説明

樹木径測定器

【課題】 測定する樹木の大きさに関わらず、マーキング手段が樹木に対して適切な位置に配置できる樹木径測定器を提供する。
【解決手段】 樹木Xを挟むことにより樹木Xの径を測定すべく、接離可能な一対の挟み体1,2と、樹木Xにマーキングするためのマーキング手段3とを備える樹木径測定器において、マーキング手段3は、一対の挟み体1,2が接離する方向で、少なくとも一方の挟み体1,2に対して相対的に変位可能に構成されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹木を挟むことにより樹木の径を測定すべく、接離可能な一対の挟み体と、樹木にマーキングするためのマーキング手段とを備える樹木径測定器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹木(立ち木)の径(胸高直径)を測る樹木径測定器(「輪尺」ともいう)として、接離可能な一対の挟み体と、樹木にマーキングするためのマーキング手段とを備える樹木径測定器が知られている(例えば、特許文献1)。斯かる樹木径測定器は、一対の挟み体により樹木を挟んで樹木の径を測定すると共に、マーキング手段でその樹木をマーキングすることにより、樹木の径を測定する作業の効率を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−286628号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、斯かる樹木径測定器においては、マーキング手段が挟み体に固定されているため、測定する樹木の大きさによっては、マーキング手段が樹木に対して適切な位置に配置されてない場合があった。
【0005】
よって、本発明は、かかる事情に鑑み、測定する樹木の大きさに関わらず、マーキング手段が樹木に対して適切な位置に配置できる樹木径測定器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る樹木径測定器は、樹木を挟むことにより樹木の径を測定すべく、接離可能な一対の挟み体と、樹木にマーキングするためのマーキング手段とを備える樹木径測定器において、マーキング手段は、一対の挟み体が接離する方向で、少なくとも一方の挟み体に対して相対的に変位可能に構成されることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る樹木径測定器によれば、接離可能な一対の挟み体が樹木を挟むことにより樹木の径を測定できる。そして、樹木にマーキングするためのマーキング手段は、一対の挟み体が接離する方向において、少なくとも一方の挟み体に対して相対的に変位できる。これにより、測定する樹木に対応して、マーキング手段をフレキシブルに位置決めすることができる。
【0008】
また、本発明に係る樹木径測定器においては、マーキング手段は、一対の挟み体が接離するのに伴い、少なくとも一方の挟み体に対して相対的に変位するように構成されてもよい。
【0009】
斯かる構成の樹木径測定器によれば、一対の挟み体が接離するのに伴い、マーキング手段が少なくとも一方の挟み体に対して相対的に変位する。これにより、一対の挟み体を操作することにより、マーキング手段を個別に操作することなく、マーキング手段を変位させることができる。
【0010】
また、本発明に係る樹木径測定器においては、一対の挟み体が接離する方向に沿って伸縮可能に配置される一対の弾性体を備え、一方の弾性体は、一方の挟み体とマーキング手段とを接続し、他方の弾性体は、他方の挟み体とマーキング手段とを接続してもよい。
【0011】
斯かる構成の樹木径測定器によれば、一方の弾性体が一方の挟み体とマーキング手段とを接続すると共に、他方の弾性体が他方の挟み体とマーキング手段とを接続する。そして、一対の弾性体は、一対の挟み体が接離する方向に沿って伸縮可能に配置されるため、一対の挟み体が接離するのに伴い、マーキング手段が各挟み体に対して相対的に変位できると共に、マーキング手段が一対の挟み体の間で位置決めされる。
【0012】
また、本発明に係る樹木径測定器においては、一方の挟み体と一体的に形成される固定ラックと、各挟み体に対して相対的に変位可能な可動ラックと、他方の挟み体と一体的に形成され、一対の挟み体が接離するのに伴い、可動ラックを各挟み体に対して相対的に変位させるべく、各ラックと噛合する歯車機構とを備え、マーキング手段は、可動ラックに連結されてもよい。
【0013】
斯かる構成の樹木径測定器によれば、他方の挟み体と一体的に形成される歯車機構は、一方の挟み体と一体的に形成される固定ラックと噛合すると共に、各挟み体に対して相対的に変位可能な可動ラックと噛合する。これにより、一対の挟み体が接離するのに伴い、歯車機構が回転するため、可動ラックが各挟み体に対して相対的に変位する。したがって、可動ラックに連結されるマーキング手段は、一対の挟み体が接離するのに伴い、各挟み体に対して相対的に変位することができる。
【発明の効果】
【0014】
以上の如く、本発明に係る樹木径測定器によれば、測定する樹木に対応して、マーキング手段をフレキシブルに位置決めすることができるため、測定する樹木の大きさに関わらず、マーキング手段が樹木に対して適切な位置に配置できるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る樹木径測定器の全体図であって、(a)は平面図、(b)は正面図を示す。
【図2】同実施形態に係る樹木径測定器の要部概要図であって、図1(a)のA−A線における断面図を示す。
【図3】同実施形態に係る樹木径測定器の要部概要図であって、図1(a)のB−B線における断面図を示す。
【図4】同実施形態に係る樹木径測定器におけるマーキング手段の移動状況を説明する要部概要図であって、(a)及び(b)はそれぞれ平面図を示す。
【図5】同実施形態に係る樹木径測定器におけるマーキング手段の切り替え状況を説明する要部概要図であって、(a)は縦断面図、(b)は平面図を示す。
【図6】本発明の他の実施形態に係る樹木径測定器の全体図であって、(a)は平面図、(b)は正面図を示す。
【図7】同実施形態に係る樹木径測定器の要部概要図であって、(a)は図6(b)のG−G線における断面図、(b)はJ領域の拡大図を示す。
【図8】同実施形態に係る樹木径測定器の要部概要図であって、図7のH−H線における断面図を示す。
【図9】同実施形態に係る樹木径測定器の要部概要図であって、図7のI−I線における断面図を示す。
【図10】同実施形態に係る樹木径測定器におけるマーキング手段の移動状況を説明する要部概要図であって、(a)及び(b)はそれぞれ平面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る樹木径測定器における第1の実施形態について、図1〜図5を参酌して説明する。
【0017】
本実施形態に係る樹木径測定器は、図1〜図3に示すように、樹木(立ち木)Xを挟むことにより樹木Xの径(胸高直径)を測定すべく、接離可能(所定方向で相対的に変位可能)な一対の長尺な挟み体1,2と、樹木Xにマーキングするためのマーキング手段3とを備える。なお、一方の挟み体1を第1挟み体1といい、他方の挟み体2を第2挟み体2という。
【0018】
そして、樹木径測定器は、マーキング手段3を支持し、一対の挟み体1,2が接離する方向で、各挟み体1,2に対してマーキング手段3を相対的に変位させる移動手段4と、一対の挟み体1,2が接離する方向に沿って、第2挟み体2及びマーキング手段3を案内する案内手段5とを備える。また、樹木径測定器は、測定結果を記録する記録手段6を備える。
【0019】
第1挟み体1は、第2挟み体2とにより樹木Xを挟む挟み部11と、測定者が把持するための把持部12とを備える。そして、挟み部11は、板状に形成されると共に、把持部12は、円柱状に形成される。なお、挟み部11及び把持部12は、直線状に配置され、端部同士で連結されている。
【0020】
第2挟み体2は、第1挟み体1の挟み部11とにより樹木Xを挟む挟み部21と、測定者が把持するための把持部22とを備える。また、第2挟み体2は、第1挟み体1と接離する(相対的に変位する)方向に沿って、案内手段5に案内される被案内部23を備える。
【0021】
挟み部21は、板状に形成されると共に、把持部22は、円柱状に形成される。そして挟み部21及び把持部22は、直線状に配置され、端部同士で連結されている。なお、一対の挟み体1,2は、長手方向が平行となるように配置され、長手方向と直交する方向で接離可能に構成されている。
【0022】
被案内部23は、案内手段5を外嵌すべく、凹状に形成される。そして、被案内部23は、案内手段5から抜け出す(分離する)のを防止すべく、案内手段5を係止する凸状の抜け止め部23aを備える。具体的には、被案内部23は、略C字状の断面形状に形成されている。
【0023】
マーキング手段3は、測定した樹木Xをマーキングするための一対のチョーク(マーキング部材)31,31と、チョーク31を内部に収容する収容部32と、収容部32を支持する支持体33とを備える。そして、マーキング手段3は、収容部32から各チョーク31を繰り出すための繰出手段34を備える。なお、本実施形態においては、一対のチョーク31,31は、それぞれ異なる色としている。
【0024】
収容部32は、一対のチョーク31,31を直線状に配置すべく、円筒状に形成され、各端部からチョーク31を繰り出すように構成される。そして、収容部32は、一方のチョーク31の先端を樹木Xと対向させるべく、長手方向(軸心方向)が各挟み体1,2の長手方向と平行となるように位置決め可能に構成されると共に、他方のチョーク31の先端も樹木Xと対向可能にさせるべく、各チョーク31の配置を切り替え可能に構成される。
【0025】
具体的には、収容部32は、上下方向(収容部32の軸心と直交する方向)を中心に回転すべく、支持体33に枢着されるための軸体32aと、支持体33に向けて付勢されるべく、軸体32aに外嵌される付勢体32bと、所定位置で位置決めされるべく、支持体33に係合される凸状の被係合部32cとを備える。
【0026】
支持体33は、収容部32の凸状の被係合部32cを係合する凹状の係合部33aを備える。そして、支持体33は、案内手段5を外嵌するように凹状に形成され、案内手段5に案内される被案内部33bと、案内手段5から抜け出す(分離する)のを防止すべく、案内手段5を係止する凸状の抜け止め部33cとを備える。具体的には、支持体33は、開口が端部に向けて小さくなるように凹状に形成されることにより、被案内部33b及び抜け止め部33cを形成する。
【0027】
繰出手段34は、収容部32の内部に配置され、チョーク31を外方に向けて付勢する付勢体34aと、収容部32の各端部と螺合し、チョーク31を保持する保持部34bとを備える。そして、保持部34bは、収容部32の各端部がチョーク31を径方向の内向きに押圧することでチョーク31を保持すべく、収容部32の各端部と螺合することに伴い、収容部32の各端部を縮径可能に構成される。
【0028】
移動手段4は、一対の挟み体1,2が接離するのに伴い、マーキング手段3を各挟み体1,2に対して相対的に変位すべく、一対の弾性体41,41を備える。そして、各弾性体41は、一対の挟み体1,2が接離する方向に沿って伸縮可能に配置される。また、一方の弾性体41は、第1挟み体1とマーキング手段3とを接続すると共に、他方の弾性体41は、第2挟み体2とマーキング手段3とを接続する。
【0029】
具体的には、一方の弾性体41は、案内手段5の下方側に配置され、第1挟み体1に設けられる凸状の接続部13とマーキング手段3の支持体33とを接続すると共に、他方の弾性体41は、案内手段5の下方側に配置され、第2挟み部2に設けられる凸状の接続部24とマーキング手段3の支持体33とを接続する。これより、各弾性体41は、各挟み体1,2とマーキング手段3とを接近させるように弾性力が働いている。なお、各弾性体41は、同一構成、即ち、同じ伸縮率(ばね定数)を有している。
【0030】
案内手段5は、一対の挟み体1,2が接離する方向に沿って、第2挟み体2の被案内部23を案内する第1案内部51を備える。また、案内手段5は、一対の挟み体1,2が接離する方向に沿って、支持体33の被案内部33bを案内する第2案内部52を備える。
【0031】
第1案内部51は、長尺な板状に形成され、長手方向の端部が第1挟み体1の挟み部11に連結され、長手方向が第1挟み体1の長手方向と直交するように配置される。そして、第1案内部51は、第2挟み体2の被案内部23に外嵌されているため、第2挟み体2を第2挟み体2の長手方向と直交する方向(幅方向)に沿って案内する。
【0032】
第2案内部52は、第1案内部51から下方に向けて突出し且つ第1案内部51の長手方向に沿って配置される。また、第2案内部52は、下方に向けて幅寸法が大きくなるように形成される。そして、第2案内部52は、支持体33の被案内部33bに外嵌されているため、支持体33を各挟み体1,2の長手方向と直交する方向(幅方向)に沿って案内する。
【0033】
記録手段6は、測定対象の樹木Xの所有者を区分するための所有者区分ボタン61,…と、測定対象の樹木Xの種類を区分するための樹種区分ボタン62,…と、測定手段(採番及び図示しない)を介して、樹木Xの径の測定を行うための測定ボタン63と、各データを表示する表示部64と、各データを記録するための記録ボタン65とを備える。また、記録手段6は、メモリカード(採番及び図示しない)に各データを記録すべく、メモリカードを着脱可能に構成されている。
【0034】
以上より、本実施形態に係る樹木径測定器は、一対の挟み体1,2が接離する方向において、マーキング手段3が各挟み体1,2に対して相対的に変位するため、測定する樹木Xに対応して、マーキング手段3を位置決めできる。したがって、測定する樹木Xの大きさに関わらず、マーキング手段3が樹木Xに対して適切な位置に配置できる。
【0035】
また、本実施形態に係る樹木径測定器は、各挟み体1,2とマーキング手段3とを接続する各弾性体41が、一対の挟み体1,2が接離する方向に沿って伸縮するため、一対の挟み体1,2が接離するのに伴い、マーキング手段3を各挟み体1,2に対して相対的に変位できる。しかも、一対の挟み体1,2を操作することにより、マーキング手段3を個別に操作することなく、マーキング手段3を一対の挟み体1,2の間で位置決めさせることもできる。
【0036】
具体的には、図4(a)及び(b)に示すように、第2挟み体2が第1挟み体1から離反するよう(C矢印方向)に移動すると、各弾性体41が伸びるため、マーキング手段3が第1挟み体1から離反するよう(D矢印方向)に移動する。そして、各弾性体41の伸びる量が等しいため、マーキング手段3は、第2挟み体2が移動する距離の半分の距離を移動することになる。
【0037】
このとき、マーキング手段3は、第2挟み体2から離反する距離と同じ距離を、第1挟み体1からも離反している。したがって、マーキング手段3は、一対の挟み体1,2が接離するのに伴って、各挟み体1,2に対して相対的に変位し、しかも、常に、一対の挟み体1,2の略中間に配置されることになる。
【0038】
また、本実施形態に係る樹木径測定器は、収容部32が軸体32aを介して支持体33に枢着されているため、一対のチョーク31,31の先端をそれぞれ樹木Xと対向させるべく、各チョーク31の配置を切り替えることができる。
【0039】
具体的には、図5(a)を示すように、付勢体32bに抗して、収容部32を下方(E矢印方向)に向けて引くことにより、収容部32を支持体33から離反させる。これにより、収容部32の被係合部32cと支持体33の係合部33aとの係合が解除されるため、その状態を維持しつつ、図5(b)に示すように、収容部32を軸体32a周り(F矢印方向)に回動する。
【0040】
そして、収容部32を離すと、付勢体32bにより、収容部32が支持体33に接近し、さらに、収容部32の被係合部32cが支持体33の係合部33aに係合される。このように、一方のチョーク31の先端が樹木Xに対向する状態から、他方のチョーク31の先端が樹木Xに対向する状態に切り替えることができる。
【0041】
次に、本発明に係る樹木径測定器における第2の実施形態について、図6〜図10を参酌して説明する。なお、図6〜図10において、図1〜図5の符号と同一の符号を付した部分は、第1実施形態と同一の構成又は要素を表す。
【0042】
本実施形態に係る樹木径測定器は、図6〜図9に示すように、樹木Xを挟むことにより樹木Xの径を測定すべく、接離可能な第1及び第2挟み体1,20と、樹木Xにマーキングするためのマーキング手段30と、マーキング手段30を支持し、一対の挟み体1,20が接離する方向で、各挟み体1,20に対してマーキング手段30を相対的に変位させる移動手段40と、第2挟み体20及びマーキング手段30を案内する案内手段50と、測定結果を記録する記録手段6とを備える。
【0043】
第2挟み体20は、挟み体1の挟み部11とにより、樹木Xを挟む挟み部21と、測定者が把持するための把持部22と、第1挟み体1と相対的に変位する方向に沿って、案内手段50に案内される被案内部25とを備える。そして、被案内部25は、案内手段50を外嵌すべく、凹状に形成されると共に、案内手段50から抜け出すのを防止すべく、案内手段50を係止する凸状の抜け止め部25aが設けられている。
【0044】
マーキング手段30は、一対のチョーク31,31を内部に収容する収容部35と、収容部35を支持する支持体36と、収容部35から各チョーク31を繰り出すための繰出手段34とを備える。
【0045】
収容部35は、上下方向を中心に回転すべく、支持体36に挿通されて枢着される。そして、収容部35は、所定位置で位置決めされるべく、支持体36に係合される凸状の被係合部35aを備える。なお、収容部35は、各チョーク31の先端をそれぞれ樹木Xと対向させるべく、各挟み体1,20と平行となるように位置決め可能に構成されると共に、各チョーク31の配置を切り替え可能に構成される。
【0046】
支持体36は、収容部35の凸状の被係合部35aを係合する凹状の係合部36aと、収容部35を枢着するための軸体36bと、接近する方向(上方向)に向けて収容部35を付勢すべく、軸体36bに外嵌される付勢体36cとを備える。また、支持体36は、移動手段40に連結する連結部36dを備える。
【0047】
移動手段40は、第1挟み体1と一体的に形成される固定ラック42と、各挟み体1,2及び固定ラック42に対して相対的に変位可能な可動ラック43と、第2挟み体2と意一体的に形成され、一対の挟み体1,2が接離するのに伴い、可動ラック43を各挟み体1,2及び固定ラック42に対して相対的に変位させるべく、各ラック42,43と噛合する歯車機構44とを備える。
【0048】
固定ラック42は、各挟み体1,20の長手方向と直交する方向に沿って配置され、第1挟み体1に固定される。そして、固定ラック42は、案内手段50の内部であって、可動ラック43と対向する側(内方側)に噛合部(ギア歯)が設けられている。なお、固定ラック42は、上面や、噛合部が設けられていない外方側が案内手段50として機能することになる。
【0049】
可動ラック43は、案内手段50に収容され、各挟み体1,20の長手方向と直交する方向に沿って配置される。即ち、可動ラック43は、固定ラック42と離間して平行に配置される。そして、可動ラック43は、固定ラック42と対向する側(内方側)に噛合部(ギア歯)が設けられている。また、可動ラック43は、下方側で支持体36(連結部36d)に連結されている。
【0050】
歯車機構44は、固定ラック42と噛合する第1歯車44aと、第1歯車44aに並設され、第1歯車44aと噛合する第2歯車44bと、第2歯車44bと同軸上で一体的に回転し、可動ラック43と噛合する第3歯車44cとを備える。そして、歯車機構44は、各ラック42,43間に配置される。
【0051】
各歯車44a,44b,44cは、第2挟み体2に枢着されている。即ち、歯車機構44は、第2挟み体2に固定されている。そして、第1歯車44aと第2歯車44bとが噛合することにより、第1歯車44aと、第2歯車44b及び第3歯車44cとは、反対方向に回転する。また、第3歯車44cは、第2歯車44bに対して、歯数が半分となるように形成されている。
【0052】
案内手段50は、一対の挟み体1,20が接離する方向に沿って、第2挟み体20の被案内部25を案内する第1案内部53と、一対の挟み体1,20が接離する方向に沿って、移動手段40の可動ラック43を案内する第2案内部54とを備える。また、案内手段50は、支持体36の連結部36dに挿通されるべく、各挟み体1,20の長手方向と直交する方向に沿って形成される挿通孔55を備える。
【0053】
第1案内部53は、長尺に形成され、長手方向の端部が第1挟み体1の挟み部11に連結され、長手方向が各挟み体1,20の長手方向と直交するように配置される。そして、第1案内部53は、第2挟み体20の被案内部25に外嵌されているため、第2挟み体20を第2挟み体20の長手方向と直交する方向(幅方向)に沿って案内する。
【0054】
第2案内部54は、各挟み体1,20の長手方向と直交する方向に沿って配置される。そして、第2案内部54は、可動ラック43の外方側(噛合部が形成されていない側)を、各挟み体1,20の長手方向と直交する方向に沿って案内する。
【0055】
以上より、本実施形態に係る樹木径測定器は、一対の挟み体1,20が接離する方向において、マーキング手段30が各挟み体1,20に対して相対的に変位するため、測定する樹木Xに対応して、マーキング手段30を位置決めできる。したがって、測定する樹木Xの大きさに関わらず、マーキング手段30が樹木Xに対して適切な位置に配置できる。
【0056】
また、本実施形態に係る樹木径測定器は、第2挟み体20に固定(枢着)される歯車機構44が、第1挟み体1に固定される固定ラック42と噛合すると共に、各挟み体1,20に対して相対的に変位可能な可動ラック43と噛合する構成である。これにより、一対の挟み体1,20が接離するのに伴い、歯車機構44が回転するため、可動ラック43が各挟み体1,20に対して相対的に変位する。
【0057】
したがって、可動ラック43に連結されるマーキング手段30は、一対の挟み体1,20が接離するのに伴い、各挟み体1,20に対して相対的に変位することができる。しかも、一対の挟み体1,20を操作することにより、マーキング手段30を個別に操作することなく、マーキング手段30を一対の挟み体1,20の間で位置決めさせることもできる。
【0058】
具体的には、図10(a)及び(b)に示すように、第2挟み体20が第1挟み体1から離反するよう(K矢印方向)に移動すると、第1歯車44aが固定ラック42と噛合し、上下方向を中心(L矢印方向)に回転する。そして、第2歯車44b(図10において図示していない)が第1歯車44aと噛合するため、第1歯車44aと反対方向(M矢印方向)に回転すると共に、第3歯車44cも第2歯車44bと一体的になって回転する。
【0059】
これにより、可動ラック43が第3歯車44cと噛合するため、第2挟み体20が移動する方向と反対方向(N矢印方向)に移動する。このとき、第3歯車44cが第2歯車44bに対して半数の歯数であるため、可動ラック43が第2挟み体20から離反する距離は、第2挟み体20が第1挟み体1から離反する距離の半分である。なお、可動ラック43は、第1挟み体1に対しても、同じ距離を離反している。
【0060】
したがって、可動ラック43は、一対の挟み体1,20が離反(接近)するのに伴って、一対の挟み体1,20が離反(接近)する距離に対して、半分の距離を、各挟み体1,20から離反(接近)する。これにより、可動ラック43に連結されるマーキング手段30は、一対の挟み体1,20が接離するのに伴って、各挟み体1,20に対して相対的に変位し、しかも、常に、一対の挟み体1,20の略中間に配置されることになる。
【0061】
なお、本発明に係る樹木径測定器は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。また、上記した複数の実施形態の構成や方法等を任意に採用してもよく(1つの実施形態に係る構成や方法等を他の実施形態に係る構成や方法等に適用してもよく)、さらに、下記する各種の変更例に係る構成や方法等を任意に選択して、上記した実施形態に係る構成や方法等に採用してもよいことは勿論である。
【0062】
例えば、上記実施形態に係る樹木径測定器においては、チョーク31により樹木Xにマーキングする場合、即ち、マーキング部材31がチョーク31である場合を説明したが、斯かる場合に限られない。例えば、マーキング部材は、インク等を噴霧するスプレーである場合でもよく、また、インク等で捺印するスタンプである場合でもよい。
【0063】
また、上記実施形態に係る樹木径測定器においては、マーキング手段3(30)がチョーク31を二つ備える場合を説明したが、斯かる場合に限られない。例えば、マーキング手段がチョーク31を一つ備える場合でもよく、また、チョーク31を三つ以上備え、それぞれ切り替え可能に構成される場合でもよい。
【0064】
また、上記実施形態に係る樹木径測定器においては、移動手段4(40)は、一対の挟み体1,2(20)が接離するのに伴って、マーキング手段3(30)を各挟み体1,2(20)に対して相対的に変位する場合を説明したが、斯かる場合に限られない。例えば、移動手段は、各挟み体を接離する操作とは別に、マーキング手段を各挟み体に対して相対的に変位させる操作を行うような構成である場合でもよい。
【0065】
また、上記実施形態に係る樹木径測定器においては、移動手段4(40)は、マーキング手段3(30)を各挟み体1,2(20)に対して相対的に変位させる場合を説明したが、斯かる場合に限られない。例えば、移動手段は、マーキング手段を一方の挟み体に対してのみ相対的に変位させる場合、即ち、他方の挟み体と一体的に形成される(他方の挟み体に固定される)場合でもよい。
【0066】
また、第1実施形態に係る樹木径測定器においては、各挟み体1,2とマーキング手段3とをそれぞれ一つの弾性体41で接続する場合を説明したが、斯かる場合に限られない。例えば、並設される複数の弾性体41,…で、各挟み体1,2とマーキング手段3とを接続する場合でもよい。要するに、弾性体41は、一対の挟み体1,2が接離する方向に伸縮するように配置されていればよい。
【0067】
また、第2実施形態に係る樹木径測定器においては、固定ラック42が第1挟み体1に固定され、歯車機構44(各歯車44a,44b,44c)が第2挟み体20に固定(枢着)される場合を説明したが、斯かる場合に限られない。例えば、固定ラックが第2挟み体に固定され、歯車機構が第1挟み体に枢着(固定)される場合でもよい。即ち、固定ラックが第2挟み体と一体的に形成され、歯車機構が第1挟み体と一体的に形成される場合でもよい。
【0068】
また、第2実施形態に係る樹木径測定器においては、歯車機構44が三つの歯車44a,44b,44cを備える場合を説明したが、斯かる場合に限られない。例えば、歯車機構が歯車を一つ、二つ又は四つ以上備える場合でもよい。
【符号の説明】
【0069】
1…(第1)挟み体、2,20…(第2)挟み体、3,30…マーキング手段、41…弾性体、42…固定ラック、43…可動ラック、44…歯車機構、X…樹木

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹木を挟むことにより樹木の径を測定すべく、接離可能な一対の挟み体と、樹木にマーキングするためのマーキング手段とを備える樹木径測定器において、
マーキング手段は、一対の挟み体が接離する方向で、少なくとも一方の挟み体に対して相対的に変位可能に構成されることを特徴とする樹木径測定器。
【請求項2】
マーキング手段は、一対の挟み体が接離するのに伴い、少なくとも一方の挟み体に対して相対的に変位するように構成される請求項1に記載の樹木径測定器。
【請求項3】
一対の挟み体が接離する方向に沿って伸縮可能に配置される一対の弾性体を備え、
一方の弾性体は、一方の挟み体とマーキング手段とを接続し、他方の弾性体は、他方の挟み体とマーキング手段とを接続する請求項2に記載の樹木径測定器。
【請求項4】
一方の挟み体と一体的に形成される固定ラックと、各挟み体に対して相対的に変位可能な可動ラックと、他方の挟み体と一体的に形成され、一対の挟み体が接離するのに伴い、可動ラックを各挟み体に対して相対的に変位させるべく、各ラックと噛合する歯車機構とを備え、
マーキング手段は、可動ラックに連結される請求項2に記載の樹木径測定器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−243383(P2010−243383A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−93652(P2009−93652)
【出願日】平成21年4月8日(2009.4.8)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】