説明

構造物の内部欠陥検出装置

【課題】 本発明は、作業者の勘に頼らない定量的な評価ができるとともに、検査に要するコストを大幅に低減でき、さらに従来の赤外線カメラを用いた検査方法を含めた非接触検査方法と比べて深い欠陥の検査ができることを課題とする。
【解決手段】 本発明の構造物の内部欠陥検出装置は、構造物に赤外線を照射して温度分布を測定することにより、構造物の内部欠陥を検出する構造物の内部欠陥検出装置において、前記構造物に前記赤外線を照射する前記赤外線照射手段は、照射強度分布特性を均一化する赤外線反射板と、前記赤外線反射板の角度を調整可能にする角度調整手段とを備え、波長1μm〜50μmの赤外線を前記構造物に均一に照射する構成である。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、特にトンネルや高架橋等のコンクリート製やモルタル製の構造物の内部欠陥検出装置に関する。
【0002】
【従来の技術】最近、トンネル等のコンクリート製やモルタル製の構造物の崩壊が社会問題化しており、この対策が急務となっている。従来、こうしたコンクリート等の構造物の劣化の予測や検査は、主として作業者がハンマー等を使って実施する打音検査法に頼っているのが現状である。
【0003】このような状況下で、従来から、赤外線カメラを利用した非接触検査方法が知られている。赤外線カメラを使用した方法には、検査対象に対して人工的に光を照射して加熱することなく、例えば太陽光等の光で自然に加熱された状態の下で赤外線カメラで観測するパッシブ法がある。この方法は、赤外線カメラで検査対象を撮影するだけで検査ができる便利な方法である。最近はこのパッシブ法に対して、検査対象に対して人工的に光を照射して加熱した後、赤外線カメラで観察するアクティブ法が用いられている。
【0004】このアクティブ法を用いて、太陽光の光が届かないトンネル内部のコンクリート検査技術がすでに実用化されている。この技術は、コンクリート等の構造物に光を照射する複数の光源と、光源により照射された構造物表面を撮影する赤外線カメラ及び可視カメラと、前記光源及びカメラを搭載する撮影車とを備え、内壁表面の温度差により内部の隙間つまり剥離箇所を検査する方式を採用している。
【0005】図3及び図4は従来の非接触検査方法を採用した検出装置を概略的に示す構成図である。図3は同検出装置の使用例を、図4は同検出装置のブロック図を夫々示している。図3及び図4に示すように、従来の非接触検出装置は、コンクリート等の構造物の壁面12に光31を照射するハロゲンランプ32と、このハロゲンランプ32に電気的に接続された電源33と、トンネルの壁面12のひびや汚れ等を撮影する可視カメラ19と、赤外線カメラ34と、これらカメラ19、34に夫々電気的に接続された画像蓄積装置35、36とを具備している。
【0006】また、赤外線カメラを使用した従来技術としては、特願平1−292255号記載の非破壊検査方法がある。この非破壊検査方法は、検査対象である構造部材にパルス状の熱負荷を与えて非定常温度場を測定する方法であり、パルス状の熱負荷の具体的な与え方としては、検査対象とする金属材料や複合材料などの構造部材に、直流、交流などのパルス状電流の通電、或いはパルス状レーザ光の照射を行うことが記載されている。
【0007】さらに、別の文献(阪上 他:サーモグラフィによる非破壊評価技術シンポジウム講演論文集 Vol.2 page.25−30 (1998))では、マイクロ波加熱やXeフラッシュランプによる加熱により、赤外線サーモグラフィで非破壊検査を行なおうとする試みがなされていることが記載されている。また、特願平3−130040号に記載されたコンクリート等の構造物の管理方法は、検査対象であるコンクリート等の構造物に赤外線を照射し、コンクリート面から反射する赤外線を検出して熱分布画像に表示してコンクリート内部の欠陥を検出する方法である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、打音検査法では、劣化の定量的な評価が困難であり、検査する作業者により評価が異なるという課題があった。また、検査に要する時間や人件費が膨大となり非経済的であるという課題もあった。
【0009】一方、赤外線カメラを利用した従来法では非接触検査方法では、深さが5mm程度と浅い欠陥しか検出できないという課題があった。また、パルス状電流の通電による方法では、検査対象が金属あるいは金属を含む複合材料では有効であるが、電流がほとんど流れないコンクリート等の構造物やセラミック製の構造物に対しては適用することは困難であるという課題があった。また、パルス状レーザの照射やXeフラッシュランプによるパルス的な加熱では、コンクリート等の構造物の表面近傍(5mm以下)に対してのみ有効であり、より深い部分の欠陥を検出することができないという課題があった。
【0010】さらに、マイクロ波加熱法は、水を含んだ亀裂に対しては有効であるが、亀裂部や剥離等の欠陥部に水分が存在しなければ原理的に適用不可能であり、適用対象が限定されるという課題があった。また、特願平3−130040号には、赤外線を照射し、コンクリート面から反射する赤外線を検出することを特徴とする方法の発明が記載されているが、この方法では反射赤外線の強度が強すぎて、赤外線加熱により生じるコンクリート内部欠陥に起因する微弱な赤外線を検出することが困難となる課題があった。さらに、従来技術の赤外線検査法では内部欠陥画像の取得が目的となっており、最終的な危険度評価に有効に機能していないという課題があった。
【0011】本発明は上述のような課題を解決するためになされたもので、作業者の勘に頼らない定量的な評価ができるとともに、検査に要するコストを大幅に低減でき、さらに従来の赤外線カメラを用いた検査方法を含めた非接触検査方法と比べて深い欠陥の検査が可能であり、得られた検査結果を最終的に必要とされる構造物の危険度評価に結びつけることが可能な構造物の内部欠陥検出装置を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明の構造物の内部欠陥検出装置は、構造物に赤外線を照射して温度分布を測定することにより、構造物の内部欠陥を検出する構造物の内部欠陥検出装置において、前記構造物に前記赤外線を照射する前記赤外線照射手段は、照射強度分布特性を均一化する赤外線反射板と、前記赤外線反射板の角度を調整可能にする角度調整手段とを備え、波長1μm〜50μmの赤外線を前記構造物に均一に照射する構成である。
【0013】また、前記赤外線照射手段から前記構造物までの距離に拘わらず、前記構造物の表面の単位面積当たりに照射する赤外線の総エネルギ量を一定にするために、前記赤外線照射手段から前記構造物までの距離に応じて赤外線照射時間を制御する照射時間制御手段を備える構成である。
【0014】また、本発明の他の形態に係る構造物の内部欠陥検出装置は、構造物に赤外線を照射して温度分布を測定することにより構造物の内部欠陥を検出する構造物の内部欠陥検出装置において、前記構造物に照射する赤外線の照射強度分布特性を均一化する赤外線反射板と、前記赤外線反射板の角度を調整可能にする角度調整手段とを有し、波長1μm〜50μmの赤外線を前記構造物に均一に照射する赤外線照射手段と、前記赤外線照射手段に照射された構造物を撮影して赤外画像データとして取り込む撮影手段と、前記赤外線照射手段及び前記撮影手段を移動可能に搭載する移動手段と、前記赤外画像データを蓄積し処理する画像データ処理手段と、前記赤外画像データと前記赤外画像データ処理手段から出力される欠陥規模分布データとに基づき、前記構造物の剥落の危険度を定量的に評価する剥落評価手段とを備える構成である。
【0015】また、前記欠陥規模分布データのうち、少なくとも欠陥の深さ分布データを解析することにより、前記構造物の剥落の危険度の経年変化を評価する構成である。
【0016】さらに、前記撮影手段で前記構造物のひび割れを撮影し、前記欠陥規模分布データを剥落の危険度に応じて色分けして重ねて表示し、前記構造物のひび割れと内部欠陥との関係を明確化することにより、剥落の危険度を定量的に評価する構成である。
【0017】
【発明の実施の形態】以下、本発明の構造物の内部欠陥検出装置について更に詳しく説明する。本発明において、撮影手段である赤外線カメラあるいは赤外線ラインセンサカメラによりコンクリート等の構造物の剥離を検査できるのは次のような理由による。即ち、例えば、コンクリート表面に照射された赤外線はコンクリート表面を加熱すると共に、コンクリート内部に浸透しコンクリート全体の温度を上昇させる。しかし、コンクリート内に剥離と考えられる隙間がある場合、空気が熱を遮断し、内部に剥離がある場合は、健全部(構造物の剥離や空隙がない部分)に比べコンクリート内部の温度は上昇する。この現象は、赤外線カメラで検出する場合は、赤外線カメラの検出波長領域が重要となる。
【0018】一般に、赤外線カメラは検出波長が3μm〜5μm領域と8μm〜12μm領域の2つの領域に大別される。3μm〜5μm領域の波長で検出した場合は、検出波長が短波長であるためコンクリート表面の温度のみを検出できる。一方、8μm〜12μm領域の波長で検出した場合は、検出波長が長波長であるため、コンクリート表面からの放射だけでなくコンクリート内部からの放射も間接的に検出するため、コンクリート内部の温度を検出することができる。
【0019】従って、コンクリート内部に存在する剥離を検出するための検出器として使用する赤外線カメラは、検出波長が8μm〜12μm領域あるいはこの検出波長に近い波長領域例えば7μm〜16μm領域等の赤外線カメラを使用することが必要不可欠となる。前述した赤外線カメラで検出することにより、コンクリート内部に剥離や空隙がある部分は、周辺の健全部との温度差により明確に識別することが可能となり、作業者の目では見ることのできない内部の隙間や空隙の非破壊検査が可能となる。
【0020】ここで、赤外線照射装置から構造物に赤外線を照射する際に、検査対象表面における赤外線の強度が不均一だと欠陥部の検出に支障をきたすので、本発明では、赤外線が検査対象である構造物に均一に照射されるように、赤外線照射装置の周囲に鏡面仕上げのステンレス板を設置し、検査対象の表面で赤外線が均一に加熱されるよう、ステンレス板の角度を微調整する機能を付加している。
【0021】また、検査時に検査対象と赤外線照射装置との距離が一定でない場合がある。例えば、トンネルを検査する場合に、トンネルの内壁の形状が変化することにより、検査対象と赤外線照射装置との距離が変化する。このような場合は、赤外線照射装置から検査対象までの距離に応じて検査対象の単位面積あたりに照射される赤外線の総エネルギを一定にするために、赤外線照射時間を制御することが必要となる。例えば、トンネル検査の場合には、検査車両の走行速度を検査対象までの距離に応じて変化させることにより、検査対象の単位面積あたりに照射される赤外線の総エネルギを一定にすることが可能となる。
【0022】赤外線カメラと可視カメラの画像データは画像データ処理装置で解析され、温度画像データは欠陥深さ分布データとして出力され、このデータを基に深さ分布形状や検出場所等を考慮して剥落の危険度を定量評価する。さらに、この危険度の定量的データを過去に計測したデータと比較することにより、剥落の危険度の予測性能を向上させ、さらに、定量的な危険度表示方法として、検査対象の可視画像上に内部欠陥形状を剥落の危険度に応じて色分けして重ねて表示し、ひび割れと内部欠陥との関係を明確化するという表示方法を用いた。
【0023】
【実施例】以下、本発明の実施例について図面を参照して説明する。
(実施例1)図1は本発明の実施例1に係るコンクリート等の構造物検出装置を概念的に示す構成図である。図中の符号11で示されるものは、赤外線をコンクリート等の構造物の壁面12に照射する赤外線照射手段としての赤外線照射装置である。この赤外線照射装置11には、電源13が電気的に接続されている。赤外線照射装置11は、1μm〜20μmの波長領域で放射する光源を使用している。赤外線照射装置11の周囲にはステンレス製の赤外線反射板としての反射板14が設置されている。
【0024】これらの反射板は、反射角度を可変調整できる反射板角度可変装置15と電気的に接続されており、検査対象である構造物の形状や検査距離に応じて角度を変化させることのできる角度調整手段としての調整機構を有している。反射板14の角度を検査対象の形状に応じて調整することにより、検査対象で赤外線照射を均一化することができる。
【0025】検査対象の表面温度は、撮影手段としての赤外線ラインセンサカメラ16で計測する。この赤外線ラインセンサカメラ16には、カメラドライバー17、画像データ蓄積装置18が電気的に接続されている。赤外線ラインセンサカメラ16で取り込まれた赤外画像データは、画像データ蓄積装置18に記憶保持されるように構成されている。ここで、赤外線カメラの検出波長は8μm〜13μm領域である。
【0026】こうした構成の内部欠陥検出装置において、赤外線を赤外線照射装置11からコンクリート等の構造物の壁面12に照射し、赤外線照射後の画像を赤外画像データとして赤外線ラインセンサカメラ16で検出する。この赤外画像データを解析し、健全部との温度差からコンクリート内部の剥離や空隙等の欠陥状況の有無を検出する。この検出結果は後述する欠陥規模分布データの作成に用いられる。
【0027】一方、赤外画像データと共に検査対象の可視画像も可視カメラ19で計測する。可視カメラ観測部の照明20も搭載している。可視カメラ19で得られた可視画像データは、赤外線ラインセンサカメラ16と同様に、電気的に接続された画像データ蓄積装置18に記憶保持されるように構成されている。このように、赤外画像データおよび可視画像データは、共に画像データとして画像データ蓄積装置18に記憶保持されるものである。
【0028】トンネルの形状が変化し、赤外線照射装置と検査対象間の距離が変化した場合には、一定速度で検査すると赤外線照射装置の検査走行方向の長さが一定であるため、赤外線照射装置と検査対象間の距離が長い場合は赤外線照射装置により照射される赤外線の総エネルギはより低くなってしまう。そこで、赤外線照射装置と検査対象間の距離に拘わらず、赤外線照射装置から検査対象までの距離に応じて検査対象の単位面積あたりに照射される赤外線の総エネルギを一定にするために、赤外線照射時間を制御する。具体的には、検査車両の走行速度を車両速度制御装置21で検査対象までの距離に応じて変化させることにより、検査対象の単位面積当たりに照射される赤外線の総エネルギ量を一定にする。
【0029】この発明の実施例1に係る構造物の内部欠陥検出装置によれば、赤外線を赤外線照射装置11からコンクリート壁面12に照射し、照射後の画像を赤外線ラインセンサカメラ16で検出する構成とすることにより、赤外画像データに基づいて欠陥規模分布データ(赤外線画像データ、可視画像データ、危険度の定量的データ等)を得ることができ、以下に述べる効果を奏する。
(1)従来の打音検査法と比べ、非接触で高速な検査が可能であり、人の勘に頼らない定量的な評価ができる。
(2)従来の打音検査法と比べ、検査に要するコストを大幅に低減できる。
(3)従来の非接触検査方法の場合、5mm程度しか検出できなかったが、本実施例1の場合、最大50mmの深さまで検査が可能となった。
(4)赤外線照射装置周辺に反射板を設置し、検査場所に応じて反射板の角度を変化させて均一な加熱を実現することができ、欠陥検査精度が向上した。
【0030】(実施例2)図2は、本発明の実施例2に係る構造物の内部欠陥検出装置を概略的に示す構成図である。本発明の実施例2に係る構造物の内部欠陥検出装置は、前記実施例1で得られた欠陥規模分布データをシステム化した実施例である。
【0031】画像データ蓄積装置18からオンラインまたはオフラインで供給される温度分布データ22を、温度分布データ処理装置23で処理することにより、内部欠陥深さ分布データ24として出力する。この温度分布データ処理装置23では、コンクリート等の構造物に健全部で得られた赤外線画像の温度分布データを用いて、健全部の平均温度を導出し、この温度を基準温度として温度差に応じて深さを決定する手法を用いている。
【0032】この内部欠陥深さ分布データ24をさらに、危険度評価装置25で評価する。評価は、内部欠陥深さ分布データ24の形状と構造物における欠陥の場所に基づいて行う。具体的には、施工時において粗骨材の隙間にセメント等が流れ込まずに硬化したことにより発生する空隙部が部分的に存在するジャンカ部等の不良部については、内部欠陥深さ分布データ24にジャンカ部特有のデータが得られるため、危険度評価が低いと判定することができる。
【0033】本発明の実施例2に係る構造物の内部欠陥検出装置では、こういった内部欠陥深さ分布データ24の形状からだけでなく、過去の欠陥深さデータと危険度との相関をまとめたデータベース26を参照することにより、危険度評価の精度を向上させることができる。このようにして、危険度評価装置25により内部欠陥深さ分布データ24は変状展開図27として、可視画像データの表示画面上に欠陥の形状を色分けして表示し、ひび割れと内部欠陥との関係を明確化することにより危険度を分かりやすく表示することができる。
【0034】本発明の実施例2に係る構造物の内部欠陥検出装置は、実施例1に示した効果に加え以下の効果を奏する。
(1)赤外線画像により温度差分布を解析し、欠陥の深さを決定するデータ処理装置により剥落の危険度を定量的に評価することが可能となった。
(2)さらに、この剥落の危険度の定量データを過去の赤外線検査結果と比較することにより剥落の危険度の予測性能が向上した。
(3)定量的な危険度表示方法として、検査対象の可視画像上に内部欠陥形状を剥落の危険度に応じて色分けして表示する手法を用いることにより、従来法に比べ剥落の危険度を分かりやすく表示することが可能となった。
【0035】
【発明の効果】本発明の構造物の内部欠陥検出装置は、構造物に赤外線を照射して温度分布を測定することにより、構造物の内部欠陥を検出する構造物の内部欠陥検出装置において、前記構造物に前記赤外線を照射する前記赤外線照射手段は、照射強度分布特性を均一化する赤外線反射板と、前記赤外線反射板の角度を調整可能にする角度調整手段とを備え、波長1μm〜50μmの赤外線を前記構造物に均一に照射するので、検査対象である構造物に赤外線を照射して赤外画像データを検出することにより、作業者の勘に頼らない定量的な評価ができるとともに、検査に要するコストを大幅に低減でき、さらに従来の非接触検査方法では深さ5mm程度が限度であったが、この方法により深さ50mm程度までの深い欠陥の検査ができる。また、トンネルや高架橋やマンション等のコンクリート等の構造物、モルタル構造物の検査に適した構造物の内部欠陥検出装置を提供することができる。また、検査対象に対して斜めから角度をつけて赤外線を照射することが可能となり、赤外線光源を大きく移動することなく赤外線を検査対象に均一に照射することが可能となる。さらに、赤外線照射装置周辺に反射板を設置し、検査場所に応じて反射板の角度を変化させて均一な加熱を実現することができ、欠陥検査精度が向上した。
【0036】また、前記赤外線照射手段から前記構造物までの距離に拘わらず、前記構造物の表面の単位面積当たりに照射する赤外線の総エネルギ量を一定にするために、前記赤外線照射手段から前記構造物までの距離に応じて赤外線照射時間を制御する照射時間制御手段を備えるので、前記赤外線照射手段から前記構造物までの距離が変化しても構造物に赤外線を均一に照射することができ、検出精度の非常に高い構造物の内部欠陥検出装置を提供することができる。
【0037】また、本発明の他の形態に係る構造物の内部欠陥検出装置は、構造物に赤外線を照射して温度分布を測定することにより構造物の内部欠陥を検出する構造物の内部欠陥検出装置において、前記構造物に照射する赤外線の照射強度分布特性を均一化する赤外線反射板と、前記赤外線反射板の角度を調整可能にする角度調整手段とを有し、波長1μm〜50μmの赤外線を前記構造物に均一に照射する赤外線照射手段と、前記赤外線照射手段に照射された構造物を撮影して赤外画像データとして取り込む撮影手段と、前記赤外線照射手段及び前記撮影手段を移動可能に搭載する移動手段と、前記赤外画像データを蓄積し処理する画像データ処理手段と、前記赤外画像データと前記赤外画像データ処理手段から出力される欠陥規模分布データとに基づき、前記構造物の剥落の危険度を定量的に評価する剥落評価手段とを備えるので、赤外線画像により温度差分布を解析し、欠陥の深さを決定するデータ処理装置により剥落の危険度を定量的に評価することが可能となり、この剥落の危険度の定量データを過去の赤外線検査結果と比較することにより剥落の危険度の予測性能を向上させた構造物の内部欠陥検出装置を提供することができる。また、定量的な危険度表示方法として、検査対象の可視画像上に内部欠陥形状を剥落の危険度に応じて色分けして表示する手法を用いることにより、従来法に比べ剥落の危険度を分かりやすく表示することができる構造物の内部欠陥検出装置を提供することができる。
【0038】また、前記欠陥規模分布データのうち、少なくとも欠陥の深さ分布データを解析することにより、前記構造物の剥落の危険度の経年変化を評価するので、剥落の危険度を定量評価できる構造物の内部欠陥検出装置を提供することができる。
【0039】さらに、前記撮影手段で前記構造物のひび割れを撮影し、前記欠陥規模分布データを剥落の危険度に応じて色分けして重ねて表示し、前記構造物のひび割れと内部欠陥との関係を明確化することにより、剥落の危険度を定量的に評価するので、欠陥規模分布データを定量化し、さらにこれを視覚的に把握することのできる構造物の内部欠陥検出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1に係るコンクリート等の構造物の内部欠陥の有無を検出する装置の具体的な装置構成を示す概念図である。
【図2】本発明の実施例2に係るコンクリート等の構造物の内部欠陥の有無及び欠陥の深さを検出する構造物内部欠陥検出装置の危険度判定システムの具体的な装置構成を示す概念図。
【図3】従来の構造物の内部欠陥検出装置の具体的な使用例を示す説明図。
【図4】従来の構造物の内部欠陥検出装置のブロック図。
【符号の説明】
11 赤外線照射装置
12 コンクリート構造物の壁面
12 壁面
13 電源
14 反射板
15 反射板角度可変装置
16 赤外線ラインセンサカメラ
17 カメラドライバー
18 画像データ蓄積装置
19 可視カメラ
20 照明
21 車両速度制御装置
22 温度分布データ
23 温度分布データ処理装置
24 内部欠陥深さ分布データ
25 危険度評価装置
26 データベース
27 変状展開図
31 光
32 ハロゲンランプ
33 電源
34 赤外線カメラ
35 画像蓄積装置(可視画像用)
36 画像蓄積装置(赤外画像用)

【特許請求の範囲】
【請求項1】 構造物に赤外線を照射して温度分布を測定することにより、構造物の内部欠陥を検出する構造物の内部欠陥検出装置において、前記構造物に前記赤外線を照射する前記赤外線照射手段は、照射強度分布特性を均一化する赤外線反射板と、前記赤外線反射板の角度を調整可能にする角度調整手段とを備え、波長1μm〜50μmの赤外線を前記構造物に均一に照射することを特徴とする構造物の内部欠陥検出装置。
【請求項2】 前記赤外線照射手段から前記構造物までの距離に拘わらず前記構造物の表面の単位面積当たりに照射する赤外線の総エネルギ量を一定にするために、前記赤外線照射手段から前記構造物までの距離に応じて赤外線照射時間を制御する照射時間制御手段を備えることを特徴とする請求項1記載の構造物の内部欠陥検出装置。
【請求項3】 構造物に赤外線を照射して温度分布を測定することにより構造物の内部欠陥を検出する構造物の内部欠陥検出装置において、前記構造物に照射する赤外線の照射強度分布特性を均一化する赤外線反射板と、前記赤外線反射板の角度を調整可能にする角度調整手段とを有し、波長1μm〜50μmの赤外線を前記構造物に均一に照射する赤外線照射手段と、前記赤外線照射手段に照射された構造物を撮影して赤外画像データとして取り込む撮影手段と、前記赤外線照射手段及び前記撮影手段を移動可能に搭載する移動手段と、前記赤外画像データを蓄積し処理する画像データ処理手段と、前記赤外画像データと前記赤外画像データ処理手段から出力される欠陥規模分布データとに基づき、前記構造物の剥落の危険度を定量的に評価する剥落評価手段とを備えることを特徴とするコンクリート等の構造物の内部欠陥検出装置。
【請求項4】 前記欠陥規模分布データのうち、少なくとも欠陥の深さ分布データを解析することにより、前記構造物の剥落の危険度の経年変化を評価することを特徴とする請求項3記載の構造物の内部欠陥検出装置。
【請求項5】 前記撮影手段で前記構造物のひび割れを撮影し、前記欠陥規模分布データを剥落の危険度に応じて色分けして重ねて表示し、前記構造物のひび割れと内部欠陥との関係を明確化することにより、剥落の危険度を定量的に評価することを特徴とする請求項4記載の構造物の内部欠陥検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2003−185608(P2003−185608A)
【公開日】平成15年7月3日(2003.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−385776(P2001−385776)
【出願日】平成13年12月19日(2001.12.19)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【出願人】(000215925)帝都高速度交通営団 (4)
【出願人】(000173784)財団法人鉄道総合技術研究所 (1,666)
【Fターム(参考)】