説明

楽音発生装置

【課題】 浴室等の設備における利用者の行動に応じた内容の楽曲を生成し再生する。また、複数の利用者がいる場合には、各々の利用者の行動に応じた内容の楽曲を生成し、再生できるようにする。
【解決手段】 楽音発生装置1は、各種のセンサ群によって利用者の行動を判定し、その判定結果に応じたアルゴリズムで楽曲データを生成して再生する。よって、利用者は、自らの行動に調和した雰囲気の楽曲を聴くことができ、独特の面白さを体感することができる。また、複数の利用者が居る場合、それぞれの行動に応じた内容の楽曲を再生するので、各利用者が合奏に参加しているかのような面白みを与えることが可能となる。また、利用者の行動に応じた物理的現象を発生させることで、利用者に対して面白みのある演出を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、利用者の行動を反映した楽音を発生するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
浴室内に設けられたスピーカから楽曲を放音したり、スポットライトによって浴槽の水面に光を照射することで幻想的な雰囲気を演出したりする仕組みが提案されている(例えば特許文献1,2参照)。また、浴槽内の水面の揺らぎに応じて、楽曲の音響特性を変化させるというような技術も提案されている(例えば特許文献3参照)。このような技術によって、入浴している人間の緊張を緩和したり、リラックスさせたりする効果がある。
【特許文献1】特開2002−84588号公報
【特許文献2】特開2003−97064号公報
【特許文献3】特開2004−105569号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した従来技術では、予め定められた楽曲群の中から再生する楽曲を選択するようになっている。従って、相当数の楽曲を事前に用意しておいたとしても、同じような楽曲が演奏されることがあり、利用者が何度も利用しているうちに聞き飽きてしまうという問題がある。
【0004】
ところで、浴室では、複数の利用者が同時に入浴することがある。例えば親と子供とか、友人同士が同じ浴室で入浴をともにすることで、互いにコミュニケーションを取り合って親交を深めることができる。このような場合に、これら複数の利用者のそれぞれの行動の組み合わせに応じて楽曲を作り上げていくような仕組みがあれば、利用者に楽曲そのものを創造するという楽しみを与えることができるとともに、その共同作業を通じて利用者どうしの親交をさらに深めることができると考えられる。
【0005】
本発明は、このような背景に鑑みてなされたものであり、その第1の目的は、浴室等の設備における利用者の行動に応じた内容の楽曲を生成し、再生できるようにすることにある。さらに本発明の第2の目的は、複数の利用者がいる場合には、各々の利用者の行動に応じた内容の楽曲を生成し、再生できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、設備又は該設備内の備品に設けられた検出手段から出力される信号を解析し、該設備を利用する利用者の行動を判定する判定手段と、楽曲データを構成する複数の楽曲要素データを記憶した楽曲要素記憶手段と、前記利用者の行動別に定められた前記楽曲要素データの組み合わせを、各々の行動に対応づけてそれぞれ1又は複数記憶した記憶手段と、判定された前記行動に対応づけられて前記記憶手段に記憶されている1又は複数の前記楽曲要素データの組み合わせのうち、いずれかの組み合わせを選択する選択手段と、前記選択手段によって選択された組み合わせで、前記楽曲要素記憶手段に記憶された前記楽曲要素データを組み合わせて楽曲データを生成する生成手段と、生成された楽曲データに基づいた楽音を、前記設備に設けられた放音手段から放音させる再生手段とを備える楽音発生装置を提供する。
【0007】
この楽音発生装置によれば、検出手段から出力される信号に基づいて利用者の行動が判定され、その行動に応じて用意されている楽曲要素データの組み合わせのうち、いずれかが選択される。そして、選択された組み合わせで楽曲要素データが組み合わせられて楽曲データが生成され、楽曲として再生される。このように、利用者の行動に応じた内容であり、かつ、選択された組み合わせに応じてその都度異なる内容の楽曲が再生されることになるので、利用者は独特の面白さを体感することができるとともに、あまり飽きることもない。
【0008】
本発明の好ましい態様において、前記判定手段は、複数の前記検出手段から出力される信号をそれぞれ解析して、各々の信号に対応する利用者の行動を判定し、前記選択手段は、前記判定手段によって判定された複数の行動の各々について、前記楽曲要素データの組み合わせを選択し、前記生成手段は、前記選択手段によって選択された各々の組み合わせで前記楽曲要素データを組み合わせて複数の楽曲データを生成し、前記再生手段は、生成された複数の楽曲データに基づいた楽音を前記放音手段から放音させる。このようにすれば、複数の利用者のそれぞれの行動に応じた内容の楽曲が再生されることになる。よって、それぞれの利用者が合奏に参加しているかのような面白みをそれぞれの利用者に与えることが可能となる。
【0009】
上記態様において、前記判定手段は、自装置が設置された第1の設備又は該設備内の前記備品に設けられた検出手段から出力される信号を解析して前記第1の設備を利用する利用者の行動を判定するとともに、前記第1の設備とは異なる第2の設備又は該第2の設備内の備品に設けられた検出手段から出力されてくる信号をネットワークを介して取得し、これを解析して前記第2の設備を利用する利用者の行動を判定するようにしてもよい。このようにすれば、例えば遠隔地に居る利用者の行動を反映した楽曲を生成し、再生することが可能となる。
【0010】
また、本発明の別の好ましい態様においては、物理的又は化学的な現象を発生する演出手段と、前記判定手段によって判定された前記行動に応じて、物理的又は化学的な現象を前記演出手段によって発生させる演出制御手段とを備える。これにより、利用者の行動に応じた物理的又は化学的な現象を発生させることができるので、利用者にとっての面白みが増すことになる。
【0011】
また、別の好ましい態様においては、利用者が楽曲のジャンルを指定するための操作手段を備え、前記記憶手段は、前記楽曲要素データの組み合わせを楽曲のジャンル毎に記憶しており、前記選択手段は、前記操作手段において指定されたジャンルに属する前記組み合わせを、前記記憶手段に記憶されている内容の中から選択する。これにより、利用者の好みに応じたジャンルの楽曲を生成し再生することができる。
【0012】
また、本発明は、コンピュータに、設備又は該設備内の備品に設けられた検出手段から出力される信号を解析し、該設備を利用する利用者の行動を判定する判定機能と、判定された前記行動に対応づけられて記憶手段に記憶されている1又は複数の前記楽曲要素データの組み合わせのうち、いずれかの組み合わせを選択する選択機能と、前記選択機能によって選択された組み合わせで、記憶手段に記憶された楽曲要素データを組み合わせて楽曲データを生成する生成機能と、生成された楽曲データに基づいた楽音を前記設備に設けられた放音手段から放音させる再生機能とを実現させるプログラムを提供する。このプログラムは、インターネットに代表されるネットワークを介して所定のサーバ装置からコンピュータに提供されるほか、これを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体としても提供され得る。この種の記録媒体としては、可搬型の磁気ディスクや光ディスクなどが挙げられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
(1)第1実施形態
(1−1)構成
図1は、本発明の第1実施形態に係る楽音制御システム10の構成を示すブロック図である。
浴室Bには、例えばシャワーノズル21、浴槽22、シャンプーボトル23、リンスボトル24およびボディソープボトル25などの各種備品が、所定の場所に設置乃至配置されている。これらの備品には、検出手段として機能する各種のセンサ群が取り付けられている。これらセンサ群は、無線あるいは有線によって楽音発生装置1に通信接続されており、楽音発生装置1が浴室Bを利用する利用者の行動を判定するために利用される。例えばシャワーノズル21の流路部分には、水の流量を検出するための流量センサ21Sが取り付けられている。楽音発生装置1は、この流量センサ21Sによって水の流れを検知した場合には、利用者がシャワーを浴びていると判定することができる。
【0014】
また、浴槽22の内壁面には、水圧を検出するための水圧センサ22Sが設けられている。利用者が浴槽22に入ると水面が上昇して水圧が大きくなり、浴槽22から出ると水面が下降して水圧が小さくなる。よって、楽音発生装置1は、この水圧センサ22Sによる検出値の大小によって、利用者が浴槽22に入ったことや浴槽22から出たことを判定することができる。さらに、浴槽22には、浴槽22内の水面の揺らぎを検出する揺らぎ検出装置22tが設けられている。この揺らぎ検出装置22tは、浴槽22内の水面に向かって光を照射する光源と、その水面からの反射光や水面から浴槽底面への透過光を検出する複数の光量センサとを備えている(いずれも図示略)。楽音発生装置1は、この揺らぎ検出装置22tによって検出された反射光及び透過光の光量の時間的変化に基づいて、浴槽22内の水面がどの程度揺らいでいるかを検出する。
【0015】
シャンプーボトル23、リンスボトル24及びボディソープボトル25の栓にはそれぞれ、利用者によって接触されたことを検出するための接触センサ23S,24S,25Sが取り付けられている。楽音発生装置1は、例えばシャンプーボトル23の接触センサ23Sによって接触が検知された場合には、そのシャンプーボトル23の栓が利用者の手で押されてシャンプー液がボトル口から排出されていることになるから、利用者がシャンプーを開始したと判定することができる。リンスボトル24の接触センサ24Sや、ボディソープボトル25の接触センサ25Sについても同様である。なお、本実施形態の説明において、「センサ群」という用語の意味には、上記の流量センサ21S、水圧センサ22S、接触センサ23S,24S,25Sのほか、揺らぎ検出装置22tが含まれるものとする。
【0016】
浴室Bの壁面や天井には、防水機能を有するスピーカ26が設けられている。このスピーカ26は、楽音発生装置1から供給される楽音信号に応じた音を放音する。また、浴室Bの壁面や天井には照明装置27が設けられており、天井にはミストシャワー装置28が設けられている。そして、浴室Bの浴槽22近傍には、例えば板状部材を水面と平行に往復移動させることで浴槽22内の水面に波を発生させる波発生装置29が設けられている。これらの照明装置27、ミストシャワー装置28及び波発生装置29はそれぞれ、発光現象や水分の噴出現象或いは波の発生現象というような物理的な現象を発生させることで、利用者に対して独特の雰囲気を演出する演出手段として機能する。また、浴室Bの扉30には、開閉に応じてオンオフするスイッチ30Sが設けられている。
【0017】
楽音発生装置1は、制御部100と、表示部11と、操作部12と、楽音発生部13とを備えている。制御部100は、自身が記憶したコンピュータプログラムを実行することによって、上述したセンサ群からの出力信号を解析して利用者の行動を判定し、その判定結果に応じたアルゴリズムでMIDI(Musical Instrument Digital Interface)形式の楽曲データを生成する。楽音発生部13は、音源や、効果付与回路及びA/D変換回路(いずれも図示略)を備えており、制御部100から供給されるMIDI形式の楽曲データに基づいて楽音信号を発生させ、これをスピーカ26に供給する。
【0018】
図2は、制御部100の構成を示すブロック図である。
制御部100は、CPU(Central Processing Unit)101と、RAM(Random Access Memory)102と、不揮発性記憶部103とを備えている。不揮発性記憶部103は、例えばハードディスクであり、CPU101によって実行される制御プログラム200や、そのプログラム実行時に使用される各種の情報を記憶している。不揮発性記憶部103に記憶されている情報には、行動判定テーブル201と、作曲テーブル202と、ジャンル別テンプレート203と、楽曲要素ライブラリ204と、演出指示テーブル205とが含まれている。以下、これらの情報の内容について具体的に説明する。
【0019】
行動判定テーブル201は、CPU101がセンサ群からの出力信号に基づいて、利用者の行動の内容を判定するためのテーブルである。この行動判定テーブル201には、図3に示すように、各々のセンサや検出装置による検出内容と、利用者の行動の内容とが対応付けられて記述されている。例えば接触センサ23Sによりシャンプーボトル23への接触が検出された場合には、CPU101によって、利用者はシャンプーによる頭髪の洗浄を開始したと判定される。この場合には、CPU101によって、「シャンプーの開始」という行動に対応した内容の楽曲データが生成される。また、そのシャンプーボトル23への接触が検出された後に、流量センサ21Sによりシャワーノズル21に水が流れていることが検出された場合には、CPU101によって、利用者は頭髪に付着したシャンプーをすすいでいると判定される。この場合も、CPU101によって、「シャンプーのすすぎ」という行動に対応した内容の楽曲データが生成される。また、揺らぎ検出装置22tによって、浴槽22内の水面が小さく揺らいだり大きく揺らいだりしたことが検出された場合には、CPU101によって、利用者が浴槽22内で小さく動いたり或いは大きく動いたりしたと判定されることになる。
【0020】
ここで、複数の利用者が浴室Bを同時に利用した場合、それぞれの利用者は浴室22内の備品を個別に使うことになるから、CPU101は、複数のセンサや検出装置からほぼ同時期に出力信号を受け取る場合もある。このような場合、CPU101は、それぞれのセンサや検出装置からの出力信号に基づいて、利用者の行動内容をそれぞれ判定するようになっている。例えば接触センサ23Sによりシャンプーボトル23への接触が検出され、かつ、水圧センサ22Sにより水圧が上昇したことが検出された場合、CPU101は、ある利用者がシャンプーによる頭髪の洗浄を開始したとともに、別の利用者が浴槽に入ったものと判定することになる。よって、この場合は、「シャンプーの開始」という行動に対応した楽曲データと、「浴槽に入る」という行動に対応した楽曲データが生成され、これらが同時に再生される。このように各々の利用者の行動に応じた楽曲が重ね合わされて再生されることになるから、それぞれの利用者からみれば、自身が合奏に参加しているかのような面白みを感じることができる。
【0021】
次に、楽曲要素ライブラリ204について説明する。
この楽曲要素ライブラリ204には、楽曲を構成する楽曲要素データが多数含まれている。楽曲要素データには、図2に示しているように、フレーズループとパターンループという2種類のループ(繰り返し再生される一定期間の楽曲要素)が含まれている。フレーズループは、音階を表現可能な楽器(例えばピアノやベース)によって演奏される一定期間のメロディラインを表している。パターンループは、音階を表現しない楽器(例えばドラムなどの打楽器)による一定期間の発音タイミング(リズム)を表している。また、この楽曲要素ライブラリ204には、各種楽器の音色を規定する音の波形を表すディジタルデータも楽曲要素データとして記憶されている。CPU101は、利用者の行動に応じてこれらのループや音色を適宜組み合わせ、さらに、この行動に応じて音程、効果及び音量を決定することによって、一定期間の楽曲データを生成し、これを繰り返し再生する。
【0022】
次に、ジャンル別テンプレート203は、例えばロック、ダンス、ポップス・・・というように、楽曲のジャンル毎に用意されたテンプレートである。例えばあるジャンルのテンプレートには、図4に示すように、そのジャンルに合ったループの組み合わせを示す1又は複数(図4では複数)のループパターンが記述されている。さらにこのテンプレートには、音程、音色、効果(エフェクト)、音量を指定するパターンも1又は複数(図4では複数)記述されている。CPU101は、このようなジャンル別テンプレート203に記述された各種パターンの中から、作曲テーブル202によって指定されるパターンを選択する。図4では、斜線を施した各パターン、すなわち「ループパターンA」と、「音程のパターンC」と、「音色のパターンB」と、「効果のパターンA」と、「音量のパターンA」とが選択されている場合が示されている。
【0023】
次に、作曲テーブル202には、利用者の各々の行動に応じて選択すべきループパターン、音程パターン、音色パターン、効果パターン及び音量パターンの組み合わせが記述されている。図5は、作曲テーブル202の一例を示す図である。図5の例では、例えば利用者の行動が「シャンプーの開始」である場合には、ループパターンAと、音程パターンCと、音色パターンBと、効果パターンAと、音量パターンAとを組み合わせて楽曲データを生成すべきであることが定められている。同様に、「シャンプーのすすぎ」、「リンスの開始」、「リンスのすすぎ」、「身体の洗浄開始」、「身体のすすぎ」・・・といった利用者の行動の各々について、選択すべきループパターン、音程パターン、音色パターン、効果パターン、音量パターンの組み合わせが作曲テーブルによって定められている。前述したように、CPU101が複数の利用者の行動を同時に検出した場合には、それぞれの行動に対応した楽曲が同時に再生されるようになっている。従って、各行動に対応した作曲テーブルの内容は、複数の作曲テーブルに基づく楽曲が同時に再生されたとしても、利用者があまり違和感を覚えないように、互いに調和する曲調となるように予め調整されている。
【0024】
次に、演出指示テーブル205には、利用者の行動に応じて行うべき演出の内容が記述されている。図6はこの演出指示テーブル205の一例を示す図である。図6において、例えば「身体の洗浄」という行動が行われている場合には、照明装置27を比較的短い周期で点滅させる、という演出を行うことが決められている。同様に、利用者が浴槽22に入った場合には、ミストシャワー装置28から弱いシャワーを放出させ、時間の経過とともに徐々に強いシャワーへと変化させる、という演出を行うことが決められている。そして、利用者が浴槽22から出た場合には、ミストシャワー装置28からのシャワーを停止するとともに、照明装置27に強い光を1回だけ照射させる、という演出を行うことが決められている。さらに、利用者が浴槽22内で動いた場合についても、図示のように、ミストシャワー装置からの水分噴出量を調整したり、波発生装置29によって浴槽22内に波を発生させる、といったような演出を行うことが決められている。なお、これらの演出内容は、楽音制御システム10の設計者によって予め決められたものであってもよいし、利用者自身が操作部12などを用いて自由に設定することができるようにしてもよい。
【0025】
(1−2)動作
次に、第1実施形態の動作について説明する。
図7は、制御プログラム200に記述されたCPU101の処理手順を示すフローチャートである。利用者は浴室Bに入室する前に、操作部12を用いて処理を開始すべき旨の指示を与えると、CPU101は、不揮発性記憶部103に記憶された制御プログラム200を実行することによって図7に示す一連の処理を開始する。
【0026】
まず、CPU101は、利用者に楽曲のジャンルを選択させるためのメニュー画面を表示部11に表示させる(ステップS1)。楽曲のジャンルは階層的に構成されており、例えば図8に示すように、上位の階層ではロック、ダンス、ポップ、レゲエ、ラテン・・・といった大まかなジャンルに区分されている。そして、例えばロックというジャンルであれば、ハードロック、ブリティッシュロック、アメリカンロック・・というようにさらに下位の階層でジャンルが細分化されている。もちろん、ジャンルはこのような2階層に限らず、もっと多くの階層で構成されていてもよい。
【0027】
利用者が操作部12を操作して、所望する楽曲のジャンルを選択する。ここでは例えば、図8に示すように「アメリカンロック」が選択されたとすると、CPU101はこの選択操作を受け付け(ステップS2;Yes)、選択されたジャンル(アメリカンロック)に対応するジャンル別テンプレート203を不揮発性記憶部103から読み出す(ステップS3)。これによって、図8に示すように、多数のジャンル別テンプレートの中から、アメリカンロックに対応するジャンル別テンプレート203が抽出されることになる。
【0028】
次に、CPU101は、扉30のスイッチ30Sのオンオフを監視し、利用者が浴室Bに入室したか否かを判断する(ステップS4)。利用者が浴室Bに入室すると(ステップS4;Yes)、CPU101は、センサ群からの出力信号を取り込む(ステップS5)。出力信号が取り込まれると、CPU101は、その出力信号を解析し、行動判定テーブル201を参照して利用者の行動を判定する(ステップS6)。ここでは、接触センサ23Sによりシャンプーボトル23への接触が検出された場合を想定する。この場合、CPU101は、図3の行動判定テーブル201に従って、利用者がシャンプーを開始したものと判定する。
【0029】
次に、CPU101は、行動に変更があったか否かを判定する(ステップS7)。なお、図7に示す処理が開始されてから初めての判定では、必ず、CPU101は行動に変更があったと判定して(ステップS7;Yes)、ステップS9の処理に移行する。そして、CPU101は、ステップS6で判定した行動に対応する作曲テーブル202を不揮発性記憶部103から読み出す。そして、CPU101は、読み出した作曲テーブル202と、ステップS3で読み出したジャンル別テンプレート203に基づいて楽曲データを生成する(ステップS9)。この例では、行動「シャンプーの開始」に対応する作曲テーブル202と、アメリカンロックに対応するジャンル別テンプレート203とが用いられることになる。
【0030】
ここで、図9は、楽曲データを生成する様子の一例を具体的に説明するための図である。
CPU101は、アメリカンロックのジャンル別テンプレート203に含まれる各種パターンのうち、行動「シャンプーの開始」に対応する作曲テーブル(図5参照)によって指定されるループパターンAと、音程パターンCと、音色パターンBと、効果パターンAと、音量パターンAとを選択する。ループパターンAは、楽曲要素ライブラリ204に含まれる各種ループのうち、パート1として「パターンループc」を指定している。また、音程パターンCは、音程を指定していない。音色パターンBは、パート1(ここではパターンループc)の音色を「ドラム」に指定している。効果パターンAは、パート1(ここではパターンループc)にエコー(残響)を付与するように指定している。そして、音量パターンAは、パート1(パターンループc)の音量を大きくするよう指定している。CPU101は、これらのパターンによって指定された内容で一区切りの楽曲データを生成すると、その再生処理を開始する(図7のステップS10)。
【0031】
次に、CPU101は、演出の必要があるか否かを判断する(ステップS11)。ここでは、図6に示したように、「シャンプーの開始」という行動については演出内容が特に規定されていないので、CPU101は、演出の必要なしと判断し(ステップS11;No)、ステップS5の処理に戻って再びセンサ群から出力信号を取り込んで利用者の行動を判定する。
【0032】
前述したように、複数の利用者が入浴している場合には、それぞれの利用者が別々の行動をとることがある。ここでは、上記のようにして或る利用者がシャンプーを開始した後に、それとは別の利用者が浴槽22に入った場合について説明する。
この場合、CPU101は、ステップS5で、接触センサ23Sからの出力信号を取り込んだ後に、浴槽22の水圧センサ22Sからの出力信号を取り込むことになる。そして、CPU101は、ステップS6でその出力信号を解析して、利用者が浴槽22に入ったと判定する。この場合、CPU101は、利用者の行動が変更したとは判断せずに(ステップS7;No)、「浴槽に入る」という利用者の行動が追加されたと判断する(ステップS8)。そして、CPU101は、その追加された行動「浴槽に入る」に対応する作曲テーブル202を不揮発性記憶部103から読み出し、この作曲テーブル202と、ステップS3で読み出したジャンル別テンプレート203に基づいて楽曲データを生成する(ステップS9)。ここでは、CPU101は、図5に示したような行動「浴槽に入る」に対応したループパターンBと、音程パターンAと、音色パターンCと、効果パターンBと、音量パターンAとを用いて楽曲データを生成する。そして、CPU101は、先に生成した「シャンプーの開始」という行動に対応する楽曲の再生に加えて、「浴槽に入る」という行動に対応する楽曲の再生処理を開始する(ステップS10)。
【0033】
そして、図6に示したように「浴槽に入る」という行動については演出内容が規定されているので、CPU101は、演出の必要があると判断する(ステップS11;Yes)。CPU101は、「浴槽に入る」に対応した演出処理、つまり、ミストシャワー装置28から弱いシャワーを放出させ、時間の経過とともに徐々に強いシャワーへと変化させる、という処理を行う(ステップS12)。以降、CPU101の処理はステップS5に戻る。
【0034】
そして、CPU101は、行動が変更してもいないし(ステップS7;No)、行動が追加されてもいないと判定している間は(ステップS8;No)、そのまま楽曲を繰り返し再生する。そして、利用者の行動が変更したことを検知すると(ステップS7;Yes)、CPU101は、その変更した行動に応じた作曲テーブル202を用いて新たな楽曲データを生成し(ステップS9)、その楽曲データを今まで再生していた楽曲データに代えて再生する(ステップS10)。
【0035】
ここで、例えば親と子供の2人の利用者の行動変化に応じて、楽曲の内容が変化していく様子の一例を説明する。
2人の利用者が浴室Bに入室し、親(利用者a)がシャワーノズル21から水を出し始めると、これと同時に、楽音制御システム10による楽曲の再生が開始される。そして、利用者aがシャワーで頭髪を軽くすすぎ始めると、軽やかな雰囲気の楽曲がほど良い残響効果を伴って浴室B内に響き渡る。次に、利用者aがシャンプーを開始すると、曲調が急速に盛り上がり、アップテンポのビートが刻まれる。利用者aはこのビートに誘導され、リズムよく頭髪を洗うことができる。このとき、子供(利用者b)が浴槽22に入ると、ベース主体の楽曲が上記のアップテンポのビートと重ね合わされて再生される。さらに、演出効果として、ミストシャワー装置28から霧雨を思わせるようなミストシャワーが噴出する。
【0036】
利用者aのシャンプーが終わり、頭髪をすすぎ始めると、曲調が一転し、落ち着いた雰囲気の楽曲へと切り替わる。この曲調は、利用者bの行動に対応したベース主体の楽曲に調和したものである。そして利用者aがリンスを開始すると、徐々に音量が大きくなり、次の楽曲へとクロスフェードしていく。そして、頭髪のすすぎが終わり身体を洗い始めると、再び曲調が盛り上がっていき、身体を洗い終わるころには、曲調は最高潮に達する。これに合わせるように、利用者bの浴槽内でリズムを取って大きく動けば、そのリズムに合わせてビートが刻まれる。さらに、演出効果として、ミストシャワー装置28から強いミストシャワーが噴出するとともに、波発生装置29によって浴槽22内で大きな波が発生させられる。
【0037】
そして、利用者aが身体に付着したボディソープを水で洗い流すときには、華麗なストリングスが鳴り響き、エンディングを予感させる曲調へと変化する。この後、利用者aも利用者bとともに浴槽22に入る。2人の利用者a,bが浴槽22に入っている間は、時間の経過とともに、ミストシャワーは勢いを増していく。浴槽22の水面に当たる音はまるで雨音のように聞こえ、その雨音は楽曲と混ざりつつ、一体となって心地良い音へと変化していく。そして、利用者a,bが浴槽22から出た瞬間に、照明装置27から一筋の光が照射され、ミストシャワーが止み、きらびやかな曲調の楽曲が流れ、エンディングを迎える。
【0038】
このように、上述した第1実施形態によれば、楽音発生装置1は、センサ群によって利用者の行動を判定し、その判定結果に応じたアルゴリズムで楽曲データを生成して再生するので、利用者は、自らの行動に調和した雰囲気の楽曲を聴くことができ、独特の面白さを体感することができる。また、複数の利用者が居る場合、それぞれの行動に応じた内容の楽曲が再生されることになるので、各利用者に対し、あたかも合奏に参加しているかのような面白みを与えることが可能となる。また、利用者の行動に応じた物理的現象を発生させることで、利用者に対して面白みのある演出を提供することができる。
【0039】
(2)第2実施形態
上述した第1実施形態では、単一の楽音発生装置1が利用者の行動に応じて楽曲データを生成し、これを再生するものであった。以下に述べる第2実施形態では、それぞれ離れた浴室に設置された楽音発生装置が、それぞれの浴室の利用者の行動に応じて楽曲を生成し再生する。これにより、例えば、自宅から離れた場所に単身で赴任している親と、自宅にいる子供とがそれぞれの行動によって1つの楽曲を作り上げるという、いわゆる遠隔セッションが可能となる。
【0040】
図10は、第2実施形態に係るシステム全体の構成を示すブロック図である。
図10に示すように、ある浴室に設置された楽音制御システム10aと、別の浴室に設置された楽音制御システム10bとが、例えばインターネットやISDN(Integrated Services Digital Network)網などのネットワーク1cを介して接続されている。これらの楽音制御システム10a,10bに含まれる楽音発生装置1a,1bは、ネットワーク1cを介してデータ通信を行うための通信部14a,14bを備えている。例えば楽音発生装置1aのCPUは、前述した図7のステップS5において、自装置に接続されたセンサ群から出力信号を取り込むほか、通信部14aを用いてネットワーク1c経由で楽音発生装置1bのセンサ群からも出力信号を取り込む。このようにすれば、そのステップ5以降は、CPUは図7に示した手順に従って楽曲データを生成し、これを再生することができる。なお、図10では2つの楽音制御システム10a,10bを例に挙げたが、楽音制御システムの数がもっと多くてもよい。
【0041】
このように第2実施形態では、複数の楽音発生装置同士が互いに情報をやり取りし、その情報に応じて楽曲データを生成し再生するので、第1実施形態で述べた効果に加えて、遠隔の地にいる利用者が連携してさらに変化に富んだ楽曲を提供することが可能となる。
【0042】
(3)変形例
上述した実施形態は次のように変形してもよい。
実施形態においては、MIDI規格に準拠した楽曲データを用いたが、楽曲データの形式はこれに限られない。例えば、楽音の信号波形をサンプリングして得られた楽曲要素データを用いて楽曲データを生成してもよい。なお、楽曲要素ライブラリ204は、楽音発生装置1の不揮発性記憶部103に予め格納されたものである必要はなく、例えば、インターネットなどのネットワークを介して所定のサーバ装置から楽音発生装置1が受信したデータであってもよいし、光ディスクに代表される各種の記録媒体から楽音発生装置1に読み込まれたデータであってもよい。なお、楽曲の音色はピアノやドラムなどの楽器に限らず、例えば川の流れる音や動物の鳴き声といった自然音を用いてもよい。
【0043】
各種センサや検出装置の種類や、それらを設置する場所は、実施形態で述べたものに限定されるものではない。例えば、洗い場の排出口に流量センサを取り付け、その流量に基づいて利用者が湯水を使っていると判断してもよい。また、カメラで撮像した利用者の画像を時系列のフレーム単位で認識し、そのフレーム間差分に基づいて、その利用者の行動そのものをより高精度に判定するようにしてもよい。
【0044】
演出手段は、照明装置27やミストシャワー装置28或いは波発生装置29に限定されず、物理的又は化学的な現象を発生するものであればよい。化学的な現象の例は、例えばドライアイスを水に入れて二酸化炭素の気体を大量に噴出させたりするようなものがある。CPU101は、判定した行動に応じた量又は時間でこれらの演出手段に物理的又は化学的な現象を発生させることができる。例えば、浴槽に入っている時間が長くなるほどミストシャワーの量を多くしたり、シャワーの流量に応じて照明の強度を強くしたりといった具合である。
【0045】
実施形態においては、利用者の行動内容に応じて楽曲データが生成される構成を例示したが、これに加えて、利用者が操作部12を用いて入力した指示を楽曲データの内容に反映するようにしてもよい。例えば、利用者が指定した音色のパートを楽曲に追加したり或いは楽曲から削除したり、利用者の意図するような再生テンポに調整したり、といった具合である。
【0046】
実施形態では、楽音制御システム10を浴室に適用した例を述べたが、本発明を適用する設備はこれに限らない。例えば料理をするための台所を「設備」と見立てて本発明を適用することもできる。
【0047】
なお、楽音発生装置1の演算装置が実行する制御プログラムは、インターネットなどのネットワークを介して所定のサーバ装置から楽音発生装置1に提供されるものであってもよいし、何らかの記録媒体に格納された状態で提供されて楽音発生装置1にインストールされるものであってもよい。この種の記録媒体としては、CD−ROM(Compact Disk-Read Only Memory)に代表される各種の光ディスクのほか、可搬型の磁気ディスクなどが考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の第1実施形態に係る楽音制御システムの構成を示すブロック図である。
【図2】同実施形態における楽音発生装置の制御部の構成を示すブロック図である。
【図3】同楽音発生装置が記憶している行動判定テーブルの内容を表す図である。
【図4】同楽音発生装置が記憶しているジャンル別テンプレートの内容を表す図である。
【図5】同楽音発生装置が記憶している作曲テーブルの内容を表す図である。
【図6】同楽音発生装置が記憶している演出指示テーブルの内容を表す図である。
【図7】同楽音発生装置の制御プログラムに記述された手順を示すフローチャートである。
【図8】同楽音発生装置において楽曲データが生成される仕組みを説明するための図である。
【図9】同楽音発生装置において楽曲データが生成される仕組みを説明するための図である。
【図10】本発明の第2実施形態に係るシステム全体の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0049】
1a,1b……楽音発生装置、10,10a,10b……楽音制御システム、11……表示部、12……操作部、13……楽音発生部、14a,14b……通信部、21S……流量センサ、22S……水圧センサ、22t……揺らぎ検出装置、23S,24S,25S……接触センサ、26……スピーカ、27……照明装置、28……ミストシャワー装置、29……波発生装置、100……制御部、101……CPU、102……RAM、103……不揮発性記憶部、200……制御プログラム、201……行動判定テーブル、202……作曲テーブル、203……ジャンル別テンプレート、204……楽曲要素ライブラリ、205……演出指示テーブル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
設備又は該設備内の備品に設けられた検出手段から出力される信号を解析し、該設備を利用する利用者の行動を判定する判定手段と、
楽曲データを構成する複数の楽曲要素データを記憶した楽曲要素記憶手段と、
前記利用者の行動別に定められた前記楽曲要素データの組み合わせを、各々の行動に対応づけてそれぞれ1又は複数記憶した記憶手段と、
判定された前記行動に対応づけられて前記記憶手段に記憶されている1又は複数の前記楽曲要素データの組み合わせのうち、いずれかの組み合わせを選択する選択手段と、
前記選択手段によって選択された組み合わせで、前記楽曲要素記憶手段に記憶された前記楽曲要素データを組み合わせて楽曲データを生成する生成手段と、
生成された楽曲データに基づいた楽音を、前記設備に設けられた放音手段から放音させる再生手段と
を備える楽音発生装置。
【請求項2】
前記判定手段は、複数の前記検出手段から出力される信号をそれぞれ解析して、各々の信号に対応する利用者の行動を判定し、
前記選択手段は、前記判定手段によって判定された複数の行動の各々について、前記楽曲要素データの組み合わせを選択し、
前記生成手段は、前記選択手段によって選択された各々の組み合わせで前記楽曲要素データを組み合わせて複数の楽曲データを生成し、
前記再生手段は、生成された複数の楽曲データに基づいた楽音を前記放音手段から放音させる請求項1記載の楽音発生装置。
【請求項3】
前記判定手段は、自装置が設置された第1の設備又は該第1の設備内の備品に設けられた検出手段から出力される信号を解析して前記第1の設備を利用する利用者の行動を判定するとともに、前記第1の設備とは異なる第2の設備又は該第2の設備内の備品に設けられた検出手段から出力されてくる信号をネットワークを介して取得し、これを解析して前記第2の設備を利用する利用者の行動を判定する請求項2に記載の楽音発生装置。
【請求項4】
物理的又は化学的な現象を発生する演出手段と、
前記判定手段によって判定された前記行動に応じて、物理的又は化学的な現象を前記演出手段によって発生させる演出制御手段と
を備える請求項1記載の楽音発生装置。
【請求項5】
利用者が楽曲のジャンルを指定するための操作手段を備え、
前記記憶手段は、前記楽曲要素データの組み合わせを楽曲のジャンル毎に記憶しており、
前記選択手段は、前記操作手段において指定されたジャンルに属する前記組み合わせを、前記記憶手段に記憶されている内容の中から選択する請求項1記載の楽音発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−267639(P2006−267639A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−86524(P2005−86524)
【出願日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】