説明

構造体、キャパシタ、及びキャパシタの製造方法

【課題】簡易且つ安価な製造工程によって形成可能な大容量小型キャパシタ用の構造体、キャパシタ、及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】 第1の下地上に形成され、第1の誘電体膜によって表面全体が覆われた複数の第1の導体粒子を含み、前記複数の第1の導体粒子が前記第1の誘電体膜によって互いに隔離された第1の誘電体層と、前記第1の誘電体層に積層され、前記第1の誘電体層より誘電体が占める体積の割合が高い第2の誘電体層とを含むこと。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造体、キャパシタ、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
キャパシタは、電子機器が発生する雑音を抑制するためのデカップリング・キャパシタ、電子デバイス間の直流電位の相違を解消するためのカップリング・キャパシタ、更にはフィルタの構成部品等として、電子機器に欠かせない部品である。近年の、電子機器の小型化には目覚しいものがあるが、このような電子機器の小型化に合わせてキャパシタの小型化への要求も高まっている。
【0003】
小型化に適したキャパシタには、セラミックキャパシタとアルミニウム電解キャパシタがある。これらのキャパシタは、単位体積当たりの容量が大きいので、小型化しても大きな容量を維持できる。
【0004】
セラミックキャパシタでは、誘電体層がチタン酸バリウム等の強誘電体で形成され、必要な容量が確保される。セラミックキャパシタを更に大容量化した積層セラミックキャパシタでは、電極と誘電体層が交互に積層されている。一方、アルミニウム電解キャパシタでは、粗面化により陽極箔の表面積が拡大されて大容量化が実現されている。
【特許文献1】特開平5−47589号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、何れのキャパシタでも、大容量化のためには、複雑且つ精密な製造工程が要求される。このため、これらのキャパシタを大容量化しようとすると、製造コストが高くなる。
【0006】
そこで、本発明の目的は、簡易且つ安価な製造工程によって形成可能な大容量小型キャパシタ用の構造体(誘電体層)、キャパシタ、及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本構造体(誘電体層)は、第1の下地上に形成され、第1の誘電体膜によって表面全体が覆われた複数の第1の導体粒子を含み、前記複数の第1の導体粒子が前記第1の誘電体膜によって互いに隔離された第1の誘電体層と、前記第1の誘電体層に積層され、前記第1の誘電体層より誘電体が占める体積の割合が高い第2の誘電体層とを含む構造体である。
【発明の効果】
【0008】
本構造体、本キャパシタ、及びその製造方法によれば、簡易且つ安価に大容量小型キャパシタを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面にしたがって本発明の実施の形態について説明する。但し、本発明の技術的範囲はこれらの実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された事項とその均等物まで及ぶものである。
【0010】
本発明者は、微粒子が集合した粉末をガスと共に噴射して基板に固着させる成膜方法(以下、ガスデポジッション法と呼ぶ)を種々研究してきた。その過程で、本発明者は、誘電体膜によって表面が覆われた導体粒子(例えば、表面が酸化されたAl粒子)を原料粉末として、ガスデポジッション法により金属膜を形成して、その構造及び物性を調べた。
【0011】
ガスデポジッション法では、微粒子がガスによって音速以上に加速されて、基板に激しく衝突する。その時の衝撃で微粒子が基板に固着し、厚膜が形成される。
【0012】
この時、基板に固着した微粒子は、衝突時の衝撃によって、原形を止めないほど変形する。従って、導体粒子の表面を覆っていた誘電体膜が、衝突後も導体粒子の表面を覆っているか或いは誘電体膜を突き破って金属微粒子同士が固着するかは不明であった。
【0013】
この点に関し、ガスデポジションにかかわる研究者達は、衝撃時に、活性な新生面が粒子表面を覆う酸化膜等を突き破って出現し、粒子同士が固着すると考えてきた。
【0014】
図1は、酸化アルミニウムによって表面が覆われたAl粉末を、ガスデポジッション法によってアルミニウム箔上に固着させて堆積膜を形成し、その断面を透過電子顕微鏡によって観察した画像の特徴を表した図面である。尚、以下、図面が異なっても対応する部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0015】
堆積膜の形成に用いたAl粉末は、厚さ10〜100nmの酸化アルミニウムによって表面が覆われた平均粒径3μm±1μm(±の後の数字は標準偏差を表す)のAl粒子が集合したものである。ここで、成膜条件は、後述する実施例1の第2の層64と同じである。また、Al粒子の平均粒径は、遠心分離沈降法によって測定したものである(以下の説明でも、同様である。)。
【0016】
図2は、堆積前の微粒子の断面構造を説明する模式図である。図2に示すように、原料粉末を形成する微粒子2は、導体粒子4(ここでは、Al粒子)の表面全体が誘電体6(ここでは、酸化アルミニウム)によって覆われている。そして、微粒子2の形状は概ね球形である。
【0017】
しかし、微粒子2が基板に衝突して形成された堆積膜中では、図1に示すようにAl粒子8は大きく変形している。一方、個々のAl粒子8は分離しており、粒子間には酸化アルミニウム層10が介在している。すなわち、堆積膜中でも、Al粒子8(金属粒子)の表面全体は、酸化アルミニウム(誘電体)によって覆われている。
【0018】
図1及び図2を参照して説明した成膜法は、研究者達が考えてきたような、強い衝撃によって新生面を露出させて、粒子同士を強固に密着させるという成膜メカニズムに基づくものではない。この成膜方法は、粒子コア部の金属の塑性を利用して、個々の粒子が、その表面に形成されている誘電体皮膜が破壊しない程度に塑性変形することで、個々の粒子が一体化・固着するというメカニズムに基づく成膜方法である。すなわち、本成膜方法は、微粒子を原料とし金属の塑性変形を利用する成膜方法といえる。
【0019】
次に、本発明者は、このような堆積膜の電気的特性を調べた。個々のAl粒子8が絶縁性の酸化アルミニウム膜10によって分離されている構造から予測されるように、堆積膜は、抵抗値が極めて高く絶縁性であった。
【0020】
この様な結果に基づいて、本発明者は、上記堆積膜の活用法の一つとして、上記堆積膜がキャパシタの誘電体層(キャパシタの電極間に挟まれる層)として使用可能か検討することとした。そこで、本発明者は、上記堆積膜の上面に金属電極を形成し、当該金属電極を上部電極とし、アルミニウム箔製の基板を下部電極とする試料を作製して、単位面積当たりの容量(容量密度)を測定した。尚、堆積膜の厚さは、250μmである。
【0021】
測定の結果得られた容量密度は、従来のキャパシタの容量密度を超える、30μF/cm2という極めて高い値であった。例えば、高誘電率を有するチタン酸バリウムを誘電体層し、誘電体層の厚さを1μmと薄くしたセラミックキャパシタでさえ、その容量密度は2.5μF/cmでしかない。
【0022】
このように容量密度が高くなった理由は、隣接するAl粒子8同士が、極薄い酸化アルミニウム10を介して、容量的に結合しているためと考えられる。
【0023】
更に、ガスデポジッション法は、簡易且つ安価な厚膜の製造方法である。以上のような知見に基づき、本発明者は、ガスデポジッション法で形成した堆積膜を、誘電体層とするキャパシタの検討を更に進めることとした。
【0024】
そこで、本発明者は、ガスデポジッションで形成した堆積膜の容量密度を更に高くする成膜条件を種々検討した。その結果、導体粒子4の表面を覆う誘電体6が薄くなると、容量密度が高くなることが明らかになった。また、高誘電率製の微粒子(例えば、チタン酸バリウム(BaTiO3)粒子)を原料粉末に混合すると、堆積膜の容量密度が高なることも明らかなった。
【0025】
図3は、酸化アルミニウムによって表面が覆われたAl粒子とチタン酸バリウム(BaTiO3)微粒子の混合粉末を原料粉末とし、ガスデポジッション法によって形成された構造体の断層像である。ここで、酸化アルミニウムの厚さは10〜100nmであり、Al粉末の粒径は3μm±1μmである。また、チタン酸バリウム微粒子の粒径は100nmである。そして、上記混合粉末に於けるチタン酸バリウムの割合は、体積比率で5%である(以下、5vol%のように表す)。尚、成膜条件の詳細は、後述する実施例1の第2の層64と同じである。
【0026】
測定の結果、この堆積膜の容量密度は、100μF/cmと非常に高いことが明らかになった。尚、この時の堆積膜の厚さは、10μmである。
【0027】
図3に示すように、原料粉末に混合されたチタン酸バリウム微粒子12は、Al粒子8の表面を覆う酸化アルミニウム10の連続体中に分散された状態で堆積膜に取り込まれる。
【0028】
チタン酸バリウムは、比誘電率が3000と極めて高い誘電体である。このような誘電体粒子が、導体粒子(Al粒子8)の間に介在する誘電体膜14中に分散されると、誘電体膜14の平均的な誘電率が増加する。このため、堆積膜の容量密度が、大きくなると考えられる。
【0029】
図4は、図3を参照して説明した堆積膜を誘電体層16とするキャパシタ18の構成を説明する概念図(断面図)である。図4に示すように、キャパシタ18は、ガスデポジション法で形成した誘電体層16と、この誘電体層16を上下から挟む上部電極20と下部電極22を有している。尚、図4には、チタン酸バリウム微粒子12が誘電体膜14に分散された堆積膜を、誘電体層16とするキャパシタが図示されている。しかし、以下の説明は、チタン酸バリウム微粒子12等の誘電体粒子が分散されていない堆積膜(図1参照)を、誘電体層とするキャパシタにも共通する。
【0030】
図4に示すように、誘電体層16の大半は、導体粒子であるAl粒子8によって占められている。このため、キャパシタ18に電圧が印加されると、電界はAl粒子8の間に介在する誘電体膜14に印加される。尚、誘電体膜14は、酸化アルミニウム10とチタン酸バリウム微粒子が複合して形成された構造体(性質の異なる複数の部分が組み合わされて形成された部材)である。
【0031】
従って、キャパシタ18の耐圧やリーク電流は、この誘電体膜14の耐性によって決まる。
【0032】
図5は、キャパシタの耐圧とリーク電流の関係を説明する図である。横軸は、キャパシタに印加される電圧である。縦軸は、キャパシタに流れる電流である。キャパシタに電圧を印加すると、微量のリーク電流24が流れる。しかし、電圧が増加していくと、あるところでブレイクダウンが起きて急激に電流が増加する。このように電流が急激に増加する電圧が、耐圧26である。
【0033】
さて、上述したようにキャパシタ18に印加された電圧は、略すべてAl粒子8間の薄い誘電体膜14に印加される。このため、図1又は図3を参照して説明したような堆積膜を誘電体層とするキャパシタでは、誘電体膜14が薄いので、ブレイクダウンを起こしやすい。更に、誘電体膜14が薄くなっている箇所と導体粒子(Al粒子8)が連なった電流パス28(電流が流れ易くなっている経路)が、形成されやすくなっている。このため、リーク電流が大きくなる。
【0034】
本発明者が、上記キャパシタ18の電気的特性を評価したところ、実用化に必要な5V以上の耐圧の確保が可能であることは明らかになった。また、電解キャパシタと同程度のリーク電流を確保できることも明らかになった。
【0035】
しかし、リーク電流は、セラミックキャパシタの低リーク電流には及ばなかった。従って、上記キャパシタを実用化のためには、リーク電流の更なる低減が望まれる。
【0036】
更に、キャパシタ18には、キャパシタとしての諸特性(容量、耐圧、及びリーク電流等)のばらつきが大きいという問題もある。このため、キャパシタ18の歩留まりも、十分とはいえない。
【0037】
リーク電流及び耐圧は、導体粒子(Al粒子8)間に介在する誘電体膜14を厚くすれば、改善することができる。しかし、誘電体膜14が厚くなると、キャパシタ18の容量は減少してしまう。このように、リーク電流(及び耐圧)と容量は、トレードオフの関係にある。
【0038】
図6は、本実施の形態のキャパシタ30の構成を説明する概念図である。図6に示すように、本実施の形態のキャパシタ30では、誘電体層16の内部が、薄い誘電体膜14を有する第1の誘電体層32を具備している。
【0039】
一方、上部電極20及び下部電極22の近傍部には、誘電体が占める体積の割合が、第1の誘電体層32より高い第2の誘電体層34が設けられている(図6に示した例では、第2の誘電体層34全体が誘電体(チタン酸バリウム微粒子12)によって形成されている。)。
【0040】
このため、本実施の形態のキャパシタ30では、第2の誘電体層34によって、電流パスの形成が妨げられる。故に、本キャパシタ30のリーク電流は、小さくなる。
【0041】
一方、誘電体層16の大半は、導体粒子(Al粒子8)の間に薄い誘電体膜14が介在して実効誘電率が高くなった堆積膜で形成されている。このため本キャパシタ30の容量は高くなっている。尚、実効誘電率とは、誘電体ではない絶縁性の層(例えば、図1を参照して説明した堆積膜)を誘電体とみなして算出した、実効的な誘電率のことである。
【0042】
ここで、本実施の形態のキャパシタ30の要部を纏めると、以下にようになる。
【0043】
本実施の形態のキャパシタ30は、第1の誘電体膜(例えば、酸化アルミニウム10)によって第1の表面全体が覆われた第1の導体粒子(例えば、Al粒子8)が第1の下地(例えば、第2の誘電体層34)に衝突し、第1の誘電体膜(例えば、酸化アルミニウム10)によって前記第1の表面全体が覆われた状態のまま前記第1の下地に固着して形成された第1の誘電体層32を有している。
【0044】
更に、本実施の形態のキャパシタ30は、誘電体が占める体積の割合が、第1の誘電体層32より高い第2の誘電体層34を有している。
【0045】
そして、本実施の形態のキャパシタ30では、第1の誘電体層32と第2の誘電体層34が積層された構造体の第1の主面に第1の電極(下部電極22)が形成され、この構造体の第2の主面に、第2の電極(上部電極20)が形成されている。
【0046】
或いは、本実施の形態のキャパシタ30の要部は、以下にように纏めることもできる。
【0047】
本実施の形態のキャパシタ30は、第1の下地上(例えば、下地電極22側の第2の誘電体層34)に形成され、第1の誘電体膜(例えば、酸化アルミニウム10)によって表面全体が覆われた複数の第1の導体粒子(例えば、Al粒子8)を含み、上記複数の第1の導体粒子(例えば、Al粒子8)が上記第1の誘電体膜(例えば、酸化アルミニウム10)によって互いに隔離された第1の誘電体層32と、上記第1の誘電体層32に積層され、上記第1の誘電体層より誘電体が占める体積の割合が高い第2の誘電体34層とを含んでいる。
【0048】
更に、本実施の形態のキャパシタ30では、上記第2の誘電体層34を2層有し、上記第1の誘電体層は、2つの上記第2の誘電体層33の間に配置されている。
【実施例1】
【0049】
(1)構 成
図7は、本実施例のキャパシタ36の構成を説明する断面図である。
【0050】
キャパシタ36は、複数のキャパシタフィルム38,39,40を有している。また、キャパシタフィルム38,39,40は積層され、両脇が、夫々、金属箔41によって固定されている。
【0051】
これら複数のキャパシタフィルム38,39,40は、金属箔41によって両脇が固定された状態で、更に基板42の上に固定されている。基板42の上には、キャパシタフィルム38,39,40を覆うように、外装ケース43が固定されている。
【0052】
ここで、金属箔41は、各キャパシタフィルム38,39,40の基板となるアルミニウム箔50の側面に電気的に接続されている。そして、金属箔41は、基板42を貫通するビアホールに設けられた配線45によって、基板42の下面に設けられた第1の端子44に電気的に接続されている。
【0053】
また、後述するように、キャパシタフィルム38,39,40の上面及び下面に設けられたカーボン膜が、銀ペーストによって、互いに接着されている。更に、最下層のキャパシタフィルム38の下面に設けられたカーボン膜が、基板42の上面に設けられたパッド47に、銀ペースによって接着されている。
【0054】
更に、パッド47は、基板42を貫通するビアホールに設けられた配線46によって、基板42の下面に設けられた第2の端子51に電気的に接続されている。
【0055】
図8は、キャパシタフィルム38,39,40の構成を説明する断面図である。
【0056】
キャパシタフィルム38,39,40は、アルミニウム箔50を基板として形成されている(図8参照)。アルミニウム箔50の両面には、ガスデポジッション法によって誘電体層(構造体)52が形成されている。この誘電体層52の上には、ペースト状の導電性高分子54が塗布されている。更に、その上にペースト状のカーボン(カーボン膜)56と銀ペース58が、順次塗布されている。尚、銀ペース58は、上下のキャパシタフィルム38,39,40を、機械的に接着すると同時に、電気的に接続する部材である。また、銀ペース58は、積層された上下のキャパシタフィルムの双方に属する部材である。
【0057】
ここで、アルミニウム箔50は、キャパシタフィルム38,39,40の第1の電極48として機能する。
【0058】
一方、アルミニウム箔50の両側に形成された、導電性高分子54、カーボン膜56、及び銀ペース58は第2の電極49を形成し、リード線(図示せず)により接続されて電気的に一体化している。
【0059】
ここで、上下に隣接するキャパシタフィルムのカーボン膜56は、銀ペースト58によって電気的に接続されている。従って、各キャパシタフィルム38,39,40の第2の電極49は、全て電気的に接続されて一体化している。
【0060】
また、キャパシタフィルム38,39,40の第1の電極48も、全て金属箔41によって、電気的に接続されて一体化している。
【0061】
そして、図7を参照して説明した構造から明らかなように、電気的に一体化した、キャパシタフィルム38,39,40の第1の電極48は、第1の端子44に電気的に接続されている。更に、電気的に一体化した、キャパシタフィルム38,39,40の第2の電極49は、第2の端子51に電気的に接続されている。
【0062】
図9は、キャパシタフィルム38,39,40の上部60(アルミニウム箔50の上側に形成された部分)の構成を説明する断面図である。キャパシタフィルム38,39,40の下部は図示されていないが、図9に図示した上部60と同じ構成を有している。
【0063】
以下、キャパシタフィルム38,39,40の構成を、製造方法に従って説明する。
【0064】
まず、厚さ50μmのアルミニウム箔50の上に、ガスデポジション法によって、厚さ5μmのチタン酸バリウム層(第1の層62)を堆積する。原料粉末は、平均粒子径50nmのチタン酸バリウム粒子が集合した粉末である。
【0065】
このチタン酸バリウム層の堆積は、下記「(2)ガスデポジッション法」で説明する方法に従って行われる。特に説明しないが、ガスデポジション法による堆積膜の形成は、以後、同様に行われる。尚、図9に記載された「t」は、各堆積層の厚さを表す(以下の図面でも同じ)。また、「V」は、チタン酸バリウム粒子の原料粉末における体積比を表す(以下の図面でも同じ)。
【0066】
次に、このチタン酸バリウム層(第1の層62)の上に、ガスデポジション法によって、厚さ約50μmの堆積膜(第2の層64)を堆積する。原料粉末は、表面酸化処理の施されたアルミニウム粒子にチタン酸バリウム粒子を、5vol%(体積比)添加した混合粉末である。アルミニウム粒子の平均粒子径は、3μm±1μmである。チタン酸バリウム粒子の平均粒子径は50nmである。
【0067】
ここで、表面酸化処理とは、大気中でアルミニウム粒子を550℃で5時間、加熱する処理である(以下の実施例でも、同じである。)。この表面酸化処理によって、アルミニウム粒子の表面全体に、自然酸化膜より厚い約5nmの酸化アルミニウムが形成される。尚、図9に記載された「d」は、酸化アルミニウムの厚さを表す(以下の図面でも同じ)。
【0068】
次に、第2の層64の上に、第1の層62と同じ手順で、チタン酸バリウム層(第3の層66)を堆積する。このチタン酸バリウム層(第3の層66)の厚さは、第1の層62と同じ、5μmである。
【0069】
その後、ペースト状の導電性高分子54を塗布する。更に、その上にペースト状のカーボン膜56を塗布し、最後に銀ペース58を塗布する。
【0070】
ところで、第2の層64は、図3を参照して説明した堆積膜と同様に、Al粒子8と、Al粒子8の表面全体を覆う誘電体膜14によって形成された構造体である。また、誘電体膜14は、Al粒子8の表面を覆う酸化アルミニウム10製の連続体と、この連続体中に分散されたチタン酸バリウム微粒子12とによって形成されている。
【0071】
ここで、誘電体膜14は、極めて薄い(〜5nm)。また、チタン酸バリウム微粒子12の添加によって、誘電体膜14の誘電率は高くなっている。このため、第2の層64の実効誘電率は極めて高くなる。
【0072】
その結果、キャパシタフィルム38,39,40の容量密度は、非常に高くなっている。そして、複数のキャパシタフィルム38,39,40が並列に接続された、本実施例のキャパシタ36の容量密度は非常に高くなる。
【0073】
上述したように、第2の層64において、隣接するAl粒子8を隔てる誘電体膜14は、非常に薄い(約5nm)。このため、第2の層64には、リーク電流の経路となる電流パスが形成されやすい。
【0074】
しかし、本実施例のキャパシタ36では、第1の電極48と第2の層64の間に、5μmという厚いチタン酸バリウム層(第1の層62)が形成されている。更に、第2の電極49と第2の層64の間にも、厚さ5μmのチタン酸バリウム層(第2の層66)が形成されている。
【0075】
これらチタン酸バリウム層が、第1の電極48から第2の電極49に至る電流パスの形成を妨げている。このため、キャパシタフィルム38,39,40のリーク電流は小さくなる。従って、本キャパシタ36のリーク電流も小さくなる。
【0076】
更に、電流パスの形成が阻害されることによって、リーク電流や耐圧のばらつきも小さくなり、歩留りが向上する。
【0077】
図10及び図11には、本実施例と後述する実施例2〜実施例4のキャパシタに係るデータを纏めた表が記載されている。図10に記載された表1には、本実施例、実施例1、及び実施例2のキャパシタに係るデータ(従来例1〜3)が纏められている。図11に記載された表2には、実施例4及び後述する比較例のキャパシタに係るデータが記載されている。更に、表2には、実用化済みの高容量キャパシタに関する、典型的なデータが併記されている。
【0078】
表1に示すように、本キャパシタ36の容量密度は、誘電体層が60μmと薄いにも拘わらず、200μF/cmと従来の電解キャパシタと同程度である。また、耐圧も20Vと、実用上必要な5Vを大きく上回っている。
【0079】
表2には、電流パスの発生を阻害するチタン酸バリウム層(第1の層62及び第3の層66)を具備しない後記比較例に関するデータが記載されている。誘電体層の厚さの違いを考慮しても、本実施例のキャパシタの耐圧は比較例のキャパシタの耐圧3Vより格段に高い。
【0080】
表1に示すように、本キャパシタ36のリーク電流は、電界強度0.25kV/mmに相当する電圧15Vが印加された時に、10−7A/cmとなる。一方、比較例のキャパシタのリーク電流は、電界強度0.1kV/mmに相当する電圧2Vが印加された時に、10−7A/cmとなる。すなわち、本実施例によれば、チタン酸バリウム層(第1の層62及び第3の層66)を具備しない比較例より、リーク電流が格段に小さくなる。
【0081】
なお、耐圧及びリーク電流は、第2の電極49を形成する前の誘電体層52を、アジピン酸水溶液に浸し、第1の電極48とこの水溶液の間に電圧を印加して測定した。
【0082】
ここで、本キャパシタ40の構成の要部を纏めると、以下のようになる。
【0083】
本キャパシタ36は、図8参照に示すように、誘電体層(構造体)52の第1の主面65に第1の電極48が形成され、誘電体層(構造体)52の第2の主面67に、第2の電極49が形成されているキャパシタである。
【0084】
そして、誘電体層(構造体)52は、図9に示すように、誘電体膜(酸化アルミニウム10)によって表面全体が覆われた導体粒子(Al粒子8)が第1の下地(第1の電極48)に衝突し、誘電体膜(酸化アルミニウム10)によって表面全体が覆われた状態のまま第1の下地(第1の層62)に固着して形成された第1の誘電体層(第2の層64)を有している。
【0085】
更に、誘電体層(構造体)52は、誘電体が占める体積の割合が、第1の誘電体層(第2の層64)より高い第2の誘電体層(第1の層62及び第3の層66)を有している。
【0086】
ここで、誘電体層(構造体)52は、第2の誘電体層を2層有し、一方の第2の誘電体層(第1の層62)は、第1の誘電体層(第2の層64)と第1の主面65の間に配置されている。また、他方の第2の誘電体層(第3の層66)は、第1の誘電体層(第2の層64)と第2の主面67の間に配置されている。
【0087】
更に、第2の誘電体層(第1の層62及び第3の層66)は、誘電体粒子(チタン酸バリウム)が下地(第1の電極48又は第2の層64)に衝突し、この下地に固着して形成された層である。従って、第2の誘電体層は、全て誘電体で占められている。
【0088】
図12は、異なったタイプのキャパシタフィルム69の構成を説明する断面図である。
【0089】
キャパシタフィルム69では、第2の電極49側の第2の誘電体層(第3の層66)が、第1の誘電体層(第2の層64)の側面及び第1の電極48の表面に延在している。そして、第2の誘電体層(第3の層66)が、誘電体層52の側面及び第1の電極48の表面を覆っている。
【0090】
このため、第2の電極49(導電性高分子54、カーボン56、及び銀ペース58)が、第1の電極48の上に食み出しても、両電極が短絡することはない。
【0091】
図13は、第2の電極49が形成される前の誘電体層52(構造体)から、第1の電極48が剥離された状態を説明する断面図である。第1の電極48は、例えば、ウェットエッチング等によって剥離することができる。
【0092】
このような構造体68を形成し、その後上面70及び下面72に改めて電極を形成して、キャパシタを製造してもよい。
【0093】
(2)ガスデポジッション法
図14は、誘電体層52の形成に用いるガスデポジッション法の手順を説明するフロー図である。図15は、このガスデポジッション法に使用する成膜装置の構成図である。
【0094】
まず、基板76(例えば、アルミニウム箔50)を成膜装置78に装着する。成膜室80は、X、Y方向への移動が可能なステージ82を有している。このステージ82に、基板76を装着する(ステップS1)。
【0095】
次に、成膜室80の内部を、メカニカルブースターポンプ86と真空ポンプ88によって真空に排気し、予め10Pa以下に減圧する(ステップS2)。この時、ガスボンベ90と浮遊粉塵化容器92を接続するガス管に設けられた第1のバルブ94は閉じられている。また、浮遊粉塵化容器92と成膜室80を接続するガス管に設けられた第2のバルブ96も閉じられている。
【0096】
次に、原料粉末(例えば、チタン酸バリウム粉末)を、浮遊粉塵化容器92に充填する(ステップS3)。
【0097】
次に、振動器84によって浮遊粉塵化容器92全体に超音波を印加した状態で、原料粉末74を約80度に加熱し、30分間真空脱気する。この時、第2のバルブ96が開けられ、浮遊粉塵化容器92が真空排気される。尚、第2のバルブ96は、真空脱気の終了後閉じられる。以上の前処理によって、原料粉末74の表面に吸着した水分が除去される(ステップS4)。
【0098】
次に、第1のバルブ94を開け、浮遊粉塵化容器92に高純度ヘリウムガス(ガス圧: 2kg/cm、ガス流量:8l/min.)からなる圧縮ガスを導入する。
【0099】
この圧縮ガスの導入によって、原料粉末74を形成する微粒子が舞い上がり、ヘリウムガス中を浮遊し始める(このようにガス中を浮遊する微粒子は、浮遊粉塵と呼ばれる。)。この間も、振動器84によって浮遊粉塵化容器92全体に超音波が印加され、浮遊粉塵化が促進される。尚、ガス流量は、ガスボンベ90と浮遊粉塵化容器92の間に設けられたマスフローメータ(図示せず)によって計測される(ステップS5)。
【0100】
次に、第2のバルブ96が開かれて、浮遊粉塵化された原料粉末が、ノズル98を通して、成膜室80に送り込まれる。この時、浮遊粉塵化したが原料粉末は、ノズル98から基板76に向かって、ヘリウムガスと共に噴射される。この噴射によって、原料粉末を形成する粒子は加速される。加速された粒子は、基板76に衝突し固着する(ステップS6)。
【0101】
以上の工程によって、基板76に接する層(例えば、第1の層62)が形成される。
【0102】
異なる構造の層(第2の層64、第3の層66等)を積層する場合には、夫々の層構造に対応する原料粉末を用意し、原料粉末の充填(ステップS3)からガス噴射/固着(ステップS6)までの工程を実施する。
【0103】
(3)製造方法(要部)
以上の説明から明らかなように、本キャパシタ40の製造方法の要部は、以下の通りである。
【0104】
本製造方法は、表面全体が誘電体(チタン酸バリウム)によって形成された粒子(チタン酸バリウム粒子)が集合した第1の粉末を、ガスと共に噴射して加速し、第1の下地(アルミニウム箔50)に上記粒子を衝突させ、表面全体が誘電体で形成されたままの状態で上記粒子(チタン酸バリウム粒子)を、第1の下地(アルミニウム箔50)に固着させる第1の固着工程を具備している。この第1の固着工程により、第1の層62が形成される(図9参照)。
【0105】
また、本製造方法は、誘電体膜(酸化アルミニウム)によって表面全体が覆われた導体粒子(Al粒子)が集合した第2の粉末を、ガスと共に噴射して加速し、第2の下地(第1の層62)に上記導体粒子(Al粒子)を衝突させ、表面全体が誘電体に覆われたままの状態で上記導体粒子(Al粒子)を第2の下地(第1の層62)に固着させる第2の固着工程を具備している(図9参照)。この第2の固着工程によって、第2の層64が形成される。
【0106】
更に、本製造方法では、第2の固着工程の後、第1の固着工程が再度実施される。但し、その際、上記粒子(チタン酸バリウム粒子)が衝突する下地は、第2の層64である。この固着工程により、第3の層66が形成される。
【0107】
また、本製造方法は、固着した上記粒子(チタン酸バリウム粒子)及び上記導体粒子(Al粒子)によって形成される構造体(誘電体層52)を電極で挟む電極形成工程を具備している。
【0108】
そして、本製造方法は、第1の粉末を形成する粒子全体が占める体積に対する誘電体部分(チタン酸バリウム)の体積の割合が、第2の粉末を形成する粒子全体が占める体積に対する誘電体部分(チタン酸バリウム及び酸化アルミニウム)の体積の割合がより高いキャパシタの製造方法である。
【0109】
或いは、本キャパシタ40の製造方法の要部は、以下のように纏めることもできる。
【0110】
本製造方法は、表面全体が第1の誘電体(チタン酸バリウム)によって形成された複数の粒子(チタン酸バリウム粒子)を含む第1の粉末をガスと共に噴射することにより、上記粒子を第1の下地(アルミニウム箔50)に衝突させ、上記粒子の表面全体が第1の誘電体で形成されたままの状態で、上記第1の下地に上記粒子を固着させる第1の固着工程を具備している。
【0111】
本製造方法は、表面全体が第2の誘電体(酸化アルミニウム)によって覆われた複数の導体粒子(Al粒子)を含む第2の粉末をガスと共に噴射することにより、上記導体粒子を第2の下地(第1の層62)に衝突させ、上記導体粒子の表面全体が第2の誘電体に覆われたままの状態で、前記第2の下地に前記導体粒子を固着させる第2の固着工程を具備している。
【0112】
更に、本製造方法は、第1の下地に固着した上記粒子(チタン酸バリウム粒子)と、上記第2の下地に固着した上記導体粒子(Al粒子)とによって形成される構造体を電極で挟む電極形成工程とを具備している。
【0113】
そして、本製造方法は、第1の粉末に含まれる粒子全体が占める体積に対する上記第1の誘電体の体積の割合が、上記第2の粉末に含まれる導体粒子全体が占める体積に対する上記第1の誘電体及び上記第2の誘電体の体積の割合がより高いキャパシタの製造方法である。
【実施例2】
【0114】
本実施例のキャパシタも、実施例1と同様に、キャパシタフィルが積層されて形成されたキャパシタである。図16は、本キャパシタフィルム100の上半分の構成を説明する断面図である。
【0115】
キャパシタフィルム100は、アルミニウム箔50を基板として形成されている(図16参照)。アルミニウム箔50の両面には、ガスデポジッション法によって誘電体層102が形成されている。尚、図16では、アルミニウム箔50の下側に形成された誘電体層102は省略されている。また、図16に示された記号(t, d, V)の意味は、図9中の対応する記号の意味と同じである。
【0116】
以下、キャパシタフィルム100の構成を、製造方法に従って説明する。
【0117】
まず、厚さ50μmのアルミニウム箔50の上に、ガスデポジション法によって、厚さ約5μmの堆積膜(第1の層104)を形成する。原料粉末は、表面酸化処理の施されたアルミニウム粒子が集合した粉末に、チタン酸バリウム粒子が20vol%(体積比)添加された混合粉末である。尚、上記表面酸化処理は、実施例1でアルミニウム粒子に施された表面酸化処理と同じ処理である。以下の工程でも同様である。
【0118】
アルミニウム粒子の平均粒子径は、3μm±1μmである。アルミニウム粒子の表面を覆う酸化アルミニウムの厚さは、5nmである。一方、チタン酸バリウム粒子の平均粒子径は50nmである。以後の工程で使用する混合粉末を形成するアルミニウム粒子及びチタン酸バリウム粒子の構造も、ここで説明した構造と同じである。
【0119】
次に、第1の層104の上に、ガスデポジション法によって、厚さ約5μmの堆積膜(第2の層106)を形成する。原料粉末は、表面酸化処理の施されたアルミニウム粒子が集合した粉末に、チタン酸バリウム粒子が10vol%(体積比)添加された混合粉末である。
【0120】
次に、第2の層106の上に、ガスデポジション法によって、厚さ約40μmの堆積膜(第3の層108)を形成する。原料粉末は、表面酸化処理の施されたアルミニウム粒子が集合した粉末に、チタン酸バリウム粒子が5vol%(体積比)添加された混合粉末である。
【0121】
次に、第3の層108の上に、ガスデポジション法によって、厚さ約5μmの堆積膜(第4の層110)を形成する。原料粉末は、表面酸化処理が施されたアルミニウム粒子が集合した粉末に、チタン酸バリウム粒子が10vol%(体積比)添加された混合粉末である。
【0122】
最後に、第4の層110の上に、ガスデポジション法によって、厚さ約5μmの堆積膜(第5の層112)を形成する。原料粉末は、表面酸化処理が施されたアルミニウム粒子が集合した粉末に、チタン酸バリウム粒子が20vol%(体積比)添加された混合粉末である。
【0123】
その後、ペースト状の導電性高分子54を塗布する。更に、その上にペースト状のカーボン56が塗布し、最後に銀ペース58を塗布する。
【0124】
以上の説明から明らかなように、本実施例のキャパシタ100では、第2の誘電体層(第1の層104及び第5の層112)が、誘電体膜(酸化アルミニウム膜)によって表面全体が覆われた導体粒子(アルミニウム粒子)が下地(アルミニウム箔50又は第4の層110)に衝突し、上記誘電体膜(アルミニウム粒子)によって表面全体が覆われた状態のまま下地に固着して形成されている。
【0125】
すなわち、第2の誘電体層(第1の層104及び第5の層112)は、誘電体膜(酸化アルミニウム膜)によって表面全体が覆われた複数の導体粒子(アルミニウム粒子)を含み、上記複数の導体粒子(アルミニウム粒子)が上記誘電体膜(酸化アルミニウム膜)によって互いに隔離されている。
【0126】
また、上記導体粒子間には、誘電体粒子(チタン酸バリウム粒子)が存在している。そして、第2の誘電体層(第1の層104及び第5の層112)で誘電体粒子が占める体積の割合が、第1の誘電体層(第3の層108)における割合より高くなっている。
【0127】
ところで、第3の層108は、図3を参照して説明した堆積膜と略同じ構成を有している。このため、第3の層108の実効誘電率は極めて高い。故に、キャパシタフィルム100の容量密度は、非常に高い。由って、本実施例のキャパシタの容量密度も、非常に高い。
【0128】
一方、第1の電極48に接している第1の層104には、多量のチタン酸バリウムが添加されている。すなわち、第1の層104では、誘電体の体積比が高くなっている。このため、第1の層104では、導体粒子(Al粒子)を隔てる誘電体膜が厚くなっている。
【0129】
同様に、第2の電極49に接している第5の層112には、多量のチタン酸バリウムが添加されている。すなわち、第5の層112でも、誘電体の体積比が高くなっている。このため、第5の層112でも、導体粒子(Al粒子)を隔てる誘電体膜が厚くなっている。
【0130】
従って、本実施例のキャパシタでは、第1の層104及び第5の層112が電流パスの形成を阻害するので、電流パスが形成され難くなっている。故に、本実施例のキャパシタのリーク電流は小さい。また、電流パスが形成され難くなっているので、リーク電流や耐圧のばらつきも小さくなり、歩留りが向上する。
【0131】
尚、第2の層106及び第4の層110は、誘電体の体積比が急激に変化しないように設けられた緩衝層である。このような緩衝層を設けることにより、第1の層104と第3の層108の密着性が良くなる。また、第3の層108と第5の層112の密着性も良くなる。
【0132】
本キャパシタの特性は、表1(図10)に記載されている。
【0133】
表1に示すように、本キャパシタの容量密度は、300μF/cmと電界キャパシタの容量密度(200μF/cm)を超えている(図10及び図11参照)。また、耐圧も10Vと実用上必要な5Vを大きく上回っている。
【0134】
表2(図11)には、電流パスの発生を阻害する層(第1の層104及び第5の層112)を具備しない比較例に関するデータも記載されている。誘電体層の厚さの違いを考慮しても、本実施例のキャパシタの耐圧は比較例より高い。
【0135】
表1に示すように、本キャパシタのリーク電流は、電界強度0.25kV/mmに相当する電圧15Vが印加された時に、10−7A/cmとなる。一方、比較例のキャパシタのリーク電流は、電界強度0.1kV/mmに相当する電圧2Vが印加された時に、10−7A/cmとなる。すなわち、本実施例によれば、電流パスの発生を阻害する層(第1の層104及び第5の層112)を具備しない比較例より、リーク電流が格段に小さくなる。
【0136】
図17は、表面が研磨された誘電体層102の状態を説明する図である。このように誘電体層102の表面を研磨してから、研磨面114に第2の電極49を形成すると、キャパシタの容量が大きくなる。
【0137】
これは、誘電体層102の最表面を覆っている酸化膜が除去されるためである。尚、図17では、アルミニウム箔50の下側に形成される誘電体層は、省略されている。また、以下の実施例でも、同様に誘電体層の表面を研磨してから第2の電極49を形成することによって、キャパシタの容量を大きくすることができる。
【0138】
尚、誘電体層102の研磨は、機械研磨、電解研磨、CMP(chemical mechanical polishing)、イオンミリングの何れを用いて実施してもよい。
【0139】
図18は、アルミニウム箔50から剥離した構造体(誘電体層102)の上面及び下面を夫々500nm研磨した後の状態を説明する図である。このようにして形成した構造体116の上側の研磨面118及び下側の研磨面120に、夫々電極を形成して、キャパシタとしてもよい。以下の実施例でも、同様に、アルミニウム箔から剥離した構造体の上面及び下面を研磨し、その後電極を形成してキャパシタとしてもよい。
【実施例3】
【0140】
本実施例のキャパシタも、実施例1と同様に、キャパシタフィルムが積層されて形成されたキャパシタである。図19は、このキャパシタフィルム122の上半分の構成を説明する断面図である。
【0141】
キャパシタフィルム122は、アルミニウム箔50を基板として形成さている(図19参照)。アルミニウム箔50の両面には、ガスデポジッション法によって誘電体層134が形成されている。尚、図19でも、アルミニウム箔50の下側に形成された誘電体層134は省略されている。また、図19に示された記号(t, d, V)の意味は、図9中の対応する記号の意味と同じである。
【0142】
以下、キャパシタフィルム122の構成を、製造方法に従って説明する。
【0143】
まず、厚さ50μmのアルミニウム箔50の上に、ガスデポジション法によって、厚さ約5μmの堆積膜(第1の層124)を形成する。原料粉末は、表面全体が酸化アルミニウムによって覆われたアルミニウム粒子が集合した粉末である。
【0144】
アルミニウム粒子の平均粒子径は、3μm±1μmである。アルミニウム粒子の表面を覆う酸化アルミニウムの厚さは、300nmである。このアルミニウム粒子の表面を覆う酸化アルミニウムは、ゾルゲル法によって形成されたものである。以下の工程で使用する粉末の粒子表面を覆う酸化アルミニウムも、ゾルゲル法によって形成されたものである。
【0145】
次に、第1の層124の上に、ガスデポジション法によって、厚さ約5μmの堆積膜(第2の層126)を形成する。原料粉末は、表面全体が酸化アルミニウムによって覆われたアルミニウム粒子が集合した粉末である。
【0146】
アルミニウム粒子の平均粒子径は、3μm±1μmである。アルミニウム粒子の表面を覆う酸化アルミニウムの厚さは、100nmである。
【0147】
次に、第2の層126の上に、ガスデポジション法によって、厚さ約40μmの堆積膜(第3の層128)を形成する。原料粉末は、表面全体が酸化アルミニウムによって覆われたアルミニウム粒子が集合した粉末である。
【0148】
アルミニウム粒子の平均粒子径は、3μm±1μmである。アルミニウム粒子の表面を覆う酸化アルミニウムの厚さは、10nmである。
【0149】
次に、第3の層128の上に、ガスデポジション法によって、厚さ約5μmの堆積膜(第4の層130)を形成する。原料粉末は、表面全体が酸化アルミニウムによって覆われたアルミニウム粒子が集合した粉末である。
【0150】
アルミニウム粒子の平均粒子径は、3μm±1μmである。アルミニウム粒子の表面を覆う酸化アルミニウムの厚さは、100nmである。
【0151】
最後に、第4の層130の上に、ガスデポジション法によって、厚さ約5μmの堆積膜(第5の層132)を形成する。原料粉末は、表面全体が酸化アルミニウムによって覆われたアルミニウム粒子が集合した粉末である。
【0152】
アルミニウム粒子の平均粒子径は、3μm±1μmである。アルミニウム粒子の表面を覆う酸化アルミニウムの厚さは、300nmである。
【0153】
その後、ペースト状の導電性高分子54を塗布する。更に、その上にペースト状のカーボン56を塗布し、最後に銀ペース58を塗布する。
【0154】
このように、本実施例のキャパシタでは、導体粒子(アルミニウム粒子)の表面を覆う誘電体膜(酸化アルミニウム膜)の厚さが、第1の誘電体層(第3の層128)より第2の誘電体層(第1の層124及び第5の層132)で厚くなっている。
【0155】
ところで、第3の層128は、図1を参照して説明した堆積膜と略同じ構成を有している。このため、第3の層128の実効誘電率は極めて高い。故に、キャパシタフィルム122の容量密度は、非常に高い。由って、本実施例のキャパシタの容量密度も、非常に高い。
【0156】
一方、第1の電極48に接している第1の層124でAl粒子の表面を覆う酸化アルミニウムが、第3の層でAl粒子の表面を覆う酸化アルミニウムより厚くなっている(その結果、第1の層124では、誘電体の体積比が高くなっている。)。
【0157】
同様に、第2の電極49に接している第5の層132でAl粒子の表面を覆う酸化アルミニウムが、第3の層でAl粒子の表面を覆う酸化アルミニウムより厚くなっている。
【0158】
従って、本実施例のキャパシタでは、電流パスが形成され難くなっている。故に、本実施例のキャパシタでは、リーク電流が小さくなる。また、リーク電流や耐圧のばらつきも小さくなり、歩留りが向上する。
【0159】
尚、第2の層126及び第4の層130は、誘電体の体積比が急激に変化しないように設けられた緩衝層である。このような緩衝層を設けることにより、第1の層124と第3の層128の密着性が良くなる。また、第3の層128と第5の層132の密着性も良くなる。
【0160】
本キャパシタの特性は、表1(図10)に記載されている。
【0161】
表1に示すように、本キャパシタの容量密度は、300μF/cmと電解キャパシタの容量密度(200μF/cm)を超えている(図10及び図11参照)。また、耐圧も10Vと、実用上必要な5Vを大きく上回っている。
【0162】
表1には、電流パスの発生を阻害する層(第1の層124及び第5の層132)を具備しない比較例に関するデータも記載されている。誘電体層の厚さの違いを考慮しても、本実施例のキャパシタの耐圧は比較例より高い。
【0163】
表1に示すように、本キャパシタのリーク電流は、電界強度0.25kV/mmに相当する電圧15Vが印加された時に、10−7A/cmとなる。一方、比較例のキャパシタのリーク電流は、電界強度0.1kV/mmに相当する電圧2Vが印加された時に、10−7A/cmとなる。すなわち、本実施例によれば、電流パスの発生を阻害する層(第1の層124及び第5の層132)を具備しない比較例より、リーク電流が格段に小さくなる。
【実施例4】
【0164】
本実施例のキャパシタも、実施例1と同様に、キャパシタフィルが積層されて形成されたキャパシタである。図20は、このキャパシタフィルム136の上半分の構成を説明する断面図である。
【0165】
キャパシタフィルム136は、アルミニウム箔50を基板として形成さている(図20参照)。アルミニウム箔50の両面には、ガスデポジッション法によって誘電体層148が形成されている。尚、図20でも、図9と同様、アルミニウム箔50の下側に形成された誘電体層148は省略されている。また、図20に示された記号(t, d, V)の意味は、図9中の対応する記号の意味と同じである。
【0166】
以下、キャパシタフィルム136の構成を、製造方法に従って説明する。
【0167】
まず、厚さ50μmのアルミニウム箔50の上に、ガスデポジション法によって、厚さ約5μmの堆積膜(第1の層138)を形成する。
【0168】
原料粉末は、表面全体が酸化アルミニウムによって覆われたアルミニウム粒子が集合した粉末に、チタン酸バリウム粒子が20vol%(体積比)添加された混合粉末である。
【0169】
アルミニウム粒子の平均粒子径は、3μm±1μmである。アルミニウム粒子の表面を覆う酸化アルミニウムの厚さは、300nmである。アルミニウム粒子の表面を覆う酸化アルミニウムは、ゾルゲル法によって形成されたものである。以下の工程で使用される粉末の粒子表面を覆う酸化アルミニウムも、ゾルゲル法によって形成されるものである。
【0170】
一方、チタン酸バリウム粒子の平均粒子径は50nmである。尚、以下の工程でも原料粉末にチタン酸バリウム粒子が混合されるが、その平均粒子径も50nmである。
【0171】
次に、第1の層138の上に、ガスデポジション法によって、厚さ約5μmの堆積膜(第2の層140)を形成する。
【0172】
原料粉末は、表面全体が酸化アルミニウムによって覆われたアルミニウム粒子が集合した粉末に、チタン酸バリウム粒子が10vol%(体積比)添加された混合粉末である。
【0173】
アルミニウム粒子の平均粒子径は、3μm±1μmである。アルミニウム粒子の表面を覆う酸化アルミニウムの厚さは、100nmである。
【0174】
次に、第2の層140の上に、ガスデポジション法によって、厚さ約40μmの堆積膜(第3の層142)を形成する。原料粉末は、表面全体が酸化アルミニウムによって覆われたアルミニウム粒子が集合した粉末に、チタン酸バリウム粒子が5vol%(体積比)添加された混合粉末である。
【0175】
アルミニウム粒子の平均粒子径は、3μm±1μmである。アルミニウム粒子の表面を覆う酸化アルミニウムの厚さは、10nmである。
【0176】
次に、第3の層142の上に、ガスデポジション法によって、厚さ約5μmの堆積膜(第4の層144)を形成する。原料粉末は、表面全体が酸化アルミニウムによって覆われたアルミニウム粒子が集合した粉末に、チタン酸バリウム粒子が10vol%(体積比)添加された混合粉末である。
【0177】
アルミニウム粒子の平均粒子径は、3μm±1μmである。アルミニウム粒子の表面を覆う酸化アルミニウムの厚さは、100nmである。
【0178】
最後に、第4の層144の上に、ガスデポジション法によって、厚さ約5μmの堆積膜(第5の層146)を形成する。原料粉末は、表面全体が酸化アルミニウムによって覆われたアルミニウム粒子が集合した粉末に、チタン酸バリウム粒子が20vol%(体積比)添加された混合粉末である。
【0179】
アルミニウム粒子の平均粒子径は、3μm±1μmである。アルミニウム粒子の表面を覆う酸化アルミニウムの厚さは、300nmである。
【0180】
その後、ペースト状の導電性高分子54を塗布する。更に、その上にペースト状のカーボン56を塗布し、最後に銀ペース58を塗布する。
【0181】
ところで、第3の層142は、図3を参照して説明した堆積膜と略同じ構成を有している。このため、第3の層142の実効誘電率は極めて高い。故に、キャパシタフィルム136の容量密度は、非常に高い。由って、本実施例のキャパシタの容量密度は、非常に高い。
【0182】
一方、第1の電極48に接している第1の層138では、Al粒子の表面を覆う酸化アルミニウムが厚くなっている。更に、第1の層138には、多量のチタン酸バリウムが添加されている。このため、第1の層138では、誘電体(酸化アルミニウム及びチタン酸バリウム)の体積比が高くなっている。その結果、第1の層138では、導体粒子(Al粒子)を隔てる誘電体膜が厚くなっている。
【0183】
同様に、第2の電極49に接している第5の層146では、Al粒子の表面を覆う酸化アルミニウムが厚くなっている。更に、第2の電極49に接している第5の層146には、多量のチタン酸バリウムが添加されている。このため、第5の層146でも、誘電体の体積比が高くなっている。その結果、第5の層146でも、導体粒子(Al粒子)を隔てる誘電体膜が厚くなっている。
【0184】
従って、本実施例のキャパシタでも、第1の層138及び第5の層146が電流パスの形成を阻害するので、電流パスが形成され難くなっている。故に、本実施例のキャパシタでも、リーク電流は小さくなる。また、リーク電流や耐圧のばらつきも小さくなり、歩留りが向上する。
【0185】
本キャパシタの特性は、表2(図11)に記載されている。
【0186】
表2に示すように、本キャパシタの容量密度は、誘電体層の厚さの相違を考慮しても、600μF/cmと電解キャパシタの容量密度(200μF/cm)を大きく超えている。また、耐圧も10Vと実用上必要な5Vを大きく上回っている。
【0187】
表2には、電流パスの発生を阻害する層(第1の層138及び第5の層146)を具備しない比較例に関するデータも記載されている。誘電体層の厚さの違いを考慮しても、本実施例のキャパシタの耐圧は比較例より高い。
【0188】
表2に示すように、本キャパシタのリーク電流は、電界強度0.25kV/mmに相当する電圧15Vが印加された時に、10−7A/cmとなる。一方、比較例のキャパシタのリーク電流は、電界強度0.1kV/mmに相当する電圧2Vが印加された時に、10−7A/cmとなる。すなわち、本実施例によれば、電流パスの発生を阻害する層(第1の層138及び第5の層146)を具備しない比較例より、リーク電流が格段に小さくなる。
【0189】
(変形例)
以上の例では、誘電体層は、アルミニウム箔の上に成膜されている。しかし、銅箔が貼付されたプリント基板の上や樹脂ビルドアップ基板内部に、ガスデポジッション法によって誘電体膜を成膜して、キャパシタを製造してもよい。
【0190】
また、以上の例では、成膜後の誘電体層には、特段の処理は施されない。しかし、成膜後の誘電体層にレーザ照射(例えば、出力10WのCOレーザもしくはYVO4レーザの照射)を施してもよい。このようなレーザ照射を施すと誘電体層が緻密化し、容量が更に向上する。
【0191】
また、成膜後の誘電体層に、アジピン酸アンモン水溶液中で直流電圧を印加して、15分間の化成処理を施してもよい。このようにすると、誘電体層の表面全体に化成膜が形成されるので、耐圧が更に向上する。尚、化成処理に用いられる電圧及び処理時間は、例えば、15V及び15分である。
【0192】
また、以上の例では、原料粉末に含まれる導電性粒子は、アルミニウム粒子である。しかし、導電性粒子としては、チタン、タンタル、ジルコニウム、シリコン、及びマグネシウム等のアルミニウム以外の弁金属の粒子であってもよい。更に、原料粉末に含まれる導電性粒子は、これらの弁金属をその成分とする合金製の粒子であってもよい。
【0193】
更に、これら導電体粒子を覆う誘電体としては、酸化タンタル、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、二酸化珪素、窒化シリコン、窒化アルミニウム、窒化タンタル、酸化マグネシウム等の種々の誘電体を用いてもよい。
【0194】
また、誘電体で覆われた導電体粒子と混合されて原料粉末となる誘電体粒子についても同じである。尚、この誘電体粒子の比誘電率は、上記導体粒子の酸化物の比誘電率より高いことが好ましい。例えば、上記誘電体粒子は、比誘電率が8以上の誘電体で形成されていることが好ましい。
【0195】
また、上記誘電体粒子の平均粒径は、各層を形成する上記導体粒子の平均粒径よりも小さいことが好ましい。例えば、上記誘電体粒子の平均粒径は1μm以下であることが好ましい。
【0196】
以上の実施の形態をまとめると、次の付記のとおりである。
【0197】
(付記1)
第1の誘電体膜によって第1の表面全体が覆われた第1の導体粒子が第1の下地に衝突し、前記第1の誘電体膜によって前記第1の表面全体が覆われた状態のまま前記第1の下地に固着して形成された第1の誘電体層と、
誘電体が占める体積の割合が、前記第1の誘電体層より高い第2の誘電体層とが積層された構造体。
【0198】
(付記2)
付記1に記載の構造体において、
前記第2の誘電体層を2層有し、
一方の前記第2の誘電体層が、前記第1の誘電体層と第1の主面の間に配置され、
他方の前記第2の誘電体層が、前記第1の誘電体層と第2の主面の間に配置されていることを、
特徴とする構造体。
【0199】
(付記3)
付記1又は2に記載の構造体において、
前記第2の誘電体層が、誘電体粒子が下地に衝突し、前記下地に固着して形成された層であることを、
特徴とする構造体。
【0200】
(付記4)
付記3に記載の構造体において、
前記第1の導体粒子の間に、誘電体粒子が存在することを、
特徴とする構造体。
【0201】
(付記5)
付記1又は2に記載の構造体において、
前記第2の誘電体層が、第2の誘電体膜によって第2の表面全体が覆われた第2の導体粒子が下地に衝突し、前記第2の誘電体膜によって前記第2の表面全体が覆われた状態のまま前記下地に固着して形成された層であることを、
特徴とする構造体。
【0202】
(付記6)
付記5に記載の構造体において、
前記第1の導体粒子の間及び前記第2の導体粒子の間に、誘電体粒子が存在し、
前記第2の誘電体層で前記誘電体粒子が占める体積の割合が、前記第1の誘電体層における前記割合より高いことを、
特徴とする構造体。
【0203】
(付記7)
付記5に記載の構造体において、
前記第2の誘電体膜が、前記第1の誘電体膜より厚いことを、
特徴とする構造体。
【0204】
(付記8)
付記4に記載の構造体において、
前記誘電体粒子の平均粒径が、前記第1の導体粒子の平均粒径よりも小さいことを、
特徴とする構造体。
【0205】
(付記9)
付記6に記載の構造体において、
前記誘電体粒子の平均粒径が、前記第1の導体粒子及び前記第2の導体粒子の平均粒径よりも小さいことを、
特徴とする構造体。
【0206】
(付記10)
付記1乃至4の何れか1項に記載の構造体において、
前記第1の誘電体膜が、前記第1の導体粒子の自然酸化膜より厚いことを、
特徴とする構造体。
【0207】
(付記11)
付記5乃至9の何れか1項に記載の構造体において、
前記第1の誘電体膜が、前記第1の導体粒子の自然酸化膜より厚く、
前記2の誘電体膜が、前記第2の導体粒子の自然酸化膜より厚いことを、
特徴とする構造体。
【0208】
(付記12)
付記1乃至11に何れか1項に記載の構造体を具備し、
前記構造体の第1の主面に第1の電極が形成され、前記構造体の第2の主面に、第2の電極が形成されているキャパシタ。
【0209】
(付記13)
付記12に記載のキャパシタにおいて、
前記第2の誘電体層が、
前記第1の誘電体層の側面及び前記第1の電極の表面に延在し、
側面及び前記第1の電極の表面を覆っていることを、
特徴とする構造体。
【0210】
(付記14)
第1の表面全体が誘電体によって形成された粒子が集合した第1の粉末をガスと共に噴射して加速し、第1の下地に前記粒子を衝突させ、前記第1の表面全体が誘電体で形成されたままの状態で前記粒子を、前記第1の下地に固着させる第1の固着工程と、
誘電体膜によって第2の表面全体が覆われた導体粒子が集合した第2の粉末をガスと共に噴射して加速し、第2の下地に前記導体粒子を衝突させ、前記第2の表面全体が誘電体に覆われたままの状態で前記導体粒子を、前記第2の下地に固着させる第2の固着工程と、
固着した前記粒子及び前記導体粒子によって形成される構造体を電極で挟む電極形成工程を具備し、
前記第1の粉末を形成する粒子全体が占める体積に対する誘電体部分の体積の割合が、前記第2の粉末を形成する粒子全体が占める体積に対する誘電体部分の体積の割合がより高いキャパシタの製造方法。
【0211】
(付記15)
付記14に記載の構造体のキャパシタにおいて、
前記第1の固着工程及び前記第2の固着工程を順次実施し、
更に、前記第1の固着工程を実施することを、
特徴とするキャパシタの製造方法。
【図面の簡単な説明】
【0212】
【図1】酸化アルミニウムによって表面が覆われたAl粉末を原料粉末とし、ガスデポジッション法によって形成された堆積膜の断面を透過電子顕微鏡によって観察した画像の特徴を説明する図面である。
【図2】誘電体膜で表面が覆われた、堆積前の導体粒子の断面構造を説明する模式図である。
【図3】酸化アルミニウムによって表面が覆われたAl粉末とチタン酸バリウム(BaTiO3)粒子の混合粉末を原料粉末とし、ガスデポジッション法によって形成された堆積膜の断面を透過電子顕微鏡によって観察した画像の特徴を説明する図面である。
【図4】図3を参照して説明した堆積膜を誘電率層とするキャパシタの構成を説明する概念図である。
【図5】キャパシタの耐圧とリーク電流の関係を説明する図である。
【図6】実施の形態のキャパシタの構成を説明する概念図である。
【図7】実施例1のキャパシタの構成を説明する断面図である。
【図8】実施例1のキャパシタフィルムの構成を説明する断面図である。
【図9】キャパシタフィルムの上半分の構成を説明する断面図である。
【図10】実施例1〜実施例3のキャパシタに係るデータを纏めた表である。
【図11】実施例4及び比較例等のキャパシタに係るデータを纏めた表である。
【図12】他のタイプのキャパシタフィルムの構成を説明する断面図である。
【図13】電極が剥離された状態の誘電体層(構造体)の断面図である。
【図14】ガスデポジッション法の手順を説明するフロー図である。
【図15】ガスデポジッション法に使用する成膜装置の構成図である。
【図16】キャパシタフィルムの上半分の構成を説明する断面図である(実施例2)。
【図17】表面が研磨された誘電体層の状態を説明する図である。
【図18】アルミニウム箔から剥離した構造体の上面及び下面を夫々研磨した状態を説明する図である。
【図19】キャパシタフィルムの上半分の構成を説明する断面図である(実施例3)。
【図20】キャパシタフィルムの上半分の構成を説明する断面図である(実施例4)。
【符号の説明】
【0213】
2・・・微粒子 4・・・導体粒子 6・・・誘電体
8・・・Al粒子 10・・・酸化アルミニウム
12・・・チタン酸バリウム微粒子
14・・・誘電体膜 16・・・(キャパシタの)誘電体層
18・・・キャパシタ 20・・・上部電極
22・・・下部電極 24・・・リーク電流
26・・・耐圧 28・・・電流パス
30・・・キャパシタ(実施の形態)
32・・・第1の誘電体層 34・・・第2の誘電体層
36・・・キャパシタ(実施例1)
38,39,40・・・キャパシタフィルム(実施例1) 41・・・金属箔
42・・・基板 43・・・外装ケース
44・・・第1の端子 45,46・・・配線
47・・・パッド 48・・・第1の電極
49・・・第2の電極 50・・・アルミニウム箔
51・・・第2の端子 52・・・誘電体層(実施例1)
51・・・第2の端子 54・・・導電性高分子 56・・・カーボン
58・・・銀ペースト 60・・・(キャパシタフィルムの)上部
62・・・第1の層(実施例1) 64・・・第2の層(実施例1)
65・・・第1の主面 66・・・第3の層(実施例1)
67・・・第2の主面 68・・・構造体(実施例1)
69・・・(他のタイプの)キャパシタフィルム
70・・・上面 72・・・下面 74・・・原料粉末
76・・・基板 78・・・成膜装置 80・・・成膜室
82・・・ステージ 84・・・振動器
86・・・メカニカルブースターポンプ
88・・・真空ポンプ 90・・・ガスボンベ
92・・・浮遊粉塵化容器 94・・・第1のバルブ
96・・・第2のバルブ 98・・・ノズル
100・・・キャパシタフィルム(実施例2)
102・・・誘電体層(実施例2) 104・・・第1の層(実施例2)
106・・・第2の層(実施例2) 108・・・第3の層(実施例2)
110・・・第4の層(実施例2) 112・・・第5の層(実施例2)
114・・・剥離面 116・・・構造体
118・・・上側の研磨面 120・・・下側の研磨面
122・・・キャパシタフィルム(実施例3)
124・・・第1の層(実施例3) 126・・・第2の層(実施例3)
128・・・第3の層(実施例3) 130・・・第4の層(実施例3)
132・・・第5の層(実施例3) 134・・・誘電体層(実施例3)
136・・・キャパシタフィルム(実施例4)
138・・・第1の層(実施例4) 140・・・第2の層(実施例4)
142・・・第3の層(実施例4) 144・・・第4の層(実施例4)
146・・・第5の層(実施例4) 148・・・誘電体層(実施例4)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の下地上に形成され、第1の誘電体膜によって表面全体が覆われた複数の第1の導体粒子を含み、前記複数の第1の導体粒子が前記第1の誘電体膜によって互いに隔離された第1の誘電体層と、
前記第1の誘電体層に積層され、前記第1の誘電体層より誘電体が占める体積の割合が高い第2の誘電体層と、
を含む構造体。
【請求項2】
請求項1に記載の構造体において、
前記第2の誘電体層を2つの層を有し、
前記第1の誘電体層は、前記第2の誘電体層の2つの層の間に配置されていることを特徴とする構造体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の構造体において、
前記第2の誘電体層は、第2の誘電体膜によって表面全体が覆われた複数の第2の導体粒子を含み、前記複数の第2の導体粒子が前記第2の誘電体膜によって互いに隔離され、
前記第1の導体粒子の間及び前記第2の導体粒子の間には誘電体粒子が存在し、
前記第2の誘電体層で前記誘電体粒子が占める体積の割合が、前記第1の誘電体層における前記割合より高いことを特徴とする構造体。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の構造体において、
前記第2の誘電体膜は、前記第1の誘電体膜より厚いことを特徴とする構造体。
【請求項5】
請求項1乃至4に何れか1項に記載の構造体を具備し、
前記構造体の第1の主面に第1の電極が形成され、前記構造体の第2の主面に、第2の電極が形成されているキャパシタ。
【請求項6】
請求項5に記載のキャパシタにおいて、
前記第2の誘電体層は、
前記第1の誘電体層の側面及び前記第1の電極の表面に延在し、前記側面及び前記第1の電極の表面を覆っていることを特徴とする構造体。
【請求項7】
表面全体が第1の誘電体によって形成された複数の粒子を含む第1の粉末をガスと共に噴射することにより、前記粒子を第1の下地に衝突させ、前記粒子の表面全体が前記第1の誘電体で形成されたままの状態で、前記第1の下地に前記粒子を固着させる第1の固着工程と、
表面全体が第2の誘電体によって覆われた複数の導体粒子を含む第2の粉末をガスと共に噴射することにより、前記導体粒子を第2の下地に衝突させ、前記導体粒子の表面全体が前記第2の誘電体に覆われたままの状態で、前記第2の下地に前記導体粒子を固着させる第2の固着工程と、
前記第1の下地に固着した前記粒子と、前記第2の下地に固着した前記導体粒子とによって形成される構造体を電極で挟む電極形成工程と、を具備し、
前記第1の粉末に含まれる粒子全体が占める体積に対する前記第1の誘電体の体積の割合が、前記第2の粉末に含まれる導体粒子全体が占める体積に対する前記第1の誘電体及び前記第2の誘電体の体積の割合がより高いキャパシタの製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載のキャパシタの製造方法において、
前記第1の固着工程後に前記第2の固着工程を実施し、
前記第2の固着工程後に更に前記第1の固着工程を実施することを、
特徴とするキャパシタの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2010−123631(P2010−123631A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−293792(P2008−293792)
【出願日】平成20年11月17日(2008.11.17)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「ナノテク・先端部材実用化研究開発/ナノキャピラリー構造を有する高容量電解コンデンサの研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】