説明

楽器

【課題】楽器本体の音色感とスピーカから発音される音色感とを略同一に保つことのできる楽器を提供すること。
【解決手段】弦を振動させることによって発音させるエレクトロアコースティックギター10において、内部に空洞を有する楽器本体11が木材により形成されたている。楽器本体11には、弦15の振動を電気信号に変換するピックアップ21、増幅器22、スピーカ24及びバッテリー25が配置されている。スピーカ24は、その振動板24Aが楽器本体11と同一の材料によって形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は楽器に係り、更に詳しくは、弦の振動を楽器本体から発音させるとともに、弦の振動を電気信号に変換してスピーカから発音させることのできる楽器に関する。
【背景技術】
【0002】
撥弦楽器として、一般的に、「生ギター」と称されるアコースティックギターが知られている。同ギターは、楽器本体を構成する胴部(ボディ)に共鳴穴が形成されており、弦を爪弾くことにより、弦の空気振動音が前記ボディ内で共鳴して発音するようになっている。
このようなギターは、電気増幅を伴わないため、例えば、コンサートホール等の広い空間内で演奏を行ったときには、ステージから遠く離れた位置では音波が減衰して聴取できない傾向が強くなる。特に、他の楽器と合奏したときには、相対的な音量が小さいことにより、ギターの音がかき消されてしまうという問題がある。この点、エレクトリックアコースティックギターは、ボディ内部に専用のピックアップが装備されて電気的に増幅させる機能を備えているため、コンサートホール等においても期待する音量を確保することができる。
【0003】
しかしながら、エレクトリックアコースティックギターは、弦の振動をピックアップ等のセンサで電気信号に変換する機能を備えているものの、増幅器やスピーカを、楽器本体とは別途独立して装備しなければならず、デザイン的な一体感はない。更に、演奏場所を移動する毎に必要な装備の搬入、搬出が余儀なくされて簡便性がない、という不都合もある。
【0004】
また、ギター等の楽器の音色感(スペクトルフォルマント)は、使用木材が有する音色感若しくは質感と相関関係が非常に高いとされている。つまり、楽器本体が木質であって、楽器音がスピーカをも通じて発音される場合において、スピーカの振動板が紙や金属のものよりも木質の方が同質の音色感が得やすいとされている。また、楽器とスピーカの木材とを同一にすると、更に音色感が向上する。
従って、楽器本体が木質である場合には、少なくともスピーカの振動板を木質にすることが良好な音色感を得る要素となる。
【0005】
ところで、特許文献1には、スピーカの振動板を木材により構成した構成が開示されている。同文献は、コーンスピーカ用振動板を木材の薄板により形成し、これにより、音色を生楽器の音色に近づけようと企図したものである。
【0006】
【特許文献1】特開平61−178386号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載されたスピーカは、音色調整のために木材の薄板を振動板に用いるというだけのものであり、楽器の胴部材質との相関関係において特別な考察を行ったものではない。また、楽器とスピーカとのデザイン的一体性を確保する試みもなされていない。
【0008】
[発明の目的]
本発明の目的は、楽器本体の音色感とスピーカから発音される音色感の調和ないし同一性を図るとともに、楽器本体と所要の装備とのデザイン的な一体性を確保することができる楽器を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、演奏場所の変更に難なく対応可能な簡便性を備えた楽器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため、本発明は、弦を振動させることによって発音させる楽器において、
木材若しくは木質材により形成された楽器本体と、前記弦の振動を電気信号に変換するセンサと、当該センサの信号を増幅する増幅器と、前記楽器本体と同一若しくは同質材料で形成された振動板を含むスピーカとを備える、という構成を採っている。
【0010】
本発明において、前記センサ、増幅器及びスピーカは、前記楽器本体の領域内にそれぞれ配置することが好ましい。
【0011】
また、前記楽器本体内にバッテリーを装備するとよい。
【0012】
本発明が適用される楽器は、弦の振動による発音を行う楽器一般を含み、具体的には、ギター、バイオリン、ビオラ、チェロ、コントラバス等の弦楽器をもとより含む他、弦をハンマーで叩いてピックアップで電気信号に変換し、これを増幅してスピーカを通じて拡声させる電気ピアノ等を含む。
【0013】
また、楽器本体の材料としては、アコースティック系の場合、スプルース、ローズウッド、アメリカ杉、ハリマツ、においひば等を用いるとよく、ソリッド系の場合には、メープル、アッシュ、アルダー(ハンノキ)等を用いるとよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、楽器本体とスピーカの振動板を同一の木材若しくは木質材により構成したことにより、同質の音色感を得ることができる。また、増幅器やスピーカが楽器本体の領域内に設けられた構成によれば、デザイン的な一体性を付与することが可能となる。従って、楽器本体が共鳴手段を有するタイプであれば、生楽器としての音を聴取できるほか、奏者と聴衆との相対距離が離れていても、スピーカからの音を聴取することができ、種々の演奏条件に臨機応変に対応することが可能となる。加えて、バッテリー内蔵型とした場合には、楽器のみの搬送により、電気的な設備の携行を不要とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の好ましい実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1には、本発明がエレクトリックアコースティックギターに適用された実施形態に係る正面図が示されている。この図において、エレクトリックアコースティックギター10は、正面視略瓢箪型に形成されるとともに内部が空洞とされた楽器本体11と、この楽器本体11の図1中上部から上方に延設されたネック12と、当該ネック12の一端(図1中上端)に設けられたヘッド13と、このヘッド13と楽器本体11との間において、前記ネック12に沿って張設された弦15とを基本構成として含む。
【0017】
前記楽器本体11は、図1中正面に表れているサウンドプレート16の面内略中央部に共鳴手段を構成する共鳴穴17が形成された公知の形状に設けられている。また、サウンドプレート16の領域内には、弦15の一端側を固定するブリッジ20と、このブリッジ20に併設されるとともに弦15とサウンドプレート16との間に配置されて弦15の振動を電気信号に変換するためのセンサを構成するピックアップ21と、サウンドプレート16の内面側に配置されるとともに、前記ピックアップ21の電気信号を増幅する増幅器22と、この増幅器22の出力を入力として振動するスピーカ24と、楽器本体11の内部に装備されて前記ピックアップ21,増幅器22等に電気的に接続されるバッテリー25とを備えて構成されている。
【0018】
本実施形態では、前記楽器本体11の材料として、スプルース、ローズウッド、アメリカ杉、ハリマツ、においひば等の木材が用いられており、前記スピーカ24の振動板24Aは、楽器本体11と同一の木材が用いられている。
【0019】
なお、スピーカ24の配置は特に限定されるものではないが、本実施形態では、図1中左下方に配置されている。この配置は、サウンドプレート16の領域内に各種のスイッチ類が取り付けられる場合に、これらの配置との関係において決定されることとなる。
【0020】
以上の構成において、弦15を爪弾くことにより、通常のアコースティックギターとして共鳴穴17を通じて発音させることができる。この一方、電源投入により、共鳴穴17による発音と共に、スピーカ24から発音させてエレクトリックアコースティックギターとして使用することができる。この際、スピーカ24の振動板24Aは、楽器本体11の使用木材と同一であるため、略同一の音色感、つまり、アコースティックギター本来の音と同一若しくはこれに近い音を得ることができる。
【0021】
本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。
すなわち、本発明は、特定の実施の形態に関して特に図示し、且つ、説明されているが、本発明の技術的思想及び目的の範囲から逸脱することなく、以上に述べた実施例に対し、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
【0022】
例えば、前記実施形態では、本発明がエレクトリックアコースティックギター10に適用された場合を図示、説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、電気ピアノに適用することもできる。この場合、スピーカは、ピアノ本体の外面側又は近傍に配置すれば足りる。また、共鳴空間を有しないソリッド系のギター等に適用してもよい。
更に、楽器本体11及び振動板24Aの材料は、木材に限定されるものではなく、MDF、木紛成形材(プラスチックウッド)等木質材を用いることを妨げない。
また、増幅器及びスピーカは外部接続型とすることも可能であり、ピックアップに代えてマイクを楽器本体11に装着若しくは楽器本体11の近傍に配置することでもよい。但し、前記実施形態の構成を採用すれば、取り扱いの簡便性を得るという効果を得る。
更に、楽器本体11と同一の材料からなる振動板を採用したヘッドホンをスピーカに代えて楽器本体に接続することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本実施形態に係るエレクトリックアコースティックギターの概略正面図。
【符号の説明】
【0024】
10…エレクトリックアコースティックギター、11…楽器本体、15…弦、21…ピックアップ(センサ)、22…増幅器、24…スピーカ、24A…振動板、25…バッテリー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弦を振動させることによって発音させる楽器において、
木材若しくは木質材により形成された楽器本体と、前記弦の振動を電気信号に変換するセンサと、当該センサの信号を増幅する増幅器と、前記楽器本体と同一若しくは同質材料で形成された振動板を含むスピーカとを備えたことを特徴とする楽器。
【請求項2】
前記センサ、増幅器及びスピーカは、前記楽器本体の領域内にそれぞれ配置されていることを特徴とする請求項1記載の楽器。
【請求項3】
前記楽器本体内に、バッテリーが装備されていることを特徴とする請求項1又は2記載の楽器。

【図1】
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【公開番号】特開2007−333757(P2007−333757A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−161800(P2006−161800)
【出願日】平成18年6月12日(2006.6.12)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】