構造ポリマーインサート、及び、その形成方法
【課題】必要とされる耐久性が不足することがなく、比較的安価な構造ポリマーインサートを提供する。
【解決手段】構造ポリマーインサートは、表面を有すると共に、ポリプロピレン成分とグラスファイバー成分との混合物である基材、及び、接着剤を含む。基材の表面は、その表面上に存在する全原子の1乃至60原子%の酸素原子(場合によっては空気プラズマ処理によって導入される)を含有する。発泡接着剤は、酸素原子の酸化作用によって形成される一つ又は複数の反応性部分によって、その表面に付着される。
【解決手段】構造ポリマーインサートは、表面を有すると共に、ポリプロピレン成分とグラスファイバー成分との混合物である基材、及び、接着剤を含む。基材の表面は、その表面上に存在する全原子の1乃至60原子%の酸素原子(場合によっては空気プラズマ処理によって導入される)を含有する。発泡接着剤は、酸素原子の酸化作用によって形成される一つ又は複数の反応性部分によって、その表面に付着される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の少なくとも一つの観点は、接着剤に結合されるグラスファイバー含有ポリプロピレンを有する構造ポリマーインサートに関連する。
【背景技術】
【0002】
金属製の支持構造物が、自動車のフレームに強度及びエネルギー吸収性を提供すべく、自動車産業においてしばしば用いられる。行政規制によって安全及び対衝突性に関する特定事項が要求されている現状において、グラスファイバーによって補強されたポリアミドインサートが、金属製の支持構造物に加えて、一般的に使用されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、グラスファイバによって補強されたポリアミドインサートは、種々の理由によって(特にポリアミドについては必要とされる耐久性が不足することが多いので)、その使途が制限されている。加えて、ポリアミドは、比較的高価な材質であるため、構造ポリアミドインサートを広範に用いることは実質的に不可能である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の少なくとも一つの観点によれば、以下の構造ポリマーインサートが提供される。少なくとも一つの実施形態において、構造ポリマーインサートは、ポリプロピレン成分とグラスファイバー成分との混合物である基材、及び、接着剤を有する。基材は表面を有し、その表面は、その表面上に存在する全原子の1乃至60原子%の酸素原子を含有する。接着剤は、酸素原子の酸化作用によって形成される一つ又は複数の反応性部分によって、その表面に付着される。少なくとも一つの実施形態において、一つ又は複数の反応性部分は、実例として、ヒドロキシル基、エーテル基、ケトン基、カルボキシル基、或いは、それらの如何なる組合せを含む。
【0005】
少なくとも一つの実施形態において、基材の表面は、その表面上に存在する全原子の0.1乃至10原子%の窒素原子を含有する。
【0006】
少なくとも一つの実施形態において、基材の表面は、その表面上に存在する全原子の0乃至5原子%の珪素原子を含有する。
【0007】
少なくとも一つの実施形態において、基材の表面は、酸素原子及び窒素原子を、酸素/窒素の原子比が5乃至12である範囲にて含有する。
【0008】
少なくとも一つの実施形態において、基材は、その全重量の1乃至60重量%のグラスファイバー成分を含み、少なくとも一つの特定の実施形態においては、基材は、その全重量の30乃至50重量%のグラスファイバー成分を含む。少なくとも別の実施形態においては、グラスファイバー成分は、2mm以上の平均繊維長を有する。
【0009】
更に、少なくとも一つの実施形態において、接着剤は発泡接着剤であり、少なくとも一つの特定の実施形態においては、発泡接着剤はエポキシ系である。
【0010】
本発明の少なくとも一つの観点によれば、以下の構造ポリマーインサートの形成方法もまた提供される。少なくとも一つの実施形態において、方法は、表面を有すると共に、ポリプロピレン成分とグラスファイバー成分との混合物である基材を提供する工程と、処理済表面を形成すべく酸素原子を表面上に導入する工程と、結合体を生成すべく接着剤を処理済表面に付着させる工程とを含む。更に方法は、結合体を加熱硬化させる工程を選択的に含む。少なくとも一つの特定の実施形態において、酸素原子を導入する工程は、空気プラズマ処理によってもたらされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の組成、実施形態、及び方法について、ここに詳細な記述が行なわれる。しかしながら、記述される実施形態は、種々の形態及び代替の形態に具現化され得る本発明の単なる例示であることを理解すべきである。従って、ここに詳述された特定の記述は、本発明の権利範囲を限定するものとして解釈されるべきではなく、寧ろ、本技術分野の当業者に本発明の様々な実施方法を教示するための、単なる典型的な土台として解釈されるべきである。
【0012】
明確に指示されている場合を除いて、材質又は反応状態及び/又は使用状態の量を示す記述における全ての数量は、本発明の広範にわたる範囲を記述する場合には「約」という語によって変更されるように理解されるべきである。しかしながら、記述された数値限定の範囲内にて実施するのが、一般的には好ましい。
【0013】
本発明の一つ又は二つ以上の実施形態に関連して所定の目的に適した材質の種類(Group)又はグレード(Class)の記述は、その種類又はグレードであるならば如何なる二つ又は三つ以上の材質の混合が望ましいことを意味する。化学用語での組成物の記述は、明細書中で規定された各材質を混合した時点における組成物を言及しているものの、その混合された組成物において化学的相互作用が行なわれた後の組成物を必ずしも排除するものではない。頭字語或いは他の略語について最初に記述された定義は、引き続いて記述される同一の頭字語或いは略語の全てに適用され、そして必要に応じて、最初に記述された頭字語或いは略語の一般的な文法的変化に対しても適用される。それとは反対に、明確に言及されてない場合には、特性の測定は、同一特性に関して後述されているのと同様な測定技術によってなされる。
【0014】
ここに使用されているように、他に指示されていないならば、「GFPP」という用語は、「グラスファイバー含有ポリプロピレン」という用語と代替可能に用いられる。
【0015】
本発明の少なくとも一つの実施形態によれば、工業的に許容可能な耐久性と比較的高い経済効率とを備えた構造ポリマーインサートが提供される。少なくとも一つの実施形態によれば、構造ポリマーインサートは、それらの間に比較的高いせん断結合強度を有する、発泡接着剤に結合されたグラスファイバー含有ポリプロピレン(GFPP)を含む。
【0016】
少なくとも三つのパラメータ(すなわち表面処理の強度及び範囲、グラスファイバー成分の重量%、及び、グラスファイバーの繊維長)の相互作用によって、グラスファイバー含有ポリプロピレンを含む基材と発泡接着剤との間の結合強度に関して相乗効果が生じている。少なくとも一つの実施形態において、後で詳述するように、典型的な空気プラズマ処理は、互いに異なる二つの影響をもたらす。第一の影響は、空気プラズマ処理が行なわれることによって基材表面の炭素部分を酸化させ、その後、その酸化された炭素部分を介して発泡接着剤と基材との間に化学的結合を生成するときに、もたらされる。少なくとも別の実施形態において、第二の影響は、空気プラズマ処理がグラスファイバー成分の所定部分をエッチングすることによって表面粗さを更に増大させるときに、もたらされる。この空気プラズマ処理によって基材表面上に露出したグラスファイバーはその後、発泡接着剤と基材との間の結合強度を更に高めるべく、発泡接着剤との間で機械的結合を形成する。
【0017】
少なくとも一つの実施形態において、後で詳述するように、グラスファイバー成分の含有は、構造耐久性を提供する機能を果たすと共に、結合強度に関する空気プラズマの影響を最大化する機能を果たす。グラスファイバーを含有しているポリプロピレンポリマーは、グラスファイバーを全く含有していないポリプロピレンポリマーと比べて、空気プラズマ処理によって、少なくとも5倍の結合強度増強効果がもたらされる。
【0018】
空気プラズマ処理の適用量を増大することによって、基材はその表面から80μmの深さまでエッチングされて更に粗い表面を形成し得るので、大きな機械的結合が可能となり、一見したところ、より大きな結合強度をもたらすように思われる。しかしながら、結合強度の増加と空気プラズマ処理の適用量との間にはトレードオフの関係にあるので、実際にはそうならない場合がある。具体的には、空気プラズマを大量に適用すると、粗い表面が生成されるものの、それと同時に、基材表面において炭素種が若干過剰に酸化されてしまい、それ故、効果的な表面酸化度合いが低減される場合がある。
【0019】
後で詳述するように、基材表面における炭素の過剰な酸化は、基材表面における酸化された炭素種の量を低減し、それ故、結合強度を低下させる。そういうものとして、比較的大きな結合強度を有する構造ポリマーインサートは、少なくとも上述した要因の相乗効果によって実現される。
【0020】
一般的な構造ポリマーインサートは、ポリアミド(又は脂肪族のポリアミド:ナイロン(登録商標))を用いて製造される。ナイロンは、ペプチド結合又はアミド結合によって連結された反復単位から成る、熱可塑性の光沢のある材料である。ナイロンは、等量のジアミンとジカルボン酸を反応させることによって形成される縮合コポリマーであり、それ故、ペプチド結合が、ポリペプチドバイオポリマーと類似の手順によって、各モノマーの両端に形成される。ナイロンの固形物は、機械的部品(例えば、以前は金属によって鋳造されていた、歯車及びその他の低応力乃至中応力の部品)として使用される。エンジニアリンググレードのナイロンは、押し出し成形、鋳造成形、及び、射出成形によって加工される。
【0021】
ナイロンとは異なり、ポリプロピレンは、用途が広く、より費用対効果の大きい熱可塑性材料である。例えば、グラスファイバー含有ポリプロピレンの典型的な市場価格は、ポリアミドの市場価格と比べて、少なくとも40%安価である。グラスファイバー含有ポリプロピレンはポリアミドよりも短い成形時間で製造され得るので、構造ポリマーインサートの一成分としてグラスファイバー含有ポリプロピレンを用いた場合の費用対効果は高められる。加えて、ポリプロピレンは、工業的に許容可能な耐疲労性を有する熱可塑性ポリマーである。ポリプロピレンは、160℃の融点を有している。ポリプロピレンはオートクレーブ(加熱減菌器)内での熱に耐えることができるため、医療用又は研究用のプラスチック製アイテムの多くは、ポリプロピレンで作られている。しかしながら、ポリプロピレンは、化学的に不活性であって、通気性がなく、更には表面張力が小さいので、未加工のポリプロピレンポリマーは一般的に、印刷用インク、コーティング、及び接着剤と結合するのは効果的ではない。一つ又は複数の実施形態において、その目的は、工学的に適した結合強度を有する費用対効果の大きな構造ポリマーインサートを提供すべく、ポリプロピレンポリマーの発泡接着剤への結合強度を増大することにある。
【0022】
少なくとも一つの実施形態において、構造ポリマーインサートは、基材と、その基材に結合される接着剤とを含む。基材はポリプロピレン成分及びグラスファイバー成分からなり、両成分は互いに混合されている。基材は表面を有し、その表面は、その表面上に存在する全原子の1乃至60原子%の酸素原子を含有する。少なくとも特定の実施形態において、その酸素原子の量は、その表面上に存在する全原子の10乃至50原子%である。
【0023】
少なくとも一つの実施形態において、ポリプロピレン成分は、基材の全重量の40乃至95重量%の含有量を有するポリプロピレンポリマー分子である。
【0024】
少なくとも一つの実施形態において、グラスファイバー成分は、基材の全重量の1乃至60重量%の含有量を有し、少なくとも別の実施形態においては、グラスファイバー成分は、基材の全重量の30乃至50重量%の含有量を有する。
【0025】
少なくとも一つの実施形態において、グラスファイバー成分は、2mm以上(好ましくは7mm以下)の平均繊維長を有するグラスファイバーの集合体である。グラスファイバーの平均繊維長を所定値以上に保持するためには、低せん断スクリューを用いてポリプロピレン成分とグラスファイバー成分とを混合することによって、長い繊維長のグラスファイバーを含有する基材がモールド成型される。逆に、グラスファイバーの平均繊維長を短縮することが可能であれば、高せん断スクリューを用いてポリプロピレン成分とグラスファイバー成分とを混合することによって、短い繊維長のグラスファイバーを含有する基材がモールド成型される。
【0026】
ポリプロピレン成分及びグラスファイバー成分は、適切であるならば如何なる公知の方法を用いても、組み合わされてそして混合され得る。典型的な方法の一つは、米国特許第3654219号明細書(Boyer et al.)に示されており、その内容は、参照によって、ここに完全に組み込まれる。結果として生じる混合物は、少なくとも120℃、好ましくは少なくとも135℃の温度にて加熱硬化させられ得る。具体的な適用例に応じて、基材は、その表面が種々の形状(例えば、ポケット形状又は穴形状)となるように、モールド成型され得る。
【0027】
接着剤は、具体的な適用例に応じて、発泡性であり得て、或いは、発泡性でない場合もある。少なくとも一つの実施形態において、接着剤は、外部から加えられた特定状態にて発泡し得る発泡接着剤である。その特定状態は、実例として、温度、圧力、及び/又は、化学反応を含む。一例として、発泡接着剤は、熱に反応しやすく、高温状態(例えば120乃至180℃)に加熱するときに発泡し得る。発泡接着剤は、実例として、エポキシ系、ウレタン系、又は、シラン系の接着剤を含む。エポキシ系の発泡接着剤は、加熱することで発泡可能であり、加熱硬化したときには、室温にて硬化させたものに比べて、耐熱性及び耐化学性に優れる。構造ポリマーインサートを形成するのに適したエポキシ系の発泡接着剤は、典型的には150乃至450%、一つの特定の例では200乃至400%、そして別の特定の例では250乃至350%の発泡率を有する。少なくとも一つの実施形態において、GFPPにおける基材は、発泡接着剤と結合され、その結果として生じた結合体は硬化させられる。硬化は、適切であれば如何なる条件下でも実行され、外部から加熱される少なくとも一つの特定の実施形態において、発泡接着剤は、加熱されたときに、その熱によって発泡が促進されて、体積が膨張し得る。少なくとも一つの特定の実施形態において、結合体は、約38乃至93℃(華氏100乃至200度)の温度にて予熱される。少なくとも別の特定の実施形態において、予熱された結合体は、約93乃至149℃(華氏200乃至300度)の温度にて更に加熱される。
【0028】
少なくとも一つの実施形態において、接着剤は、少なくとも一つの結合面を介して、基材表面に付着される。結合面は、実例として、化学的結合、機械的結合、又はそれらの如何なる組み合わせを含む。化学的結合は、水素結合、ファン・デル・ワールス結合、イオン結合、又は共有結合であり得る。一例として、共有結合は、実例としてエーテル基、ヒドロキシル基、ケトン基、及びカルボキシル基を含む反応性部分を備えた基材表面に存在する、一つ又は複数の反応性部分の間に形成される。これら反応性部分は、酸素原子によって酸化された、種々の化学的状態の炭素原子である。
【0029】
少なくとも一つの実施形態において、酸素原子は、表面処理を行うことによって、基材の表面上に導入される。表面処理は、例えば基材固有の界面エネルギーを増大することによって、基材と発泡接着剤との間の結合特性を向上する。表面処理は、表面粗さを変化させるべく、及び/又は、表面上の原子(例えば炭素原子)が反応性部分を有する炭素種に転換するのを促進すべく、基材表面に対して行われる。適切な表面処理は、実例として、空気プラズマ、コロナプラズマ、紫外線/オゾンプラズマ、火炎プラズマ、化学プラズマ、或いは、キャリアガスとして窒素又はヘリウムを使用する他の大気圧プラズマを含む。
【0030】
コロナプラズマは、一般的に、高周波発電機、高電圧変圧器、静止電極、及び、表面処理用研削ロールを使用する。標準的な公共電気網の電力は、更に高周波である電力に変換され、その変換された電力はその後に表面処理部に供給される。表面処理部は、処理されるべき表面上の空隙を越えて、セラミック又は金属製の電極に、この電力を印加する。
【0031】
火炎プラズマ処理は、一般的に、他のプラズマ処理よりも多くの熱を生成するものの、この方法(火炎プラズマ)を用いて処理された基材は、その寿命が長くなる傾向にある。この火炎プラズマ装置は、可燃性ガス及び周囲の空気が燃焼して激しい青炎を発するときに火炎プラズマが引き起こされる点で、空気プラズマ装置とは相違する。基材表面は、酸化状態にて、表面電子の分配に影響を及ぼす火炎プラズマによって、分極される。基材表面を侵食する高温の可燃性ガスに起因して、基材表面への熱損傷を防止すべく、適切な方法が実行されるべきである。
【0032】
先行技術にて知られるように、化学プラズマは、しばしば、空気プラズマと火炎プラズマの組み合わせとして分類される。空気プラズマと多少類似しているように、化学プラズマは帯電した空気によって生成される。しかしながら、化学プラズマは、処理表面上に種々の化学基を析出させる別の混合気体に依存している。化学プラズマが真空状態にて生成されるときには、その表面処理は、(複数の基材が、順番に並べられて処理される場合のような)インライン処理ではなくて、(基材が、真空室内に一つずつ置かれて処理される場合のような)バッチ処理にて行われる場合がある。
【0033】
空気プラズマは、コロナプラズマと類似しているが、幾つか相違点を有する。空気プラズマとこコロナプラズマの両方は、周囲の大気イオン粒子をプラスに帯電させる一つ又は複数の高電圧電極を使用する。しかしながら、空気プラズマ装置において、基材表面上における酸素析出割合は、十分に大きい。この酸素析出割合の増加によって、より大きなイオン衝撃が発生する。一例として、典型的な空気プラズマ処理方法は、実例として、米国特許出願公開第2008/003436号明細書「結合のための基材の処理方法」に詳述されており、その内容は、参照によって、ここに完全に組み込まれる。
【0034】
少なくとも一つの実施形態において、種々の原子が、空気プラズマ装置によって、基材表面上に析出又は露出される。基材表面上にて露出される原子は、実例として、酸素原子、窒素原子、及び、珪素原子を含む。特に酸素原子は、その後の、基材表面上の炭素原子の酸化、及び、その炭素原子の反応性部分(エーテル基又はヒドロキシル基、カルボニル基、及び、カルボキシル基の何れかの形態による反応性部分)への変換をもたらす。ここにおいて、ヒドロキシル基の反応性部分は、基材と発泡接着剤との間の共有結合を形成するので、最も反応性が高い。
【0035】
少なくとも一つの実施形態において、空気プラズマ処理を行った時に、PP(グラスファイバーを全く含有しない純粋なポリプロピレン)試料及びGFPP試料の表面粗さを測定するため、トポグラフィーが使用される。トポグラフィー測定は、通常、Wyko NT−3300システム(Veeco社製:アメリカ合衆国アリゾナ州トゥーソン市)を用いた光学式な表面形状計測によって行われる。表面特性は、X線光電子分光法(XPS)によって行われる。XPSによる表面特性の測定によって、結合強度の増加は、(発泡接着剤への共有結合の形成を可能にする)基材表面上のヒドロキシル基の官能基数と関連付けられる。実例として使用される器具は、電子分光計Kratos AXIS 165(Kratos Analytical社製:英国マンチェスター)であり得る。光電子は、15kV、20mA(300W)にて作動される単色のAl K−alpha(1486.6eV)のX線励起源を用いて生成され、高分解能スペクトル用の20eVのパスエネルギー、及び、元素測量用の80eVのパスエネルギーにて、分析器によって、ハイブリッドモードでの倍率にて収集される。炭素酸化化学を規定するために、高分解能な炭素の1s内殻準位スペクトルが得られる。炭素の1s内殻準位は、炭素の1s軌道原子内殻準位内に存在する電子を参照している。XPSにおける炭素の1s内殻準位スペクトルは、Al K−alphaのX線による試料照射の結果として、C(炭素)の1s内殻準位によってもたらされる光電子放出スペクトルである。測量されたデータは、スコーフィールド(Scofield)の光イオン化断面積の値に基づく処理によって定量化される。最小二乗法に基づくフィッティング方法は、高分解能な内殻準位スペクトルのピークにフィットさせるのに使用される。最小二乗法に基づくフィッティング方法が使用されることによって、ピークは最善の判断に基づいて手動で付加され、ルーチンは、得られたエンベロープに最も合致するC(炭素)の1sエンベロープを合成すべく、ピーク高さ、ピーク幅、及び結合エネルギー位置に関して、自由に繰り返すことが可能となる。結合エネルギーは、284.6eVにおいて、脂肪族炭素の1sラインに示される。
【0036】
少なくとも一つの実施形態において、空気プラズマ処理はまた、特定の適用量において、そして基材に含有されたグラスファイバー成分と共に、発泡接着剤と基材表面との間に機械的結合を生じさせる。少なくとも一つの実施形態において、機械的結合は、実例として、基材表面から80μmまでの深さに位置すると共に、表面処理が行われることによって露出された、グラスファイバーの一部を用いて形成される。成分の理論的な混合比が達成されている場合、50重量%のグラスファイバー成分を有するGFPPは酸化されて、約45.3原子%の酸素原子を含有する基材表面を生成する場合がある。エッチングを行なうことによって、基材表面上に炭素原子が(少なくとも理論的に)全く存在しなくなったとき、基材表面上における酸素含有量は66.7原子%となり得る。基材表面上における66.7原子%の酸素原子は、実例として、エッチング処理によって、珪素原子が実質的に酸化された状態(すなわちSiO2)を表わす。
【0037】
特定の基材におけるグラスファイバーの含有量及び平均繊維長に依存して、特定の適用量での空気プラズマ処理は、基材と発泡接着剤との間の化学的結合及び機械的結合を好適に生成する。しかしながら、基材表面に対する空気プラズマ処理の強度は、適切な範囲内に確実に収まるように、注意が払われるべきである。特定の適用量での空気プラズマ処理は実際には結合強度を低減するため、GFPPの基材に適用可能な空気プラズマ処理の効果は、二元的である。特定の理論によって限定されることを何ら意味するものではないが、空気プラズマ処理の長時間の実行によって、なぜ酸化された炭素種の量が低減されるかについて、可能性のあるメカニズムの一つが提案され得る。雑誌(Journal of Adhesion Science and Technology,1995年、9(9)、P1229−1248、Walzak MJ他著)において、基材表面における長時間の酸化が、連鎖切断反応、及び、低分子量酸化材料(LMWOM)の生成をもたらすことが知られている。LMWOMは更に酸化して、二酸化炭素ガスを形成する。このようにして、特定の適用量での空気プラズマ処理が、基材表面上にて交差結合された酸化部分を生成しつつ、更に別の適用量の空気プラズマ処理が基材表面を過剰に酸化させて、LMWOM及び/又は二酸化炭素の生成を引き起こす場合がある。LMWOM及び二酸化炭素は、基材表面に対する交差結合性が比較的小さく、その後の高速空気流によって基材表面から吹き飛ばされて排出され、空気プラズマ処理によって基材表面自体に直接的な侵食をもたらす。
【0038】
GFPPの基材の発泡接着剤に対する結合強度を向上する点について、空気プラズマ処理の有効性は、処理条件に応じて変化する。空気プラズマ処理の動作において変更可能なパラメータとしては、主として、プラズマビームノズルと基材表面との離間距離、プラズマビームノズルの移動速度、及び、プラズマビームが回転しているか或いは逆に静止しているかを含む。これらパラメータは、GFPPの基材及び発泡接着剤にとって最も効果的な結合力向上を導き出すべく、コヒーレント選定される。
【0039】
トポグラフィーによる表面測定によって明らかにされるように、少量の適用量にて空気プラズマ処理が行なわれるときには、GFPPの表面粗さを数倍増大させる一方で、大量の適用量にて空気プラズマ処理が行われるときには、表面粗さは40倍まで増大され得る。プラズマビームノズルを低速で移動させる程、及び/又は、プラズマビームノズルを基材表面に近接させる程、空気プラズマ処理の強度が増大することは、一般的に理解されている。回転していない静止プラズマビームにおいて、ビームノズルと基材表面との間の離間距離が10乃至20mmの間で維持されているとき、及び/又は、基材表面に対するビームノズルの移動速度が300乃至800mm/秒であるときには、一例として、空気プラズマ処理が少量の適用量にて行なわれる場合がある。ビームノズルと基材表面との間の離間距離が5mm未満のとき、及び/又は、基材表面に対するビームノズルの移動速度が150mm/秒以下であるときに、一例として、空気プラズマ処理が大量の適用量にて行なわれる場合もある。グラスファイバーが所定の含有量である場合、後で詳述する制約条件を前提として、空気プラズマを大量に適用する程、基材の表面粗さは増大する。表面粗さの増大は、主として、基材におけるグラスファイバー成分の大部分が、それら成分が基材表面から80μmまでの深さに位置するならば、空気プラズマのエッチングによって基材表面上に露出されることに起因する。露出されたグラスファイバーの量が増大するとき、基材表面は、露出されたグラスファイバーを用いて発泡接着剤との機械的結合を好適に生成する。
【0040】
少なくとも一つの実施形態において、特定の適用量にて空気プラズマ処理を行なうのに、静止していない回転プラズマビーム(例えばテーブルトップユニット)が使用される場合がある。2000rpmにて回転する直径約2.5cm(1インチ)のビームノズルを備えたヘッドRD−1004を有するユニットは、9.5アンペアの電流にて作動する。少量の適用量にて空気プラズマ処理を行なうために、そのユニットのビームノズルは、基材表面から8mmの距離に配置され、83.3mm/秒の速度で移動し得る。大量の適用量にて空気プラズマ処理を行なうために、そのユニットのビームノズルは、基材表面から5mm以下の距離に配置され、33mm/秒の速度で移動し得る。
【0041】
一般的な研磨においては、表面粗さを増大し得るものの、表面材質及び研磨工具の両方から磨耗廃物の堆積物が生成される。そういうものとして、研磨はしばしば、その後の(基材と接着剤との間の)機械的結合を妨げる物理的な磨耗廃物の層を生成する。一般的な研磨とは異なり、空気プラズマ処理のような表面処理は、発泡接着剤に対する機械的結合を形成するためのグラスファイバーを露出させることによって、表面粗さを増大させる。そういうものとして、空気プラズマ処理は、物理的な磨耗廃物を生成することなく、表面粗さを効果的に増大させる。
【0042】
少なくとも一つの実施形態において、構造ポリマーインサートは、基材に付着された外層を更に含み、別の実施形態においては、発泡接着剤から離間して配置された外層を更に含む。外層は、追加の支持構造を提供する。基材は、製造段階で、外層に直接的にモールド成型され得る。外層は、実例としてアルミニウム、鋳鉄、鋼鉄、布地、木材、竹材、他の熱可塑性又は熱硬化性のポリマー、又は、それらの如何なる組み合わせを含む材質によって作られる。
【0043】
本発明を概略的に記述すると、単なる説明の為にここに提供され、他に特に指示されなければ(本発明を)限定することを意味するものではない、特定の実施例を参照することによって、更なる理解が得られる。
【0044】
例1
X線光電子分光法による表面解析(パート1)
10乃至50重量%にて変化し得るグラスファイバー含有量を有し、3mmの平均繊維長を有するグラスファイバー含有ポリプロピレン試料(GFPP試料)が、25mmの幅、3mmの厚み、及び100mmの長さという寸法にて製造される。GFPP試料は、空気プラズマ処理前及び空気プラズマ処理後におけるX線光電子分光法によって特徴付けられる。少量の適用量での回転プラズマビームは、基材表面に対して50mm/秒の移動速度かつ6mmのノズル離間距離にて、照射される。その結果は表1に示される。グラスファイバーを含有しない純粋なポリプロピレンポリマーの試料は、表面上における炭素原子の組成が99%以上であることを示している。空気プラズマ処理は、空気プラズマ源によって、大量の酸素を生成し、場合によっては微量の窒素を生成する。加えて、珪素もまた観測される。但し、この例にて示されるように、珪素の含有量は、グラスファイバー成分の重量%とは正比例関係にはない。この例にて用いられた適用量での空気プラズマは、グラスファイバーを十分露出させるほど基材表面をエッチングすることなく、表面下の珪素のナノ粒子を露出させることが可能である。
【0045】
【表1】
【0046】
表1における空白は、関連する試験パラメータが検知可能な範囲を下回っていることを示す。
【0047】
上述の表1から、表面上における炭素含有量の減少、及び、それに伴う表面上における酸素含有量の増加は、試験された種々のGFPP試料において常に観測されることに留意すべきである。そういうものとして、GFPP試料は、比較的広いグラスファイバー含有範囲(例えば10乃至50重量%)内において、与えられた空気プラズマ処理と同様に反応することが、結論付けられる。
【0048】
図1は、上述の表1に示すGFPP試料から得られたXPSの実測スペクトルを示す。スペクトルは、空気プラズマ処理の結果として、基材表面における酸素及び窒素の放出を表している。酸素混入の詳細は、図2AのXPSにおける炭素の1s内殻準位スペクトルにて示される。初期スペクトルは、284.6eVにおいて、オレフィン炭素に起因する単一のピークを含む。空気プラズマ処理後には、エーテル基、ヒドロキシル基、ケトン基、及びカルボキシル基のような酸化炭素種として、追加のピークが現れる(図2B)。
【0049】
例2
X線光電子分光法による表面解析(パート2)
表面上における組成が、狭い範囲のグラスファイバー含有量を有するGFPP試料に関して、更なる実験変動のもとで、更に調査される。GFPP試料は、上述の例1にて記述されたのと同一方法で用意される。加えて、GFPP試料は、グラスファイバー含有量(0、20、又は30重量%)、グラスファイバーの平均繊維長(1mm又は3mm)、及びプラズマ処理の適用量(適用量「a」又は「b」)に関して、分類される。表2において、基材表面上における原子組成は、GFPP試料の表面上で検出された原子の原子%として示される。更に、空気プラズマ処理を行わない全ての試料においては、表面上における炭素原子の組成が殆ど(99%以上)であることが示されている。
【0050】
【表2】
【0051】
表2における空白は、関連する試験パラメータが検知可能な範囲を下回っていることを示す。
【0052】
150mm/秒にて移動する、回転していない静止プラズマビームが適用量「b」にて照射される一方で、適用量「a」での回転プラズマビームは、約83mm/秒の速度にて移動させられる。上述したように、静止していない回転プラズマビームは、回転していない静止プラズマビームと比較して、一般的にそのプラズマ強度は極めて小さい。ここで、適用量「a」は、適用量「b」と比べて、プラズマ強度が少量の適用量として特徴付けられる。適用量「a」及び適用量「b」の何れにおいても、空気プラズマ処理は、空気プラズマ源によって、大量の酸素を生成し、微量の窒素を生成する。適用量「a」での空気プラズマ処理によって、窒素原子の組成は3.3乃至4.4%である一方で、酸素原子の組成は26.7乃至32.8%である。表面上で測定される酸素/窒素比はおよそ8乃至9であり、プラズマを生成するのに使用される空気源の組成比の2倍以上、すなわち3.7(78.1/20.9)である。大量の適用量「b」において観測される酸素原子及び窒素原子の量は、少量の適用量「a」にて観測される酸素原子及び窒素原子の量よりも実際は約20%低い。そういうものとして、特定の空気プラズマ処理の適用量(例えばここでは適用量「b」)は、試料表面における酸化度合いが阻止されているのが観測されている。
【0053】
XPSにおける高分解能な炭素の1s内殻準位スペクトルは、各々の処理後の炭素の化学的状態を判定するのに、再び利用される。図3は、上述の表2にて示した3mmの平均繊維長を有する30%のGFPP試料における炭素の1s内殻準位スペクトルを示す。L30GFPP試料から得られたスペクトルは、脂肪族炭素(A)として特定される、284.6eVにおいて単一のピークを示す。少量の適用量での空気プラズマ処理後において、各々エーテル基/ヒドロキシル基(B)、ケトン基(C)、及びカルボキシル基(D)の化学的状態として特定される、286.2eV、287.4eV、及び288.7eVにおいて、L30GFPP−a試料に更なるピークが観測される。空気プラズマ処理を行わないL30GFPP−0試料において観測されるものよりも極めて大きいものの、L30GFPP−b試料において検出された酸化された炭素種の量は、L30GFPP−a試料におけるそれよりも比較的小さい。
【0054】
例3
トポグラフィーによる表面解析
空気プラズマ処理によって、GFPP試料の表面が、どの程度物理的な影響を受けているかを判定すべく、種々のGFPP試料について表面形状が光学的に測定される。トポグラフィーは20倍及び100倍の倍率にて測定され、異なる長さスケールにて表面粗さを調査する。20倍の倍率での測定は、純粋なポリプロピレンポリマーとグラスファイバーとの間の構造を明らかにするする一方で、100倍の倍率での測定は、その試料のグラスファイバー中の具体構造を明らかにする。
【0055】
粗さ測定は、中心からの標準偏差Rqとして提供され、(式1)として表される。
【数1】
【0056】
上述の例2にて示された試料の1平方mmの範囲内における20倍の倍率でのトポグラフィーの測定結果が、図4に示される。20倍の倍率での測定は、含有グラスファイバーによって導入されたトポグラフィーを含む。μmの単位での各Rq値が、三回の測定平均値にて、標準偏差を示すエラーバーと共に示されている。試験された試料の中で、空気プラズマ処理を行っていない試料のRq値と、適用量「a」での空気プラズマ処理を行った試料のRq値との間には、統計上有意の相違は存在せず、全てのRq値は2μm未満であった。しかしながら、繊維長が(1mmから3mmに)大きくなるに連れて、及び、グラスファイバー含有量が(20%から30%に)大きくなるに連れて、GFPP試料における平均表面粗さが増加するという傾向が観測された。その一方で、適用量「b」での空気プラズマ処理後には、GFPP試料の表面粗さは大幅に(例えば30倍以上に)増大する。これについても、繊維長が(1mmから3mmに)大きくなるに連れて、及び、グラスファイバー含有量が(20%から30%に)大きくなるに連れて、GFPP試料における平均表面粗さが増加するという傾向が観測された。
【0057】
上述の表2に示された試料における表面反射率の変化は、図5に示すように、光学式顕微鏡写真にて表される。図5a乃至図5cは、各々、S30GFPP−0試料、S30GFPP−a試料、及び、S30GFPP−b試料に関する光学式顕微鏡写真を表す。図5d乃至図5fは、各々、L30GFPP−0試料、L30GFPP−a試料、及び、L30GFPP−b試料に関する光学式顕微鏡写真を表す。
【0058】
上述の例2にて示された試料の44.7μm×58.8μmの狭い範囲内における100倍の倍率でのトポグラフィーの測定結果が、図6に示される。広い範囲(1mm×1mm)において以前に観測されていた長い波長のうねりは、100倍の倍率では、実質的にフィルター除去されている。μmの単位での各Rq値が、十回の測定平均値にて、標準偏差を示すエラーバーと共に示されている。図6に示す100倍の倍率でのデータは、図4に示す20倍の倍率でのデータと、極めて類似した変化傾向を有している。しかしながら、100倍の倍率で測定された44.7μm×58.8μmの狭い範囲は、含有されているグラスファイバーを実質的に無視して、寧ろポリプロピレン樹脂そのもののうねりを表す。それ故、図6に示す100倍の倍率にて測定されたRq値は、図4に示す20倍の倍率にて測定されたRq値よりも大幅に小さい。
【0059】
上述の表2にて示されたL30GFPP試料の表面粗さに対する空気プラズマ処理の影響は、図7に示す20倍又は100倍の倍率での三次元プロフィールによって更に表されている。空気プラズマ処理を行っていない試料における三次元プロフィール、及び、少量の適用量にて空気プラズマ処理が行われた試料における三次元プロフィールは、何れの倍率においてもその外観形状に相違が実質的に存在しない(図7a、図7b、図7d、及び図7e参照)。20倍の倍率において、適用量「b」での空気プラズマ処理が、試料表面においてグラスファイバーの露出を引き起こしていることが観測される(図7c参照)。適用量「b」での空気プラズマ処理後の試料もまた、100倍の倍率での三次元プロフィールに表されるように、外観形状が変化している(図7f参照)。その試料の表面は、適用量「b」での空気プラズマ処理の間に高温状態におかれることによって、融解して形状変化し得る。
【0060】
例4
接着試験
結合強度は、ラップ部分のせん断試験を行うことによって測定され、psi(平方インチ毎のポンド)又はkPa(パスカル)に単位変換されて記録される。ラップ部分のせん断試験においては、基材と発泡接着剤と接着剤との間のせん断強度が判定される。GFPP試料は試験機のグリップ内に置かれて、破壊が起こるまで約5mm/分の速度にて引っ張られる。
【0061】
上述の例3にて示された大量の適用量での空気プラズマ処理は酸化炭素種の量を低減し得るものの、グラスファイバーの露出は、基材と発泡接着剤との間で結合する機械的結合を与える。そういうものとして、接着試験は、GFPP試料における総合的な接着特性が、空気プラズマ処理の適用量、グラスファイバー含有量、及びグラスファイバーの繊維長の各要因によって、どのような影響を受けるのか解明するように行われる。
【0062】
図8は、上述の表2にて示された000PP−0試料、000PP−a試料、及び000PP−b試料から測定される結合強度の分布を表す。結合強度は、せん断試験による測定値であり、各試験条件毎に、五回のせん断測定が行なわれる。OOOPP−a試料の平均結合強度(215psi:約1483kPa)は、000PP−0試料の平均結合強度(190psi)よりも僅かに大きい。大量の適用量「b」での空気プラズマ処理によって、000PP−b試料の平均結合強度は、190psi:約1310kPa(000PP−0試料)から157psi:約1083kPaに、或いは21%減少することが観測される。同じ組み合わせの試料における接着破壊状態は、図9にて表される。図9に示すように、10乃至14%の接着破壊が、全試料において同様に観測される。
【0063】
同様のせん断試験が、上述の表2にて示されたL30GFPP−0試料、L30GFPP−a試料、及び、L30GFPP−b試料に対しても行われる。これら試料におけるせん断試験の結果は、図10及び図11に示される。第一に、GFPP試料において、30重量%のグラスファイバー成分を単に含有することによって、結合強度が190psi:約1310kPa(図8の000PP−0)から230psi:約1586kPa(図9のL30GFPP−0)に増加しているのが示される。これは、図4におけるトポグラフィーの測定結果に示すように、グラスファイバーを含有する試料の表面粗さが実質的に3乃至5倍増加することに起因している。適用量「a」でのプラズマ処理が行われたL30GFPP−a試料の結合強度は、230psi:約1586kPa(図9のL30GFPP−0)から410psi:約2827kPa(図9のL30GFPP−a)に、或いは78.3%更に増加する。78.3%の増加は、図8(の000PP−0→000PP−a)にて示された000PP−a試料にて見られた13.2%の結合強度の増加の少なくとも5倍である。加えて、大多数(平均87.4%)のL30GFPP−a試料が、せん断することによって接着破壊する(図11参照)。更に、L30GFPP−b試料は、空気プラズマ処理を行わない場合の230psi:約1586kPa(図10のL30GFPP−0)から適用量「b」での空気プラズマ処理を行う場合の285psi:約1965kPa(図10のL30GFPP−b)へ、或いは23.9%の接着性向上をもたらす。このL30GFPP−b試料は、(適用量「b」での空気プラズマ処理によって、000PP−0よりも結合強度が低減されている)図8及び図9の000PP−b試料とは対照的である。L30GFPP−b試料に適用量「b」でのプラズマ処理を行うことによる23.9%の結合強度増加(図10のL30GFPP−0→L30GFPP−b)は、適用量「a」での空気プラズマ処理を行うことによる結合強度増加に比べて、その増加度合いが小さい。それにも関わらず、その結合強度増加(23.9%)は、GFPP試料におけるグラスファイバー成分の含有が、大量の適用量(例えば「b」)での空気プラズマ処理を行うことによってもたらされる接着損失を実質的に補償していることを示している。特定の理論によって限定されることを何ら意味するものではないが、空気プラズマ処理が、グラスファイバー成分の少なくとも一部を、GFPP試料の表面上に露出し、発泡接着剤との機械的結合を与えることが一つの解釈として考えられる。この機械的結合は、グラスファイバーを含有しない純粋なポリプロピレンの試料においては、容易に実現されるものではない。
【0064】
図10及び図11と同一の(ラップ部分の)せん断データが、図12及び図13において代案として示され、そのせん断データはグラスファイバーの繊維長及び含有量によって分類分けされている。このせん断データは、空気プラズマ処理の適用量、及び、基材におけるグラスファイバー含有量に基づくパターン変化を示している。図12及び図13に示すように、L20GFPP−0試料について接着不足が指摘され、L30GFPP−a試料について比較的良好な接着が行われている。実際には、これは、五回のせん断測定値に対して、100%の接着破壊を示す唯一の試料である(図12参照)。一般的に、データには大きな変動を伴うものの、グラスファイバーを大量に含有する試料にとって、良好な接着性能が達成されていることが極めて明確である。
【0065】
図12及び図13と同一の(ラップ部分の)せん断データは、主効果プロットによって、図14及び図15において更なる代案として示される。空気プラズマ処理の適用量が、グラスファイバーの含有量及びグラスファイバーの平均繊維長と比べて、結合強度及び接着破壊状態の両面で、接着に最も大きな影響を及ぼすことが立証されている。少量の適用量での空気プラズマ処理は、接着結合を劇的に増大し、大量の適用量でのプラズマ処理は、場合によっては程度は小さくなるものの、総合的な接着結合を増大する。
【0066】
グラスファイバーの繊維長が長い試料グループ(集合的に、L20GFPP−0、L30GFPP−0、L20GFPP−a、L30GFPP−a、L20GFPP−b、及びL30GFPP−bを含む)に対する、グラスファイバーの繊維長が短い試料グループ(集合的に、S20GFPP−0、S30GFPP−0、S20GFPP−a、S30GFPP−a、S20GFPP−b、及びS30GFPP−bを含む)における同一の結合強度データは、図16において、ボックスプロットによって示されている。このデータについて二つの試料のT検定が行われ、これによって、統計的差異の95%の信頼度にて、グラスファイバーの繊維長が長い試料グループは、グラスファイバーの繊維長が短い試料グループよりも、良好な接着結合を有していることが明らかに立証されている。
【0067】
表3は、三つの試験パラメータ(すなわち、空気プラズマ処理の適用量、グラスファイバーの平均繊維長、及びグラスファイバーの含有量)に応じた、図13のせん断結合強度の測定値を示す。各パラメータによるせん断結合強度の増強効果は、表3にて定量化されて示されている。グラスファイバーを含有しない純粋なポリプロピレン試料の間で、適用量「a」での空気プラズマ処理は、せん断結合強度を、(000PP−0試料の)190psi:約1310kPaから(000PP−a試料の)215psi:約1482kPaまで、25psi:約172kPaだけ、或いは13.1%だけ増大させる。空気プラズマ処理が行われないGFPP試料グループ(集合的に、S20GFPP−0、S30GFPP−0、及びL30GFPP−0を含む)の結合強度の平均値は230psi:約1586kPaであり、適用量「a」にて空気プラズマ処理が行われるGFPP試料グループ(集合的に、S20GFPP−a、S30GFPP−a、及びL30GFPP−aを含む)の結合強度の平均値は410psi:約2827kPaであり、そして、適用量「b」にて空気プラズマ処理が行われるGFPP試料グループ(集合的に、S20GFPP−b、S30GFPP−b、及びL30GFPP−bを含む)の結合強度の平均値は285psi:約k1965Paであると計算される。そういうものとして、適用量「a」での空気プラズマ処理が行われる場合の結合強度の平均値(410psi:約2827kPa)は、空気プラズマ処理が行われない場合の結合強度の平均値(230psi:約1586kPa)に比べて、180psi:約1241kPa或いは78.2%の増大を伴なう結合強度の増強効果をもたらす。GFPP試料へのグラスファイバーの含有が、13.1%から78.2%へ、或いはほぼ6倍という、空気プラズマ処理による結合強度の増大効果をもたらす。大量の適用量「b」での空気プラズマ処理が行われるとき、純粋なポリプロピレン試料の平均結合強度は、33psi:約227kPa低減される(190psi:約1310kPa→157psi:約1083kPa)ものの、大量の適用量「b」での空気プラズマ処理が行われるときのGFPP試料グループについて、寧ろ55psi:約379kPaの増加(230psi:約1586kPa→285psi:約k1965Pa)が観測される。加えて、30重量%以上のグラスファイバーを含有する試料グループ(集合的に、S30GFPP−0、S30GFPP−a、S30GFPP−b、L30GFPP−0、L3GFPP−a、及びL30GFPP−bを含む)は、平均340psi:約2344kPaの結合強度を有する一方で、20重量%以下のグラスファイバーを含有する試料グループ(集合的に、S20GFPP−0、S20GFPP−a、S20GFPP−b、L20GFPP−0、L20GFPP−a、及びL20GFPP−bを含む)は、平均276psi:約1903kPaの結合強度を有する。更に、上述したような繊維長が短いグラスファイバーを含有する試料グループは、平均293psi:約2020kPaの結合強度を有する一方で、上述したような繊維長が長いグラスファイバーを含有する試料グループは、323psi:約2227kPaの結合強度を有する。そういうものとして、64psi:約441kPa(276psi:約1903kPa→340psi:約2344kPa)の結合強度増大が、20%から30%へのグラスファイバー含有量の増加に伴って観測され、30psi:約207kPa(293psi:約2020kPa→323psi:約2227kPa)の結合強度増大が、1mmから3mmへの平均繊維長の増加に伴って観測される。従って、三つの試験パラメータの中で、ここで試験された試料における結合強度を増大するのに、空気プラズマ処理が最も大きな一因であることが合理的に結論付けられる。
【0068】
【表3】
【0069】
本発明を実施するベストモードを詳細に記述してきたが、本発明が関連する技術分野の当業者は、特許請求の範囲によって規定された本発明を実施するための、種々の代替構成及び実施形態を認識するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】空気プラズマ処理前後の、3mmの平均繊維長を備えた30重量%のグラスファイバー成分を含有するGFPP試料におけるXPSの実測スペクトルである。
【図2a】空気プラズマ処理前の、図1のGFPP試料における炭素の1s内殻準位スペクトルである。
【図2b】空気プラズマ処理後の、図1のGFPP試料における炭素の1s内殻準位スペクトルである。
【図3】空気プラズマ処理を行わない場合、及び、適用量「a」及び適用量「b」にて空気プラズマ処理を行った場合の、3mmの平均繊維長を備えた30重量%のグラスファイバー成分を含有するGFPP試料における炭素の1s内殻準位スペクトルである。
【図4】20倍の倍率での表面粗さを表す、トポグラフィーの測定結果である。
【図5】各々、空気プラズマ処理を行わない場合、及び、適用量「a」及び適用量「b」にて空気プラズマ処理を行った場合の、種々のGFPP試料に対する光学式顕微鏡写真での表面画像である。
【図6】各々、空気プラズマ処理を行わない場合、及び、適用量「a」及び適用量「b」にて空気プラズマ処理を行った場合の、GFPP試料に対する100倍の倍率での表面粗さを示すトポグラフィーの測定結果である。
【図7a】空気プラズマ処理を行わない場合のGFPP試料の20倍の倍率での三次元プロフィールである。
【図7b】適用量「a」にて空気プラズマ処理を行った場合のGFPP試料の20倍の倍率での三次元プロフィールである。
【図7c】適用量「b」にて空気プラズマ処理を行った場合のGFPP試料の20倍の倍率での三次元プロフィールである。
【図7d】空気プラズマ処理を行わない場合のGFPP試料に対する100倍の倍率での三次元プロフィールである。
【図7e】適用量「a」にて空気プラズマ処理を行った場合のGFPP試料の100倍の倍率での三次元プロフィールである。
【図7f】適用量「b」にて空気プラズマ処理を行った場合のGFPP試料の100倍の倍率での三次元プロフィールである。
【図8】各々、空気プラズマ処理を行わない場合、及び、適用量「a」及び適用量「b」にて空気プラズマ処理を行った場合の、純粋なポリプロピレン試料のせん断結合強度の測定値の平均及び分布を示すボックスプロットである。
【図9】各々、空気プラズマ処理を行わない場合、及び、適用量「a」及び適用量「b」にて空気プラズマ処理を行った場合の、純粋なポリプロピレン試料の接着破壊状態の平均及び分布を示すボックスプロットである。
【図10】各々、空気プラズマ処理を行わない場合、及び、適用量「a」及び適用量「b」にて空気プラズマ処理を行った場合の、種々のGFPP試料のせん断結合強度の測定値の平均及び分布を示すボックスプロットである。
【図11】各々、空気プラズマ処理を行わない場合、及び、適用量「a」及び適用量「b」にて空気プラズマ処理を行った場合の、種々のGFPP試料の接着破壊状態の平均及び分布を示すボックスプロットである。
【図12】空気プラズマ処理の適用量、グラスファイバーの含有量、及びグラスファイバーの繊維長に応じた、空気プラズマ処理を行わない場合、及び、適用量「a」及び適用量「b」にて空気プラズマ処理を行った場合の、種々のGFPP試料の接着破壊状態の平均及び分布を示すボックスプロットである。
【図13】空気プラズマ処理の適用量、グラスファイバーの含有量、及びグラスファイバーの繊維長に応じた、空気プラズマ処理を行わない場合、及び、適用量「a」及び適用量「b」にて空気プラズマ処理を行った場合の、種々のGFPP試料のせん断結合強度の測定値の平均及び分布を示すボックスプロットである。
【図14】空気プラズマ処理の適用量、グラスファイバーの含有量、及びグラスファイバーの繊維長に応じた、空気プラズマ処理を行わない場合、及び、適用量「a」及び適用量「b」にて空気プラズマ処理を行った場合の、結合強度の主効果プロットである。
【図15】空気プラズマ処理の適用量、グラスファイバーの含有量、及びグラスファイバーの繊維長に応じた、空気プラズマ処理を行わない場合、及び、適用量「a」及び適用量「b」にて空気プラズマ処理を行った場合の、接着破壊状態の主効果プロットである。
【図16】平均繊維長の長いグラスファイバー、又は、平均繊維長の長いグラスファイバーの何れかを含有する、種々のGFPP試料のせん断結合強度のボックスプロットである。
【技術分野】
【0001】
本発明の少なくとも一つの観点は、接着剤に結合されるグラスファイバー含有ポリプロピレンを有する構造ポリマーインサートに関連する。
【背景技術】
【0002】
金属製の支持構造物が、自動車のフレームに強度及びエネルギー吸収性を提供すべく、自動車産業においてしばしば用いられる。行政規制によって安全及び対衝突性に関する特定事項が要求されている現状において、グラスファイバーによって補強されたポリアミドインサートが、金属製の支持構造物に加えて、一般的に使用されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、グラスファイバによって補強されたポリアミドインサートは、種々の理由によって(特にポリアミドについては必要とされる耐久性が不足することが多いので)、その使途が制限されている。加えて、ポリアミドは、比較的高価な材質であるため、構造ポリアミドインサートを広範に用いることは実質的に不可能である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の少なくとも一つの観点によれば、以下の構造ポリマーインサートが提供される。少なくとも一つの実施形態において、構造ポリマーインサートは、ポリプロピレン成分とグラスファイバー成分との混合物である基材、及び、接着剤を有する。基材は表面を有し、その表面は、その表面上に存在する全原子の1乃至60原子%の酸素原子を含有する。接着剤は、酸素原子の酸化作用によって形成される一つ又は複数の反応性部分によって、その表面に付着される。少なくとも一つの実施形態において、一つ又は複数の反応性部分は、実例として、ヒドロキシル基、エーテル基、ケトン基、カルボキシル基、或いは、それらの如何なる組合せを含む。
【0005】
少なくとも一つの実施形態において、基材の表面は、その表面上に存在する全原子の0.1乃至10原子%の窒素原子を含有する。
【0006】
少なくとも一つの実施形態において、基材の表面は、その表面上に存在する全原子の0乃至5原子%の珪素原子を含有する。
【0007】
少なくとも一つの実施形態において、基材の表面は、酸素原子及び窒素原子を、酸素/窒素の原子比が5乃至12である範囲にて含有する。
【0008】
少なくとも一つの実施形態において、基材は、その全重量の1乃至60重量%のグラスファイバー成分を含み、少なくとも一つの特定の実施形態においては、基材は、その全重量の30乃至50重量%のグラスファイバー成分を含む。少なくとも別の実施形態においては、グラスファイバー成分は、2mm以上の平均繊維長を有する。
【0009】
更に、少なくとも一つの実施形態において、接着剤は発泡接着剤であり、少なくとも一つの特定の実施形態においては、発泡接着剤はエポキシ系である。
【0010】
本発明の少なくとも一つの観点によれば、以下の構造ポリマーインサートの形成方法もまた提供される。少なくとも一つの実施形態において、方法は、表面を有すると共に、ポリプロピレン成分とグラスファイバー成分との混合物である基材を提供する工程と、処理済表面を形成すべく酸素原子を表面上に導入する工程と、結合体を生成すべく接着剤を処理済表面に付着させる工程とを含む。更に方法は、結合体を加熱硬化させる工程を選択的に含む。少なくとも一つの特定の実施形態において、酸素原子を導入する工程は、空気プラズマ処理によってもたらされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の組成、実施形態、及び方法について、ここに詳細な記述が行なわれる。しかしながら、記述される実施形態は、種々の形態及び代替の形態に具現化され得る本発明の単なる例示であることを理解すべきである。従って、ここに詳述された特定の記述は、本発明の権利範囲を限定するものとして解釈されるべきではなく、寧ろ、本技術分野の当業者に本発明の様々な実施方法を教示するための、単なる典型的な土台として解釈されるべきである。
【0012】
明確に指示されている場合を除いて、材質又は反応状態及び/又は使用状態の量を示す記述における全ての数量は、本発明の広範にわたる範囲を記述する場合には「約」という語によって変更されるように理解されるべきである。しかしながら、記述された数値限定の範囲内にて実施するのが、一般的には好ましい。
【0013】
本発明の一つ又は二つ以上の実施形態に関連して所定の目的に適した材質の種類(Group)又はグレード(Class)の記述は、その種類又はグレードであるならば如何なる二つ又は三つ以上の材質の混合が望ましいことを意味する。化学用語での組成物の記述は、明細書中で規定された各材質を混合した時点における組成物を言及しているものの、その混合された組成物において化学的相互作用が行なわれた後の組成物を必ずしも排除するものではない。頭字語或いは他の略語について最初に記述された定義は、引き続いて記述される同一の頭字語或いは略語の全てに適用され、そして必要に応じて、最初に記述された頭字語或いは略語の一般的な文法的変化に対しても適用される。それとは反対に、明確に言及されてない場合には、特性の測定は、同一特性に関して後述されているのと同様な測定技術によってなされる。
【0014】
ここに使用されているように、他に指示されていないならば、「GFPP」という用語は、「グラスファイバー含有ポリプロピレン」という用語と代替可能に用いられる。
【0015】
本発明の少なくとも一つの実施形態によれば、工業的に許容可能な耐久性と比較的高い経済効率とを備えた構造ポリマーインサートが提供される。少なくとも一つの実施形態によれば、構造ポリマーインサートは、それらの間に比較的高いせん断結合強度を有する、発泡接着剤に結合されたグラスファイバー含有ポリプロピレン(GFPP)を含む。
【0016】
少なくとも三つのパラメータ(すなわち表面処理の強度及び範囲、グラスファイバー成分の重量%、及び、グラスファイバーの繊維長)の相互作用によって、グラスファイバー含有ポリプロピレンを含む基材と発泡接着剤との間の結合強度に関して相乗効果が生じている。少なくとも一つの実施形態において、後で詳述するように、典型的な空気プラズマ処理は、互いに異なる二つの影響をもたらす。第一の影響は、空気プラズマ処理が行なわれることによって基材表面の炭素部分を酸化させ、その後、その酸化された炭素部分を介して発泡接着剤と基材との間に化学的結合を生成するときに、もたらされる。少なくとも別の実施形態において、第二の影響は、空気プラズマ処理がグラスファイバー成分の所定部分をエッチングすることによって表面粗さを更に増大させるときに、もたらされる。この空気プラズマ処理によって基材表面上に露出したグラスファイバーはその後、発泡接着剤と基材との間の結合強度を更に高めるべく、発泡接着剤との間で機械的結合を形成する。
【0017】
少なくとも一つの実施形態において、後で詳述するように、グラスファイバー成分の含有は、構造耐久性を提供する機能を果たすと共に、結合強度に関する空気プラズマの影響を最大化する機能を果たす。グラスファイバーを含有しているポリプロピレンポリマーは、グラスファイバーを全く含有していないポリプロピレンポリマーと比べて、空気プラズマ処理によって、少なくとも5倍の結合強度増強効果がもたらされる。
【0018】
空気プラズマ処理の適用量を増大することによって、基材はその表面から80μmの深さまでエッチングされて更に粗い表面を形成し得るので、大きな機械的結合が可能となり、一見したところ、より大きな結合強度をもたらすように思われる。しかしながら、結合強度の増加と空気プラズマ処理の適用量との間にはトレードオフの関係にあるので、実際にはそうならない場合がある。具体的には、空気プラズマを大量に適用すると、粗い表面が生成されるものの、それと同時に、基材表面において炭素種が若干過剰に酸化されてしまい、それ故、効果的な表面酸化度合いが低減される場合がある。
【0019】
後で詳述するように、基材表面における炭素の過剰な酸化は、基材表面における酸化された炭素種の量を低減し、それ故、結合強度を低下させる。そういうものとして、比較的大きな結合強度を有する構造ポリマーインサートは、少なくとも上述した要因の相乗効果によって実現される。
【0020】
一般的な構造ポリマーインサートは、ポリアミド(又は脂肪族のポリアミド:ナイロン(登録商標))を用いて製造される。ナイロンは、ペプチド結合又はアミド結合によって連結された反復単位から成る、熱可塑性の光沢のある材料である。ナイロンは、等量のジアミンとジカルボン酸を反応させることによって形成される縮合コポリマーであり、それ故、ペプチド結合が、ポリペプチドバイオポリマーと類似の手順によって、各モノマーの両端に形成される。ナイロンの固形物は、機械的部品(例えば、以前は金属によって鋳造されていた、歯車及びその他の低応力乃至中応力の部品)として使用される。エンジニアリンググレードのナイロンは、押し出し成形、鋳造成形、及び、射出成形によって加工される。
【0021】
ナイロンとは異なり、ポリプロピレンは、用途が広く、より費用対効果の大きい熱可塑性材料である。例えば、グラスファイバー含有ポリプロピレンの典型的な市場価格は、ポリアミドの市場価格と比べて、少なくとも40%安価である。グラスファイバー含有ポリプロピレンはポリアミドよりも短い成形時間で製造され得るので、構造ポリマーインサートの一成分としてグラスファイバー含有ポリプロピレンを用いた場合の費用対効果は高められる。加えて、ポリプロピレンは、工業的に許容可能な耐疲労性を有する熱可塑性ポリマーである。ポリプロピレンは、160℃の融点を有している。ポリプロピレンはオートクレーブ(加熱減菌器)内での熱に耐えることができるため、医療用又は研究用のプラスチック製アイテムの多くは、ポリプロピレンで作られている。しかしながら、ポリプロピレンは、化学的に不活性であって、通気性がなく、更には表面張力が小さいので、未加工のポリプロピレンポリマーは一般的に、印刷用インク、コーティング、及び接着剤と結合するのは効果的ではない。一つ又は複数の実施形態において、その目的は、工学的に適した結合強度を有する費用対効果の大きな構造ポリマーインサートを提供すべく、ポリプロピレンポリマーの発泡接着剤への結合強度を増大することにある。
【0022】
少なくとも一つの実施形態において、構造ポリマーインサートは、基材と、その基材に結合される接着剤とを含む。基材はポリプロピレン成分及びグラスファイバー成分からなり、両成分は互いに混合されている。基材は表面を有し、その表面は、その表面上に存在する全原子の1乃至60原子%の酸素原子を含有する。少なくとも特定の実施形態において、その酸素原子の量は、その表面上に存在する全原子の10乃至50原子%である。
【0023】
少なくとも一つの実施形態において、ポリプロピレン成分は、基材の全重量の40乃至95重量%の含有量を有するポリプロピレンポリマー分子である。
【0024】
少なくとも一つの実施形態において、グラスファイバー成分は、基材の全重量の1乃至60重量%の含有量を有し、少なくとも別の実施形態においては、グラスファイバー成分は、基材の全重量の30乃至50重量%の含有量を有する。
【0025】
少なくとも一つの実施形態において、グラスファイバー成分は、2mm以上(好ましくは7mm以下)の平均繊維長を有するグラスファイバーの集合体である。グラスファイバーの平均繊維長を所定値以上に保持するためには、低せん断スクリューを用いてポリプロピレン成分とグラスファイバー成分とを混合することによって、長い繊維長のグラスファイバーを含有する基材がモールド成型される。逆に、グラスファイバーの平均繊維長を短縮することが可能であれば、高せん断スクリューを用いてポリプロピレン成分とグラスファイバー成分とを混合することによって、短い繊維長のグラスファイバーを含有する基材がモールド成型される。
【0026】
ポリプロピレン成分及びグラスファイバー成分は、適切であるならば如何なる公知の方法を用いても、組み合わされてそして混合され得る。典型的な方法の一つは、米国特許第3654219号明細書(Boyer et al.)に示されており、その内容は、参照によって、ここに完全に組み込まれる。結果として生じる混合物は、少なくとも120℃、好ましくは少なくとも135℃の温度にて加熱硬化させられ得る。具体的な適用例に応じて、基材は、その表面が種々の形状(例えば、ポケット形状又は穴形状)となるように、モールド成型され得る。
【0027】
接着剤は、具体的な適用例に応じて、発泡性であり得て、或いは、発泡性でない場合もある。少なくとも一つの実施形態において、接着剤は、外部から加えられた特定状態にて発泡し得る発泡接着剤である。その特定状態は、実例として、温度、圧力、及び/又は、化学反応を含む。一例として、発泡接着剤は、熱に反応しやすく、高温状態(例えば120乃至180℃)に加熱するときに発泡し得る。発泡接着剤は、実例として、エポキシ系、ウレタン系、又は、シラン系の接着剤を含む。エポキシ系の発泡接着剤は、加熱することで発泡可能であり、加熱硬化したときには、室温にて硬化させたものに比べて、耐熱性及び耐化学性に優れる。構造ポリマーインサートを形成するのに適したエポキシ系の発泡接着剤は、典型的には150乃至450%、一つの特定の例では200乃至400%、そして別の特定の例では250乃至350%の発泡率を有する。少なくとも一つの実施形態において、GFPPにおける基材は、発泡接着剤と結合され、その結果として生じた結合体は硬化させられる。硬化は、適切であれば如何なる条件下でも実行され、外部から加熱される少なくとも一つの特定の実施形態において、発泡接着剤は、加熱されたときに、その熱によって発泡が促進されて、体積が膨張し得る。少なくとも一つの特定の実施形態において、結合体は、約38乃至93℃(華氏100乃至200度)の温度にて予熱される。少なくとも別の特定の実施形態において、予熱された結合体は、約93乃至149℃(華氏200乃至300度)の温度にて更に加熱される。
【0028】
少なくとも一つの実施形態において、接着剤は、少なくとも一つの結合面を介して、基材表面に付着される。結合面は、実例として、化学的結合、機械的結合、又はそれらの如何なる組み合わせを含む。化学的結合は、水素結合、ファン・デル・ワールス結合、イオン結合、又は共有結合であり得る。一例として、共有結合は、実例としてエーテル基、ヒドロキシル基、ケトン基、及びカルボキシル基を含む反応性部分を備えた基材表面に存在する、一つ又は複数の反応性部分の間に形成される。これら反応性部分は、酸素原子によって酸化された、種々の化学的状態の炭素原子である。
【0029】
少なくとも一つの実施形態において、酸素原子は、表面処理を行うことによって、基材の表面上に導入される。表面処理は、例えば基材固有の界面エネルギーを増大することによって、基材と発泡接着剤との間の結合特性を向上する。表面処理は、表面粗さを変化させるべく、及び/又は、表面上の原子(例えば炭素原子)が反応性部分を有する炭素種に転換するのを促進すべく、基材表面に対して行われる。適切な表面処理は、実例として、空気プラズマ、コロナプラズマ、紫外線/オゾンプラズマ、火炎プラズマ、化学プラズマ、或いは、キャリアガスとして窒素又はヘリウムを使用する他の大気圧プラズマを含む。
【0030】
コロナプラズマは、一般的に、高周波発電機、高電圧変圧器、静止電極、及び、表面処理用研削ロールを使用する。標準的な公共電気網の電力は、更に高周波である電力に変換され、その変換された電力はその後に表面処理部に供給される。表面処理部は、処理されるべき表面上の空隙を越えて、セラミック又は金属製の電極に、この電力を印加する。
【0031】
火炎プラズマ処理は、一般的に、他のプラズマ処理よりも多くの熱を生成するものの、この方法(火炎プラズマ)を用いて処理された基材は、その寿命が長くなる傾向にある。この火炎プラズマ装置は、可燃性ガス及び周囲の空気が燃焼して激しい青炎を発するときに火炎プラズマが引き起こされる点で、空気プラズマ装置とは相違する。基材表面は、酸化状態にて、表面電子の分配に影響を及ぼす火炎プラズマによって、分極される。基材表面を侵食する高温の可燃性ガスに起因して、基材表面への熱損傷を防止すべく、適切な方法が実行されるべきである。
【0032】
先行技術にて知られるように、化学プラズマは、しばしば、空気プラズマと火炎プラズマの組み合わせとして分類される。空気プラズマと多少類似しているように、化学プラズマは帯電した空気によって生成される。しかしながら、化学プラズマは、処理表面上に種々の化学基を析出させる別の混合気体に依存している。化学プラズマが真空状態にて生成されるときには、その表面処理は、(複数の基材が、順番に並べられて処理される場合のような)インライン処理ではなくて、(基材が、真空室内に一つずつ置かれて処理される場合のような)バッチ処理にて行われる場合がある。
【0033】
空気プラズマは、コロナプラズマと類似しているが、幾つか相違点を有する。空気プラズマとこコロナプラズマの両方は、周囲の大気イオン粒子をプラスに帯電させる一つ又は複数の高電圧電極を使用する。しかしながら、空気プラズマ装置において、基材表面上における酸素析出割合は、十分に大きい。この酸素析出割合の増加によって、より大きなイオン衝撃が発生する。一例として、典型的な空気プラズマ処理方法は、実例として、米国特許出願公開第2008/003436号明細書「結合のための基材の処理方法」に詳述されており、その内容は、参照によって、ここに完全に組み込まれる。
【0034】
少なくとも一つの実施形態において、種々の原子が、空気プラズマ装置によって、基材表面上に析出又は露出される。基材表面上にて露出される原子は、実例として、酸素原子、窒素原子、及び、珪素原子を含む。特に酸素原子は、その後の、基材表面上の炭素原子の酸化、及び、その炭素原子の反応性部分(エーテル基又はヒドロキシル基、カルボニル基、及び、カルボキシル基の何れかの形態による反応性部分)への変換をもたらす。ここにおいて、ヒドロキシル基の反応性部分は、基材と発泡接着剤との間の共有結合を形成するので、最も反応性が高い。
【0035】
少なくとも一つの実施形態において、空気プラズマ処理を行った時に、PP(グラスファイバーを全く含有しない純粋なポリプロピレン)試料及びGFPP試料の表面粗さを測定するため、トポグラフィーが使用される。トポグラフィー測定は、通常、Wyko NT−3300システム(Veeco社製:アメリカ合衆国アリゾナ州トゥーソン市)を用いた光学式な表面形状計測によって行われる。表面特性は、X線光電子分光法(XPS)によって行われる。XPSによる表面特性の測定によって、結合強度の増加は、(発泡接着剤への共有結合の形成を可能にする)基材表面上のヒドロキシル基の官能基数と関連付けられる。実例として使用される器具は、電子分光計Kratos AXIS 165(Kratos Analytical社製:英国マンチェスター)であり得る。光電子は、15kV、20mA(300W)にて作動される単色のAl K−alpha(1486.6eV)のX線励起源を用いて生成され、高分解能スペクトル用の20eVのパスエネルギー、及び、元素測量用の80eVのパスエネルギーにて、分析器によって、ハイブリッドモードでの倍率にて収集される。炭素酸化化学を規定するために、高分解能な炭素の1s内殻準位スペクトルが得られる。炭素の1s内殻準位は、炭素の1s軌道原子内殻準位内に存在する電子を参照している。XPSにおける炭素の1s内殻準位スペクトルは、Al K−alphaのX線による試料照射の結果として、C(炭素)の1s内殻準位によってもたらされる光電子放出スペクトルである。測量されたデータは、スコーフィールド(Scofield)の光イオン化断面積の値に基づく処理によって定量化される。最小二乗法に基づくフィッティング方法は、高分解能な内殻準位スペクトルのピークにフィットさせるのに使用される。最小二乗法に基づくフィッティング方法が使用されることによって、ピークは最善の判断に基づいて手動で付加され、ルーチンは、得られたエンベロープに最も合致するC(炭素)の1sエンベロープを合成すべく、ピーク高さ、ピーク幅、及び結合エネルギー位置に関して、自由に繰り返すことが可能となる。結合エネルギーは、284.6eVにおいて、脂肪族炭素の1sラインに示される。
【0036】
少なくとも一つの実施形態において、空気プラズマ処理はまた、特定の適用量において、そして基材に含有されたグラスファイバー成分と共に、発泡接着剤と基材表面との間に機械的結合を生じさせる。少なくとも一つの実施形態において、機械的結合は、実例として、基材表面から80μmまでの深さに位置すると共に、表面処理が行われることによって露出された、グラスファイバーの一部を用いて形成される。成分の理論的な混合比が達成されている場合、50重量%のグラスファイバー成分を有するGFPPは酸化されて、約45.3原子%の酸素原子を含有する基材表面を生成する場合がある。エッチングを行なうことによって、基材表面上に炭素原子が(少なくとも理論的に)全く存在しなくなったとき、基材表面上における酸素含有量は66.7原子%となり得る。基材表面上における66.7原子%の酸素原子は、実例として、エッチング処理によって、珪素原子が実質的に酸化された状態(すなわちSiO2)を表わす。
【0037】
特定の基材におけるグラスファイバーの含有量及び平均繊維長に依存して、特定の適用量での空気プラズマ処理は、基材と発泡接着剤との間の化学的結合及び機械的結合を好適に生成する。しかしながら、基材表面に対する空気プラズマ処理の強度は、適切な範囲内に確実に収まるように、注意が払われるべきである。特定の適用量での空気プラズマ処理は実際には結合強度を低減するため、GFPPの基材に適用可能な空気プラズマ処理の効果は、二元的である。特定の理論によって限定されることを何ら意味するものではないが、空気プラズマ処理の長時間の実行によって、なぜ酸化された炭素種の量が低減されるかについて、可能性のあるメカニズムの一つが提案され得る。雑誌(Journal of Adhesion Science and Technology,1995年、9(9)、P1229−1248、Walzak MJ他著)において、基材表面における長時間の酸化が、連鎖切断反応、及び、低分子量酸化材料(LMWOM)の生成をもたらすことが知られている。LMWOMは更に酸化して、二酸化炭素ガスを形成する。このようにして、特定の適用量での空気プラズマ処理が、基材表面上にて交差結合された酸化部分を生成しつつ、更に別の適用量の空気プラズマ処理が基材表面を過剰に酸化させて、LMWOM及び/又は二酸化炭素の生成を引き起こす場合がある。LMWOM及び二酸化炭素は、基材表面に対する交差結合性が比較的小さく、その後の高速空気流によって基材表面から吹き飛ばされて排出され、空気プラズマ処理によって基材表面自体に直接的な侵食をもたらす。
【0038】
GFPPの基材の発泡接着剤に対する結合強度を向上する点について、空気プラズマ処理の有効性は、処理条件に応じて変化する。空気プラズマ処理の動作において変更可能なパラメータとしては、主として、プラズマビームノズルと基材表面との離間距離、プラズマビームノズルの移動速度、及び、プラズマビームが回転しているか或いは逆に静止しているかを含む。これらパラメータは、GFPPの基材及び発泡接着剤にとって最も効果的な結合力向上を導き出すべく、コヒーレント選定される。
【0039】
トポグラフィーによる表面測定によって明らかにされるように、少量の適用量にて空気プラズマ処理が行なわれるときには、GFPPの表面粗さを数倍増大させる一方で、大量の適用量にて空気プラズマ処理が行われるときには、表面粗さは40倍まで増大され得る。プラズマビームノズルを低速で移動させる程、及び/又は、プラズマビームノズルを基材表面に近接させる程、空気プラズマ処理の強度が増大することは、一般的に理解されている。回転していない静止プラズマビームにおいて、ビームノズルと基材表面との間の離間距離が10乃至20mmの間で維持されているとき、及び/又は、基材表面に対するビームノズルの移動速度が300乃至800mm/秒であるときには、一例として、空気プラズマ処理が少量の適用量にて行なわれる場合がある。ビームノズルと基材表面との間の離間距離が5mm未満のとき、及び/又は、基材表面に対するビームノズルの移動速度が150mm/秒以下であるときに、一例として、空気プラズマ処理が大量の適用量にて行なわれる場合もある。グラスファイバーが所定の含有量である場合、後で詳述する制約条件を前提として、空気プラズマを大量に適用する程、基材の表面粗さは増大する。表面粗さの増大は、主として、基材におけるグラスファイバー成分の大部分が、それら成分が基材表面から80μmまでの深さに位置するならば、空気プラズマのエッチングによって基材表面上に露出されることに起因する。露出されたグラスファイバーの量が増大するとき、基材表面は、露出されたグラスファイバーを用いて発泡接着剤との機械的結合を好適に生成する。
【0040】
少なくとも一つの実施形態において、特定の適用量にて空気プラズマ処理を行なうのに、静止していない回転プラズマビーム(例えばテーブルトップユニット)が使用される場合がある。2000rpmにて回転する直径約2.5cm(1インチ)のビームノズルを備えたヘッドRD−1004を有するユニットは、9.5アンペアの電流にて作動する。少量の適用量にて空気プラズマ処理を行なうために、そのユニットのビームノズルは、基材表面から8mmの距離に配置され、83.3mm/秒の速度で移動し得る。大量の適用量にて空気プラズマ処理を行なうために、そのユニットのビームノズルは、基材表面から5mm以下の距離に配置され、33mm/秒の速度で移動し得る。
【0041】
一般的な研磨においては、表面粗さを増大し得るものの、表面材質及び研磨工具の両方から磨耗廃物の堆積物が生成される。そういうものとして、研磨はしばしば、その後の(基材と接着剤との間の)機械的結合を妨げる物理的な磨耗廃物の層を生成する。一般的な研磨とは異なり、空気プラズマ処理のような表面処理は、発泡接着剤に対する機械的結合を形成するためのグラスファイバーを露出させることによって、表面粗さを増大させる。そういうものとして、空気プラズマ処理は、物理的な磨耗廃物を生成することなく、表面粗さを効果的に増大させる。
【0042】
少なくとも一つの実施形態において、構造ポリマーインサートは、基材に付着された外層を更に含み、別の実施形態においては、発泡接着剤から離間して配置された外層を更に含む。外層は、追加の支持構造を提供する。基材は、製造段階で、外層に直接的にモールド成型され得る。外層は、実例としてアルミニウム、鋳鉄、鋼鉄、布地、木材、竹材、他の熱可塑性又は熱硬化性のポリマー、又は、それらの如何なる組み合わせを含む材質によって作られる。
【0043】
本発明を概略的に記述すると、単なる説明の為にここに提供され、他に特に指示されなければ(本発明を)限定することを意味するものではない、特定の実施例を参照することによって、更なる理解が得られる。
【0044】
例1
X線光電子分光法による表面解析(パート1)
10乃至50重量%にて変化し得るグラスファイバー含有量を有し、3mmの平均繊維長を有するグラスファイバー含有ポリプロピレン試料(GFPP試料)が、25mmの幅、3mmの厚み、及び100mmの長さという寸法にて製造される。GFPP試料は、空気プラズマ処理前及び空気プラズマ処理後におけるX線光電子分光法によって特徴付けられる。少量の適用量での回転プラズマビームは、基材表面に対して50mm/秒の移動速度かつ6mmのノズル離間距離にて、照射される。その結果は表1に示される。グラスファイバーを含有しない純粋なポリプロピレンポリマーの試料は、表面上における炭素原子の組成が99%以上であることを示している。空気プラズマ処理は、空気プラズマ源によって、大量の酸素を生成し、場合によっては微量の窒素を生成する。加えて、珪素もまた観測される。但し、この例にて示されるように、珪素の含有量は、グラスファイバー成分の重量%とは正比例関係にはない。この例にて用いられた適用量での空気プラズマは、グラスファイバーを十分露出させるほど基材表面をエッチングすることなく、表面下の珪素のナノ粒子を露出させることが可能である。
【0045】
【表1】
【0046】
表1における空白は、関連する試験パラメータが検知可能な範囲を下回っていることを示す。
【0047】
上述の表1から、表面上における炭素含有量の減少、及び、それに伴う表面上における酸素含有量の増加は、試験された種々のGFPP試料において常に観測されることに留意すべきである。そういうものとして、GFPP試料は、比較的広いグラスファイバー含有範囲(例えば10乃至50重量%)内において、与えられた空気プラズマ処理と同様に反応することが、結論付けられる。
【0048】
図1は、上述の表1に示すGFPP試料から得られたXPSの実測スペクトルを示す。スペクトルは、空気プラズマ処理の結果として、基材表面における酸素及び窒素の放出を表している。酸素混入の詳細は、図2AのXPSにおける炭素の1s内殻準位スペクトルにて示される。初期スペクトルは、284.6eVにおいて、オレフィン炭素に起因する単一のピークを含む。空気プラズマ処理後には、エーテル基、ヒドロキシル基、ケトン基、及びカルボキシル基のような酸化炭素種として、追加のピークが現れる(図2B)。
【0049】
例2
X線光電子分光法による表面解析(パート2)
表面上における組成が、狭い範囲のグラスファイバー含有量を有するGFPP試料に関して、更なる実験変動のもとで、更に調査される。GFPP試料は、上述の例1にて記述されたのと同一方法で用意される。加えて、GFPP試料は、グラスファイバー含有量(0、20、又は30重量%)、グラスファイバーの平均繊維長(1mm又は3mm)、及びプラズマ処理の適用量(適用量「a」又は「b」)に関して、分類される。表2において、基材表面上における原子組成は、GFPP試料の表面上で検出された原子の原子%として示される。更に、空気プラズマ処理を行わない全ての試料においては、表面上における炭素原子の組成が殆ど(99%以上)であることが示されている。
【0050】
【表2】
【0051】
表2における空白は、関連する試験パラメータが検知可能な範囲を下回っていることを示す。
【0052】
150mm/秒にて移動する、回転していない静止プラズマビームが適用量「b」にて照射される一方で、適用量「a」での回転プラズマビームは、約83mm/秒の速度にて移動させられる。上述したように、静止していない回転プラズマビームは、回転していない静止プラズマビームと比較して、一般的にそのプラズマ強度は極めて小さい。ここで、適用量「a」は、適用量「b」と比べて、プラズマ強度が少量の適用量として特徴付けられる。適用量「a」及び適用量「b」の何れにおいても、空気プラズマ処理は、空気プラズマ源によって、大量の酸素を生成し、微量の窒素を生成する。適用量「a」での空気プラズマ処理によって、窒素原子の組成は3.3乃至4.4%である一方で、酸素原子の組成は26.7乃至32.8%である。表面上で測定される酸素/窒素比はおよそ8乃至9であり、プラズマを生成するのに使用される空気源の組成比の2倍以上、すなわち3.7(78.1/20.9)である。大量の適用量「b」において観測される酸素原子及び窒素原子の量は、少量の適用量「a」にて観測される酸素原子及び窒素原子の量よりも実際は約20%低い。そういうものとして、特定の空気プラズマ処理の適用量(例えばここでは適用量「b」)は、試料表面における酸化度合いが阻止されているのが観測されている。
【0053】
XPSにおける高分解能な炭素の1s内殻準位スペクトルは、各々の処理後の炭素の化学的状態を判定するのに、再び利用される。図3は、上述の表2にて示した3mmの平均繊維長を有する30%のGFPP試料における炭素の1s内殻準位スペクトルを示す。L30GFPP試料から得られたスペクトルは、脂肪族炭素(A)として特定される、284.6eVにおいて単一のピークを示す。少量の適用量での空気プラズマ処理後において、各々エーテル基/ヒドロキシル基(B)、ケトン基(C)、及びカルボキシル基(D)の化学的状態として特定される、286.2eV、287.4eV、及び288.7eVにおいて、L30GFPP−a試料に更なるピークが観測される。空気プラズマ処理を行わないL30GFPP−0試料において観測されるものよりも極めて大きいものの、L30GFPP−b試料において検出された酸化された炭素種の量は、L30GFPP−a試料におけるそれよりも比較的小さい。
【0054】
例3
トポグラフィーによる表面解析
空気プラズマ処理によって、GFPP試料の表面が、どの程度物理的な影響を受けているかを判定すべく、種々のGFPP試料について表面形状が光学的に測定される。トポグラフィーは20倍及び100倍の倍率にて測定され、異なる長さスケールにて表面粗さを調査する。20倍の倍率での測定は、純粋なポリプロピレンポリマーとグラスファイバーとの間の構造を明らかにするする一方で、100倍の倍率での測定は、その試料のグラスファイバー中の具体構造を明らかにする。
【0055】
粗さ測定は、中心からの標準偏差Rqとして提供され、(式1)として表される。
【数1】
【0056】
上述の例2にて示された試料の1平方mmの範囲内における20倍の倍率でのトポグラフィーの測定結果が、図4に示される。20倍の倍率での測定は、含有グラスファイバーによって導入されたトポグラフィーを含む。μmの単位での各Rq値が、三回の測定平均値にて、標準偏差を示すエラーバーと共に示されている。試験された試料の中で、空気プラズマ処理を行っていない試料のRq値と、適用量「a」での空気プラズマ処理を行った試料のRq値との間には、統計上有意の相違は存在せず、全てのRq値は2μm未満であった。しかしながら、繊維長が(1mmから3mmに)大きくなるに連れて、及び、グラスファイバー含有量が(20%から30%に)大きくなるに連れて、GFPP試料における平均表面粗さが増加するという傾向が観測された。その一方で、適用量「b」での空気プラズマ処理後には、GFPP試料の表面粗さは大幅に(例えば30倍以上に)増大する。これについても、繊維長が(1mmから3mmに)大きくなるに連れて、及び、グラスファイバー含有量が(20%から30%に)大きくなるに連れて、GFPP試料における平均表面粗さが増加するという傾向が観測された。
【0057】
上述の表2に示された試料における表面反射率の変化は、図5に示すように、光学式顕微鏡写真にて表される。図5a乃至図5cは、各々、S30GFPP−0試料、S30GFPP−a試料、及び、S30GFPP−b試料に関する光学式顕微鏡写真を表す。図5d乃至図5fは、各々、L30GFPP−0試料、L30GFPP−a試料、及び、L30GFPP−b試料に関する光学式顕微鏡写真を表す。
【0058】
上述の例2にて示された試料の44.7μm×58.8μmの狭い範囲内における100倍の倍率でのトポグラフィーの測定結果が、図6に示される。広い範囲(1mm×1mm)において以前に観測されていた長い波長のうねりは、100倍の倍率では、実質的にフィルター除去されている。μmの単位での各Rq値が、十回の測定平均値にて、標準偏差を示すエラーバーと共に示されている。図6に示す100倍の倍率でのデータは、図4に示す20倍の倍率でのデータと、極めて類似した変化傾向を有している。しかしながら、100倍の倍率で測定された44.7μm×58.8μmの狭い範囲は、含有されているグラスファイバーを実質的に無視して、寧ろポリプロピレン樹脂そのもののうねりを表す。それ故、図6に示す100倍の倍率にて測定されたRq値は、図4に示す20倍の倍率にて測定されたRq値よりも大幅に小さい。
【0059】
上述の表2にて示されたL30GFPP試料の表面粗さに対する空気プラズマ処理の影響は、図7に示す20倍又は100倍の倍率での三次元プロフィールによって更に表されている。空気プラズマ処理を行っていない試料における三次元プロフィール、及び、少量の適用量にて空気プラズマ処理が行われた試料における三次元プロフィールは、何れの倍率においてもその外観形状に相違が実質的に存在しない(図7a、図7b、図7d、及び図7e参照)。20倍の倍率において、適用量「b」での空気プラズマ処理が、試料表面においてグラスファイバーの露出を引き起こしていることが観測される(図7c参照)。適用量「b」での空気プラズマ処理後の試料もまた、100倍の倍率での三次元プロフィールに表されるように、外観形状が変化している(図7f参照)。その試料の表面は、適用量「b」での空気プラズマ処理の間に高温状態におかれることによって、融解して形状変化し得る。
【0060】
例4
接着試験
結合強度は、ラップ部分のせん断試験を行うことによって測定され、psi(平方インチ毎のポンド)又はkPa(パスカル)に単位変換されて記録される。ラップ部分のせん断試験においては、基材と発泡接着剤と接着剤との間のせん断強度が判定される。GFPP試料は試験機のグリップ内に置かれて、破壊が起こるまで約5mm/分の速度にて引っ張られる。
【0061】
上述の例3にて示された大量の適用量での空気プラズマ処理は酸化炭素種の量を低減し得るものの、グラスファイバーの露出は、基材と発泡接着剤との間で結合する機械的結合を与える。そういうものとして、接着試験は、GFPP試料における総合的な接着特性が、空気プラズマ処理の適用量、グラスファイバー含有量、及びグラスファイバーの繊維長の各要因によって、どのような影響を受けるのか解明するように行われる。
【0062】
図8は、上述の表2にて示された000PP−0試料、000PP−a試料、及び000PP−b試料から測定される結合強度の分布を表す。結合強度は、せん断試験による測定値であり、各試験条件毎に、五回のせん断測定が行なわれる。OOOPP−a試料の平均結合強度(215psi:約1483kPa)は、000PP−0試料の平均結合強度(190psi)よりも僅かに大きい。大量の適用量「b」での空気プラズマ処理によって、000PP−b試料の平均結合強度は、190psi:約1310kPa(000PP−0試料)から157psi:約1083kPaに、或いは21%減少することが観測される。同じ組み合わせの試料における接着破壊状態は、図9にて表される。図9に示すように、10乃至14%の接着破壊が、全試料において同様に観測される。
【0063】
同様のせん断試験が、上述の表2にて示されたL30GFPP−0試料、L30GFPP−a試料、及び、L30GFPP−b試料に対しても行われる。これら試料におけるせん断試験の結果は、図10及び図11に示される。第一に、GFPP試料において、30重量%のグラスファイバー成分を単に含有することによって、結合強度が190psi:約1310kPa(図8の000PP−0)から230psi:約1586kPa(図9のL30GFPP−0)に増加しているのが示される。これは、図4におけるトポグラフィーの測定結果に示すように、グラスファイバーを含有する試料の表面粗さが実質的に3乃至5倍増加することに起因している。適用量「a」でのプラズマ処理が行われたL30GFPP−a試料の結合強度は、230psi:約1586kPa(図9のL30GFPP−0)から410psi:約2827kPa(図9のL30GFPP−a)に、或いは78.3%更に増加する。78.3%の増加は、図8(の000PP−0→000PP−a)にて示された000PP−a試料にて見られた13.2%の結合強度の増加の少なくとも5倍である。加えて、大多数(平均87.4%)のL30GFPP−a試料が、せん断することによって接着破壊する(図11参照)。更に、L30GFPP−b試料は、空気プラズマ処理を行わない場合の230psi:約1586kPa(図10のL30GFPP−0)から適用量「b」での空気プラズマ処理を行う場合の285psi:約1965kPa(図10のL30GFPP−b)へ、或いは23.9%の接着性向上をもたらす。このL30GFPP−b試料は、(適用量「b」での空気プラズマ処理によって、000PP−0よりも結合強度が低減されている)図8及び図9の000PP−b試料とは対照的である。L30GFPP−b試料に適用量「b」でのプラズマ処理を行うことによる23.9%の結合強度増加(図10のL30GFPP−0→L30GFPP−b)は、適用量「a」での空気プラズマ処理を行うことによる結合強度増加に比べて、その増加度合いが小さい。それにも関わらず、その結合強度増加(23.9%)は、GFPP試料におけるグラスファイバー成分の含有が、大量の適用量(例えば「b」)での空気プラズマ処理を行うことによってもたらされる接着損失を実質的に補償していることを示している。特定の理論によって限定されることを何ら意味するものではないが、空気プラズマ処理が、グラスファイバー成分の少なくとも一部を、GFPP試料の表面上に露出し、発泡接着剤との機械的結合を与えることが一つの解釈として考えられる。この機械的結合は、グラスファイバーを含有しない純粋なポリプロピレンの試料においては、容易に実現されるものではない。
【0064】
図10及び図11と同一の(ラップ部分の)せん断データが、図12及び図13において代案として示され、そのせん断データはグラスファイバーの繊維長及び含有量によって分類分けされている。このせん断データは、空気プラズマ処理の適用量、及び、基材におけるグラスファイバー含有量に基づくパターン変化を示している。図12及び図13に示すように、L20GFPP−0試料について接着不足が指摘され、L30GFPP−a試料について比較的良好な接着が行われている。実際には、これは、五回のせん断測定値に対して、100%の接着破壊を示す唯一の試料である(図12参照)。一般的に、データには大きな変動を伴うものの、グラスファイバーを大量に含有する試料にとって、良好な接着性能が達成されていることが極めて明確である。
【0065】
図12及び図13と同一の(ラップ部分の)せん断データは、主効果プロットによって、図14及び図15において更なる代案として示される。空気プラズマ処理の適用量が、グラスファイバーの含有量及びグラスファイバーの平均繊維長と比べて、結合強度及び接着破壊状態の両面で、接着に最も大きな影響を及ぼすことが立証されている。少量の適用量での空気プラズマ処理は、接着結合を劇的に増大し、大量の適用量でのプラズマ処理は、場合によっては程度は小さくなるものの、総合的な接着結合を増大する。
【0066】
グラスファイバーの繊維長が長い試料グループ(集合的に、L20GFPP−0、L30GFPP−0、L20GFPP−a、L30GFPP−a、L20GFPP−b、及びL30GFPP−bを含む)に対する、グラスファイバーの繊維長が短い試料グループ(集合的に、S20GFPP−0、S30GFPP−0、S20GFPP−a、S30GFPP−a、S20GFPP−b、及びS30GFPP−bを含む)における同一の結合強度データは、図16において、ボックスプロットによって示されている。このデータについて二つの試料のT検定が行われ、これによって、統計的差異の95%の信頼度にて、グラスファイバーの繊維長が長い試料グループは、グラスファイバーの繊維長が短い試料グループよりも、良好な接着結合を有していることが明らかに立証されている。
【0067】
表3は、三つの試験パラメータ(すなわち、空気プラズマ処理の適用量、グラスファイバーの平均繊維長、及びグラスファイバーの含有量)に応じた、図13のせん断結合強度の測定値を示す。各パラメータによるせん断結合強度の増強効果は、表3にて定量化されて示されている。グラスファイバーを含有しない純粋なポリプロピレン試料の間で、適用量「a」での空気プラズマ処理は、せん断結合強度を、(000PP−0試料の)190psi:約1310kPaから(000PP−a試料の)215psi:約1482kPaまで、25psi:約172kPaだけ、或いは13.1%だけ増大させる。空気プラズマ処理が行われないGFPP試料グループ(集合的に、S20GFPP−0、S30GFPP−0、及びL30GFPP−0を含む)の結合強度の平均値は230psi:約1586kPaであり、適用量「a」にて空気プラズマ処理が行われるGFPP試料グループ(集合的に、S20GFPP−a、S30GFPP−a、及びL30GFPP−aを含む)の結合強度の平均値は410psi:約2827kPaであり、そして、適用量「b」にて空気プラズマ処理が行われるGFPP試料グループ(集合的に、S20GFPP−b、S30GFPP−b、及びL30GFPP−bを含む)の結合強度の平均値は285psi:約k1965Paであると計算される。そういうものとして、適用量「a」での空気プラズマ処理が行われる場合の結合強度の平均値(410psi:約2827kPa)は、空気プラズマ処理が行われない場合の結合強度の平均値(230psi:約1586kPa)に比べて、180psi:約1241kPa或いは78.2%の増大を伴なう結合強度の増強効果をもたらす。GFPP試料へのグラスファイバーの含有が、13.1%から78.2%へ、或いはほぼ6倍という、空気プラズマ処理による結合強度の増大効果をもたらす。大量の適用量「b」での空気プラズマ処理が行われるとき、純粋なポリプロピレン試料の平均結合強度は、33psi:約227kPa低減される(190psi:約1310kPa→157psi:約1083kPa)ものの、大量の適用量「b」での空気プラズマ処理が行われるときのGFPP試料グループについて、寧ろ55psi:約379kPaの増加(230psi:約1586kPa→285psi:約k1965Pa)が観測される。加えて、30重量%以上のグラスファイバーを含有する試料グループ(集合的に、S30GFPP−0、S30GFPP−a、S30GFPP−b、L30GFPP−0、L3GFPP−a、及びL30GFPP−bを含む)は、平均340psi:約2344kPaの結合強度を有する一方で、20重量%以下のグラスファイバーを含有する試料グループ(集合的に、S20GFPP−0、S20GFPP−a、S20GFPP−b、L20GFPP−0、L20GFPP−a、及びL20GFPP−bを含む)は、平均276psi:約1903kPaの結合強度を有する。更に、上述したような繊維長が短いグラスファイバーを含有する試料グループは、平均293psi:約2020kPaの結合強度を有する一方で、上述したような繊維長が長いグラスファイバーを含有する試料グループは、323psi:約2227kPaの結合強度を有する。そういうものとして、64psi:約441kPa(276psi:約1903kPa→340psi:約2344kPa)の結合強度増大が、20%から30%へのグラスファイバー含有量の増加に伴って観測され、30psi:約207kPa(293psi:約2020kPa→323psi:約2227kPa)の結合強度増大が、1mmから3mmへの平均繊維長の増加に伴って観測される。従って、三つの試験パラメータの中で、ここで試験された試料における結合強度を増大するのに、空気プラズマ処理が最も大きな一因であることが合理的に結論付けられる。
【0068】
【表3】
【0069】
本発明を実施するベストモードを詳細に記述してきたが、本発明が関連する技術分野の当業者は、特許請求の範囲によって規定された本発明を実施するための、種々の代替構成及び実施形態を認識するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】空気プラズマ処理前後の、3mmの平均繊維長を備えた30重量%のグラスファイバー成分を含有するGFPP試料におけるXPSの実測スペクトルである。
【図2a】空気プラズマ処理前の、図1のGFPP試料における炭素の1s内殻準位スペクトルである。
【図2b】空気プラズマ処理後の、図1のGFPP試料における炭素の1s内殻準位スペクトルである。
【図3】空気プラズマ処理を行わない場合、及び、適用量「a」及び適用量「b」にて空気プラズマ処理を行った場合の、3mmの平均繊維長を備えた30重量%のグラスファイバー成分を含有するGFPP試料における炭素の1s内殻準位スペクトルである。
【図4】20倍の倍率での表面粗さを表す、トポグラフィーの測定結果である。
【図5】各々、空気プラズマ処理を行わない場合、及び、適用量「a」及び適用量「b」にて空気プラズマ処理を行った場合の、種々のGFPP試料に対する光学式顕微鏡写真での表面画像である。
【図6】各々、空気プラズマ処理を行わない場合、及び、適用量「a」及び適用量「b」にて空気プラズマ処理を行った場合の、GFPP試料に対する100倍の倍率での表面粗さを示すトポグラフィーの測定結果である。
【図7a】空気プラズマ処理を行わない場合のGFPP試料の20倍の倍率での三次元プロフィールである。
【図7b】適用量「a」にて空気プラズマ処理を行った場合のGFPP試料の20倍の倍率での三次元プロフィールである。
【図7c】適用量「b」にて空気プラズマ処理を行った場合のGFPP試料の20倍の倍率での三次元プロフィールである。
【図7d】空気プラズマ処理を行わない場合のGFPP試料に対する100倍の倍率での三次元プロフィールである。
【図7e】適用量「a」にて空気プラズマ処理を行った場合のGFPP試料の100倍の倍率での三次元プロフィールである。
【図7f】適用量「b」にて空気プラズマ処理を行った場合のGFPP試料の100倍の倍率での三次元プロフィールである。
【図8】各々、空気プラズマ処理を行わない場合、及び、適用量「a」及び適用量「b」にて空気プラズマ処理を行った場合の、純粋なポリプロピレン試料のせん断結合強度の測定値の平均及び分布を示すボックスプロットである。
【図9】各々、空気プラズマ処理を行わない場合、及び、適用量「a」及び適用量「b」にて空気プラズマ処理を行った場合の、純粋なポリプロピレン試料の接着破壊状態の平均及び分布を示すボックスプロットである。
【図10】各々、空気プラズマ処理を行わない場合、及び、適用量「a」及び適用量「b」にて空気プラズマ処理を行った場合の、種々のGFPP試料のせん断結合強度の測定値の平均及び分布を示すボックスプロットである。
【図11】各々、空気プラズマ処理を行わない場合、及び、適用量「a」及び適用量「b」にて空気プラズマ処理を行った場合の、種々のGFPP試料の接着破壊状態の平均及び分布を示すボックスプロットである。
【図12】空気プラズマ処理の適用量、グラスファイバーの含有量、及びグラスファイバーの繊維長に応じた、空気プラズマ処理を行わない場合、及び、適用量「a」及び適用量「b」にて空気プラズマ処理を行った場合の、種々のGFPP試料の接着破壊状態の平均及び分布を示すボックスプロットである。
【図13】空気プラズマ処理の適用量、グラスファイバーの含有量、及びグラスファイバーの繊維長に応じた、空気プラズマ処理を行わない場合、及び、適用量「a」及び適用量「b」にて空気プラズマ処理を行った場合の、種々のGFPP試料のせん断結合強度の測定値の平均及び分布を示すボックスプロットである。
【図14】空気プラズマ処理の適用量、グラスファイバーの含有量、及びグラスファイバーの繊維長に応じた、空気プラズマ処理を行わない場合、及び、適用量「a」及び適用量「b」にて空気プラズマ処理を行った場合の、結合強度の主効果プロットである。
【図15】空気プラズマ処理の適用量、グラスファイバーの含有量、及びグラスファイバーの繊維長に応じた、空気プラズマ処理を行わない場合、及び、適用量「a」及び適用量「b」にて空気プラズマ処理を行った場合の、接着破壊状態の主効果プロットである。
【図16】平均繊維長の長いグラスファイバー、又は、平均繊維長の長いグラスファイバーの何れかを含有する、種々のGFPP試料のせん断結合強度のボックスプロットである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
その表面上に存在する全原子の1乃至60原子%が酸素原子である表面を有し、ポリプロピレン成分とグラスファイバー成分との混合物である基材、及び、
上記酸素原子の酸化作用によって形成された一つ又は複数の反応性部分によって、上記表面に付着されている接着剤、を備える構造ポリマーインサート。
【請求項2】
上記酸素原子の量は、上記表面上に存在する全原子の10乃至50原子%である、請求項1に記載の構造ポリマーインサート。
【請求項3】
上記基材における少なくとも一部のグラスファイバー成分によって、上記接着剤と上記基材との間に形成されている機械的結合を更に備える、請求項1又は2に記載の構造ポリマーインサート。
【請求項4】
上記基材の表面は、ヒドロキシル基、エーテル基、ケトン基、カルボキシル基、或いは、それらの組み合わせから選択された、一つ又は複数の反応性部分を含む、請求項1乃至3の何れかに記載の構造ポリマーインサート。
【請求項5】
上記基材の表面は、該表面上に存在する全原子の0.1乃至10原子%の割合で窒素原子を含有する、請求項1乃至4の何れかに記載の構造ポリマーインサート。
【請求項6】
上記基材の表面は、該表面上に存在する全原子の5原子%以下の割合で珪素原子を含有する、請求項1乃至5の何れかに記載の構造ポリマーインサート。
【請求項7】
上記基材の表面は、酸素原子及び窒素原子を、酸素/窒素の原子比が5乃至12である範囲にて含有する、請求項1乃至6の何れかに記載の構造ポリマーインサート。
【請求項8】
上記グラスファイバー成分は、上記基材の全重量の1乃至60重量%の範囲内にある、請求項1乃至7の何れかに記載の構造ポリマーインサート。
【請求項9】
上記グラスファイバー成分は、上記基材の全重量の30乃至50重量%の範囲内にある、請求項8に記載の構造ポリマーインサート。
【請求項10】
上記グラスファイバー成分は、2mm以上の平均繊維長を有する、請求項1乃至9の何れかに記載の構造ポリマーインサート。
【請求項11】
上記グラスファイバー成分は、2乃至7mmの範囲内の平均繊維長を有する、請求項10に記載の構造ポリマーインサート。
【請求項12】
上記接着剤は、発泡接着剤であって、150乃至450%の発泡率を有する、請求項1乃至11の何れかに記載の構造ポリマーインサート。
【請求項13】
上記発泡接着剤は、エポキシ系である、請求項12に記載の構造ポリマーインサート。
【請求項14】
構造耐久性を増大させるための外層を更に有し、上記外層は上記基材に結合されている、請求項1乃至13の何れかに記載の構造ポリマーインサート。
【請求項15】
上記酸素原子は、空気プラズマ処理によって上記基材の表面に導入されている設けられている、請求項1乃至14の何れかに記載の構造ポリマーインサート。
【請求項16】
構造ポリマーインサートの形成方法であって、
ポリプロピレン成分とグラスファイバー成分との混合物である、表面を有する基材を提供する工程、
表面上に存在する全原子の1乃至60原子%が酸素原子である処理済表面を形成すべく、上記基材の表面に酸素原子を導入する工程、及び、
結合体を生成すべく、接着剤を上記処理済表面に付着させる工程、を備える方法。
【請求項17】
上記付着させる工程は、上記酸素原子の酸化作用によって形成された一つ又は複数の反応性部分によってもたらされる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
予熱された結合体を形成すべく、上記結合体を38乃至93℃の温度にて予熱する工程を更に備える、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項19】
上記予熱された結合体を、93℃乃至149℃の温度にて加熱硬化させる工程を更に備える、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
上記酸素原子を導入する工程は、空気プラズマ処理によってもたらされる、請求項16乃至19の何れかに記載の方法。
【請求項1】
その表面上に存在する全原子の1乃至60原子%が酸素原子である表面を有し、ポリプロピレン成分とグラスファイバー成分との混合物である基材、及び、
上記酸素原子の酸化作用によって形成された一つ又は複数の反応性部分によって、上記表面に付着されている接着剤、を備える構造ポリマーインサート。
【請求項2】
上記酸素原子の量は、上記表面上に存在する全原子の10乃至50原子%である、請求項1に記載の構造ポリマーインサート。
【請求項3】
上記基材における少なくとも一部のグラスファイバー成分によって、上記接着剤と上記基材との間に形成されている機械的結合を更に備える、請求項1又は2に記載の構造ポリマーインサート。
【請求項4】
上記基材の表面は、ヒドロキシル基、エーテル基、ケトン基、カルボキシル基、或いは、それらの組み合わせから選択された、一つ又は複数の反応性部分を含む、請求項1乃至3の何れかに記載の構造ポリマーインサート。
【請求項5】
上記基材の表面は、該表面上に存在する全原子の0.1乃至10原子%の割合で窒素原子を含有する、請求項1乃至4の何れかに記載の構造ポリマーインサート。
【請求項6】
上記基材の表面は、該表面上に存在する全原子の5原子%以下の割合で珪素原子を含有する、請求項1乃至5の何れかに記載の構造ポリマーインサート。
【請求項7】
上記基材の表面は、酸素原子及び窒素原子を、酸素/窒素の原子比が5乃至12である範囲にて含有する、請求項1乃至6の何れかに記載の構造ポリマーインサート。
【請求項8】
上記グラスファイバー成分は、上記基材の全重量の1乃至60重量%の範囲内にある、請求項1乃至7の何れかに記載の構造ポリマーインサート。
【請求項9】
上記グラスファイバー成分は、上記基材の全重量の30乃至50重量%の範囲内にある、請求項8に記載の構造ポリマーインサート。
【請求項10】
上記グラスファイバー成分は、2mm以上の平均繊維長を有する、請求項1乃至9の何れかに記載の構造ポリマーインサート。
【請求項11】
上記グラスファイバー成分は、2乃至7mmの範囲内の平均繊維長を有する、請求項10に記載の構造ポリマーインサート。
【請求項12】
上記接着剤は、発泡接着剤であって、150乃至450%の発泡率を有する、請求項1乃至11の何れかに記載の構造ポリマーインサート。
【請求項13】
上記発泡接着剤は、エポキシ系である、請求項12に記載の構造ポリマーインサート。
【請求項14】
構造耐久性を増大させるための外層を更に有し、上記外層は上記基材に結合されている、請求項1乃至13の何れかに記載の構造ポリマーインサート。
【請求項15】
上記酸素原子は、空気プラズマ処理によって上記基材の表面に導入されている設けられている、請求項1乃至14の何れかに記載の構造ポリマーインサート。
【請求項16】
構造ポリマーインサートの形成方法であって、
ポリプロピレン成分とグラスファイバー成分との混合物である、表面を有する基材を提供する工程、
表面上に存在する全原子の1乃至60原子%が酸素原子である処理済表面を形成すべく、上記基材の表面に酸素原子を導入する工程、及び、
結合体を生成すべく、接着剤を上記処理済表面に付着させる工程、を備える方法。
【請求項17】
上記付着させる工程は、上記酸素原子の酸化作用によって形成された一つ又は複数の反応性部分によってもたらされる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
予熱された結合体を形成すべく、上記結合体を38乃至93℃の温度にて予熱する工程を更に備える、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項19】
上記予熱された結合体を、93℃乃至149℃の温度にて加熱硬化させる工程を更に備える、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
上記酸素原子を導入する工程は、空気プラズマ処理によってもたらされる、請求項16乃至19の何れかに記載の方法。
【図1】
【図2a】
【図2b】
【図3】
【図4】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図5】
【図7a】
【図7b】
【図7c】
【図7d】
【図7e】
【図7f】
【図2a】
【図2b】
【図3】
【図4】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図5】
【図7a】
【図7b】
【図7c】
【図7d】
【図7e】
【図7f】
【公開番号】特開2009−241604(P2009−241604A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−86309(P2009−86309)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(503136222)フォード グローバル テクノロジーズ、リミテッド ライアビリティ カンパニー (236)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(503136222)フォード グローバル テクノロジーズ、リミテッド ライアビリティ カンパニー (236)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
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