説明

検査装置

【課題】被検査物の種類や特徴に応じて、自動で最適な測定条件を決定して被検査物の特性を測定する。
【解決手段】前記被検査物を撮像する撮像部16と、前記被検査物の特性を測定する特性測定部15と、前記被検査物に関する検査情報を取得する検査情報取得部11と、前記検査情報に対応する前記被検査物の測定条件に関する測定情報を決定する条件決定部12と、前記撮像部による撮像を制御する撮像制御部14と、前記測定情報に基づいて前記特性測定部による測定を制御する測定制御部13と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顕微鏡や検査機等の検査装置に関し、特に被検査物を撮像するとともに被検査物の特性測定を行う検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、顕微鏡や検査機等の検査装置において、標本等の被検査物を撮像してデジタル画像として記録するとともに被検査物の分光特性などの特性を測定し、被検査物の画像処理や、診断支援や画像検査等に利用することにより、高性能化を図る装置がある。
【0003】
例えば、染色された生体標本を解析する顕微鏡等において、標本の複数部位の分光特性を測定し、標本の染色ばらつきを推定して補正することにより、安定した標本画像を得る装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
一方、被検査物の必要な観察領域を分割し、被検査物を位置制御しながら順次高倍率な対物レンズで撮像して得た分割画像を統合して広視野かつ高精細なデジタル画像を効率よく撮像する装置も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009―14354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の検査装置では、被検査物の撮像と特性測定とを独立して行っており、また、被検査物の種類や特徴に応じてデータの測定条件を変更する必要があるため、検査を効率よく行うことができなかった。
【0007】
本発明の目的は、上記問題を解決するため、被検査物の画像をデジタル画像として記録するとともに、被検査物の種類や特徴に応じて自動で最適な測定条件を決定して特性を測定し、被検査物の画像処理や、診断支援や画像検査等に利用できる、効率の良い検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明に係る検査装置は、被検査物を撮像する撮像部と、前記被検査物の特性を測定する特性測定部と、前記被検査物に関する検査情報を取得する検査情報取得部と、前記検査情報に対応する前記被検査物の測定条件に関する測定情報を決定する条件決定部と、前記撮像部による撮像を制御する撮像制御部と、前記測定情報に基づいて前記特性測定部による測定を制御する測定制御部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る検査装置によれば、被検査物の種類や特徴によって測定条件を変えるので、最適な条件で被検査物を測定することができる。
【0010】
また、本発明に係る検査装置において、前記条件決定部は、前記検査情報に対応する前記被検査物の撮像条件に関する前記撮像情報を決定し、前記撮像制御部は、前記撮像情報基づいて前記撮像部による撮像を制御することを特徴とする。
【0011】
本発明に係る検査装置によれば、被検査物の種類や特徴によって測定条件及び撮像条件を変えるので、最適な条件で被検査物を検査することができる。
【0012】
また、本発明に係る検査装置において、前記特性測定部は、前記被検査物の特性を複数箇所測定することを特徴とする。
【0013】
本発明に係る検査装置によれば、被検査物の特性を複数箇所測定するので、精度の高い測定データを取得することができる。
【0014】
また、本発明に係る検査装置において、さらに、前記被検査物を移動させる被検査物移動部を備え、前記撮像制御部は、撮像領域を複数の分割撮像領域に分割し、前記撮像部に対して、前記分割撮像領域ごとに撮像するように制御し、かつ、前記被検査物移動部に対して、前記撮像部が前記分割撮像領域の撮像をするたびに、次の分割撮像領域に被検査物を移動するように制御し、前記測定制御部は、前記特性測定部に対して、前記撮像制御部の撮像に選択的に同期して測定するように制御することを特徴とする。
【0015】
本発明に係る検査装置によれば、被検査物を移動させつつ撮像し、撮像に同期して測定するので、検査時間を削減することができる。
【0016】
また、本発明に係る検査装置において、前記測定情報は、測定箇所数の情報を含み、
前記測定制御部は、前記測定箇所数分の測定データを取得できなかった場合には、前記撮像制御部の撮像が終了した後に、前記特性測定部に対して、測定箇所数分の測定データを取得できるまで追加測定するように制御することを特徴とする。
【0017】
本発明に係る検査装置によれば、撮像領域に対する測定部位存在領域が少ない場合であっても、測定箇所数分の測定データを取得できるようになる。
【0018】
また、本発明に係る検査装置において、さらに、被検査物を撮像してサムネイルを取得するサムネイル取得部を備え、前記撮像制御部は、前記サムネイルから被検査物における測定部位の位置情報を取得し、前記撮像部に対して、前記分割撮像領域のうち前記測定部位が存在する測定部位存在領域のみ撮像するように制御し、前記被検査物移動部に対して、前記撮像部が前記測定部位存在領域の撮像をするたびに、前記撮像部が次の測定部位存在領域を撮像できるように被検査物を移動するように制御することを特徴とする。
【0019】
本発明に係る検査装置によれば、サムネイルを取得することで被検査物が存在しない箇所の撮像及び測定をすることがなくなるので、より測定時間を短縮し、メモリ容量も削減することができる。
【0020】
また、本発明に係る検査装置において、前記検査情報取得部に代えて、被検査物を撮像してサムネイルを取得し、該取得したサムネイルから前記検査情報を生成する前記サムネイル取得部を備えることを特徴とする。
【0021】
本発明に係る検査装置によれば、ユーザによる検査情報の入力が不要となり、完全に自動化することができる。
【0022】
また、本発明に係る検査装置において、前記サムネイル取得部が生成する前記検査情報は、前記サムネイルの色情報を含むことを特徴とする。
【0023】
本発明に係る検査装置によれば、実際に撮像した画像に基づく情報を検査情報とすることができる。
【0024】
また、本発明に係る検査装置において、前記測定情報は、撮像箇所からランダムに選択した場所を測定箇所とするか、又は撮像箇所から均等に離散的に選択した場所を測定箇所とするかの情報を含んでいることを特徴とする。
【0025】
また、本発明に係る検査装置において、前記被検査物は染色された標本であり、前記特性測定部は前記標本の分光特性を測定することを特徴とする。また、前記特性測定部は、マルチスペクトルセンサを有することを特徴とする
【0026】
本発明に係る検査装置によれば、マルチスペクトルセンサの使用するチャネル数を多くすることで、高い測定精度を得ることができ、高い測定精度が求められていない場合には、使用するチャネル数を減らすことで、測定時間を短縮することができる。
【0027】
また、本発明に係る検査装置において、前記測定部による測定視野は、前記撮像部による撮像視野の一部であることを特徴とする。
【0028】
本発明に係る検査装置によれば、全ての測定ポイントを撮像に同期して測定することができる。
【0029】
また、本発明に係る検査装置において、前記撮像情報は、例えば撮像倍率又は撮像箇所数のいずれかの情報であり、前記検査情報は、例えば被検査物の作成施設、染色方法、染色色素、臓器種類、厚み、又は画像情報であり、記測定情報は、例えば前記特性測定部が有するマルチスペクトルセンサの使用するチャネル、該マルチスペクトルセンサの積分時間、該マルチスペクトルセンサの感度、又は積算回数である。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、被検査物の種類や特徴に応じて、自動で最適な測定条件を決定することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明による第1の実施形態の検査装置の構成を示すブロック図である。
【図2】マルチスペクトルセンサの分光感度の一例を示す図である。
【図3】本発明による第1の実施形態の検査装置の動作を示すフローチャートである。
【図4】本発明による第2の実施形態の検査装置の構成を示すブロック図である。
【図5】本発明による第2の実施形態の検査装置の検査方法を説明する図である。
【図6】本発明による第2の実施形態の検査装置の動作を示すフローチャートである。
【図7】本発明による第3の実施形態の検査装置の構成を示すブロック図である。
【図8】本発明による第3の実施形態の検査装置の検査方法を説明する図である。
【図9】本発明による第3の実施形態の検査装置の測定箇所を説明する図である。
【図10】本発明による第3の実施形態の測定箇所選択方法を説明するフローチャートである。
【図11】本発明による第3の実施形態の検査装置の動作を示すフローチャートである。
【図12】本発明による第4の実施形態の検査装置の構成を示すブロック図である。
【図13】本発明による第3の実施形態の検査装置を適用した顕微鏡システムの構成を示すブロック図である。
【図14】本発明による第3の実施形態の検査装置を適用した顕微鏡システムの光学構成の概略を示すブロック図である。
【図15】本発明による第2の実施形態の検査装置の撮像領域内における測定箇所を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明による検査装置の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
(第1の実施形態)
本発明による検査装置は様々な分野に適用でき、例えば、特定の色の検出や、撮影時の色再現性の向上などを目的に使用することができる。本実施形態では、一例として、臓器摘出によって得たブロック標本や針生検によって得た病理標本を被検査物とし、病理標本を撮像及び特性測定して病理検査を行う検査装置について説明する。よって、以下の説明では被検査物のことを標本ともいう。薄切りされた標本は、光を殆ど吸収及び散乱せず無色透明に近いため、一般的に、観察に先立って色素による染色が施される。
【0033】
生体組織標本の染色は、元々個体差を有する生体組織に対し、化学反応を用いて色素を固定する作業であるため、常に均一な結果を得ることが難しく、標本間で染色のばらつきが生じている。専門の技能を有した染色技師を配置することで、同一施設内での染色ばらつきをある程度軽減できるが、異なる施設間での染色ばらつきは依然として生じたままである。
【0034】
染色にばらつきがあると、決定的な所見が見落とされる可能性がある。また、染色された標本をカメラで撮像して画像処理する場合、染色ばらつきが画像処理精度に悪影響を及ぼすおそれがある。例えば、ある病変が特定の色を呈することが判っていたとしても、標本を撮像した観察画像から自動的にその病変に対応する画像領域を抽出することが難しくなる。
【0035】
そこで、本実施形態の検査装置は、染色された標本を撮像して撮像画像を取得するとともに、標本の分光特性(スペクトルデータ)を取得し、標本の撮像画像及び分光特性に対して演算処理を行って標本中の各色素量を推定し、この推定した色素量を適宜増減させて補正するとともに、この補正した色素量をもとに画像データを生成することで、染色状態を補正した観察画像を取得する。
【0036】
図1は、第1の実施形態の検査装置の構成を示すブロック図である。本実施形態の検査装置は、検査情報取得部11と、条件決定部12と、測定制御部13と、撮像制御部14と、特性測定部15と、撮像部16と、画像処理部17とを備える。
【0037】
検査情報取得部11は、ユーザインタフェースにより入力を受け付け、入力された被検査物に関する検査情報を取得し、条件決定部12に出力する。検査情報の入力は、キーボードを用いて手動により入力することや、検査情報が埋め込まれたバーコードをバーコードリーダにより読み取って入力することにより行う。
【0038】
検査情報取得部11は、自動読取りタイプのバーコードリーダを有するのが好適である。自動読取りタイプのバーコードリーダは、所定箇所に標本がセットされると、検査情報が埋め込まれたバーコードを自動的に読み取る。これにより、フルオートで検査情報を取得することができ、手入力が不要となる。また、バーコードにより検査情報を直接取得してもよいが、バーコードリーダで読取った情報に従って、インターネット等の通信手段により検査情報を取得してもよい。
【0039】
検査情報には、例えば、標本の作成施設、標本の染色方法、標本の臓器種類、及び標本の厚みの情報が含まれる。この検査情報の一例を表1に示す。この他にも、標本の染色色素や画像情報等を含めてもよい。
【0040】
【表1】

【0041】
標本作成施設とは標本を作成した施設名をいう。標本の染色方法は、種々のものが提案されているが、病理標本に関しては、色素として青紫色のヘマトキシリンと赤色のエオジンの2つを用いるヘマトキシリン−エオジン染色(HE染色)が標準的に用いられている。その他、癌や遺伝子疾患に関連する染色体異数性や遺伝子増幅を検出する方法として、FISH(Fluorescence In Situ Hybridization)法や、CISH(Chromogenic In Situ Hybridization)法などが知られている。なお、検査情報として「臓器の切り出し方法」を追加してもよく、また、標本の臓器種類が同一である場合には、「標本の臓器種類」の代わりに「臓器の切り出し方法」としてもよい。
【0042】
条件決定部12は、検査情報取得部11から入力される検査情報のうち、撮像条件に関する情報である撮像情報を撮像制御部14に出力し、測定条件に関する情報である測定情報を測定制御部13に出力する。撮像情報には、例えば、撮像倍率の情報が含まれる。この撮像情報の一例を表2に示す。ただし、撮像倍率があらかじめセットした倍率しか使用できないシステムもあり、その場合には撮像情報は不要となる。
【0043】
【表2】

【0044】
測定情報には、例えば、測定視野、測定スペクトルチャネル(測定スペクトルCH)、積算回数、スペクトルセンサ積分時間、及びスペクトルセンサ前の赤外カットフィルタの有無の情報が含まれる。この測定情報の一例を表3に示す。この他にも、スペクトルセンサの感度等を含めてもよい。
【0045】
【表3】

【0046】
測定視野は、特性測定部15が有する測定視野枠を切り換えることにより変更することができる。測定スペクトルチャネルとは、特性測定部15が有するマルチスペクトルセンサによって測定可能なスペクトルチャネルのうち、測定に使用するスペクトルチャネルのことをいう。図2は、マルチスペクトルセンサの分光感度の一例を示す図であり、横軸に波長、縦軸に分光感度を示している。使用するチャネル数を多くすることで、高い測定精度を得ることができる。一方、高い測定精度が求められていない場合には、使用するチャネル数を減らすことで、測定時間を短縮することができる。また、積算回数とは、複数回数測定してその平均値を採用する場合の測定回数のことをいう。積算回数を多くすることで、高い測定精度を得ることができるとともに被写体が暗い場合にも対応することが出来る。また、スペクトルセンサ積分時間を変えて複数回測定することにより、ダイナミックレンジを広くすることができる。赤外カットフィルタの有無とは、マルチスペクトルセンサの前方に配置される赤外カットフィルタの有無をいう。
【0047】
条件決定部12は、データベース121を有している。データベース121は、あらかじめ用意された、検査情報と撮像情報及び測定情報とを1対1に対応付けるテーブルである。条件決定部12は、データベース121を参照し、検査情報取得部11から入力される検査情報に対応する測定情報、又は測定情報及び撮像情報を決定する。なお、データベース121を、検査情報と測定情報のみとを1対1に対応付けるテーブルとし、撮像情報は検査情報取得手段11から直接取得するように構成することも可能である。
【0048】
検査情報と測定情報とを対応付けることにより、被検査物ごとに最適な測定条件を決定することができる。例えば、染色液(及び光源)によって標本のスペクトルが異なり、測定に要するスペクトルも異なる。例えば、赤外カットされた光源とHE染色の組み合わせの色素量推定のためにスペクトルを使用する場合に、600nmより赤外側のスペクトルは光量が少なくなり測定に時間がかかる上に、色素量推定に対してあまり有効性がないこともある。このような場合には、赤外側のスペクトルは測定しないようにすることで、測定時間及びデータ容量を削減することができる。また、検査装置を顕微鏡に適応した場合には、染色液(及び光源)、設定倍率等によっては非常にマルチスペクトルセンサの受光量が少ない場合がある。このような場合には、ノイズの影響でデータの信頼性が低くなるので、測定時の積算回数を上げる必要が生じる。データベース121の一例を表4に示す。
【0049】
【表4】

【0050】
撮像制御部14は、条件決定部12から入力される撮像情報に基づいて、撮像部16による被検査物の撮像を制御するための撮像制御情報を生成し、撮像部16に出力する。
【0051】
測定制御部13は、条件決定部12から入力される測定情報に基づいて、特性測定部15による特性測定を制御するための測定制御情報を生成し、特性測定部15に出力する。
【0052】
特性測定部15は、測定制御部13から入力される測定制御情報に基づいて、被検査物の分光特性を測定し、測定データを画像処理部17に出力する。
【0053】
撮像部16は、撮像制御部14から入力される撮像制御情報に基づいて、被検査物を撮像し、撮像画像を画像処理部17に出力する。
【0054】
画像処理部17は、特性測定部15から入力される分光特性、及び撮像部16から入力される撮像画像に対して演算処理を行って標本中の各色素量を推定し、この推定した色素量を適宜増減させて補正するとともに、この補正した色素量をもとに画像データを生成することで、染色状態を補正した観察画像を取得する。画像処理の具体的な方法は既知であり(例えば、特許文献1参照)、かつ本願の主題ではないため更なる説明を省略する。
【0055】
図3は、本実施形態の検査装置の動作を説明するフローチャートである。本実施形態の検査装置は、検査情報取得部11によって、検査情報を取得する(ステップS101)。そして、条件決定部12によって、データベース121を参照して、取得した検査情報に対応する撮像条件及び測定条件を決定する(ステップS102及び103)。次に、撮像制御部14及び撮像部16によって被検査物を撮像し撮像画像を取得するとともに、測定制御部13及び特性測定部15によって被検査物の特性を測定して測定データを取得する(ステップS104)。被検査物の撮像及び測定が終了すると、画像処理部17によって、画像処理を行い(ステップS105)、検査処理を終了する。なお、必要に応じて、ステップS101の前又はステップS105の後において、被検査物に対する照明光の分光データを測定し、照明キャリブレーションを行うようにしてもよい。
【0056】
このように、第1の実施形態の検査装置によれば、条件決定部12を有することにより、被検査物の種類や特徴によって測定条件を変えることができるので、被検査物ごとに最適な条件で測定することができるようになる。
【0057】
(第2の実施形態)
次に、本発明による第2の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、第1の実施形態と同じ構成要素には同一の参照番号を付して適宜説明を省略する。
【0058】
図4は、本発明による第2の実施形態の検査装置の構成を示すブロック図である。本実施形態の検査装置は、検査情報取得部11と、条件決定部12と、測定制御部13と、撮像制御部14と、特性測定部15と、撮像部16と、画像処理部17と、被検査物移動部18とを備える。本実施形態の検査装置は、第1の実施形態の検査装置(図1参照)と比較して、さらに被検査物移動部18を備える点で相違する。
【0059】
本実施形態の検査装置は、図5に示すように、被検査物を移動させつつ被検査物を撮像して、複数の分割画像を取得する。つまり、高倍率の撮像を行う場合、撮像領域41に対して1回で撮像できる領域である分割撮像領域42は小さいため、被検査物を載置するステージを分割撮像領域42ずつ移動させながら撮像し、後に撮像した複数の画像を統合することにより、撮像領域41全体の撮像画像を取得する。図5中の矢印は分割画像領域42を撮像する順番を示している。撮像箇所数が複数となるため、撮像情報には撮像箇所数を含める。また、測定は撮像箇所の一部又は全部について行うことができる。そのため、測定情報には測定箇所数及び測定箇所選択方法を含める。測定箇所選択方法とは、撮像箇所のうちのどの部分を測定箇所として選択するか、又はどのような方法で選択するか(例えば、全体を均等に離散的、又は細胞核の多い部分を狙い撃ち)を示す情報である。
【0060】
標本の取得方法や取得箇所などによって、標本のある領域(測定部位43)とない領域の割合などが異なる。また標本のある領域であっても臓器の種類によって、細胞核部分の密集度や細胞質等のある領域(測定部位43内でさらに細胞核や細胞質がある領域)と空(何もない)領域の割合などが異なる。また、標本のある領域内であっても細胞核部分や細胞質部分など測定したい箇所の分布の仕方や分布密度が異なる。
【0061】
例えば、均一に全体的に高密度で存在している標本1と、細胞核部分や細胞質部分が一部に密集している標本2と、空の部分が多く細胞核部分や細胞質部分が密集せずに離散的でかつ面積的にも少ない標本3があり、それぞれにおいて染色された細胞核部分や細胞質部分に相当する部分の分光特性(スペクトルデータ)を得たい場合、全て同一の測定箇所数及び測定箇所選択方法とすると、一番条件の悪いものにあわせなければならなくなり、測定時間もかかり、メモリも大量に必要になるため効率が悪い。つまり、標本1においては、標本部分の任意の一部の部分を数点測定するか標本部分全体から離散的に数点測定すれば必要なデータが得られるのに対して、標本3では細胞核部分や細胞質部分の存在確率が低いので数十点のデータを測定しなければならない。また、標本2では、細胞核部分や細胞質部分の分布に偏りがあるので、均等や離散的にデータを測定するなら測定箇所が増えるが、細胞核部分や細胞質部分が多い部分を狙って測定すれば測定点数を減らすことができる。これら組織の分布の仕方や分布密度は、臓器の種類や切り出し方法などにより異なる。また、細胞核等の大きさや形状も臓器の種類等により異なる。細胞核が小さくて測定視野が大きい場合は細胞核を染色する色素に応じたスペクトルを測定できない。
【0062】
よって、本実施形態では、データベース121により、臓器の種類と、測定箇所数及び測定視野とを対応付けることで、測定をより正確かつ効率的に行うことができる。なお、本実施形態では臓器の種類に応じて決めているが、臓器の切り出し方法など臓器の種類以外の情報を用いても良い。撮像情報の一例を表5に、測定情報の一例を表6に、データベース121の一例を表7に示す。

【0063】
【表5】

【0064】
【表6】

【0065】
【表7】

【0066】
図15は、撮像領域内における測定箇所を説明する図である。例えば、測定箇所選択方法として「均等」が選択された場合には、撮像箇所数/測定箇所数=kとすると、k回に1回測定する。図15(a)は、全ての分割画像領域42を撮像箇所とし、k=3としたときの測定箇所を太枠で示している。測定箇所選択方法として「狙い撃ち」が選択された場合には、l回に1回測定し、ある測定箇所における測定データが特定のスペクトルデータが高くなる等の所定の条件を示した場合には、その測定箇所(以下、測定箇所Pと称する)を起点として重点的に測定を行うようにする。例えば、測定箇所Pを起点としてm×m個の分割画像領域42で測定データが得られるように制御する、あるいは測定箇所Pを起点としてn個の連続した分割画像領域42で測定と撮影を行う(ここで、l,m,nは任意の整数とする)。図15(b)は、全ての分割画像領域42を撮像箇所とし、l=3、m=3としたときの測定箇所を太枠で示している。また、図15(c)は、全ての分割画像領域42を撮像箇所とし、l=3、n=5としたときの測定箇所を太枠で示している。また、「狙い撃ち」が選択された場合に、図15(d)に示すように、測定箇所Pを起点として、太枠で示された所定の分割画像領域42のみを測定するようにしてもよい。
【0067】
撮像制御部14は、条件決定部12から入力される撮像情報に基づいて被検査物の撮像を制御するための撮像制御情報を生成し、撮像部16に出力するとともに、被検査物の位置を制御するための移動制御情報を生成し、被検査物移動部18に出力する。また、撮像制御部14は、撮像部16による撮像と、特性測定部15による測定との同期をとるために、撮像箇所が同時に測定箇所でもある場合には、測定制御部13に対して同期信号を出力する。
【0068】
測定制御部13は、条件決定部12から入力される測定情報に基づいて、特性測定部15による特性測定を制御するための測定制御情報を生成し、特性測定部15に出力する。また、測定制御部13は、撮像制御部14からから入力される同期信号に基づいて、測定タイミング指示信号を生成し、特性測定部15に出力する。
【0069】
画像処理部17は、撮像部16から入力される分割された撮像画像を統合する機能を有する。
【0070】
被検査物移動部18は、撮像制御部14から入力される移動制御情報に基づいて、被検査物の位置を制御する。例えば、被検査物がステージ又はライン上に載置される場合には、ステージ又はラインを移動させることにより、被検査物の位置を制御する。
【0071】
図6は、本実施形態の検査装置の動作を説明するフローチャートである。本実施形態の検査装置は、検査情報取得部11によって、検査情報を取得する(ステップS201)。そして、条件決定部12によって、データベース121を参照して、取得した検査情報に対応する撮像条件及び測定条件を決定する(ステップS202及びステップS203)。
【0072】
本実施形態の検査装置は、複数箇所の撮像を行うため、撮像制御部14は、撮像回数nに初期値0を設定する(ステップS204)。撮像制御部14は、撮像箇所が同時に測定箇所であるか否かを判定する(ステップS205)。撮像箇所が同時に測定箇所である場合には、撮像部16により、被検査物の撮像を行うとともに、特性測定部15により、撮像に同期して被検査物の測定を行う(ステップS206)。一方、撮像箇所が同時に測定箇所ではない場合には、撮像部16により、被検査物の撮像のみ行う(ステップS207)。ステップS206又はステップS207による処理が終了すると、撮像制御部14は、撮像回数nを1だけインクリメントする(ステップS208)。
【0073】
次に、撮像制御部14は、撮像回数nが撮像情報によって指定される撮像箇所数と一致しているか否かを判定する(ステップS209)。撮像回数nが撮像箇所数と一致していない場合には、被検査物移動部18により被検査物を移動し(ステップS210)、ステップS205からステップS209の処理を繰り返す。一方、撮像回数nが撮像箇所数と一致した場合には、画像処理部17によって、画像処理を行い(ステップS211)、検査処理を終了する。
【0074】
このように、第2の実施形態の検査装置によれば、被検査物の分割画像を取得する際に、測定を同期して行うとともに、必要な測定回数だけ測定を行うので、撮像後に別途位置制御して測定する場合や常に撮影時に測定する場合と比較して、検査時間や測定結果格納用のメモリを削減することができるようになる。
【0075】
(第3の実施形態)
次に、本発明による第3の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、第2の実施形態と同じ構成要素には同一の参照番号を付して適宜説明を省略する。
【0076】
図7は、本発明による第3の実施形態の検査装置の構成を示すブロック図である。本実施形態の検査装置は、検査情報取得部11と、条件決定部12と、測定制御部13と、撮像制御部14と、特性測定部15と、撮像部16と、画像処理部17と、被検査物移動部18と、サムネイル取得部19とを備える。本実施形態の検査装置は、第2の実施形態の検査装置(図4参照)と比較して、さらにサムネイル取得部19を備える点で相違する。なお、撮像部16がサムネイル取得部19を有する構成であってもよい。
【0077】
サムネイル取得部19は、被検査物の撮像及び測定を行う前に、撮像部16により被検査物の全体画像を低倍率で撮像して低倍率全体画像(以下、サムネイルと称する)を取得し、測定制御部13及び撮像制御部14に出力する。
【0078】
撮像制御部14は、サムネイル取得部19から入力されるサムネイルから、被検査物における測定部位の位置情報を取得する。そして、撮像制御部14は、撮像部16が測定部位の存在する箇所のみを撮像するように被検査物の位置を制御する移動制御情報を生成し、被検査物移動部18に出力する。被検査物移動部18が被検査物を移動することにより、図8(a)に示すように、撮像部16は、分割撮像領域42のうち、測定部位43が存在する領域である測定部位存在領域44のみを撮像する。図8(a)中の矢印は測定部位存在領域44を撮像する順番を示している。
【0079】
また、サムネイルにより撮像領域中の測定部位43の位置を正確に把握できるので、測定情報に含まれる測定箇所選択方法の内容を、第2の実施形態においては「均等」又は「狙い撃ち」と指定していたところ、本実施形態では「標本部位均等」や「標本部端部1mmを除いて均等」といったように、撮像領域内の測定部位43やその内側を測定箇所として指定することもできる。
【0080】
本実施形態では、測定視野は撮像視野よりも小さいため、測定領域45を測定部位存在領域44の中央部としている。サムネイルにより精度の良い情報が得られるため、測定領域45の一部、好適には全部に測定部位43が存在する撮像箇所を測定候補箇所とする。図8(b)及び(c)は、図8(a)に示す撮像領域41から1つの測定部位存在領域44を抜き出したものである。図8(b)に示す測定領域45には測定部位43が存在しないため、この撮像箇所は測定候補箇所とはしない。一方、図8(c)に示す測定領域45には測定部位43が存在するため、この撮像箇所を測定候補箇所とするというようにさらに無駄な測定を排除することができる。
【0081】
撮像領域41に対する測定部位存在領域44が少ない場合など、測定情報によって指定される測定箇所数を確保できないことも考えられる。測定候補箇所が足りない場合を考慮してそのような場合には、1つの撮影箇所に対して2箇所以上測定することで測定箇所を追加する。図9は、測定箇所の追加を説明する図であり、図8(a)に示す撮像領域41から1つの撮影箇所(測定部位存在領域44)を抜き出したものである。測定領域45aは測定部位存在領域44内の測定箇所を示している。測定領域45aの測定視野は測定部位存在領域44よりも小さいので、測定箇所が足りない場合には、測定領域45aを同一の測定部位存在領域44内で所定の位置だけずらした位置に測定領域45bを設定し、測定領域45b内の一部、好適には全部に測定部位43が存在する場合には、測定領域45bを測定第二候補箇所として追加する。測定領域45bを測定するためには図9の測定部位存在領域44に対して所定位置だけずらした領域に被検査物の位置を移動制御すれば、結果として図9の45bの領域がセンサ測体領域となる。
【0082】
図10は、測定制御部13による測定箇所の選択方法を説明するフローチャートである。まず、撮像制御部14から分割撮像領域42のサイズ情報を取得して、サムネイルから撮像領域を複数の分割撮像領域42に分割し、測定部位存在領域44を抽出する(ステップS301)。次に、測定情報によって指定される測定箇所選択方法に従って測定候補箇所から測定箇所を選択し(ステップS302)、測定情報によって指定される測定箇所数分の測定箇所を選択することができたか否かを判定する(ステップS303)。測定箇所数分の測定箇所を選択することができた場合には、選択した箇所を測定箇所とする(ステップS304)。
【0083】
一方、測定箇所数分の測定箇所を選択することができなかった場合には、選択した箇所を測定箇所とするとともに、測定箇所を所定の位置だけずらした測定第二候補箇所を別途選択する(ステップS305)。そして、測定箇所数分の測定箇所を別途選択することができたか否かを判定する(ステップS306)。測定箇所数分の測定箇所を別途選択することができた場合には、別途選択した箇所を追加測定箇所とする(ステップS307)。一方、測定箇所数分の測定箇所を別途選択することができなかった場合には、警告する(ステップS308)。警告後は、例えば、検査装置が表示部を有する場合には、測定情報によって指定される測定箇所数よりも少ない測定箇所数で測定を実行するか、又は被検査物を取り替えるかをユーザに選択させるメッセージを表示し、選択された方法に従って処理を進めるようにしてもよい。
【0084】
図11は、本実施形態の検査装置の動作を説明するフローチャートである。本実施形態の検査装置は、検査情報取得部11によって、検査情報を取得し(ステップS401)、サムネイル取得部19によって、撮像領域のサムネイルを取得する(ステップS402)。そして、条件決定部12によって、データベース121を参照して、取得した検査情報に対応する撮像条件及び測定条件を決定する(ステップS403及びステップS404)。
【0085】
撮像制御部14は、撮像回数nに初期値0を設定する(ステップS405)。撮像制御部14は、撮像箇所が同時に測定箇所であるか否かを判定する(ステップS406)。撮像箇所が同時に測定箇所である場合には、撮像部16により、被検査物の撮像を行うとともに、特性測定部15により、撮像に同期して被検査物の測定を行う(ステップS407)。一方、撮像箇所が同時に測定箇所ではない場合には、撮像部16により、被検査物の撮像のみ行う(ステップS408)。ステップS407又はステップS408による処理が終了すると、撮像制御部14は、撮像回数nを1だけインクリメントする(ステップS409)。
【0086】
次に、撮像制御部14は、撮像回数nが撮像情報によって指定される撮像箇所数と一致しているか否かを判定する(ステップS410)、撮像回数nが撮像箇所数と一致していない場合には、被検査物移動部18により被検査物を移動し(ステップS411)、ステップS406からステップS410の処理を繰り返す。一方、撮像回数nが撮像箇所数と一致した場合には、追加測定箇所があるか否かを判定する(ステップS412)。追加測定箇所がない場合には、画像処理部17によって、画像処理を行い(ステップS414)、検査処理を終了する。一方、追加測定箇所がある場合には、特性測定部15により、追加測定箇所の測定を行う(ステップS413)。ステップS413においては、撮像は行わない。その後、画像処理を行い(ステップS414)、検査処理を終了する。
【0087】
なお、測定箇所選択方法として「均等」が選択され、撮像箇所数/測定箇所数=1である場合には、常に撮像と同期して測定する。したがって、ステップS406及びステップS408は不要となる。この場合、測定する度に測定データを判断し、測定箇所数分の測定データを取得できた時点で測定を終了し、撮像が終了しても測定データが足りなかったときには撮像同期無しで追加測定する。あるいは、撮像が終了したところで測定箇所数分の測定データを取得できているか確認し、測定データが足りなかったときには撮像同期無しで追加測定する。
【0088】
このように、第3の実施形態の検査装置によれば、あらかじめサムネイルを取得することで測定部位が存在しない箇所の撮像及び測定をすることがなくなるので、より測定時間を短縮し、メモリ容量も削減することができるようになる。
【0089】
(第4の実施形態)
次に、本発明による第4の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、第3の実施形態と同じ構成要素には同一の参照番号を付して説明を省略する。
【0090】
図12は、本発明による第4の実施形態の検査装置の構成を示すブロック図である。本実施形態の検査装置は、条件決定部12と、測定制御部13と、撮像制御部14と、特性測定部15と、撮像部16と、画像処理部17と、被検査物移動部18と、サムネイル取得部19とを備える。本実施形態の検査装置は、第3の実施形態の検査装置(図7参照)と比較して、検査情報取得部11を備えない点で相違する。
【0091】
サムネイル取得部19は、被検査物の撮像及び測定を行う前に、撮像部16により撮像領域を撮像してサムネイルを取得し、測定制御部13及び撮像制御部14に出力するとともに、取得したサムネイルを基に検査情報を生成し、条件決定部12に出力する。この場合、検査情報には、例えば、ホワイトバランス(WB)調整後の標本の各分割撮像領域42の平均色情報が含まれる。検査情報の一例を表8に示す。なお、WB調整後の標本の各分割撮像領域42の平均色情報の代わりに、WB調整後の標本の各測定部位存在領域44の平均色情報としてもよい。
【0092】
【表8】

【0093】
また、検査情報に染色濃度及びWB調整後の標本の各分割撮像領域42の平均色情報が含まれるため、測定情報に含まれる測定箇所選択方法の内容に、この情報に基づいて「色相が赤の部分」を例えばCrが所定値以上の部分として判別したり、「濃度が濃い部分」を例えばYが所定値以下の部分として判別することで指定することもできる。測定情報の一例を表9に示す。
【0094】
【表9】

【0095】
第4の実施形態の動作は、図11に示す第3の実施形態の動作と比較して、検査情報を取得する処理(ステップS401)が不要となる。その後の動作は同じである。
【0096】
このように、第4の実施形態の検査装置によれば、サムネイル取得部19がサムネイルから検査情報を生成するため、ユーザによる検査情報の入力が不要となり、完全に自動化することができるようになる。
【0097】
ここで、第3の実施形態の検査装置を顕微鏡に適用した顕微鏡システムの構成を図13に示す。顕微鏡システムは、ユーザインタフェース21と、ホストシステム22と、制御コントローラ23と、カメラユニット制御部24と、測定ユニット制御部25と、フォーカス検出ユニット制御部26と、レボルバユニット制御部27と、光源ユニット制御部28と、ステージユニット制御部29と、XY駆動制御部30と、Z駆動制御部31と、顕微鏡32とを備える。
【0098】
ユーザインタフェース21は検査情報取得部11に対応する。ホストシステム22は、例えばPCであり、条件決定部12及び画像処理部17に対応する。制御コントローラ23は、測定制御部13及び撮像制御部14に対応する。カメラユニット制御部24、フォーカス検出ユニット制御部26、レボルバユニット制御部27、及び光源ユニット制御部28は、撮像部16及びサムネイル取得部19に対応する。測定ユニット制御部25は、特性測定部15に対応する。ステージユニット制御部29、XY駆動制御部30、及びZ駆動制御部31は、被検査物移動部18に対応する。
【0099】
顕微鏡32は、側面視略コ字状の顕微鏡本体34と、顕微鏡本体34の上部に載置された鏡筒部33とを備える。鏡筒部33は、カメラユニット331と、双眼ユニット332と、フォーカス検出ユニット333と、測定ユニット334とを備える。カメラユニット331は、対物レンズ342の視野範囲の標本像を結像するCCDやCMOS等の撮像素子を備えて構成され、被検査物を撮像し、被検査物画像をホストシステム22に出力する。双眼ユニット332は、被検査物343を目視観察できるように観察光を導く。測定ユニット334は、被検査物343のスペクトル情報を取得し、ホストシステム22に出力する。
【0100】
顕微鏡本体34は、対物レンズ342を保持するレボルバユニット341と、被検査物343が載置されるステージユニット344と、顕微鏡本体34の底部後方に内設された光源ユニット345とを備える。
【0101】
レボルバユニット341が保持するレボルバは、顕微鏡本体34に対して回転自在であり、対物レンズ342を被検査物343の上方に配置する。対物レンズ342は、レボルバに対して倍率(観察倍率)の異なる他の対物レンズとともに交換自在に装着されており、レボルバの回転に応じて観察光の光路上に挿入されて被検査物343の観察に用いる対物レンズ342が択一的に切換えられるようになっている。
【0102】
ここで、対物レンズ342の光軸方向をZ方向とし、Z方向と垂直な平面をXY平面として定義すると、ステージユニット344のステージは、XYZ方向に移動自在に構成されている。すなわち、ステージは、モータ(図示せず)及び該モータの駆動を制御するXY駆動制御部30によってXY平面内で移動自在である。XY駆動制御部30は、XY位置の原点センサ(図示せず)によってステージのXY平面における所定の原点位置を検知し、この原点位置を基点としてモータの駆動量を制御することによって、被検査物の観察視野を移動させる。
【0103】
また、ステージは、モータ(図示せず)及び該モータの駆動を制御するZ駆動制御部31によってZ方向に移動自在である。Z駆動制御部31は、Z位置の原点センサ(図示せず)によってステージのZ方向における所定の原点位置を検知し、この原点位置を基点としてモータの駆動量を制御することによって、所定の高さ範囲内の任意のZ位置に被検査物を焦準移動させる。
【0104】
制御コントローラ23は、ホストシステム22の制御に基づいて、顕微鏡装置32を構成する各部の動作を統括的に制御する。例えば、制御コントローラ23は、レボルバを回転させて観察光の光路上に配置する対物レンズ342を切換える処理や、切換えた対物レンズ342の倍率等に応じた光源の調光制御や各種光学素子の切換え、あるいはXY駆動制御部30やZ駆動制御部31に対するステージの移動指示等、被検査物343の観察に伴う顕微鏡32の各部の調整を行うとともに、各部の状態を適宜ホストシステム22に通知する。
【0105】
また、制御コントローラ23は、フォーカス検出ユニット333を制御して顕微鏡32のフォーカス状態に関する情報を取得し、その結果に応じてZ駆動制御部31に対するステージの移動指示を行うことで被検査物に自動的にピントを合わせるオートフォーカス制御を実現する。
【0106】
さらに、制御コントローラ23は、ホストシステム22の制御に基づいて、カメラユニット331の自動ゲイン制御のON/OFF切換、ゲインの設定、自動露出制御のON/OFF切換、露光時間の設定等を行ってカメラユニット331を駆動し、カメラの撮像動作を制御する。また、測定ユニット334によるスペクトルの取得の際の測定視野や測定箇所、測定数、測定の際の積算回数や使用するマルチスペクトルセンサのチャネル数、フィルタ設定等を制御する。
【0107】
図14は、顕微鏡システムの光学構成の概略を示すブロック図である。光源ユニット345の光源3451から射出された照明光は、赤外カットフィルタ3452とコンデンサレンズ3453とを通過して被検査物343に照射され、その透過光が観察光として対物レンズ342に入射する。
【0108】
対物レンズ342を通過した光はハーフミラー3331によって分割され、一方はフォーカス検出回路3332に導入され、他方は双眼ユニット332に導入される。双眼ユニット332に導入された光は、ハーフミラー3321及び3322によって接眼レンズ3323へ照射され、被検査物343の被検査画像(標本像)が検鏡者に目視観察される。
【0109】
また、双眼ユニット332に導入された光は、ハーフミラー3321及び3322によってカメラユニット331へ導入される。カメラユニット331へ導入された光は、結像レンズ3311を介してカメラ結像面3312に結像される。
【0110】
また、双眼ユニット332に導入された光は、ハーフミラー3321によって測定ユニット334へ導入される。測定ユニット334へ導入された光は、反射ミラー3341及び結像レンズ3342により結像面3343で結像され、結像面3343上には視野枠が設けられ、結像面3343中の所定の視野の光のみを導く構成となっている。これにより、結像面3343の視野枠の変更(例えば、100μm×100μmから400μm×400μmへの変更)に対応可能となる。結像面3343中の所定の視野の光はその後光拡散デバイス3344(例えば、光ファイバ又は積分球)により、結像面3343の光を混合又は拡散して均一化され、マルチスペクトルセンサ3346に照射される。なお、マルチスペクトルセンサ3346の前には赤外カットフィルタ3345を挿脱可能なように配置することも可能である。
【0111】
マルチスペクトルセンサ3346は、複数(例えば、4〜20色)のカラーセンサで構成されている。使用するカラーセンサ数、すなわち計測スペクトルチャネル数については、被写体が分光的に細かい特性を持っている場合にはチャネル数を多くし、高い測定精度を必要としない場合にはチャネル数を少なくして計測時間を短縮する。測定スペクトルチャネル数の情報は、条件決定部から出力される測定情報に含まれる。
【0112】
上述の実施形態では、本発明による検査装置を病理標本の検査に用いる例について説明したが、他の検査にも用いることができるのは勿論である。例えば、実装基板の検査に用いることができる。具体的には、所定時間通電した基板(被検査物)を検査装置にセットし、分割撮像した高解像画像に基づいて実装不良を画像で検出するとともに、各所定部品近辺の温度上昇を温度センサで測定して不良を検出することができる。このときの検査情報及び測定情報の一例を表10及び表11に示す。上述の実施形態と同様に、データベースにより、検査情報に応じた測定情報を決定する。例えば、薄い基板は速度優先で温度測定する、基板材質や厚みなどに合わせて測定箇所や条件を変える、基板の用途によっては測定条件を厳しくしたり緩和したりする、部品の大きさに合わせて測温エリアサイズを変える、部品実装密度に応じて測温回数や測温間隔を変えるといったことが可能である。
【0113】
【表10】

【0114】
【表11】

【0115】
また、他の例としては、本発明による検査装置を製品の傷や色の評価に用いることができる。具体的には、製造ライン上を移動する製品(被検査物)を一定の光源により照射し、製品を透過、又は反射する光のスペクトラムを測定し、製品の傷又は色の違い等を検出する。このときの検査情報及び測定情報の一例を表12及び表13に示す。上述の実施形態と同様に、データベースにより、検査情報に応じて測定情報を決定する。例えば、塗料と照明の組み合わせを変えることでより検査しやすくする、求める精度に応じて測定回数、波長、積分時間を切り換えることで効率的な測定を行うことが可能である。
【0116】
【表12】

【0117】
【表13】

【0118】
このように、本発明の趣旨及び範囲内で、多くの変更及び置換ができることは当業者に明らかである。従って、本発明は、上述の実施形態によって制限するものと解するべきではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。
【符号の説明】
【0119】
11 検査情報取得部
12 条件決定部
13 測定制御部
14 撮像制御部
15 特性測定部
16 撮像部
17 画像処理部
18 被検査物移動部
19 サムネイル取得部
21 情報取得部
22 ホストシステム
23 制御コントローラ
24 カメラユニット制御部
25 測定ユニット制御部
26 フォーカス検出ユニット制御部
27 レボルバユニット制御部
28 光源ユニット制御部
29 ステージユニット制御部
30 XY駆動制御部
31 Z駆動制御部
32 顕微鏡
33 鏡筒部
34 顕微鏡本体
121 データベース
331 カメラユニット
332 双眼ユニット
333 フォーカス検出ユニット
334 測定ユニット
341 レボルバユニット
342 対物レンズ
343 被検査物
344 ステージユニット
345 光源ユニット
3311,3342 結像レンズ
3312 カメラ結像面
3321,3322,3331 ハーフミラー
3323 接眼レンズ
3332 フォーカス検出回路
3341 反射ミラー
3343 結像面
3344 光拡散デバイス
3345,3452 赤外カットフィルタ
3346 マルチスペクトルセンサ
3451 光源
3453 コンデンサレンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査物を撮像する撮像部と、
前記被検査物の特性を測定する特性測定部と、
前記被検査物に関する検査情報を取得する検査情報取得部と、
前記検査情報に対応する前記被検査物の測定条件に関する測定情報を決定する条件決定部と、
前記撮像部による撮像を制御する撮像制御部と、
前記測定情報に基づいて前記特性測定部による測定を制御する測定制御部と、
を備えることを特徴とする検査装置。
【請求項2】
前記条件決定部は、前記検査情報に対応する前記被検査物の撮像条件に関する前記撮像情報を決定し、
前記撮像制御部は、前記撮像情報基づいて前記撮像部による撮像を制御する
ことを特徴とする、請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記特性測定部は、前記被検査物の特性を複数箇所測定することを特徴とする、請求項1又は2に記載の検査装置。
【請求項4】
さらに、前記被検査物を移動させる被検査物移動部を備え、
前記撮像制御部は、撮像領域を複数の分割撮像領域に分割し、前記撮像部に対して、前記分割撮像領域ごとに撮像するように制御し、かつ、
前記被検査物移動部に対して、前記撮像部が前記分割撮像領域の撮像をするたびに、次の分割撮像領域に被検査物を移動するように制御し、
前記測定制御部は、前記特性測定部に対して、前記撮像制御部の撮像に選択的に同期して測定するように制御する
ことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の検査装置。
【請求項5】
前記測定情報は、測定箇所数の情報を含み、
前記測定制御部は、前記測定箇所数分の測定データを取得できなかった場合には、前記撮像制御部の撮像が終了した後に、前記特性測定部に対して、測定箇所数分の測定データを取得できるまで追加測定するように制御する
ことを特徴とする、請求項4に記載の検査装置。
【請求項6】
さらに、被検査物を撮像してサムネイルを取得するサムネイル取得部を備え、
前記撮像制御部は、前記サムネイルから被検査物における測定部位の位置情報を取得し、前記撮像部に対して、前記分割撮像領域のうち前記測定部位が存在する測定部位存在領域のみ撮像するように制御し、
前記被検査物移動部に対して、前記撮像部が前記測定部位存在領域の撮像をするたびに、前記撮像部が次の測定部位存在領域を撮像できるように被検査物を移動するように制御する
ことを特徴とする、請求項4又は5に記載の検査装置。
【請求項7】
前記検査情報取得部に代えて、
被検査物を撮像してサムネイルを取得し、該取得したサムネイルから前記検査情報を生成する前記サムネイル取得部を備える
ことを特徴とする、請求項6に記載の検査装置。
【請求項8】
前記サムネイル取得部が生成する前記検査情報は、前記サムネイルの色情報を含むことを特徴とする、請求項7に記載の検査装置。
【請求項9】
前記測定情報は、撮像箇所からランダムに選択した場所を測定箇所とするか、又は撮像箇所から均等に離散的に選択した場所を測定箇所とするかの情報を含んでいることを特徴とする、請求項8に記載の検査装置。
【請求項10】
前記被検査物は染色された標本であり、前記特性測定部は前記標本の分光特性を測定することを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の検査装置。
【請求項11】
前記特性測定部は、マルチスペクトルセンサを有することを特徴とする、請求項10に記載の検査装置。
【請求項12】
前記測定部による測定視野は、前記撮像部による撮像視野の一部であることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の検査装置。
【請求項13】
前記撮像情報は、撮像倍率又は撮像箇所数のいずれかの情報を含むことを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の検査装置。
【請求項14】
前記検査情報は、被検査物の作成施設、染色方法、染色色素、臓器種類、厚み、画像情報のいずれかの情報を含むことを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項に記載の検査装置。
【請求項15】
前記測定情報は、前記特性測定部が有するマルチスペクトルセンサの使用するチャネル、該マルチスペクトルセンサの積分時間、該マルチスペクトルセンサの感度、積算回数のいずれかの情報を含むことを特徴とする、請求項1から14のいずれか一項に記載の検査装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−78156(P2012−78156A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−222242(P2010−222242)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】