説明

楽曲データ修正装置

【課題】カラオケ装置にて演奏される楽曲が歌いやすくなるように楽曲データを修正する技術の提供。
【解決手段】MIDIアレンジ処理では、取得楽曲データにおけるガイメロ音域を含む音高の範囲である抑圧音域を特定する(S130)。そして、当該MIDIアレンジ処理にて修正を加える対象となる楽音である抑制楽音を特定する(S140)。そして、抑制楽音の音の強さを、当該楽曲データを生成したときに規定された音の強さ(即ち、初期値)よりも低減するように楽曲データを修正する(S150)。ただし、抑制楽音とは、楽曲データを構成する楽譜トラックの中でハーモニー伴奏楽器音に対応する楽譜トラックに規定された全楽音であって、当該楽譜トラックに規定された全楽音の音高の度数の総計に対して全対象楽音の音高の度数の総計が占める割合が規定割合以上となる楽譜トラックに規定された全楽音である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、楽曲データを修正する楽曲データ修正装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、予め規定された種類の楽器の音(以下、楽器音とする)を出力するカラオケ装置であって、MIDI規格によって楽曲を表した楽曲データに基づいて楽曲を演奏するカラオケ装置が知られている。一般的に、楽曲データは、当該楽曲にて歌唱されるべき旋律を表すガイドメロディの演奏を担当する楽器音であるガイメロ楽器音、副次的な旋律を表す伴奏メロディの演奏を担当する各楽器音であるハーモニー伴奏楽器音、及び該楽曲のリズムを刻む楽器音であるリズム楽器音のそれぞれについて、個々の楽音の音高、演奏開始タイミング、及び音の強さが規定された楽譜トラックを有している。
【0003】
そして、カラオケ装置では、当該カラオケ装置にて演奏された楽曲のガイドメロディにあわせて、当該カラオケ装置の利用者が歌唱することがなされる。
このようなカラオケ装置の中には、当該カラオケ装置にて演奏された楽曲を歌いやすくするために、ハーモニー伴奏楽器音やリズム楽器音の音量に比べて大きな音量となるように、ガイメロ楽器音の音量を制御するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−222176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されたカラオケ装置のように、ガイメロ楽器音の音量を、他の楽器音の音量に比べて大きくすると、当該カラオケ装置の利用者にとって、ガイドメロディは聞きやすくなる。しかしながら、カラオケ装置の利用者自身が発声した声やリズム楽器音は、ガイドメロディを構成する楽音によって埋もれてしまい、聞き取りにくくなるという問題があった。
【0006】
つまり、特許文献1に記載されたカラオケ装置では、利用者自身が発声した声や、リズム楽器音が聞き取りにくくなり、カラオケ装置にて演奏された楽曲が歌いにくくなる可能性があるという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、カラオケ装置にて演奏される楽曲が歌いやすくなるように楽曲データを修正する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するためになされた本発明の楽曲データ修正装置では、楽曲データ取得手段が、楽曲データを取得する。その楽曲データは、少なくとも1種類の楽器の音を出力可能なカラオケ装置にて演奏される楽曲を表し、該楽曲にて歌唱されるべき旋律を表すガイドメロディの演奏を担当する楽器の音であるガイメロ楽器音、該ガイドメロディに対する少なくとも一つの副次的な旋律の演奏を担当する各楽器の音であるハーモニー伴奏楽器音、及び該楽曲のリズムを刻む楽器の音であるリズム楽器音について、それぞれ、個々の楽音の音高、演奏開始タイミング、及び音の強さが規定された楽譜トラックを有している。
【0009】
そして、本発明の楽曲データ修正装置では、抑圧音域特定手段が、少なくとも楽曲データ取得手段で取得した楽曲データに基づいて、ガイメロ楽器音に対応する楽譜トラックにおける楽音の最低音高から最高音高までの音高範囲を含むように規定された音域最低値から音域最高値までの音域である抑圧音域を特定する。さらに、抑制楽音特定手段が、ハーモニー伴奏楽器音に対応する各楽譜トラックにおける楽音の中で、音高が、抑圧音域特定手段で特定された抑圧音域内である対象楽音を特定し、その特定した対象楽音を少なくとも含む楽音である抑制楽音を特定する。
【0010】
すると、データ修正手段が、抑制楽音特定手段で特定された抑制楽音の音の強さが低減するように、楽曲データを修正した修正楽曲データを生成する。
なお、本発明で言う音の強さとは、楽音における振幅の大きさを表すものであり、例えば、楽曲データがMIDI規格によって表されているのであれば、いわゆるベロシティやボリュームを含むものである。
【0011】
また、本発明で言うハーモニー伴奏楽器音とは、副次的な旋律の演奏を担当する楽器(以下、ハーモニー伴奏楽器とする)の音であり、例えば、リズム楽器(例えば、ドラム)の音とは異なり、人の声と同じような周波数のスペクトル構造を有した音を出力する楽器の音である。このハーモニー伴奏楽器として、例えば、ギターなどの撥弦楽器や、バイオリンなどの擦弦楽器、ピアノなどの打弦楽器、クラリネットなどの管楽器などが該当する。さらに、副次的な旋律とは、ガイドメロディとは異なる旋律であっても良いし、ガイドメロディの和音に相当する旋律であっても良い。
【0012】
以上説明したように、本発明の楽曲データ修正装置にて生成される修正楽曲データでは、音高がガイドメロディの音高範囲内である楽音がハーモニー伴奏楽器音であれば、当該ハーモニー伴奏楽器音における音の強さが、当該楽曲データを生成したときに規定された音の強さ(即ち、初期値)よりも低減される。一方、当該楽音がガイメロ楽器音及びリズム楽器音であれば、当該楽音の音の強さが、当該楽曲データを生成したときに規定された音の強さ(即ち、初期値)に維持される。
【0013】
したがって、このような修正楽曲データに基づいてカラオケ装置にて演奏された楽曲は、ガイドメロディの音高範囲内でのハーモニー伴奏楽器音の音量が小さくなるため、ガイドメロディが明瞭となる。この結果、当該カラオケ装置の利用者にとって、ガイドメロディが聞き取りやすくなる。
【0014】
ところで、カラオケ装置にて演奏された楽曲を、該カラオケ装置の利用者が歌唱する場合、その利用者は、ガイドメロディの音高に歌声の音高を一致させるように歌唱することが多い。つまり、本発明のデータ修正装置にて生成された修正楽曲データに基づく楽曲をカラオケ装置にて演奏すれば、カラオケ装置の利用者が発する歌声の音高は、抑圧音域内となる可能性が高い。この抑圧音域では、ガイドメロディを構成する楽音以外の楽音の音量が小さいため、該カラオケ装置の利用者は、利用者自身が歌唱した声を聞き取りやすくなる。
【0015】
さらに、本発明の楽曲データ修正装置においては、リズム楽器音に対応する各楽譜トラックにおける楽音の音の強さは、楽曲データを生成したときの音の強さに維持される。このため、本発明の楽曲データ修正装置にて生成された修正楽曲データに基づく楽曲をカラオケ装置で演奏すれば、当該楽曲のリズムは、カラオケ装置の利用者にとってとりやすい状態に維持される。
【0016】
これらの結果、本発明の楽曲データ修正装置によれば、カラオケ装置にて演奏される楽曲を歌いやすくすることができる。換言すれば、本発明の楽曲データ修正装置によれば、カラオケ装置にて演奏される楽曲が歌いやすくなるように楽曲データを修正する技術を提供できる。
【0017】
なお、本発明における音高とは、音の高さを表す概念であり、例えば、音名に対応する特定の周波数や、その特定の周波数を含む周波数帯域を含むものである。
また、本発明における抑制楽音特定手段は、ハーモニー伴奏楽器音に対応する個々の楽譜トラックに規定された全楽音のうち、対象楽音の占める割合が予め規定された規定割合以上である楽譜トラックを特定し、その特定した楽譜トラックに規定された全ての楽音を、抑制楽音としても良い(請求項2)。
【0018】
つまり、本発明において、音の強さの抑制は、楽譜トラック単位で実行しても良い。
このような楽曲データ修正装置によれば、楽譜トラック単位で音の強さを抑制することができ、簡易な方法で音の強さの抑制、ひいては、修正楽曲データの生成を実現できる。
【0019】
さらに、本発明における抑制楽音特定手段は、対象楽音の各々を抑制楽音としても良い(請求項3)。
このような楽曲データ修正装置にて生成された修正楽曲データであれば、当該修正楽曲データを演奏した際に、音の強さが低減される楽音の数を必要最小限とすることができる。このため、修正楽曲データに基づいてカラオケ装置にて演奏された楽曲を聴いた人が、当該楽曲の音が弱く、当該楽曲が貧弱であると感じることを抑制できる。
【0020】
そして、本発明におけるデータ修正手段は、音の強さが低減するように予め規定された規定係数を、抑制楽音それぞれの音の強さに乗じることで、修正楽曲データを生成しても良い(請求項4)。
【0021】
このようなデータ修正手段であれば、抑制楽音それぞれの音の強さに規定係数を乗じることで、楽曲データを修正でき、修正楽曲データの生成を簡易な方法で実現できる。
さらに、本発明におけるデータ修正手段は、音の強さが低減するように予め規定された規定値を、抑制楽音それぞれの音の強さから減算することで、修正楽曲データを生成しても良い(請求項5)。
【0022】
このようなデータ修正手段であれば、抑制楽音それぞれの音の強さから規定値を減算することで、楽曲データを修正でき、修正楽曲データの生成を簡易な方法で実現できる。
ただし、請求項5における音の強さの低減方法は、規定値が正の値として規定されている場合の方法である。仮に、規定値が負の値として規定されている場合には、抑制楽音それぞれの音の強さに規定値を加算することで、音の強さの低減を実現しても良い。
【0023】
なお、本発明のデータ修正装置では、歌声データ取得手段が、楽曲データに基づく演奏に対して歌唱された歌声の時間軸に沿った波形を表す歌声波形データを取得し、その取得した歌声波形データに基づいて、歌唱音高特定手段が、歌声の音高を表す歌声音高を時間軸に沿って順次特定しても良い。この場合、本発明の抑圧音域特定手段では、音高差分導出手段が、ガイメロ楽器に対応する楽譜トラックに規定された楽音の音高と、歌唱音高特定手段で特定された歌声音高との差分である音高差分を導出し、その導出した音高差分に基づいて、抑圧音域決定手段が、音域最低値、及び音域最高値を規定しても良い(請求項6)。
【0024】
このような本発明の楽曲データ修正装置によれば、音域最低値及び音域最高値を、音高差分(即ち、歌声音高と楽音の音高とのズレ)に応じて規定することができる。
ところで、本発明の楽曲データ修正装置においては、音域最低値として、最低音高よりも低い音高が、音域最高値として、最高音高よりも高い音高が、予め規定されていても良い。
【0025】
この場合、本発明の抑圧音域決定手段は、該音域最低値が、音高差分の大きさに比例してより低い音高となるように、新たな音域最低値を規定し、音域最高値が、音高差分の大きさに比例してより高い音高となるように、新たな音域最高値を規定しても良い(請求項7)。
【0026】
このような抑圧音域決定手段によれば、音高差分の大きさに比例して抑圧音域を拡大することができる。このため、利用者自身の声域に、抑圧音域が含まれる可能性を向上させることができる。
【0027】
また、音域最低値として、最低音高よりも低い音高が、音域最高値として、最高音高よりも高い音高が、予め規定されている場合には、本発明の抑圧音域決定手段は、音域最低値から音高差分シフトした音高を、新たな音域最低値として規定し、音域最高値から音高差分シフトした音高を、新たな音域最高値として規定しても良い。
【0028】
このような抑圧音域決定手段によれば、音高差分に応じて抑圧音域をシフトすることができる。このため、利用者自身の声域に抑圧音域が含まれる可能性を向上させることができる。
【0029】
これらの楽曲データ修正装置にて生成された修正楽曲データに基づく演奏に応じて歌唱した利用者は、利用者自身が歌唱した声をより聞き取りやすくなり、楽曲データに対応する楽曲が歌いやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明が適用されたデータ修正装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】楽譜トラックの構造を模式的に示す図である。
【図3】第一実施形態におけるMIDIアレンジ処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図4】図4(A)は、MIDIアレンジ処理においてガイメロ音域を特定する手法の概要を示す図であり、図4(B)は、MIDIアレンジ処理において抑制楽音を特定する手法の概要を示す図である。
【図5】MIDIアレンジ処理において楽音の音の強さを抑制する手法の概要を示す図である。
【図6】第二実施形態におけるMIDIアレンジ処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図7】第二実施形態における抑圧音域の一例について概要を示す図である。
【図8】第二実施形態における抑圧音域の一例について概要を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。
[第一実施形態]
本発明が適用された楽曲データ修正装置は、カラオケ装置にて演奏される楽曲を表す楽曲データを修正する装置である。以下、楽曲データ修正装置にて修正した楽曲データを修正楽曲データと称す。
【0032】
なお、実施形態における楽曲データ修正装置は、図1に示すカラオケ装置10の一つの機能として実現されている。このカラオケ装置10は、楽曲データや修正楽曲データに基づいて、それらデータに対応する楽曲を演奏する装置である。
【0033】
この楽曲データや修正楽曲データによって表わされる楽曲とは、作曲者が作曲した楽曲を、カラオケの用途のために編曲した楽曲であり、通常、当該楽曲にて歌唱されるべき旋律を表すガイドメロディと、そのガイドメロディに対する副次的な旋律を表す少なくとも一つの伴奏メロディと、当該楽曲のリズムを表すリズム旋律とを有する。ここで言う伴奏メロディには、ガイドメロディとは異なる旋律に加えて、ガイドメロディの和音に相当する旋律を含む。
〈カラオケ装置について〉
図1に示すように、カラオケ装置10は、通信部11と、入力受付部13と、表示部14と、音声入力部15と、音声出力部16と、音源モジュール17と、記憶部18と、制御部20とを備えている。
【0034】
このうち、通信部11は、カラオケ装置10をネットワーク(例えば、専用回線やWAN)に接続し、その接続されたネットワークを介して外部と通信を行うものである。
入力受付部13は、外部からの操作に従って情報や指令の入力を受け付ける入力機器(例えば、リモートコントローラ)である。表示部14は、画像を表示する表示装置(例えば、液晶ディスプレイやCRT等)である。また、音声入力部15は、音声を電気信号に変換して制御部20に入力する装置(いわゆるマイクロホン)である。音声出力部16は、制御部20からの電気信号を音声に変換して出力する装置(いわゆるスピーカ)である。
【0035】
さらに、音源モジュール17は、楽曲データに基づいて、予め規定された種類の楽器の音(以下、楽器音とする)を出力する装置である。本実施形態においては、音源モジュール17は、周知のMIDI(Musical Instrument Digital Interface)音源によって構成されている。そして、音源モジュール17にて出力される楽器音は、鍵盤楽器(例えば、ピアノやパイプオルガンなど)の楽器音、弦楽器(例えば、バイオリンやビオラ、ギター、ベース、琴など)の楽器音、打楽器(例えば、ドラムやシンバル、ティンパニー、木琴、ビブラフォンなど)の楽器音、及び管楽器(例えば、クラリネットやトランペット、フルート、尺八など)の楽器音などである。
【0036】
次に、楽曲データは、楽曲を区別するデータである識別データと、当該楽曲の歌詞を表す歌詞データと、当該楽曲にて用いられる楽器各々についての楽譜を表す楽譜トラックとを少なくとも有し、周知のMIDI規格によって表されている。
【0037】
楽譜トラックとしては、ガイドメロディと、伴奏メロディと、リズム旋律とのそれぞれに対応するデータが予め生成されている。つまり、楽譜トラックには、ガイドメロディの演奏を担当する楽器(以下、ガイメロ楽器とする)に対応する楽譜トラック、伴奏メロディの演奏を担当する楽器(以下、伴奏メロディ楽器とする)に対応する楽譜トラック、リズム旋律の演奏を担当する楽器(以下、リズム楽器とする)に対応する楽譜トラックが存在する。
【0038】
なお、実施形態においては、ガイメロ楽器として、例えば、ビブラフォンが規定され、リズム楽器として、例えば、ドラムや、シンバルなどが規定されている。また、実施形態における伴奏メロディ楽器には、当該伴奏メロディ楽器の楽器音における周波数のスペクトル構造が人の声と同様のスペクトル構造(即ち、倍音構造)となる楽器(以下、ハーモニー伴奏楽器とする)が含まれる。このハーモニー伴奏楽器には、例えば、バイオリンやビオラ、ギター、ベース(いわゆるベースギター)などが含まれる。
【0039】
各楽譜トラックには、楽器の種類に応じてインデックス番号が割り振られており、このインデックス番号によって、各楽譜トラックに対応する楽器の種類を特定可能となる。
ところで、各楽譜トラックに規定される内容には、個々の楽音(即ち、楽器音)の音符長、個々の楽音の音高(いわゆるノートナンバー)、個々の楽音の強さ(いわゆるアタック、ベロシティ、ディケイなど)がある。
【0040】
ただし、楽譜トラックでの音符長は、当該楽器音の出力を開始する、当該楽曲の演奏開始からの時刻を表す演奏開始タイミング(いわゆるノートオンタイミング)と、当該演奏音の出力を終了する、当該楽曲の演奏開始からの時刻を表す終了タイミング(いわゆるノートオフタイミング)とによって規定されている。
【0041】
つまり、各楽譜トラックは、図2に示すように、時間の進行に沿った楽音それぞれについて、ノートナンバー、ノートオンタイミング、及びノートオフタイミングが規定されることによって、楽器にて演奏すべき楽譜を表している。
【0042】
また、記憶部18は、記憶内容を読み書き可能に構成された不揮発性の記憶装置(例えば、ハードディスク装置)である。この記憶部18には、処理プログラムや、通信部11を介して取得された楽曲データが少なくとも格納される。さらに、記憶部18には、カラオケ装置10の利用者が過去に歌唱したときの歌声を記録した歌声データが、当該利用者を識別する利用者識別番号と対応付けて格納されても良い。
【0043】
制御部20は、電源が切断されても記憶内容を保持する必要がある処理プログラムやデータを格納するROM21と、処理プログラムやデータを一時的に格納するRAM22と、ROM21やRAM22に記憶された処理プログラムに従って各処理(各種演算)を実行するCPU23とを少なくとも有した周知のコンピュータを中心に構成されている。
【0044】
なお、本実施形態における処理プログラムとして、入力受付部13を介して指定された楽曲(以下、対象楽曲)に対応する楽曲データを、カラオケ装置10の利用者が歌唱しやすい楽曲に対応する楽曲データとなるように修正する(即ち、修正楽曲データを生成する)と共に、その修正楽曲データに基づいて当該楽曲を演奏するMIDIアレンジ処理の処理手順を表した処理プログラムが予め用意されている。
〈MIDIアレンジ処理について〉
次に、制御部20が実行するMIDIアレンジ処理の処理手順について説明する。
【0045】
ここで、図3は、第一実施形態におけるMIDIアレンジ処理の処理手順を示したフローチャートである。
MIDIアレンジ処理は、入力受付部13を介して起動指令が入力されると、実行が開始されるものである。
【0046】
そのMIDIアレンジ処理は、起動されると、図3に示すように、まず、対象楽曲に対応する楽曲データを取得する(S110)。続いて、S110にて取得した楽曲データ(以下、取得楽曲データと称す)のガイドメロディを形成する楽音の音高が含まれる音高の範囲(以下、ガイメロ音域とする)を特定する(S120)。
【0047】
具体的には、ガイドメロディに対応する楽譜トラックから、当該楽譜トラックに規定されている全ての楽音の音高について度数分布(即ち、ヒストグラム)を求める。図4(A)に示すように、その求めた度数分布において、度数が予め規定された音高閾値thf以上となる音高(ノートナンバー)の中で、最も低い音高を最低音高mf0minとして特定する。さらに、度数分布において、度数が音高閾値thf以上となる音高(ノートナンバー)の中で、最も高い音高を最高音高mf0maxとして特定する。それら特定された最低音高mf0minから最高音高mf0maxまでの音高範囲(ノートナンバーの範囲)を、ガイメロ音域として特定する。
【0048】
続いて、S120で特定したガイメロ音域を包括する音高の範囲を表す抑圧帯域を特定する(S130)。
具体的には、音高が最低音高mf0minよりも予め規定された音高α分低い音高を、音域最低値n0minとして、音高が最高音高mf0maxよりも予め規定された音高α分高い音高を、音域最高値n0maxとして特定する。そして、それらの特定した音域最低値n0minから音域最高値n0maxまでの音高範囲(ノートナンバーの範囲)を、抑圧帯域として特定する。
【0049】
MIDIアレンジ処理では、続いて、本MIDIアレンジ処理にて修正を加える対象となる楽音(以下、抑制楽音とする)を特定する(S140)。
実施形態においては、ハーモニー伴奏楽器に対応する全ての楽譜トラックの中で、予め規定した規定条件を満たす楽譜トラックを特定し、その特定された楽譜トラックに規定されている全ての楽音を抑制楽音とする。本実施形態における規定条件とは、一つの楽譜トラックに規定されている全ての楽音のうち、音高が抑圧帯域内に含まれる楽音(以下、対象楽音とする)の割合が予め規定された規定割合以上となることである。
【0050】
つまり、本実施形態におけるS140では、具体的に、取得楽曲データを構成する楽譜トラックの中で、ハーモニー伴奏楽器音に対応する楽譜トラックの各々を特定する。そして、図4(B)に示すように、その特定したハーモニー伴奏楽器に対応する楽譜トラックのそれぞれについて、当該楽譜トラックに規定されている全ての楽音の音高についての度数分布(即ち、ヒストグラム)を求める。その求めた度数分布において、当該楽譜トラックに規定された全楽音の度数の総計に対して全対象楽音の度数の総計が占める割合(即ち、図4(B)においてハッチングを施した部分の面積)が、規定割合以上であれば、当該ハーモニー楽器に対応する楽譜トラックに規定された全ての楽音を抑制楽音とする。
【0051】
ただし、実施形態においては、ベースギターに対応する楽譜トラックを、ハーモニー楽器に対応する楽譜トラックとして取り扱わないこととする。つまり、実施形態においては、抑制楽音として、ベースギターに対応する楽譜トラックに規定された楽音が特定されることを除外する。
【0052】
MIDIアレンジ処理では、続いて、S140で特定された全ての抑制楽音の音の強さ(ベロシティ)が低減するように取得楽曲データを修正する(S150)。このS150にて、全ての抑制楽音の音の強さが低減するように修正した楽曲データが、修正楽曲データとなる。
【0053】
本実施形態のS150において、音の強さを低減させる方法は、抑制楽音の音の強さを表すベロシティに、予め規定された規定係数A(ただし、0<A<1)を乗じることでも良いし、抑制楽音の音の強さを表すベロシティから、予め規定された規定値B(ただし、B≧1)を減算することでも良い。
【0054】
なお、本実施形態では、ハーモニー伴奏楽器に対応する楽譜トラックに規定されている全ての楽音のうちの対象楽音が占める割合が規定割合以上である楽譜トラックに規定されている全ての楽音を抑制楽音としていたが、本発明における抑制楽音は、これに限るものではない。例えば、ハーモニー伴奏楽器に対応する楽譜トラックに規定されている全ての楽音のうちの対象楽音を抑制楽音としても良い。
【0055】
この場合、図5(A)に示すように、抑制楽音(即ち、対象楽音)の音高の強さに乗じる規定係数を「A」とし、音高が抑圧帯域外である楽音(即ち、抑制楽音以外の楽音)の音高の強さに乗じる規定係数を「1」とすれば良い。また、図5(B)に示すように、抑制楽音(即ち、対象楽音)の音高の強さから減算する規定値の値を「B」とし、音高が抑圧帯域外である楽音(即ち、抑制楽音以外の楽音)の音高の強さから減算する規定値を「0」とすれば良い。なお、規定値Bは負の値(B<0)でも良い。この場合、抑制楽音の音の強さに規定値Bを加算することで、音の強さの低減を実現すれば良い。
【0056】
続いて、S150にて生成された修正楽曲データに基づいて、修正楽曲データに対応する楽曲を演奏して、演奏音を音声出力部16から放音すると共に、歌詞データに基づく歌詞を表示部14に表示する(S160)。
【0057】
その後、本MIDIアレンジ処理を終了し、次の起動指令が入力されるまで待機する。
以上説明したように、カラオケ装置10では、取得楽曲データを構成する楽譜トラックの中で、ハーモニー伴奏楽器音に対応する楽譜トラックを特定し、その特定した楽譜トラックのそれぞれが規定条件を満たすか否かを判定する。この判定の結果、規定条件を満たす楽譜トラックについては、当該楽譜トラックに規定された楽音の音の強さを、当該楽曲データを生成したときに規定された音の強さ(即ち、初期値)よりも低減するように楽曲データを修正する。ただし、規定条件とは、楽譜トラックに規定されている全ての楽音の音高についての度数分布において、当該楽譜トラックに規定された全楽音の度数の総計に対して全対象楽音の度数の総計が占める割合が、規定割合以上となることである。
【0058】
なお、カラオケ装置10では、ガイメロ楽器やリズム楽器に対応する楽譜トラックについては、当該楽曲データを生成したときに規定された状態に維持される。
[第一実施形態の効果]
したがって、このように生成された修正楽曲データに基づいてカラオケ装置10にて演奏された対象楽曲は、ガイメロ音域内でのハーモニー伴奏楽器音の音量が小さくなるため、ガイドメロディを形成する楽音が明瞭となる。この結果、カラオケ装置10の利用者にとって、ガイドメロディが聞き取りやすくなる。
【0059】
ところで、カラオケ装置10にて演奏された楽曲を、カラオケ装置10の利用者が歌唱する場合、その利用者は、ガイドメロディの音高に歌声の音高を一致させるように歌唱することが多い。つまり、カラオケ装置10にて、修正楽曲データに基づく対象楽曲を演奏すれば、カラオケ装置10の利用者の歌声の音高は、抑圧音域内となる可能性が高い。この抑圧音域では、ガイドメロディを構成する楽音以外の楽音の音量が小さいため、カラオケ装置10の利用者は、利用者自身が歌唱した声を聞き取りやすくなる。
【0060】
さらに、カラオケ装置10においては、リズム楽器に対応する各楽譜トラックに規定された楽音の音の強さは、楽曲データを生成したときの音の強さに維持される。このため、カラオケ装置10において、修正楽曲データに基づく対象楽曲を演奏すれば、当該楽曲のリズムは、カラオケ装置10の利用者にとって感知しやすい状態に維持される。
【0061】
これらの結果、カラオケ装置10(楽曲データ修正装置)によれば、カラオケ装置10にて演奏される楽曲を歌いやすくすることができる。換言すれば、カラオケ装置10によれば、カラオケ装置10にて演奏される楽曲が歌いやすくなるように楽曲データを修正する技術を提供できる。
【0062】
さらに、カラオケ装置10において、規定条件を満たす楽譜トラックに規定された全ての楽音を抑制楽音として、修正楽曲データを生成する場合には、楽譜トラック単位で音の強さを抑制することできる。この場合、カラオケ装置10によれば、簡易な方法で音の強さを抑制できる。
【0063】
また、カラオケ装置10において、対象楽音のみを抑制楽音として、修正楽曲データを生成すれば、当該修正楽曲データを演奏した際に、音量が低下する楽音の数を必要最小限とすることができる。このため、修正楽曲データに基づいてカラオケ装置10にて演奏された対象楽曲を聴いた人が、当該対象楽曲の音が弱く、当該対象楽曲が貧弱であると感じることを抑制できる。
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態について説明する。
【0064】
本実施形態のカラオケ装置30(図1参照)は、第一実施形態のカラオケ装置10とは、制御部20が実行するMIDIアレンジ処理の処理内容が異なるのみである。
このため、本実施形態では、第一実施形態のカラオケ装置10と同一の構成には、同様の符号を付して説明を省略し、第一実施形態のカラオケ装置10とは異なるMIDIアレンジ処理を中心に説明する。
〈MIDIアレンジ処理〉
本実施形態におけるMIDIアレンジ処理は、楽曲データに基づく対象楽曲の演奏中に、カラオケ装置30の利用者が歌唱しやすい対象楽曲となるように楽曲データを修正する処理である。
【0065】
図6は、本実施形態におけるMIDIアレンジ処理の処理手順を示すフローチャートである。
本実施形態におけるMIDIアレンジ処理は、起動されると、図6に示すように、対象楽曲に対応する楽曲データを取得する(S210)。S210にて取得した楽曲データ(以下、取得楽曲データと称す)に基づいて、対象楽曲におけるガイメロ音域を特定する(S220)。
【0066】
そして、取得楽曲データに対応する楽曲の演奏を実行開始し、演奏音を音声出力部16から放音すると共に、歌詞データに基づく歌詞を表示部14に表示する(S230)。
続いて、音声入力部15を介して順次入力される音の波形を表す歌声波形データを、音声入力部15から取得する(S240)。カラオケ装置30において、楽曲の演奏中に音声入力部15を介して入力される音は、通常、カラオケ装置30の利用者が発した歌声である。このため、S240にて取得される歌声波形データは、利用者が発した歌声が時間軸に沿った波形を表す。また、本実施形態のS240では、歌声波形データの取得を、対象楽曲に対して予め規定された単位区間毎に実行する。この単位区間とは、ガイドメロディを形成する楽音のうちの予め規定された数の楽音に相当する区間でも良いし、予め規定された数の小節でも良いし、予め規定されたフレーズ(例えば、AメロやBメロ、サビ)でも良い。
【0067】
そして、カラオケ装置30の利用者が、ガイドメロディを構成する個々の楽音に対して発した歌声の周波数(以下、歌声音高周波数と称す)vf0を、S240で取得した歌声波形データ、及び取得楽曲データに基づいて、時間軸に沿って順次推定する(S250)。
【0068】
具体的には、S240にて歌声波形データを取得すると、本実施形態のS250では、その取得した歌声波形データに基づいて、歌声の周波数(以下、瞬時音高周波数と称す)を単位時間毎に特定する。そして、ガイドメロディを形成する楽音の各々に対応する区間での全瞬時音高周波数を平均化及び平滑化することで、一つの楽音に対する歌声音高周波数vf0を導出する。ただし、単位時間は、ガイドメロディを形成する楽音の中で演奏時間が最も短い楽音の演奏時間長よりも短い時間長である。なお、瞬時音高周波数を特定する方法としては、時間軸上の自己相関を用いる方法や、周波数スペクトルの自己相関を用いる方法など、周知の手法を用いれば良いため、ここでの詳しい説明は省略する。
【0069】
続いて、S250で導出された歌声音高周波数vf0のそれぞれと、各歌声音高周波数vf0に対応する楽音の音高との音高差(以下、音高差分と称す)DNを導出する(S260)。
【0070】
本実施形態のS260では、具体的に、S250にて導出された歌声音高周波数vf0を(1)式に代入することで、音高差分DNを導出する。なお、(1)式中のn0は、(1)式に代入する歌声音高周波数vf0に対応し、ガイドメロディを形成する楽音の音高(ただし、ノートナンバー)である。
【0071】
【数1】

【0072】
すなわち、(1)式は、代入された歌声音高周波数vf0と、該歌声音高周波数vf0に対応し、かつガイドメロディを形成する楽音の音高(ノートナンバー)との差分を、代入された歌声音高周波数vf0を音高(ノートナンバー)に変換した上で求める式である。
【0073】
続いて、S260で導出した音高差分DNに基づいて、抑圧帯域を特定する(S270)。
本実施形態のS270では、具体的に、第一実施形態における抑圧帯域と同様、最低音高mf0minよりも予め規定された音高α分低い音高を、音域最低値n0minとして、最高音高mf0maxよりも予め規定された音高α分高い音高を、音域最高値n0maxとして特定する。そして、その特定した音域最低値n0minから音域最高値n0maxまでの音高範囲(以下、基準範囲とする)を音高差分DNに基づいて補正した音高範囲を、抑圧帯域として特定する。
【0074】
本実施形態において、音高差分DNに基づく補正とは、音高差分DNに基づいて基準範囲を拡大することでも良いし、音高差分DNに基づいて基準範囲をシフトさせることでも良い。
【0075】
前者の場合、(2)式に基づいて、新たな音域最低値n0min'を導出し、(3)式に基づいて、新たな音域最高値n0max'を導出する。その上で、音域最低値n0min'から音域最高値n0max'までの音域(ノートナンバーの範囲)を抑圧帯域として特定する。ただし、(2)式,(3)式におけるKは、予め規定された「1」以上の定数である。
【0076】
【数2】

【0077】
すなわち、この方法では、図7(A)に示す基準範囲が音高差分DNに比例して拡大されることで形成される図7(B)に示す範囲が、抑圧帯域として特定される。
一方、音高差分DNに基づく補正のうち、後者の方法の場合、(4)式に基づいて、新たな音域最低値n0min'を導出し、(5)式に基づいて、新たな音域最高値n0max'を導出する。ただし、(4)式、及び(5)式におけるroundは、入力値を整数に近似して返答する関数である。また、本実施形態においては、(4)式で導出される音域最低値n0min'が最低音高mf0minより高い音高である場合、最低音高mf0minを音域最低値n0min'とし、(5)式で導出される音域最高値n0max'が最高音高mf0maxよりも低い音高である場合、最高音高mf0maxを音域最高値n0max'とするようにされている。
【0078】
【数3】

【0079】
そして、音域最低値n0min'から音域最高値n0max'までの音域(ノートナンバーの範囲)を抑圧帯域として特定する。
すなわち、この方法では、図8(A)に示す基準範囲を音高差分DNシフトすることで、図8(B)に示す抑圧帯域が規定される。
【0080】
ここで、MIDIアレンジ処理へと戻り、続くS280では、本MIDIアレンジ処理にて修正を加える対象となる楽音(以下、抑制楽音とする)を特定する。この抑制楽音を特定する方法は、第一実施形態におけるS140と同様であるため、ここでの詳しい説明は省略する。
【0081】
さらに、S280で特定された全ての抑制楽音の音の強さが低減されるように、取得楽曲データを修正する(S290)。このS290にて、全ての対象楽音の音の強さが低減するように修正した楽曲データが、修正楽曲データとなる。ただし、本実施形態のS290では、楽曲データの修正を単位区間毎に実行する。そして、その楽曲データを修正する対象となる単位区間は、今サイクルのS240にて取得した歌声波形データに対応する単位区間よりも時間軸に沿って楽曲の最後に近い単位区間である。なお、現サイクルとは、S230から後述するS300を繰り返す一連のサイクルであって、現在実行されているサイクルである。
【0082】
なお、本実施形態において、音の強さを低減させる方法は、第一実施形態におけるS150と同様であるため、ここでの詳しい説明は省略する。
続いて、取得楽曲データに規定された全ての楽音について演奏が完了したか否かを判定する(S300)。このS300での判定の結果、全ての楽音について、演奏が完了していなければ(S300:NO)、S230へと戻る。そのS230(即ち、次のサイクルのS230)では、現サイクルのS230にて演奏した単位区間の次の単位区間について演奏する。なお、このように全ての楽音について演奏が完了していない場合に、次のS230にて演奏される規定条件を満たすハーモニー伴奏楽器音は、先のS290にて楽音の音の強さが修正されたものである。すなわち、対象楽音についての音量は小さくなる。
【0083】
一方、S300での判定の結果、全ての楽音について演奏が完了していれば(S300:YES)、本MIDIアレンジ処理を終了し、次の起動指令が入力されるまで待機する。
[第二実施形態の効果]
以上説明したように、カラオケ装置30によれば、音域最低値n0min'及び音域最高値n0max'を、音高差分DNに応じて規定することができる。このため、カラオケ装置30によれば、利用者自身の声域が抑圧音域に含まれる可能性を向上させることができる。
【0084】
そして、このような抑圧音域に音高が含まれる楽音を対象楽音とした上で生成した修正楽曲データに基づき、カラオケ装置30にて対象楽曲を演奏すれば、その対象楽曲を歌唱した利用者は、利用者自身が歌唱した声をより聞き取りやすくなり、当該対象楽曲が歌いやすくなる。
[その他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、様々な態様にて実施することが可能である。
【0085】
例えば、上記第二実施形態におけるMIDIアレンジ処理は、楽曲データに基づく対象楽曲の演奏中に、カラオケ装置30の利用者が歌唱しやすい対象楽曲となるように楽曲データを修正する処理であったが、第二実施形態におけるMIDIアレンジ処理は、これに限るものではない。
【0086】
すなわち、第二実施形態におけるMIDIアレンジ処理は、楽曲データに基づく対象楽曲の演奏を実行する前に、カラオケ装置30の利用者が歌唱しやすい対象楽曲となるように楽曲データを修正する処理であっても良い。
【0087】
この場合、音高差分DNの導出方法は、種種の方法が考えられるが、一例としては、以下のようにすれば良い。
まず、記憶部18などに記憶された歌声波形データの中から、入力受付部13を介してカラオケ装置30の利用者が指定した利用者識別番号と対応付けられた歌声波形データを取得する。その取得した歌声波形データに基づいて、カラオケ装置30の利用者が発声可能な音域(以下、発声可能音域と称す)の代表値を導出する。そして、その導出された発声可能音域の代表値とガイメロ音域の代表値との差分を、音高差分DNとして導出する。
【0088】
なお、上記実施形態においては、楽曲データ修正装置を、カラオケ装置10,30の一つの機能として実現していたが、本発明における楽曲データ修正装置は、これに限るものではない。例えば、通信カラオケシステムとして、カラオケ端末と、カラオケ端末に楽曲データを配信するサーバとを備えた通信カラオケシステムが構成されている場合には、サーバを楽曲データ修正装置として機能させても良い。また、楽曲データ修正装置として専用の装置を設けても良い。
[実施形態と特許請求の範囲との対応関係]
最後に、上記実施形態の記載と、特許請求の範囲の記載との関係を説明する。
【0089】
第一実施形態のMIDIアレンジ処理におけるS110、及び第二実施形態のMIDIアレンジ処理におけるS210が、特許請求の範囲における楽曲データ取得手段に相当し、第一実施形態のMIDIアレンジ処理におけるS120,S130、及び第二実施形態のMIDIアレンジ処理におけるS220,S260,S270が、特許請求の範囲における抑圧音域特定手段に相当する。さらに、第一実施形態のMIDIアレンジ処理におけるS140、及び第二実施形態のMIDIアレンジ処理におけるS280が、特許請求の範囲における抑制楽音特定手段に相当し、第一実施形態のMIDIアレンジ処理におけるS150、及び第二実施形態のMIDIアレンジ処理におけるS290が、特許請求の範囲におけるデータ修正手段に相当する。
【0090】
また、第二実施形態のMIDIアレンジ処理におけるS240が、特許請求の範囲における歌声データ取得手段に相当し、S250が、特許請求の範囲における歌唱音高特定手段に相当し、S260が、特許請求の範囲における音高差分導出手段に相当し、S270が、特許請求の範囲における抑圧音域決定手段に相当する。
【符号の説明】
【0091】
10,30…カラオケ装置 11…通信部 13…入力受付部 14…表示部 15…音声入力部 16…音声出力部 17…音源モジュール 18…記憶部 20…制御部 21…ROM 22…RAM 23…CPU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種類の楽器の音を出力可能なカラオケ装置にて演奏される楽曲を表し、該楽曲にて歌唱されるべき旋律を表すガイドメロディの演奏を担当する楽器の音であるガイメロ楽器音、該ガイドメロディに対する少なくとも一つの副次的な旋律の演奏を担当する各楽器の音であるハーモニー伴奏楽器音、及び該楽曲のリズムを刻む楽器の音であるリズム楽器音について、それぞれ、個々の楽音の音高、演奏開始タイミング、及び音の強さが規定された楽譜トラックを有した楽曲データを取得する楽曲データ取得手段と、
少なくとも前記楽曲データ取得手段で取得した楽曲データに基づいて、前記ガイメロ楽器音に対応する楽譜トラックにおける楽音の最低音高から最高音高までの音高範囲を含むように規定された音域最低値から音域最高値までの音域である抑圧音域を特定する抑圧音域特定手段と、
前記ハーモニー伴奏楽器音に対応する各楽譜トラックにおける楽音の中で、音高が、前記抑圧音域特定手段で特定された抑圧音域内である対象楽音を特定し、その特定した対象楽音を少なくとも含む楽音である抑制楽音を特定する抑制楽音特定手段と、
前記抑制楽音特定手段で特定された抑制楽音の音の強さが低減するように、前記楽曲データを修正した修正楽曲データを生成するデータ修正手段と
を備えることを特徴とする楽曲データ修正装置。
【請求項2】
前記抑制楽音特定手段は、
前記ハーモニー伴奏楽器音に対応する個々の楽譜トラックに規定された全楽音のうち、前記対象楽音の占める割合が予め規定された規定割合以上である楽譜トラックを特定し、その特定した楽譜トラックに規定された全ての楽音を、前記抑制楽音とすることを特徴とする請求項1に記載の楽曲データ修正装置。
【請求項3】
前記抑制楽音特定手段は、
前記対象楽音の各々を、前記抑制楽音とすることを特徴とする請求項1に記載の楽曲データ修正装置。
【請求項4】
前記データ修正手段は、
前記音の強さが低減するように予め規定された規定係数を、前記抑制楽音それぞれの音の強さに乗じることで、前記修正楽曲データを生成することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の楽曲データ修正装置。
【請求項5】
前記データ修正手段は、
前記音の強さが低減するように予め規定された規定値を、前記抑制楽音それぞれの音の強さから減算することで、前記修正楽曲データを生成することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の楽曲データ修正装置。
【請求項6】
前記楽曲データに基づく演奏に対して歌唱された歌声の時間軸に沿った波形を表す歌声波形データを取得する歌声データ取得手段と、
前記歌声データ取得手段で取得した歌声波形データに基づいて、歌声の音高を表す歌声音高を時間軸に沿って順次特定する歌唱音高特定手段と
を備え、
前記抑圧音域特定手段は、
前記ガイメロ楽器に対応する楽譜トラックにおける楽音の音高と、前記歌唱音高特定手段で特定された歌声音高との差分である音高差分を導出する音高差分導出手段と、
前記音高差分導出手段で導出した音高差分に基づいて、前記音域最低値、及び前記音域最高値を規定する抑圧音域決定手段と
を備えることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の楽曲データ修正装置。
【請求項7】
前記音域最低値として前記最低音高よりも低い音高が、前記音域最高値として前記最高音高よりも高い音高が、予め規定されており、
前記抑圧音域決定手段は、
該音域最低値が、前記音高差分の大きさに比例してより低い音高となるように、新たな音域最低値を規定し、
前記音域最高値が、前記音高差分の大きさに比例してより高い音高となるように、新たな音域最高値を規定する
ことを特徴とする請求項6に記載の楽曲データ修正装置。
【請求項8】
前記音域最低値として前記最低音高よりも低い音高が、前記音域最高値として前記最高音高よりも高い音高が、予め規定されており、
前記抑圧音域決定手段は、
前記音域最低値から前記音高差分シフトした音高を、新たな音域最低値として規定し、
前記音域最高値から前記音高差分シフトした音高を、新たな音域最高値として規定する
ことを特徴とする請求項6に記載の楽曲データ修正装置。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図2】
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