説明

検査装置及び欠陥検査方法

【課題】格子欠陥等のステップバンチング以外の欠陥とステップバンチングとを個別に検出できる検査装置を実現する。
【解決手段】ステップバンチング以外の欠陥を検出する第1検査モードとステップバンチングを検出する第2の検査モードを有する。第1の検査モードでは、微分干渉光学系のシャーリング方向を調整し又は基板を支持するステージの回転角度を調整することにより、微分干渉光学系のシャーリング方向をステップバンチングの延在方向と平行に設定する。これにより、ステップバンチング以外の欠陥が検出される。また、第2の検査モードでは、微分干渉光学系のシャーリング方向をステップバンチングの延在方向と平行から外れた状態に設定する。この状態において走査を行い、微分干渉画像を撮像する。そして、画像処理工程において、ステップバンチングの延在方向と直交する方向の輝度変化を強調する画像処理を実行し、ステップバンチングを検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステップフロー成長により形成されたエピタキシャル層の欠陥を検出する検査装置、特にエピタキシャル層に存在するステップバンチングとステップバンチング以外の格子欠陥等とを個別に検出できる検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
単結晶基板上にエピタキシャル成長法により単結晶層を形成し、形成された単結晶層にデバイスを形成する半導体デバイスの製造方法が開発されている。この半導体デバイスの製造方法では、単結晶基板としてオフ角を有する炭化珪素基板が用いられ、ステップフロー成長によりエピタキシャル層が形成されている。炭化珪素は、シリコンと比較して、優れた物理的及び熱的特性を有するため、炭化珪素基板上に炭化珪素のエピタキシャル層が形成された半導体基体を用いたデバイスの製造方法は、高電力で低損失の半導体デバイスの製造に極めて有用である。
【0003】
上述した半導体デバイスの製造方法において、製造上の歩留りを改良しデバイスの信頼性を改善するためには、基板上に形成されたエピタキシャル層に存在する欠陥を検出することが重要である。従来、炭化珪素基板(SiC基板)に存在する欠陥を光学的に検出する方法として、レーザ散乱方式の欠陥検査装置が既知である(例えば、特許文献1参照)。このレーザ散乱方式の欠陥検査装置では、レーザダイオードから放出されたレーザ光をステージ上に配置された基板表面に対して斜めに入射させ、基板表面で発生した散乱光を光検出器により検出している。走査方法として、基板を支持するステージを回転させ、レーザビームを半径方向に移動させながら、基板の全面が走査されている。
【0004】
さらに、SiC基板の表面を微分干渉顕微鏡を用いて撮像し、欠陥の微分干渉画像から欠陥の種別を判定することも報告されている。微分干渉顕微鏡は、試料表面の高さ変化を位相差情報として検出するため、SiC基板表面に出現した微少な凹凸変化を輝度画像として検出できる利点がある。
【特許文献1】米国特許第7201799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ステップフロー成長によりエピタキシャル層が形成される単結晶基板においては、エピタキシャル層の成長中にオリフラと直交する方向に延在する線状の欠陥であるステップバンチングが多数形成される。このステップバンチングは、ステップフロー成長によりエピタキシャル層を形成する際不可避的に発生する。一方、マイクロパイプ欠陥や基底面内欠陥等の格子欠陥(結晶欠陥)とステップバンチングとは、その発生要因が異なるため、格子欠陥をステップバンチングと区別して検出することが望まれている。しかしながら、エピタキシャル層には多数のステップバンチングが形成されるため、エピタキシャル層表面の画像情報に基づいて欠陥検出を行う場合、マイクロパイプ欠陥等の格子欠陥をステップバンチングと区別して検出することは極めて煩雑である。
【0006】
一方、ステップバンチングは、デバイスの酸化膜耐圧不良の原因となるため、エピタキシャル層のステップバンチングを検出することもデバイスの製造上の歩留りを改善する上で重要である。特に、ステップバンチングの分布密度と格子欠陥の発生分布とは相関性が認められることも報告されており、ステップバンチングの分布密度を測定することは、デバイスの製造の歩留りを改善する上で極めて重要である。また、SiC基板表面のステップバンチングの分布密度が検出されれば、ステップバンチングの少ない領域又はステップバンチングが形成されていない領域を選択してデバイスの製造に用いることができ、SiC基板の品質を管理する上で有益な情報が得られると共にデバイスの信頼性を高める上でも有益である。
【0007】
レーザ散乱方式の欠陥検査装置は、基板表面で発生した散乱光を検出しているので、基板表面に出現した欠陥を検出することが可能である。しかしながら、不所望な散乱光が光検出器に入射するため、欠陥検出の解像度が低く、微細な欠陥を検出しにくい欠点がある。特に、レーザ散乱方式の検査装置は、試料表面の高さ方向の検出感度が低いため、SiC基板の表面に形成された数nm〜数10nm程度の微少な凹凸状の欠陥を明瞭に検出しにくい欠点がある。また、レーザ散乱方式の欠陥検査装置では、単一のレーザビームを用いてエピタキシャル層表面をスパイラル状に走査しているため、ステップバンチングと格子欠陥とを区別して検出することができず、しかも、ステップバンチングに対してレーザビームが直交する場合と平行な場合とが交錯し、基板の位置によって欠陥検出の感度が安定しない欠点がある。さらに、SiC基板は可視域において透明であるため、照射されたレーザ光が基板の内部を通過し、基板の裏面で反射して基板表面から出射する。よって、基板の裏面からの反射光の影響を除去する必要がある。
【0008】
微分干渉顕微鏡を用いて欠陥を検出する方法は、基板表面の微少な凹凸形状を輝度画像として検出できる利点がある。しかしながら、SiC基板は可視域において透明であるため、SiC基板を透過し、基板の裏面からの反射光が光検出器に入射するため、解像度が低下する問題点も指摘されている。
【0009】
本発明の目的は、格子欠陥とステップバンチングとを分けて、ステップバンチングが検出されない態様で欠陥検出を行うことができる検査装置を実現することにある。
【0010】
本発明の別の目的は、格子欠陥等のステップバンチング以外の欠陥とステップバンチングとを個別に検出できる欠陥検査方法及び検査装置を実現することにある。
さらに、本発明の別の目的は、ステップバンチングとそれ以外の欠陥とを同時並行して検出できる検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による欠陥検査方法は、単結晶基板上にステップフロー成長により形成されたエピタキシャル層表面を微分干渉光学系を含む光学装置により撮像し、撮像された微分干渉画像に基づき単結晶基板に形成されたエピタキシャル層に存在する欠陥を検出する欠陥検査方法であって、
検査されるべき単結晶基板をステージ上に配置する工程と、
ステージの光軸周りの回転角度又は微分干渉光学系のシャーリング方向を調整して、微分干渉光学系のシャーリング方向をステージ上に配置された単結晶基板のエピタキシャル層に形成されたステップバンチングの延在方向と平行になるように設定する工程と、
微分干渉光学系を含む光学装置により、エピタキシャル層表面を撮像してステップバンチングが光学的に除去された微分干渉画像を形成する工程と、
形成された微分干渉画像に基づいて、欠陥検出を行う工程とを具えることを特徴とする。
【0012】
微分干渉光学系を含む検査装置では、検査される基板の表面高さの変化により2本のサブビーム間に生ずる位相差を検出して、輝度情報として出力している。従って、2本のサブビームを結ぶ方向(シャーリング方向)にそって基板の表面高さが一様な場合、2本のサブビーム間に位相差が形成されず、正常な部位の輝度画像と同様な輝度画像が形成される。一方、ステップバンチングは、オリフラの方向と直交する方向に延在する線状の段差であり、ほぼ全てのステップバンチングは互いに平行に形成される。また、ステップバンチングの高さは、その延在方向に沿ってほぼ一様な高さである。従って、微分干渉光学系のシャーリング方向を、ステップバンチングの延在方向と平行になるように設定して走査を行えば、2本のサブビーム間に位相差が発生せず、ステップバンチングが光学的に検出されない状態が形成される。一方、マイクロパイプ欠陥、基底面内欠陥、刃状転位欠陥等の格子欠陥は、微分干渉画像上ほぼ点状の輝度画像として検出される。また、キャロット欠陥やコメット欠陥等は特有の形状を有する欠陥であり、微分干渉画像上特有の形状の輝度画像として検出される。従って、微分干渉光学系のシャーリング方向をステップバンチングの延在方向と平行に設定してエピタキシャル層表面を走査すれば、ステップバンチングに対して検出感度が無い状態で欠陥検出を行うことができ、ステップバンチングを除く欠陥だけを選択して検出することが可能になる。この結果、発生頻度の高いステップバンチングによる影響を受けない欠陥検出が可能になる。
【0013】
また、光学的にステップバンチングが除去されているので、欠陥検出工程において2次元の画像処理を用いて欠陥抽出を行うことができる。この結果、ステップバンチングを画像処理によって除去する方法に比べて、高感度に欠陥を検出することが可能である。さらに、画像処理によりステップバンチングを除去する場合、ステップバンチングの形成方向と角度が僅かに異なる方向に延在する線状の欠陥も画像処理により除去され或いはコントラストが低下してしまう。これに対して、当該方法では、微分干渉光学系のシャーリング方向以外の方向に延在する線状の欠陥は除去されないため、ステップバンチング方向と近い近似する方向に延在する線状の欠陥も明瞭に検出できる効果がある。
【0014】
本発明による検査装置は、単結晶基板上にステップフロー成長により形成されたエピタキシャル層に存在するステップバンチング及びステップバンチング以外の欠陥を個別に検出する検査装置であって、
照明ビームを発生する光源装置と、前記照明ビームを集束した光ビームとして検査すべき単結晶基板のエピタキシャル層に向けて投射する対物レンズと、検査すべき単結晶基板を支持する移動可能なステージであって、対物レンズと直交する面内で回転可能なステージと、規制された光入射面を有し、前記単結晶基板のエピタキシャル層表面で反射した反射光を受光する光検出手段とを有し、ステージ移動又はビーム走査によりエピタキシャル層表面を走査する共焦点走査装置、
前記共焦点走査装置の対物レンズと光検出手段との間の光路中に配置され、入射した照明ビームを、互いに干渉性を有する第1及び第2のサブビームに変換すると共に、前記単結晶基板のエピタキシャル層表面で反射したサブビーム同士を合成し、エピタキシャル層表面の高さと関連する位相差情報を含む干渉ビームを出射させる微分干渉光学系、及び、
前記光検出手段から出力される輝度信号を受け取り、前記エピタキシャル層表面の共焦点微分干渉画像を形成する手段と、形成された共焦点微分干渉画像に基づいてステップバンチング以外の欠陥を検出する第1の欠陥検出手段と、前記共焦点微分干渉画像に基づいてエピタキシャル層表面に形成されたステップバンチングを検出する第2の欠陥検出手段とを有する信号処理装置を具え、
前記基板を支持するステージの光軸周りの回転角度又は前記微分干渉光学系のシャーリング方向は調整可能に設定され、
当該検査装置は、ステップバンチングを除く欠陥を検出する第1の検査モードと、ステップバンチングを検出する第2の検査モードとを有し、
前記第1の検査モードにおいて、ステージ上に配置した基板のステップバンチングの延在方向と微分干渉光学系のシャーリング方向とが互いに平行になるように設定され、前記第1の欠陥検出手段により欠陥検出が行われ、第2の検査モードにおいて、前記基板のステップバンチングの延在方向と微分干渉光学系のシャーリング方向とが平行以外の状態に設定され、前記第2の欠陥検出手段によりステップバンチングの検出が行われることを特徴とする。
【0015】
本発明による検査装置は、ステップバンチングが光学的に検出されない第1の検査モードと、ステップバンチングが光学的に検出される第2の検査モードとを有するので、格子欠陥等の欠陥の検出とステップバンチングの検出とを個別に行うことが可能となる。尚、微分干渉光学系のシャーリング方向をステージ上に配置された基板表面のステップバンチングの延在方向に平行する設定する調整は、基板を支持するステージを光軸まわりで回転させ、又は微分干渉光学系のシャーリング方向を回転調整することにより行うことができる。第1の検査モードと第2の検査モードとの切り換えも同様である。
【0016】
検出されたステップバンチングの分布密度の表示方法として、検査される基板を複数の区域に分割し、各区域ごとに検出されたステップバンチングの本数を直接表示し、又は階調性を有する濃淡画像として表示することができる。このように、ステップバンチングの分布密度を計測することにより、基板全体についてステップバンチングの無い区域又はステップバンチングの密度が低い区域を選択することができ、良品のSiC基板により構成されるチイップだけを選択することが可能になる。
【0017】
共焦点走査装置として、単一の照明ビームを走査装置により走査し、単結晶基板表面からの反射光をピンホールを介して光検出手段により受光する共焦点走査装置、ライン状の照明ビームを走査装置又はステージ移動により走査し、単結晶基板からの反射光をリニアイメージセンサにより受光する共焦点走査装置、及び、ライン状に配列されたマルチビームを用いて単結晶基板を走査し、基板表面からの反射光をリニアイメージセンサにより受光する共焦点走査装置を用いることが可能である。
【0018】
本発明による別の検査装置は、単結晶基板上にステップフロー成長により形成されたエピタキシャル層に存在するステップバンチング及びステップバンチング以外の欠陥を個別に検出する検査装置であって、
照明ビームを発生する光源装置と、前記照明ビームを集束した光ビームとして検査すべき単結晶基板のエピタキシャル層に向けて投射する対物レンズと、検査すべき単結晶基板を支持する移動可能なステージと、規制された光入射面を有し、前記単結晶基板のエピタキシャル層表面で反射した反射光を受光する光検出手段とを有し、ステージ移動又はビーム走査によりエピタキシャル層表面を走査する共焦点走査装置、
前記共焦点走査装置の対物レンズと光検出手段との間の光路中に配置され、入射した照明ビームを、互いに干渉性を有する第1及び第2のサブビームに変換すると共に、前記単結晶基板のエピタキシャル層表面で反射したサブビーム同士を合成し、エピタキシャル層表面の高さと関連する位相差情報を含む干渉ビームを出射させる微分干渉光学系、及び、
前記光検出手段から出力される輝度信号を受け取り、前記エピタキシャル層表面の共焦点微分干渉画像を形成する手段と、形成された共焦点微分干渉画像に基づいてステップバンチング以外の欠陥を検出する第1の欠陥検出手段と、前記共焦点微分干渉画像に基づいてエピタキシャル層表面に形成されたステップバンチングを検出する第2の欠陥検出手段とを有する信号処理装置を具え、
前記第1の欠陥検出手段は、共焦点微分干渉画像に含まれるステップバンチング画像の延在方向と直交する方向の輝度変化を減衰させる手段を有し、
前記第2の欠陥検出手段は、前記共焦点微分干渉画像に含まれるステップバンチング画像の延在方向と直交する方向の輝度変化を強調する手段を有することを特徴とする。
【0019】
ステップバンチングの検出とステップバンチング以外の欠陥の検出とは、画像処理により行うことも可能である。すなわち、ステップバンチング及びそれ以外の欠陥の両方が検出される検査モードで走査して微分干渉画像を形成し、形成された微分干渉画像を、ステップバンチングの延在方向と直交する方向の輝度変化を減衰させる画像処理手段を有する第1の欠陥検出手段及びステップバンチングの延在方向と直交する方向の輝度変化を強調する画像処理を行う手段を有する第2の欠陥検出手段にそれぞれ供給する。第1の欠陥検出手段では、ステップバンチングが除去された画像情報について欠陥検出が行われ、第2の欠陥検出手段ではステップバンチングが強調された画像について欠陥検出が行われるので、ステップバンチングの検出とそれ以外の欠陥の検出とを同時並行して実行することが可能になる。尚、光検出手段として、TDIセンサやCCDセンサ等のイメージセンサを用いることができる。
【0020】
本発明による別の検査装置は、単結晶基板上にステップフロー成長により形成されたエピタキシャル層に存在するステップバンチング及びステップバンチング以外の欠陥を個別に検出する検査装置であって、
紫外域の波長光の照明ビームを発生する光源装置と、
前記照明ビームを検査すべき単結晶基板のエピタキシャル層に向けて投射する対物レンズと、
検査すべき単結晶基板を支持する移動可能なステージと、
前記単結晶基板のエピタキシャル層表面で反射した反射光を受光する光検出手段と、
前記対物レンズと光検出手段との間の光路中に配置され、入射した照明ビームを、互いに干渉性を有する第1及び第2のサブビームに変換すると共に、前記単結晶基板のエピタキシャル層表面で反射したサブビーム同士を合成し、エピタキシャル層表面の高さと関連する位相差情報を含む干渉ビームを出射させる微分干渉光学系と、
前記光検出手段から出力される輝度信号を受け取り、前記エピタキシャル層表面の微分干渉画像を形成する手段、形成された微分干渉画像に基づいてステップバンチング以外の欠陥を検出する第1の欠陥検出手段、及び、前記微分干渉画像に基づいてエピタキシャル層表面に形成されたステップバンチングを検出する第2の欠陥検出手段を有する信号処理装置とを具え、
前記基板を支持するステージの光軸周りの回転角度又は前記微分干渉光学系のシャーリング方向は調整可能に設定され、
当該検査装置は、ステップバンチングを除く欠陥を検出する第1の検査モードと、ステップバンチングを検出する第2の検査モードとを有し、
前記第1の検査モードにおいて、ステージ上に配置した基板のステップバンチングの延在方向と微分干渉光学系のシャーリング方向とが互いに平行になるように設定されて前記第1の欠陥検出手段により欠陥検出が行われ、第2の検査モードにおいて、前記基板のステップバンチングの延在方向と微分干渉光学系のシャーリング方向とが平行以外の状態に設定されて前記第2の欠陥検出手段によりステップバンチングの検出が行われることを特徴とする。
【0021】
SiC基板の裏面からの反射光の影響を除去するため、共焦点走査装置を用いる代りに、光源を適切に選択することにより裏面からの反射光の影響を除去することも可能である。すなわち、SiC基板は、紫外域の波長光に対して不透明であるため、照明光源として、紫外域の波長光を放出する光源を用いる。この場合、SiC基板の裏面からの反射光が発生しないため、共焦点走査装置ではなくても、高い解像度の微分干渉画像を撮像することが可能である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、微分干渉光学系のシャーリング方向を調整し又は基板を支持するステージの回転角度を調整することにより、光学的にステップバンチングが検出されない状態で欠陥検出を行うことができるので、ステップバンチングとこれ以外の欠陥とを個別に検出することが可能である。
また、ステップバンチングを検出する欠陥検出手段とステップバンチング以外の欠陥を検出する欠陥検出手段を有することにより、画像処理によってステップバンチングの検出と格子欠陥の検出とを個別に同時並行して行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明による検査装置の一例を示す図である。
【図2】第1及び第2の検査モードで撮像される共焦点微分干渉画像を模式的に示す図である。
【図3】本発明による信号処理装置の一例を示す図である。
【図4】本発明による検査装置の変形例を示す図である。
【図5】本発明による検査装置の別の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は本発明による検査装置の一例を示す線図である。本例では、検査すべき単結晶基板としてエピタキシャル層が形成された炭化珪素基板(SiC基板)を用いる。勿論、単結晶基板として、SiC基板だけでなく、ステップフロー成長によりエピタキシャル層が形成された各種の単結晶基板の検査を行うことができる。検査装置として、微分干渉光学系を有する共焦点走査装置を用い、共焦点走査装置により炭化珪素基板の全面を走査して基板全面の共焦点微分干渉画像を撮像する。得られた共焦点微分干渉画像について種々の画像処理を行って欠陥及びその座標(アドレス)を検出すると共にステップバンチングの分布密度も計測する。微分干渉光学系は、試料表面の高さの変化を走査光の位相差の変化として検出するので、数nm〜数10nm程度の凹状及び凸状の欠陥を輝度変化として検出することが可能である。
【0025】
図1を参照するに、照明光源1として、水銀ランプを用いる。尚、キセノンランプ等の水銀ランプ以外の種々の照明光源も用いることができる。照明光源1から出射した照明ビームは、複数の光ファイバが円形に積層された光ファイババンドル2に入射し、光ファイバを伝搬して、断面がほぼ円形の発散性ビームとして出射し、フィルタ3に入射する。フィルタ3は、入射した光ビームから緑の波長光(e線:波長546nm)を出射させる。フィルタから出射した光ビームは、集束性レンズ4により平行ビームに変換されてスリット5に入射する。スリット5は、集束性レンズ4の瞳位置に配置され、第1の方向(紙面と直交する方向)に延在する細長い開口部を有する。ここで、第1の方向は、X方向と称する。スリット5の開口部の幅は、例えば10〜20μmに設定する。従って、スリット5から第1の方向に延在する細長いライン状の光ビームが出射する。スリット5から出射したライン状の光ビームは、偏光子6に入射し、単一の振動面を持つ偏光した光に変換される。このライン状の偏光ビームは、ビームスプリッタとして機能するハーフミラー7で反射し、リレーレンズ8を経て走査装置として機能する振動ミラー9に入射する。
【0026】
振動ミラー9には、駆動回路10が接続され、駆動回路10は信号処理装置11から供給される制御信号に基づき振動ミラーを駆動する。振動ミラー9は、入射するライン状の光ビームを第1の方向と直交する第2の方向(Y方向)に偏向する。信号処理装置11は、振動ミラーの角度情報に基づいて、光ビームのY方向の位置情報を有する。尚、振動ミラーは、ステップアンドリピートにより欠陥検出を行う場合に使用され、或いは、欠陥をレビューするに用いられる。従って、基板を支持するステージを移動させて基板を走査する場合、必ずしも必要ではない。振動ミラー9から出射したライン状の光ビームは、リレーレンズ12及び13を経て微分干渉光学系14に入射する。本例では、微分干渉光学系としてノマルスキープリズムを用いる。ノマルスキープリズム14に入射したライン状の偏光ビームは、振動面が互いに直交する2本のサブビームに変換される。これら2本のサブビーム間には、mを自然数とした場合に、(2m+1)π/2の位相差が与えられる。従って、SiC基板のエピタキシャル層表面に形成された数nmの高さ変化を有する欠陥を輝度画像として検出することが可能である。ノマルスキープリズム14にはモータ15が連結され、ノマルスキープリズムのシャーリング方向を自在に設定することができ、SiC基板に形成されたエピタキシャル層に存在するステップバンチングの延在方向に応じて、シャーリング方向を設定することができる。
【0027】
ノマルスキープリズム14から出射した2本のサブビームは、対物レンズ16に入射する。対物レンズ16は、入射した2本のライン状のサブビームを集束し、ステージ17上に配置された観察すべき炭化珪素基板18のエピタキシャル層表面に向けて投射する。従って、SiC基板18の表面は、第1の方向(X方向)に延在するライン状の2本のサブビームにより、直交する第2の方向(Y方向)に走査される。
【0028】
ステージ17は、X方向及びX方向と直交するY方向に移動可能なXYステージにより構成されると共に、対物レンズの光軸と直交する面内で回転可能なステージとする。ステージのX方向及びY方向の位置情報は、位置センサ(図示せず)により検出され、ステージの位置情報が信号処理装置11に供給される。また、ステージ17の回転角もセンサ(図示せず)により検出され、信号処理装置11に供給される。SiC基板18の全面を走査して欠陥を検出する場合、振動ミラー9を静止状態に維持し、ステージ17をY方向及びX方向にジッグザッグ状に移動させてSiC基板の全面を走査することができる。或いは、ステージ17を第1の方向に連続的に移動させ、振動ミラー9による第2の方向の走査と組み合わされて、SiC基板の全面について欠陥検査を行うこともできる。さらに、振動ミラーによる走査とステージ移動とを組み合わせたステップアンドリピートにより基板全面を走査するが可能である。尚、ステージ移動によりSiC基板の表面を走査する場合、ステージの移動方向とステップバンチングの延在方向とが平行になるように設定することが望ましい。また、検出された欠陥のアドレスを用いてレビューする場合、欠陥の座標情報に基づいてステージをX及びY方向に移動させて欠陥を視野内に位置させ、振動ミラーを第2の方向にスキャンすることにより欠陥及びその付近の共焦点微分干渉画像を撮像することができる。
【0029】
対物レンズ16にはモータ19及びモータ駆動回路20が接続され、信号処理装置11から供給される駆動制御信号により光軸方向に沿って移動することができる。対物レンズの光軸方向の位置は位置センサ21により検出され、信号処理装置11に供給される。ここで、モータ19は、対物レンズとステージ上のSiC基板との間の光軸方向の相対距離、すなわち、基板表面を走査する光ビームの集束点と基板表面との間の相対距離を変化させる手段として機能する。尚、対物レンズは、10nmの分解能で光軸方向に移動することができる。
【0030】
SiC基板の表面で反射した2本の反射ビームは、対物レンズ16により集光され、微分干渉光学系14に入射する。2本の反射サブビームは、微分干渉光学系14により合成され、SiC基板表面の高さ変化を位相差情報として含む干渉ビームが形成される。例えば、SiC基板の表面に数nm程度の凹状又は凸状の欠陥が存在する場合、SiC基板表面に入射した2本のサブビームのうち1本のサブが欠陥上を走査し、他方のサブビームは正常な表面部分を走査するので、2本のサブビーム間には欠陥の高さに応じた位相差が導入される。また、エピタキシャル層表面にステップバンチングが形成されている場合、高さが1nm程度のステップバンチングを線状の高輝度画像又は低輝度画像として検出することが可能である。この結果、微分干渉光学系14から出射する干渉ビームは、結晶欠陥に起因してSiC基板の表面に出現した数nm程度の凹凸変化やステップバンチングによる段差を位相差情報として含むことになる。
【0031】
ノマルスキープリズム14から出射した干渉ビームは、元の光路を反対方向に伝搬し、リレーレンズ13及び12を経て振動ミラー9に入射し、振動ミラーによりデスキャンされる。振動ミラー9から出射した干渉ビームは、結像レンズとして作用するレンズ8を通過し、ハーフミラー7を透過し、検光子22に入射する。検光子22は、偏光子6に対して直交ニコルの関係に配置する。従って、ノマルスキープリズム14において合成された偏光以外の光は遮断され、微分干渉画像を構成する光だけが検光子22を透過する。
【0032】
検光子22を透過したライン状の干渉ビームは、ポジショナ23を経てリニアイメージセンサ24に入射する。リニアイメージセンサ24は、第1の方向と対応する方向に配列された複数の受光素子を有し、入射したライン状の干渉ビームを受光する。リニアイメージセンサの各受光素子は、干渉ビームに含まれる位相差情報を輝度情報に変換する。従って、SiC基板の表面又はエピタキシャル層の表面に形成された数nm程度の凹凸形状の欠陥及びステップバンチングは輝度画像として表示される。リニアイメージセンサのライン状に配列された受光素子列は、枠により入射開口が制限されているから、各受光素子の前面にピンホールが配置されているものとほぼ同等である。従って、SiC基板表面からの反射光をリニアイメージセンサにより受光することにより、微分干渉光学系を有する共焦点光学系が構成される。
【0033】
リニアイメージセンサの各受光素子に蓄積された電荷は、信号処理装置11から供給される読出制御信号により順次読み出され、SiC基板表面の1次元画像信号として出力される。リニアイメージセンサから出力される1次元画像信号は、増幅器25で増幅され、カメラリンクを介して信号処理装置11に供給される。信号処理装置11は、画像処理ボードを有し、受け取った1次元画像信号、振動ミラーの位置情報、及びステージの位置情報等を用いてSiC基板表面の2次元画像を生成する。また、生成された2次元画像についてフィルタリング処理、2値化処理及び閾値比較処理を含む種々の画像処理を行って欠陥を検出すると共にその座標を取得する。ステップバンチングについては、格子欠陥等の他の欠陥から区別して検出することができる。
【0034】
SiC基板は、可視光の波長域において透明である。このため、SiC基板の表面を光ビームにより走査すると、入射した光ビームがSiC基板の内部を透過し、SiC基板の裏面で反射した反射光が検出器に入射し、解像度が低下する不都合がある。このため、微分干渉顕微鏡によりSiC基板を撮像する場合及びレーザ散乱方式により欠陥を検出する場合共に解像度が低く、欠陥検出の精度が低下する欠点がある。これに対して、本発明による共焦点型の検査装置では、リニアイメージセンサの前面にピンホールが配置されたものとほぼ等価な構成を有するので、SiC基板を透過し裏面で反射した光は、光路から外れリニアイメージセンサの受光素子に入射せず、SiC基板の表面で反射した反射光だけがリニアイメージセンサに入射する。この結果、本発明による検査装置を用いることにより、一般的な微分干渉顕微鏡により得られる微分干渉画像よりも高い解像度の共焦点微分干渉画像を撮像することができ、一層高い検出精度で欠陥検出を行うことが可能である。
【0035】
微分干渉光学系は、試料表面に形成された数nm程度の微少な凹凸を位相差として検出するので、刃状転位欠陥や基底面内転位等の基板に存在する結晶欠陥に起因してエピタキシャル層表面に数nm程度の凹凸が形成されている場合、これらの凹凸を輝度画像として検出することが可能である。さらに、突起欠陥や凹状欠陥に関して、微分干渉画像上において、上向きの斜面及び下向きの斜面は低輝度画像又は高輝度画像として検出されるので、撮像された微分干渉画像に表示された明暗の輝度変化に基づいて凹状欠陥であるか又は凸状欠陥であるかも判別することが可能である。従って、撮像された明暗の微分干渉画像に基づいて、ピット欠陥であるか又はバンプ欠陥であるかも容易に判別することができる。
【0036】
さらに、ステップバンチングは、オリフラと直交する方向に延在し、高さが数nm〜数10nm程度の線状の段差欠陥である。従って、エピタキシャル層表面の共焦点微分干渉画像を撮像することにより、低度輝度(暗い)又は高輝度(明るい)の線状の輝度画像として検出される。尚、エピタキシャル層に格子欠陥とステップバンチングとの両方が形成されている場合、共焦点微分干渉画像上においては、点状の又は特有の形状の輝度画像と線状の輝度画像とが混在した形態として検出される。
【0037】
次に、SiC基板及びエピタキシャル層に形成される欠陥が、本発明による検査装置により撮像される共焦点微分干渉画像においていかなる形態のものとして撮像されるかについて説明する。
[ステップバンチング]
ステップバンチングは、サブnm〜数10nmのほぼ均一な高さの線状の段差である。SiC基板においては、格子欠陥の発生頻度に比べてはるかに大量のステップバンチングが形成され、ほとんどのステップバンチングは基板のオリフラと直交する方向に互いに平行に形成される。微分干渉光学系を含む共焦点走査装置で撮像した場合、微分干渉光学系のシャーリング方向に応じて明線又は暗線の輝度画像として検出される。
[マイクロパイプ欠陥]
マイクロパイプは中空孔の形態をした欠陥である。従って、走査ビームがマイクロパイプ欠陥上を走査した際、孔の底面からの反射光がリニアイメージセンサに入射せず又は微少光量の反射光しか入射しないため、点状の低輝度画像として検出される。
[異物付着]
表面に異物が付着した場合、金属等の反射率の高い異物が付着した場合点状の高輝度画像として検出され、反射率の低い異物が付着した場合点状の暗い低輝度画像として検出される。
[ダウンフォール]
ダウンフォールは、エピタキシャル層の成長中に塊がエピタキシャル層上に付着することにより形成され、上向き及び下向きの2つの傾斜面を有する形態をとる。よって、微分干渉画像として撮像した場合、明るい画像部分と暗い画像部分とが結合した明暗の輝度画像として検出される。
[刃状転位欠陥]
刃状転位欠陥は、SiC基板又はエピタキシャル層の表面上においてピット構造として出現する。従って、下向き及び上向きの2つの傾斜面を有する形態であり、微分干渉画像においては低輝度の画像部分と高輝度の画像部分とが結合した明暗の輝度画像として検出される。
[螺旋転位欠陥]
螺旋転位は、刃状転位欠陥と同様にSiC基板及びエピタキシャル層の表面においてピット構造として出現し、明暗の輝度画像として検出される。
[基底面内欠陥]
基底面内欠陥は、SiC基板の表面及びエピタキシャル層の表面において、ピット構造として出現する。従って、微分干渉画像において、明暗の輝度画像として検出される。
[バンプ]
バンプは、突起状の欠陥であり、下向きの斜面と上向きの斜面を有するので、明暗の輝度画像として検出される。
[スクラッチ]
基板の研磨処理中にスクラッチが形成される場合がある。このスクラッチは、線状の凹部構造であるので、共焦点微分干渉画像上線状の明暗の輝度画像として検出される。
【0038】
次に、本発明による欠陥検出方法について説明する。SiC基板のエピタキシャル層に形成されるステップバンチングの発生密度は、結晶欠陥や異物付着による欠陥よりもはるかに高い特性がある。従って、撮像されたエピタキシャル層表面の共焦点微分干渉画像から、格子欠陥や異物付着による欠陥を検出しようとすると、同時に検出されるステップバンチングの数が多過ぎ、格子欠陥等を検出することが煩雑になってしまう。従って、マイクロパイプ欠陥や基底面内欠陥等の格子欠陥を検出する場合、ステップバンチングが検出されない状態で欠陥検出を行うことが望ましい。他方において、ステップバンチングの分布密度は、基板の領域ないし部位に応じて相違し、エピタキシャル層中でステップバンチングが全く形成されない部位がある一方、ステップバンチングが高い密度で形成される部位もある。従って、基板上に形成されたエピタキシャル層について、ステップバンチングの分布密度が検出されれば、SiC基板の品質管理上有益が情報を得ることが可能であり、デバイスの製造の歩留りを改善する上で極めて有用な情報が得られる。
【0039】
そこで、本発明による検査装置では、2つの検査モードを設定し、2つの検査モード間で切り換え可能に設定する。第1の検査モードは、マイクロパイプ欠陥や規定面内欠陥等の結晶欠陥や異物付着による欠陥等のステップバンチング以外の欠陥を検出するモードである。第2の検査モードは、ステップバンチングを他の欠陥と区別して検出し、ステップバンチングを積極的に検出するモードである。第1の検査モードでは、ステップバンチングの特性と微分干渉光学系の特性を考慮して、ステップバンチングだけが光学的に検出されない状態、すなわち、ステップバンチングに対してのみ検出感度が低下した検査状態を形成し、その状態で欠陥検出を行う。第2の検査モードでは、共焦点微分干渉画像上においてステップバンチングと他の欠陥の両方を検出し、ステップバンチングの特有の形状、すなわち一方向に延在する線状画像として撮像される特性に整合した画像処理、すなわち、ステップバンチングの延在方向の画像を強調する画像処理を行ってステップバンチングを他の欠陥と区別して検出する。
【0040】
2つの検査モードの設定方法について説明する。前述したように、ステップバンチングは、ほぼ均一な高さの線状の段差であり、ほぼ全てのステップバンチングは基板のオリフラの形成方向と直交する方向に延在する特性がある。また、微分干渉光学系の特性として、シャーリング方向に沿って試料表面の高さ変化がない場合、2本のサブビーム間に位相差は生じない。従って、ステップバンチングの延在方向と微分干渉光学系のシャーリング方向とを一致させて走査を行えば、2本のサブビーム間に位相差が発生せず、ステップバンチングに対してだけ検出感度が低下した検査状態が形成される。この検査状態は、微分干渉光学系のシャーリング方向又は基板を支持するステージの回転角度を調整する方法により設定することができる。例えば、ステージのX方向移動により主走査が行われ、微分干渉光学系のシャーリング方向が主走査方向すなわちX方向に設定されている場合、ステップバンチングの延在方向がX方向となるように、すなわちステップバンチングの延在方向がシャーリング方向と平行となるようにステージを回転調整する。この状態で走査を行えば、2本のサブビームは共にステップバンチング上を走査することになり、位相差が発生せず、ステップバンチングに対する検出感度が低下した検査状態が形成される。また、微分干渉光学系のシャーリング方向を調整することによりステップバンチングの検出感度を抑制するには、シャーリング方向をステージ上の基板のステップバンチングの延在方向と平行になるように調整することにより、ステップバンチングに対する検出感度が低下した検査状態が形成される。すなわち、微分干渉光学系のシャーリング方向又は基板を支持するステージの回転角度を調整することにより、ステップバンチングの検出感度を光学的に低下させることが可能になる。
【0041】
一方、ステップバンチングを積極的に検出する第2の検査モードでは、ステップバンチングが検出され易いように微分干渉光学系のシャーリング方向又はステージの回転角度を設定する。例えば、微分干渉光学系のシャーリング方向がステップバンチングの延在方向と直交するように微分干渉光学系のシャーリング方向又はステージの回転角度を調整すれば、ステップバンチングの明瞭な画像を撮像することができる。ただし、ステップバンチングの輝度画像は、ステップバンチングの延在方向とシャーリング方向とが平行な状態からずれるにしたがって周囲の画像との輝度差が大きくなり、ある角度を超えるとほぼ一定の輝度値の画像となる。従って、シャーリング方向とステップバンチングの延在方向とが互いに直交した状態で検査することが望ましいが、厳密に直交させる必要はなく、シャーリング方向とステップバンチングの延在方向とが平行な状態から外れた状態に設定して第2の検査モードを実行することが可能である。
【0042】
ここで、第1の検査モードにおける検査手法について説明する。エピタキシャル層に形成されたステップバンチングは、基板に形成されているオリフラの方向とほぼ直交する方向に延在する線状欠陥である。この点を考慮して、以下の手法を用いて欠陥検出を行う。初めに、ステージ上に基板を配置する。この際、ステージに対する基板の向きは、基板に形成されたオリフラにより規定される。続いて、ステージの光軸周りの回転角度を調整し、微分干渉光学系のシャーリング方向とステップバンチングの延在方向とが互いに平行になるように設定する。或いは、ステージを固定した状態で、微分干渉光学系のシャーリング方向をオリフラの方向と直交するように調整する。この状態で微分干渉画像の撮像を開始する。尚、基板の一部分について微分干渉画像を撮像し、ステップバンチングが除去されているかを確認し、ステップバンチングが残存する場合、ステージ又は微分干渉光学系を微調整して、ステップバンチングがほぼ完全に除去された状態に設定することも可能である。このように、オリフラを利用することにより、微分干渉光学系のシャーリング方向をステップバンチングの延在方向に平行に設定することが可能である。
【0043】
図2は、第1及び第2の検査モードにおいて撮像される共焦点微分干渉画像を模式的に示す図である。図2(A)は、SiC基板の表面の共焦点微分干渉画像を模式的に示す。格子欠陥や異物付着による欠陥は点状の輝度画像として観察され、ステップバンチングは、オリフラと直交する方向に延在する線状の輝度画像として観察される。図2(B)は、第1の検査モードにおいて観察される画像を示す。第1の検査モードでは、オリフラと直交する方向の検出感度が低減されているため、ほとんどのステップバンチングが消去され、格子欠陥等の欠陥画像だけが検出される。図2(C)は、ステップバンチングを強調した画像処理を行った画像を示す。オリフラと直交する方向の画像を強調する画像処理が行われているため、ステップバンチングの画像が強調された画像が得られる。
【0044】
図3は、欠陥検出及びステップバンチングの分布密度検出を行う信号処理装置11の一例を示す線図である。本例では、第1の検査モードに設定して欠陥検出を行う。すなわち、ステップバンチングに対する検出感度が抑制された検査状態で検査が行われ、ステップバンチングが検出されない画像が撮像される。リニアイメージセンサ23から出力され、増幅器24により増幅された1次元画像信号は、A/D変換器30によりデジタル信号に変換され、信号処理装置11に供給される。また、基板を支持するステージ17の位置を示すステージ位置信号(デジタル信号)も信号処理装置11に供給する。本例では、信号処理装置11は、コンピュータにより実行されるソフトウェアで構成され、各種の手段は、制御手段31の制御のもとで動作するものとする。尚、制御手段31からの信号線は図面が交錯するため、図示しないものとする。
【0045】
信号処理装置11に入力した1次元画像信号は、2次元画像生成手段32に送られて2次元画像、すなわち2次元共焦点微分干渉画像が形成される。この2次元画像信号は第1の画像メモリ33に供給され、SiC基板のエピタキシャル層が形成された全面の共焦点微分干渉画像が第1の画像メモリ33に蓄積される。第1の画像メモリ33に記憶されている画像は、ステップバンチングが光学的に除去された画像である。2次元画像生成手段32により形成された2次元画像信号は第1の欠陥検出手段34に供給される。第1の欠陥検出手段34には、ステージ位置信号及びリニアイメージセンサの各受光素子の位置情報も供給される。第1の欠陥検出手段34は、フィルタリング手段、2値化手段及び閾値比較手段を含み、入力した2次元画像について画像処理を行って欠陥を検出する。同時に、ステージ位置信号及びリニアイメージセンサの各受光素子の位置情報を用いて、検出された欠陥の座標も取得する。検出された欠陥の座標は、第1の欠陥メモリ35に記憶する。
【0046】
SiC基板に形成された欠陥を観察する場合、制御手段31の制御のもとで、第1の欠陥メモリ35に記憶されている欠陥座標情報を用いて第1の画像メモリ33にアクセスし、指定された欠陥を含む所定のサイズの画像を取り出し、SiC基板の欠陥画像として出力し、モニタ上に表示することができる。従って、ステップバンチング以外の格子欠陥等をモニタ上に表示して、欠陥画像を観察することが可能である。この場合、ステップバンチングが表示されないモニタ画像が形成されるので、欠陥の形状等を詳細に分析する場合に有用な欠陥画像が表示される。また、SiC基板の欠陥を分類する場合、制御手段31の制御のもとで、欠陥メモリに記憶されている欠陥の座標情報を用いて第1の画像メモリから欠陥画像を取り出して欠陥画像を欠陥分類手段に供給する。そして、欠陥分類手段において、欠陥の種別を判定して欠陥の種別を出力する。
【0047】
次に、第2の検査モード、すなわちステップバンチングの分布密度を検出する検査モードについて説明する。第2の検査モードでは、第1の検査モードとは異なり、微分干渉光学系のシャーリング方向をオリフラと平行な方向(ステップバンチングの延在方向と直交する方向)に設定してSiC基板表面を走査し、エピタキシャル層表面の共焦点微分干渉画像を撮像する。リニアイメージセンサ23から出力される画像信号は、A/D変換されて2次元画像生成手段32に供給される。2次元画像生成手段32により生成された2次元画像情報は、第2の画像メモリ36に供給され、ステップバンチングを含む全ての欠陥画像を含む共焦点微分干渉画像が蓄積される。
【0048】
また、生成された2次元画像は、画像強調手段37に供給する。この画像強調手段37は、微分干渉画像上のステップバンチング画像の延在方向と直交する方向の輝度変化を強調する処理を実行する。画像強調された画像信号は、ステップバンチング検出手段38に供給される。ステップバンチング検出手段38には、ステージ位置情報も供給される。ステップバンチング検出手段38は、ステップバンチングの延在方向と平行な方向の画像のエッジを検出するエッジ検出手段、閾値比較手段を有し、ステップバンチングを検出する。検出されたステップバンチングは、密度算出手段39に供給され、単位面積当たりのステップバンチングの本数(密度)が計測される。算出されたステップバンチングの密度情報は、ステップバンチングメモリ40に供給する。ステップバンチングの分布密度として、例えば検査される基板を所定サイズの複数の区域に分け、各区域に形成されたステップバンチングの本数を区域ごとにステップバンチングの本数を算出する。そして、算出されたステップバンチング分布密度情報は、ステップバンチングメモリ40に供給する。ここで、ステップバンチングの分布密度を規定する区域として、例えばその後当該基板を用いて製造されるチイップのサイズとすることができる。この場合、製造される各デバイスのチイップ毎にステップバンチングの本数が表示され、品質管理上有益な情報が得られる。
【0049】
算出されたステップバンチングの分布密度は、制御手段31の制御のもとでモニタに出力することができる。モニタ上での表示方法として、単位面積当たりの検出されたステップバンチングの本数を255階調の輝度情報として出力することができ、或いは、各区域ごとに検出されたステップバンチングの本数を直接表示することもできる。
【0050】
次に、変形例について説明する。上述した実施例では、格子欠陥等を検出する第1の検査モードと、ステップバンチングを積極的に抽出する第2の検査モードとを有し、SiC基板について2回の光学的走査を行って格子欠陥とステップバンチングとを別々に検出した。これに対して、本例では、1回の光学的走査によりステップバンチング以外の格子欠陥等を検出すると共に同時にステップバンチングを検出する。ステップバンチングは、オリフラと直交する方向に延在する段差であり、共焦点微分干渉画像上において明線又は暗線の輝度画像として検出される。そして、ほぼ全てのステップバンチングがオリフラと直交する方向に互いに平行に延在する特有の形状を有する。このステップバンチングの特有の形状に基づき、本例では、2つの欠陥検出手段を用いて、ステップバンチングの検出とそれ以外の欠陥の検出とを個別に同時並行して実行する。
【0051】
図3を参照するに、微分干渉光学系のシャーリング方向をオリフラの方向と平行に設定し、ステップバンチング及び点状欠陥の両方が顕在化される第2の検査モードに設定する。この状態で光学的な走査を実行し、エピタキシャル層表面の共焦点微分干渉画像を撮像する。2次元画像生成手段32から出力される2次元画像情報は第2の画像メモリ36に供給されると共に、画像強調手段37に供給され、上述した画像処理を行ってステップバンチングが検出され、ステップバンチングの分布密度が出力される。
【0052】
2次元画像生成手段32から出力される2次元画像情報は、画像減衰手段41にも供給する。この画像減衰手段41は、ステップバンチングの延在方向と直交する方向の輝度変化を減衰させるフィルタリング処理を行い、ステップバンチングが除去された画像を出力する。ステップバンチングが除去された画像は、第の欠陥検出手段42に供給され、2値化処理及び閾値比較処理を経てステップバンチング以外の欠陥が検出される。また、第2の欠陥検出手段42には、ステージ位置情報が供給され、検出された欠陥の座標情報も検出する。検出された欠陥座標は第2の欠陥メモリ43に供給する。検出された欠陥の画像をレビューする場合、制御手段31の制御のもとで、第2の欠陥メモリ43に記憶されている欠陥座標情報を用いて第2の画像メモリ36にアクセスし、指定された欠陥を含む所定のサイズの画像を取り出し、SiC基板の欠陥画像として出力し、モニタ上に表示することができる。
【0053】
このように、ステップバンチングの微分干渉画像が線状の輝度画像として検出されることに基づき、オリフラと直交する方向(ステップバンチングの延在方向)の画像を強調する画像処理を行う欠陥検出手段と、当該方向の画像を除去する画像処理を行う欠陥検出手段とを同時に並行して動作させることにより、ステップバンチングの検出とステップバンチング以外の欠陥の検出とを同時並行平行して実行することが可能になる。
【0054】
図4は本発明による検査装置の変形例を示す図である。尚、図1で用いた構成要素と同一の構成要素には同一符号を付して説明する。本例では、共焦点走査装置によりSiC基板の裏面からの反射光の影響を除去する代わりに、照明光源の波長を選択することにより基板裏面からの反射光の影響を除去する。SiC基板は、可視域においては透明であるが、380nm以下の紫外域の波長光に対しては透過率が低くなり、紫外域の波長光に対してはほぼ不透明な材料である。そこで、本例では、照明光源として紫外域の波長光を放出する光源50を用いる。適当な光源として、355nm又は266nmのレーザ光を放出するYAGレーザを用いることができ、或いは水銀ランプから放出されるi線を用いることができる。
【0055】
本例では、光ファイバ2から出射し、集束性レンズ4により平行ビームに変換された比較的広い断面を有する照明ビームを用いる。そして、ブロードなビーム断面を有する照明ビームを対物レンズ16を介してSiC基板上に投射する。すなわち、集束した光ビームにより基板表面を照明するのではなく、面照明を行う。ステージ17はX方向に移動し、ステージ移動によりエピタキシャル層表面を走査する。さらに、本例では、リニアイメージセンサの代りに、TDIセンサ51を用いる。TDIセンサ51のライン転送速度はステージ17の移動速度に対応させる。そして、TDIセンサから出力される1次元画像信号は、増幅器25により増幅して、信号処理装置11に供給する。信号処理装置においては、上述した画像処理を実行してステップバンチングの検出及びステップバンチング以外の欠陥の検出が行われる。このように構成すれば、共焦点走査装置を用いなくても、SiC基板の裏面からの反射光による影響が除去され、解像度の高い微分干渉画像を撮像することが可能である。尚、TDIセンサ以外のセンサとして、リニアCCDセンサを用いることも可能である。本例において、ステージ移動による走査方向とステップバンチングの延在方向とは、平行になるように設定することが好ましい。
【0056】
図5は本発明による検査装置の別の変形例を示す図である。本例では、第1の方向に沿って配列された複数の走査ビームを用いてSiC基板表面を走査する検査装置について説明する。尚、図1で用いた構成要素と同一の構成要素には同一符号を付して説明する。照明光源としてレーザ光源60を用いる。レーザ光源60から出射したレーザビームは、回折格子61に入射し、第1の方向にそって配列された複数の光ビーム(マルチビーム)に変換される。このマルチビームは、第1及び第2のリレーレンズ62及び63を経て偏光ビームスプリッタ64に入射し、偏光ビームスプリッタ64を透過して振動ミラー9に入射する。振動ミラー9は、入射した複数の光ビームを第1の方向と直交する第2の方向にそって偏向する。振動ミラー9で反射した複数の光ビームは、第3及び第4のリレーレンズ65及び66並びに1/4波長板67を経てノマルスキープリズム14に入射する。ノマルスキープリズム14に入射した各光ビームは、振動面が互いに直交する2本のサブビームに変換される。これら2本のサブビーム間には、mを自然数とした場合に、(2m+1)π/2の位相差が与えられる。
【0057】
ノマルスキープリズム14から出射した2本のサブビームは、対物レンズ15に入射する。対物レンズ15は、入射したサブビームを集束し、ステージ16上に配置された観察すべき炭化珪素基板17に向けて投射する。従って、SiC基板17の表面は、第1の方向にそって配列された2列のサブビームにより、光ビームの配列方向と直交する第2の方向に走査される。
【0058】
SiC基板17の表面で反射したサブビームは、対物レンズ15により集光され、ノマルスキープリズム14に入射する。ノマルスキープリズムにおいて、互いに関連する反射ビーム同士が合成され、SiC基板表面の高さ変化を位相差として含む複数の干渉ビームが発生する。これら複数の干渉ビームは、1/4波長板67、第4及び第3のリレーレンズ66及び65を経て振動ミラー9に入射する。そして、振動ミラーによりデスキャンされて偏光ビームスプリッタ64に入射する。入射した複数の干渉ビームは、1/4波長板を2回通過しているので、偏光ビームスプリッタの偏光面で反射し、結像レンズ68を介してリニアイメージセンサ69に入射する。リニアイメージセンサ69は、複数のフォトダイオードが第1の方向と対応する方向にライン状に配列された1次元ラインセンサで構成する。そして、各干渉ビームは、対応するフォトダイオードにそれぞれ入射する。各フォトダイオードに蓄積された電荷は、信号処理装置11から供給される駆動信号により順次読み出され、信号処理装置11に供給される。信号処理装置において、前述したように、ステップバンチングの分布密度検出及びステップバンチング以外の欠陥について欠陥検出が行われる。
【0059】
本発明は上述した実施例だけに限定されず、種々の変形や変更が可能である。上述した実施例では、微分干渉光学系としてノマルスキープリズムを用いたが、ロッションプリズムやウォルストンプリズム等の他の微分干渉光学系を用いることも可能である。
さらに、上述した実施例では、共焦点走査装置として、ライン状の走査ビームを用いる共焦点走査装置及びマルチビームにより試料表面を走査する共焦点走査装置について説明したが、勿論1本の走査ビームで基板表面を走査する共焦点走査装置を用いることも可能である。
【符号の説明】
【0060】
1 照明光源
2 光ファイバ
3 フィルタ
4 集束性レンズ
5 スリット
6 偏光子
7 ハーフミラー
8,12,13 リレーレンズ
9 振動ミラー
10 駆動回路
11 信号処理装置
14 ノマルスキープリズム
15 対物レンズ
16 モータ
17 ステージ
18 SiC基板
19 モータ
19 駆動回路
21 位置検出センサ
22 検光子
22 ポジショナ
24 リニアイメージセンサ
25 増幅器
30 A/D変換器
31 制御手段
32 2次元画像生成手段
33 第1の画像メモリ
34 第1の欠陥検出手段
35 第1の欠陥メモリ
36 第2の画像メモリ
37 画像強調手段
38 ステップバンチング検出手段
39 密度算出手段
40 ステップバンチングメモリ
41 画像減衰手段
42 第2の欠陥検出手段
43 第2の欠陥メモリ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
単結晶基板上にステップフロー成長により形成されたエピタキシャル層表面を微分干渉光学系を含む光学装置により撮像し、撮像された微分干渉画像に基づき単結晶基板に形成されたエピタキシャル層に存在する欠陥を検出する欠陥検査方法であって、
検査されるべき単結晶基板をステージ上に配置する工程と、
ステージの光軸周りの回転角度又は微分干渉光学系のシャーリング方向を調整して、微分干渉光学系のシャーリング方向をステージ上に配置された単結晶基板のエピタキシャル層に形成されたステップバンチングの延在方向と平行になるように設定する工程と、
微分干渉光学系を含む光学装置により、エピタキシャル層表面を撮像してステップバンチングが光学的に除去された微分干渉画像を形成する工程と、
形成された微分干渉画像に基づいて、欠陥検出を行う工程とを具えることを特徴とする欠陥検査方法。
【請求項2】
請求項1に記載の欠陥検査方法において、前記微分干渉光学系のシャーリング方向は、前記単結晶基板に形成されているオリフラの方向とほぼ直交するように設定されることを特徴とする欠陥検査方法。
【請求項3】
単結晶基板上にステップフロー成長により形成されたエピタキシャル層に存在するステップバンチング及びステップバンチング以外の欠陥を個別に検出する検査装置であって、
照明ビームを発生する光源装置と、前記照明ビームを集束した光ビームとして検査すべき単結晶基板のエピタキシャル層に向けて投射する対物レンズと、検査すべき単結晶基板を支持する移動可能なステージであって、対物レンズの光軸と直交する面内で回転可能なステージと、規制された光入射面を有し、前記単結晶基板のエピタキシャル層表面で反射した反射光を受光する光検出手段とを有し、ステージ移動又はビーム走査によりエピタキシャル層表面を走査する共焦点走査装置、
前記共焦点走査装置の対物レンズと光検出手段との間の光路中に配置され、入射した照明ビームを、互いに干渉性を有する第1及び第2のサブビームに変換すると共に、前記単結晶基板のエピタキシャル層表面で反射したサブビーム同士を合成し、エピタキシャル層表面の高さと関連する位相差情報を含む干渉ビームを出射させる微分干渉光学系、及び、
前記光検出手段から出力される輝度信号を受け取り、前記エピタキシャル層表面の共焦点微分干渉画像を形成する手段と、形成された共焦点微分干渉画像に基づいてステップバンチング以外の欠陥を検出する第1の欠陥検出手段と、前記共焦点微分干渉画像に基づいてエピタキシャル層表面に形成されたステップバンチングを検出する第2の欠陥検出手段とを有する信号処理装置を具え、
前記基板を支持するステージの光軸周りの回転角度又は前記微分干渉光学系のシャーリング方向は調整可能に設定され、
当該検査装置は、ステップバンチングを除く欠陥を検出する第1の検査モードと、ステップバンチングを検出する第2の検査モードとを有し、
前記第1の検査モードにおいて、ステージ上に配置した基板のステップバンチングの延在方向と微分干渉光学系のシャーリング方向とが互いに平行になるように設定されて前記第1の欠陥検出手段により欠陥検出が行われ、第2の検査モードにおいて、前記基板のステップバンチングの延在方向と微分干渉光学系のシャーリング方向とが平行以外の状態に設定されて前記第2の欠陥検出手段によりステップバンチングの検出が行われることを特徴とする検査装置。
【請求項4】
請求項3に記載の検査装置において、前記光源装置として第1の方向に延在するライン状の照明ビームを発生する光源装置又は第1の方向に沿って配列された複数の照明ビームを発生する光源装置を用い、前記光検出手段として、前記第1の方向と対応する方向に配列された複数の受光素子を有するリニアイメージセンサを用いることを特徴とする検査装置。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の検査装置において、前記信号処理装置に含まれる第2の欠陥検出手段は、共焦点微分干渉画像上のステップバンチングの延在方向と直交する方向の輝度変化を強調する画像処理手段を有することを特徴とする検査装置。
【請求項6】
請求項3、4又は5に記載の検査装置において、前記信号処理装置に含まれる第2の欠陥検出手段は、検出されたステップバンチングの単位面積当たりの本数を示す分布密度を計測する手段を有し、基板表面を複数の区域に分割し、各区域ごとのステップバンチングの分布密度を計測することを特徴とする検査装置。
【請求項7】
単結晶基板上にステップフロー成長により形成されたエピタキシャル層に存在するステップバンチング及びステップバンチング以外の欠陥を個別に検出する検査装置であって、
照明ビームを発生する光源装置と、前記照明ビームを集束した光ビームとして検査すべき単結晶基板のエピタキシャル層に向けて投射する対物レンズと、検査すべき単結晶基板を支持する移動可能なステージと、規制された光入射面を有し、前記単結晶基板のエピタキシャル層表面で反射した反射光を受光する光検出手段とを有し、ステージ移動又はビーム走査によりエピタキシャル層表面を走査する共焦点走査装置、
前記共焦点走査装置の対物レンズと光検出手段との間の光路中に配置され、入射した照明ビームを、互いに干渉性を有する第1及び第2のサブビームに変換すると共に、前記単結晶基板のエピタキシャル層表面で反射したサブビーム同士を合成し、エピタキシャル層表面の高さと関連する位相差情報を含む干渉ビームを出射させる微分干渉光学系、及び、
前記光検出手段から出力される輝度信号を受け取り、前記エピタキシャル層表面の共焦点微分干渉画像を形成する手段と、形成された共焦点微分干渉画像に基づいてステップバンチング以外の欠陥を検出する第1の欠陥検出手段と、前記共焦点微分干渉画像に基づいてエピタキシャル層表面に形成されたステップバンチングを検出する第2の欠陥検出手段とを有する信号処理装置を具え、
前記第1の欠陥検出手段は、共焦点微分干渉画像に含まれるステップバンチング画像の延在方向と直交する方向の輝度変化を減衰させる手段を有し、
前記第2の欠陥検出手段は、前記共焦点微分干渉画像に含まれるステップバンチング画像の延在方向と直交する方向の輝度変化を強調する手段を有することを特徴とする検査装置。
【請求項8】
請求項7に記載の検査装置において、前記第1の欠陥検出手段及び第2の欠陥検出手段は同時に並行して動作し、ステップバンチングの検出とステップバンチング以外の欠陥の検出とが個別に同時並行して行われることを特徴とする検査装置。
【請求項9】
単結晶基板上にステップフロー成長により形成されたエピタキシャル層に存在するステップバンチング及びステップバンチング以外の欠陥を個別に検出する検査装置であって、
紫外域の波長光の照明ビームを発生する光源装置と、
前記照明ビームを検査すべき単結晶基板のエピタキシャル層に向けて投射する対物レンズと、
検査すべき単結晶基板を支持する移動可能なステージと、
前記単結晶基板のエピタキシャル層表面で反射した反射光を受光する光検出手段と、
前記対物レンズと光検出手段との間の光路中に配置され、入射した照明ビームを、互いに干渉性を有する第1及び第2のサブビームに変換すると共に、前記単結晶基板のエピタキシャル層表面で反射したサブビーム同士を合成し、エピタキシャル層表面の高さと関連する位相差情報を含む干渉ビームを出射させる微分干渉光学系と、
前記光検出手段から出力される輝度信号を受け取り、前記エピタキシャル層表面の微分干渉画像を形成する手段、形成された微分干渉画像に基づいてステップバンチング以外の欠陥を検出する第1の欠陥検出手段、及び、前記微分干渉画像に基づいてエピタキシャル層表面に形成されたステップバンチングを検出する第2の欠陥検出手段を有する信号処理装置とを具え、
前記基板を支持するステージの光軸周りの回転角度又は前記微分干渉光学系のシャーリング方向は調整可能に設定され、
当該検査装置は、ステップバンチングを除く欠陥を検出する第1の検査モードと、ステップバンチングを検出する第2の検査モードとを有し、
前記第1の検査モードにおいて、ステージ上に配置した基板のステップバンチングの延在方向と微分干渉光学系のシャーリング方向とが互いに平行になるように設定されて前記第1の欠陥検出手段により欠陥検出が行われ、第2の検査モードにおいて、前記基板のステップバンチングの延在方向と微分干渉光学系のシャーリング方向とが平行以外の状態に設定されて前記第2の欠陥検出手段によりステップバンチングの検出が行われることを特徴とする検査装置。
【請求項10】
単結晶基板上にステップフロー成長により形成されたエピタキシャル層に存在するステップバンチング及びステップバンチング以外の欠陥を個別に検出する検査装置であって、
紫外域の波長光の照明ビームを発生する光源装置と、
前記照明ビームを検査すべき単結晶基板のエピタキシャル層に向けて投射する対物レンズと、
検査すべき単結晶基板を支持する移動可能なステージと、
前記単結晶基板のエピタキシャル層表面で反射した反射光を受光する光検出手段と、
前記対物レンズと光検出手段との間の光路中に配置され、入射した照明ビームを、互いに干渉性を有する第1及び第2のサブビームに変換すると共に、前記単結晶基板のエピタキシャル層表面で反射したサブビーム同士を合成し、エピタキシャル層表面の高さと関連する位相差情報を含む干渉ビームを出射させる微分干渉光学系と、
前記光検出手段から出力される輝度信号を受け取り、前記エピタキシャル層表面の微分干渉画像を形成する手段、形成された微分干渉画像に基づいてステップバンチング以外の欠陥を検出する第1の欠陥検出手段、及び、前記微分干渉画像に基づいてエピタキシャル層表面に形成されたステップバンチングを検出する第2の欠陥検出手段を有する信号処理装置とを具え、
前記第1の欠陥検出手段は、微分干渉画像に含まれるステップバンチング画像の延在方向と直交する方向の輝度変化を減衰させる画像処理を行って欠陥を検出し、
前記第2の欠陥検出手段は、微分干渉画像に含まれるステップバンチング画像の延在方向と直交する方向の輝度変化を強調する画像処理を行ってステップバンチングを検出し、
ステップバンチングの検出とステップバンチング以外の欠陥の検出とが個別に同時並行して行われることを特徴とする検査装置。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の検査装置において、前記光検出手段は、TDIセンサ又はリニアCCDセンサにより構成したことを特徴とする検査装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−220757(P2011−220757A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−88445(P2010−88445)
【出願日】平成22年4月7日(2010.4.7)
【特許番号】特許第4674382号(P4674382)
【特許公報発行日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 特許法第30条第1項適用、半導体産業新聞(平成22年3月31日)株式会社産業タイムズ社発行第9面に発表
【出願人】(000115902)レーザーテック株式会社 (184)
【Fターム(参考)】