説明

標的化された広域スペクトルのインフルエンザ中和のための操作されたポリペプチド剤

本発明は、広域スペクトルインフルエンザ中和のための新規薬剤を提供する。本発明は、インフルエンザウイルスおよび/または赤血球凝集素(HA)ポリペプチドおよび/またはHA受容体に結合することによってインフルエンザ感染を阻害するための薬剤、ならびにこの薬剤に関連する試薬および方法を提供する。本発明は、インフォールドと、これらに結合する相互作用パートナーとの間の相互作用を分析するためのシステムを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
この出願は、2010年1月27日に出願された米国仮特許出願第61/298,776号(この全体の開示は、参考として本明細書に援用される)への優先権を主張する。37CFR1.52(e)(5)にしたがって、テキストファイルの形態での配列表(2010年1月26日に作成され、49キロバイトである、表題「Sequence Listing.txt」のもの)が、その全体において参考として本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
インフルエンザウイルスは、年間300,000を超える死亡の原因である世界的な健康の脅威である。ウイルスは、加速された抗原ドリフト、ドメイン再集合、遺伝的組み換え、およびその表面糖タンパク質のグリコシル化ベースのマスキングの組合せに携わることによって免疫認識を回避する。ウイルスのこの急速な突然変異能力は、現在のH1N1「ブタインフルエンザ」パンデミックからの脅威の増大、ならびに病原性の高い「鳥インフルエンザ」のトリH5N1インフルエンザ菌株による最近の感染症の憂慮すべき世界的急増という状況で特に深刻になっている(非特許文献1、非特許文献2)。さらに、前世紀における2つの主要なインフルエンザパンデミックは、ヒト感染を可能にするようにその遺伝的性質を変化させたトリインフルエンザウイルスを起源とした。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Khannaら、Journal of Biosciences(2008年)33巻(4号):475頁
【非特許文献2】Soundararajanら、Nature Biotechnology(2009年)27巻:510頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これらのインフルエンザウイルスの進化における高度の予測不可能性を考慮すると、交差株で有効な(ユニバーサルまたは広域スペクトル)抗インフルエンザ予防剤および治療剤の開発の必要性がある。そのようなユニバーサルまたは広域スペクトル抗インフルエンザ剤は、出回っている特定の「季節性の」ウイルス株を標的にするように設計される毎年のインフルエンザワクチンを増強するであろう(Ekiertら、Science、324巻(5924号):246頁、2009年、およびSuiら、Nat Struct Mol Biol. 16巻(3号):265頁、2009年)。そのような薬剤の重要性は、抗ウイルス剤タミフル/リレンザ(NA阻害剤)およびアマンタジン/リマンタジン(MP−2阻害剤)に対する、現れつつある薬物耐性によって強調される(Collinsら、Nature 453巻:1258頁、Stoufferら、Nature、451巻:596頁、2008年、Pielakら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、106巻:7379頁、2009年)。例えば、今季のH1N1株の98%超、および100%が、それぞれ、タミフルおよびアダマンタン誘導体(アマンタジン/リマンタジン)に対して耐性である。さらに、季節性インフルエンザワクチンは、最も伝染性の強いインフルエンザ菌株の予測に基づいて開発される。場合によっては、これらの予測がはずれ、それによって、季節性インフルエンザワクチンの効果が弱くなる。これらの理由で、サブタイプまたはクレードに依存しない、インフルエンザウイルスによって引き起こされる疾患の治療または発症の遅延に有効な広域スペクトルワクチンおよび治療剤の開発の必要性がある。もちろん、任意のインフルエンザ菌株に効果的な薬剤においてもかなりの価値があり、実際に、1つの、または一連の菌株に特異的な薬剤において大きな価値がある場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、インフルエンザ感染症を阻害するための新規薬剤を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、インフルエンザウイルス(例えば、ウイルスのHAポリペプチド)に結合し、かつ/またはHA受容体に結合する薬剤を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、広域スペクトルのインフルエンザ中和のための新規薬剤を提供する。
【0006】
特に、本発明は、赤血球凝集素(HA)ポリペプチド上の特定の領域に結合する、「インフォールド(infold)剤」と呼ばれるポリペプチド剤を提供する。例えば、本発明は、HAポリペプチドの膜近位エピトープ領域(membrane proximal epitope region)(MPER)領域に結合するインフォールド剤を提供する。いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、HAグリコシル化と無関係にMPER領域に結合する。いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、HAポリペプチド中の1つまたは複数のアミノ酸残基、および/またはHAポリペプチドに結合した1つまたは複数のグリカンと相互作用する。いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、HAポリペプチド上のN結合型グリカンに結合する。いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、HAポリペプチド上のMPER近位のN−グリカンに結合する。
【0007】
いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、HA受容体に結合する。ある特定の実施形態では、インフォールド剤は、HA受容体上のシアル化グリカンに結合する。いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、アンブレラトポロジーを有するシアル化グリカンに結合する。ある特定の実施形態では、インフォールド剤は、アンブレラトポロジーグリカンに高親和性および/または特異性を伴って結合する(例えば、コーントポロジーグリカンなどの他のトポロジーのグリカンに結合することと比較して)。
【0008】
いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、HA受容体への結合において赤血球凝集素と競合する。いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、アンブレラトポロジーグリカンへの結合においてHAと競合する。
【0009】
いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、これらが、HAポリペプチドおよび/またはHA受容体中の同定された「標的残基」から指定された距離内の3次元空間内に位置するように、所定の3次元空間(例えば、結合ポケット)内に適合し、選択された「相互作用残基」をディスプレイするように選択され、寸法を合わされた骨格折り畳み構造を特徴とする。いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、HAポリペプチド結合部位内に適合するように選択され、寸法を合わされた第1の骨格折り畳み構造、およびHA受容体結合部位内に適合するように選択され、寸法を合わされた第2の骨格折り畳み構造を特徴とする。
【0010】
本発明はさらに、インフォールド剤を同定するためのシステム、これらを調製するためのストラテジー、これらに結合する抗体、ならびにこれらに関係する様々な診断法および治療法を含めた、インフォールド剤に関連する様々な試薬および方法を提供する。本発明のこれらの態様および他の態様のある特定の実施形態のさらなる説明を以下に提示する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、標的とされる広域スペクトル分子(インフォールド剤)を使用して、標的とされるフル(広い)スペクトルのインフルエンザ中和を実現するための手法を提示する図である。(a)HA MPER(赤色円)およびHA受容体(例えば、HA受容体上のシアル化グリカン)(緑色円)に結合するインフォールド剤;(b)HA MPER(赤色円)、MPER近位のN−グリカン(黒色円)、およびHA受容体上のシアル化グリカン(緑色円)に結合するインフォールド剤;(c)HA MPERに結合するインフォールド剤(赤色円);(d)HA MPER(赤色円)およびMPER近位のN−グリカン(黒色円)に結合するインフォールド剤。
【図2】図2は、グループ1およびグループ2インフルエンザ菌株の膜近位エピトープ領域(MPER)の保存を示す図である。(Stoufferら、Nature、451巻:596頁、2008年)。HA−1(球状ヘッドドメイン)およびHA−2(ストークドメイン)上の重要なMPER残基が示されており、これらの位置における各菌株に由来する顕著なアミノ酸に、交差クレード保存の程度によって色が付けられている(橙色=最も保存された位置)。
【図3】図3は、N−グリコシル化されたインフルエンザHA MPER標的化のための抗体の限界についての構造的原理を示す図である。Asn−38(緑色円(green carbon))でN−グリコシル化されたH3 HA(白色(wheat)/灰色)にドッキングしたF10抗体(桃色)は、すべて抗体VHドメインにおける9つのβ−ストランドのうちの2つを構成する追加のC’およびC’’β−ストランド(黒色)が、抗体結合に対する立体障害の主な原因であることを示す。
【図4】図4は、グリコシル化されたHA上での標的化に利用可能なMPER面積の低減についての構造的原理を示す図である。グリコシル化されていないHAポリペプチド上で(上)、2811.5〜325ÅのMPER面積が標的化に利用可能であり、一方、0.5(12.315.3+9.512.2)〜152Åの低減されたMPER面積のみが、N−グリコシル化されたHAポリペプチド上での結合に利用可能である(下)。
【図5】図5は、HAポリペプチド中、具体的にはHAポリペプチドMPER領域内、および/またはこの領域付近の可能な標的残基の異なるセットを例示する図である。表された特定のHAポリペプチドは、タンパク質データバンク(Protein Data Bank)ID(PDB ID)エントリー1HGGからのH3 HAポリペプチドである。
【図6】図6は、(上)グリコシル化されていないHA MPERへのインフォールド−3の結合を示す図である。(下)インフォールド−3(赤色)は、図3中に示したような抗体のものと比べて、その小さい体積および2本の追加のストランドの欠如により、N−グリカン(緑色円)を収容することによって、N−グリコシル化されたHA MPER(灰色/白色)に結合する。
【図7】図7は、C179抗体の選択されたHAポリペプチド、例えば、H1、H3、H5、H7、およびH9への結合と比較した場合の、例示的なインフォールド剤の結合を提示する図である。
【図8】図8は、α2,6−シアル化グリカン(アンブレラトポロジー)HA受容体(シアンブルー)を提示する図であり、ここで示したのは、2009ブタ起源インフルエンザ(一般に「パンデミックインフルエンザ」と呼ばれる)H1N1 HAポリペプチド(灰色)に結合している。
【図9】図9は、抗インフルエンザ治療剤の標的化送達のために、α2,6シアル化されたグリカンHA受容体に結合するインフォールド−9およびインフォールド10の設計において使用される、α2,6シアル化グリカン認識モチーフの例を提示する図である。
【図10】図10は、グリカン受容体特異性を理解するためのフレームワークを提示する図である。α2,3−および/またはα2,6−連結グリカンは、異なるトポロジー採用することができる。HAポリペプチドのある特定のこれらのトポロジーに結合する能力は、これに異なる宿主、例えば、ヒトの感染を媒介する能力を付与すると考えられている。本発明は、2つの特に妥当なトポロジー、すなわち、「コーン」トポロジー(左パネル)および「アンブレラ」トポロジー(右パネル)を参照する。コーントポロジーは、α2,3−および/またはα2,6−連結グリカンによって採用され得、コアに付いた短いオリゴ糖または分岐オリゴ糖に典型的である(このトポロジーは、ある特定の長いオリゴ糖によって採用され得るけれども)。アンブレラトポロジーは、α2,6−連結グリカンによってのみ採用され得(おそらくα2,6連結中に存在する余分のC5〜C6結合によってもたらされる立体配座的複数性の増大により)、長いオリゴ糖、または特に、モチーフNeu5Acα2,6Galβ1−3/4GlcNAcを含有する、長いオリゴ糖ブランチを有する分岐グリカンによって主に採用される。
【図11】図11は、例示的なコーントポロジーを例示する図である。この図は、コーントポロジーを採用するある特定の例示的な(しかし網羅的でない)グリカン構造を例示する。
【図12】図12は、例示的なアンブレラトポロジーを例示する図である。(A)アンブレラトポロジーを採用することができる、ある特定の例示的な(しかし網羅的でない)N−およびO結合型グリカン構造。(B)アンブレラトポロジーを採用することができるある特定の例示的な(しかし網羅的でない)O結合型グリカン構造。
【図13】図13は、HAポリペプチド中の指示された標的残基と相互作用し、かつ/またはこれに結合するように選択および設計されたインフォールド剤相互作用および/または結合残基の可能なセットを例示する図である。示したように、HAポリペプチドは、H1 HAポリペプチドである。
【図14】図14は、リボンおよびスティックの代表的なモデルでのPDB ID 2V5Y(タンパク質データバンク識別番号)の構造の画像を提示する図である。
【図15】図15は、例示的なインフォールド剤は、インビトロでPR8ウイルス(H1N1)インフルエンザ感染性を阻害することを例示する図である。左パネルは、例示的なインフォールド剤が、6つの異なる用量について用量依存的様式で、ウイルスで誘導されるプラーク生成を阻害することを強調する。
【図16】図16は、4つの用量を用いたプラークアッセイを使用して、例示的なインフォールド剤の活性を、対照(BSA)およびC179抗体の活性と比較する図である。プラークアッセイによって示されるように、例示的なインフォールド剤はインフルエンザ感染性を阻害する。
【図17】図17は、マウスにおけるH1N1チャレンジを提示する図である。このチャレンジにおいて、例示的なインフォールド剤は、PBS対照と比較した場合、マウスにおけるH1N1の発症の遅延を実証する。例示的なインフォールド剤は、5日目付近で開始する、抗ウイルス薬、リバビリンの発症の遅延と同様の発症の遅延を示す。
【図18】図18は、H1N1チャレンジにおいて例示的なインフォールド剤で処置したマウスを提示する図である。このチャレンジにおいて、例示的なインフォールド剤で処置したマウスは、PBS対照、または抗ウイルス薬、リバビリンと比較した場合、感染後の体重減少が最小の百分率である。
【図19】図19は、インフルエンザウイルスサブタイプのグループ、クレード、およびクラスターへの区分を示す、HAサブタイプの間の系統発生的関係を提示する図である。
【図20】図20は、クリスタルバイオレットを使用する、本明細書に記載の特定のインフォールド剤(インフォールド−28)の中和活性の例示的評価を提示する図である。
【図21】図21は、ウイルスゲノム量を直接定量化するためにRT−PCRを使用する、MDCKにおけるインフォールド−28活性の例示的評価を提示する図である。結果は、試験したインフォールド剤(インフォールド−28)が強力な阻害剤であり、IC50は、感染の多重度(moi)によって影響されることを示す。
【図22】図22は、MDCK細胞における感染性に対するPR8を用いたインフォールド剤−28のプレインキュベーションの効果を提示する図である。感染後、MDCK細胞を、インフォールド剤−28を含む(a)、または含まない(b)無ウイルス培地中で48時間増殖させた後、ウイルス力価を、ウイルスMタンパク質に特異的なプライマーを使用してリアルタイムPCRによって定量化した。=計算されたIC50値。
【発明を実施するための形態】
【0012】
定義
親和性:当技術分野で公知であるように、「親和性」は、特定のリガンド(例えば、HAポリペプチドまたはインフォールド剤)がそのパートナー(例えば、HA受容体)に結合することに関する緊密さの尺度である。親和性は、様々な方法で測定することができる。
【0013】
アミノ酸:本明細書で使用する場合、「アミノ酸」は、任意の天然または非天然アミノ酸(以下の「天然アミノ酸」および「非天然アミノ酸」の定義を参照)を指す。
【0014】
抗体:本明細書で使用する場合、用語「抗体」は、指定されたタンパク質もしくはペプチド、またはその断片に対して特異的に反応性である免疫グロブリンおよびその断片を含むことが意図されている。適当な抗体として、それだけに限らないが、ヒト抗体、霊長類化抗体、キメラ抗体、二重特異性抗体、ヒト化抗体、コンジュゲートされた抗体(すなわち、他のタンパク質、放射標識、細胞毒にコンジュゲートまたは融合した抗体)、小モジュラー免疫薬(「SMIP(商標)」)、単鎖抗体、カメロイド(cameloid)抗体、および抗体断片が挙げられる。本明細書で使用する場合、用語「抗体」は、インタクトなモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、単一ドメイン抗体(例えば、サメ単一ドメイン抗体(例えば、IgNAR、またはその断片))、少なくとも2つのインタクトな抗体から形成される多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、および所望の生物活性を呈する限り、抗体断片も含む。本明細書で使用するための抗体は、任意の型(例えば、IgA、IgD、IgE、IgG、IgM)のものとすることができる。
【0015】
いくつかの実施形態では、抗体は抗体断片である。抗体断片は、インタクトな抗体の一部、例えば、抗体の抗原結合性領域または可変領域などを含むことができることが理解されるであろう。抗体断片の例には、Fab、Fab’、F(ab’)2、およびFv断片;三重特異性抗体(triabody);四重特異性抗体(tetrabody);線状抗体;単鎖抗体分子;ならびに抗体断片から形成される多重特異性抗体が含まれる。いくつかの実施形態では、抗体断片には、特定の抗原に結合して複合体を形成することによって抗体のように作用する任意の合成タンパク質または遺伝子操作されたタンパク質も含まれる。例えば、抗体断片として、重鎖および軽鎖の可変領域からなる単離された断片である「Fv」断片、軽鎖および重鎖可変領域がペプチドリンカーによって接続された組換え型単鎖ポリペプチド分子(「ScFvタンパク質」)、ならびに超可変性領域を模倣するアミノ酸残基からなる最小認識ユニットを挙げることができる。
【0016】
β−サンドイッチ折り畳み:「β−サンドイッチ折り畳み」は、その構造が、PBD ID 2V5Yを有する構造の残基260〜355(鎖A)上に重ねられる場合、6オングストローム以下のCα RMSD(標準偏差)を伴って、任意の方法によって実験的に求められ、または計算で予測される場合に、5〜12の間にβ−ストランドを有するポリペプチドドメインである(図14を参照)。さらに、二次構造領域(ループを除く)を重ね合わせた後のそのようなRMSDは、5Å以下である場合がある。インフォールドドメインは、インフォールド剤の「標的認識」ドメインを構成する。
【0017】
結合:用語「結合」は、本明細書で使用する場合、典型的には、作用物質同士の間、または作用物質同士の中での非共有結合性会合を指すことが理解されるであろう。本明細書の多くの実施形態では、結合は、特定のHAポリペプチド、特定のグリカン(例えば、N結合型グリカン、アンブレラトポロジーグリカンまたはコーントポロジーグリカン)、または特定のHA受容体に関して扱われる。そのような結合は、様々な状況のいずれにおいても評価することができることが当業者によって理解されるであろう。いくつかの実施形態では、結合は、HAポリペプチドに関して評価される。いくつかの実施形態では、結合は、担体が付いた(例えば、共有結合的に連結した)グリカンに関して評価される。いくつかのそのような実施形態では、担体はポリペプチドである。いくつかの実施形態では、結合は、HA受容体に付いたグリカンに関して評価される。そのような実施形態では、受容体結合またはグリカン結合を参照することができる。
【0018】
結合部位:用語「結合部位」は、本明細書で使用する場合、標的ポリペプチドの相互作用残基を含む、3次元空間に形成された、標的ポリペプチドの領域を指す。当業者によって理解されるように、結合部位は、線状鎖上で互いに隣接し、かつ/または線状鎖上で互いに遠位にあるが、標的ポリペプチドが折り畳まれているときの3次元空間において互いに近い残基を含むことができる。結合部位は、アミノ酸残基および/またはサッカリド残基を含むことができる。
【0019】
生物学的に活性な:本明細書で使用する場合、語句「生物学的に活性な」は、生物系、特に生物において活性を有する任意の薬剤の特性を指す。例えば、生物に投与される場合にその生物に対して生物学的効果を有する薬剤は、生物学的に活性であるとみなされる。特定の実施形態では、タンパク質またはポリペプチドが生物学的に活性である場合、そのタンパク質またはポリペプチドの少なくとも1つの生物活性を共有するそのタンパク質またはポリペプチドの一部は、典型的には「生物学的に活性な」部分と呼ばれる。
【0020】
広域スペクトル:本明細書で使用する場合、語句「広域スペクトル」は、異なるインフルエンザウイルス菌株に由来する様々なHAポリペプチドに結合するインフォールド剤を指す。いくつかの実施形態では、広域スペクトルインフォールド剤は、複数の異なるHAポリペプチドに結合する。例示的なそのようなHAポリペプチドには、H1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、および/もしくはH16ポリペプチド、またはこれらの組合せが含まれる。いくつかの実施形態では、提供されるインフォールド剤は、これらが、ウイルスの少なくとも2つの異なるクレードまたはクラスターに由来するHAポリペプチドに結合するという点で広域スペクトルである。いくつかの実施形態では、提供されるインフォールド剤は、これらが、ウイルスのすべての公知のクレードに由来するHAポリペプチドに結合するという点で広域スペクトルである。いくつかの実施形態では、提供されるインフォールド剤は、これらが、グループ1およびグループ2のインフルエンザウイルスに由来するHAポリペプチドに結合するという点で広域スペクトルである。いくつかの実施形態では、広域スペクトルは、特定の宿主、例えば、トリ、ラクダ、イヌ、ネコ、ジャコウネコ、ウマ、ヒト、ヒョウ、ミンク、マウス、アザラシ、ストーンマーチン(stone martin)、ブタ、トラ、クジラなどの感染を媒介するHAポリペプチドを指す。
【0021】
候補基質:本明細書で使用する場合、語句「候補基質」は、1つまたは複数のインフォールド剤の基質を指す。いくつかの実施形態では、候補基質には、それだけに限らないが、ポリペプチドおよびサッカリドが含まれる。いくつかの実施形態では、候補基質として、HAポリペプチドの領域、HAポリペプチド上のMPER領域、HAポリペプチド上のN−グリカン、HA受容体、シアル化HA受容体、シアル化HA受容体上のグリカンおよび/またはシアル化HA受容体上のアンブレラトポロジーグリカンが挙げられる。
【0022】
特徴的部分:本明細書で使用する場合、タンパク質またはポリペプチドの「特徴的部分」という語句は、ともにタンパク質またはポリペプチドに特徴的であるアミノ酸の連続ストレッチ、またはアミノ酸の連続ストレッチのコレクションを含有するものである。それぞれのそのような連続ストレッチは一般に、少なくとも2つのアミノ酸を含有することになる。さらに、当業者は、タンパク質の特性であるために、典型的には、少なくとも5、10、15、20、またはそれ以上のアミノ酸が必要とされることを理解するであろう。一般に、特性部分は、上記に特定される配列同一性に加えて、関連したインタクトなタンパク質と少なくとも1つの機能的特性を共有するものである。
【0023】
特徴的配列:「特徴的配列」は、ポリペプチドまたは核酸のファミリーのすべてのメンバー中に見出され、したがってファミリーのメンバーを定義するのに当業者によって使用することができる配列である。
【0024】
併用療法:用語「併用療法」は、本明細書で使用する場合、2つ以上の薬剤が重複レジメンにおいて投与され、その結果、被験体が両薬剤に同時に曝される状況を指す。
【0025】
コーントポロジー:語句「コーントポロジー」は、ある特定のグリカン、特に、HA受容体上のグリカンによって採用される3次元配置を指すのに本明細書で使用される。図10に例示したように、コーントポロジーは、α2,3シアル化グリカンまたはα2,6シアル化グリカンによって採用され得、短いオリゴヌクレオチド鎖に典型的であるが、いくつかの長いオリゴヌクレオチドもこの立体配座を採用することができる。コーントポロジーは、約−60、60または180のφ(C1−C2−O−C3/C6)値、および−60〜60をサンプリングするΨ(C2−O−C3/C6−H3/C5)によって与えられる最低エネルギー立体配座の3つの領域をサンプリングするNeu5Acα2,3Gal連結のグリコシドねじれ角を特徴とする。図11は、コーントポロジーを採用するグリカンのある特定の代表的な(しかし網羅的でない)例を提示する。
【0026】
直接結合アミノ酸(direct−binding amino acid):本明細書で使用する場合、語句「直接結合アミノ酸」は、結合パートナー(例えば、1つまたは複数のアミノ酸、グリカンなど)と直接相互作用するアミノ酸残基を指す。相互作用残基は、典型的には直接結合アミノ酸である。
【0027】
操作された:用語「操作された」は、本明細書で使用する場合、アミノ酸配列が人によって選択されたポリペプチドを記述する。例えば、操作されたインフォールド剤は、タンパク質間相互作用の特定の部位で対応するアミノ酸の選好に基づいて選択されたアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、操作されたインフォールド配列は、NCBIデータベースに含まれるHAポリペプチドのアミノ酸配列と異なるアミノ酸配列を有する。
【0028】
赤血球凝集素(HA)ポリペプチド:本明細書で使用する場合、用語「赤血球凝集素ポリペプチド」(または「HAポリペプチド」)は、アミノ酸配列がHAの少なくとも1つの特徴的配列を含むポリペプチドを指す。インフルエンザ分離株に由来する多種多様なHA配列が当技術分野で公知であり、実際に、国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI)は、データベース(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/genomes/FLU/FLU.html)を維持し、これは、本願の出願時点で9796のHA配列を含んでいた。当業者は、このデータベースを参照して、一般にHAポリペプチド、および/または特定のHAポリペプチド(例えば、H1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、もしくはH16ポリペプチド);または特定の宿主、例えば、トリ、ラクダ、イヌ、ネコ、ジャコウネコ、環境、ウマ、ヒト、ヒョウ、ミンク、マウス、アザラシ、ストーンマーチン、ブタ、トラ、クジラなどの感染を媒介するHAポリペプチドに特徴的な配列を容易に同定することができる。例えば、いくつかの実施形態では、HAポリペプチドは、インフルエンザウイルスの天然分離株に見出されるHAタンパク質の、およそ、残基97と185、324と340、96と100、および/または130〜230の間に見出される1つまたは複数の特徴的配列要素を含む。いくつかの実施形態では、HAポリペプチドは、HAのHA−1(ストーク)ドメインおよびHA−2(ヘッド)ドメインから構成されている。いくつかの実施形態では、HAポリペプチドは、HAの膜近位エピトープ領域(MPER)に由来する特徴的配列要素を含む。いくつかの実施形態では、HAポリペプチドのある領域はグリコシル化されている。いくつかの実施形態では、HAポリペプチドのある領域は、グリコシル化されていない。
【0029】
併用で:語句「併用で」は、本明細書で使用する場合、被験体に同時に投与される薬剤を指す。2つ以上の薬剤は、被験体が両方(またはそれ以上)の薬剤に同時に曝されるときはいつでも、「併用で」投与されるとみなされることが理解されるであろう。2つ以上の薬剤のそれぞれは、異なるスケジュールによって投与することができ、異なる薬剤の個々の用量は、同時に、または同じ組成物で投与される必要はない。むしろ、両方(またはそれ以上)の薬剤が被験体の体内に残存する限り、これらは「併用で」投与されるとみなされる。
【0030】
インフォールド剤:一般に、用語「インフォールド剤」は、選択された結合部位に結合し、ポリペプチドを含む薬剤を指すのに本明細書で使用される。多くの実施形態では、インフォールド剤は、インフォールド剤が結合部位の近傍にあるときに、個々の相互作用残基が、同系標的残基の予め選択された距離または体積内に位置するように選択および配置された相互作用残基に富む「折り畳み」骨格を特徴とする構造を有する。いくつかの実施形態では、インフォールド剤ポリペプチドは、操作または設計されたポリペプチドである。いくつかの実施形態では、本明細書に提供されるインフォールド剤は、赤血球凝集素(HA)ポリペプチドに結合する。いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、MPER領域においてHAポリペプチドに結合する。いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、グリコシル化と無関係にHAポリペプチドMPER領域に結合する。例えば、いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、MPER領域へのその結合が、MPER領域のグリコシル化によって妨げられない適切なサイズのものとなるように設計される。いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、他の点では同一であるグリコシル化されていないMPER領域についてのその親和性の少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、またはそれを上回る親和性で、グリコシル化されたMPER領域に結合する。いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、6000〜120,000Åの間の体積サイズを有する。いくつかの実施形態では、提供されるインフォールド剤は、抗体の体積サイズ以下である体積サイズを有する。いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、約20×30=600Åの総標的エピトープ表面積を有する。いくつかの実施形態では、インフォールド剤の総標的エピトープ表面積は、約10Å、20Å、30Å、40Å、50Å、60Å、70Å、80Å、85Å、90Å、95Å、100Å、105Å、110Å、115Å、120Å、125Å、130Å、135Å、140Å、145Å、150Å、151Å、152Å、153Å、154Å、155Å、160Å、165Å、170Å、175Å、180Å、185Å、190Å、195Å、200Å、210Å、220Å、230Å、240Å、250Å、260Å、270Å、280Å、290Å、300Å、310Å、315Å、320Å、325Å、330Åまたはそれ以上未満である。いくつかの実施形態では、総標的エピトープ表面積は、約200Å、約175Å、約150Å、約125Å、またはそれ以下未満である。多くの実施形態では、インフォールド剤は、約1000アミノ酸未満である長さを有する。いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、長さが約1000、975、950、925、900、875、850、825、800、775、750、725、700、675、650、625、600、575、550、525、500、475、450、425、400、375、350、325、300、275、250、240、230、220、210、200、190、180、170、160、150、140、130、125、120、115、110、105、100、95、90、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25、または20アミノ酸の最大長さ未満である長さを有する。いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、長さが約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79またはそれ以上のアミノ酸の最小長さより長い長さを有する。いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、最大長さが最小長さより長い限り、そのような最小長さのいずれか1つと、そのような最大長さのいずれか1つとの間の長さを有する。いくつかの特定の実施形態では、インフォールド剤は、約20と500、または30と400、または40と300、または80と250アミノ酸の間の長さを有する。いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、約84、88、93、95、98、104、106、110、111、116、119、123、124、132、212、215、244、または245の長さを有する。いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、天然アミノ酸から構成される。他の実施形態では、インフォールド剤は、1つまたは複数の非天然アミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、天然および非天然アミノ酸の組合せから構成される。いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、共有結合的に(例えば、リンカーによって)または非共有結合的に会合した1つ、2つ、またはそれ以上のポリペプチド鎖から構成される。いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、インフォールド剤が相互作用のためのその3次元構造および配置を保持する限り、より長いポリペプチド鎖(例えば、完全抗体、血清アルブミン、または他の担体タンパク質)に連結し、またはこのポリペプチド鎖の一部であることができる。いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、インフォールドであるか、またはインフォールドでない別のポリペプチド配列のN末端またはC末端に付加することができる。いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、インフォールドであるか、またはインフォールドでない別のポリペプチド中の配列に組み込まれ、それによってポリペプチド配列を2つ以上のセグメントに分離する。いくつかの実施形態では、インフォールドであるか、またはインフォールドでない別のポリペプチドのN末端もしくはC末端、または配列内にインフォールドを付加することは、以下のうちの少なくとも1つ以上を可能にすることができる:免疫原性の減少、循環寿命の増大、より遅いインビボ分解、局所的な免疫応答の扇動、免疫系分子との相互作用、体積の増大、インフォールド標的(複数可)に対する親和性の増大、インフォールド標的(複数可)に対する特異性の増大、または他の一般に使用される治療剤/予防剤送達プロトコールの使用。いくつかの実施形態では、インフォールドであるか、またはインフォールドでない別のポリペプチドのN末端もしくはC末端、または配列内にインフォールドを付加することは、インフォールド剤の標的(例えば、HAポリペプチド、HAポリペプチドのMPER領域、HAポリペプチド上のN−グリカン、HA受容体、またはHA受容体上のシアル化グリカン)への結合に対して直接の効果を有さない。
【0031】
いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、1つまたは複数の標的残基との相互作用によってその標的結合部位に結合する。いくつかの実施形態では、そのような標的残基は、アミノ酸、サッカリド、またはこれらの組合せである。いくつかの実施形態では、本発明は、HAポリペプチド、HAポリペプチド上のN結合型グリカン、HA受容体、HA受容体上のシアル化グリカン、またはこれらの様々な組合せに結合するインフォールド剤を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、HAポリペプチドに結合する第1のインフォールド剤、およびHA受容体に結合する第2のインフォールド剤を含むポリペプチド剤を提供する。いくつかのそのような実施形態では、ポリペプチド剤は、場合により1つまたは複数の連結アミノ酸によって互いに接続された、第1および第2のインフォールドを含む単一ポリペプチド鎖を含む。いくつかの実施形態では、HA受容体に結合するインフォールド剤は、HA受容体上の1つまたは複数のグリカンと相互作用する。いくつかの実施形態では、インフォールド剤はシアル化グリカンに結合する。いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、アンブレラ様トポロジーを有するシアル化グリカンに結合する。ある特定の実施形態では、インフォールド剤は、高い親和性および/または特異性を伴ってアンブレラトポロジーグリカンに結合する。いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、他のトポロジーのグリカン(例えば、コーントポロジーグリカン)と比較した場合、アンブレラトポロジーグリカンに対して結合の選好を示す。いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、HA受容体への結合においてHAと競合する。いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、HAポリペプチドとHA受容体の間の結合が、3分の2以下、2分の1以下、3分の1以下、4分の1以下、5分の1以下、6分の1以下、7分の1以下、8分の1以下、9分の1以下、10分の1以下、11分の1以下、12分の1以下、13分の1以下、14分の1以下、15分の1以下、16分の1以下、17分の1以下、18分の1以下、19分の1以下、または20分の1以下に低減されるように、結合においてHAと競合する。いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、HA受容体上のグリカンへの結合においてHAと競合する。いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、アンブレラトポロジーグリカンへの結合においてHAと競合する。いくつかの実施形態では、本明細書に提供されるインフォールド剤は、アンブレラトポロジー遮断剤である。いくつかの実施形態では、本明細書に提供されるインフォールド剤は、アンブレラトポロジー特異的な遮断剤である。いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、複数の直接結合アミノ酸残基(すなわち、HAアミノ酸またはグリカンと直接接触するアミノ酸残基)に富み、かつ/またはHA受容体アミノ酸または本明細書に記載されるようなグリカンを有する骨格折り畳み構造を有する。
【0032】
相互作用残基:用語「相互作用残基」は、本明細書で使用する場合、標的ポリペプチド中の特定の標的残基と相互作用するように設計されたインフォールド剤中の残基を指す。具体的には、相互作用残基は、これらが、同定された標的残基(例えば、結合、ドッキング、または他の相互作用アッセイで)の所定の距離(または体積)内の3次元空間内にディスプレイされるようにインフォールド剤配列内で選択および配置される。多くの実施形態では、相互作用残基は直接結合残基である。
【0033】
単離された:用語「単離された」は、本明細書で使用する場合、作用物質または実体が最初に生成されたとき(自然において、もしくは実験的設定で)に付随した成分の少なくともいくつかから分離された、または(ii)人の手によって生成された作用物質または実体を指す。単離された作用物質または実体は、これらに最初に付随した他の成分の少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または90%超から分離されている場合がある。いくつかの実施形態では、単離された作用物質は、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%超純粋である。
【0034】
長いオリゴ糖:本開示の目的に関して、オリゴ糖は、典型的には、これが少なくとも4つのサッカリド残基を有する少なくとも1つの線状鎖を含む場合、「長い」とみなされる。
【0035】
天然アミノ酸:本明細書で使用する場合、用語「天然アミノ酸」は、天然に存在する20のアミノ酸のうちの1つを指す。これらのアミノ酸のリストについて表1を参照。
【0036】
ポリペプチド:本明細書で使用する場合、「ポリペプチド」は、一般的に言えば、ペプチド結合によって互いに付いた少なくとも2つのアミノ酸のストリングである。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、少なくとも3〜5のアミノ酸を含むことができ、そのそれぞれは、少なくとも1つのペプチド結合によって他のアミノ酸に付いている。当業者は、ポリペプチドは、時に「非天然の」アミノ酸または他の実体を含み、これらはそれにもかかわらず、場合によりポリペプチド鎖中に一体化することができることを理解するであろう。
【0037】
純粋な:本明細書で使用する場合、作用物質または実体は、これが他の成分を実質的に含まない場合、「純粋」である。例えば、約90%を超える特定の作用物質または実体を含有する配合物は、典型的には、純粋な配合物であるとみなされる。いくつかの実施形態では、作用物質または実体は、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%<、または99%純粋である。
【0038】
短いオリゴ糖:本開示の目的に関して、オリゴ糖は、典型的には、これが、任意の線状鎖中に4未満、または確かには3未満の残基を有する場合、「短い」とみなされる。
【0039】
特異性:当技術分野で知られているように、「特異性」は、特定のリガンド(例えば、インフォールド剤)の、その結合パートナー(例えば、ヒトHA受容体、特にヒト上気道HA受容体)を、他の潜在的な結合パートナー(例えば、トリHA受容体)と区別する能力の尺度である。
【0040】
実質的な相同:語句「実質的な相同」は、アミノ酸または核酸配列同士の間の比較を指すのに本明細書で使用される。当業者によって理解されるように、2つの配列は一般に、これらが、対応する位置において相同残基を含有する場合、「実質的に相同」であるとみなされる。相同残基は同一残基である場合がある。あるいは、相同残基は、適切に同様の構造的および/または機能的特性を有する非同一残基である場合がある。例えば、当業者に周知であるように、ある特定のアミノ酸は、典型的には、「疎水性」または「親水性」アミノ酸と、かつ/または「極性」または「非極性」側鎖を有すると分類される。1つのアミノ酸を同じ型の別のアミノ酸に置換することは、多くの場合「相同」置換とみなされ得る。典型的なアミノ酸のカテゴリー化を、表1で以下に要約する。
【0041】
【表1】

【0042】
【表2】

当技術分野で周知であるように、アミノ酸または核酸配列は、商業コンピュータープログラムにおいて利用可能なもの、例えば、ヌクレオチド配列用のBLASTN、ならびにアミノ酸配列用のBLASTP、ギャップドBLAST、およびPSI−BLASTなどを含めた様々なアルゴリズムのいずれかを使用して比較することができる。例示的なそのようなプログラムは、Altschulら、Basic local alignment search tool、J. Mol. Biol.、215巻(3号):403〜410頁、1990年;Altschulら、Methods in Enzymology;Altschulら、「Gapped BLAST and PSI−BLAST: a new generation of protein database search programs」、Nucleic Acids Res. 25巻:3389〜3402頁、1997年;Baxevanisら、Bioinformatics : A Practical Guide to the Analysis of Genes and Proteins、Wiley、1998年;およびMisenerら(編)、Bioinformatics Methods and Protocols(Methods in Molecular Biology、132巻)、Humana Press、1999年に記載されている。相同配列を同定することに加えて、上述したプログラムは、典型的には、相同の程度の目安を提供する。いくつかの実施形態では、2つの配列は、少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上のこれらの対応する残基が、残基の関連したストレッチにわたって相同である場合、実質的に相同であるとみなされる。いくつかの実施形態では、関連したストレッチは完全な配列である。いくつかの実施形態では、関連したストレッチは、少なくとも10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、125、150、175、200、225、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、500、またはそれ以上の残基である。
【0043】
実質的な同一性:語句「実質的な同一性」は、アミノ酸または核酸配列同士の間の比較を指すのに本明細書で使用される。当業者によって理解されるように、2つの配列は一般に、これらが、対応する位置において同一の残基を含有する場合、「実質的に同一」であるとみなされる。当技術分野で周知であるように、アミノ酸または核酸配列は、商業コンピュータープログラムにおいて利用可能なもの、例えば、ヌクレオチド配列用のBLASTN、ならびにアミノ酸配列用のBLASTP、ギャップドBLAST、およびPSI−BLASTなどを含めた様々なアルゴリズムのいずれかを使用して比較することができる。例示的なそのようなプログラムは、Altschulら、Basic local alignment search tool、J. Mol. Biol.、215巻(3号):403〜410頁、1990年;Altschulら、Methods in Enzymology;Altschulら、Nucleic Acids Res. 25巻:3389〜3402頁、1997年;Baxevanisら、Bioinformatics : A Practical Guide to the Analysis of Genes and Proteins、Wiley、1998年;およびMisenerら(編)、Bioinformatics Methods and Protocols(Methods in Molecular Biology、132巻)、Humana Press、1999年に記載されている。同一配列を同定することに加えて、上述したプログラムは、典型的には、同一性の程度の目安を提供する。いくつかの実施形態では、2つの配列は、少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上のこれらの対応する残基が、残基の関連したストレッチにわたって同一である場合、実質的に同一であるとみなされる。いくつかの実施形態では、関連したストレッチは完全な配列である。いくつかの実施形態では、関連したストレッチは、少なくとも10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、125、150、175、200、225、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、500、またはそれ以上の残基である。
【0044】
標的ポリペプチド:「標的ポリペプチド」は、その用語を本明細書で使用する場合、インフォールド剤が相互作用するポリペプチドである。いくつかの実施形態では、標的ポリペプチドはHAポリペプチドである。いくつかの実施形態では、標的ポリペプチドはHA受容体ポリペプチドである。
【0045】
標的残基:「標的残基」は、その用語を本明細書で使用する場合、インフォールド剤が相互作用するように設計された標的ポリペプチド内の残基である。具体的には、インフォールド剤は、典型的には、標的残基のある特定の所定の距離(または体積)内にあるように選択および配置された(選択された「折り畳み」骨格上に現れているおかげで)特定の相互作用残基を特徴とする。いくつかの実施形態では、標的残基は、アミノ酸残基であり、またはアミノ酸残基を含む。いくつかの実施形態では、標的残基は、サッカリド残基であり、またはサッカリド残基を含む。
【0046】
治療剤:本明細書で使用する場合、語句「治療剤」は、所望の生物学的または薬理学的効果を誘発する任意の薬剤を指す。
【0047】
治療:本明細書で使用する場合、用語「治療」は、疾患、障害、または状態の1つまたは複数の症状または様相を軽減し、これらの発症を遅延させ、これらの重症度もしくは発病率を低減し、これらの予防を生じさせるのに使用される任意の方法を指す。本発明の目的に関して、治療は、症状の発症前、発症中、および/または発症後に施すことができる。
【0048】
アンブレラトポロジー:語句「アンブレラトポロジー」は、ある特定のグリカン、特に、HA受容体上のグリカンによって採用される3次元配置を指すのに本明細書で使用される。本発明は、アンブレラトポロジーグリカンへの結合は、ヒト宿主の感染を媒介するHAポリペプチドに特徴的であるという認識を包含する。図10および12に例示したように、アンブレラトポロジーは、典型的には、α2,6シアル化グリカンによってのみ採用され、長い(例えば、四糖より大きい)オリゴ糖に典型的である。いくつかの実施形態では、アンブレラトポロジーグリカンは、図10(右パネル)に提示した構造と実質的に同様の3次元構造を呈するグリカンである。いくつかの実施形態では、アンブレラトポロジーグリカンは、特定のアミノ酸残基との相互作用を介してHAポリペプチドを接触させるグリカンである。いくつかの実施形態では、グリカンの構造上のトポロジーは、SiaのC、GalのCと、GlcNAcのCとの間の角度として定義されるパラメータθに基づいて分類される。θ<100°の値は、α2,3および短いα2,6グリカンによって採用されるコーン様トポロジーを表す。θ>110°の値は、長いα2,6グリカンによって採用されるトポロジーなどのアンブレラ様トポロジーを表す。アンブレラトポロジーの例は、約−60のNeu5Acα2,6Gal連結のφ角によって与えられる。図12は、アンブレラトポロジーを採用することができるグリカンのある特定の代表的な(しかし網羅的でない)例を提示する。図12に提示された長いα2,6モチーフは、生物学的なN結合型グリカン、O結合型グリカン、および糖脂質の一部として見出される長い鎖(例えば、少なくとも三糖)に非還元末端で連結したNeu5Acα2,6を含む。四角で囲った挿入図は、高い親和性でHAに結合する生物学的グリカンの一部として見出されるアンブレラトポロジーの長いα2,6グリカン部分の例を示す。いくつかの実施形態では、アンブレラトポロジーグリカン(例えば、ある部位での)は、短いα2,6(例えば、1つのラクトサミン)ブランチより大きい割合の長い(例えば、複数のラクトサミンユニット)α2,6オリゴ糖ブランチを含む。いくつかの実施形態では、アンブレラトポロジーグリカン(例えば、ある部位での)は、短いα2,6(例えば、1つのラクトサミン)ブランチより約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約10倍、約20倍、約50倍、または約50倍超多い長いα2,6オリゴ糖ブランチを含む。ある特定の実施形態では、アンブレラトポロジーグリカンおよび/またはグリカンデコイとのHA相互作用のユニークな特徴は、非還元末端でシアル酸(SA)および/またはSA類似体を含むグリカンと接触したHAである。いくつかの実施形態では、オリゴ糖の鎖長は、少なくとも三糖である(SAまたはSA類似体を除く)である。ある特定の実施形態では、アンブレラトポロジーグリカンは、以下の形態のオリゴ糖である:
Neu5Acα2,6Sug1−Sug2−Sug3
式中:
(a)Neu5Acα2,6は、非還元末端で典型的であり(しかし本質的でない);
(b)Sug1は:
(i)αまたはβ配置(しばしば、N−およびO−連結エクステンションについてβ−、ならびに糖タンパク質にO−連結したGalNAcαの場合にα−)でのヘキソース(しばしば、GalもしくはGlc)もしくはヘキソサミン(GlcNAcもしくはGalNAc)であり;
(ii)Neu5Acα2,6以外の糖は、Sug1の非還元位置のいずれにも付いておらず(Sug1が糖タンパク質にO−連結したGalNAcαである場合を除く);かつ/または
(iii)スルフェート、ホスフェート、グアニジウム、アミン、N−アセチルなどの非糖部分は、Sug1の非還元位置(典型的には6位)に付くことができ(例えば、HAとの接触を改善するために);
(c)Sug2および/またはSug3は:
(i)αもしくはβ配置(しばしばβ)でのヘキソース(しばしばGalもしくはGlc)もしくはヘキソサミン(GlcNAcもしくはGalNAc)であり;かつ/または
(ii)糖(Fucなど)、もしくはスルフェート、ホスフェート、グアニジウム、アミン、N−アセチルなどの非糖部分は、Sug2、Sug3、および/もしくはSug4の非還元位置に付くことができ;
(d)Neu5Acα2,6連結は別として、オリゴ糖中の任意の2つの糖間の連結は、1−2、1−3、1−4、および/もしくは1−6(典型的には1−3もしくは1−4);ならびに/あるいは
(e)Neu5Acα2,6が、糖タンパク質にO−連結したGalNAcαに連結されており、追加の糖がGalNAcαの非還元末端に連結されている構造、例えば、
(i)Neu5Acα2,6(Neu5Acα2,3Galβ1−3)GalNAcα−
(ii)Neu5Acα2,6(Galβ1−3)GalNAcα−
とすることができる。
【0049】
非天然アミノ酸:本明細書で使用する場合、用語「非天然アミノ酸」は、20の天然に存在するアミノ酸のうちの1つでない任意のアミノ酸、修飾アミノ酸、および/またはアミノ酸類似体を指す。その開示全体が参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第7,045,337号、米国特許第7,385,028号、および米国特許第7,332,571号を参照。本明細書で使用する場合、「非天然アミノ酸」は、それだけに限らないが、塩、アミノ酸誘導体(アミドなど)、および/または置換体を含めた化学修飾されたアミノ酸も包含する。ペプチド中のカルボキシ−および/またはアミノ−末端アミノ酸を含めたアミノ酸は、ペグ化(peglyation)、メチル化、アミド化、アセチル化、および/またはインフォールド剤の活性に悪影響しない他の化学基との置換によって修飾することができる。アミノ酸は、ジスルフィド結合に参加する場合がある。用語「アミノ酸」は、「アミノ酸残基」と互換的に使用され、遊離アミノ酸および/またはペプチドのアミノ酸残基を指すことができる。この用語が使用される脈絡から、これが遊離アミノ酸を指すのか、またはペプチドの残基を指すのかが明らかとなる。
【0050】
ユニバーサル抗インフルエンザ剤:本明細書で使用する場合、用語「ユニバーサル抗インフルエンザ剤」は、インフルエンザウイルス菌株、グループ、クレード、およびクラスターにわたって広域スペクトル中和を有する薬剤を指す(上記の「広域スペクトル」の定義、および図19を参照)。
【0051】
ワクチン接種:本明細書で使用する場合、用語「ワクチン接種」は、免疫応答を生じさせるように意図された組成物、例えば、病原体の投与を指す。本発明の目的に関して、ワクチン接種は、病原体への曝露の前、間、および/または後に、ある特定の実施形態では、この病原体への曝露の前、間、および/または直後に投与することができる。いくつかの実施形態では、ワクチン接種には、適切に時間間隔を開けた、ワクチン接種組成物の複数の投与が含まれる。
【0052】
変異体:本明細書で使用する場合、用語「変異体」は、対象とする特定のポリペプチド(例えば、HAポリペプチド)と、その配列が比較されている「親」ペプチドとの間の関係を記述する関連用語である。対象とするポリペプチドが、特定の位置での少数の配列変化を別として、親のアミノ酸配列と同一であるアミノ酸配列を有する場合、この対象とするポリペプチドは、この親ペプチドの「変異体」とみなされる。典型的には、変異体中の20%、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%未満の残基が、親と比較した場合、置換されている。いくつかの実施形態では、変異体は、親と比較した場合、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1個の置換された残基を有する。変異体は、非常に少数(例えば、5、4、3、2、または1未満)の置換された機能的な残基(すなわち、特定の生物活性に参加する残基)を有することが多い。さらに、変異体は、典型的には、親と比較した場合、5、4、3、2、または1以下の付加または欠失を有し、多くの場合、付加または欠失をまったく有さない。さらに、いずれの付加または欠失も、典型的には約25、20、19、18、17、16、15、14、13、10、9、8、7、6未満であり、通常、約5、4、3、または2残基未満である。いくつかの実施形態では、親ポリペプチドは、自然において見出されるものである。例えば、親HAポリペプチドは、インフルエンザウイルスの天然の(例えば、野生型)分離株において見出されるものとすることができる(例えば、野生型HAポリペプチド)。
【0053】
ベクター:本明細書で使用する場合、「ベクター」は、これが連結されている別の核酸を輸送することができる核酸分子を指す。いくつかの実施形態では、ベクターは、真核細胞または原核細胞などの宿主細胞中で、これらが連結されている核酸の染色体外複製および/または発現をすることができる。作動可能に連結した遺伝子の発現を指示することができるベクターは、「発現ベクター」と本明細書で呼ばれる。
【0054】
野生型:当技術分野で理解されているように、語句「野生型」は一般に、自然において見出されるような、タンパク質または核酸の通常の形態を指す。例えば、野生型HAポリペプチドは、インフルエンザウイルスの天然の分離株中に見出される。様々な異なる野生型HA配列を、NCBIインフルエンザウイルス配列データベース、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/genomes/FLU/FLU.html中に見出すことができる。
【0055】
本発明のある特定の実施形態の詳細な説明
赤血球凝集素(HA)ポリペプチド
インフルエンザウイルスは、ウイルス特有の膜中に埋もれた、2つの糖タンパク質、赤血球凝集素(HA)ポリペプチド、およびノイラミニダーゼ(NA)ポリペプチドを含有する脂質膜エンベロープを特徴とするRNAウイルスである。16の公知のHAポリペプチドサブタイプ(H1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、およびH16)、ならびに9つのNAポリペプチドサブタイプ(N1、N2、N3、N4、N5、N6、N7、N8、およびN9)が存在し、様々なインフルエンザ菌株は、その菌株のHAポリペプチドおよびNAポリペプチドサブタイプの番号に基づいて命名され、1つのNAポリペプチドサブタイプと組み合わせた1つのHAポリペプチドサブタイプの様々な組合せ(例えば、H1N1、H1N2、H1N3、H1N4、H1N5など)が存在する。
【0056】
アミノ酸配列同一性の比較および結晶構造の比較に基づいて、HAポリペプチドサブタイプは、2つの主要グループおよび4つのより小さいクレードに分けられており、これらはさらに、5つのクラスターに分けられる(図19)。異なるHAポリペプチドサブタイプは、必ずしも強いアミノ酸配列同一性を共有する必要はないが、異なるHAポリペプチドサブタイプの全体的な3D構造は、分類目的で使用され得るいくつかのわずかな差異を伴って互いに同様である。例えば、中心のα−ヘリックスとの関連での膜−遠位サブドメインの特定の方向は、HAポリペプチドサブタイプを決定するのに通常使用される1つの構造的特徴である(Russellら、Virology、325巻:287頁、2004年)。
【0057】
成熟したHAポリペプチドは、2つのドメイン、すなわち(1)シアル酸結合ドメインとして公知のコアHA−1ドメイン、および(2)HA−2ドメインとして公知のHAの膜貫通型ストークから構成される。HA−1は、グリカンのための結合部位を含有し、HA−1は、HAのHA−受容体への結合の媒介に関与すると考えられている。HA−2は、HA−1ドメインの提示に関与する。
【0058】
任意の特定の理論に束縛されることを望むことなく、すべてのインフルエンザサブタイプに由来するHA配列の分析により、十分に保存されており、有望な治療分子にアクセス可能なHA−1(ストーク)ドメインとHA−2(ヘッド)ドメインの界面にある一連のアミノ酸が示された(図13)。研究により、基準のα−ヘリックスおよびその近傍における残基を含む、HA−1/HA−2界面の膜近位エピトープ領域(MPER)の優れた広域スペクトル保存も観察された(Ekiertら、Science、324巻(5924号):246頁、2009年;Suiら、Nat Struct Mol Biol. 16巻(3号):265頁、2009年)(図2)。
【0059】
CR6261 FAbを含む抗体(Ekiertら、Science、324巻(5924号):246頁、2009年)、およびF10 scFvを含む抗体(Suiら、Nat Struct Mol Biol. 16巻(3号):265頁、2009年)が、HAの高度に保存された膜近位エピトープ領域(MPER)に対して開発された(図3)。これらの抗体は、インフルエンザ−A菌株(H1、H2、H5、H9)のグループ−1クレードの中和に奏功するが、これらは、MPER付近でN−グリコシル化されたグループ−2菌株に対して効果的でない(Ekiertら、Science、324巻(5924号):246頁、2009年;Suiら、Nat Struct Mol Biol.、16巻(3号):265頁、2009年)。これらのグループ−2菌株は、N−末端HA−1ドメインのAsn−38においてグリコシル化されたインフルエンザ−A H3、H7およびH10、ならびにC−末端HA−1ドメインのAsn−238においてグリコシル化されたウイルスのインフルエンザ−Bクレード全体を含む。理論に束縛されることを望むわけではないが、本発明者らは、N−グリコシル化により、IgG、mAb、およびscFvなどの大きな抗体に基づく分子が、下にあるエピトープにアクセスすることが妨げられ、それによって、これらの広域スペクトル適用を制限していることを提案する(図4)。
【0060】
HA受容体
HAポリペプチドは、HA受容体として公知の糖タンパク質受容体に結合することによって、細胞の表面と相互作用する。HAポリペプチドのHA受容体への結合は、HA受容体上のN結合型グリカンによって主に媒介される。具体的には、インフルエンザウイルス粒子の表面上のHAポリペプチドは、細胞宿主の表面上のHA受容体に付随するシアル化グリカンを認識する。認識および結合の後、宿主細胞は、ウイルス細胞を貪食し、ウイルスは、はるかに多くのウイルス粒子を複製および産生することによって、隣接する細胞に分布することができる。
【0061】
HAポリペプチドは、H1〜H16と呼ばれる16のサブタイプのうちの1つのホモ三量体としてウイルス膜中に存在する。これらのサブタイプのうちの3つのみ(H1、H2、およびH3)がこれまでのところ、ヒト感染に適応している。ヒトに感染するように適応したHAポリペプチド(例えば、パンデミックH1N1(1918年)およびH3N2(1967〜68年)インフルエンザサブタイプに由来するHAポリペプチド)の1つの報告された特徴は、α2,3シアル化グリカンに優先的に結合する、これらのトリ祖先と比較して、α2,6シアル化グリカンに優先的に結合するこれらの能力である(Skehel & Wiley、Annu Rev Biochem、69巻:531頁、2000年;Rogers、& Paulson、Virology、127巻:361頁、1983年;Rogersら、Nature、304巻:76頁、1983年;Sauterら、Biochemistry、31巻:9609頁、1992年;Connorら、Virology、205巻:17頁、1994年;Tumpeyら、Science、310巻:77頁、2005年)。いずれの特定の理論にも束縛されることを望むことなく、ヒト宿主に感染する能力は、特定の連結のグリカンへの結合とそれほど相関せず、特定のトポロジーのグリカンへの結合とより相関することが提案されている。本発明者らは、ヒトの感染を媒介するHAポリペプチドは、アンブレラトポロジーグリカンに結合し、コーントポロジーグリカンに対してアンブレラトポロジーグリカンについて選好を示すことが多いことを具体的に実証した(コーントポロジーグリカンがα2,6シアル化グリカンである場合があっても)(例えば、そのそれぞれが参照により本明細書に組み込まれている、2009年1月2日に出願されたUSSN12/348,266、2008年11月17日に出願されたUSSN12/301,126、2008年1月3日に出願されたUSSN61/018,783、2008年1月3日に出願されたUSSN11/969,040、2007年8月14日に出願されたUSSN11/893,171、2006年8月14日に出願されたUSSN60/837,868、8月14日に出願されたUSSN60/837,869、および2007年8月14日に出願されたPCT出願PCT/US07/18160を参照)。
【0062】
シアル化オリゴ糖(α2,3およびα2,6連結の両方の)に結合したH1(ヒトおよびブタ)、H3(トリ)、およびH5(トリ)サブタイプに由来するHAポリペプチドのいくつかの結晶構造は入手可能であり、HAポリペプチドのこれらのグリカンとの異なる相互作用に関与する特定のアミノ酸への分子洞察をもたらす(Eisenら、Virology、232巻:19頁、1997年;Haら、Proc Natl Acad Sci USA、98巻:11181頁、2001年;Haら、Virology、309巻:209頁、2003年;Gamblinら、Science、303巻:1838頁、2004年;Stevensら、Science、303巻:1866頁、2004年;Russellら、Glycoconj J 23巻:85頁、2006年;Stevensら、Science、312巻:404頁、2006年)。例示的なHA−グリカン相互作用のいくつかの結晶構造は、同定されており、表3に提示されている:
【0063】
【表3】

例えば、単独の、またはα2,3もしくはα2,6シアル化オリゴ糖に結合したH5(A/duck/Singapore/3/97)の結晶構造は、結合したグリカンと直接相互作用するアミノ酸、およびまた、1つまたは複数の程度の分離で離れたアミノ酸を特定する(Stevensら、Proc Natl Acad Sci USA 98巻:11181頁、2001年)。いくつかの場合では、これらの残基の立体配座は、結合状態と非結合状態で異なる。例えば、Glu190、Lys193、およびGln226はすべて、直接結合相互作用に参加し、結合状態と非結合状態で異なる立体配座を有する。Glu190の近位にあるAsn186の立体配座も、結合状態と非結合状態で著しく異なる。
【0064】
いずれの特定の理論にも束縛されることを望むことなく、HA受容体は、受容体のHAポリペプチド結合部位付近のα2,3またはα2,6シアル化グリカンによって修飾され、受容体に結合したグリカンの連結のタイプは、受容体のHAポリペプチド結合部位の立体配座に影響する場合があり、したがって異なるHAポリペプチドに対する受容体の特異性に影響すると考えられる。例えば、トリHA受容体のグリカン結合ポケットは狭い。いずれの特定の理論にも束縛されることを望むことなく、このポケットは、トランス立体配座のα2,3シアル化グリカンおよび/またはα2,3連結されていても、α2,6連結されていてもコーントポロジーグリカンに結合することが提案されている(図10〜12)。
【0065】
トリの組織ならびにまた、ヒトの深肺および胃腸(GI)管組織中のHA受容体は、α2,3シアル化グリカン連結を特徴とし、さらに、コーントポロジーを主として採用するα2,3シアル化グリカンおよび/またはα2,6シアル化グリカンを含めたグリカンを特徴とする。そのようなコーントポロジーグリカンを有するHA受容体は、本明細書でCTHArと呼ばれる場合がある。
【0066】
一方、上気道の気管支および気管中のヒトHA受容体は、α2,6シアル化グリカンによって修飾される。α2,3モチーフと異なり、α2,6モチーフは、C6〜C5結合のために追加の立体配座的自由度を有する(Russellら、Glycoconj J 23巻:85頁、2006年)。そのようなα2,6シアル化グリカンに結合するHAポリペプチドは、この立体配座的な自由から生じる多様な構造を収容するためのより開いた結合ポケットを有する。さらに、本発明によれば、HAポリペプチドは、アンブレラトポロジーでグリカン(例えば、α2,6シアル化グリカン)に結合する必要がある場合があり、特に、ヒト上気道組織の感染を有効に媒介するために、強い親和性および/または特異性を伴ってそのようなアンブレラトポロジーグリカンに結合する必要がある場合がある。アンブレラトポロジーグリカンを有するHA受容体は、本明細書でUTHArと呼ばれる場合がある。
【0067】
これらの空間的に制限されたグリコシル化プロファイルの結果として、ヒトは、多くの野生型トリHAポリペプチド(例えば、トリH5)を含有するウイルスによって通常感染されない。具体的には、ウイルスに遭遇する可能性が最も高いヒトの気道部分(すなわち、気管および気管支)は、コーングリカン(例えば、α2,3シアル化グリカン、および/または短いグリカン)を伴う受容体を欠いており、野生型トリHAポリペプチドは、典型的には、コーングリカン(例えば、α2,3シアル化グリカン、および/または短いグリカン)と関連する受容体に主に、またはもっぱら結合するので、ヒトは、めったにトリウイルスに感染した状態にならない。ウイルスがアンブレラグリカン(例えば、長いα2,6シアル化グリカン)を有する深肺および/または胃腸管受容体にアクセスすることができるほどウイルスと十分に密接に接触しているときのみ、ヒトは実際に感染した状態になる。
【0068】
インフォールド剤
インフォールド剤の構造
本明細書に記載されるように、インフォールド剤は一般に、選択された結合部位に結合するポリペプチド剤である。多くの実施形態では、インフォールド剤は、インフォールド剤が結合部位の近傍にあるときに、個々の相互作用残基が、同系標的残基の予め選択された距離または体積内に位置するように選択および配置された相互作用残基に富む「折り畳み」骨格を特徴とする構造を有する。
【0069】
本発明によるインフォールド剤骨格構造として適切に利用される、様々なポリペプチド「折り畳み」構造が、当技術分野で公知である。すなわち、アミノ酸の線状鎖が、アミノ酸が空間において近位であるが、配列において遠位であるように、別々の二次構造および三次構造を採用することは周知である。例えば、一般的な二次の折り畳みには、α−ヘリックス、β−シート、ポリプロリンヘリックス、310ヘリックスおよびターンが含まれる。一般的な三次の折り畳みとして、フェレドキシン様(4.45%)、TIM−バレル(3.94%)、ヌクレオチド三リン酸加水分解酵素含有P−ループ(3.71%)、プロテインキナーゼ(PK)触媒ドメイン(3.14%)、NAD(P)結合ロスマンフォールドドメイン(2.80%)、DNA:RNA結合3−ヘリックス束(2.60%)、α−α高次らせん(1.95%)、S−アデノシル−L−メチオニン依存性メチルトランスフェラーゼ(1.92%)、7枚羽根のβ−プロペラ(1.85%)、α:β−加水分解酵素(1.84%)、PLP依存性トランスフェラーゼ(1.61%)、アデニンヌクレオチドα−加水分解酵素(1.59%)、フラボドキシン様(1.49%)、免疫グロブリン様β−サンドイッチ(1.38%)、および糖質コルチコイド受容体様(0.97%)が挙げられ、ここでカッコ内の値は、それぞれの折り畳みを採用する、注釈をつけられたタンパク質の百分率である(例えば、Zhangら、Cellular and Molecular Life Sciences、58巻:72頁、2001年を参照)。
【0070】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるインフォールド剤は、ヒト組織因子の細胞外領域、テネイシン、ニューログリアン、神経細胞接着分子1(NCAM)、インテグリンβ−4サブユニット、成長ホルモン受容体、エリスロポエチン(EPO)受容体、プロラクチン受容体、インターロイキン(inerleukin)−4受容体α鎖、GM−CSF受容体のβ鎖、IL−3受容体のβ鎖、IL−5受容体のβ鎖、顆粒球コロニー刺激因子(GC−SF)受容体、コンタクチン3(KIAA1496)、CDO前駆体の兄弟(BOC)、インターフェロン−γ受容体α鎖、サイトカイン受容体gp130サイトカイン−結合ドメイン、インターロイキン−10受容体1(IL−10R1)、タイプ1タイチンモジュール、インターロイキン−12のp40ドメイン(IL−12β鎖)、インターロイキン−6受容体α鎖、インターフェロン−α/β受容体β鎖、KIAA1568タンパク質、KIAA0343タンパク質、KIAA1355タンパク質、繊毛様神経栄養因子受容体α、宿主細胞因子2(HCF−2)、アンキリンリピートドメイン1タンパク質(FANK1)、エフリンタイプB受容体1、エフリンタイプA受容体8、サイトカイン受容体共通γ鎖、rim結合タンパク質2、インターロイキン−2受容体β鎖、テネイシン−X、受容体型チロシン−タンパク質ホスファターゼδ(PTPRD)、サイドキック(sidekick)2、ネオゲニンダウン症候群細胞接着分子様タンパク質1(DSCAML1)、ミオシン(mysoin)結合タンパク質C(高速型)、受容体型チロシン−タンパク質ホスファターゼF(PTPRF)、ヘッジホッグ受容体iHog、エフリンタイプA受容体1からなる群から選択されるタンパク質に基づく折り畳み骨格構造を有する。
【0071】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるインフォールド剤は、抗体の折り畳み骨格を有する。本明細書に例示されるいくつかのインフォールド剤(例えば、表9、例えば、インフォールド−23からインフォールド−40を参照)は、抗体の折り畳み骨格を有する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるインフォールド剤は、β−サンドイッチドメインの折り畳み骨格を有する。
【0072】
いくつかの実施形態では、本発明のインフォールド剤は、HAポリペプチドおよび/またはHA受容体中の特定の標的残基と相互作用するように選択および配置された相互作用残基の存在を特徴とする。例えば、表4および5は、HAポリペプチド(グリコシル化された、またはグリコシル化されていない;表4)、およびHA受容体(具体的には、シアル化グリカンを含有するHA受容体;表5)についてのある特定の代表的な標的残基のセットを提示し、図5および9も参照されたい。
【0073】
【表4】

【0074】
【表5】

いくつかの実施形態では、本発明は、これらの標的セットに結合する相互作用残基を含有するインフォールド剤を提供する。
【0075】
例えば、表6は、表7に示された規則に従って、HAポリペプチドおよび/またはHA受容体と相互作用するように設計された本発明のインフォールド剤において利用することができるインフォールド相互作用残基を提供する。
【0076】
【表6】

【0077】
【表7】

代わりに、またはさらに、インフォールド剤は、表4〜8ならびに/または図5、13、および/もしくは14に示された1つまたは複数の構造的特徴を特徴とするポリペプチドである。
【0078】
例えば、いくつかの実施形態では、本明細書に提供されるインフォールド剤は、表8の各ボックス内に規定される相互作用残基配列要素の1つまたは複数を含有する。各ボックスは、1つの配列要素を規定し、ここで、各ボックス内に列挙されたアミノ酸は、インフォールド剤のポリペプチド鎖中で互いに隣接する、または1個または2個のアミノ酸によって離された相互作用残基である。
【0079】
【表8】

いくつかの特定の実施形態では、提供されるインフォールド剤は、表9中に示されたインフォールド剤のアミノ酸配列と実質的に相同であるアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、提供されるインフォールド剤は、表9中のインフォールド剤のアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を有する。
【0080】
HA MPERに結合するように設計された特定のインフォールド剤の例示的なリスト(例えば、広域スペクトル、グリコシル化された、およびグリコシル化されていない)が、表9に提供されている。本発明によれば、本発明者らは、アミノ酸の10%未満が、HA結合に寄与することを見出した。本発明は、表3で以下に列挙したインフォールド剤の配列のいずれかと、50%を超える対での配列同一性を有するインフォールド剤を提供する。特に、本発明は、構造がさらに、表4〜8ならびに図5および13のいずれか1つに示された規則またはパラメータに従うインフォールド剤を提供する。
【0081】
【表9−1】

【0082】
【表9−2】

【0083】
【表9−3】

【0084】
【表9−4】

【0085】
【表9−5】

【0086】
【表9−6】

【0087】
【表9−7】

いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、HAポリペプチドのMPER領域に結合し、インフォールド−1、インフォールド−2、インフォールド−3、インフォールド−4、インフォールド−5、インフォールド−6、インフォールド−7、インフォールド−8、インフォールド−9、インフォールド−10、インフォールド−11、インフォールド−12、インフォールド−13、インフォールド−14、インフォールド−15、インフォールド−16、インフォールド−17、インフォールド−18、インフォールド−19、インフォールド−20、インフォールド−21、インフォールド−22、インフォールド−23、インフォールド−24、インフォールド−25、インフォールド−26、インフォールド−27、インフォールド−28、インフォールド−29、インフォールド−30、インフォールド−31、インフォールド−32、インフォールド−33、インフォールド−34、インフォールド−35、インフォールド−36、インフォールド−37、インフォールド−38、インフォールド−39、およびインフォールド−40を含む群から選択される。いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、HAポリペプチドのMPER領域に結合し、インフォールド−1、インフォールド−2、インフォールド−3、インフォールド−4、インフォールド−5、インフォールド−6、インフォールド−7、インフォールド−8、インフォールド−9、インフォールド−10、インフォールド−11、インフォールド−12、インフォールド−13、インフォールド−14、インフォールド−15、インフォールド−16、インフォールド−17、インフォールド−18、インフォールド−19、インフォールド−20、インフォールド−21、およびインフォールド−22を含む群から選択される。いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、HAポリペプチドのMPER領域に結合し、インフォールド−23、インフォールド−24、インフォールド−25、インフォールド−26、インフォールド−27、インフォールド−28、インフォールド−29、インフォールド−30、インフォールド−31、インフォールド−32、インフォールド−33、インフォールド−34、インフォールド−35、インフォールド−36、インフォールド−37、インフォールド−38、インフォールド−39、またはインフォールド−40を含む群から選択される。
【0088】
いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、HAポリペプチドのMPER領域およびグリカンに結合し、インフォールド−1、インフォールド−3、インフォールド−9、インフォールド−10、インフォールド−11、インフォールド−12、インフォールド−14、インフォールド−15、インフォールド−17、インフォールド−18、またはインフォールド−19を含む群から選択される。いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、HAポリペプチドのMPER領域およびグリカンに結合し、インフォールド−1、インフォールド−3、インフォールド−9、インフォールド−10、インフォールド−11、インフォールド−12、インフォールド−14、インフォールド−15、インフォールド−17、インフォールド−18、インフォールド−19、またはインフォールド−22を含む群から選択される。
【0089】
いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、HAポリペプチドのMPER領域、およびHAポリペプチド上のMPER近位のN−グリカンに結合し、インフォールド−11、インフォールド−12、インフォールド−14、インフォールド−15、インフォールド−18、またはインフォールド−19を含む群から選択される。
【0090】
いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、HAポリペプチドのMPER領域、およびHA受容体上のシアル化グリカンに結合し、インフォールド−1、インフォールド−3、インフォールド−9、インフォールド−10、インフォールド−17、またはインフォールド−19を含む群から選択される。いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、HAポリペプチドのMPER領域、およびHA受容体上のシアル化グリカンに結合し、インフォールド−1、インフォールド−3、インフォールド−9、インフォールド−10、インフォールド−17、インフォールド−19、またはインフォールド−22を含む群から選択される。
【0091】
さらなる実施形態では、インフォールド剤は、HAポリペプチドのMPER領域、HAポリペプチド上のMPER近位のN−グリカン、およびHA受容体上のシアル化グリカンに結合し、インフォールド−19である。
【0092】
いくつかの実施形態では、本発明によって使用するためのインフォールド剤は、表9に提示されたもののいずれかを含む。いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、インフォールド−1、インフォールド−3、インフォールド−9、インフォールド−10、インフォールド−11、インフォールド−12、インフォールド−14、インフォールド−15、インフォールド−17、インフォールド−18、インフォールド−19、インフォールド−22、インフォールド−28、およびインフォールド−34を含む群から選択される。いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、インフォールド−1、インフォールド−3、インフォールド−9、インフォールド−10、インフォールド−17、インフォールド−19、およびインフォールド−28を含む群から選択される。
【0093】
いくつかの実施形態では、本開示によるインフォールド剤の同系標的は、18、19、20、21、41、45、49、52、53、および56、ならびにこれらの組合せからなる群から選択される位置で、HAにおいて見出される残基に対応する少なくとも1つの残基を含む。いくつかの実施形態では、同系標的残基は、Trp21、Ile45、Asp19、Asn19、Ala19、His18、Gln18、Leu18、Ile18、Val18、Gly20、Thr41、Thr49、Asn49、Gln49、Val52、Leu52、Ile52、Asn53、Ile56、およびVal56からなる群から選択される残基に対応する少なくとも1つの残基を含む。
【0094】
いくつかの実施形態では、同系標的残基が、18位でHAにおいて見出される残基に対応する少なくとも1つの残基を含む場合、インフォールド剤は、インフォールド剤が結合部位の近傍にあるときに、これがHAの18位に対応する標的残基の4〜7Åの半径で位置するHis、Asp、Glu、Trp、Tyr、Asn、Lys、Arg、Gln、Met、Cys、Phe、Ile、Leu、およびValからなる群から選択される相互作用残基をインフォールド剤が含有するように配置および構築される。いくつかの実施形態では、同系標的残基が、18位でHAにおいて見出される残基に対応する少なくとも1つの残基を含む場合、インフォールド剤が結合部位の近傍にあるときに、HAの18位に対応する標的残基の半径4〜7Åに位置する、His、Asp、Glu、Trp、Tyr、Asn、Lys、Arg、Gln、Met、Cys、Phe、Ile、Leu、Val、Thr、Ser、Gly、Ala、およびProからなる群から選択される相互作用残基をインフォールド剤が含有するように、インフォールド剤が配置および構築される。いくつかの実施形態では、同系標的残基が、18位でHAにおいて見出される残基に対応する少なくとも1つの残基を含む場合、インフォールド剤が結合部位の近傍にあるときに、半径4〜7Å以内に位置する、His、Asp、Glu、Trp、Tyr、Asn、Lys、Arg、Gln、Met、Cys、Phe、Ile、Leu、Val、Thr、Ser、Gly、Ala、またはPro以外の残基をインフォールド剤が含有しない。
【0095】
いくつかの実施形態では、同系標的残基が、19位でHAにおいて見出される残基に対応する少なくとも1つの残基を含む場合、インフォールド剤が結合部位の近傍にあるときに、HAの19位に対応する標的残基の半径4〜7Åに位置する、Arg、Lys、His、Ser、Thr、Asn、Asp、Gln、Glu、Ile、Val、Ala、およびGlyからなる群から選択される相互作用残基をインフォールド剤が含有するように、インフォールド剤が配置および構築される。いくつかの実施形態では、同系標的残基が、19位でHAにおいて見出される残基に対応する少なくとも1つの残基を含む場合、インフォールド剤が結合部位の近傍にあるときに、HAの19位に対応する標的残基の半径4〜7Åに位置する、Arg、Lys、His、Ser、Thr、Asn、Asp、Gln、Glu、Ile、Val、Ala、Gly、Tyr、Pro、Trp、Phe、Leu、Cys、およびMetからなる群から選択される相互作用残基をインフォールド剤が含有するように、インフォールド剤が配置および構築される。いくつかの実施形態では、同系標的残基が、19位でHAにおいて見出される残基に対応する少なくとも1つの残基を含む場合、インフォールド剤が結合部位の近傍にあるときに、半径4〜7Å以内に位置する、Arg、Lys、His、Ser、Thr、Asn、Asp、Gln、Glu、Ile、Val、Ala、Gly、Tyr、Pro、Trp、Phe、Leu、Cys、またはMet以外の残基をインフォールド剤が含有しない。
【0096】
いくつかの実施形態では、同系標的残基が、20位でHAにおいて見出される残基に対応する少なくとも1つの残基を含む場合、インフォールド剤が結合部位の近傍にあるときに、HAの20位に対応する標的残基の半径4〜7Åに位置する、Gly、Ala、Cys、Met、Ser、およびProからなる群から選択される相互作用残基をインフォールド剤が含有するように、インフォールド剤が配置および構築される。いくつかの実施形態では、同系標的残基が、20位でHAにおいて見出される残基に対応する少なくとも1つの残基を含む場合、インフォールド剤が結合部位の近傍にあるときに、HAの20位に対応する標的残基の半径4〜7Åに位置する、Gly、Ala、Asn、Asp、Arg、Phe、Trp、His、Tyr、Gln、およびLysからなる群から選択される相互作用残基をインフォールド剤が含有するように、インフォールド剤が配置および構築される。いくつかの実施形態では、同系標的残基が、20位でHAにおいて見出される残基に対応する少なくとも1つの残基を含む場合、インフォールド剤が結合部位の近傍にあるときに、半径4〜7Å以内に位置する、Gly、Ala、Cys、Met、Ser、Pro、Asn、Asp、Arg、Phe、Trp、His、Tyr、Gln、またはLys以外の残基をインフォールド剤が含有しない。
【0097】
いくつかの実施形態では、同系標的残基が、21位でHAにおいて見出される残基に対応する少なくとも1つの残基を含む場合、インフォールド剤が結合部位の近傍にあるときに、HAの21位に対応する標的残基の半径4〜7Åに位置する、Tyr、Ile、Met、Phe、His、Cys、およびProからなる群から選択される相互作用残基をインフォールド剤が含有するように、インフォールド剤が配置および構築される。いくつかの実施形態では、同系標的残基が、21位でHAにおいて見出される残基に対応する少なくとも1つの残基を含む場合、インフォールド剤が結合部位の近傍にあるときに、HAの21位に対応する標的残基の半径4〜7Åに位置する、Gly、Val、Arg、Ser、Thr、Trp、Leu、およびAlaからなる群から選択される相互作用残基をインフォールド剤が含有するように、インフォールド剤が配置および構築される。いくつかの実施形態では、同系標的残基が、21位でHAにおいて見出される残基に対応する少なくとも1つの残基を含む場合、インフォールド剤が結合部位の近傍にあるときに、半径4〜7Å以内に位置する、Tyr、Ile、Met、Phe、His、Cys、Pro、Gly、Val、Arg、Ser、Thr、Trp、Leu、またはAla以外の残基をインフォールド剤が含有しない。
【0098】
いくつかの実施形態では、同系標的残基が、41位でHAにおいて見出される残基に対応する少なくとも1つの残基を含む場合、インフォールド剤が結合部位の近傍にあるときに、HAの41位に対応する標的残基の半径4〜7Åに位置する、Ser、Thr、Asp、Asn、Glu、およびGlnからなる群から選択される相互作用残基をインフォールド剤が含有するように、インフォールド剤が配置および構築される。いくつかの実施形態では、同系標的残基が、41位でHAにおいて見出される残基に対応する少なくとも1つの残基を含む場合、インフォールド剤が結合部位の近傍にあるときに、HAの41位に対応する標的残基の半径4〜7Åに位置する、Met、Ile、Val、Tyr、Ala、Gly、His、Arg、Lys、およびProからなる群から選択される相互作用残基をインフォールド剤が含有するように、インフォールド剤が配置および構築される。いくつかの実施形態では、同系標的残基が、41位でHAにおいて見出される残基に対応する少なくとも1つの残基を含む場合、インフォールド剤が結合部位の近傍にあるときに、半径4〜7Å以内に位置する、Ser、Thr、Asp、Asn、Glu、Gln、Met、Ile、Val、Tyr、Ala、Gly、His、Arg、Lys、またはPro以外の残基をインフォールド剤が含有しない。
【0099】
いくつかの実施形態では、同系標的残基が、45位でHAにおいて見出される残基に対応する少なくとも1つの残基を含む場合、インフォールド剤が結合部位の近傍にあるときに、HAの45位に対応する標的残基の半径4〜7Åに位置する、Ile、Met、Phe、Leu、Val、Trp、およびCysからなる群から選択される相互作用残基をインフォールド剤が含有するように、インフォールド剤が配置および構築される。いくつかの実施形態では、同系標的残基が、45位でHAにおいて見出される残基に対応する少なくとも1つの残基を含む場合、インフォールド剤が結合部位の近傍にあるときに、HAの45位に対応する標的残基の半径4〜7Åに位置する、Tyr、Pro、Ala、およびThrからなる群から選択される相互作用残基をインフォールド剤が含有するように、インフォールド剤が配置および構築される。いくつかの実施形態では、同系標的残基が、45位でHAにおいて見出される残基に対応する少なくとも1つの残基を含む場合、インフォールド剤が結合部位の近傍にあるときに、半径4〜7Å以内に位置する、Ile、Met、Phe、Leu、Val、Trp、Cys、Tyr、Pro、Ala、またはThr以外の残基をインフォールド剤が含有しない。
【0100】
いくつかの実施形態では、同系標的残基が、49位でHAにおいて見出される残基に対応する少なくとも1つの残基を含む場合、インフォールド剤が結合部位の近傍にあるときに、HAの45位に対応する標的残基の半径4〜7Åに位置する、Ser、Thr、Asp、Asn、Glu、Gln、Lys、およびArgからなる群から選択される相互作用残基をインフォールド剤が含有するように、インフォールド剤が配置および構築される。いくつかの実施形態では、同系標的残基が、49位でHAにおいて見出される残基に対応する少なくとも1つの残基を含む場合、インフォールド剤が結合部位の近傍にあるときに、HAの49位に対応する標的残基の半径4〜7Åに位置する、Met、Ile、Val、Tyr、Ala、Gly、His、Arg、Lys、Pro、Trp、Ser、およびThrからなる群から選択される相互作用残基をインフォールド剤が含有するように、インフォールド剤が配置および構築される。いくつかの実施形態では、同系標的残基が、49位でHAにおいて見出される残基に対応する少なくとも1つの残基を含む場合、インフォールド剤が結合部位の近傍にあるときに、半径4〜7Å以内に位置する、Ser、Thr、Asp、Asn、Glu、Gln、Lys、Arg、Met、Ile、Val、Tyr、Ala、Gly、His、Pro、またはTrp以外の残基をインフォールド剤が含有しない。
【0101】
いくつかの実施形態では、同系標的残基が、52位でHAにおいて見出される残基に対応する少なくとも1つの残基を含む場合、インフォールド剤が結合部位の近傍にあるときに、HAの52位に対応する標的残基の半径4〜7Åに位置する、Val、Leu、Ile、Phe、Met、Cys、Tyr、およびTrpからなる群から選択される相互作用残基をインフォールド剤が含有するように、インフォールド剤が配置および構築される。いくつかの実施形態では、同系標的残基が、52位でHAにおいて見出される残基に対応する少なくとも1つの残基を含む場合、インフォールド剤が結合部位の近傍にあるときに、HAの52位に対応する標的残基の半径4〜7Åに位置する、Cys、Met、Trp、Tyr、Ala、Gly、Thr、Pro、His、Ser、およびAspからなる群から選択される相互作用残基をインフォールド剤が含有するように、インフォールド剤が配置および構築される。いくつかの実施形態では、同系標的残基が、52位でHAにおいて見出される残基に対応する少なくとも1つの残基を含む場合、インフォールド剤が結合部位の近傍にあるときに、半径4〜7Å以内に位置する、Val、Leu、Ile、Phe、Met、Cys、Tyr、Trp、Ala、Gly、The、Pro、His、またはSer以外の残基をインフォールド剤が含有しない。
【0102】
いくつかの実施形態では、同系標的残基が、53位でHAにおいて見出される残基に対応する少なくとも1つの残基を含む場合、インフォールド剤が結合部位の近傍にあるときに、HAの53位に対応する標的残基の半径4〜7Åに位置する、Asn、Asp、Gln、Glu、Ser、Thr、およびLysからなる群から選択される相互作用残基をインフォールド剤が含有するように、インフォールド剤が配置および構築される。いくつかの実施形態では、同系標的残基が、53位でHAにおいて見出される残基に対応する少なくとも1つの残基を含む場合、インフォールド剤が結合部位の近傍にあるときに、HAの53位に対応する標的残基の半径4〜7Åに位置する、His、Arg、Tyr、Gly、Ala、Trp、およびProからなる群から選択される相互作用残基をインフォールド剤が含有するように、インフォールド剤が配置および構築される。いくつかの実施形態では、同系標的残基が、53位でHAにおいて見出される残基に対応する少なくとも1つの残基を含む場合、インフォールド剤が結合部位の近傍にあるときに、半径4〜7Å以内に位置する、Asn、Asp、Gln、Glu、Ser、Thr、Lys、His、Arg、Tyr、Gly、Ala、Trp、またはPro以外の残基をインフォールド剤が含有しない。
【0103】
いくつかの実施形態では、同系標的残基が、56位でHAにおいて見出される残基に対応する少なくとも1つの残基を含む場合、インフォールド剤が結合部位の近傍にあるときに、HAの56位に対応する標的残基の半径4〜7Åに位置する、Ile、Met、Phe、Leu、Val、Trp、およびCysからなる群から選択される相互作用残基をインフォールド剤が含有するように、インフォールド剤が配置および構築される。いくつかの実施形態では、同系標的残基が、56位でHAにおいて見出される残基に対応する少なくとも1つの残基を含む場合、インフォールド剤が結合部位の近傍にあるときに、HAの56位に対応する標的残基の半径4〜7Åに位置する、Tyr、Pro、Ala、Thr、Cys、Met、Trp、およびGlyからなる群から選択される相互作用残基をインフォールド剤が含有するように、インフォールド剤が配置および構築される。いくつかの実施形態では、同系標的残基が、56位でHAにおいて見出される残基に対応する少なくとも1つの残基を含む場合、インフォールド剤が結合部位の近傍にあるときに、半径4〜7Å以内に位置する、Ile、Met、Phe、Leu、Val、Trp、Cys、Tyr、Pro、Ala、Thr、Trp、またはGly以外の残基をインフォールド剤が含有しない。
【0104】
以下でさらに論じるように、いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、選択された結合部位に結合するポリペプチドである。多くの実施形態では、インフォールド剤は、インフォールド剤が結合部位の近傍にあるときに、個々の相互作用残基が、同系標的残基の予め選択された距離または体積内に位置するように選択および配置された相互作用残基に富む「折り畳み」骨格を特徴とする構造を有する。いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、操作または設計されたポリペプチドである。いくつかの実施形態では、本明細書に提供されるインフォールド剤は、赤血球凝集素(HA)ポリペプチドに結合する。いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、MPER領域でHAポリペプチドに結合する。いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、グリコシル化と無関係にHAポリペプチドMPER領域に結合する。例えば、いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、MPER領域へのその結合が、MPER領域のグリコシル化によって妨げられない適切なサイズのものとなるように設計される。いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、他の点では同一であるグリコシル化されていないMPER領域についてのその親和性の少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、またはそれを上回る親和性で、グリコシル化されたMPER領域に結合する。いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、6000〜120,000Åの間の体積サイズを有する。いくつかの実施形態では、提供されるインフォールド剤は、抗体の体積サイズ以下である体積サイズを有する。いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、約20×30=600Åの総標的エピトープ表面積を有する。いくつかの実施形態では、インフォールド剤の総標的エピトープ表面積は、約10Å、20Å、30Å、40Å、50Å、60Å、70Å、80Å、85Å、90Å、95Å、100Å、105Å、110Å、115Å、120Å、125Å、130Å、135Å、140Å、145Å、150Å、151Å、152Å、153Å、154Å、155Å、160Å、165Å、170Å、175Å、180Å、185Å、190Å、195Å、200Å、210Å、220Å、230Å、240Å、250Å、260Å、270Å、280Å、290Å、300Å、310Å、315Å、320Å、325Å、330Åまたはそれ以上未満である。いくつかの実施形態では、総標的エピトープ表面積は、約200Å、約175Å、約150Å、約125Å、またはそれ以下未満である。
【0105】
多くの実施形態では、インフォールド剤は、約1000アミノ酸未満である長さを有する。いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、長さが約1000、975、950、925、900、875、850、825、800、775、750、725、700、675、650、625、600、575、550、525、500、475、450、425、400、375、350、325、300、275、250、240、230、220、210、200、190、180、170、160、150、140、130、125、120、115、110、105、100、95、90、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25、または20アミノ酸の最大長さ未満である長さを有する。いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、長さが約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79またはそれ以上のアミノ酸の最小長さより長い長さを有する。いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、最大長さが最小長さより長い限り、そのような最小長さのいずれか1つと、そのような最大長さのいずれか1つとの間の長さを有する。いくつかの特定の実施形態では、インフォールド剤は、約20と500、または30と400、または40と300、または80と250アミノ酸の間の長さを有する。いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、約84、88、93、95、98、104、106、110、111、116、119、123、124、132、212、215、244、または245の長さを有する。いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、天然アミノ酸から構成される。他の実施形態では、インフォールド剤は、非天然アミノ酸から構成される。いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、天然および非天然アミノ酸の組合せから構成される。いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、共有結合的に(例えば、リンカーによって)または非共有結合的に会合した1つ、2つ、またはそれ以上のポリペプチド鎖から構成される。いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、インフォールド剤が相互作用のためのその3次元構造および配置を保持する限り、より長いポリペプチド鎖(例えば、完全抗体、血清アルブミン、または他の担体タンパク質)に連結し、またはこのポリペプチド鎖の一部であることができる。いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、インフォールドであるか、またはインフォールドでない別のポリペプチド配列のN末端またはC末端に付加することができる。いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、インフォールドであるか、またはインフォールドでない別のポリペプチド中の配列に組み込まれ、それによってポリペプチド配列を2つ以上のセグメントに分離する。いくつかの実施形態では、インフォールドであるか、またはインフォールドでない別のポリペプチドのN末端もしくはC末端、または配列内にインフォールドを付加することは、以下のうちの少なくとも1つ以上を可能にすることができる:免疫原性の減少、循環寿命の増大、より遅いインビボ分解、局所的な免疫応答の扇動、免疫系分子との相互作用、体積の増大、インフォールド標的(複数可)に対する親和性の増大、インフォールド標的(複数可)に対する特異性の増大、または他の一般に使用される治療剤/予防剤送達プロトコールの使用。いくつかの実施形態では、インフォールドであるか、またはインフォールドでない別のポリペプチドのN末端もしくはC末端、または配列内にインフォールドを付加することは、インフォールド剤の標的(例えば、HAポリペプチド、HAポリペプチドのMPER領域、HAポリペプチド上のN−グリカン、HA受容体、またはHA受容体上のシアル化グリカン)への結合に対して直接の効果を有さない。
【0106】
いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、1つまたは複数の標的残基との相互作用によってその標的結合部位に結合する。いくつかの実施形態では、そのような標的残基は、アミノ酸、サッカリド、またはこれらの組合せである。いくつかの実施形態では、本発明は、HAポリペプチド、HAポリペプチド上のN結合型グリカン、HA受容体、HA受容体上のシアル化グリカン、またはこれらの様々な組合せに結合するインフォールド剤を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、HAポリペプチドに結合する第1のインフォールド剤、およびHA受容体に結合する第2のインフォールド剤を含むポリペプチド剤を提供する。いくつかのそのような実施形態では、ポリペプチド剤は、場合により1つまたは複数の連結アミノ酸によって互いに接続された、第1および第2のインフォールドを含む単一ポリペプチド鎖を含む。いくつかの実施形態では、HA受容体に結合するインフォールド剤は、HA受容体上の1つまたは複数のグリカンと相互作用する。いくつかの実施形態では、インフォールド剤はシアル化グリカンに結合する。いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、アンブレラ様トポロジーを有するシアル化グリカンに結合する。ある特定の実施形態では、インフォールド剤は、高い親和性および/または特異性を有するアンブレラトポロジーグリカンに結合する。いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、他のトポロジーのグリカン(例えば、コーントポロジーグリカン)と比較した場合、アンブレラトポロジーグリカンに対して結合の選好を示す。いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、HA受容体への結合においてHAと競合する。いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、HA受容体上のグリカンへの結合においてHAと競合する。いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、アンブレラトポロジーグリカンへの結合においてHAと競合する。いくつかの実施形態では、本明細書に提供されるインフォールド剤は、アンブレラトポロジー遮断剤である。いくつかの実施形態では、本明細書に提供されるインフォールド剤は、アンブレラトポロジー特異的な遮断剤である。いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、複数の直接結合アミノ酸残基(すなわち、HAアミノ酸またはグリカンと直接接触するアミノ酸残基)に富み、かつ/またはHA受容体アミノ酸または本明細書に記載されるようなグリカンを有する骨格折り畳み構造を有する。
【0107】
インフォールド剤の活性
本明細書で論じるように、本発明は、HAポリペプチドおよび/またはHA受容体に結合するインフォールド剤を提供する。いくつかの実施形態では、提供されるインフォールド剤は、サブタイプと無関係にHAポリペプチドに結合する。いくつかの実施形態では、提供されるインフォールド剤は、HAポリペプチドへの結合を介してユニバーサルインフルエンザ中和を実現する。
【0108】
いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、サブタイプH1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、および/またはH16のHAポリペプチドに結合する。具体的には、いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、H1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、およびH16 HAポリペプチドの1つまたは複数に特徴的な配列要素を有するHAポリペプチドに結合する。いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、異なるH1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、およびH16 HAポリペプチドの1つまたは複数に対するその親和性の、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、またはそれを上回る親和性で、H1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、およびH16 HAポリペプチドの1つまたは複数に結合する。いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、互いの結合親和性の5倍以内である、異なるHAポリペプチド(例えば、異なるグループ、クレード、もしくはクラスター、および/または異なる菌株に由来するHAポリペプチド)に対する結合親和性を示す。いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、互いに2倍以内である、異なるHAポリペプチドに対する結合親和性を示す(例えば、図7を参照)。いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、互いの結合親和性の150倍以内(例えば、100倍以内、50倍以内、25倍以内、10倍以内、または5倍以内)である、異なるHAポリペプチド(例えば、異なるグループ、クレード、もしくはクラスター、および/または異なる菌株に由来するHAポリペプチド)に対する結合親和性を示す。
【0109】
いくつかの実施形態では、提供されるインフォールド剤は、H1、H3、H5、H7、および/またはH9 HAポリペプチドの少なくとも2つに結合する。いくつかの実施形態では、提供されるインフォールド剤は、H1、H3、H5、H7、および/またはH9 HAポリペプチドの少なくとも3つ、4つ、または5つに結合する。
【0110】
いくつかの実施形態では、提供されるインフォールド剤は、サブタイプH1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、および/またはH16の少なくとも1つのHAポリペプチドに結合し、サブタイプH1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、および/またはH16の少なくとも1つのHAポリペプチドに結合しない。いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、サブタイプH1のHAポリペプチドに結合する。いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、これが少なくとも1つのサブタイプH2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、および/またはH16のHAポリペプチドに結合する親和性の少なくとも100%、少なくとも125%、少なくとも150%、少なくとも200%、またはそれ以上の親和性でサブタイプH1のHAポリペプチドに結合する。いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、サブタイプH3のHAポリペプチドに結合する。いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、これが少なくとも1つのサブタイプH1、H2、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、および/またはH16のHAポリペプチドに結合する親和性の少なくとも100%、少なくとも125%、少なくとも150%、少なくとも200%、またはそれ以上の親和性でサブタイプH3のHAポリペプチドに結合する。
【0111】
いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、HAポリペプチド中のHA−1およびHA−2ドメインの領域を含む結合部位に結合する。いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、HA−1ドメインの領域に結合する。いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、HA−2ドメインの領域に結合する。いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、HA−1ドメインおよびHA−2ドメインの両方の領域に結合する。いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、HAポリペプチドのMPER領域に結合する。
【0112】
いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、グリコシル化されたMPER領域に結合する。いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、グリコシル化されていないMPER領域に結合する。いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、MPERグリコシル化のレベルと無関係に、HAポリペプチドのMPER領域に結合する。いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、高い親和性および/または特異性を伴って、グリコシル化のレベルと無関係にHAポリペプチドに結合する。いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、他の点では同一であるグリコシル化されていないMPER領域についてのその親和性の少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、またはそれを上回る親和性で、グリコシル化されたMPER領域に結合する。
【0113】
いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、HAポリペプチドに結合する。いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、HAポリペプチド上のN結合型グリカンに結合する。いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、HAポリペプチド上のMPER近位のN−グリカンに結合する。いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、高い親和性および/または特異性を伴って、HAポリペプチドのMPER近位領域内のN結合型グリカンに結合する。
【0114】
いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、HA受容体に結合する。いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、HAポリペプチドおよびHA受容体の両方に結合する。いくつかのそのような実施形態では、1つまたは複数の提供されるインフォールド剤は、HAポリペプチドおよびHA受容体に同時に結合することができる。とりわけ、本発明は、HAポリペプチドおよびHA受容体の両方に結合するインフォールド剤を使用することにより、HAポリペプチドまたはHA受容体のみに結合するが、両方には結合しない薬剤に必要とされるより、少ない量の治療剤(すなわち、インフォールド剤)を用いて、インフルエンザ感染の効果的な阻害を可能にすることができるという認識を包含する。いずれの特定の理論にも束縛されることを望むことなく、本発明者らは、HAポリペプチド−HA受容体相互作用の両側に結合する能力は、関連した部位のみにおいて阻害剤(すなわち、インフォールド剤)の局所濃度の増大を可能にし、インフォールド剤は、感染に参加していないHAポリペプチドまたは受容体上で「無駄」にならないことを提案する。
【0115】
いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、シアル化されたHA受容体に結合する。いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、α2,6シアル化グリカンに結合する。いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、α2,6シアル化グリカンに優先的に結合する。ある特定の実施形態では、インフォールド剤は、様々なα2,6シアル化グリカンの複数に結合する。いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、α2,3シアル化グリカンに結合することができず、いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、α2,3シアル化グリカンに結合することができる。
【0116】
いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、アンブレラ様トポロジーを有するシアル化グリカンに結合する。いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、これらがコーントポロジーグリカンに結合するより強くアンブレラトポロジーグリカン(および/またはアンブレラトポロジーグリカン模倣体)に結合する。いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、アンブレラグリカン対コーングリカンについて、約10、9、8、7、6、5、4、3、または2である相対的親和性を示す。
【0117】
いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、高い親和性でアンブレラトポロジーグリカン(例えば、長いα2,6シアル化グリカン、例えば、Neu5Acα2,6Galβ1−4GlcNAcβ1−3Galβ1−4GlcNAcなど)に結合する。例えば、いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、ヒトの感染を媒介する野生型HAポリペプチド(例えば、H1N1 HAポリペプチドまたはH3N2 HAポリペプチド)について観察される親和性に匹敵する親和性でアンブレラトポロジーグリカンに結合する。いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、ヒトの感染を媒介する野生型HAポリペプチドに匹敵する条件下で観察される親和性の少なくとも25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%である親和性でアンブレラグリカンに結合する。いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、ヒトの感染を媒介する野生型HAポリペプチドに匹敵する条件下で観察される親和性より大きい親和性でアンブレラグリカンに結合する。
【0118】
いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、図12に例示されたグリカンの1つまたは複数に結合する。いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、図12に例示された複数のグリカンに結合する。いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、図12に例示されたグリカンに、高い親和性および/または特異性を伴って結合する。いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、図11に例示されたグリカンへのこれらの結合と比較した場合、優先的に図12に例示されたグリカンに結合する。いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、以下の形態のオリゴ糖に結合する:
Neu5Acα2,6Sug1−Sug2−Sug3
ここで:
1.Neu5Acα2,6は、常に、またはほとんど常に非還元末端にあり;
2.Sug1は:
a.αまたはβ配置(しばしば、N−およびO−連結エクステンションについてβ−、ならびに糖タンパク質にO−連結したGalNAcの場合にα−)でのヘキソース(しばしば、GalもしくはGlc)もしくはヘキソサミン(GlcNAcもしくはGalNAc)であり;
b.Neu5Acα2,6以外の糖は、Sug1の非還元位置のいずれにも付いておらず(Sug1が、糖タンパク質にO−連結したGalNAcαである場合を除く);かつ/または
c.スルフェート、ホスフェート、グアニジウム、アミン、N−アセチルなどの非糖部分は、HAとの接触を改善するためにSug1の非還元位置(典型的には6位)に付くことができ;
3.Sug2および/またはSug3は:
a.αもしくはβ配置(しばしばβ)でのヘキソース(しばしばGalもしくはGlc)もしくはヘキソサミン(GlcNAcもしくはGalNAc)であり;かつ/または
b.糖(Fucなど)、またはスルフェート、ホスフェート、グアニジウム、アミン、N−アセチルなどの非糖部分は、Sug2、Sug3、および/もしくはSug4の非還元位置に付くことができ;
4.Neu5Acα2,6連結は別として、オリゴ糖中の任意の2つの糖間の連結は、1−2、1−3、1−4、および/または1−6(典型的には1−3もしくは1−4);ならびに/あるいは
5.Neu5Acα2,6が糖タンパク質にO−連結したGalNAcαに連結されており、追加の糖がGalNAcαの非還元末端に連結されている構造、例えば、
i.Neu5Acα2,6(Neu5Acα2,3Galβ1−3)GalNAcα−
ii.Neu5Acα2,6(Galβ1−3)GalNAcα−
とすることができる。
【0119】
ある特定の実施形態では、インフォールド剤は、高い親和性および/または特異性でアンブレラトポロジーグリカンに結合する。本発明は、アンブレラトポロジーグリカン(例えば、長いα2,6シアル化グリカン)に結合する能力、特に高い親和性で結合する能力を獲得することにより、インフォールド剤にインフルエンザウイルスに対して標的とされる広域スペクトル中和をもたらす能力を付与することができるという認識を包含する。いずれの特定の理論にも束縛されることを望むことなく、本発明者らは、アンブレラトポロジーグリカンへの結合は卓絶したものとなり得、特に、他のグリカンタイプへの結合を失うことを必要とされない場合があることを提案する。
【0120】
いくつかの実施形態では、本発明は、特定の標的種のHA受容体上に見出されるアンブレラトポロジーグリカンに結合するインフォールド剤を提供する。例えば、いくつかの実施形態では、本発明は、ヒトHA受容体、例えば、ヒト上皮細胞上に見出されるHA受容体上に見出されるアンブレラトポロジーグリカンに結合するインフォールド剤、特に、上気道中のヒトHA受容体上に見出されるアンブレラトポロジーグリカンに結合するインフォールド剤を提供する。
【0121】
いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、ヒト上気道上皮細胞上に見出される受容体に結合する。ある特定の実施形態では、インフォールド剤は、気管支および/または気管中のHA受容体に結合する。いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、深肺中の受容体に結合することができず、いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、深肺中の受容体に結合することができる。
【0122】
いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、ヒト上気道組織(例えば、上皮細胞)中のHA受容体上に見出されるグリカンの少なくとも約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、またはそれ以上に結合する。
【0123】
ある特定の実施形態では、インフォールド剤の結合親和性は、様々な濃度にわたって評価される。そのようなストラテジーは、単一濃度分析がもたらすより、特に多価結合アッセイにおいて著しく多くの情報をもたらす。いくつかの実施形態では、例えば、インフォールド剤の結合親和性は、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10倍、またはそれ以上にわたる範囲の濃度にわたって評価される。
【0124】
インフォールド剤の生産
インフォールド剤、および/もしくはこれらの特徴的な部分、またはこれらをコードする核酸は、任意の利用可能な手段によって生産することができる。
【0125】
インフォールド剤(または特徴的な部分)は、例えば、本発明のポリペプチドコード核酸を発現するように操作された宿主細胞系を利用することによって生産することができる。代わりに、またはさらに、インフォールド剤は、化学合成によってある程度、または完全に調製することができる。
【0126】
インフォールド剤が細胞(例えば、操作された細胞)中で発現される場合、インフォールド剤(またはこれらの特徴的な部分)を生産するのに任意の発現系を使用することができる。ほんの数例を与えると、公知の発現系として、例えば、卵、バキュロウイルス、植物、酵母、Madin−Darbyイヌ腎細胞(MDCK)、またはベロ(アフリカミドリザル腎臓)細胞が挙げられる。代わりに、またはさらに、インフォールド剤(または特徴的な部分)は、発現ベクターを使用することなどによって、組換え技法を使用して細胞内で発現させることができる(Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、CSHL Press、1989年)。
【0127】
代わりに、またはさらに、インフォールド剤(またはこれらの特徴的な部分)は、他の点では、野生型、弱毒化、不活化などであってもなくても、インタクトなウイルスという状況で生産することができる。インフォールド剤、またはこれらの特徴的な部分は、ウイルス様粒子という状況で生産することもできる。
【0128】
また、本明細書に記載されるようなポリペプチド、特にインフォールド剤は、アンブレラトポロジーグリカンに結合することができるポリペプチドのスクリーニングおよび/または選択の準備を可能にする条件下で、インフォールド剤(単独で、またはウイルス粒子もしくはウイルスの一部である状態を含めた、複合体の一部として)を産生する細胞または生物を培養することによって、生成、同定、単離、および/または生産することができることが、当業者によって理解されるであろう。ほんの数例を与えると、いくつかの実施形態では、HAポリペプチドまたはアンブレラトポロジーグリカンに結合する(例えば、特定の特異性および/または親和性で)変異体を明らかにし、かつ/または好む条件下で、一連のインフォールド剤を生産および/または研究することは有用となり得る。いくつかの実施形態では、そのような一連のインフォールド剤は、自然における進化から生じる。いくつかの実施形態では、そのような一連のインフォールド剤は、エンジニアリングから生じる。いくつかの実施形態では、そのような一連のインフォールド剤は、エンジニアリングと自然進化の組合せから生じる。
【0129】
核酸
ある特定の実施形態では、本発明は、インフォールド剤、またはインフォールド剤の特徴的な部分もしくは生物学的に活性な部分をコードする核酸を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、インフォールド剤、またはインフォールド剤の特徴的な部分もしくは生物学的に活性な部分をコードする核酸に相補的な核酸を提供する。
【0130】
いくつかの実施形態では、本発明は、インフォールド剤、またはインフォールド剤の特徴的な部分もしくは生物学的に活性な部分をコードする核酸にハイブリダイズする核酸分子を提供する。そのような核酸は、例えば、プライマーまたはプローブとして使用することができる。ほんの数例を与えると、そのような核酸は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)におけるプライマーとして、ハイブリダイゼーション(インサイツハイブリダイゼーションを含む)のためのプローブとして、および/または逆転写−PCR(RT−PCR)のためのプライマーとして使用することができる。
【0131】
ある特定の実施形態では、核酸は、DNAまたはRNAとすることができ、一本鎖であっても二本鎖であってもよい。いくつかの実施形態では、核酸は、1つまたは複数の非天然のヌクレオチドを含むことができ、いくつかの実施形態では、核酸は、天然のヌクレオチドのみを含む。
【0132】
インフォールド剤に対する抗体
本発明は、インフォールド剤に対する抗体を提供する。これらはモノクローナルであってもポリクローナルであってもよく、当業者に公知の様々な技法のいずれかによって調製することができる(例えば、HarlowおよびLane、Antibodies:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、1988年を参照)。例えば、抗体は、モノクローナル抗体の生成を含めた細胞培養技法によって、または組換え抗体の生産を可能にするための、抗体遺伝子の適当な細菌宿主もしくは哺乳動物細胞宿主中へのトランスフェクションを介して生産することができる。
【0133】
インフォールド剤を同定し、かつ/または特徴づけるためのシステム
本発明は、インフォールド剤を試験し、特徴づけ、かつ/または同定するための様々なシステムを提供する。
【0134】
いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、1つまたは複数の候補基質、例えば、HAポリペプチドの領域、HAポリペプチドのMPER領域、HAポリペプチド上のN−グリカン、HA受容体、シアル化HA受容体、シアル化HA受容体上のグリカン、および/またはシアル化HA受容体上のアンブレラトポロジーグリカンなどとインフォールド剤を接触させる工程を伴うシステムおよび方法によって特徴づけられる。
【0135】
いくつかの実施形態では、インフォールド剤および/または候補基質は、溶液中で遊離し、支持体に固定され、かつ/または細胞内、および/もしくは細胞の表面上で発現される場合がある。候補基質および/またはインフォールド剤は、標識され、それによって、結合の検出を可能にすることができる。インフォールド剤または候補基質のいずれかは、標識された種である。物質の1つが標識された競合的結合形式を実施することができ、結合に対する効果を判定するために、結合した標識に対して遊離した標識の量を測定することができる。
【0136】
いくつかの実施形態では、結合アッセイは、例えば、候補基質をインフォールド剤に曝す工程、および候補基質とインフォールド剤の間の結合を検出する工程を伴う。結合アッセイは、インビトロで行うことができる(例えば、述べられた成分のみを実質的に含む候補管内で;無細胞抽出物中で;かつ/または実質的に精製された成分中で)。代わりに、またはさらに、結合アッセイは、インサイト(in cyto)および/またはインビボ(例えば、細胞、組織、臓器、および/または生物内;以下にさらに詳述される)で行うことができる。
【0137】
ある特定の実施形態では、少なくとも1つのインフォールド剤は、少なくとも1つの候補基質と接触され、効果が検出される。いくつかの実施形態では、例えば、インフォールド剤が候補基質と接触され、この2つの実体の間の結合がモニターされる。いくつかの実施形態では、アッセイは、候補基質をインフォールド剤の特徴的な部分と接触させる工程を伴う場合がある。インフォールド剤の候補基質への結合が検出される。インフォールド剤の断片、部分、相同体、変異体、および/または誘導体を使用することができ、ただしこれらは、1つまたは複数の候補基質に結合する能力を含むことが理解されるであろう。
【0138】
インフォールド剤の候補基質への結合は、当技術分野で周知の様々な方法によって判定することができる。本発明は、固相に結合したインフォールド剤、および1つまたは複数の候補基質とのこれらの相互作用を検出する工程を伴うアッセイを提供する。したがって、インフォールド剤は、検出可能なマーカー、例えば、放射性標識、蛍光標識、および/または発光性標識などを含むことができる。さらに、候補基質は、間接的な検出(例えば、色素生産性基質を使用する酵素を使用することによって、かつ/または検出可能な抗体に結合することによって)を可能にする物質にカップリングすることができる。候補基質との相互作用の結果としてのインフォールド剤の立体配座の変化は、例えば、検出可能なマーカーの発光の変化によって検出することができる。代わりに、またはさらに、固相に結合したタンパク質複合体を、質量分析によって分析することができる。
【0139】
いくつかの実施形態では、インフォールド剤が固定化されていない場合がある。いくつかの実施形態では、固定化されていない成分を標識することができる(例えば、放射性標識、エピトープタグ、酵素−抗体コンジュゲートなどを用いて)。代わりに、またはさらに、結合は、免疫学的検出技法によって判定することができる。例えば、反応混合物を、ウエスタンブロッティングにかけ、固定化されていない成分を検出する抗体を用いてブロットをプローブすることができる。代わりに、またはさらに、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を、結合をアッセイするのに使用することができる。
【0140】
ある特定の実施形態では、インフォールド剤と候補基質の間の結合について、細胞を直接アッセイすることができる。結合を評価するための免疫組織化学的技法、共焦点技法、および/または他の技法は、当業者に周知である。この目的のために特に操作された細胞を含めて、様々な細胞株をそのようなスクリーニングアッセイに利用することができる。スクリーニングアッセイにおいて使用される細胞の例には、哺乳動物細胞、真菌細胞、細菌性細胞、またはウイルス細胞が含まれる。細胞は、増殖因子で刺激された細胞などの刺激された細胞であってもよい。当業者は、本明細書に開示される本発明は、インフォールド剤の候補基質に結合する能力を測定するための多種多様なインサイトアッセイを企図することを理解するであろう。
【0141】
アッセイに応じて、細胞培養および/または組織培養を必要とする場合がある。細胞は、いくつかの様々な生理学的なアッセイのいずれかを使用して検査することができる。代わりに、またはさらに、それだけに限らないが、タンパク質発現をモニターし、かつ/またはタンパク質間相互作用を試験するためのウエスタンブロッティング、他の化学修飾をモニターするための質量分析などを含めた分子分析を実施することができる。
【0142】
本発明は、候補基質に結合し、したがって、インフルエンザ感染に関与し得るインフォールド剤を同定するための方法を提供する。候補基質に結合する物質を同定する1つのインサイト方法は、ツーハイブリッドシステムアッセイである(Fieldsら、1994年、Trends in Genetics、10巻:286頁;およびColasら、1998年、TIBTECH、16巻:355頁;その両方は、参照により本明細書に組み込まれている)。このアッセイにおいて、酵母細胞は、本発明による試験物質を含む第1の融合タンパク質(例えば、インフォールド剤、インフォールド剤および/またはこれらの特徴的な部分をコードする遺伝子)、ならびにGal4および/またはLexAなどの転写因子のDNA結合ドメインを発現する。細胞はさらに、プロモーターが対応するDNA結合ドメインのための結合部位を含有するレポーター遺伝子を含有する。活性化ドメイン(例えば、Gal4および/または単純ヘルペスウイルスVP16に由来する)に融合した候補基質を含む第2の融合タンパク質を発現するベクターを用いて細胞をトランスフォームすることによって、候補基質がインフォールド剤と相互作用する場合、レポーター遺伝子の発現を増大させることができる。このようにして、新規のインフォールド剤を迅速に同定することが可能である。
【0143】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される結合アッセイのいずれも、様々な濃度のインフォールド剤および/または候補基質を使用して実施することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される結合アッセイは、候補基質のインフォールド剤に結合する能力を、インフォールド剤濃度の範囲(例えば、約100μg/ml超、約100μg/ml、約50μg/ml、約40μg/ml、約30μg/ml、約20μg/ml、約10μg/ml、約5μg/ml、約4μg/ml、約3μg/ml、約2μg/ml、約1.75μg/ml、約1.5μg/ml、約1.25μg/ml、約1.0μg/ml、約0.9μg/ml、約0.8μg/ml、約0.7μg/ml、約0.6μg/ml、約0.5μg/ml、約0.4μg/ml、約0.3μg/ml、約0.2μg/ml、約0.1μg/ml、約0.05μg/ml、約0.01μg/ml、および/または約0.01μg/ml未満)にわたって評価するのに使用される。
【0144】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される結合試験のいずれも、ハイスループット様式で実行することができる。ハイスループットアッセイを使用して、最大数千のインフォールド剤を1日でスクリーニングすることが可能である。いくつかの実施形態では、マイクロタイタープレートの各ウェルを、選択された候補基質に対して別個のアッセイを実行するのに使用することができ、または濃度および/もしくはインキュベーション時間の効果が観察される場合、5〜10ウェル毎に、1つの候補基質を試験することができる。したがって、1つの標準的なマイクロタイタープレートは、インフォールド剤と候補基質の間の最大96の結合相互作用をアッセイすることができ;1536ウェルプレートが使用される場合、1つのプレートは、インフォールド剤と候補基質の間の最大1536の結合相互作用をアッセイすることができる;などである。1日当たりに多くのプレートをアッセイすることが可能である。例えば、最大約6,000、約20,000、約50,000、または約100,000を超えるアッセイスクリーニングを、本発明によるハイスループットシステムを使用して、インフォールド剤と候補基質の間の結合相互作用に対して実施することができる。
【0145】
いくつかの実施形態では、そのような方法は、動物宿主を利用する。本明細書で使用する場合、「動物宿主」には、インフルエンザ研究に適した任意の動物モデルが含まれる。例えば、本発明に適した動物宿主は、霊長類、フェレット、ネコ、イヌ、雌ウシ、ウマ、げっ歯類、例えば、マウス、ハムスター、ウサギ、およびラットなどを含めた任意の哺乳動物宿主とすることができる。ある特定の実施形態では、本発明に使用される動物宿主はフェレットである。特に、いくつかの実施形態では、動物宿主は、インフォールド剤(場合により、本発明の組成物中)の投与前に、ウイルス曝露または感染に対してナイーブである。いくつかの実施形態では、動物宿主は、インフォールド剤の投与前、または投与と同時に、ウイルスを接種され、ウイルスに感染され、またはさもなければウイルスに曝される。本発明を実践するのに使用される動物宿主は、当技術分野で公知の任意の方法によってウイルスを接種し、ウイルスに感染させ、またはさもなければウイルスに曝すことができる。いくつかの実施形態では、動物宿主は、鼻腔内にウイルスを接種し、ウイルスに感染させ、またはさもなければウイルスに曝すことができる。
【0146】
いくつかの実施形態では、適当な動物宿主は、ヒト気道において見出される分布と同様の、アンブレラ対コーントポロジーグリカン、および/またはα2,6グリカン対α2,3グリカンの分布を有することができる。例えば、動物宿主としてのフェレットは、ヒトにおいてインフルエンザウイルスによって引き起こされる疾患のモデルとして使用される場合、マウスより代表的となり得ることが企図されている(Tumpeyら、Science(2007年)315巻;655〜659頁)。いずれの理論にも束縛されることを望むことなく、本発明は、フェレットは、マウスがヒトに対して有するよりも、ヒト気道におけるグリカンの分布と同様の気道におけるグリカンの分布を有する場合があるという考え方を包含する。
【0147】
ナイーブな動物および/または接種された動物は、様々な試験のいずれのためにも使用することができる。例えば、そのような動物モデルは、当技術分野で公知であるようなウイルス伝播試験に使用することができる。ウイルス伝播試験におけるフェレットの使用は、ヒトにおけるウイルス伝播についての信頼できる予測因子として機能を果たすことができることが企図されている。例えば、接種された動物(例えば、フェレット)からのウイルス性インフルエンザのナイーブな動物への空気伝播は、当技術分野で公知である(Tumpeyら、Science(2007年)315巻;655〜659頁)。ウイルス伝播試験は、インフォールド剤を試験するのに使用することができる。例えば、インフォールド剤を、ウイルス伝播試験の前、間、または後に適当な動物宿主に投与することによって、動物宿主におけるウイルスの結合および/または感染性を遮断することにおける前記インフォールド剤の効力を求めることができる。動物宿主におけるウイルス伝播試験から集めた情報を使用して、ヒト宿主におけるウイルスの結合および/または感染性を遮断することにおけるインフォールド剤の効力を予測することができる。
【0148】
医薬組成物および治療の方法
いくつかの実施形態では、本発明は、インフォールド剤および/または関連する実体を含む医薬組成物を提供する。例えば、いくつかの実施形態では、インフォールド剤ポリペプチド、そのようなポリペプチドをコードする核酸、そのようなポリペプチドまたは核酸の特徴的な断片または生物学的活性断片、そのようなポリペプチドまたは断片に結合し、かつ/またはこれらと競合する抗体、そのようなポリペプチドまたはそのようなポリペプチドに結合するグリカンと相互作用し、または競合する小分子などが医薬組成物中に含められる。
【0149】
本発明は、そのような医薬組成物の投与によるインフルエンザ感染の治療を包含する。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、インフルエンザ感染症を患っている、またはこれにかかりやすい被験体に投与される。いくつかの実施形態では、被験体がインフルエンザ感染症に通常付随する1つまたは複数の症状を示している場合、その被験体は、インフルエンザ感染症を患っているとみなされる。いくつかの実施形態では、被験体は、インフルエンザウイルスに曝されていると分かっている、または考えられる。いくつかの実施形態では、被験体がインフルエンザウイルスに曝されていると分かっている、または考えられる場合、その被験体はインフルエンザ感染症にかかりやすいとみなされる。いくつかの実施形態では、被験体が、インフルエンザウイルスに感染していたと分かっている、もしくは感染していると疑われる他の個体と接触していた場合、かつ/または被験体が、インフルエンザ感染症が蔓延していると分かっている、もしくは考えられる場所に存在している、もしくは存在していた場合、その被験体は、インフルエンザウイルスに曝されていたと分かっている、または考えられる。
【0150】
いくつかの実施形態では、インフルエンザ感染症を患っている、またはこれにかかりやすい被験体は、医薬組成物を投与する前、間、または後に、インフォールド剤に対する抗体について試験される。いくつかの実施形態では、そのような抗体を有する被験体は、インフォールド剤を含む医薬組成物を投与されない。いくつかの実施形態では、医薬組成物および/またはインフォールド剤の適切な用量は、そのような抗体の検出(またはその欠如)に基づいて選択される。
【0151】
いくつかの実施形態では、治療のための特定の被験体、投与のための特定のインフォールド剤もしくは組成物、および/または投与のための特定の用量もしくはレジメンの選択は、例えば、文書、印刷形式、または電子記憶形式で記憶される(memorialized)。
【0152】
本発明の組成物は、インフルエンザ感染症の1つまたは複数を発症する前、または発症した後に投与することができる。
【0153】
本発明は、本明細書に記載される薬剤の投与によるインフルエンザ感染症の治療を包含する。
【0154】
本発明は、ウイルス感染症の治療に有用な他の治療用組成物も提供する。いくつかの実施形態では、治療は、HAポリペプチドの発現または活性を妨害する薬剤の投与によって達成される。
【0155】
いくつかの実施形態では、本発明は、提供されるインフォールド剤に関連する抗体または他の薬剤を含む医薬組成物を提供する。例えば、本発明は、インフォールド剤を認識する抗体、核酸(RNAiに使用することができるインフォールド剤の配列に相補的な核酸配列など)、またはこれらの組合せを含有する組成物を提供する。いくつかの実施形態では、多様な構造を有する様々な薬剤のコレクションが利用される。いくつかの実施形態では、治療用組成物は、1つまたは複数の多価薬剤を含む。いくつかの実施形態では、治療は、インフルエンザウイルスへの曝露または曝露の疑いの直後の緊急投与を含む。
【0156】
一般に、医薬組成物は、それだけに限らないが、滅菌水、食塩水、緩衝食塩水、またはデキストロース溶液を含めた滅菌した、生体適合性の担体などの1つまたは複数の不活性な作用物質に加えて治療剤を含むことになる。代わりに、またはさらに、組成物は、任意の様々な添加剤、例えば、安定剤、緩衝液、賦形剤(例えば、糖、アミノ酸など)、または保存剤などを含有することができる。
【0157】
ある特定の実施形態では、本発明の医薬組成物中に存在する治療剤は、本明細書に記載されるような1つまたは複数のインフォールド剤からなることになる。いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物は、HAポリペプチド、またはアンブレラトポロジーグリカン(および/もしくはアンブレラトポロジーグリカン模倣体)に結合するインフォールド剤を含有する。いくつかのそのような実施形態では、本発明の組成物は、アンブレラトポロジーグリカンに結合しない関連した薬剤(例えば、他のインフォールド剤など)を実質的に含まない。いくつかのそのような実施形態では、医薬組成物は、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または90%超以下のグリコシル化された、もしくはグリコシル化されていないHAポリペプチドおよび/またはアンブレラトポロジーグリカン以外のHA受容体グリカンに結合する薬剤を含有する。
【0158】
ある特定の実施形態では、医薬組成物は、脂質ベシクル、生物学的に利用可能なおよび/もしくは生体適合性の、および/もしくは生分解性の基質、または他の微粒子内に被包、捕捉され、または結合した治療剤を含むことになる。
【0159】
いくつかの実施形態では、提供される医薬組成物は、凝集してないインフォールド剤を含むことになる。例えば、いくつかの実施形態では、インフォールド剤の乾燥重量または数の1%、2%、5%、10%、20%、または30%未満が凝集体中に存在する。
【0160】
いくつかの実施形態では、提供される医薬組成物は、変性されていないインフォールド剤を含むことになる。例えば、いくつかの実施形態では、投与されるインフォールド剤の乾燥重量または数の1%、2%、5%、10%、20%、または30%未満が変性されている。
【0161】
いくつかの実施形態では、提供される医薬組成物は、不活性でないインフォールド剤を含むことになる。例えば、いくつかの実施形態では、投与されるインフォールド剤の乾燥重量または数の1%、2%、5%、10%、20%、または30%未満が不活性である。
【0162】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、提供されるインフォールド剤の免疫原性を低減するように製剤化される。例えば、いくつかの実施形態では、提供されるインフォールド剤は、その免疫原性をマスクするポリエチレングリコールおよび/またはカルボキシメチルセルロースなどの作用物質に付随している(例えば、結合されている)。いくつかの実施形態では、提供される結合剤は、免疫原性を低減する、追加のグリコシル化を有する。
【0163】
併用療法
本発明の医薬組成物は、単独で、またはそれだけに限らないが、ワクチンおよび/もしくは抗体を含めた1つもしくは複数の他の治療剤と組み合わせて投与することができる。「と併用して」とは、薬剤が、同時に投与されなければならない、または一緒に送達されるように製剤化されなければならないことを示すことは意図されていないが、送達のこれらの方法は、本発明の範囲内である。一般に、各薬剤は、その薬剤のために決定された用量および時間スケジュールで投与されることになる。さらに、本発明は、医薬組成物のバイオアベイラビリティーを改善し、これらの代謝を低減もしくは改変し、これらの排泄を阻害し、または体内でのこれらの分布を改変することができる薬剤と併用した医薬組成物の送達を包含する。本発明の医薬組成物は、治療を必要とする任意の被験体(例えば、任意の動物)を治療するために使用することができるが、これらは、ヒトの治療において使用されることが最も好ましい。
【0164】
いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物および/またはインフォールド剤は、1つまたは複数の他の薬剤と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物および/またはインフォールド剤は、1つまたは複数の他のインフォールド剤と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物および/または1つもしくは複数のインフォールド剤は、1つまたは複数の他の医薬品(例えば、抗インフルエンザワクチン、抗ウイルス剤、鎮痛剤(pain reliver)、抗炎症剤、抗生物質、ステロイド剤、抗体、シアリダーゼ(sialydase)など)と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物および/またはインフォールド剤は、アジュバントと組み合わせて投与することができる。
【0165】
いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物および/または1つまたは複数のインフォールド剤は、1つまたは複数の抗体と組み合わせて投与される。いくつかの実施形態では、抗体は、ウイルス上のHAポリペプチドに結合する。いくつかの実施形態では、抗体は、HAポリペプチド(例えば、H1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、またはH16ポリペプチド)のMPER領域に結合する。いくつかの実施形態では、抗体は、HAポリペプチドのグリコシル化されたMPER領域に結合する。いくつかの実施形態では、抗体は、HA受容体に結合する。いくつかの実施形態では、抗体は、HA受容体上のシアル化(sialyated)グリカンに結合する。いくつかの実施形態では、抗体は、C179、F10、およびCR6261である。
【0166】
いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物および/または1つもしくは複数のインフォールド剤は、1つまたは複数の抗ウイルス剤と組み合わせて投与される。いくつかの実施形態では、そのような抗ウイルス剤として、それだけに限らないが、アシクロビル、リバビリン、アマンタジン、レマンチジン、ザナミビル(リレンザ)、オセルタミビル(タミフル)、アマンタジン、リマンタジンおよび/またはこれらの組合せが挙げられる。
【0167】
いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物および/または1つもしくは複数のインフォールド剤は、1つまたは複数のワクチンと組み合わせて投与される。いくつかの実施形態では、ワクチンは、抗ウイルスワクチンである。いくつかの実施形態では、ワクチンは、抗インフルエンザワクチンである。いくつかの実施形態では、抗インフルエンザワクチンは、季節性インフルエンザ(例えば、インフルエンザとして通常呼ばれる)を治療するためのものである。いくつかの実施形態では、抗インフルエンザワクチンは、フルショットおよび/またはFluMistである。いくつかの実施形態では、抗インフルエンザワクチンは、1つまたは複数のHAポリペプチド(例えば、H1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、またはH16ポリペプチド)の特定の組合せを標的としている。いくつかの実施形態では、抗インフルエンザワクチンは、H1N1、H2N2、H3N2、H5N1、H7N7、H1N2、H9N2、H7N2、H7N3、またはH10N7ウイルスの1つまたは複数の組合せに特異的である。いくつかの実施形態では、抗インフルエンザワクチンは、H1N1ウイルスに特異的である。いくつかの実施形態では、抗インフルエンザワクチンは、H3N2ウイルスに特異的である。いくつかの実施形態では、抗インフルエンザワクチンは、H1N1およびH3N2ウイルスに特異的である。
【0168】
いくつかの実施形態では、医薬組成物および/または1つもしくは複数のインフォールド剤は、インフルエンザウイルス感染に付随する症状を治療するのに使用される1つまたは複数の他の医薬品と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、インフルエンザ感染症に付随する症状を治療するのに使用される医薬品は、鎮痛剤、抗炎症剤、抗生物質および/またはこれらの組合せである。いくつかの実施形態では、インフルエンザ感染症に付随する症状を治療するのに使用される医薬品は、アセトアミノフェン、イブプロフェン、アスピリン、ナプロキセンおよび/またはこれらの組合せである。
【0169】
投与の方法
本発明の医薬組成物は、経口、静脈内、筋肉内、動脈内、皮下、脳室内、経皮、皮内(interdermal)、直腸、膣内、腹腔内、局所(粉末、軟膏、クリーム、もしくは液滴によってのような)、粘膜、経鼻、頬側、経腸、舌下を含めた様々な経路によって、気管内点滴注入、気管支点滴注入、および/もしくは吸入によって、かつ/または経口スプレー、経鼻スプレー、および/またはエアロゾルとして投与することができる。一般に、最も適切な投与経路は、薬剤の性質(例えば、胃腸管の環境におけるその安定性)、患者の状態(例えば、経口投与に耐容性を示すことができるかどうか)などを含めた様々な要因に依存することになる。
【0170】
現在のところ、経口もしくは経鼻スプレー、またはエアロゾル経路(例えば、吸入による)が、肺および呼吸器系に直接治療剤を送達するのに最も一般に使用されている。しかし、本発明は、薬物送達の科学において起こり得る進歩を考慮した任意の適切な経路による本発明の医薬組成物の送達を包含する。
【0171】
いくつかの実施形態では、吸入送達またはエアロゾル送達のための配合物は、複数の粒子を含む。いくつかの実施形態では、そのような配合物は、4、5、6、7、8、9、10、11、12、または13ミクロンの平均粒径を有する。いくつかの実施形態では、吸入送達またはエアロゾル送達のための配合物は、乾燥粉末として製剤化される。いくつかの実施形態では、吸入送達またはエアロゾル送達のための配合物は、例えば、湿潤剤を含めることによって、湿潤粉末として製剤化される。いくつかの実施形態では、湿潤剤は、水、食塩水、または生理学的pHの他の液体からなる群から選択される。
【0172】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、鼻腔または頬側口腔に液滴として投与される。いくつかの実施形態では、用量は、複数の液滴(例えば、1〜100、1〜50、1〜20、1〜10、1〜5など)を含むことができる。
【0173】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、組成物(例えば、インフォールド剤)の計量された投与量を送達するデバイスを使用して投与される。
【0174】
本明細書に記載される皮内用医薬組成物を送達するのに使用するための適当なデバイスには、短針デバイス、例えば、米国特許第4,886,499号、米国特許第5,190,521号、米国特許第5,328,483号、米国特許第5,527,288号、米国特許第4,270,537号、米国特許第5,015,235号、米国特許第5,141,496号、米国特許第5,417,662号に記載されたものなどが含まれる。皮内用組成物は、皮膚への針の効果的な貫通長さを制限するデバイス、例えば、参照により本明細書に組み込まれているWO99/34850に記載されているもの、およびその機能的な均等物などによって投与することもできる。やはり適しているのは、液体ジェット注射器を介して、または角質層に穴をあけ、真皮に到達するジェットを生じさせる針を介して真皮に液体組成物を送達するジェット注射デバイスである。ジェット注射デバイスは、例えば、米国特許第5,480,381号、米国特許第5,599,302号、米国特許第5,334,144号、米国特許第5,993,412号、米国特許第5,649,912号、米国特許第5,569,189号、米国特許第5,704,911号、米国特許第5,383,851号、米国特許第5,893,397号、米国特許第5,466,220号、米国特許第5,339,163号、米国特許第5,312,335号、米国特許第5,503,627号、米国特許第5,064,413号、米国特許第5,520,639号、米国特許第4,596,556号、米国特許第4,790,824号、米国特許第4,941,880号、米国特許第4,940,460号、WO97/37705、およびWO97/13537に記載されている。やはり適しているのは、弾道粉末/粒子送達デバイスであり、これは、皮膚の外側層から真皮へと粉末形態の組成物を加速するのに圧縮ガスを使用する。さらに、慣例的なシリンジを、皮内投与の古典的なマントー法において使用することができる。
【0175】
製剤
医薬品の製剤および製造における一般的な考慮事項は、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、19版、Mack Publishing Co.、Easton、PA、1995年に見出すことができる。
【0176】
医薬組成物は、所望の転帰を実現するのに適切な任意の用量で投与することができる。いくつかの実施形態では、所望の転帰は、インフルエンザ感染症の1つまたは複数の症状の強度、重症度、および/もしくは頻度の低減、ならびに/または発症の遅延である。
【0177】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、アンブレラトポロジーグリカンへの結合においてインフルエンザHAポリペプチドと競合するのに効果的な用量のインフォールド剤を投与するように製剤化される。いくつかの実施形態では、インフルエンザHAポリペプチドによるそのような結合は、インフォールド剤組成物の1つまたは複数の用量の投与後に、そのような投与がないそのレベルと比較して低減される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の、この組成物を投与されている被験体中(例えば、被験体の気道中)に存在するHAポリペプチド結合部位(例えば、アンブレラトポロジーグリカンを含有するHAポリペプチド結合部位)を飽和させるのに効果的な用量のインフォールド剤を投与するように製剤化される。
【0178】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、0.0001〜1000nmg/kgの範囲内の単位用量のインフォールド剤を送達するように製剤化される。
【0179】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、複数回投与で投与される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、複数回投与/日で投与される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、被験体が、治療的投薬の期間同士の間に介在する治療的投薬より短い期間を経ないように、連続的な投薬レジメンによって投与される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、被験体が、治療的投薬の2つの期間の間に介在する治療的投薬より短い少なくとも1つの期間を経るように、断続的な投薬レジメンによって投与される。
【0180】
診断/キット
いくつかの実施形態では、本発明は、本明細書に記載されるようなインフォールド剤を、そのようなポリペプチドがインフォールド剤であるかどうかについて検出するためのキットを提供する。
【0181】
いくつかの実施形態では、本発明は、インフォールド剤を検出するため、特に(particular)、それだけに限らないが、血液、血清/血漿、末梢血単核細胞/末梢血リンパ球(PBMC/PBL)、痰、尿、糞便、咽頭スワブ、真皮病変部スワブ、脳脊髄液、頚部スミア、膿汁試料、食物基質、ならびに脳、脾臓、および肝臓などの体の様々な部分からの組織を含めた、病理学的試料中の特定のHAポリペプチドおよび/またはグリカン結合特性(例えば、アンブレラグリカン、α2,6シアル化グリカン、長いα2,6シアル化グリカンなどへの結合)を有するインフォールド剤を検出するためのキットを提供する。本発明は、それだけに限らないが、土壌、水、および植物相を含めた環境試料中の対象とするインフォールド剤を検出するためのキットも提供する。列挙されなかった他の試料も適用可能となり得る。
【0182】
いくつかの実施形態では、インフォールド剤を検出するための方法は、病理学的試料および/または環境試料を提供する工程、試料をインフォールド剤と接触させる工程、およびインフォールド剤が陰性対照結合剤と比べてその試料に結合するかどうかを判定する工程を伴う。いくつかの実施形態では、そのような方法は、接触させる工程の前に、試料を処理する工程(例えば、試料を1つまたは複数の精製工程にかける工程)を伴う。いくつかの実施形態では、提供されるインフォールド剤は、検出可能な部分(例えば、蛍光標識、放射性標識、化学発光(chemoluminescent)標識など)を用いて標識される。いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、免疫学的方法(例えば、ウエスタンブロッティング、ELISA、免疫蛍光など)を介して検出可能である。いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、接触させる工程の前に固定化される(例えば、ビーズ、マイクロタイター皿、アレイ、グリカンアレイなどに)。
【0183】
ある特定の実施形態では、本発明のキットは、HAポリペプチドおよび/または特定のグリカン結合特性を有するインフォールド剤を特異的に検出する1つまたは複数の薬剤を含むことができる。そのような検出剤は、例えば、ある特定のインフォールド剤(例えば、アンブレラグリカンおよび/またはα2,6シアル化グリカン、および/または長いα2,6シアル化グリカンに結合するインフォールド剤)を特異的に認識する抗体を含むことができ、これは、ELISA、免疫蛍光、および/またはイムノブロッティングによってそのようなインフォールド剤を特異的に検出するのに使用することができる。
【0184】
インフォールド剤に結合する抗体は、ウイルス中和試験においても使用することができ、この試験において、試料は、対象とするインフォールド剤に特異的な抗体で処理され、未処理の試料と比べて、培養細胞に感染するその能力を試験される。その試料中のウイルスがそのようなインフォールド剤を含有する場合、抗体は、ウイルスを中和し、ウイルスが培養細胞に感染するのを防止する。代わりに、またはさらに、そのような抗体は、HA阻害試験においても使用することができ、この試験において、HAタンパク質が所与の試料から単離され、特定のインフォールド剤またはインフォールド剤のセットに特異的な抗体で処理され、未処理の試料と比べて赤血球を凝集させるその能力を試験される。試料中のウイルスがそのようなインフォールド剤を含有する場合、抗体は、インフォールド剤の活性を中和し、ウイルスが赤血球を凝集させるのを防止する(Harlow & Lane、Antibodies: A Laboratory Manual、CSHL Press、1988;www.who.int/csr/resources/publications/influenza/WHO_CDS_CSR_NCS_2002_5/en/index.html;www.who.int/csr/disease/avian_influenza/guidelines/labtests/en/index.html)。いくつかの実施形態では、そのような薬剤は、特定のインフォールド剤をコードするヌクレオチドに特異的に結合し、RT−PCRまたはインサイツハイブリダイゼーションによってそのようなインフォールド剤を特異的に検出するのに使用することができる核酸を含むことができる(www.who.int/csr/resources/publications/influenza/WHO_CDS_CSR_NCS_2002_5/en/index.html;www.who.int/csr/disease/avian_influenza/guidelines/labtests/en/index.html)。ある特定の実施形態では、試料から単離された核酸は、検出前に増幅される。ある特定の実施形態では、診断試薬を検出可能な程度に標識することができる。
【0185】
本発明は、インフルエンザウイルス感染症を治療するための、本発明による試薬を含有するキットも提供する。キットの内容物には、それだけに限らないが、対象とするインフォールド剤(または特徴的部分もしくは生物学的に活性な部分)をコードするインフォールド剤ヌクレオチド(または特徴的部分もしくは生物学的に活性な部分)を含有する発現プラスミドが含まれる。代わりに、またはさらに、キットは、対象とするインフォールド剤(または特徴的な部分もしくは生物学的に活性な部分)を発現する発現プラスミドを含有することができる。ウイルス遺伝子をまったく含有しない発現プラスミドを含めることもでき、その結果、ユーザーは、対象とする任意のインフルエンザウイルスからのインフォールド剤ヌクレオチドを組み込むことができる。それだけに限らないが、ベロおよびMDCK細胞株を含めて、哺乳動物細胞株もキットに含めることができる。ある特定の実施形態では、診断試薬を検出可能な程度に標識することができる。
【0186】
ある特定の実施形態では、本発明によって使用するためのキットは、参照試料、試料を処理し、試験を実施するための使用説明書、結果を解釈するための使用説明書、緩衝液および/または試験を実施するのに必要な他の試薬を含むことができる。ある特定の実施形態では、キットは、抗体のパネルを含むことができる。
【0187】
本発明は、医薬組成物を投与するためのキットを提供する。例えば、いくつかの実施形態では、本発明は、少なくとも1つの用量のインフォールド剤を含むキットを提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、最初の単位用量および1つまたは複数の後続の単位用量のインフォールド剤を含むキットを提供する。いくつかのそのような実施形態では、最初の単位用量は、後続の単位用量より多く、または用量のすべては等しい。
【0188】
いくつかの実施形態では、本発明のキット(特に、インフォールド剤医薬組成物を投与するためのもの)は、送達デバイスの少なくとも1つのコンポーネント、例えば、吸入器を含む。いくつかのそのような実施形態では、本発明は、送達デバイスの少なくとも1つのコンポーネント、例えば、吸入器、およびある用量のインフォールド剤を含むキットを提供する。
【0189】
いくつかの実施形態では、提供されるキットは、使用するための使用説明書を含む。
【実施例】
【0190】
(実施例1)
インフォールド剤の設計
本実施例は、HAポリペプチド上の特定の領域に結合するためのインフォールド剤の設計を例示する。
【0191】
一例示的なインフォールド配列を、HA結合界面に対して設計した(図6)。これらの相互作用は、HAのヘッド(HA−1)ドメインおよびストーク(HA−2)ドメインの両方とのいくつかの潜在的に安定化させる接触を明らかにした(表10)。設計されたタンパク質の領域の1つは、HA−1およびHA−2ドメインの両方との所望の安定化疎水性接触および水素結合を有する一方で、別の顕著な領域は、主にHA−1との安定化疎水性相互作用を有し、一方、さらに別の領域は、主にHA−2との安定化疎水性相互作用を有することが分かる。したがって、考慮下の設計されるインフォールドタンパク質は、HA−1ドメインおよびHA−2ドメインのストーク−ヘッド界面で結合することが予期される。さらに、予期されるように、設計されるタンパク質は、抗体より著しく小さいこれらの体積のために、HA MPER領域においてN−グリコシル化を適応させることが分かる(図6)。したがって、設計されるタンパク質は、MPERがグリコシル化された、およびMPERがグリコシル化されていないインフルエンザ菌株の両方に、良好な親和性で、結合することを支持し、ユニバーサルインフルエンザ中和を支持する。
【0192】
【表10】

包括的ではなく、局所的な治療剤の送達を標的にすることにより、より高い効力を伴った、非常に毒性の少ない治療がもたらされることが公知である。広域スペクトルインフルエンザ中和特性に加えて、HA受容体上のα2,6シアル化グリカンに特異的に結合する能力は、インフルエンザに対する新規治療剤の重要な特性となる。いずれの理論にも束縛されることを望むことなく、本発明者らは、図1に例示したような、標的とされた広域スペクトルインフルエンザ中和のために以下のストラテジーを提案する。これらは、ヒト上気道中のシアル化グリカン受容体に結合する能力(標的とされた送達)とともに、HAのグリコシル化された/グリコシル化されていない保存された膜近位エピトープ領域に結合する能力(広域スペクトル中和)を含む。
【0193】
(実施例2)
インフォールド剤はHAポリペプチドに結合する
本実施例は、インビトロ結合アッセイにおけるインフォールド剤のHAポリペプチドへの結合を例示する。
【0194】
Maxisorp96ウェルプレートのウェルに、異なるサブタイプ(H1、H3、H5、H7、およびH9)のHAポリペプチド0.2μgをコーティングし、4℃で一晩放置した。HAポリペプチドをコーティングしたプレートをPBSで3回洗浄し、PBST中1%のBSAでブロックした。異なる濃度のインフォールド剤を、C179抗体(対照)とともに、HAポリペプチドをコーティングしたウェルに添加し、プレートをRTで2時間インキュベートした。プレートをPBSTで3回洗浄し、インフォールド剤を含有するウェルを、マウス−抗6xHis抗体(1:1000希釈)とともに、RTで1時間インキュベートした。プレートをPBSTで3回洗浄し、すべてのウェルをヤギ−抗マウスHRP抗体とともにRTで1時間インキュベートした。インキュベーション後にウェルをPBSTで洗浄し、結合したHRPを、TMB基質を使用して測定した。TMB基質をウェルに添加し、3分間インキュベートし、その後、1Nの硫酸を添加した。吸光度を450nmで測定した。
【0195】
本発明者らの実験結果は、予測された理論計算との良好な一致を示し、設計されたタンパク質は、インフルエンザのMPERがグリコシル化された菌株およびMPERがグリコシル化されていない菌株の両方に対して、高い親和性を示す。本発明者らの結果は、例示的なインフォールド剤が、同様の親和性で、様々なグリコシル化された、およびグリコシル化されていないHAポリペプチド(H1、H3、H5、H7、およびH9)に結合することを示す(図7、左パネル)。これらのデータをC179抗体対照と比較し(図7、右パネル)、これは、C179抗体は、異なるHAポリペプチドクレードを区別することができないことを示す。
【0196】
(実施例3)
インフォールド剤とインフォールド剤の標的との間の結合親和性
本実施例は、インフォールド剤とインフォールド剤の標的との間の、解離定数(K)として表した場合の結合親和性の計算を示す。この実施例では、インフォールド剤は例示的なインフォールド剤であり、インフォールド剤の標的はHAポリペプチドである。
【0197】
例示的なインフォールド剤とHAポリペプチドの間の結合親和性は、インフォールド剤およびHAポリペプチドの両方の濃度の関数である。本実施例では、結合親和性を、解離定数(K)を使用して定量的に記述する。解離定数の測定方法の例を以下に説明する。
【0198】
以前に記載したように、HAポリペプチドをコーティングしたプレートを、例示的なインフォールド剤を用いたELISAアッセイを実施するのに使用した。測定した450nmの吸光度を使用することによって、受容体の飽和分率を計算した。飽和分率を、インフォールド剤のモル濃度の関数としてプロットした。データを以下の式にフィッティングした:
【0199】
【化1】

式中、yは飽和分率であり、Iはインフォールド剤の濃度であり、Kは解離定数である。
【0200】
上記に参照した計算を使用し、回帰分析を適用して、本発明者らは、インフォールド剤のHAポリペプチドへの結合について、0.1〜500nMの範囲でKの観察値を有する。いくつかの実施形態では、本発明者らは、インフォールド剤のHAポリペプチドへの結合について、10〜100nMの範囲でKの観察値を有する。いくつかの実施形態では、本発明者らは、インフォールド剤のHAポリペプチドへの結合について、50〜100nMの範囲でKの観察値を有する。
【0201】
(実施例4)
インフォールド剤は、インビトロでウイルス感染性を阻害する
本実施例は、インビトロ結合アッセイにおいてウイルス感染性を防止する、インフォールド剤の能力を例示する。
【0202】
インフォールド剤のインフルエンザ感染を阻害する能力を、インフルエンザウイルス菌株の増殖および試験に一般に使用される上皮細胞株であるMDCK(Madin−Darbyイヌ腎臓)細胞を使用して、インビトロで評価した。感染性に対するインフォールド剤の阻害効果は、宿主細胞に対するウイルス産生量およびインフルエンザに誘導される細胞変性効果(CPE)の程度の両方を測定することによって求めた。ウイルス産生を定量化するのに、プラークアッセイ(図15および16)、ならびにqRT−PCRを使用した一方で、CPEレベルを測定するのに細胞生存能アッセイを使用した。実験は、インフォールド剤が、宿主細胞に導入する前の1時間のプレインキュベーション期間の間にそのウイルス標的に最初に結合することを可能にするように設定した。感染は、低レベルのトリプシン(1μM)の存在下で実施した。プラークアッセイは、コンフルエントな単層の細胞に試験試料の連続希釈液を接種し、ポリマーAvicel(FMC Biopolymers)の粘性懸濁液をかぶせることによって実施した。プラークを35℃で48時間の期間にわたって発達させ、ホルマリンで固定し、クリスタルバイオレットで染色し、可視化した(図15および16)。プラーク数を使用することによって、試験試料中の感染性ウイルス力価を計算した。総ウイルス産出量は、定量的RT−PCRによっても求め、これにより、感染した試料中のウイルスゲノムコピーのレベルを測定した。プライマーおよび標識されたプローブは、TaqMan法によってウイルス性赤血球凝集素遺伝子内の領域を特異的に増幅し、測定するように設計した。感染後の生細胞の相対的な数を、CPEの尺度として使用した。サブコンフルエントな細胞培養物を、化合物/ウイルスミックス(moi=1.0)に35℃で1時間の期間曝した。次いで非結合ウイルスおよび薬剤を取り出し、ウイルス増殖培地と置き換えた。細胞生存能は、PromegaのCellTiter Blue試薬(レサズリン)を使用して48時間インキュベートした後、非蛍光レサズリンの蛍光レゾルフィンの読みへの代謝的変換の程度として求めた(555/585nmの励起/発光;SpectraMax M2;分子プローブ)。
【0203】
試験したこれらから、本発明者らは、インフォールド剤がウイルスで誘導されるプラーク生成を阻害することを見出した。いくつかの実施形態では、インフォールド剤は、用量依存的な様式で、ウイルスで誘導されるプラーク生成を阻害する。
【0204】
(実施例5)
インフォールド剤はインビボでHAポリペプチドに結合する
本実施例は、インフォールド剤のインビボでHAポリペプチドに結合する能力を例示する。
【0205】
BALB/cマウス(生後4〜6週)をCharles River Labsから調達した。マウスを計量し、実験のためにそれぞれ6匹のマウスの4つの群に分けた。各群にイソフルラン、0mg/kg、0.06mg/kg、0.6mg/kg、または6mg/kgのインフォールド剤の用量を投与し、回復させた(<2分)。次いでこれらにイソフルランを再投与し、致死量のH1N1 PR8ウイルスを鼻腔内にチャレンジした。マウスを毎日、14日間モニターした。体重減少、視覚的なスコア、生存時間を毎日記録した(図17および18)。マウスにおけるインフルエンザ感染の臨床徴候には、猫背の姿勢、逆立った被毛、急速な呼吸、食欲低下、体重減少、および死亡が含まれる。さらに、力価のピークが3日目に予期される、鼻部におけるウイルス複製の低減を実証するために、それぞれ未処置の群および6mg/kgで投与された群からの3匹の動物から、鼻の洗浄物を3日目に収集した。各マウスから肺を回収した後、屠殺した。
【0206】
これらの試験の結果は、インフォールド剤は、マウスにおいてH1N1感染の発症を順調に遅延させることができ、代替の抗ウイルス剤治療、リバビリンに匹敵するか、またはこれより非常に良好である結果を伴ったことを示した。
【0207】
(実施例6)
診断におけるインフォールド剤
本実施例は、インフォールド剤の、(a)生物学的試料中のインフルエンザウイルスの存在を同定し、(b)サブタイプに基づいてウイルスを特徴づけるための迅速な方法を提供する能力を例示する。
【0208】
サンドイッチELISA(ウイルスタイピングELISAアッセイ)アッセイを、インフルエンザウイルスの存在を同定し、ウイルスサブタイプを特徴づける目的のために使用する。ウイルスタイピングELISAアッセイのために、96ウェルプレートにインフォールド剤2μgをコーティングし、4℃で一晩インキュベートする。次いでプレートをPBSで大規模に洗浄し、PBST中1%のBSAで1時間ブロックする。ブロック後、プレートをPBSTで洗浄し、さらに使用するまで4℃で貯蔵する。
【0209】
インフルエンザウイルスを含有する疑いのある生物学的試料を、直接、または処理後に、試料緩衝液(PBS)中に希釈する。次いで、希釈された試料をインフォールドでコーティングされたウェルに注ぎ、室温(RT)で2時間インキュベートし、その後、大規模に洗浄する。試料に由来するウイルスは、こうしてインフォールドによって捕獲され、これ自体をさらなる分析に用立てる。サブタイプ特異的抗体を、RTで1時間、異なるウェルに施す。PBSTでさらに洗浄した後、HRPにコンジュゲートした二次抗体をウェルに施す。インキュベートした後、ウェルを洗浄し、TMB基質および1Nの硫酸で処理する。450nmの吸光度を、分光光度計を使用して測定する。適切な陰性対照および陽性対照を含める。
【0210】
ウイルスタイピングELISAアッセイの結果により、試料中のインフルエンザウイルスの存在、およびウイルスのサブタイプについての情報が得られる。
【0211】
(実施例7)
インフルエンザウイルスグリカン特徴づけのためのインフォールド剤
本実施例は、グリカンタイピングアッセイを使用するグリカン特徴づけのためにインフルエンザウイルスを富化および標識する手段としてのインフォールド剤の能力を例示する。
【0212】
グリカンタイピングアッセイでは、インフォールド剤を、製造者の使用説明書により、EDC化学を使用して、Qdot525 Carboxyl Quantum Dotsにコンジュゲートする。Qdot−インフォールド複合体を処理された生物学的試料に添加し、2時間十分に撹拌する。次いで試料を遠心分離し、Qdot−インフォールド−InfA複合体をPBSTで3回洗浄する。次いでこの複合体を、グリカンアレイ(アンブレラトポロジーグリカンおよびコーントポロジーグリカンを含有する)上に施す。RTで2時間インキュベートした後、ウェルをPBSTで3回洗浄する。結合した蛍光を、ボトムリードモード(bottom read mode)を使用して、SpectraMax M2e分光光度計を使用して測定する。
【0213】
このアッセイの結果により、インフルエンザウイルスのグリカン特徴づけに関する情報が得られる。
【0214】
(実施例8)
インフォールド−28のIC50評価
HAを標的にする抗インフルエンザインフォールド剤のIC50を定量化した。これらの試験では、H1N1インフルエンザ菌株PR8(A/Puerto Rico/8/34)を利用した。手短に言えば、コンフルエントなMDCK細胞を、様々な濃度の抗インフルエンザ剤とともに40分間プレインキュベートされたPR8[4E3 PFU/mL]に感染させる。1時間感染させた後、培地を取り出し、実験に応じて、無ウイルス、薬物含有培地、または無ウイルス、無薬物培地と置き換えた。37℃、5%のCOで48時間インキュベートした後、上清を収集した。ウイルスRNAを単離し、ウイルスMタンパク質に特異的なプライマーを使用して、リアルタイムPCRによってウイルス力価を定量化した。
【0215】
インフォールド−28についてのIC50値の最初の評価は、マイクロ中和アッセイ、その後の定量的PCR(qPCR)によって判定した。様々な力価および濃度のウイルス(PR8)およびインフォールド−28の混合物を、それぞれ、35℃で1時間プレインキュベートした後、96ウェル組織培養プレート中のMDCK細胞培養(約10,000細胞/ウェル)に施した。さらに48時間インキュベートした後、培地を各ウェルから収集し、qPCRによってウイルス産生量を測定した。インフォールド−28の中和活性の予備的な指標は、感染を切り抜けた細胞のクリスタルバイオレットを用いた染色によってもたらされ(図20;染色された細胞は黒色である)、これは、薬物濃度依存性およびウイルス力価依存性阻害を示した。
【0216】
三つ組の試料からの培地を合わせ、次いでqPCRによるウイルス産生量の直接定量化にかけた。ウイルス力価は、内部標準曲線を活用してPCRのCt値から計算し、IC50値は、インフォールド−28の濃度に対して、計算された力価をプロットすることによって求めた(図21)。結果は、11μg/mlのインフォールド−28で、200pfu/ml(moi=0.04)のPR8ウイルス粒子の50%阻害(IC50)を示した。活性剤について予期されるように、この値はウイルス力価とともに増加した。結果は、インフォールド−28が強力な阻害剤であり、IC50は、感染の多重度(moi)によって影響されることを示す。
【0217】
本発明者らはまた、インフォールド−28の添加の方法(すなわち、オーバーレイなどにおいて)がどのように阻害に影響したかを調査した。インフォールド−28のIC50は、薬物が感染後に、オーバーレイに添加される場合、約1μg/mL、または約6nMであり、薬物が感染後に、オーバーレイに添加されない場合、約8μg/mLまたは約50nMであると測定された(図22)。表9からの少なくとも1つの他の試験されたインフォールド剤が匹敵するIC50を示した一方で、あまり強力でない活性が、少なくとも1つの他のそのような薬剤で観察された。当業者は、本明細書に提供されたガイダンスにより、過度の実験をすることなく、表9に提供された代表的な薬剤に基づいて、インフォールド剤の調整および最適化が可能になることを理解するであろう。
【0218】
(実施例9)
最小阻害活性アッセイ
本発明者らは、インフルエンザAに対する抗ウイルス剤の最小阻害濃度(MIC)を求めるための方法を利用した。このアッセイにおいて活性であるために、薬剤は、ウイルスに結合し、ウイルスのプラークを形成する能力を中和しなければならない。簡単に言えば、PBS中で2倍の増分で連続的に薬剤を希釈し、複数のウェルにわたって濃度勾配を形成する。既知数のウイルス性プラーク形成ユニットを各ウェルに添加し、1時間インキュベートした後、混合物をMDCK単層に添加することによってウイルス結合させる。Avicelオーバーレイによりプラーク形成が促進され、プラークを免疫染色によって可視化する。プラーク形成を防止するための薬剤の最低濃度をMICとして報告する。これらの試験では、H1N1菌株PR8(A/Puerto Rico/8/34)を利用した。
【0219】
インフォールド−28を含めて、表9からの代表的なインフォールド剤は、H1N1に対するアッセイにおいて活性を示し、具体的には、120未満、さらには15〜約100、または約15〜約60、または約15〜20から約60〜100の範囲内のMICを示した。このアッセイにおいて試験したインフォールド剤は、実施した特定の試験において、H3N2ウイルスに対して活性を示さなかった。活性がまったく観察されなかった(H1N1、H3N2に対してであっても、または両方に対してであっても)少なくともいくつかの場合では、アッセイにおけるインフォールド剤の安定性の問題となり得る。当業者は、そのような薬剤の安定性に対する改善(例えば、アミノ酸配列もしくは骨格の改変を介した)、薬剤の定常的な、もしくは繰り返しの注入、または薬剤および/もしくはアッセイの条件に対する他の実験による調整により、これまで実施された特定の試験において見られなかった活性を明らかにすることができることを理解するであろう。
【0220】
(実施例10)
インフォールド−28のペグ化
様々なPEGをインフォールド−28に付加し、MICを求めた。本発明者らは、より大きいPEG分子(例えば、20kD)を用いたペグ化は、MICアッセイにおけるインフォールド−28の性能に負のインパクトを与え、一方、より小さいPEG分子(例えば、5kD)は、より良好に耐容性を示すと思われる傾向を観察した。
【0221】
均等物
当業者は、通常の実験のみを使用して、本明細書に記載された本発明の具体的な実施形態に対する多くの均等物を認識することになり、またはこれらを確認することができるであろう。本発明の範囲は、上記説明に限定されるものではなく、むしろ以下の特許請求の範囲に示した通りである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤血球凝集素(HA)ポリペプチドに結合するインフォールド剤であって、長さが約1000アミノ酸未満であるポリペプチドを含み、前記ポリペプチドは、前記インフォールド剤が結合部位の近傍にあるときに、個々の相互作用残基が、同系標的残基の予め選択された距離または体積内に位置するように、選択および配置された相互作用残基に富むアミノ酸の三次折り畳み骨格を有する、インフォールド剤。
【請求項2】
前記同系標的残基が、18、19、20、21、41、45、49、52、53、および56、ならびにこれらの組合せからなる群から選択される位置でHAにおいて見出される残基に対応する少なくとも1つの残基を含む、請求項1に記載のインフォールド剤。
【請求項3】
前記同系標的残基が、Trp21、Ile45、Asp19、Asn19、Ala19、His18、Gln18、Leu18、Ile18、Val18、Gly20、Thr41、Thr49、Asn49、Gln49、Val52、Leu52、Ile52、Asn53、Ile56、およびVal56からなる群から選択される残基に対応する少なくとも1つの残基を含む、請求項2に記載のインフォールド剤。
【請求項4】
前記同系標的残基が、18位でHAにおいて見出される残基に対応する少なくとも1つの残基を含む場合、前記インフォールド剤が前記結合部位の近傍にあるときに、HAの18位に対応する標的残基の半径4〜7Åに位置する、His、Asp、Glu、Trp、Tyr、Asn、Lys、Arg、Gln、Met、Cys、Phe、Ile、Leu、およびValからなる群から選択される相互作用残基を前記インフォールド剤が含有するように、前記インフォールド剤が配置および構築される、請求項2に記載のインフォールド剤。
【請求項5】
前記同系標的残基が、18位でHAにおいて見出される残基に対応する少なくとも1つの残基を含む場合、前記インフォールド剤が前記結合部位の近傍にあるときに、HAの18位に対応する標的残基の半径4〜7Åに位置する、His、Asp、Glu、Trp、Tyr、Asn、Lys、Arg、Gln、Met、Cys、Phe、Ile、Leu、Val、Thr、Ser、Gly、Ala、およびProからなる群から選択される相互作用残基を前記インフォールド剤が含有するように、前記インフォールド剤が配置および構築される、請求項2に記載のインフォールド剤。
【請求項6】
前記同系標的残基が、18位でHAにおいて見出される残基に対応する少なくとも1つの残基を含む場合、前記インフォールド剤が前記結合部位の近傍にあるときに、半径4〜7Å以内に位置する、His、Asp、Glu、Trp、Tyr、Asn、Lys、Arg、Gln、Met、Cys、Phe、Ile、Leu、Val、Thr、Ser、Gly、Ala、またはPro以外の残基を、前記インフォールド剤が含有しない、請求項2に記載のインフォールド剤。
【請求項7】
前記同系標的残基が、19位でHAにおいて見出される残基に対応する少なくとも1つの残基を含む場合、前記インフォールド剤が前記結合部位の近傍にあるときに、HAの19位に対応する標的残基の半径4〜7Åに位置する、Arg、Lys、His、Ser、Thr、Asn、Asp、Gln、Glu、Ile、Val、Ala、およびGlyからなる群から選択される相互作用残基を前記インフォールド剤が含有するように、前記インフォールド剤が配置および構築される、請求項2に記載のインフォールド剤。
【請求項8】
前記同系標的残基が、19位でHAにおいて見出される残基に対応する少なくとも1つの残基を含む場合、前記インフォールド剤が前記結合部位の近傍にあるときに、HAの19位に対応する標的残基の半径4〜7Åに位置する、Arg、Lys、His、Ser、Thr、Asn、Asp、Gln、Glu、Ile、Val、Ala、Gly、Tyr、Pro、Trp、Phe、Leu、Cys、およびMetからなる群から選択される相互作用残基を前記インフォールド剤が含有するように、前記インフォールド剤が配置および構築される、請求項2に記載のインフォールド剤。
【請求項9】
前記同系標的残基が、19位でHAにおいて見出される残基に対応する少なくとも1つの残基を含む場合、前記インフォールド剤が前記結合部位の近傍にあるときに、半径4〜7Å以内に位置する、Arg、Lys、His、Ser、Thr、Asn、Asp、Gln、Glu、Ile、Val、Ala、Gly、Tyr、Pro、Trp、Phe、Leu、Cys、またはMet以外の残基を前記インフォールド剤が含有しない、請求項2に記載のインフォールド剤。
【請求項10】
前記同系標的残基が、20位でHAにおいて見出される残基に対応する少なくとも1つの残基を含む場合、前記インフォールド剤が前記結合部位の近傍にあるときに、HAの20位に対応する標的残基の半径4〜7Åに位置する、Gly、Ala、Cys、Met、Ser、およびProからなる群から選択される相互作用残基を前記インフォールド剤が含有するように、前記インフォールド剤が配置および構築される、請求項2に記載のインフォールド剤。
【請求項11】
前記同系標的残基が、20位でHAにおいて見出される残基に対応する少なくとも1つの残基を含む場合、前記インフォールド剤が前記結合部位の近傍にあるときに、HAの20位に対応する標的残基の半径4〜7Åに位置する、Gly、Ala、Asn、Asp、Arg、Phe、Trp、His、Tyr、Gln、およびLysからなる群から選択される相互作用残基を前記インフォールド剤が含有するように、前記インフォールド剤が配置および構築される、請求項2に記載のインフォールド剤。
【請求項12】
前記同系標的残基が、20位でHAにおいて見出される残基に対応する少なくとも1つの残基を含む場合、前記インフォールド剤が前記結合部位の近傍にあるときに、半径4〜7Å以内に位置する、Gly、Ala、Cys、Met、Ser、Pro、Asn、Asp、Arg、Phe、Trp、His、Tyr、Gln、またはLys以外の残基を前記インフォールド剤が含有しない、請求項2に記載のインフォールド剤。
【請求項13】
前記同系標的残基が、21位でHAにおいて見出される残基に対応する少なくとも1つの残基を含む場合、前記インフォールド剤が前記結合部位の近傍にあるときに、HAの21位に対応する標的残基の半径4〜7Åに位置する、Tyr、Ile、Met、Phe、His、Cys、およびProからなる群から選択される相互作用残基を前記インフォールド剤が含有するように、前記インフォールド剤が配置および構築される、請求項2に記載のインフォールド剤。
【請求項14】
前記同系標的残基が、21位でHAにおいて見出される残基に対応する少なくとも1つの残基を含む場合、前記インフォールド剤が前記結合部位の近傍にあるときに、HAの21位に対応する標的残基の半径4〜7Åに位置する、Gly、Val、Arg、Ser、Thr、Trp、Leu、およびAlaからなる群から選択される相互作用残基を前記インフォールド剤が含有するように、前記インフォールド剤が配置および構築される、請求項2に記載のインフォールド剤。
【請求項15】
前記同系標的残基が、21位でHAにおいて見出される残基に対応する少なくとも1つの残基を含む場合、前記インフォールド剤が前記結合部位の近傍にあるときに、半径4〜7Å以内に位置する、Tyr、Ile、Met、Phe、His、Cys、Pro、Gly、Val、Arg、Ser、Thr、Trp、Leu、またはAla以外の残基を前記インフォールド剤が含有しない、請求項2に記載のインフォールド剤。
【請求項16】
前記同系標的残基が、41位でHAにおいて見出される残基に対応する少なくとも1つの残基を含む場合、前記インフォールド剤が前記結合部位の近傍にあるときに、HAの41位に対応する標的残基の半径4〜7Åに位置する、Ser、Thr、Asp、Asn、Glu、およびGlnからなる群から選択される相互作用残基を前記インフォールド剤が含有するように、前記インフォールド剤が配置および構築される、請求項2に記載のインフォールド剤。
【請求項17】
前記同系標的残基が、41位でHAにおいて見出される残基に対応する少なくとも1つの残基を含む場合、前記インフォールド剤が前記結合部位の近傍にあるときに、HAの41位に対応する標的残基の半径4〜7Åに位置する、Met、Ile、Val、Tyr、Ala、Gly、His、Arg、Lys、およびProからなる群から選択される相互作用残基を前記インフォールド剤が含有するように、前記インフォールド剤が配置および構築される、請求項2に記載のインフォールド剤。
【請求項18】
前記同系標的残基が、41位でHAにおいて見出される残基に対応する少なくとも1つの残基を含む場合、前記インフォールド剤が前記結合部位の近傍にあるときに、半径4〜7Å以内に位置する、Ser、Thr、Asp、Asn、Glu、Gln、Met、Ile、Val、Tyr、Ala、Gly、His、Arg、Lys、またはPro以外の残基を前記インフォールド剤が含有しない、請求項2に記載のインフォールド剤。
【請求項19】
前記同系標的残基が、45位でHAにおいて見出される残基に対応する少なくとも1つの残基を含む場合、前記インフォールド剤が前記結合部位の近傍にあるときに、HAの45位に対応する標的残基の半径4〜7Åに位置する、Ile、Met、Phe、Leu、Val、Trp、およびCysからなる群から選択される相互作用残基を前記インフォールド剤が含有するように、前記インフォールド剤が配置および構築される、請求項2に記載のインフォールド剤。
【請求項20】
前記同系標的残基が、45位でHAにおいて見出される残基に対応する少なくとも1つの残基を含む場合、前記インフォールド剤が前記結合部位の近傍にあるときに、HAの45位に対応する標的残基の半径4〜7Åに位置する、Tyr、Pro、Ala、およびThrからなる群から選択される相互作用残基を前記インフォールド剤が含有するように、前記インフォールド剤が配置および構築される、請求項2に記載のインフォールド剤。
【請求項21】
前記同系標的残基が、45位でHAにおいて見出される残基に対応する少なくとも1つの残基を含む場合、前記インフォールド剤が前記結合部位の近傍にあるときに、半径4〜7Å以内に位置する、Ile、Met、Phe、Leu、Val、Trp、Cys、Tyr、Pro、Ala、またはThr以外の残基を前記インフォールド剤が含有しない、請求項2に記載のインフォールド剤。
【請求項22】
前記同系標的残基が、49位でHAにおいて見出される残基に対応する少なくとも1つの残基を含む場合、前記インフォールド剤が前記結合部位の近傍にあるときに、HAの45位に対応する標的残基の半径4〜7Åに位置する、Ser、Thr、Asp、Asn、Glu、Gln、Lys、およびArgからなる群から選択される相互作用残基を前記インフォールド剤が含有するように、前記インフォールド剤が配置および構築される、請求項2に記載のインフォールド剤。
【請求項23】
前記同系標的残基が、49位でHAにおいて見出される残基に対応する少なくとも1つの残基を含む場合、前記インフォールド剤が前記結合部位の近傍にあるときに、HAの49位に対応する標的残基の半径4〜7Åに位置する、Met、Ile、Val、Tyr、Ala、Gly、His、Arg、Lys、Pro、Trp、Ser、およびThrからなる群から選択される相互作用残基を前記インフォールド剤が含有するように、前記インフォールド剤が配置および構築される、請求項2に記載のインフォールド剤。
【請求項24】
前記同系標的残基が、49位でHAにおいて見出される残基に対応する少なくとも1つの残基を含む場合、前記インフォールド剤が前記結合部位の近傍にあるときに、半径4〜7Å以内に位置する、Ser、Thr、Asp、Asn、Glu、Gln、Lys、Arg、Met、Ile、Val、Tyr、Ala、Gly、His、Pro、またはTrp以外の残基を前記インフォールド剤が含有しない、請求項2に記載のインフォールド剤。
【請求項25】
前記同系標的残基が、52位でHAにおいて見出される残基に対応する少なくとも1つの残基を含む場合、前記インフォールド剤が前記結合部位の近傍にあるときに、HAの52位に対応する標的残基の半径4〜7Åに位置する、Val、Leu、Ile、Phe、Met、Cys、Tyr、およびTrpからなる群から選択される相互作用残基を前記インフォールド剤が含有するように、前記インフォールド剤が配置および構築される、請求項2に記載のインフォールド剤。
【請求項26】
前記同系標的残基が、52位でHAにおいて見出される残基に対応する少なくとも1つの残基を含む場合、前記インフォールド剤が前記結合部位の近傍にあるときに、HAの52位に対応する標的残基の半径4〜7Åに位置する、Cys、Met、Trp、Tyr、Ala、Gly、Thr、Pro、His、Ser、およびAspからなる群から選択される相互作用残基を前記インフォールド剤が含有するように、前記インフォールド剤が配置および構築される、請求項2に記載のインフォールド剤。
【請求項27】
前記同系標的残基が、52位でHAにおいて見出される残基に対応する少なくとも1つの残基を含む場合、前記インフォールド剤が前記結合部位の近傍にあるときに、半径4〜7Å以内に位置する、Val、Leu、Ile、Phe、Met、Cys、Tyr、Trp、Ala、Gly、The、Pro、His、またはSer以外の残基を前記インフォールド剤が含有しない、請求項2に記載のインフォールド剤。
【請求項28】
前記同系標的残基が、53位でHAにおいて見出される残基に対応する少なくとも1つの残基を含む場合、前記インフォールド剤が前記結合部位の近傍にあるときに、HAの53位に対応する標的残基の半径4〜7Åに位置する、Asn、Asp、Gln、Glu、Ser、Thr、およびLysからなる群から選択される相互作用残基を前記インフォールド剤が含有するように、前記インフォールド剤が配置および構築される、請求項2に記載のインフォールド剤。
【請求項29】
前記同系標的残基が、53位でHAにおいて見出される残基に対応する少なくとも1つの残基を含む場合、前記インフォールド剤が前記結合部位の近傍にあるときに、HAの53位に対応する標的残基の半径4〜7Åに位置する、His、Arg、Tyr、Gly、Ala、Trp、およびProからなる群から選択される相互作用残基を前記インフォールド剤が含有するように、前記インフォールド剤が配置および構築される、請求項2に記載のインフォールド剤。
【請求項30】
前記同系標的残基が、53位でHAにおいて見出される残基に対応する少なくとも1つの残基を含む場合、前記インフォールド剤が前記結合部位の近傍にあるときに、半径4〜7Å以内に位置する、Asn、Asp、Gln、Glu、Ser、Thr、Lys、His、Arg、Tyr、Gly、Ala、Trp、またはPro以外の残基を前記インフォールド剤が含有しない、請求項2に記載のインフォールド剤。
【請求項31】
前記同系標的残基が、56位でHAにおいて見出される残基に対応する少なくとも1つの残基を含む場合、前記インフォールド剤が前記結合部位の近傍にあるときに、HAの56位に対応する標的残基の半径4〜7Åに位置する、Ile、Met、Phe、Leu、Val、Trp、およびCysからなる群から選択される相互作用残基を前記インフォールド剤が含有するように、前記インフォールド剤が配置および構築される、請求項2に記載のインフォールド剤。
【請求項32】
前記同系標的残基が、56位でHAにおいて見出される残基に対応する少なくとも1つの残基を含む場合、前記インフォールド剤が前記結合部位の近傍にあるときに、HAの56位に対応する標的残基の半径4〜7Åに位置する、Tyr、Pro、Ala、Thr、Cys、Met、Trp、およびGlyからなる群から選択される相互作用残基を前記インフォールド剤が含有するように、前記インフォールド剤が配置および構築される、請求項2に記載のインフォールド剤。
【請求項33】
前記同系標的残基が、56位でHAにおいて見出される残基に対応する少なくとも1つの残基を含む場合、前記インフォールド剤が前記結合部位の近傍にあるときに、半径4〜7Å以内に位置する、Ile、Met、Phe、Leu、Val、Trp、Cys、Tyr、Pro、Ala、Thr、Trp、またはGly以外の残基を前記インフォールド剤が含有しない、請求項2に記載のインフォールド剤。
【請求項34】
HAポリペプチドのHA−1(ストーク)領域およびHA−2(ヘッド)領域の両方におけるアミノ酸を含む前記HAポリペプチド上の部位に結合する、請求項1に記載のインフォールド剤。
【請求項35】
前記HAポリペプチドのHA−1(ストーク)領域におけるアミノ酸を含む前記HAポリペプチド上の部位に結合する、請求項1に記載のインフォールド剤。
【請求項36】
前記HAポリペプチドのHA−2(ヘッド)領域におけるアミノ酸を含む前記HAポリペプチド上の部位に結合する、請求項1に記載のインフォールド剤。
【請求項37】
前記HAポリペプチドの膜近位エピトープ領域(MPER)領域におけるアミノ酸を含む前記HAポリペプチド上の部位に結合する、請求項1に記載のインフォールド剤。
【請求項38】
シアル化グリカンに結合する、請求項34から37のいずれか一項に記載のインフォールド剤。
【請求項39】
前記HAポリペプチドのMPER領域に近位のグリコシル化と無関係に前記HAポリペプチドに結合する、請求項1に記載のインフォールド剤。
【請求項40】
他の点では同一であるグリコシル化されていないMPER領域に対する前記インフォールド剤の親和性の少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、またはそれを上回る親和性で、グリコシル化されたMPER領域に結合する、請求項39に記載のインフォールド剤。
【請求項41】
アミノ酸およびグリカンの両方との相互作用を介して前記HAポリペプチドに結合する、請求項1に記載のインフォールド剤。
【請求項42】
前記ポリペプチドが、インフォールド−1、インフォールド−2、インフォールド−3、インフォールド−4、インフォールド−5、インフォールド−6、インフォールド−7、インフォールド−8、インフォールド−9、インフォールド−10、インフォールド−11、インフォールド−12、インフォールド−13、インフォールド−14、インフォールド−15、インフォールド−16、インフォールド−17、インフォールド−18、インフォールド−19、インフォールド−20、インフォールド−21、インフォールド−22、インフォールド−23、インフォールド−24、インフォールド−25、インフォールド−26、インフォールド−27、インフォールド−28、インフォールド−29、インフォールド−30、インフォールド−31、インフォールド−32、インフォールド−33、インフォールド−34、インフォールド−35、インフォールド−36、インフォールド−37、インフォールド−38、インフォールド−39、およびインフォールド−40からなる群から選択されるインフォールド内に見出されるものを含む、請求項1に記載のインフォールド剤。
【請求項43】
前記ポリペプチドが、インフォールド−1、インフォールド−2、インフォールド−3、インフォールド−4、インフォールド−5、インフォールド−6、インフォールド−7、インフォールド−8、インフォールド−9、インフォールド−10、インフォールド−11、インフォールド−12、インフォールド−13、インフォールド−14、インフォールド−15、インフォールド−16、インフォールド−17、インフォールド−18、インフォールド−19、インフォールド−20、インフォールド−21、およびインフォールド−22からなる群から選択されるインフォールド内に見出されるものを含む、請求項1に記載のインフォールド剤。
【請求項44】
前記ポリペプチドが、インフォールド−23、インフォールド−24、インフォールド−25、インフォールド−26、インフォールド−27、インフォールド−28、インフォールド−29、インフォールド−30、インフォールド−31、インフォールド−32、インフォールド−33、インフォールド−34、インフォールド−35、インフォールド−36、インフォールド−37、インフォールド−38、インフォールド−39、またはインフォールド−40からなる群から選択されるインフォールド内に見出されるものを含む、請求項1に記載のインフォールド剤。
【請求項45】
前記ポリペプチドが、インフォールド−1、インフォールド−3、インフォールド−9、インフォールド−10、インフォールド−11、インフォールド−12、インフォールド−14、インフォールド−15、インフォールド−17、インフォールド−18、インフォールド−19、インフォールド−22、インフォールド−28、およびインフォールド−34からなる群から選択されるインフォールド内に見出されるものを含む、請求項1に記載のインフォールド剤。
【請求項46】
前記ポリペプチドが、インフォールド−1、インフォールド−3、インフォールド−9、インフォールド−10、インフォールド−17、インフォールド−19、およびインフォールド−28からなる群から選択されるインフォールド内に見出されるものを含む、請求項1に記載のインフォールド剤。
【請求項47】
前記ポリペプチドが、インフォールド−3内に見出されるものを含む、請求項1に記載のインフォールド剤。
【請求項48】
前記ポリペプチドが、インフォールド−28内に見出されるものを含む、請求項1に記載のインフォールド剤。
【請求項49】
抗体の折り畳み骨格を有する、請求項1に記載のインフォールド剤。
【請求項50】
β−サンドイッチドメインの折り畳み骨格を有する、請求項49に記載のインフォールド剤。
【請求項51】
HAポリペプチドおよびHA受容体を含有する系と接触するときに、前記インフォールド剤が、前記HAポリペプチドと前記HA受容体との間の相互作用と競合することを特徴とする、請求項1に記載のインフォールド剤。
【請求項52】
前記HAポリペプチドと前記HA受容体の間の結合が3分の2以下に低減されるように、前記HAポリペプチドと前記HA受容体との間の相互作用と競合する、請求項51に記載のインフォールド剤。
【請求項53】
前記HAポリペプチドと前記HA受容体の間の結合が5分の1以下に低減されるように、前記HAポリペプチドと前記HA受容体との間の相互作用と競合する、請求項51に記載のインフォールド剤。
【請求項54】
前記HAポリペプチドと前記HA受容体の間の結合が10分の1以下に低減されるように、前記HAポリペプチドと前記HA受容体との間の相互作用と競合する、請求項51に記載のインフォールド剤。
【請求項55】
赤血球凝集素(HA)ポリペプチドに結合するインフォールド剤であって、長さが約1000アミノ酸未満であるポリペプチドを含み、前記ポリペプチドは、前記インフォールド剤が結合部位の近傍にあるときに、個々の相互作用残基が、同系標的残基の予め選択された距離または体積内に位置するように選択および配置された相互作用残基に富む折り畳み骨格構造を有する、インフォールド剤。
【請求項56】
インフルエンザ感染症を患っている疑いのある患者に由来する試料を提供する工程と、
赤血球凝集素(HA)ポリペプチドに結合するインフォールド剤と前記試料を接触させる工程であって、前記インフォールド剤は、長さが約1000アミノ酸未満であるポリペプチドを含み、前記ポリペプチドは、前記インフォールド剤が結合部位の近傍にあるときに、個々の相互作用残基が、同系標的残基の予め選択された距離または体積内に位置するように選択および配置された相互作用残基に富むアミノ酸の三次折り畳み骨格を有する工程と、
前記インフォールド剤の前記試料中の成分への結合を検出する工程と、
検出された前記結合に基づいて、前記患者を、インフルエンザ感染症を患っていると診断する工程と
を含む方法。
【請求項57】
前記インフォールド剤が、インフォールド−1、インフォールド−2、インフォールド−3、インフォールド−4、インフォールド−5、インフォールド−6、インフォールド−7、インフォールド−8、インフォールド−9、インフォールド−10、インフォールド−11、インフォールド−12、インフォールド−13、インフォールド−14、インフォールド−15、インフォールド−16、インフォールド−17、インフォールド−18、インフォールド−19、インフォールド−20、インフォールド−21、インフォールド−22、インフォールド−23、インフォールド−24、インフォールド−25、インフォールド−26、インフォールド−27、インフォールド−28、インフォールド−29、インフォールド−30、インフォールド−31、インフォールド−32、インフォールド−33、インフォールド−34、インフォールド−35、インフォールド−36、インフォールド−37、インフォールド−38、インフォールド−39、およびインフォールド−40からなる群から選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項58】
HAポリペプチドに結合するインフォールド剤を含む医薬組成物であって、前記インフォールド剤は、長さが1000アミノ酸未満であるポリペプチド配列を含み、前記ポリペプチドは、前記インフォールド剤が結合部位の近傍にあるときに、個々の相互作用残基が、同系標的残基の予め選択された距離または体積内に位置するように選択および配置された相互作用残基に富むアミノ酸の三次折り畳み骨格を有する、医薬組成物。
【請求項59】
前記インフォールド剤が、インフォールド−1、インフォールド−2、インフォールド−3、インフォールド−4、インフォールド−5、インフォールド−6、インフォールド−7、インフォールド−8、インフォールド−9、インフォールド−10、インフォールド−11、インフォールド−12、インフォールド−13、インフォールド−14、インフォールド−15、インフォールド−16、インフォールド−17、インフォールド−18、インフォールド−19、インフォールド−20、インフォールド−21、インフォールド−22、インフォールド−23、インフォールド−24、インフォールド−25、インフォールド−26、インフォールド−27、インフォールド−28、インフォールド−29、インフォールド−30、インフォールド−31、インフォールド−32、インフォールド−33、インフォールド−34、インフォールド−35、インフォールド−36、インフォールド−37、インフォールド−38、インフォールド−39、およびインフォールド−40からなる群から選択される、請求項26に記載の医薬組成物。
【請求項60】
インフルエンザ感染症にかかりやすい患者に、赤血球凝集素(HA)ポリペプチドに結合するインフォールド剤を含む組成物を投与する工程であって、前記インフォールド剤は、長さが約1000アミノ酸未満であるポリペプチド配列を含み、前記ポリペプチドは、前記インフォールド剤が結合部位の近傍にあるときに、個々の相互作用残基が、同系標的残基の予め選択された距離または体積内に位置するように選択および配置された相互作用残基に富むアミノ酸の三次折り畳み骨格を有し、ここで、前記被験体のインフルエンザ感染症を発症するリスクが低減されるように投与する、工程
を含む、方法。
【請求項61】
前記患者が、トリ、環境、ヒト、およびブタからなる群から選択される感染したもの(infected)に曝されていたという点で、インフルエンザ感染症にかかりやすい、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
被験体におけるインフルエンザ感染症の治療方法であって、
インフルエンザ感染を患っている患者に、赤血球凝集素(HA)ポリペプチドに結合するインフォールド剤を含む医薬組成物を投与する工程であって、前記インフォールド剤は、長さが約1000アミノ酸未満であるポリペプチド配列を含み、前記ポリペプチドは、前記インフォールド剤が結合部位の近傍にあるときに、個々の相互作用残基が、同系標的残基の予め選択された距離または体積内に位置するように選択および配置された相互作用残基に富むアミノ酸の三次折り畳み骨格を有し、ここで、前記被験体のインフルエンザ感染症が治療されるように投与する、工程
を含む方法。
【請求項63】
前記医薬組成物が、1つまたは複数の他の医薬品と組み合わせて投与される、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記1つまたは複数の他の医薬品が、抗インフルエンザワクチン、抗ウイルス剤、鎮痛剤、抗炎症剤、抗生物質、ステロイド剤、抗体、およびシアリダーゼからなる群から選択される、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記医薬組成物が、アジュバントと組み合わせて投与される、請求項62に記載の方法。

【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図9】
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【図10】
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【図14A】
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【図14B】
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【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公表番号】特表2013−518121(P2013−518121A)
【公表日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−551291(P2012−551291)
【出願日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際出願番号】PCT/US2011/022775
【国際公開番号】WO2011/094445
【国際公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(596060697)マサチューセッツ インスティテュート オブ テクノロジー (233)
【Fターム(参考)】