説明

検査装置

【課題】取出機との間での成形品の受渡しに工夫を施すことにより成形機の横に検査装置を省スペースに設置することを可能とする検査装置を提供する。
【解決手段】成形機3で成形された成形品Mをその撮像画像に基づいて外観検査するための検査装置1であって、照明手段と撮像手段を配置する検査室11が筐体10により囲まれて暗室とされ、検査室11が成形機3の横に設置され、成形品Mを保持する保持部7が検査室11の側板部13の内側面に設けられ、保持部7を設けた側板部13は、その側板12a面に対して垂直方向に移動して開閉され、成形機3から成形品Mを取り出す取出機2と保持部7との間で成形品Mの受渡しを行う受渡し扉として構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形機等の成形機で成形された成形品の外観検査を行う検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、成形工場では、通常、射出成形機と、射出成形機で成形された成形品を検査する検査装置とが離れて設置されている。従って、射出成形機で成形された成形品は、射出成形機に敷設する取出機により射出成形機の金型から取り出されて所定の回収位置に回収された後、搬送コンベア等で搬送され、搬送されてきた成形品を多軸ロボット等により検査装置の検査室内へ渡すようにしている。
【特許文献1】特開平10−19661号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このように、検査装置が成形機から離れて設置されているため成形後検査開始するまでの待機時間が長くなり、工場全体での成形品の生産性を向上させることが困難であった。
【0004】
そこで、成形機の横に検査装置を設置することが考えられる。この場合、成形機から成形品を取り出す取出機と検査装置との間で成形品の受渡しを行う受渡し場所が必要となることから成形機周辺に広いスペースが必要となる。しかも、この受渡し場所から成形品を検査装置の検査室内へ渡す多軸ロボットが検査装置に設置されると、検査装置自体が大型化し得るため、さらに成形機周辺には広いスペースが占有されてしまう。そうすると、成形機周辺の設置スペースに制約がある成形工場では、成形機の横に検査装置を設置するのは実質的には困難である。また、検査装置により成形機周辺に広いスペースが占有されると、成形機のオペレータの作業にも支障を来たすおそれがある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、取出機との間での成形品の受渡しに工夫を施すことにより成形機の横に検査装置を省スペースに設置することを可能とする検査装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る検査装置は、
成形機で成形された成形品をその撮像画像に基づいて外観検査するための検査装置であって、
照明手段と撮像手段を配置する検査室が筐体により囲まれて暗室とされ、
検査室が成形機の横に設置され、
成形品を保持する保持部が検査室の側板部の内側面に設けられ、
保持部を設けた側板部は、その側板面に対して垂直方向に移動して開閉され、成形機から成形品を取り出す取出機と保持部との間で成形品の受渡しを行う受渡し扉として構成されるものである。
【0007】
ところで、成形機の横に検査装置を設置する場合、取出機との間の成形品受渡し場所として、例えば、検査室から水平テーブルを繰り出させ、このテーブル上に取出機により成形品を載置させて成形品を検査室内に移送させるようにすることが考えられる。この場合、成形品の受渡し場所を広く確保する必要がある。
これに対して、上記構成によれば、成形品の受渡し扉となる側板部が側板面に対して垂直方向に移動して開閉する構成とするので、水平テーブルにより成形品の受渡しを行う場合に比して、成形品の受渡し場所を省スペース化することができる。
また、成形品の受渡し扉となる側板部が成形機の金型の如く開閉されるので、成形品の受け渡しを行う取出機側の姿勢制御を複雑な設定とする必要もない。
【0008】
上記検査装置において、
検査室内に設置されて、ハンドにより保持部との間で成形品の受渡しを行うと共にハンドで保持した成形品を三次元方向に自在に移動させる多軸ロボットと、
多軸ロボットを検査室内で保持部と対向する方向に移動させる走行手段とを有し、
走行手段により多軸ロボットを移動して保持部に接近させて多軸ロボットと保持部との間で成形品の受渡しを行う構成とするのが望ましい。
これによれば、小型の多軸ロボットにより側板部に設けた保持部との間で成形品の受渡しを行うことができる。従って、多軸ロボットを室内設置する検査室をコンパクトに構成することができる。
【0009】
上記検査装置において、
撮像手段による成形品の撮像の際、走行手段により多軸ロボットを検査室内の端に移動させる構成とするのが望ましい。
これによれば、多軸ロボットを検査室の端に退避させ、そのロボットアームを伸ばして成形品の撮像を行わせることで、多軸ロボットの影が撮像手段の撮像範囲内に形成される範囲を少なくすることができる。従って、小さな検査室であっても成形品の撮像範囲を広く確保することができる。
【0010】
上記検査装置において、
多軸ロボットのハンドは、離反・接近するチャックで構成され、
チャックには、チャックのストローク位置の変化に応じて重合面積が変化するように配置されたコイルと導電体又は磁性体、及び重合面積に応じた出力を発生する位置検出器が取り付けられ、
位置検出器からの検出信号によりチャックによる成形品の把持・解放を制御する構成とするのが望ましい。
ところで、チャックの位置検出として、例えば、光電式センサ等の2点検知式のセンサを用いる場合、成形機での段取り替えで成形品の大きさが変わる度に成形品の大きさに合わせてセンサの取付位置を設定し直す必要がある。
これに対して、上記位置検出器によれば、チャックの全ストローク位置を検出することができる。従って、成形品の大きさが変わった場合、その成形品の大きさに応じた成形品の把持及び解放のストローク値を設定すれば、位置検出器からの検出信号によりチャックによる成形品の把持・解放を制御することができる。よって、光電式センサ等の2点検知式センサを用いる場合に比べて、成形品に応じた多軸ロボットの設定を簡単に且つ早期に行うことができる。
【0011】
上記検査装置において、
検査室の側板部に設けた保持部は、複数の開口を有し、開口に発生させる真空圧により成形品を吸着保持する吸着手段により構成されることが望ましい。
これによれば、吸着手段は、複数の開口を有するので、成形品の大きさが変わっても複数の開口により成形品の保持を確実に行うことができる。従って、成形品が変更されても成形品の大きさ等に応じて保持部を設定し直す必要がない。よって、成形品に応じた検査装置の調節を簡易にすることができる。
【0012】
上記検査装置において、
検査室内は、照明手段の光照射部及び撮像手段の受光部を除いて黒色に隠蔽されていることが望ましい。
これにより、検査室内を良好な暗室に形成することができる。また、検査室内を黒色に隠蔽することで照明手段の照射光を乱反射させることが防止される。従って、撮像手段により成形品の外観状態を正確に現した画像を撮像することができ、成形品の表面の傷の有無等の外観検査を正確に行うことができる。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明によれば、成形機の横に検査装置を省スペースに設置することができる。その結果、成形機のオペレータの作業に大きな支障を来たすこともなく、しかも成形機周辺の設置スペースに制約がある成形工場でも成形機の横に検査装置を設置することにより、成形後検査開始するまでの待機時間を大幅に短縮して工場全体での成形品の生産性を向上することができる。また、成形品の受渡し扉となる側板部が成形機の金型の如く開閉されるので、成形品の受け渡しを行う取出機側の姿勢制御も簡易に設定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
実施の形態による検査装置は、射出成形機で成形された成形品をその撮像画像に基づいて表面のキズの有無を外観検査するための装置である。図1に示すように、この検査装置1は、成形品Mの取出機2を備えた成形機3の横に設置されており、取出機2との間で成形品Mの受渡しが行われる。
【0015】
成形機3は、横型射出成形機であって、型締機31で可動盤32を移動させて固定盤33との間で金型34を型締めし、射出機35で金型34内のキャビティに樹脂を充填して成形品Mを成形する構成となっている。なお、金型34内には所定のインサートが挿入されてもよい。また、成形機3は、竪型射出成形機であってもよい。
【0016】
取出機2は、トラバース型の取出機であって、成形機3の固定盤33上に設置されており、XYZの各軸方向に延びるアーム21,22,23よりなるアーム機構20と、アーム機構2のアーム先端部に取り付けられて成形品Mを保持する取出ヘッド24とを備えている。この取出機2は、成形機3の金型34が型開されると、取出ヘッド24を上方から金型34内に進入させ、取出ヘッド24により金型34内の成形品Mを保持して成形機3の操作側へ搬送し、検査装置1との間で成形品Mの受渡しを行う。そして、取出機2は、検査装置1から受け取った成形品Mを、検査装置1からの良否判定に基づいて、図示しない不良品排出シュート又は良品回収位置に開放する。
【0017】
図2に示すように、検査装置1は、矩形箱型の筐体10により暗室とされた検査室11と、検査室11内に設置されたライト(照明手段)4、カメラ(撮像手段)5及び多軸ロボット6と、筐体10の側板部13の内側面に設けられた成形品Mの保持部7と、カメラ5で撮像した成形品画像より成形品Mの良否判定を行う処理部81と、検査装置1の各部を動作制御する制御部82とを備える。
【0018】
処理部81と制御部82とは、1つのコンピュータ8に内蔵されているが、別々のハードウエアに設けられてもよい。処理部81は、CPU等で構成され、成形品Mの画像を処理してキズの有無を判定するプログラム等を有する。制御部82は、CPU等で構成され、ライト4、カメラ5、多軸ロボット6、保持部7、後述する側板部13の開閉、後述する直動ガイド機構66などを動作制御するプログラムや、取出機2の取出機コントローラとの間で信号のやり取りを行うためのプログラム等を有する。なお、処理部81には成形品画像を表示する表示部が接続されていてもよい。
【0019】
筐体10の内側面や、ライト4(光照射部を除く)、カメラ5(受光部を除く)及び多軸ロボット6などの検査室11内に配置する各部は、黒色塗装されるか黒色カバー部材で覆って検査室11内を黒色に隠蔽している。これにより、検査室11内を良好な暗室に形成することができる。また、検査室11内を黒色に隠蔽することでライト4の照射光を乱反射させることが防止される。従って、カメラ5により成形品Mの外観状態を正確に現した画像を撮像することができ、成形品Mの表面の傷の有無等の外観検査を正確に行うことができる。
【0020】
図2、図3に示すように、筐体10の側板12a,12b,12c,12dのうち保持部7を設けた側板12aは、保持部7を設置する側板部13がその側板面に対して垂直方向に移動して開閉され、この側板部13が取出機2と保持部7との間で成形品Mの受渡しを行わせる受渡し扉として構成されている。すなわち、この側板部13における保持部7の外周位置にはシリンダ装置15が設けられ、シリンダ装置15の駆動により側板部13がその側板12aの側板面に対して垂直方向に開閉するように構成されている。なお、この側板部13の開閉方向は、成形機3の長さ方向と一致し(図1中のX方向)、成形機3の金型34の開閉方向と同じ方向に設定されている。
【0021】
ところで、検査装置を成形機3の横に設置する場合、取出機2との間の成形品受渡し場所として、例えば、検査室から水平テーブルを繰り出させ、このテーブル上に取出機2により成形品Mを載置させて成形品Mを検査室内に移送させるようにすることが考えられる。この場合、成形品Mの受渡し場所を広く確保する必要がある。
これに対して、本実施の形態の検査装置1によれば、成形品Mの受渡し扉となる側板部13がその側板面に対して垂直方向に移動して開閉する構成とするので、水平テーブルにより成形品Mの受渡しを行う場合に比して、成形品Mの受渡し場所を省スペース化することができる。
【0022】
また、成形品Mの受渡し扉となる側板部13が成形機3の金型34の如く開閉されるので、成形品Mの受け渡しを行う取出機2の取出ヘッド24の姿勢制御を複雑な設定をする必要もない。図1に示す検査装置1では、さらに側板部13の開閉方向が成形機3の金型34の開閉方向と同じ方向に設定されているので、取出機2の取出ヘッド24は、金型34から成形品Mを取り出した姿勢のまま検査装置1との間で成形品Mの受渡しを行うことができ、取出ヘッド24を反転させる等の特別な取出ヘッド24の姿勢制御を行う必要もない。
【0023】
ライト4は、受渡し扉となる側板12aと隣接する一方の側板12b側の上部に固定され、検査時には多軸ロボット6で把持する成形品Mを照明光により照明するものである。このライト4は、カメラ5で成形品Mの画像が鮮明に撮像できる照明光を照射するものであれば、各種の照明手段を使用することができ、例えば、蛍光灯、ハロゲンライト4等が使用される。
【0024】
カメラ5は、ライト4と対向するように受渡し扉となる側板12aと隣接する他方の側板12c側の上部に固定され、検査時には多軸ロボット6で把持する成形品Mの画像を撮像するものである。このカメラ5は、成形品Mの画像を鮮明に撮像できるものであれば、各種の撮像手段を使用することができ、例えば、CCDカメラ等が使用される。
【0025】
なお、本実施の形態では、透明な成形品Mを検査対象とするためライト4の照明光を成形品Mに透過させてこれをカメラ5で撮像するようにライト4とカメラ5を対向配置させているが、不透明な成形品Mを検査対象とする場合は、ライト4で照明した成形品Mからの反射光に基づいてこれをカメラ5で撮像するようにライト4とカメラ5を同じ側板側に並設させる。
【0026】
多軸ロボット6は、多関節のロボットアームの先端に離反・接近して成形品Mを把持するチャック62からなるハンド61が設けられている。多軸ロボット6は、ハンド61により側板部13の保持部7との間で成形品Mの受渡しを行うと共に検査時にはハンド61で把持した成形品Mをその各検査面がカメラ5に撮像されるように三次元方向に自在に移動させる。
【0027】
検査室11の底板14上には、その中央部付近に保持部7と対向する方向に直動ガイド機構(走行手段)66が設置されており、この直動ガイド機構66上に多軸ロボット6が設置されている。
多軸ロボット6は、保持部7との間で成形品Mの受渡しを行うときは直動ガイド機構66により移動されて保持部7に接近させるようにする(図3中、二点鎖線で示す。)。これにより、小型の多軸ロボット6により側板部13に設けた保持部7との間で成形品Mの受渡しを行うことができる。従って、多軸ロボット6を室内設置しても検査室11をコンパクトに構成することができる。
また、多軸ロボット6は、カメラ5により成形品Mの撮像を行うときは直動ガイド機構66により移動されて多軸ロボット6を検査室11内の端(例えば、保持部7を設けた側板12aと対向する側板12d側、あるいは保持部7を設けた側板12a側)に配置させるようにする(図3中、実線で示す。)。これにより、多軸ロボット6を検査室11の端に退避させ、そのロボットアームを伸ばして成形品Mの撮像を行わせることで、多軸ロボット6の影がカメラ5の撮像範囲内に形成される割合を少なくすることができる。従って、小さな検査室11であっても成形品Mの撮像範囲を広く確保することができる。
【0028】
図4に示すように、ハンド61を構成するチャック62には、チャック62のストローク位置を検出するストローク位置検出器63が取り付けられている。このストローク位置検出器63は、コイルを内部に設けた棒状部材64と、この棒状部材64を挿通し軸方向に移動可能に配置した導電性の金属筒65と、棒状部材64と金属筒65との重合面積に応じた信号を出力する出力部(図示せず)とを備える。すなわち、ハンド61を構成するチャック62のストロークに応じて棒状部材64と金属筒65との重合面積が変化すると、出力部は、変化後の重合面積と対応する信号を出力する。そして、出力部は、この出力信号に基づいたストローク位置を示す検出信号を制御部82へ出力する。そして、制御部82は、ストローク位置検出器63からの検出信号に基づいてチャック62の移動制御を行って成形品Mの把持・解放を制御する。
【0029】
ところで、チャック62の位置検出として、例えば、光電式センサ等の2点検知式のセンサを用いる場合、成形機3での段取り替えで成形品Mの大きさが変わる度に成形品Mの大きさに合わせてセンサの取付位置を設定し直す必要がある。
これに対して、上記ストローク位置検出器63によれば、チャック62の全ストローク位置を検出することができる。従って、成形品Mの大きさが変わった場合、その成形品Mの大きさに応じた成形品Mの把持及び解放のストローク値を制御部82に設定すれば、ストローク位置検出器63からの検出信号に基づいてチャック62による成形品Mの把持・解放を制御することができる。よって、光電式センサ等の2点検知式センサを用いる場合に比べて、成形品Mに応じた多軸ロボット6の設定を簡単に且つ早期に行うことができる。なお、ストローク位置検出器63としては、株式会社リベックス製の変位センサ(特開2003−14493号公報、特開2004−69415号公報)として提供されているリニアパルスコーダ(登録商標)が好適に使用される。
【0030】
検査室11の側板部13に設けた保持部7は、取出機2との間で成形品Mの受渡しを行うと共に、多軸ロボット6との間で成形品Mの受渡しを行う。図5に示すように、保持部7は、複数の開口71を有し、開口71に発生させる真空圧により成形品Mを吸着保持するグリッパー(吸着手段)72により構成されている。このグリッパー72は、成形品Mに接触していない開口71は自動的に閉じられ、成形品Mに接触している開口71は成形品Mの保持力を確保する真空圧が確保されるように構成されている。これにより、成形品Mの大きさが変わっても複数の開口71により成形品Mの保持を確実に行うことができる。従って、成形品Mが変更されても成形品Mの大きさ等に応じて保持部7を設定し直す必要がない。よって、成形品Mに応じた検査装置1の調節を簡易に行うことができる。
【0031】
本実施の形態における保持部7は、図2を参照して、側板部13の内側面の4箇所に設けられている。そして、成形機3では、金型34により成形品Mが2個取りされ、側板部13を閉じているときは多軸ロボット6が成形品Mを把持しているときを除いて4つの保持部7のうち2つの保持部7に成形品Mが保持されている。また、多軸ロボット6は、成形品Mの撮像を終えると、その成形品Mを取り上げた場所の保持部7に成形品Mを渡すものとする。この場合、保持部7と取出機2との間での成形品Mの受渡しは、例えば、取出機2は、左右の一方側に並ぶ2つの保持部7に成形機3から取り出した検査前の2つの成形品Mを渡し、続いて、他方側に並ぶ2つの保持部7に保持された検査済みの成形品Mを受け取る。そして次に、取出機2は、成形品Mの受渡しを行うとき、成形品Mを保持していない他方側に並ぶ2つの保持部7に成形機3から取り出した検査前の2つの成形品Mを渡し、続いて、検査済みの成形品Mを保持する一方側に並ぶ2つの保持部7から検査済みの成形品Mを受け取る。以上の動作を繰り返し行う。
【0032】
なお、検査前の成形品Mを保持する保持部7と検査後の成形品Mを保持する保持部7の位置を固定するようにして、多軸ロボット6は、検査前の成形品Mを保持する保持部7から成形品Mを取り上げ、成形品Mの撮像を終えると、検査後の成形品Mを保持する側の保持部7に成形品Mを戻すようにし、取出機2は、常に、検査前の成形品Mを保持する側の保持部7に成形機3から取り出した検査前の成形品Mを渡し、検査後の成形品Mを保持する側の保持部7から成形品Mを受け取るように制御してもよい。
【0033】
処理部81は、カメラ5によって撮像された画像を画像処理して成形品Mの良否を判定する。この判定の結果は、検査装置1の制御部82から取出機2の取出機コントローラへ良否情報として送信される。そして、取出機2は、保持部7から検査済みの成形品Mを受け取ると、良品と判定された成形品Mを良品回収位置に移送し、不良品と判定された成形品Mを不良品シュートに排出する。
【0034】
以上の構成の検査装置1の動作を以下に説明する。
まず、取出機2が成形機3の金型34から成形品Mを取り出すと取出機コントローラから受渡し信号が検査装置1の制御部82に出力する。検査装置1は、この受渡し信号を受けると、制御部82の指令信号により成形品Mの受渡し扉となる側板12aを開く。すると、取出機2は、成形品Mを保持する取出ヘッド24を検査室11の上方から側板12aの内側面に進入させ、側板12aの内側面に設けた保持部7に成形機3から取り出した検査前の成形品Mを渡し、続いて検査装置1により検査済みの成形品Mを受け取る。この成形品Mの受渡しが完了し取出機コントローラから受渡し完了信号が検査装置1の制御部82に出力されると、検査装置1は、制御部82の指令信号により受渡し扉となる側板部13を閉じる。なお、側板部13が閉じられると検査室11内は暗室となる。
【0035】
次に、制御部82の指令信号により、直動ガイド機構66により多軸ロボット6を移動させて保持部7に接近させ、多軸ロボット6のハンド61によって保持部7に保持された成形品Mを取り上げる。このとき、ハンド61を構成するチャック62により成形品Mを把持したか否かは、制御部82において、ストローク位置検出器63からの位置信号より、予め設定した成形品把持位置を示すストローク値となったことで成形品Mの把持が認識される。そして、成形品把持が認識されると、制御部82の指令信号により、直動ガイド機構66により多軸ロボット6を保持部7と対向する側板12d側に移動させて多軸ロボット6を検査室11内の端に退避させ、次いで、ライト4により成形品Mを照明し、多軸ロボット6によりハンド61に把持する成形品Mの検査面を順次カメラ5の焦点位置に移動させてカメラ5により成形品Mを撮像する。この成形品Mの画像は、処理部81に取り込まれる。
【0036】
成形品Mの撮像が完了すると、制御部82からの指令信号により、直動ガイド機構66は多軸ロボット6を保持部7側に移動接近させ、多軸ロボット6はその成形品Mを取り上げた場所の保持部7に成形品Mを戻す。また、制御部82からの撮像完了信号により、処理部81は所定の処理手順に従って成形品Mの表面に不良品となるキズがあるか否か良否判定される。この良否判定は、例えば、以下の手順で行うことができる。
まず、カメラ5から取り込んだ各画像データをA/D変換した後、予め設定された閾値により2値化する。そして、2値化された値のうちキズを示す値の面積を計測する。ここで計測された面積と予め設定した判定基準値とが比較され、計測した面積が判定基準値を上回った場合は不良品と判定する。このようにして処理部81で不良品と判定された場合、制御部82は、取出機2の取出機コントローラに対してその成形品Mが保持された保持部7の位置と共に不良品である旨の判定信号を出力する。
【0037】
そして次に、検査装置1の制御部82が取出機2の取出機コントローラから受渡し信号を受けて、成形品Mの受渡し扉となる側板12aを開いて取出機2との間で成形品Mの受渡しが行われると、取出機2は、上記の不良判定信号を受けた成形品Mを不良品排出シュートへ排出し、不良判定信号を受けていない成形品Mを良品回収位置へ開放する。
以上の動作が繰り返し行われる。
【0038】
以上のように、実施の形態による検査装置1によれば、成形品Mの受渡し扉となる側板部13がその側板面に対して垂直方向に移動して開閉する構成とするので、成形品Mの受渡し場所を省スペース化することができる。従って、成形機3の横に検査装置1を省スペースに設置することができる。その結果、成形機3のオペレータの作業に大きな支障を来たすこともなく、しかも成形機3周辺の設置スペースに制約がある成形工場でも成形機3の横に検査装置1を設置することにより、成形後検査開始するまでの待機時間を大幅に短縮して工場全体での成形品Mの生産性を向上することができる。また、成形品Mの受渡し扉となる側板部13が成形機3の金型34の如く開閉されるので、成形品Mの受け渡しを行う取出機2側の姿勢制御も簡易に設定することができる。
【0039】
なお、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々変更することが可能である。
例えば、成形品Mの受渡し扉となる側板部13は、保持部7を設けた側板12a全体が開閉されるようにしてもよい。
また、処理部81での画像処理は、2値化に限らず、他の画像処理方法により行ってもよい。
また、カメラ5やライト4は複数台設置してもよい。
さらに、取出機2は、トラバース型に限らず、取出ヘッド24を金型34の横から金型34内に進入させて成形品Mの取出を行ういわゆるサイドエントリー型の取出機2でもよい。このサイドエントリー型取出機の場合、検査装置1の保持部7との間での成形品Mの受渡しは、取出ヘッド24を検査室11の横から側板部13の内側面に進入させて行うようにする。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】実施の形態による検査装置が成形機の横に設置された状態を示した斜視図である。
【図2】検査装置の検査室内部における各部の構成を示した斜視図である。
【図3】検査装置の検査室内部における各部の構成を示した側面図である。
【図4】多軸ロボットのハンドを示した平面図である。
【図5】保持部としてのグリッパーを示した平面図である。
【符号の説明】
【0041】
M 成形品
1 検査装置
2 取出機
3 成形機
4 ライト
5 カメラ
6 多軸ロボット
7 保持部
10 筐体
11 検査室
12a〜12d 側板
13 側板部
20 アーム機構
24 取出ヘッド
61 ハンド
62 チャック
66 直動ガイド機構
63 ストローク位置検出器
72 グリッパー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形機で成形された成形品をその撮像画像に基づいて外観検査するための検査装置であって、
照明手段と撮像手段を配置する検査室が筐体により囲まれて暗室とされ、
検査室が成形機の横に設置され、
成形品を保持する保持部が検査室の側板部の内側面に設けられ、
保持部を設けた側板部は、その側板面に対して垂直方向に移動して開閉され、成形機から成形品を取り出す取出機と保持部との間で成形品の受渡しを行う受渡し扉として構成される検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載の検査装置において、
検査室内に設置されて、ハンドにより保持部との間で成形品の受渡しを行うと共にハンドで保持した成形品を三次元方向に自在に移動させる多軸ロボットと、
多軸ロボットを検査室内で保持部と対向する方向に移動させる走行手段とを有し、
走行手段により多軸ロボットを移動して保持部に接近させて多軸ロボットと保持部との間で成形品の受渡しを行う構成とした検査装置。
【請求項3】
請求項2に記載の検査装置において、
撮像手段による成形品の撮像の際、走行手段により多軸ロボットを検査室内の端に移動させる構成とした検査装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の検査装置において、
多軸ロボットのハンドは、離反・接近するチャックで構成され、
チャックには、チャックのストローク位置の変化に応じて重合面積が変化するように配置されたコイルと導電体又は磁性体、及び重合面積に応じた出力を発生する位置検出器が取り付けられ、
位置検出器からの検出信号によりチャックによる成形品の把持・解放を制御する構成とした検査装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の検査装置において、
検査室の側板部に設けた保持部は、複数の開口を有し、開口に発生させる真空圧により成形品を吸着保持する吸着手段により構成される検査装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の検査装置において、
検査室内は、照明手段の光照射部及び撮像手段の受光部を除いて黒色に隠蔽されている検査装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−110899(P2010−110899A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−282858(P2008−282858)
【出願日】平成20年11月4日(2008.11.4)
【出願人】(508329221)ジエイ・クオリティ株式会社 (3)
【出願人】(595112258)株式会社リベックス (16)
【Fターム(参考)】