説明

検知装置および検知方法

【課題】所望の音を高精度に検知することのできる検知装置を提供する。
【解決手段】音を検知するセンサと、センサにより検出された音の音響信号波形の振幅がゼロとなるゼロクロス点を検出するゼロクロス点検出部102と、ゼロクロス点間の音響信号波形の振幅の絶対値の総和である波形面積を算出する波形面積算出部103と、波形面積算出部103により算出された波形面積と、予め設定された閾値とを比較し、波形面積が閾値よりも大きい場合に異常が発生したと判断する異常判断部104とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検知装置および検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、警備対象となる建物の敷地内に人の歩行による衝撃音を検出するセンサを設置し、敷地内のセンサが物体に反応したときに、建物に侵入を企てる不法侵入者が存在すると判断して、威嚇ベルや非常灯などの機器を作動させるといった、不法侵入者を排除するような警報の出力を行う警備システムが知られている。
【0003】
また、音を検出する技術としては、例えば特許文献1には、車両において発生する音/振動を検査する車両検査装置が開示されている。この車両検査装置は、車両の走行時の速度を横軸、音を縦軸とする波形図を作成し、予め設定しておいた音圧レベルの閾値以上となる音が観測された範囲の面積を累計していき、累計面積値と許容面積値とを比較することにより音/振動の程度を評価するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−216604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、警備システムが警備対象とする領域においては、例えば降雨や、人間以外の小動物の足音など、人の歩行以外の音も発生する。このため、センサにより検知された音の中から、正確に不法侵入者の足音のみを検出する技術の提供が望まれている。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、人の歩行など所望の音を高精度に検出することのできる検知装置および検知方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、検知装置であって、音を検知するセンサと、前記センサにより検出された音の音響信号波形の振幅がゼロとなるゼロクロス点を検出するゼロクロス点検出部と、前記ゼロクロス点間の前記音響信号波形の振幅の絶対値の総和である波形面積を算出する波形面積算出部と、前記波形面積算出部により算出された前記波形面積と、予め設定された閾値とを比較し、前記波形面積が前記閾値よりも大きい場合に異常が発生したと判断する異常判断部とを備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、検知装置において異常を検知する検知方法であって、センサが、音を検知する検知ステップと、ゼロクロス点検出部が、前記検知ステップにおいて検出された音の音響信号波形の振幅がゼロとなるゼロクロス点を検出するゼロクロス点検出ステップと、波形面積算出部が、前記ゼロクロス点間の前記音響信号波形の振幅の絶対値の総和である波形面積を算出する波形面積算出ステップと、異常判断部が、前記波形面積算出ステップにおいて算出された前記波形面積と、予め設定された閾値とを比較し、前記波形面積が前記閾値よりも大きい場合に異常が発生したと判断する異常判断ステップとを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、所望の音を高精度に検出することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本実施の形態の侵入検知システムの全体構成図である。
【図2】図2は、音響チューブセンサのチューブの施工例を示す模式図である。
【図3】図3は、土、砂利等に音響チューブセンサを埋設した状態を示す模式図である。
【図4】図4は、侵入検知装置の機能的構成を示すブロック図である。
【図5】図5は、音響信号波形の振幅の時間変化を示すグラフを示す図である。
【図6】図6は、波形面積算出部の処理を説明するための図である。
【図7】図7は、侵入検知システムにおける警備処理を示すフローチャートである。
【図8】図8は、人の歩行に対して得られた音響信号波形と、誤検知要因となる警備領域へのボールの投げ込みに対して得られた音響信号波形を示す図である。
【図9】図9は、人の歩行に対して得られた音響信号波形の拡大図である。
【図10】図10は、ボールの投げ込みに対して得られた音響信号波形の拡大図である。
【図11】図11は、図8に示す人の歩行およびボールの投げ込みそれぞれの音響信号から算出された波形面積を示す図である。
【図12】図12は、ローパスフィルタにより高周波成分が除去された後の音響信号を示す図である。
【図13】図13は、音響チューブセンサの変更例を示す図である。
【図14】図14は、音響チューブセンサの変更例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる検知装置および検知方法の実施の形態を詳細に説明する。図1は、本実施の形態の侵入検知システムの全体構成図である。本実施の形態の侵入検知システムは、図1に示すように、監視領域に設置された音響チューブセンサ400と、音響チューブセンサ400と接続された侵入検知装置100とを備えている。
【0012】
音響チューブセンサ400は、図1に示すように、弾性を有する中空管としてのチューブ300と、チューブ300の一端の開口部を封鎖するように設けられた集音部としてのマイクロホン200とを有している。音響チューブセンサ400は、チューブ300が踏みつけられる等の衝撃が加えられた場合に、その衝撃の際の物音が中空管内を伝搬し、この物音をマイクロホン200で集音し、集音された音響信号を侵入検知装置100に送出する。
【0013】
侵入検知装置100は、音響チューブセンサ400のマイクロホン200から送出された音響信号により、監視領域内に侵入者が侵入したという異常判断を行うものである。
【0014】
音響チューブセンサ400は、監視対象となる監視領域の場所に施工される。音響チューブセンサ400は、土または砂利等に埋設することができる。図2は、音響チューブセンサ400のチューブ300を、戸建て住宅の外周の土、砂利、マット等に埋設して施工した例を示す模式図である。図3は、土、砂利等に音響チューブセンサ400を埋設した状態を示す模式図である。
【0015】
音響チューブセンサ400に音が伝達する物質に埋設すれば、音響チューブセンサ400をいずれの場所にも設置することができる。
【0016】
次に、侵入検知装置100の詳細について説明する。図4は、本実施の形態にかかる侵入検知装置100の機能構成を示すブロック図である。本実施の形態にかかる侵入検知装置100は、図4に示すように、AD変換部101と、ゼロクロス点検出部102と、波形面積算出部103と、異常判断部104と、警報出力部105と、記憶部110とを備えている。
【0017】
AD変換部101は、音響チューブセンサ400のマイクロホン200で集音され、伝搬されてきたアナログ信号を、デジタルの音響信号(以下、「音響信号」と称する)にA/D変換する。本実施の形態においては、音響信号のサンプリング周波数は、8KHzとする。
【0018】
ゼロクロス点検出部102は、A/D変換された音響信号からゼロクロス点を特定する。ここで、ゼロクロス点とは、音響信号波形の振幅が時間軸と交差する点、すなわち音響信号波形の振幅がゼロになる点である。図5は、ゼロクロス点を説明するための図である。図5は、音響信号波形の振幅の時間変化を示すグラフである。グラフの横軸は時刻、縦軸は振幅を示している。図5に示すグラフにおいて、音響信号波形の振幅と時間軸との交差点がゼロクロス点である。
【0019】
ゼロクロス点検出部102は、具体的には、(式1)により、ゼロクロス点か否かを判断する。
【数1】

ここで、x(t)は、時刻tにおける信号波形の振幅値すなわちサンプル値である。zcは、ゼロクロス判定値である。ゼロクロス点検出部102は、ゼロクロス判定値(zc)が0以下である場合に、ゼロクロス点であると判断する。
【0020】
記憶部110は、各種情報を記憶している。記憶部120は、後述の波形面積算出部103により算出される波形面積や、異常判断部104により利用される異常検出閾値などを記憶している。
【0021】
波形面積算出部103は、音響信号波形に基づいて波形面積を算出する。なお、本実施の形態にかかる侵入検知装置100は、1周期分の波形面積の値に基づいて、異常検知を行うものであり、波形面積算出部103は、1周期分の音響信号波形の波形面積を算出する。ここで、波形面積とは、隣接する2つのゼロクロス点間に得られる音響信号のサンプル値の絶対値の総和である。
波形面積算出部103は、具体的には、ゼロクロス点を検出すると、(式2)によりサンプル値の加算を開始し、(式2)により半周期分の波形面積(halfArea(t))を算出する。
【数2】

ここで、halfArea(t)は、時刻tにおける半周期分の波形面積であり、halfArea(t−1)は、時刻tの直前までに加算された波形面積の値である。波形面積算出部103は、(式2)に示すように、サンプル値が得られる度に、直前までに加算された波形面積値に今回得られたサンプル値(x(t))の絶対値を加算することにより、波形面積(halfArea(t))を得る。
【0022】
ゼロクロス点が検出された場合には、波形面積算出部103は、(式3)によりゼロクロス点が検出された時刻(t)の直前(t−1)までに得られた波形面積(HalfArea(t−1))を波形面積(prevHalfArea)として、記憶部110に記憶する。ここで、波形面積(prevHalfArea)は、音響信号波形の半周期分に相当する波形面積である。
【数3】

【0023】
ゼロクロスが検出された場合には、波形面積算出部103は、さらに(式4)により、加算中の波形面積(HalfArea(t))の値をリセットする。
【数4】

【0024】
波形面積算出部103は、記憶部110に直前の波形面積(prevHalfArea)が記憶されている場合には、上述の半周期分の波形面積(halfArea(t))を算出するとともに、(式5)により1周期分の波形面積(Area(t))を算出する。
【数5】

なお、波形面積算出部103は、ゼロクロス点が検出された場合には、半周期分の波形面積と同様に、1周期分の波形面積の値もリセットする。
【0025】
図6は、波形面積算出部103の処理を説明するための図である。第2半周期の音響信号検出中は、記憶部110には、既に波形面積算出部103により算出済みの第1半周期の波形面積が直前の波形面積(prevHalfArea)として記憶されている。そして、波形面積算出部103は、時刻tの時点においては、第2半周期の波形面積(halfArea(t))を算出しつつ、1周期分の波形面積(Area(t))を算出する。
【0026】
図4に戻り、異常判断部104は、波形面積算出部103により算出された1周期分の波形面積と、記憶部110に記憶されている異常検知閾値とを比較し、波形面積が異常検知閾値よりも大きい場合に、異常音が発生した、すなわち監視領域に侵入者が侵入した可能性が高い異常状態であると判断する。
【0027】
警報出力部105は、異常判断部104により異常状態であると判断された場合に、警報を出力し、またはネットワークを介して監視センタ(不図示)に異常の旨を送信する。
【0028】
図7は、侵入検知システムにおける警備処理を示すフローチャートである。警備処理においては、侵入検知システムはまず、音響チューブセンサ400による音響信号の検出を開始する(ステップS100)。さらに、侵入検知装置100のAD変換部101は、音響信号をA/D変換する(ステップS101)。なお、警備処理の継続中、音響チューブセンサ400は常に音響信号の検出を継続し、AD変換部101は、音響信号が検出される度に、A/D変換処理を行う。
【0029】
続いて、ゼロクロス点検出部102は、算出された音響信号のサンプル値に基づいて、ゼロクロス判定値(zc)を算出し(ステップS102)、ゼロクロス判定値に基づいて、ゼロクロス点を検出する。ゼロクロス判定値(zc)が0より大きい場合、すなわちゼロクロス点でない場合には(ステップS103,No)、波形面積算出部103は、半周期分の波形面積を算出する(ステップS104)。
【0030】
このとき、記憶部110に前回の半周期分の波形面積が記憶されている場合には(ステップS105,Yes)、波形面積算出部103は、ステップS104において算出された半周期分の波形面積と、記憶部110に記憶されている前回の半周期分の波形面積を加算することにより、1周期分の波形面積を算出する(ステップS106)。ステップS105において、記憶部110に前回の半周期分の波形面積が記憶されていない場合には(ステップS105,No)、ステップS100に戻り、半周期分の面積の算出を継続する。
【0031】
ステップS106において、1周期分の波形面積が算出されると、次に、異常判断部104は、記憶部110に記憶されている異常検出閾値とステップS106において算出された1周期分の波形面積の値を比較する。1周期分の波形面積が異常検出閾値よりも大きい場合には(ステップS107,Yes)、異常判断部104は、異常が発生したと判断し、警報出力部105は、警報出力やネットワーク配信等により異常が発生したことを通知する(ステップS108)。さらに、警備を継続させる場合には(ステップS109,No)、ステップS100に戻る。警備を終了する場合には(ステップS109,Yes)、異常検出処理が完了する。
【0032】
一方、ステップS103において、ゼロクロス点検出部102がゼロクロス点を検出した場合、すなわちゼロクロス判定値(zc)が0以下である場合には(ステップS103,Yes)、波形面積算出部103は、直前まで算出していた半周期分の波形面積を前回の波形面積として記憶部110に記憶する。すなわち、記憶部110に記憶されている前回の波形面積を更新する(ステップS120)。なお、記憶部110に前回の波形面積が記憶されていない場合には、直前まで算出していた半周期分の波形面積を新たに前回の波形面積として記憶部110に記憶する。
【0033】
さらに、波形面積算出部103は、直前まで算出していた半周期分の波形面積および1周期分の波形面積をリセットし(ステップS121)、ステップS109へ進む。
【0034】
このように、本実施の形態にかかる侵入検知システムにおいては、音響信号のサンプル値が得られる度に、得られたサンプル値を1周期分の波形面積に加算することにより、波形面積を更新し、波形面積を更新する度に更新後の1周期分の波形面積と異常検出閾値をと比較して異常判定を行うので、リアルタイムに異常発生を検知することができる。
【0035】
図8は、本実施の形態にかかる侵入検知システムが検知対象とする人の歩行に対して得られた音響信号波形と、誤検知要因となる警備領域へのボールの投げ込みに対して得られた音響信号波形を示す図である。図8に示すグラフの横軸は音響信号のサンプル数、縦軸は、振幅を示している。図9および図10は、それぞれ人の歩行およびボールの投げ込みに対して得られた音響信号波形の拡大図である。なお、ここでは、ボールの投げ込みを誤検知要因の例として示すが、小動物の警備領域内への飛び込み、落下物による衝撃音などこれ以外に想定される誤検知要因の音響信号波形も、ボールの投げ込みと同様の特徴を示す。
【0036】
図8〜図10に示すように、ボールの投げ込みは、人の歩行に比べて大きい振幅が検出される。このため、振幅値を利用した場合には、人の歩行とボールの投げ込みとを高精度に判別することは困難である。
【0037】
図11は、図8に示す人の歩行およびボールの投げ込みそれぞれの音響信号から算出された波形面積を示す図である。図11に示すグラフの横軸は、音響信号のサンプル数、縦軸は1周期分の波形面積の値を示している。図11に示すように、1周期分の波形面積の値は、人の歩行によるものがボールの投げ込みによるものに比べて大きくなる。したがって、人の歩行により得られる波形面積の値とボールの投げ込みなどの誤検知要因により得られる波形面積の値の間の値を異常検出閾値として設定しておくことにより、高精度に人の歩行を検出することができる。
【0038】
図9に示すように、人の歩行の衝撃音からは、振幅が小さく長い周期の波形が得られる。これに対し、図10に示すように、ボールの投げ込みの衝撃音からは、振幅が大きく短い周期の波形が得られる。
【0039】
本実施の形態にかかる侵入検知システムにおいては、このような衝撃音から得られる波形の特徴の違いを評価する値であるゼロクロス点間の面積値を用いて侵入者の有無を判断するので、高精度に侵入者の有無を判断することができる。
【0040】
なお、誤検知要因であるボールの投げ込みの衝撃音から得られる波形は、前述の通り周期が短い、すなわち高周波数であるという特徴がある。したがって、ローパスフィルタにより高周波数の信号を除去することにより、ボールの投げ込みの衝撃音を人の歩行として誤検知するのを防ぐことが考えられる。
【0041】
図12は、ローパスフィルタにより高周波成分が除去された後の音響信号であり、図10に示す音響信号に対する処理後の波形を示している。図12に示すように、ボールの投げ込みの音響信号波形は、高周波成分だけでなく、周期の長い波形、すなわち低周波成分も含んでいる。このため、ローパスフィルタを適用しただけでは、ボールの投げ込みに起因した衝撃音を除去することができない。
【0042】
さらに、図10に示すように、ボールの投げ込みに起因した衝撃音においては、低周波成分が得られるものの、図10に示すように、低周波数成分については半周期分の波形のみが検出される。これに対し、図9に示すように、人の歩行においては、低周波数の波形、すなわち周期の長い波形は1周期分検出されている。そこで、これらを精度よく区別すべく、本実施の形態においては、波形面積算出部103は、波形面積として1周期分の面積を算出し、異常判断部104は、1周期分の面積に基づいて、異常の有無を判断することとしている。これにより、より高精度に人の歩行を誤検知要因と判別して検出することができる。
【0043】
本実施の形態の侵入検知装置は、CPUなどの制御装置と、ROM(Read Only Memory)やRAMなどの記憶装置と、HDD、CDドライブ装置などの外部記憶装置と、入出力装置を備えており、通常のコンピュータを利用したハードウェア構成となっている。
【0044】
本実施形態の侵入検知装置で実行されるプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD−ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD−R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供される。また、本実施形態の侵入検知装置で実行されるプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。また、本実施形態の侵入検知装置で実行されるプログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。また、本実施形態の侵入検知装置で実行されるプログラムを、ROM等に予め組み込んで提供するように構成してもよい。
【0045】
本実施の形態の侵入検知装置で実行されるプログラムは、上述した各部(AD変換部、ゼロクロス点検出部、波形面積算出部、異常判断部、警報出力部)を含むモジュール構成となっており、実際のハードウェアとしてはCPU(プロセッサ)が上記記憶媒体からプログラムを読み出して実行することにより上記各部が主記憶装置上にロードされ、各部が主記憶装置上に生成されるようになっている。
【0046】
また、他の例としては、上述した各部(AD変換部、ゼロクロス点検出部、波形面積算出部、異常判断部、警報出力部)は、ハードウェアにより実現されてもよい。
【0047】
なお、本発明は前記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、前記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除しても良い。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせても良い。また、以下に例示するような種々の変形が可能である。
【0048】
本実施の形態においては、侵入検知装置100の波形面積算出部103は、人の歩行とボールの投げ込みなどの誤検知要因とを区別すべく、これらの音響信号波形の振幅と周期の長さに基づいて、異常判断に利用する波形面積算出の対象となる時間軸方向の長さを波形の1周期とすることとしたが、波形面積算出の対象となる時間軸方向の長さは、検出対象とすべき衝撃音と想定される誤検知要因の衝撃音の特性に基づいて適宜変更可能である。
【0049】
例えば、波形面積算出部103は、半周期分の波形面積を算出し、異常判断部104は、半周期分の波形面積に基づいて異常の有無を判断してもよいし、また他の例としては、波形面積算出部103は、1周期よりも長い周期の波形面積を算出してもよい。
【0050】
また、他の例としては、侵入検知装置100は、歩行テストにより検出された音響信号に基づいて、異常検出閾値を算出してもよい。ここでは、歩行テストとは、警備中と同一条件の下で実際に人が歩き、この歩行を音響チューブセンサ400で検知するものであり、検知結果に基づいて、侵入検知システムによる警備中に侵入検知装置100において利用される異常検出閾値が設定される。
【0051】
具体的には、侵入検知装置100は、異常検知閾値を算出する異常検出閾値算出部(不図示)をさらに備え、異常検出閾値算出部は、歩行テスト時に検出された音響信号に基づいて、波形面積を算出する。なお、波形面積の算出方法は、波形面積算出部103による波形面積の算出方法と同様である。
【0052】
異常検出閾値算出部はさらに、歩行テストにおいて得られるN個の1周期分の波形面積(Area(n))を算出し、(式6)により、N個の信号パワー面積(Area(n))の最小値に、異常検出閾値の感度調整係数(α)を乗じ、異常検知閾値(Th)を算出する。
【数6】

αは予め設定された0以上1未満の値であり、αは例えば0.9に設定されている。また、Nは1周期分の波形面積の個数である。
【0053】
なお、警備中において、不法侵入者の忍び足による侵入を想定している場合には、歩行テストにおいても、忍び足の歩行を行わせ、不法侵入者の通常歩行による侵入を想定している場合には、歩行テストにおいても、通常歩行を行わせることとする。これにより、実際の不法侵入者の足音に沿った閾値を設定することができる。すなわち、こうして設定した閾値を利用することにより、より正確に不法侵入者を検知することができる。
【0054】
図13および図14は、音響チューブセンサの変更例を示す図である。音響チューブセンサ400においては、マイクロホン200がチューブ300の両端の開口部またはその近傍に物音を集音可能に設けられていればよく、音響チューブセンサ400の構成は、図1に示す構成に限定されるものではない。例えば、図13に示すように、音響チューブセンサ400は、チューブ300の両端の開口部を封鎖するように設けられた2つのマイクロホン200を有してもよい。この場合には、侵入検知装置100は、さらにチューブ300における物音の位置を推定し、推定した位置から減衰する音響信号を補正して、補正後の音響信号により、異常判断を行うことができる。また、図14に示すように、チューブ300を分岐させる構成とし、その両端の開口部を封鎖するように2つのマイクロホン200が設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0055】
100 侵入検知装置
101 AD変換部
102 ゼロクロス点検出部
103 波形面積算出部
104 異常判断部
105 警報出力部
110 記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音を検知するセンサと、
前記センサにより検出された音の音響信号波形の振幅がゼロとなるゼロクロス点を検出するゼロクロス点検出部と、
前記ゼロクロス点間の前記音響信号波形の振幅の絶対値の総和である波形面積を算出する波形面積算出部と、
前記波形面積算出部により算出された前記波形面積と、予め設定された閾値とを比較し、前記波形面積が前記閾値よりも大きい場合に異常が発生したと判断する異常判断部と
を備えることを特徴とする検知装置。
【請求項2】
前記波形面積算出部は、1周期分の前記音響信号波形の前記波形面積を算出することを特徴とする請求項1に記載の検知装置。
【請求項3】
前記センサは、開口された一端を有する中空管と、前記開口された一端に配設され、前記中空管を伝わる音を集音する集音部とを有する音響チューブセンサであることを特徴とする請求項1または2に記載の検知装置。
【請求項4】
検知装置において異常を検知する検知方法であって、
センサが、音を検知する検知ステップと、
ゼロクロス点検出部が、前記検知ステップにおいて検出された音の音響信号波形の振幅がゼロとなるゼロクロス点を検出するゼロクロス点検出ステップと、
波形面積算出部が、前記ゼロクロス点間の前記音響信号波形の振幅の絶対値の総和である波形面積を算出する波形面積算出ステップと、
異常判断部が、前記波形面積算出ステップにおいて算出された前記波形面積と、予め設定された閾値とを比較し、前記波形面積が前記閾値よりも大きい場合に異常が発生したと判断する異常判断ステップと
を含むことを特徴とする検知方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2013−84106(P2013−84106A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−223272(P2011−223272)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(000202361)綜合警備保障株式会社 (266)
【Fターム(参考)】