説明

極低電圧発振回路及びそれを用いた極低電圧DCDC変換装置

【課題】太陽電池や燃料電池は単一セルでは出力電圧が0.2Vから0.6Vと非常に低くその電圧を昇圧してエネルギーを2次電池に蓄積する場合、昇圧回路が0.2V程度からの極低電圧領域から昇圧動作を開始する必要がある。
【解決手段】FETのサブスレシュオールド領域を利用して極低電圧から発振を開始するとともに周囲温度の変化に対しても安定な周波数を発生する補正機構を組み込むことにより確実に起動しかつ正確にDCDC変換装置を実現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単一セルもしくは並列セルの太陽電池や燃料電池などの環境発電エネルギーを利用したDCDC変換装置及びそれを起動する極低電圧で確実に動作する発振回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
非炭素エネルギー利用を促進することは非常に重要な課題である。太陽光発電、熱発電、電波発電、振動発電、風力発電などの再生可能な非炭素エネルギー源から電力を発生する環境発電が大きな開発テーマとしてとりあげられている。発電したエネルギーは電力として配電されもしくはリチューム電池などの2次電池に充電されて蓄えられて利用される。
【0003】
充電に際して充電電流と充電電圧は正確に管理される必要がある。2次電池は異常な充電電流や充電電圧で発火、破壊などの障害を起こす。
【0004】
環境発電源は非常に低い電圧した出力しないものがほとんどである。
例えば単一セル太陽電池の発生するエネルギーは最大電力を出力する最大電力点を有することが知られている。
【0005】
この最大電力点の電圧は0.25V〜0.45V程度で非常に低く通常の製造工程では正常に動作する回路を集積回路に実現することは通常の製造工程では提供されていなかった。そのために太陽電池を直列に接続して発電電圧を高くする必要があった。
【0006】
そのため太陽電池をレーザーでカットしてそれを配線で接続する加工工程が必要になり太陽電池パネルのコストを増加させる要因になっている。
【0007】
また直列接続された太陽電池は直列セルの一つでも影に隠れると発電しなくなる。部分影対策が必要になってくる。
【0008】
この部分影問題を回避する追加の制御回路が必要となりやはりコスト増加の要因になっていた。ここにコスト面と利便性から単一セルの極低電圧から動作する回路の必要性が重要となって来ていた。
【0009】
本発明はあらゆる電子装置に使われる充電器と電源装置にCOを発生しないエネルギーから発電することで地球のエネルギー節減に貢献しようとするものである。
【0010】
単一セルの太陽電池で利用する様々な提案がなされている。しかしながら起動時に起動用の高い電圧源が別途必要だったり、高価な製造工程が必要だったり完全に単一セルで起動し動作する提案は見出せなかった。
【0011】
本発明は通常の製造工程で製造可能であり、太陽電池パネルの製造コストをまったく増加させることなく、単一セルの太陽電池からエネルギーを取り出すために極低電圧電源から確実に発振開始して起動するDCDC変換装置を実現するものである。
【0012】
極低電圧動作を実現する先行技術は以下のような例がある。これらはある程度の動作を実現していて有効性が認められる。ところがアナログ回路の場合閾値VTH以下の動作をさせると動作点や出力の大きな温度変動は避けられず、幅広く利用されるにはいたっていない。
【0013】
特許文献1に係るUS公開公報US2009/0146749には、極低電圧でトリガー信号を発生する発振回路を紹介しているが、温度に対する変動を安定化する方法には触れられていないので温度変化で大きな特性変動が予見される。
【0014】
特許文献2に係るUS特許公報US4542330には、低電圧でトリガー信号を発生するブロッキング発信機が提案されているがその電圧は0.9V以上であり単一セル太陽電池などには応用できない。
【0015】
特許文献3に係る特許公開公報2006−020491には、極低電圧からチャージポンプ回路で昇圧して第2の主昇圧回路を動作させているが第1の極低電圧で発振するトリガー回路の具体策には触れていない。
【0016】
特許文献4に係る特許公報4223041には、2種類の太陽電池を利用して高い電圧を出力する太陽電池パネルは起動用信号発生に接続され極低電圧太陽電池とダイオードで切り替えているがダイドードによる発電電圧と同じく位大きな電圧降下については触れられていない事と単一セルでないことは実用には障害であることは明らかである。
【0017】
特許文献5に係る特許公開公報2007-135352には、起動はリチューム電池の残存電力で開始して起動後は太陽電池で発電する構成であるが、リチューム電池が放電してしまうと2度と起動しない問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】US公開公報US2009/0146749
【特許文献2】US 特許公報US4542330
【特許文献3】特許公開公報2006-020491
【特許文献4】特許公報4223041
【特許文献5】特許公開公報2007-135352
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
環境発電素子、例えば太陽電池や燃料電池は単一セルでは出力電圧が0.2Vから0.6Vと非常に低くその電圧を昇圧してエネルギーを2次電池に蓄積する場合、昇圧回路が0.2V程度からの極低電圧領域から昇圧動作を開始する必要がある。昇圧するためにはまず動作を開始するパルス信号が起動時には必須である、本発明はFETのサブスレシュオールド領域を利用して極低電圧から発振を開始するとともに周囲温度の変化に対しても安定な周波数を発生する補正機構を組み込むことにより確実に起動しかつ正確にDCDC変換装置を実現する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記課題を解決するため、極低電圧から発振してかつ温度係数の小さい昇圧トリガ−信号を発生する極低電圧発振回路と所定の極低電圧以下で前記発振回路を停止させる信号を発生する極低電圧検出回路と通常の閾値とそれよりも低い閾値を有する2種類のスイッチングFETを用いて極低電圧から電力供給するDCDC変換装置を実現する。
【0021】
(a)太陽電池などの再生可能エネルギー源が接続される第一の電源端子(VSS)と第二の電源端子(VSB)と出力端子(VCG)とを有し、第一の電源端子と第二の電源端子と間に接続される、(b)極低電源電圧を検知する極低電圧検出器U17と、(c)該極低電圧検出器に接続される極低電圧発生器U16と、(d)該極低電圧発生器に接続される信号レベル変換器U15と、(e)該信号レベル変換器の出力で制御される第1のNMOSエンハンスメントFET(N1)と、(f)出力電圧の状態を検知して動作モード制御信号を出力する出力電圧検出器U11と、(g)出力電圧が所定値以上になると後述のパルス幅制御器の動作する電源電圧を選択する電源切替器U12とからなり、
第一の電源端子VSSと出力端子VCGとの間に接続される、(h)パルス幅制御器U14と、(i)該パルス幅制御器出力で制御される第2のNMOSエンハンスメントFET(N2)と、(j)第1の基準電圧発生器U13とからなるDCDC変換装置であって、
前記極低電圧発生器U16は少なくとも第1の抵抗体R3と容量C4とNMOSFET(N6)とインバータUH1とインバータUL1とからなり、前記インバータUH1は前記インバータUL1よりも高い反転閾値を有し、インバータUH1の反転閾値は1度当たり0.3mV以上の正の温度係数を持ち、インバータUL1は1度当たり−0.03mVから+0.03mVの温度係数を有し、前記第1のNMOSエンハンスメントFET(N1)の閾値VTHは0.1Vから0.35Vの範囲であり、第2のNMOSエンハンスメントFET(N2)は前記、NMOSエンハンスメントFET(N1)の閾値VTHよりも1.2倍以上の高い閾値VTHを有し、前記第1のNMOSエンハンスメントFET(N1)のチャンネル幅は前記第2のNMOSエンハンスメントFET(N2)のチャンネル幅の10分の1以下である事により極低電圧から確実に昇圧起動し温度変動に安定な極低電圧発振回路及びそれを用いた極低電圧DCDC変換装置を実現する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明を詳細に説明する。図面を通じて、同様な要素には同様な参照符号が付されている。
【0023】
説明の便宜上、本発明の適用対象であるDCDC変換器の中で従来の昇圧装置の具体例について説明する。
【0024】
図1は従来の昇圧装置の具体例を示し、特許文献3に係る例である。
図1において、従来例に係る昇圧装置は電源端子VSB、VSSを有する。太陽電池出力が接続されるVSBとVSS間には、電源電圧と基準グランドが接続される。電源端子VSSが基準グランドの場合にはVSBは正の電位、VSBが基準グランドの場合にはVSSには負の電位が供給される。
【0025】
図1における従来例の単一セル昇圧装置は、単一セル太陽電池V1、第1の昇圧器U3、インダクタンス L1 が極低電圧側で動作する。昇圧電圧で動作する部分は分圧抵抗R1とR2、基準電圧器U5、誤差増幅器U1,PWM回路U2からなる第2の昇圧器から構成される。分圧抵抗R1とR2で分圧した電圧FBと基準電圧発生器U5からの出力VRと比較してスイッチFET N3を開閉して昇圧が行われる。
【0026】
第1の昇圧器U3にはチャージポンプ方式であるが、図1における従来例では、極低電圧で動作する発振器U4とは別の発振器が必須であるが文献中には明示されていない。そして2倍の昇圧の場合には少なくとも2個の大きなコンデンサーが必要である。そして2個のコンデンサーを切り替える電流能力の大きなFETも必須である。半導体で集積化した場合大きな面積を占めることは周知であり、コスト増加は避けることができない。
【0027】
図2は従来の昇圧装置の具体例を示し、特許文献4に係る例である。
図2においてV2はより高い電圧を発生する太陽電池パネルを示し、ダイオードD2を介して昇圧回路U5を起動する電力が供給される。一旦ある電圧まで昇圧されると制御部U6によって電力供給源をV3で示される太陽電池もしくは燃料電池などの主たる発電源に切り替えられる。しかしこの方法では起動用の太陽電池V2の出力電圧はダイオードD2の順方向電圧降下するのと、十分な電圧を出力できるのでればそのままV3に接続すればよりよい効果が得られることは明らかであり、単一セルの利便性とコスト増加は避けることができない。
【0028】
図3は従来の昇圧装置の具体例を示し、特許文献5に係る例である。
図3においてV4は太陽電池パネルである。V5は2次電池を示す。
太陽電池出力電圧VSBが十分なときは太陽電池V4から昇圧された電力で→1の方向に充電と負荷電流を供給する。 電圧検出器U9が低い電圧を検出するとリチューム電池V5の残存電圧で→2の方向に昇圧回路に電力を供給して起動する。
しかしこの方法では2次電池が過放電禁止電圧に達した時点ですべての動作が停止することになり、太陽電池はまったく作用しなくなり太陽光があっても利用することはできなくなってしまう。
【0029】
本発明の第1の側面によれば、極低電圧で確実に昇圧動作を保証しかつ温度によるクロック周波数変動を平坦に設定することが可能な極低昇圧装置が提供される。これについて、図4−図16を参照して説明する。
【0030】
図4は本発明の第1の実施形態に係るDCDC変換装置のブロック図を示す。単一セルの太陽電池や燃料電池の出力される極低電圧でも確実に昇圧を起動するDCDC変換装置を実現する。
【0031】
図4において、本発明に係るDCDC変換装置は入力端子VSS、VSBを有する。入力端子VSSとVSB間には、太陽電池からの電圧が印加される。図4の例では、入力端子VSSは共通端子ないしグランド端子として、出力端子の1つを兼ねている。
【0032】
すなわち、DCDC変換装置は出力端子VCGとVSSを備え、出力端子VCGとVSS間に充電される2次電池V6と負荷LD1が接続される。なお、負荷LD1は、DCDC変換装置の一部ではなく、DCDC変換装置を電源として使用する電子装置(たとえば携帯電話)を表している。このようにして、出力端子VCGとVSSからの電圧(出力電圧)が2次電池V6と負荷LD1に印加される。
【0033】
入力端子VSB、VSSおよび出力端子VCG、VSSに加え、本発明のDCDC変換装置は、極低電圧検出器U17、極低電圧発振器U16、信号レベル変換器U15、起動スイッチとして機能する第1のNMOSエンハンスメントFET(N1)、主昇圧スイッチとして機能する第2のNMOSエンハンスメントFET(N2)、出力電圧検出器U11、電源切替器U12と、第一の電源端子VSSと出力端子VCGとの間に接続される、パルス幅制御器U14、第1の基準電圧発生器U13とから構成される。
【0034】
極低電圧検出器U17は図5に回路図が、図13に動作波形がそれぞれ示される。極低電圧検出器U17は図13の波形24,25,26で示されるように所定の電源電圧以下の時はローレベルを出力して極低電圧発振器U16の動作を禁止する。所定の電源電圧以上の時はハイレベルを出力して極低電圧発振器U16の動作を有効にする。
【0035】
極低電圧検出器U17は図5に回路図に示されるようにNMOSFET(N1とND1)により電源電圧が検出され、図13中に曲線21,22,23で検出信号として示される。図5のN2、N3、P2、P3から成る比較回路で比較検出されN4、N5、P4、P5から成るVDOとして出力される。
21と24は90度、22と25は30度、23と26はそれぞれ−20度の温度の場合をそれぞれ示す。
【0036】
図13では検出出力は温度に対して負の係数を有し温度上昇で検出電圧が低下する特性を有する。太陽電池の出力電圧が温度に対して負の温度係数を有するのでその特性に対応している。検出出力は温度に対して平坦な係数を有する極低電圧検出器も可能出るがここでは詳細を図示しない。
【0037】
極低電圧発振器U16は図7に回路図が、図15に動作波形がそれぞれ示される。図7において抵抗R3と容量C4とエンハンスメントNMOSFETであるN6で充放電回路を形成しいて三角波を発生する。インバータUH1の入力が反転閾値を越えるとインバータUD2がハイに変化してN6を導通状態にして三角波は下がり傾斜に移行する。三角波がインバータUL1の反転電位まで下がるとインバータUD2がローに変化して三角波は上昇傾斜に移行して三角波を繰り返す。NMOSFET N7は動作禁止に使用され、三角波を発生する動作時はNMOSFET N7は通電状態に固定される。図7の極低電圧発振器U16は一定以上の電源電圧が供給されれば必ず発振してパルス信号を発生することが出来る回路である。本実施例では閾値VTHを0.1Vから0.35Vと標準の製造工程による閾値VTHよりも低く設定して、発振開始する電源電圧0.1V程度を実現している。
【0038】
三角波を発生するときMOSFET N6はサブスレショールド領域で動作しているので、温度で導通電流が大きく変化するので発振周波数は大きく変化する。DCDC変換器の動作周波数は変動すると広い周波数帯域でスプリアスを発生するので望まれない有害な影響を及ぼすので一定に保つ必要がある。
【0039】
サブスレショールド領域での温度変動を観測するために、図12を示す。
図12のFET特性において所定のゲート入力電圧に対して温度90度のドレイン電流ID1と温度−20度でのドレイン電流ID2の交点の左側は温度上昇でドレイン電流が増加する正の温度係数、右側は温度上昇でドレイン電流が減少するので負の温度係数を有する。サブスレショールド領域においては温度係数が相対的に大きな電流変化は避ける事ができないので、この領域を利用するためには温度補正機能が無ければ実用化は困難と言える。図12はN型エンハンスメントFETでL=1u、W=20u、閾値VTH=0.2Vの例であるが、デプレションでもP型でも同様の傾向を示す。ここで注意する点はVGS=0Vの時にドレイン電流ID1はゼロでないことである。
【0040】
図15に示す極低電圧発振器U16の動作波形により−20度から90度まで約2%以下の変化に収まっている。 図7における発振回路を極低電圧で動作させるためにはMOSFETの閾値VTHを0.2V程度まで低くしてサブスレショールド領域で動作させると必要なパルス波形を得ることができる。しかしサブスレショールド領域で動作するのでNMOSFET N6のオン電流が温度で大きく変化することとインバータU5と2入力NAND U3とU4の遅延時間も大きく変動する。 低温ではNOSFET N6オン電流が小さくなり三角波の周期が高温時に比べて大きくなり、ほぼ2倍以上の周期になることが報告されている。本発明ではインバータUL1とインバータUH1の反転閾値を温度によって変化する特性を利用して三角波の周期を一定に保つ方法を実現している。
【0041】
図14にUH1とUL1の反転閾値の温度を変数とした入出力特性を示す。曲線41と42はUL1の特性、43と44はUH1の特性、41と43は−20度の時、42と43は90度の時の特性曲線をそれぞれ示す。インバータUL1とUH1の回路は図11に示す。NMOSFET NE2とPMOS FET PE5のチャンネル長を変化させることにより反転閾値の温度係数を調整している。本発明の1実施例においてはUL1の入出力特性の温度係数はほぼゼロ、UH1の温度係数は1度当たり+45mVの係数を有する。このように本発明にかかわる極低電圧発振回路は、必ず発振する回路でかつインバータUL1とインバータUH1を構成するMOS FETのチャンネル長の比を調整することにより発振周波数の温度係数をほぼゼロにすることが可能になる。つまり温度変化に伴うNMOSFET N6のオン電流変化と前記インバータU5等による遅延時間変化をインバータUH1の反転閾値の温度変化で吸収して高精度の発振周期を実現している。
【0042】
本発明のDCDC変換装置は0.3V以下の極低電圧から4.5V程度まで15倍に昇圧するので起動時のNMOSスイッチはオンオフ比が大きい必要がある。オン時間が約6uS、オフ時間が200nSで大きな昇圧倍率に応答できるよう大きなオンオフ比を実現して起動を保証している。
極低電圧発振器U16は図7の回路図においてインバータUD1からUD5と2入力NAND U6によってパルス幅を生成している。
【0043】
図8に信号レベル変換器U15の回路図を示す。N21〜N23はNMOS FET、P21〜P25はPMOSFETを示しレベルシフト部を構成している。入力端子OSCは極低電圧発振器U16の出力が供給され、MOSFET P23とN23のドレインにVDDにレベル変換されたパルス信号が出力される。インバータU21とU22がバッファー回路として付加されて起動スイッチN1を駆動する。起動スイッチN1は極低電圧で動作するので主昇圧スイッチN2よりも低い閾値VTHで構成される。起動して所定の電圧まで到達すれば制御電圧は高い電圧に切り替わるので起動スイッチN1は電流能力が大きなスイッチである必要はない。
【0044】
図6は出力電圧検出器U11と電源切替器U12とが一緒に示されている。U21は比較器、U22は信号レベル変換器VREFは極低電圧VSBから基準電圧を発生する基準電圧発生器、PE1〜PE4はPMOSFETスイッチをそれぞれ示す。FB2は昇圧出力電圧VCGから分圧された電圧で基準電圧VREFよりもFB2が低いときはPE3が導通してVSBをVPに出力する。昇圧電圧が上昇してFB2が基準電圧VREFよりも高くなったときは昇圧出力VCG=VHをVPに出力してPMW制御部U14に高い電圧を供給する。基準電圧発生器VREFの回路例は図10に示す。
【0045】
図9にパルス幅制御器U14の構成図を示す。図中インダクタンスL3、ショットキーダイオードD1,出力平滑コンデンサーC6は図4本発明の実施例と重複して表示されている。U32は基準電圧VRと帰還信号FBの差を増幅して平滑する積分器、U33はレベル変換器出力CLKから鋸波を発生する鋸波発生器、U31は鋸波と積分器出力からFETスイッチを開閉するPWMパルス信号を主昇圧スイッチN2に供給する。このブロックは昇圧された電圧VPで動作するので極低電圧で動作する図4における起動スイッチN1と違って主昇圧スイッチN2は標準の閾値VTHを使用する。
【0046】
基準電圧VRの発生する基準電圧発生器U13は図10と同様な回路で構成することが出来るが、十分な電圧が供給されるので極低電圧動作は対応する必要はない。
【0047】
図16は本発明の動作波形を示す。
起動スイッチN1のチャンネル長L=0.8u、チャンネル幅1000u、閾値VTH=0.2V、主昇圧スイッチN2のL=0.5u、W=80000u、VTH=0.55Vの例を示す。波形61は出力端子VCGの出力電圧を示し、62は負荷LD1に流れる電流波形、63は印加される極低電圧電源波形VSB、64は電圧切替器U12の切り替え信号をそれぞれ示す。VSB、63は直流的に300mVが印加される場合をシミュレーションしているのでステップ波形が観測されている。最初の500uSでは昇圧速度はなだらかで出力電圧が0.9V以上から昇圧された高い電圧でスイッチN2を開閉すると昇圧はすばやく実現していることが読み取れる。
【0048】
以上のように本発明によれば、必ず発振する極低電圧発振器で昇圧のトリガーとなるパルス信号を確実に生成して昇圧スイッチング動作を失敗すること無しに起動することが出来る。極低電圧検出器U17で0.25V以下の極低電圧では誤動作を禁止して安全動作を保証することが可能である。しかもサブスレショールド領域を利用しかつ温度補償機能を組み込む事によって、通常の製造工程で量産可能なDCDC変換装置をコスト増加無しに供給する事が可能になる。
【0049】
また本発明の実施例によれば昇圧起動のために別途チャージポンプ回路を設ける事も無く、高い電圧を出力する第2の太陽電池を追加することも無しに、単一セルの太陽電池もしくは並列セルで必ず極低電源電圧から起動するDCDC変換方式とDCDC変換装置を実現する事が出来る。
【0050】
本発明の実施例は昇圧装置で示したが、同様の作用を降圧装置で実現できることは容易に推察される範疇である。本発明の実施例で示した各素子のパラメータはこれに限定されるものではなく要求仕様に応じて容易に変更できるものであることも明白である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】従来例1の低電圧昇圧回路のブロック図を示す。
【図2】従来例2の低電圧昇圧回路のブロック図を示す。
【図3】従来例3の低電圧昇圧回路のブロック図を示す。
【図4】本発明のDCDC変換装置のブロック図を示す。
【図5】本発明における極低電圧検出器の回路図を示す。
【図6】本発明における出力電圧検出器と電源切替器の回路図を示す。
【図7】本発明における極低電圧発振器の回路図を示す。
【図8】本発明におけるレベル変換器の回路図を示す。
【図9】本発明におけるPWM DCDC変換器の回路図を示す。
【図10】本発明にかかわる基準電圧発生器の回路図を示す。
【図11】本発明にかかわるインバータの回路図を示す。
【図12】NMOS FET素子の電流−ゲート電圧特性図を示す。
【図13】本発明における極低電圧検出器の動作波形図を示す。
【図14】本発明にかかわるインバータの入出力特性図を示す。
【図15】本発明における極低電圧発振器の動作波形図を示す。
【図16】本発明におけるDCDC変換装置の動作波形図を示す。
【符号の説明】
【0052】
VSB,VSS: 入力端子
VOUT: 出力端子
VCG: 充電出力端子
VR: 基準電圧
FB: 検出電圧
U1: 誤差増幅器
U2: PWM制御器
U3: チャージポンプ昇圧器
U4: 発振器
U5,U13、VREF: 基準電圧発生器
U6: 制御器
U7: 昇圧器
U8、U14:パルス幅制御器
U9:電圧検出器
U11:出力電圧検出器
U12:電流切替器
U13: 基準電圧発生器
U15: 信号レベル変換器
U16: 極低電圧発振器
U17: 極低電圧検出器
U21、U22: インバータ
U31: 比較器
U32: 積分器
U33: 鋸波発生器
N1:低閾値NMOSエンハンスメントFET
N2:標準閾値NMOSエンハンスメントFET
N1〜N23:NMOSエンハンスメントFET
P1〜P25:PMOSエンハンスメントFET
NE1、NE2: NMOSエンハンスメントFET
PE1〜PE2: PMOSエンハンスメントFET
ND1〜ND2: NMOSデプレションFET
R1〜R3:抵抗体
L1〜L3:インダクタンス
C1〜C6:容量
V1〜V4、PV:太陽電池もしくは燃料電池
V5、V6:リチューム電池
D1〜D5:ショットキーダイオード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)太陽電池などの再生可能エネルギー源が接続される第一の電源端子(VSS)と第二の電源端子(VSB)と出力端子(VCG)とを有し、第一の電源端子と第二の電源端子と間に接続される、(b)極低電圧検出器U17と、(c)該極低電圧検出器に接続される極低電圧発生器U16と、(d)該極低電圧発生器に接続される信号レベル変換器U15と、(e)該信号レベル変換器の出力で制御される第1のNMOSエンハンスメントFET(N1)と、(f)出力電圧検出器U11と、(g)電源切替器U12と、からなり、
第一の電源端子VSSと出力端子VCGとの間に接続される、(h)パルス幅制御器U14と、(i)該パルス幅制御器出力で制御される第2のNMOSエンハンスメントFET(N2)と、(j)第1の基準電圧発生器U13とからなるDCDC変換装置であって、
前記極低電圧発生器U16は少なくとも第1の抵抗体R3と容量C4とNMOSFET(N6)とインバータUH1とインバータUL1とからなり、前記インバータUH1は前記インバータUL1よりも高い反転閾値を有し、インバータUH1の反転閾値は1度当たり0.3mV以上の正の温度係数を持ち、インバータUL1は1度当たり−0.03mVから+0.03mVの温度係数を有し、前記第1のNMOSエンハンスメントFET(N1)の閾値VTHは0.1Vから0.35Vであり、第2のNMOSエンハンスメントFET(N2)は前記、NMOSエンハンスメントFET(N1)の閾値VTHよりも1.2倍以上の高い閾値VTHを有し、前記第1のNMOSエンハンスメントFET(N1)のチャンネル幅は前記第2のNMOSエンハンスメントFET(N2)のチャンネル幅の10分の1以下であることに特徴を有する極低電圧発振回路及びそれを用いた極低電圧DCDC変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−152015(P2011−152015A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−13126(P2010−13126)
【出願日】平成22年1月25日(2010.1.25)
【出願人】(510015419)ノーベルパワーソーラー株式会社 (5)
【Fターム(参考)】