説明

楽音合成装置およびプログラム

【課題】 ボイスエディット可能な電子楽器において、ユーザがイメージした音を簡単な操作で実現できるようにする。
【解決手段】 「歪んだ」、「あたたかい」などの音のイメージあるいは特徴を表す文字列をパラメータセット・ボタン51〜54,56〜59に表示する。また、各ボタンに対応して、そのイメージあるいは特徴を実現するためにどの音色パラメータの値をどれだけ変更すればよいのかを予め定義したパラメータセットなるデータが予め記憶されており、ボタンが押下される毎に、対応するパラメータセットに基づいて音色パラメータの値を変更するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音色編集可能な電子楽器に用いて好適な楽音合成装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来よりシンセサイザ等の電子楽器においては、様々な音色パラメータの値をユーザが指定することにより、音色編集(ボイスエディット)を行う事が可能になっている。しかし、指定可能な音色パラメータの数は膨大であり、その中の何れを選んでどのようなパラメータ値を指定するとユーザがイメージしている音色になるのか判断することは容易ではなく、音色パラメータに対する深い知識が必要になる。
このため、知識の浅いユーザにおいても音色編集が容易になるように、様々な技術が提案されている。例えば、特許文献1においては、各音色タイプにマッチした「音色編集用テンプレート」を用いて音色パラメータを編集する技術が開示されている。音色タイプとは、例えば「ピアノ系」、「アナログ系」などの音色のグループであり、音色編集用テンプレートとは、選択された音色タイプに対応して編集対象となる所定数(例えば「4」)のパラメータを定めたものである。電子楽器の操作パネルには、この所定数と同数のノブが設けられており、ユーザは、これらのノブを操作することによって、パラメータ値を増減させることができる。従って、音色タイプに応じて音色編集用テンプレートにて最も適したパラメータを指定しておくと、ユーザは膨大なパラメータの中から編集対象のパラメータを選択する手間を軽減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−237510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に開示された技術においては、依然として以下のような問題があった。まず、ノブに割り当てられたパラメータの値は、一パラメータ毎にノブ操作によって決定しなければならず、操作が面倒であった。また、ユーザは自分のイメージする音を作るためには、所定数のパラメータのうち何れを選べば(組み合わせれば)よいかを自分で決定しなければならない。操作するパラメータの数が上記所定数に減少したとはいえ、知識のないユーザーにはやはりパラメータの選択は困難である。また、操作可能なパラメータの数を上記所定数に減少させたことにより、その所定数のパラメータのみを調整すれば自分のイメージどおりの音が得られるという保証がなくなる、という新たな問題が生じている。さらに、各パラメータの値を調整した結果、音にどのような効果をもたらすのかが、パラメータ値を編集した後に実際に音を聞くまで予測しにくいという問題があった。
この発明は上述した事情に鑑みてなされたものであり、ユーザがイメージした音を簡単な操作で実現できる楽音合成装置およびプログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため本発明にあっては、下記構成を具備することを特徴とする。なお、括弧内は例示である。
請求項1記載の楽音合成装置にあっては、複数のパラメータに基づいて楽音信号を合成する楽音信号合成手段(12)と、前記パラメータの値であるパラメータ値を記憶するパラメータ値記憶手段(18b)と、情報を表示する表示手段(10)と、所定のユーザ操作に応じて一または複数のパラメータのパラメータ値を変化させる態様と、文字列とを規定したデータを一のパラメータセットとし、複数のパラメータセットから成るグループを一のテンプレートとし、少なくとも前記一のテンプレートを記憶するテンプレート記憶手段(20)と、前記テンプレートに属する複数のパラメータセットに含まれる文字列を配置してなるエディット画面(図2(a))を前記表示手段(10)に表示させるエディット画面表示手段(SP2)と、ユーザ操作に応じて、前記エディット画面に表示された文字列のうち何れかが指定されると、指定された文字列に係るパラメータセットに規定された態様で、一または複数のパラメータのパラメータ値を変化させるパラメータ値操作手段(SP12)とを有することを特徴とする。
さらに、請求項2記載の構成にあっては、請求項1記載の楽音合成装置において、前記テンプレート記憶手段(20)は、複数のテンプレートを記憶するものであり、ユーザ操作に応じて、複数の前記テンプレートの中から一のテンプレートを指定するテンプレート指定手段(60,SP6,SP8)をさらに具備し、前記エディット画面(図2(a))は、該テンプレート指定手段(60,SP6,SP8)によって指定されたテンプレートに属する複数のパラメータセットに含まれる文字列を配置してなるものであることを特徴とする。
さらに、請求項3記載の構成にあっては、請求項1または2記載の楽音合成装置において、前記エディット画面(図2(a))は、現在編集対象となっている項目名を表示する編集項目名表示部(55)と、該編集項目名表示部(55)の周辺に配置され、指定されたテンプレートに属する複数のパラメータセットに含まれる文字列を表示するとともに、各々に対して異なるマーキングが施されてなるパラメータセット対応部(51〜54,56〜59)とから成り、前記指定されたテンプレートに属する何れかのパラメータセットが指定されると、指定されたパラメータセットに係るパラメータセット対応部(51〜54,56〜59)に施されているマーキングを前記編集項目名表示部(55)に施すマーキング付与手段(SP14)をさらに有することを特徴とする。
また、請求項4記載のプログラムにあっては、複数のパラメータに基づいて楽音信号を合成する楽音信号合成手段(12)と、前記パラメータの値であるパラメータ値を記憶するパラメータ値記憶手段(18b)と、情報を表示する表示手段(10)と、所定のユーザ操作に応じて一または複数のパラメータのパラメータ値を変化させる態様と、文字列とを規定したデータを一のパラメータセットとし、複数のパラメータセットから成るグループを一のテンプレートとし、少なくとも前記一のテンプレートを記憶するテンプレート記憶手段(20)と、処理装置(22)とを有する楽音合成装置に適用されるプログラムであって、前記処理装置(22)を、前記テンプレートに属する複数のパラメータセットに含まれる文字列を配置してなるエディット画面(図2(a))を前記表示手段(10)に表示させるエディット画面表示手段(SP2)と、ユーザ操作に応じて、前記エディット画面に表示された文字列のうち何れかが指定されると、指定された文字列に係るパラメータセットに規定された態様で、一または複数のパラメータのパラメータ値を変化させるパラメータ値操作手段(SP12)ととして機能させるためのものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明においては、ボイスエディット画面には各パラメータセットに含まれる文字列が表示され、表示された文字列のうち何れかがユーザに指定されると、パラメータ値操作手段により、当該文字列に対応する一または複数のパラメータのパラメータ値が操作される。従って、各文字列を、各パラメータセットの音の特徴、またはイメージを表す文字列にしておくことにより、ユーザがイメージした音を実現するパラメータ値の編集を簡単な操作で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の一実施例の電子楽器のブロック図である。
【図2】ボイスエディット画面の表示例等を示す図である。
【図3】一実施例のデータ構成を示す図である。
【図4】ボイスエディット処理ルーチンのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
1.実施例のハードウエア構成
次に、本発明の一実施例の電子楽器のハードウエア構成を図1を参照し説明する。
図において2は演奏操作子であり、鍵盤、ペダル、ピッチベンドホイール等から構成されている。演奏操作子2に対する操作状態は、検出回路4によって検出され、その操作状態を表す信号がバス16を介して出力される。6は設定操作子であり、各種の動作モード等を設定するボタン等から構成されている。設定操作子6に対する操作状態は、検出回路8によって検出され、その操作状態を表す信号がバス16を介して出力される。10は表示器であり、バス16を介して供給された表示情報に基づいて、ユーザに対して各種情報を表示する。なお、表示器10はタッチパネルを構成しており、画面上におけるユーザの操作内容はバス16を介して出力される。12は音源・効果回路であり、各種音色パラメータのパラメータ値に基づいて楽音信号を合成するとともに、効果処理を施して出力する。
【0009】
14はサウンドシステムであり、音源・効果回路12から供給された楽音信号を放音する。22はCPUであり、後述するプログラムに基づいて、バス16を介して他の構成要素を制御する。20はROMであり、後述するプログラム等が記憶されている。18はRAMであり、CPU22のワークメモリとして用いられる。RAM18の領域は、複数の音色(No.1 〜No.k)のそれぞれについて現在のパラメータ値を記憶するカレント領域18aと、何れかの音色についてボイスエディットを行う際の作業領域であるエディット領域18bと、その他領域18cとから構成される。カレント領域18aまたはエディット領域18bに記憶されたパラメータ値が音源・効果回路12にセットされると、セットされたパラメータ値に応じた楽音信号が音源・効果回路12において生成される。
【0010】
24は記憶装置であり、ハードディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、フラッシュメモリなどの記憶媒体と、その駆動装置を含む。なお、記憶媒体は着脱可能であってもよいし、電子楽器内に内蔵されていてもよい。26は通信インタフェースであり、外部機器との間でMIDI信号、その他の制御信号を入出力する。通信インタフェース26は、MIDIなどの音楽専用有線インタフェースであってもよく、USBやIEEE1394などの汎用近距離有線インタフェース、IEEE 802.3などの汎用ネットワークインタフェース、無線LANやBluetooth(商標)などの汎用近距離無線インタフェースであってもよい。
【0011】
2.ユーザインタフェース
設定操作子6において、ボイスエディット(ある音色のパラメータの編集)を指定する所定の操作が行われると、図2(a)に示すボイスエディット画面が表示器10に表示される。この画面において50はパラメータ操作部であり、3行3列に区分けされた領域から構成されている。これらの領域のうち、中央の領域は音色名表示欄55を構成し、ここには、現在選択されている音色名を表す文字列(図示の例では「Grand Piano 1」)が表示される。また、中央以外の領域は、パラメータセット・ボタン51〜54,56〜59を構成する。これらのボタンは各々「パラメータセット」に対応するものである。ここで、パラメータセットとは、例えば「歪んだ音」、「暖かい音」、「乾いた音」、「暗い音」などの音のイメージあるいは特徴を表す文字列と、当該音のイメージあるいは特徴を実現するためには、どの音色パラメータの値をどれだけ変更すればよいのかを定義したデータである。
【0012】
ユーザがボタン51〜54,56〜59の何れかを押下すると、対応付けられたパラメータセットに基づいて音色パラメータの値が変更される。ここで、ボタン51〜54,56〜59には、各々異なるマーキングが施されており、本実施例において「マーキング」とは「背景色」である。すなわち、図2(a)において、符号51〜59に続けて括弧内に記述した色名(紫、赤など)は、ボタン51〜54,56〜59および音色名表示欄55の初期状態における背景色である。音色名表示欄55を挟んで対向する「2」のボタンに係る文字列は、対義語になるように設定されている。図2(a)に示すように、初期状態における音色名表示欄55の背景色は「白」であるが、ボタン51〜54,56〜59が操作されると、音色名表示欄55の背景色も更新される。
【0013】
すなわち、ボタン51〜54,56〜59のうち何れかが複数回操作されると、対応するパラメータセットも複数回適用され、その度にパラメータ値が変更されてゆくとともに、音色名表示欄55の背景色は操作されたボタンの背景色に近づくように変更される。例えば、ボタン52(赤)が複数回操作されると、音色名表示欄55の背景色は、薄いピンクから濃いピンクに変わってゆき、パラメータ値を変更可能な限界にまで達すると、ボタン52と同一の赤色になる。一般的にパラメータセット内には複数のパラメータが指定されているため、そのうち一のパラメータが限界値に達したときを「パラメータ値を変更可能な限界」にするとよい。ここで、異なるボタンが押下された場合には、これらのボタンの背景色を混合した色を音色名表示欄55の背景色にしてもよく、音色名表示欄55の領域をボタン51〜54,56〜59に対応する複数の区分に分割し、各区分毎に背景色を変更するようにしてもよい。また、音色名表示欄55を挟んで対向する「2」のボタンが交互に操作された場合には、直前のボタン操作による背景色の変更内容を取り消すようにしてもよい。音色名表示欄55の背景色に対する以上のような操作により、ユーザは、現在選択されている音色に対して、どのような操作がどの程度行われているのかを、音色名表示欄55の表示状態によって容易に把握することができる。
【0014】
ところで、パラメータ操作部50に同時に表示される「8」のパラメータセットをまとめて「テンプレート」と呼ぶ。60はテンプレート選択部であり、ユーザの操作に基づいて、パラメータ操作部50に表示させるテンプレートを選択するものである。テンプレート選択部60の操作によってテンプレートが変更されると、パラメータ操作部50に表示される文字列は、例えば図2(b),(c)に示すように変更される。従って、ユーザは、現在選択されているテンプレートにおいて所望の効果が実現できない場合は、テンプレートを切り替えながらボイスエディットを続行することができる。ここで、各テンプレートは何れの音色に対しても適用可能であるが、編集対象の音色に対して用いて最適なテンプレートがその音色に対するデフォルトのテンプレートとして定められている。例えば、ギター系の音色であれば、歪系のパラメータセットを含んだテンプレートをデフォルトのテンプレートにすると好適である。62はEXITボタンであり、ボイスエディット画面(図2(a))における操作を終了する際に操作される。
【0015】
3.データ構造
次に、上述したテンプレートのデータ構造を図3(a)に示す。図3(a)において、TP1〜TPnは「n」個のテンプレートであり、ROM20またはRAM18に格納される。すなわち、基本的なテンプレートは工場出荷時にROM20に格納されるが、その後にユーザが独自にテンプレートを作成することもでき、ユーザが作成したテンプレートはRAM18に記憶される。各テンプレートは、複数の(本実施例においては「8」の)パラメータセットから構成され、図3(a)においては、各テンプレートTP1〜TPnに係る枠内の「行」がパラメータセットになる。
【0016】
各パラメータセットは、パラメータセット名データ30と、表示用名称データ32と、背景色データ34と、パラメータ操作データ36とから構成される。ここで、パラメータセット名データ30は、パラメータセットを一意に識別する文字列から構成され、「A」のように一文字から成るものと、「A´」のように当該一文字に「´」を付したものとがある。両者は、パラメータ操作部50(図2(a)参照)において、音色名表示欄55を挟んで対向する「2」のボタン(例えばボタン52,58)に対応させるパラメータセットになる。次に、表示用名称データ32は、当該パラメータセットが割り当てられたボタンに表示される文字列を表すものであり、背景色データ34は、当該ボタンの背景色を表すものである。
【0017】
パラメータ操作データ36は、当該パラメータセットが適用された際に値が変更される音色パラメータと、「1」回あたりの操作に対するパラメータ値の変更量とを指定するデータである。パラメータ値が連続的な量(例えば、時間またはレベルなど)である場合、パラメータ操作データ36は、その時間またはレベルなどの変化量を直接的に指定するデータであってもよく、現在の量に対するパーセンテージなどによって変化量を間接的に指定するデータであってもよい。また、パラメータの種類によっては、パラメータ値が例えば「オン」,「オフ」の二値のみしか取り得ない場合がある。その場合、パラメータ操作データ36は、「オン」,「オフ」の何れかを直接的に指定するデータになる。また、パラメータ操作データ36は、現在のパラメータ値に対する条件式によって、変化後のパラメータ値を規定するようにしてもよい。例えば、現在のパラメータ値が所定の閾値未満であれば変化量を大きくし、該閾値以上であれば変化量を小さくするようにしてもよい。また、音色名表示欄55を挟んで対向する「2」のボタンに係るパラメータセット(例えばパラメータセットA,A´)は、相互に反対の効果が生じるように各々のパラメータ操作データ36が設定されている。ここで「反対の効果」は、例えば同一のパラメータに対して変化量の正負を逆にしたり、効果を逆にするエフェクトをオン状態にすることなどによって実現できる。
【0018】
ここで、パラメータ操作データ36の具体例を図3(b)に示すとともに、楽音信号の一般的なエンベロープ波形を図3(c)に示す。図3(c)に示すように、ノートオン時にエンベロープ波形のレベルがゼロからピークに達するまでの時間をアタックタイムと呼び、ピークからほぼ一定値にレベルが立ち下がる時間をディケイタイムと呼ぶ。また、ノートオフ時にエンベロープ波形のレベルが上記一定値からゼロに立ち下がるまでの時間をリリースタイムと呼ぶ。次に、図3(b)において、反対の効果を持つパラメータセットの組について説明する。図示の例では、アタックタイムとリバーブタイムとを「10」ずつ減少させるパラメータセットと、逆にそれぞれを「10」ずつ増加するパラメータセットとが設けられている。前者では立ち上がりが早く残響音の短い音が実現され、「明るい音」と表現される。一方、後者では立ち上がりが遅く残響音の長い音が実現され、「暗い音」と表現される。なお、図3(b)に示すパラメータ値の単位は何れも「ミリセカンド」である。また、別の例としてリリースタイムとディケイタイムとを「10」ずつ増加するパラメータセットと、逆にそれぞれを「10」ずつ減少させるパラメータセットとが設けられている。前者では発音時と消音時の立ち下がりが遅い音が実現され、「空気感のある音」と表現される。一方、後者では立ち下がりが早い音が実現され「硬い音」と表現される。
【0019】
4.実施例の動作
ユーザが設定操作子6を用いて編集対象となる所望の音色(以下、対象音色という)を選択し、さらにボイスエディットを指定する所定の操作を行うと、図4に示すボイスエディット処理ルーチンが起動される。
図4において処理がステップSP2に進むと、対象音色に対するデフォルトのテンプレートの内容が、図2(a)に示した例のように、パラメータ操作部50に表示される。そして、カレント領域18aに記憶された対象音色の現在のパラメータ値が、エディット領域18bにコピーされる。
次に、処理がステップSP4に進むと、テンプレートを変更する指示、すなわちテンプレート選択部60の操作が行われたか否かが判定される。ここで「YES」と判定されると、処理はステップSP6に進み、変更指示に応じた他のテンプレートが、適用されるテンプレートとして選択される。次に、処理がステップSP8に進むと、選択されたテンプレートに対応するように、パラメータ操作部50およびテンプレート選択部60の表示内容が更新される。これにより、選択された新たなテンプレートに含まれるパラメータセットが適用対象として選択可能になる。なお、テンプレートを変更する指示が無ければ上記ステップSP6,SP8はスキップされる。
【0020】
次に、処理がステップSP10に進むと、パラメータセットを選択する指示、すなわち何れかのパラメータセット・ボタン51〜54,56〜59を押下する操作が行われたか否かが判定される。ここで「YES」と判定されると、処理はステップSP12に進み、押下されたボタンに対応するパラメータセットに基づいてエディット領域18bに記憶されたパラメータ値が更新され、更新されたパラメータ値は、音源・効果回路12に送信される。これにより、以後、演奏操作子2の操作等によって対象音色に係る楽音信号の生成が指示されると、更新されたパラメータ値に基づく楽音信号が生成されるようになる。従って、ユーザは、演奏操作子2を適宜操作することによって、ボイスエディットの状態を、実際の楽音によって確認することができる。次に、処理がステップSP14に進むと、音色名表示欄55の背景色が、操作されたボタンの背景色に近づくように変更される。なお、パラメータセットを選択する指示が無ければ上記ステップSP12,SP14はスキップされる。
【0021】
次に、処理がステップSP16に進むと、ボイスエディットを終了する指示、すなわちEXITボタン62を押下する操作が行われたか否かが判定される。ここで「NO」と判定されると、処理はステップSP4に戻り、上述したステップSP4〜SP14の処理が繰り返される。一方、ステップSP16において「YES」と判定されると、処理はステップSP18に進み、ボイスエディット結果を保存するか否かの確認メッセージとともに、「保存」ボタンおよび「キャンセル」ボタンが表示器10に表示される(図示せず)。「保存」または「キャンセル」ボタンが押下されると、処理はステップSP20に進み、保存指示が行われたか否か(「保存」ボタンが押下されたか否か)が判定される。ここで「YES」と判定されると処理はステップSP22に進む。この場合は、エディット領域18bに記憶されているパラメータ値が、カレント領域18a内の対象音色に係る領域にコピーされるとともに、記憶装置24にも対象音色のパラメータ値として記憶される。なお、エディット領域18bの内容をカレント領域18aおよび記憶装置24に記憶する際には、元々の対象音色ではなく、ユーザが定義した新たな音色として、新たな音色名を付与して記憶させるようにしてもよい。
【0022】
一方、ステップSP20において「NO」と判定されると処理はステップSP24に進み、エディット領域18bの内容が破棄されるとともに、元々カレント領域18aに記憶されていた対象音色のパラメータ値が音源・効果回路12に送信される。これにより、以後、演奏操作子2の操作等によって対象音色に係る楽音信号の生成が指示されると、元々カレント領域18aに記憶されていたパラメータ値に基づく楽音信号が生成されるようになる。次に、処理がステップSP26に進むと、表示器10からボイスエディット画面(図2(a))が消去され、表示器10には所定の初期画面が表示され、本ルーチンの処理が終了する。
【0023】
以上のように、本実施例によれば、ボイスエディット画面に表示されるパラメータセット・ボタン51〜54,56〜59には、各パラメータセットの音の特徴、またはイメージを表す文字列が表示され、ユーザは、ボタン51〜54,56〜59を単に操作することによって一または複数のパラメータの値が自動的に変更される。これにより、ユーザは、イメージした音を実現するパラメータ値の編集を簡単な操作で実現することができる。
【0024】
5.変形例
本発明は上述した実施例に限定されるものではなく、例えば以下のように種々の変形が可能である。
(1)上記実施例においては、CPU22上で動作するプログラムによってボイスエディット処理(図4)を行ったが、このプログラムのみをCD−ROM、メモリカード等の記録媒体に格納して頒布し、あるいは伝送路を通じて頒布することもできる。
【0025】
(2)また、上記実施例は本発明を電子楽器に適用した例を示したが、本発明は電子楽器のみならず、ミキサーなどの音響機器やオーディオ機器などに適用してもよい。すなわち、本発明は、音色の編集時に限らず、楽曲の制作・編曲時にさまざまなアレンジを加えたり、ミックスダウン時にさまざまな効果を付与したりする場合にも応用できる。
【0026】
(3)また、上記実施例においては、パラメータ操作部50の領域を3行3列の格子状に区切ったが、さらに細かい格子状に区切ってもよく、図2(d)に示すように、中央の音色名表示欄55´から放射状に広がるように、パラメータセット・ボタンに係る領域を区切ってもよい。
【0027】
(4)また、上記実施例においては、パラメータセット・ボタン51〜54,56〜59に施すマーキングの例としてこれらボタンの「背景色」を適用した例を示したが、背景色以外の様々なマーキングを適用してもよい。例えば、ボタンの背景の「模様」や、「アイコン」をマーキングとして適用することが考えられる。マーキングとして「模様」を適用する場合は、パラメータセット・ボタンを押下する毎に、音色名表示欄55においてその模様が段々と濃くなるようにするとよい。また、マーキングとして「アイコン」を適用する場合は、パラメータセット・ボタンを押下する毎に、音色名表示欄55においてその「アイコン」の数が増加するようにしてもよい。
【0028】
(5)また、上記実施例においては、テンプレート選択部60によってテンプレートを選択できるようにしたが、対象音色に応じてテンプレートが固定的に選択されるようにしてもよい。また、テンプレートは、「切替ボタンで切り替える操作」、「タッチパネル上でページをめくる操作」などによって切り替えるようにしてもよい。
【0029】
(6)また、上記実施例においては、デフォルトのテンプレートは音色に応じて決定されていたが、全音色に対してデフォルトのテンプレートを共通にしてもよい。
【0030】
(7)また、上記実施例においては、パラメータセットを指定するためにタッチパネルを使用したが、表示器10に表示されたパラメータセットを、パネル上の操作子やマウス、キーボードなどを使って選択するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0031】
2:演奏操作子、4:検出回路、6:設定操作子、8:検出回路、10:表示器(表示手段)、12:音源・効果回路(楽音信号合成手段)、14:サウンドシステム、16:バス、18:RAM、18a:カレント領域、18b:エディット領域(パラメータ値記憶手段)、18c:その他領域、20:ROM(テンプレート記憶手段)、22:CPU(処理装置)、24:記憶装置、26:通信インタフェース、30:パラメータセット名データ、32:表示用名称データ、34:背景色データ、36:パラメータ操作データ、50:パラメータ操作部、51〜54,56〜59:パラメータセット・ボタン(パラメータセット対応部)、55:音色名表示欄(編集項目名表示部)、60:テンプレート選択部(テンプレート指定手段)、62:EXITボタン、TP1〜TPn:テンプレート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のパラメータに基づいて楽音信号を合成する楽音信号合成手段と、
前記パラメータの値であるパラメータ値を記憶するパラメータ値記憶手段と、
情報を表示する表示手段と、
所定のユーザ操作に応じて一または複数のパラメータのパラメータ値を変化させる態様と、文字列とを規定したデータを一のパラメータセットとし、複数のパラメータセットから成るグループを一のテンプレートとし、少なくとも前記一のテンプレートを記憶するテンプレート記憶手段と、
前記テンプレートに属する複数のパラメータセットに含まれる文字列を配置してなるエディット画面を前記表示手段に表示させるエディット画面表示手段と、
ユーザ操作に応じて、前記エディット画面に表示された文字列のうち何れかが指定されると、指定された文字列に係るパラメータセットに規定された態様で、一または複数のパラメータのパラメータ値を変化させるパラメータ値操作手段と
を有することを特徴とする楽音合成装置。
【請求項2】
前記テンプレート記憶手段は、複数のテンプレートを記憶するものであり、
ユーザ操作に応じて、複数の前記テンプレートの中から一のテンプレートを指定するテンプレート指定手段をさらに具備し、
前記エディット画面は、該テンプレート指定手段によって指定されたテンプレートに属する複数のパラメータセットに含まれる文字列を配置してなるものである
ことを特徴とする請求項1記載の楽音合成装置。
【請求項3】
前記エディット画面は、
現在編集対象となっている項目名を表示する編集項目名表示部と、
該編集項目名表示部の周辺に配置され、指定されたテンプレートに属する複数のパラメータセットに含まれる文字列を表示するとともに、各々に対して異なるマーキングが施されてなるパラメータセット対応部と
から成り、
前記指定されたテンプレートに属する何れかのパラメータセットが指定されると、指定されたパラメータセットに係るパラメータセット対応部に施されているマーキングを前記編集項目名表示部に施すマーキング付与手段
をさらに有することを特徴とする請求項1または2記載の楽音合成装置。
【請求項4】
複数のパラメータに基づいて楽音信号を合成する楽音信号合成手段と、
前記パラメータの値であるパラメータ値を記憶するパラメータ値記憶手段と、
情報を表示する表示手段と、
所定のユーザ操作に応じて一または複数のパラメータのパラメータ値を変化させる態様と、文字列とを規定したデータを一のパラメータセットとし、複数のパラメータセットから成るグループを一のテンプレートとし、少なくとも前記一のテンプレートを記憶するテンプレート記憶手段と、
処理装置と
を有する楽音合成装置に適用されるプログラムであって、
前記処理装置を、
前記テンプレートに属する複数のパラメータセットに含まれる文字列を配置してなるエディット画面を前記表示手段に表示させるエディット画面表示手段と、
ユーザ操作に応じて、前記エディット画面に表示された文字列のうち何れかが指定されると、指定された文字列に係るパラメータセットに規定された態様で、一または複数のパラメータのパラメータ値を変化させるパラメータ値操作手段と
として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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