説明

樹脂の溶融接合方法及び樹脂の溶融接合装置

【課題】ストッパーを設けなくても、溶融樹脂の漏れが生じることはなく、また耐圧性能も十分に確保することが可能な樹脂の溶融接合方法及び樹脂の溶融接合装置を提供する。
【解決手段】一対の樹脂の一方10を把持する把持部材16と、他方12を支持する支持部材18と、把持部材16を昇降させる第1昇降装置22と、支持部材18を昇降させる第2昇降装置26と、一対の樹脂の接合部分を溶融するヒータ34と、を備え、一対の樹脂をヒータに対して相対的に移動させ、一対の樹脂の端部をヒータに当接することによって溶融させ、溶融された一対の樹脂の端部を互いに押し付けるように、一対の樹脂の少なくとも一方を移動することによって、一対の樹脂を接合させる樹脂の溶融接合装置であって、ヒータに当接することによって溶融する樹脂の長さを調整することが可能な溶融樹脂長さ調整手段を備えていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対向する一対の樹脂の端部をヒータに当接することによって溶融させて、その後溶融された一対の樹脂の端部を互いに押し付けることによって、一対の樹脂を溶融接合する樹脂の溶融接合方法及び樹脂の溶融接合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、対向する一対の樹脂の端部をヒータに当接することによって溶融させて、その後溶融された一対の樹脂の端部を互いに押し付けることによって、一対の樹脂を溶融接合することが行われている。例えば、濾過器一体型フィルターユニットは、カートリッジフィルターをカプセル状の樹脂製容器に収容しており、このカプセル状の容器は、上下に二分され、二分された一対の容器の端部は、上記樹脂の溶融接合方法によって接合されている。すなわち、二分された一対の容器のリング状の端部に、ヒータを当接させて溶融し、その後溶融されたリング状の端部を合わせて押し付けることによって、耐圧強度をもったカプセル状容器を形成している。
【0003】
このような樹脂の溶融接合においては、溶融する樹脂の量を制御するのが難しく、溶融量が多すぎると、溶融した樹脂が接合部分から漏れて、外観不良が生じるという問題があり、溶融量が少なすぎると、耐圧性能が劣ってしまうという問題がある。このような問題を解決するため、特許文献1には、二分された一対の容器のリング状の端部それぞれの外周全域に亘って、ストッパー兼シールドとして機能するストッパーを設け、端部同士を接合した際に、そのストッパーによって接合部分を隠すことができる構成が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2001−38807号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、二分された一対の容器の端部それぞれにストッパーを設ける構成は、複雑であるため、一体成型することが難しく、熱可塑性樹脂の種類によっては、二分された容器の端面を平坦に形成することが困難となり、溶融接合によって十分な強度を得ることができない。
【0006】
そこで、本発明は、ストッパーなどを設けなくても、溶融樹脂の漏れが生じることはなく、また耐圧性能も十分に確保することが可能な樹脂の溶融接合方法及び樹脂の溶融接合装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の目的を達成するため、本発明は、対向する一対の樹脂をヒータに対して相対的に移動させ、前記一対の樹脂の端部をヒータに当接することによって溶融する溶融工程と、溶融された一対の樹脂の端部を互いに押し付けるように、前記対向する一対の樹脂の少なくとも一方を移動することによって、前記対向する一対の樹脂を接合する接合工程と、を備えた樹脂の溶融接合方法であって、前記溶融工程において、前記ヒータに当接することによって溶融する樹脂の長さを調整することを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、対向する一対の樹脂をヒータに対して相対的に移動させ、前記一対の樹脂の端部をヒータに当接することによって溶融する溶融工程と、溶融された一対の樹脂の端部を互いに押し付けるように、前記対向する一対の樹脂の少なくとも一方を移動することによって、前記対向する一対の樹脂を接合する接合工程と、を備えた樹脂の溶融接合方法であって、前記溶融工程において、前記一対の樹脂の端部がヒータに接した後の前記対向する一対の樹脂をヒータに対して相対的に移動させる移動速度を調整することを特徴とする。
【0009】
さらに、本発明は、対向する一対の樹脂をヒータに対して相対的に移動させ、前記一対の樹脂の端部をヒータに当接することによって溶融する溶融工程と、溶融された一対の樹脂の端部を互いに押し付けるように、前記対向する一対の樹脂の少なくとも一方を移動することによって、前記対向する一対の樹脂を接合する接合工程と、を備えた樹脂の溶融接合方法であって、前記接合工程において、前記溶融された一対の樹脂の端部が接してから、前記対向する一対の樹脂の少なくとも一方を移動させる長さを調整することを特徴とする。
【0010】
またさらに、本発明は、対向する一対の樹脂をヒータに対して相対的に移動させ、前記一対の樹脂の端部をヒータに当接することによって溶融する溶融工程と、溶融された一対の樹脂の端部を互いに押し付けるように、前記対向する一対の樹脂の少なくとも一方を移動することによって、前記対向する一対の樹脂を接合する接合工程と、を備えた樹脂の溶融接合方法であって、前記接合工程において、前記対向する一対の樹脂の少なくとも一方の移動速度を調整することを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、対向する一対の樹脂をヒータに対して相対的に移動させ、前記一対の樹脂の端部をヒータに当接することによって溶融する溶融工程と、溶融された一対の樹脂の端部を互いに押し付けるように、前記対向する一対の樹脂の少なくとも一方を移動することによって、前記対向する一対の樹脂を接合する接合工程と、を備えた樹脂の溶融接合方法であって、前記接合工程において、前記溶融された一対の樹脂の端部を互いに押し付ける際の荷重を調整することを特徴とする。
【0012】
さらに、本発明は、対向する一対の樹脂の一方を把持する把持部材と、対向する一対の樹脂の他方を支持する支持部材と、前記把持部材を昇降させる第1昇降装置と、前記支持部材を昇降させる第2昇降装置と、対向する一対の樹脂の接合部分を溶融するヒータと、を備え、対向する一対の樹脂をヒータに対して相対的に移動させ、前記一対の樹脂の端部をヒータに当接することによって溶融させ、溶融された一対の樹脂の端部を互いに押し付けるように、前記対向する一対の樹脂の少なくとも一方を移動することによって、前記対向する一対の樹脂を接合させる樹脂の溶融接合装置であって、前記ヒータに当接することによって溶融する樹脂の長さを調整することが可能な溶融樹脂長さ調整手段を備えていることを特徴とする。
【0013】
またさらに、本発明は、対向する一対の樹脂の一方を把持する把持部材と、対向する一対の樹脂の他方を支持する支持部材と、前記把持部材を昇降させる第1昇降装置と、前記支持部材を昇降させる第2昇降装置と、対向する一対の樹脂の接合部分を溶融するヒータと、を備え、対向する一対の樹脂をヒータに対して相対的に移動させ、前記一対の樹脂の端部をヒータに当接することによって溶融させ、溶融された一対の樹脂の端部を互いに押し付けるように、前記対向する一対の樹脂の少なくとも一方を移動することによって、前記対向する一対の樹脂を接合させる樹脂の溶融接合装置であって、前記一対の樹脂の端部がヒータに接した後の前記対向する一対の樹脂をヒータに対して相対的に移動させる移動速度を調整することが可能な溶融移動速度調整手段を備えていることを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、対向する一対の樹脂の一方を把持する把持部材と、対向する一対の樹脂の他方を支持する支持部材と、前記把持部材を昇降させる第1昇降装置と、前記支持部材を昇降させる第2昇降装置と、対向する一対の樹脂の接合部分を溶融するヒータと、を備え、対向する一対の樹脂をヒータに対して相対的に移動させ、前記一対の樹脂の端部をヒータに当接することによって溶融させ、溶融された一対の樹脂の端部を互いに押し付けるように、前記対向する一対の樹脂の少なくとも一方を移動することによって、前記対向する一対の樹脂を接合させる樹脂の溶融接合装置であって、前記溶融された一対の樹脂の端部が接してから、前記対向する一対の樹脂の少なくとも一方を移動させる長さを調整することが可能な接合長さ調整手段を備えていることを特徴とする。
【0015】
さらに、本発明は、対向する一対の樹脂の一方を把持する把持部材と、対向する一対の樹脂の他方を支持する支持部材と、前記把持部材を昇降させる第1昇降装置と、前記支持部材を昇降させる第2昇降装置と、対向する一対の樹脂の接合部分を溶融するヒータと、を備え、対向する一対の樹脂をヒータに対して相対的に移動させ、前記一対の樹脂の端部をヒータに当接することによって溶融させ、溶融された一対の樹脂の端部を互いに押し付けるように、前記対向する一対の樹脂の少なくとも一方を移動することによって、前記対向する一対の樹脂を接合させる樹脂の溶融接合装置であって、前記対向する一対の樹脂の少なくとも一方の移動速度を調整することが可能な接合移動速度調整手段を備えていることを特徴とする。
【0016】
さらにまた、本発明は、対向する一対の樹脂の一方を把持する把持部材と、対向する一対の樹脂の他方を支持する支持部材と、前記把持部材を昇降させる第1昇降装置と、前記支持部材を昇降させる第2昇降装置と、対向する一対の樹脂の接合部分を溶融するヒータと、を備え、対向する一対の樹脂をヒータに対して相対的に移動させ、前記一対の樹脂の端部をヒータに当接することによって溶融させ、溶融された一対の樹脂の端部を互いに押し付けるように、前記対向する一対の樹脂の少なくとも一方を移動することによって、前記対向する一対の樹脂を接合させる樹脂の溶融接合装置であって、前記溶融された一対の樹脂の端部を互いに押し付ける際の荷重を調整することが可能な接合押付荷重調整手段を備えていることを特徴とする。
【0017】
本発明に係る樹脂の溶融接合方法において、前記溶融工程の前記一対の樹脂の端部をヒータから離間させる際の移動速度、及び前記接合工程の前記一対の樹脂の端部が接するまでの移動速度を調整することが好ましく、また、本発明に係る樹脂の溶融接合装置において、前記溶融の後の前記一対の樹脂の端部をヒータから離間させる際の移動速度を調整することが可能な離間移動速度調整手段と、前記接合の際の前記一対の樹脂の端部が接するまでの移動速度を調整することが可能な開始移動速度調整手段と、をさらに備えていることが好ましい。このような離間させる際の移動速度と接合を開始するまでの移動速度を調整することによって、一対の樹脂の端部が溶融してから接合が開始されるまでの時間を調整することができ、接合開始前に樹脂が固まってしまうのを防止することができる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように本発明によれば、ストッパーなどを設けなくても、溶融樹脂の漏れが生じることはなく、また耐圧性能も十分に確保することが可能な樹脂の溶融接合方法及び樹脂の溶融接合装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に、本発明に係る樹脂の溶融接合装置の実施例について説明する。本実施例に係る樹脂の溶融接合装置は、濾過器一体型フィルターユニットのカプセル状容器部材を溶融接合する装置であり、先ず、その濾過器一体型フィルターユニット(以下、単に「一体型フィルターユニット」という)の構造について図面に基づいて説明する。図1は、一体型フィルターユニットの正面断面図である。一体型フィルターユニットは、図1に示すように、下方に開口11を有する有底円筒状の第1カプセル状容器部10と、第1カプセル状容器部10の開口を塞ぐ第2カプセル状容器部12と、第2カプセル状容器部12の上面中心に設置され、第2カプセル状容器部12が第1カプセル状容器部10の開口11を塞いだ状態で、第1カプセル状容器部10内に収容される円筒状のカートリッジフィルター14と、を備えている。本実施例に係る樹脂の溶融接合装置は、この第1カプセル状容器部10の開口11の縁11aと、第2カプセル状容器部12の縁に沿って上方に突出する突出縁12aと、溶融接合するものである。
【0020】
次に、本実施例に係る樹脂の溶融接合装置の構造を図面に基づいて説明する。図2は、本実施例に係る樹脂の溶融接合装置の概略図である。本実施例に係る樹脂の溶融接合装置は、第1カプセル状容器部10を把持する把持部材16と、第2カプセル状容器部12を支持する支持部材18と、第1サーボモータ20の駆動によって把持部材16を昇降させる第1昇降装置22と、第2サーボモータ24の駆動によって支持部材18を昇降させる第2昇降装置26と、第1カプセル状容器部10の位置を検出する第1位置センサ28と、第2カプセル状容器部12の位置を検出する第2位置センサ30と、第1サーボモータ20及び第2サーボモータ24の駆動を制御するサーボモータ制御部32と、第1カプセル状容器部10及び第2カプセル状容器部12の接合部分を溶融するヒータ34と、第1位置センサ28や第2位置センサ30などに接続され、サーボモータ制御部32やヒータ34などに制御信号を送信する制御装置36と、制御装置36に制御データを入力するデータ入力部38と、を備えている。
【0021】
把持部材16は、下方に開口を有する有底円筒状に形成された把持部材本体40と、円筒状に形成され、把持部材本体40内に収容されるチャック部42と、を備えている。チャック部42は、その内径が第1カプセル状容器部10の外径よりも若干大きく形成され、その内部に第1カプセル状容器部10が収容されるよう構成されている。また、チャック部42は、その外径が把持部材本体40の内径よりも若干小さく形成されている。チャック部42の外周面の下端部分には、下方に向かって広がるようにテーパ面42aが形成され、把持部材本体40の内周面の下端部分には、テーパ面42aに対向するテーパ面40aが形成されている。把持部材本体40内に収容されるチャック部42には、エアシリンダー(図示省略)が内蔵され、そのエアシリンダーを作動させることにより、チャック部42を把持部材本体40に対して上昇させると、テーパ面40a及び42aの作用により、チャック部42の下方側の開口部がその中心方向に収縮し、チャック部42に第1カプセル状容器部10を把持させることができる。
【0022】
支持部材18は、第2カプセル状容器部12の底面側が収容される凹部44が形成されており、この凹部44は、第2カプセル状容器部12の底面側に沿った形状に形成されている。よって、この凹部44に第2カプセル状容器部12を収容することにより、第2カプセル状容器部12を支持することができる。
【0023】
第1昇降装置22は、第1サーボモータ20と、第1サーボモータ20の回転軸20aに装着され、外周面に螺旋状の山部が形成された棒状のスクリューギア46と、スクリューギア46が螺入可能な孔が形成された一対の支持部48a、48aを有するスライドユニット48と、を備えている。スライドユニット48は、把持部材16の把持部材本体40の外周面に装着しており、一対の支持部48a、48aは、把持部材16の軸方向に連なって、それぞれの孔が整合するように設けられている。したがって、第1サーボモータ20の回転軸20aが回転すると、スライドユニット48がスクリューギア46に対して相対的に上下方向に移動するので、把持部材16を昇降させることができる。
【0024】
第2昇降装置26は、第2サーボモータ24と、第2サーボモータ24の回転軸24aに装着され、外周面に螺旋状の山部が形成された棒状のスクリューギア50と、スクリューギア50が螺入可能な孔52aが形成されたシリンダーロッド52と、支持部材18に対して上方に加わる荷重を計測可能な荷重計54と、を備えている。荷重計54は、支持部材18の底面に装着されており、その荷重計54の下方にシリンダーロッド52が設けられている。シリンダーロッド52の孔52aは、支持部材18の軸方向に形成されている。したがって、第2サーボモータ24の回転軸24aが回転すると、シリンダーロッド52がスクリューギア50に対して相対的に上下方向に移動するので、支持部材18を昇降させることができる。
【0025】
第1位置センサ28及び第2位置センサ30は、第1カプセル状容器部10の下端と第2カプセル状容器部12の上端それぞれの所定の位置に合わせて設置されており、それぞれの所定の位置に第1カプセル状容器部10の下端と第2カプセル状容器部12の上端が存する場合を検知するように構成されている。
【0026】
サーボモータ制御部32は、制御装置36からの制御信号に基づいて第1サーボモータ20及び第2サーボモータ24の回転方向、回転速度などを制御するように構成されている。
【0027】
ヒータ34は、第1カプセル状容器部10の下端の開口の縁と第2カプセル状容器部12の上端の開口の縁に整合した円筒状に形成されており、その円筒の内径は、一体型フィルターユニットのカートリッジフィルター14の外径よりも大きく形成されている。また、第1カプセル状容器部10の下端の開口の縁と第2カプセル状容器部12の上端の開口の縁に接してそれぞれを溶融可能に構成されている。さらに、ヒータ34には、エアシリンダー56が設けられており、このエアシリンダー56によってヒータ34を、第1カプセル状容器部10の下端の開口の縁と第2カプセル状容器部12の上端の開口の縁に当接する位置と、第1カプセル状容器部10の下端と第2カプセル状容器部12の上端に全く当たらない位置の間を移動させることができるよう構成されている。
【0028】
制御装置36は、第1位置センサ28、第2位置センサ30、サーボモータ制御部32、データ入力装置38、荷重計54及びエアシリンダー56に接続されており、データ入力装置38に入力されたデータ、第1位置センサ28及び第2位置センサ30の検出信号及び荷重計54からのデータに基づいて、サーボモータ制御部32及びエアシリンダー56に制御信号を送信するように構成されている。
【0029】
データ入力装置38は、(a)ヒータ34に当接することによって溶融する際に、第1カプセル状容器部10の開口部11の縁11a及び第2カプセル状容器部12の突出縁12aがヒータ34に接してからのそれぞれの移動距離、(b)ヒータ34に当接することによって溶融する際の第1カプセル状容器部10及び第2カプセル状容器部12の移動速度、(c)溶融された第1カプセル状容器部10の開口部11の縁11a及び第2カプセル状容器部12の突出縁12aがヒータ34より離間する際の移動速度、(d) 接合する際の第2カプセル状容器部12の接合開始位置までの移動速度、(e)溶融された第1カプセル状容器部10の開口部11の縁11a及び第2カプセル状容器部12の突出縁12aを接合する際に、突出縁12aが開口11の縁11aに接した位置から第2カプセル状容器部12の移動距離、(f)その接合する際の第2カプセル状容器部12の移動速度、(g)その接合する際の第2カプセル状容器部12が第1カプセル状容器部10を押し付ける際の荷重が入力され、その入力されたデータを制御装置36に送信するよう構成されている。制御装置36は、そのデータ入力装置38から送信されたデータに基づいて、溶融の際の移動距離及び移動速度、並びに接合の際の移動距離、移動速度及び押付荷重を制御するように構成されている。溶融の際の移動距離及び移動速度、並びに接合の際の移動距離及び移動速度の制御は、第1サーボモータ20及び第2サーボモータ24を制御することによって行なわれ、接合の際の押付荷重の制御は、荷重計54から制御装置36にフィードバックされるデータに基づいて、第2サーボモータ24を制御することによって行なわれる。
【0030】
次に、本実施例に係る樹脂の溶融接合装置の動作について説明する。先ず、前提として、図2に示すように把持部材16に第1カプセル状容器部10を把持させ、支持部材18に第2カプセル状容器部12を支持させる。この際、第1位置センサ28の位置に第1カプセル状容器部10の開口縁11aを位置させ、第2位置センサ30の位置に第2カプセル状容器部12の突出縁12aを位置させる。次に、データ入力装置38に溶融の際の移動距離及び移動速度、離間の際の移動速度、開始位置までの移動速度、並びに接合の際の移動距離、移動速度、及び押付荷重が入力されると、以下のように本実施例に係る樹脂の溶融接合装置が作動する。すなわち、図3に示すように、制御装置36からエアシリンダー56に制御信号を送信してエアシリンダー56を作動させることによって、第1カプセル状容器部10及び第2カプセル状容器部12の樹脂を溶融させるのに十分な熱、例えば230〜350℃に加熱されたヒータ34を移動させ、第1カプセル状容器部10と第2カプセル状容器部12の間にヒータ34を位置させる。この際、第1カプセル状容器部10の開口縁11aと第2カプセル状容器部12の突出縁12aに整合する位置にヒータ34が存するように配置する。
【0031】
次に、制御装置36から制御信号がサーボモータ制御部32に送信され、図4に示すように、第1サーボモータ20が稼動することによって、把持部材16が降下して第1カプセル状容器部10の開口縁11aがヒータ34の上面に当接し、第2サーボモータ24が稼動することによって、支持部材18が上昇して第2カプセル状容器部12の突出縁12aがヒータ34の底面に当接する。その後、データ入力装置38に入力された溶融の際の移動距離及び移動速度に基づいて、第1サーボモータ20及び第2サーボモータ24が稼動することによって、把持部材16が降下するとともに、支持部材18が上昇し、第1カプセル状容器部10の開口縁11a及び第2カプセル状容器部12の突出縁12aを溶融させる。次いで、図5に示すように、データ入力装置38に入力された離間の際の移動速度に基づいて、第1サーボモータ20及び第2サーボモータ24を稼動させて把持部材16を上昇させ、支持部材18を下降させることによって、ヒータ34から離間させ、第1位置センサ28の位置まで第1カプセル状容器部10の開口縁11aを移動させるとともに、第2位置センサ30の位置まで第2カプセル状容器部12の突出縁12aを移動させる。次に、図6に示すように、制御装置36からエアシリンダー56に制御信号を送信してエアシリンダー56を作動させることによって、第1カプセル状容器部10及び第2カプセル状容器部12の間からヒータ34を離間させる。
【0032】
次に、制御装置36から制御信号がサーボモータ制御部32に送信され、データ入力装置38に入力された開始位置までの移動速度に基づいて、第2サーボモータ24が稼動することによって、図7に示すように、支持部材18が上昇して、溶融された第2カプセル状容器部12の突出縁12aが、溶融された第1カプセル状容器部10の開口縁11aに当接する。その後、データ入力装置38に入力された接合の際の移動距離及び移動速度に基づいて、第2サーボモータ24が稼動することによって、支持部材18を上昇させ、第1カプセル状容器部10の開口縁11aと第2カプセル状容器部12の突出縁12aを接合させる。この際、荷重計54から制御装置36に荷重データがフィードバックされ、それに基づいて第2サーボモータ24の動作は、制御される。
【実施例】
【0033】
次に、本実施例に係る樹脂の溶融接合装置を用いて一体型フィルターユニットを溶融接合した。第1カプセル状容器部10として、外形φ75mm、高さ95mmのもの、第2カプセル状容器部12として、外径φ75mm、高さ30mmのもの、及びカートリッジフィルター14として、外径φ60mm、高さ75mmのものをそれぞれ用意し、それぞれの材料として、ポリエチレン(PE)又はポリプロピレン(PP)を用いた。ヒータ34の加熱温度は、230〜350℃とした。ヒータ34からの離間速度は、100〜250mm/sec、開始位置移動速度は、400mm/secとしてヒータ34からの離間開始から接合開始までの時間を2秒以内とした。溶融の際の移動距離及び移動速度、並びに接合の際の移動距離、移動速度及び押付荷重として、表1に示す値を入力し、試作品1乃至10を得た。
【0034】
【表1】

【0035】
これら試作品1乃至10の外観を目視によって観察し、良好の場合を「○」、良好でない場合を「×」として、その結果を表2に示した。また、これら試作品1乃至10の耐圧性能を試験するため、それぞれの出口を密封し、入口から1MPaの水圧を加えて、接合箇所が離間する本数を計測し、10本中10本を「○」と評価し、そのほかを「×」と評価した。その結果を表2に示す。
【0036】
【表2】

【0037】
表2に示すように、溶融の際の移動距離及び移動速度、並びに接合の際の移動距離、移動速度及び押付荷重を調整することにより、外観が良好で、耐圧性能が優れた一体型フィルターユニットを得ることができることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係る樹脂の溶融接合装置の実施例によって、溶融接合される濾過器一体型フィルターユニットのカプセル状容器部材の正面断面図である。
【図2】本実施例に係る樹脂の溶融接合装置の正面概念図である。
【図3】本実施例に係る樹脂の溶融接合装置の動作を示す図である。
【図4】本実施例に係る樹脂の溶融接合装置の動作を示す図である。
【図5】本実施例に係る樹脂の溶融接合装置の動作を示す図である。
【図6】本実施例に係る樹脂の溶融接合装置の動作を示す図である。
【図7】本実施例に係る樹脂の溶融接合装置の動作を示す図である。
【符号の説明】
【0039】
10 第1カプセル状容器部
12 第2カプセル状容器部
16 把持部材
18 支持部材
20 第1サーボモータ
24 第2サーボモータ
34 ヒータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する一対の樹脂をヒータに対して相対的に移動させ、前記一対の樹脂の端部をヒータに当接することによって溶融する溶融工程と、
溶融された一対の樹脂の端部を互いに押し付けるように、前記対向する一対の樹脂の少なくとも一方を移動することによって、前記対向する一対の樹脂を接合する接合工程と、
を備えた樹脂の溶融接合方法であって、
前記溶融工程において、前記ヒータに当接することによって溶融する樹脂の長さを調整することを特徴とする樹脂の溶融接合方法。
【請求項2】
対向する一対の樹脂をヒータに対して相対的に移動させ、前記一対の樹脂の端部をヒータに当接することによって溶融する溶融工程と、
溶融された一対の樹脂の端部を互いに押し付けるように、前記対向する一対の樹脂の少なくとも一方を移動することによって、前記対向する一対の樹脂を接合する接合工程と、
を備えた樹脂の溶融接合方法であって、
前記溶融工程において、前記一対の樹脂の端部がヒータに接した後の前記対向する一対の樹脂をヒータに対して相対的に移動させる移動速度を調整することを特徴とする樹脂の溶融接合方法。
【請求項3】
対向する一対の樹脂をヒータに対して相対的に移動させ、前記一対の樹脂の端部をヒータに当接することによって溶融する溶融工程と、
溶融された一対の樹脂の端部を互いに押し付けるように、前記対向する一対の樹脂の少なくとも一方を移動することによって、前記対向する一対の樹脂を接合する接合工程と、
を備えた樹脂の溶融接合方法であって、
前記接合工程において、前記溶融された一対の樹脂の端部が接してから、前記対向する一対の樹脂の少なくとも一方を移動させる長さを調整することを特徴とする樹脂の溶融接合方法。
【請求項4】
対向する一対の樹脂をヒータに対して相対的に移動させ、前記一対の樹脂の端部をヒータに当接することによって溶融する溶融工程と、
溶融された一対の樹脂の端部を互いに押し付けるように、前記対向する一対の樹脂の少なくとも一方を移動することによって、前記対向する一対の樹脂を接合する接合工程と、
を備えた樹脂の溶融接合方法であって、
前記接合工程において、前記対向する一対の樹脂の少なくとも一方の移動速度を調整することを特徴とする樹脂の溶融接合方法。
【請求項5】
対向する一対の樹脂をヒータに対して相対的に移動させ、前記一対の樹脂の端部をヒータに当接することによって溶融する溶融工程と、
溶融された一対の樹脂の端部を互いに押し付けるように、前記対向する一対の樹脂の少なくとも一方を移動することによって、前記対向する一対の樹脂を接合する接合工程と、
を備えた樹脂の溶融接合方法であって、
前記接合工程において、前記溶融された一対の樹脂の端部を互いに押し付ける際の荷重を調整することを特徴とする樹脂の溶融接合方法。
【請求項6】
前記溶融工程の前記一対の樹脂の端部をヒータから離間させる際の移動速度、及び前記接合工程の前記一対の樹脂の端部が接するまでの移動速度を調整することを特徴とする請求項1乃至5いずれか記載の樹脂の溶融接合方法。
【請求項7】
対向する一対の樹脂の一方を把持する把持部材と、
対向する一対の樹脂の他方を支持する支持部材と、
前記把持部材を昇降させる第1昇降装置と、
前記支持部材を昇降させる第2昇降装置と、
対向する一対の樹脂の接合部分を溶融するヒータと、
を備え、
対向する一対の樹脂をヒータに対して相対的に移動させ、前記一対の樹脂の端部をヒータに当接することによって溶融させ、
溶融された一対の樹脂の端部を互いに押し付けるように、前記対向する一対の樹脂の少なくとも一方を移動することによって、前記対向する一対の樹脂を接合させる樹脂の溶融接合装置であって、
前記ヒータに当接することによって溶融する樹脂の長さを調整することが可能な溶融樹脂長さ調整手段を備えていることを特徴とする樹脂の溶融接合装置。
【請求項8】
対向する一対の樹脂の一方を把持する把持部材と、
対向する一対の樹脂の他方を支持する支持部材と、
前記把持部材を昇降させる第1昇降装置と、
前記支持部材を昇降させる第2昇降装置と、
対向する一対の樹脂の接合部分を溶融するヒータと、
を備え、
対向する一対の樹脂をヒータに対して相対的に移動させ、前記一対の樹脂の端部をヒータに当接することによって溶融させ、
溶融された一対の樹脂の端部を互いに押し付けるように、前記対向する一対の樹脂の少なくとも一方を移動することによって、前記対向する一対の樹脂を接合させる樹脂の溶融接合装置であって、
前記一対の樹脂の端部がヒータに接した後の前記対向する一対の樹脂をヒータに対して相対的に移動させる移動速度を調整することが可能な溶融移動速度調整手段を備えていることを特徴とする樹脂の溶融接合装置。
【請求項9】
対向する一対の樹脂の一方を把持する把持部材と、
対向する一対の樹脂の他方を支持する支持部材と、
前記把持部材を昇降させる第1昇降装置と、
前記支持部材を昇降させる第2昇降装置と、
対向する一対の樹脂の接合部分を溶融するヒータと、
を備え、
対向する一対の樹脂をヒータに対して相対的に移動させ、前記一対の樹脂の端部をヒータに当接することによって溶融させ、
溶融された一対の樹脂の端部を互いに押し付けるように、前記対向する一対の樹脂の少なくとも一方を移動することによって、前記対向する一対の樹脂を接合させる樹脂の溶融接合装置であって、
前記溶融された一対の樹脂の端部が接してから、前記対向する一対の樹脂の少なくとも一方を移動させる長さを調整することが可能な接合長さ調整手段を備えていることを特徴とする樹脂の溶融接合装置。
【請求項10】
対向する一対の樹脂の一方を把持する把持部材と、
対向する一対の樹脂の他方を支持する支持部材と、
前記把持部材を昇降させる第1昇降装置と、
前記支持部材を昇降させる第2昇降装置と、
対向する一対の樹脂の接合部分を溶融するヒータと、
を備え、
対向する一対の樹脂をヒータに対して相対的に移動させ、前記一対の樹脂の端部をヒータに当接することによって溶融させ、
溶融された一対の樹脂の端部を互いに押し付けるように、前記対向する一対の樹脂の少なくとも一方を移動することによって、前記対向する一対の樹脂を接合させる樹脂の溶融接合装置であって、
前記対向する一対の樹脂の少なくとも一方の移動速度を調整することが可能な接合移動速度調整手段を備えていることを特徴とする樹脂の溶融接合装置。
【請求項11】
対向する一対の樹脂の一方を把持する把持部材と、
対向する一対の樹脂の他方を支持する支持部材と、
前記把持部材を昇降させる第1昇降装置と、
前記支持部材を昇降させる第2昇降装置と、
対向する一対の樹脂の接合部分を溶融するヒータと、
を備え、
対向する一対の樹脂をヒータに対して相対的に移動させ、前記一対の樹脂の端部をヒータに当接することによって溶融させ、
溶融された一対の樹脂の端部を互いに押し付けるように、前記対向する一対の樹脂の少なくとも一方を移動することによって、前記対向する一対の樹脂を接合させる樹脂の溶融接合装置であって、
前記溶融された一対の樹脂の端部を互いに押し付ける際の荷重を調整することが可能な接合押付荷重調整手段を備えていることを特徴とする樹脂の溶融接合装置。
【請求項12】
前記溶融の後の前記一対の樹脂の端部をヒータから離間させる際の移動速度を調整することが可能な離間移動速度調整手段と、
前記接合の際の前記一対の樹脂の端部が接するまでの移動速度を調整することが可能な開始移動速度調整手段と、
をさらに備えたことを特徴とする請求項7乃至11いずれか記載の樹脂の溶融接合装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−30262(P2008−30262A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−204434(P2006−204434)
【出願日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【出願人】(000223045)東洋濾紙株式会社 (6)
【Fターム(参考)】