構築物
【課題】水を利用して、舗道、広場あるいは建築物等の構造物の表面付近を冷却するための構築物を提供する。
【解決手段】路盤12上に碁盤目状に敷設されたパネル14間の目地16内に、立体網状体の目地材1が配置されている。そして、導水路13の水が、目地材1の内部を介してパネル14の表面に溢れ出るため、十分な水量の水によりパネル14を効果的に冷却することができる。
【解決手段】路盤12上に碁盤目状に敷設されたパネル14間の目地16内に、立体網状体の目地材1が配置されている。そして、導水路13の水が、目地材1の内部を介してパネル14の表面に溢れ出るため、十分な水量の水によりパネル14を効果的に冷却することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路の舗装や建築物等の構造物に係り、詳しくは、舗道、広場あるいは建築物等の構造物の表面付近を冷却するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、夏季の都市部でのヒートアイランド現象による異常気温上昇が問題となっている。この異常気温上昇下において、舗道や広場等を歩く歩行者は、高気温に加えて、舗装面からの輻射熱を受けて不快となる。この輻射熱による不快感を抑えるために、舗装面の温度を低下させる技術の種々提案がなされている。
【0003】
特許文献1では、保水性コンクリート盤体で舗装表面が形成され、その下方の導水層の水が保水性コンクリート盤体に浸透して、舗装表面を湿潤状態にすることにより、地表温度の上昇を抑制することができるようになっている。
【0004】
特許文献2では、道路の路盤上に不透水舗装部が形成され、更に、その不透水舗装部上に位置する複層透水舗装部の下層側に高透水層部が形成されると共に、表層側に高透水層部より低透水層部が形成されている。この高透水層部に対して、道路に設けた加圧給水部の給水管から冷却水が直接加圧供給されて、表面側の高透水層部からの水の蒸発により、道路舗装部の冷却が行われるとされている。
【0005】
特許文献3では、土路盤上のコンクリート舗装板の間に吸水性セメント硬化体が配置されている。この吸水性セメント硬化体は、微細ひび割れを有しているので、土路盤から微細ひび割れを通じて水を吸い上げることができる。この吸い上げられた水が蒸発することにより、舗装道路等の路面の温度低下が促進されるようになっている。
【0006】
特許文献4では、基板上で隣接する化粧仕上げ体間の目地に、多数の粒体により形成された透水目地部が着脱自在に配置されている。この透水目地部は、透水路を形成する。そして、透水路を介して、水の大気中への蒸散が行われて、ヒートアイランド現象を防止することができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−300881号公報
【特許文献2】特開2004−308290号公報
【特許文献3】特開2006−118128号公報
【特許文献4】実用新案登録第3147443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記各特許文献に記載では、路面の蒸発潜熱を利用して、路面が冷却される。
特許文献1では、ポーラスなコンクリート盤体を浸透する水の蒸発を利用しているため、冷却に供される水の量は多くない。このため、奪われる蒸発潜熱量は低く、従って舗装表面の冷却は、歩行者に涼感を感じさせるほどに十分とはなり難い。また、特許文献2では、低透水層部内を浸透状態で上昇した水が蒸発する構成であるため、特許文献1と同様に十分な冷却効果は得難い。同様に、特許文献3では、微細ひび割れを通じて水が吸い上げられるので、その温度低下効果は低い。特許文献4では、粒体間を浸透する水を利用するため、冷却作用に関して、他の特許文献の技術と同等である。
【0009】
そして、前記各特許文献においては、孔やひび、あるいは粒体間の隙間に塵埃が詰まることにより、冷却能力が減じてしまうおそれを含んでいる。
冷却効果を高めるためには、溝状に開いた目地から舗装の表面側に大量の水を供給することが考えられる。しかし、このように構成した場合には、開いた目地にハイヒールの踵が入り込んで歩き難くなるばかりでなく、目地に塵埃、小石、落ち葉等が詰まって、その除去が困難になるおそれもあった。
【0010】
本発明は、このような問題に着目してなされたものであり、その目的とするところは、舗道、広場あるいは建築物等の構造物の表面付近を効果的に冷却することができるとともに、保守管理が容易な構築物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記問題を解決するために本発明は、複数の敷設部材を目地が形成されるように敷設した構築物において、前記目地には水源から水が導かれる導水路が接続されるとともに、目地内には目地材が配置され、その目地材として立体網状体を用いたことを特徴とするものである。
【0012】
上記構成によれば、水源から導かれた水が、立体網状体よりなる目地材を通り抜けて、構造物の表面に溢れ出る。このため、水は十分に且つ速やかに供給されるので、構造物の温度を適切に冷却することができる。また、目地内には目地材が存在するため、ハイヒールの踵等が目地内に入り込むことを防止できる。
【0013】
さらに、目地材が存在するために、目地内に小石や落ち葉等が入り込むことを防止できる。
前記の構成において、前記目地材を、合成樹脂よりなる紐状体を絡み合わせて構成することが好ましい。
【0014】
前記の構成において、前記目地材を、立体網状体よりなる本体と、その本体より高剛性の補強材とにより構成することが好ましい。
前記の構成において、前記補強材は目地の角部に対応する位置に配置されていることが好ましい。
【0015】
前記の構成において、前記敷設部材が敷石パネルであって、その敷石パネルの上面には、目地側の縁部に位置する高い面と、中央部に位置する低い面とが形成されている。また、この構成において、高い面と低い面とが斜面を介して連続しているとよい。
【0016】
さらに、前記の構成において、低い面と同じ高さの上面を有する敷石パネルを低い面と連続するように敷設するとよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、舗道、広場あるいは建築物等の構造物の表面付近を効果的に冷却することができるとともに、保守管理が容易な構築物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1実施形態の舗道の冷却構造を示す一部平面図。
【図2】図1のA−A矢視断面図。
【図3】図2のB−B矢視断面図。
【図4】舗道の冷却構造に対する給排水に係る構成を示す概略図。
【図5】第1実施形態の目地の配置を示す一部平面図。
【図6】二種類の目地材を示す斜視図。
【図7】目地材の組み合わせ構成を示す斜視図。
【図8】図7とは異なる目地材の組み合わせ構成を示す斜視図。
【図9】第2実施形態の目地材を示す斜視図。
【図10】第2実施形態の目地材が用いられる導水路の配置を示す一部平面図。
【図11】第3実施形態の目地材を示す斜視図。
【図12】第4実施形態を示す斜視図。
【図13】第5実施形態を示す一部平面図。
【図14】図13のC−C矢視断面図。
【図15】第6実施形態を示す一部断面図。
【図16】第7実施形態を示す一部断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1の実施形態)
以下、本発明を具体化した第1実施形態を図1〜8を用いて説明する。
図1及び図2に示すように、路床11上にコンクリート等よりなる路盤12が形成されている。路盤12の上面には、複数の溝状の導水路13が路盤12の長手方向に所定間隔をおいて平行に延びるように形成されている。敷設面としての路盤12の上面には、敷設部材としての四角形状の複数の舗装パネル(以下、単にパネルという)14が固着層15を介して碁盤目状に敷設されている。パネル14は、その中心部が導水路13上に位置する。以上のようにして、構築物としての舗道10が構成されている。各パネル14は、自然石あるいは自然石を模した人造石であって、透水性及び保水性を有しないものが用いられている。
【0020】
そして、図3に示すように、各パネル14間の目地16内には、目地材1として後述の立体網状体としての第1、第2目地材1A、1Bがその弾力に抗して嵌め込まれている。
図4に示すように、舗道10の一部には、各導水路13に対する水の給排水のために暗渠17が設けられている。舗道10の近傍には水源としての貯水槽21が設置されている。貯水槽21と暗渠17との間には給水配管22が連結され、その給水配管22中には給水量を調整可能にした給水ポンプ23が接続されている。この給水ポンプ23の作動により、貯水槽21内に貯留された水が給水配管22を介して暗渠17内に供給される。そして、この暗渠17内の水が路盤12とパネル14との間の各導水路13内に導かれる。これによって、導水路13内の水が各パネル14間の目地16の目地材1A、1Bを通り抜けて、パネル14の表面側に溢れ出るようになっている。また、暗渠17と貯水槽21との間には、暗渠17から貯水槽21に水を戻すための第1排水配管24が連結され、その第1排水配管24中には流量制御弁25が接続されている。
【0021】
そして、給水ポンプ23の給水量及び流量制御弁25の開度がそれぞれ適宜調整されることにより、貯水槽21と暗渠17との間において水が循環する。また、給水ポンプ23の給水量及び流量制御弁25の開度の少なくとも一方が加減されることにより、暗渠17における水量が調整され、パネル14の表面に溢れ出る水の量が調整される。
【0022】
また、雨天時には、流量制御弁25が適宜に調整されることにより、目地16から導水路13内に流入したり、暗渠17に直接降下したりした雨水が、暗渠17及び第1排水配管24を介して貯水槽21内に収集される。
【0023】
貯水槽21には、その内部に貯留された水の量を検出するための水位センサ27が設けられている。貯水槽21には水道水(または中水)補給配管28が接続され、その水道水補給配管28中には開閉弁29が設けられている。そして、水位センサ27により検出された貯水槽21内の水の量が所定値よりも低下したときには、開閉弁29が開放されることにより、水道水が水道水補給配管28を介して貯水槽21内に補給される。貯水槽21には開閉弁31を備えた第3排水配管32が接続され、開閉弁31の開放により、貯水槽21内の貯水が前記公共雨水管渠等に排出される。
【0024】
貯水槽21には、濾過装置30が接続されている。そして、貯水槽21内の水が濾過装置30により濾過されて塵や砂等、各種の不純物が除去される。貯水槽21の上部には、オーバーフロー管35が接続され、貯水槽21内の水位が満水近くまで上昇したときに、溢水がこのオーバーフロー管35から前記公共雨水管渠等に流される。
【0025】
図6及び図7に示すように、第1、第2目地材1A、1Bは、それぞれの係合凹部3、4において、十字状に噛み合うように係合している。この噛み合い部は目地16の角部と対応する位置に配置される。なお、図8に示すように、舗道10の外周部の目地16においては、少なくとも一方の目地材1A、1Bとして係合凹部3、4の中央部で切断された目地材1A、1Bが用いられる。第1、第2目地材1A、1Bは、本体1a、1cと、補強材1b、1dとにより構成されている。本体1a、1cは、図3に示すように、ポリプロピレン製の紐状体1eがランダムに絡み合って、紐状体1e間に空隙部が形成された成形品である。空隙部は毛細管現象が生じる範囲を超えて広く形成されている。紐状体1eは、カーボンブラックが混入されることにより耐候性が高められている。前記補強材1b、1dは、硬質ゴムのリサイクル材料を適宜大きさに粉砕してバインダーにより結合したものである。この前記補強材1b、1dは、本体1a、1cより高剛性を有するが、充実体によって構成しても、透水性を有するポーラス材によってに形成してもよい。また、第1、第2目地材1A、1Bの長さは、施工容易性、運搬及び保管時のハンドリングの良さ等と考慮して決定される。
【0026】
そして、第1目地材1Aの本体1aに形成された凹部5内に1対の補強材1bが相互間隔をおいて接着により固定され、補強材1b間に前記係合凹部3が形成されている。また、第2目地材1Bは本体1cが相互間隔をおいた状態で、本体1cの凹部6内に補強材1dが配置されて接着により固定され、本体1c間に前記係合凹部4が形成されている。
【0027】
なお、目地材1は、全部の目地16内に設けることは必ずしも必要ではない。目地材1が一部の目地16内に設けられ、他の目地16内にはモルタルが充填されてもよい。
さて、舗道10の涼空間は以下のようにして実現される。すなわち、給水ポンプ23が作動されると、貯水槽21内の水が給水配管22を介して暗渠17内に供給される。それと共に、暗渠17内の水が第1排水配管24を介して貯水槽21に戻される。このとき、水位センサ27からの検出信号に従って給水ポンプ23による給水量及び流量制御弁25の開度が調節されて、貯水槽21内の水位が設定水位に維持される。このため、暗渠17内の水が各導水路13内に導かれるとともに、その導水路13から各パネル14間の目地16の第1、第2目地材1A、1Bを通り抜けてパネル14の表面に溢れ出る。
【0028】
この場合、第1、第2目地材1A、1Bが広い空隙を形成した透水性の高い立体網状体で形成されているので、従来技術と異なり、導水路13を流れてきた水は、目地材1A、1Bを通り抜けてパネル14の表面に十分に且つ速やかに溢れ出る。そして、その水は、歩行者に支障のない程度で、各パネル14の上面の全体に薄い水膜を形成する。従って、この水膜の水が蒸発して蒸発潜熱を奪い、またパネル14の熱が水に吸収されることにより、パネル14が冷却される。このため、路面及びその周囲の空間の温度上昇が抑制される。
【0029】
また、雨水を、導水路13及び暗渠17を介して貯水槽21に流入させて、冷却用の水として貯める場合には、雨水は、目地材1A、1Bの空隙部を容易に通り抜けることができるので、滞留することなく、貯水槽21に円滑に導かれる。この場合、雨水の流れは、ゴミや砂、あるいは落ち葉等を伴うことが多いが、比較的大きなゴミや落ち葉は目地材1A、1Bの表面に止まり、小さな砂等が、目地材1A、1Bの空隙部を通過して貯水槽21に流れ込む。従って、目地材1A、1B上のゴミや落ち葉は、容易に取り除くことができる。また、貯水槽21内の砂等は濾過装置30により濾過される。従って、貯水槽21からパネル14の冷却のために目地材1A、1B介して供給される水を清浄な状態とすることができる。
【0030】
目地材1A、1Bを清掃したり、新品の目地材1A、1Bに交換したりする必要が生じた時には、目地材1A、1Bをその弾性反発力に抗して目地16から引き上げることにより取り出すことができる。目地材1A、1Bを目地16内に嵌め込む場合には、目地材1A、1Bを弾性反発力に抗して目地16内に押し込めばよい。
【0031】
従って、上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)上記実施形態では、導水路13から供給された水が、各パネル14間の目地16内の目地材1A、1Bの空隙を通り抜けて溢れ出ることにより、舗道10のパネル14上に供給することができる。このため、パネル14表面の十分な量の水によりパネル14が冷却されるので、舗道10を効果的に冷却することができる。
【0032】
(2)上記実施形態では、目地材1A、1Bは、本体1a、1cの弾性反発力により目地16内に保持されているので、通常の使用状態においては、目地16から外れることはない。また、必要に応じて、前記弾性反発力に抗して目地材1A、1Bを目地16から取り外すことができる。さらに、目地材1A、1Bを目地16内に嵌め込む場合には、目地材1A、1Bをその弾性に抗して押し込むのみでよい。このため、目地材1A、1Bの交換や洗浄を容易に行うことができる。
【0033】
(3)上記実施形態では、落ち葉や大きなゴミは目地材1A、1Bの表面に止まり、小さな塵や砂が、空隙部を通過して貯水槽21に流れ込む。このため、落ち葉や大きなゴミは、通常の掃除方法により容易に取り除くことができる。また、貯水槽21に流れ込んだ塵や砂等は濾過装置30により濾過される。従って、貯水槽21からパネル14や暗渠17に供給される水を常に清浄な状態とすることができる。
【0034】
(4)上記実施形態では、目地材1A、1Bの交差部分に、高剛性の補強材1b、1dを備えるようにした。このため、目地材1A、1Bどうしの擦れ合い等が生じても、立体網状体よりなる本体1a、1cの損傷を抑えることができる。
【0035】
(5)上記実施形態では、給水ポンプ23や流量制御弁25の動作を制御するのみで、舗道10表面の水量を自在にコントロールできる。従って、天候や歩行者数等に応じて舗道10及びその空間の冷却度合いを自在に調節できる。また、舗道10上の水を必要としないときには、導水路13への水の供給を停止することにより、通常の乾燥状態の舗道10とすることができる。
【0036】
(第2の実施形態)
次に、本発明を具体化した第2実施形態を図9及び図10を用いて説明する。なお、この第2実施形態以降の各実施形態及び変更例においては、第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0037】
図9に示すように、目地材1は、二枚の台形板状体が交差した第1実施形態の補強材1b、1dと同じ材質の平面十字状をなす補強材40を有している。補強材40の4ヶ所の先端面は上向きに傾斜する斜面41となっている。立体網状体よりなる本体42には、補強材40に対向する端面に下向きに傾斜する斜面45が形成され、斜面41、45が接合または接着した状態で、本体42及び補強材40が目地16内に嵌め込まれている。
【0038】
図10に示すように、導水路13は、互いに交差するように構成されている。この導水路13により、目地材1に対して水が供給される。
なお、図示しないが、補強材40として、平面T字状または平面L字状のものを用いれば、目地16が交差するあらゆる部分に配置することができる。
【0039】
第2実施形態においては、第1の実施形態とほぼ同様な効果を得ることができる。
(第3の実施形態)
次に、本発明を具体化した第3実施形態を図11を用いて説明する。
【0040】
本実施形態における第1、第2目地材50A、50Bは、立体網状体よりなる本体50a、50c内に前記補強材1b、1dと同じ材質の補強材50bがインサートされている。
【0041】
(第4の実施形態)
次に、本発明を具体化した第4実施形態を図12を用いて説明する。
本実施形態においては、2個の目地材1の本体1aの端部が連結具52に接着されて、この連結具52により連結されている。この連結具52は、基部57の上下両端から反対方向へ屈曲された形状の上下のフランジ部53、54を有する。そして、上部のフランジ部53には工具を引掛ける孔56が穿設されている。
【0042】
従って、この第4実施形態においては、以下の効果を得ることができる。
(6)上記実施形態では、隣接する目地材1の本体1aの端部を連結具52により連結した。そして、連結具52のフランジ部53の孔56に工具を引掛けることにより、連結具52で連結した複数の目地材1を数珠繋ぎのようにして取り出すことができる。
【0043】
(第5の実施形態)
次に、本発明を具体化した第5実施形態を図13及び図14を用いて説明する。
図13に示すように、本実施形態の舗道10は、4種類のパネル14、61、62、64により構成されている。パネル61、62の上面には、目地16側の縁部(辺)に位置する高い面62b、62bと、中央部に位置する低い面61a、62aとが形成されている。そして、高い面62b、62bと低い面61a、62aとが斜面61c、62cを介して連続している。前記パネル61は隣接する2辺に高い面61bを有し、前記パネル62は1辺に高い面62bを有している。パネル61、62の低い面61a、62aと連続するように、低い面61a、62aと同じ高さのパネル14が目地16を挟んで連続するように敷設されている。さらに、パネル61、62の高い面61b、62bと同じ高さの厚いパネル64が目地16を挟んで高い面61b、62b側に敷設されている。
【0044】
そして、厚いパネル64どうしの間の目地66には、目地材1ではなくモルタルが充填されている。
導水路13は、モルタルの目地66には至らず、目地材1を有する目地16に開口されている。
【0045】
そして、目地材1を通してパネル14、61、62表面に水を溢れ出させて水膜Wを形成するが、水膜Wの水位が高い面61b、62bを超えた場合、水は導水路13を介して貯水槽21に排水される。このため、水膜Wの水位は高い面61b、62bの高さに保たれる。
【0046】
従って、パネル14、61、62表面の水膜Wの水位を一定に保つための導水路13への水の供給量を調整する制御を省くことができる。
なお、本実施形態においては、立体網状体よりなる目地材1は、目地16の一部、例えばパネル61、62の外側の目地16のみに設けて、他の目地16にはモルタルを充填してもよい。ただし、排水の観点から、少なくとも薄いパネル14間の目地16に目地材1を設けることが望ましい。
【0047】
そして、この第5実施形態においては、第1〜4の実施形態における効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
(7)上記実施形態では、水膜Wの水位を一定に保つことができる。このため、効果的な冷却が可能になる。
【0048】
(第6の実施形態)
次に、本発明を具体化した第6実施形態を図15を用いて説明する。
本実施形態においては、目地16の上部に形成された凹部72に金属製の網状あるいは簀子状のカバー71が着脱可能に載置され、そのカバー71により目地材1の上部が覆われている。
【0049】
そして、この第6実施形態においては以下の効果を得ることができる。
(8)上記実施形態では、目地16を覆う金属製のカバー71が設けられている。このため、目地材1がハイヒールによる集中荷重を受けて損傷することを防止できるとともに、目地材1の一部がカバー71によって覆われるため、紫外線による劣化を抑えることができる。
【0050】
(第7の実施形態)
次に、本発明を具体化した第7実施形態を図16を用いて説明する。
本実施形態は、建築物の外壁において具体化したものである。
【0051】
建築物の外壁73には、敷設部材として、複数の外壁パネル(以下、パネルという)114が目地16が形成されるように敷設されている。目地16内には前記各実施形態と同様な目地材1が嵌め込まれている。目地16には導水路13が連結されている。
【0052】
この冷却構造においては、目地材1を介して溢れ出た水は、パネル114の表面を伝い落ちる。なお、パネル114の表面に酸化チタン等の光触媒を設けることにより、水を流し続けても、表面の汚れを防止できる。
【0053】
そして、この第7実施形態においては、以下の効果を得ることができる。
(9)上記実施形態では、建築物の外壁73に配設されたパネル114間の目地16の目地材1から水を出すようにした。このため、パネル114の表面を伝い落ちる水により、パネル114の温度が下げられるので、建築物の外側にいる人は、涼感を感じられると共に、建築物の冷房効果を高めることができる。
【0054】
(変更例)
なお、上記実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ 図4に示す構成において暗渠17をなくし、給水配管22、24等を導水路13に直接接続すること。
・ 舗道10に隣接する水路を設け、その水路と目地とを接続するとともに、その水路に給排水の配管22、24を接続して、水路を介して目地に対する給水、目地からの排水を行なうように構成すること。
・ 前記実施形態の構成を適宜に組み合わせること。
・ ポリプロピレン製の紐状体1eで目地材1を形成したが、目地材1をポリエチレン樹脂製、硬質塩化ビニール樹脂製またはABS樹脂製等の合成樹脂の紐状体1eで形成して、それぞれの樹脂にカーボンブラックを混入させたり、塗装やメッキ等により表面処理をしたりして耐候性を高めること。
・ 目地材として、金属線を絡ませた立体網状体を用いること。この場合、金属線は耐食加工を施したものや、ステンレス等を用いことが好ましい。
・ 目地材として、合成樹脂ストリングあるいは金属線を全体として中空管状をなすように規則的に編成したものを用いること。
・ 目地材1の長さを種々変更すること。例えば、パネルの一辺の長さの目地材と、その目地材(目地)の幅を一辺の長さとした平面正方形状の目地材を用いること。この場合、長い目地材はパネルの辺と対応する位置に配置され、平面正方形の目地材は目地の交差部に配置される。
・ 目地材1A、1Bの補強材1b、1dをなくし、本体1a、1cのみとすること。
・ 紐状体1eで形成された立体網状体に替えて、セル(発泡)を区画するセル膜の一部または大半が除去された合成樹脂製またはセラミック製の三次元網状骨格構造体を用いる。
【符号の説明】
【0055】
1,1A,1B…目地材、1a,1c,42,50a…本体、1b,1d,40,50b…補強材、1e…紐状体、13…導水路、16,66…目地、41,45,61c…斜面、61a,61b,62b…面。
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路の舗装や建築物等の構造物に係り、詳しくは、舗道、広場あるいは建築物等の構造物の表面付近を冷却するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、夏季の都市部でのヒートアイランド現象による異常気温上昇が問題となっている。この異常気温上昇下において、舗道や広場等を歩く歩行者は、高気温に加えて、舗装面からの輻射熱を受けて不快となる。この輻射熱による不快感を抑えるために、舗装面の温度を低下させる技術の種々提案がなされている。
【0003】
特許文献1では、保水性コンクリート盤体で舗装表面が形成され、その下方の導水層の水が保水性コンクリート盤体に浸透して、舗装表面を湿潤状態にすることにより、地表温度の上昇を抑制することができるようになっている。
【0004】
特許文献2では、道路の路盤上に不透水舗装部が形成され、更に、その不透水舗装部上に位置する複層透水舗装部の下層側に高透水層部が形成されると共に、表層側に高透水層部より低透水層部が形成されている。この高透水層部に対して、道路に設けた加圧給水部の給水管から冷却水が直接加圧供給されて、表面側の高透水層部からの水の蒸発により、道路舗装部の冷却が行われるとされている。
【0005】
特許文献3では、土路盤上のコンクリート舗装板の間に吸水性セメント硬化体が配置されている。この吸水性セメント硬化体は、微細ひび割れを有しているので、土路盤から微細ひび割れを通じて水を吸い上げることができる。この吸い上げられた水が蒸発することにより、舗装道路等の路面の温度低下が促進されるようになっている。
【0006】
特許文献4では、基板上で隣接する化粧仕上げ体間の目地に、多数の粒体により形成された透水目地部が着脱自在に配置されている。この透水目地部は、透水路を形成する。そして、透水路を介して、水の大気中への蒸散が行われて、ヒートアイランド現象を防止することができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−300881号公報
【特許文献2】特開2004−308290号公報
【特許文献3】特開2006−118128号公報
【特許文献4】実用新案登録第3147443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記各特許文献に記載では、路面の蒸発潜熱を利用して、路面が冷却される。
特許文献1では、ポーラスなコンクリート盤体を浸透する水の蒸発を利用しているため、冷却に供される水の量は多くない。このため、奪われる蒸発潜熱量は低く、従って舗装表面の冷却は、歩行者に涼感を感じさせるほどに十分とはなり難い。また、特許文献2では、低透水層部内を浸透状態で上昇した水が蒸発する構成であるため、特許文献1と同様に十分な冷却効果は得難い。同様に、特許文献3では、微細ひび割れを通じて水が吸い上げられるので、その温度低下効果は低い。特許文献4では、粒体間を浸透する水を利用するため、冷却作用に関して、他の特許文献の技術と同等である。
【0009】
そして、前記各特許文献においては、孔やひび、あるいは粒体間の隙間に塵埃が詰まることにより、冷却能力が減じてしまうおそれを含んでいる。
冷却効果を高めるためには、溝状に開いた目地から舗装の表面側に大量の水を供給することが考えられる。しかし、このように構成した場合には、開いた目地にハイヒールの踵が入り込んで歩き難くなるばかりでなく、目地に塵埃、小石、落ち葉等が詰まって、その除去が困難になるおそれもあった。
【0010】
本発明は、このような問題に着目してなされたものであり、その目的とするところは、舗道、広場あるいは建築物等の構造物の表面付近を効果的に冷却することができるとともに、保守管理が容易な構築物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記問題を解決するために本発明は、複数の敷設部材を目地が形成されるように敷設した構築物において、前記目地には水源から水が導かれる導水路が接続されるとともに、目地内には目地材が配置され、その目地材として立体網状体を用いたことを特徴とするものである。
【0012】
上記構成によれば、水源から導かれた水が、立体網状体よりなる目地材を通り抜けて、構造物の表面に溢れ出る。このため、水は十分に且つ速やかに供給されるので、構造物の温度を適切に冷却することができる。また、目地内には目地材が存在するため、ハイヒールの踵等が目地内に入り込むことを防止できる。
【0013】
さらに、目地材が存在するために、目地内に小石や落ち葉等が入り込むことを防止できる。
前記の構成において、前記目地材を、合成樹脂よりなる紐状体を絡み合わせて構成することが好ましい。
【0014】
前記の構成において、前記目地材を、立体網状体よりなる本体と、その本体より高剛性の補強材とにより構成することが好ましい。
前記の構成において、前記補強材は目地の角部に対応する位置に配置されていることが好ましい。
【0015】
前記の構成において、前記敷設部材が敷石パネルであって、その敷石パネルの上面には、目地側の縁部に位置する高い面と、中央部に位置する低い面とが形成されている。また、この構成において、高い面と低い面とが斜面を介して連続しているとよい。
【0016】
さらに、前記の構成において、低い面と同じ高さの上面を有する敷石パネルを低い面と連続するように敷設するとよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、舗道、広場あるいは建築物等の構造物の表面付近を効果的に冷却することができるとともに、保守管理が容易な構築物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1実施形態の舗道の冷却構造を示す一部平面図。
【図2】図1のA−A矢視断面図。
【図3】図2のB−B矢視断面図。
【図4】舗道の冷却構造に対する給排水に係る構成を示す概略図。
【図5】第1実施形態の目地の配置を示す一部平面図。
【図6】二種類の目地材を示す斜視図。
【図7】目地材の組み合わせ構成を示す斜視図。
【図8】図7とは異なる目地材の組み合わせ構成を示す斜視図。
【図9】第2実施形態の目地材を示す斜視図。
【図10】第2実施形態の目地材が用いられる導水路の配置を示す一部平面図。
【図11】第3実施形態の目地材を示す斜視図。
【図12】第4実施形態を示す斜視図。
【図13】第5実施形態を示す一部平面図。
【図14】図13のC−C矢視断面図。
【図15】第6実施形態を示す一部断面図。
【図16】第7実施形態を示す一部断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1の実施形態)
以下、本発明を具体化した第1実施形態を図1〜8を用いて説明する。
図1及び図2に示すように、路床11上にコンクリート等よりなる路盤12が形成されている。路盤12の上面には、複数の溝状の導水路13が路盤12の長手方向に所定間隔をおいて平行に延びるように形成されている。敷設面としての路盤12の上面には、敷設部材としての四角形状の複数の舗装パネル(以下、単にパネルという)14が固着層15を介して碁盤目状に敷設されている。パネル14は、その中心部が導水路13上に位置する。以上のようにして、構築物としての舗道10が構成されている。各パネル14は、自然石あるいは自然石を模した人造石であって、透水性及び保水性を有しないものが用いられている。
【0020】
そして、図3に示すように、各パネル14間の目地16内には、目地材1として後述の立体網状体としての第1、第2目地材1A、1Bがその弾力に抗して嵌め込まれている。
図4に示すように、舗道10の一部には、各導水路13に対する水の給排水のために暗渠17が設けられている。舗道10の近傍には水源としての貯水槽21が設置されている。貯水槽21と暗渠17との間には給水配管22が連結され、その給水配管22中には給水量を調整可能にした給水ポンプ23が接続されている。この給水ポンプ23の作動により、貯水槽21内に貯留された水が給水配管22を介して暗渠17内に供給される。そして、この暗渠17内の水が路盤12とパネル14との間の各導水路13内に導かれる。これによって、導水路13内の水が各パネル14間の目地16の目地材1A、1Bを通り抜けて、パネル14の表面側に溢れ出るようになっている。また、暗渠17と貯水槽21との間には、暗渠17から貯水槽21に水を戻すための第1排水配管24が連結され、その第1排水配管24中には流量制御弁25が接続されている。
【0021】
そして、給水ポンプ23の給水量及び流量制御弁25の開度がそれぞれ適宜調整されることにより、貯水槽21と暗渠17との間において水が循環する。また、給水ポンプ23の給水量及び流量制御弁25の開度の少なくとも一方が加減されることにより、暗渠17における水量が調整され、パネル14の表面に溢れ出る水の量が調整される。
【0022】
また、雨天時には、流量制御弁25が適宜に調整されることにより、目地16から導水路13内に流入したり、暗渠17に直接降下したりした雨水が、暗渠17及び第1排水配管24を介して貯水槽21内に収集される。
【0023】
貯水槽21には、その内部に貯留された水の量を検出するための水位センサ27が設けられている。貯水槽21には水道水(または中水)補給配管28が接続され、その水道水補給配管28中には開閉弁29が設けられている。そして、水位センサ27により検出された貯水槽21内の水の量が所定値よりも低下したときには、開閉弁29が開放されることにより、水道水が水道水補給配管28を介して貯水槽21内に補給される。貯水槽21には開閉弁31を備えた第3排水配管32が接続され、開閉弁31の開放により、貯水槽21内の貯水が前記公共雨水管渠等に排出される。
【0024】
貯水槽21には、濾過装置30が接続されている。そして、貯水槽21内の水が濾過装置30により濾過されて塵や砂等、各種の不純物が除去される。貯水槽21の上部には、オーバーフロー管35が接続され、貯水槽21内の水位が満水近くまで上昇したときに、溢水がこのオーバーフロー管35から前記公共雨水管渠等に流される。
【0025】
図6及び図7に示すように、第1、第2目地材1A、1Bは、それぞれの係合凹部3、4において、十字状に噛み合うように係合している。この噛み合い部は目地16の角部と対応する位置に配置される。なお、図8に示すように、舗道10の外周部の目地16においては、少なくとも一方の目地材1A、1Bとして係合凹部3、4の中央部で切断された目地材1A、1Bが用いられる。第1、第2目地材1A、1Bは、本体1a、1cと、補強材1b、1dとにより構成されている。本体1a、1cは、図3に示すように、ポリプロピレン製の紐状体1eがランダムに絡み合って、紐状体1e間に空隙部が形成された成形品である。空隙部は毛細管現象が生じる範囲を超えて広く形成されている。紐状体1eは、カーボンブラックが混入されることにより耐候性が高められている。前記補強材1b、1dは、硬質ゴムのリサイクル材料を適宜大きさに粉砕してバインダーにより結合したものである。この前記補強材1b、1dは、本体1a、1cより高剛性を有するが、充実体によって構成しても、透水性を有するポーラス材によってに形成してもよい。また、第1、第2目地材1A、1Bの長さは、施工容易性、運搬及び保管時のハンドリングの良さ等と考慮して決定される。
【0026】
そして、第1目地材1Aの本体1aに形成された凹部5内に1対の補強材1bが相互間隔をおいて接着により固定され、補強材1b間に前記係合凹部3が形成されている。また、第2目地材1Bは本体1cが相互間隔をおいた状態で、本体1cの凹部6内に補強材1dが配置されて接着により固定され、本体1c間に前記係合凹部4が形成されている。
【0027】
なお、目地材1は、全部の目地16内に設けることは必ずしも必要ではない。目地材1が一部の目地16内に設けられ、他の目地16内にはモルタルが充填されてもよい。
さて、舗道10の涼空間は以下のようにして実現される。すなわち、給水ポンプ23が作動されると、貯水槽21内の水が給水配管22を介して暗渠17内に供給される。それと共に、暗渠17内の水が第1排水配管24を介して貯水槽21に戻される。このとき、水位センサ27からの検出信号に従って給水ポンプ23による給水量及び流量制御弁25の開度が調節されて、貯水槽21内の水位が設定水位に維持される。このため、暗渠17内の水が各導水路13内に導かれるとともに、その導水路13から各パネル14間の目地16の第1、第2目地材1A、1Bを通り抜けてパネル14の表面に溢れ出る。
【0028】
この場合、第1、第2目地材1A、1Bが広い空隙を形成した透水性の高い立体網状体で形成されているので、従来技術と異なり、導水路13を流れてきた水は、目地材1A、1Bを通り抜けてパネル14の表面に十分に且つ速やかに溢れ出る。そして、その水は、歩行者に支障のない程度で、各パネル14の上面の全体に薄い水膜を形成する。従って、この水膜の水が蒸発して蒸発潜熱を奪い、またパネル14の熱が水に吸収されることにより、パネル14が冷却される。このため、路面及びその周囲の空間の温度上昇が抑制される。
【0029】
また、雨水を、導水路13及び暗渠17を介して貯水槽21に流入させて、冷却用の水として貯める場合には、雨水は、目地材1A、1Bの空隙部を容易に通り抜けることができるので、滞留することなく、貯水槽21に円滑に導かれる。この場合、雨水の流れは、ゴミや砂、あるいは落ち葉等を伴うことが多いが、比較的大きなゴミや落ち葉は目地材1A、1Bの表面に止まり、小さな砂等が、目地材1A、1Bの空隙部を通過して貯水槽21に流れ込む。従って、目地材1A、1B上のゴミや落ち葉は、容易に取り除くことができる。また、貯水槽21内の砂等は濾過装置30により濾過される。従って、貯水槽21からパネル14の冷却のために目地材1A、1B介して供給される水を清浄な状態とすることができる。
【0030】
目地材1A、1Bを清掃したり、新品の目地材1A、1Bに交換したりする必要が生じた時には、目地材1A、1Bをその弾性反発力に抗して目地16から引き上げることにより取り出すことができる。目地材1A、1Bを目地16内に嵌め込む場合には、目地材1A、1Bを弾性反発力に抗して目地16内に押し込めばよい。
【0031】
従って、上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)上記実施形態では、導水路13から供給された水が、各パネル14間の目地16内の目地材1A、1Bの空隙を通り抜けて溢れ出ることにより、舗道10のパネル14上に供給することができる。このため、パネル14表面の十分な量の水によりパネル14が冷却されるので、舗道10を効果的に冷却することができる。
【0032】
(2)上記実施形態では、目地材1A、1Bは、本体1a、1cの弾性反発力により目地16内に保持されているので、通常の使用状態においては、目地16から外れることはない。また、必要に応じて、前記弾性反発力に抗して目地材1A、1Bを目地16から取り外すことができる。さらに、目地材1A、1Bを目地16内に嵌め込む場合には、目地材1A、1Bをその弾性に抗して押し込むのみでよい。このため、目地材1A、1Bの交換や洗浄を容易に行うことができる。
【0033】
(3)上記実施形態では、落ち葉や大きなゴミは目地材1A、1Bの表面に止まり、小さな塵や砂が、空隙部を通過して貯水槽21に流れ込む。このため、落ち葉や大きなゴミは、通常の掃除方法により容易に取り除くことができる。また、貯水槽21に流れ込んだ塵や砂等は濾過装置30により濾過される。従って、貯水槽21からパネル14や暗渠17に供給される水を常に清浄な状態とすることができる。
【0034】
(4)上記実施形態では、目地材1A、1Bの交差部分に、高剛性の補強材1b、1dを備えるようにした。このため、目地材1A、1Bどうしの擦れ合い等が生じても、立体網状体よりなる本体1a、1cの損傷を抑えることができる。
【0035】
(5)上記実施形態では、給水ポンプ23や流量制御弁25の動作を制御するのみで、舗道10表面の水量を自在にコントロールできる。従って、天候や歩行者数等に応じて舗道10及びその空間の冷却度合いを自在に調節できる。また、舗道10上の水を必要としないときには、導水路13への水の供給を停止することにより、通常の乾燥状態の舗道10とすることができる。
【0036】
(第2の実施形態)
次に、本発明を具体化した第2実施形態を図9及び図10を用いて説明する。なお、この第2実施形態以降の各実施形態及び変更例においては、第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0037】
図9に示すように、目地材1は、二枚の台形板状体が交差した第1実施形態の補強材1b、1dと同じ材質の平面十字状をなす補強材40を有している。補強材40の4ヶ所の先端面は上向きに傾斜する斜面41となっている。立体網状体よりなる本体42には、補強材40に対向する端面に下向きに傾斜する斜面45が形成され、斜面41、45が接合または接着した状態で、本体42及び補強材40が目地16内に嵌め込まれている。
【0038】
図10に示すように、導水路13は、互いに交差するように構成されている。この導水路13により、目地材1に対して水が供給される。
なお、図示しないが、補強材40として、平面T字状または平面L字状のものを用いれば、目地16が交差するあらゆる部分に配置することができる。
【0039】
第2実施形態においては、第1の実施形態とほぼ同様な効果を得ることができる。
(第3の実施形態)
次に、本発明を具体化した第3実施形態を図11を用いて説明する。
【0040】
本実施形態における第1、第2目地材50A、50Bは、立体網状体よりなる本体50a、50c内に前記補強材1b、1dと同じ材質の補強材50bがインサートされている。
【0041】
(第4の実施形態)
次に、本発明を具体化した第4実施形態を図12を用いて説明する。
本実施形態においては、2個の目地材1の本体1aの端部が連結具52に接着されて、この連結具52により連結されている。この連結具52は、基部57の上下両端から反対方向へ屈曲された形状の上下のフランジ部53、54を有する。そして、上部のフランジ部53には工具を引掛ける孔56が穿設されている。
【0042】
従って、この第4実施形態においては、以下の効果を得ることができる。
(6)上記実施形態では、隣接する目地材1の本体1aの端部を連結具52により連結した。そして、連結具52のフランジ部53の孔56に工具を引掛けることにより、連結具52で連結した複数の目地材1を数珠繋ぎのようにして取り出すことができる。
【0043】
(第5の実施形態)
次に、本発明を具体化した第5実施形態を図13及び図14を用いて説明する。
図13に示すように、本実施形態の舗道10は、4種類のパネル14、61、62、64により構成されている。パネル61、62の上面には、目地16側の縁部(辺)に位置する高い面62b、62bと、中央部に位置する低い面61a、62aとが形成されている。そして、高い面62b、62bと低い面61a、62aとが斜面61c、62cを介して連続している。前記パネル61は隣接する2辺に高い面61bを有し、前記パネル62は1辺に高い面62bを有している。パネル61、62の低い面61a、62aと連続するように、低い面61a、62aと同じ高さのパネル14が目地16を挟んで連続するように敷設されている。さらに、パネル61、62の高い面61b、62bと同じ高さの厚いパネル64が目地16を挟んで高い面61b、62b側に敷設されている。
【0044】
そして、厚いパネル64どうしの間の目地66には、目地材1ではなくモルタルが充填されている。
導水路13は、モルタルの目地66には至らず、目地材1を有する目地16に開口されている。
【0045】
そして、目地材1を通してパネル14、61、62表面に水を溢れ出させて水膜Wを形成するが、水膜Wの水位が高い面61b、62bを超えた場合、水は導水路13を介して貯水槽21に排水される。このため、水膜Wの水位は高い面61b、62bの高さに保たれる。
【0046】
従って、パネル14、61、62表面の水膜Wの水位を一定に保つための導水路13への水の供給量を調整する制御を省くことができる。
なお、本実施形態においては、立体網状体よりなる目地材1は、目地16の一部、例えばパネル61、62の外側の目地16のみに設けて、他の目地16にはモルタルを充填してもよい。ただし、排水の観点から、少なくとも薄いパネル14間の目地16に目地材1を設けることが望ましい。
【0047】
そして、この第5実施形態においては、第1〜4の実施形態における効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
(7)上記実施形態では、水膜Wの水位を一定に保つことができる。このため、効果的な冷却が可能になる。
【0048】
(第6の実施形態)
次に、本発明を具体化した第6実施形態を図15を用いて説明する。
本実施形態においては、目地16の上部に形成された凹部72に金属製の網状あるいは簀子状のカバー71が着脱可能に載置され、そのカバー71により目地材1の上部が覆われている。
【0049】
そして、この第6実施形態においては以下の効果を得ることができる。
(8)上記実施形態では、目地16を覆う金属製のカバー71が設けられている。このため、目地材1がハイヒールによる集中荷重を受けて損傷することを防止できるとともに、目地材1の一部がカバー71によって覆われるため、紫外線による劣化を抑えることができる。
【0050】
(第7の実施形態)
次に、本発明を具体化した第7実施形態を図16を用いて説明する。
本実施形態は、建築物の外壁において具体化したものである。
【0051】
建築物の外壁73には、敷設部材として、複数の外壁パネル(以下、パネルという)114が目地16が形成されるように敷設されている。目地16内には前記各実施形態と同様な目地材1が嵌め込まれている。目地16には導水路13が連結されている。
【0052】
この冷却構造においては、目地材1を介して溢れ出た水は、パネル114の表面を伝い落ちる。なお、パネル114の表面に酸化チタン等の光触媒を設けることにより、水を流し続けても、表面の汚れを防止できる。
【0053】
そして、この第7実施形態においては、以下の効果を得ることができる。
(9)上記実施形態では、建築物の外壁73に配設されたパネル114間の目地16の目地材1から水を出すようにした。このため、パネル114の表面を伝い落ちる水により、パネル114の温度が下げられるので、建築物の外側にいる人は、涼感を感じられると共に、建築物の冷房効果を高めることができる。
【0054】
(変更例)
なお、上記実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ 図4に示す構成において暗渠17をなくし、給水配管22、24等を導水路13に直接接続すること。
・ 舗道10に隣接する水路を設け、その水路と目地とを接続するとともに、その水路に給排水の配管22、24を接続して、水路を介して目地に対する給水、目地からの排水を行なうように構成すること。
・ 前記実施形態の構成を適宜に組み合わせること。
・ ポリプロピレン製の紐状体1eで目地材1を形成したが、目地材1をポリエチレン樹脂製、硬質塩化ビニール樹脂製またはABS樹脂製等の合成樹脂の紐状体1eで形成して、それぞれの樹脂にカーボンブラックを混入させたり、塗装やメッキ等により表面処理をしたりして耐候性を高めること。
・ 目地材として、金属線を絡ませた立体網状体を用いること。この場合、金属線は耐食加工を施したものや、ステンレス等を用いことが好ましい。
・ 目地材として、合成樹脂ストリングあるいは金属線を全体として中空管状をなすように規則的に編成したものを用いること。
・ 目地材1の長さを種々変更すること。例えば、パネルの一辺の長さの目地材と、その目地材(目地)の幅を一辺の長さとした平面正方形状の目地材を用いること。この場合、長い目地材はパネルの辺と対応する位置に配置され、平面正方形の目地材は目地の交差部に配置される。
・ 目地材1A、1Bの補強材1b、1dをなくし、本体1a、1cのみとすること。
・ 紐状体1eで形成された立体網状体に替えて、セル(発泡)を区画するセル膜の一部または大半が除去された合成樹脂製またはセラミック製の三次元網状骨格構造体を用いる。
【符号の説明】
【0055】
1,1A,1B…目地材、1a,1c,42,50a…本体、1b,1d,40,50b…補強材、1e…紐状体、13…導水路、16,66…目地、41,45,61c…斜面、61a,61b,62b…面。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の敷設部材を目地が形成されるように敷設した構築物において、
前記目地には水源から水が導かれる導水路が接続されるとともに、目地内には目地材が配置され、その目地材として立体網状体を用いたことを特徴とする構築物。
【請求項2】
前記目地材は、合成樹脂よりなる紐状体を絡み合わせて構成されていることを特徴とする請求項1に記載の構築物。
【請求項3】
前記目地材は、立体網状体よりなる本体と、その本体より高剛性の補強材とにより構成されたことを特徴とする請求項1または2に記載の構築物。
【請求項4】
前記補強材が目地の角部と対応する位置に配置されていることを特徴とする請求項3に記載の構築物。
【請求項5】
前記敷設部材が敷石パネルであって、その敷石パネルの上面には、目地側の縁部に位置する高い面と、中央部に位置する低い面とが形成されていることを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の構築物。
【請求項6】
高い面と低い面とが斜面を介して連続していることを特徴とする請求項5に記載の構築物。
【請求項7】
低い面と同じ高さの上面を有する敷石パネルを低い面と連続するように敷設したことを特徴とする構築物。
【請求項1】
複数の敷設部材を目地が形成されるように敷設した構築物において、
前記目地には水源から水が導かれる導水路が接続されるとともに、目地内には目地材が配置され、その目地材として立体網状体を用いたことを特徴とする構築物。
【請求項2】
前記目地材は、合成樹脂よりなる紐状体を絡み合わせて構成されていることを特徴とする請求項1に記載の構築物。
【請求項3】
前記目地材は、立体網状体よりなる本体と、その本体より高剛性の補強材とにより構成されたことを特徴とする請求項1または2に記載の構築物。
【請求項4】
前記補強材が目地の角部と対応する位置に配置されていることを特徴とする請求項3に記載の構築物。
【請求項5】
前記敷設部材が敷石パネルであって、その敷石パネルの上面には、目地側の縁部に位置する高い面と、中央部に位置する低い面とが形成されていることを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の構築物。
【請求項6】
高い面と低い面とが斜面を介して連続していることを特徴とする請求項5に記載の構築物。
【請求項7】
低い面と同じ高さの上面を有する敷石パネルを低い面と連続するように敷設したことを特徴とする構築物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2011−219927(P2011−219927A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−87015(P2010−87015)
【出願日】平成22年4月5日(2010.4.5)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月5日(2010.4.5)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】
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