説明

構造体及び建築物

【課題】制震機能を有する構造体及びこの構造体を用いて構築された建築物を提供する。
【解決手段】地震等によって、建築物10の各層が左右方向に水平変形したり、建築物10全体が曲げ変形したりすると、制震装置300の支承部352と支承部354との間隔が離れたり縮まったりする。これにより、第一アーム302と第二アーム312との連結部分に設けられた回転支承358と、対向角部112同士の接合部に設けられた支承部356と、間隔が変化しダンパー322の全長が伸縮して制震される。また、枠体100を別途工場等で大量生産することが可能であるので、骨格部200の製造コストを下げることができる。よって、製造コストを下げつつ制震機能を有する構造体400を製造することができる。また、優れた耐震性能を有する建築物10の建築コストを下げることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造体及びこの構造体を用いて構築された建築物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な建築構造として、柱と梁とを剛接合したラーメン構造が知られている。ラーメン構造は、鉄骨造、鉄筋コンクリート造、及び鉄骨鉄筋コンクリート造等の多くの建築物に採用されている。
【0003】
また、柱と梁とで構成される架構に、トグル機構を有する制震装置を配置して、耐震性能を向上させることが提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
また、規格化された構成部材が着脱自在に接続された外殻架構及び耐震架構で建築物の架構を構成することで、構成部材を再使用可能とすると共に、広い空間をローコストで構築できる建築物が提案されている(例えば、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−290774号公報
【特許文献2】特開2002−188207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、一般的な柱と梁とを剛接合したラーメン構造等の従来と異なる構造体、及びここの構造体を用いて、耐震性能に優れた建築物を建築することが試みられている。
【0007】
本発明は、上記を考慮し、従来と異なる構造体及びこの構造体を用いて構築された建築物を提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、多角形状の枠体が積み上げられて構成され、前記枠体の辺部同士又は前記枠体の角部同士が接合された骨格部と、辺部同士又は角部同士接合された一方の前記枠体における接合部位の隣の角部に回転可能に一端部が連結された第一アームと、接合された他方の前記枠体における前記接後部位の隣の角部に回転可能に一端部が連結されると共に他端部が前記第一アームの他端部と所定の角度を持って回転可能に連結された第二アームと、一端部が前記接合部位の端部に回転可能に連結されると共に他端部が前記第一アームと前記第二アームとの連結部位に回転可能に連結されたダンパーと、を有する制震装置と、を備えている。
【0009】
請求項1の発明では、枠体が積み上げられ接合された骨格部と制震装置とを備える従来(例えば、ラーメン構造)と異なる構造体となっている。そして、構造体は骨格部と制震装置とを備えているので、構造体自体が制震機能を有している。また、骨格部を構成する枠体を規格化し、別途工場等で大量生産することで、枠体、及び骨格部の製造コストを下げることができる。したがって、製造コストを下げつつ制震機能を有する構造体が製造できる。
【0010】
請求項2の発明は、奇数の辺部を持つ多角形状の枠体が積み上げられて構成され、前記枠体における水平に配置された辺部同士が接合されると共に、前記枠体の角部同士が接合された循環構造の骨格部と、前記角部同士が接合された一方の前記枠体における前記角部の隣の角部に回転可能に一端部が連結された第一アームと、前記角部同士が接合された他方の前記枠体における前記角部の隣の角部に回転可能に一端部が連結されると共に他端部が前記第一アームの他端部と所定の角度を持って回転可能に連結された第二アームと、一端部が前記角部同士の接合部位に回転可能に連結されると共に他端部が前記第一アームと前記第二アームとの連結部位に回転可能に連結されたダンパーと、を有する制震装置と、を備えている。
【0011】
請求項2の発明では、枠体が積み上げられ接合された循環構造の骨格部と制震装置とを備える従来(例えば、ラーメン構造)と異なる構造体となっている。そして、構造体は骨格部と制震装置とを備えているので、構造体自体が制震機能を有している。
【0012】
また、枠体が積み上げられて接合されることによって循環構造の骨格部が形成される。よって、骨格部を構成する枠体を規格化し、別途工場等で大量生産することで、枠体、及び骨格部の製造コストを下げることができる。したがって、製造コストを下げつつ制震機能を有する構造体が製造できる。
【0013】
請求項3の発明は、請求項2に記載の構造体において、前記枠体は、三角形状とされている。
【0014】
請求項3の発明では、枠体を三角形状とすることで、例えば、矩形状(架構)と比較して、枠体自体が水平変形(水平変位)しにくい形状となり、大きな水平耐力を有する。よって、骨格部及び構造体が大きな水平力を負担でき、水平変形(水平変位)に対して強い構造となる(大きな水平耐力を有する)。したがって、構造体は優れた制震性能を有する。
【0015】
なお、骨格部(構造体)全体が曲がる曲げ変形、例えば、角部同士の接合部位を中心とする回転(曲げ)は、制震装置によって抑制される。
【0016】
請求項4に記載の発明は、請求項2に記載の構造体において、前記枠体は、正五角形状とされている。
【0017】
請求項4の発明では、枠体を正五角形形状とすることで、例えば、矩形状(架構)と比較して、枠体自体が水平変形(水平変位)しにくい形状となり、大きな水平耐力を有する。これにより、骨格部及び構造体が大きな水平力を負担でき、水平変形(水平変位)に対して強い構造となる(大きな水平耐力を有する)。したがって、構造体は優れた制震性能を有する。
【0018】
請求項5の発明は、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の構造体において、前記枠体を構成する各辺部は、角部で回転可能に連結されている。
【0019】
請求項5の発明では、枠体を構成する各辺部は、角部で回転可能に連結されている。すなわち、枠体は柔構造となっている。よって、地震等の振動による構造体にかかる力が効果的に吸収される。
【0020】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の構造体を用いて構築されている。
【0021】
請求項6の発明では、制震機能を有する構造体を用いて構築さているので、耐震性能に優れた建築物となる。
【0022】
また、例えば、骨格部を構成する枠体を規格化し、別途工場等で大量生産することが可能であるので、建築物の建築コストを下げることができる。
【0023】
請求項7の発明は、請求項6に記載の建築物において、前記構造体の前記骨格部が軸力と水平力を負担している。
【0024】
請求項7の発明では、構造体の骨格部が建築物の軸力と水平力を負担すると共に構造体の制震装置が建築物を効果的に制震するので、耐震性能に優れた建築物となる。
【0025】
ここで、一般的には、ラーメン構造等の本発明が適用されていない従来の建築物(内部)における柱の配置位置(柱割り)や太さは、意匠設計よりも地震時における水平耐力の確保を目的として決定されることが多い。
【0026】
これに対して、本発明が適用された建築物は、前述したように、構造体の骨格部が軸力と水平力を負担すると共に構造体の制震装置が効果的に制震する。よって、本発明が適用された建築物は、柱の配置位置(柱割り)や太さによることなく、優れた耐震性能が得られる。したがって、建築物(内部)における柱の配置位置(柱割り)や太さの選択の自由度が広がり、この結果、意匠設計の自由度が広がる。
【発明の効果】
【0027】
請求項1に記載の発明によれば、従来(例えば、ラーメン構造)と異なる優れた制震機能を有する構造体を製造することができる。
【0028】
請求項2に記載の発明によれば、従来(例えば、ラーメン構造)と異なる優れた制震機能を有する構造体を製造することができる。
【0029】
請求項3に記載の発明によれば、大きな水平力を負担することができる優れた制震機能を有する構造体とすることができる。
【0030】
請求項4に記載の発明によれば、大きな水平力を負担することができる優れた制震機能を有する構造体とすることができる。
【0031】
請求項5の発明では、枠体を柔構造とすることで、構造体にかかる力を効果的に吸収することができる。
【0032】
請求項6の発明では、耐震性能に優れた建築物とすることができる。
【0033】
請求項7に記載の発明によれば、構造体の骨格部が建築物の軸力と水平力を負担すると共に構造体の制震装置が建築物を効果的に制震するので、耐震性能に優れた建築物となる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の第一実施形態の構造体を用いて構築された建築物の構造を示す斜視図である。
【図2】本発明の第一実施形態の構造体を示す正面図である。
【図3】図2に示す第一実施形態の構造体を構成する枠体を示す斜視図である。
【図4】図1に示す第一実施形態の構造体を用いて構築された建築物の構造を模式的に示す正面図である。
【図5】構造体(建築物)が曲げ変形した場合の制震装置の動作を模式的に示す説明図である。
【図6】本発明の第二実施形態の構造体を用いて構築された建築物の構造を示す斜視図である。
【図7】本発明の第二実施形態の構造体を示す正面図である。
【図8】図7に示す第一実施形態の構造体を構成する枠体を示す斜視図である。
【図9】図6に示す第一実施形態の構造体を用いて構築された建築物の構造を模式的に示
【図10】(A)に示すように、三角形と矩形状とで構成されている五角形の枠体を示す図であり、(B)は枠体の矩形状の部分が水平変形した状態を示す図である。
【図11】本発明の第一実施形態の構造体が間隔をあけずに並んで設けられた建築物の構造を模式的に示す正面図である。
【図12】第一実施形態の変形例としての建築物の構造を模式的に示す正面図である。
【図13】第二実施形態の第一変形例としての建築物の構造を模式的に示す正面図である。
【図14】第三実施形態の構造体を示す正面図である。
【図15】図14の構造体が間隔をあけずに並んで設けられた構造を示す正面図である。
【図16】第二実施形態の第二変形例としての構造体を構成する枠体を示す斜視図である。
【図17】図16の枠体を用いて構成された構造体を示す正面図である。
【図18】建築物(構造体)全体が曲げ変形した状態を模式的に図示した模式図である。
【図19】第四実施形態の構造体を示す正面図である。
【図20】第四実施形態の第一変形例の構造体を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
<第一実施形態>
まず、図1〜図5を用いて、本発明の第一実施形態を詳細に説明する。図1は第一実施形態の構造体を用いて構築された建築物の構造を示す斜視図である。図2は本発明の第一実施形態の構造体を示す正面図である。図3は、図2に示す第一実施形態の構造体を構成する枠体を示す斜視図である。図4は、図1に示す第一実施形態の構造体を用いて構築された建築物の構造を模式的に示す正面図である。図5は、構造体(建築物)が曲げ変形した場合の制震装置の動作を模式的に示す模式図である。なお、図3を除く各図における図面の上下方向が建築物の上下方向である。
【0036】
図3に示すように、枠体100は、H鋼材、ボックス鋼材、CFT(コンクリート充填鋼管)等によって構成され、枠形状が三角形状(本実施形態では、略正三角形)とされている。なお、本実施形態では、枠体100は、建築現場で溶接等によって組み立てるのではなく、予め工場などで製造され建築現場に搬入される(現場で溶接等によって組み立てもよい)。
【0037】
図1と図4とに示すように、建築物10は、本実施形態においては、基礎(図示略)の上に構築された複数階のビルとされている。また、建築物10は、骨格部200と制震装置300とを有する構造体400(図2も参照)を用いて構築されている。また、構造体400の骨格部200が建築物10の軸力と水平力を負担する構成となっている。なお、本実施形態では判りやすくするため、図4に示すようにI層〜III層の3階建てとされている。
【0038】
図2に示すように、構造体400を構成する骨格部200は、正立状態の枠体100Aと倒立状態の枠体100Bとを交互に積み上げて接合することによって構成されている。なお、以降、正立状態の枠体100Aを示す場合には符号の後にAを付し、倒立状態の枠体100Bを示す場合には符号の後にBを付する。両者を区別する必要がない場合は、A又はBを省略する。また、水平に配置された辺部を水平辺部102とし、水平辺部102と対向する角部を対向角部112とする(図3も参照)。
【0039】
そして、正立状態の枠体100Aの水平辺部102Aと倒立状態の枠体100Bの水平辺部102Bとが接合される共に、正立状態の枠体の対向角部112Aと倒立状態の枠体100Bの対向角部112Bとが接合されることによって、循環構造の骨格部200が構成されている(水平辺部102同士が接合されると共に対向角部112同士が接合される)。
【0040】
なお、水平辺部102同士及び対向角部112同士の接合方法はどのような方法であってもよい。例えば、溶接によって接合されてもよいし、ボルトとナットによって接合されていてもよい。
【0041】
骨格部200における対向角部112同士が接合された一対の枠体100A,100Bには、それぞれトグル機構を有する制震装置300が設けられている。
【0042】
図1と図4とに示すように、構造体400は、建築物10の各側壁部分に水平方向に間隔をあけて複数設けられている。なお、本実施形態においては、建築物10の側壁部の両端部に構造体400が設けられている。また、制震装置300は、各構造体400(骨格部200)における外側に設けられている。左右の構造体400は、制装置300の配置位置が異なり左右対称である以外は、同様の構成であるので、図の右側の構造体400を代表して説明する。
【0043】
図2に示すように、制震装置300は、第一アーム302、第二アーム312、及びダンパー322が主要な構成要素されている。正立状態の下側(一方)の枠体100Aにおける対向角部112Aの隣の角部114A設けられた支承部352に第一アーム302の一端部304が回転可能に連結されている。倒立状態の上側(他方)の枠体100Bにおける対向角部112Bの隣の角部114Bに設けられた支承部354に第二アーム312の一端部314が回転可能に連結されている。そして、これら第一アーム302の他端部306と第二アーム312の他端部316とが、回転可能に連結されている。
【0044】
なお、本実施形態においては、第一アーム302と第二アーム312とは、略同じ長さとされているが、これに限定されない。第一アーム302の方が第二アーム312よりも長くてもよいし、或いは逆に第二アーム312の方が第一アーム302よりも長くてもよい。
【0045】
また、本実施形態においては、第一アーム302の他端部306と第二アーム312の他端部316とが外側に向かって凸となるように所定の角度を持って連結されている。しかし、後述する第二実施形態のように、内側に向かって凸となるように所定の角度を持って連結されていてもよい(図7、図9参照)。
【0046】
ダンパー322の一端部324は、対向角部112Aと対向角部112Bとが接合された接合部に設けられた支承部356に回転可能に連結されている。また、ダンパー322の他端部326は、第一アーム302の他端部306と第二アーム312の他端部316との連結部に設けられた回転支承358に回転可能に連結されている。
【0047】
なお、回転支承358がない構造、すなわち、ダンパー322の他端部326、第一アーム302の他端部306、及び第二アーム312の他端部316を一箇所(一つのピン)で回転可能に連結した構造であってもよい。なお、ダンパー322の種類(構造)は特に限定されない、例えば、弾塑性ダンパー、粘弾性ダンパー、摩擦ダンパー、回転質量ダンパー等を用いることができる。或いは、複数のダンパーが組み合わされて構成されたダンパー(例えば、弾塑性ダンパーと粘弾性ダンパーとが組み合わされたダンパー等)であってもよい。
【0048】
また、本実施形態では、前述したように、対向角部112同士が接合された一対の枠体100A,100Bに一つ制震装置300が設けられている。しかし、後述する第二実施形態のように一対の枠体100A,100Bの左右にそれぞれ制震装置300が設けられていてもよい(図7、図9参照)。
【0049】
図1と図4とに示すように、構造体400の骨格部200を構成する枠体100の水平辺部102の端部間には、接続梁20が接合されている。よって、枠体100の水平辺部102と接続梁20とで、建築物10の梁が構成されている。なお、接続梁20と枠体100の水平辺部102との接合は、どのような接合方法であってもよい。溶接で接合されていてもよいし、ボルトとナットで接合されていてもよい。
【0050】
枠体100の水平辺部102と接続梁20とで構成された梁の内側に、梁22が配置されている。また、建築物10の角部は、梁22の端部同士が交差されている(内側に向けて矩形状に凹んだ形状とされている)。なお、この梁22が交差した角部に柱24を設けてもよい。
【0051】
また、梁22と枠体100の水平部102とが連結梁29で接続されている。更に梁22と接続梁20とが連結梁27で接続されている。なお、連結梁27及び連結梁29のいずれか一方のみを備える構造であってもよい。また、梁22の内側には、格子状に小梁(図示略)が組まれている。そして、この小梁の上に構造床(スラブ)(図示略)が作られている。なお、図示は省略しているが、外壁や内壁等の壁も設けられている。
【0052】
また、構造体400(骨格部200)における制震装置300が設けられていない側の、構造体400(骨格部200)間には、ワイヤー320が交差するように張られている。より詳しく説明すると、一方の構造体400の枠体100Aの角部116Aと他方の構造体400の斜め上方側に隣接する枠体100Bの角部116Bとがワイヤー320で連結されている。なお、図4では、図が煩雑になるのを避けるため、ワイヤー320の図示は省略されている。また、ワイヤー以外のもので連結してもよい。或いは、ワイヤーで連結されていなくてもよい。
【0053】
なお、上述したように、本実施形態においては、構造体400は各側壁部分に間隔をあけて二つ設けられているが、これに限定されない。一つで設けられていてもよいし、三つ以上設けられていてもよい。更に、建築物10の側壁部分以外、例えば、内部の壁部に設けられていてもよい。
【0054】
また、図11に示すように、構造体400(骨格部200)が間隔をあけずに並んで設けられていてもよい。この場合、枠体100の水平辺部102の左右の端部同士が接続されてもよい。
【0055】
つぎに本実施形態の作用について説明する。
【0056】
地震等によって、建築物10の各層が左右方向に水平変形したり、建築物10(構造体400)全体が曲げ変形したりすると(図18参照)、制震装置300の支承部352と支承部354との間隔が離れたり縮まったりする。これにより、第一アーム302と第二アーム312との連結部分に設けられた回転支承358と、対向角部112同士の接合部に設けられた支承部356と、の間隔が変化しダンパー322の全長が伸縮する。
【0057】
このとき、ダンパー322の軸方向の変位量(伸縮量)が増幅されて大きくなる。つまり、トグル機構によって、小さい変位×大きな力=大きな変位×小さな力という関係が成立する。よって、ダンパー322によって効果的に制震される。
【0058】
また、枠体100を三角形状とすることで、例えば、矩形状(架構)と比較して、枠体100自体が大きな水平力を負担することができる(三角形は水平変形(水平変位)しにくい形状)。よって、骨格部200は大きな水平力を負担することができ、水平変形(水平変位)に対して強い構造となる。したがって、構造体400は、優れた耐震性能を有する。
【0059】
ここで、図18に示すように、一例として建築物10(構造体400)全体が曲げ変形した場合を説明する。
【0060】
このような変形に対しては図5に示すように制震装置300によって、対向角部112同士の接合部位を中心とする回転(曲げ)が抑制されることによって制震される。具体的には、図5(A)に示すように、上側の枠体100Bが左側に傾くように回転した場合は、ダンパー322の全長が短縮し制震される。また、図5(B)に示すように、上側の枠体100Bが右側に傾くように回転した場合は、ダンパー322の全長が伸長し制震される。
【0061】
なお、図5、図18は、判りやすくするため、実際よりも極端に大きく変形(回転)させている。実際の地震時などにおける変形(回転)量は僅かである。
【0062】
このように、構造体400の骨格部200が建築物10の軸力と水平力を負担すると共に、トグル機構を有する制震装置300によって効果的に建築物10を制震する。よって、耐震性能に優れた建築物10となる。
【0063】
また、枠体100が積み上げられて接合されることによって循環構造の骨格部200が形成される。よって、骨格部200を構成する枠体100を規格化し、別途工場等で大量生産することで、枠体100の製造コストを下げることができる。つまり、骨格部200の製造コストを下げることができる。よって、製造コストを下げつつ制震機能を有する構造体400を製造することができる。
【0064】
また、このように低コストで製造される構造体400を用いて構築することによって、優れた耐震性能を有する建築物10の建築コストを下げることができる。
【0065】
更に前述したように、構造体400の骨格部200(構造体400)は建築物10の軸力と水平力を負担する。別の言い方をすると、建築物10の柱及び梁の一部又は全部を、骨格部200(構造体400)が構成する。よって、例えば、ラーメン構造の架構に制震装置を設ける従来の建築物とは全く異なる意匠を実現することができる。
【0066】
ここで、一般的には、ラーメン構造等の本発明が適用されていない従来の建築物(内部)における柱の配置位置(柱割り)や太さは、意匠設計よりも地震時における水平耐力の確保を目的として決定されることが多い。これに対して、本発明が適用された構造体400は、骨格部200が建築物10の軸力と水平力を負担すると共に構造体400の制震装置300が建築物10を効果的に制震するので、この構造体400を用いて構築された建築物10は、柱の配置位置(柱割り)や太さによることなく、大きな水平耐力(優れた耐震性能)が得られる。よって、建築物10(内部)における柱の配置位置(柱割り)や太さの選択の自由度が広がり、この結果、意匠設計の自由度が広がる。
【0067】
<第一実施形態の変形例>
つぎに、第一実施形態の変形例について図12を用いて説明する。図12は、第一実施形態の変形例の建築物19の構造を模式的に示す正面図である。前述したように、図4に示すように第一実施形態の建築物10は、I層〜III層の3階建てとされていたが、図12に示すように、第一実施形態の変形例の建築物19は、I層〜VI層の6階建とされている。また、第一実施形態と同一の部材には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0068】
建築物19は、構造体400の間に構造体401が配置されている(構造体が三つ並んで配置されている)。真中に配置された構造体401は、両端の構造体400と枠体100一つ分上下にずれて配置されている。そして、構造体401の水平辺部102同士が接合された端部と、両端の構造体400の角部112同士が接合された部位と、が接続梁21で接続されている。
【0069】
なお、同様に水平辺部102と接続梁21とで構成された梁の内側に、梁(小梁)(図示略)が配置され連結梁(図示略)で水平辺部102、接続梁21と接続されている。ままた、梁(小梁)の内側には、格子状に小梁(図示略)が組まれ、構造床(スラブ)(図示略)が設けられている。
【0070】
<第二実施形態>
つぎに、図6〜図9を用いて、本発明の第二実施形態について説明する。図6は第二実施形態の構造体を用いて構築された建築物の構造を示す斜視図である。図7は本発明の第二実施形態の構造体を示す正面図である。図8は、図7に示す第一実施形態の構造体を構成する枠体を示す斜視図である。図9は、図6に示す第一実施形態の構造体を用いて構築された建築物の構造を模式的に示す正面図である。なお、図8を除く各図における図面の上下方向が建築物の上下方向である。また、第一実施形態と同一の部材には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0071】
図8に示すように、枠体150は、H鋼材、ボックス鋼材、CFT(コンクリート充填鋼管)等によって構成され、枠形状が略正五角形状とされている。なお、本実施形態においても、枠体150は、建築現場で溶接等によって製造するのではなく、予め工場などで製造され建築現場に搬入される。
【0072】
図6と図9とに示すように、建築物11は、基礎(図示略)の上に構築された本実施形態では、I層〜III層(図11参照)の3階建てのビルとされている。また、建築物11は、骨格部250と制震装置300とを有する構造体450(図7も参照)を用いて構築されている。なお、本実施形態においても、構造体450の骨格部250が建築物11の軸力と水平力を負担する構成となっている。
【0073】
図7に示すように、構造体450を構成する骨格部250は、正立状態の枠体150Aと倒立状態の枠体150Bとを交互に積み上げて接合することによって構成されている。なお、以降、正立状態の枠体150Aを示す場合には符号の後にAを付し、倒立状態の枠体150Bを示す場合には符号の後にBを付する。両者を区別する必要がない場合は、A又はBを省略する。また、水平に配置された辺部を水平辺部152とし、水平辺部152と対向する角部を対向角部162とする(図8も参照)。
【0074】
そして、正立状態の枠体150Aの水平辺部152Aと倒立状態の枠体150Bの水平辺部152Bとが接合される共に、正立状態の枠体150Aの対向角部162Aと倒立状態の枠体150Bの対向角部162Bとが接合されることによって、循環構造の骨格部2500が構成されている(水平辺部152同士が接合されると共に対向角部162同士が接合される)。
【0075】
なお、水平辺部152同士及び対向角部162同士の接合方法はどのような方法であってもよい。例えば、溶接によって接合されてもよいし、ボルトとナットによって接合されていてもよい。
【0076】
骨格部250における対向角部162同士が接合された一対の枠体150A,150Bの左右にトグル機構を有する制震装置300が設けられている(制震装置300が二つ設けられている)。
【0077】
制震装置300は、第一アーム302、第二アーム312、及びダンパー322が主要な構成要素されている。
【0078】
一方の制震装置300は、正立状態の下側(一方)の枠体150Aにおける対向角部162Aの隣の角部164Aに設けられた支承部352に第一アーム302の一端部304が回転可能に連結されている。倒立状態の上側(他方)の枠体150Bにおける対向角部162Bの隣の角部164Bに設けられた支承部354に、第二アーム312の一端部314が回転可能に連結されている。そして、これら第一アーム302の他端部306と第二アーム312の他端部316とが、回転可能に連結されている。
【0079】
他方の制震装置300は、正立状態の下側(一方)の枠体150Aにおける対向角部162Aの隣の角部170Aに設けられた支承部352に第一アーム302の一端部304が回転可能に連結されている。倒立状態の上側(他方)の枠体150Bにおける対向角部162Bの隣の角部170Bに設けられた支承部354に、第二アーム312の一端部314が回転可能に連結されている。そして、これら第一アーム302の他端部306と第二アーム312の他端部316とが、回転可能に連結されている。
【0080】
なお、本実施形態においては、第一アーム302と第二アーム312とは、略同じ長さとされているが、これに限定されない。第一アーム302の方が第二アーム312よりも長くてもよいし、或いは逆に第二アーム312の方が第一アーム302よりも長くてもよい。
【0081】
また、本実施形態においては、第一アーム302の他端部306と第二アーム312の他端部316とが内側に向かって凸となるように所定の角度を持って連結されている。しかし、前述した第一実施形態のように、外側に向かって凸となるように所定の角度を持って連結されていてもよい(図1、図2、図4参照)。
【0082】
ダンパー322の一端部324は、対向角部162Aと対向角部162Bとが接合された接合部に設けられた支承部356に回転可能に連結されている。また、ダンパー322の他端部326は、第一アーム302の他端部306と第二アーム312の他端部316との連結部に設けられた回転支承358に回転可能に連結されている。
【0083】
なお、回転支承358がない構造、すなわち、ダンパー322の他端部326、第一アーム302の他端部306、及び第二アーム312の他端部316を一箇所(一つのピン)で回転可能に連結した構造であってもよい。
【0084】
なお、本実施形態では、前述したように対向角部112同士が接合された一対の枠体150A,150Bの左右に夫々、合計2つの制震装置300が設けられている。しかし、前述した第一実施形態のように一対の枠体100A,100Bの左右のいずれかにのみ制震装置300が設けられていてもよい(図1、図2、図4参照)。
【0085】
図6と図9とに示すように、本実施形態では、構造体450は、建築物11の側壁部分に水平方向に間隔をあけて複数設けられている。なお、構造体450は、間隔をあけずに並んで設けられていてもよい。また、間隔をあけずに並んで設けられている場合は、隣合う枠部150の角部同士が接合されていてもよい(枠体の形状は異なるが第一実施形態の図11を参照)。
【0086】
構造体450の骨格部250を構成する枠体150の水平辺部152の端部の間には、接続梁20が接合されている。よって、枠体150の水平辺部152と接続梁20とで、建築物11の梁が構成されている。なお、接続梁20と枠体150の水平辺部152との接合は、どのような接合方法であってもよい。溶接で接合されていてもよいし、ボルトとナットで接合されていてもよい。
【0087】
また、枠体150の水平辺部152と接続梁20とで構成された梁の間に、格子状に小梁(図示略)が組まれ構造床(スラブ)(図示略)が作られている。なお、図示は省略しているが、外壁や内壁等の壁も設けられている。
【0088】
図6に示すように、枠体150の水平辺部152と接続梁20とで構成された梁の内側に梁22が配置されている。また、建築物11の角部は、梁22の端部同士が交差されている(内側に向けて矩形状に凹んだ形状とされている)。なお、この角部の角部に柱24を設けてもよい。
【0089】
また、梁22と枠体150の水平部152とが連結梁27で接続されている。更に梁22と接続梁20とが連結梁29で接続されている。なお、連結梁27及び連結梁29のいずれか一方のみを備えていてもよい。また、梁22の内側には、格子状に小梁(図示略)が組まれている。そして、この小梁の上に構造床(スラブ)(図示略)が作られている。なお、図示は省略しているが、外壁や内壁等の壁も設けられている。
【0090】
つぎに本実施形態の作用について説明する。
【0091】
地震等によって、建築物11の各層が左右方向に水平変形したり、建築物11全体が曲げ変形したりすると、制震装置300の支承部352と支承部354との間隔が離れたり縮まったりする。これにより、第一アーム302と第二アーム302との連結部分に設けられた回転支承358と、対向角部112同士の接合部に設けられた支承部356と、の間隔が変化しダンパー322の全長が伸縮する。
【0092】
このとき、ダンパー322の軸方向の変位量(伸縮量)が増幅されて大きくなる。つまり、トグル機構によって、小さい変位×大きな力=大きな変位×小さな力という関係が成立する。よって、ダンパー322によって効果的に制震される。
【0093】
また、枠体150を略正五角形状とすることで、例えば、矩形状(架構)と比較して、枠体自体が水平変形(水平変位)しにくい構造となる。よって、骨格部200自体が水平変形(水平変位)に対して強い構造とされる。なお、図10(A)に示すように、五角形であっても、三角形902と矩形状904とで構成されている枠体900場合は、図10(B)矩形状904の部分が水平変形しやすいので、枠体自体が水平変形(水平変位)しにくい構造とする観点からは好ましくない。なお、図10の構造も本願発明に含まれる。
【0094】
また、対向角部152同士の接合部位を中心とする回転(曲げ)も、第一実施形態と同様に制震装置300によって抑制される(図5(A)と図5(B)を参照)。
【0095】
このように、構造体450の骨格部250が建築物11の軸力と水平力を負担すると共に、トグル機構を有する制震装置300によって効果的に建築物11を制震する。よって、耐震性能に優れた建築物10となる。
【0096】
また、骨格部250を構成する枠体150を規格化し、別途工場等で大量生産することで、骨格部250の製造コストを下げることができる。よって、製造コストを下げつつ制震機能を有する構造体450を製造することができると共に、優れた耐震性能を有する建築物10の建築コストを下げることができる。
【0097】
更に、建築物11の柱及び梁の一部又は全部を骨格部250が構成するので、例えば、ラーメン構造の架構に制震装置を設ける従来の建築物とは全く異なる意匠を実現することができる。また、本発明が適用された構造体450は、骨格部250が建築物11の軸力と水平力を負担すると共に構造体450の制震装置300が建築物11を効果的に制震するので、この構造体450を用いて構築された建築物11は、柱の配置位置(柱割り)や太さによることなく、優れた耐震性能が得られる。よって、建築物11(内部)における柱の配置位置(柱割り)や太さの選択の自由度が広がり、この結果、意匠設計の自由度が広がる。
【0098】
<第二実施形態の第一変形例>
つぎに、第二実施形態の第一変形例について図13を用いて説明する。図13は、第二実施形態の第一変形例の建築物17の構造を模式的に示す正面図である。前述したように、図9に示すように第二実施形態の建築物11は、I層〜III層の3階建てとされていたが、図13に示すように、第二実施形態の第二変形例の建築物17は、I層〜IX層の9階建とされている。なお、第二実施形態と同一の部材には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0099】
建築物17は、隣り合う構造体450を構成する枠体150の角部170B間が接続梁21で接合されると共に、角部170A間が接続梁23で接合されている。
【0100】
そして、接続梁21、接続梁23の内側に、梁(小梁)(図示略)が配置されていると共に、梁(小梁)の内側には、格子状に小梁(図示略)が組まれ、構造床(スラブ)(図示略)が作られている。また、各層(各階)の階高が同じとなるように枠体150の形状が調整されている。
【0101】
<第二実施形態の第二変形例>
ここで、上述したように、枠体自体が水平変形(水平変位)しにくい剛構造とする観点からは、水平方向に変形しやすい形状(例えば、図10参照)でない方が望ましい。
【0102】
しかし、枠体の形状を調整し、地震等の振動により構造体及び建築物にかかる力が効果的に吸収されるようにしてもよい。例えば、水平方向に変形しやすい形状(例えば、図10参照)とし、構造体及び建築物にかかる力が効果的に吸収されるよい。
【0103】
更に、枠体の各辺部を回転可能にピン(回転軸)で連結した柔構造とすることで、構造体及び建築物にかかる力が効果的(積極的)に吸収されるようにしてもよい。よって、つぎに、枠体の各辺部を回転可能にピンで連結し、効果的に力が吸収されることを目的とする構造体の一例を図16と図17を用いて説明する。なお、枠体の形状はどのような形状であってもよいが、ここでは、第二実施形態の略正五角形の枠体150の各辺部152、154、156、158を角部で回転可能にピン接合した構成で説明する(第二実施形態の第二変形例とする)。
【0104】
図16は、枠体151を示す斜視図である。図17は、枠体151を用いて構成された構造体451を示す正面図である。なお、第二実施形態と同一の部材には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0105】
図16と図17とに示すように、枠体151は、枠形状が略正五角形状とされている。図7に示すように、構造体451を構成する骨格部251は、正立状態の枠体151Aと倒立状態の枠体151Bとを交互に積み上げて接合することによって構成されている。
【0106】
そして、正立状態の枠体151Aの水平辺部152Aと倒立状態の枠体151Bの水平辺部152Bとが接合される共に、正立状態の枠体151Aの対向角部162Aと倒立状態の枠体151Bの対向角部162Bとが接合されることによって、循環構造の骨格部251が構成されている(水平辺部152同士が接合されると共に対向角部162同士が接合される)。
【0107】
図16と図17に示すように、枠体151は、各辺部152、154、156、158、160は、角部162、164、166、168、170でピン171によって、回転可能に連結されている。
【0108】
したがって、枠体151は柔構造となり、この結果、骨格部251も柔構造となる。よって、地震等の振動による構造体451(骨格部251)にかかる力が効果的に吸収され、その結果、構造体451を用いて構築された建築物(図示略)の耐震性能が向上される。
【0109】
ここで、枠体の形状は、三角形(第一実施形態)や五角形(第二実施形態)に限定されない。三角形や五角形以外の多角形状の枠体(但し、ラーメン構造を除く)であればよい。よって、つぎに正六角形の枠体と正方形の枠体との例について、説明する。なお、枠体の形状は、正多角形でなくてもよい(例えば、二等辺三角形や菱形、或いは、図10のような形状等)。
【0110】
<第三実施形態>
つぎに、略正六角形の枠体で構成された第三実施形態の構造体について、図14を用いて説明する。なお、図14は、略正六角形の枠体で構成された第三実施形態の構造体を示す正面図である。なお、第一実施形態及び第二実施形態と同一の部材には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0111】
図14に示すように、枠体550は、H鋼材、ボックス鋼材、CFT(コンクリート充填鋼管)等によって構成され、枠形状が略正六角形状とされている。構造体550を構成する骨格部650は、枠体700を交互に積み上げて接合することによって構成されている。なお、以降、便宜上、下側の枠体700を示す場合には符号の後にAを付し、上側の枠体700を示す場合には符号の後にBを付する。両者を区別する必要がない場合は、A又はBを省略する。また、水平に配置された辺部を水平辺部702、708とする。
【0112】
そして、枠体700Aの水平辺部702Aと枠体700Bの水平辺部708Bとが接合されることによって、循環構造の骨格部650が構成されている。
【0113】
骨格部650における水平辺部702A、708Bが接合された一対の枠体700A,700Bの左右にトグル機構を有する制震装置300が設けられている(制震装置300が二つ設けられている)。
【0114】
そして、第一実施形態及び第二実施形態と同様に、このような構成の構造体550を用いて、建築物(図示略)が構成される(例えば、構造体400、450が構造体550に置き換えられた構造)。
【0115】
なお、構造体550は各側壁部分に間隔をあけて設けられてもよいし、図15に示すように、構造体550(骨格部650)が間隔をあけずに並んで設けられていてもよい。この場合、隣合う枠体700の角部724と角部730が接続されてもよい。
【0116】
<第四実施形態>
つぎに、略正方形の枠体で構成された第四実施形態の構造体について、図19を用いて説明する。なお、図19は、略正方形の枠体で構成された第四実施形態の構造体を示す正面図である。なお、第一実施形態〜第三実施形態と同一の部材には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0117】
図19に示すように、枠体560は、H鋼材、ボックス鋼材、CFT(コンクリート充填鋼管)等によって構成され、枠形状が略正方形とされている。構造体560を構成する骨格部660は、枠体710を交互に積み上げて接合することによって構成されている。
【0118】
そして、枠体710の角部774と枠体710の角部770とが接合されることによって、循環構造の骨格部660が構成されている。
【0119】
骨格部660における一対の枠体710の左右にトグル機構を有する制震装置300が設けられている(制震装置300が二つ設けられている)。
【0120】
そして、第一実施形態及び第二実施形態と同様に、このような構成の構造体560を用いて、建築物(図示略)が構成される(例えば、構造体400、450、550に置き換えられた構造)。
【0121】
なお、構造体560は各側壁部分に間隔をあけて設けられてもよいし、構造体560(骨格部660)が間隔をあけずに並んで設けられていてもよい。この場合、隣合う枠体710の角部776と角部772が接続されてもよい。
【0122】
また、枠体660は、各辺部780、782、784、786は、角部770、772、774、776でピン171によって、回転可能に連結されている。
【0123】
したがって、枠体660は柔構造となり、この結果、骨格部660も柔構造となる。よって、地震等の振動による構造体560(骨格部660)にかかる力が効果的に吸収され、その結果、構造体560を用いて構築された建築物(図示略)の耐震性能が向上される。
【0124】
<第四実施形態の変形例>
つぎに、第四実施形態の変形例の構造体について、図20を用いて説明する。なお、図20は第四変形例の構造体を示す正面図である。なお、第四実施形態と同一の部材には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0125】
図20に示すように、枠体561は、H鋼材、ボックス鋼材、CFT(コンクリート充填鋼管)等によって構成され、枠形状が略正方形とされている。構造体561を構成する骨格部661は、枠体710を交互に積み上げてピン171で連結し接合することによって構成されている。
【0126】
つまり、上側の枠体710の角部774と下側の枠体710の角部770とが、ピン171によって連結されることによって、循環構造の骨格部661が構成されている。
【0127】
言い換えると、上側の枠体661の辺部782、784と下側の枠体661の780、786とが、一つのピン171によって、回転可能に連結されている。
【0128】
なお、本発明は変形例を含む上記実施形態に限定されない。
【0129】
例えば、ビル以外の建築物にも本発明を適用することができる。例えば、鉄塔などにも本発明を適用することができる。
【0130】
また、本発明は適用された構造体が建築物の水平力と軸力を主として負担しない構造であってもよい。特に枠体を柔構造とした場合は、建築物の水平力と軸力を構造体が負担しない(或いは主として負担しない)構造とすることで、主に水平力・軸力を主に負担する構造体(例えば、本発明が適用あれていない従来の柱と梁で構成された架構)と制震機能を主に発揮する構造体との両方を設け、機能分離を図ることができる。
【0131】
また、本発明が適用された剛構造の枠体で構成された構造体(第一実施形態や第二実施形態)と、本発明が適用された柔構造の枠体で構成された構造体(第二実施形態の第二変形例、第四実施形態、第四実施形態の第一変形例)と、の両方を用いて建築物を構築してもよい。
【0132】
更に、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0133】
10 建築物
11 建築物
17 建築物
19 建築物
20 接続梁
100 枠体
102 水平辺部(辺部)
112 対向角部(角部)
150 枠体
151 枠体
152 水平辺部(辺部)
162 対向角部(角部)
171 ピン(回転軸)
200 骨格部
250 骨格部
300 制震装置
302 第一アーム
312 第二アーム
320 ワイヤー
322 ダンパー
400 構造体
450 構造体
550 構造体
560 構造体
561 構造体
650 骨格部
660 骨格部
661 骨格部
700 枠体
710 枠体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多角形状の枠体が積み上げられて構成され、前記枠体の辺部同士又は前記枠体の角部同士が接合された骨格部と、
辺部同士又は角部同士が接合された一方の前記枠体における接合部位の隣の角部に回転可能に一端部が連結された第一アームと、接合された他方の前記枠体における前記接後部位の隣の角部に回転可能に一端部が連結されると共に他端部が前記第一アームの他端部と所定の角度を持って回転可能に連結された第二アームと、一端部が前記接合部位の端部に回転可能に連結されると共に他端部が前記第一アームと前記第二アームとの連結部位に回転可能に連結されたダンパーと、を有する制震装置と、
を備える構造体。
【請求項2】
奇数の辺部を持つ多角形状の枠体が積み上げられて構成され、前記枠体における水平に配置された辺部同士が接合されると共に、前記枠体の角部同士が接合された循環構造の骨格部と、
前記角部同士が接合された一方の前記枠体における前記角部の隣の角部に回転可能に一端部が連結された第一アームと、前記角部同士が接合された他方の前記枠体における前記角部の隣の角部に回転可能に一端部が連結されると共に他端部が前記第一アームの他端部と所定の角度を持って回転可能に連結された第二アームと、一端部が前記角部同士の接合部位に回転可能に連結されると共に他端部が前記第一アームと前記第二アームとの連結部位に回転可能に連結されたダンパーと、を有する制震装置と、
を備える構造体。
【請求項3】
前記枠体は、三角形状とされている請求項2に記載の構造体。
【請求項4】
前記枠体は、正五角形状とされている請求項2に記載の構造体。
【請求項5】
前記枠体を構成する各辺部は、角部で回転可能に連結されている請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の構造体。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の構造体を用いて構築された建築物。
【請求項7】
前記構造体の前記骨格部が軸力と水平力を負担する請求項6に記載の建築物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2010−180583(P2010−180583A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−23617(P2009−23617)
【出願日】平成21年2月4日(2009.2.4)
【出願人】(899000057)学校法人日本大学 (650)
【出願人】(504004083)株式会社i2S2 (28)
【Fターム(参考)】