説明

樹脂の分解生成物の回収方法

【課題】樹脂分解残渣を固体粒子搬送装置で燃焼させないで固体粒子を搬送し、樹脂の分解生成物の回収を安定して行う。
【解決手段】樹脂を固体粒子の存在下で加熱分解する分解槽、分解槽から排出される固体粒子と樹脂分解残渣を固体粒子加熱装置へ搬送する固体粒子搬送装置、固体粒子を加熱し、樹脂分解残渣を燃焼して除去する固体粒子加熱装置、及び樹脂の分解生成物を液体として回収する回収装置を具備する設備により樹脂を分解し、生成する分解生成物を回収する方法であって、固体粒子搬送装置内を不活性ガス雰囲気とする分解生成物の回収方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は樹脂を分解し、生成する分解生成物の回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂の分解方法として、固体粒子を媒体にした方法が知られている。樹脂を分解すると分解生成物の他、樹脂分解残渣が残る。樹脂分解残渣とは、低分子量化した樹脂、炭化物等の総称である。樹脂分解装置内を流動槽のように流動化させる場合、樹脂分解残渣は、固体粒子の流動性を阻害する要因であった。樹脂を安定的に分解するには、樹脂分解残渣を固体粒子から除去する必要があった。
【0003】
特許文献1は、廃プラスチックからの油回収方法において、固体状の熱分解残渣(炭素質)を残渣焼却手段で燃焼させる方法を開示している。しかしながら、この方法では、熱分解残渣混合物抜出しラインの中で固体状の熱分解残渣が燃焼し、熱分解残渣混合物抜出しラインの温度が上昇し、破損してしまう問題があった。
【0004】
特許文献2は、メタクリル酸メチルの解重合方法として、できる限り酸素を含有している高温のガスの流れと追加の燃料の少なくとも一方によって空気運搬ライン中で、熱伝達媒体を加熱する方法を開示している。この方法では、熱伝達媒体に混在する樹脂分解残渣(固体副産物)も、上昇管中で燃焼し、空気運搬ラインの温度が上昇し、破損してしまう問題があった。
【0005】
特許文献1、及び特許文献2で示される方法のように、砂などの固体粒子を搬送している過程で樹脂の分解残渣が燃焼すると、再加熱された固体粒子を分解槽に再度供給する前に冷えてしまいエネルギー効率が低下する、あるいは固体粒子搬送装置の温度が上昇し破損する、等の問題があった。
【0006】
特許文献3には、樹脂の分解生成物の回収方法に関して、固体粒子、流動化ガスにより樹脂を加熱分解し、得られる分解生成物を回収する方法が開示されている。しかしながら、分解槽と固体粒子加熱槽間の固体粒子の搬送方法におけるプロセスの安定運転性、エネルギー効率は十分でなく、これらの向上のための更なる改良が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−235563号公報
【特許文献2】特表2002−526466号公報
【特許文献3】国際公開第2008/108461号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、樹脂分解残渣を固体粒子搬送装置で燃焼させないで固体粒子を搬送し、樹脂の分解生成物の回収を安定して行うことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、樹脂を固体粒子の存在下で加熱分解する分解槽、分解槽から排出される固体粒子と樹脂分解残渣を固体粒子加熱装置へ搬送する固体粒子搬送装置、固体粒子を加熱し、樹脂分解残渣を燃焼して除去する固体粒子加熱装置、及び樹脂の分解生成物を液体として回収する回収装置を具備する設備により樹脂を分解し、生成する分解生成物を回収する方法であって、固体粒子搬送装置内を不活性ガス雰囲気とする分解生成物の回収方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の方法によれば、固体粒子搬送装置の破損の原因となる該装置内での樹脂分解残渣の燃焼が起きず、その先に設置された固体粒子加熱装置内で燃焼させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は本発明を実施するための設備の一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明で使用する設備を図1に示す。
【0013】
該設備は、樹脂を固体粒子の存在下で加熱分解する分解槽、分解槽から排出される固体粒子と樹脂分解残渣を固体粒子加熱装置へ搬送する固体粒子搬送装置、固体粒子を加熱し、樹脂分解残渣を燃焼して除去する固体粒子加熱装置、及び樹脂の分解生成物を液体として回収する回収装置を具備する。
分解槽1には、樹脂が配管11により、また固体粒子が配管12により供給される。分解槽内の流動を良好に保つためのガス(以下、「流動化ガス」という。)を供給することが好ましい。すなわち分解槽内の固体粒子及び樹脂は、流動化ガスにより流動化される。流動化ガスを供給する場合、配管13から供給される。流動化ガスとして樹脂分解の安定性確保や分解生成物の収率の観点から、酸素を実質的に含まないガスとすることが好ましい。流動化ガスとして使用できるガスの種類は、窒素、二酸化炭素、水蒸気等が挙げられる。流動化ガス中の酸素濃度は、樹脂分解の安定性確保、回収する液量の増加、あるいは回収される液体状の分解生成物の品質向上の観点から、3体積%以下とすることが好ましく、1体積%以下とするのがより好ましい。
【0014】
分解槽内の樹脂は、固体粒子の存在下で加熱分解する。
【0015】
分解槽からは固体粒子が固体粒子排出装置2により排出される。その排出された固体粒子は、固体粒子搬送装置3により、固体粒子加熱装置4に供給される。
【0016】
分解槽1として、流動槽、攪拌機を備えた攪拌槽、ロータリーキルン等が例示される。攪拌機の攪拌翼の形状は特に限定されず、パドル翼、リボン翼、ヘリカル翼、プロペラ翼、タービン翼が例示される。
【0017】
分解槽1には分散板を設けて分解槽内を上部の分解室と下部の分散室とに仕切ることが好ましい。前記分散板は流動化ガスを分散させるためのもので、多孔板、スリット板、焼結フィルター、ノズル、キャップ付きノズル等が挙げられる。
【0018】
固体粒子排出装置2から排出された固体粒子は固体粒子搬送装置3に供給される。固体粒子とともに樹脂分解残渣も排出される。固体粒子排出装置2としては特に限定されないが、定量排出の観点から、スクリュー式が好ましい。
【0019】
固体粒子排出装置2を経由した固体粒子は固体粒子搬送装置3に供給される。固体粒子搬送装置3は、固体粒子排出装置2により分解槽1から排出される固体粒子を固体粒子加熱装置4へ搬送する装置である。
【0020】
固体粒子搬送装置3としては特に限定されないが、定量搬送の観点から、スクリュー式及びコンベア式の少なくともいずれかであることが好ましい。コンベア式としてはバケットコンベア等が例示される。バケットコンベアとは、籠がチェーン等で連結された搬送装置である。
【0021】
固体粒子搬送装置内を不活性ガス雰囲気にする。不活性ガス雰囲気とは、実質的に酸素を含まない雰囲気をいう。不活性ガスの種類として、窒素、アルゴン、ヘリウム等が例示される。
【0022】
固体粒子搬送装置3内を不活性ガス雰囲気にすることにより該搬送装置内では樹脂分解残渣の燃焼を抑制することができる。
【0023】
固体粒子搬送装置3内の不活性ガス中の酸素濃度は樹脂の分解生成物の爆発限界酸素濃度以下とすることが好ましい。前記酸素濃度を爆発限界酸素濃度以下とすることにより、固体粒子搬送装置内での樹脂分解残渣の燃焼を防ぐことができるし、爆発を防ぐことができる。
【0024】
例えば、メタクリル酸メチルを含む樹脂を分解するとメタクリル酸メチルが生成するが、メタクリル酸メチルの爆発限界酸素濃度は8.9体積%である。
【0025】
固体粒子搬送装置3には、連続的に不活性ガスを供給することが好ましい。そのガスの種類として、窒素、アルゴン、ヘリウム、等が例示される。
【0026】
供給する不活性ガス中の酸素濃度は樹脂の分解生成物の爆発限界酸素濃度以下とすることが好ましい。
【0027】
固体粒子搬送装置3内の不活性ガス中の酸素濃度酸素濃度を爆発限界酸素濃度以下とする場合と同様、固体粒子搬送装置内での樹脂分解残渣の燃焼を防ぐことができるし、爆発を防ぐことができる。
【0028】
固体粒子搬送装置3に供給する不活性ガスの供給量Q1(Nm/hr)と、固体粒子の搬送量Q2(t/hr)との比Q1/Q2を0.5〜10とすることが好ましい。Q1/Q2を0.5以上とすることで樹脂分解残渣の燃焼を抑制することができる。Q1/Q2を10以下とすることで、不活性ガス量の無駄を省くことができる。ここでQ1(Nm/hr)は、大気圧、0℃に換算した時の1時間あたりの流量である。またQ2(t/hr)は、1時間あたりの質量(トン)である。
【0029】
固体粒子排出装置2にも、不活性ガスを供給しても良い。
【0030】
固体粒子加熱装置4において、樹脂分解残渣の燃焼と固体粒子の加熱を行う。
【0031】
分解槽1から排出される固体粒子には樹脂の分解残渣が混在している。樹脂分解残渣とは、低分子量化した樹脂や炭化物の総称である。樹脂分解残渣が混在した固体粒子をそのまま分解槽1に供給すると、分解槽内の流動性が低下するため、分解槽に固体粒子を供給する前に、樹脂分解残渣を除去しておくことが好ましい。前記樹脂分解残渣が混在した固体粒子は、固体粒子加熱装置4へ搬送され、そこで固体粒子を再加熱することができ、また樹脂分解残渣を燃焼させ除去することができる。
【0032】
固体粒子加熱装置4として、前記分解槽1と同様の流動槽、攪拌機を備えた攪拌槽、ロータリーキルン等が例示される。また分解槽1と同様の分散板を設けて分解槽内を上部の加熱室と下部の分散室とに仕切ることが好ましい。
【0033】
固体粒子加熱装置4で加熱された固体粒子は、配管12から分解槽1へ供給される。この際、固体粒子加熱装置4内の流動性を良好に維持する観点から、流動化ガスを供給しながら、固体粒子を加熱することが好ましい。流動化ガスは、例えば大気中から取り込んだ空気を使用することができる。
【0034】
固体粒子加熱装置4の加熱手段としては特に限定されないが、例えばバーナーを設置して、液体燃料や固体燃料を燃焼させることで熱風を発生させ、固体粒子を加熱することが挙げられる。
【0035】
前記の通り樹脂分解残渣の燃焼を固体粒子加熱装置4で行うことにより、安定な残渣の燃焼が可能となるし、再加熱した固体粒子が冷えることなく再度分解槽1に供給されるので、エネルギー効率が良くなる。
【0036】
循環利用の観点から、前記分解槽1に供給する流動化ガスと、固体粒子搬送装置3に供給するガスの種類は同じであることが好ましい。
【0037】
分解槽1からは、ガス状の樹脂分解生成物が配管18から排出され、回収装置5に供給される。回収装置5は冷却装置を含み、樹脂分解生成物を冷却することにより液体にして回収する。冷却装置として、スクラバー、管式熱交換器、プレート式熱交換器が例示される。回収装置は、コンデンサー以外に、ミスト回収装置、サイクロン、ダスト回収装置を有してもよい。回収装置で液体になった分解生成物は、配管19から排出され、容器6に回収される。回収装置で液化しなかった樹脂分解生成物は、処理された後、配管20から排出される。その処理方法として燃焼が例示される。
【0038】
分解槽1に流動化ガスを供給して流動化する場合には、使用する流動化ガス量の低減の観点から、回収装置5で分解生成物から分離される流動化ガスを再度、分解槽に供給することが好ましい。その場合、配管20と配管13が結合され、流動化ガスは循環して使用される。
【0039】
分解槽1や固体粒子加熱装置4で使用する固体粒子としては特に制限はないが、例えば、砂、セラミクス粒子、金属粒子、金属酸化物粒子、金属水酸化物粒子、金属ハロゲン化物粒子等が挙げられる。これら固体粒子は1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を混合して使用してもよい。
【0040】
また、固体粒子は、樹脂の分解に不活性なものであってもよいし、樹脂の分解を促進するような触媒となるものであってもよい。さらに、樹脂から生成する有害な物質を吸収するようなものであってもよい。例えば、ポリ塩化ビニル樹脂などのように、その分子中に塩素原子を含む樹脂は、加熱分解されると塩素、塩化水素、塩素含有物質等を生成する。このような場合は、固体粒子として酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム等を利用して、生成した塩素、塩化水素、塩素含有物質等を中和、或いは吸収するのが好ましい。
【0041】
固体粒子の大きさは特に制限はないが、その取り扱い性、固体粒子と樹脂の流動・混合の容易さ等の観点から、平均粒径は0.01〜1mmが好ましく、0.05mm〜0.8mmがより好ましい。なお、平均粒径とは、篩分法など公知の方法を用いて測定される値である。
【0042】
本発明を適用できる樹脂としては特に限定されないが、熱可塑性樹脂としてはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、(メタ)アクリル樹脂等が挙げられる。
熱硬化性樹脂としてはフェノール樹脂、メラミン樹脂が例示される。これらの樹脂は単一の樹脂であってもよく、2種類以上の混合物であってもよい。なお、ここで「(メタ)アクリル」とは、アクリルあるいはメタクリルのことをいう。
【0043】
このような樹脂が分解し生成する分解生成物の主成分としては、ポリエチレンやポリプロピレンからはパラフィンやワックスが、ポリエチレンテレフタレートからはテレフタル酸が、ポリカーボネートからはフェノール類が、ポリスチレンからはスチレンモノマーが、(メタ)アクリル樹脂からは(メタ)アクリル酸エステルモノマーが得られる。
【0044】
本発明で使用する樹脂としては、分解生成物のモノマーの収率の観点から(メタ)アクリル樹脂が好ましい。従って、本発明の回収方法を(メタ)アクリル樹脂に適用することは、工業的に価値が非常に高い。
(メタ)アクリル樹脂を構成するモノマー単位としては、(メタ)アクリル酸エステルである。(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル等が挙げられる。
【0045】
(メタ)アクリル樹脂は、上記以外の他のモノマー単位を共重合成分として含んでいてもよい。他のモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、スチレン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル等が挙げられる。
【0046】
また、(メタ)アクリル樹脂は、架橋した樹脂であってもよい。架橋した(メタ)アクリル樹脂とは、多官能性モノマー単位および単官能性モノマー単位を含むものである。単官能性モノマーとしては、前記の(メタ)アクリル樹脂を構成するモノマー単位で例示したモノマーが挙げられる。多官能モノマーとしては、多官能(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。多官能(メタ)アクリル酸エステルとして、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、 エチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレートが例示できる。
【0047】
(メタ)アクリル酸エステルモノマーの内、メタクリル酸メチル(以下、「MMA」と略記する。)は高収率で回収できる観点から、(メタ)アクリル樹脂を構成する全モノマー100質量%中、MMAを50質量%以上、構成単位として含んでいることが好ましく、MMAを70質量%以上、構成単位として含んでいることがより好ましい。
【0048】
(メタ)アクリル樹脂は、他のポリマーと混合されていてもよい。また、(メタ)アクリル樹脂は、充填剤を含む複合体であってもよい。充填剤としては、水酸化アルミニウム、シリカ、炭酸カルシウム、ガラス繊維、タルク、クレイ等が挙げられる。
【0049】
また、(メタ)アクリル樹脂は、充填剤以外の各種添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、顔料、染料、補強剤、酸化防止剤、各種安定剤等が挙げられる。
【0050】
樹脂は、ペレット状(固体の粒子状)で供給することが好ましい。樹脂をペレット状で供給することにより、分解槽1の樹脂の分散が良好になりやすくなる。樹脂ペレットの大きさは、特に限定されないが、取り扱い性、供給安定性、分解槽内で分散性の観点から、平均粒径を1〜20mmとすることが好ましい。平均粒径を1mm以上とすることにより樹脂同士の付着や融着を防ぐことができ、20mm以下とすることにより樹脂ペレットの固体粒子への分散性が良好となる。特に、樹脂ペレットの大きさとして平均粒径を3〜10mmとすることが好ましい。なお、平均粒径とは、篩分法など公知の方法を用いて測定される値である。
【0051】
回収装置5で回収される液体状の分解生成物は、分解する樹脂の種類によって異なる。分解する樹脂としてポリエチレンやポリプロピレンを用いる場合には、パラフィン、ワックスが回収される。また、MMA単位を含む樹脂を用いる場合には、MMAが回収される。
【実施例】
【0052】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0053】
本実施例においては、以下に示す樹脂および固体粒子を用いた。また、回収液等の測定は以下の方法で行った。
(樹脂)
樹脂Aとして、MMA単位100質量%からなる樹脂を用いた。この樹脂の質量平均分子量は40万、平均粒径は約5mm(目開き5.6mmの篩いを通過し、目開き4.75mmの篩いを通過しない)であった。
(固体粒子)
固体粒子として、天然川砂((株)昌栄マテリアル製、商品名:エバラロズナ、平均粒径(直径):0.3mm、かさ密度:1600kg/m)を用いた。
(回収液中のMMA濃度)
ガスクロマトグラフィー((株)島津製作所製、商品名:GC−17A)で測定した。溶媒にはN,N−ジメチルホルムアミドを使用した。予め既知のMMA濃度の溶液を用いて検量線を作成しておき、回収液のガスクロマトグラフィーの結果から、回収液中のMMA濃度(質量%)を算出した。
(固体粒子に混在する樹脂分解残渣の比率)
固体粒子と樹脂分解残渣の混合物(質量W1)を800℃の熱風炉(空気雰囲気)に1時間置き、残渣物を加熱分解する。加熱分解後の質量W2を測定し、以下の式から残渣の比率を算出した。
樹脂分解残渣の比率(%)=(W1−W2)/W1×100
(酸素濃度)
固体粒子搬送装置内、及び固体粒子搬送装置に供給する不活性ガス中の酸素濃度(体積%)の測定は、ガス吸引装置を具備した磁気式酸素濃度計(横河電機製、MG8E型)を使用して行った。
【実施例1】
【0054】
図1に示す装置により、樹脂Aを分解し、液体状の分解生成物を回収した。
【0055】
固体粒子加熱装置4としては、直径が600mmの円筒状のものを用い、分散板で加熱装置の上部(加熱室)と下部(分散室)に仕切った。分散板としては、平板状であり、キャップ付ノズル式のものを用いた。
【0056】
固体粒子加熱装置4に、天然川砂を分散板から300mm上方の位置まで供給した。供給した天然川砂の質量は136kgであった。
【0057】
分解槽1としては、直径が350mmの円筒状のものを用い、分散板で分解槽の上部(分解室)と下部(分散室)に仕切った。分散板としては、平板状であり、キャップ付ノズル式のものを用いた。
【0058】
分解槽1内には攪拌機としては、攪拌軸に垂直、かつ対称に2枚の傾斜パドル翼(直径:310mm、幅:20mm、傾斜角度:45度)を1組として攪拌軸方向に5組(パドル間のピッチ:140mm)配設した。隣接する傾斜パドル翼の各組は直交するように配置した。攪拌軸を毎分20回転で回転させた。
【0059】
分解槽1に、天然川砂を分散板から800mm上方の位置まで供給した。供給した天然川砂の質量は123kgであった。
【0060】
次いで、樹脂Aを分解槽1内の分散板から200mm上方の分解槽1側面の位置に接続した配管11より10.0kg/hrで分解槽1に、連続的に供給した。樹脂Aの供給には一軸スクリューを使用した。その際、樹脂の供給温度は20℃であった。一軸スクリューの出口に熱電対を設置し、その熱電対でその供給温度を測定した。
【0061】
また、固体粒子加熱装置4で加熱された天然川砂を分解槽1の分散板から200mm上方の位置に接続した配管12より0.1t/hr(Q2)で分解槽1に、連続的に供給した。天然川砂の供給には一軸スクリューを使用した。一軸スクリューの出口に熱電対を設置し、その熱電対でその供給温度を測定した。後述の固体粒子加熱装置への燃料供給量を調整することにより、天然川砂の供給温度を600℃とした。
【0062】
分解槽1の分散室に配管13から流動化ガスとして窒素を15Nm/hrで連続的に供給した。供給される窒素は回収装置5の配管20から排出されるガスを循環して利用しているものである。
【0063】
一方、固体粒子加熱装置4では分散室に設置されたバーナーへ、燃料としてMMAを主成分とする油を4.0kg/hrで供給し燃焼させた。分散室には、大気中から取り入れた空気を加圧して供給した。その空気流量は60Nm/hrであった。
【0064】
また、分解槽1から排出された天然川砂を固体粒子排出装置2であるスクリューにより0.1t/hr(Q2)で排出し、固体粒子搬送装置3に供給した。固体粒子搬送装置は、籠がチェーンに取り付けられたバケットコンベアとした。固体粒子搬送装置の下部から搬送装置内に窒素99.9体積%、酸素0.1体積%からなら不活性ガスを連続的に0.5Nm/hr(Q1)で供給した。搬送装置内のガスをサンプリングして酸素濃度を測定したところ、0.1体積%であった。
【0065】
なお、前記Q1、Q2の値から、
Q1/Q2=0.5/0.1=5
となった。
【0066】
固体粒子搬送装置3の出口の配管17は、固体粒子加熱装置4の分散板から900mm上方の位置に接続されている。固体粒子搬送装置により、樹脂分解残渣を含む砂を固体粒子加熱装置に連続的に供給した。
【0067】
配管14で砂をサンプリングしたところ、砂に含まれる樹脂分解残渣は0.06質量%であった。また、配管17で砂をサンプリングしたところ、砂に含まれる樹脂分解残渣は0.06質量%であった。固体粒子搬送装置内では樹脂分解残渣は燃焼されなかったことが分かった。配管12で砂をサンプリングしたところ、樹脂分解残渣は0.00質量%であった。樹脂分解残渣が固体粒子加熱装置で燃焼されたことが分かった。
【0068】
分解槽1の上部から樹脂の分解生成物と流動化ガスの混合ガスを排出し、配管18より回収装置5に送った。回収装置5は、多管式の熱交換器とサイクロン式のミスト回収手段からなるものを用いた。また、多管式熱交換器には0℃の水とエチレングリコールからなる媒体を流した。
【0069】
回収装置5にて冷却されて液化した液体状の分解生成物(回収液)を配管19より、容器6に移液した。容器6で得られた回収液の量は、平均9.4kg/hrであった。
【0070】
回収液中のMMA濃度は、平均95.3%であった。一方、回収装置5で分離される流動化ガスは、配管20及び、配管13を経由して再度分解槽1に供給された。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明によれば、樹脂を分解してその分解生成物を回収する方法として、広く適用できる。
【符号の説明】
【0072】
1 分解槽
2 固体粒子排出装置
3 固体粒子搬送装置
4 固体粒子加熱装置
5 回収装置
6 容器
11 樹脂供給配管
12 固体粒子供給配管
13 流動化ガス供給配管
14 固体粒子排出配管
15 不活性ガス供給配管
16 不活性ガス供給配管
17 固体粒子供給配管
18 分解生成物排出配管
19 回収液排出配管
20 ガス排出配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂を固体粒子の存在下で加熱分解する分解槽、分解槽から排出される固体粒子と樹脂分解残渣を固体粒子加熱装置へ搬送する固体粒子搬送装置、固体粒子を加熱し、樹脂分解残渣を燃焼して除去する固体粒子加熱装置、及び樹脂の分解生成物を液体として回収する回収装置を具備する設備により樹脂を分解し、生成する分解生成物を回収する方法であって、
固体粒子搬送装置内を不活性ガス雰囲気とする分解生成物の回収方法。
【請求項2】
固体粒子搬送装置に、連続的に不活性ガスを供給する請求項1に記載の分解生成物の回収方法。
【請求項3】
固体粒子加熱装置で、樹脂分解残渣の燃焼及び、固体粒子の再加熱を行い、再加熱された固体粒子を分解槽に供給する請求項1または2に記載の分解生成物の回収方法。
【請求項4】
分解槽内の固体粒子及び樹脂が、流動化ガスにより流動化される請求項1〜3の何れかに記載の分解生成物の回収方法。
【請求項5】
分解槽に供給する流動化ガスの種類と、固体粒子搬送装置に供給するガスの種類が同じである請求項4に記載の分解生成物の回収方法。
【請求項6】
固体粒子搬送装置に供給するガスの流量Q1(Nm/hr)と、固体粒子の搬送量Q2(t/hr)との比Q1/Q2が0.5〜10である請求項2〜5の何れかに記載の分解生成物の回収方法。
【請求項7】
固体粒子搬送装置内の酸素濃度が、樹脂を分解して生成される生成物の爆発限界酸素濃度以下である請求項1〜6の何れかに記載の分解生成物の回収方法。
【請求項8】
固体粒子搬送装置に供給する不活性ガス中の酸素濃度が樹脂を分解して生成される生成物の爆発限界酸素濃度以下である請求項2〜7の何れかに記載の分解生成物の回収方法。
【請求項9】
固体粒子搬送装置がスクリュー式及びコンベア式の少なくともいずれかである請求項1〜8の何れかに記載の分解生成物の回収方法。
【請求項10】
回収する分解生成物がメタクリル酸メチルであり、固体粒子搬送装置内の酸素濃度が、メタクリル酸メチルの爆発限界酸素濃度8.9体積%以下である請求項1〜9の何れかに記載の分解生成物の回収方法。
【請求項11】
回収する分解生成物がメタクリル酸メチルであり、固体粒子搬送装置に供給する不活性ガス中の酸素濃度が、メタクリル酸メチルの爆発限界酸素濃度8.9体積%以下である請求項2〜9の何れかに記載の分解生成物の回収方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−195916(P2010−195916A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−41717(P2009−41717)
【出願日】平成21年2月25日(2009.2.25)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】