説明

樹状細胞に対する抗体およびヒト樹状細胞集団およびその使用

【課題】免疫応答を調節するための手段および方法を提供する。
【解決手段】ヒト樹状細胞(DC)の個別集団を特異的に認識する新規な抗体および該抗体を用いた該DCの単離方法。さらに、上記抗体により認識される抗原およびエピトープ並びに該抗体をコードするポリヌクレオチド。さらに、該ポリヌクレオチドを含むベクター並びに該ベクターで形質転換した宿主細胞および該抗体の産生におけるその使用。さらに、上記抗体の結合部位のドメイン、または上記抗原またはエピトープおよび少なくとも一つのさらなる好ましくは機能性のドメインを含むポリペプチドおよびそのようなポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。さらに、該ポリヌクレオチドを含むベクター、該ポリヌクレオチドまたはベクターでトランスフェクションした宿主細胞および上記ポリペプチドの製造のためのその使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒト樹状細胞(DC)の個別集団を特異的に認識する新規な抗体および該抗体を用いた該DCの単離方法に関する。本発明はさらに、上記抗体により認識される抗原およびエピトープ並びに該抗体をコードするポリヌクレオチドに関する。さらに、本発明は、該ポリヌクレオチドを含むベクター並びに該ベクターで形質転換した宿主細胞および該抗体の産生におけるその使用に関する。本発明はさらに、上記抗体の結合部位のドメイン、または上記抗原またはエピトープおよび少なくとも一つのさらなる好ましくは機能性のドメインを含むポリペプチドおよびそのようなポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに関する。さらに、本発明は、該ポリヌクレオチドを含むベクター、該ポリヌクレオチドまたはベクターでトランスフェクションした宿主細胞および上記ポリペプチドの製造のためのその使用に関する。本発明はまた、上記DCの単離または同定方法をも含み、該方法によって得ることのできる、および/または上記抗体の認識によって特徴付けられる、および/または上記抗原またはエピトープを含むDCに関する。
【0002】
本発明はまた、ある種の状態にあるT細胞を調製または同定する方法並びにT細胞により媒体された免疫応答の活性化を妨害する化合物を同定する方法を含む。さらに、本発明は、上記方法によって得られる上記抗体、抗原、エピトープ、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、ベクター、樹状細胞またはT細胞または化合物を含むキットおよび組成物、好ましくは医薬および診断組成物に関する。本発明のさらなる目的は、樹状細胞に暴露された抗原、抗原発現DCを含む、または上記抗原またはエピトープを含むワクチンである。さらに、上記樹状細胞は免疫保護組成物の対象である。さらに、本発明は、好ましくは癌および感染疾患に対して採用できる免疫療法用の医薬組成物を調製するための、上記方法によって得られるT細胞、上記DC、抗体、ポリヌクレオチドおよびベクターの使用、およびワクチンおよび免疫療法剤を調製するための、または免疫療法用の新規な抗原標的を同定するためのその使用に関する。
【背景技術】
【0003】
幾つかの文献を本願の明細書中に引用する。本明細書中に引用した各文献(製造業者の仕様書、教示等を含む)は、参照のため本明細書中に組み込まれる。しかしながら、引用した文献が実際に本発明の先行技術であることを認めるものではない。
【0004】
外来抗原に対する免疫応答は、3つの異なる相互作用する細胞型、いわゆるT細胞、B細胞および抗原提示細胞(APC)により媒体される。胸腺由来リンパ球(T細胞)は2つの機能的および表現型的に区別されるサブセットに分けることができる。ヘルパーT細胞はリンホカインを産生および分泌することにより抗原刺激に応答し、リンホカインは免疫系において他の様々な細胞型を活性化する。細胞傷害性Tリンパ球(CTL)は、抗原陽性の標的細胞、たとえばウイルス感染細胞を直接殺傷すべく分化したものである。B細胞は細胞表面レセプターとしてかまたは分泌されたタンパク質としてのいずれかで抗体により抗原を認識し、これら抗体は固相表面上または溶液中の抗原に直接結合する。対照的に、T細胞は、小さな断片にプロセシングまたは分解されAPCの表面などの固相上に提示された抗原のみを認識する。さらに、抗原性断片は、主要組織適合複合体(MHC)によってコードされたクラスIまたはクラスII分子とともにT細胞に提示される必要がある。CD4T細胞はMHCクラスII生成物によって提示される抗原を認識するのに対し、CD8T細胞はMHCクラスIタンパク質との関連で抗原を認識する。
【0005】
T細胞への抗原の提示はAPCと呼ばれる分化した細胞集団によって行われる。免疫応答の初期の事象に関与するものとして、APCはT細胞およびB細胞の両応答の開始に重要である。一般に、APCはマクロファージ/単球、B細胞、および骨髄由来樹状細胞(DC)を含む。最も重要なAPCは樹状細胞である(非特許文献1)。これら細胞は、適当なT細胞がペプチド−MHC複合体を認識することができ活性化されることができるように、外来の抗原を嵌入させ、抗原を小さなペプチド断片にプロセシングし、これら断片をMHC分子とともに細胞表面上に提示すべく分化している(非特許文献2)。APCはMHCによりコードされるクラスIおよびIIの両タンパク質を提示するので、APCは免疫応答を開始するために抗原断片をCD4+およびCD8+細胞の両者に提示することができる。
【0006】
抗原特異的なレセプターによる抗原のT細胞への提示に加えて、APCはT細胞活性化のためのすべてのシグナルを提供する。そのようなシグナルには、様々な細胞表面の接着分子およびコスティミュラトリー分子並びにサイトカインまたは成長因子が含まれる。ナイーブな(naive)または初回抗原刺激を受けたことのないT細胞の活性化に必要な因子は、以前に初回抗原刺激を受けた記憶T細胞の再活性化に必要な因子とは異なる。DCとは対照的に、単球およびB細胞は機能的にナイーブなまたは初回抗原刺激を受けたことのないT細胞を直接活性化することができないので、これら細胞の抗原提示能は以前に感作したT細胞の再活性化に限られると思われる。
【0007】
「樹状細胞」なる語は、種々のリンパ系および非リンパ系組織に存在する形態学的に類似の細胞の種々のグループをいう(非特許文献3)。これら細胞は、リンパ節や脾臓などのリンパ系器官のDC、表皮のランゲルハンス細胞、輸入(afferent)リンパ管中のベール(veiled)細胞および循環血流中のDCを含む。表現型的にヒトDCは、高密度のMHCクラスII抗原、広範囲の接着分子の存在、およびT細胞、B細胞、単球およびナチュラルキラー細胞に特徴的な所定範囲の細胞系列(lineage)特異的な細胞表面抗原(CD3、CD14、CD19、CD20、CD56)の不在もしくは低発現によって特徴付けられる。この表現型の特徴にもかかわらず、これら抗原の大多数が他の細胞型によっても発現されるためにDCの同定および精製は依然として困難である。大抵の刊行された報告はマウス脾臓から単離したDCを利用しており、このDCが一次抗原特異的応答においてナイーブT細胞を活性化することができる点で独特のAPCであることを示している(非特許文献4;非特許文献5;非特許文献6;非特許文献7;非特許文献8;非特許文献9)。それゆえ、ヒトDCもまた、そのような強力な抗原提示機能を果たし得る。
【0008】
ヒト組織からDCを富ませるのに最も適したやり方は、その利用しやすからヒト末梢血から単離することである。幾つかの研究が末梢血からのヒトDCの単離を記載している(非特許文献10;非特許文献11;非特許文献12;非特許文献13)。新鮮な血液DCの単離のための現行のプロトコールは2つの異なる成分からなる:第一は、DCによっては発現されない細胞表面抗原に対する細胞系列特異的なモノクローナル抗体を用いた他の細胞集団の連続的な涸渇によるDCの富化(enrichment)である。そのような抗体の例としては、T細胞に特異的な抗CD3、抗CD4および抗CD8;B細胞に特異的な抗CD19および抗CD20;単球に特異的な抗CD14;およびナチュラルキラー細胞に特異的な抗CD56が挙げられる。第二は、DCによりMHCクラスII抗原として異なって発現される細胞表面マーカーを用いることによる細胞系列マーカー陰性細胞画分からDCを積極的に選択することである(非特許文献14;非特許文献15;非特許文献16)。
【0009】
細胞は、抗体に結合したら、該一次抗体の定常領域に向けられた二次抗体をコーティングした固相に吸着させることによって除去することができる。あるいは、ビオチンに結合した抗体はアビジンまたはストレプトアビジンをコーティングした表面により除去することができる。抗体をマグネチックビーズに結合させてある場合は、抗体結合細胞は磁場で分離することができる(非特許文献17)。抗体選択に加え、密度勾配遠心分離および赤血球ロゼット形成法を応用する。この手順は時間を要し、限られた数の精製DCしか得られない。さらに、単離したDC画分は、しばしば他の混入細胞集団のために不均質である。そのうえ、勾配(gradient)化合物およびその浸透作用は細胞の表現型および機能の変化を引き起こす(非特許文献18;非特許文献19)。
【0010】
DCを得るために広く用いられている他の方法は、GM−CSFおよびTNF−αまたはIL−4による組み合わせインビトロ処理(少なくとも数日間保持しなければならない)により誘発される、骨髄もしくは血液由来CD34細胞またはCD14単球の分化に基づく(非特許文献20;非特許文献21;非特許文献22;非特許文献23)。この手順の使用は、細胞の培養の間に起こる表現型および機能の変化に限られる。さらに、GM−CSFおよびIL−4による処理はT細胞の非特異的な刺激を促進する(非特許文献24)。
【0011】
末梢血からのDCの直接的な単離は、循環血中のDCの頻度が低いことおよび選択的なマーカーの欠如のために行き詰まっている。ヒトのDC特異的な細胞系列マーカーは同定されていない。これまでにDCに特異的であるとして報告されているわずかな数のマーカーは血液DCを単離するのに適していない。Zhouら(非特許文献25)によって記載されたCD83分子は、インビトロ培養で優先的に誘発される活性化マーカーであるとされている。モノクローナル抗体 CMRF−44は、新たに単離した血液DCには発現されないがDCを精製するのに通常用いられる物理的単離手順の間に誘発される初期活性化抗原を認識する(非特許文献26)。p55抗原、アクチン束化(bundling)タンパク質は細胞質に限られている(非特許文献16)。それゆえ、ヒトDCによって選択的に発現される抗原に対するモノクローナル抗体の必要性が依然として存在し、そのようなモノクローナル抗体は末梢血からDCを直接単離するのを容易にするであろう。これまでのヒトDC特異的な抗体を単離する試みは大部分不成功に終わっており、DCと他の白血球との両者に共通する抗原を認識する抗体が得られているにすぎない。
【非特許文献1】Sprentら、1987,Adv.Immunol.41:39-133
【非特許文献2】GoldbergおよびRock,1992,Nature 357:375-379
【非特許文献3】Steinmann,1991,Ann.Rev.Immunol. 9:271-296
【非特許文献4】Inabaら,1987,J.Exp.Med.166:182-194
【非特許文献5】Hengelら,1987,J.Immunol.139:4196-4202
【非特許文献6】Kastら,1988,J.Immunol.140:3186-3193
【非特許文献7】Romaniら,1989,J.Exp.Med.169:1169-1178
【非特許文献8】Macatoniaら,1989,J.Exp.Med.169:1255-1264
【非特許文献9】Inabaら,1990,J.Exp.Med.172:631-640
【非特許文献10】YoungおよびSteinmann,1990,J.Exp.Med.171:1315-1332
【非特許文献11】FreudenthalおよびSteinmann,1990,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:7698-7702
【非特許文献12】Macatoniaら,1989,Immunol.67:285-289
【非特許文献13】MarkowiczおよびEngleman,1990,J.Clin.Invest.85:955-961
【非特許文献14】O'Dohertyら,1994,Immunol.82:487-493
【非特許文献15】Thomasら,1993,J.Immunol.150:821-834
【非特許文献16】O'Dohertyら,1993,J.Exp.Med.178:1067-1076
【非特許文献17】HarlowおよびLane, 1988, "Antibody",コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー
【非特許文献18】McLellanら,1995,Eur.J.Immunol.25:2064-2068
【非特許文献19】Kabelら,1989,Immunology 179:341-395
【非特許文献20】Cauxら,1992,Nature 360:258-261
【非特許文献21】Bernhardら,1995,Cancer Res.55:1099-1104
【非特許文献22】Sallustoら,1994,J.Exp.Med.179:1109-1118
【非特許文献23】Romaniら,1994,J.Exp.Med.180:83-93
【非特許文献24】Dillonら,1997,Scand.J.Immunol.46:1-9
【非特許文献25】Zhouら,1995,J.Immunol.154: 3821-3835
【非特許文献26】Hockら,1994,Immunology 83:573-581
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
それゆえ、本発明の技術的課題は免疫応答を調節するための手段および方法を提供することである。この技術的課題の解決は、特許請求の範囲において特徴付けられる態様を提供することによって達成される。
【課題を解決するための手段】
【0013】
従って、本発明は、
(i)末梢血単核細胞(PBMC)からの未熟および/または成熟樹状細胞(DC)の特性を表示するDC上のエピトープとは反応するが
(ii)他のPBMCとは反応しない
抗体に関する。
【0014】
通常、樹状細胞は異なる表現型および機能的特性を有する細胞の不均質な集団を含むが、抗原を提示し、ナイーブなTリンパ球を初回抗原刺激する顕著な能力で際立っている。細胞系列マーカー陽性細胞の涸渇とそれに引き続くMHCクラスII発現細胞の単離などの従来の戦略は、主として成熟DCおよび未熟DCを表す2つの主要なDC集団を定めるに至っている2,3。さらに最近では、幾つかの報告がDCを種々のカテゴリーに従ってリンパ系細胞または骨髄性の樹状細胞に分けたり(Wuら,J.Exp.Med.184(1996),903-911; Galyら,Immunity 3(1995),459-473)、またはマウス脾臓中の微細解剖位置に基づいて辺縁系細胞および交互嵌入合(interdigitating)細胞に分ける(Leenenら,J.Immunol.160(1998),2166-2173)試みがなされている。
【0015】
本発明の抗体は、HLA−DRlow、CD33dim、CD45RAhigh、CD11cおよびCD64である未熟DCの特性を提示するDC、および表面マーカー特性HLA−DRhigh、CD33high、CD45RAlow、CD11cおよびCD64を有する実質的に成熟DCに類似するDCを含む、これまでに同定されていないDCの集団と特異的に反応する。本発明の抗体により認識されるDCは、好ましくは、未熟DCと成熟DCとの間の成熟化段階として、およびモノクローナル抗体M−DC8として示される本発明の新規な抗体と反応する能力により定められる。従って、本発明のDCはまた、M−DC8またはM−DC8細胞として言及されるであろう。上記新規なモノクローナル抗体M−DC8は、M−DC8抗原を発現するJurkatT細胞リンパ腫サブクローンを特異的に選択するのに用いた(付属の実施例10参照)。該Jurkatサブクローンは、さらに本発明の新規な抗体を産生するのに用いた。これらモノクローナル抗体は、モノクローナル抗体D−DC8.1およびD−DC8.2を含む。これら抗体によって認識されるDCもまたM−CD8またはM−CD8細胞と称されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本明細書において「未熟DCと成熟DCとの間の成熟化段階を表すDC集団」とは、図8に模式的に表示するように、何人かの研究者2,3,20によってこれまでに定められている2つの主要なDCのサブセットに重複するヒト血液DCの集団をいう。第一のサブセットの細胞はHLA−DRlow、CD33dim、CD45RAhigh、CD11cおよびCD64であって未熟DCを表し、一方、第二のサブセットは表面マーカー特性HLA−DRhigh、CD33high、CD45RAlow、CD11cおよびCD64を有する成熟DCを含む。これら細胞は、さらに、一夜培養後にCD83を発現する20。確立された両DC集団とM−DC8細胞との主たる相違は、M−DC8およびCD16の発現および細胞質内p55抗原の不在である。それゆえ、M−DC8細胞は中間の発達段階を表すと推測したくなる。
【0017】
本発明の意味における「末梢血単核細胞(PBMC)」とは、1.077g/mlの密度のFicollR−勾配で新たに採取した静脈血の遠心分離により単離した有核の血球をいう。
【0018】
本明細書において「他のPBMCと反応しない」とは、本発明の抗体がM−DC8細胞を除く上記PBMC(Bリンパ球、Tリンパ球およびCD14high+単球など)と反応しないかまたは無視しうる程度に交叉反応することをいう。本発明の抗体の交叉反応性は、10%未満、さらに好ましくは5%未満、特に好ましくは3%未満、またはさらには2%または1%未満である。
【0019】
本発明は、極めてDCに富むヒト単核血球でマウスを免疫することにより得られる(付属の実施例1に記載のようにして得られる)新規なモノクローナル抗体(モノクローナル抗体M−DC8)が、HLA−DRを発現し共通の細胞系列特異的なマーカーを欠如するPBMCを1〜2%含む白血球と特異的に反応するという観察に基づいている。M−DC8細胞の特徴的な光分散プロフィルは、リンパ球と単球との間に位置する限定されたサイズおよび顆粒度(granularity)の細胞集団を示していた。細胞培養の48時間以内に単離したM−DC8細胞は細胞質突出(cytoplasmatic protrusions)の波動(undulating)を特徴とする成熟DCの典型的な形態を獲得した。食作用の乏しい細胞としてDCを記載する以前の報告とは対照的に、新たに単離したM−DC8細胞はラテックス粒子および抗体コーティング赤血球を貪欲に消化した。未熟DCはエンドサイトーシスおよびマクロピノサイトーシスにより大量の抗原を取り込むが、本発明に従って得られたM−DC8細胞に対する知見は食作用が抗原取り込みのさらなる重要な経路であることを示している。
【0020】
ごく最近、FangerらはDC上でのFcレセプターCD64およびCD32の発現および食作用におけるその機能的な関与を記載している20。対照的に、M−DC8細胞はCD64を欠如しており、その代わりにCD16をCD32とともに発現する。それゆえ、M−DC8細胞によるオプソニン処理赤血球の食作用はCD16およびCD32の両者によって媒体されるのかもしれない。
【0021】
本発明によれば、驚くべきことに新鮮なM−DC8細胞は顕著な食作用活性に加えて、効率的なアロ抗原依存性およびTT依存性のT細胞増殖によって示されるようにT細胞を活性化する際立った能力を示すことがわかった。さらに、M−DC8細胞は自己由来白血球反応においてT細胞を刺激するのみならず、KLHに対して一次T細胞応答を誘発したが、これはすべてDCに典型的と考えられる活性である。一次T細胞応答が生じるためにはナイーブなCD45RAT細胞を富ませる必要があるとのこれまでの報告21,22とは対照的に、M−DC8細胞は前以て富化することなくKLHに対して未選択T細胞を初回抗原刺激することができた。さらに、M−DC8細胞はMHCクラスIに限定されたT細胞応答を非常に効率的に刺激した。M−DC8細胞は特定の抗原ペプチドで感作した後に細胞傷害性CD8T細胞クローンを単球と同じくらい効率的に活性化したが、単球とは対照的にCD4T細胞ヘルパー細胞の完全な不在下に精製CD8T細胞のアロ抗原特異的な細胞傷害性エフェクター細胞への分化を誘発した(DCに特徴的な活性とされているものである17,18)。さらに、メラノーマ関連チロシナーゼペプチドを負荷した後にM−DC8細胞はメラノーマ患者および正常なドナーからのT細胞を刺激して、HLAに限定された仕方でメラノーマ細胞に対する特異的な細胞障害作用を生成させた。
【0022】
M−DC8細胞は明らかにCD14単球と区別される独特のパターンの細胞表面分子を明らかにした。新たに単離したM−DC8細胞は低表面レベルのHLA−DR、CD33、CD45R0およびCD11bを発現したが、一方、CD86、CD40およびCD4の密度は単球のものと同様であった。一方、CD45RA、CD11a、CD11cおよびとりわけCD16の発現は単球よりも明らかに高かった。
【0023】
M−DC8細胞は、GM−CSFおよびIL−4の存在下でCD34前駆細胞またはCD14単球からインビトロで生成される14大部分のDCとは異なる。M−DC8細胞はインビトロでのサイトカインによる分化によって得られるDCと共通する多くの表面マーカーおよび機能的な特性を有する。しかしながら、M−DC8抗原は、GM−CSFおよびTNF−αでの刺激によってCD34前駆細胞から得られるDCの2〜5%を含む小さなサブセットを例外として、インビトロで生成されるDCでは検出されなかった。M−DC8細胞の起源およびM−DC8マーカーの発現を誘発するシグナルは未だ解明されていない。
【0024】
FcγRIII(CD16)は、M−DC8細胞とこれまでに定められているDCとの間で発現が異なることがわかった他の表面分子である。これまでのところ、DCによるCD16発現はマウスのランゲルハンス細胞でのみ記載されており、免疫複合体の嵌入および抗原の提示を促進すると推定されている23。ヒトではCD16発現は主として顆粒球、NK細胞、マクロファージ、および単球のサブセットに限られており24、DCでは一般に発現されないと考えられている。対照的に、M−DC8抗体で新たに単離されたDCはCD16を高濃度で発現した。この明らかな不一致は、DC上でのCD16の短いインビトロ半減期によるものと思われる。というのはCD16はインビトロ培養で短時間で消失したからである。一般に、FcγレセプターはFicoll密度勾配遠心分離などの長期の細胞の取扱いにより非常に速やかに下方制御(downregulated)されると思われる25
【0025】
本発明の好ましい態様において、該DCはHLA−DRであり、該PBMCはT細胞およびB細胞および単球が涸渇している。好ましくは、該DCはCD64、CD33、CD45RA、CD11cおよびp55およびとりわけCD16であり、および/またはリンパ球と単球との間に位置する限定されたサイズおよび顆粒度を有する。
【0026】
本発明の抗体は、たとえば、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、二重特異性抗体、合成抗体、Fab、FvまたはscFv断片などの抗体断片、またはこれらのいずれかの化学的に修飾した誘導体であってよい。モノクローナル抗体は、たとえば、KohlerおよびMilsteinによって最初に記載された技術(Nature 256(1975), 495, およびGalfre, Meth.Enzymol.73(1981),3)(マウスミエローマ細胞を免疫哺乳動物からの脾臓細胞に融合させることを含む)によって当該技術分野で開発された改変を採用しながら調製することができる。モノクローナル抗体は、とりわけ、マウス、たとえばBALB/cマウスを付属の実施例1に記載するようにして得られるヒト単核血球で免疫することによって得ることができる。
【0027】
抗体は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体または合成抗体、並びにFab、FvまたはscFv断片などの抗体断片であってよい。さらに、上記DCに対する抗体またはその断片は、たとえばHarlowおよびLane, "Antibodies, A Laboratory Manual"、コールド・スプリング・ハーバー・プレス、コールド・スプリング・ハーバー、1988に記載されている方法により得ることができる。これら抗体は、たとえば、本発明のDCの免疫沈降、免疫局在化(immunolocalization)または精製のため、並びにそのようなDCの存在のモニターのため、および本発明によるDCと相互作用する化合物の同定のために用いることができる。たとえば、BIAcoreシステムに用いられているような表面プラスモン共鳴(surface plasmon resonance)を用いて本発明の抗体により認識されるエピトープに結合する抗体のファージ展示の効率を高めることができる(Schier, Human Antibodies Hybridomas 7(1996),97-105;Malmborg, J.Immunol.Methods 183(1995),7-13)。
【0028】
キメラ抗体の産生は、たとえばWO89/09622に記載されている。ヒト化抗体の製造方法は、たとえばEP−A1 0 239 400およびWO90/07861に記載されている。さらに、ヒト抗体は一般に利用しやすくなっている。なぜなら、ヒト抗体を発現するトランスジェニックマウス(異種抗体とも呼ばれる)(Bruggermann, Immunol.Today 17(1996), 391-397)およびおよびコンビナトリアル抗体ライブラリーおよびファージ展示法を利用できることが、免疫グロブリン重鎖および軽鎖の可変領域(VおよびV)のインビトロ組み合わせおよびその抗原結合特異性のインビトロ選択を可能にするからである(Winter, Annu.Rev.Immunol.12(1994),433-455)。ファージ展示法を用いることにより、10〜10の異なるV/V−またはV/V−ペアから一つの特異的結合種のような稀な事象を容易に単離することができる;このことは、レパートリークローニング(repertoire cloning)のための源として免疫宿主からのBリンパ球を用いることにより可変領域のレパートリーが特定の結合種について富化されている場合にとりわけ当てはまる。
【0029】
さらに、半合成または完全に合成したV−および/またはV−免疫グロブリン鎖レパートリーを用いる方法が開発されている。たとえば、インビボでのV−JまたはV−D−J組換えを真似て、再編成されていないヒトV遺伝子セグメントの殆ど完全なレパートリーをゲノムDNAからクローニングし、機能的な可変領域をインビトロで組換えるのに用いられている(Hoogenboom,J.Mol.Biol.227(1992),381-388;Nissim,EMBO J.13(1994)692-698;Griffiths,EMBO J.13(1994),3245-3260)。それゆえ、上記および付属の実施例に記載する抗体の誘導体はすべて、それが上記DCに特異的な抗原(好ましくはM−DC8、D−DC8.1および/またはD−DC8.2抗体によって認識される抗原)の少なくとも一つのエピトープを認識する限り、本発明の範囲に包含される。上記に記載したように、本発明の抗体は完全な抗体に加えて、たとえばFv、FabおよびF(ab)並びに一本鎖を含む種々の形態で存在してよい(たとえば、WO88/09344参照)。
【0030】
本発明の抗体または対応するその免疫グロブリン鎖は、当該技術分野で知られた通常の方法を用い、たとえばアミノ酸の欠失、挿入、置換、付加、および/または組換えおよび/または当該技術分野で知られた他の修飾法を単独もしくは組み合わせて用いることによりさらに修飾することができる。免疫グロブリン鎖のアミノ酸配列の基礎となるDNA配列にそのような修飾を導入する方法は当該技術分野でよく知られている;たとえば、Sambrook, Molecular Cloning A Laboratory Manual、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー(1989)ニューヨークを参照。
【0031】
本発明の好ましい態様において、本発明の該二重特異性抗体は、腫瘍細胞、ウイルス感染細胞、T細胞、腫瘍関連タンパク質、微生物タンパク質、アレルゲン、自己抗原またはサイトカインに特異的なエピトープを認識する。
【0032】
本発明の好ましい態様において、該DCはハイブリドーマ細胞株DSM ACC2241によって産生される抗体によって認識され、好ましくは該抗体はハイブリドーマ細胞株DSM ACC2241によって産生される抗体M−DC8(DC8)である。該ハイブリドーマ細胞は、ブダペスト条約に従い、カルチャーコレクション・ドイチェ・ザムルング・フォン・ミクロオルガニスメン・ウント・ツェルクルトゥーレン(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen)GmbH(DSMZ)(ブラウンシュベイク、ドイツ)に1995年10月26日に寄託してある。
【0033】
上記および付属の実施例に記載するように、新規なモノクローナル抗体M−DC8はヒトDCの独特の集団に対して極めて選択的なマーカーを提供するものであり、該集団は血液の白血球の0.5〜1%を占め、1工程の免疫磁気手順を用いて血液から直接単離できる。M−DC8細胞はFcγRIII(CD16)を発現するのを特徴とし、極めて食作用が強く、また自己混合白血球反応、一次抗原に対するT細胞の活性化、アロ抗原特異的な細胞障害性エフェクター細胞への精製CD8T細胞の分化の誘発、およびメラノーマ患者および正常な血液ドナーからのT細胞のメラノーマ特異的細胞障害性細胞への分化の誘発によって証拠立てられるように抗原をT細胞に提示する際立った能力を示す。それゆえ、モノクローナル抗体M−DC8は診断目的で循環DCを決定するための、およびエクスイボおよびインビボでの抗原特異的なT細胞初回抗原刺激のためのDCを調製するための価値ある手段である。
【0034】
さらに、本発明の抗体は、該樹状細胞上のエピトープを認識、検出および/または反応する抗体であり、ハイブリドーマ細胞株DSM ACC2399またはDSM ACC2398によって産生される。これらハイブリドーマ細胞株は、ブダペスト条約に従ってカルチャーコレクションDSMZ(ブラウンシュベイク、ドイツ)に1999年5月5日に寄託してある。上記および付属の実施例に記載するように、これら新規なモノクローナル抗体D−DC8.1およびD−DC8.2は上記特定のM−DC8細胞を認識するさらなる抗体を提供する。M−DC8と同様、モノクローナル抗体D−DC8.1およびD−DC8.2はとりわけ本発明の樹状細胞の免疫単離、免疫局在化および/または精製に用いることができる。さらに、これらモノクローナル抗体はまた、本発明によるDCと相互作用するまたは相互作用できる化合物を検出および同定するのにも有用である。
さらに、本発明の抗体は、該樹状細胞上のエピトープを認識、検出および/または反応
【0035】
他の態様において、本発明は、たとえば免疫グロブリンの定常ドメインに連結した、M−DC8またはD−DC8.1またはD−DC8.2抗体の可変重鎖および軽鎖ドメインをコードするcDNAをヒトB細胞株中に形質導入することにより、ヒト化形態で本発明の抗体を産生しうるヒトB細胞株に関する。該cDNAは当業者に知られた方法により得ることができ、とりわけSambrook(上掲)およびAusubel, "Current Protocols in Molecular Biology"、グリーン・パブリシング・アソシエーツ・アンド・ウイリー・インターサイエンス、ニューヨーク(1989)に記載されている。発現(またはシークエンシング)のための該cDNAのクローニングは、たとえばOrlandi, PNAS 86(1986),3833-3837に記載されているように、あるいは付属の実施例9(モノクローナル抗体M−DC8の可変領域のクローニングを記載)で説明してあるように、標準プロトコールに従って行うことができる。
【0036】
さらに、本発明は、本発明の抗体を産生することのできる連続的で安定な抗体産生細胞株に関する。該細胞株はハイブリドーマ細胞株、好ましくは受託番号DSM ACC2241、受託番号DSM ACC2399または受託番号DSM ACC2398を有するハイブリドーマ細胞株であってよい。
【0037】
さらに別の態様において、本発明は、本発明の抗体によって認識される抗原またはそのエピトープに関する。該抗原またはエピトープはグリコシル化されていてよいし、グリコシル化されていなくてもよいし、または部分的に脱グリコシル化されていてもよい。本明細書に記載し実施例で説明するように、本発明のDCは上記抗体によって認識される、M−DC8などの新規な抗原を特徴とする。予備的な生化学データは、M−DC8抗原がタンパク質であること、より詳細にはタンパク質の炭水化物部分であることを示している。それゆえ、この抗原は、糖脂質上およびとりわけ膜タンパク質上に存在する炭水化物構造を含む。この新規なマーカーの主たる利点は、それが>97%純粋なDCを血液から極めて短時間に迅速に単離する手段として機能することができることである。この迅速なDC単離法は、ウイルスまたは腫瘍抗原に対して免疫しようとする種々のエクスビボでの試みに対してDCを使用することを極めて容易にする。本発明の抗原およびエピトープの同定および単離のため、たとえば種々のcDNAを胞嚢体中に注入して充分な時間cDNA遺伝子産物の発現を起こさせ、ついでたとえば本発明の抗体を用いることによって所望のcDNA発現産物の存在を試験することにより、cDNAライブラリーをスクリーニングすることができる。
【0038】
別法として、大腸菌でのcDNA発現ライブラリーを、本発明の抗体を用いて本発明の少なくとも一つのエピトープを有するペプチドについて間接的にスクリーニングすることができる(ChangおよびGottlieb, J.Neurosci.,8:2123,1988)。そのような抗原の構造を明らかにした後、結合パートナーおよび/またはドメインを合理的にデザインすることが可能である。たとえば、構造モチーフのフォールディングシミュレーションおよびコンピューターリデザインを適当なコンピュータープログラムを用いて行うことができる(Olszewski, Proteins 25(1996),286-299;Hoffman, Comput.Appl.Biosci.11(1995),675-679)。さらに、コンピューターは、詳細なタンパク質モデルのコンホメーションおよびエネルギー分析に用いることができる(Monge, J.Mol.Biol.247(1995),955-1012;Renouf, Adv.Exp.Med.Biol.376(1995),37-45)。
【0039】
他の態様において、本発明は、本発明の上記抗体のいずれかの免疫グロブリン鎖の少なくとも可変領域をコードするポリヌクレオチドに関する。該領域をコードするポリヌクレオチドは、当該技術分野でよく知られ、とりわけOrlandi, PNAS 86(1989),3833-3837またはSambrook(上掲)に記載されたクローニング法を含む方法により得ることができる。免疫グロブリンの一つの形態は抗体の基本構造単位を構成する。この形態は四量体であり、免疫グロブリン鎖の2つの同一のペアからなり、それぞれ一つの軽鎖および一つの重鎖を有する。各ペアにおいて、軽鎖および重鎖可変領域またはドメインは一緒になって抗原への結合に関与し、定常領域は抗体のエフェクター機能に関与する。免疫グロブリンは抗体に加えて、たとえばFv、Fab、およびF(ab')並びに一本鎖抗体を含む種々の他の形態(所望の活性を保持した完全長未満のものを含む)で存在する(たとえば、Huston, Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85(1988,5879-5883およびBird, Science 242(1988),423-426;上記をも参照)。
【0040】
免疫グロブリンの軽鎖または重鎖可変ドメインは、3つの高度可変領域、いわゆるCDRにより中断された「フレームワーク」領域からなる。フレームワーク領域およびCDRの範囲は正確に定められている;たとえば、"Sequences of Proteins of Immunological Interest", Kabat、米国保健社会福祉省(1990)参照。異なる軽鎖または重鎖のフレームワーク領域の配列は一つの種内で比較的保存されている。ある抗体のフレームワーク領域(構成する軽鎖および重鎖の組み合わさったフレームワーク領域である)は、CDRを位置付け、配置する役割をする。CDRは主として抗原のエピトープへの結合に関与する。キメラ抗体は、その軽鎖および重鎖遺伝子を異なる種に属する免疫グロブリンの可変および定常領域遺伝子から典型的には遺伝子操作により構築した抗体である。たとえば、マウスモノクローナル抗体からの遺伝子の可変セグメントをヒト定常セグメントに結合させることができる。
【0041】
それゆえ、本発明の抗体は、本発明の抗体の重鎖および軽鎖免疫グロブリン鎖をコードする組換えDNAセグメントを単独または組み合わせて発現させることにより製造することができる。該ポリヌクレオチドは、たとえば、DNA、cDNA、RNAまたは合成して製造したDNAまたはRNAまたはこれらポリヌクレオチドのいずれかを単独または組み合わせて含む組換えにより製造したキメラ核酸分子であってよい。好ましくは、該ポリヌクレオチドはベクターの一部であってよい。そのようなベクターは、適当な宿主細胞中でおよび適当な条件下で該ベクターの選択を可能にするマーカー遺伝子などのさらなる遺伝子を含んでいてよい。好ましくは、本発明のポリヌクレオチドは、原核細胞または真核細胞中での発現を可能にする発現制御配列に作動可能に連結されている。該ポリヌクレオチドの発現は、ポリヌクレオチドの翻訳可能なmRNAへの転写を含む。真核生物、好ましくは哺乳動物細胞中での発現を確実にする制御配列は当業者によく知られている。これら制御配列には、通常、転写の開始を確実にする制御配列および任意に転写の終結および転写の安定化を確実にするポリAシグナルが含まれる。さらなる制御配列としては、転写および/または翻訳エンハンサー、および/または天然に付随するまたは異種のプロモーター領域が挙げられる。この観点から、当業者は、軽鎖および/または重鎖の少なくとも可変ドメインをコードするポリヌクレオチドが免疫グロブリンの両方の鎖または一方のみの鎖の可変ドメインをコードしていてよいことを容易に認識するであろう。同様に、該ポリヌクレオチドは、同じプロモーターの制御下にあってもよいし、または発現のために別々に制御されていてもよい。
【0042】
原核宿主細胞中での発現を可能にする制御配列としては、たとえば、大腸菌でのP、lac、trpまたはtacプロモーターが挙げられ、真核宿主細胞での発現を可能にする制御配列の例は酵母でのAOX1またはGAL1プロモーター、または哺乳動物および他の動物細胞でのCMVプロモーター、SV40プロモーター、RSVプロモーター(ラウス肉腫ウイルス)、CMVエンハンサー、SV40エンハンサーまたはグロビンイントロンである。そのような制御配列は、転写の開始に関与する配列に加えて、SV40ポリA部位またはtkポリA部位などの転写終結シグナルをも該ポリヌクレオチドの下流に含んでいてよい。この関連で、オカヤマ−バーグcDNA発現ベクターpcDV1(Pharmacia)、pCDM8、pRc/CMV、pcDNA1、pcDNA3(In-vitrogen)、pSPORT1(GIBCO BRL)などの適当な発現ベクターが当該技術分野で知られている。
【0043】
好ましくは発現制御配列は真核宿主細胞を形質転換またはトランスフェクションできるベクター中の真核プロモーター系であろうが、原核宿主のための制御配列もまた用いることができる。ベクターが適当な宿主中に導入されたら、該宿主を該ヌクレオチド配列の高レベル発現に適した条件下で保持し、ついで所望により、免疫グロブリン軽鎖、重鎖、軽/重鎖二量体または完全な抗体、結合性断片または他の免疫グロブリン形態の回収および精製を行う;Beychok, Cells of Immunoglobulin Synthesis、アカデミック・プレス、ニューヨーク(1979)を参照。
【0044】
上記のように、本発明のポリヌクレオチドは単独またはベクターの一部として、たとえば、悪性変換DCに関連する疾患またはDC関連白血病の遺伝子療法または診断のため、本発明の抗体を細胞中で発現させるのに用いることができる。上記抗体のいずれか一つをコードするDNA配列を含むポリヌクレオチドまたはベクターを細胞中に導入すると、該細胞は所望の抗体を産生する。遺伝子療法はエクスビボまたはインビボ技術により治療用遺伝子を細胞中に導入することに基づくものであるが、遺伝子伝達の最も重要な応用の一つである。インビトロまたはインビボ遺伝子療法に適したベクター、方法または遺伝子送達系は文献に記載されており、当業者によく知られている;たとえば、Giordano, Nature Medicine 2(1996),534-539;Schaper, Circ.Res.79(1996),911-919;Anderson, Science 256(1992),808-813;Isner, Lancet 348(1996),370-374;Muhlhauser, Circ.Res.77(1995),1077-1086;Wang, Nature Medicine 2(1996),714-716;WO94/29469;WO97/00957、Onodua, Blood 91(1998),30-36;Verzeletti, Hum. Gene Ther.9(1998),2244-2251;Verma, Nature 389(1997),239-242;米国特許第5,580,859号;米国特許第5,589,466号;米国特許第4,394,448号またはSchaper, Current Opinion in Biotechnology 7(1996),635-640、およびその中の引用文献を参照。
【0045】
本発明のポリヌクレオチドおよびベクターは、細胞中への直接導入またはリポソームまたはウイルスベクター(たとえば、アデノウイルス、レトロウイルス)を介した導入のためにデザインすることができる。好ましくは、該細胞は、生殖細胞、胚細胞、または卵細胞またはそれらに由来する細胞であり、最も好ましくは該細胞は幹細胞である。この態様は、たとえば一つの特異性が腫瘍抗原に対するものであり、これによって腫瘍細胞や可溶性腫瘍抗原などのその一部の嵌入、プロセシングおよび提示を容易にするものなどの、本発明の二重特異性抗体に特に適している。
【0046】
さらに、本発明は、本発明の抗体の鎖の可変ドメインをコードするポリヌクレオチドを、任意に本発明の抗体の他の鎖の可変ドメインをコードする本発明のポリヌクレオチドとともに含むベクター、とりわけ遺伝子操作において通常用いられるプラスミド、コスミド、ウイルスおよびバクテリオファージに関する。好ましくは、該ベクターは、発現ベクターおよび/または遺伝子伝達またはターゲティングベクターである。レトロウイルス、ワクシニアウイルス、アデノ関連ウイルス、ヘルペスウイルス、またはウシ乳頭腫ウイルスなどのウイルスに由来する発現ベクターを、本発明のポリヌクレオチドまたはベクターを標的細胞集団に送達するのに用いることができる。組換えウイルスベクターを構築するために当業者によく知られた方法を用いることができる;たとえば、Sambrook, Molecular Cloning A Laboratory Manual、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー(1989)ニューヨークおよびAusubel, Current Protocols in Molecular Biology、グリーン・パブリシング・アソシエーツ・アンド・ウイリー・インターサイエンス、ニューヨーク(1989)を参照。
【0047】
別法として、標的細胞への送達のために本発明のポリヌクレオチドおよびベクターをリポソーム中に再構築することができる。本発明のポリヌクレオチド(たとえば、免疫グロブリンの重鎖および/または軽鎖可変ドメインをコードする配列および発現制御配列)を含むベクターをよく知られた方法(細胞宿主の種類により変わってよい)により宿主細胞中に移すことができる。たとえば、塩化カルシウムトランスフェクションを一般に原核細胞に用いることができ、一方、リン酸カルシウム処理またはエレクトロポレーションを他の細胞宿主に用いることができる;たとえば、Sambrook(上掲)を参照。発現されたら、本発明の全抗体、その二量体、個々の軽鎖および重鎖、または他の免疫グロブリン形態を、硫酸アンモニウム沈殿、アフィニティーカラム、カラムクロマトグラフィー、ゲル電気泳動などを含む標準法に従って精製できる;たとえば、Scopes, "Proteins Purification", Springer-Verlag、ニューヨーク(1982)を参照。医薬に使用するには少なくとも約90〜95%の均質性の実質的に純粋な免疫グロブリンが好ましく、98〜99%またはそれ以上の均質性が最も好ましい。精製されたら、ついで、所望により部分的にまたは均質になるまで、ポリヌクレオチドを治療に(体外的な使用を含む)またはアッセイ手順を開発または行うのに用いることができる。
【0048】
本発明はさらに、本発明のポリヌクレオチドまたはベクターで形質転換した宿主細胞に関する。該宿主細胞は原核細胞であっても真核細胞であってもよい。宿主細胞中に存在する本発明のポリヌクレオチドまたはベクターは、宿主細胞のゲノム中に組み込むかまたは染色体外に保持してよい。
【0049】
宿主細胞はいかなる原核細胞または真核細胞であってもよい。「原核」なる語は、本発明の抗体または対応免疫グロブリン鎖の発現のためにDNAまたはRNA分子で形質転換またはトランスフェクションできるすべての細菌を意味する。原核宿主は、たとえば、大腸菌、S. typhimurium、Serratia marcescens、Bacillus subtilisなどのグラム陰性菌およびグラム陽性菌を含む。「真核」なる語は、これらに限られるものではないが、昆虫、真菌、植物、動物またはヒト細胞を含むことを意味する。好ましい真菌細胞は、たとえば、Saccharomyces属のもの、とりわけ種S. cerevisiaeである。本発明の抗体をコードするポリヌクレオチドは、当業者に一般に知られた方法を用いて宿主に形質転換またはトランスフェクションするのに用いることができる。特に好ましいのは、真核細胞または原核細胞の形質転換またはトランスフェクションの目的のために、それぞれ本発明のDCを認識する抗体のコード配列を含むプラスミドまたはベクターの使用である。
【0050】
融合され作動可能に連結した遺伝子を調製し、該遺伝子をたとえば哺乳動物細胞および細菌で発現する方法は当該技術分野でよく知られている(Sambrookら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー、コールド・スプリング・ハーバー、ニューヨーク、1989)。その中に記載された遺伝子構築物および方法を用いて本発明の抗体を真核または原核宿主で発現するのに用いることができる。一般に、挿入したポリヌクレオチドの効率的な転写を容易にするプロモーター配列を含む発現ベクターを宿主と関連して用いる。発現ベクターは一般に、複製起点、プロモーターおよびターミネーター、並びに形質転換細胞の表現型選択を付与する特定の遺伝子を含む。形質転換宿主は当該技術分野で知られた方法に従って発酵槽で増殖させ、培養して最適の細胞増殖を達成することができる。ついで、本発明の抗体またはその対応免疫グロブリン鎖を増殖培地、細胞溶解液または細胞膜フラクションから単離することができる。たとえば微生物により発現された本発明の抗体または免疫グロブリン鎖の単離および精製は、たとえば分取クロマトグラフィー分離、およびたとえば本発明の抗体の定常領域に対するモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体の使用を含む免疫学的分離などの通常の手段によるものであってよい。
【0051】
それゆえ、他の態様において、本発明は、末梢血単核細胞(PBMC)からの未熟および成熟樹状細胞(DC)のDC集団のDCを認識することができる抗体またはその機能的断片または誘導体の製造方法であって、
(a)本発明の細胞を培養し、ついで
(b)該抗体、またはその機能的断片または免疫グロブリン鎖を該細胞または培地から単離する
ことを含む方法に関する。
【0052】
本発明はまた、細胞を本発明のポリヌクレオチドまたはベクターで遺伝子操作することを含む、本発明の抗体またはその対応免疫グロブリン鎖を発現しうる細胞の製造方法にも関する。好ましくは、かくして発現された免疫グロブリン鎖はトランスフェクションした細胞の細胞表面上に提示される。この態様並びに本明細書で言及する幾つかの他の態様は、上記に記載したようなファージ展示法に適用することができる。本発明の方法により得られた細胞は、たとえば本発明の抗体とその抗原との相互作用を試験するのに用いることができる。上記方法により得られた細胞はまた、以下に記載するスクリーニング法にも用いることができる。さらに、本発明のポリヌクレオチド、ベクターまたは細胞を含むトランスジェニック動物、好ましくは哺乳動物は、本発明の抗体の大スケールでの製造に用いることができる。
【0053】
さらに、本発明は、本発明のポリヌクレオチドによりコードされる、または上記方法により得られる、または上記方法により製造される細胞からの本発明の抗体またはその断片または誘導体または免疫グロブリン鎖に関する。本発明の抗体は、一般にモノクローナル抗体に基づく療法を受けることのできる実質的にあらゆる疾患を治療するのに個々に用途を見出すであろう。とりわけ、該免疫グロブリンは、受動免疫または補体媒体溶解などによる望まない細胞または抗原の除去に用いることができ、すべて多くの先行抗体に付随する実質的な免疫反応(たとえば、アナフィラキシーショック)を伴うことなく行える。
【0054】
本発明の抗体に関して治療に適した典型的な疾患状態としては、心臓、肺、腎臓、肝臓などの臓器移植を受けた患者での移植片対宿主病および移植拒絶反応が挙げられる。他の疾患としては、1型糖尿病、多発性硬化症、慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、および重症筋無力症などの自己免疫疾患が挙げられる。本発明の抗体の誘導体は当業者に知られた方法、とりわけペプチドミメチック(peptidomimetics)により製造できる。ペプチドミメチックコンビナトリアルライブラリーの生成および使用方法は、たとえば、Ostresh, Methods in Enzymology 267(1996),220-234およびDorner, Bioorg.Med.Chem.4(1996),709-715に記載されている。さらに、M−DC8抗原などの抗原の三次元および/または結晶学的構造は、ペプチドミメチック抗体誘導体のデザインに用いることができる(Rose, Biochemistry 35(1995),12933-12944;Rutenber, Bioorg.Med.Chem.4(1996),1545-1558)。
【0055】
この文脈において、本発明による抗体を当該技術分野で知られた常法によりさらに修飾できることも理解される。本発明による抗体を提供することにより、その結合活性に関連する部分を決定することも可能である。このことにより、結合活性にとって重要な本発明の抗体からのアミノ酸配列と、他の機能性のアミノ酸配列、たとえば核局在シグナル、トランス活性化ドメイン、DNA結合ドメイン、ホルモン結合ドメイン、タンパク質タグ(GST、GFP、h−mycペプチド、Flag、HAペプチド)(異種タンパク質に由来するものであってよい)とを含むキメラタンパク質の構築が可能となる。
【0056】
本発明の抗体、抗原およびエピトープは、たとえば、膵臓の島(β)細胞などのホルモン産生細胞、胸腺細胞、ミエリン鞘を含む中枢神経系の神経膠細胞、滑液細胞または滑液組織、ブドウ膜の細胞または組織、または血管壁の細胞または組織のタンパク質または糖タンパク質に対する自己免疫応答を有する患者の治療に用いることができる。そのような治療は、たとえば、本発明の抗体、抗原またはエピトープを投与することにより行うことができる。そのような投与は、非標識および標識抗体または抗原を利用できる。たとえば、非標識の抗原またはエピトープを有利に利用するに際しては、たとえば免疫応答を刺激するには小さすぎるが自己免疫応答の継続に結合または阻止するには充分に大きな断片である抗原の形態であってよい。たとえば、本発明の抗原を酵素消化してエピトープサイズのペプチド(典型的に長さが5〜12アミノ酸)にし、それによって自己免疫疾患の患者の体液中、またはDCの表面上に存在するFab部分に結合することができる。
【0057】
別のやり方として、本発明の抗体、抗原およびエピトープを治療剤に結合させて投与することができる。これら治療剤は、本発明の抗体または抗原に直接または間接的に結合させることができる。間接的な結合の一つの例は、スペーサー残基の使用である。これらスペーサー残基は、今度は不溶性または可溶性であってよく(Dienerら、Science,231:148,1986)、標的部位で抗原から薬剤を放出できるように選択することができる。免疫療法のために本発明の抗体、抗原およびエピトープに結合させることのできる治療剤の例は、医薬、放射性同位元素、レクチン、および毒素である。本発明の抗体、抗原およびエピトープに結合させることのできる医薬としては、マイトマイシンC、ダウノルビシン、およびビンブラスチンなどの古典的に医薬として言及されている化合物が挙げられる。
【0058】
たとえば、免疫療法のために放射性同位元素を結合した本発明の抗体、抗原またはエピトープを使用するに際しては、白血球の分布並びに安定性および放射電磁波などの要素に依存してある種の同位元素が他の同位元素よりも好ましい。自己免疫応答に応じて、ある種のエミッターが他のエミッターよりも好ましい。一般に、α粒子およびβ粒子を放射する放射性同位元素が免疫療法には好ましい。好ましいのは、212Biなどの短飛程で高エネルギーのαエミッターである。治療目的で本発明の抗体、抗原またはエピトープに結合することのできる放射性同位元素の例は、125I、131I、90Y、67Cu、212Bi、212At、211Pb、47Sc、109Pdおよび188Reである。
【0059】
レクチンは、特定の糖残基に結合する、通常、植物材料から単離されるタンパク質である。多くのレクチンはまた、細胞を凝集させ、リンパ球を刺激することができる。しかしながら、リシンは免疫療法に用いられる毒性のレクチンである。このことは、毒性に関与するリシンのα鎖を抗体分子に結合させることによって毒性作用の部位特異的な送達を可能とすることによって行う。
【0060】
毒素は、植物、動物または微生物によって産生される有毒物質であり、充分な投与量ではしばしば致死性である。ジフテリア毒素はCorynebacterium diphtheriaによって産生される物質であり、治療に用いることができる。この毒素はαおよびβサブユニットからなり、各サブユニットは適当な条件下で分離することができる。毒性のA成分は、抗体または抗原に結合させて、それぞれDCまたは該抗原のレセプターを発現するT細胞への部位特異的な送達に用いることができる。
【0061】
本発明の抗体、抗原またはエピトープに結合させることのできる上記に記載したような他の治療剤並びにエクスビボおよびインビボ治療プロトコールは、当業者には知られており、または容易に確かめることができる。適当な場合はいつでも、当業者はタンパク質物質自体の代わりに上記抗体、抗原またはエピトープのいずれか一つをコードするポリヌクレオチドまたは対応ベクターを用いることができる。さらに、本発明による方法に従って得られ任意に修飾した樹状細胞および/またはT細胞を上記態様に従って用いることができる。
【0062】
上記に従って、本発明はさらに、
(a)本発明の抗体の結合部位のドメインまたは本発明の抗原またはエピトープ;および
(b)少なくとも一つの他のドメインであって、共有結合または非共有結合により結合したもの
を含むポリペプチドに関する。
【0063】
本発明のポリペプチドに含まれる該結合部位ドメインは、本発明の抗体の少なくとも一つの相補性決定領域(CDR)を含む。当業者であれば、抗体の各可変ドメイン(重鎖Vおよび軽鎖V)が、4つの比較的保存されたフレームワーク領域すなわち「FR」によってフランキングされた3つの高度可変領域(しばしば相補性決定領域あるいは「CDR」と呼ばれる)を含むことを理解しているであろう。本発明の抗体の可変領域に含まれるCDRは、たとえば、Kabat, "Sequences of Proteins of Immunological Interest"(米国保健社会福祉省、第3版、1983、第4版、1987、第5版、1990)に従って決定できる。当業者であれば、所望の特異性および生物学的機能を有する他のポリペプチドまたは抗体を構築するために本発明の抗体の結合部位ドメインまたは本発明の抗原またはエピトープを用いることができることを容易に理解するであろう。それゆえ、本発明は、本発明の結合部位ドメインまたは抗原またはエピトープを含むポリペプチドおよび抗体にも関する。当業者であれば、上記結合部位またはCDRを用い、当該技術分野で知られた方法、たとえばEP−A1 0 451 216、EP−A1 0 549 581およびWO88/09344などに記載された方法に従って抗体を構築できることが容易に理解されるであろう。
【0064】
組換え2官能性抗体構築物などの多価ポリペプチドは、とりわけ医学分野において、たとえば癌や自己免疫疾患の新たな治療法の開発において、または細胞シグナル伝達経路の分析および調節のための興味のもてる手段として、ますます重要な治療学的および科学的役割を果たしつつある。たとえば、T細胞上のCD3活性化抗原を腫瘍細胞上の腫瘍関連抗原と架橋させることにより、2特異的な一本鎖抗体は両細胞を一緒に引き合わせ、細胞−細胞接触の間に腫瘍細胞を有効に溶解させることができる(Mack, Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.92(1995)7021-7025)。対応するアプローチが他の標的細胞(たとえば、ウイルス感染細胞)に対しておよび他のエフェクター細胞集団(たとえば、NK細胞および単核食細胞)の補充(recruitment)のために開発されており、または開発されつつある。
【0065】
ターゲティング機構として抗体断片を含む2官能性の融合タンパク質を用い、選択した細胞集団上の所定の表面分子に多数の異なるレセプターおよびリガンドを特異的に結合させることができる。細胞の機能または細胞の活性化または分化の状態を調節するために、同じ細胞上の表面分子を二重特異性抗体により架橋できることは特に興味深い。この種のアプローチが可能な応用は、多くの自己免疫疾患において病原的な役割を果たしている自己攻撃性のBまたはTリンパ球にアネルギーを誘発することである。広範な科学的および治療学的な関連性に関しては、機能性の抗原結合部位を含む組換えポリペプチドを製造するための有効かつ再現可能な方法が特に重要である;そのような方法は、細菌および哺乳動物細胞で発現させることにより、たとえば機能的に活性な二重特異性抗体構築物を生成する。
【0066】
該組換え2官能性一本鎖タンパク質は、通常、異なるscFv−抗体断片によって構築されており、各断片はそれぞれ一つの免疫グロブリン可変重鎖(V)および一つの可変軽鎖(V)抗原結合ドメインからなる。別の態様では、そのようなタンパク質は、そのような抗体断片と一つの非免疫グロブリン部分とを含んでいてよい。すべての機能性のドメインは単一のポリペプチド鎖上に位置しており、可撓性のグリシン−セリン−または他の適当なペプチドリンカーにより連結されている。2官能性ポリペプチド鎖は、対応のDNA配列(任意のタンパク質−タグ、好ましくはポリヒスチジン−タグをさらにコードすることによってたとえばニッケル−キレート−カラムを用いて組換えタンパク質の容易な精製を可能にするものであってよい)で哺乳動物細胞またはより好ましくはないが他の宿主細胞をトランスフェクションすることにより機能性のタンパク質として製造することができる。CHO細胞において機能的に発現された2特異的一本鎖抗体の例で示されているように、scFv−抗体断片は原則として2官能性一本鎖構築物のN末端部分かまたはC末端部分のいずれかとして抗原に結合することができる(Mack, Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.92(1995)7021-7025)。
【0067】
本発明の好ましい態様において、該少なくとも一つのさらなるドメインは、生物学的活性に適したコンホメーションを有するエフェクタータンパク質、イオンを封鎖しうるアミノ酸配列、および固相支持体または前以て選択した抗原に選択的に結合できるアミノ酸配列よりなる群から選ばれたポリペプチドを含む。
【0068】
好ましくは、該エフェクタータンパク質は、酵素、毒素、レセプター、結合部位、生合成抗体結合部位、成長因子、細胞分化因子、リンホカイン、サイトカイン、ホルモン、遠隔的に(remotely)検出しうる残基、抗代謝産物または抗原である。該抗原は、たとえば、腫瘍抗原、ウイルス抗原、微生物抗原、アレルゲン、自己抗原、ウイルス、微生物、ポリペプチド、ペプチドまたは複数の腫瘍細胞であってよい。
【0069】
さらに、イオンを封鎖しうる該配列は、好ましくはカルモジュリン、メタロチオネイン、その断片、またはグルタミン酸、アスパラギン酸、リジンおよびアルギニンの少なくとも一つに富むアミノ酸配列から選ばれる。
さらに、固相支持体に選択的に結合しうる該ポリペプチド配列は、正または負に荷電したアミノ酸配列、システイン含有アミノ酸配列、アビジン、ストレプトアビジン、またはStaphylococcusタンパク質Aの断片であってよい。
【0070】
上記エフェクタータンパク質およびアミノ酸配列は、プロ形(それ自体活性であっても活性でなくてもよく、たとえばある種の細胞環境に入ったときに除かれてよい)で存在してよい。
【0071】
本発明の最も好ましい態様において、該レセプターは、T細胞活性化に重要なコスティミュラトリー表面分子であるか、またはエピトープ結合部位もしくはホルモン結合部位を含む。
【0072】
本発明のさらに最も好ましい態様において、該コスティミュラトリー表面分子はCD80(B7−1)またはCD86(B7−2)である。
【0073】
有利には、Vドメインおよび/またはVドメインを含む該ドメインは、該ドメイン間に配置した可撓性のリンカーにより、好ましくはポリペプチドリンカーにより連結されており、その際、該ポリペプチドリンカーは、該ポリペプチドが水溶液中に配置されたときに結合に適したコンホメーションを担う場合に該ドメインの一方のC末端と該ドメインの他方のN末端との間の距離を隔てるに充分な長さの複数の親水性ペプチド結合アミノ酸を含む。
【0074】
さらに他の態様において、本発明は発現に際して上記抗原、エピトープまたはポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに関する。該ポリヌクレオチドは、該ポリペプチドの適正な転写および翻訳を確実にするために当該技術分野で知られた適当な発現制御配列に融合していてよい。さらに、該ポリヌクレオチドはベクター中に含まれていてよく、該ベクターはさらに選択マーカーを含んでいてよい(上記参照)。
【0075】
さらに他の態様において、本発明は上記ポリヌクレオチドまたはベクターを含む細胞に関する。好ましくは、該細胞は、該ポリペプチドの治療用の使用を考慮する場合には哺乳動物細胞である。もちろん、酵母および細菌細胞もまた、とりわけ生成する抗原、エピトープまたはポリペプチドを診断手段として用いる場合に用いることができる(上記参照)。
【0076】
他の態様において、本発明は、上記抗原またはポリペプチドの製造方法であって、本発明の細胞を該抗原またはポリペプチドの発現に適した条件下で培養し、ついで該抗原またはポリペプチドを該細胞または培養液から単離することを含む方法に関する(上記参照)。
【0077】
それゆえ、本発明は、本発明のDCのエピトープまたは抗原に対するアフィニティーおよび特異性を有する結合部位を含む、または該抗原またはエピトープを含むポリペプチドの組換え製造を可能にする。上記から明らかなように、本発明は、治療および診断アプローチにおけるあらゆる使用のためにそのような結合部位または抗原またはエピトープを含むポリペプチドの大きなファミリーを提供する。当業者には、該結合部位ドメインおよび抗原またはエピトープは、たとえば薬剤ターゲティングおよび造影応用のために上記他の残基にさらに結合できることが明らかであろう。そのような結合は、該ポリペプチドの発現後に付着部位に対して化学的に行うことができるし、あるいは結合生成物をDNAレベルで本発明のポリペプチド中に操作して入れることもできる。
【0078】
ついで、該DNAを適当な宿主系で発現させ、発現したタンパク質を所望なら回収および復元させる。上記に記載したように、結合部位ドメインは抗体、好ましくは本発明のモノクローナル抗体の可変領域からのものであるのが好ましい。この観点において、ハイブリドーマ法は、免疫応答を生じる本質的にあらゆる所望の物質に対する抗体を分泌する細胞株を産生することを可能にする。ついで、免疫グロブリンの軽鎖および重鎖をコードするRNAを該ハイブリドーマの細胞質から得ることができる。mRNAの5'末端部分は、本発明の方法に使用するcDNAを調製するのに用いることができる。ついで、本発明のポリペプチドをコードするDNAを細胞中、好ましくは哺乳動物細胞中で発現することができる。
【0079】
宿主細胞によっては適正なコンホメーションを達成するために復元法が必要である。必要なら、通常のカセット突然変異誘発または本明細書に記載するような他のタンパク質工学法を用い、最適の結合を探るべく点置換をDNA中で行うことができる。本発明のポリペプチドの製造は、生物学的に活性なタンパク質、たとえば酵素、毒素、成長因子、細胞分化因子、レセプター、抗代謝産物、ホルモンまたは種々のサイトカインまたはリンホカインのアミノ酸配列(または対応DNAまたはRNA配列)に関する知見に依存する。そのような配列は、文献に報告されているかまたはコンピューター化したデータバンクから利用できる。
【0080】
たとえば、本発明のポリペプチドは、本発明の抗体、好ましくはM−DC8の一本鎖Fv断片とヒトコスティミュラトリータンパク質CD80(B7−1)の細胞外部分とがペプチドリンカーによって連結されたものとして構築することができる。CD80コスティミュラトリータンパク質はIgスーパーファミリーに属する。該タンパク質は262のアミノ酸からなる非常にグリコシル化されたタンパク質である。一層詳細な記載は、Freeman G.J.ら, J.Immunol.143,(1989)2714-2722によって刊行されている。安定な発現は、Kaufmann R.J. (1990)Methods Enzymol.185,537-566によって記載されているように、たとえばDHFR欠失CHO細胞で行うことができる。ついで、Ni−NTA−カラムを用いることにより、C末端に付着したHis−タグを介して該タンパク質を精製することができる(Mackら, Proc,Natl.Acad.Sci.U.S.A.92(1995)7021-7025)。結合特性を分析するため、種々のELISAアッセイを行うことができる。たとえば、17−1A抗原への結合の分析は、記載に従って得られる(Mackら, Proc,Natl.Acad.Sci.U.S.A.92(1995)7021-7025)可溶性の17−1A抗原を用い、GA733−2としても知られる17−1A抗原の最初の264アミノ酸をコードするDNAをCHO細胞中で安定に発現させることによって行うことができる(Szala, Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.87(1990)3542-3546)。
【0081】
他の態様において、本発明は、上記DCを末梢血から単離または同定する方法であって、工程:
(a)末梢血のサンプルを本発明の抗体と接触させ;
(b)抗体/DC複合体の存在を検出し;および/または
(c)該抗体またはその機能性の断片に結合したDCを回収する
を含む方法に関する。
【0082】
DCは、最も効率的な抗原提示細胞として、その成熟の異なる段階を反映していると思われる、表現型および機能面でのかなりの異質性を明らかにしている1,2,3。最近に提唱されたモデルによれば、初期のDCは脊椎動物の種々の部位で殆どいたるところで見出され、その細胞質膜上のMHC分子による提示のために外来抗原を効率的に取り込み、プロセシングしている4,5。その後、抗原の取り込みが完了すると、DCはさらに分化を受けて異なるパターンの表面分子を発現し、移動性となる。この段階でMHCおよびコスティミュラトリー分子の発現が非常に増加すると、DCはナイーブなTリンパ球を初回抗原刺激しうるのみならずTh1またはTh2型に対するサイトカイン発現のプログラムをも指令できる6,7。DCがTリンパ球を初回抗原刺激できる際立った能力は、免疫調節戦略の開発にとってDCを特に魅力的なものにしている。とりわけ、所定の腫瘍ペプチドまたはウイルス抗原に対する細胞溶解T細胞を治療用にエクスビボで初回抗原刺激するためにDCを用いることが提唱されている
【0083】
同様に、DCは自己免疫疾患またはアトピー性疾患を攻略するためにT細胞を再プログラムする手段としても機能する。本発明以前のそのような治療戦略の開発における主たる障害は、血中のDCの頻度が極めて低いことであった。これまでに報告されているわずかなDC特異的マーカーは、血液DCを単離するのに適していない。CD83はインビトロ培養においてのみ誘発され、アクチン束化タンパク質p55は細胞質に限られている10。現在の単離プロトコールは、細胞系列特異的なモノクローナル抗体を用いた細胞集団の連続的な涸渇を密度勾配遠心分離または識別付着(differential adherence)と組み合わせたものによっている2,3,11。現在のところ、最も広く用いられている依然として煩雑な富化方法は、CD34細胞をインビトロ培養してそのような(稀な)先祖細胞から幾日もかけてDCを発生および分化させることである12,13,14
【0084】
M−DC8モノクローナル抗体によって例示されるような本発明による新規な抗体の提供は、今や、特徴的な表面表現型と典型的な機能的活性を有するヒトDCの新規で独特の集団を精製することを可能にするものである。並外れた均質性を示すこのDC集団は際立っており、精製CD8 T細胞のアロ抗原特異的な細胞溶解性細胞への分化を促進する。
【0085】
単離したDC(M−DC8細胞とも呼ばれる)は循環DCの実質画分を含み、未熟DCの表現型および機能特性を示す。培養するとM−DC8細胞は、T細胞を刺激する際立った能力によって示されるように成熟DCへと分化する。それゆえ、本発明の抗体はヒトDCの検出および直接的な単離に適した手段として機能しうる。単離したM−DC8細胞の種々の用途が本明細書に記載した本発明により包含され、それには、これらに限られるものではないが、APCとしてのM−DC8細胞の使用、適合性の(adoptive)細胞免疫療法に使用するための抗原特異的なT細胞のインビトロでの活性化および拡張、抗原パルス(antigen-pulsed)DCのワクチンとしてのインビボ投与、およびワクチン開発のための抗原性エピトープの同定が含まれる。それゆえ、M−DC8細胞は感染性疾患および癌に対する免疫療法に使用するため、並びに自己免疫疾患の治療のための理想的な候補である。この観点から、本発明の抗体は、DC細胞と標的細胞上の抗原とに向けられた二重特異性抗体を生成することにより、DCへの標的細胞のインビボ補充に用いることができる。
【0086】
それゆえ、本発明はまた、本発明の抗体により認識され、および/または本発明の抗原またはエピトープを含むまたは上記方法により得ることのできる、上記樹状細胞にも関する。本発明の方法に従って単離したヒト樹状細胞は、たとえば、T細胞を刺激するため、および抗原特異的なT細胞媒体免疫応答の誘発のために抗原を提示するために用いることができる。本明細書に記載するヒト樹状細胞の単離集団はまた広範囲の応用に用いることができ、それにはこれらに限られるものではないが、癌および感染疾患に対する適合性の免疫療法に使用するための抗原特異的なT細胞の活性化および拡張が含まれる。さらに、本発明のヒト樹状細胞は抗原でパルスすることができ、それゆえワクチンおよび/または免疫療法剤としておよび免疫療法のための新規な抗原標的の同定のために用いることができる。
【0087】
本発明のDCは、たとえば組換え核酸分子を発現するためにさらに修飾できることも当業者には明らかである。たとえば、本発明のDCをサイトカインまたはシグナル伝達分子の遺伝子でトランスフェクションして免疫応答をインビトロまたはインビボで調節させることができる。たとえば、分泌されたIL−12がT細胞刺激のミクロな環境に存在する場合にはT細胞のTh1型のTヘルパー細胞への分化が指令され、一方、IL−4はT細胞をTh2型のTヘルパー細胞にプログラムする(Seder & Paul, Ann.Rev.Immunol.12(1994),635-673)。かかる修飾は当該技術分野で知られた方法に従って行うことができる(上掲文献参照)。組換えDNAで細胞をトランスフェクションする標準法は分子生物学の当業者によく知られている(たとえば、上記WO94/29469参照)。さらに、遺伝子療法は、本発明の組換えDNA分子またはベクターを患者に直接投与するかまたはDCのような細胞を該ポリヌクレオチドまたはベクターでエクスビボでトランスフェクションし、トランスフェクションした細胞を患者に注入することにより行うことができる。
【0088】
さらに、生殖細胞中への遺伝子伝達を行う研究は生殖生物学でも最も進展の著しい分野の一つである。遺伝子療法は治療用遺伝子を細胞中へエクスビボまたはインビボ法により導入することに基づくものであるが、遺伝子伝達の最も重要な応用の一つである。インビトロまたはインビボ遺伝子療法に適したベクターおよび方法は、上記に記載したように文献に記載されており、当業者にも知られている。ポリヌクレオチドおよびベクターは、細胞中への直接的な導入のため、あるいは該組換えDNA分子を含むリポソームまたはウイルスベクター(たとえば、アデノウイルス、レトロウイルス)を介した導入のためにデザインすることができる。該細胞は、好ましくは生殖細胞、胚細胞、幹細胞または卵細胞またはそれらに由来する細胞である。本発明による医薬組成物はまた、DCにより媒体されるものとしてこれまでに未知の疾患の治療にも用いることができる。胚細胞は、たとえばNagy, Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90(1993)8424-8428に記載されているように胚幹細胞であってよい。
【0089】
導入したポリヌクレオチドおよびベクターは該細胞中に導入した後に遺伝子産物を発現し、好ましくは該細胞の生涯を通じてこの状態に留まることが理解されなければならない。たとえば、適当な制御配列の制御下にポリヌクレオチドを発現する細胞株は、当業者によく知られた方法により操作することができる。ウイルス由来の複製起点を含む発現ベクターを用いるよりも、宿主細胞は本発明のポリヌクレオチドまたはベクターおよび選択マーカーで同じかまたは別々のベクター上にて形質転換することができる。外来DNAの導入後、操作した細胞を1〜2日間、富化培地で増殖させ、ついで選択培地に切り替える。組換えプラスミド中の選択マーカーは該選択に対して耐性を付与し、その染色体中にプラスミドが安定に組み込まれた細胞の選択を可能にし、増殖してフォーカスを生成し、これを今度はクローニングし、細胞株へ拡張することができる。そのように操作した細胞はまた、以下に記載するスクリーニング法において特に有用である。
【0090】
多くの選択系を採用することができ、それには、それぞれtk細胞、hgprt細胞またはaprt細胞でのヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(Wigler, Cell 11(1977),223)、ヒポキサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Szybalska, Proc.Natl.Acad.Sci.USA 48(1962),2026)、およびアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Lowy, Cell 22(1980),817)が含まれるがこれらに限られるものではない。また、dhfr(メトトレキセートに対する耐性を付与する)に対する(Wigler, Proc.Natl.Acad.Sic.USA 77(1980),3567;O'Hare, Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78(1981),1527)、gpt(ミコフェノール酸に対する耐性を付与する)に対する(Mulligan, Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78(1981),2072)、neo(アミノグリコシドG−418に対する耐性を付与する)に対する(Colberre-Garapin, J.Mol.Biol.150(1981),1)、hygro(ハイグロマイシンに対する耐性を付与する)に対する(Santerre, Gene 30(1984),147)、またはpuromycinに対する(pat、ピューロマイシンN−アセチルトランスフェラーゼ)選択に基づいて抗代謝産物耐性を用いることができる。さらなる選択遺伝子も記載されており、たとえば、trpB(細胞がトリプトファンの代わりにインドールを利用することを可能にする);hisD(細胞がヒスチジンの代わりにヒスチノールを利用することを可能にする)(Hartman, Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85(1988),8047);およびODC(オルニチンデカルボキシラーゼ)(オルニチンデカルボキシラーゼインヒビター、2−(ジフルオロメチル)−DL−オルニチン、DFMOに対する耐性を付与する)(McConlogue, 1987, In: Current Communications in Molecular Biology、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー編)が挙げられる。
【0091】
M−DC8細胞は未熟DCに類似しているにもかかわらず、極めて強力にT細胞を刺激する。この活性は、M−DC8細胞がインビトロで培養された後にその細胞表面上でのMHCクラスII発現が増大しコスティミュラトリー分子の提示が上昇したことを反映している。同種T細胞と一緒に培養するとM−DC8細胞上のこれら分子を特に強力に上方制御する(upregulate)と思われる。T細胞を活性化するためにDCを用いる種々の方法が記載されている(たとえば、WO94/02156を参照)。
【0092】
それゆえ、さらなる態様において、本発明は、T細胞を本発明の樹状細胞(抗原に暴露されているかまたは抗原を発現して該抗原に応答してT細胞が増殖または細胞障害性となるように活性化する)とともに培養することを含む、活性化された抗原特異的ヒトT細胞をインビトロで製造する方法に関する。T細胞の刺激のために抗原性分子をDCにより提示させるのに用いることのできる種々の方法が存在する。これら方法は当業者には知られている。ある個人のMHCクラスIまたはクラスII遺伝子のアレル組成がわかっている場合、外来の抗原性ペプチドを公知のアルゴリズムに従って選択し、該単離したペプチドとともにDCをインキュベートすることによりDC表面のMHC分子に直接結合させることができる。別法として、DCを完全な抗原性タンパク質分子に暴露することができる。
これら分子はエンドサイトーシスされ、エンドソーム内で酵素開裂され、MHCクラスII分子の結合グローブ(grove)中に結合され、ついでこれら分子との複合体としてCD4T細胞への提示のために細胞膜へ輸送される。エンドサイトーシスを受けたタンパク質の一部はサイトソル画分に達し、そこでプロテアソーム装置により開裂される(「クロスプライミング(cross priming)」)。
【0093】
生成したペプチドは、TAP分子により小胞体の内腔に輸送され、そこで発生中のMHCクラスI分子と結合され、その後、細胞障害性CD8T細胞またはその先駆細胞へ提示すべく細胞表面に輸送される。外来タンパク質に由来する抗原性ペプチドは、該タンパク質が発現ベクター中のコード遺伝子の形質導入後にDC内で合成される場合にはDC上のMHCクラスI分子によって効率的に提示され得る(上掲文献をも参照)。それゆえ、そのようにインビトロで教育されたおよび/または初回抗原刺激を受けたT細胞は、たとえば免疫に障害を受けた患者でのCMVについて記載されているような重篤なウイルス感染症に打ち勝つため(Walterら, New Engl.J.Med.333(1995),1038-1044)、あるいは腫瘍転移の免疫拒絶を誘発するために(Nestleら, Nature Med.4(1998),328-332)、臨床試験で用いることができる。それゆえ、本発明によるDCの迅速かつ容易な獲得は、癌を含む種々の適応症のために適合できる免疫療法戦略をさらに開発することを可能にする。
【0094】
さらに、本発明は、T細胞により認識されうる抗原の同定方法であって、
(a)該抗原に暴露された本発明の樹状細胞とともにT細胞を培養し、ついで
(b)T細胞の増殖、T細胞の細胞障害活性またはT細胞のリンホカイン産生を測定する
ことを含む方法に関する。
【0095】
好ましくは、上記方法におけるT細胞はCD4またはCD8細胞である。たとえば、CD4T細胞により認識される抗原を同定するには、DCを問題の抗原性タンパク質とともに、または異なる抗原性タンパク質の混合物とともに、または問題の抗原性タンパク質のアミノ酸配列に従ってまたはペプチドライブラリーから得たペプチドにより合成した15〜25アミノ酸長の重複ペプチドとともにインキュベートする。T細胞応答の決定を3、5または7日後に、[H]チミジンの取り込みを測定することにより、またはインターフェロンγなどのサイトカインの分泌をELISAによりアッセイすることにより、または蛍光染色で標識した特定のモノクローナル抗体で染色した後に細胞内サイトカインをFACS分析により評価することにより行う。
【0096】
CD8T細胞により認識される抗原を同定するには、DCを発現ベクター中の抗原性タンパク質またはその断片をコードする遺伝子でトランスフェクションするか、または9〜10アミノ酸長の重複ペプチドとともにまたはペプチドライブラリーの形態で生成したペプチドとともにインキュベートする。CD8T細胞応答の決定は、腫瘍壊死因子αやインターフェロンγなどのサイトカインの分泌を測定することにより行うことができる。細胞障害活性の評価は、その表面上にMHCクラスI分子に結合した各抗原性ペプチドを発現する51Cr−標識標的細胞の溶解によって行うことができる。
【0097】
さらに他の態様において、本発明は、T細胞を活性化するまたはコスティミュレートする化合物の同定方法であって、
(a)本発明の樹状細胞およびT細胞を、T細胞活性化に応答して検出可能なシグナルを生成しうる成分の存在下、スクリーニングしようとする化合物とともに該化合物と該細胞との相互作用を可能とする条件下にて培養し、ついで
(b)T細胞の活性化により生成したシグナルの存在を検出する
ことを含む方法に関する。
【0098】
他の態様において、本発明は、T細胞活性化または刺激を抑制する化合物を同定する方法であって、
(a)T細胞および本発明の樹状細胞を、T細胞アクチベーターによる該T細胞の活性化に応答して検出可能なシグナルを生成しうる成分の存在下、スクリーニングしようとする化合物とともに該T細胞の活性化を可能とする条件下にて接触させ、ついで
(b)該アクチベーターとT細胞との相互作用により生成したシグナルの存在または不在を検出する
ことを含む方法に関する。
【0099】
T細胞によって生成したシグナルの検出は、上記または付属の実施例に記載するような当該技術分野で知られた方法(上記方法に容易に適合させることができる)に従って行うことができる。好ましくは、本発明の方法において、該樹状細胞は培地でインキュベートすることにより抗原に暴露される。
【0100】
本発明の方法における「化合物」は、単一の物質かまたは複数の物質(同じであっても同じでなくてもよい)を含む。さらに、該化合物は、当該技術分野で知られたものであってよいが、T細胞活性化を抑制しうることはこれまで知られていないかまたはT細胞コスティミュラトリー因子として有用であることは知られていなかったものであってよい。複数の化合物は、たとえば、培地に加えるかまたは細胞中に注入することができる。
【0101】
化合物を含むサンプルが本発明の方法で同定されたら、問題の化合物を含むものとして同定された最初のサンプルから該化合物を単離することができるし、またはたとえばサンプルが複数の異なる化合物からなる場合にサンプル毎の異なる物質の数が減少するように最初のサンプルをさらに分割し、これら最初のサンプルの分割物について本発明の方法を繰り返すことができる。ついで、該サンプルまたは化合物が、たとえば本明細書、付属の実施例または文献に記載した方法により所望の特性を示すか否かを決定することができる。サンプルの複雑さに依存して、上記工程は、好ましくは本発明の方法によって同定したサンプルが限られた数の物質または唯一の物質を含むようになるまで、数回行うことができる。好ましくは、該サンプルは、類似の化学的および/または物理的特性を有する物質を含み、最も好ましくは該物質は同一である。
【0102】
本発明の方法は、たとえば従来技術に記載された他の細胞ベースのアッセイに従って、または付属の実施例に記載した方法を改変することにより、当業者により容易に実行し、デザインすることができる。さらに、当業者であれば、本発明の方法を行うために、たとえばインターロイキンまたは酵素など(ある種の化合物を前駆体に変換し、該前駆体が今度はT細胞活性化を抑制する)のどのようなさらなる化合物および/または細胞を必要に応じて用いてよいかを容易に認識するであろう。本発明の化合物のそのような適合は充分に当業者の範囲内であり、不当な実験なしに行うことができる。
【0103】
本発明の方法の好ましい態様において、該化合物または抗原は、腫瘍抗原、ウイルス抗原、微生物抗原、アレルゲン、自己抗原、ウイルス、微生物、ポリペプチド、ペプチドまたは複数の腫瘍細胞である。
【0104】
本発明に従って使用できる化合物および抗原としては、ペプチド、タンパク質、核酸、抗体、小さな有機化合物、リガンド、ペプチドミメチック、PNAなどが挙げられる。該化合物はまた、公知のT細胞アクチベーターまたはインヒビターの機能的な誘導体またはアナログであってよい。化学的な誘導体およびアナログの製造方法は当業者にはよく知られており、たとえば、Beilstein, Handbook of Organic Chemistry, Springer編、New York Inc.(米国、10010ニューヨーク、ニューヨーク、フィフス・アベニュー、175番)およびOrganic Synthesis、ウィリー、ニューヨーク、米国に記載されている。
【0105】
さらに、該誘導体およびアナログは、当該技術分野で知られた方法に従ってまたはたとえば付属の実施例に記載されているようにして、その作用を試験することができる。さらに、T細胞活性化の適当なアクチベーターまたはインヒビターのペプチドミメチックおよび/またはコンピューターによるデザインを、たとえば本明細書に記載した方法に従って用いることができる。本発明の推定インヒビターおよび抗原の相互作用部位の同定のため、相補的な構造モチーフのコンピューター支援サーチによって適当なコンピュータープログラムを用いることができる(Fassina, Immunomethods 5(1994),114-120)。タンパク質およびペプチドのコンピューター支援デザインに適したさらなるコンピューターシステムは、従来技術、たとえば、Berry, Biochem.Soc.Trans.22(1994),1033-1036;Wodak, Ann.N.Y.Acad.Sic.501(1987),1-13;Pabo, Biochemistry 25(1986),5987-5991に記載されている。
【0106】
上記コンピューター分析で得られた結果は、本発明の方法、たとえば、知られたT細胞アクチベーターまたはインヒビターを最適化する方法と組み合わせて用いることができる。適当なペプチドミメチックの同定はまた、たとえば本明細書や付属の実施例に記載した方法に従い、連続的な化学修飾および得られた化合物の試験を行うことによるペプチドミメチックコンビナトリアルライブラリーの合成によって行うことができる。ペプチドミメチックコンビナトリアルライブラリーの生成および使用方法は、従来技術、たとえばOstresh, Methods in Enzymology 267(1996),220-234およびDorner, Bioorg.Med.Chem.4(1996),709-715に記載されている。さらに、DC/T細胞相互作用のインヒビターまたはアクチベーターの三次元および/または結晶学的構造を、T細胞活性化のペプチドミメチックインヒビターまたはアクチベーターのデザインのために、たとえば本発明の抗体または抗原と組み合わせて用いることができる(Rose, Biochemistry 35(1996),12933-12944;Rutenber, Bioorg.Med.Chem.4(1996),1545-1558)。
【0107】
要約すると、本発明は、DCおよびT細胞により媒体された免疫応答を調節しうる化合物の同定方法を提供する。T細胞媒体応答を活性化することがわかった化合物は、癌の治療、たとえば乳、前立腺、消化管、腎臓、肺、皮膚および/または他の部位などの上皮癌の治療、および細胞増殖疾患などの関連疾患の治療に用いることができる。さらに、ウイルス疾患を特異的に抑制および/または保護し、それによってウイルス感染またはウイルスの拡散を防ぐことも可能である。T細胞活性化または刺激のサプレッサーとして同定された化合物は、移植拒絶を回避するために臓器移植に用いることができる(上記参照)。
【0108】
従って、本発明の方法によって同定されまたは得られた化合物は、診断的な応用において、とりわけ治療的な応用において非常に有用であることが期待される。それゆえ、さらなる態様において本発明は、本発明の上記方法の工程(b)において同定した化合物を製薬学的に許容しうる形態に調合することを含む医薬組成物の製造方法に関する。
【0109】
本発明の方法に従って同定した治療的に有用な化合物は、特定の化合物に適した方法、たとえば経口、非経口、経皮、経粘膜(transmucosally)で、または該化合物の作用を付与することが望まれる部位の近くに外科または移植により(たとえば、該化合物は固形または半固形の生物学的に適合性で吸収性のマトリックスの形態で)、患者に投与することができる。治療用の投与量は、当業者により適当なものに決定される(上記参照)。
【0110】
さらに、本発明は、本発明の抗体、上記抗原またはエピトープ、上記ポリペプチド、本発明のポリヌクレオチド、ベクターまたは樹状細胞、本発明の方法によって得られるT細胞または上記方法によって得られる化合物を含むキットおよび組成物に関する。好ましくは、該組成物は医薬組成物である。
【0111】
本発明の医薬組成物はさらに製薬学的に許容しうる担体を含んでいてよい。適当な製薬学的担体の例は当該技術分野でよく知られており、リン酸緩衝食塩水、水、油/水エマルジョンなどのエマルジョン、種々のタイプの湿潤化剤、滅菌溶液等がまれる。そのような担体を含む組成物はよく知られた従来法により調合することができる。これら医薬組成物は、適当な投与量で患者に投与することができる。適当な組成物の投与は、種々の経路により、たとえば静脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、局所または皮内投与により行うことができる。投与計画は、担当医および他の臨床因子により決定されるであろう。医学の分野でよく知られているように、ある1人の患者に対する投与量は患者のサイズ、体表面積、年齢、投与すべき特定の化合物、性別、投与時間および経路、一般的な健康状態、および現在投与している他の薬剤を含む多くの因子に依存する。一般に、医薬組成物の規則的な投与としての投与計画では、1日当たり1μg〜10mg単位の範囲でなければならない。投与計画が連続な注入である場合は、それぞれ1分当たり、体重1kg当たりで1μg〜10mg単位の範囲でなければならない。進行は定期的な評定によりモニターできる。投与量は変わるであろうが、DNAの静脈内投与のための好ましい投与量は約10〜1012コピーのDNA分子である。
【0112】
本発明の組成物は局所的にまたは全身的に投与することができる。投与は一般には非経口的、たとえば静脈内であろう;DNAはまた、たとえば内部または外部の標的部位へのバイオリスティックデリバリー(biolistic delivery)によりまたは動脈中の部位へのカテーテルにより、標的部位へ直接投与することもできる。非経口投与用の調製物としては、滅菌水溶液または滅菌非水溶液、懸濁液、およびエマルジョンが挙げられる。非水溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、オレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルである。水性担体としては、水、アルコール/水溶液、エマルジョンまたは懸濁液(食塩水および緩衝媒体を含む)が挙げられる。非経口ビヒクルとしては、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸含有(lactated)リンゲル、または固定油が挙げられる。静脈内ビヒクルとしては、液体および栄養補給剤、電解質補給剤(リンゲルデキストロースに基づくものなど)などが挙げられる。たとえば、抗菌剤、抗酸化剤、キレート化剤、および不活性ガスなどの保存剤および他の添加物も配合できる。
【0113】
本発明の種々のポリヌクレオチドおよびベクターは、標準ベクターおよび/または遺伝子送達システムを用いて単独かまたは組み合わせにて、任意に適当な化合物、たとえば腫瘍、アレルギー、または自己免疫疾患に特異的な(自己)抗原とともに、および/または製薬学的に許容しうる担体または賦形剤とともに投与することが本発明により認識される。投与後、該ポリヌクレオチドまたはベクターは患者のゲノム中に安定に組み込まれる。一方、ある種の細胞または組織、好ましくはDCに特異的で該細胞中に持続するウイルスベクターを用いてもよい。適当な医薬担体および賦形剤は当該技術分野でよく知られている。本発明に従って調製した医薬組成物は、様々な種類の疾患(免疫不全またはウイルス感染または癌に関連する)の予防、治療または遅延のために用いることができる。さらに、該医薬組成物はワクチンであってもよい。
【0114】
ワクチンは、とりわけ、1またはそれ以上の抗体、該抗体の断片、該抗体の誘導体、本発明のポリヌクレオチドまたは抗原から調製できる。
たとえば、本発明のポリヌクレオチドは遺伝子ワクチンのためまたはDNAワクチンとして用いることができる。遺伝子/DNAワクチンの投与経路は当該技術分野でよく知られており、DNAワクチン接種はアロ免疫、抗腫瘍抗体または抗イディオタイプ免疫応答を誘発するのに首尾良く用いられている(Tighe M.ら、Immunology Today 19(1998),89-97)。さらに、核酸分子/DNAの接種は、様々な様式の疾患を防御することがわかっている(Fynan, Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.90(1993),11478-11482;Boyer,Nat.Med.3(1997),526-532;Webster, Vaccine 12(1994),1495-1498;Montgomeryら, DNA Cell Biol.12(1993),777-783;Barry, Nature 311(1995),632-635;XuおよびLiew, Immunology 84(1995),173-176;Zhoug, Eur.J.Immunol.26(1996),2749-2757;Luke, J.Inf.Dis.175(1997),91-97;Mor, Biochem.Pharmacology 55(1998),1151-1153;Donelly, Annu.Rev.Immun.15(1997),617-648;MacGregor, J.Infect.Dis.178(1998),92-100)。
【0115】
ワクチンとしての医薬組成物に用いる本発明の抗体、該抗体の断片または誘導体またはポリヌクレオチドは、たとえば中性または塩の形態で調合できる。製薬学的に許容しうる塩、たとえば酸付加塩その他は当該技術分野で知られている。ワクチンは、とりわけウイルスなどの病原体の感染の治療および/または予防のために用いることができ、調合方法に適合した剤型で、および予防または治療処置に薬理学的に有効な量で投与される。
【0116】
ワクチンとして使用されるタンパク質、タンパク質断片および/またはタンパク質誘導体は当該技術分野でよく知られている(たとえば、Cryz, "Immunotherapy and Vaccines", VCH Weinheim(1991);Paul (1989)、上掲文献を参照)。さらに、細菌病原体の細胞内酵素さえも、免疫保護を付与する抗原性物質として作用しうることが示されている(Michetti, Gastroenterology 107(1994),1002;Radcliff, Infec.Immun.65(1997),4668;Lowrie, Springer Semin.Immunopathol.19(1997),161)。
【0117】
ワクチン接種プロトコールは、能動免疫または受動免疫を含み、能動免疫は防御免疫応答を誘発させるために本発明の抗体(および/またはその誘導体または断片)を用いて抗原を宿主/患者に投与することを必要とする。ワクチン接種およびワクチンの原理は当業者に知られている(たとえば、Paul, "Fundamental Immunology"、ラベン・プレス、ニューヨーク(1989)またはMorein, "Concepts in Vaccine Development"、S.H.E. Kaufmann編、Walter de Gruyter、ベルリン、ニューヨーク(1996)、243〜264を参照)。典型的に、ワクチンは、液体溶液としてかまたは懸濁液のいずれかとして、注射剤として調製される;注射前の液状の溶液または懸濁液のための固形形態もまた調製できる。調製物を乳化することもできるし、またはタンパク質をリポソーム中にカプセル納入(encapsulated)することもできる。
【0118】
活性な免疫成分は、しばしば、該活性成分と適合性の薬理学的に許容しうる賦形剤と混合される。適当な賦形剤としては、これらに限られるものではないが、水、食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなどが挙げられる;これら賦形剤を種々の量で組み合わせて用いることもできる。ワクチンはまた、湿潤剤、乳化剤、pH緩衝剤、および/または該ワクチンの効力を増大させるアジュバントなどの補助物質を少量含んでいてよい。たとえば、そのようなアジュバントとしては、2%スクワレン/Tween-80Rエマルジョン中の水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウムまたは水酸化リンアルミニウム(aluminumphosphohydroxide)(「Gen H-B-VaxR」「DPT-Impfstoff Behring」として使用する)などのアルミニウム構成物(compositions)、N−アセチル−ムラミル−L−トレオニル−D−イソグルタミン(thr-DMP)、N−アセチル−ノルアドレナリンムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミン(CGP 11687、「nor-MDP」ともいう)、N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミニル−L−アラニン−2−(1'2'−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキシファオスフォリルオキシ)エチルアミン(CGP 19835A、「MTP-PE」ともいう)、MF59およびRIBI(MPL+TDM+CWS)が挙げられる。さらなるアジュバントとしては、とりわけCpG含有モチーフなどのDNAまたはオリゴヌクレオチドが挙げられる(CpG-oligonucleotides; Krieg, Nature 374(1995),546-549;Pisetsky, An.Internal.Med.126(1997),169-171)。
【0119】
ワクチンは、通常、静脈内または筋肉内注射により投与する。他の様式の投与に適したさらなる調合物としては、坐剤およびある場合には経口調合物が挙げられる。坐剤については、伝統的な結合剤および担体として、ポリアルキレングリコールまたはトリグリセリドが挙げられるが、これらに限られるものではない。経口調合物は、たとえば、製薬グレードのマンニトール、乳糖、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどのような通常用いられるものを含む。これら組成物は、液剤、懸濁剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、徐放製剤または散剤の形態であってよく、約10%〜約95%の活性成分、好ましくは約25%〜約70%の活性成分を含む。
【0120】
ワクチンは、投与剤型に適合した仕方で、および予防および/または治療に有効な量で投与されるであろう。投与すべき量は、一般に投与量当たり約5μg〜約250μgの抗原の範囲であり、投与すべき患者、患者の免疫系が抗体を合成する能力、意図する保護の程度に依存する。投与に必要な活性成分の正確な量は実施者の判断に委ねられてよいし、各患者ごとに特有であってよい。ワクチンは単回または多回投与スケジュールで与えられてよい。多回投与は、第一のワクチン接種を1〜10の別個の投与とそれに続いて免疫応答を維持および/または強化するのに必要な所定の時間間隔で(たとえば、第二の投与のために1〜4ヶ月にて)さらなる投与を行い、さらに患者が必要とすれば数ヶ月後に引き続く投与を行うものである。投与計画はまた、少なくともその一部は、患者の必要性によって決定され、実施者の判断に委ねられるであろう。
【0121】
本発明の範囲にはまた、細胞または細胞断片ベースのワクチンも包含される。たとえば、樹状細胞(DC)ベースのワクチンを、M−DC8細胞を選択し、腫瘍またはウイルス感染細胞に特異的な抗原でエクスビボパルスすることにより製造することができる。本発明の抗体を用いて単離できるDCは、とりわけ腫瘍ワクチン接種または抗ウイルスワクチン接種のための抗原担体として用いる。DCの抗原積載(loading)は当該技術分野でよく知られており、最小のMHCクラスI制限ペプチドからタンパク質に至る(Mayordomo, Nature Med.1(1995),1297-1302;Hsu, Nature Med.2(1996),52-58;Paglia, J.Exp.Med.183(1996),317-322;Pardoll, Nature Medicine Vaccine Suppl.4(5)(1998),525-531において概説)。さらに、抗原は、全腫瘍細胞とのDCの融合により(Gong, Nature Med.(1996),558-561)、または複製欠損組換えウイルスベクターを用いて(Specht, J.Exp.Med.186(1997),1213-1221;Song, J.Exp.Med.186(1997),1247-1256)、提示/積載できる。
【0122】
さらに、本発明のポリヌクレオチドまたはベクターを含むトランスジェニック非ヒト動物も本発明の範囲に含まれる。そのようなトランスジェニック非ヒト動物は当該技術分野でよく知られた方法に従って製造することができ、本発明の抗体、抗原およびポリペプチドの生物学的活性および/またはDC媒体免疫応答の対応インヒビターおよびアクチベーターを研究するうえで有用である。
【0123】
それゆえ、本発明はまた、本発明のポリヌクレオチドまたはベクターを生殖細胞、胚細胞、幹細胞または卵またはそれに由来する細胞中に導入することを含む、トランスジェニック動物、好ましくはトランスジェニックマウスの製造方法に関する。本発明の方法に使用する非ヒト動物は、トランスジェニックしていない健常な動物であってよく、またはウイルス疾患や癌、またはDCもしくはT細胞媒体自己免疫疾患を有していてよい。トランスジェニック胚の製造およびそのスクリーニングは、たとえば、A.L. Joyner編、Gene Targeting, A Practical Approach(1993)、オックスフォード・ユニバーシティー・プレスに記載されているようにして行うことができる。胚の胚膜のDNAは、適当なプローブを使用したサザーンブロットを用いて分析できる。
【0124】
本発明はまた、本発明のまたは本発明の方法により得ることのできるポリヌクレオチドまたはベクターを含むトランスジェニックマウス、ラット、ハムスター、イヌ、サル、ウサギまたはブタなどのトランスジェニック非ヒト動物であって、好ましくは該ポリヌクレオチドまたはベクターが該非ヒト動物のゲノム中に安定に組み込まれており、好ましくは該ポリヌクレオチドまたはベクターの存在が本発明の抗体、抗原またはポリペプチドの発現へと導くトランスジェニック非ヒト動物に関する。一方、本発明の抗原をもはや発現することができないノックアウト非ヒト動物を生成することができる。
【0125】
他の態様において、本発明は、上記本発明の抗体、抗原またはエピトープ、ポリペプチド、ポリヌクレオチドまたはベクターのいずれか一つを含む診断組成物に関する。
【0126】
本発明の抗原は、とりわけイムノアッセイに使用するのに適しており、該抗原は液相にてまたは固相支持担体に結合させて用いることができる。さらに、これらアッセイに用いる抗原は種々の仕方で検出可能に標識することができる。本発明の抗原を用いることのできるイムノアッセイの例は、直接または間接のいずれかの形態の競合および非競合イムノアッセイである。そのようなイムノアッセイの例は、ラジオイムノアッセイ(RIA)、サンドイッチ(イムノアッセイ)およびウエスタンブロッティングアッセイである。本発明の抗原またはエピトープに結合した抗体の検出は、生理学的サンプル上での免疫組織化学的アッセイを含む、フォアウォード、リバースまたは同時の様式で行うイムノアッセイを用いて行うことができる。本発明の抗原およびポリペプチドは多くの異なる担体に結合させることができ、本発明のDCと特異的に反応する抗体の存在を検出するのに用いることができる。よく知られた担体の例は、ガラス、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、デキストラン、ナイロン、アミロース、天然および改変セルロース、ポリアクリルアミド、アガロース、およびマグネタイトである。担体の性質は、本発明の目的により可溶性かまたは不溶性のいずれかであってよい。
【0127】
当業者に知られた多くの異なる標識および標識方法が存在する。本発明に用いることのできる標識のタイプの例としては、酵素、放射性同位元素、コロイド状金属、蛍光化合物、化学ルミネセンス化合物、および生物ルミネセンス化合物などが挙げられる(上記参照)。
【0128】
本発明のアッセイに使用するための材料は、キットの調製に理想的に適している。そのようなキットは、バイアル、チューブなどの1またはそれ以上の容器手段を密に収容すべく区画化した担体手段であって、各容器手段が本発明の方法に使用する別個の要素の一つを含むようにしたものを含んでいてよい。たとえば、容器手段の一つは担体に結合した本発明の抗原を含んでいてよい。第二の容器は可溶性で検出可能に標識した第二の抗体を凍結乾燥形態かまたは溶液中にて含んでいてよい。さらに、容器手段は複数の容器を含んでいてよく、それら容器の各々が本発明の抗原を様々な前以て決定した量で含んでいてよい。ついで、これら後者の容器は標準曲線を作成するのに使用でき、該標準曲線に本発明の抗原に対する抗体を未知量で含むサンプルから得られた結果を内挿することができる。
【0129】
さらに他の態様において、本発明は、抗原に暴露された樹状細胞または抗原を発現するDCまたは上記抗原またはエピトープを含むワクチンに関する。単離したDCはインビトロで調製して、以下に記載するようにCD4かまたはCD8T細胞のいずれかを刺激するための抗原性ペプチドを提示することができる。ついで、これらDCを皮内、皮下、筋肉内、またはとりわけ抗腫瘍ワクチン接種の場合には腫瘍増殖の領域または腫瘍増殖のリンパ管またはリンパ節排出領域に注入する。抗原提示DCの注入は、種々の間隔をあけて数回繰り返す(Nestle, Nature Med.4(1998)328-332)。
【0130】
他の態様において、本発明は、本発明の樹状細胞およびある種の疾患に罹りやすいヒトまたは動物において該疾患に対する防御免疫応答を生成しうる上記抗原の少なくとも一つを含む免疫賦活組成物に関する。ワクチン接種に使用するDCの免疫原性は、たとえば分泌サイトカインまたはケモカインまたは膜分子をコードするcDNAをDC中に形質導入することにより、Th1かまたはTh2指令免疫応答のいずれかをプログラムするように増強し特異的に改変することができる。Th1指令免疫応答をプログラムするには、抗原提示DCをIL−12をコードするcDNAで形質導入し、Th2指令免疫応答をプログラムするには、抗原提示DCをIL−4を分泌するように改変する。
【0131】
本発明はまた、上記方法により得られたT細胞を適合性の免疫療法のための医薬組成物を調製するために使用すること、および抗原に暴露された本発明の樹状細胞をヒトまたは動物においてT細胞を活性化するための医薬組成物に使用することに関する。たとえば、Tリンパ球をT細胞に対して抗原性ペプチドを提示するように調製した本発明の自己由来DCとともにインビトロで数日間一緒に培養して、T細胞の抗原特異的な活性化を誘発させる。抗原は腫瘍抗原またはアレルゲンまたは自己抗原であってよい。活性化T細胞の増殖は、IL−2などのサイトカインを加えることによって支持できる。T細胞の抗原特異的な刺激は数回繰り返す。ついで、T細胞を大抵は注入によりドナーに適合して移す。
【0132】
本発明のさらなる目的は、標的細胞に該樹状細胞を補充するための医薬組成物の調製のために上記二重特異性抗体を使用することである。好ましくは、該標的細胞は腫瘍細胞またはウイルス感染細胞または微生物が感染した細胞である(上記参照)。
【0133】
本発明の抗体、抗原およびエピトープ投与の投与量範囲は、自己免疫応答の徴候または細胞破壊が改善されるような所望の効果が得られるに充分大きなものである。投与量は、所望でない交叉反応やアナフィラキシー反応などの副作用を引き起こすほど大きなものであってはならない。一般に、投与量は、患者の年齢、健康状態、性別、および疾患の程度によって変わるであろうが、当業者により決定することができる。投与量は、矛盾する適応症(couterindications)の場合には個々の医師によって調節することができる。
【0134】
さらに、本発明は、免疫応答をインビトロでまたはインビボで調節またはプログラムするためにサイトカインまたはシグナル伝達分子の遺伝子をトランスフェクションすることにより樹状細胞を改変する方法を含む。そのようなサイトカインおよび分子の例については上記を参照のこと。
【0135】
さらに、本発明は、T細胞の抗原特異的活性化を促進、調節または抑制する作用を有するDCにより合成される分子を同定する方法であって、
(a)本発明のDCによって培養上清中に分泌された分子をたとえば通常の生化学的方法によって分離し、ついで富化したまたは単離した該分子を抗原特異的T細胞活性化についてDCを欠く細胞培養系で試験し、ついで/または
(b)本発明のDCにおける遺伝子発現を差し引きクローニングまたは識別表示(differential display)RT−PCRにより単球などの他の抗原提示細胞での遺伝子発現と比較する
ことを含む方法に関する。
【0136】
さらに、本発明は、インビトロでDCを増殖させる方法であって、
(a)本発明のDCを、DCの増殖を支持する特定のサイトカイン混合物(cocktail)中で培養し、ついで/または
(b)SV40ラージT抗原をコードする遺伝子などの形質転換遺伝子を形質導入することにより該DCを不死化する
ことを含む方法を包含する。
【0137】
たとえば、全RNAを、たとえばRNAzol B法(Tel-Test, Inc.)を用いて本発明のDCおよび他の抗原提示細胞から単離し、識別表示を当該技術分野に記載されているようにして行うことができる(たとえば、Kojima, J.Biol.Chem.271(1996),12327-12332を参照)。
【0138】
これらおよび他の態様が本発明の記載および実施例により開示および包含される。本発明に従って用いることのできる方法、使用および化合物のいずれか一つに関するさらなる文献は、たとえば電子装置を用いて公共の図書館およびデータベースから検索することができる。たとえば、公共データベースの「Medline」を利用できるが、これはたとえばhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/PubMed/medline.htmlにてインターネット上で入手できる。http://www.ncbi.nlm.nih.gov/, http://www.infobiogen.fr/, http://www.fmi.ch/biology/research tools.html, http://www.tigr.org/などの他のデータベースおよびアドレスも当業者には知られており、たとえばhttp://www.lycos.comを用いて得ることができる。バイオテクノロジーにおける特許情報の概観および過去に遡る(retrospective)調査および現在の了解(awareness)に有用な特許情報の関連する源のサーベイはBerks, TIBTECH 12(1994),352-364で得られる。
【0139】
本発明の医薬組成物、使用および方法は、自己免疫疾患、アレルギー疾患などの過敏性疾患、免疫不全症に関連することが、または免疫系の応答が関与するウイルス性疾患または癌または他の感染性疾患に依存することがわかっているあるいはこれまでのところわかっていない全ての種類の疾患の治療に有利に用いることができる。本発明の医薬組成物、使用および方法はヒトに用いるのが望ましいが、動物の治療もまた本発明の方法および使用に包含される。
【0140】
以下の実施例により本発明を説明する。
実施例1:M−DC8白血球の単離および特徴付け
ヘパリン処理した全血およびバフィーコート調製物を、血液ドナーのインフォームドコンセントを得てTUドレスデン、医学部、輸血課から得た。血球を2mM L−グルタミン、1%非必須アミノ酸(Biochrom AG、ベルリン、FRG)、100U/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシン(ともにGibco、エッゲンシュタイン、FRGより入手)および10%加熱不活化プールヒト血清を補充したRPMI1640培地(完全培地(CM)と称する)中で培養した。全白血球のFACS分析のため、赤血球を溶解液(Becton Dickinson & Co.、ハイデルベルグ、FRG)で製造業者の指示に従って溶解させた。末梢血単核球(PBMC)をフィコール−ハイパック(Pharmacia、フライブルグ、FRG)密度遠心分離により調製した。
【0141】
CrCl27を本質的に記載に従って用い、精製CD2(M−T910)、CD37(M−B372)またはCD14(M−M42)モノクローナル抗体(本発明者らの研究所に由来し、"IVth Int. Workshop on Human Leukocyte Differentiation Antigens"26で群集させた(clustered))をコーティングしたウシ赤血球(BRBC)を用いた直接モノクローナル抗体ロゼット法(DART)により、Tリンパ球、Bリンパ球および単球をPBMCから除去した。各モノクローナル抗体をコーティングしたBRBCを用いた2回目のロゼット法により99%以上の涸渇が得られた。アミノエチルイソチウロニウム(isothiuronium)ブロマイド(AET、Sigma、ダイゼンホーフェン、FRG)で処理したヒツジ赤血球でロゼットし、ついで記載に従って27フィコール密度遠心分離により>98%純度のTリンパ球をPBMCから得た。この集団から>98%純度のCD8T細胞を、CD4モノクローナル抗体M−T310をコーティングしたBRBCとのロゼットとしてCD4細胞の涸渇により調製した28
【0142】
T細胞、B細胞および単球を涸渇させたHLA−DRPBMC上でのスクリーニングにより、6×10を超えるハイブリドーマ上清からM−DC8を選択した。赤血球の溶解後、M−DC8モノクローナル抗体は全白血球集団の0.5〜1%を標識した(図1A)。10μg/mlの抗体を含むM−DC8ハイブリドーマの非希釈上澄み液とともにPBMCを4℃で15分間インキュベートすることによりM−DC8細胞を得た。PBSで洗浄後、常磁性のマイクロビーズ(Miltenyi Biotec、ベルギッシュ−グラッドバッハ、FRG)に結合させた10μlのラット抗マウスIgMで細胞を4℃にてさらに15分間標識した。洗浄後、細胞の凝集を防ぐために細胞を充分に再浮遊させ、VS+分離カラム(Miltenyi)上で貯蔵した。必要なら、高度に富化した細胞をRS+分離カラム(Miltenyi)を用いた2回目のマグネチックセルソーティングによりさらに精製した。1%ヒト血清を含む脱気し氷冷したPBSを操作(running)および溶出緩衝液として用いた。
【0143】
抗CD14コーティング常磁性マイクロビーズ(Miltenyi)とのインキュベーションによる最初のマグネチックセルソーティングの後、純粋な単球を調製した。VS+分離カラムを用いたマグネチックセルソーティングの後、CD14の>95%純度の集団を得た。サイズおよび顆粒度に関しては、M−DC8細胞は光散乱表示においてリンパ球と単球との間に位置する別個の集団を示していた(図1B、1C)。以下の細胞系列特異的モノクローナル抗体CD2、CD19、CD14およびCD56の各々とともにM−DC8モノクローナル抗体を用いた2色免疫蛍光分析により、M−DC8細胞はT細胞、B細胞、単球またはNK細胞からそれぞれ排除することができた(図2A〜2D)。2色蛍光分析のため、細胞を非希釈M−DC8ハイブリドーマ上清とともにインキュベートし、ついでPE−またはFITCコンジュゲートヤギF(ab')抗マウスIgM(Coulter-Immunotec、ハンブルグ、FRG)とともにインキュベートした。
【0144】
二次抗体の非複合結合部位を1/10希釈の正常マウス血清で飽和した後、以下の蛍光染色コンジュゲートモノクローナル抗体を供給者の推奨する濃度にて適用した:CD2(T9−10、IgG1、FITC)、CD4(13B8.2、IgG1、PE)、CD11b(ZLPM19C、IgG1、PE)、CD14(T+K4、IgG2a、FITC)、CD18(MHM23、IgG1、FITC)(すべてDako、ハンブルグ、FRGから購入);CD1a(M−T102、IgG2b、PE)、CD11a(G43−25B、IgG1、FITC)、CD11c(B−LY6、IgG1、PE)、CD32(FL18.26、IgG2b、FITC)、CD33(WM53、IgG1、PE)、CD40(5C3、IgG1、FITC)、CD54(HA58、IgG1、PE)、CD56(B159、IgG1、PE−Cy5)、CD80(BB1、IgM、FITC)、CD86(IT2.2、IgG2b、FITC)(FUN1、IgG1、FITC)、CD106(51−10C9、IgG1、FITC)、HLA−DP(HI43、IgG1、FITC)、HLA−DQ(T+169、IgG2a、FITC)、HLA−A、B、C(G46−2.6、IgG1、FITC)(すべてPharmingen、ハンブルグ、FRGより入手);CD3(UCHT1、IgG1、PE−Cy5)、CD13(WM15、IgG1、FITC)、CD16(3G8、IgG1、FITC)、CD19(J4.119、IgG1、PE)、CD34(QBENP10、IgG1、FITC)、CD45RO(UCHL1、IgG2a、PE)、CD45RA(ALB11、IgG1、FITC)、CD50(HP2/19、IgG2a、PE)、CD58(AlCD58、IgG2a、PE)、CD64(22、IgG1、FITC)、抗HLA−DR(B8.12.2、IgG2b、PE)(すべてCoulter-Immunotech、ハンブルグ、FRGから購入)。
【0145】
2つの非標識モノクローナル抗体M−DC8およびCD83(HB−15aおよびHB−15b、Vth Workshop on Human Leukocyte Differentiation Antigensに際して入手)を用いた2色免疫蛍光染色を以下のようにして行った:細胞をまずCD83モノクローナル抗体とともにインキュベートし、ついでFITCコンジュゲートヤギF(ab')抗マウスIg(Dako、ハンブルグ、FRG)とともにインキュベートした。1/10希釈の正常マウス血清で反応停止した(quenching)後、細胞をM−DC8モノクローナル抗体および第二抗体としてのPEコンジュゲートヤギF(ab')抗マウスIgM(Coulter-Immunotec)で染色した。
【0146】
モノクローナル抗体M−DC8およびp55(E. Langhoff博士の好意により提供された)を用いた2色染色のため、PBMCをまず上記のようにM−DC8について表面染色し、ついで氷冷4%パラホルムアルデヒド(Merck、ダルムシュタット、FRG)で固定し、0.1%サポニン(Sigma、ダイゼンホーフェン、FRG)で透過性にし、モノクローナル抗体p55で染色し、ついでFITCコンジュゲートラット抗マウスIgG1で処理した。各インキュベーションの後に細胞を細胞洗浄液(Becton-Dickinson & Co.、ハイデルベルグ、FRG)で2回洗浄した。染色した細胞を溶解IIプログラムを用いてFACScan(Becton Dickinson)で分析した。ヒト血液DCの2つのマーカーであるCD83およびp55は同一のDCサブセットを定めるので9,10、M−DC8が重複した細胞集団を特徴付けるか否かを知ることに興味がもたれた。未分離のPBMCをp55およびM−DC8について同時に染色すると、これら2つのマーカーにより2つの異なる細胞集団が定められた(図2E)。CD83発現を誘発させるため、PBMCをT細胞およびB細胞について涸渇させ、48時間培養した。これら細胞をCD83およびM−DC8モノクローナル抗体で染色すると2つの異なる細胞サブセットが明らかとなった(図2F)。それゆえ、M−DC8は、公知の細胞系統およびDCマーカーによって同定されるものとは異なる独特の白血球集団を定める。
【0147】
表1は、新たに単離し培養したM−DC8細胞とCD14単球とを比較して広範な表面マーカーについて分析した結果を示す。新鮮なM−DC8細胞は、HLAクラスII抗原(HLA−DR、−DP、−DQ)、β2−インテグリンCD11a,b,c/CD18およびβ1−インテグリン鎖CD29などの接着分子、ICAM−1(CD54)およびICAM−3(CD50)などの細胞接着分子、LFA−3(CD58)およびFcγレセプターCD32(FcγRII)およびCD16(FcγRIII)を示した。さらに、M−DC8細胞はミエロイド(myeloid)マーカーCD13およびCD33について陽性であり、CD4を適度の密度で発現した。表皮DCのマーカーであるCD1a15並びに胸腺DCによって発現されるCD106(VCAM−1)16は、新鮮なM−DC8細胞では検出されなかった。
【0148】
M−DC8細胞は、MHCクラスIIおよび接着分子1,9に加えてB−7.1(CD80)、B−7.2(CD86)およびCD40などの抗原提示細胞の古典的な特徴を発現した。HLA−DR、CD40およびCD86は新たに単離したM−DC8細胞では低レベルでしか発現されなかったが、これら分子はインビトロで36時間培養した後には上方制御された(upregulated)。この時点で、コスティミュラトリー分子B−7.1(CD80)も低密度でのみではあるが検出されるようになった。新たに単離し培養したM−DC8細胞の表面マーカーを表1にまとめて示す;下記参照。比較のため、新たに調製したCD14単球の表現型をも示す。
【0149】
表1:CD14単球と比較した新たに単離および培養したM−DC8細胞の表面表現型
【表1】

【0150】
M−DC8細胞およびCD14単球をイムノマグネチック法によりPBMCから単離した。単離直後かまたはCM中で36時間培養した後、細胞を免疫蛍光染色およびFACS分析に供した。平均蛍光強度(MFI)レベルを−として与え、4ログスケール(four log scale)での第一の10のMFIを示し、これは同位元素の対照レベルに対応する;+、++および+++は、それぞれ第二、第三および第四の10のMFIを示す。符号のないものは決定しなかったことを意味する。これらデータは、少なくとも5つの個々の実験を示す。
【0151】
M−DC8細胞をCD14単球から識別する最も顕著な特徴は、M−DC8細胞での高密度のCD16(FcγRIII)、およびCD64(FcγRI)発現の欠如であった。興味深いことに、CD16は36時間のインビトロ培養の間にM−DC8細胞の表面から消失した。さらに、M−DC8細胞は単球に比べてCD45R0を一貫して低レベルにて発現したのに対し、CD11aおよびCD11cおよびCD45分子のRAイソ型はM−DC8細胞ではかなり高かった。
【0152】
実施例2:M−DC8細胞の形態学的および機能的特徴付け
M−DC8抗体は、マグネチックセルソーティングを用いた1工程法によりDCをPBMCから単離するのに特に有効であることがわかった。この方法を用い、生存能力のあるM−DC8細胞を60〜90%の収率および>97%の純度で再現可能に単離することができた(図2G、2H)。これら細胞はサイトスピン(cytospins)上で丸い中位のサイズの白血球として現れ(図3A)、培養の間にサイズは大きくなり、樹状の細胞質突出を示した(図3B)。新たに単離した細胞は、1μのラテックスビーズおよび抗体コーティングSRBCを貪欲に食作用により取り込んだ(図3Cおよび3D)。
【0153】
新たに単離した単球およびM−DC8細胞を、抗SRBC血清1:100(Sigma、ダイゼンホーフェン、FRG)でオプソニン処理したヒツジ赤血球(SRBC)かまたは1もしくは5μの直径のラテックスビーズ(Sigma)とともに37℃、5%COにてインキュベートした。30分後、嵌入しなかったSRBCを低浸透圧溶解(蒸留水で5秒後、等容量の1.8%NaClを添加)により溶解した。SRBCの嵌入は、May Grunvald Giemsa染色後にサイトスピン上で評価した。嵌入したラテックスビーズの視覚化を共焦点レーザースキャニング顕微鏡(Lieca TCS 4D、レイカ、ハンブルグ、FGR)により行った。
【0154】
実施例3:同種および自己MLR
M−DC8細胞が抗原特異的なT細胞活性化を誘発する能力を評価するため、種々のT細胞刺激アッセイを行った。比較のため、単球を常に平行してアッセイした。1×10の精製Tリンパ球を、96ウエルの丸底マイクロタイタープレート(Corning、ニューヨーク、ニューヨーク、米国)中の0.2mlのCM中で段階的な(graded)数のAPCとともに培養した。破傷風毒素(TT、Behringwerke、マールブルグ、FRG)またはキーホールリンペットヘモシアニン(KLH、Boehringer-Mannheim、マンハイム、FRG)を抗原としてそれぞれ5μg/mlおよび1μg/mlの濃度にて添加した。
【0155】
T細胞の増殖を、5日後にH−チミジン(比活性79.1Ci/ミリモル、濃度1.0mCi/ml、DuPont、バート・ホンブルグ、FRG)(回収の12〜15時間前に2μCi/ウエルの濃度で添加)の取り込みにより決定した。クローニングしたメラノーマ特異的細胞障害性T細胞を抗原性ペプチドを外部より負荷したAPCにより活性化させる実験においては、HLA−A0201ドナーからのAPC調製物を、1%ヒト血清を補充したRPMI1640培地中、37℃にて100μg/mlのチロシナーゼペプチドYMDGTMSQVとともに一夜インキュベートした。充分に洗浄した後、10のペプチドパルスAPCを25U/mlのrhIL−2(Genzyme、ミュンヘン、FRG)の存在下、丸底マイクロタイタープレート(Corning)中の200μlのCM中、T細胞クローンIVSB(T. Wolfel博士、ユニバーシティー・オブ・マインツ、FRGの好意により提供された)の10細胞とともに培養した。
【0156】
細胞障害性のCD8T細胞クローンは、HLA−A0201分子と複合体を形成した上記チロシナーゼペプチドを特異的に認識した(19)。40時間後に放出されたTNF−αをELISAにより(R & D Systems、ミネアポリス、米国)上澄み液中で決定した。図4Aから明らかなように、精製した細胞は1×10のT細胞を種々の数の同種APCとともに培養したときに同種MLRを有効に誘発した。M−DC8細胞は同時に試験した単球に比べて少なくとも5倍有効であることがわかった。自己MLRの誘発はDCの特徴的な性質であると考えられるので、単離したM−DC8細胞を自己T細胞とともに培養した。図4Bが示すように、自己T細胞は用量依存的な仕方で刺激された。しかしながら、絶対的な値は自己MLRでは同種MLRに比べてはるかに低かった。同じ条件下でアッセイしたときに、CD14単球は下限に近いT細胞反応性しか示さなかった。
【0157】
実施例4:想起(recall)抗原およびネオ抗原(neoantigen)に対するT細胞の活性化
図4Cは、M−DC8細胞が破傷風毒素(TT)ワクチン接種したドナーから得たT細胞に対してTTを非常に有効に提示したことを示している。1×10のT細胞中で既に600のM−DC8細胞が破傷風特異的なT細胞活性化を誘発することができた。同時に試験したときに、単球では約2500の単球が同じレベルのT細胞増殖を得るのに必要であった。CD14単球とは対照的に、M−DC8細胞はキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)に対してインビトロで顕著な一次T細胞応答を誘発した(図4D)。
【0158】
実施例5:細胞障害性T細胞クローンの活性化
CD4Tリンパ球を活性化する能力に加え、DCはクラスI提示内生ペプチドによりCD8Tリンパ球を刺激するうえでも枢要である17,18。M−DC8細胞がCD8T細胞にMHCクラスI結合ペプチドを提示する能力は、まず黒色腫患者に由来しHLA−A0201分子上のチロシナーゼ由来ペプチドを認識する細胞障害性T細胞クローン(IVSB)で示された19。刺激のため、M−DC8細胞およびHLA−A0201陽性血液ドナーからの単球を、クローニングT細胞を添加する前に該ペプチドとともに一夜プレインキュベートした。48時間後、分泌されたTNF−αを測定することにより細胞障害性クローンの応答を決定した。図5に示すように、M−DC8細胞はペプチドパルスした単球と同じくらい有効にクローニングTリンパ球に対して該ペプチドを提示した。
【0159】
実施例6:アロ抗原特異的な細胞障害性CD8T細胞の誘発
M−DC8細胞がCD8細胞障害性T細胞をインビトロで初回抗原刺激する能力を決定するため、M−DC8細胞を未分離の同種T細胞かまたは精製同種CD8Tリンパ球とともに培養した。CD8Tリンパ球の抗原特異的な初回抗原刺激は、51Cr標識した同種PHA芽球細胞(blasts)の溶解により評価した。精製T細胞または単離したCD8T細胞(1×10)をスティミュレーター細胞としての5×10の同種M−DC8細胞または単球とともに24ウエルCostarプレート(Costar、ハイデルベルグ、FRG)中の全容量2mlのCM中にて培養した。7日後、細胞を回収し、洗浄し、ついでスティミュレーターの51Cr標識したPHA芽球細胞に対する細胞障害活性、およびリスポンダー由来の51Cr標識したPHA芽球細胞に対する細胞障害活性について試験した。培養の最後の24時間の間にrhIL−2(Genzyme)を25U/mlの濃度で加えた。PHA芽球細胞を生成するため、1×10のPBMCを2mlのCM中の1μl/mlのPHA(Gibco)で3日間刺激した。
【0160】
ついで、細胞を25U/mlのhrIL−2(Genzyme)の存在下でさらに1日間培養した。洗浄後、1×10の細胞を100μlのFCS中に再浮遊させ、100μCiの51Cr(クロム酸ナトリウム、比活性440mCi/mg、DuPont)を37℃にて1時間かけて加えた。アロ抗原刺激したTリンパ球の細胞障害活性を、マイクロタイタープレート中の200μlのCM中で種々の数のエフェクター細胞を5×1051Cr標識PHA芽球細胞とともに37℃で4時間インキュベートすることにより決定した。細胞をスピンダウンし(spun down)、ガンマシンチレーションカウンター(Packard、ドライアイヒ、FRG)で放射能を決定するために100μlの上澄み液を取り出した。標識細胞からの最大の放出を3回の凍結および解凍の後に決定した。
【0161】
比細胞障害活性は式:
比溶解(パーセント)=100×[(試験放出(cpm)−自然放出(cpm))/(最大放出(cpm)−自然放出(cpm))]
に従って計算した。図6Aは、M−DC8細胞および単球が未分離のTリンパ球とともに培養したときに同じ効率でアロ抗原特異的な細胞障害性T細胞を誘発することを示している。しかしながら、M−DC8細胞は、精製した同種CD8Tリンパ球とともに培養したときに単球に比べてアロ特異的な細胞障害性エフェクター細胞を活性化するうえではるかに有効であった(図6B)。
【0162】
実施例7:腫瘍特異的な細胞障害性T細胞の誘発
M−DC8細胞が腫瘍由来ペプチドに対して細胞障害性T細胞を初回抗原刺激する能力を試験するため、健康なドナーおよびHLA−A0201抗原を発現する黒色腫患者のPBMCを、このHLAクラスI分子に結合することが知られているチロシナーゼ由来ペプチドYMDGTMSQVを積載した自己M−DC8細胞で4回連続して刺激することにより活性化した。誘発したT細胞の特異性の決定は、HLA−A0201抗原を発現するペプチド積載T2細胞の溶解およびチロシナーゼ発現メラノーマ細胞との接触後のTNF−αの放出の両者により行った。
【0163】
新たに単離したM−DC8細胞を血清不含培地中、37℃にて4時間、50μg/mlのチロシナーゼ由来ペプチドYMDGTMSQVおよび3μg/mlのヒトβ2−ミクログロブリン(Sigma)を負荷した。洗浄後、2×10のペプチド積載M−DC8細胞を24ウエル組織培養プレートのウエル当たり2mlのCM中、2×10の自己PBMCとともに培養した。3日後、培地に25U/mlのrhIL−2(Genzyme、ミュンヘン、FRG)を補充した。1週間後、リスポンダー細胞を回収し、洗浄し、1×10細胞/ウエルにて分配し、ついでチロシナーゼペプチドを積載した1×10の新たに調製したM−DC8細胞で再刺激した。再刺激を2週間および3週間後に繰り返した。
【0164】
1週間後、ペプチドを積載し51Cr標識したT2標的細胞の溶解かまたはチロシナーゼ発現メラノーマ細胞との接触後のTNF−αの放出の決定のいずれかにより細胞障害活性を試験した。T2細胞(ATCC、ロックビル、メリーランドより入手)を100μg/mlのチロシナーゼ由来ペプチドとともに一夜インキュベートし、洗浄し、1×10の細胞を100μCiの51Crで37℃にて1時間標識した。洗浄後、細胞を丸底マイクロタイタープレートのウエル当たり5×10にて植え付け、種々の濃度の細胞障害性エフェクター細胞とともに4時間インキュベートした。比溶解を上記のようにして決定した。TNF−α放出試験については、1×10のペプチド刺激細胞を25U/mlのrhIL−2の存在下、200μlのCM中、37℃にて2×10の培養メラノーマ細胞とともにインキュベートした。24時間後、放出されたTNF−αをELISA(R & D Systems、ヴィーズバーデン、FRG)により上澄み液中で決定した。
【0165】
図7は、健康なドナーおよび黒色腫患者からのPBMCで得られた代表的な実験のデータを示す。両ドナーからのPBMCはペプチド特異的な細胞障害活性を誘発することができた。ペプチド認識の特異性は、チロシナーゼペプチドを添加しないT2標的細胞も制限HLA−A0201アレルを欠如する突然変異メラノーマ細胞株SK29−Mel1.22のいずれも生成した細胞障害性エフェクター細胞を活性化することができなかった対照実験により得られた。細胞障害活性が真実、CD8T細胞によって引き起こされたことは、CD8T細胞の選択的なイムノマグネチック除去によって細胞障害活性が完全に排除されたことにより示された。
【0166】
実施例8:抗体M−DC8の可変領域(VおよびV)のクローニング
モノクローナル抗体M−DC8の可変領域VおよびVを、Orlandiら(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86(1989),3833-3837)の記載に従い、対応ハイブリドーマ細胞株(DSM ACC224)の全RNAからクローニングした。VおよびVのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を図9および図10に示す。
【0167】
実施例9:M−DC8陽性樹状細胞(M−DC8細胞)と従来のCD14陽性樹状細胞(DC)との比較
免疫単離法を用い、モノクローナル抗体M−DC8(受託番号:DSM ACC2241にて寄託してある)を用いて単離したDCを、抗CD14モノクローナル抗体を用いて単離した単球由来DCと、エンドサイトーシス能および抗原提示細胞に特徴的な表面マーカーの発現に関して比較した。
【0168】
M−DC8陽性細胞を、バフィーコート(5〜8×10PBMC)当たりハイブリドーマ細胞株M−DC8(DSM ACC2241)からの30μlの上澄み液を用いてヒト末梢血単核細胞(PBMC)から単離した。すべての実験において、同じ健康なドナーから得たサンプルを用いた。ラット抗マウスIgMをコーティングしたマグネチックビーズ(ともにMiltenyi l.ベルギッシュ・グラードバッハ、ドイツ)[Werden die "beads" mit diesen IgM beladen order werden sie so gekauft? Wurde ein sog. "sandwich bead" hergestellt?]により細胞を回収した。
【0169】
新たに単離したM−DC8陽性細胞を、2mM L−グルタミン、1%非必須アミノ酸、1%ピルビン酸、50μg/mlのカナマイシン(すべてGibco)、50μM 2−メルカプトエタノール(Merck)、10%ウシ胎仔血清(FCS;HyClone Laboratories)、50ng/mlのGM−CSF(Leucomax; Novartis)および1000U/mlのヒト組換えIL−4(Basel Institute for Immunology)を補充したRPMI培地中で3×10/mlにて7日間培養した。従来のDCは、マグネチックマイクロビーズに結合させた抗CD14抗体(Miltenyi l.ベルギッシュ・グラードバッハ、ドイツ)を用い、本質的に記載に従って(Sallusto, J.Exp.Med.179(1994),1109-1118)ヒト末梢血単核細胞から単離した。CD14細胞(〜99%純度)をM−DC8陽性細胞について上記で記載したのと同様にして培養した。Salmonella abortus equi(Sigma)からの1μg/mlのリポ多糖(LPS)を40時間かけて添加することによりDC成熟を誘発させた。
【0170】
DCは抗原捕捉のために2つの特別の機構:マンノースレセプター系およびマクロピノサイトーシスを有する(Sallustoら、J.Exp.Med.182(1995),389-400)。これら系は、DCがMHCクラスII区画中に巨大分子を取り込み、濃縮することを可能にする。マクロファージとは対照的に、DCは非常に高くかつ構成的な(constitutive)レベルのマクロピノサイトーシスを示す。他のすべての細胞型では表面分子は選択的な分子フィルターとして機能する被覆壁孔(pits)を介して嵌入されるが、DCではすべての表面分子は主としてマクロピノサイトーシス(非選択的なプロセスである)を介して嵌入される。
【0171】
培養したM−DC8細胞と従来のDCとのエンドサイトーシス能を、2つの古典的なマーカー:ルシフェールイエローCH(LY;カリウム塩;Molecular Probes Inc.、オイゲネ、OR)およびリジン固定(fixable)FITC−デキストラン(FITC−DX;Molecular Probes Inc.)を用いて調べた。両マーカーは、FACS分析により単一細胞レベルでの取り込みの定量を可能にする。細胞を25mM HEPESで37℃にて緩衝した10%FCS培地中に再浮遊させた。FITC−DXまたはLYを最終濃度1mg/mlにて30分間かけて添加した。細胞を1%FCSおよび0.01%NaNを含有する冷PBSで4回洗浄し、死んだ細胞を排除するためにプロピジウムヨーダイド(propidium iodide)を用いてFACScan(Becton Dickinson)で分析した。バックグラウンド(0℃でパルスした細胞)を差し引いた。M−DC8細胞は従来のDCに比べて流動相の取り込み活性が2倍であったが(図11、左のパネル)、マンノースレセプターを介したFITC−DXの取り込みは匹敵するレベルであった(図11、右のパネル)。
【0172】
M−DC8陽性細胞および従来のDC上での抗原提示細胞に特徴的な細胞表面マーカーの発現をFACSにより分析した。マウスモノクローナル抗体を用い、ついでFITC−またはPE−コンジュゲートしアフィニティー精製したイソ型特異的ヤギ抗マウス抗体(Southern Biotechnology Associates、バーミンガム、AL)を添加して、細胞表面染色を行った。以下のモノクローナル抗体を用いた:W6/32(IgG2a、抗HLAクラスI;Basel Inst. of Immunologyより入手);HB55(IgG2a、抗HLAクラスII;Basel Inst. of Immunologyより入手);IT2.2(IgG2b、抗B7.2;Pharmingenより入手)およびM−DC8 IgMモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞株からの上澄み液。
【0173】
図12に示すように、新たに単離したM−DC8陽性細胞は、新たに単離した従来のCD14陽性DC先駆細胞に匹敵するレベルのHLAクラスIおよびクラスIIおよびコスティミュラトリー分子B7.2の発現を示した。唯一の違いは、従来のDC先駆細胞からはM−DC8抗原が存在しないことであった。GM−CSFおよびIL−4の存在下で7日間培養した後、M−DC8陽性細胞は有意に上昇したレベルのHLAクラスIおよびクラスII分子並びにB7.2の表面発現を示した(図13、A、上側のパネル)。従来のDCもまたこれら4つの分子の発現の増大を示したが、M−DC8陽性細胞で観察されたレベルには達しなかった(図13、A、下側のパネル)。
【0174】
LPSで40時間刺激すると、HLAクラスIおよびII発現のさらなる増大がM−DC8陽性細胞および従来のDCの両者で認められた(図13、B)。再び、DC8陽性細胞はより高いレベルのHLA発現に達した。最も劇的であったのは、LPSに応答したB7.2表面発現の増大であった。以上をまとめると、これらのデータは、M−DC8陽性DCが従来の単球由来DCに匹敵するマンノースレセプターを介したエンドサイトーシス能および従来のDCよりも優れたミクロピノサイトーシス能を有することを示している。同様に、M−DC8陽性DCは、非刺激およびLPS誘発の両条件下で従来のDCを上回る抗原提示分子およびT細胞コスティミュラトリー分子の表面発現レベルを有する。これらデータは、モノクローナル抗体mDC8が、ヒト血液から免疫応答の誘発のための抗原の取り込みおよび提示の非常に高い能力を有する細胞集団を単離することができることを示している。
【0175】
実施例10:M−DC8抗原を発現するJurkat T細胞リンパ腫サブクローンの確立
Jurkatは、もともとヒトT細胞リンパ腫に由来する細胞株である。図14に示すように、これら細胞は通常、M−DC8によって認識される抗原を発現しない(上側のパネル、左上の四分円)。しかしながら、極めて少数の細胞(<1%)がM−DC8と反応するのが認められた(左上側の四分円中の2つのM−DC8陽性細胞を参照)。これら細胞をM−DC8モノクローナル抗体を用いた複数回のセルソーティングおよび引き続く増殖により単離した。最終的に、M−DC8抗原を高レベルで安定に発現するJurkatTリンパ腫細胞のサブクローンを確立することができた(図14、左下側のパネル)。同様に、M−DC8陽性細胞を除去することにより、M−DC8発現細胞を本質的に欠如しているJurkatサブクローンが確立された(図14、右下側のパネル)。これら2つのJurkatサブクローンを用い、M−DC8抗原並びに該M−DC8抗原を認識する他のモノクローナル抗体を特徴付けた(以下の実施例12を参照)。
【0176】
実施例11:モノクローナル抗体M−DC8によって認識される抗原の特徴
M−DC8モノクローナル抗体によって認識される抗原は、膜タンパク質のポリペプチド構造かまたは炭水化物残基のいずれかである。炭水化物構造は、膜タンパク質の細胞外ドメインかまたは脂質二重層に組み込まれた成分である糖脂質のいずれか、またはその両者に結合していることが考えられる。この問題を調べるため、M−DC8 IgMの結合について脂質を分析した。これら脂質を細胞膜(M−DC8陰性かまたはM−DC8陽性のいずれかである上記Jurkatサブクローンから単離した)から抽出した。
【0177】
Jurkat細胞(3〜5×10)を遠心分離により回収し、PBS中で3回洗浄し、15mlの1:2クロロホルム/メタノール中で5分間超音波処理した。2000×gで10分間遠心分離した後、上澄み液を回収し、細胞ペレットを15mlのクロロホルム/メタノールで2回再抽出した。プールした抽出物を真空乾燥させ、50mlのKCl 0.88%中に再懸濁した。懸濁液を2.8×10cm C18カラム(Bakerbond)に負荷した。50mlのKCl溶液で洗浄し、200mlの蒸留水で脱塩(de-sulfing)した後、脂質を250mlのエタノールで溶出した。真空乾燥した溶出液を5mlのクロロホルム/メタノール中に溶解した。1mlの水を加え、攪拌した後、下層を1mlの水で再抽出し、コンバインした上層(膜脂質を含有する)を真空下で還元し(reduced)凍結乾燥した。
【0178】
脂質抽出物の1%アリコートを2.5×10cm HPLCプレート(Merck Si 60)上に負荷し、溶媒としてクロロホルム/メタノール/水(120:70:17(容量))を0.02%塩化カルシウムとともに用いて35分間展開した。ウエスタンブロッティングと同様にして、記載に従い(Bethkeら、J.Immunol.Methods 89:111-116,1986)クロマトグラムをM−DC8抗体と反応させた。結合したM−DC8 IgMをアルカリホスファターゼ(AP)コンジュゲートヤギ抗マウスIgM(μ鎖)(Caltag)により検出した。M−DC8は、M−DC8陽性のJurkatサブクローンでのみ得られた2つの区別される脂質バンドと反応した(図15、第一のレーン)。これら2つのバンドは、M−DC8陰性のJurkatTリンパ腫細胞から抽出された脂質を含んでいなかった。これら細胞では非常にマイナーな別個に移動するバンドのみが検出された(図15、第二のレーン)。脂質の脂肪酸残基は通常、免疫原性を呈しないので、これら2つの脂質種とのM−DC8の免疫反応性はその炭水化物残基によるものと思われた。
【0179】
M−DC8 IgMによって認識される炭水化物残基がポリペプチド上にも存在するか否かを調べるため、組み込まれた膜タンパク質を記載に従って(Pasqualら、Electroporesis 18:2573-2581,1997)M−DC8陽性およびM−DC8陰性のJurkat細胞から調製した。調製した膜タンパク質をSDS−PAGEに供し、ついでモノクローナル抗体M−DC8を用いてウエスタンブロッティングを行った。結合したIgMの検出はAP−コンジュゲートヤギ抗マウス抗μ抗体(Biosource)により行った。M−DC8はウエスタンブロッティングにおいて幾つかのポリペプチドのバンドを認識した(図16、レーン1)。このことは、M−DC8抗原がM−DC8陽性のJurkat細胞の種々の組み込まれた膜タンパク質上にも存在し得ることを示している。そのようなシグナルは、M−DC8陰性のJurkat T細胞では得られなかった(図16、レーン2)。
【0180】
M−DC8と免疫反応性であったバンドの一つは、抗P−セレクチン糖タンパク質リガンド1(PSGL−1)抗体(Pharmingen)を用い、ウエスタンブロッティングによりPSGL−1として同定された。PSGL−1は多くのリンパ球細胞型で認められるポリペプチドであり(Yangら、Thromb.Haemost.81:1-7,1999)、M−DC8陽性およびM−DC8陰性のJurkat細胞上に同様の量で存在していた(図16、レーン3およびレーン4)。M−DC8陽性PSGL−1と同一のシグナルは、ヒトPBMCからM−DC8により単離した樹状細胞からの膜タンパク質をウエスタンブロッティングにより分析したときに得られた(図16、レーン5)。SDS−PAGEでのPSGL−1バンドのぼやけた形状は、その知られた高炭水化物含量のためである。
【0181】
以上をまとめると、これらデータは、M−DC8抗原がM−DC8陽性JurkatサブクローンおよびヒトM−DC8陽性樹状細胞の糖脂質および組み込まれた膜タンパク質上に存在する炭水化物構造であることを示している。樹状細胞およびM−DC8陽性Jurkat細胞上のM−DC8炭水化物抗原に対する一つの主要な担体タンパク質はPSGL−1として同定された。
【0182】
実施例12:新規な樹状細胞特異的モノクローナル抗体の生成
D−DC8.1およびD−DC8.2と称する新規なモノクローナル抗体を、M−DC8陽性JurkatTリンパ腫サブクローンからの膜調製物か(D−DC8.1について)または完全なM−DC8陽性Jurkat細胞を用いて(D−DC8.2について)Balb/c × C57B1 F1マウスを免疫することにより生成した。細胞質膜の調製を、標準法を用い(Pasqualら、Electrophoresis 18:2573-2581,1997)、細胞の低浸透圧溶解、ついで細胞の機械的破砕、連続的な遠心分離および膜の洗浄および炭酸ナトリウムで処理することによる周縁膜タンパク質の除去により行った。マウスに150μgの等価量の膜タンパク質(D−DC8.1について)または1〜2×10細胞(D−DC8.2について)を3〜4週間の間隔で5回の腹腔内注射により注入した。最後の注射の3日後に脾臓細胞を調製し、M−DC8について記載したようにX63Ag8.653と融合させた。得られた抗体はともにIgMクラスのものであった。
【0183】
これら2つのモノクローナル抗体D−DC8.1およびD−DC8.2がM−DC8と同じ樹状細胞の集団を認識するか否かを調べるため、ヒトPBMCの二重免疫蛍光染色の後にヒトPBMCをFACSにより分析した。示したすべての実験には同じ健康なドナーを用いた。図17に関し、ヒトPBMCを、細胞表面マーカーCD14(左のパネル)、HLA−DR(中央のパネル)またはCD16(右のパネル)(すべてPharmingenから得た)を認識する抗体とともにモノクローナル抗体M−DC8(上の列)、D−DC8.1(中央の列)またはD−DC8.2(下の列)で二重染色した。IgMモノクローナル抗体の検出は、ヤギ抗マウスフィコエリトリン(PE)標識抗μ二次抗体(Immunotech)により行った。
【0184】
図17においてFACSスキャンの右上の四分円に認められるように、D−DC8.1およびD−DC8.2はともにモノクローナル抗体M−DC8によって認識されたのと極めて類似の量のPBMCを認識した。これら細胞は、HLA−DR(図17、中央のパネル)およびCD16(右のパネル)の発現は高いが、CD14(左のパネル)の発現は低いという点で共通であった。このことは、D−DC8.1およびD−DC8.2がともに頻度並びにHLA−DR、CD16およびCD14の細胞表面発現に関して、M−DC8によって認識されるものと極めて類似の特徴を有するPBMCの別個のサブセットを認識したことを示している。3つの抗体はすべて、本明細書においてM−DC8樹状細胞として言及するDCのクラスを認識すると思われる。
【0185】
モノクローナル抗体D−DC8.1およびD−DC8.2がともにM−DC8抗原を認識することを実証するため、これら抗体をM−DC8陰性およびM−DC8陽性Jurkatサブクローンへの結合について試験した。両抗体はM−DC8陰性のJurkat細胞には有意に結合しなかったが(図18、左のパネル、左上の四分円)、M−DC8陽性のJurkat細胞にはともに強く反応した(右のパネル)。
【0186】
要約すると、これら結果は、M−DC8抗原(新規なクラスの樹状細胞に特徴的である)は少なくとも2つの他のモノクローナル抗体D−DC8.1およびD−DC8.2によって認識され得ることを示している。
【0187】
参照文献
【表2】

【0188】
【表3】

【0189】
【表4】

【0190】
【表5】

【0191】
【表6】

【0192】
【表7】

【0193】
【表8】

【0194】
【表9】

【図面の簡単な説明】
【0195】
【図1】M−DC8細胞の頻度、サイズおよび顆粒度。赤血球の溶解およびモノクローナル抗体M−DC8とそれに続くフィコエリトリンコンジュゲート抗Ig抗体による染色後のヒト末梢血血球のフローサイトメトリー分析(A)。各四分円中の数字は細胞のパーセントを示す。ゲートを開いた(gated)M−DC8細胞の散乱プロフィルを(B)に示す。比較のため、(C)はゲートを開いていない(ungated)白血球の散乱プロフィルを示す。
【0196】
【図2】M−DC8細胞上の細胞系列特異的なおよびDCに関連する表面マーカーの発現およびM−DC8細胞のイムノマグネチック単離の効率の分析。M−DC8細胞の二重免疫蛍光染色を、PBMC(A、EおよびG)、T細胞涸渇PBMC(B−D)、T細胞およびB細胞涸渇PBMC(F)または精製M−DC8細胞(H)上で行った。細胞内p55抗原の検出のため(E)、未分離のPBMCをM−DC8抗原に対して染色し、パラホルムアルデヒドで固定し、サポニンで透過性にし、ついでp55特異的モノクローナル抗体で標識した。CD83抗原はT細胞およびB細胞涸渇PBMC上で示され、M−DC8モノクローナル抗体およびCD83モノクローナル抗体で同時に染色しながら48時間培養した(F)。マグネチックセルソーティングによるPBMCからのM−DC8細胞の単離前後のM−DC8細胞およびHLA−DR細胞の頻度を(G)および(H)に示す。結果は20人(A−D、GおよびH)および5人(EおよびF)の異なるドナーを表すものである。各四分円中の数字は細胞のパーセントを示す。
【0197】
【図3】M−DC8細胞の形態および食作用活性。上側のパネルでは、単離直後(A)およびインビトロで48時間培養後(B)の精製M−DC8細胞のサイトスピンを示す。下側のパネルはラテックスビーズを食作用した後(C)または抗体コーティングSRBCを食作用した後(D)のM−DC8細胞を示す。光学顕微鏡のため、細胞をMay-Gruenwald/Giemsa染色した(A、BおよびD、倍率×100)。(C)では細胞をゼラチンに包埋した後、共焦レーザースキャニング顕微鏡に供した。
【0198】
【図4】M−DC8細胞によるT細胞の刺激。精製T細胞(1×10)を外来可溶性抗原の存在下(C、D)または不在下(A、B)で段階的な数のM−DC8細胞(黒丸)かまたはCD14単球(白丸)とともに培養した。(A)、同種APC;(B)、自己由来APC;(C)、TT(5μg/ml)の存在下での自己由来APC;(D)KHL(1μg/ml)の存在下での自己由来APC。5日後(A、C)または7日後(B、D)にT細胞の増殖をH−チミジン取り込みにより決定した。(C)および(D)において可溶性抗原の不在下でのT細胞増殖の値を全cpmから差し引いた。図示した値は3つのサンプルの平均値を表す。SEMは<15%であった。(A)、(B)および(C)に示す結果は6つの独立した実験を表し、(D)は3つの異なる実験を表す。
【0199】
【図5】ペプチドを積載したM−DC8細胞およびCD14単球によるCTLクローンの刺激。M−DC8細胞およびCD14単球をチロシナーゼ由来ペプチド(100μg/ml)で一夜パルスし、ついでチロシナーゼ特異的なクローニングCTLとともにさらに40時間培養した。T細胞の活性化を、3つの培養の上澄み液に分泌されたTNF−αを決定することによりアッセイした。縦列は3つの個々の値の平均であり、足し算で表してある。
【0200】
【図6】アロ抗原特異的細胞障害性Tエフェクター細胞の誘発。未分離のTリンパ球(A)および精製CD8Tリンパ球(B)を同種M−DC8細胞(黒丸)またはCD14単球(白丸)とともに7日間培養した。Tリンパ球を4時間クロム放出試験において51Cr標識スティミュレータータイプPHA芽球細胞に対して試験した。
【0201】
【図7】チロシナーゼ由来ペプチドに特異的な細胞障害性エフェクター細胞の誘発。健康なドナーおよび黒色腫患者からのPBMCを、精製自己由来M−DC8細胞により提示されるチロシナーゼ由来ノナマー(9量体)ペプチドに対して4回の連続的な刺激により活性化した。(A)エフェクター/標的細胞比 40:1でのペプチドを積載した51Cr標識T2細胞の特異的溶解。(B)チロシナーゼを欠くまたは発現する黒色腫細胞と接触した後にエフェクター細胞により放出されるTNF−α(E/T比 1:2)。棒は3つの決定の平均値を示し、SEMは<15%であった。
【0202】
【図8】表面マーカー発現に基づいて特徴付けた種々のヒト血液DCサブセットの概要。
【0203】
【図9】モノクローナル抗体DC8の可変領域の重鎖(VH)をコードするcDNAのヌクレオチド配列(配列番号1)およびそれから導かれる1文字コードでのアミノ酸配列(配列番号2)。番号は、示したトリプレットの3'末端のヌクレオチド配列位置を指している。配列の5'末端および3'末端を示してある。
【0204】
【図10】モノクローナル抗体DC8の可変領域の軽鎖(VL)をコードするcDNAのヌクレオチド配列(配列番号3)およびそれから導かれる1文字コードでのアミノ酸配列(配列番号4)。番号は、示したトリプレットの3'末端のヌクレオチド配列位置を指している。配列の5'末端および3'末端を示してある。
【0205】
【図11】mDC8陽性細胞(黒い棒)と従来のDC(斜線を付した棒)とのエンドサイトーシス能の比較。マイクロピノサイトーシスを、ルシフェールイエローを用いたFACS(LY取り込み;左のパネル)およびFITCコンジュゲートデキストランによるマンノースレセプターにより媒体された取り込み(FITC−DX;右のパネル)により測定した。FACS分析からの結果を定量化し、平均蛍光強度(MFI)として表した。
【0206】
【図12】新たに単離したmDC8陽性細胞(上側のパネル)と従来のDCの前駆細胞(CD14由来;下側のパネル)の間の細胞表面分子発現能の比較。FACS分析からのヒストグラムプロットを示す。第一のヒストグラムは二次抗体単独で得られた。y軸は細胞数を示す;x軸は蛍光強度を示し、細胞表面発現レベルの測定値である。表面抗原の名称の下の数字は、計算した平均蛍光強度を与えている。
【0207】
【図13】培養したmDC8陽性細胞(上側のパネル)と従来のDCの前駆細胞(CD14由来;下側のパネル)の間の細胞表面分子発現能の比較。A.GM−CSFおよびIL−4のみの存在下で7日間培養した細胞;B.第5日目のGM−CSF/IL−4培養を1μg/mlのLPSで40時間刺激した細胞。FACS分析からのヒストグラムプロットを示す。第一のヒストグラムは二次抗体単独で得られた。y軸は細胞数を示す;x軸は蛍光強度を示し、細胞表面発現レベルの測定値である。表面抗原の名称の下の数字は、計算した平均蛍光強度を与えている。
【0208】
【図14】モノクローナル抗体M−DC8によって認識される抗原を発現するまたは発現しないJurkat Tリンパ種細胞サブクローンの確立。Jurkat T細胞をM−DC8 IgMでの染色およびPEコンジュゲート抗IgM抗体での検出後のFACSにより分析した(y軸)。通常のJurkat T細胞(上側のパネル)は極めてわずかしかM−DC8陽性細胞を有しない(左上側の四分円)。これら細胞を単離し、多くの回数の選択を行って増殖させ、M−DC8を高度に発現するサブクローンとした(左下側のパネル)。実質的にM−DC8陽性細胞を示さないJurkat細胞のサブクローン(右下側のパネル)を、M−DC8抗体で修飾したマグネチックビーズを用いてM−DC8陽性細胞を涸渇させることにより単離した。
【0209】
【図15】M−DC8抗原を発現するJurkatから抽出した糖脂質へのモノクローナル抗体M−DC8の結合。脂質は、M−DC8抗原を高度に発現するか(レーン1)または該抗原を発現しない(レーン2)Jurkatサブクローンから抽出した。脂質を薄層クロマトグラフィーにより分離し、クロマトグラムをM−DC8IgMでプローブし、二次抗IgM抗体により検出した。脂質によるウエスタンブロッティングを示す。M−DC8 IgMと免疫応答反応する2つの脂質の位置を矢印により示す。白丸はM−DC8陰性細胞からのマイナーなバンドを記録したものである。
【0210】
【図16】モノクローナル抗体M−DC8と免疫反応する膜タンパク質の特徴付け。組み込まれた(integral)膜タンパク質を、M−DC8陽性Jurkat細胞(レーン1および3)、M−DC8陰性Jurkat細胞(レーン2および4)およびヒトPBMCから単離したM−DC8陽性樹状細胞(レーン5)から調製した。ウエスタンブロッティングを示す。レーン1、2および5についてはフィルターをM−DC8 IgMでプローブし、二次抗IgM抗体により検出した。レーン3および4については糖タンパク質PSGL−1を認識する抗体を使用した。PSGL−1の位置(右)および3つのM−DC8陽性タンパク質の位置(左)を矢印で示す。200および116kDaの2つの分子量標準の位置を右側に示す。
【0211】
【図17】モノクローナル抗体D−DC8.1およびD−DC8.2により認識されるPBMCの特徴付け。同じドナーからのヒトPBMCを、CD14、HLA−DRまたはCD16に対する抗体および所定の3つのモノクローナル抗体で二重標識し、FACSにより分析した。二重に陽性の細胞は右上の四分円に認められる。
【0212】
【図18A】M−DC8抗原を発現するJurkatサブクローンへのモノクローナル抗体D−DC8.1およびD−DC8.2の結合。M−DC8抗原を発現するJurkatサブクローン(M−DC8)およびM−DC8抗原を発現しないJurkatサブクローン(M−DC8)をD−DC8.1およびD−DC8.2への結合について試験した。FACS分析を示す。モノクローナル抗体IgMをPEコンジュゲート抗IgM抗体により検出した(Y軸)。該モノクローナル抗体に結合する細胞を左上の四分円に示す。
【0213】
【図18B】M−DC8抗原を発現するJurkatサブクローンへのモノクローナル抗体D−DC8.1およびD−DC8.2の結合。M−DC8抗原を発現するJurkatサブクローン(M−DC8)およびM−DC8抗原を発現しないJurkatサブクローン(M−DC8)をD−DC8.1およびD−DC8.2への結合について試験した。FACS分析を示す。モノクローナル抗体IgMをPEコンジュゲート抗IgM抗体により検出した(Y軸)。該モノクローナル抗体に結合する細胞を左上の四分円に示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)末梢血単核細胞(PBMC)からの未熟および/または成熟樹状細胞(DC)の特性を表示するDC上のエピトープとは反応するが
(ii)他のPBMCとは反応しない
抗体であって、該DCがCD64、CD33、CD45RA、CD11c、p55およびCD16であることを特徴とする抗体。
【請求項2】
該DCが未熟DCと成熟DCとの間の成熟化段階のDC集団である、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
該DCがHLA−DRである、請求項1または2に記載の抗体。
【請求項4】
該DCが光散乱表示においてリンパ球と単球との間に位置する限定されたサイズおよび顆粒度を有する、請求項1ないし3のいずれかに記載の抗体。
【請求項5】
モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、二重特異性抗体、合成抗体、またはFab、Fv、scFvおよびF(ab')2よりなる群から選ばれた抗体断片である、請求項1ないし4のいずれかに記載の抗体。
【請求項6】
腫瘍細胞、ウイルス感染細胞、T細胞、腫瘍関連タンパク質または微生物タンパク質に特異的なエピトープを認識する、請求項5に記載の二重特異性抗体。
【請求項7】
該DCがハイブリドーマ細胞株DSM ACC2241によって、ハイブリドーマ細胞株DSM ACC2399によって、またはハイブリドーマ細胞株DSM ACC2398によって産生される抗体によって認識される、請求項1ないし6のいずれかに記載の抗体。
【請求項8】
ハイブリドーマ細胞株DSM ACC2241、DSM ACC2399またはDSM ACC2398によって産生される、請求項1ないし7のいずれかに記載の抗体。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかに記載の抗体を産生することができる、連続的で安定な抗体産生細胞株。
【請求項10】
ハイブリドーマ細胞株である、請求項9に記載の細胞株。
【請求項11】
受託番号DSM ACC2241、DSM ACC2399またはDSM ACC2398を有するハイブリドーマ細胞株である、請求項10に記載の細胞株。
【請求項12】
末梢血単核細胞(PBMC)からの未熟および成熟樹状細胞(DC)を認識することができる抗体またはFab、Fv、scFvおよびF(ab')2よりなる群から選ばれたその機能的断片の製造方法であって、
(a)請求項9、10または11のいずれかに記載の細胞を培養し、ついで
(b)該抗体、またはFab、Fv、scFvおよびF(ab')2よりなる群から選ばれたその機能的断片または免疫グロブリン鎖を培地から単離する
ことを含む方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法により得ることのできる、抗体、Fab、Fv、scFvおよびF(ab')2よりなる群から選ばれたその断片または免疫グロブリン鎖。
【請求項14】
(a)請求項1ないし8および13のいずれかに記載の抗体の免疫グロブリン重鎖および軽鎖の可変領域;および
(b)少なくとも一つのさらなるドメイン
を含むポリペプチド。
【請求項15】
該ドメインが共有結合または非共有結合により連結されている、請求項14に記載のポリペプチド。
【請求項16】
該少なくとも一つのさらなるドメインが、生物学的活性に適したコンホメーションを有するか、イオンを封鎖し得るか、または固相支持体もしくは前以て選択した抗原決定基に選択的に結合できるエフェクター分子を含む、請求項14または15に記載のポリペプチド。
【請求項17】
該エフェクター分子が、酵素、毒素、抗原、レセプター、結合部位、生合成抗体結合部位、成長因子、細胞分化因子、リンホカイン、サイトカイン、ホルモン、遠隔的に検出しうる残基、または抗代謝産物である、請求項16に記載のポリペプチド。
【請求項18】
該抗原が、腫瘍抗原、ウイルス抗原、微生物抗原、アレルゲン、自己抗原、ウイルス、微生物、ポリペプチド、ペプチドまたは複数の腫瘍細胞である、請求項17に記載のポリペプチド。
【請求項19】
イオンを封鎖しうる該分子が、カルモジュリン、メタロチオネイン、その断片、またはグルタミン酸、アスパラギン酸、リジンおよびアルギニンの少なくとも一つに富むアミノ酸配列である、請求項16に記載のポリペプチド。
【請求項20】
固相支持体に選択的に結合しうる該分子が、正または負に荷電したアミノ酸配列、システイン含有アミノ酸配列、ストレプトアビジン、Staphylococcusタンパク質Aの断片、GST、HisタグまたはLexAである、請求項16に記載のポリペプチド。
【請求項21】
該レセプターが、T細胞活性化に重要なコスティミュラトリー表面分子であるか、またはエピトープ結合部位もしくはホルモン結合部位を含む、請求項17に記載のポリペプチド。
【請求項22】
該コスティミュラトリー表面分子がCD80(B7−1)またはCD86(B7−2)である、請求項21に記載のポリペプチド。
【請求項23】
発現により請求項14ないし22のいずれかに記載のポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド。
【請求項24】
請求項23に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項25】
請求項23に記載のポリヌクレオチドまたは請求項24に記載のベクターでトランスフェクションした細胞。
【請求項26】
請求項14ないし22のいずれかに記載のポリペプチドの製造方法であって、請求項25に記載の細胞を培養し、ついで培養液からポリペプチドを単離することを含む方法。
【請求項27】
請求項1ないし3のいずれかに記載のDCを末梢血から単離または同定する方法であって、工程:
(a)末梢血のサンプルを請求項1ないし8のいずれかに記載の抗体と接触させ;
(b)抗体/DC複合体の存在を検出し;ついで/または
(c)該抗体またはFab、Fv、scFvおよびF(ab')2よりなる群から選ばれたその機能性の断片に結合した樹状細胞を回収する
を含む方法。
【請求項28】
請求項1ないし3のいずれかに定められ、請求項1ないし8のいずれかに記載の抗体によって認識され、または請求項27に記載の方法によって得ることのできる樹状細胞。
【請求項29】
組換え核酸分子を発現するように改変された、請求項28に記載の樹状細胞。
【請求項30】
活性化された抗原特異的ヒトT細胞をインビトロで製造する方法であって、T細胞を請求項28または29に記載の樹状細胞とともに培養することを含み、その際、該樹状細胞は、抗原に暴露されているかまたは抗原を発現して該抗原に応答して該T細胞が増殖または細胞障害性となるように活性化することを特徴とする、方法。
【請求項31】
該T細胞がCD4またはCD8細胞である請求項30に記載の方法。
【請求項32】
該樹状細胞が培地中でインキュベーションすることにより抗原に暴露される、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
該抗原が、腫瘍抗原、ウイルス抗原、微生物抗原、アレルゲン、自己抗原、ウイルス、微生物、ポリペプチド、ペプチドまたは複数の腫瘍細胞である、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
T細胞により認識されうる抗原の同定方法であって、
(a)該抗原に暴露された請求項28または29に記載の樹状細胞とともにT細胞を培養し、ついで
(b)T細胞の増殖、T細胞の細胞障害活性またはT細胞のリンホカイン産生を測定する
ことを含む方法。
【請求項35】
該T細胞がCD4またはCD8細胞である請求項34に記載の方法。
【請求項36】
該樹状細胞が培地中でインキュベーションすることにより抗原に暴露される、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
該抗原が、腫瘍抗原、ウイルス抗原、微生物抗原、アレルゲン、自己抗原、ウイルス、微生物、ポリペプチド、ペプチドまたは複数の腫瘍細胞である、請求項34に記載の方法。
【請求項38】
請求項34に記載の方法の工程、および工程(b)で同定した抗原を製薬学的に許容しうる形態に調合することを含む、医薬組成物の製造方法。
【請求項39】
T細胞を活性化するまたはコスティミュレートする化合物の同定方法であって、
(a)請求項28または29に記載の樹状細胞およびT細胞を、T細胞活性化に応答して検出可能なシグナルを生成しうる成分の存在下、スクリーニングしようとする化合物とともに該化合物と該細胞との相互作用を可能とする条件下にて培養し、ついで
(b)T細胞の活性化により生成したシグナルの存在を検出する
ことを含む方法。
【請求項40】
該樹状細胞が培地中でインキュベーションすることにより抗原に暴露される、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
該抗原が、腫瘍抗原、ウイルス抗原、微生物抗原、アレルゲン、自己抗原、ウイルス、微生物、ポリペプチド、ペプチドまたは複数の腫瘍細胞である、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
請求項39に記載の方法の工程、および工程(b)で同定した化合物を製薬学的に許容しうる形態に調合することを含む、医薬組成物の製造方法。
【請求項43】
T細胞活性化または刺激を抑制する化合物を同定する方法であって、
(a)T細胞および請求項28または29に記載の樹状細胞を、T細胞アクチベーターによる該T細胞の活性化に応答して検出可能なシグナルを生成しうる成分の存在下、スクリーニングしようとする化合物とともに該T細胞の活性化を可能とする条件下にて接触させ、ついで
(b)該アクチベーターとT細胞との相互作用により生成したシグナルの存在または不在を検出する
ことを含む方法。
【請求項44】
該樹状細胞が培地中でインキュベーションすることにより抗原に暴露される、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
該抗原が、腫瘍抗原、ウイルス抗原、微生物抗原、アレルゲン、自己抗原、ウイルス、微生物、ポリペプチド、ペプチドまたは複数の腫瘍細胞である、請求項43に記載の方法。
【請求項46】
請求項43に記載の方法の工程、および工程(b)で同定した化合物を製薬学的に許容しうる形態に調合することを含む、医薬組成物の製造方法。
【請求項47】
請求項1ないし8および13のいずれかに記載の抗体、請求項14ないし22のいずれかに記載のポリペプチド、請求項23に記載のポリヌクレオチド、請求項24に記載のベクター、請求項28または29に記載の樹状細胞、請求項30、31または35に記載の方法によって得られるT細胞または請求項32〜33、36〜38、40〜42、または44〜46のいずれかに記載の方法によって得られる化合物を含むキット。
【請求項48】
請求項23に記載のポリヌクレオチド、請求項24に記載のベクター、請求項28または29に記載の樹状細胞、請求項30、31または35に記載の方法によって得られるT細胞または請求項25に記載の細胞を含む非ヒトトランスジェニック動物。
【請求項49】
請求項1ないし8および13のいずれかに記載の抗体、請求項22に記載のポリペプチド、請求項23に記載のポリヌクレオチド、請求項24に記載のベクターまたは請求項25に記載の細胞および任意に検出に適した手段を含む診断用組成物。
【請求項50】
請求項28または29に記載の抗原に暴露された樹状細胞または抗原発現DCを含むワクチン。
【請求項51】
適合性の免疫療法用医薬組成物を調製するための請求項30〜33のいずれかに記載の方法により得られるT細胞の使用。
【請求項52】
ヒトまたは動物におけるT細胞活性化用医薬組成物を調製するための、抗原に暴露された請求項28または29に記載の樹状細胞の使用。
【請求項53】
該樹状細胞への標的細胞補充用医薬組成物を調製するための請求項4または5に記載の二重特異性抗体の使用。
【請求項54】
標的細胞が腫瘍細胞またはウイルス感染細胞または微生物に感染した細胞である、請求項53に記載の使用。
【請求項55】
サイトカインまたはシグナル伝達分子の遺伝子をトランスフェクションして免疫応答をインビトロで変調させることを含む、請求項1ないし4、7、28または29のいずれかに記載の樹状細胞の改変方法。
【請求項56】
T細胞の抗原特異的活性化を促進、変調または抑制する作用を有するDCにより合成される分子を同定する方法であって、
(a)請求項28に記載のDCによって培養上清中に分泌された分子を分離し、ついで富化したまたは単離した該分子を抗原特異的なT細胞活性化についてDCを欠く細胞培養系で試験し、ついで/または
(b)請求項28に記載のDCにおける遺伝子発現を他の抗原提示細胞での遺伝子発現と比較する
ことを含む方法。
【請求項57】
インビトロでDCを増殖させる方法であって、
(a)請求項28に記載のDCを、DCの増殖を支持する特定のサイトカイン混合物中で培養し、ついで/または
(b)形質転換遺伝子を形質導入することにより該DCを不死化する
ことを含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図13A】
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【図13B】
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【図13C】
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【図13D】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17A】
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【図17B】
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【図17C】
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【図18A】
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【図18B】
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【公開番号】特開2007−125012(P2007−125012A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−289998(P2006−289998)
【出願日】平成18年10月25日(2006.10.25)
【分割の表示】特願2000−548469(P2000−548469)の分割
【原出願日】平成11年5月11日(1999.5.11)
【出願人】(500522714)ミクロメット・アクチェンゲゼルシャフト (5)
【氏名又は名称原語表記】MICROMET AG
【Fターム(参考)】