半田材aを検査対象とするような場合である。また、プリント基板の印刷工程における印刷回数が100回の半田材bを比較対象とし、上記印刷回数が200回の当該半田材bを検査対象としてもよい。
【0091】
〔半田材検査方法の実施例〕
次に、以上示した本実施形態の半田材検査方法の一実施例を説明する。
【0092】
まず、本実施例において検査対象となる半田材について説明する。本実施例では、図2に示す各物質を含有成分とする半田材を検査に用いた。同図に示すように、本実施例の半田材は、80〜90%の錫と、1〜3%の銀と、1%未満の銅と、2〜4%のジエチレングリコールモノへキシルエーテルと、1%未満の2-エチル-1,3-ヘキサンジオールと、4〜6%のロジンと、を含んでいる。
【0093】
なお、半田材の主成分は錫(Sn)または鉛(Pb)等の金属であるが、本実施例の半田材では、図2に示すように、この金属として錫が用いられている。また、半田材において還元力をもたらす主成分であるカルボン酸として、本実施例の半田材では、図2に示すように、ロジン(C19H29COOH)が用いられている。
【0094】
本実施例では、図2に示す半田材であって、新品の状態の当該半田材を比較対象とし、プリント基板の印刷工程において使用された後の当該半田材を検査対象とした。なお、以下では、比較対象の半田材を単に「比較対象」とし、検査対象の半田材を単に「検査対象」とよぶことがある。
【0095】
ここで、この比較対象および検査対象に対して、各々同一強度の赤外線を照射し、比較対象を反射する赤外線における500cm−1〜3000cm−1の帯域の強度(第二強度)を検出し、検査対象を反射する赤外線における500cm−1〜3000cm−1の帯域の強度(第一強度)を検出した(第一検出工程、第二検出工程)。
【0096】
さらに、本実施例では、各波数について、比較対象の赤外線の吸光度(第二赤外線吸光度)と、検査対象の赤外線の吸光度(第一赤外線吸光度)とを算出した。なお、上記吸光度は、波数hに対応するブランク値(照射した赤外線の波数hにおける強度)をBLとし、比較対象から反射する赤外線の波数hにおける強度をAとし、検査対象から反射する赤外線の波数hにおける強度をBとして、
比較対象の赤外線の吸光度(波数hに対応する吸光度)A´=−log(A/BL)・・・(1)
検査対象の赤外線の吸光度(波数hに対応する吸光度)B´=−log(B/BL)・・・(2)
を、波数毎に演算することによって求めることができる。
【0097】
図1は、算出した吸光度を示すスペクトルチャートである。なお、同図における横軸は赤外線の波数(Wave Number)を示し、縦軸は赤外線の吸光度を示す。
【0098】
同図に示すように、比較対象の赤外線の吸光度と、検査対象の赤外線の吸光度とでは相違があることが観測される。
【0099】
つぎに、この相違について検討した。具体的には、上記(1)(2)で求めた、各波数に対応するA´とB´とについて、(11)式のようにして差分を演算した(検査工程)。なお、この差分を、以下では「吸光度差」とする。
吸光度差=B´−A´・・・(11)
つまり、ここでの吸光度差とは、検査対象の赤外線吸光度から比較対象の赤外線吸光度を差し引いて得られるものであり、検査対象の赤外線吸光度と比較対象の赤外線吸光度との差分を示したものである。
【0100】
図3は、赤外線の波数と、該波数に対応する吸光度差との関係を示したチャートである。つまり、図3のチャートは、図1のチャートに示される検査対象の吸光度から比較対象の吸光度を差し引いた吸光度差を示したものである。
【0101】
図3から、比較対象と検査対象とでは、600cm−1付近、1300cm−1付近、1600cm−1付近、1700−1cm−1付近の吸光度において、大きな差があることがわかる。
【0102】
具体的には、600cm−1、1300cm−1、1600cm−1付近において、検査対象の赤外線吸光度は、比較対象の赤外線吸光度よりも高くなっていることがわかる。また、1700cm−1付近において、検査対象の赤外線吸光度は、比較対象の赤外線吸光度よりも低くなっていることがわかる。
【0103】
ここで、赤外線スペクトルチャートにおいて、600cm−1付近で観測される吸収は、金属酸化物における酸素-金属結合の振動によるものであることが知られている。また、1300cm−1付近で観測される吸収は、カルボン酸塩の対称伸縮振動によるものであり、1600cm−1付近で観測される吸収は、カルボン酸塩における逆対称伸縮振動によるものであることが知られている。さらに、1700cm−1付近で観測される吸収は、カルボン酸における二重結合の伸縮振動による吸収を示すものであることが知られている。
【0104】
したがって、600cm−1付近において、検査対象の方が、比較対象よりも、赤外線吸光度が高くなっていることから、検査対象においては、比較対象よりも金属酸化物が多量に含まれており、比較対象よりも酸化度が高いことがわかる。
【0105】
また、1300cm−1付近および1600cm−1付近において、検査対象の方が、比較対象よりも、赤外線吸光度が高くなっていることから、検査対象においては、比較対象よりもカルボン酸塩が多量に含まれており、比較対象よりも粘度が高いことがわかる。
【0106】
さらに、1700cm−1付近において、検査対象の方が、比較対象よりも、赤外線吸光度が低くなっていることから、検査対象においては、比較対象よりもカルボン酸が少なく、比較対象よりも還元力が低いことがわかる。
【0107】
このように、本実施例では、赤外線スペクトルの各波数について、検査対象の半田材を反射する赤外線の強度(第一強度)と、比較対象の半田材を反射する赤外線の強度(第二強度)とから、検査対象の半田材における赤外線の吸光度(第一赤外線吸光度)と、比較対象の半田材における赤外線の吸光度(第二赤外線吸光度)とを求めている。
【0108】
そして、赤外線スペクトルの各波数について、検査対象の半田材の吸光度から比較対象の半田材の吸光度を差し引いた吸光度差を求めている。ここで、600cm−1、1300cm−1、1600cm−1、1700cm−1付近における上記吸光度差を参照すれば、比較対象に対する、検査対象の半田材に含まれる金属酸化物の含有度、カルボン酸の含有度、カルボン酸塩の含有度を相対的に把握することができる。
【0109】
そして、この金属酸化物の含有度から、検査対象の半田材の酸化度を相対的に把握でき、カルボン酸の含有度から、検査対象の半田材の還元力を相対的に把握でき、カルボン酸塩の含有度から、検査対象の半田材の粘度を相対的に把握できる。
【0110】
つぎに、新品の状態の半田材を比較対象とし、プリント基板の印刷工程における印刷回数が200回、400回、600回、800回、1000回、1200回の各半田材を検査対象として、本実施例で示した方法によって分析した結果を図4(a)に示す。
【0111】
図4(a)は、赤外線の波数と、各波数に対応する検査対象の半田材の吸光度から比較対象の半田材の吸光度を差し引いて得られる吸光度差との関係を、検査対象毎に示したチャートである。なお、横軸は赤外線の波数を示し、縦軸は、比較対象の半田材の吸光度と検査対象の半田材の吸光度との差である吸光度差を示す。
【0112】
図4(a)から、半田材の印刷回数が増加する程、1300cm−1付近および1600cm−1付近の吸光度は高くなり、1700cm−1付近の吸光度は減少していることがわかる。これにより、印刷回数が増加する程、半田材においてカルボン酸が減少し、カルボン酸塩が増加していることがわかる。そして、このカルボン酸塩の増加という結果から、印刷回数が増加する程、半田材の粘度が上昇することを分析できる。
【0113】
実際、各検査対象について粘度を測定したところ、図4(b)に示すように、半田材の印刷回数と半田材の粘度とは正の相関関係があることが確認された。また、半田材の1600cm−1付近の赤外線の吸光度と半田材の粘度とは正の相関関係があり、半田材の1700cm−1付近の赤外線の吸光度と半田材の粘度とは負の相関関係があることも確認された。このような関係が成立するのは、半田材の印刷回数が増加するほど、半田材に含有されるカルボン酸が減少して1700cm−1付近の赤外線の吸収が少なくなり、半田材に含有されるカルボン酸塩が増加して1600cm−1付近の赤外線の吸収が大きくなり、さらにカルボン酸塩の増加に応じて粘度が高くなるからである。
【0114】
なお、以上示した実施例によれば、検査対象の半田材の赤外線吸光度と比較対象の半田材の赤外線吸光度とを算出しているが、吸光度を算出しなくても、検査対象の半田材に含まれる金属酸化物の含有度、カルボン酸の含有度、カルボン酸塩の含有度を相対的に把握できる。具体的には、500〜3000cm−1の各波数について、検査対象の半田材を反射する赤外線の強度と、比較対象の半田材を反射する赤外線の強度とを検出する。そして、各波数において、検出した各強度に対して(21)式の演算を行う。
強度差=B−A・・・(21)
A:比較対象から反射する赤外線の強度
B:検査対象から反射する赤外線の強度
ここで、「強度差」とは、検査対象において検出された赤外線の強度から比較対象において検出された赤外線の強度を差し引いたものであり、検査対象において検出された赤外線の強度と比較対象において検出された赤外線の強度との差分である。
【0115】
ここで、600cm−1、1300cm−1、1600cm−1、1700cm−1についての上記強度差を参照すれば、比較対象に対する検査対象の金属酸化物、カルボン酸、カルボン酸塩の赤外線吸収度の差異を把握できる。それゆえ、比較対象に対して、検査対象の半田材に含まれる金属酸化物の含有度、カルボン酸の含有度、カルボン酸塩の含有度を相対的に把握することができる。
【0116】
また、上記の吸光度差や強度差ではなく、各吸光度の比や各強度の比によっても、比較対象と検査対象とにおける赤外線吸収度の相違を把握でき、検査対象の半田材に含まれる金属酸化物の含有度、カルボン酸の含有度、カルボン酸塩の相対的含有度を把握できる。
【0117】
例えば、各波数毎に、検査対象において検出された赤外線の強度と比較対象において検出された赤外線の強度との比である強度比を、以下の演算により求めてもよい。
強度比=B/A・・・(31)
また、例えば、各波数毎に、検査対象における赤外線の吸光度と比較対象における赤外線の吸光度との比である吸光度比を、以下の演算により求めてもよい。なお、吸光度の算出方法については、(1)(2)式と同様である。
吸光度比=B´/A´・・・(41)
A´:比較対象の赤外線の吸光度
B´:検査対象の赤外線の吸光度
なお、以上示した実施例によれば、比較対象および検査対象の半田材について、500〜3000cm−1に渡って、各波数毎に、赤外線の強度を検出し、赤外線の吸光度および上記吸光度差、上記吸光度比、上記強度差、または上記強度比を算出することとなるが、特定波数の赤外線のみについて上記強度を検出し、該注目波数の吸光度、吸光度差または上記強度差を算出する手順であってもよい。ここで、特定波数とは、金属酸化物、カルボン酸、カルボン酸塩のうちの少なくとも一つの赤外線吸収が認められる波数であり、本実施例では600cm−1、1300cm−1、1600cm−1、1700cm−1のうちの少なくとも一つである。
【0118】
また、光源から照射される光の強度にはムラがあり、比較対象と検査対象とについて、各々同一光源を用いて赤外線を照射したとしても、各々異なるタイミングで赤外線を照射すれば、比較対象に照射される赤外線の強度と検査対象に照射される赤外線の強度とで若干の相違が生じる。そして、この相違が、検出される、半田材を反射する赤外線の強度に悪影響を及ぼすことがある。
【0119】
そこで、特定波数における上記の強度差、強度比、吸光度差、吸光度比を求めるにあたって補正を行うことが好ましい。以下、上記強度差を補正した補正強度差、上記強度比を補正した補正強度比、上記吸光度差を補正した補正吸光度差、上記吸光度比を補正した補正吸光度比を求める手順について説明する。
【0120】
まず、金属酸化物、カルボン酸、カルボン酸塩の赤外線吸収が観測される波数帯域以外であって、半田材の状態変化に関係しない波数を参照波数とする。
【0121】
そして、比較対象を反射した赤外線における上記参照波数の強度と、検査対象を反射した赤外線における上記参照波数の強度とを検出する。さらに、比較対象を反射した赤外線における上記特定波数の強度と、検査対象を反射した赤外線における上記特定波数の強度とを検出する。
【0122】
ここで、比較対象から反射する赤外線における上記参照波数の強度(第四強度)をAref、検査対象から反射する赤外線における上記参照波数の強度(第三強度)をBref、比較対象から反射する赤外線における上記特定波数の強度(第二強度)をAtar、検査対象から反射する赤外線における上記特定波数の強度(第一強度)をBtarとする。
【0123】
また、比較対象における上記参照波数の赤外線吸光度(第四赤外線吸光度)をA´ref、検査対象における上記参照波数の赤外線吸光度(第三赤外線吸光度)をB´ref、比較対象における上記特定波数の赤外線吸光度(第二赤外線吸光度)をA´tar、検査対象における上記特定波数の赤外線吸光度(第一赤外線吸光度)をB´tarとする。
【0124】
なお、各吸光度は、(1)(2)式と同様の手法によって算出する。つまり、比較対象に照射する赤外線における参照波数に対応する強度をBLrefとし、検査対象に照射する赤外線における特定波数に対応する強度をBLtarとし、
A´ref=−log(Aref/BLref)・・・(61)
B´ref=−log(Bref/BLref)・・・(62)
A´tar=−log(Atar/BLtar)・・・(63)
B´tar=−log(Btar/BLtar)・・・(64)
で求めることができる。
【0125】
以下、補正強度差、補正強度比、補正吸光度差、補正吸光度比は、
補正強度差=(Btar−Bref)−(Atar−Aref)・・・(71)
補正強度比=(Btar−Bref)/(Atar−Aref)・・・(72)
補正吸光度差=(B´tar−B´ref)−(A´tar−A´ref)・・・(73)
補正吸光度比=(B´tar−B´ref)/(A´tar−A´ref)・・・(74)
で求めることができる。
【0126】
これにより、比較対象に照射される赤外線の強度と検査対象に照射される赤外線の強度とで若干の相違が生じていたとしても、各強度、各吸光度について、上記相違分に対応する参照波数の強度が差し引かれているため、この相違をほぼ解消した補正強度差、補正強度比、補正吸光度差、補正吸光度比を求めることができる。
【0127】
また、補正強度差、補正強度比、補正吸光度差、補正吸光度比は、
補正強度差=(Btar×Aref/Bref)−Atar・・・(75)
補正強度比=(Btar×Aref/Bref)/Atar・・・(76)
補正吸光度差=(B´tar×A´ref/B´ref)−A´tar・・・(77)
補正吸光度比=(B´tar×A´ref/B´ref)/A´tar・・・(78)
で求めることができる。この方法は、Bref/Aref、またはB´ref/A´refを上記相違分の補正用係数としたものである。
【0128】
また、上記した各々の特定波数(600cm−1、1300cm−1、1600cm−1、1700cm−1)は、数値変更が可能である。つまり、特定波数は、600cm−1、1300cm−1、1600cm−1、1700cm−1に限定されるものではなく、特定波数としての有効範囲を設定することが可能である。この点について、具体的に説明する。
【0129】
まず、図4における分析と同様、新品の状態の半田材を比較対象とし、プリント基板の印刷工程における印刷回数が200回、400回、600回、800回、1000回、1200回の各半田材を検査対象として、本実施例で示した方法によって各検査対象に対して上記吸光度差を求めた。この結果を図5〜図8に示す。なお、図5では、520cm−1〜700cm−1の波数帯域についての上記吸光度差を示し、図6では、1270cm−1〜1430cm−1の波数帯域についての上記吸光度差を示し、図7では、1500cm−1〜1650cm−1の波数帯域についての上記吸光度差を示し、図8では、1665cm−1〜1730cm−1の波数帯域についての上記吸光度差を示す。
【0130】
半田材に含まれる金属酸化物(二酸化錫)の吸収ピークは600cm−1付近で検出されるが、図5に示すように、520cm−1〜700cm−1に注目すれば、検査対象毎の吸光度差の相違を区別でき、557cm−1〜613cm−1に注目すれば、検査対象毎の吸光度差の相違をさらに顕著に観測ができる。したがって、520cm−1〜700cm−1の間の少なくともいずれかの波数を上記特定波数とすれば、各検査対象の金属酸化物の含有度を分析することが可能となる。
【0131】
また、カルボン酸塩の対称伸縮振動の吸収ピークは1300cm−1付近(厳密には、1323cm−1)で検出されるが、図6に示すように、1270cm−1〜1430cm−1に注目すれば、検査対象毎の吸光度差の相違を区別でき、1282cm−1〜1382cm−1に注目すれば、検査対象毎の吸光度差の相違をさらに顕著に観測することができる。したがって、1270cm−1〜1430cm−1の間の少なくともいずれかの波数を上記注目波数とすれば、各検査対象のカルボン酸塩の含有度を分析することが可能となる。
【0132】
また、カルボン酸塩の逆対称伸縮振動の吸収ピークは1600cm−1付近(厳密には、1590cm−1)で検出されるが、図7に示すように、1500cm−1〜1650cm−1に注目すれば、検査対象毎の吸光度差の相違を区別でき、1562cm−1〜1624cm−1に注目すれば、検査対象毎の吸光度差の相違をさらに顕著に観測することができる。したがって、1500cm−1〜1650cm−1の間の少なくともいずれかの波数を上記注目波数とすれば、各検査対象のカルボン酸塩の含有度を分析することが可能となる。
【0133】
さらに、カルボン酸の炭素-酸素二重結合の吸収ピークは、1700cm−1付近で検出されるが、図8に示すように、1665cm−1〜1730cm−1に注目すれば、検査対象毎の吸光度差の相違を区別でき、1683cm−1〜1710cm−1に注目すれば、検査対象毎の吸光度差の相違をさらに顕著に観測することができる。したがって、1665cm−1〜1730cm−1の間の少なくともいずれかの波数を上記注目波数とすれば、各検査対象のカルボン酸の含有度を分析することが可能となる。
【0134】
〔半田材検査装置〕
次に、本実施形態の半田材検査方法を実現する半田材検査装置について説明する。なお、以下で説明する半田材検査装置は、あくまで、本実施形態の半田材検査方法を実現する装置の例示であり、本実施形態の半田材検査方法を実現するにあたって、以下の半田材検査装置が必須となるわけではない。
【0135】
本実施形態の半田材検査装置は、検査対象の半田材および比較対象の半田材に光を照射する光源と、上記光が照射されることによって検査対象の半田材から反射する特定波数の赤外線の第一強度を検出し、上記光が照射されることによって比較対象の半田材から反射する該特定波数の赤外線の第二強度を検出する強度検出手段と、上記検出された各強度に基づいて、上記比較対象の半田材に対する上記検査対象の半田材の相対的劣化度を示した劣化パラメータを出力する制御手段と、から構成される。
【0136】
ここで、上記劣化パラメータとして、上記第一強度と上記第二強度との差分、上記第一強度と上記第二強度との比が挙げられる。また、上記第一強度から、検査対象の半田材における上記特定波数の第一赤外線吸光度を求め、上記第二強度から、比較対象の半田材における上記特定波数の第二赤外線吸光度とを求め、上記第一赤外線吸光度と上記第二赤外線吸光度との差分を上記劣化パラメータとしてもよい。さらに、上記第一赤外線吸光度と上記第二赤外線吸光度との比を上記劣化パラメータとしてもよい。
【0137】
これにより、これら劣化パラメータは、上記検査対象の半田材の特定波数の赤外線吸収度と、比較対象の半田材の特定波数の赤外線吸収度との相違度を示したものとなる。ここで、半田材における金属酸化物、カルボン酸、カルボン酸塩の含有度に応じて、該半田材における特定波数の赤外線の吸収量は変化し、該半田材を反射する特定波数の赤外線の強度は変化する。
【0138】
したがって、半田材検査装置のオペレータは、これら劣化パラメータを参照することによって、比較対象の半田材に対して、検査対象の半田材に含有している酸化金属、カルボン酸、カルボン酸塩の含有度を知ることができ、検査対象の半田材の相対的劣化度を検査できる。
【0139】
また、上記構成において、光源と半田材との間、または、半田材と強度検出手段との間に、赤外線のみを透過させる光学フィルタを設ければ、強度検出手段は、半田材から反射する赤外線を検出することが可能となる。
【0140】
〔半田材検査装置の実施例〕
以下、本実施形態の半田材検査装置の実施例を説明する。
【0141】
本実施例の半田材検査装置100は、図9に示すように、光源10、バンドパスフィルタ11、プレート12、半田材13、光電変換器(強度検出手段)14、制御部(制御手段)15、表示部16を備えている。
【0142】
光源10は、プレート12の方向に向けて光を照射するランプであり、例えば、セラミック光源が使用される。
【0143】
バンドパスフィルタ11は、光源10とプレート12との間であって光源10の光軸上に配置されている光学フィルタである。このバンドパスフィルタ11は、特定波数の赤外線のみを透過するものである。なお、特定波数は、上述の半田材検査方法の実施例で説明したものと同様であり、金属酸化物、カルボン酸、カルボン酸塩のうちの少なくとも一つの赤外線吸収が認められる波数である。
【0144】
プレート12は、半田材13を載せるためのステージである。このプレート12上に配される半田材13には、光源10からの光がバンドパスフィルタ11を介して照射される。よって、半田材13に照射される光は特定波数の赤外線となる。
【0145】
半田材13は、前記比較対象または検査対象の半田材に該当するものであり、照射された赤外線を反射する。
【0146】
光電変換器14は、入射する赤外線の強度を検出する。さらに、光電変換器14は、検出した赤外線の強度を示すアナログ信号を生成し、該アナログ信号を制御部15へ送信する。この光電変換器14の例としては、例えば、MCT(光導電素子,HgCdTe)を用いたデバイスが挙げられる。なお、光電変換器14は、プレート12上の半田材13から反射する赤外線の光軸上に位置するように設けられている。
【0147】
制御部15は、光電変換器14から送られてくるアナログ信号を処理するブロックであり、該アナログ信号をデジタル信号に変換するA/D(Analog to Digital)コンバータと、該デジタル信号に基づいてデータ処理を行うコンピュータとによって構成される。
【0148】
表示部16は、制御部15から送られてくる画像データに基づいて画像を表示する表示パネルである。
【0149】
この半田材検査装置100によれば、制御部15のコンピュータにおいて処理されるデジタル信号は、半田材13から反射する注目波数の赤外線の強度を示したデータとなる。
【0150】
よって、半田材検査装置100において、比較対象の半田材13をプレート12に配して、この半田材13に特定波数の赤外線を照射することによって、比較対象の半田材13を反射する赤外線の強度(第二強度)を光電変換器14に検出させ、その後、検査対象の半田材13をプレート12上に配して、同様の作業で赤外線の強度(第一強度)を検出させればよい。これにより、制御部15には、比較対象の半田材13を反射する赤外線の強度を示すデータと、検査対象の半田材13を反射する赤外線の強度を示すデータとが順次伝達されることとなる。
【0151】
そして、制御部15が、上記各強度に基づき、検査対象における特定波数の赤外線の吸光度(第一赤外線吸光度)と、比較対象における特定波数の赤外線の吸光度(第二赤外線吸光度)とを求める。さらに、制御部15が、比較対象における注目波数の赤外線の吸光度から検査対象における注目波数の赤外線の吸光度を差し引いた吸光度差を求め、この吸光度差を示す画像を表示部16に表示させればよい。これにより、半田材検査装置100のオペレータは、検査対象の金属酸化物の相対的含有度、カルボン酸の相対的含有度、カルボン酸塩の相対的含有度のうち、少なくとも一つを分析することが可能となり、検査対象の半田材の相対的劣化度を分析できる。
【0152】
さらに、制御部15は、上記吸光度差の代わりに、(a)検査対象における特定波数の赤外線の吸光度と比較対象における特定波数の赤外線の吸光度との比である吸光度比、(b)比較対象の半田材を反射する赤外線の特定波数の強度から検査対象の半田材を反射する赤外線の特定波数の強度を差し引いた強度差、(c)検査対象の半田材を反射する赤外線の特定波数の強度と比較対象の半田材を反射する赤外線の特定波数の強度との比である強度比、のうちのいずれかを出力する構成であってもよい。つまり、上述した半田材検査方法の実施例における式(21)(31)(41)のいずれかを演算出力する構成であってもよい。
【0153】
〔半田材検査装置および半田材検査方法の実施形態〕
ところで、上記光電変換器14による検出結果は、上記各半田材13の影響だけではなく、例えば、水蒸気の多寡など、周囲の環境の影響も受けてしまう。
【0154】
本実施形態に係る半田材検査装置100は、この周囲環境の影響を抑制して、上記各半田材13が反射する赤外線の強度を高精度に検出するために、半田材13がプレート12上に配される前の状態でも光電変換器14による計測を行い、この状態での計測(バックグランドの計測)の結果によって、半田材13をプレート12上に配した後の検出結果(サンプルの計測結果)を補正している。なお、本実施形態では、当該補正後の値が、上記赤外線の強度の検出結果として使用されている。一例として、半田材検査装置100は、サンプルの計測結果とバックグランドの計測結果とから求まる吸光度などによって、半田材13の配置による状態変化度を算出することによって、サンプル計測の結果をバックグランド計測の結果で補正できる。
【0155】
ここで、オペレータの指示によってバックグランドの計測を行うと、オペレータが指示し忘れたときに、再度、バックグランドの計測と、半田材13がプレート12上に配された状態での計測とを実施する必要があるため、オペレータの負担が大きくなってしまう。
【0156】
より詳細には、半田材13の強度(第一および第二強度)の検出毎に、バックグランドの計測を実施するのは面倒であり、オペレータが手動でバックグランドの計測を指示する構成では、オペレータは、バックグランド計測を忘れがちである。もし、バックグランド計測を実施しないまま、サンプル計測を実施すると、再計測の際に、半田材13を取り除いて図示しないプリズムやプレート12を清掃するために、余計な手間が発生してしまう。
【0157】
なお、一般に、オペレータは、バックグランド計測忘れのような、ちょっとしたミスを繰り返すと、苛立ちを覚え、他の作業に影響する虞れがある。また、半田材13の劣化度を検査するためには、第一および第二強度を検出する必要があり、これらの検出工程のそれぞれで、オペレータは、同様の作業を繰り返す必要があるため、オペレータは、実際の計測時間を、それ以上の体感時間として感じることが多い。これらの結果、オペレータが手動でバックグランドの計測を指示する構成では、オペレータの負担が大きくなってしまう。
【0158】
これに対して、本実施形態に係る半田材検査装置100は、半田材13がプレート12上に配されているか否かに拘らず、例えば、予め定められた周期毎など、予め定められた条件が成立する度に、上記波数の赤外線の照射と光電変換器14による計測とを繰り返している。
【0159】
さらに、本実施形態に係る半田材検査装置100は、光電変換器14の計測結果に基づいて、当該計測結果を、上記バックグランドの計測結果として採用できるか否かを判定し、バックグランドの計測結果として採用可能な計測結果のうち、予め定められた計測結果(例えば、直前の計測結果)で、上記サンプルの計測結果を補正している。これにより、例えば、水蒸気の多寡など、周囲の環境が検出結果に影響を及ぼすことを抑制でき、上記第一および第二強度を高精度に検出できる。
【0160】
また、光電変換器14の計測結果に基づいて、当該計測結果を、上記バックグランドの計測結果として採用できるか否かを判定しているので、例えば、清掃中の状態や、半田材13をプレート12上に配置しかけている状態など、上記バックグランドの計測としては不適切なタイミングで、上記特定波数の赤外線の強度を計測したとしても、その計測結果を補正に使用することを防止でき、さらに高精度に第一および第二強度を検出できる。
【0161】
さらに、上記半田材検査装置100では、上記のようにしてバックグランド計測を自動実施するので、オペレータがバックグランド計測を意識しなくても、バックグランド計測を忘れることがない。また、サンプル計測の前にバックグランド計測が自動的に行われるので、計測手順の間違いによる、余計な手間が発生せず、オペレータの手間を軽減できる。さらに、サンプル計測の前にバックグランド計測が自動的に行われるので、オペレータが計測手順のミスを重ねることで精神的に不安定になることがなく、第一および第二強度を検出する際に感じる体感時間も大幅に削減できる。これらの結果、高精度に第一および第二強度を検出できるにも拘らず、オペレータの負担が少ない半田材検査装置100を実現できる。
【0162】
〔半田材検査装置および半田材検査方法の実施例〕
より詳細には、図9に示す本実施例の半田材検査装置100の制御部15は、図10に示すように、データを記憶する記憶部61と、光源10および光電変換器14を含む計測システムを制御して、上記特定波数の赤外線の強度を計測させると共に、光電変換器14による計測結果を取得し、計測結果を示すデータを上記記憶部61に格納する計測処理部62と、上記記憶部61に記憶された計測結果のうち、バックグランドの計測結果を示すデータで、当該計測処理部62によるサンプルの計測結果を補正して、検査対象または比較対象の半田材13の赤外線の強度を検出し、当該強度を示すデータ(強度データ)を上記記憶部61に格納する強度算出部63と、当該強度算出部63により算出された、上記検査対象の強度データ、および、上記記憶部61に格納された比較対象の強度データに基づき、上述したように検査対象となる半田材13の劣化度を算出する劣化度算出部64とを備えている。
【0163】
また、上記制御部15には、例えば、サンプルの計測開始を指示するボタンなどの入力装置(図示せず)によって、サンプルの計測開始指示を受け付けて、上記計測処理部62へ計測を指示するサンプル計測指示受付部65が設けられており、上記強度算出部63は、サンプル計測指示受付部65からの直接的または間接的な指示などによって、サンプル計測が行われ、強度を算出すべき時点になったことを検出できる。
【0164】
なお、本実施例に係るサンプル計測指示受付部65は、そのサンプル計測指示が、比較対象の半田材13に対してのものであるか、検査対象の半田材13に対してのものなのかの指示も受け付けることができ、上記劣化度算出部64は、サンプル計測指示受付部65からの直接的または間接的な指示などによって、検査対象の半田材13へのサンプル計測が行われ、劣化度を算出すべき時点になったことを検出できる。
【0165】
さらに、本実施例に係る制御部15には、例えば、予め定められた周期毎など、予め定められた条件が成立するか否かを監視して、当該条件が成立する度に、上記計測処理部62へ計測を指示するバックグランド計測タイミング検出部71と、バックグランド計測タイミング検出部71の指示に応じた上記計測処理部62の計測結果のレベルに基づいて、当該計測結果をバックグランド計測の計測結果として採用するか否かを判定し、採用する場合は、その計測結果を示すデータ(バックグランドデータ)を、上記記憶部61に格納するレベル判定部72とが設けられている。
【0166】
上記レベル判定部72は、計測処理部62による赤外線の強度の計測結果と、予め定められた閾値とを比較する。ここで、例えば、プレート12に半田材13の一部または全部が配されていたり、プレート12が汚れていたりすると、計測処理部62による赤外線の強度の計測結果は、小さくなる。一方、プレート12に半田材13が配されておらず、しかも、プレート12が充分に清掃されていれば、赤外線の強度の計測結果は、大きくなる。したがって、当該計測結果で、上記サンプルの計測結果を補正することによって、充分な精度で、各半田材13を反射する赤外線の強度を検出できる。また、上記予め定められた閾値を下回っていた場合は、当該計測結果をバックグランド計測の計測結果として採用せず、当該閾値以上であった場合は、バックグランド計測の計測結果として採用することによって、上記強度算出部63は、所望の精度で、各半田材13を反射する赤外線の強度を検出できる。
【0167】
一方、本実施例に係るバックグランド計測タイミング検出部71(以下では、タイミング検出部71と略称する)は、予め定められた周期で、上記計測処理部62に計測指示を繰り返している。なお、当該周期は、清掃してからプレート12上に半田材13が配されるまでの間に、充分な回数だけ計測処理部62がバックグランド計測できるように(計測ミスや計測タイミングのズレが発生しても、バックグランドデータを取得できるように)設定されている。
【0168】
これにより、各サンプル計測の前に、プレート12が適切に清掃されていれば、サンプル計測がいつの時点で指示されたとしても、半田材検査装置100は、サンプル計測が指示された時点よりも前の時点に計測されたバックグランドデータを、記憶部61に蓄積することができる。
【0169】
また、上記強度算出部63は、サンプル計測が指示された場合、上記記憶部61に蓄積されたバックグランドデータの中から、例えば、サンプル計測が指示された時点に最も近い時点での計測結果を示すバックグランドデータを抽出し、当該バックグランドデータの示す計測結果で、サンプルの計測結果を補正できる。
【0170】
なお、強度算出部63は、最も近い時点のバックグランドに代えて、サンプル計測が指示された時点に近いものから順に、予め定められた回数のバックグランドデータのうちの少なくとも1つを用いてサンプルの計測結果を補正してもよい。ただし、プレート12が同程度に清掃されていたとしても、周囲環境が変化すると、周囲環境の相違によって、バックグランド計測の結果も変化する。したがって、強度算出部63は、サンプル計測が指示された時点に最も近い時点のバックグランドデータで補正することによって、さらに高精度に、各半田材13が反射する赤外線の強度を検出できる。
【0171】
上記構成では、図11に示す期間T1のように、サンプルの計測開始指示の有無に拘らず、計測処理部62は、タイミング検出部71の指示に応じて、バックグランド計測を繰り返している。なお、図中では、説明の便宜上、バックグランドおよびサンプルの計測タイミングを、SまたはBが付された矢印で示しており、計測結果が閾値を下回った場合は、矢印を破線で示している。また、サンプルの計測タイミングは、Sを付すだけではなく、太く図示している。
【0172】
より詳細には、図12に示すように、タイミング検出部71がバックグランドの計測タイミングになったことを検出すると、計測処理部62へバックグランド計測を指示する。これに応じて、計測処理部62は、光源10に赤外線を照射させると共に、光電変換器14による計測結果を取得する。さらに、レベル判定部72は、計測結果のレベルが閾値を下回っているか否かを判定する。
【0173】
ここで、図11に示す上記期間T1のうち、清掃中の期間t11と、半田材13をプレート12に配しようとしている期間t13との間の期間t12では、プレート12が充分に清掃された状態に保たれており、しかも、プレート12には、半田材13が配されていない。したがって、この期間t12では、計測結果は、上記閾値以上である。この場合は、図12に示すように、レベル判定部72は、上記計測結果を示すバックグランドデータを、記憶部61に格納する。
【0174】
上記バックグランド計測およびバックグランドデータの格納処理は、上記t12の期間の間、繰り返され、記憶部61には、少なくともサンプル計測の補正に必要な数(本実施形態では1つ)のバックグランドデータが蓄積される。
【0175】
なお、t13の期間では、半田材13をプレート12に配しようとしているので、計測結果は、上記閾値を下回っている。したがって、レベル判定部72は、上記計測結果を示すバックグランドデータを記憶部61に格納せず、閾値以上だった場合のバックグランドデータは、記憶部61に格納されたままになっている。
【0176】
さらに、上記t13の期間において、比較対象の半田材13がプレート12に配され、t14の時点において、サンプル計測の指示を受け付けると、図13に示すように、サンプル計測指示受付部65は、計測処理部62へ計測を指示する。これに応じて、計測処理部62は、光源10に赤外線を照射させると共に、光電変換器14による計測結果を取得する。ここで、サンプル計測が指示された状態では、比較対象の半田材13がプレート12に配されているので、光電変換器14は、当該半田材13を反射した特定波数の赤外線の強度を計測でき、計測処理部62は、計測結果(サンプルの計測結果)を取得できる。
【0177】
ここで、計測結果を取得してから、上記バックグランドデータを読み出してもよいが、本実施例では、サンプル計測指示受付部65は、サンプル計測の指示を受け付けた時点で、強度算出部63にも、その旨を通知しており、強度算出部63は、計測処理部62による計測処理と並列して、記憶部61からバックグランドデータを読み出している。
【0178】
さらに、上記計測処理部62がサンプルの計測結果を取得すると、強度算出部63は、上記記憶部61から読み出したバックグランドデータで、当該サンプルの計測結果を補正して、比較対象の半田材13を反射した特定波数の赤外線の強度を高精度に検出でき、検出された赤外線の強度を示す強度データを、記憶部61に格納する。
【0179】
比較対象のサンプル計測が終了し、その強度データが記憶部61に格納されると、図11に示す期間T2において、上記期間T1と同様に、計測処理部62は、タイミング検出部71の指示に応じて、バックグランド計測を繰り返す。
【0180】
この期間T2のうち、期間t21では、比較対象の半田材13がプレート12から取り除かれ、プレート12やプリズムなどが清掃される。なお、比較対象または検査対象の半田材13をプレート12から取り除いた時点で、充分、プレート12やプリズムが清浄であれば、清掃処理の一部または全部を省略してもよい。また、期間T2のうち、期間t23は、検査対象の半田材13をプレート12に配しようとしている期間である。したがって、これらの期間には、上述した期間t11およびt13と同様に、計測結果は、上記閾値を下回っており、レベル判定部72は、上記計測結果を示すバックグランドデータを記憶部61に格納していない。一方、上記両期間t21・t23の間の期間t22では、上記期間t12と同様に、プレート12が充分に清掃された状態に保たれており、しかも、プレート12には、半田材13が配されていない。したがって、この期間t22では、計測結果が上記閾値以上になり、この場合は、レベル判定部72は、上記計測結果を示すバックグランドデータを、記憶部61に格納している。
【0181】
さらに、上記t23の期間において、検査対象の半田材13がプレート12に配され、t24の時点において、検査対象のサンプル計測の指示を受け付けると、制御部15の各部材は、図14に示すように動作する。ここで、図14の動作は、図13の動作と略同様であるが、検査対象のサンプル計測が指示されているので、検査対象の半田材13を反射した特定波数の赤外線の強度が上記強度算出部63によって検出されると、劣化度算出部64は、当該検出結果(検査対象の検出結果)と、上述した比較対象の強度データを記憶部61から読み出して取得した比較対象の検出結果とに基づいて、上述したように、検査対象の半田材13の劣化度を検査する。
【0182】
これにより、オペレータが特にバックグランド計測を指示していないにも拘らず、半田材検査装置100は、自らが自動的に計測したバックグランド計測の計測結果を用いて、各半田材13を反射した赤外線の強度を高精度に検出できる。
【0183】
なお、上記半田材検査装置100は、計測時に、比較対象と検査対象とを区別しているが、これに限るものではない。半田材検査装置100は、例えば、両者を区別せず、半田材に対するサンプル計測の結果とバックグランド計測の結果とから、検出対象の半田材の検出結果を求めてもよい。また、上記では、比較対象の検出結果(第二強度)と検査対象の検出結果(第一強度)とのいずれを求める際にも、バックグランド計測結果を自動計測しているが、いずれか一方の場合にのみを自動検出してもよい。
【0184】
いずれの場合であっても、予め定められた照射領域に半田材を配して光を照射したときに当該半田材から反射された光を計測可能なように予め定められた領域を計測領域とするとき、検出対象の半田材が配された上記照射領域へ光を照射したときに上記計測領域における特定波数の赤外線の強度を検出装置により検出する検出工程を含み、上記検出工程は、上記検出装置によって、上記強度の検出対象とする半田材が上記照射領域に配されていない状態で上記照射領域に光を照射したときに上記計測領域における上記特定波数の赤外線の強度を基準強度として自動的に計測する基準計測工程と、上記検出装置によって、上記強度の検出対象とする半田材が上記照射領域に配された状態で上記照射領域に光を照射したときに上記計測領域における上記特定波数の赤外線の強度を対象強度として計測する計測工程と、上記基準強度で上記対象強度を補正した結果を上記強度の検出結果とする補正工程とを含んでいれば、同様の効果が得られる。
【0185】
また、上記では、バックグランドの測定結果の信号レベルが閾値を下回り、当該測定結果がバックグランドの測定として不適切であると判断した場合、単に記憶部61に記憶しない場合について説明したが、信号レベルが閾値を下回っていた場合、レベル判定部72が、例えば、表示部16へ指示するなどして、プリズムなどの光学系を清掃するように警告してもよい。
【0186】
この場合は、例えば、図15に示すように、本変形例に係る半田材検査装置100aは、ステップ1(以下では、S1のように略称する)において、サンプル計測指示を受け付けたか否かを判定し、受け付けた場合(YES の場合)、S2において、半田材13のサンプル計測を実施する。さらに、S3において、半田材検査装置100aは、図10に示す半田材検査装置100と同様に、例えば、サンプル計測結果と、記憶部61から読み出したバックグランド計測結果とを比較して、状態変化度を算出するなどして、サンプル計測結果をバックグランドの計測結果で補正して、第一または第二強度を検出する。なお、第一または第二強度が検出されると、半田材検査装置100aのオペレータは、計測に使用した半田材を取り除き、プレート12やプリズムを清掃する。
【0187】
一方、サンプル計測指示を受け付けず、バックグランドの計測タイミングになると(上記S1にてNO、かつ、S11にてYES の場合)、半田材検査装置100aは、S12においてバックグランド計測を実施し、S13において、その信号レベルを評価する。
【0188】
当該信号レベルが閾値を下回っており、計測結果の信号レベルがバックグランドの計測結果として不適切な値を示している場合(S13にてNGの場合)、半田材検査装置100aは、S14において、プレート12やプリズムなどを清掃するように警告する。
【0189】
これとは逆に、当該信号レベルが閾値以上であり、計測結果の信号レベルが、バックグランドの計測結果として適切な値を示している場合(S13にてOKの場合)、半田材検査装置100aは、S15において、当該計測結果を示すバックグランドデータを記憶部61に格納し、S16において、清掃警告を解除する。
【0190】
これにより、半田材検査装置100aは、半田材検査装置100の効果に加えて、信号レベルが閾値を下回っていた場合、プレート12やプリズムなどを清掃するように警告して、オペレータに清掃タイミングを通知できるので、さらに、オペレータの負担を軽減できる。
【0191】
なお、上記では、サンプル計測の前のバックグランド計測結果(例えば、直前のバックグランド計測結果など)に応じてサンプル計測結果を補正したが、サンプル計測の後のバックグランド計測結果(例えば、直後のバックグランド計測の結果など)を用いて補正してもよい。ただし、上記のように、サンプル計測の前のバックグランド計測結果に応じてサンプル計測結果を補正すれば、より早い時点で、検出結果を得ることができる。したがって、例えば、検出結果を速やかに表示したい場合などには、前に行われたバックグランド計測結果を使用するのが望ましい。
【0192】
なお、上記では、繰り返しバックグランド計測を実施する構成について説明したが、例えば、サンプル計測の時点とバックグランド計測の時点との双方を半田材検査装置が制御している場合には、半田材検査装置は、当該バックグランド計測の時点でのみバックグランド計測してもよい。この場合でも、半田材検査装置がバックグランド計測を自動実施できれば、略同様の効果が得られる。ただし、上記のように、繰り返し計測すれば、サンプル計測時点を半田材検査装置が予め特定できない場合でも、何ら支障なく、バックグランド計測できる。
【0193】
また、上記では、信号レベルによってバックグランドデータとして適切か否かを判定し、不適切な場合は、記憶部に格納しない構成について説明したが、これに限るものではない。例えば、適否に拘らず、記憶部に格納し、それらのうちから、強度検出の際に使用するバックグランドデータを選択してもよい。ただし、記憶部に格納しない方が記憶部に必要な記憶容量を削減できる。
【0194】
さらに、上記では、第一強度と第二強度とに基づいて、比較対象の半田材に対して、検査対象の半田材における金属酸化物、酸、塩の含有度を相対的に分析する構成について説明したが、これに限るものではない。例えば、検査対象の半田材に光を照射することによって該検査対象の半田材から反射する特定波数の赤外線の強度を検出し、当該強度や補正後の検出結果に基づいて、検査対象の半田材における金属酸化物、酸、塩の含有度を分析することによって、当該半田材の劣化度(粘度、酸化度、還元力)を検査してもよい。
【0195】
また、図16に示すように、半田材検査装置100において、制御部15に、比較対象の赤外線の強度に応じたデータを記憶する比較対象データ記憶部20を接続させてもよい。この構成によれば、予め、比較対象の半田材を反射する赤外線の強度のみを検出し、この強度を示すデータを、複数の検査対象の半田材13の検出している間、比較対象データ記憶部20に保存させておくことができ、比較対象の半田材13を反射する赤外線の強度を、検査対象の半田材13を反射する赤外線の強度を検出する度に繰り返す代わりに、比較対象データ記憶部20から読み出した比較対象データの示す強度を使用できる。これにより、複数の検査対象の半田材に対して連続して検査する場合であっても、比較対象の半田材を反射する赤外線の強度の検出は一度だけで済ませることが可能である。
【0196】
さらに、光源10とプレート12との間にバンドパスフィルタ11を配置するのではなく、図17に示すように、プレート12上の半田材13と光電変換器14との間であって、半田材13から反射する光の光軸上にバンドパスフィルタ11を設ける構成であってもよい。
【0197】
また、図17に示すように、光電変換器14とバンドパスフィルタ11とは、各々複数備えてもよい。この構成において、例えば、バンドパスフィルタ11aの特定波数を、金属酸化物の赤外線吸収が認められる波数とし、バンドパスフィルタ11bの特定波数をカルボン酸の赤外線吸収が認められる波数とすれば、検査対象の金属酸化物の含有度、かつカルボン酸の含有度を分析することが可能となる。
【0198】
さらに、図18に示すように、光源10とプレート12との間であって光源10の光軸上に、複数のバンドパスフィルタ11・・・を含む回転部材30を備える構成であってもよい。この回転部材30は、いずれか一つのバンドパスフィルタ11のみを光源10の光軸上に配する構成であると共に、制御部15からのコマンドに基づいて回転することによって光軸上に配するバンドパスフィルタ11を切り換えるものである。
【0199】
この構成によれば、回転部材30に含まれる各バンドパスフィルタ11・・・の特定波数を各々異なるものとすれば、半田材13を反射する各々異なる波数の赤外線を検出することが可能となる。これにより、検査対象の半田材13の金属酸化物の含有度、カルボン酸の含有度、カルボン酸塩の含有度を一回の検査作業で分析することが可能となる。
【0200】
また、回転部材30の各バンドパスフィルタ11・・・において、上述した半田材検査方法の実施例で説明した参照波数の赤外線を透過する光学フィルタを含ませてもよい。そして、光電変換器14に、比較対象から反射する赤外線における上記参照波数の強度(第四強度)と、検査対象から反射する赤外線における上記参照波数の強度(第三強度)とを検出させる。さらに、制御部15に、半田材検査方法の実施例で説明した(61)〜(64)式、(71)〜(78)式を演算させれば、補正強度差、補正強度比、補正吸光度差、補正吸光度比を出力することが可能となる。
【0201】
また、図19に示すような構成とすることも可能である。
【0202】
図19の半田材検査装置100では、プレート12には、一方の面側と他方の面側との間で相互に光を透過させる透光領域(ZnSe等)12aが含まれている。そして、半田材13は、プレート12における一方の面側の透光領域12a上に配置される。
【0203】
さらに、プレート12における他方の面側に対向する位置に、光源10、回転部材30、光電変換器14が配され、さらに、ミラー40・45が配される。具体的には、光源10の光軸上に、光源10からの光の進行方向に沿って回転部材30、ミラー40をこの順序で配置する。そして、ミラー40は、回転部材30を介して光源10から照射される光を透光領域12aの方向へ反射するように設置される。さらに、ミラー45は、透光領域12aからの光を光電変換器14の方向へ反射するように配置される。
【0204】
この構成によれば、回転部材30に含まれるバンドパスフィルタ11が、光源10から出射した光のうちの注目波数の赤外線のみを透過し、透過した赤外線がミラー40へ導かれる。そして、この赤外線は、ミラー40を反射してプレート12の透光領域12aの方向へ導かれ、透光領域12aを介して、半田材13へ到達することとなる。さらに、半田材13に到達した赤外線は反射し、透光領域12aを介してミラー45へ導かれる。そして、ミラー45へ導かれた赤外線は、このミラー45を反射し、光電変換器14へ入射することとなる。これにより、光電変換器14においては、半田材13を反射する赤外線の強度を検出することが可能となる。
【0205】
また、図18に示した半田材検査装置100をインライン分析用に変形することも可能である。例えば、図20に示す半田材検査装置100は、インライン分析用であり、プリント基板の生産ラインにおける印刷工程で使用されている半田材の劣化度をインライン分析するためのものである。
【0206】
図20では、半田材検査装置100は、プリント基板の印刷装置200の近傍に備えられている。
【0207】
この印刷装置200には、半田材が印刷される基板201と、基板201上に配置され、配線パターンが刻まれているメタルマスク202と、メタルマスク202上に配置される半田材13と、半田材13を押圧しながら移動させるスキージ203と、スキージ203を駆動制御するコントローラ204と、が含まれる。
【0208】
そして、半田材検査装置100においては、回転部材30のバンドパスフィルタ11を透過する赤外線を半田材13へ導く光ファイバー51と、半田材13を反射する赤外線を光電変換器14へ導く光ファイバー50と、が備えられる。
【0209】
この構成によれば、光源10を出射し、回転部材30を透過した赤外線は、光ファイバー51を通して、印刷装置200における半田材13に照射される。そして、この赤外線は、半田材13を反射し、光ファイバー50を通して、光電変換器14へ導かれる。これにより、半田材検査装置100は、印刷装置200に配置されている半田材13をサンプルとして、半田材13の反射赤外線の強度や赤外線吸光度を計測でき、半田材13の劣化度をインライン分析できる。
【0210】
また、図20に示す半田材検査装置100および印刷装置200を図21のように変形することも可能である。
【0211】
図21に示す印刷装置200では、スキージ203において、該スキージ203の一方の面側と他方の面側との間で相互に光を透過させる透光領域(ZnSe等)203aが形成されている。そして、スキージ203の一方の面側に半田材13が配置される。
【0212】
そして、半田材検査装置100においては、光ファイバー150・151が備えられる。光ファイバー151は、回転部材30のバンドパスフィルタ11を透過する赤外線を入射し、この赤外線をスキージ203の他方の面側における透光領域203a上に出射するものである。光ファイバー150は、透光領域203aからの光を入射し、この光を光電変換器14へ導くものである。
【0213】
この構成によれば、光源10を出射し、回転部材30を透過した赤外線は、光ファイバー151を通して、スキージ203の他方の面側の透光領域203aに照射される。そして、この照射された赤外線は、透光領域203aを透過して半田材13に到達することとなる。さらに、この赤外線は、半田材13を反射し、透光領域203aを透過して光ファイバー150に入射する。そして、光ファイバー150へ入射した赤外線は、光電変換器14へ導かれる。これにより、半田材検査装置100は、印刷装置200に配置されている半田材13をサンプルとして、半田材13の反射赤外線の強度や赤外線吸光度をインラインで計測でき、半田材13の劣化度をインライン分析できる。
【0214】
また、図21に示すように、メタルマスク202において、該メタルマスク202の一方の面側と他方の面側との間で相互に光を透過させる透光領域(ZnSe等)202aを設ける構成であり、メタルマスク202の一方の面上に半田材13を配する構成であってもよい。この構成の場合、光ファイバー151は、回転部材30のバンドパスフィルタ11から入射する赤外線を、メタルマスク202の他方の面側における透光領域202a上に出射するように配置され、光ファイバー150は、メタルマスク202の他方の面側における透光領域203aからの光を入射するように配置される。
【0215】
以上、図18〜図21において、インライン分析が可能な半田材検査装置100を示したが、図22に示すような半田材検査装置500を構成することによって、インライン分析を実現することも可能である。
【0216】
図22に示すように、半田材検査装置500は、印刷装置300に隣接配置され、発光素子501、筐体502、筐体503、連通路504、受光素子505、を含む構成である。
【0217】
また、半田材検査装置500のうちの筐体502が印刷装置300と隣接し、筐体502の内部と印刷装置300の内部とは連通する構成である。さらに、筐体502内部と筐体503内部とは連通路504によって連通されている。
【0218】
印刷装置300は、回路用基板に半田材を印刷するための装置である。印刷装置300の内部においては、印刷処理が行われている状態の基板300aが配されている。また、基板300a上にはメタルマスク300bが配され、メタルマスク300b上には半田材300cが配されている。
【0219】
発光素子501は、半田材に照射するための光を出射する光源であり、例えば、セラミック光源、ハロゲンランプ、LED(Light Emitting Diode)、半導体レーザ(Laser Diode)のうちのいずれか一つが用いられる。
【0220】
筐体502は、発光素子501の出射面と対向するように発光素子501と隣接配置し、発光素子501から出射する光を内部に入射するための入射口(不図示)が構成されている。また、筐体502の内部においては、ミラー502a・502b・502c・502dが配されている。
【0221】
ミラー502aは、上記入射口を介して発光素子501の出射面と対向配置され、発光素子501が出射する光を受光して、この光をミラー502bへ反射する光学手段である。ミラー502bは、ミラー502aが反射する光を受光し、受光した光を印刷装置300の内部の半田材300cへ反射する光学手段である。ミラー502cは、半田材300cから反射する光を受光し、受光した光をミラー502dへ反射する光学手段である。ミラー502dは、ミラー502cが反射する光を受光し、受光した光を、連通路504を介して筐体503内部へ反射する光学手段である。
【0222】
受光素子505は、例えば、MCTを用いた光電変換器であって、筐体503の外壁に接続配置されていると共に、その受光部を筐体503内部に突出させている。
【0223】
筐体503の内部においては、回折格子(グレーティング)503a、ミラー503bが配されている。
【0224】
回折格子503aは、筐体502のミラー502dから反射した光を回折する素子であるが、この光のうちの特定波数帯域の赤外線はミラー503bへ回折される。ミラー503bは、回折格子503aが回折した赤外線を受光し、この赤外線を、受光素子505の受光部へ反射する光学手段である。
【0225】
以上の構成によれば、発光素子501から出射した光は、ミラー502a・502bを介して半田材300cへ照射される。これにより、半田材300cから光が反射するが、この反射された光は、ミラー502c・502dを介して回折格子503aへ導かれる。
【0226】
さらに、回折格子503aは、ミラー502dからの光のうちの特定波数帯域の赤外線をミラー503bへ回折し、ミラー503bは、この赤外線を受光素子505の受光部へ導く。これにより、印刷装置300における半田材300cが反射する光のうちの赤外線を受光素子505の受光部へ導くことができ、インライン分析が可能になる。
【0227】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、上述した実施形態において開示された各技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0228】
なお、上記実施例の制御部15は、CPUなどの演算手段が、ROM(Read Only Memory)やRAMなどの記憶手段に記憶されたプログラムを実行し、キーボードなどの入力手段、ディスプレイなどの出力手段、あるいは、インターフェース回路などの通信手段を制御することにより実現することができる。したがって、これらの手段を有するコンピュータが、上記プログラムを記録した記録媒体を読み取り、当該プログラムを実行するだけで、制御部15の各種機能および各種処理を実現することができる。また、上記プログラムをリムーバブルな記録媒体に記録することにより、任意のコンピュータ上で上記の各種機能および各種処理を実現することができる。
【0229】
この記録媒体としては、マイクロコンピュータで処理を行うために図示しないメモリ、例えばROMのようなものがプログラムメディアであっても良いし、また、図示していないが外部記憶装置としてプログラム読取り装置が設けられ、そこに記録媒体を挿入することにより読取り可能なプログラムメディアであっても良い。
【0230】
また、何れの場合でも、格納されているプログラムは、マイクロプロセッサがアクセスして実行される構成であることが好ましい。さらに、プログラムを読み出し、読み出されたプログラムは、マイクロコンピュータのプログラム記憶エリアにダウンロードされて、そのプログラムが実行される方式であることが好ましい。なお、このダウンロード用のプログラムは予め本体装置に格納されているものとする。
【0231】
また、上記プログラムメディアとしては、本体と分離可能に構成される記録媒体であり、磁気テープやカセットテープ等のテープ系、フレキシブルディスクやハードディスク等の磁気ディスクやCD/MO/MD/DVD等のディスクのディスク系、ICカード(メモリカードを含む)等のカード系、あるいはマスクROM、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、フラッシュROM等による半導体メモリを含めた固定的にプログラムを担持する記録媒体等がある。
【0232】
また、インターネットを含む通信ネットワークを接続可能なシステム構成であれば、通信ネットワークからプログラムをダウンロードするように流動的にプログラムを担持する記録媒体であることが好ましい。
【0233】
さらに、このように通信ネットワークからプログラムをダウンロードする場合には、そのダウンロード用のプログラムは予め本体装置に格納しておくか、あるいは別な記録媒体からインストールされるものであることが好ましい。
【0234】
なお、上記では、好適な例として、測定対象物が半田材であり、半田材の劣化度(粘度、酸化度、還元力)を検査する場合について説明したが、それに限るものではない。測定対象物が、樹脂、繊維、フィルム、紙など、半田材以外の任意の測定対象物である場合であっても、オペレータの手間を余りかけずに、赤外線の強度の検出結果に基づいて、測定対象物の成分、該成分の変化、これらによって判断できる状態などを検査できる。
【産業上の利用可能性】
【0235】
本発明の検査方法、検査装置は、例えば、プリント基板の生産ラインにおける印刷工程で使用されるペースト状の半田材を検査する方法、装置として好適であるが、このペースト状の半田材に限定されず、周知の半田材全般に広く適用可能であり、さらに、一般の測定対象物の状態の検査に広く適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0236】
【図1】本発明の一実施例の半田材検査方法によって得られたチャートであって、検査対象の半田材の赤外線吸光度と、比較対象の半田材の赤外線吸光度とを示すスペクトルチャートである。
【図2】本発明の一実施例の半田材検査方法における検査対象の半田材の含有成分および各成分の含有割合(重量%)を示す表である。
【図3】図1に示す検査対象の半田材の赤外線吸光度から比較対象の半田材の赤外線吸光度を差し引いて得られた吸光度差を示すチャートである。
【図4】(a)は、複数の検査対象について、各検査対象の半田材の赤外線吸光度から比較対象の半田材の赤外線吸光度を差し引いて得られた吸光度差を検査対象毎に示したチャートであり、(b)は、複数の検査対象について、印刷回数、粘度、所定波数の赤外線の吸光度を示した表である。
【図5】複数の検査対象について、各検査対象の半田材の赤外線吸光度から比較対象の半田材の赤外線吸光度を差し引いて得られた吸光度差を検査対象毎に示したチャートであり、520cm−1〜700cm−1の波数帯域についてのチャートである。
【図6】複数の検査対象について、各検査対象の半田材の赤外線吸光度から比較対象の半田材の赤外線吸光度を差し引いて得られた吸光度差を検査対象毎に示したチャートであり、1270cm−1〜1420cm−1の波数帯域についてのチャートである。
【図7】複数の検査対象について、各検査対象の半田材の赤外線吸光度から比較対象の半田材の赤外線吸光度を差し引いて得られた吸光度差を検査対象毎に示したチャートであり、1500cm−1〜1650cm−1の波数帯域についてのチャートである。
【図8】複数の検査対象について、各検査対象の半田材の赤外線吸光度から比較対象の半田材の赤外線吸光度を差し引いて得られた吸光度差を検査対象毎に示したチャートであり、1665cm−1〜1725cm−1の波数帯域についてのチャートである。
【図9】本発明の一実施例の半田材検査方法を実現する半田材検査装置を示す模式図である。
【図10】上記半田材検査装置に設けられた制御部の要部構成を示すブロック図である。
【図11】バックグランドおよびサンプル計測のタイミングを示すタイミングチャートである。
【図12】バックグランド計測における各部の動作を示すシーケンス図である。
【図13】サンプル計測における各部の動作を示すものであり、比較対象となる半田材を反射した特定波数の赤外線の強度を計測する場合を示すシーケンス図である。
【図14】サンプル計測における各部の動作を示すものであり、検査対象となる半田材を反射した特定波数の赤外線の強度を計測する場合を示すシーケンス図である。
【図15】上記半田材検査装置の変形例を示すものであり、半田材検査装置の動作を示すフローチャートである。
【図16】図9に示す半田材検査装置の変形例を示す模式図である。
【図17】図9に示す半田材検査装置の他の変形例を示す模式図である。
【図18】図9に示す半田材検査装置のさらに他の変形例を示す模式図である。
【図19】図18に示す半田材検査装置をさらに変形した構成を示す模式図である。
【図20】図18に示す半田材検査装置をインライン分析用に変形した構成を示す模式図である。
【図21】図20に示す半田材検査装置を変形した構成を示す模式図である。
【図22】さらに異なる形態の半田材検査装置を示す模式図である。
【符号の説明】
【0237】
10 光源
11 バンドパスフィルタ
12 プレート
12a 透光領域
13・300c 半田材
14 光電変換器(強度検出手段)
15 制御部(制御手段)
16 表示部
20 比較対象データ記憶部
30 回転体
40・45 ミラー
50・51・150・151 光ファイバー
63 強度算出部(強度検出手段;基準強度計測手段;
対象強度計測手段;補正手段)
64 劣化度算出部(制御手段)
65 サンプル計測指示受付部(対象強度計測手段)
71 バックグランド計測タイミング検出部(基準強度計測手段)
72 レベル判定部(基準強度計測手段)
100・500 半田材検査装置
200・300 印刷装置
501 発光素子
502・503 筐体
504 連通路
505 受光素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め定められた照射領域に測定対象物を配して光を照射したときに当該測定対象物から反射された光を計測可能なように予め定められた領域を計測領域とするとき、
測定対象物が配された上記照射領域へ光を照射したときに上記計測領域における特定波数の赤外線の強度を検出装置により検出する検出工程を含み、当該検出結果に基づいて上記測定対象物の状態を検査する検査方法であって、
上記検出工程は、上記検出装置によって、上記強度の検出対象とする測定対象物が上記照射領域に配されていない状態で上記照射領域に光を照射したときに上記計測領域における上記特定波数の赤外線の強度を基準強度として自動的に計測する基準計測工程と、
上記検出装置によって、上記強度の検出対象とする測定対象物が上記照射領域に配された状態で上記照射領域に光を照射したときに上記計測領域における上記特定波数の赤外線の強度を対象強度として計測する計測工程と、
上記基準強度で上記対象強度を補正した結果を上記強度の検出結果とする補正工程とを含むことを特徴とする検査方法。
【請求項2】
測定対象物が半田材であることを特徴とする請求項1記載の検査方法。
【請求項3】
上記検出工程には、検査対象となる測定対象物が配された上記照射領域へ光を照射したときに上記計測領域における特定波数の赤外線の第一強度を検出装置により検出する第一検出工程と、
比較対象となる測定対象物が配された上記照射領域へ光を照射したときに上記計測領域における上記特定波数の赤外線の第二強度を上記検出装置により検出する第二検出工程とが含まれており、
さらに、上記検出された第一および第二強度に基づき、上記比較対象に対する上記検査対象となる測定対象物の劣化度を相対的に検査する検査工程を含むことを特徴とする請求項2記載の検査方法。
【請求項4】
上記基準計測工程は、予め定められた条件が成立する度に、上記計測領域における特定波数の赤外線の強度の計測を繰り返し、
上記補正工程は、繰り返し計測された上記基準強度のうちの少なくとも1つを選択し、選択された基準強度によって上記対象強度を補正することを特徴とする請求項1、2または3記載の検査方法。
【請求項5】
上記補正工程は、繰り返し計測された上記基準強度のうち、予め定められた閾値を下回る基準強度を、選択から除外することを特徴とする請求項4記載の検査方法。
【請求項6】
上記補正工程は、繰り返し計測された上記基準強度のうち、その計測時点が上記対象強度の計測時点に最も近い基準強度を選択することを特徴とする請求項4または5記載の検査方法。
【請求項7】
上記補正工程は、繰り返し計測された上記基準強度のうち、その計測時点が上記対象強度の計測時点よりも前で最も近い基準強度を選択することを特徴とする請求項4または5記載の検査方法。
【請求項8】
繰り返し計測された上記基準強度のうち少なくとも1つが予め定められた閾値を下回っている場合に警告する警告工程を含んでいることを特徴とする請求項4、5、6または7記載の検査方法。
【請求項9】
予め定められた照射領域に測定対象物を配して光を照射したときに当該測定対象物から反射された光を計測可能なように予め定められた領域を計測領域とするとき、
上記照射領域に光を照射する光源と、
上記照射領域に光が照射されているときに上記計測領域における特定波数の赤外線の強度を検出する強度検出手段とを備え、当該検出結果に基づいて上記測定対象物の状態を検査する検査装置であって、
上記強度検出手段は、上記強度の検出対象とする測定対象物が上記照射領域に配されていない状態で上記照射領域に光を照射したときに上記計測領域における上記特定波数の赤外線の強度を基準強度として自動的に計測する基準強度計測手段と、
上記強度の検出対象とする測定対象物が上記照射領域に配された状態で上記照射領域に光を照射したときに上記計測領域における上記特定波数の赤外線の強度を対象強度として計測する対象強度計測手段と、
上記基準強度で上記対象強度を補正した結果を上記強度の検出結果とする補正手段とを備えていることを特徴とする検査装置。
【請求項10】
測定対象物が半田材であることを特徴とする請求項9記載の検査装置。
【請求項11】
上記照射領域に検査対象となる測定対象物が配されたときに上記強度検出手段によって検出された、上記特定波数の赤外線の強度である第一強度、および、上記照射領域に比較対象となる測定対象物が配されたときに上記強度検出手段によって検出された、上記特定波数の赤外線の強度である第二強度に基づいて、上記比較対象となる測定対象物に対する上記検査対象となる測定対象物の相対的劣化度を示した劣化パラメータを出力する制御手段を備えていることを特徴とする請求項10記載の検査装置。
【請求項12】
上記基準計測手段は、予め定められた条件が成立する度に、上記計測領域における特定波数の赤外線の強度の計測を繰り返し、
上記補正手段は、繰り返し計測された上記基準強度のうちの少なくとも1つを選択し、選択された基準強度によって上記対象強度を補正することを特徴とする請求項9、10または11記載の検査装置。
【請求項13】
上記補正手段は、繰り返し計測された上記基準強度のうち、予め定められた閾値を下回る基準強度を、選択から除外することを特徴とする請求項12記載の検査装置。
【請求項14】
上記補正手段は、繰り返し計測された上記基準強度のうち、その計測時点が上記対象強度の計測時点に最も近い基準強度を選択することを特徴とする請求項12または13記載の検査装置。
【請求項15】
上記補正手段は、繰り返し計測された上記基準強度のうち、その計測時点が上記対象強度の計測時点よりも前で最も近い基準強度を選択することを特徴とする請求項12または13記載の検査装置。
【請求項16】
繰り返し計測された上記基準強度のうち少なくとも1つが予め定められた閾値を下回っている場合に警告する警告手段を含んでいることを特徴とする請求項12、13、14または15記載の検査装置。
【請求項17】
請求項9〜16のいずれか1項に記載の検査装置の各手段として、コンピュータを動作させるプログラム。
【請求項18】
請求項17に記載のプログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2008−8764(P2008−8764A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−179615(P2006−179615)
【出願日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】