説明

構造物の接合構造

【課題】第1部材や第2部材の疲労強度を向上できる構造物の接合構造を提供すること。
【解決手段】第1フランジ2a及びウェブ2bを有する第1部材2と、その第1部材2の第1フランジ2aと第2部材101との間で接合部3が形成される構造物1の接合構造であって、第1部材2の第1フランジ2aの長手方向の縁部2eから接合部3に向かってスリット4が形成される。スリット4により第1フランジ2aの剛性が低下し、第2部材101の変形に応じ、第1フランジ2aはある程度の範囲で倣うことができる。その結果、第2部材101の変形に伴う接合部3の接合端部3aにおける応力集中が緩和される。これにより、第1部材2や第2部材101の疲労強度を向上できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は構造物の接合構造に関し、特に、第1部材や第2部材の疲労強度を向上できる構造物の接合構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、航空機の胴体、鉄道車両の構体、船舶の船体などを構成する構造物の中には、板状の外板と、その外板の背面に接合されるフレームとを備えて構成されるものがある(特許文献1)。図3及び図4を参照して、特許文献1に開示される従来の構造物の接合構造について説明する。まず、図3を参照して構造物100の一例について説明する。図3は従来の構造物100の正面図である。
【0003】
図3に示すように、構造物100は、複数枚の板状の外板101と、その外板101の背面に接合されるフレーム102とを備えて箱形状に構成されている。外板101は押出形材により構成されており、J型の断面を有する複数の縦通材101aが背面側に突出している。縦通材101aは、外板101の長手方向に沿って外板101と一体に形成されている。外板101は長手方向の縁部が互いに接続され、接続された縁部の内側にガセット(図示せず)が配設されている。
【0004】
フレーム102は、第1フランジ102a及びウェブ102b並びに第2フランジ102cを備えて構成されており、第1フランジ102aが外板101の背面に接合されている。フレーム102は、縦通材101aの位置に対応して、ウェブ102bの外板101側の一部および第1フランジ102aに切欠部102dが形成されている。
【0005】
次に図4を参照して、フレーム102と外板101とを備える構造物100の接合構造について説明する。なお、以下の説明では、フランジ(第1フランジ102a及び第2フランジ102c)及びウェブ102bを備えるフレーム102を「第1部材」と称し、外板101を「第2部材」と称する。図4(a)は従来の構造物100の接合構造を示す図3のIVa−IVa線における第1部材(フレーム)102及び第2部材(外板)101の断面図であり、図4(b)は図4(a)のIVb方向から視た第1部材102の平面図である。
【0006】
図4(a)に示すように、第1部材102はZ型の断面を有しており、第2部材101と重なり合う第1フランジ102aと、その第1フランジ102aから立設されるウェブ102bと、そのウェブ102bの上縁から水平方向に第1フランジ102aの反対側に延設される第2フランジ102cとを備えている。第1フランジ102aは、長手方向が切欠部102dにより分断されている。第1フランジ102aと第2部材101との間に接合部103が形成され、第1フランジ102aと第2部材101とは結合される。
【0007】
接合部103は、第1フランジ102aの長手方向に沿って線状に形成されており、構造物100においては、摩擦撹拌接合によって形成されている。このように接合部103が形成されて第1部材102と第2部材101とが結合されることにより、第2部材101は引張力を、第1部材102は第2部材101に作用する曲げ荷重からの圧縮力を負担し、構造物100の機械的強度が確保される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−269197号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら上記従来の構造物の接合構造では、第2部材101の変形に伴う応力が、接合部103の接合端部103aに集中し、接合端部103aを起点として第1部材102や第2部材101に疲労破壊が発生するという問題点があった。
【0010】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、第1部材や第2部材の疲労強度を向上できる構造物の接合構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0011】
この目的を達成するために、請求項1記載の構造物の接合構造によれば、第1部材のフランジと第2部材との間で線状または点状の接合部が形成されるものであり、第1部材のフランジの長手方向端部と所定の間隔をあけてフランジの長手方向の縁部から線状の接合部または点状の接合部を結ぶ接合線に向かってスリットが形成される。スリットによりフランジの剛性が低下し、第2部材の変形に伴う接合部の応力集中が緩和される。これにより、第1部材や第2部材の疲労強度を向上できる効果がある。
【0012】
請求項2記載の構造物の接合構造によれば、スリットは、フランジに複数本形成されるので、フランジの剛性を効果的に低下させることができる。これにより、接合部への応力集中の緩和効果を高めることができ、請求項1の効果に加え、第1部材や第2部材の疲労強度をさらに向上できる効果がある。
【0013】
請求項3記載の構造物の接合構造によれば、スリットは、接合線または線状の接合部の両端の接合端部からフランジの長手方向の縁部に下ろした2本の垂線の間に形成されている。その結果、スリットをフランジの剛性低下に寄与させると共に、スリットが疲労破壊の起点となることを防止できる。これにより、請求項1又は2の効果に加え、スリットが形成されることによる強度低下を防止できる効果がある。
【0014】
請求項4記載の構造物の接合構造によれば、スリットは、接合線または線状の接合部と非交差の状態で形成されているので、スリットをフランジの剛性低下に寄与させると共に、スリットが疲労破壊の起点となることを防止できる。これにより、請求項1から3のいずれかの効果に加え、スリットが形成されることによる強度低下を防止できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(a)は第1実施の形態における構造物の接合構造を示す第1部材および第2部材の断面図であり、(b)は図1(a)のIb方向から視た第1部材の平面図である。
【図2】(a)は第2実施の形態における構造物の接合構造を示す第1部材および第2部材の断面図であり、(b)は図2(a)のIIb方向から視た第1部材の平面図である。
【図3】従来の構造物の正面図である。
【図4】(a)は従来の構造物の接合構造を示す図3のIVa−IVa線における第1部材および第2部材の断面図であり、(b)は図4(a)のIVb方向から視た第1部材の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、添付図面を参照して説明する。まず、図1(a)及び図1(b)を参照して、本発明の第1実施の形態における構造物1の接合構造について説明する。図1(a)は第1実施の形態における構造物1の接合構造を示す第1部材2及び第2部材101の断面図であり、図1(b)は図1(a)のIb方向から視た第1部材2の平面図である。なお、第1実施の形態と同一の従来の部分は、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
【0017】
図1(a)に示すように、第1部材2はZ型の断面を有しており、第2部材101と重なり合う第1フランジ2aと、その第1フランジ2aから立設されるウェブ2bと、そのウェブ2bの上縁から第1フランジ2aと略平行して第1フランジ2aの反対側に延設される第2フランジ2cとを備えている。
【0018】
図1(b)に示すように、第1フランジ2aは、縦通材101a(図3参照)の位置に対応して切欠部2dが形成されている。接合部3は、第1フランジ2aと第2部材101との間で、第1フランジ2aの長手方向に沿って線状に形成されている。接合部3により第1フランジ2aと第2部材101とは結合される。本実施の形態では、接合部3は摩擦撹拌接合により形成されている。
【0019】
第1フランジ2aに形成された切欠部2d(第1フランジ2aの長手方向端部)と所定の間隔をあけて、第1フランジ2aの長手方向の縁部2eから線状の接合部3に向かってスリット4が形成されている。スリット4により第1フランジ2aの剛性を低下させ、第2部材101の変形に伴い、ある程度の範囲で第1フランジ2aを倣うようにできる。その結果、接合部3の両端の接合端部3aに生じる応力集中が緩和される。これにより、第1部材2や第2部材101の疲労強度を向上できる。
【0020】
スリット4は、線状の接合部3の両端の接合端部3aから第1フランジ2aの長手方向の縁部2eに下ろした2本の垂線Pの間に形成されている。これにより、スリット4を第1フランジ2aの剛性低下に寄与させると共に、スリット4が疲労破壊の起点となることを防止できる。その結果、スリット4が形成されることによる強度低下を防止できる。
【0021】
本実施の形態では、スリット4は複数本形成されており、特に、3本のスリット4が形成されている。その内の1本はスリット4の先端部4aが接合部3の長手方向の略中央に位置し、2本は先端部4aが接合端部3aの近傍に位置している。スリット4が複数本形成されているので、第1フランジ2aの剛性を効果的に低下させることができる。これにより接合部3の接合端部3aへの応力集中の緩和効果を高めることができ、疲労強度をさらに向上できる。
【0022】
また、3本のスリット4が接合部3の長手方向の接合端部3aの近傍と、接合部3の長手方向の略中央に形成されているので、第1フランジ2aの長手方向に亘って第1フランジ2aの剛性の低下をほぼ均等にできる。その結果、接合部3の接合端部3aへの応力集中をさらに効果的に軽減できる。
【0023】
スリット4は、線状の接合部3と非交差の状態で形成されている。具体的には、スリット4の先端部4aが接合部3に接触することなく近接している。これによりスリット4によって接合部3の一部に欠損が生じることが防止され、接合部3の強度が低下することを防止できる。
【0024】
また、スリット4が接合部3と交差し、先端部4aが接合部3の幅方向の中心線Cを超えると、スリット4の先端部4aに応力集中が生じる。その結果、スリット4の先端部4aを起点として疲労破壊が生じ易くなる。これを防止するため、スリット4を接合部3と非交差の状態で形成することにより、スリット4の先端部4aが疲労破壊の起点となることを防止できる。
【0025】
具体的には、接合部3の幅方向の中心線Cとスリット4の先端部4aとの距離は、接合部3を形成する手段(例えば、摩擦撹拌接合の回転ツールのピン径など)にもよるが、5〜20mmに形成される。5mmより短くなるにつれ接合部3の欠損が生じ易くなり、接合部3の強度が低下する傾向がみられる。20mmより長くなるにつれ第1フランジ2aの剛性の低下効果が低減し、接合部3の両端の接合端部3aへの応力集中の緩和効果が低下する傾向がみられる。
【0026】
スリット4の幅は、特に制限されるものではなく、任意の幅で形成することができる。スリット4の幅に関わらず、第1フランジ2aにスリット4が形成されることで、第1フランジ2aの剛性を低下させることができるからである。
【0027】
また、スリット4と切欠部2d(長手方向端部)との間隔は、あまりに小さいと、第1フランジ2aの縁部2eと切欠部2dとの角部近傍の曲げ強さが低下し、第1フランジ2aが塑性変形し易くなるため好ましくない。そこで、スリット4と切欠部2d(長手方向端部)との間隔は、第1フランジ2aの機械的強度を確保するため、縁部2eと切欠部2dとの角部近傍の第1フランジ2aが塑性変形しない程度の適度な間隔に設定される。
【0028】
第1部材2は、第2部材101と接合される前に、縦通材101a(図3参照)の位置に対応して切欠部2dが形成される。その切欠部2dを形成する際にスリット4の加工も行われる。切欠部2d及びスリット4が形成された第1部材2は、第2部材101に突出した縦通材101aを切欠部2dによって跨ぐように第2部材101の背面に配置され、第1フランジ2aが第2部材101に重ねられる。そして、第1フランジ2aの長手方向に沿って接合部3が形成される。以上のように、第2部材101に第1部材2を接合する前に第1フランジ2aにスリット4を形成しておくことができるため、接合作業を簡素化できる。
【0029】
以上説明したように第1実施の形態によれば、スリット4により第1フランジ2aの剛性を低下させることで、接合部3の両端の接合端部3aに生じる応力集中を緩和できる。その結果、第1部材2や第2部材101の疲労強度を向上できる。
【0030】
次に図2を参照して、第2実施の形態について説明する。第1実施の形態では、第1フランジ2a及び第2部材101に線状の接合部3が形成される場合について説明した。これに対し第2実施の形態では、第1フランジ2a及び第2部材101に点状の接合部13が形成される場合について説明する。なお、第1実施の形態と同一の部分は、同一の符号を付して以下の説明を省略する。図2(a)は第2実施の形態における構造物11の接合構造を示す第1部材12及び第2部材101の断面図であり、図2(b)は図2(a)のIIb方向から視た第1部材12の平面図である。
【0031】
図2(b)に示すように、接合部13は、第1部材12の第1フランジ2aと第2部材101との間で点状に形成され、第1フランジ2aの長手方向に沿って所定の間隔をあけて列設されている。接合部13は、第1フランジ2aと第2部材101とに挿通孔(図示せず)を形成し、その挿通孔にリベット等の鋲やボルト等の連結部材を挿通固定することにより形成される。
【0032】
第1フランジ2aの長手方向の縁部2eから、点状の接合部13を結ぶ接合線Jに向かってスリット14が形成されている。スリット14により第1フランジ2aの剛性を低下させ、第1実施の形態と同様に、第1部材12や第2部材101の疲労強度を向上できる。接合線Jは、点状の接合部13の中心間を結ぶ線である。接合部13の中心は、連結部材が挿通される挿通孔の中心のことをいう。
【0033】
スリット14は、接合線13の両端の接合端部13aから第1フランジ2aの長手方向の縁部2eに下ろした2本の垂線Pの間に形成されている。これにより、スリット14を第1フランジ2aの剛性低下に寄与させると共に、スリット14が疲労破壊の起点となることを防止できる。
【0034】
スリット14は、接合線Jと非交差の状態で形成されている。具体的には、スリット14の先端部14aが接合線Jに接触しないように近接されている。スリット14が接合線Jと交差し、先端部14aが接合線Jを超えると、スリット14の先端部4aに応力集中が生じる。その結果、スリット14の先端部14aを起点として疲労破壊が生じ易くなる。スリット14を接合線Jと非交差の状態で形成することにより、スリット14の先端部14aが疲労破壊の起点となることを防止できる。接合線Jとスリット14の先端部14aとの距離は、20mm以下とするのが好ましい。第1フランジ2aの剛性の低下効果が低減するのを防止するためである。
【0035】
以上の第2実施の形態によれば、第1実施の形態と同様に、スリット14により第1フランジ2aの剛性を低下させることで、接合線Jの両端の接合端部13aに生じる応力集中を緩和させ、第1部材12や第2部材101の疲労強度を向上できる。
【0036】
次に、上記第1実施の形態のように構成される構造物1の接合構造(以下「本発明構造」と称す)における接合部3(図1参照)の近傍の最大応力と、従来の構造物100の接合構造(以下「従来構造」と称す)における接合部103(図4参照)の近傍の最大応力とを計算し、それらの計算結果を比較した。以下、その比較結果を説明する。
【0037】
スリット4の先端部4aから接合部3の幅方向の中心線Cまでの距離を1mmとした本発明構造(以下「本発明構造1」と称す)の最大応力は、従来構造の最大応力に対して79%であった。また、スリット4の先端部4aから接合部3の幅方向の中心線Cまでの距離を10mmとした本発明構造(以下「本発明構造2」と称す)の最大応力は、従来構造の最大応力に対して82%であった。また、スリット4の長さ(第1フランジ2aの長手方向の縁部2eからスリット4の先端部4aまでの長さ)を本発明構造2のスリット4の長さの1/2とした本発明構造(以下「本発明構造3」と称す)の最大応力は、従来構造の最大応力に対して90%であった。
【0038】
以上の結果から、第1フランジ2aの長手方向の縁部2eから接合部3に向かってスリット4を形成することにより、最大応力を小さくできることが明らかとなった。また、最大応力は本発明構造3、本発明構造2、本発明構造1の順に小さくなることから、最大応力は、スリット4を長くするにつれ小さくできることも明らかとなった。
【0039】
しかしながら、スリット4を長くすることによりスリット4が接合部3の幅方向の中心線Cと交差した場合は、スリット4の先端部4aに最大応力が発生した。このときのスリット4の先端部4aにおける最大応力は、従来構造の最大応力に対して104%であった。
【0040】
以上の計算結果から、第1フランジ2aの長手方向の縁部2eから接合部3に向かってスリット4を形成することにより、最大応力を小さくできることが確認された。これにより、第1部材2や第2部材101の疲労強度を向上できることが明らかである。
【0041】
また、スリット4と接合部3(接合部3の幅方向の中心線C)とが交差すると、スリット4の先端部4aに応力が集中し、最大応力が従来構造より大きくなることが確認された。これに対し、スリット4の先端部4aを接合部3に限りなく近づけることで、最大応力を最も小さくできることが確認された。
【0042】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。例えば、上記実施の形態で挙げた数値は一例であり、他の数値を採用することは当然可能である。
【0043】
上記実施の形態では、航空機、鉄道車両、船舶などの輸送用機器を構成する構造物(胴体、構体、船体など)に適用する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、他の構造物に適用できることは当然可能である。この場合も、構造物の疲労強度を向上できる効果がある。但し、輸送用機器を構成する構造物に適用する場合は、スリット4,14を形成することにより第1部材2,12の質量を軽減できる。これにより構造物1,11を軽量化できるため、特に好適である。
【0044】
上記各実施の形態では、第1部材2,12は、第1フランジ2a、ウェブ2b及び第2フランジ2cを備え、Z型の断面を有する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、他の断面形状とすることは当然可能である。他の断面形状としては、例えば、第2フランジ2cを有さないL型を挙げることができる。また、第2フランジ2cの先端から第2部材101側へ延設されるウェブ及び第3フランジを有するハット型を挙げることもできる。
【0045】
上記各実施の形態では、第2部材101は、縦通材101aが一体形成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、縦通材101aを別体とし、第2部材101と接合する構成とすることは当然可能である。
【0046】
また、上記各実施の形態では、縦通材101aは断面がJ型に形成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、他の断面を有する縦通材101aを用いることは当然可能である。他の断面としては、例えば、L型、Z型、ハット型等が挙げられる。
【0047】
また、上記各実施の形態では、縦通材101aが配設される切欠部2dが第1フランジ2aに形成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、切欠部2dを有しない第1フランジ2a(第1部材2,12)に適用することは当然可能である。第1フランジ2a(第1部材2,12)が切欠部2dを有しない場合でも、スリット4,14は、第1フランジ2aの長手方向端部と所定の間隔をあけて形成される。第1フランジ2aの機械的強度を確保するためである。
【0048】
上記各実施の形態では、第1部材2,12としてフレームを例示して説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、フランジ及びウェブを備える他の部材を第1部材2,12として適用することは当然可能である。他の部材としては、例えば、L型、Z型等の断面を有する縦通材が挙げられる。
【0049】
上記第1実施の形態では、接合部3が摩擦撹拌接合により形成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、他の方法により接合部3を形成することは当然可能である。他の方法としては、例えば、重ねレーザ溶接、重ね抵抗溶接等の種々の溶接方法が挙げられる。
【0050】
上記第2実施の形態では、接合部13がリベット等の鋲やボルト等の連結部材により形成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、他の方法により接合部13を形成することは当然可能である。他の方法としては、例えば、重ねレーザ溶接、重ね抵抗溶接等による種々のスポット溶接、摩擦撹拌接合によるスポット接合等を挙げることができる。これらスポット溶接やスポット接合によれば、連結部材の挿通孔を形成する必要がないため、接合作業を簡素化できる。なお、接合部13がスポット溶接やスポット接合等で形成される場合、接合部13の中心は、各接合部分の中心のことをいう。
【0051】
上記各実施の形態では、接合部3や接合線Jに対してスリット4,14が3本形成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、接合部3や接合線Jの長さに応じて、任意の数のスリット4,14を形成できる。例えば、接合部3や接合線Jが短い場合には、接合部3や接合線Jの両端の接合端部3a,13aの近傍に1本ずつ、合計2本のスリット4,14を形成し、中央付近のスリット4,14を省略することが可能である。
【0052】
上記各実施の形態では、スリット4,14は、形状が、略平行の直線状に縁部2eから切り込まれ先端が略半円状に形成される場合について説明したが、必ずしもこの形状に限られるものではなく、他の形状とすることは当然可能である。他の形状としては、例えば、先端に向かうにつれ幅狭に形成されるもの、先端に向かうにつれ拡幅されるもの、縁部2eから曲線状や階段状に切り込まれるものが挙げられる。また、スリット4,14が縁部2eに直交するように形成される場合について説明したが、これに限られるものではなく、縁部2eに斜交するように形成されることは当然可能である。なお、スリット4,14の先端を略半円状等の曲線とすることにより、応力集中を緩和することができ、スリット4,14が破壊(亀裂)の起点となることを防止できる。
【0053】
上記各実施の形態では、第1部材2,12と第2部材101とが重ね板(ストラップ)を介さずに接合される場合について説明したが、これに限られるものではなく、帯状の重ね板を介して接合することは当然可能である。また、第1フランジ2aを折り曲げて重ね板構造とすることも可能である。
【符号の説明】
【0054】
1,11 構造物
2,12 第1部材
2a 第1フランジ(フランジの一部)
2b ウェブ
2d 切欠部(長手方向端部)
2e 縁部
3,13 接合部
3a,13a 接合端部
4,14 スリット
101 第2部材
J 接合線
P 垂線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フランジ及びウェブを有する第1部材と、その第1部材の前記フランジとの間でそのフランジの長手方向に沿って線状または点状の接合部が形成される板状の第2部材とを備える構造物の接合構造において、
前記第1部材のフランジの長手方向端部と所定の間隔をあけて前記フランジの長手方向の縁部から前記線状の接合部または前記点状の接合部を結ぶ接合線に向かって形成されるスリットを備えていることを特徴とする構造物の接合構造。
【請求項2】
前記スリットは、複数本形成されていることを特徴とする請求項1記載の構造物の接合構造。
【請求項3】
前記スリットは、前記接合線または前記線状の接合部の両端の接合端部から前記フランジの長手方向の縁部に下ろした2本の垂線の間に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の構造物の接合構造。
【請求項4】
前記スリットは、前記接合線または前記線状の接合部と非交差の状態で形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の構造物の接合構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−219886(P2012−219886A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−85101(P2011−85101)
【出願日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(000004617)日本車輌製造株式会社 (722)
【Fターム(参考)】