説明

楽曲レコメンド装置、方法及びプログラム

【課題】楽曲の一般的な著名性や人気度を問わず、個々のユーザの趣味嗜好に適合した楽曲を推薦すること。
【解決手段】プレイリストなどとしてユーザが指定した複数の楽曲からコード進行を検出し、その登場数量(曲数、回数、該当部分の時間、相対的音量など)から抽出した特徴的コード進行の組合せと共通性を有する楽曲を選択してレコメンドすることにより、複数の曲に共通する特徴的コード進行という個人の趣味嗜好がより多面的に反映された音楽的要素が推薦の基準となるので、楽曲の一般的な著名性や人気度を問わず、個々のユーザの趣味嗜好に適合した楽曲を推薦することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、楽曲のレコメンドに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インターネットに代表される通信ネットワークを通じた音楽配信サービスなどにおいて、ユーザが好む可能性の高いコンテンツとして、ユーザの属性(性別、年齢等)に基づいて、ランキングが上位の楽曲をレコメンド(推薦)する機能が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−50186号
【特許文献2】特開2007−183417号
【特許文献3】特開平5−181464号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記のような従来の技術では、統計に基づきユーザの属性に応じた楽曲をレコメンドしているに過ぎず、個々のユーザの趣味嗜好は考慮されないという課題があった。また、統計に基づく結果、比較的有名で誰もが好みそうなありふれた楽曲がレコメンド対象となり、レコメンドされたユーザはその楽曲をすでに知っている可能性も高い。このため、ユーザが知らない楽曲と出会えるというレコメンドの長所が十分活かされないという問題もあった。
【0005】
なお、指定された楽曲の波形から解析するコード進行と似たコード進行の楽曲を検索する技術も提案されているが(例えば、特許文献2参照)、特定の曲とコード進行の似た曲がユーザの趣味嗜好と一致するとは限らず、好みから外れた曲が提示されたり、逆に好みの曲を見逃す可能性も大きいという問題があった。
【0006】
上記の課題に対し、本発明の目的は、楽曲の一般的な著名性や人気度を問わず、個々のユーザの趣味嗜好に適合した楽曲を推薦することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的をふまえ、本発明の一態様(1)は、楽曲レコメンド装置であって、レコメンド候補の楽曲ごとに一又は二以上のコード進行を記憶している候補記憶手段と、複数の楽曲の指定を受け付ける指定曲受付手段と、指定された前記複数の楽曲について所定のコード進行の登場を検出するコード検出手段と、検出された前記コード進行から、前記複数の楽曲における登場の数量に基づいて一又は二以上のコード進行を特徴的コード進行として抽出する抽出手段と、抽出された前記特徴的コード進行とコード進行が適合する楽曲を前記レコメンド候補から選択する候補選択手段と、選択された前記楽曲をユーザにレコメンドするレコメンド手段と、を有することを特徴とする。
【0008】
本発明の他の態様(7)は、上記態様を方法のカテゴリで捉えた楽曲レコメンド方法であって、レコメンド候補の楽曲ごとに一又は二以上のコード進行を所定の候補記憶手段に予め記憶し、コンピュータが、複数の楽曲の指定を受け付ける指定曲受付処理と、コンピュータが、指定された前記複数の楽曲について所定のコード進行の登場を検出するコード検出処理と、コンピュータが、検出された前記コード進行から、前記複数の楽曲における登場の数量に基づいて一又は二以上のコード進行を特徴的コード進行として抽出する抽出処理と、コンピュータが、抽出された前記特徴的コード進行とコード進行が適合する楽曲を前記レコメンド候補から選択する候補選択処理と、コンピュータが、選択された前記楽曲をユーザにレコメンドするレコメンド処理と、を含むことを特徴とする。
【0009】
本発明の他の態様(8)は、上記態様をコンピュータ・プログラムのカテゴリで捉えた楽曲レコメンドプログラムであり、レコメンド候補の楽曲ごとに一又は二以上のコード進行を所定の候補記憶手段に記憶しているコンピュータを制御するコンピュータ・プログラムであって、コンピュータに、複数の楽曲の指定を受け付けさせ、コンピュータに、指定された前記複数の楽曲について所定のコード進行の登場を検出させ、コンピュータに、検出された前記コード進行から、前記複数の楽曲における登場の数量に基づいて一又は二以上のコード進行を特徴的コード進行として抽出させ、コンピュータに、抽出された前記特徴的コード進行とコード進行が適合する楽曲を前記レコメンド候補から選択させ、コンピュータに、選択された前記楽曲をユーザにレコメンドさせることを特徴とする。
【0010】
このように、プレイリストなどとしてユーザが指定した複数の楽曲からコード進行を検出し、その登場数量から抽出した特徴的コード進行の組合せと共通性を有する楽曲を選択してレコメンドすることにより、複数の曲に共通する特徴的コード進行という個人の趣味嗜好がより多面的に反映された音楽的要素が推薦の基準となるので、楽曲の一般的な著名性や人気度を問わず、個々のユーザの趣味嗜好に適合した楽曲を推薦することが可能となる。
【0011】
本発明の他の態様(2)は、上記いずれかの態様において、前記抽出手段は、検出された前記コード進行のうち、ドローン又はモードの少なくとも一方については、他の種類のコード進行よりも優先して前記特徴的コード進行に含めて抽出することを特徴とする。
【0012】
このように、楽曲中で相対的に目立ちやすいドローンやモードを、顕著な特徴として優先的に特徴的コード進行に含めて同様のコードを含む楽曲を検索することにより、ユーザが指定した楽曲と目立つ特徴が共通する楽曲が検索できるので、個々のユーザの趣味嗜好により一層適合した楽曲を推薦できる。
【0013】
本発明の他の態様(3)は、上記いずれかの態様において、前記候補記憶手段は、前記レコメンド候補の楽曲ごとに前記コード進行に加え、使用されている一又は二以上の楽器種別を記憶しており、指定された前記複数の楽曲について、使用されている楽器種別を、楽器種別ごとに予め対応付けられている周波数との一致に基づいて検出する楽器検出手段と、前記楽器検出手段により検出された前記楽器種別から、前記複数の楽曲における登場の数量に基づいて一又は二以上の楽器種別を特徴的楽器種別として抽出する抽出手段と、を有し、前記候補選択手段は、抽出された前記特徴的コード進行及び前記特徴的楽器種別と適合する楽曲を前記レコメンド候補から選択することを特徴とする。
【0014】
このように、コード進行に加え、周波数から楽器種別を検出し、その登場数量から抽出した特徴的楽器種別も加味して楽曲を抽出することにより、楽器の醸し出す楽曲の雰囲気もレコメンド対象に反映されるので、個々のユーザの趣味嗜好にさらに一層適合した楽曲を推薦できる。
【0015】
本発明の他の態様(4)は、上記いずれかの態様において、前記候補記憶手段は、前記レコメンド候補の楽曲ごとに対応してアーティストを記憶しており、前記レコメンド手段は、前記レコメンド候補から選択された楽曲に係る前記アーティストに対応する他の楽曲もレコメンドすることを特徴とする。
【0016】
このように、特徴的コード進行などに基づいて選択された楽曲のアーティストの他の楽曲についてもレコメンドすることにより、コード進行等が異なっても同じアーティストという共通性ある楽曲がレコメンドできるので、ユーザが知らなかった楽曲と出会えるというレコメンドの長所が活かせる機会が増え、コンテンツの利用も促進できる。
【0017】
本発明の他の態様(5)は、上記いずれかの態様において、複数の前記特徴的コード進行が抽出された場合、それら特徴的コード進行を表示して重みの指定を受け付ける重み受付手段を有し、前記候補選択手段は、前記レコメンド候補から楽曲を選択するにあたり、楽曲が前記特徴的コード進行と一致するコード進行を持つことをその特徴的コード進行について指定されている前記重みに応じて前記適合の評価に反映させることを特徴とする。
【0018】
このように、複数抽出した特徴的コード進行をユーザに表示し、その間の優先順位など重みの指定を受け付けて楽曲の選択に反映させることにより、ユーザの判断を尊重すると共に、抽出された全ての特徴的コード進行を兼ね備えた候補が少ない場合でも、重みの大きい特徴的コード進行を優先して十分な数の楽曲を選択しレコメンドすることが可能となる。
【0019】
本発明の他の態様(6)は、上記いずれかの態様において、前記特徴的コード進行に基づいて選択及びレコメンドされた前記楽曲ごとに対応して入力されたアクション内容が所定の肯定的アクションであるか又は所定の否定的アクションであるかの別に応じて、その楽曲のコード進行と一致していた又は一致していなかった前記特徴的コード進行ごとの重みを設定又は修正する重み設定手段を有することを特徴とする。
【0020】
このように、レコメンドした楽曲ごとに対応したアクション内容に応じて、特徴的コード進行ごとの重みを修正することにより、ユーザの意識とは別に潜在的に趣味嗜好に影響していたコード進行の重みを相対的に充実させることができ、レコメンドの精度が一層改善できる。
【0021】
なお、上記の各態様とは異なるカテゴリ(装置に対し方法、方法に対しプログラムなど)や、以下に説明するさらに具体的な各態様も本発明に含まれる。異なるカテゴリについては、「手段」を「処理」又は「ステップ」のように適宜読み替えるものとする。また、処理やステップの実行順序は以上記述したものに限定されず、適宜変更したりまとめて処理するなど、変更可能である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、楽曲の一般的な著名性や人気度を問わず、個々のユーザの趣味嗜好に適合した楽曲を推薦することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態の構成を示す機能ブロック図。
【図2】本発明の実施形態で用いるデータの一部を例示する図。
【図3】本発明の実施形態における処理手順を例示するフローチャート。
【図4】本発明の実施形態で用いるデータの一部を例示する図。
【図5】本発明の実施形態で用いるデータの一部を例示する図。
【図6】本発明の実施形態で用いるデータの一部を例示する図。
【図7】本発明の実施形態で用いるデータの一部を例示する図。
【図8】本発明の実施形態における画面例を示す図。
【図9】本発明の実施形態で用いるデータの一部を例示する図。
【図10】本発明の実施形態における画面例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、本発明を実施するための形態(「実施形態」と呼ぶ)について、図に沿って説明する。なお、背景技術や課題などで既に述べた内容と共通の前提事項については適宜省略する。
【0025】
〔1.構成〕
本実施形態は、図1の構成図に示すように、通信ネットワークN(インターネット、携帯電話網、LANなど)経由でアクセスしてくる端末Tに、楽曲をレコメンドするサーバ装置である楽曲レコメンド装置1(「本装置」又は「本装置1」と略称する)に関する。ここで、端末Tは、エンドユーザがウェブページを閲覧する情報処理装置で、パーソナル・コンピュータ(PC)、ポータブル電子情報端末装置(スマートフォン、タブレットPC、携帯電話端末装置)などの他、インターネット接続機能付きのテレビ(テレビジョン受像機)など具体的な種類は自由で、また、図1では一つを模式的に例示するが、実際は多数存在する。
【0026】
本装置1及び端末Tは、一般的なコンピュータの構成として少なくとも、CPUなどの演算制御部6と(端末Tについては図示省略。以下同じ)、記憶装置7(主メモリ、フラッシュメモリ、HDD等)と、通信ネットワークNとの通信手段8(無線や有線のLANアダプタ、通信ゲートウェイ装置など)と、を有する。特に端末Tは、液晶表示パネルなどの表示装置と、タッチパネルやボタンなどの入力装置と、を有する(図示省略)。
【0027】
そして、本装置1では、記憶装置7に予め記憶(インストール)した図示しない所定のコンピュータ・プログラムが演算制御部6を制御することで、図1に示す各手段などの要素(10,20など)を実現する。このうち、情報の記憶手段は、記憶装置7において各種のデータベース(「DB」とも表す)やファイル、配列等の変数、各種スタックやレジスタ、システム設定値など任意の形式で実現できる。
【0028】
このような記憶手段のうち、候補記憶手段65は、図2に例示するように(図中の破線については後述)、レコメンド候補となる多数の楽曲(図2の「楽曲情報」参照)ごとに、一又は二以上のコード進行に加え、使用されている一又は二以上の楽器種別を記憶している手段である。なお、記憶手段以外の各手段は、以下のような情報処理の機能・作用を実現・実行する処理手段である。
【0029】
〔2.作用〕
上記のように構成した本実施形態の作用を図3のフローチャートに示す。
〔2−1.指定曲の受付〕
まず、指定曲受付手段10が、ユーザから複数の楽曲の指定をプレイリストなどの形で受け付け(ステップS1)、その楽曲を表す楽曲情報を指定曲記憶手段15に記憶させる。図4は、指定曲記憶手段15に記憶された楽曲情報と、後述のコード等記憶手段35にその後記憶される情報を一体に示した概念図であり、図中の破線については後述する。なお、楽曲情報は、図4や図2に示す曲名やアーティスト名に限らず、曲IDその他任意の情報内容でよい。また、ユーザから楽曲の指定を受け付ける態様は、候補一覧や検索結果からの選択のほか、音響ファイルのアップロードなど自由である。このように指定された楽曲を「指定曲」と略称することとする。
【0030】
〔2−2.コード進行の検出〕
そして、コード検出手段20が、各指定曲を指定曲記憶手段15から読み出してその全ての楽曲について所定のコード進行の登場を検出し(ステップS2)、コード等記憶手段35に記憶させる(例えば、図4中の「コード進行」)。図4の例では、コード進行ごとの検出の有無を「○」又は「×」で表すことにより、結果的に、そのコード進行に関する登場の数量として、「○」の合計数すなわち曲数を記憶しているが、登場の数量に関する他の例として、例えば、曲ごと又は各曲合計での登場の回数、該当部分の時間、相対的音量などを記憶しておけば、より高精度なレコメンドが実現できる。
【0031】
また、コード進行を検出する手法については、従来公知の任意の手法を用いてよいが、例えば、図5に例示するように、コード進行の種類ごとの特徴をコード進行記憶手段22に記憶しておき、指定曲をこれら特徴と照合し、適合するコード進行を検出したり、適合度が相対的に高いコード進行を検出するなどが考えられる。より具体的には、例えば、音源から抽出した低い周波数の動きをベース音と判断し、そのベース音の上にどんな音程が重なっているか周波数から判断し、そのパターンに基づいてコード進行を抽出するなどが考えられる。
【0032】
上記のように検出した図中の各コード進行のうち、「借用和音」は、曲の調のダイアトニックコードとして存在しない和音を一時的に利用する手法であり、「ダイアトニックコード」は、あるキーの音階上の音だけを組み合わせて構成された和音である。「純固有和音」は、同主調のダイアトニックコードを一時的に利用する手法で、借用和音のひとつである。「ブルーノート」は、長音階の構成音(ハ長調であればドレミファソラシ)およびその第3音、第5音、第7音を半音下げた音を加えた音階を使用することである。「転調」は、曲中に調を変えることで、具体的には長調・短調の変化、あるいは五線譜上の調号の変化があれば転調とする。
【0033】
「ドローン」は、曲中にある特定の音(特にベース音)を長い間持続的に出す手法である。「クリシェ」は、単調なコード進行パターンを避けるために、基本のコードは変えずに、半音階や全音階の装飾的・慣用的なメロディーラインを創る(クリシェ・ライン)手法である。「モード」は、一般的な長調・短調以外の音の並びとは異なる並べ方でできた音階を利用した音楽であり、具体的には、ドリアン、フリジアン、リディアン、ミクソリディアン、ロクリアンの音階を指す。
【0034】
〔2−3.楽器の検出〕
また、複数の各指定曲について、楽器検出手段30が、使用されている楽器種別を、楽器種別ごとに予め対応付けられている周波数との一致に基づいて検出し(ステップS3)、コード等記憶手段35に記憶させる(例えば、図4中の「楽器種別」)。図4の例では、楽器種別ごとの検出の有無を「○」又は「×」で表すことにより、その楽器種別に関する登場の数量として、「○」の合計数すなわち曲数を記憶しているが、登場の数量に関する他の例として、例えば、曲ごと又は合計での登場の回数、該当部分の時間、ソロか否か、楽器台数、相対的音量などを記憶しておけば、より高精度なレコメンドが実現できる。
【0035】
楽器種別を抽出する手法については、従来公知の任意の手法を用いてよいが(例えば、特許文献4参照)、一例として、図6に例示するように、楽器特徴記憶手段33に楽器の種別ごとの周波数成分などの特徴を予め記憶しておき、それを基に対象の楽曲の全体又は部分ごとに照合などにより抽出することが考えられる。
【0036】
〔2−4.特徴的コード進行の抽出〕
そして、特徴コード抽出手段40が、検出されたコード進行から、複数の指定曲における登場の数量(例えば、曲数、回数、該当部分の時間、相対的音量など)に基づいて一又は二以上のコード進行を特徴的コード進行として抽出し(ステップS4)、特徴記憶手段45に記憶させる。例えば、図4に示したコード進行のうち、4曲全てで「○」なのは純固定和音とドローンであり(図4において破線の矩形で示す)、これらを特徴的コード進行として抽出する場合を考える。
【0037】
図7は、特徴記憶手段45に記憶された特徴的コード進行と、後述の特徴的楽器種別(両者併せて「特徴要素」と総称することとする)を例示する概念図で、実際のデータ表現形式は自由であるが、「コード進行」及び「楽器種別」のうち破線の楕円で示している要素が特徴要素(特徴的コード進行及び特徴的楽器種別)であることを示している。
【0038】
この例において、特徴的コード進行の例は破線の楕円で示す「純固有和音」及び「ドローン」である。図中、各欄の数字は、指定曲のうちその特徴要素が検出された曲の割合を実数で示し(例えば、4曲中4曲なら「1.0」、4曲中3曲なら「0.75」など)、この例では、全ての指定曲で検出され割合が「1.0」であるものが特徴要素となっている(破線の円及び楕円で示す)。
【0039】
なお、特徴的コード進行の抽出において特徴コード抽出手段40は、検出された前記コード進行のうち、ドローン又はモードの少なくとも一方については、他の種類のコード進行よりも優先して前記特徴的コード進行に含めて抽出する。ここで、ドローンやモードを他の種類のコード進行よりも「優先」する態様は自由で、例えば、所定の割合や数の指定曲で検出されたコード進行を特徴的コード進行として抽出する場合、ドローンとモードについては他のコード進行よりも少ない割合や数(例えば、一曲でも)を適用するなどが考えられる。
【0040】
〔2−5.特徴的楽器種別の抽出〕
続いて、特徴楽器抽出手段50が、上記のように検出された楽器種別(例えば図4)から、前記複数の楽曲における登場の数量(例えば、曲数、回数、該当部分の時間、ソロか否か、楽器台数、相対的音量など)に基づいて一又は二以上の楽器種別を特徴的楽器種別として抽出し(ステップS5)、特徴記憶手段45に記憶させる(例えば図7)。
【0041】
本実施形態では、特徴的コード進行で述べたとおり特徴要素としては、全ての指定曲で検出され割合が「1.0」であるものが特徴要素となっており、図7において破線の楕円で示すように、楽器種別としてはドラム、ベース、ボーカルが、それぞれ特徴要素である特徴的楽器種別となっている。
【0042】
〔2−6.重みによる楽曲選択〕
上記のように抽出された特徴要素に基づく楽曲の選択に先立ち、個々の特徴要素に、楽曲の選択基準としての重みを設定することができる。特徴要素のうち特徴的コード進行又は特徴的楽器種別の一方だけに重みを設定したり、重みの設定を含まない実施形態も可能であるが、ここでは、特徴的コード進行及び特徴的楽器種別の双方を重み設定の対象とする例を示す。重みの設定では、具体的には、特徴要素(特徴的コード進行及び特徴的楽器種別の少なくとも一方)が複数抽出された場合、重み受付手段60が、それら特徴コード進行を表示して重みの指定を受け付けて設定する(ステップS6)。
【0043】
例えば、図8の画面例では、ユーザのプレイリストPが表示されるとともに、各特徴要素Cについても、個々の特徴要素の重みに対応する優先順位(例えば「第1位」「第2位」など)、及び特徴要素ごとに対応する操作ボタン、すなわち「例を試聴」ボタンB1,「上位へ」ボタンB2,「下位へ」ボタンB3と共に表示されている。そして、各特徴要素Cに対応して、タッチ操作やマウス操作などで「例を試聴」ボタンB1を操作すれば、コード進行や楽器のサンプル音声を再生し、「上位へ」ボタンB2を操作すれば一つ上の特徴要素と優先順位を入れ替えた状態に表示を更新し、「下位へ」ボタンB3を操作すれば一つ下の特徴要素と優先順位を入れ替えた状態に表示を更新する。このようにして所望の優先順位で各特徴要素が表示された状態にして、「確定してオススメ楽曲を表示」ボタンB5を操作すると、その優先順位の高さに応じた重み(優先順位第1位が重み最大)で、下記のような楽曲の選択に進む。
【0044】
〔2−7.楽曲の選択〕
楽曲の選択では、候補選択手段70が、抽出された特徴要素である特徴的コード進行や特徴的楽器種別と、コード進行や楽器種別が適合する楽曲を、候補記憶手段65に記憶されているレコメンド候補から選択し(ステップS7)、選択曲記憶手段75に記憶させる。例えば、図7に示した特徴要素(破線の楕円で示す純固有和音、ドローン、ドラム、ベース、ボーカル)に基づけば、図2に例示したレコメンド候補のうち同じ特徴要素(図2中、破線の矩形で示す)を持つ最初の2曲、「夜に…」(アーティスト名「F山・・・」)と、「震える・・」(G田・・・)が適合し、選択される。このように選択され選択曲記憶手段75に記憶されている楽曲の情報を図9に例示する。
【0045】
なお、上記のようにレコメンド候補から楽曲を選択するにあたり、候補選択手段70は、楽曲が特徴要素である特徴的コード進行や特徴的楽器種別と一致するコード進行や楽器種別を持つことを、その特徴要素について指定されている前記重みに応じて前記適合の評価に反映させる。重みを反映した計算で適合を評価する例としては、優先順位に応じた重みを特徴要素ごとに設定し、各レコメンド候補に対しその有する特徴要素の重みの合計値をスコアとして与え、その合計値の多いものを優先して所定数までレコメンドする楽曲として選択するなどが考えられる。
【0046】
例えば、優先順位第1位の重みを5、第2の重みを4・・・第5位の重みを1、のようにする場合、第1位と第2の特徴要素を備えたレコメンド候補のスコアは9点、第4位と第5位の特徴要素を備えたレコメンド候補のスコアは3点となる。すなわち、図8の画面例に示した特徴要素の優先順位(「純固有和音」「ドローン」・・・)を基に、図2のレコメンド候補から3曲目まで選択する際に、ドラム、ベース、ボーカルの重みよりも、純固有和音やドローンの重みが十分に大きい場合、図2のレコメンド候補のうち最下段の「星の・・・」(K宮・・・)も、優先順位が高く重みが大きい純固有和音とドローンを含む点で(図中、破線の円で示す)、スコアが高くなり、選択されることとなる。
【0047】
〔2−8.楽曲等のレコメンド〕
そして、上記のように選択された楽曲を、レコメンド手段80が、ユーザにレコメンドする(ステップS8)。図10は、レコメンドの画面例であり、3つの楽曲ごとに、「試聴」ボタンB6,「買い物カゴへ」ボタンB7,「リストから削除」ボタンB8などが表示されている。3つの楽曲のうち1番目の「夜に…」(F山・・・)と2番目の「震える・・」(G田・・・)は特徴要素との適合で選択された楽曲であり、3番目の「春の・・・」(G田・・・)は、2番目の「震える・・」(G田・・・)とアーティスト「G田・・・」の共通性に基づいてレコメンドされているものである。
【0048】
すなわち、候補記憶手段65は、レコメンド候補の楽曲ごとに対応してアーティストを記憶しており(図2)、レコメンド手段80は、それらレコメンド候補から選択された楽曲に係るアーティストに対応する他の楽曲もレコメンドする(ステップS8)。
【0049】
〔2−9.アクションによる重みの修正〕
上記のように表示されたレコメンドの画面において、ユーザは興味を持った曲についてボタンB6,B7やB8を操作して試聴など任意のアクションを行うが、これらアクションの内容に応じて各特徴要素の重みを新たに設定ないし修正することができる。この場合、重み設定手段90が、特徴要素に基づいて選択及びレコメンドされた楽曲ごとに対応して入力されたアクション内容が所定の肯定的アクションであるか又は所定の否定的アクションであるかの別に応じて、その楽曲のコード進行や楽器種別と一致していた又は一致していなかった特徴要素ごとの重みを設定又は修正する(ステップS9)。
【0050】
ここで、楽曲ごとに対応して入力された「アクション内容」は、任意であるが、例えば、「買い物カゴへ」ボタンB7などで、いわゆる電子商取引の買い物カゴ機能に登録するアクションの有無、「リストから削除」ボタンB8などでレコメンド画面から削除するアクションの有無、「試聴」ボタンB6などによる試聴の有無やその継続時間、その後の料金精算を経た曲データのダウンロードの有無、その他、評価入力の内容など自由に定めることができる。
【0051】
また、重みの設定や修正についても具体的な基準は自由であるが、例えば、アクションが肯定的(例えば「買い物カゴへ」ボタンB7の操作)ならその楽曲のコード進行や楽器種別と一致していた特徴要素について優先順位を上げるなど重みを増し、アクションが否定的(例えば「リストから削除」ボタンB8の操作)なら、そのような特徴要素について優先順位を下げるなど重みを減らすなどが考えられる。
【0052】
上記のように修正した重みの活用態様として、例えば、図10の画面において「優先順位の設定へ戻る」ボタンB9を操作することで、図8の画面例に準じた特徴要素の一覧画面へ遷移したときに反映させるほか、各特徴要素の初期値となるデフォルトの重みすなわち優先順位としてユーザに紐付けて記憶しておき、次回以降にプレイリストを指定して楽曲のレコメンドを受ける際に適用すれば、ユーザの意向に合った優先順位が反映されるので、その際に再び図8のような画面で特徴要素の重み(優先順位)を調整する場合に作業が最小限で済み、楽曲レコメンドの使い勝手が向上する。
【0053】
〔3.効果〕
以上のように、本実施形態では、プレイリストなどとしてユーザが指定した複数の楽曲からコード進行(例えば図5、図4)を検出し、その登場数量から抽出した特徴的コード進行(例えば図7)の組合せと共通性を有する楽曲を選択して(例えば図9)レコメンドすることにより(例えば図10)、複数の曲に共通する特徴的コード進行という個人の趣味嗜好がより多面的に反映された音楽的要素が推薦の基準となるので、楽曲の一般的な著名性や人気度を問わず、個々のユーザの趣味嗜好に適合した楽曲を推薦することが可能となる。
【0054】
特に、本実施形態では、楽曲中で相対的に目立ちやすいドローンやモードを、顕著な特徴として優先的に特徴的コード進行に含めて同様のコードを含む楽曲を検索することにより、ユーザが指定した楽曲と目立つ特徴が共通する楽曲が検索できるので、個々のユーザの趣味嗜好により一層適合した楽曲を推薦できる。
【0055】
また、本実施形態では、コード進行に加え、周波数から楽器種別を検出し(例えば図6、図4)、その登場数量から抽出した特徴的楽器種別(例えば図7)も加味して楽曲を抽出することにより(例えば図9)、楽器の醸し出す楽曲の雰囲気もレコメンド対象に反映されるので、個々のユーザの趣味嗜好にさらに一層適合した楽曲を推薦できる。
【0056】
さらに、本実施形態では、特徴的コード進行などに基づいて選択された楽曲のアーティストの他の楽曲についてもレコメンドすることにより(例えば図10)、コード進行等が異なっても同じアーティストという共通性ある楽曲がレコメンドできるので、ユーザが知らなかった楽曲と出会えるというレコメンドの長所が活かせる機会が増え、コンテンツの利用も促進できる。
【0057】
加えて、本実施形態では、複数抽出した特徴的コード進行をユーザに表示し、その間の優先順位など重みの指定を受け付けて(図10)楽曲の選択に反映させることにより、ユーザの判断を尊重すると共に、抽出された全ての特徴的コード進行を兼ね備えた候補が少ない場合でも、重みの大きい特徴的コード進行を優先して十分な数の楽曲を選択しレコメンドすることが可能となる。
【0058】
とりわけ、本実施形態では、レコメンドした楽曲ごとに対応したアクション内容に応じて、特徴的コード進行ごとの重みを修正することにより、ユーザの意識とは別に潜在的に趣味嗜好に影響していたコード進行の重みを相対的に充実させることができ、レコメンドの精度が一層改善できる。
【0059】
〔4.他の実施形態〕
なお、上記各実施形態は例示に過ぎず、本発明は、以下に例示するものやそれ以外の他の実施態様も含むものである。例えば、上記実施形態では、ドローンやモードを他の特徴より優先したが、これは必須ではなく、どの特徴にどのように重みを置くかについては自由に変更して実施することができる。また、候補記憶手段65に記憶しておくレコメンド候補の特徴であるコード進行、楽器種別について、予め手作業などでデータ(例えば図2)を用意するほかに、例えば、楽曲の音響ファイル登録などに際しコード検出手段20や楽器検出手段30もしくはこれらと同等の構成により検出して登録する手段を本装置1に設けてもよい。
【0060】
また、本発明に関する手段などの各要素は、コンピュータの演算制御部に限らず、ワイヤードロジック等に基づく電子回路など他の情報処理機構で実現してもよい。また、各構成図、データの図、フローチャートの図などは例示に過ぎず、各要素の有無、その配置順序や各処理の実行順序、具体的内容などは適宜変更可能である。例えば、サーバは、構成要素となるサーバなどの装置を複数用いて実現してもよく、個々の記憶手段を別個独立のサーバ装置やシステムで実現する構成も一般的である。
【0061】
また、機能によっては、外部のプラットフォーム等をAPI(アプリケーション・プログラム・インタフェース)やネットワークコンピューティング(いわゆるクラウドなど)で呼び出して実現するなど、構成は柔軟に変更できる。
【符号の説明】
【0062】
1 楽曲レコメンド装置(本装置)
6 演算制御部
7 記憶装置
8 通信手段
10 指定曲受付手段
15 指定曲記憶手段
20 コード検出手段
22 コード進行記憶手段
30 楽器検出手段
33 楽器特徴記憶手段
35 コード等記憶手段
40 特徴コード抽出手段
45 特徴記憶手段
50 特徴楽器抽出手段
60 重み受付手段
65 候補記憶手段
70 候補選択手段
75 選択曲記憶手段
80 レコメンド手段
90 重み設定手段
B1〜B9 ボタン
C 各特徴要素
N 通信ネットワーク
P プレイリスト
T 端末

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レコメンド候補の楽曲ごとに一又は二以上のコード進行を記憶している候補記憶手段と、
複数の楽曲の指定を受け付ける指定曲受付手段と、
指定された前記複数の楽曲について所定のコード進行の登場を検出するコード検出手段と、
検出された前記コード進行から、前記複数の楽曲における登場の数量に基づいて一又は二以上のコード進行を特徴的コード進行として抽出する抽出手段と、
抽出された前記特徴的コード進行とコード進行が適合する楽曲を前記レコメンド候補から選択する候補選択手段と、
選択された前記楽曲をユーザにレコメンドするレコメンド手段と、
を有することを特徴とする楽曲レコメンド装置。
【請求項2】
前記抽出手段は、検出された前記コード進行のうち、ドローン又はモードの少なくとも一方については、他の種類のコード進行よりも優先して前記特徴的コード進行に含めて抽出することを特徴とする請求項1記載の楽曲レコメンド装置。
【請求項3】
前記候補記憶手段は、前記レコメンド候補の楽曲ごとに前記コード進行に加え、使用されている一又は二以上の楽器種別を記憶しており、
指定された前記複数の楽曲について、使用されている楽器種別を、楽器種別ごとに予め対応付けられている周波数との一致に基づいて検出する楽器検出手段と、
前記楽器検出手段により検出された前記楽器種別から、前記複数の楽曲における登場の数量に基づいて一又は二以上の楽器種別を特徴的楽器種別として抽出する抽出手段と、
を有し、
前記候補選択手段は、抽出された前記特徴的コード進行及び前記特徴的楽器種別と適合する楽曲を前記レコメンド候補から選択する
ことを特徴とする請求項1又は2記載の楽曲レコメンド装置。
【請求項4】
前記候補記憶手段は、前記レコメンド候補の楽曲ごとに対応してアーティストを記憶しており、
前記レコメンド手段は、前記レコメンド候補から選択された楽曲に係る前記アーティストに対応する他の楽曲もレコメンドする
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の楽曲レコメンド装置。
【請求項5】
複数の前記特徴的コード進行が抽出された場合、それら特徴的コード進行を表示して重みの指定を受け付ける重み受付手段を有し、
前記候補選択手段は、前記レコメンド候補から楽曲を選択するにあたり、楽曲が前記特徴的コード進行と一致するコード進行を持つことをその特徴的コード進行について指定されている前記重みに応じて前記適合の評価に反映させる
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の楽曲レコメンド装置。
【請求項6】
前記特徴的コード進行に基づいて選択及びレコメンドされた前記楽曲ごとに対応して入力されたアクション内容が所定の肯定的アクションであるか又は所定の否定的アクションであるかの別に応じて、その楽曲のコード進行と一致していた又は一致していなかった前記特徴的コード進行ごとの重みを設定又は修正する重み設定手段を有する
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の楽曲レコメンド装置。
【請求項7】
レコメンド候補の楽曲ごとに一又は二以上のコード進行を所定の候補記憶手段に予め記憶し、
コンピュータが、複数の楽曲の指定を受け付ける指定曲受付処理と、
コンピュータが、指定された前記複数の楽曲について所定のコード進行の登場を検出するコード検出処理と、
コンピュータが、検出された前記コード進行から、前記複数の楽曲における登場の数量に基づいて一又は二以上のコード進行を特徴的コード進行として抽出する抽出処理と、
コンピュータが、抽出された前記特徴的コード進行とコード進行が適合する楽曲を前記レコメンド候補から選択する候補選択処理と、
コンピュータが、選択された前記楽曲をユーザにレコメンドするレコメンド処理と、
を含むことを特徴とする楽曲レコメンド方法。
【請求項8】
レコメンド候補の楽曲ごとに一又は二以上のコード進行を所定の候補記憶手段に記憶しているコンピュータを制御するコンピュータ・プログラムであって、
コンピュータに、複数の楽曲の指定を受け付けさせ、
コンピュータに、指定された前記複数の楽曲について所定のコード進行の登場を検出させ、
コンピュータに、検出された前記コード進行から、前記複数の楽曲における登場の数量に基づいて一又は二以上のコード進行を特徴的コード進行として抽出させ、
コンピュータに、抽出された前記特徴的コード進行とコード進行が適合する楽曲を前記レコメンド候補から選択させ、
コンピュータに、選択された前記楽曲をユーザにレコメンドさせる
ことを特徴とする楽曲レコメンドプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−150244(P2012−150244A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−8367(P2011−8367)
【出願日】平成23年1月19日(2011.1.19)
【出願人】(500257300)ヤフー株式会社 (1,128)
【Fターム(参考)】