説明

極端紫外線顕微鏡及び検査方法

【課題】 高解像度の検査を可能とする極端紫外線顕微鏡を提供する。
【解決手段】
極端紫外線を発光する光源12と、光源12が発光した極端紫外線を集光して試料2に照射し、試料2が反射した極端紫外線波長領域の試料反射光を集光する、複数の多層膜からなる反射素子から構成される結像光学系13と、光源12と結像光学系13との間に配置され、極端紫外線波長領域の光の一部を反射し、一部を透過する、複数の多層膜からなる半透鏡14と、試料2からの試料反射光が結像光学系13により集光されて半透鏡14を介して入射され、試料反射光による像を検出する像検出部15と、像検出部15が検出した像を表示する表示部16とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極端紫外線を光源とした極端紫外線顕微鏡に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リソグラフィー技術を用いて半導体メモリや論理回路などの微細な半導体素子を製造する際に、顕微鏡によって微細な回路パターンの検査が行われている。ここで、顕微鏡で検査できる最小の寸法、つまり解像度は、照射光の波長、及び反射光の開口数に依存する。したがって、解像度は照射光の波長を短くするほど高くなる。したがって、可視光と比べて波長が非常に短いX線を光源としたX線顕微鏡は、このような微細な回路パターンなどの検査に広く用いられている。
【0003】
次に、一般的なX線顕微鏡の構成について説明する。特許文献1に記載されたX線顕微鏡100は、図3に示すように、X線を発光するX線光源101と、X線を集光して試料200に照射し、試料200が反射した試料反射光を集光するX線結像光学系102と、試料200からの試料反射光による像を撮像する撮像素子103と、X線結像光学系102と撮像素子103との間に配置され、光源101が発生したX線をX線結像光学系102方向へ反射する反射鏡104とを備えている。
【0004】
このX線顕微鏡100の検査処理において、反射鏡104は、X線光源101が発光したX線を反射して、X線結像光学系の一部の集光領域に出射する。X線結像光学系は、一部の集光領域に入射したX線を集光して試料に照射する。また、試料200からの試料反射光は、X線結像光学系102の他の集光領域で集光して、集光した試料反射光を撮像素子103へ出射する。
【0005】
したがって、X線結像光学系102において、その開口の約半分が試料の照射に用いられており、残りの半分の開口が試料反射光の集光に用いられているため、撮像素子によって検出される像の解像度は、X線結像光学系102の全集光領域を用いて集光する像の解像度に比べて約半分に低下する。
【0006】
ところで、半導体などの微細な回路パターンの検査を行うために、X線と同様に光の波長が紫外線光よりも短い、波長10nm乃至15nm程度の極端紫外線(EUV:Extreme Ultra Violet)光を用いた顕微鏡が開発されている。極端紫外線が物体に照射された場合の光の吸収は非常に大きいので、極端紫外線顕微鏡は、可視光や紫外線光で用いられている光学素子を用いることはできない。そこで、極端紫外線顕微鏡は、この波長領域の光を効率よく反射するために異なる材質を積層した多層膜からなる光学素子や、複数の多層膜からなる反射素子から構成される結像光学系等が用いられている。また、極端紫外線顕微鏡は、X線顕微鏡に用いられている個々の光学素子の特性は異なるが、一般的に系全体としては同様な構成となっている。
【0007】
よって、従来の極端紫外線顕微鏡の構成は、上述した特許文献1のX線顕微鏡の構成と同様なものが広く用いられている。
【0008】
【特許文献1】特開2000−206300号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来の極端紫外線顕微鏡は、上述したX線顕微鏡と同様に、結像光学系における光の集光領域の一部が試料への照射光の集光に用いられており、他の集光領域が試料反射光の集光に用いられているので、結像光学系の全集光領域を用いて結像した像の解像度に比べて、撮像素子によって検出される像の解像度が約半分に低下する。
【0010】
本発明は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、高解像度を実現する極端紫外線顕微鏡を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した目的を達成するために、本発明に係る極端紫外線顕微鏡は、極端紫外線を試料台上の試料に照射し、上記試料が反射した極端紫外線波長領域の試料反射光を検出することにより上記試料の検査を行う極端紫外線顕微鏡において、上記極端紫外線を発光する光源と、上記光源が発光した極端紫外線を集光して上記試料に照射し、上記試料が反射した極端紫外線波長領域の試料反射光を集光する、複数の多層膜からなる反射素子から構成される結像光学系と、上記光源と上記結像光学系との間に配置され、極端紫外線波長領域の光の一部を反射し一部を透過する、複数の多層膜からなる半透鏡と、上記試料からの試料反射光が上記結像光学系により集光されて上記半透鏡を介して入射され、上記試料反射光による像を検出する像検出部と、上記像検出部が検出した像を表示する表示部とを備えることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る極端紫外線検査方法は、光源から出射された極端紫外線を、複数の多層膜からなる半透鏡を介して複数の多層膜からなる反射素子で構成される結像光学系に入射し、入射された極端紫外線を上記結像光学系により集光して試料台上の試料に照射し、上記試料が反射した極端紫外線波長領域の試料反射光を上記結像光学系により集光して上記半透鏡を介して像検出手段に入射し、上記試料反射光による像を上記像検出手段により検出して表示手段で表示することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る極端紫外線顕微鏡は、光源と結像光学系との間に半透鏡を備えている。このことにより、極端紫外線は結像光学系の全集光領域で集光されて試料に照射され、試料からの試料反射光も結像光学系の全集光領域で集光されて像検出器へ出射されるので、高解像度の像を表示することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0015】
極端紫外線顕微鏡1は、図1に示すように、検査対象である半導体2を固定するとともに上下左右移動可能な試料ステージ11と、極端紫外線を発光する光源12と、光源12が発光した極端紫外線を集光して半導体2に照射する結像光学系13と、光源12と結像光学系13との間に配置される半透鏡14と、半導体2が反射した極端紫外線波長領域の反射光に応じて像を検出する像検出器15と、像検出器15で検出された像を表示するモニタ16とから構成されている。
【0016】
検査対象である半導体2は、極端紫外線を用いた検査が要求される微細な構造からなる回路パターンを有する半導体である。また、半導体2は、試料ステージ11に取り付けられている。なお、極端紫外線を反射して、その反射光から像を検出できる物体であれば、半導体に限らず所望とする物体を試料としてもよい。
【0017】
光源12は、波長10nm乃至15nm程度の極端紫外線を発光する光源である。具体的にはシンクロトロン放射光やレーザプラズマ光源、放電型のピンチプラズマ光源などであるが、極端紫外線を発光するものであればいかなる光源を用いるようにしてもよい。
【0018】
結像光学系13は、極端紫外線を集光して半導体2に照射する。極端紫外線は物質に吸収されやすいので、光学レンズなどの従来の屈折素子を用いて結像光学系を構成することができない。したがって、結像光学系13は、極端紫外線の反射率を向上するため複数の反射素子から構成される。具体的には、図1に示すような、凸面鏡13aと凹面鏡13bとを相対して構成されるシュバルツシルド光学系などが用いられる。さらに、結像光学系13を構成する複数の反射素子は、極端紫外線波長領域の反射率を高くするために屈折率の異なる薄膜を積層した、いわゆる多層膜によって形成されている。なお、シュバルツシルド光学系に限らず、極端紫外線を集光できるものであれば、いかなる結像光学系を用いるようにしてもよい。
【0019】
また、結像光学系13は、試料ステージ11に取り付けられた半導体2に極端紫外線を照射するとともに、半導体2が反射する極端紫外線を集光する。
【0020】
半透鏡14は、入射光の一部を透過するとともに、入射光の一部を所定方向へ反射するものである。また、半透鏡14は、極端紫外線の透過率及び反射率を高くするため、多層膜によって形成されている。
【0021】
像検出器15は、半透鏡14が反射した試料反射光による像が結像光学系13により結ばれる位置に配置され、入射した極端紫外線から像を検出するものであり、例えばCCDカメラやX線ズーミング管が用いられる。
【0022】
次に、極端紫外線顕微鏡1を用いた半導体2の回路パターンの検査処理について説明する。
【0023】
まず、光源12は極端紫外線を発光して、極端紫外線を半透鏡14へ出射する。半透鏡14は、光源12が発光した極端紫外線を透過させる。透過した極端紫外線は、結像光学系13に入射される。
【0024】
極端紫外線が結像光学系13に入射すると、結像光学系13は、その全集光領域で極端紫外線を集光して試料ステージ11に取り付けられた半導体2に照射する。極端紫外線が半導体2に照射されると、半導体2は、回路パターンの溝に応じて極端紫外線波長領域の試料反射光を出射する。
【0025】
結像光学系13は、その全集光領域で半導体2が反射した試料反射光を集光するとともに、集光した試料反射光を半透鏡14へ出射する。半透鏡14は、結像光学系13が集光した試料反射光を反射して、像検出器15へ出射する。
【0026】
試料反射光が像検出器15へ入射されると、像検出器15は、試料反射光から像を検出してモニタ16へ出力する。像検出器15が検出した像をモニタ16に入力されると、モニタ16は、像を表示する。
【0027】
以上の処理によって半導体2の回路パターンはモニタ16に映し出すことができる。
【0028】
従来の極端紫外線顕微鏡は、撮像面と結像光学系とを結ぶ直線上に反射鏡が設置されているため、試料に照射する極端紫外線と試料反射光は、それぞれ結像光学系における集光領域の片半分を用いているため、像検出器が検出する像の開口数が結像光学系の開口数に比べて約半分に低下する。したがって、像検出器が検出する像の解像度は、結像光学系の全領域で集光する像の解像度に比べて約半分に低下する。
【0029】
これに対して、本実施例に係る極端紫外線顕微鏡1は、半透鏡14を介して像検出器15に反射極端紫外線を出射しているので、試料に出射する極端紫外線と試料反射光とは、ともに結像光学系における全集光領域で集光するので、像検出器15が検出する像の解像度は低下しない。
【0030】
ただし、本実施例に係る極端紫外線顕微鏡1は、半透鏡14を介しているので、試料反射光の一部は透過するので反射鏡を用いた場合に比べて光の強さが低下をする。しかし、解像度は光の強さに依存しないので、本実施に係る極端紫外線顕微鏡1は、従来の極端紫外線顕微鏡に比べて開口数を約2倍に高めることができ、これに伴って、モニタ16に表示される像の解像度を向上することができる。
【0031】
なお、半透鏡14は、光源12が発光した極端紫外線を透過して結像光学系13へ出射するとともに、結像光学系13が集光した試料反射光を反射して像検出部15へ出射する。このような半透鏡14の使用に限らず、光源12が発光した極端紫外線を反射して結像光学系13へ出射するとともに、結像光学系13が集光した試料反射光を透過して像検出部15へ出射するように、極端紫外線顕微鏡1の全体構成を変更するようにしてもよい。
【0032】
次に他の実施形態として、図2に示した極端紫外線顕微鏡4について説明する。
【0033】
他の実施形態の極端紫外線顕微鏡4は、図1に示した極端紫外線顕微鏡1と同様な光学素子から構成されるが、図2に示すように、さらに光源12と半透鏡14との間に設置される極端紫外線の光路長を伸長又は短縮する光路長伸縮光学系17と、光路長伸縮光学系17と半透鏡14との間に設置され光路長伸縮光学系17で伸縮された極端紫外線を反射して光路方向を変更する反射鏡18とを備える。
【0034】
光路長伸縮光学系17は、多層膜によって形成されている複数の反射素子からなり、入射光に対して反射を繰り返した後に所定の方向へ出射する。
【0035】
反射鏡18は、入射光を所定方向へ反射する多層膜によって形成されている反射素子である。
【0036】
次に、極端紫外線顕微鏡4を用いた検査対象である半導体2の回路パターンの検査処理について説明する。
【0037】
まず、光源12は極端紫外線を発光して、極端紫外線を光路長伸縮光学系17へ出射する。光路長伸縮光学系17は、光源12が発光した極端紫外線を複数の反射素子で反射を繰り返して光路長を伸長、又は短縮するとともに、極端紫外線を反射鏡18へ出射する。
【0038】
反射鏡18は、光路長伸縮光学系17が出射した極端紫外線を、結像光学系13へ導入する方向へ反射をする。極端紫外線が結像光学系13に入射されると、結像光学系13は、極端紫外線を集光して試料ステージ11に取り付けられた半導体2に照射する。
【0039】
極端紫外線が半導体2に照射されると、半導体2は、回路パターンの溝等の形状に応じて試料反射光を出射する。結像光学系13は、半導体2が反射した試料反射光を集光するとともに、集光した試料反射光を半透鏡14へ出射する。
【0040】
半透鏡14は、結像光学系13が出射した試料反射光の一部を反射して、像検出器15へ出射する。試料反射光が像検出器15へ入射されると、像検出器15は、反射光から像を検出してモニタ16へ出力する。像検出器15が検出した像をモニタ16に入力されると、モニタ16は、像を表示する。
【0041】
以上の処理によって半導体2の回路パターンはモニタ16に映し出すことができる。
【0042】
ところで、顕微鏡は、検査対象物に照射するまでの入射光と、検査対象物が反射した反射光との光路長が等しくないと焦点を結ぶことができない。したがって、第一の実施形態の極端紫外線顕微鏡1は、光源12と半透鏡14とを直線で結ぶ距離と、半透鏡14と像検出器15とを直線で結ぶ距離とが等しくないと焦点があった像をモニタ16に表示することができない。
【0043】
これに対して、他の実施形態の極端紫外線顕微鏡4は、光路長伸縮光学系17を介して光路長を伸縮することができるので、第一の実施形態の極端紫外線顕微鏡1と比べて、装置全体の構造上の制約を緩和して装置内の各部品を配置することができる。
【0044】
同様に、極端紫外線顕微鏡1において光源12は、半透鏡14と結像光学系13とが直線で結ばなければ、半導体2に極端紫外線を照射することができない。これに対して、他の実施形態の極端紫外線顕微鏡4は、反射鏡18を介して、極端紫外線の光路方向を変更することができるので、装置全体の構造上の制約を緩和して光源12を所望とする位置に配置することができる。
【0045】
なお、他の実施形態の極端紫外線顕微鏡4の光路長伸縮手段17及び反射鏡18は、光源12と半透鏡14との間に配置される場合に限らず、半透鏡14と像検出器15との間に配置するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】極端紫外線顕微鏡の構成を示した図である。
【図2】他の実施形態の極端紫外線顕微鏡の構成を示した図である。
【図3】従来のX線顕微鏡の構成を示した図である。
【符号の説明】
【0047】
1、4 極端紫外線顕微鏡、2 半導体、11 試料ステージ、12 光源、13 結像光学系、14 半透鏡、15 像検出器、16 モニタ、17 光路長伸縮光学系、18 反射鏡

【特許請求の範囲】
【請求項1】
極端紫外線を試料台上の試料に照射し、上記試料が反射した極端紫外線波長領域の試料反射光を検出することにより上記試料の検査を行う極端紫外線顕微鏡において、
上記極端紫外線を発光する光源と、
上記光源が発光した極端紫外線を集光して上記試料に照射し、上記試料が反射した極端紫外線波長領域の試料反射光を集光する、複数の多層膜からなる反射素子から構成される結像光学系と、
上記光源と上記結像光学系との間に配置され、極端紫外線波長領域の光の一部を反射し一部を透過する、複数の多層膜からなる半透鏡と、
上記試料からの試料反射光が上記結像光学系により集光されて上記半透鏡を介して入射され、上記試料反射光による像を検出する像検出部と、
上記像検出部が検出した像を表示する表示部と
を備えることを特徴とする極端紫外線顕微鏡。
【請求項2】
上記光源と上記半透鏡との間、及び/又は、上記半透鏡と上記像検出部との間に配置され、極端紫外線波長領域の光の光路長を伸縮する、複数の多層膜からなる反射素子から構成される光路長伸縮光学系をさらに備えることを特徴とする請求項1記載の極端紫外線顕微鏡。
【請求項3】
上記光源と上記半透鏡との間、及び/又は、上記半透鏡と上記像検出部との間に配置され、極端紫外線波長領域の光を反射する、多層膜からなる反射鏡を備えることを特徴とする請求項1記載の極端紫外線顕微鏡。
【請求項4】
光源から出射された極端紫外線を、複数の多層膜からなる半透鏡を介して複数の多層膜からなる反射素子で構成される結像光学系に入射し、
入射された極端紫外線を上記結像光学系により集光して試料台上の試料に照射し、
上記試料が反射した極端紫外線波長領域の試料反射光を上記結像光学系により集光して上記半透鏡を介して像検出手段に入射し、
上記試料反射光による像を上記像検出手段により検出して表示手段で表示することを特徴とする極端紫外線検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−58130(P2007−58130A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−246736(P2005−246736)
【出願日】平成17年8月26日(2005.8.26)
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【出願人】(592216384)兵庫県 (258)
【Fターム(参考)】