説明

極端紫外光光源装置および集光光学手段の位置調整方法

【課題】極端紫外光光源装置において、均一な角度分布特性を得るための集光鏡の位置調整を、短時間で行うことができるようにすること。
【解決手段】制御部10の分布データベース10aに、不均一な角度分布特性画像データと、この不均一な角度分布特性を均一な角度分布特性にするための集光鏡の移動方向および移動量と登録しておく。角度分布特性測定器12により、角度分布画像データを取得したら、この角度分布特性画像データを、分布データベース10aに登録された画像と比較し、角度分布特性画像データの中から、取得した現在の角度分布特性と最もよく一致する画像データを選ぶ。そして、選び出した画像データに対応づけて記憶されている、均一な角度分布特性にするための集光鏡6の移動方向および移動量のデータを読み出し、これに基づいて、集光鏡移動手段11により、集光鏡6を移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極端紫外光を出射する極端紫外光光源装置に関し、特に、EUV光源装置のおよびEUV光源装置に設けられた集光光学手段(集光鏡)の位置の調整方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路の微細化、高集積化につれて、露光用光源の短波長化が進められ、次世代の半導体露光用光源として、波長13〜14nm、特に波長13.5nmの極端紫外光(以下、EUV(Extreme Ultra Violet)光ともいう)を放出する極端紫外光光源装置(以下、EUV光源装置ともいう)が開発されている(例えば特許文献1参照)。
図4は、特許文献1に示されるEUV光源装置を簡易的に説明するための図である。
同図に示すように、EUV光源装置は、放電容器であるチャンバ1を有する。チャンバ1内には、一対の円板状の放電電極2a,2bが収容される放電部1aと、ホイルトラップ5と集光鏡6とを収容するEUV集光部1bが設けられる。
一対の円盤状の電極2a,2bは、絶縁材2cを挟んで図4の紙面において上下に配置されている。紙面の下方に位置する放電電極2bには、モータ2jの回転軸2eが取付けられている。放電電極2a、2bは、摺動子2g、2hを介してパルス電力供給部3に接続されている。
放電電極2bの周辺部には溝部2dが設けられ、この溝部2dに高温プラズマPを発生させるための固体の原料M(LiまたはSn)が配置されている。
1cは、放電部1a、EUV集光部1bを排気して、チャンバ1内を真空状態にするためのガス排気ユニットである。
【0003】
上記のEUV光源装置においては、放電電極2bの溝部に配置された高温プラズマ用の原料に対し、エネルギービーム照射機4からエネルギービームを照射する。エネルギービームは例えばレーザビームであり、レーザ入射窓4aを介して照射され、固体の原料が放電電極2aと2bとの間で気化する。
この状態で、放電電極2aと2bの間にパルス電力供給部3からパルス電力が供給されると、放電電極2aのエッジ部分と放電電極2bのエッジ部分との間で放電が発生し、高温プラズマ原料MによるプラズマPが形成され、放電時に流れる大電流により加熱励起され高温化し、この高温プラズマPからEUV光が放射される。
放射されたEUV光は、ホイルトラップ5を介してEUV集光部1bに入射し、集光鏡6によって、集光鏡6の中間集光点fに集められ、EUV光出射口7から出射し、EUV光源装置に接続された点線で示した露光機30に入射する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2005/101924号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このようなEUV光源装置においては、以下に説明するような実用上の問題があった。
EUV光源装置を長時間にわたって点灯駆動した場合、プラズマPと集光鏡6とのアライメントのずれが生じる。このため、中間集光点f以降の、EUV光の照度分布状態を示す角度分布特性が悪化し、角度分布特性が不均一(非対称)になることがある。角度分布特性が不均一になると、EUV光を使った露光機において、被処理体に露光ムラが生じることがある。
角度分布特性が悪化して非対称になる原因は、例えば以下の2つの原因が考えられる。
(1)点灯駆動時間の経過とともに放電電極が磨耗していくことにより、放電電極間に形成されるプラズマの位置が、点灯初期の状態と比べて変動する。
(2)集光鏡6が、放電電極2a,2bやプラズマPから発せられる熱により高温状態になって、熱歪みを生じて変形する。
【0006】
以上のように、角度分布特性(中間集光点以降のEUV光の照度分布状態)は、上記集光鏡6(集光光学手段)のアライメント位置(所望の位置にEUV光が集光するように集光光学手段がセットされたときの集光光学手段の位置)からのずれの方向、大きさを等に対応しており、上記集光光学手段6がアライメント位置からずれるほど、上記角度分布特性は悪化する。
すなわち、角度分布特性を、不均一(非対称)なものから均一(対称)なものに修正するためには、角度分布特性を測定しながら、集光光学手段6の位置を、X軸方向(光軸方向:図4左右方向)、Y軸方向(図4上下方向)、Z方向(図4手前奥方向)、θz方向(Z軸の周りの回転方向)、θy(Y軸の周りの回転方向)に移動させて行う必要がある。
現状では、上記作業を、作業者が、集光点fの後にEUV光の角度分布測定器を挿入して、角度分布特性を測定しながら、集光鏡6の位置を微小移動させて行っている。角度分布特性変化と、集光鏡6の移動方向及び移動量との関係は、作業者の熟練により体得するものであり、均一な角度分布特性を得るための集光鏡6の位置調整作業に必要な時間は作業者によって異なり、場合によっては数時間という長時間が必要であった。
【0007】
また、集光鏡6を新しいものに交換したときも、同様に角度分布特性を測定し、それが不均一であれば、均一になるように、集光鏡6の位置調整作業を行わなければならない。したがって、集光鏡6の交換とその位置調整にかかる時間も、長時間が必要な場合があった。
本発明は上記事情に鑑みなされたものであって、本発明の目的は、極端紫外光光源装置の中間集光点以降における角度分布特性が悪化して不均一(非対称)になったとき、あるいは、集光鏡を交換した際等に、短時間で均一な角度分布特性を得るための集光鏡の位置調整を行うことができるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
あらかじめ、EUV光源装置の制御部に、集光光学手段(集光鏡)により反射された不均一な角度分布特性を示す画像データを、不均一な角度分布特性を均一な角度分布特性にするための集光光学手段の移動方向および移動量と対応させて、複数、登録しておく。
そして、角度分布特性測定器により、現状における角度分布特性を示す画像データ(角度分布特性画像データ)を取得したら、この角度分布特性画像データを、予め記憶されている複数の不均一な角度分布特性画像データと比較する。そして、その複数の不均一な角度分布特性画像データの中から、取得した測定した現在の角度分布特性と最もよく一致する画像データを選ぶ。
次に、選び出した画像データに対応づけて記憶されている、均一な角度分布特性にするための集光光学手段の移動方向および移動量のデータを読み出し、これに基づいて、集光光学手段を移動させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明においては、以下の効果を得ることができる。
現状における角度分布特性画像データを取得し、あらかじめ登録しておいた、不均一な角度分布特性画像データと比較し、最もよく一致する画像データに対応づけた、不均一な角度分布特性を均一な角度分布特性にするための集光光学手段の移動方向および移動量を読み出し、これに基づいて集光光学手段を移動させるようにしたので、作業者の熟練の度合いによることなく、短時間で集光光学手段の位置を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施例のEUV光源装置の構成の概略を示す図である。
【図2】本実施例の集光鏡の移動制御を説明する図である。
【図3】放電電極を備えないEUV光源装置に本発明を適用した場合の概略構成を示す図である。
【図4】EUV光源装置を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本発明の実施例のEUV光源装置の構成の概略を示す図である。
EUV光源装置の構成は、前記図4に示したものと同様であり、放電電極2a,2bを収容する放電部1aと、ホイルトラップ5と集光鏡(集光光学手段)6とを収容するEUV集光部1bとにより構成されるチャンバ1を備える。
チャンバ1には、放電部1a、EUV集光部1bを排気して、チャンバ1内を真空状態にするためのガス排気ユニット1cが設けられている。
一対の円板状の放電電極2a、2bは、絶縁部材2cを挟んで対向するよう配置され、各々の中心が同軸上に配置されている。紙面において下方側に位置する放電電極2bには、モータ2jの回転軸2eが取付けられている。
回転軸2eは、放電電極2aの中心と放電電極2bの中心とが回転軸2eの同軸上に位置している。回転軸2eは、メカニカルシール2fを介してチャンバ1内に導入される。
メカニカルシール2fは、チャンバ1内の減圧雰囲気を維持しつつ、回転軸2eの回転を許容する。
【0012】
放電電極2bの下方側には、例えばカーボンブラシ等で構成される摺動子2gおよび2hが設けられている。摺動子2gは、放電電極2bに設けられた貫通孔を介して放電電極2aと電気的に接続される。摺動子2hは、放電電極2bと電気的に接続されている。
パルス電力供給部3は、摺動子2g、2hを介して、それぞれ放電電極2a、2bにパルス電力を供給する。
円板状の放電電極2a,2bの周辺部は、エッジ形状に形成されている。
放電電極2bの溝部2dには、高温プラズマ生成用の液体または固体の原料Mが配置されている。原料Mは、例えば、スズ(Sn)、リチウム(Li)である。
パルス電力供給部3より放電電極2a、2bに電力が供給されると、両電極のエッジ部分間で放電が発生する。放電が発生すると、放電電極2a,2bの周辺部は放電により高温となるので、放電電極2a,2bは、タングステン、モリブデン、タンタルなどの高融点金属からなる。
絶縁部材2cは、放電電極2aと2bの間の絶縁を確保するため、窒化珪素、窒化アルミニウム、ダイヤモンド等からなる。
【0013】
チャンバ1には、原料Mに対してエネルギービームを照射して、原料Mを気化するためのエネルギービーム照射機4が設けられている。エネルギービーム照射機4から照射されるエネルギービームは、例えばレーザビームである。
放電電極2bの溝部2dに配置された高温プラズマ用の原料Mに対し、エネルギービーム照射機4からレーザ入射窓4aを介してレーザビームが照射される。これによって、固体の原料Mが放電電極2aと2bとの間で気化する。
この状態で、放電電極2aと2bの間にパルス電力供給部3からパルス電力が供給されると、放電電極2aのエッジ部分と放電電極2bのエッジ部分との間で放電が発生し、高温プラズマ原料MによるプラズマPが形成され、放電時に流れる大電流により加熱励起され高温化し、この高温プラズマPからEUV光が放射される。
EUV集光部1bに配置されたホイルトラップ5は、放電電極を構成する物質や高温プラズマ発生用の原料Mを基にして発生するデブリが、集光鏡6に向けて飛散することを抑制するために設けられている。
ホイルトラップ5は、放射状に伸びる複数の薄板により仕切られる複数の狭い空間が形成されている。
【0014】
EUV集光部1bに配置された集光鏡6は、高温プラズマから放射された波長13.5nmのEUV光を反射するための光反射面6aが形成されている。
集光鏡6は、互いに接触することなく入れ子状に配置された複数の光反射面6aにより構成されている。各光反射面6aは、Ni(ニッケル)などからなる平滑面を有する基体材料の反射面側に、Ru(ルテニウム)、Mo(モリブデン)、Rh(ロジウム)などの金属を緻密にコーティングすることにより、0−25度の射入射角度の極端紫外光を良好に反射するように形成されている。
集光鏡6の各光反射面6aは、集光点fが一致するように構成される。集光鏡6で集光した光はEUV光出射口7から出射し、EUV光源装置に接続された点線で示した露光機30に入射する。
また、EUV光源装置は制御部10を備え、電極2a,2bを回転させるモータ2dや、電極2a,2bに電力を供給するパルス電力供給部3などの動作を制御するとともに、後述するように、測定した角度分布特性の画像データに基づき、集光鏡6の移動方向および移動量を得て、集光鏡移動手段11により集光鏡6を移動させる。
【0015】
集光点fの後方には、集光点fに集光したEUV光の角度分布特性を測定する角度分布特性測定器12が設けられる。この角度分布特性測定器12には不図示の移動機構が取付けられており、角度分布特性測定時には、角度分布特性測定器12は光路内に挿入され(図中実線の位置)また、露光処理中には光路から退避される(図中点線の位置)。
角度分布特性測定器12はEUV光を可視光に変換するシンチレ一タ12aと、このシンチレ一タ12aにより変換された可視光を受光するCCDカメラ12bとを備える。
CCDカメラ12bは、入射した光を受光し、受像した光の照度分布を示す画像データを出力する。この画像データは、角度分布特性画像データとして制御部10に送られる。
集光鏡6には、集光鏡6をX軸方向(光軸方向:図1左右方向)、Y軸方向(図1上下方向)、Z方向(図7手前奥方向)、θz方向(Z軸の周りの回転方向)、θy(Y軸の周りの回転方向)に移動させる集光鏡移動手段11が取り付けられており、その動作は制御部10により制御される。
【0016】
制御部10は、例えばプロセッサ等の処理装置と記憶部から構成することができ、前記したように電極2a,2bに電力を供給するパルス電力供給部3を制御するなど、EUV光源装置の全体の動作を制御するとともに、本発明に係る、角度分布特性を均一にするための集光鏡6の移動制御をおこなう。
集光鏡6の移動制御をおこなうため、制御部10は、分布データベース10aと、比較選択部10bと、集光鏡移動制御部10cを備える。また、上記分布データベース10aに画像データ等を登録するための登録部10dが設けられる。
分布データベース10aは、制御部10の記憶部に、複数の角度分布特性画像データと、該各画像データに対応させて集光鏡6を移動させるための移動データとを登録したものである。
比較選択部10bは、比較部101と移動データ読出部102を備え、比較部101で前記角度分布特性測定器12で取得した角度分布特性画像データと、上記分布データベース10aに格納された画像データを比較して、分布データベース10a中の最も一致している画像データを検索し、移動データ読出部102で、この画像データに対応した移動データを読み出す。この移動データは集光鏡移動制御部10cに送られ、集光鏡移動制御部10cは、この移動データに基づき集光鏡移動手段11を制御して、集光鏡6を移動させる。
【0017】
次に、本発明の、集光鏡の位置調整方法について、図1と図2を使って説明する。
図2は、本実施例の集光鏡の移動制御を説明する図であり、同図には、分布データベース10aに格納された画像データの一例と、集光鏡移動手段11と、集光鏡6と、EUV光の焦点位置に配置されたアパーチャ(EUV光出射口7)と、シンチレータ12aとCCDカメラ12bから構成される角度分布特性測定器12が示されている。
まず、集光鏡6の位置調整の前段階として、制御部10の分布データベース10aに、登録部10dから、集光鏡により反射された不均一な角度分布特性の画像データを、不均一な角度分布特性を均一な角度分布特性にするための集光鏡の移動方向および移動量と対応させて、複数登録(記憶)する。
具体的には、EUV光が放射されている状態で角度分布特性測定器12を光路内に挿入し、角度分布特性測定器12から得られる画像データを見ながら、集光鏡移動手段11を動作させることにより、集光鏡6を移動させ、そのときの移動方向、移動量を、そのときの角度分布画像データとともに、分布データベースに登録する。
【0018】
図2(a)は、角度分布特性測定器により測定された照度分布が略均一な角度分布特性画像データの一例である。同図において、白い部分がEUV光の強度が強い部分であり、白から灰色、黒になるほどEUV光の照度が弱くなる。同図では、EUV光の強度が強い部分が円周上にほぼ均一に分布している。なお、同図において、EUV光の強度が強い部分が6つの領域に分割されているが、これは集光鏡6の各反射面6aを支持する支持部材の影によるものである。
この状態で、集光鏡移動手段11により、集光鏡を、ある方向にある移動量(例えばX方向にAmm)移動させる。角度分布特性が均一な状態から移動させるのであるから、角度分布特性測定器12より得られる角度分布特性画像データにおける照度分布は、例えば図2の(c)に示すように不均一なものとなる。
そして、制御部10の分布データベース10aに、この角度分布特性が不均一な画像データと、角度分布特性が均一な状態からX方向にAmm移動したという移動情報を対応させて記憶させる。
この角度分布特性の不均一な画像データに集光鏡6の移動情報を対応させて記憶させる作業は、制御部10に接続された登録部10dから行う。このようにして登録した画像データを、仮に画像データ1とする。
【0019】
続いて、集光鏡6を均一な角度分布特性が得られる状態(アライメント位置)に戻し、今度は先ほどとは異なる方向に集光鏡を移動させ(例えばθy方向にB度)、その位置での角度分布特性画像データを、角度分布特性が均一な状態からθy方向にB度移動したという移動情報を対応させて記憶させる。これを画像データ2とする。
このようにして、できるだけ多くの、移動情報を対応させた不均一な角度分布特性画像データを、制御部10の分布データベース10aに登録(記憶)する。例えば、実際の装置においては、4000〜5000の画像データを記憶する。
図2(b)は、このようにして制御部10の分布データベース10aに登録した、複数の不均一な角度分布特性を持つ画像データ例である。上記したように、各画像データには、角度分布特性が均一な状態からどの方向にどの程度移動させたかという移動方向と移動量のデータが対応して記憶されている。
【0020】
このようにして複数の不均一な角度分布特性を持つ画像データの登録ができた段階で、集光鏡6の位置調整の作業を実施する。
例えば、集光鏡6を古いものから新しいものに交換して取り付けが終われば、EUV光を放射し、角度分布特性測定器12を光路内に挿入し、その状態での(現状での)角度分布特性を測定する。測定した角度分布特性画像データは制御部10に送られる。ここで、測定された画像データは、例えば図2(c)のようなものであったとする。
比較選択部10bの比較部101において、測定した画像データ(図2(c))と、分布データベース10aに記憶されている複数の不均一な角度分布特性を持つ画像データとを比較し、分布データベース10a(図2(b))の画像データ中から最も良く一致する画像データを選び出す。
【0021】
この、分布データベース10aからの画像データの選択は、例えばパターンマッチングを使用することで行う。パターンマッチングは、登録された画像のパターンと、観察した画像のパターンの一致度を測定する手法として一般によく知られている。即ち、測定した画像データ(図2(c))に対して、一致するスコアが最も高い画像データを選択する。
記憶している複数の不均一な角度分布特性を持つ画像データ図2(b)の中から、測定した画像データ図2(c)と最も良く一致する画像データを選び出したら、比較選択部10bの移動データ読出部102は、その画像データに対応して記憶されている移動情報を呼び出す。
呼び出した画像データには、上記したように集光鏡6の移動情報が対応して記憶されている。対応して記憶されている移動情報は、集光鏡6を均一な角度分布特性からどの方向にどのくらい移動させたのかという情報であり、図1に示すように紙面左右方向をX、紙面上下方向をY、紙面前後方向をZとし、Z軸回りの回転をθz、Y軸回りの回転をθyとすると、X,Y,Z方向の移動量ΔX,ΔY,ΔZ、Z軸回りの回転量Δθz、Y軸回りの回転量をΔθyである。
【0022】
したがって、対応して記憶されている位置情報に対して反対方向に集光鏡6を移動させれば、角度分布特性測定器12により測定される画像データは、均一な角度分布特性のもの近づくはずである。
例えば、測定した画像データが、上記の画像データ1として登録した画像に良く似ていれば、制御部10は、集光鏡移動手段11により集光鏡をX方向に−Amm移動させる。また、測定した画像データが、上記の画像データ2として登録した画像に良く似ていれば、集光鏡をθy方向に−B度移動させる。
このようにして集光鏡を移動させた後、再度、角度分布特性測定器12によりEUV光の角度分布特性を測定し、画像データを取得する。
そして、新たに取得した角度分布特性画像データを、再度、分布データベース10aの各画像データと比較し、最も良く一致する画像データを選び、上記と同様に、その画像データに対応した集光鏡6の移動情報に基づき、集光鏡6を移動する。
これを何度か繰り返すことにより、集光鏡6は、均一な角度分布特性が得られ位置に調整される。
このようなEUV光の角度分布特性の測定と集光鏡の位置調整は、1日1回程度(1億ショットごと程度)の頻度で行うことが望ましい。
【0023】
本実施例によれば、制御部10にあらかじめ記憶された画像データと、その画像データに対応して記憶された集光鏡6の移動情報に基づき、自動的に集光鏡6の位置合せができるので、位置調整の作業は、作業者の熟練の度合いに依らず、20秒から30秒という短い時間で行うことができるようになった。
また、このように、記憶した画像との一致度を調べることは、次のような利点もある。
上記したように、集光鏡6は複数の反射面6aを有するが、その反射面6aのうち、特定の反射面の反射率が低下した場合、角度分布の一部だけが変化することになるが、目視ではそのことに気がつかないことがある。しかし、パターンマッチングのような記憶した画像との一致度(スコア)が低下するので、いち早く集光鏡6の不具合を発見することができる。
【0024】
また、この集光鏡の位置調整は、EUV光源装置においては、ホイルトラップ5が位置ずれを起こし、その位置ずれによりEUV光の角度特性が悪化した場合や、複数の反射面6aを有する集光鏡6において、特定の反射面の反射率が低下することによりEUV光の角度特性が悪化した場合にも行うことができる。そのような場合、EUV光の角度特性を初期状態のような均一なものに戻すことはできないが、できるだけ均一な状態に補正することができる。
【0025】
上記本実施例では、電極間の放電によりEUV光を放射するEUV光源装置の集光鏡の位置調整を例にして説明したが、本発明は、滴下される高温プラズマ生成用の原料に対して高出力のエネルギービームを照射してEUV光を放射するEUV光源装置の集光鏡の位置調整にも使用することができる。
図3に、放電電極を備えないEUV光源装置に本発明を適用した構成の概略を示す。
EUV光源装置は、集光光学手段である集光鏡21を収容するチャンバ1を備える。集光鏡21は、高温プラズマから放射された波長13.5nmのEUV光を反射し、その光を集光点fに集光するための光反射面21aが形成されている。
チャンバ1には、チャンバ1内を真空状態にするためのガス排気ユニット1cが設けられている。
【0026】
EUV光源装置は、集光鏡21の光反射面21a側に、高温プラズマ生成用の液体または固体の原料Mを落下(滴下)して供給する原料供給手段22を備える。原料Mは、例えば、スズ(Sn)、リチウム(Li)である。
EUV光源装置は、原料供給手段22により供給された原料Mに対して、非常に高いエネルギーのレーザビームを照射する高出力のレーザ装置23を備える。
原料供給手段により、集光鏡21の光反射面21a側に供給された高温プラズマ用の原料Mに対し、高出力のレーザ装置23からレーザ入射窓23aを介して非常に高いエネルギーを有するレーザビームが照射される。これによって、原料Mが高温プラズマとなり、波長13.5nmのEUV光を放射する。高温プラズマから放射されたEUV光は、集光鏡21の光反射面61aにより反射され、集光点fに集光する。
【0027】
集光点fの後方には、前述したように、集光点fに集光したEUV光の角度分布特性を測定する角度分布特性測定器12が設けられる。この角度分布特性測定器12は、前記したようにシンチレ一タ12aとCCDカメラ12bから構成され、角度分布特性測定時には光路内に挿入され(図中実線の位置)、露光処理中には光路から退避される(図中点線の位置)。
上記角度分布特性測定器12は照度分布を示す角度分布特性画像データを出力し、この画像データは制御部10に送られる。
集光鏡21には、集光鏡6を移動させる集光鏡移動手段11が取り付けられており、その動作は制御部10により制御される。
【0028】
制御部10は、前記したように分布データベース10aと、比較選択部10bと、集光鏡移動制御部10cを備え、上記分布データベース10aには登録部10dから画像データ等が登録される。
分布データベース10aには、複数の角度分布特性画像データと、該各画像データに対応させて集光鏡6を移動させるための移動データとが登録され、比較選択部10bは、比較部101において前記角度分布特性測定器12で取得した角度分布特性画像データと、上記分布データベース10aに格納された画像データを比較して、分布データベース10a中の最も一致している画像データを検索し、その画像データに対応した移動データを移動データ読出部102で読み出す。この移動データは集光鏡移動制御部10cに送られ、集光鏡移動制御部10cは、この移動データに基づき集光鏡移動手段11を制御して、集光鏡21を移動させる。
【符号の説明】
【0029】
1 チャンバ
1a 放電部
1b EUV集光部
2a,2b 放電電極
2c 絶縁部材
3 パルス電力供給部
4 エネルギービーム照射機
5 ホイルトラップ
6 集光鏡
10 制御部
10a 分布データベース
10b 比較選択部
10c 集光鏡移動制御部
11 集光鏡移動手段
12 角度分布特性測定器
12a シンチレ一タ
12b CCDカメラ
21 集光鏡
22 原料供給手段
23 高出力のレーザ装置
30 露光機
M 原料
P プラズマ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
極端紫外光源と、該光源から放射された光を反射して集光する集光光学手段と、該集光光学手段を移動させる集光光学手段移動手段と、
上記集光光学手段により反射された光を受光し、照度分布の不均一度が上記集光光学手段のアライメント位置からのずれの方向、大きさを示す画像データである角度分布特性画像データを得る角度分布特性測定部と、
上記角度分布特性画像データに基づき、上記集光光学手段移動手段を制御して集光光学手段を移動させる制御部とを備え、
上記制御部は、
予め測定した照度分布が不均一な複数の角度分布特性画像データと、該角度分布特性画像データに対応させて、該不均一な照度分布の角度分布特性画像データが得られたときの集光光学手段の位置を、照度が均一な角度分布特性画像データが得られる位置に移動させるための移動方向および移動量とを記憶させた記憶部と、
上記角度分布特性測定部により測定された現在の角度分布特性画像データと、上記記憶部に記憶している複数の照度が不均一な角度分布特性画像データとを比較し、上記記憶している複数の角度分布特性画像データの中から、上記現在の角度分布特性画像データの角度分布特性と形状が最も良く一致する角度分布特性画像データを選択し、該選択した角度分布特性画像データに対応して記憶されている集光光学手段の移動方向および移動量を読みだす比較選択部と、
上記比較選択部により読みだされた角度分布特性画像データに対応して記憶されている集光光学手段の移動方向および移動量に基づき、前記集光光学手段移動手段を制御して集光光学手段を移動させる集光光学手段移動制御部とを有する
ことを特徴とする極端紫外光光源装置。
【請求項2】
極端紫外光源と、該光源から放射された光を反射して集光する集光光学手段とを備えた極端紫外光光源装置の集光光学手段位置調整方法であって、
あらかじめ、照度分布が不均一な複数の角度分布特性画像データと、該角度分布特性画像データに対応させて、該不均一な照度分布の角度分布特性画像データが得られたときの集光光学手段の位置を、照度が均一な角度分布特性画像データが得られる位置に移動させるための移動方向および移動量とを取得する工程と、
現在の角度分布特性を測定し角度分布特性画像データを取得する工程と、
上記取得した現在の角度分布特性画像データと、上記あらかじめ取得した複数の不均一な角度分布特性画像データとを比較し、上記複数の不均一な角度分布特性画像データの中から、上記現在の角度分布特性画像データと角度分布特性の形状が最も良く一致する角度分布特性画像データを選択する工程と、
上記選択した角度分布特性画像データと対応する集光光学手段の移動方向及び移動量に基づき、上記集光光学手段を移動させる工程とを備える
ことを特徴とする光源装置の集光光学手段位置調整方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−198610(P2011−198610A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−64022(P2010−64022)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度新エネルギー・産業技術総合開発機構「次世代半導体材料・プロセス基盤(MIRAI)プロジェクト/次世代半導体材料・プロセス基盤(MIRAI)プロジェクト(石特会計/EUV光源高信頼化技術開発)」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000102212)ウシオ電機株式会社 (1,414)
【Fターム(参考)】