説明

検版システム及び製版装置

【課題】高精度な刷版検査を行うことのできる検版システムを提供する。
【解決手段】上記課題を解決するための検版システムは、高階調画像データとして刷版の版面画像を取得する撮像装置50と、前記撮像装置50によって取得された版面画像データにおける階調に対して予め定められたシャドウとハイライトとの間の階調を切り出し、当該切り出した階調によって濃淡が表される版面画像データを低階調画像データに変換する画像作成コンピュータ10aと、前記変換された低階調画像データと、製版時に使用された入稿面の画像データとを比較して両画像データの差分を検出し、当該差分に基づいて刷版の良否を判定する判定コンピュータ10bとを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は検版システム及び製版装置に係り、特に紙面印刷を行う前の段階における刷版の良否を検査する場合に好適な検版システム及びこのシステムを搭載した製版装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、製版された刷版の検版は、作業員が目視により刷版表面の傷や汚れを検査するというものであった。そして、版面に描写された入稿面の良否判定は、紙面印刷が成された後に行われるということが通例であった。
【0003】
このような実状の下、特許文献1には、製版された刷版の版面画像を取得して、この版面画像とCIP3(International Cooperation for Integration of Prepress, Press and Postpress)に含まれる画像データとを比較することで、刷版の検査を紙面印刷前に行うという技術的思想が提案されている。
【0004】
特許文献1に開示されている検版システムは、製版装置に付随するものであり、製版装置によって作成された刷版が搬送されるルート上にスキャナを備え、このスキャナによって搬送されてくる刷版の版面画像データを取得する。そして、この版面画像データとCIP3に含まれる標準フォーマットであるPPF(Print Production Format)における低解像度の画像データとを比較し、両画像データの差分を検出するというものである。
【特許文献1】特開2004−42467号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されているような検版システムを用いれば、刷版を検査するための労力を軽減することができるようにも考えられる。しかし、上記検版システムを実用レベルで使用するとなると、種々の問題が生じることとなる。まず第1に、刷版は紙面と比較して白と黒の濃淡差が少なく、製版される版の種類によってもその差に多寡が生じるため、版面から取得する画像データにおける描画部分の形状判定が困難となるということがある。また第2には、CCD等によるデジタル画像データの取得には、撮像対象物から反射される光の量が一定値以上となる必要があり、この光量の多寡により画像データの取得時間の長短も左右される。ところが、版の種類によっては特定波長の光に対して反応しやすいものもあり、強い光を使用することができないということがある。さらに第3に、版面画像データの比較対象としているCIP3の画像データは低解像度のデータであるため、紙面に印刷されるべき文字単位での正否といった詳細な判定はすることができないということがある。
【0006】
そこで本発明では第1に、白と黒の濃淡差の少ない刷版であっても、明確な版面画像データを取得することができ、高い精度で検版を行うことができる検版システムを提供することを目的とする。また本発明では第2に、刷版に対してダメージを与えることなく、版面画像の撮像に必要な光量を確保することが可能な検版システムを提供することを目的とする。また本発明では第3に、版面における文字レベルでの比較検査を可能とする高解像度の検査を可能とし、かつ検査時間を比較的短時間とすることを可能とする検版システムを提供することを目的とする。さらに、本発明では、前述したような検版システムを搭載した製版機を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記第1の目的を達成するためには、取得する画像データの階調(入力階調)を上げる必要がある。しかし、単純にデータ容量を増やして階調を上げたのでは、画像比較を行う際のデータ量が増大し、検査時間が長くなってしまうことが考えられる。そこで、上記第1の目的を達成するための本発明に係る検版システムは、高階調画像データとして刷版の版面画像を取得する撮像手段と、前記撮像手段によって取得された版面画像データにおける階調に対して予め定められたシャドウとハイライトとの間の階調を切り出し、当該切り出した階調によって濃淡が表される版面画像データを低階調画像データに変換する画像変換手段と、前記変換された低階調画像データと、製版時に使用された入稿面の画像データとを比較して両画像データの差分を検出し、当該差分に基づいて刷版の良否を判定する判定手段とを有することを特徴とする。
【0008】
また、上記第2の目的を達成するためには、上記のような特徴に加え、前記撮像手段による撮像領域の近傍に、前記刷版を構成する版材の感光領域外の波長の光を照射する光源を設け、前記撮像手段はモノクロ画像データを取得可能な撮像手段とし、受光波長領域を前記光源の照射波長領域とを合わせるようにすると良い。このような構成とすることにより、光源から照射される光量を増大させた場合であっても、版材が反応し、かぶりを生じる虞が無い。また、撮像手段によって取得する画像データをモノクロ画像データとすることにより、取得する画像データが、波長限定による色調変化の影響を受けることが無くなる。また、撮像手段の受光波長と光源の照射波長を合わせることにより、画像データの取得が可能となる。さらに、光源から照射する光量を多くすることができるため、撮像に要する時間を短縮することができる。
【0009】
また、上記第2の目標を達成するための検版システムとしては、入稿面の画像データに従って形成された刷版の版面の画像データを撮像手段を介して取得し、判定手段を介して前記取得した画像データと製版に用いられた画像データとの差分を検出して刷版の良否を判定する検版システムであって、前記撮像手段による撮像領域の近傍に、前記刷版を構成する版材の感光領域外の波長の光を照射する光源を設け、前記撮像手段はモノクロ画像データを取得可能な撮像手段とし、受光波長領域を前記光源の照射波長領域とを合わせたことを特徴とするものであっても良い。
【0010】
上記のような特徴を有する検版システムでは、前記撮像手段に広角レンズを設け、前記広角レンズの影響による取得画像の歪みを補正する歪み補正手段を備えるようにすると良い。このような構成とすることにより、撮像手段を撮像領域に近付けた場合であっても、広い撮像範囲を確保することができる。また、撮像手段を撮像領域に近付けることによれば、撮像時の光量が少ない場合であっても撮像が可能となる。換言すれば、撮像時に得られる光量を増すことができ、画像取得時間を短縮することができる。また、歪み補正手段を備えることにより、広角レンズを介して撮像を行った場合であっても、取得した画像データと実版面との適合性を高く保つことが可能となる。
【0011】
また、上記第3の目的を達成するためには、上記特徴に加え、1つの刷版の版面を複数の撮像領域に分割し、各撮像領域毎に対応させた撮像手段と、当該撮像手段に対応した判定手段とを備え、前記入稿面の画像データは製版に直接使用される解像度を有する画像データを用いると共に、前記撮像手段により取得される画像データの解像度は150dpi以上のものを用いて両画像データの差分を検出する構成とすると良い。比較対象とする画像データを製版に直接使用される解像度を有する画像データ(例えば1bit TIFFデータ)と、150dpi以上の画像データとすることで、版面における詳細な形状比較が可能となる。例えば新聞紙面における活字程度の大きさのものを印刷するパターンであれば、その外形形状まで比較することができる。また、1つの刷版の版面を複数の撮像領域に分割し、各撮像領域毎に対応させた撮像手段によって撮像することで、高解像度での画像データ取得時間を短縮することが可能となる。また、各撮像手段に対応した判定手段により画像データ同士の比較判定を実行するようにすることで、容量の大きな画像データであっても、短時間で処理することが可能となる。
【0012】
また、本発明に係る製版機は、上記いずれかの特徴を有する検版システムを、製版ラインに組み込んだことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
上記のような特徴を有する検版システムによれば、濃淡差の少ない刷版であっても、精度の高い差分検出及び刷版の良否の判定を行うことができる。また、光源から照射される光の波長を調整した場合には、刷版にかぶりを生じさせることなく十分な光量を得ることができ、画像取得(撮像)に要する時間を短縮することができる。また、比較する画像データを高解像度のものとし、各分割領域単位で個別に差分検出を行うことにより、高精度な差分検出を短時間で行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の検版システム及び製版装置に係る実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態は、本発明に係る一部の形態であり、本発明の技術的範囲は以下の形態のみに拘束されるものでは無い。
【0015】
まず、図1を参照して本発明に係る検版システムの構成について説明する。本実施形態の検版システム100は、判定装置(コンピュータ)10と、当該コンピュータ10に接続されたサーバ20、表示装置30、入力装置40、及び撮像装置(撮像手段)50とを基本とする。そして、このような基本構成を有する検版システム100は、図1に概略構成を示すような製版装置(CTP:computer to plate)200に適用される。
【0016】
ここで、CTP200は、描画部210、現像・定着・溶出部(以下、現像部220と称す)、バッファ部230、及びパンチ・折り曲げ部(以下、折り曲げ部240と称す)から成ることを基本とする。なお、CTP200で製版される版材は一般に、アルミ基板と、このアルミ基板の上層に設けられた感光層から成り、前記感光層を加工されることで製版が成される。前記描画部210では、詳細を図示しない版台上に配置された版材の描画部分あるいは非描画部分に対してレーザ光を照射して感光させる。前記現像部220では、露光した版材を現像液に晒し、所望するパターンの形成を行う。前記バッファ部230は、現像された刷版を搬送する部位である。前記折り曲げ部240では版材に対し、図示しない版胴に設けられた基準ピン(レジスタピン)の配置に合わせた切欠きや孔をあけ、版材の天地側に設けられたアンビル(金型)に沿って2段または1段折りが成される。
【0017】
概略構成を説明した本実施形態の検版システム100において前記撮像装置50は、前記CTP200における前記バッファ部230に配置される。撮像装置50の具体例としては、例えばモノクロのラインスキャンカメラや、CIS(Contact Image Sensor)等とすると良い。ところで、本実施形態での刷版検査の目的は、版面に形成された文字や、微細な傷に関し、製版に使用される画像データとの差分を検出しこの差分に基づいた判定を行うということである。そうした場合、例えば新聞紙面に印刷される文字の形状の相違(差分)を検出するために十分とされる解像度は、150dpi以上となる。例えば解像度が100dpi程度の場合には取得画像の細部(文字部)が不鮮明となってしまうからである。そして、紙面印刷によく使用される刷版のサイズは1030mm×800mmであるため、これに対応した解像度を有するカメラを選定する必要がある。
【0018】
汎用のラインスキャンカメラでは、例えば5000画素、7500画素程度の画素数のセンサ素子を有するものを選定すれば良い。ところで、1つの撮像装置によって取得する画像データの解像度が増した場合、画像データ取得に要する時間も増加する。画像データ取得に要する時間は、画像データの縦横に及ぶ画素数に対応して増加するため、解像度を2倍とした場合には単純計算で約4倍もの時間を要することとなる。
【0019】
したがって本実施形態では、1つの刷版の版面を複数の撮像領域(図1では2つ)に分割し、各撮像領域に対応させた複数(図1では2台)の撮像装置50を設ける構成とした。このような構成とすることにより、取得する画像データの解像度を増やした場合であっても、撮像装置1台あたりの負担を軽減することができる。このため、高解像度の画像データを取得する際の画像データ取得時間の短縮化を図ることが可能となる。
【0020】
また、本実施形態における撮像装置50には、図示しない広角レンズを採用し、版面からレンズ(撮像装置50)までの距離を短く設定するようにした。広角レンズを用いることによれば、版面までの距離を短くした場合であっても、所望する撮像領域をカバーすることが可能となる。また、撮像装置50と版面との距離を近づけることで、センサ素子に対する受光量を稼ぐことができ、撮像に要する時間を短縮することが可能となる。なお、光量の多寡は被写体との距離の2乗に比例する。ここで、広角レンズを使用して撮像を行う場合は特に、撮像した画像データに生じる歪みや光量変化が顕著となるが、この歪みや光量変化については、撮像装置50内、あるいは後述するコンピュータ10内に補正プログラム等を組み込むことで解消することができる。
【0021】
また、本実施形態における撮像装置50では、高い階調度で画像データを取得することができるものとすると良い。例えば後述するコンピュータ10において処理する画像データの階調度が8bit階調(256階調)である場合には、撮像装置50による取得画像データの階調度は12bit階調(4096階調)程度とすれば良い。このように、取得画像データの階調幅を広げておくことで、シャドウとハイライトとの間の階調(中間調)が少ない場合であっても、取得画像データの濃淡を表現することが可能となる。
【0022】
なお、バッファ部230に排出された版材の表面には、印刷に使用される画像に対応した凹凸面が形成されているため、ここで撮像された版面画像に基づいて差分を検出して刷版が正常であるか異常であるかを判定すれば、その後の工程を無駄に行う必要が無くなる。図2に、撮像装置100の配置構成の詳細、及びコンピュータ10との対応関係を示す。
【0023】
前記バッファ部230には、複数の搬送コンベア232a,232bが配置されており、版面に入稿面のパターンが形成され、前記現像部220(図1参照)から排出された刷版300が、折り曲げ部240に向けて搬送される。また、このような構成のバッファ部230には、複数配置されている搬送コンベア232a,232b間の少なくとも一箇所に、サクションローラ234が配置されている。そして、前記撮像装置50の焦点距離は、前記サクションローラ234の外周部に対して刷版300が配置された際の版面までの距離に設定されている。サクションローラ234によって刷版300を吸引しつつ搬送することで、可撓性を有する刷版であっても撮像領域での浮き上がりを防止することができるからである。このような構成により、撮像装置50におけるレンズから版面までの距離を一定に保つことが可能となり、取得される版面画像データの歪み等を抑制することが可能となる。
【0024】
前記サクションローラ234の上流側近傍には、透過型光学センサ54が備えられ、刷版300が当該透過型光学センサ54の設置位置を通過した際に、前記撮像装置50による版面画像データの取得作業が開始されるように構成されている。また、前記サクションローラ234には、ロータリーエンコーダ56が備えられており、刷版300の通過状態を検知し得るようにしている。そして、前記サクションローラ234の近傍には、版面画像データを取得する際に必要とされる光量を提供するための光源52が備えられている。刷版300の作成には、版材の種類によって種々の波長領域のレーザ光を用いた処理が成される。ここで、光源の波長を前記レーザ光の波長(特定波長)以外の領域の波長に設定するようにすれば、版材にかぶり(光かぶり)を生じさせることなく光源の光量を増加させることが可能となる。例えば、殆どのアナログ版や、ヴァイオレットレーザCTP版の場合、感光層は410nm以下の波長の光に反応することが知られている。よって、このような刷版300の版材を使用する場合には、例えば450nm以下の波長をカットした光を照射する光源52を備えるようにすれば良い。
【0025】
また、このような構成とした場合には、前述した撮像手段50の受光波長領域と光源52からの照射光の波長領域とを合わせるようにする必要がある。このような構成とすることにより、刷版300にかぶりを生じさせることなく光量を稼ぐことができると共に、撮像時間の短縮を図ることができる。なお、本実施形態では撮像装置50による取得画像データをモノクロとし、版面の濃淡と描画部の形状とを得るようにしている。したがって、光源52からの波長を特定することによって生じ得る色調変化により、画像データの判定等に悪影響が生じることが無く、高い精度で差分検出を行うことが可能となる。
【0026】
前記表示装置30は、詳細を後述するコンピュータ10等による処理の内容、処理によって得られた結果等を作業者が目視可能なように表示するためのディスプレイであり、一種の警告手段でもある。また、具体的には図示していないが、音声出力装置を備え、表示画像と共に音声を出力するようにしても良い。さらに、本実施形態における検版システム100では、表示装置30に替えて音声のみを出力する音声出力装置を設置するようにしても良い。
【0027】
前記入力装置40は、詳細を後述するコンピュータ10による検版処理に必要とされる各種データ等を入力するための手段である。図1、図2には、入力装置40としてキーボード型の形態のものを示しているが、入力装置40は、前述した表示装置30を兼用するタッチパネル型のものとしても良い。
【0028】
前記サーバ20は、製造される刷版300の版面に形成されるパターン(入稿画像データ)を保存、出力すると共に、後述するコンピュータによって判定された検査結果を統括的に管理することができる統括コンピュータである。サーバ10に保存された入稿画像データ(例えば1bit TIFFデータ)は、刷版製造時には、前記CTP200へ出力されると共に、後述するコンピュータ10にも出力される。このように、基本となるデータを共有することで、中間段階で得られる画像データとの比較が可能となるのである。
【0029】
前記コンピュータ10について本実施形態では、比較画像データの作成(変換)処理を行うコンピュータ(以下、画像作成コンピュータ10aと称す)と、画像データの比較判定処理を行うコンピュータ(以下、判定コンピュータ10bと称す)とを備えるようにしている。このような形態とすることで、撮像装置50によって取得された画像データから画像の比較判定に使用可能な判定画像データを作成する処理と、判定画像データとサーバから入力される入稿画像データとを比較する処理とを個別に同時進行で行うことが可能となり、比較判定に要する処理時間の短縮化を図ることが可能となる。また、本実施形態の検版システム100では、画像作成コンピュータ(画像変換手段)10a、及び判定コンピュータ(判定手段)10bを各撮像装置50毎に備えるようにすることで、画像データ取得時、及び画像比較処理時の演算速度を向上させることが可能となる。
【0030】
それぞれのコンピュータ(画像作成コンピュータ10a及び判定コンピュータ10b)の概略構成は、外部データを入力するためのインターフェース12a,12bと、各種演算処理を行うためのCPU14a,14b、及び各種処理を行うための演算プログラム等が入力されたソフトウェアや、各種処理によって得られたデータ等が保存される記憶手段としてのハードディスク16a,16bといったものである。なお、前記画像作成コンピュータ10aでは、撮像装置50用のインターフェースとして、フレームグラバーボード18aを採用すると良い。
【0031】
次に、上記のような構成の検版システムにおける版面画像の取り込みから、判定までの処理について図3を参照して説明する。
まず、現像が終了し(S100)、搬送コンベア232aによって搬送される版材(刷版300)が透過型光学センサ54の配置位置に達すると、透過型光学センサ54から画像作成コンピュータ10aに対して画像取込開始信号が出力される。
【0032】
透過型光学センサ54を通過し、刷版300の先端がサクションローラ234に到達すると、刷版300はサクションローラ234に吸引吸着され、撮像位置での浮き上がりが防止される。前記サクションローラ234の駆動をフリーにした場合、サクションローラ234は搬送コンベア232a,232bによる刷版の押出し力、あるいは引込み力に伴う刷版300の移動に倣って回転する。サクションローラ234が回転すると、サクションローラ234に取り付けられたロータリーエンコーダ56が作動し、予め定められたピッチ回転する毎に信号を出力する。ロータリーエンコーダ56から出力された信号は、画像作成コンピュータ10aに入力される。画像作成コンピュータ10aは、前記ロータリーエンコーダ56から出力された信号に基づいて、撮像装置50に画像取得信号を出力する。画像取得信号が入力された撮像装置50は、画像取得信号を受ける毎に1ライン、あるいは刷版300の移動距離分の版面画像を撮像する(S110)。
【0033】
撮像装置50によって取得(撮像)されたライン毎の画像は、予め入力されたLUT(Look Up Table)を基に、歪み及び濃度の補正が成される。ここで、歪み補正とは、上述したような広角レンズの影響により画像データに生じた歪みの補正である(S120)。そして濃度補正とは、12bit階調で取得された画像データに対して予め定められた、あるいは表示手段に表示された画像データから作業者が任意に選択した、シャドウとハイライトとの間の階調を切り出し、当該切り出した階調部分を低階調度データ(例えば8bit階調)に変換し、この階調に合わせた画像データを作成する処理である(S130)。このような処理を行うことにより、低階調の画像データでありながら、中間調の幅を広く採ることができ、版面における加工部と非加工部との境界を精度良く表すことが可能となる。すなわち、入稿画像データとの差分検出の精度を向上させることができるのである。また、比較処理に使用する画像データの容量を小さくすることができるため、画像データの中間調の幅を広げつつ、処理速度の低下を避けることができる。こうした補正機能(プログラム)は、上述したインターフェースとしてのフレームグラバーボード18aに持たせることも可能であるし、ハードディスクに収容されるソフトウェアに組み込み、これを起動させて行うようにしても良い。
【0034】
上記のような処理を画像取得信号単位で繰返し実行し、搬送コンベア232a,232bによって搬送される刷版300の後端部が前記透過型光学センサ54を通過した時点、あるいは前記ロータリーエンコーダ56から出力される信号数が定量に達した時点で、撮像手段50による版面画像の画像データ取得は終了される。その後、画像作成コンピュータ10aにより、歪み補正及び濃度補正が成されて合成された判定画像データが、判定コンピュータ10bへと出力される(S140)。
【0035】
判定画像データが入力された判定コンピュータ10bでは、入力された判定画像データのパターンマッチ、及びサーバ20から入力された入稿画像データとのマッチングが成された後に、前記2つの画像データ(判定画像データと入稿画像データ)の比較判定処理が成される。ここで、判定画像データのパターンマッチとは、画像作成コンピュータ10aから入力された判定画像データを一定の規格条件に合わせた状態に補正する処理を行うことである。例えば入力された判定画像データの上下の位置、状態、左右のバランス、及び傾き等を一定の条件に合わせて補正するのである(S150)。また、判定画像データと入稿画像データとのマッチングとは、比較される2つの画像データの位置や大きさを合わせる処理を行うことである。例えば2つの画像データ間で対応関係にある少なくとも2つの点を基準点として定めておき、この基準点同士が重なり合うように画像データ全体の位置や大きさを調整する処理である(S160)。
【0036】
また、比較判定処理とは例えば、エッジファインディング、濃度判定といったものであり、それぞれの判定に関しては、予め定められた閾値に基づいて正常、あるいは異常の判定が成される。ここで、エッジファインディングとは、比較対象とする2つの画像データを合成し、2つの画像データ間における文字や図形の配置等について、それぞれの面積比、占有率等に基づく差分を検出する処理である。具体的には、画像データ中における文字や図形の形状自体の相違(差分)を検出するためのものである(S170)。検出された差分に対する正常、異常の判定は、上述したように、予め定められた閾値に従うものとされ(S180)、差分が前記閾値の範囲内にある場合には、「正常」すなわち作成された刷版(版面画像)は良品である旨の判定が成され、後述する濃度判定へと移行する。一方、差分が前記閾値を超える場合には「異常」すなわち作成された刷版(版面画像)は不良品である旨の判定が成される(S220)。
【0037】
また、濃度判定とは、前記合成した2つの画像データにおいて、濃度差が生じている部分を検出し、この濃度差が適正であるか否かを判定する処理である。具体的には、紙面印刷時に濃淡を表す網点の状態の良否や、版面に付着した汚れの有無の判定である(S190)。検出された濃度差の判定は、上述したように、予め定められた閾値に従うものとされ(S200)、差分が前記閾値の範囲内にある場合には、「正常」すなわち作成された刷版(版面画像)は良品である旨の判定が成される(S210)。一方、差分が前記閾値を超える場合には「異常」すなわち作成された刷版(版面画像)は不良品である旨の判定が成される(S220)。
【0038】
上記処理における判定結果、及び途中経過時における比較画像等は、前述した表示装置30に表示され、作業者による視認が可能な状態とされる。
【0039】
このような検版システム100によれば、製版された刷版300の濃淡差が少ない場合であっても、精度の高い差分検出が可能となり、比較判定の精度を向上させることができる。また、光源52から照射される光の波長を調整した場合には、撮像時の光量を増大させた場合であっても、刷版にかぶりを生じさせることがない。また、撮像時に光源52からの光量を増大させた場合には、撮像に要する時間を短縮することが可能となる。また、比較を行う画像データを従来よりも高解像度のものとしたことにより、版面の文字、図形、傷、汚れ等の正否を詳細に判定することができるようになる。さらに、版面を複数の撮像領域単位に分割し、各分割領域毎に個別に撮像、比較処理を行うようにすることで、高解像度の画像データを使用した場合であっても処理時間の短縮化を図ることができる。
【0040】
また、上記構成の検版システムにおいて、撮像装置50、光源52、透過型光学センサ54、ロータリーエンコーダ56等の配置を図4に示すような形態とすることで、狭隘なスペースであっても本システムを適用させることができる。具体的には、版面から撮像装置50までの画像取得経路にミラー58を配置し、前記画像取得経路を屈曲させ、撮像装置の配置位置を変えるのである。このような構成とした場合であっても、上述した実施形態と同様な作用効果を得ることができる。
【0041】
また、上記のような構成の検版システムを、CTP200に組み込むことによれば、製版と同時に高精度な検版を実施することができ、誤って製造された刷版が印刷工程等に介入することが無くなる。また、紙面印刷前に刷版の誤りを検出することができるため、損紙を無くすことができ、印刷に要するコストを削減することが可能となる。
【0042】
なお、撮像装置50を介して取得した版面の画像データ(判定画像データ)は、後段の印刷工程の基準データ等として利用することができる。例えば版胴に対する刷版の掛け間違いの検出等である。また、検版工程における画像データの比較判定処理、すなわちパターンマッチ以降の処理は、上記以外の既存の比較処理方法を用いても良い。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】検版システムと製版装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】検版システムの詳細構成を示す図である。
【図3】画像データの取得、比較、判定の流れを示すフローである。
【図4】撮像装置の配置形態の変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0044】
10………コンピュータ、10a………画像作成コンピュータ、10b………判定コンピュータ、12a,12b………インターフェース、14a,14b………CPU、16a,16b………ハードディスク、18a………フレームグラバーボード、20………サーバ、30………表示装置、40………入力装置、50………撮像装置、52………光源、54………透過型光学センサ、56………ロータリーエンコーダ、58………ミラー、100………検版システム、200………製版装置(CTP)、300………刷版。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高階調画像データとして刷版の版面画像を取得する撮像手段と、
前記撮像手段によって取得された版面画像データにおける階調に対して予め定められたシャドウとハイライトとの間の階調を切り出し、当該切り出した階調によって濃淡が表される版面画像データを低階調画像データに変換する画像変換手段と、
前記変換された低階調画像データと、製版時に使用された入稿面の画像データとを比較して両画像データの差分を検出し、当該差分に基づいて刷版の良否を判定する判定手段とを有することを特徴とする検版システム。
【請求項2】
前記撮像手段による撮像領域の近傍に、前記刷版を構成する版材の感光領域外の波長の光を照射する光源を設け、
前記撮像手段はモノクロ画像データを取得可能な撮像手段とし、受光波長領域を前記光源の照射波長領域とを合わせたことを特徴とする請求項1に記載の検版システム。
【請求項3】
入稿面の画像データに従って形成された刷版の版面の画像データを撮像手段を介して取得し、判定手段を介して前記取得した画像データと製版に用いられた画像データとの差分を検出して刷版の良否を判定する検版システムであって、
前記撮像手段による撮像領域の近傍に、前記刷版を構成する版材の感光領域外の波長の光を照射する光源を設け、
前記撮像手段はモノクロ画像データを取得可能な撮像手段とし、受光波長領域を前記光源の照射波長領域とを合わせたことを特徴とする検版システム。
【請求項4】
前記撮像手段に広角レンズを設け、
前記広角レンズの影響による取得画像の歪みを補正する歪み補正手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1に記載の検版システム。
【請求項5】
1つの刷版の版面を複数の撮像領域に分割し、各撮像領域毎に対応させた撮像手段と、当該撮像手段に対応した判定手段とを備え、
前記入稿面の画像データは製版に直接使用される解像度を有する画像データを用いると共に、前記撮像手段により取得される画像データの解像度は150dpi以上のものを用いて両画像データの差分を検出することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1に記載の検版システム。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか1に記載の検版システムを、製版ラインに組み込んだことを特徴とする製版装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−322201(P2007−322201A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−151322(P2006−151322)
【出願日】平成18年5月31日(2006.5.31)
【出願人】(590001717)ニッカ株式会社 (20)
【Fターム(参考)】